JP2015140378A - フィルム用粘着剤組成物およびこれを用いた粘着フィルムならびに遮熱性粘着フィルム、粘着フィルムの施工方法ならびに遮熱性粘着フィルムの施工方法 - Google Patents

フィルム用粘着剤組成物およびこれを用いた粘着フィルムならびに遮熱性粘着フィルム、粘着フィルムの施工方法ならびに遮熱性粘着フィルムの施工方法 Download PDF

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義弘 徳永
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Tetsuya Takeuchi
哲也 竹内
山下 大輔
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Shingo Kaimori
信吾 改森
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Abstract

【課題】窓ガラスなどの被着体へのフィルムの施工性を向上するフィルム用粘着剤組成物およびこれを用いた粘着フィルムならびに遮熱性粘着フィルム、粘着フィルムの施工方法ならびに遮熱性粘着フィルムの施工方法を提供する。【解決手段】フィルム用粘着剤組成物は、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体、または、スチレン−エチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体が含まれるスチレン含有率が40質量%以下のスチレン系エラストマーを含有し、施工液として水を用いて被着体に貼着したときの、JIS−A−5759に準拠し、引張速度50mm/分の条件で測定される初期の密着力が0.5N/25mm以下であり、被着体に貼着してから1カ月経過後の密着力が3.0N/25mm以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、フィルム用粘着剤組成物およびこれを用いた粘着フィルムならびに遮熱性粘着フィルム、粘着フィルムの施工方法ならびに遮熱性粘着フィルムの施工方法に関するものである。
ビル・住宅等の建築物の窓ガラスや自動車等の車両の窓ガラスなどには日射を遮蔽する目的で遮熱性を有する遮熱性フィルムが施工されることがある。この種の遮熱性フィルムとしては、赤外線反射層と赤外線反射層の表面に設けられたポリシクロオレフィン層からなる保護層と赤外線反射層を裏面側から支持する透明基板とを有する赤外線反射基板(特許文献1)、透明高分子フィルムの面に金属酸化物層と金属層とが交互に積層された透明積層部と硬化物よりなる保護層とを有する透明積層フィルム(特許文献2)、基材の面に反射層とオレフィン系樹脂層およびハードコート層で構成される保護層とを有する赤外線反射フィルム(特許文献3)などが知られている。
特開2011−104887号公報 特開2012−030577号公報 特開2013−010341号公報
この種の遮熱性フィルムは、粘着剤を用いて窓ガラスなどに貼り着けられている。従来の粘着剤は感圧式のものであり、最初から粘着力が強く、この粘着剤を用いた遮熱性フィルムを圧力で窓ガラスなどに密着させると、すぐに強い密着力で窓ガラスなどに遮熱性フィルムを密着させることができる。
しかし、感圧式の粘着剤は最初から粘着力が強いため、粘着面を窓ガラスなどに合わせた後に、遮熱性フィルムの位置をずらすことは容易ではない。また、遮熱性フィルムと窓ガラスなどの間に生じた気泡や遮熱性フィルムに生じたシワなどを除去することも容易ではない。そこで、従来は、洗剤等の滑り性をよくする添加剤を水で薄めた施工液を用い、遮熱性フィルムと窓ガラスなどの間を滑りやすくして、遮熱性フィルムの位置の調整や、気泡、シワの除去などを行っていた。しかし、それでも、高い品質で貼り合わせを行うことは難しく、例えば日本では窓ガラスへの施工においては国家資格であるガラス用フィルム施工技能士による施工が要求されることが多い。そして、そのような施工液の調合には施工者の経験や勘などが必要で、状況に合わせた調合を必要とする。
また、感圧式の粘着剤を用いると、遮熱性フィルムを圧力で窓ガラスなどに密着させる必要があり、均等に施工するには、力加減が求められ、施工技術を必要とする。
本発明が解決しようとする課題は、窓ガラスなどの被着体へのフィルムの施工性を向上するフィルム用粘着剤組成物およびこれを用いた粘着フィルムならびに遮熱性粘着フィルム、粘着フィルムの施工方法ならびに遮熱性粘着フィルムの施工方法を提供することにある。
上記課題を解決するため本発明に係るフィルム用粘着剤組成物は、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体、または、スチレン−エチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体が含まれるスチレン含有率が40質量%以下のスチレン系エラストマーを含有し、施工液として水を用いて被着体に貼着したときの、JIS−A−5759に準拠し、引張速度50mm/分の条件で測定される初期の密着力が0.5N/25mm以下であり、被着体に貼着してから1カ月経過後の密着力が3.0N/25mm以上であることを要旨とするものである。
この場合、前記スチレン系エラストマーのスチレン含有率が20質量%以下であることが好ましい。
また、さらにシランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤は、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、または、スルフィド基を有するシランカップリング剤であることが好ましい。
本発明に係るフィルム用粘着剤組成物は、可塑剤を含有しなくてもよい。あるいは、さらに可塑剤を含有してもよい。可塑剤はパラフィンオイルであることが好ましい。可塑剤の含有量は、前記スチレン系エラストマー100質量部に対し、1〜60質量部の範囲内であることが好ましい。
また、さらに酸化防止剤、光安定剤の少なくとも1種を含有することが好ましい。
そして、本発明に係る粘着フィルムは、上記のフィルム用粘着剤組成物を用いて形成される粘着剤層をフィルム面に有することを要旨とするものである。
また、本発明に係る遮熱性粘着フィルムは、上記の粘着フィルムにおいて、さらに金属薄膜が含まれる単層または複数層からなる薄膜層を有することを要旨とするものである。
この場合、前記金属薄膜の金属が銀または銀合金であることが好ましい。
そして、本発明に係る粘着フィルムの施工方法は、上記の粘着フィルムを、滑り性を付与する添加剤を含有しない水を用いて被着体の面に貼り着けることを要旨とするものである。
また、本発明に係る遮熱性粘着フィルムの施工方法は、上記の遮熱性粘着フィルムを、滑り性を付与する添加剤を含有しない水を用いて被着体の面に貼り着けることを要旨とするものである。
前記滑り性を付与する添加剤としては、界面活性剤が挙げられる。
本発明に係るフィルム用粘着剤組成物によれば、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体、または、スチレン−エチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体が含まれるスチレン含有率が40質量%以下のスチレン系エラストマーを含有することで、高いレベルの自己粘着性を有する。すなわち、ガラスなどの硬質面に貼り着ける際に密着界面から空気が容易に抜け、界面の空気の残留量が極めて少なくなり、かつ、剥離、再貼り着けが可能である特性を有する。この場合において、初期の密着力が低く抑えられているため、施工時において被着体へのフィルムの貼り直しが容易となり、フィルムの施工位置の調整が容易となる。また、施工液として界面活性剤などが添加されていない水を用いてもフィルムと被着体の間の滑り性が確保されるので、施工液の調合が不要となり、施工者に高度な経験や勘などが要求されない。そして、初期の密着力は低く抑えられているが、経時で所定の大きさまで密着力が増加するため、感圧式の粘着剤と異なり、施工時にフィルムに力をかける必要がなく、高度な施工技術が要求されない。したがって、フィルムの施工が従来よりも簡便になり、窓ガラスなどの被着体へのフィルムの施工性を向上することができる。
そして、前記スチレン系エラストマーのスチレン含有率が20質量%以下であると、自己粘着性が向上し、初期の密着性を高めることができる。また、経時で増加する密着力が極めて大きく、経時で所定の大きさ、具体的には3N/25mm以上の大きさまで密着力が増加することにより、ガラスの場合は、ガラスが割れても飛散せず安全性を保つ機能を付与することができる。
