以下、図面に基づいて本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の一例に係る駆動装置の全体断面図である。
この駆動装置1は、モータ30と、センタクランクタイプの偏心揺動型の減速機10とを備える。モータ30は、入力軸(クランク軸)18と一体的に回転するロータ40と、該ロータ40との間にギャップδ30を設けて対向配置されるステータ50と、を有している。本実施形態に係るモータ30は、ロータ40とステータ50とが軸方向にギャップδ30を設けて対向するアキシャルギャップ型のモータである。モータ30の構成については、後に詳述する。
モータ30のロータ40は、ボルト41を介して減速機10の入力軸18と連結されている。ロータ40の軸心C40と入力軸18の軸心C18はインロー部43での嵌合によって揃えられる。また、ロータ40の周方向位置と入力軸18の周方向位置は、特定の関係が維持されるように規定されている(後述)。
減速機10の入力軸18は、負荷側の径方向中央にホロー部18Hが大きく形成され、軽量化されている。入力軸18の外周には、2個の偏心体(第1、第2偏心体)20、22が一体的に形成されている。なお、偏心体20、22は、図示せぬキー等によって入力軸18に連結する構成であってもよい。偏心体20、22の外周は、入力軸18の軸心C18に対してそれぞれ偏心量eだけ偏心している。2つの偏心体20、22の偏心位相差は、180度である(径方向において互いに離反する方向に偏心している)。
偏心体20、22の外周には、ころ(第1、第2ころ)15、17を介して外歯歯車(第1、第2外歯歯車)14、16が組み込まれている。外歯歯車14、16が2枚組み込まれているのは、動力伝達容量を確保すると共に、各外歯歯車14、16のそれぞれの偏心揺動の位相を異ならせることにより、入力軸18の径方向に発生する偏心荷重を相殺して減速機10全体の動的バランスをより向上させるためである。外歯歯車14、16は、揺動しながら内歯歯車12に内接噛合している。
内歯歯車12は、この実施形態では、内歯歯車本体12Aおよび内歯を構成する外ピン12Bを有している。内歯歯車本体12Aは、ケーシング62と一体化され、円弧状の溝部12A1を有している。外ピン12Bは、該円弧状の溝部12A1に回転自在に組み込まれている。内歯歯車12の内歯の数(外ピン12Bの本数)は、外歯歯車14、16の外歯の数よりも僅かだけ(この例では1だけ)多い。
一方、外歯歯車14、16には、該外歯歯車14、16の軸心(組み立てられた状態で偏心体20、22の軸心C20、C22と同じ)からオフセットした位置に貫通孔(第1、第2貫通孔)14A、16Aが、周方向において複数形成されている。各貫通孔14A、16Aを内ピン(ピン部材)64が貫通している。内ピン64の外周には摺動向上部材として内ローラ66が外嵌されている(ただし、内ローラ66はなくてもよい)。内ローラ66と貫通孔14A、16Aとの間には、偏心体20、22の偏心量eの2倍に相当する隙間が確保されている。
外歯歯車14、16の軸方向両側には、キャリヤ(第1、第2キャリヤ)24、26が配置されている。内ピン64は、このうちの軸方向負荷側(反モータ側)の第2キャリヤ26と一体化されている(第2キャリヤ26から一体的に突出している)。内ピン64の先端部64Aは、軸方向反負荷側の第1キャリヤ24の凹部24Aと嵌合しており、内ピン64は、ボルト68によって第1キャリヤ24と連結されている。これにより、第1、第2キャリヤ24、26は、一体的に回転可能である。第1、第2キャリヤ24、26は、背面合わせでケーシング62に組み込まれたアンギュラ玉軸受で構成される主軸受(第1、第2主軸受)70、72によって回転自在に支持されている。
なお、入力軸18は、一対の玉軸受(第1、第2玉軸受)74、76によって第1、第2キャリヤ24、26に支持されている。この実施形態では、第1玉軸受74は、第1偏心体20とロータ40との間に配置されている。
