JP2015189232A - 光透過性積層フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】断熱性に優れるとともに金属酸化物薄膜の基材フィルムへの密着性にも優れる光透過性積層フィルムを提供する。
【解決手段】ポリオレフィンフィルム12の面上に、ゾル―ゲル法により形成された金属酸化物薄膜14aと金属薄膜14bとをこの順に有し、ポリオレフィンフィルム12と金属酸化物薄膜14aとの間のJIS Z0237に準拠して行われる引張速度300mm/分での180°剥離試験により測定される密着力が3.0N/25mm以上である光透過性積層フィルム10とする。
【選択図】図1
【解決手段】ポリオレフィンフィルム12の面上に、ゾル―ゲル法により形成された金属酸化物薄膜14aと金属薄膜14bとをこの順に有し、ポリオレフィンフィルム12と金属酸化物薄膜14aとの間のJIS Z0237に準拠して行われる引張速度300mm/分での180°剥離試験により測定される密着力が3.0N/25mm以上である光透過性積層フィルム10とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、遮熱断熱性に優れる光透過性積層フィルムに関するものである。
ビル・住宅等の建築物の窓ガラスや自動車等の車両の窓ガラスなどには日射を遮蔽する目的で遮熱性を有する光透過性積層フィルムが施工されることがある。この種の光透過性積層フィルムとしては、透明高分子フィルムの面に金属酸化物層と金属層とが交互に積層されたものなどが知られている。
光透過性積層フィルムにおいて、基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を用いると、基材フィルムが赤外線を吸収して断熱性が低下する問題がある。これに対し、赤外線を吸収しにくいポリオレフィンフィルムを基材フィルムとして用いると、基材フィルムの面に金属酸化物薄膜をゾル−ゲル法によって直接形成することが困難で、金属酸化物薄膜の密着性が低く、剥離が生じやすい問題がある。
本発明が解決しようとする課題は、断熱性に優れるとともに金属酸化物薄膜の基材フィルムへの密着性にも優れる光透過性積層フィルムを提供することにある。
上記課題を解決するため本発明に係る光透過性積層フィルムは、ポリオレフィンフィルムの面上に、ゾル―ゲル法により形成された金属酸化物薄膜と金属薄膜とをこの順に有し、前記ポリオレフィンフィルムと前記金属酸化物薄膜との間のJIS Z0237に準拠して行われる引張速度300mm/分での180°剥離試験により測定される密着力が3.0N/25mm以上であることを要旨とするものである。
この場合、前記ポリオレフィンフィルムの前記金属酸化物薄膜を形成する面の原子組成比(O/C比)が0.08以上であることが好ましい。
前記金属酸化物薄膜が形成された面と反対のポリオレフィンフィルムの面上にはハードコート層が形成されていてもよい。この場合、ハードコート層は有機無機ハイブリッド材料からなることが好ましい。
本発明に係る光透過性積層フィルムによれば、基材フィルムがポリオレフィンフィルムであるため、断熱性に優れる。そして、ポリオレフィンフィルムと金属酸化物薄膜との間のJIS Z0237に準拠して行われる引張速度300mm/分での180°剥離試験により測定される密着力が3.0N/25mm以上であるため、金属酸化物薄膜の基材フィルムへの密着性にも優れる。
この場合、ポリオレフィンフィルムの金属酸化物薄膜を形成する面の原子組成比(O/C比)が0.08以上であることにより、ゾル―ゲル法により形成された金属酸化物薄膜の基材フィルムへの密着性に優れる。
そして、金属酸化物薄膜が形成された面と反対のポリオレフィンフィルムの面上にハードコート層が形成されていると、耐擦傷性に優れる。この場合、ハードコート層が有機無機ハイブリッド材料からなると、ハードコート層の基材フィルムへの密着性に優れる。
本発明に係る光透過性積層フィルムについて詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る光透過性積層フィルム10は、ポリオレフィンフィルム12の面上に金属酸化物薄膜14aと金属薄膜14bとをこの順に有している。金属酸化物薄膜14aは、ポリオレフィンフィルム12の面に接して設けられる。金属薄膜14bは、金属酸化物薄膜14aに接して設けられていてもよいし、他の層を介して設けられていてもよい。金属薄膜14bの面上には、さらに金属酸化物薄膜および金属薄膜がこの順で積層されていてもよい。なお、光透過性とは、波長領域360〜830nmにおける透過率の値が50%以上であることをいう。
光透過性積層フィルム10において、ポリオレフィンフィルム12と金属酸化物薄膜14aとの間の密着力は3.0N/25mm以上とする。これにより、ポリオレフィンフィルム12と金属酸化物薄膜14aとの間の密着力は良好となる。この密着力は、JIS Z0237に準拠して行われる180°剥離試験により測定される。具体的には、金属酸化物薄膜または金属薄膜の表面に粘着剤を塗布し、粘着剤を介して被着材に貼り付け、ポリオレフィンフィルム12の端部を把持して180°方向に引っ張り、粘着剤と被着材の界面、ポリオレフィンフィルム12と金属酸化物薄膜14aの界面などで剥離したときの荷重の大きさを求める。引張速度は300mm/分とする。剥離試験において、例えば3.0N/25mm以上の荷重で粘着剤と被着材の界面が剥離したときには、剥離しなかったポリオレフィンフィルム12と金属酸化物薄膜14aの界面の密着力は粘着剤と被着材の界面の密着力よりも高いため、3.0N/25mm以上であるといえる。一方、3.0N/25mm以上の荷重でポリオレフィンフィルム12と金属酸化物薄膜14aの界面が剥離したときには、この値がこの界面における密着力となる。
ポリオレフィンフィルム12と金属酸化物薄膜14aとの間の密着力は、より好ましくは5.0N/25mm以上、さらに好ましくは10.0N/25mm以上である。
ポリオレフィンフィルム12と金属酸化物薄膜14aとの間の密着力を特定値以上とするには、例えばポリオレフィンフィルム12の金属酸化物薄膜14aを形成する面に表面処理を行う、易接着層を形成する、などによりその表面に水酸基や酸素基などの官能基を形成し、その官能基を有する表面に金属酸化物薄膜14aをゾル−ゲル法により形成するとよい。
この場合、ポリオレフィンフィルム12のゾル−ゲル法により金属酸化物薄膜14aを形成する面の原子組成比(O/C比)は0.08以上であることが好ましい。この原子組成比(O/C比)が0.08以上であることにより、ぬれ性が向上し、金属酸化物薄膜14aのポリオレフィンフィルム12への密着性に優れる。