経時的に密着力が増加する特性は、シランカップリング剤の添加により付与することもできる。シランカップリング剤がビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基、またはスルフィド基を有するシランカップリング剤であると、その効果がより高い。
可塑剤を添加すると自己粘着性を向上させることができるので好ましい。可塑剤がパラフィンオイルであると、その効果がより高い。その反面、可塑剤の添加には密着力の低下、光学特性の低下、ブリードによる性能低下、製造ラインの汚染等の影響がある。そのため、可塑剤の添加は所望の自己粘着性が得られる範囲とすることが好ましい。よって、所望の自己粘着性が得られる場合には、可塑剤を含有しないほうが好ましい。
そして、さらに酸化防止剤、光安定剤の少なくとも1種を含有すると、耐候性が向上し、光照射等による経時的な特性の低下が抑えられる。種類によっては、密着力を経時的に増加させる効果もある。
そして、本発明に係る粘着フィルムによれば、上記のフィルム用粘着剤組成物を用いて形成される粘着剤層をフィルム面に有することから、施工時において被着体へのフィルムの貼り直しが容易となり、フィルムの施工位置の調整が容易となる。また、施工液として水を用いてもフィルムと被着体の間の滑り性が確保されるので、施工液の調合が不要となり、施工者に高度な経験や勘などが要求されない。また、施工時にフィルムに力をかける必要がなく、高度な施工技術が要求されない。したがって、フィルムの施工が従来よりも簡便になり、窓ガラスなどの被着体へのフィルムの施工性を向上することができる。
そして、本発明に係る遮熱性粘着フィルムによれば、上記の粘着フィルムにおいて、さらに金属薄膜が含まれる単層または複数層からなる薄膜層を有することから、上記の粘着フィルムが有する効果に加えて、遮熱効果に優れる。
この場合、前記金属薄膜の金属が銀または銀合金であると、光透過性に特に優れるフィルムとすることができる。したがって、光学特性を満足できる。
そして、本発明に係る粘着フィルムの施工方法、あるいは、本発明に係る遮熱性粘着フィルムの施工方法によれば、上記の粘着フィルムを、滑り性を付与する添加剤を含有しない水を用いて被着体の面に貼り着けることから、施工液の調合が不要となり、施工者に高度な経験や勘などが要求されない。また、施工時にフィルムに力をかける必要がなく、高度な施工技術が要求されない。したがって、フィルムの施工が従来よりも簡便になり、窓ガラスなどの被着体へのフィルムの施工性を向上することができる。
本発明の一実施形態に係る遮熱性粘着フィルムの断面図である。 遮熱性粘着フィルムを窓ガラスなどの被着体に施工した状態を示す断面図である。 被着体への粘着フィルムの貼り着け方法を説明する模式図である。 スチレン系エラストマーの電子顕微鏡(SEM)写真であり、図4(a)は、スチレン含有率が17質量%のスチレン系エラストマーを示し、図4(b)は、スチレン含有率が30質量%のスチレン系エラストマーを示す。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係るフィルム用粘着剤組成物は、主成分としてスチレン系エラストマーを含有する。スチレン系エラストマーには種々のものが含まれるが、少なくとも、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体(SEP)、または、スチレン−エチレン−エチレン-ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEEP)が含まれる。スチレン系エラストマーのスチレン含有率は40質量%以下に設定される。これにより、高いレベルの自己粘着性を有するものとなる。自己粘着性とは、ガラス等の硬質面に貼りつける際に密着界面から空気が容易に抜け、界面の空気の残留量が極めて少なくなり且つ剥離、再貼り付けが可能である特性である。SEPS、SEBS、SEP、SEEPのうちでは、同スチレン比率の自己粘着性の観点から、SEPSもしくはSEPSとSEPのブレンド品がより好ましい。スチレン系エラストマーには、その他に、炭素-炭素二重結合を有するSBSやSISなどが挙げられるが、耐候性の観点からそれらの配合は望ましくない。
スチレン系エラストマーは、ハードセグメントとなるポリスチレンブロックとソフトセグメントとなるポリオレフィン構造のエラストマーブロックで構成されており、ポリスチレンブロックとエラストマーブロックを基本とするジブロック共重合体と、ポリスチレンブロックとエラストマーブロックとポリスチレンブロックを基本とするトリブロック共重合体の2種類を基本とする。スチレン系エラストマーは、ジブロック共重合体のみ、トリブロック共重合体のみ、あるいは、ジブロック共重合体とトリブロック共重合体の両方から構成される。スチレン系エラストマーのスチレン含有率は、ポリスチレンブロックの分子量、エラストマーブロックの分子量、ジブロック共重合体とトリブロック共重合体の混合割合などにより決定される。ジブロック共重合体は柔軟性や被着体表面との濡れ性に優れトリブロック共重合体は凝集力に優れる。最適な自己粘着性及び経時的な密着力の増加特性を得るためには両者をブレンドすることが望ましい。
本発明に係るフィルム用粘着剤組成物は、上述するように自己粘着性を有するものであるが、その粘着性は比較的低く抑えられており、施工液として水を用いて被着体に貼着したときの、JIS−A−5759に準拠し、引張速度50mm/分の条件で測定される初期の密着力が0.5N/25mm以下と低いものである。そして、初期の密着力は低く抑えられているが、経時で密着力が増加するものである。具体的には、被着体に貼着してから1カ月経過後の密着力が3.0N/25mm以上となるものである。この場合における準拠とは、引張速度以外の測定条件については、上記規格にしたがうものである。
スチレン系エラストマーのスチレン含有率は、自己粘着性に作用するが、経時での密着力の増加にも作用する。スチレン含有率が低いほど、自己粘着性が向上し、経時で密着力が増加する。この観点から、スチレン系エラストマーのスチレン含有率は、40質量%以下であることが好ましい。より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、19質量%以下である。一方、スチレン含有率が低すぎると、凝集力の低下により自己粘着性は逆に悪化する、特に剥離時にガラス表面に糊残りが発生するようになるため好ましくない。したがって、この観点から、スチレン系エラストマーのスチレン含有率は、5質量%以上であることが好ましい。より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。
スチレン系エラストマーのスチレン含有率が自己粘着性および経時での密着力の増加に作用する要因としては、スチレン含有率によりミクロ層分離構造が変化することが一因として挙げられると推察される。スチレン系エラストマーのスチレン含有率が比較的低い、例えばスチレン含有率が20質量%以下である場合には、スチレン系エラストマーは球状のミクロ層分離構造を有する。その粒径は0.1μmよりも小さくなっている。一方、スチレン系エラストマーのスチレン含有率が比較的高い、例えばスチレン含有率が20質量%超である場合には、スチレン系エラストマーは紐状のミクロ層分離構造を有する。球状のミクロ層分離構造であると、変形しやすいため、被着面への濡れ性が高くなり、優れた自己粘着性および経時で密着力の増加を示すものと推察される。
本発明に係るフィルム用粘着剤組成物は、上記のスチレン系エラストマーに加えて、さらにシランカップリング剤を含有していてもよい。シランカップリング剤は、経時での密着力の増加に作用する。シランカップリング剤としては、アルコキシシリル基以外の官能基を有するものであってもよいし、それ以外の官能基を有しないものであってもよい。
自己粘着性および経時での密着力の増加の効果がより高いなどの観点から、アルコキシシリル基以外の官能基をさらに有するものがより好ましい。アルコキシシリル基以外の官能基としては、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基などが挙げられる。これらの官能基のうちでは、経時での密着力の増加の効果が特に高いなどの観点から、ビニル基、メタクリロキシ基、アミノ基がさらに好ましい。そして、自己粘着性(初期の密着性)が特に優れるなどの観点から、アミノ基が特に好ましい。初期の密着力が極端に低いと、例えばひどくカールしたフィルムを貼りつける場合、端部が浮いたり剥がれたりすることがあるが、初期の密着力が0.01N/25mm以上あれば、このような問題が起こらないためである。
