JP2015189777A - エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】エポキシ樹脂、ポリチオール化合物及び硬化促進剤を含む組成物であって、速硬化性と保存安定性を両立させるポリチオール化合物を含むエポキシ樹脂組成物の提供。【解決手段】(A)〜(D)成分を含み、(B)成分の酸価が0.1mg/g未満であり、(A)成分100質量部に対して(B)成分を35〜85質量部かつ(D)成分を0.01〜5.0質量部含むエポキシ樹脂組成物。(A)成分:エポキシ樹脂(B)成分:1分子中にチオール基を側鎖とするプロピル基を2以上有する化合物(C)成分:硬化促進剤(D)成分:反応抑制剤【選択図】なし

Description

本発明は、保存安定性と速硬化性を両立するエポキシ樹脂組成物に関するものである。
特許文献1には、エポキシ樹脂、チオール化合物、潜在性硬化剤の組成物にホウ酸エステル化合物を添加することで保存安定性が良好である発明が記載されている。当該チオール化合物は「−CHCHSH」という構造を有する1級のチオールについて記載があるのみである。
特許文献2には、「−CHCHCHSH」という構造を有する2級のチオールを含んだエポキシ樹脂について記載がある。しかしながら、臭気を低減する旨が記載されているだけで保存安定性に関する記載は無い。
特開平11−256013号公報 特開2010−229258号公報
従来は、エポキシ樹脂、ポリチオール化合物および硬化促進剤を含む組成物は、速硬化性を有するものの、保存安定性に問題があり、速硬化性と保存安定性を両立させることが困難であった。
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討した結果、速硬化性と保存安定性を両立したポリチオール化合物を含むエポキシ樹脂組成物に関する本発明を完成するに至った。
本発明の要旨を次に説明する。本発明の第一の実施態様は、(A)〜(D)成分を含み、(B)成分の酸価が0.1mg/g未満であり、(A)成分100質量部に対して(B)成分を35〜85質量部かつ(D)成分を0.01〜5.0質量部含むエポキシ樹脂組成物である。
(A)成分:エポキシ樹脂
(B)成分:1分子中に下記式1の官能基を2以上有する化合物
(C)成分:硬化促進剤
(D)成分:反応抑制剤
本発明の第二の実施態様は、(C)成分が、エポキシアダクト型硬化促進剤を含む第一の実施態様に記載のエポキシ樹脂組成物である。
本発明の第三の実施態様は、さらに、(E)成分として粉体表面に炭化水素基が付加したヒュームドシリカ粉を含む第一または第二の実施態様のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物である。
本発明の第四の実施態様は、(D)成分が、トリブチルボレ−ト、トリメトキシボロキシン、燐酸およびp−トルエンスルホン酸の中から少なくとも1つ選択される第一から第三の実施態様のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物である。
本発明では、特定の酸価のポリチオールと反応抑制剤を用いることで、速硬化性と保存安定性を両立させるポリチオール化合物を含むエポキシ樹脂組成物を可能にする。
本発明の詳細を次に説明する。本発明に使用することができる(A)成分は、下記の(B)成分を含まないエポキシ樹脂である。好ましくは、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物である。1種類だけ使用しても2種類以上を混合して使用しても良く、25℃で液状であれば、25℃で固形のエポキシ樹脂を25℃で液状のエポキシ樹脂に溶解させて使用しても良い。塩素イオン濃度は全塩素量が1000ppm以下であることが好ましく、さらに好ましくは、700ppm以下である。1000ppm以下であると保存安定性を維持することができる。
(A)成分の具体例としては、エピクロルヒドリンとビスフェノール類などの多価フェノール類や多価アルコールとの縮合によって得られるもので、例えばビスフェノールA型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、ノボラック型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型、テトラフェニロールエタン型などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を例示することができる。その他エピクロルヒドリンとフタル酸誘導体や脂肪酸などのカルボン酸との縮合によって得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとアミン類、シアヌル酸類、ヒダントイン類との反応によって得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、さらには様々な方法で変性したエポキシ樹脂を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