この駆動装置1は、ケーシング62がボルト(ボルト孔のみ図示)63を介して第1の部材(例えば産業用ロボットの第1のアーム:図示略)と連結され、第2キャリヤ26がタップ穴26Aを利用して第2の部材(例えば産業用ロボットの第2のアーム:図示略)と連結されて使用される。
なお、符号80は、モータ30の保護ケーシングである。保護ケーシング80は、モータ30のロータ40およびステータ50を収容する凹部80Aと、該凹部80Aの径方向外側に延在しているフランジ部80Bと、第1キャリヤ24に対するインロー部80Cと、を有している。保護ケーシング80は、インロー部80Cが第1キャリヤ24の外周と嵌合され、フランジ部80Bが第1キャリヤ24の軸方向端面24Bに当接した状態で、ボルト82によって該第1キャリヤ24の軸方向端面24Bに固定されている。
符号84〜86は、オイルシール、88は、第1キャリヤ24のホロー部を閉塞するキャップである。
次に、本実施形態に係るモータ30の構成について詳細に説明する。
前述したように、本実施形態に係るモータ30は、アキシャルギャップ型のモータで、入力軸(クランク軸)18と一体的に回転するロータ40と、該ロータ40との間に軸方向にギャップδ30を設けて対向配置されるステータ50と、を有している。
ロータ40は、例えば、図6に示した従来のロータ940A〜940Cのように、2組の永久磁石40N、40Sが円周方向に交互に配置されている。一方の永久磁石Nは、ベースプレート45の表面45AにN極を駆動装置1の軸方向外側に向けて固定されており、もう一方の永久磁石40Sは、ベースプレート45の表面45AにS極を駆動装置1の軸方向外側に向けて固定されている。
一方、ステータ50は、例えば、図7に示した従来のステータ950A〜950Cのように、U相の電流が流れる巻線50U、V相の電流が流れる巻線50V及びW相の電流が流れる巻線50Wを備えている。なお、図1には、巻線50U、50Vが現れており、巻線50Wは現れていない。巻線50U、50V及び50Wは、例えば圧粉磁心で形成されているコア50Aに巻き付けられている。ステータ50は、コア50Aを例えば接着剤で保護ケーシング80の凹部80Aに固定することにより、該保護ケーシング80に取り付けられている。
この実施形態では、ロータ40とステータ50との間のギャップδ30が、入力軸18が変形していない状態(つまりクランク軸が撓んでいない状態)において、モータ30(具体的にはステータ50)に通電したときのロータ40とステータ50との間に発生する吸引力が、周方向位置によって異なるように設定されている。そして、これを具体的に実現するために、この実施形態に係るモータ30では、モータ30に通電していない状態において、ロータ40とステータ50との間のギャップδ30が周方向位置によって異なるように設定されている。
図2、図3を用いて、より詳細に説明する。なお、図2は、図1の要部拡大断面図、図3は、図2の矢視III−III線に沿う断面図である。ロータ40とステータ50との間のギャップδ30は、通常のアキシャルギャップ型のモータでは、クランク軸が変形していない状態で全ての円周方向位置および全ての径方向位置において同一に設定される。つまり、ロータ40の永久磁石40N、40Sの軸方向ステータ側の端面(以下単にロータ面40Pと称す)と、ステータ50のコア50Aの軸方向ロータ側の端面(以下単にステータ面50Pと称す)は、共に軸心C18と直角の面とされ、平行に設定される。
しかしながら、本実施形態においては、ロータ40に最も近い第1偏心体20の最大偏心方向Xa(偏心量eが発生している方向)におけるギャップが、該第1偏心体20の反最大偏心方向Xb(最大偏心方向Xaから180°位相がずれた方向)におけるギャップよりも小さくなるように設定されている。すなわち、本実施形態において、ロータ40に最も近い第1偏心体20の最大偏心方向Xaは、例えば、図2において図面の下方向、図3でも、図面の下方向に相当している。この場合、図2に示されるように、第1偏心体20の最大偏心方向Xaにおけるギャップδ30minが、第1偏心体20の反最大偏心方向Xbにおけるギャップδ30maxよりも小さくなるように設定される(δ30min<δ30max)。