ポリオレフィンフィルム12の表面の原子組成比(O/C比)は、X線光電子分光分析(XPS)により測定することができる。この場合、XPSの測定範囲は150μm角程度であるが、表面処理を行ったポリオレフィンフィルム12の面のぬれ指数を面全体について測定し、その表面処理が面全体に均一に行われていることを併せて確認すればよい。
ポリオレフィンフィルム12の面の原子組成比(O/C比)を上記範囲にする方法としては、例えばポリオレフィンフィルム12の面にプラズマ処理やコロナ処理、紫外線処理などの表面処理を施す方法が挙げられる。これらのうちでは、湿熱環境下で優れた密着力がより一層維持されるなどの観点から、大気圧プラズマがより好ましい。
上記の原子組成比(O/C比)は、金属酸化物薄膜14aのポリオレフィンフィルム12への密着性に優れるとともに湿熱環境下でも優れた密着力が維持されるなどの観点から、より好ましくは0.10以上である。また、湿熱環境下で優れた密着力がより一層維持されるなどの観点から、さらに好ましくは0.12以上である。
ポリオレフィンフィルム12の面の原子組成比(O/C比)は、表面酸化の程度が大きく表面が硬くなるもしくは粗くなる、表面処理によるポリオレフィンフィルム12の変形が大きい、ポリオレフィンフィルム12に与えるダメージが大きい、ブロッキング(ロール状に巻回されたポリオレフィンフィルム12の原反フィルムが層間で接着する)が発生しやすいなどの理由で、上限として0.25以下であることが好ましい。より好ましくは0.20以下である。
ポリオレフィンフィルム12は、金属酸化物薄膜14aや金属薄膜14bを形成する基材となる基材フィルムである。基材フィルムがポリオレフィンフィルムからなるため、光透過性積層フィルム10は、基材フィルムによる赤外線の吸収が抑えられて断熱性に優れるものとなる。ポリオレフィンフィルム12のポリオレフィンとしては、鎖状ポリオレフィン、環状ポリオレフィンが挙げられる。鎖状ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−αオレフィン共重合体などが挙げられる。環状ポリオレフィンとしては、シクロオレフィンポリマーなどが挙げられる。ポリオレフィンとしては、光透過性、耐久性、加工性などの観点から、ポリプロピレンが好ましい。中でも、力学特性に優れ、比較的安価な二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)が好ましい。ポリオレフィンフィルム12の厚みは、用途、光学特性、耐久性などを考慮して適宜定めればよい。
金属薄膜は、日射遮蔽層(遮熱層)として機能するものであり、遠赤外線を反射しやすい金属から構成される。金属酸化物薄膜は、金属薄膜よりも屈折率の高い高屈折率薄膜であり、金属薄膜とともに積層されることで光透過性を高める機能を有する。屈折率は、633nmの光に対する屈折率をいう。
金属酸化物薄膜および金属薄膜を合わせた薄膜の合計は、特に限定されるものではなく、光透過性、日射遮蔽性などの光学特性の要求などに応じて適宜設定すればよい。なお、薄膜の合計としては、各薄膜の材料や膜厚、製造コストなどを考慮すると、2〜10層の範囲内であることが好ましい。また、光学特性を考慮すると、奇数層がより好ましく、特に3層、5層、7層、9層が好ましい。また、コストの面から3層がより好ましい。
より好ましい層構成を具体的に示すと、ポリオレフィンフィルム側から順に、金属酸化物薄膜/金属薄膜(2層)、金属酸化物薄膜/金属薄膜/金属酸化物薄膜(3層)、金属酸化物薄膜/金属薄膜/金属酸化物薄膜/金属薄膜/金属酸化物薄膜(5層)、金属酸化物薄膜/金属薄膜/金属酸化物薄膜/金属薄膜/金属酸化物薄膜/金属薄膜/金属酸化物薄膜(7層)などである。
金属薄膜の一方面または両面には、バリア薄膜が形成されていてもよい。バリア薄膜は金属薄膜に付随する薄膜であり、金属薄膜とともに1層として数える。バリア薄膜は、金属薄膜を構成する元素が金属酸化物薄膜中に拡散するのを抑制する。
金属酸化物薄膜14aは、ゾル−ゲル法により形成される。ゾル−ゲル法により形成される金属酸化物の前駆体としては、有機金属化合物が挙げられる。金属酸化物薄膜は、金属酸化物の前駆体である有機金属化合物を含有するコーティング液をポリオレフィンフィルムの面上にコーティングし、これを必要に応じて乾燥させて有機金属化合物を含有する被膜を形成した後、被膜中の有機金属化合物を加水分解・縮合反応させることにより得られる。なお、さらに積層される金属酸化物薄膜は、ゾル−ゲル法により形成されてもよいし、スパッタなどの他の方法により形成されてもよい。
金属酸化物薄膜14aが形成された面と反対のポリオレフィンフィルム12の面上にはハードコート層が形成されていてもよい。図2に、その構成の光透過性積層フィルムを示す。
図2に示すように、光透過性積層フィルム20は、ポリオレフィンフィルム12の一方の面上に金属酸化物薄膜14aと金属薄膜14bとをこの順に有し、他方の面上にハードコート層16を有している。光透過性積層フィルム20において、ポリオレフィンフィルム12、金属酸化物薄膜14a、金属薄膜14bは、上記の光透過性積層フィルム10と同じ構成のものであり、その説明を省略する。光透過性積層フィルム20においても、金属薄膜14bの面上には、さらに金属酸化物薄膜および金属薄膜がこの順で積層されていてもよい。
ハードコート層16は、ポリオレフィンフィルム12の表面に傷が付くのを抑えるものであり、ポリオレフィンフィルム12よりも硬い層であればよい。ハードコート層16を構成する材料としては、硬化性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物が挙げられる。硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2以上を組み合わせて用いてもよい。硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂に加えて無機材料を含有していてもよい。
ハードコート層16は、有機無機ハイブリッド材料からなることが好ましい。有機無機ハイブリッド材料は、有機材料(有機成分の原料)と無機材料(無機成分の原料)により形成され、有機材料と無機材料とがナノレベルあるいは分子レベルで複合化している。有機無機ハイブリッド材料は、例えば、有機材料中に分散させた無機材料と有機材料とが重合反応などの反応を起こし、化学結合を介して無機成分が有機成分中に高分散した網目状の架橋構造を有するものである。ハードコート層16が有機無機ハイブリッド材料で構成されると、ポリオレフィンフィルム12とハードコート層16の間の密着性がより良好となる。これは、ハードコート層16を形成する材料に無機成分を添加したことでハードコート層16の硬化収縮が抑えられるためと推察される。