市販されているエポキシ樹脂としては、三菱化学株式会社製827、828EL等、大日本インキ工業株式会社製のEPICLON830、EXA−835LV等が挙げられる。東都化成株式会社製エポトートYD−128、YDF−170等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。価格面を考慮すると、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格を有するエポキシ樹脂が好ましい。
本発明で使用することができる(B)成分は、1分子中に下記式1の官能基を2以上有する化合物である。(B)成分は保存安定性に与える影響を考慮すると、酸価が0.1mg/g未満であることが好ましい。酸価とは、油脂の精製および変質の指標となる数値で、油脂1g中に存在する遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数を酸価として定義している。酸価を低減する処理としては、蒸留水による樹脂の洗浄等があるがこれらに限定されるものではない。酸価を低減させる処理を行っていない(B)成分は酸価が0.1mg/gより大きい数値を示す。明確な理由は判明していないが、本発明においては酸価が0.1mg/g未満であると保存性安定性が向上する。
(B)成分の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。商品としては、カレンズMT(商標登録)シリーズのPE1、BD1、NR1などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(A)成分100質量部に対して、(B)成分35〜85質量部が添加されることが好ましく、さらに好ましくは(B)成分が35〜65質量部である。(B)成分が35質量部以上である場合は速攻化性を維持することができる。一方、(B)成分が85質量部以下である場合は保存安定性が維持される。
本発明で使用することができる(C)成分としては、(A)成分と(B)成分の反応を促進させる硬化促進剤である。硬化促進剤は室温において固体のものであり、固形のイミダゾール骨格を有する化合物やエポキシ樹脂に三級アミンを付加させて反応を途中で止めているエポキシアダクト化合物を粉砕した微粉末などを使用することが、保存安定性と硬化性を考慮すると最も好ましい。市販されているエポキシアダクト系化合物としては、味の素ファインテクノ株式会社製のアミキュアシリーズや、株式会社T&K TOKA製のフジキュアシリーズや旭化成ケミカルズ株式会社製のノバキュアシリーズなどが挙げられる。また、室温において液状の硬化促進剤として、有機リン系化合物、有機アミン系化合物、イミダゾール誘導体系化合物などが知られている。また、場合によっては硬化促進剤を複数組み合わせて使用することもできる。
(A)成分100質量部に対して、(C)成分の添加量は1〜30質量部が好ましい。(B)成分が1質量部より多い場合は硬化性を発現し、30質量部より少ない場合は保存安定性を維持することができる。
本発明で使用することができる(D)成分としては、(C)成分の反応性を抑制する抑制剤である。(D)成分としては、ホウ酸エステル、燐酸、アルキルリン酸エステル、p−トルエンスルホン酸を使用することができる。ホウ酸エステルとしては、トリブチルボレ−ト、トリメトキシボロキシン、ホウ酸エチル、エポキシ−フェノール−ホウ酸エステル配合物(四国化成工業株式会社製 キュアダクト L−07N)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。アルキルリン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリブチルなどを使用することができるが、これらに限定されるものではない。(D)成分は単独でも複数を混合して使用しても良い。保存安定性を考慮すると、トリブチルボレ−ト、2,4,6−トリメトキシボロキシン、燐酸、p−トルエンスルホン酸で有ることが好ましい。
(A)成分100質量部に対して、(D)成分の添加量は0.01〜5.0質量部が好ましい。(D)成分が0.01質量部より多い場合は保存安定性を発現し、5.0質量部より少ない場合は硬化性を維持することができる。