より具体的には、この実施形態では、ステータ50のステータ面50Pは、軸心C18と直角である。また、ロータ40のベースプレート45の厚さW45は一定であって、かつベースプレート面(ベースプレートの軸方向ステータ側の面)45Pも、軸心C18と直角である。そして、ギャップδ30の大小の変化、つまり、ギャップδ30maxからギャップδ30minへの変化を、ロータ40の永久磁石40N、40Sの軸方向厚さTh40を周方向位置で変化させることで実現している。このδ30maxからギャップδ30minへの変化は、この実施形態では、(段差的にではなく)漸次的としてある。すなわち、最も広いギャップδ30maxから最も狭いギャップδ30minへと周方向位置に依存してなだらかに変化している。具体的には、周方向におけるギャップδ30の変化率が一定(ロータ面40Pが軸と直角の面に対してなす角度(傾き)が一定)となるように、該ギャップδ30が、最も広いギャップδ30maxから最も狭いギャップδ30minへと周方向位置によって変化している。
また、図2から明らかなように、本実施形態においては、ギャップδ30は、同一の周方向位置において、径方向位置によっても異なるように設定してある。具体的には、ギャップδ30は、最大偏心方向Xaから反最大偏心方向Xbに向かって大きくなるように設定してある。具体的には、径方向におけるギャップδ30の変化率が一定(ロータ面40Pが軸と直角の面に対してなす角度(傾き)が一定)となるように、該ギャップδ30が、最も広いギャップδ30maxから最も狭いギャップδ30minへと径方向位置によって直線的に変化している。
一方、ロータ40と入力軸18(第1偏心体20)は、ボルト41によって周方向、径方向、および軸方向に一体化されている。そのため、ロータ40は、第1偏心体20と完全に一体的に回転する。そのため、ロータ40に最も近い第1偏心体20の最大偏心方向Xaにおけるギャップδ30minは、該第1偏心体20の最大偏心方向Xaが回転してゆくに従って、共に周方向に回転してゆくようになる。つまり、例えば、最も狭いギャップδ30minは、ロータ40に最も近い第1偏心体20の最大偏心方向Xaと常に一致する周方向位置で形成され、最も広いギャップδ30maxは、ロータ40に最も近い第1偏心体20の反最大偏心方向Xbと常に一致する周方向位置で形成されることになる。
次に本実施形態の作用を説明する。
始めに、偏心揺動型の減速機10の動力伝達に係る作用を説明する。
入力軸(クランク軸)18が回転すると該入力軸18と一体化されている偏心体20、22が回転し、ころ15、17を介して外歯歯車14、16が揺動回転する。このとき、外歯歯車14、16は、偏心体20、22によって内歯歯車12側に押し付けられる態様で内歯歯車12に内接噛合する。この結果、内歯歯車12(の外ピン12B)に対する外歯歯車14、16の噛合位置が順次ずれてゆく現象が発生する。
外歯歯車14、16の歯数は、内歯歯車12の歯数よりも1だけ少ないため、外歯歯車14、16は、入力軸18が1回回転するごとに、1歯分だけ内歯歯車12に対して位相がずれる(自転する)ことになる。この自転成分が、内ローラ66および内ピン64を介してキャリヤ24、26に伝達され、第2キャリヤ26からケーシング62に対する相対回転が出力される。第2キャリヤ26の回転速度は、入力軸18の回転速度の1/(外歯歯車14、16の歯数)となる。なお、外歯歯車14、16の揺動成分は、内ローラ66と外歯歯車14、16の貫通孔14A、16Aとの間に確保された隙間によって吸収される。