ハードコート層16の硬化収縮は、ポリオレフィンフィルム12とハードコート層16の間の密着性に影響する。この影響を小さくしてポリオレフィンフィルム12とハードコート層16の間の密着性を維持するなどの観点からいうと、ポリオレフィンフィルム12の厚さを所定の範囲に確保することが好ましい。この観点からいえば、ポリオレフィンフィルム12の厚さは、10μm以上であることが好ましい。より好ましくは20μm以上である。一方、断熱性などの観点から、ポリオレフィンフィルム12の厚さは、60μm以下であることが好ましい。より好ましくは50μm以下である。
有機無機ハイブリッド材料を形成する有機成分の原料としては、硬化性樹脂などが挙げられる。硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2以上組み合わされてもよい。無機成分の原料としては、金属化合物などが挙げられる。金属化合物としては、Si化合物、Ti化合物、Zr化合物などが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2以上組み合わされてもよい。金属化合物は、Si、Ti、Zrなどの無機成分を含有する化合物で、有機成分の原料と重合反応などの反応を起こすなどにより複合化できるものからなる。金属化合物としては、より具体的には、有機金属化合物などが挙げられる。有機金属化合物としては、シランカップリング剤、金属アルコキシド、金属アシレート、金属キレート、シラザンなどが挙げられる。
有機無機ハイブリッド材料を形成する無機成分の原料の配合比率は、3質量%以上が好ましい。より好ましくは5質量%以上である。無機成分の原料の配合比率が3質量%以上で、ポリオレフィンフィルム12とハードコート層16の間の密着性が向上する。また、無機成分の原料の配合比率が40質量%以上で、ポリオレフィンフィルム12とハードコート層16の間の密着性が特に良好となる。ポリオレフィンフィルム12とハードコート層16の間の密着性は、JIS K5600−5−6に準拠する碁盤目試験により評価することができる。
また、有機無機ハイブリッド材料を形成する無機成分の原料の配合比率は、70質量%以下が好ましい。より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30以下である。無機成分の原料の配合比率が70質量%以下であると、塗液の安定性に優れ、ハードコート層16の光透過性の低下が抑えられる。また、優れた断熱性を維持できる。無機成分の原料の配合比率が50質量%以下であると、その効果にさらに優れる。無機成分の原料の配合比率が30質量%以下であると、優れた断熱性を維持する効果が特に高い。
さらに、有機無機ハイブリッド材料からなるハードコート層に含まれる金属成分の含有比率は、1.1質量%以上が好ましい。より好ましくは1.5質量%以上である。金属成分の含有比率が1.1質量%以上であるとポリオレフィンフィルム12とハードコート層16の間の密着性が格段に向上する。また、有機無機ハイブリッド材料からなるハードコート層に含まれる金属成分の含有比率は、41.4質量%以下が好ましい。より好ましくは13.0質量%以下、さらに好ましくは4.4質量%以下である。金属成分の含有比率が41.4質量%以下であると、塗液の安定性に優れ、ハードコート層16の光透過性の低下が抑えられる。また、金属成分の含有比率が4.4質量%以下であると、優れた断熱性を維持する効果が特に高い。
有機無機ハイブリッド材料からなるハードコート層16に含まれる金属成分の含有量は、加熱残分量分析、X線光電子分光分析(XPS)などを用いて調べることができる。
ハードコート層16の厚みは、断熱性に優れる(熱貫流率を低く抑える)などの観点から、2.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは1.6μm以下である。また、耐擦傷性に優れるなどの観点から、0.4μm以上であることが好ましい。より好ましくは0.6μm以上、さらに好ましくは0.8μm以上である。
図2に示すように、光透過性積層フィルム20は、光透過性積層フィルム20を窓ガラスなどの被着体に貼着するために用いられる粘着剤層18を基材フィルムとなるポリオレフィンフィルム12に対しハードコート層16が設けられている側とは反対側に設けられていてもよい。粘着剤は、表面の粘着性を利用して圧力をかけて接着するものであり、感圧接着剤として、固化により剥離抵抗力を発揮する接着剤とは区別される。粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤などが挙げられる。粘着剤層18は、粘着剤組成物を塗工することにより形成することができる。
光透過性積層フィルム10は、例えば、基材フィルムとなるポリオレフィンフィルム12の面にゾル―ゲル法によって金属酸化物薄膜14aを形成し、金属酸化物薄膜14aの上に所定の積層構造となるように各薄膜を所定の薄膜形成手法によって順次積み上げることにより製造することができる。その後、必要に応じて、後酸化等の熱処理を行うことができる。また、光透過性積層フィルム20のハードコート層16は、硬化性樹脂組成物を含有するコーティング液をポリオレフィンフィルム12の面上にコーティングし、これを必要に応じて乾燥させてコーティング膜を形成するとともに、形成したコーティング膜に対して硬化処理を行うことにより形成することができる。
本発明に係る光透過性積層フィルムは、ビル・住宅等の建築物の窓ガラスや自動車等の車両の窓ガラス、壁紙・ロールスクリーン・カーテンなどの紙製品や布製品、壁紙・石膏ボードなどの建材などに好適に施工される。
なお、光透過性積層フィルム10、20では、金属酸化物薄膜14aおよび金属薄膜14bは、ポリオレフィンフィルム12の一方の面上にのみ設けられているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、金属酸化物薄膜14aおよび金属薄膜14bは、ポリオレフィンフィルム12の両面上にそれぞれ設けられていてもよい。
また、光透過性積層フィルム20では、ハードコート層16はポリオレフィンフィルム12に接して設けられているが、密着性が確保されるのであれば、ポリオレフィンフィルム12とハードコート層16の間に層が1層以上設けられていてもよい。このような層としては、易接着層や、接着剤層、バリア層などが挙げられる。
