JP2015193689A - 難燃性組成物およびこれを用いた絶縁電線 - Google Patents

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諭 村尾
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Abstract

【課題】耐熱性に優れるシラン架橋難燃性組成物において、従来よりも柔軟性に優れる難燃性組成物およびこれを用いた絶縁電線を提供する。【解決手段】シラン変性エチレン系重合体と、シラン非変性エチレン系重合体と、ポリプロピレン系重合体と、を含有する重合体成分と、金属水酸化物と、フェノール系酸化防止剤と、金属不活性化剤と、シラン架橋触媒と、を含有する難燃性組成物において、シラン変性エチレン系重合体の密度を0.875g/cm3以下とする。あるいは、シラン非変性エチレン系重合体として、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ビニル酢酸共重合体を用いる。または、ポリプロピレン系重合体としてポリプロピレン系熱可塑性エラストマーを用いる。【選択図】なし

Description

本発明は、難燃性組成物およびこれを用いた絶縁電線に関し、さらに詳しくは、耐熱性に優れる難燃性組成物およびこれを用いた絶縁電線に関するものである。
自動車のエンジンルーム等の高温環境下において使用される絶縁電線には、高い耐熱性が要求されている。そのため、従来、架橋ポリ塩化ビニルや架橋ポリエチレン等を被覆材とする耐熱電線が用いられてきた。例えば特許文献1には、シラン架橋ポリオレフィンを電線被覆材として用いる例が開示されている。
特開2010−174157号公報
大電流化、大電圧化などにより、絶縁電線の導体サイズを従来よりも大きくすることが望まれている。導体サイズが大きくなると、被覆材の厚みも従来より厚くなり、絶縁電線は曲げにくくなる。このため、被覆材の柔軟化が求められている。
本発明の解決しようとする課題は、耐熱性に優れるシラン架橋難燃性組成物において、従来よりも柔軟性に優れる難燃性組成物およびこれを用いた絶縁電線を提供することにある。
上記課題を解決するため本発明に係る難燃性組成物は、シラン変性エチレン系重合体と、シラン非変性エチレン系重合体と、ポリプロピレン系重合体と、を含有する重合体成分と、金属水酸化物と、フェノール系酸化防止剤と、金属不活性化剤と、シラン架橋触媒と、を含有し、前記シラン変性エチレン系重合体が、密度0.875g/cm以下のシラン変性エチレン系重合体であることを要旨とするものである。
この場合、前記シラン非変性エチレン系重合体は、エチレン−エチルアクリレート共重合体およびエチレン−ビニル酢酸共重合体から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
また、前記ポリプロピレン系重合体は、ポリプロピレンの結晶相とエチレンプロピレンゴムの非晶相とを有するポリプロピレン系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
さらに、前記シラン変性エチレン系重合体は、折りたたみラメラ結晶構造を持つ、密度0.875g/cm以下のシラン変性エチレン系重合体であることが好ましい。
そして、本発明に係る他の難燃性組成物は、シラン変性エチレン系重合体と、シラン非変性エチレン系重合体と、ポリプロピレン系重合体と、を含有する重合体成分と、金属水酸化物と、フェノール系酸化防止剤と、金属不活性化剤と、シラン架橋触媒と、を含有し、前記シラン非変性エチレン系重合体が、エチレン−エチルアクリレート共重合体およびエチレン−ビニル酢酸共重合体から選択される1種または2種以上であることを要旨とするものである。
また、本発明に係るさらに他の難燃性組成物は、シラン変性エチレン系重合体と、シラン非変性エチレン系重合体と、ポリプロピレン系重合体と、を含有する重合体成分と、金属水酸化物と、フェノール系酸化防止剤と、金属不活性化剤と、シラン架橋触媒と、を含有し、前記ポリプロピレン系重合体が、ポリプロピレンの結晶相とエチレンプロピレンゴムの非晶相とを有するポリプロピレン系熱可塑性エラストマーであることを要旨とするものである。
そして、前記重合体成分は、前記シラン変性エチレン系重合体40〜80質量部と、前記シラン非変性エチレン系重合体15〜50質量部と、前記ポリプロピレン系重合体5〜40質量部と、からなり、該重合体成分100質量部に対し、前記金属水酸化物20〜100質量部、フェノール系酸化防止剤1〜20質量部、金属不活性化剤1〜20質量部、シラン架橋触媒1〜20質量部であることが好ましい。
そして、本発明に係る絶縁電線は、上記の難燃性組成物がシラン架橋されたシラン架橋難燃性組成物からなる絶縁体が電線導体の外周を被覆してなることを要旨とするものである。
この場合、前記絶縁体は、JIS K 7161に準拠して測定されるセカントモジュラスが70MPa以下であることが好ましい。