ビニル基を有するシランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが挙げられる。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。メタクリロキシ基を有するシランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。アクリロキシ基を有するシランカップリング剤としては、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。アミノ基を有するシランカップリング剤としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。スルフィド基を有するシランカップリング剤としては、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどが挙げられる。
シランカップリング剤の含有量は、経時での密着力の増加などの観点から、上記のスチレン系エラストマー100質量部に対し、0.05質量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上である。また、シランカップリング剤は高価であることから、3質量部以下であることが好ましい。より好ましくは2質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。
また、本発明に係るフィルム用粘着剤組成物は、上記のスチレン系エラストマーに加えて、さらに可塑剤を含有していてもよい。また、上記のスチレン系エラストマーおよび上記のシランカップリング剤に加えて、さらに可塑剤を含有していてもよい。可塑剤の添加により自己粘着性を高めることができる。可塑剤としては、パラフィンオイル、ナフテンオイルなどが挙げられる。オイルは、光照射による経時的な着色ができるだけ起こらぬよう不純物の少ないものを選ぶことが望ましい。これらのうちでは、自己粘着性の向上効果がより高い、高純度品を入手しやすいなどの観点から、パラフィンオイルが好ましい。
可塑剤の含有量は、自己粘着性を高める効果に優れるなどの観点から、上記のスチレン系エラストマー100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましい。より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上である。また、密着力の低下等の観点から、60質量部以下であることが好ましい。より好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
なお、可塑剤の配合は、密着力の低下、光学特性の低下、ブリードによる性能低下、製造ラインの汚染等の影響があるため、最低限とすべきである。本発明に係るフィルム用粘着剤組成物は、自己粘着性に優れる上記のスチレン系エラストマを含むため、可塑剤の添加量が少なくとも良好な自己粘着性を示すことができる。特にスチレン系エラストマのスチレン比率を20%以下、より好ましくは19%と以下とすることにより、可塑剤を配合せずとも良好な自己粘着性を得ることができる。
また、本発明に係るフィルム用粘着剤組成物は、上記のスチレン系エラストマーに加えて、上記のスチレン系エラストマーおよび上記のシランカップリング剤に加えて、あるいは、上記のスチレン系エラストマー、上記のシランカップリング剤および上記の可塑剤に加えて、さらに酸化防止剤、光安定剤の少なくとも1種を含有してもよい。酸化防止剤、光安定剤の添加により、耐候性が向上し、光照射等による経時的な特性の低下が抑えられる。また、種類によっては、密着力を経時的に増加させる効果もある。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられる。この中では、フェノール系酸化防止剤が好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−第三−ブチル−p−クレゾール、C2−10アルキレンビス(第三−ブチルフェノール)[例えば、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−第三−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−第三−ブチルフェノール)等]、トリス(ジ−第三−ブチル−ヒドロキシベンジル)ベンゼン[例えば、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−第三−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等]、C2−10アルカンジオール−ビス[(ジ−第三−ブチル−ヒドロキシフェニル)プロピオネート][例えば、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−第三−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等]、ジ又はトリオキシC2−4アルカンジオール−ビス(第三−ブチル−ヒドロキシフェニル)プロピオネート[例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−第三−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等]、C3−8アルカントリオール−ビス[(ジ−第三−ブチル−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、C4−8アルカンテトラオールテトラキス[(ジ−第三−ブチル−ヒドロキシフェニル)プロピオネート][例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−第三−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等]、長鎖アルキル(ジ−第三−ブチルフェニル)プロピオネート[例えば、n−オクタデシル−3−(4’,5’−ジ−第三−ブチルフェニル)プロピオネート、ステアリル−2−(3,5−ジ−第三−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等]、2−第三−ブチル−6−(3−第三−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、4,4’−チオビス(3−メチル−6−第三−ブチルフェノール)などが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフィト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。
イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、2−メルカプトベンズイミダゾール等のイオウ系化合物等が挙げられる。
酸化防止剤の含有量は、所望の耐候性、経時的な特性の低下、及び粘着層の厚みなどの観点から、上記のスチレン系エラストマー100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましい。より好ましくは0.05質量部以上である。また、過剰に入れすぎると、析出したりブリードしたり密着力が低下する等の弊害があるため、2.0質量部以下であることが好ましい。より好ましくは1.0質量部以下である。
光安定剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、HALS(ヒンダードアミン光安定剤)などが挙げられる。この中ではHALSが望ましい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−5’−ジ−第三ペンチル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H −ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール等の2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類などが挙げられる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルフォン酸3ハイドレイト、2−ヒロドキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類などが挙げられる。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシ−5−メチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(3−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(3−トリデシルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−[3−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルオキシ]フェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−4,6−ジビフェニル−s−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−[1−(i−オクチルオキシカルボニル)エチルオキシ]フェニル]−4,6−ジビフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2,4−ビス(4−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−s−トリアジン等のトリアリールトリアジン類などが挙げられる。