以下、金属酸化物薄膜、金属薄膜、バリア薄膜について詳細に説明する。
金属酸化物薄膜の金属酸化物としては、チタンの酸化物、亜鉛の酸化物、インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、マグネシウムの酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ニオブの酸化物、セリウムの酸化物などが挙げられる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。また、これら金属酸化物は、2種以上の金属酸化物が複合した複合酸化物であっても良い。これらのうちでは、可視光に対する屈折率が比較的大きいなどの観点から、チタンの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、亜鉛の酸化物、スズの酸化物などが好ましい。
金属酸化物薄膜は、主として上述した金属酸化物より構成されているが、金属酸化物以外にも有機分を含有していても良い。有機分を含有することで、光透過性積層フィルムの柔軟性をより向上させることができる。この種の有機分としては、ゾル−ゲル法の出発原料に由来する有機化合物が挙げられる。
金属酸化物薄膜中に含まれる有機分の含有量の下限値は、柔軟性を付与しやすいなどの観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上である。一方、金属酸化物薄膜中に含まれる有機分の含有量の上限値は、高屈折率を確保しやくなる、耐溶剤性を確保しやすくなるなどの観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。有機分の含有量は、X線光電子分光法(XPS)などを用いて調べることができる。また、有機分の種類は、赤外分光法(IR)(赤外吸収分析)などを用いて調べることができる。
ゾル−ゲル法におけるコーティング液は、有機金属化合物を適当な溶媒に溶解して調製することができる。有機金属化合物としては、具体的には、例えば、金属アルコキシド、金属アシレート、金属キレートなどを例示することができる。好ましくは、空気中での安定性などの観点から、金属キレートであると良い。有機金属化合物としては、とりわけ、高屈折率を有する金属酸化物になり得るものを好適に用いることができる。このような有機金属化合物としては、有機チタン化合物などが挙げられる。
有機チタン化合物としては、具体的には、例えば、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラメトキシチタンなどのM−O−R結合(Rはアルキル基を示し、Mはチタン原子を示す)を有するチタンのアルコキシドや、イソプロポキシチタンステアレートなどのM−O−CO−R結合(Rはアルキル基を示し、Mはチタン原子を示す)を有するチタンのアシレートや、ジイソプロポキシチタンビスアセチルアセトナート、ジヒドロキシビスラクタトチタン、ジイソプロポキシビストリエタノールアミナトチタン、ジイソプロポキシビスエチルアセトアセタトチタンなどのチタンのキレートなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。また、これらは単量体、多量体の何れであっても良い。
溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘプタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチルなどの有機酸エステル、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのシクロエーテル類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの酸アミド類、ヘキサンなどの炭化水素類、トルエンなどの芳香族類などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
コーティング法としては、均一なコーティングが行いやすいなどの観点から、マイクログラビア法、グラビア法、リバースロールコート法、ダイコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スピンコート法、バーコート法など、各種のウェットコーティング法を好適なものとして例示することができる。これらは適宜選択して用いることができ、1種または2種以上併用しても良い。
また、有機金属化合物を加水分解・縮合反応させる手段としては、具体的には、例えば、紫外線、電子線、X線等の光エネルギーの照射、加熱など、各種の手段を例示することができる。これらは1種または2種以上組み合わせて用いても良い。これらのうち、好ましくは、光エネルギーの照射、とりわけ、紫外線照射を好適に用いることができる。他の手段と比較した場合、低温、短時間で金属酸化物を生成できるし、熱劣化など、熱による負荷を基材フィルムに与え難いからである(とりわけ、紫外線照射の場合は、比較的簡易な設備で済む利点がある。)。また、有機分として、有機金属化合物(その分解物なども含む)などを残存させやすい利点もあるからである。
さらには、ゾルゲル硬化時に光エネルギーを用いるゾル−ゲル法は、スパッタ等により形成した金属酸化物薄膜に比べ、粗な金属酸化物薄膜とすることができる。そのため、建築物の窓ガラスなどに光透過性積層フィルムを水貼り施工した場合に、窓ガラスとの間に水が残ったときでも、良好な水抜け性が得られ、水貼り施工性を向上させることができるなどの利点がある。
有機金属化合物を加水分解・縮合反応させる手段として、光エネルギーの照射を用いる場合、コーティング液中に、有機金属化合物と反応して光吸収性(例えば、紫外線吸収性)のキレートを形成する有機化合物等の添加剤を添加しておくと良い。出発溶液であるコーティング液中にこのような添加剤が添加されている場合には、予め光吸収性キレートが形成されたところに光エネルギーの照射がなされるので、比較的低温下において金属酸化物薄膜の高屈折率化を図り得やすくなる。
このような添加剤としては、具体的には、例えば、βジケトン類、アルコキシアルコール類、アルカノールアミン類などの添加剤を例示することができる。より具体的には、上記βジケトン類としては、例えば、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、マロン酸ジエチルなどを例示することができる。上記アルコキシアルコール類としては、例えば、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−メトキシ−2−プロパノールなどを例示することができる。上記アルカノールアミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。これらのうち、とりわけ、βジケトン類が好ましく、中でもアセチルアセトンを最も好適に用いることができる。