本発明に係る難燃性組成物によれば、シラン変性エチレン系重合体を含有する重合体成分とシラン架橋触媒とを含有し、シラン架橋エチレン系重合体を含有するものとすることができ、さらに、フェノール系酸化防止剤と金属不活性化剤とを含有するため、例えば自動車のエンジンルーム等の高温環境下において使用される絶縁電線に要求されるほどの優れた耐熱性を有することができる。そして、この場合において、シラン変性エチレン系重合体の密度を特定のものとしたことにより、従来よりも優れた柔軟性を有する。これにより、導体サイズの大径化にも対応することができる。
この場合、シラン非変性エチレン系重合体が、エチレン−エチルアクリレート共重合体およびエチレン−ビニル酢酸共重合体から選択される1種または2種以上であると、さらに優れた柔軟性を有する。また、ポリプロピレン系重合体が、ポリプロピレンの結晶相とエチレンプロピレンゴムの非晶相とを有するポリプロピレン系熱可塑性エラストマーであると、さらに優れた柔軟性を有する。
そして、さらに、シラン変性エチレン系重合体が、折りたたみラメラ結晶構造を持つ、密度0.875g/cm以下のシラン変性エチレン系重合体であると、より優れた耐ガソリン性を満足することができる。
そして、本発明に係る他の難燃性組成物によれば、シラン変性エチレン系重合体を含有する重合体成分とシラン架橋触媒とを含有し、シラン架橋エチレン系重合体を含有するものとすることができ、さらに、フェノール系酸化防止剤と金属不活性化剤とを含有するため、例えば自動車のエンジンルーム等の高温環境下において使用される絶縁電線に要求されるほどの優れた耐熱性を有することができる。そして、この場合において、シラン非変性エチレン系重合体を、エチレン−エチルアクリレート共重合体およびエチレン−ビニル酢酸共重合体から選択される1種または2種以上としたことにより、従来よりも優れた柔軟性を有する。これにより、導体サイズの大径化にも対応することができる。
また、本発明に係るさらに他の難燃性組成物によれば、シラン変性エチレン系重合体を含有する重合体成分とシラン架橋触媒とを含有し、シラン架橋エチレン系重合体を含有するものとすることができ、さらに、フェノール系酸化防止剤と金属不活性化剤とを含有するため、例えば自動車のエンジンルーム等の高温環境下において使用される絶縁電線に要求されるほどの優れた耐熱性を有することができる。そして、この場合において、ポリプロピレン系重合体を、ポリプロピレンの結晶相とエチレンプロピレンゴムの非晶相とを有するポリプロピレン系熱可塑性エラストマーとしたことにより、従来よりも優れた柔軟性を有する。これにより、導体サイズの大径化にも対応することができる。
そして、本発明に係る絶縁電線によれば、上記の難燃性組成物がシラン架橋されたシラン架橋難燃性組成物からなる絶縁体が電線導体の外周を被覆してなることから、耐熱性および柔軟性に優れる。これにより、導体サイズの大径化にも対応することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係る難燃性組成物は、シラン変性エチレン系重合体と、シラン非変性エチレン系重合体と、ポリプロピレン系重合体と、を含有する重合体成分と、金属水酸化物と、フェノール系酸化防止剤と、金属不活性化剤と、シラン架橋触媒と、を含有する。
シラン変性エチレン系重合体は、アルコキシ基、ハロゲン基などの加水分解性基がケイ素原子に結合した活性シラン基を含む基をエチレン系重合体にグラフトしたものからなる。エチレン系重合体は、エチレンの単独重合体または共重合体であり、共重合成分としては、プロピレン、ブテン、オクテンなどのαオレフィンや、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
エチレン系重合体としては、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体などのエチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体などのエチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体などのエチレン−メタクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン、メタロセン超低密度ポリエチレンなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
シラン変性エチレン系重合体は、柔軟性に優れるなどの観点から、密度が0.875g/cm以下であることが好ましい。より好ましくは密度が0.870g/cm以下である。低密度のものは、非晶構造の量が多くなり、弾性率が低くなり、柔軟性を高める。特定の密度を有するシラン変性エチレン系重合体を得るには、例えば特定の密度を有するエチレン系重合体をシラン変性すればよい。
また、シラン変性エチレン系重合体は、耐ガソリン性に優れるなどの観点から、折りたたみラメラ結晶構造を持つものが好ましい。そして、柔軟性、耐ガソリン性に優れるなどの観点から、折りたたみラメラ結晶構造を持つ、密度が0.875g/cm以下のものが好ましい。折りたたみラメラ結晶構造を持つエチレン系重合体においては、半結晶性の部分(ラメラ)と非晶質の部分(アモルファス)とが存在する。非晶質の部分(アモルファス)は、折りたたみラメラ結晶構造間に存在する。折りたたみラメラ結晶構造を持つことで、結晶構造が崩れにくい結果、非晶質の部分へのガソリン浸透量が低減する。これにより、優れた耐ガソリン性を有するものと推察される。