この一連の作用がなされる際、入力軸(クランク軸)18には、内歯歯車12からの噛合反力が、外歯歯車14、16および偏心体20、22を介して掛かると共に、内ピン64および内ローラ66側からの自転反力が、やはり外歯歯車14、16および偏心体20、22を介して掛かることになる。
ここで、入力軸18に対してこれらの反力が掛かる位置(方向)について、図3を用いてより詳細に説明する。前述したように、図3において、第1偏心体20は、図3の下側が最大偏心方向Xaとなっている。入力軸18には第1偏心体20が偏心したときに第1外歯歯車14の揺動の反力が掛かるため、荷重を受ける方向は概ね反最大偏心方向Xb(第1偏心体20の最大偏心方向Xaの反対方向)となる。
ただし、正確には最も荷重が掛かるのは、反最大偏心方向Xbではなく、反最大偏心方向Xbから周方向に約45°ずれた方向Xcである。このずれる方向は、入力軸18の回転が逆転すると反転して(方向Xcと対称の)方向Xdになる。したがって、正確には、入力軸18に最大荷重が掛かる方向(入力軸18が撓む方向)は、入力軸18が正転方向に回転するときは方向Xcであり、逆転方向に回転するときは、方向Xdであるということになる。
しかし、事実上は、正転時および逆転時を含めて、入力軸18は、概ね反最大偏心方向Xbの近傍において最も撓むと捉えてよい。本実施形態もこの思想に基づいて構成されている。
一方、この実施形態では、ロータ40は、第1玉軸受74に対して第1偏心体20と軸方向反対側に位置している。したがって、入力軸18において第1偏心体20の近傍が撓むと、入力軸18のロータ40の近傍では、第1偏心体20の近傍で撓む方向と逆の方向、つまり第1偏心体20の最大偏心方向Xa側(矢印Xr方向)に撓むことになる。その結果、入力軸18と一体化されているロータ40(のロータ面40P)が軸心C18と直角の方向から傾くことになる。したがって、入力軸18が変形していない状態(撓んでいない状態)において、もし、ギャップが均一に設定されていた場合は、該ギャップδ30がより小さくなる側(反最大偏心方向Xb側:図2の上側)の周方向位置の近傍での吸引力が増大し、ギャップδ30がより大きくなる側(最大偏心方向Xa側:図2の下側)の周方向位置の近傍では、吸引力が低下することになる。この結果、偏心体20、22が1回回転する毎に、該偏心体20、22の回転角に依存してモータ30での発生トルクが増減し、脈動や振動を引き起こす要因となってしまう。
しかし、本実施形態では、入力軸(クランク軸)18が変形していない状態(撓んでいない状態)において、モータ30に通電したときのロータ40とステータ50との間に発生する吸引力を、周方向位置によって異ならせるようにしている。具体的には、モータ30に通電していない状態において、ギャップδ30の大きさが周方向位置によって異なっており、ロータ40に最も近い第1偏心体20の最大偏心方向Xaにおけるギャップδ30minが、該第1偏心体20の反最大偏心方向Xbにおけるギャップδ30maxよりも小さく設定されている(δ30min<δ30max)。
そのため、モータ30が通電され、偏心体20、22から偏心荷重が入力軸18に伝達されてきて該入力軸18のロータ40の近傍がXr方向に撓んだとしても、これによって、実際のロータ40とステータ50との間のギャップδ30は周方向において、「むしろ」より均一に近くなり、モータ30が運転時に発生する駆動トルクをより平準化させることができるようになる。
さらには、この実施形態では、ギャップδ30が、同一の周方向位置において、径方向位置によっても異なるようにし、具体的には、入力軸18が変形していない状態において、ギャップδ30が、第1偏心体20の最大偏心方向Xaから反最大偏心方向Xbに向かって大きくなるようにしている。これは、入力軸18がXr方向に撓むと、同一の周方向位置でも最大偏心方向Xa側ほどギャップδ30がより大きくなり、反最大偏心方向Xb側ほどギャップδ30がより小さくなるためである。つまり、反最大偏心方向Xbにおいてギャップδ30がより大きくなる(最大でギャップδ30maxにまで大きくなる)ように設定されるため、一層円滑な回転が可能である。