HALS(ヒンダードアミン光安定剤)としては、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタアクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5―ジ―第三ブチル−4−ヒロドキシペンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、コハク酸ジメチル・1−(2ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノウンデカン、2−デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−オクチルオキシ)―4―ピペリジニル)エステルと1,1ジメチルエチルヒドロポルオキシドとオクタンの反応物ポリプロピレンなどが挙げられる。紫外線吸収剤とHALSは相補完的に働くので双方を添加することが好ましい。また遮熱層の紫外線による劣化を防ぐために紫外線吸収剤を添加することが好ましい。
光安定剤の含有量は、所望の耐候性、経時的な特性の低下、及び粘着層の厚みなどの観点から、上記のスチレン系エラストマー100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましい。より好ましくは2質量部以上である。また、過剰に入れすぎると析出したり、ブリードしたり、密着力が低下する等の弊害があるため、6質量部以下であることが好ましい。より好ましくは4質量部以下である。
また、本発明に係るフィルム用粘着剤組成物は、密着力の向上のために、粘着付与樹脂、すなわちロジンやロジン誘導体、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素化テルペン樹脂、水素化テルペンフェノール樹脂、水素化芳香族変性テルペン樹脂、C5脂肪族系樹脂、C9芳香族系樹脂、C5/C9共重合系樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂、水素化石油樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ケトン樹脂等を更に含有してもよい。そのなかでも耐候性、経時による光学特性、機械特性低下の観点から水素添加された粘着付与樹脂、すなわち水素化テルペン樹脂、水素化テルペンフェノール樹脂、水素化芳香族変性テルペン樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂、水素化石油樹脂が好ましい。
粘着付与樹脂の含有量は、密着力向上などの観点から、上記のスチレン系エラストマー100質量部に対し、10質量部以上であることが好ましい。より好ましくは20質量部以上である。また、自己粘着性の低下などの観点から、50質量部以下であることが好ましい。より好ましくは40質量部以下である。
本発明に係るフィルム用粘着剤組成物の特に好ましい構成としては、以下の(1)〜(4)を示すことができる。
(1)SEPS、SEBS、SEP、または、SEEPSが含まれるスチレン含有率が20質量%以下のスチレン系エラストマーを含有する。
(2)SEPS、SEBS、SEP、または、SEEPSが含まれるスチレン含有率が20質量%以下のスチレン系エラストマーとシランカップリング剤とを含有する。
(3)SEPS、SEBS、SEP、または、SEEPSが含まれるスチレン含有率が40質量%以下のスチレン系エラストマーと可塑剤とシランカップリング剤とを含有する。
(4)SEPS、SEBS、SEP、または、SEEPSが含まれるスチレン含有率が40質量%以下のスチレン系エラストマーと可塑剤と水素添加された粘着付与樹脂とを含有する。
本発明に係るフィルム用粘着剤組成物は、20℃においてJIS−K 7244−1に準拠して測定されるせん断弾性率が0.56MPa以下であることが好ましい。比較的軟らかいものとすることで、異物が埋まり込みやすくなるため、平滑で均一な施工面を形成しやすい。この観点から、上記せん断弾性率は0.03MPa以下であることがより好ましい。また、上記せん断弾性率は、ハンドリング性などの観点から、0.02MPa以上であることが好ましい。せん断弾性率は、例えば、スチレン系エラストマーのスチレン含有率を低くする、可塑剤の含有量を多くする、粘着付与樹脂の含有量を多くするなどにより比較的低く調整することができる。
本発明に係るフィルム用粘着剤組成物は、フィルム面に形成される粘着剤層の材料として用いられる。これにより、粘着フィルムを構成することができる。粘着フィルムの基材フィルムとしては、特に限定されるものではないが、高分子フィルムなどを挙げることができる。粘着フィルムは、ビル・住宅等の建築物の窓ガラスや自動車等の車両の窓ガラス、開口部などの被着体の面に貼り着けるフィルムとして好適に用いることができる。粘着剤層の厚みは、用途、密着力、光学特性、材料種、耐久性などを考慮して適宜調整すればよい。例えば密着力、紫外線吸収等の観点から15μm以上が好ましい。より好ましくは20μm以上である。また、可視光透過度、透明性、経済性などの観点から、100μm以下が好ましい。より好ましくは50μm以下である。
上記の粘着フィルムにおいて、さらに熱線(日射)を反射する熱線反射層(日射遮蔽層)を有することにより、遮熱性粘着フィルムを構成することができる。熱線反射層としては、特に限定されるものではないが、金属薄膜が含まれる単層または複数層からなる薄膜層を挙げることができる。遮熱性粘着フィルムは、ビル・住宅等の建築物の窓ガラスや自動車等の車両の窓ガラス、開口部などの被着体の面に貼り着けるフィルムとして好適に用いることができる。
上記の粘着フィルムあるいは上記の遮熱性粘着フィルム(以下、(遮熱性)粘着フィルムということがある)は、窓ガラスなどの被着体の面に、粘着剤層を介して貼り着けられる。(遮熱性)粘着フィルムは、施工液を用いて被着体に施工してもよいし、施工液を用いないで被着体に施工してもよい。施工時における被着体に対する(遮熱性)粘着フィルムの位置の調整が容易である、施工時において(遮熱性)粘着フィルムと被着体の間に生じた気泡やシワなどを除去することが容易であるなどの観点から、施工液を用いて行うことが好ましい。
施工液を用いるフィルム施工は、例えば、被着体の面や粘着面に施工液を塗布した後、被着体の施工液が塗布された面に(遮熱性)粘着フィルムの粘着面を合わせる。この際、施工液を媒介にして、被着体に対して(遮熱性)粘着フィルムを滑らせながら(遮熱性)粘着フィルムの施工位置を調整する。また、(遮熱性)粘着フィルムの外側から施工液を塗布し、この施工液を媒介にしてフィルムへの外傷を与えることなくヘラ等の治具にて(遮熱性)粘着フィルムと被着体の間に生じた気泡を押し出し、(遮熱性)粘着フィルムに生じたシワを伸ばす。同時に、(遮熱性)粘着フィルムと被着体の間の施工液や(遮熱性)粘着フィルムの外側面の施工液を排出する。
施工液は、中性洗剤等の界面活性剤などの滑り性を付与する添加剤を含む液であってもよいし、界面活性剤などの滑り性を付与する添加剤を含有しない水(あるいは水のみ)であってもよい。その他の添加剤としては、アルコール類などが挙げられる。本発明に係るフィルム用粘着剤組成物の場合、滑り性を付与する添加剤を含む施工液はその調合において施工者の経験や勘などが必要とされること、添加剤の種類によっては遮熱性粘着フィルムの場合は金属薄膜層の特性を損ねる可能性があること、滑り性を付与する添加剤を含有しない水(あるいは水のみ)の方が経時での密着力の増加が大きい、施工液の排出(水抜け)がよいなどの観点から、施工液としては、界面活性剤などの滑り性を付与する添加剤を含有しない水(あるいは水のみ)がより好ましい。従来技術の感圧フィルムであれば、自己粘着性を有さないために、施工において滑り性を付与する添加剤を含む施工液の使用が必須であった。本発明に係るフィルム用粘着剤組成物の場合、高いレベルの自己粘着性を有するため、界面活性剤などの滑り性を付与する添加剤を含有しない水(あるいは水のみ)を施工液として用いても、遮熱性フィルムと被着体との間を滑りやすくでき、遮熱性フィルムの位置調整や、気泡、シワの除去などを行うことが可能である。