また、添加剤の配合割合としては、屈折率の上がりやすさ、塗膜状態での安定性などの観点から、有機金属化合物における金属原子1モルに対して、好ましくは、0.1〜2倍モル、より好ましくは、0.5〜1.5倍モルの範囲内にあると良い。
金属酸化物薄膜の膜厚は、日射遮蔽性、視認性、反射色などを考慮して調節することができる。金属酸化物薄膜の膜厚の下限値は、反射色の赤色や黄色の着色を抑制しやすくなる、高透明性が得られやすくなるなどの観点から、好ましくは、10nm以上、より好ましくは、15nm以上、さらに好ましくは、20nm以上であると良い。一方、金属酸化物薄膜の膜厚の上限値は、反射色の緑色の着色を抑制しやすくなる、高透明性が得られやすくなるなどの観点から、好ましくは、90nm以下、より好ましくは、85nm以下、さらに好ましくは、80nm以下であると良い。
金属薄膜の金属としては、銀、金、白金、銅、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、スズ、ニッケル、コバルト、ニオブ、タンタル、タングステン、ジルコニウム、鉛、パラジウム、インジウムなどの金属や、これら金属の合金などが挙げられる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
金属薄膜の金属としては、積層時の可視光透過性、熱線反射性、導電性などに優れるなどの観点から、銀または銀合金が好ましい。より好ましくは、熱、光、水蒸気などの環境に対する耐久性が向上するなどの観点から、銀を主成分とし、銅、ビスマス、金、パラジウム、白金、チタンなどの金属元素を少なくとも1種以上含んだ銀合金であると良い。さらに好ましくは、銅を含む銀合金(Ag−Cu系合金)、ビスマスを含む銀合金(Ag−Bi系合金)、チタンを含む銀合金(Ag−Ti系合金)等であると良い。銀の拡散抑制効果が大きい、コスト的に有利であるなどの利点がある。金属薄膜における銅、ビスマス、チタン等の副元素割合は、ICP分析法を用いて測定することができる。
銅を含む銀合金を用いる場合、銅の含有量は、添加効果を得る観点から、好ましくは1原子%以上、より好ましくは2原子%以上、さらに好ましくは3原子%以上である。一方、高透明性を確保しやすくなる、スパッタターゲットが作製しやすい等の製造性などの観点から、好ましくは20原子%以下、より好ましくは10原子%以下、さらに好ましくは5原子%以下である。
ビスマスを含む銀合金を用いる場合、ビスマスの含有量は、添加効果を得る観点から、好ましくは0.01原子%以上、より好ましくは0.05原子%以上、さらに好ましくは0.1原子%以上である。一方、スパッタターゲットが作製しやすい等の製造性などの観点から、好ましくは5原子%以下、より好ましくは2原子%以下、さらに好ましくは1原子%以下である。
チタンを含む銀合金を用いる場合、チタンの含有量は、添加効果を得る観点から、好ましくは0.01原子%以上、より好ましくは0.05原子%以上、さらに好ましくは0.1原子%以上である。一方、膜にした場合、完全な固溶体が得られやすくなるなどの観点から、好ましくは2原子%以下、より好ましくは1.75原子%以下、さらに好ましくは1.5原子%以下である。
銅、ビスマスあるいはチタンを含む銀合金を用いる場合、銀、銅、ビスマス、チタン以外にも、例えば、銀の凝集・拡散抑制効果に悪影響を与えない範囲内であれば、他の元素、不可避不純物を1種または2種以上含有していても良い。
他の元素としては、Mg、Pd、Pt、Au、Zn、Al、Ga、In、Sn、Sb、Li、Cd、Hg、AsなどのAgに固溶可能な元素;Be、Ru、Rh、Os、Ir、Bi、Ge、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Si、Tl、Pbなど、Ag−Cu系合金中に単相として析出可能な元素;Y、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ti、Zr、Hf、Na、Ca、Sr、Ba、Sc、Pr、Eu、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、S、Se、TeなどのAgとの金属間化合物を析出可能な元素などが挙げられる。
金属薄膜の膜厚は、安定性、熱線反射性などの観点から、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上、さらに好ましくは7nm以上である。一方、金属薄膜の膜厚は、可視光の透明性、経済性などの観点から、好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは15nm以下である。
金属薄膜を形成する方法としては、具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザーアブレーションなどといった物理的気相成長法(PVD)、熱CVD法、プラズマCVD法などといった化学的気相成長法(CVD)などの気相法などを例示することができる。金属薄膜は、これらのうち何れか1つの方法を用いて形成されていても良いし、あるいは、2つ以上の方法を用いて形成されていても良い。
これら方法のうち、緻密な膜質が得られる、膜厚制御が比較的容易であるなどの観点から、好ましくは、DCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法などのスパッタリング法を好適に用いることができる。
なお、金属薄膜は、後述する後酸化等を受けて、金属薄膜の機能を損なわない範囲内で酸化されていても良い。
金属薄膜に付随するバリア薄膜は、主として、金属薄膜を構成する元素が、金属酸化物薄膜中へ拡散するのを抑制するバリア的な機能を有している。また、金属酸化物薄膜と金属薄膜との間に介在することで、両者の密着性の向上にも寄与しうる。バリア薄膜は、拡散を抑制できれば、浮島状など、不連続な部分があっても良い。