本発明で使用することができる(E)成分としては、充填剤である。(E)成分としては、無機充填剤や有機充填剤に分類される。無機充填剤として、金属粉、アルミナ粉、炭酸カルシウム粉、タルク粉、シリカ粉、ヒュームドシリカ等が挙げられ、有機充填剤としては、アクリル粒子、ゴム粒子、スチレン粒子などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。充填剤を添加することで粘度やチクソ性を制御することができると共に、強度の向上を計ることができる。平均粒径や形状などの粉体特性については特に限定はないが、エポキシ樹脂への分散のし易さとノズル詰まりを考慮すると、平均粒径は0.001〜50μmが好ましい。特に、粉体表面に炭化水素基が付加したヒュームドシリカ粉を添加することが好ましく、添加することでチクソ性を付与すると共に保存安定性も維持される。粉体表面に炭化水素基が付加したヒュームドシリカ粉の具体例としては、日本アエロジル株式会社製のAEROSIL R805などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(A)成分100質量部に対して、(E)成分の添加量は0.1〜100質量部が好ましい。(E)成分が0.1質量部より多い場合は流動性を安定化すると共に作業性を向上することができ、100質量部より少ない場合は保存安定性を維持することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、本発明の所期の効果を損なわない範囲において、顔料、染料などの着色剤、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤、消泡剤、シラン系カップリング剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤等の添加剤を適量配合しても良い。これらの添加により、樹脂強度・接着強さ・作業性・保存性等に優れた組成物およびその硬化物が得られる。
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。(以下、エポキシ樹脂組成物を組成物と呼ぶ。)
組成物を調製するために下記成分を準備した。
(A)成分:エポキシ樹脂
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂(EPICLON EXA−835LV DIC株式会社製)
・クレゾールノボラック型の高耐熱多官能エポキシ樹脂(EPICLON N−655−EXP−S DIC株式会社製)
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂(jER807 三菱化学株式会社製)
(B)成分:酸価が0.1mg/g未満の1分子中に式1の官能基を2以上有する化合物
・ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(酸価:0.05mg/g)(カレンズMT(登録商標)PE1 昭和電工株式会社製)
(B’)成分:(B)成分以外の1分子中に式1の官能基を2以上有する化合物
・ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(酸価:0.10mg/g)(カレンズMT(登録商標)PE1 昭和電工株式会社製)
・ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(酸価低減の処理無し)(PEMP SC有機化学株式会社製)
(C)成分:硬化促進剤
・エポキシアダクト型硬化促進剤(フジキュアFXR−1081 株式会社T&K TOKA製)
・エポキシアダクト型硬化促進剤(固形分30〜40質量%)(ノバキュアHX−3722 旭化成イーマテリアルズ株式会社製)
(D)成分:反応抑制剤
・トリブチルボレ−ト(試薬)
・トリメトキシボロキシン(試薬)
・燐酸(試薬)
・p−トルエンスルホン酸(試薬)
・エポキシ−フェノール−ホウ酸エステル配合物(キュアダクトL−07N 四国化成工業株式会社製)
・ホウ酸エチル(試薬)
・リン酸トリメチル(試薬)
・リン酸トリブチル(試薬)
(E)成分:シリカ粉
・粉体表面に炭化水素基が付加したヒュームドシリカ粉(一次粒子の平均径12nm)(AEROSIL R805 日本アエロジル株式会社製)
実施例1〜7および比較例1〜5を調整する。(A)成分、(B)成分(または(B’)成分)、(D)成分を攪拌釜に秤量し、攪拌器で1時間攪拌を行う。その後、(C)成分を秤量して、30分間攪拌を行う。詳細な調製量は表1に従い、数値は全て質量部で表記する。
実施例1〜7および比較例1〜5について、硬化性確認、保存安定性確認、接着強度測定、耐湿性試験を行い、その結果を表2にまとめた。
[硬化性確認]
60℃に設定したホットプレート上に組成物を滴下して、先端が尖った棒を組成物に接触させてタックが無くなる状態、つまり硬化するまでの時間をタイマーで測定する。下記の評価基準に従い「硬化性」を評価する。硬化性は15分未満である「◎」であることが好ましい。