活性シラン基を含む基をエチレン系重合体にグラフトするには、例えばエチレン系重合体にシランカップリング剤をグラフトするとよい。シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシランなどのビニルアルコキシシランや、ノルマルヘキシルトリメトキシシラン、ビニルアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。シランカップリング剤は、架橋密度、成形品の外観などの観点から、エチレン系重合体100質量部に対し、0.5〜5質量部を添加することが好ましい。
シランカップリング剤とエチレン系重合体の反応に際しては、ラジカル発生剤を用いることができる。ラジカル発生剤としては、ジクミルパーオキサイド(DCP)、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ブチルパーアセテート、tert−ブチルパーベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサンなどが挙げられる。好ましくは、ジクミルパーオキサイド(DCP)である。ラジカル発生剤は、架橋密度、成形品の外観などの観点から、エチレン系重合体100質量部に対し、0.025〜0.1質量部を添加することが好ましい。
シラン変性エチレン系重合体は、柔軟性の観点から、弾性率が70MPa以下であることが好ましい。より好ましくは50MPa以下である。この場合の弾性率は、シラン架橋前のシラン変性エチレン系重合体の弾性率であり、JIS K 7161に準拠して測定される。
シラン非変性エチレン系重合体は、金属水酸化物、フェノール系酸化防止剤、金属不活性化剤、シラン架橋触媒などをシラン変性エチレン系重合体と混合する際の分散性を高めるために用いられる。シラン非変性エチレン系重合体は、シラン変性エチレン系重合体との相溶性に優れるなどの観点からいうと、シラン変性エチレン系重合体のエチレン系重合体と同じエチレン系重合体を用いることが好ましいが、他の観点から、シラン変性エチレン系重合体のエチレン系重合体と異なるエチレン系重合体であってもよい。
シラン非変性エチレン系重合体としては、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体などのエチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体などのエチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体などのエチレン−メタクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン、メタロセン超低密度ポリエチレンなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
シラン非変性エチレン系重合体としては、耐熱性を低下させずに柔軟性を高めるなどの観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体が好ましい。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。柔軟性を高めるだけの観点からいえば、EEA、EVA以外の、密度が0.875g/cm以下のエチレン系重合体を用いればよいが、このものは、高密度のエチレン系重合体と比べて低融点である。シラン非変性エチレン系重合体はシラン変性エチレン系重合体と異なりシラン架橋の際に架橋されないため、柔軟性を求めると耐熱性を低下させる。よって、シラン非変性エチレン系重合体としては、耐熱性、柔軟性の観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体が好ましい。
そして、より柔軟性に優れるなどの観点からいえば、エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有量が多いほうが好ましい。例えば酢酸ビニル含有量が12質量%以上であることが好ましい。より好ましくは14質量%以上である。酢酸ビニル含有量は、JIS K7192:1999に準拠して測定することができる。また、同様の観点から、エチレン−アクリル酸エチル共重合体においても、アクリル酸エチル含有量が多いほうが好ましい。例えば酢酸ビニル含有量が13質量%以上であることが好ましい。より好ましくは15質量%以上である。
シラン非変性エチレン系重合体は、柔軟性の観点から、弾性率が70MPa以下であることが好ましい。より好ましくは50MPa以下である。弾性率は、JIS K 7161に準拠して測定される。
ポリプロピレン系重合体は、ポリプロピレンの持つ耐ガソリン性から、耐ガソリン性を向上する。例えばシラン変性エチレン系重合体として密度が0.875g/cm以下のものを用いると、シラン変性エチレン系重合体の結晶性が低下して柔軟性を向上する反面、耐ガソリン性が低下する。ポリプロピレン系重合体は、低密度のシラン変性エチレン系重合体を用いたときに生じる耐ガソリン性の低下を抑えることができる。