バリア薄膜は、金属または金属酸化物から構成されていればよい。バリア薄膜を構成する金属、金属酸化物の金属としては、チタン、亜鉛、インジウム、スズ、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム、ニオブ、セリウムなどが挙げられる。バリア薄膜を構成する金属は、これらの金属の1種であってもよいし、これらの金属の2種以上であってもよい。また、バリア薄膜を構成する金属酸化物は、これらの金属の酸化物の1種であってもよいし、これらの金属の酸化物の2種以上が複合した複酸化物であってもよい。
バリア薄膜を構成する金属、金属酸化物の金属は、金属薄膜を構成する金属の拡散抑制効果に優れる、密着性に優れるなどの観点から、金属酸化物薄膜の金属から構成されていると良い。例えば金属酸化物薄膜の金属がチタンである場合、バリア薄膜を構成する金属、金属酸化物の金属はチタンであるとよい。
バリア薄膜は、金属酸化物薄膜よりも膜厚が薄く設定される。これは、金属薄膜を構成する金属の拡散は、原子レベルで生じるので、屈折率を十分確保するのに必要な膜厚まで厚くする必要性が低いからである。また、薄く形成することで、その分、成膜コストが安価になり、光透過性積層フィルムの製造コストの低減にも寄与することができる。
バリア薄膜の膜厚の下限値は、バリア性を確保しやすくなるなどの観点から、好ましくは、1nm以上、より好ましくは、1.5nm以上、さらに好ましくは、2nm以上であると良い。一方、バリア薄膜の膜厚の上限値は、経済性などの観点から、好ましくは、15nm以下、より好ましくは、10nm以下、さらに好ましくは、8nm以下であると良い。
バリア薄膜は、緻密な膜を形成できる、数nm〜数十nm程度の薄膜を均一な膜厚で形成できるなどの観点から、気相法を好適に利用することができる。
気相法としては、具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザーアブレーションなどといった物理的気相成長法(PVD)、熱CVD法、プラズマCVD法などといった化学的気相成長法(CVD)などを例示することができる。上記気相法としては、真空蒸着法などと比較して膜界面の密着性に優れる、膜厚制御が容易であるなどの観点から、DCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法などのスパッタリング法を好適に用いることができる。
なお、各バリア薄膜は、これら気相法のうち何れか1つの方法を利用して形成されていても良いし、あるいは、2つ以上の方法を利用して形成されていても良い。
バリア薄膜が金属酸化物から構成される場合、その金属酸化物は、薄膜形成時に金属酸化物とされてもよいし、薄膜形成後に後酸化されて金属酸化物とされてもよい。
薄膜形成時に金属酸化物として成膜する場合、具体的には、例えば、スパッタリングガスとしてのアルゴン、ネオンなどの不活性ガスに、さらに反応性ガスとして酸素を含むガスを混合し、金属と酸素とを反応させながら薄膜を形成すれば良い(反応性スパッタリング法)。一方、薄膜形成後に金属から金属酸化物にする場合、薄膜形成後に後酸化処理を行えばよい。
後酸化処理としては、加熱処理、加圧処理、化学処理、自然酸化などが挙げられる。これらのうちでは、比較的簡単かつ確実に後酸化を行うことができるなどの観点から、加熱処理が好ましい。加熱処理としては、例えば、光透過性積層フィルムを加熱炉等の加熱雰囲気中に存在させる方法、温水中に浸漬する方法、マイクロ波加熱する方法、通電加熱する方法などが挙げられる。これらは1または2以上組み合わせて行っても良い。
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
(実施例1〜7)
以下により、OPPフィルムの一方面に薄膜層および粘着剤層を有し、他方面にハードコート層を有する光透過性積層フィルムを作製した。
以下により、OPPフィルムの一方面に薄膜層および粘着剤層を有し、他方面にハードコート層を有する光透過性積層フィルムを作製した。
(コーティング液の調製)
テトラ−n−ブトキシチタン4量体(日本曹達(株)製、「B4」)とアセチルアセトンとをn−ブタノールとイソプロピルアルコールとの混合溶媒に混合することにより、ゾル−ゲル法によるTi酸化物薄膜の形成に使用するコーティング液を調製した。
テトラ−n−ブトキシチタン4量体(日本曹達(株)製、「B4」)とアセチルアセトンとをn−ブタノールとイソプロピルアルコールとの混合溶媒に混合することにより、ゾル−ゲル法によるTi酸化物薄膜の形成に使用するコーティング液を調製した。
(薄膜層の形成)
ポリオレフィンフィルムとして王子エフテックス社製OPPフィルム(EM−201、膜厚40μm、片面コロナ処理)を用いた。OPPフィルムのコロナ処理されていない一方面に大気圧下でプラズマ処理を施し、所定の原子組成比とした。OPPフィルムのプラズマ処理を施した面に、マイクログラビアコーターを用いて、所定の溝容積のグラビアロールで上記コーティング液を連続的に塗工した。次いで、インラインの乾燥炉を用いて、塗工膜を乾燥させた。次いで、インラインの紫外線照射機を用いて、上記塗工時と同線速で連続的に紫外線を照射した。これによりOPPフィルムのプラズマ処理された面上にTi酸化物薄膜(1層目)を成膜した。
次に、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、1層目のTi酸化物薄膜上に、下側の金属Ti薄膜をスパッタリングにより成膜した。次いで、この下側の金属Ti薄膜上に、Ag−Cu合金薄膜をスパッタリングにより成膜した。次いで、このAg−Cu合金薄膜上に、上側の金属Ti薄膜をスパッタリングにより成膜した(2層目)。
次に、2層目の上側の金属Ti薄膜の上に、1層目の形成と同様にしてTi酸化物薄膜を成膜した(3層目)。
ポリオレフィンフィルムとして王子エフテックス社製OPPフィルム(EM−201、膜厚40μm、片面コロナ処理)を用いた。OPPフィルムのコロナ処理されていない一方面に大気圧下でプラズマ処理を施し、所定の原子組成比とした。OPPフィルムのプラズマ処理を施した面に、マイクログラビアコーターを用いて、所定の溝容積のグラビアロールで上記コーティング液を連続的に塗工した。次いで、インラインの乾燥炉を用いて、塗工膜を乾燥させた。次いで、インラインの紫外線照射機を用いて、上記塗工時と同線速で連続的に紫外線を照射した。これによりOPPフィルムのプラズマ処理された面上にTi酸化物薄膜(1層目)を成膜した。
次に、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、1層目のTi酸化物薄膜上に、下側の金属Ti薄膜をスパッタリングにより成膜した。次いで、この下側の金属Ti薄膜上に、Ag−Cu合金薄膜をスパッタリングにより成膜した。次いで、このAg−Cu合金薄膜上に、上側の金属Ti薄膜をスパッタリングにより成膜した(2層目)。