評価基準
◎:15分未満
○:15分以上30分未満
×:30分以上
[保存安定性確認]
循環高温槽を用いて25℃に調整したコーンプレート型回転粘度計(E型粘度計)を用いる。組成物を0.4cc採取して、サンプルカップの中心部に吐出する。サンプルカップを本体に取り付け測定を行い、「初期粘度(Pa・s)」とする。その後、組成物を25℃雰囲気下に放置して、5日後、10日後、30日後で再度粘度測定を行う。その時の粘度が「初期粘度」の2倍以上になるところを確認する。下記の評価基準に従い、「保存安定性」を評価する。本発明では、「◎」または「○」であることが好ましい。
測定条件
コーンローター:3°×R14
回転速度:50rpm
測定時間:3分
評価基準
◎:30日以上
○:10日以上30日未満
△:5日以上10日未満
×:5日未満
[接着強度測定]
厚さ16mm×幅25mm×長さ100mmのSPCC−SDを2枚用いて、一方に組成物を均一に広げて、もう一方に25mm×10mmの接着面積で貼り合わせて、動かない様に固定した状態で熱風乾燥炉により60℃雰囲気下で30分で組成物を硬化させてテストピースを作成する。テストピースの温度が室温に戻った後、引張強度試験器により引張方向に引張速度10mm/minでテストピースを引っ張って、最大荷重を測定する。最大荷重と接着面積から「接着強度(MPa)」を計算し、下記の評価基準で評価を行う。試験の詳細はJISK8681に従う。本発明では、10MPa以上であることが好ましい。
評価基準
○:10MPa以上
×:10MPa未満
[耐湿性試験]
上記の接着強度測定と同様にテストピースを作成し、初期の接着強度を測定した後で、残りのテストピースを85℃×85%RH雰囲気下に放置する。100時間毎に接着強度を測定し、初期の接着強度の50%に低下するまで測定を行い、下記の評価基準で評価を行う。
評価基準
○:50%に低下するまでの時間が500時間以上
×:50%に低下するまでの時間が500時間未満
酸価の異なるポリチオール化合物を使用した実施例1、比較例4と5を比較すると、酸価が0.1mg/g未満である実施例1が保存安定性が良好である。実施例1、実施例5、比較例1の比較から(B)成分の添加量は(A)成分100質量部に対して(B)成分を35〜85質量部添加することが最適であることが分かると共に、実施例1、比較例2と3の比較から(A)成分100質量部に対して(D)成分を0.01〜5.0質量部添加することが最適であり、硬化性と保存安定性を両立することができる。
(D)成分を変更した参考1〜8を調整する。(A)成分、(B)成分(または(B’)成分)、(D)成分を攪拌釜に秤量し、攪拌器で1時間攪拌を行う。その後、(C)成分を秤量して、30分間攪拌を行う。詳細な調製量は表3に従い、数値は全て質量部で表記する。参考1〜8について、硬化性確認、保存安定性確認、接着強度測定を行う。その結果を表4にまとめた。
反応抑制剤の中でも、本発明で最適な反応抑制剤としては、参考例1〜4に記載のトリブチルボレート、トリメトキシボロキシン、燐酸、p−トルエンスルホン酸が最も好ましく25℃雰囲気下で30日以上にわたり「初期粘度」の2倍以下に抑制された。
エポキシ樹脂と硬化剤としてポリチオール化合物の配合系は速硬化性と保存安定性を両立させる事が難しかったが、本発明では両特性を両立させることを可能にする。そのため、一液型であることから取扱性が良好であると共に、塗布時においても増粘することが無く、安定した吐出を可能とする。そのため、被着体が熱に弱い部材であって低温硬化性を必要とする部位にも使用が可能である。

Claims (4)

  1. (A)〜(D)成分を含み、(B)成分の酸価が0.1mg/g未満であり、(A)成分100質量部に対して(B)成分を35〜85質量部かつ(D)成分を0.01〜5.0質量部含むエポキシ樹脂組成物。
    (A)成分:エポキシ樹脂
    (B)成分:1分子中に下記式1の官能基を2以上有する化合物
    (C)成分:硬化促進剤
    (D)成分:反応抑制剤
  2. (C)成分が、エポキシアダクト型硬化促進剤を含む請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. さらに、(E)成分として粉体表面に炭化水素基が付加したヒュームドシリカ粉を含む請求項1または2のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. (D)成分が、トリブチルボレ−ト、トリメトキシボロキシン、燐酸およびp−トルエンスルホン酸の中から少なくとも1つ選択される請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
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