要するならば、(正転時においても、また逆転時においても)入力軸18の撓みによる脈動をより低減し、モータ30によって実際に発生されるトルクを、(第1偏心体20の最大偏心方向Xaの回転角に関わらず)より平準化することができ、回転の円滑性をより向上させることができる。
なお、上記実施形態では、ロータ40に最も近い第1偏心体20と、ロータ40との間に第1玉軸受74が配置されていた(ロータ40が、第1玉軸受74に対して第1偏心体20と軸方向反対側に位置していた)。したがって、入力軸18において第1偏心体20の近傍が撓むと、入力軸18のロータ40の近傍では、第1偏心体20の近傍で撓む方向Xbと逆の方向Xrに撓む構造となっていた。このため、ロータ40に最も近い第1偏心体20の最大偏心方向Xaにおけるギャップδ30minが、該第1偏心体20の反最大偏心方向Xbにおけるギャップδ30maxよりも小さくなるように設定していた。
しかし、偏心揺動型の減速機においては、必ずしも常にロータに最も近い偏心体と、ロータとの間に軸受が配置されているわけではなく、ときに、軸受に対して同一の側にロータに最も近い偏心体およびロータの双方が位置する場合もある。
このような場合には、クランク軸のロータに最も近い偏心体が撓む方向とロータの近傍が撓む方向が一致するため、ロータに最も近い偏心体の最大偏心方向におけるギャップが、該偏心体の反最大偏心方向におけるギャップよりも大きくなるように設定するとよい。
なお、上記実施形態においては、ロータ40の永久磁石40N、40Sの軸方向厚さTh40を周方向位置によって変化させることによって、ギャップδ30を周方向位置によって異ならせる構成を実現していた。しかし、ギャップを周方向位置によって異ならせる手法は、上記手法に限定されない。例えば、ベースプレートの軸方向厚さを周方向位置によって異ならせてもよいし、永久磁石とベースプレートの両方の軸方向厚さを周方向位置によって異ならせてもよい。
また、上記実施形態では第1偏心体20の最大偏心方向Xaで最少ギャップδ30min、反最大偏心方向Xbで最大ギャップδ30maxとなるように、周方向において一定の変化率でギャップδ30を変化させていた。しかし、ギャップが周方向位置によって異なっているのであれば、ギャップの周方向における変化態様は、特に上記例に限定されない。より具体的には、駆動装置を駆動することによって、「クランク軸(上記例では入力軸)が変形した状態でのギャップが狭くなる周方向位置における(クランク軸が変形していない状態での)ギャップ」が、「クランク軸が変形した状態でのギャップが広がる周方向位置における(クランク軸が変形していない状態での)ギャップ」よりも大きく形成されていればよい。例えば、軸方向厚さの異なる永久磁石を周方向に並べることによって、ギャップを周方向に階段状に変化させてもよいし、第1偏心体(20)の最大偏心方向Xaの近傍の所定の周方向範囲(例えば、Xa±45°の周方向範囲)のギャップを、反最大偏心方向Xbの近傍の所定の周方向範囲(例えば、Xb±45°の周方向範囲)のギャップよりも小さくして、それ以外の周方向範囲のギャップは一定としてもよい。
さらには、要するに、クランク軸が変形していない状態において、モータに通電したときのロータとステータとの間に発生する吸引力を、周方向位置によって異ならせることができるならば、その手法は、ギャップを周方向位置によって異ならせる手法に限定されない。
例えば、ロータによって形成される磁界が、該ロータの周方向位置によって異なるように構成しても、クランク軸が変形していない状態において、モータに通電したときのロータとステータとの間に発生する吸引力を、周方向位置によって異ならせることができる。