次に、2層目の上側の金属Ti薄膜の上に、1層目の形成と同様にしてTi酸化物薄膜を成膜した(3層目)。
なお、Ti酸化物薄膜の屈折率(測定波長は633nm)は、FilmTek3000(Scientific Computing International社製)により測定した。
また、合金薄膜中の副元素(Cu)含有量を次のようにして求めた。すなわち、各成膜条件において、別途、ガラス基板上にAg−Cu合金薄膜を形成した試験片を作製し、この試験片を6%HNO3溶液に浸漬し、20分間超音波による溶出を行った後、得られた試料液を用いて、ICP分析法の濃縮法により測定した。
また、各薄膜の膜厚を、上記電界放出型電子顕微鏡(HRTEM)(日本電子(株)製、「JEM2001F」)による試験片の断面観察から測定した。
表1に、薄膜層の詳細な層構成を示す。
(粘着剤層の形成)
薄膜層の表面に、アクリル樹脂系粘着剤(東洋インキ社製「主剤:BPS5260、硬化剤:BHS8515」)を塗布して、粘着剤層(厚み18μm)を形成した。
薄膜層の表面に、アクリル樹脂系粘着剤(東洋インキ社製「主剤:BPS5260、硬化剤:BHS8515」)を塗布して、粘着剤層(厚み18μm)を形成した。
(ハードコート層の形成)
OPPフィルムのコロナ処理されている面にUV硬化型の有機無機ハイブリッド材(大日精化工業社製TGシリーズ、無機材料比率5質量%)を塗布し、UV硬化させて、1.5μm厚のハードコート層を形成した。
OPPフィルムのコロナ処理されている面にUV硬化型の有機無機ハイブリッド材(大日精化工業社製TGシリーズ、無機材料比率5質量%)を塗布し、UV硬化させて、1.5μm厚のハードコート層を形成した。
(実施例8〜11)
OPPフィルム(EM−201、膜厚40μm、片面コロナ処理)のコロナ処理されていない一方面にプラズマ処理に代えて別途コロナ処理を施したこと、UV硬化型の有機無機ハイブリッド材の無機材料比率を変更したこと以外は実施例1と同様にして、OPPフィルムの一方面に薄膜層および粘着剤層を有し、他方面にハードコート層を有する光透過性積層フィルムを作製した。
OPPフィルム(EM−201、膜厚40μm、片面コロナ処理)のコロナ処理されていない一方面にプラズマ処理に代えて別途コロナ処理を施したこと、UV硬化型の有機無機ハイブリッド材の無機材料比率を変更したこと以外は実施例1と同様にして、OPPフィルムの一方面に薄膜層および粘着剤層を有し、他方面にハードコート層を有する光透過性積層フィルムを作製した。
(実施例12)
UV硬化型の有機無機ハイブリッド材に代えてUV硬化型のアクリル樹脂(大日精化工業社製TGシリーズ、無機材料比率0質量%)を用いた以外は実施例1と同様にして、OPPフィルムの一方面に薄膜層および粘着剤層を有し、他方面にハードコート層を有する光透過性積層フィルムを作製した。
UV硬化型の有機無機ハイブリッド材に代えてUV硬化型のアクリル樹脂(大日精化工業社製TGシリーズ、無機材料比率0質量%)を用いた以外は実施例1と同様にして、OPPフィルムの一方面に薄膜層および粘着剤層を有し、他方面にハードコート層を有する光透過性積層フィルムを作製した。
(比較例1)
ポリオレフィンフィルムとして王子エフテックス社製OPPフィルム(EM−201F、膜厚50μm、両面非処理)を用いた。プラズマ処理を施さなかった以外は実施例と同様にして、OPPフィルムの一方面に薄膜層および粘着剤層を有し、他方面にハードコート層を有する光透過性積層フィルムを作製した。
ポリオレフィンフィルムとして王子エフテックス社製OPPフィルム(EM−201F、膜厚50μm、両面非処理)を用いた。プラズマ処理を施さなかった以外は実施例と同様にして、OPPフィルムの一方面に薄膜層および粘着剤層を有し、他方面にハードコート層を有する光透過性積層フィルムを作製した。
(比較例2)
OPPフィルム(EM−201、膜厚40μm、片面コロナ処理)のコロナ処理されていない一方面にプラズマ処理を施さなかった以外は実施例と同様にして、OPPフィルムの一方面に薄膜層および粘着剤層を有し、他方面にハードコート層を有する光透過性積層フィルムを作製した。
OPPフィルム(EM−201、膜厚40μm、片面コロナ処理)のコロナ処理されていない一方面にプラズマ処理を施さなかった以外は実施例と同様にして、OPPフィルムの一方面に薄膜層および粘着剤層を有し、他方面にハードコート層を有する光透過性積層フィルムを作製した。
(比較例3)
OPPフィルム(EM−201、膜厚40μm、片面コロナ処理)のコロナ処理されていない一方面にコロナ処理を施し、所定の原子組成比とした以外は実施例と同様にして、OPPフィルムの一方面に薄膜層および粘着剤層を有し、他方面にハードコート層を有する光透過性積層フィルムを作製した。
OPPフィルム(EM−201、膜厚40μm、片面コロナ処理)のコロナ処理されていない一方面にコロナ処理を施し、所定の原子組成比とした以外は実施例と同様にして、OPPフィルムの一方面に薄膜層および粘着剤層を有し、他方面にハードコート層を有する光透過性積層フィルムを作製した。
(OPPフィルム表面の原子組成比の測定)
XPS測定機器(アルバック・ファイ製「PHI5000 VersaProbeII」)を用いてOPPフィルム表面の原子組成比(O/C比)を測定した。
XPS測定機器(アルバック・ファイ製「PHI5000 VersaProbeII」)を用いてOPPフィルム表面の原子組成比(O/C比)を測定した。
作製した各光透過性積層フィルムの特性評価を行った。具体的には、ゾル―ゲル法によるTi酸化物薄膜のOPPフィルム表面への密着性、ハードコート層のOPPフィルム表面への密着性、耐擦傷性、断熱性(熱貫流率)を評価した。
(ゾル―ゲル法によるTi酸化物薄膜のOPPフィルム表面への密着性)
図3に示すように、作製した光透過性積層フィルム6の粘着剤層4の粘着面を板ガラス1の片面に貼り付けた。室温で72時間放置した後に、OPPフィルム2の薄膜層3および粘着剤層4、ハードコート層5が形成されていない端部を把持し、180°剥離試験(JIS Z0237に準拠、引張速度300mm/分)を行い、剥離界面の観察と剥離時の荷重を測定した。剥離界面がTi酸化物薄膜とOPPフィルムの界面であったものを「薄膜/OPP」とし、粘着面と板ガラスの界面であったものを「G/AD」とした。剥離界面がいずれの界面であっても、剥離時の荷重が3N/25mm以上であったものを密着性良好「○」とし、剥離時の荷重が3N/25mm未満であったものを密着性不良「×」とした。
また、同様の測定を、60℃×90%RH環境下で500時間保持した後の光透過性積層フィルムについても行った。