ポリプロピレン系重合体としては、ポリプロピレン、プロピレン−αオレフィン共重合体、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリプロピレン系重合体としては、ポリプロピレンの持つ耐ガソリン性を低下させずに柔軟性を向上できるなどの観点から、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーは、ポリプロピレンの結晶相とエチレンプロピレンゴムの非晶相とを有する熱可塑性エラストマーである。ポリプロピレンの結晶相を有することで、耐ガソリン性に優れ、エチレンプロピレンゴムの非晶相を有することで、柔軟性に優れる。ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーは、ポリプロピレンのマトリックスにエチレンプロピレンゴムが微分散したものであり、エチレンプロピレンゴムが持つゴム弾性が均質に作用することでポリプロピレンの持つ耐ガソリン性を低下させずに柔軟性を向上できる。ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーは、ブロックコポリマーであってもよいし、エチレンプロピレンゴムとポリプロピレン樹脂のブレンドであってもよい。エチレンプロピレンゴムとしては、エチレンプロピレン二元系ゴム(EPR)、エチレンプロピレンジエン三元系ゴム(EPDM)が挙げられる。
ポリプロピレン系重合体は、柔軟性の観点から、弾性率が70MPa以下であることが好ましい。より好ましくは50MPa以下である。弾性率は、JIS K 7161に準拠して測定される。
重合体成分は、シラン変性エチレン系重合体、シラン非変性エチレン系重合体、ポリプロピレン系重合体、を含有していればよいが、これらから構成されていることが好ましい。これらの配合割合は、シラン変性エチレン系重合体40〜80質量部、シラン非変性エチレン系重合体15〜50質量部、ポリプロピレン系重合体5〜40質量部であることが好ましい。
金属水酸化物は、難燃性を高める。金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化バリウムなどが挙げられる。これらのうちでは、水酸化マグネシウムが好ましい。金属水酸化物は、重合体成分との相溶性などの観点から、シランカップリング剤や脂肪酸、ワックス等の表面処理剤により表面処理されていても良い。
金属水酸化物は、電線被覆材としての難燃性を確保するなどの観点から、重合体成分100質量部に対し、20質量部以上であることが好ましい。より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上である。また、電線被覆材としての押出加工性を確保する、柔軟性に優れるなどの観点から、重合体成分100質量部に対し、100質量部以下であることが好ましい。より好ましくは90質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下である。
フェノール系酸化防止剤は、耐熱性を高める。フェノール系酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることができる。また、モノフェノール系、ジフェノール系、トリフェノール系、及びポリフェノール系酸化防止剤を用いることができる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ,C7−C9側鎖アルキルエステル、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネート、3,3’,3”,5,5’5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トルイル)トリ−p−クレゾール、カルシウムジエチルビス[[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネート]、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[2−(3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピノキ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
フェノール系酸化防止剤は、耐熱性の向上などの観点から、重合体成分100質量部に対し、1.0質量部以上であることが好ましい。より好ましくは1.2質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上である。また、ブルームを抑えるなどの観点から、重合体成分100質量部に対し、20質量部以下であることが好ましい。より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
金属不活性化剤は、導体金属による熱老化を抑える。これにより、耐熱性を高める。金属不活性剤は、金属イオンと反応してキレート化合物等の不活性な物質を作る化合物や、金属表面に接触した際に金属表面を保護可能な化合物等を用いることができる。金属不活性剤としては、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール及びそのアシル化誘導体等のアミノトリアゾール系化合物、1,2,3−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物、デカメチレンカルボン酸ジサリチロイルヒドラジン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