具体的には、例えば、ロータ40の永久磁石40N1〜40N4、40S1〜40S4が、例えば、先の図6に示されるような940N1〜940N4、940S1〜940S4のような態様で配置されている場合には、例えば、永久磁石(40S1、40N1)<(40S2、40N2、40S4、40N4)<(40S3、40N3)の3段階に、あるいは、永久磁石(40N4、40S1、40N1、40S2)<(40N2、40S3、40N3、40S4)の2段階に、それぞれの永久磁石40N1〜40N4、40S1〜40S4の磁界(磁力)の強度が周方向位置、あるいは径方向位置に依存して変化するように構成してもよい。ロータ40の永久磁石による磁界の強度を変えるには、例えば、永久磁石の素材を変えればよい。
もちろん、上記構成のうち、2以上の構成を併用してもよい。
なお、本発明は、例えば、先に図5〜図7を用いて説明したような振り分けタイプの偏心揺動型の減速機を採用した駆動装置にも適用可能である。図5〜図7を用いて説明したように、振り分けタイプの偏心揺動型の減速機は、クランク軸が内歯歯車の軸心からオフセットした位置に複数設けられており、各クランク軸を同期して回転させる、という構成を備えている。しかし、クランク軸をモータによって駆動するという基本構造自体は先の図1〜図3の実施形態と同様に捉えることが可能である。すなわち、本発明は、振り分けタイプの偏心揺動型の減速機を採用した駆動装置にも適用可能である。
図4に、振り分けタイプの減速機に組み込まれている複数のクランク軸のうちの1本のクランク軸118に、2個のアキシャルギャップ型のモータ130、132を結合した一例を示す。なお、実際には、全てのクランク軸118に、同様にモータ130、132が設けられる。
この図4の例では、クランク軸118の一端に、第1のモータ130のロータ140が設けられ、他端に第2のモータ132のロータ142が設けられている。そして、それぞれのロータ140、142とステータ150、152との間のギャップδ130、δ132の変化状況が、周方向において180度ずれている。つまり、1本のクランク軸118の両端に同一構造の第1、第2のアキシャルギャップ型のモータ130、132を、軸方向に対向させる態様で組み込み、かつ、偏心運動による吸引力の変動の影響に関しては、第2のモータ132におけるギャップδ132の周方向の変化態様が、第1のモータ130におけるギャップδ130の周方向の変化態様を、クランク軸118の軸心C118を通る面に対して折り返した変化態様となるように設定されている。そして、それぞれのモータ130、132に対して、先の図1〜図3の実施形態と同様の構成を採用している。理解を容易にするために、図1〜図3の実施形態と同一または類似する部位、または部材に下2桁が同一の符号を付している。
第1のモータ130に着目すると、この実施形態においても、クランク軸118が変形していない状態(撓んでいない状態)において、モータ130に通電したときのロータ140とステータ150との間に発生する吸引力を、周方向位置によって異ならせるようにしている。
具体的には、モータ130に通電していない状態において、ギャップδ130の大きさが周方向位置によって異なっており、ロータ140に最も近い第1偏心体120の最大偏心方向Xa1におけるギャップδ130minが、該第1偏心体120の反最大偏心方向Xb1におけるギャップδ130maxよりも小さく設定されている。
さらには、ギャップδ130が、同一の周方向位置において、径方向位置によっても異なるようにするべく、ギャップδ130が、最大偏心方向Xa1から反最大偏心方向Xb1に向かって大きくなるようにしている。
一方、第2のモータ132に着目すると、クランク軸118が変形していない状態(撓んでいない状態)において、モータ132に通電したときのロータ142とステータ152との間に発生する吸引力を、周方向位置によって異ならせるようにしている。
具体的には、モータ132に通電していない状態において、ギャップδ132の大きさが周方向位置によって異なっており、ロータ142に最も近い第2偏心体122の最大偏心方向Xa2におけるギャップδ132minが、該第2偏心体122の反最大偏心方向Xb2におけるギャップδ132maxよりも小さく設定されている。