施工液を用いないフィルム施工は、施工液を塗布していない被着体の面に(遮熱性)粘着フィルムの粘着面を合わせることにより行うことができる。この際、貼り直しにより、(遮熱性)粘着フィルムの施工位置を調整する。そして、施工液を媒介にしないで、治具や布等を用いて、(遮熱性)粘着フィルムと被着体の間に生じた気泡を押し出し、(遮熱性)粘着フィルムに生じたシワを伸ばす。その際にフィルムに外傷を与えぬよう治具や布には柔らかい素材を用いることが好ましい。
施工液を用いないので、施工時に施工液を排出しなくてよいが、施工液を媒介にしない分、被着体に対して(遮熱性)粘着フィルムを滑らせにくく、(遮熱性)粘着フィルムの施工位置の調整にやや難がある。また、施工液を媒介にしない分、(遮熱性)粘着フィルムと被着体の間に生じた気泡を押し出す作業や(遮熱性)粘着フィルムに生じたシワを伸ばす作業にもやや難がある。
(遮熱性)粘着フィルムの施工方法においては、本発明に係るフィルム用粘着剤組成物により(遮熱性)粘着フィルムの粘着剤層が形成されることから、その自己粘着性により、被着体の面に(遮熱性)粘着フィルムの粘着面を軽く合わせるだけで被着体の面に(遮熱性)粘着フィルムが密着する。そして、初期の密着力が低く抑えられているため、施工時において被着体への(遮熱性)粘着フィルムの貼り直しが容易となり、(遮熱性)粘着フィルムの施工位置の調整が容易となる。したがって、施工液を用いなくてもよいし、界面活性剤などの滑り性を付与する添加剤を含有しない水(あるいは水のみ)を施工液として用いることもできる。つまり、施工液を用いなくても、このような施工液であっても、(遮熱性)粘着フィルムと被着体の間の滑り性が確保されるので、施工液の調合が不要となり、施工者に高度な経験や勘などが要求されない。
そして、初期の密着力は低く抑えられているが、経時で密着力が増加するため、感圧式の粘着剤と異なり、施工時に(遮熱性)粘着フィルムに力をかける((遮熱性)粘着フィルムの外側表面に押圧力を加えて密着させる)必要がなく、高度な施工技術が要求されない。したがって、フィルムの施工が従来よりも簡便になり、窓ガラスなどの被着体へのフィルムの施工性を向上することができる。
密着力の影響因子としては、a)粘着面と被着面の接触面積、b)被着面の汚れ、c)粘着剤の残留応力、d)粘着面と被着面の化学結合(分子間引力、水素結合、共有結合)、などが挙げられる。a)接触面積は、被着面の表面凹凸や粘着面と被着面の界面ボイド(空気層)などに影響される。
経時で密着力が増加する要因は、粘着面と被着面との間での濡れが進むこと、粘着面と被着面の間で化学結合が形成されることなどが挙げられる。濡れの進行は、粘着剤組成物の変形しやすさなどが要因と考えられる。粘着剤組成物の変形しやすさは、粘着剤組成物のスチレン含有率を下げる、可塑剤を配合するなどの方法で調整できると推定される。化学結合は、シランカップリング剤の配合により形成できる。
a)粘着面と被着面の接触面積は、粘着面と被着面との間での濡れの進行、界面からの空気層や異物の除去などにより増大させることができる。空気層や異物の除去を行いやすい点で、施工液を用いたフィルム施工が好ましい。
b)被着面の汚れを施工時に取り除くことができるという点で施工液を用いたフィルム施工が好ましい。
c)粘着剤の残留応力は、粘着剤組成物の変形しやすさ、施工液を用いたフィルム施工により緩和しやすい。この点で、施工液を用いたフィルム施工が好ましい。
遮熱性粘着フィルムは、基材フィルムの面上に、上記の薄膜層および上記の粘着剤層を少なくとも有するものからなる。上記の粘着剤層は、基材フィルムの面のうち上記の薄膜層が形成されている面と同じ面側の面上に形成されていてもよいし、反対面側の面上に形成されていてもよい。遮熱性粘着フィルムが窓の室内側に配置される場合には、上記の粘着剤層は、基材フィルムの面のうち上記の薄膜層が形成されている面と反対面側の面上に形成されていることが好ましい。配置上、室内で発生させた暖房などの熱が粘着剤層に吸収されにくく、断熱性に優れるからである。
図1は、遮熱性粘着フィルムの一実施形態の断面図である。遮熱性粘着フィルム10は、基材フィルム12の面上に、金属薄膜が含まれる薄膜層14と、粘着剤層22とを有している。
基材フィルム12の一方の面上には、金属薄膜が含まれる薄膜層14と、硬化樹脂層20と、をこの順で有している。基材フィルム12の他方の面上には、粘着剤層22と、セパレータ24と、をこの順で有している。
薄膜層14は、基材フィルム12の一方の面上に直接形成されている。硬化樹脂層20は、薄膜層14の面上に直接形成されている。よって、基材フィルム12の一方の面上には、基材フィルム12に接する薄膜層14と、薄膜層14に接する硬化樹脂層20と、をこの順で有している。
粘着剤層22は、基材フィルム12の他方の面上に直接形成されている。セパレータ24は、粘着剤層22の面上に直接形成されている。よって、基材フィルム12の他方の面上には、基材フィルム12に接する粘着剤層22と、粘着剤層22に接するセパレータ24と、をこの順で有している。
粘着剤層22は遮熱性粘着フィルム10を窓ガラスなどの被着体に貼着するためのものであり、セパレータ24を剥がして粘着剤層22を介して遮熱性粘着フィルム10を窓ガラスなどの被着体に貼着することができる。粘着剤層22は、上記の本発明に係るフィルム用粘着剤組成物により形成される。セパレータ24としては、紙、オレフィンフィルム、PETフィルムなどが用いられる。この際、密着力の制御のため、離型剤処理がなされているものが好ましい。
基材フィルム12は、薄膜層14を形成するためのベースとなる基材である。基材フィルム12の材料としては、光透過性を有し、その表面に薄膜を支障なく形成でき、柔軟性を有するものが好ましい。例えば、光透過性高分子フィルムなどが挙げられる。光透過性とは、波長領域360〜830nmにおける透過率の値が50%以上であることをいう。
光透過性高分子フィルムの材料としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、トリアセチルセルロース、ポリウレタン、シクロオレフィンポリマーなどの高分子材料が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、透明性、耐久性、加工性に優れるなどの観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマーがより好ましい材料として挙げられる。
光透過性高分子フィルムの厚みは、用途、光学特性、材料種、耐久性などを考慮して適宜調整すればよい。例えば加工時にしわが入りにくい、破断しにくいなどの観点から、25μm以上が好ましい。より好ましくは40μm以上である。また、柔軟性、取り扱い性、経済性などの観点から、500μm以下が好ましい。より好ましくは250μm以下である。
薄膜層14は、金属薄膜の単層からなるものでもよいが、好ましくは、金属薄膜と高屈折率薄膜とが含まれる複数の薄膜が積層されてなるものである。薄膜層14に含まれる金属薄膜および高屈折率薄膜の数やその位置は特に限定されるものではない。より好ましい薄膜層14の構成としては、金属薄膜と高屈折率薄膜とが交互に配置される構成、高屈折率薄膜が薄膜層14の両側にそれぞれ配置される構成、これらの組み合わせなどが挙げられる。
薄膜層14の層数は、光透過性、日射遮蔽性などの光学特性の要求などに応じて適宜設定すればよい。薄膜層14の層数としては、各薄膜の材料や膜厚、製造コストなどを考慮すると、2〜10層の範囲内であることが好ましい。また、光学特性を考慮すると、奇数層がより好ましく、特に3層、5層、7層、9層が好ましい。また、コストの面から3層がより好ましい。
薄膜層14の特に好ましい構成を具体的に示すと、光透過性基板12側から順に、高屈折率薄膜/金属薄膜(2層)、金属薄膜/高屈折率薄膜(2層)、高屈折率薄膜/金属薄膜/高屈折率薄膜(3層)、金属薄膜/高屈折率薄膜/金属薄膜(3層)、高屈折率薄膜/金属薄膜/高屈折率薄膜/金属薄膜/高屈折率薄膜(5層)、金属薄膜/高屈折率薄膜/金属薄膜/高屈折率薄膜/金属薄膜(5層)、高屈折率薄膜/金属薄膜/高屈折率薄膜/金属薄膜/高屈折率薄膜/金属薄膜/高屈折率薄膜(7層)、金属薄膜/高屈折率薄膜/金属薄膜/高屈折率薄膜/金属薄膜/高屈折率薄膜/金属薄膜(7層)などが挙げられる。