金属不活性化剤は、耐熱性の向上などの観点から、重合体成分100質量部に対し、1.0質量部以上であることが好ましい。より好ましくは1.2質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上である。また、ブルームを抑えるなどの観点から、重合体成分100質量部に対し、20質量部以下であることが好ましい。より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
シラン架橋触媒としては、錫、亜鉛、鉄、鉛、コバルト、バリウム、カルシウム等の金属カルボン酸塩や、チタン酸エステル、有機塩基、無機酸、有機酸などが挙げられる。より具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫メルカプチド(ジブチル錫ビスオクチルチオグリコールエステル塩、ジブチル錫β−メルカプトプロピオン酸塩ポリマーなど)、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、酢酸第一錫、カプリル酸第一錫、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、チタン酸テトラブチルエステル、チタン酸テトラノニルエステル、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ピリジン、硫酸、塩酸、トルエンスルホン酸、酢酸、ステアリン酸、マレイン酸などが挙げられる。これらのうちでは、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫メルカプチドなどが好ましい。
シラン架橋触媒は、架橋密度などの観点から、重合体成分100質量部に対し、0.001質量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.002質量部以上、さらに好ましくは0.003質量部以上である。また、成形品の外観などの観点から、重合体成分100質量部に対し、0.600質量部以下であることが好ましい。より好ましくは0.500質量部以下、さらに好ましくは0.400質量部以下である。
本発明に係る難燃性組成物は、さらに、耐熱性の向上に貢献する他の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、硫黄系酸化防止剤、金属酸化物などが挙げられる。また、本発明に係る難燃性組成物は、本発明の特性を阻害しない範囲で、さらに他の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、紫外線吸収剤、加工助剤(ワックス、滑剤等)、難燃助剤、顔料などが挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、4−メルカプトメチルベンズイミダゾール、5−メルカプトメチルベンズイミダゾールなどやこれらの亜鉛塩が挙げられる。特に好ましいものは、2−メルカプトベンズイミダゾールおよびその亜鉛塩である。
金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。特に好ましいものは、2−メルカプトベンズイミダゾールとの組み合わせにおいて特に高い耐熱性向上効果を発揮するなどの観点から、酸化亜鉛である。
本発明に係る難燃性組成物において、好適な一実施形態は、シラン変性エチレン系重合体と、シラン非変性エチレン系重合体と、ポリプロピレン系重合体と、を含有する重合体成分と、金属水酸化物と、フェノール系酸化防止剤と、金属不活性化剤と、シラン架橋触媒と、を含有し、シラン変性エチレン系重合体が、密度0.875g/cm以下のシラン変性エチレン系重合体であるとするものである。これにより、耐熱性、柔軟性に優れる。この場合、シラン非変性エチレン系重合体が、エチレン−エチルアクリレート共重合体およびエチレン−ビニル酢酸共重合体から選択される1種または2種以上であることが好ましい。また、ポリプロピレン系重合体が、ポリプロピレンの結晶相とエチレンプロピレンゴムの非晶相とを有するポリプロピレン系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。さらに、シラン変性エチレン系重合体が、折りたたみラメラ結晶構造を持つ、密度0.875g/cm以下のシラン変性エチレン系重合体であることが好ましい。
また、本発明に係る難燃性組成物において、好適な他の実施形態は、シラン変性エチレン系重合体と、シラン非変性エチレン系重合体と、ポリプロピレン系重合体と、を含有する重合体成分と、金属水酸化物と、フェノール系酸化防止剤と、金属不活性化剤と、シラン架橋触媒と、を含有し、シラン非変性エチレン系重合体が、エチレン−エチルアクリレート共重合体およびエチレン−ビニル酢酸共重合体から選択される1種または2種以上であるとするものである。これにより、耐熱性、柔軟性に優れる。この場合、ポリプロピレン系重合体が、ポリプロピレンの結晶相とエチレンプロピレンゴムの非晶相とを有するポリプロピレン系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