さらには、ギャップδ132が、同一の周方向位置において、径方向位置によっても異なるようにするべく、ギャップδ132が、最大偏心方向Xa2から反最大偏心方向Xb2に向かって大きくなるようにしている。
第2偏心体122の最大偏心方向Xa2は、第1偏心体120の最大偏心方向Xa1と位相が180°反転している(ずれている)。同様に、第2偏心体122の反最大偏心方向Xb2は、第1偏心体120の反最大偏心方向Xb1と位相が180°反転している。そのため、結局、偏心運動による吸引力の変動の影響に関しては、第2のモータ132におけるギャップδ132の周方向の変化態様が、第1のモータ130におけるギャップδ130の周方向の変化態様を、クランク軸118の軸心C118を通る面に対して折り返した変化態様となるように設定されることで、クランク軸118の全体においてバランスが取れるように構成することができる。
すなわち、モータ130、132が通電され、第1、第2偏心体120、122から動力伝達の際の偏心荷重が伝達されてきてクランク軸118が撓んだとしても、これによって、実際のロータ140、142とステータ150、152との間のギャップδ130、δ132は、周方向および径方向において、より均一に近くなり、モータ130、132が発生する駆動トルクをより平準化させることができるようになる。そして、この実施形態では、アキシャルギャップ型のモータ130、132が軸方向に対向して設けられているため、それぞれのモータ130、132で発生するスラスト荷重を互いに相殺することもできる。
なお、このような振り分けタイプの偏心揺動型の減速機が採用されている場合においても、先の実施形態で説明したような変形例を同様に採用することができ、同様の作用効果を得ることができる。
そして、偏心揺動型の減速機は、上記以外にも種々の構成が知られているが、モータが、クランク軸に設けられ、該クランク軸と一体的に回転するロータと、該ロータとの間にギャップを設けて配置されるステータと、を有している限り、本発明を同様に適用することができ、同様の作用効果を得ることができる。例えば、キャリヤが固定され(外歯歯車の自転が拘束され)、内歯歯車が回転する枠回転型の偏心揺動型の減速機でもよいし、内歯歯車が外歯歯車に対して偏心揺動する内歯歯車揺動タイプの偏心揺動型の減速機であってもよい。
また、本発明は、ロータとステータとの間のギャップの変化に敏感なアキシャルキャップ型のモータに適用することで、特に顕著な作用効果を得ることができるが、モータの種類は、必ずしもアキシャルギャップ型のモータに限定されない。つまり、例えばロータとステータとの間のギャップが径方向に形成されているラジアルギャップ型のモータにも、本発明を同様に適用することができる。つまり、ラジアルギャップ型のモータにおいても、ロータがクランク軸に設けられ、該クランク軸と一体的に回転し、かつステータが、該ロータとの間にギャップを設けて配置される場合には、クランク軸の変形によって、該ロータとステータとの間のギャップが変化するという問題は、同様に発生する。そして、クランク軸が変形していない状態において、モータに通電したときのロータとステータとの間に発生する吸引力を、周方向位置によって異ならせることにより、先の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
なお、ラジアルギャップ型のモータにおいて、モータに通電したときのロータとステータとの間に発生する吸引力を周方向位置によって異ならせる場合も、例えば、先の実施形態と同様に、モータに通電していない状態において、ギャップが周方向位置によって異なるように構成するようにしてもよい。また、モータに通電していない状態において、ロータの永久磁石の磁力が周方向位置によって異なるように構成するようにしてもよい。