金属薄膜は、遠赤外線を反射しやすい金属から構成され、日射遮蔽層として機能することができる。高屈折率薄膜は、金属薄膜とともに積層されることで光透過性を高めるなどの機能を発揮することができる。高屈折率薄膜は、光透過性基板よりも高い屈折率を持つ。屈折率は、633nmの光に対する屈折率をいう。高屈折率薄膜としては、金属酸化物薄膜が挙げられる。
高屈折率薄膜を2層以上有する場合、すべての高屈折率薄膜が同一の材料からなるものであってもよいし、一部の高屈折率薄膜が他とは異なる材料からなるものであってもよいし、すべての高屈折率薄膜が互いに異なる材料からなるものであってもよい。
薄膜層14にはバリア薄膜がさらに含まれていてもよい。バリア薄膜は、金属薄膜の一方面または両面に形成される。バリア薄膜は金属薄膜に付随する薄膜であり、金属薄膜とともに1層として数える。バリア薄膜は、金属薄膜を構成する元素が金属酸化物薄膜中に拡散するのを抑制する。
硬化樹脂層20は、薄膜層14の面上を覆っており、これらの表面に傷が付くのを抑えることができる。硬化樹脂層20の材料としては、シリコーン樹脂やアクリル樹脂などが挙げられる。シリコーン樹脂やアクリル樹脂は、熱硬化性であっても良いし、光硬化性であっても良いし、水硬化性であっても良い。アクリル樹脂としては、アクリル・ウレタン樹脂、シリコンアクリル樹脂、アクリル・メラミン樹脂などが挙げられる。
硬化樹脂層20の厚みは、断熱性に優れる(熱貫流率を低く抑える)などの観点から、2.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは1.6μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。また、耐擦傷性に優れるなどの観点から、0.4μm以上であることが好ましい。より好ましくは0.6μm以上、さらに好ましくは0.8μm以上である。
遮熱性粘着フィルム10は、例えば、以下のようにして製造することができる。基材フィルム12の一方面上に、所定の積層構造となるように各薄膜を所定の薄膜形成手法によって順次積み上げて薄膜層14を形成する。その後、必要に応じて、後酸化等の熱処理を行う。その後、薄膜層14の表面に、硬化性樹脂を塗工して塗工膜を形成するとともに、形成した塗工膜に対して硬化処理を行うことにより硬化樹脂層20を形成することができる。粘着剤層22は、薄膜層14を形成する前あるいは後のいずれでもよいが、基材フィルム12の他方面上に上記のフィルム用粘着剤組成物を塗工することにより形成する。以上により遮熱性粘着フィルム10を得ることができる。なお、使用前の状態では、粘着剤層22の表面にはセパレータ24を有しており、セパレータ24は粘着剤層22の表面に貼り合わされる。
遮熱性粘着フィルム10は、ビル・住宅等の建築物の窓ガラスや自動車等の車両の窓ガラスなどに好適に施工される。図2には、遮熱性粘着フィルム10を窓ガラスなどの被着体30に施工した状態を示す。図2に示すように、遮熱性粘着フィルム10は、室内側に配置され、薄膜層14が形成されている面を室内側に、薄膜層14が形成されていない面を屋外側にして、被着体30に貼り付けられる。この際、粘着剤層22により遮熱性粘着フィルム10を被着体30に貼り付けることができる。
こうして光透過性積層体10は、屋外から差し込む日射を薄膜層14で反射するので、良好な日射遮蔽性を有する。また、薄膜層14によって室内における冷暖房効果が向上するので、優れた断熱性を備える。そして、硬化樹脂層20によって良好な耐擦傷性が発揮される。
なお、遮熱性粘着フィルム10では、薄膜層14は基材フィルム12の一方の面上にのみ設けられているが、この構成に限定されるものではなく、薄膜層は基材フィルム12の両面上にそれぞれ設けられていてもよい。この場合、基材フィルム12の他方の面上に設けられた薄膜層の面上に、窓ガラスなどの被着体に貼着する粘着剤層22を設けることができる。また、粘着剤層22の面上に、セパレータ24を設けることができる。
以下、薄膜層14の金属酸化物薄膜、金属薄膜、バリア薄膜について詳細に説明する。
薄膜層の金属酸化物薄膜の金属酸化物としては、チタンの酸化物、亜鉛の酸化物、インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、マグネシウムの酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ニオブの酸化物、セリウムの酸化物などが挙げられる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。また、これら金属酸化物は、2種以上の金属酸化物が複合した複合酸化物であっても良い。これらのうちでは、可視光に対する屈折率が比較的大きいなどの観点から、チタンの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、亜鉛の酸化物、スズの酸化物などが好ましい。
金属酸化物薄膜は、気相法、液相法の何れでも形成することができる。液相法は、気相法と比較して、真空引きしたり、大電力を使用したりする必要がない。そのため、その分、コスト的に有利であり、生産性にも優れているので好適である。液相法としては、有機分を残存させやすいなどの観点から、ゾル−ゲル法を好適に利用することができる。
金属酸化物薄膜は、主として上述した金属酸化物より構成されているが、金属酸化物以外にも、有機分を含有していても良い。有機分を含有することで、光透過性積層体の柔軟性をより向上させることができるためである。この種の有機分としては、具体的には、例えば、ゾル−ゲル法の出発原料に由来する成分等、金属酸化物薄膜の形成材料に由来する成分などを例示することができる。
上記有機分としては、より具体的には、例えば、金属酸化物を構成する金属の金属アルコキシド、金属アシレート、金属キレートなどといった有機金属化合物(その分解物なども含む)や、上記有機金属化合物と反応して紫外線吸収性のキレートを形成する有機化合物(後述する)等の各種添加剤などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
金属酸化物薄膜中に含まれる有機分の含有量の下限値は、柔軟性を付与しやすいなどの観点から、好ましくは、3質量%以上、より好ましくは、5質量%以上、さらに好ましくは、7質量%以上であると良い。一方、金属酸化物薄膜中に含まれる有機分の含有量の上限値は、高屈折率を確保しやくなる、耐溶剤性を確保しやすくなるなどの観点から、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、25質量%以下、さらに好ましくは、20質量%以下であると良い。有機分の含有量は、X線光電子分光法(XPS)などを用いて調べることができる。また、上記有機分の種類は、赤外分光法(IR)(赤外吸収分析)などを用いて調べることができる。
上記ゾル−ゲル法としては、より具体的には、例えば、金属酸化物を構成する金属の有機金属化合物を含有するコーティング液を薄膜状にコーティングし、これを必要に応じて乾燥させ、金属酸化物薄膜の前駆体薄膜を形成した後、この前駆体薄膜中の有機金属化合物を加水分解・縮合反応させ、有機金属化合物を構成する金属の酸化物を合成するなどの方法を例示することができる。これによれば、金属酸化物を主成分として含み、有機分を含有する金属酸化物薄膜を形成することができる。以下、上記方法について詳細に説明する。
上記コーティング液は、上記有機金属化合物を適当な溶媒に溶解して調製することができる。この際、有機金属化合物としては、具体的には、例えば、チタン、亜鉛、インジウム、スズ、マグネシウム、アルミニウム、ジルコニウム、ニオブ、セリウム、シリコン、ハフニウム、鉛などの金属の有機化合物などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
上記有機金属化合物としては、具体的には、例えば、上記金属の金属アルコキシド、金属アシレート、金属キレートなどを例示することができる。好ましくは、空気中での安定性などの観点から、金属キレートであると良い。
上記有機金属化合物としては、とりわけ、高屈折率を有する金属酸化物になり得る金属の有機化合物を好適に用いることができる。このような有機金属化合物としては、例えば、有機チタン化合物などを例示することができる。