また、本発明に係る難燃性組成物において、好適なさらに他の実施形態は、シラン変性エチレン系重合体と、シラン非変性エチレン系重合体と、ポリプロピレン系重合体と、を含有する重合体成分と、金属水酸化物と、フェノール系酸化防止剤と、金属不活性化剤と、シラン架橋触媒と、を含有し、ポリプロピレン系重合体が、ポリプロピレンの結晶相とエチレンプロピレンゴムの非晶相とを有するポリプロピレン系熱可塑性エラストマーであるとするものである。
本発明に係る難燃性組成物は、シラン変性エチレン系重合体と、シラン非変性エチレン系重合体と、ポリプロピレン系重合体と、を含有する重合体成分と、金属水酸化物と、フェノール系酸化防止剤と、金属不活性化剤と、シラン架橋触媒と、必要に応じて、他の添加剤を、バンバリミキサー、加圧ニーダー、混練押出機、二軸押出機、ロールなどの通常の混練機を用いて混練し、所定の形状に成形した後、シラン変性エチレン系重合体をシラン架橋する(水架橋する)ことにより得ることができる。各成分の配合量は、上記範囲内において適宜調整すると良い。
この場合、金属水酸化物には水分が比較的多く含まれることから、シラン変性エチレン系重合体がシラン架橋前に必要以上に加水分解されないようにするために、成形前の段階で予めシラン変性エチレン系重合体と金属水酸化物とを同じバッチに含有させないで、別々のバッチに含有させ、成形時に、シラン変性エチレン系重合体が含まれるバッチと金属水酸化物が含まれるバッチとを混合するとよい。また、シラン架橋触媒がシラン架橋前に必要以上に加水分解されないようにするために、成形前の段階で予めシラン架橋触媒と金属水酸化物とを同じバッチに含有させないで、別々のバッチに含有させ、成形時に、シラン架橋触媒が含まれるバッチと金属水酸化物が含まれるバッチとを混合するようにするとよい。さらに、シラン変性エチレン系重合体が成形前に必要以上にシラン架橋しないようにするために、成形前の段階で予めシラン変性エチレン系重合体とシラン架橋触媒とを同じバッチに含有させないで、別々のバッチに含有させ、成形時に、シラン変性エチレン系重合体が含まれるバッチとシラン架橋触媒が含まれるバッチとを混合するとよい。以上から、成形前の段階では、少なくとも、シラン変性エチレン系重合体と、金属水酸化物と、シラン架橋触媒と、を別々のバッチに含有させ、成形時に、これらを混合するとよい。
フェノール系酸化防止剤、金属不活性化剤、その他の添加剤などは、特に限定されるものではないが、金属水酸化物が含まれるバッチに含有すればよい。シラン非変性エチレン系重合体は、金属水酸化物、フェノール系酸化防止剤、金属不活性化剤、シラン架橋触媒などをシラン変性エチレン系重合体と混合する際の分散性を高めるために用いられることから、金属水酸化物が含まれるバッチ、シラン架橋触媒が含まれるバッチに分散すればよい。また、シラン変性エチレン系重合体が含まれるバッチに含有させてもよい。ポリプロピレン系重合体は、特に限定されるものではないが、金属水酸化物が含まれるバッチに含有させればよい。
本発明に係る難燃性組成物は、所定の形状に成形した後、シラン架橋(水架橋)を行う。
次に、本発明に係る絶縁電線について説明する。
本発明に係る絶縁電線は、本発明に係る難燃性組成物がシラン架橋されたシラン架橋難燃性組成物からなる絶縁体が電線導体の外周を被覆してなる。電線導体の材料としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などが挙げられる。
本発明に係る難燃性組成物は、耐熱性および柔軟性に優れることから、これを用いた本発明に係る絶縁電線は、大電流化、大電圧化などにより、導体サイズを従来よりも大きくする場合に好適に用いることができる。シラン架橋後の絶縁体は、柔軟性の観点から、JIS K 7161に準拠して測定されるセカントモジュラスが70MPa以下であることが好ましい。より好ましくは60MPa以下、さらに好ましくは50MPa以下である。
本発明に係る難燃性組成物において、例えばシラン変性エチレン系重合体の密度を0.875g/cm以下とするか、シラン非変性エチレン系重合体をEVAあるいはEEAとするか、ポリプロピレン系重合体をポリプロピレン系熱可塑性エラストマーとすることにより、シラン架橋後の絶縁体のセカントモジュラスを70MPa以下にすることができる。また、これらを全て組み合わせることにより、シラン架橋後の絶縁体のセカントモジュラスを50MPa以下にすることができる。
本発明に係る絶縁電線は、自動車のエンジンルームなどに配策される場合には、耐ガソリン性(耐油性)に優れることが好ましい。本発明に係る難燃性組成物を用いた本発明に係る絶縁電線は、耐ガソリン性に優れるものであるが、シラン変性エチレン系重合体が、折りたたみラメラ結晶構造を持つ、密度0.875g/cm以下のシラン変性エチレン系重合体であると、より厳しい条件の耐ガソリン性にも優れるものとなる。