図3に示すように、作製した光透過性積層フィルム6の粘着剤層4の粘着面を板ガラス1の片面に貼り付けた。室温で72時間放置した後に、OPPフィルム2の薄膜層3および粘着剤層4、ハードコート層5が形成されていない端部を把持し、180°剥離試験(JIS Z0237に準拠、引張速度300mm/分)を行い、剥離界面の観察と剥離時の荷重を測定した。剥離界面がTi酸化物薄膜とOPPフィルムの界面であったものを「薄膜/OPP」とし、粘着面と板ガラスの界面であったものを「G/AD」とした。剥離界面がいずれの界面であっても、剥離時の荷重が3N/25mm以上であったものを密着性良好「○」とし、剥離時の荷重が3N/25mm未満であったものを密着性不良「×」とした。
また、同様の測定を、60℃×90%RH環境下で500時間保持した後の光透過性積層フィルムについても行った。
(ハードコート層のOPPフィルム表面への密着性)
JIS K5600−5−6に準拠して測定した。面に対して垂直になるようにハードコート層に刃を当て、2mm間隔で6本の切り込みを入れた後、90度方向を変えて先の切り込みと直交する6本の切り込みを2mm間隔で入れて、25マスを作製した。その後、フィルムの格子にカットした部分にテープを貼り、テープ上をこすった。その後、テープを60度に近い角度で確実に引き剥がした上で、残マス数を目視にて確認した。
また、同様の測定を、60℃×90%RH環境下で500時間保持した後の光透過性積層フィルムについても行った。
JIS K5600−5−6に準拠して測定した。面に対して垂直になるようにハードコート層に刃を当て、2mm間隔で6本の切り込みを入れた後、90度方向を変えて先の切り込みと直交する6本の切り込みを2mm間隔で入れて、25マスを作製した。その後、フィルムの格子にカットした部分にテープを貼り、テープ上をこすった。その後、テープを60度に近い角度で確実に引き剥がした上で、残マス数を目視にて確認した。
また、同様の測定を、60℃×90%RH環境下で500時間保持した後の光透過性積層フィルムについても行った。
(耐擦傷性)
スチールウール(日本スチール社製「Bon Star No.0000」)を用い、光透過性積層フィルムのハードコート層の表面に一定の荷重(20g/cm2)をかけながらスチールウールを10往復擦り付けた。この際、目視にて傷が全く観測されなかった場合を良好「○」、傷が観測された場合を不良「×」とした。
スチールウール(日本スチール社製「Bon Star No.0000」)を用い、光透過性積層フィルムのハードコート層の表面に一定の荷重(20g/cm2)をかけながらスチールウールを10往復擦り付けた。この際、目視にて傷が全く観測されなかった場合を良好「○」、傷が観測された場合を不良「×」とした。
(熱貫流率)
作製した光透過性積層フィルムの粘着面を板ガラスの片面に貼り付けた。ハードコート層側から測定光を入射し、 JIS R3106に準拠し、ガラス面およびフィルム面の垂直放射率を求め、JIS A5759に準拠して熱貫流率(W/m2K)を求めた。
作製した光透過性積層フィルムの粘着面を板ガラスの片面に貼り付けた。ハードコート層側から測定光を入射し、 JIS R3106に準拠し、ガラス面およびフィルム面の垂直放射率を求め、JIS A5759に準拠して熱貫流率(W/m2K)を求めた。
表2、3に、各光透過性積層フィルムの層構成および評価結果を示す。
比較例1、2では、ゾル−ゲル法によるTi酸化物薄膜を形成するOPPフィルム表面の原子組成比(O/C)が0であり、ゾル―ゲル法によるTi酸化物薄膜のOPPフィルム表面への密着性が、室温(72時間後)および湿熱後(500時間)の両方で悪い。OPPフィルム表面の原子組成比(O/C)が小さい比較例3では、ゾル―ゲル法によるTi酸化物薄膜のOPPフィルム表面への密着性が、湿熱後で悪い。
これに対し、実施例では、ゾル―ゲル法によるTi酸化物薄膜のOPPフィルム表面への密着性が、室温(72時間後)および湿熱後の両方で優れている。また、基材フィルムとしてOPPフィルム(ポリオレフィンフィルム)を用いているため、断熱性にも優れている。さらに、ハードコート層により耐擦傷性にも優れている。また、ハードコート層のOPPフィルム表面への密着性にも優れている。
また、実施例から、ゾル−ゲル法によるTi酸化物薄膜を形成するOPPフィルム表面の原子組成比(O/C)が0.08以上であるとゾル―ゲル法によるTi酸化物薄膜のOPPフィルム表面への密着性が室温(72時間後)および湿熱後の両方で優れているが、その原子組成比(O/C)が0.10以上であると、湿熱後でも優れた密着力が維持されることがわかる。また、その原子組成比(O/C)が0.12以上であると、湿熱後でも剥離界面が粘着面と板ガラスの界面(G/AD)で安定し、湿熱環境下で優れた密着力がより一層維持されることがわかる。
また、実施例から、ハードコート層の有機無機ハイブリッド材の無機材料比率が5〜70質量%の範囲では、ハードコート層のOPPフィルム表面への密着性に優れることと、断熱性に優れることがわかる。
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
10 光透過性積層フィルム
12 ポリオレフィンフィルム
14a ゾル―ゲル法による金属酸化物薄膜
14b 金属薄膜
16 ハードコート層
18 粘着剤層
12 ポリオレフィンフィルム
14a ゾル―ゲル法による金属酸化物薄膜
14b 金属薄膜
16 ハードコート層
18 粘着剤層
Claims (4)
- ポリオレフィンフィルムの面上に、ゾル―ゲル法により形成された金属酸化物薄膜と金属薄膜とをこの順に有し、前記ポリオレフィンフィルムと前記金属酸化物薄膜との間のJIS Z0237に準拠して行われる引張速度300mm/分での180°剥離試験により測定される密着力が3.0N/25mm以上であることを特徴とする光透過性積層フィルム。
- 前記ポリオレフィンフィルムの前記金属酸化物薄膜を形成する面の原子組成比(O/C比)が0.08以上であることを特徴とする請求項1に記載の光透過性積層フィルム。
- 前記金属酸化物薄膜が形成された面と反対のポリオレフィンフィルムの面上に、ハードコート層が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光透過性積層フィルム。
- 前記ハードコート層が、有機無機ハイブリッド材料からなることを特徴とする請求項3に記載の光透過性積層フィルム。
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