上記有機チタン化合物としては、具体的には、例えば、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラメトキシチタンなどのM−O−R結合(Rはアルキル基を示し、Mはチタン原子を示す)を有するチタンのアルコキシドや、イソプロポキシチタンステアレートなどのM−O−CO−R結合(Rはアルキル基を示し、Mはチタン原子を示す)を有するチタンのアシレートや、ジイソプロポキシチタンビスアセチルアセトナート、ジヒドロキシビスラクタトチタン、ジイソプロポキシビストリエタノールアミナトチタン、ジイソプロポキシビスエチルアセトアセタトチタンなどのチタンのキレートなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。また、これらは単量体、多量体の何れであっても良い。
上記コーティング液中に占める有機金属化合物の含有量は、塗膜の膜厚均一性や一回に塗工できる膜厚などの観点から、好ましくは、1〜20質量%、より好ましくは、3〜15質量%、さらに好ましくは、5〜10質量%の範囲内にあると良い。
また、上記有機金属化合物を溶解させる溶媒としては、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘプタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチルなどの有機酸エステル、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのシクロエーテル類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの酸アミド類、ヘキサンなどの炭化水素類、トルエンなどの芳香族類などを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
この際、上記溶媒量は、上記有機金属化合物の固形分質量に対して、塗膜の膜厚均一性や一回に塗工できる膜厚などの観点から、好ましくは、5〜100倍量、より好ましくは、7〜30倍量、さらに好ましくは、10〜20倍量の範囲内であると良い。
上記溶媒量が100倍量より多くなると、一回のコーティングで形成できる膜厚が薄くなり、所望の膜厚を得るために多数回のコーティングが必要となる傾向が見られる。一方、5倍量より少なくなると、膜厚が厚くなり過ぎ、有機金属化合物の加水分解・縮合反応が十分に進行し難くなる傾向が見られる。したがって、上記溶媒量は、これらを考慮して選択すると良い。
上記コーティング液の調製は、例えば、所定割合となるように秤量した有機金属化合物と、適当な量の溶媒と、必要に応じて添加される他の成分とを、攪拌機などの撹拌手段により所定時間撹拌・混合するなどの方法により調製することができる。この場合、各成分の混合は、1度に混合しても良いし、複数回に分けて混合しても良い。
また、上記コーティング液のコーティング法としては、均一なコーティングが行いやすいなどの観点から、マイクログラビア法、グラビア法、リバースロールコート法、ダイコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スピンコート法、バーコート法など、各種のウェットコーティング法を好適なものとして例示することができる。これらは適宜選択して用いることができ、1種または2種以上併用しても良い。
また、コーティングされたコーティング液を乾燥する場合、公知の乾燥装置などを用いて乾燥させれば良く、この際、乾燥条件としては、具体的には、例えば、80℃〜120℃の温度範囲、0.5分〜5分の乾燥時間などを例示することができる。
また、前駆体薄膜中の有機金属化合物を加水分解・縮合反応させる手段としては、具体的には、例えば、紫外線、電子線、X線等の光エネルギーの照射、加熱など、各種の手段を例示することができる。これらは1種または2種以上組み合わせて用いても良い。これらのうち、好ましくは、光エネルギーの照射、とりわけ、紫外線照射を好適に用いることができる。他の手段と比較した場合、低温、短時間で金属酸化物を生成できるし、熱劣化など、熱による負荷を光透過性高分子フィルムに与え難いからである(とりわけ、紫外線照射の場合は、比較的簡易な設備で済む利点がある。)。また、有機分として、有機金属化合物(その分解物なども含む)などを残存させやすい利点もあるからである。
さらには、ゾルゲル硬化時に光エネルギーを用いるゾル−ゲル法を採用した場合には、スパッタ等により形成した金属酸化物薄膜に比べ、粗な金属酸化物薄膜とすることができる。そのため、建築物の窓ガラスなどに光透過性積層体を水貼り施工した場合に、窓ガラスとの間に水が残ったときでも、良好な水抜け性が得られ、水貼り施工性を向上させることができるなどの利点があるからである。
この際、用いる紫外線照射機としては、具体的には、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、重水素ランプ、エキシマランプ、メタルハライドランプなどを例示することができる。これらは1種または2種以上組み合わせて用いても良い。
また、照射する光エネルギーの光量は、前駆体薄膜を主に形成している有機金属化合物の種類、前駆体薄膜の厚みなどを考慮して種々調節することができる。もっとも、照射する光エネルギーの光量が過度に小さすぎると、金属酸化物薄膜の高屈折率化を図り難くなる。一方、照射する光エネルギーの光量が過度に大きすぎると、光エネルギーの照射の際に生じる熱により光透過性高分子フィルムが変形することがある。したがって、これらに留意すると良い。
照射する光エネルギーが紫外線である場合、その光量は、金属酸化物薄膜の屈折率、光透過性高分子フィルムが受けるダメージなどの観点から、測定波長300〜390nmのとき、好ましくは、300〜8000mJ/cm、より好ましくは、500〜5000mJ/cmの範囲内であると良い。
なお、前駆体薄膜中の有機金属化合物を加水分解・縮合反応させる手段として、光エネルギーの照射を用いる場合、上述したコーティング液中に、有機金属化合物と反応して光吸収性(例えば、紫外線吸収性)のキレートを形成する有機化合物等の添加剤を添加しておくと良い。出発溶液であるコーティング液中に上記添加剤が添加されている場合には、予め光吸収性キレートが形成されたところに光エネルギーの照射がなされるので、比較的低温下において金属酸化物薄膜の高屈折率化を図り得やすくなるからである。
上記添加剤としては、具体的には、例えば、βジケトン類、アルコキシアルコール類、アルカノールアミン類などの添加剤を例示することができる。より具体的には、上記βジケトン類としては、例えば、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、マロン酸ジエチルなどを例示することができる。上記アルコキシアルコール類としては、例えば、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−メトキシ−2−プロパノールなどを例示することができる。上記アルカノールアミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどを例示することができる。これらは1種または2種以上混合されていても良い。
これらのうち、とりわけ、βジケトン類が好ましく、中でもアセチルアセトンを最も好適に用いることができる。
また、上記添加剤の配合割合としては、屈折率の上がりやすさ、塗膜状態での安定性などの観点から、上記有機金属化合物における金属原子1モルに対して、好ましくは、0.1〜2倍モル、より好ましくは、0.5〜1.5倍モルの範囲内にあると良い。
金属酸化物薄膜の膜厚は、日射遮蔽性、視認性、反射色などを考慮して調節することができる。金属酸化物薄膜の膜厚の下限値は、反射色の赤色や黄色の着色を抑制しやすくなる、高透明性が得られやすくなるなどの観点から、好ましくは、10nm以上、より好ましくは、15nm以上、さらに好ましくは、20nm以上であると良い。一方、金属酸化物薄膜の膜厚の上限値は、反射色の緑色の着色を抑制しやすくなる、高透明性が得られやすくなるなどの観点から、好ましくは、90nm以下、より好ましくは、85nm以下、さらに好ましくは、80nm以下であると良い。
金属薄膜の金属としては、銀、金、白金、銅、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、スズ、ニッケル、コバルト、ニオブ、タンタル、タングステン、ジルコニウム、鉛、パラジウム、インジウムなどの金属や、これら金属の合金などが挙げられる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。
金属薄膜の金属としては、積層時の可視光透過性、熱線反射性、導電性などに優れるなどの観点から、銀または銀合金が好ましい。より好ましくは、熱、光、水蒸気などの環境に対する耐久性が向上するなどの観点から、銀を主成分とし、銅、ビスマス、金、パラジウム、白金、チタンなどの金属元素を少なくとも1種以上含んだ銀合金であると良い。さらに好ましくは、銅を含む銀合金(Ag−Cu系合金)、ビスマスを含む銀合金(Ag−Bi系合金)、チタンを含む銀合金(Ag−Ti系合金)等であると良い。銀の拡散抑制効果が大きい、コスト的に有利であるなどの利点があるからである。