以下に本発明の実施例、比較例を示す。なお、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
(供試材料)
・エチレン系重合体(1)[デュポン ダウ エラストマー ジャパン製「ENGAGE8100」、エチレン−オクテン共重合体、房状ミセル構造を持つ、密度0.870g/cm
・エチレン系重合体(2)[デュポン ダウ エラストマー ジャパン製「INFUSE9107」と「INFUSE9100」の50:50混合物(質量比)、エチレン−オクテン共重合体、折りたたみラメラ結晶構造を持つ、密度0.870g/cm
・エチレン系重合体(3)[デュポン ダウ エラストマー ジャパン製「ENGAGE8003」、エチレン−オクテン共重合体、房状ミセル構造を持つ、密度0.885g/cm
・エチレン系重合体(4)[三井・デュポンポリケミカル製「エバフレックスEV560」、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)]
・エチレン系重合体(5)[日本ユニカー製「NUCEERN−023」、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)]
・エチレン系重合体(6)[デュポン ダウ エラストマー ジャパン製「ENGAGE8540」、エチレン−オクテン共重合体、密度0.908g/cm
・ポリプロピレン系重合体(1)[サントプレーン製「Adflex C200」、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマー]
・ポリプロピレン系重合体(2)[日本ポリプロ製「ノバテックPP MA3」]
・水酸化マグネシウム[協和化学製「キスマ5」]
・フェノール系酸化防止剤[BASF製「イルガノックス1010」]
・金属不活性化剤[アデカ製「CDA−1」]
・シラン架橋触媒(ジブチル錫ジラウレート)
・シランカップリング剤[東レダウコーニング製「SZ6300」]
・ジクミルパーオキサイド(DCP)[日本油脂製「パークミルD」]
(シラン変性エチレン系重合体(1)の合成)
エチレン系重合体(1)(「ENGAGE8100」、密度0.870g/cm)60質量部と、シランカップリング剤0.35質量部と、ラジカル発生剤(ジクミルパーオキサイド)0.07質量部と、を2軸押出混練機に加え、200℃で0.1〜2分間加熱混練した後、ペレット化して、シランカップリング剤がエチレン系重合体(1)にグラフトされたシラン変性エチレン系重合体(1)を得た。このシラン変性エチレン系重合体(1)の密度は0.870g/cmであった。
(シラン変性エチレン系重合体(2)〜(3)の合成)
エチレン系重合体(1)に代えてエチレン系重合体(2)、エチレン系重合体(3)をそれぞれ用いた以外はシラン変性エチレン系重合体(1)の合成と同様にして、シラン変性エチレン系重合体(2)〜(3)をペレットとしてそれぞれ得た。シラン変性エチレン系重合体(2)の密度は0.870g/cmであり、シラン変性エチレン系重合体(3)の密度は0.885g/cmであった。
(難燃性組成物の調製)
シラン変性エチレン系重合体からなるバッチ(A)と、シラン非変性エチレン系重合体(エチレン系重合体(4)〜(6)のいずれか)およびポリプロピレン系重合体に対し金属水酸化物とフェノール系酸化防止剤と金属不活性化剤とを配合したバッチ(B)と、シラン非変性エチレン系重合体(エチレン系重合体(4)〜(6)のいずれか)に対しシラン架橋触媒を配合したバッチ(C)と、を別々に調製(ペレット化)し、バッチ(A)〜(C)を混練することにより、難燃性組成物を調製した。
(絶縁電線の作製)
バッチ(A)〜(C)を押出機のホッパーで混合し、押出機の温度を約180℃〜200℃に設定して、押出加工を行った。外径2.3mmの導体上に厚さ0.4mmの絶縁体として難燃性組成物を押出被覆した(被覆外径3.1mm)。その後、60℃、90%湿度の高湿高温槽で24時間水架橋処理を施して絶縁電線を作製した。
難燃性組成物の配合組成(質量部)および作製した絶縁電線の特性評価(柔軟性、耐ガソリン性)を表1に示す。
(柔軟性:セカントモジュラス)
作製した絶縁電線から電線導体を抜き取り、JIS K 7161に準拠して絶縁被覆(絶縁体)の引張試験を行った。引張速度=50mm/分、標線間距離=25mm、温度=23℃で引張試験を行った後、応力−伸び曲線から伸びが100%となる点の弾性率を計算した。
(耐ガソリン性)
ISO6722 method1
作製した絶縁電線から600mmの試料を準備し、ISO1817に規定されるガソリン(液体C)に試料を120℃で240時間浸漬した後、取り出して表面を拭い、耐圧試験(試験条件:AC1000V 1分)を行った。その結果、電線導体が露出しなかったものを合格「○」、絶縁破壊により電線導体が露出したものを不合格「×」とした。
ISO6722 method2
作製した絶縁電線から600mmの試料を準備し、ISO1817に規定されるガソリン(液体C)に試料を23±5℃で20時間浸漬した後、取り出して表面を拭い、室温で30分乾燥後、5分以内に絶縁電線の外径を測定し、下記の式(1)に示す外径変化率が15%以下のものを合格「○」、外径変化率が15%を超えるものを不合格「×」とした。
(式1)
外径変化率=(浸漬後の外径−浸漬前の外径)/(浸漬前の外径)×100(%)
Figure 2015193689
実施例5では、難燃性組成物の重合体成分として含有するシラン変性エチレン系重合体の密度を従来よりも低いものとしている。実施例6では、難燃性組成物の重合体成分として含有するシラン非変性エチレン系重合体としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を用いている。実施例7では、難燃性組成物の重合体成分として含有するポリプロピレン系重合体としてポリプロピレン系熱可塑性エラストマーを用いている。このため、実施例5〜7では、従来よりも柔軟性に優れるものとなっている。また、これらの結果から、シラン変性エチレン系重合体の改良、シラン非変性エチレン系重合体の改良、ポリプロピレン系重合体の改良のいずれか2つの組み合わせによっても、従来よりも柔軟性に優れるものとなることは容易に推察できる。そして、実施例1〜4では、シラン変性エチレン系重合体の改良、シラン非変性エチレン系重合体の改良、および、ポリプロピレン系重合体の改良を行ったものであり、特に柔軟性に優れることがわかる。
実施例1,2から、シラン変性エチレン系重合体の密度を従来よりも低いものとしたことにより、耐ガソリン性の評価として示されるISO6722 method1は満足するものの、これよりも厳しい試験条件であるISO6722 method2は満足しない結果となっている。しかし、実施例3,4から、折りたたみラメラ結晶構造を持つ、密度0.875g/cm以下のシラン変性エチレン系重合体を用いることで、より厳しい試験条件であるISO6722 method2を満足することとなった。なお、実施例1,2のシラン変性エチレン系重合体は、折りたたみラメラ結晶構造を持つものではなく、房状ミセル結晶構造を持つものである。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。

Claims (9)

  1. シラン変性エチレン系重合体と、シラン非変性エチレン系重合体と、ポリプロピレン系重合体と、を含有する重合体成分と、金属水酸化物と、フェノール系酸化防止剤と、金属不活性化剤と、シラン架橋触媒と、を含有し、前記シラン変性エチレン系重合体が、密度0.875g/cm以下のシラン変性エチレン系重合体であることを特徴とする難燃性組成物。
  2. 前記シラン非変性エチレン系重合体が、エチレン−エチルアクリレート共重合体およびエチレン−ビニル酢酸共重合体から選択される1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性組成物。
  3. 前記ポリプロピレン系重合体が、ポリプロピレンの結晶相とエチレンプロピレンゴムの非晶相とを有するポリプロピレン系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性組成物。
  4. 前記シラン変性エチレン系重合体が、折りたたみラメラ結晶構造を持つ、密度0.875g/cm以下のシラン変性エチレン系重合体であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の難燃性組成物。
  5. シラン変性エチレン系重合体と、シラン非変性エチレン系重合体と、ポリプロピレン系重合体と、を含有する重合体成分と、金属水酸化物と、フェノール系酸化防止剤と、金属不活性化剤と、シラン架橋触媒と、を含有し、前記シラン非変性エチレン系重合体が、エチレン−エチルアクリレート共重合体およびエチレン−ビニル酢酸共重合体から選択される1種または2種以上であることを特徴とする難燃性組成物。
  6. シラン変性エチレン系重合体と、シラン非変性エチレン系重合体と、ポリプロピレン系重合体と、を含有する重合体成分と、金属水酸化物と、フェノール系酸化防止剤と、金属不活性化剤と、シラン架橋触媒と、を含有し、前記ポリプロピレン系重合体が、ポリプロピレンの結晶相とエチレンプロピレンゴムの非晶相とを有するポリプロピレン系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする難燃性組成物。
  7. 前記重合体成分が、前記シラン変性エチレン系重合体40〜80質量部と、前記シラン非変性エチレン系重合体15〜50質量部と、前記ポリプロピレン系重合体5〜40質量部と、からなり、該重合体成分100質量部に対し、前記金属水酸化物20〜100質量部、フェノール系酸化防止剤1〜20質量部、金属不活性化剤1〜20質量部、シラン架橋触媒1〜20質量部であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の難燃性組成物。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載の難燃性組成物がシラン架橋されたシラン架橋難燃性組成物からなる絶縁体が電線導体の外周を被覆してなることを特徴とする絶縁電線。
  9. 前記絶縁体は、JIS K 7161に準拠して測定されるセカントモジュラスが70MPa以下であることを特徴とする請求項8に記載の絶縁電線。
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