銅を含む銀合金を用いる場合、銀、銅以外にも、例えば、銀の凝集・拡散抑制効果に悪影響を与えない範囲内であれば、他の元素、不可避不純物を含有していても良い。
上記他の元素としては、具体的には、例えば、Mg、Pd、Pt、Au、Zn、Al、Ga、In、Sn、Sb、Li、Cd、Hg、AsなどのAgに固溶可能な元素;Be、Ru、Rh、Os、Ir、Bi、Ge、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Si、Tl、Pbなど、Ag−Cu系合金中に単相として析出可能な元素;Y、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ti、Zr、Hf、Na、Ca、Sr、Ba、Sc、Pr、Eu、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、S、Se、TeなどのAgとの金属間化合物を析出可能な元素などを例示することができる。これらは1種または2種以上含有されていても良い。
銅を含む銀合金を用いる場合、銅の含有量の下限値は、添加効果を得る観点から、好ましくは、1原子%以上、より好ましくは、2原子%以上、さらに好ましくは、3原子%以上であると良い。一方、銅の含有量の上限値は、高透明性を確保しやすくなる、スパッタターゲットが作製しやすい等の製造性などの観点から、好ましくは、20原子%以下、より好ましくは、10原子%以下、さらに好ましくは、5原子%以下であると良い。
また、ビスマスを含む銀合金を用いる場合、銀、ビスマス以外にも、例えば、銀の凝集・拡散抑制効果に悪影響を与えない範囲内であれば、他の元素、不可避不純物を含有していても良い。
上記他の元素としては、具体的には、例えば、Mg、Pd、Pt、Au、Zn、Al、Ga、In、Sn、Sb、Li、Cd、Hg、AsなどのAgに固溶可能な元素;Be、Ru、Rh、Os、Ir、Cu、Ge、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Si、Tl、Pbなど、Ag−Bi系合金中に単相として析出可能な元素;Y、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ti、Zr、Hf、Na、Ca、Sr、Ba、Sc、Pr、Eu、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、S、Se、TeなどのAgとの金属間化合物を析出可能な元素などを例示することができる。これらは1種または2種以上含有されていても良い。
ビスマスを含む銀合金を用いる場合、ビスマスの含有量の下限値は、添加効果を得る観点から、好ましくは、0.01原子%以上、より好ましくは、0.05原子%以上、さらに好ましくは、0.1原子%以上であると良い。一方、ビスマスの含有量の上限値は、スパッタターゲットが作製しやすい等の製造性などの観点から、好ましくは、5原子%以下、より好ましくは、2原子%以下、さらに好ましくは、1原子%以下であると良い。
また、チタンを含む銀合金を用いる場合、銀、チタン以外にも、例えば、銀の凝集・拡散抑制効果に悪影響を与えない範囲内であれば、他の元素、不可避不純物を含有していても良い。
上記他の元素としては、具体的には、例えば、Mg、Pd、Pt、Au、Zn、Al、Ga、In、Sn、Sb、Li、Cd、Hg、AsなどのAgに固溶可能な元素;Be、Ru、Rh、Os、Ir、Cu、Ge、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Si、Tl、Pb、Biなど、Ag−Ti系合金中に単相として析出可能な元素;Y、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Zr、Hf、Na、Ca、Sr、Ba、Sc、Pr、Eu、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、S、Se、TeなどのAgとの金属間化合物を析出可能な元素などを例示することができる。これらは1種または2種以上含有されていても良い。
チタンを含む銀合金を用いる場合、チタンの含有量の下限値は、添加効果を得る観点から、好ましくは、0.01原子%以上、より好ましくは、0.05原子%以上、さらに好ましくは、0.1原子%以上であると良い。一方、チタンの含有量の上限値は、膜にした場合、完全な固溶体が得られやすくなるなどの観点から、好ましくは、2原子%以下、より好ましくは、1.75原子%以下、さらに好ましくは、1.5原子%以下であると良い。
なお、上記銅、ビスマス、チタン等の副元素割合は、ICP分析法を用いて測定することができる。また、上記金属薄膜を構成する金属(合金含む)は、部分的に酸化されていても良い。
金属薄膜の膜厚の下限値は、安定性、熱線反射性などの観点から、好ましくは、3nm以上、より好ましくは、5nm以上、さらに好ましくは、7nm以上であると良い。一方、金属薄膜の膜厚の上限値は、可視光の透明性、経済性などの観点から、好ましくは、30nm以下、より好ましくは、20nm以下、さらに好ましくは、15nm以下であると良い。
ここで、金属薄膜を形成する方法としては、具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザーアブレーションなどといった物理的気相成長法(PVD)、熱CVD法、プラズマCVD法などといった化学的気相成長法(CVD)などの気相法などを例示することができる。金属薄膜は、これらのうち何れか1つの方法を用いて形成されていても良いし、あるいは、2つ以上の方法を用いて形成されていても良い。
これら方法のうち、緻密な膜質が得られる、膜厚制御が比較的容易であるなどの観点から、好ましくは、DCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法などのスパッタリング法を好適に用いることができる。
なお、金属薄膜は、後述する後酸化等を受けて、金属薄膜の機能を損なわない範囲内で酸化されていても良い。
金属薄膜に付随するバリア薄膜は、主として、金属薄膜を構成する元素が、金属酸化物薄膜中へ拡散するのを抑制するバリア的な機能を有している。また、金属酸化物薄膜と金属薄膜との間に介在することで、両者の密着性の向上にも寄与しうる。バリア薄膜は、上記拡散を抑制できれば、浮島状など、不連続な部分があっても良い。
バリア薄膜を構成する金属酸化物としては、具体的には、例えば、チタンの酸化物、亜鉛の酸化物、インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウムとスズとの酸化物、マグネシウムの酸化物、アルミニウムの酸化物、ジルコニウムの酸化物、ニオブの酸化物、セリウムの酸化物などを例示することができる。これらは1種または2種以上含まれていても良い。また、これら金属酸化物は、2種以上の金属酸化物が複合した複酸化物であっても良い。なお、バリア薄膜は、上記金属酸化物以外に不可避不純物などを含んでいても良い。
ここで、バリア薄膜としては、金属薄膜を構成する金属の拡散抑制効果に優れる、密着性に優れるなどの観点から、金属酸化物薄膜中に含まれる金属の酸化物より主に構成されていると良い。
より具体的には、例えば、金属酸化物薄膜としてTiO薄膜を選択した場合、バリア薄膜は、TiO薄膜中に含まれる金属であるTiの酸化物より主に構成されるチタン酸化物薄膜であると良い。
また、バリア薄膜がチタン酸化物薄膜である場合、当該バリア薄膜は、当初からチタン酸化物として形成された薄膜であっても良いし、金属Ti薄膜が後酸化されて形成された薄膜、または、部分酸化されたチタン酸化物薄膜が後酸化されて形成された薄膜等であっても良い。
バリア薄膜は、金属酸化物薄膜と同じように主に金属酸化物から構成されるが、金属酸化物薄膜よりも膜厚が薄く設定される。これは、金属薄膜を構成する金属の拡散は、原子レベルで生じるので、屈折率を十分確保するのに必要な膜厚まで厚くする必要性が低いからである。また、薄く形成することで、その分、成膜コストが安価になり、光透過性積層体の製造コストの低減にも寄与することができる。
バリア薄膜の膜厚の下限値は、バリア性を確保しやすくなるなどの観点から、好ましくは、1nm以上、より好ましくは、1.5nm以上、さらに好ましくは、2nm以上であると良い。一方、バリア薄膜の膜厚の上限値は、経済性などの観点から、好ましくは、15nm以下、より好ましくは、10nm以下、さらに好ましくは、8nm以下であると良い。
バリア薄膜が主にチタン酸化物より構成される場合、チタン酸化物における酸素に対するチタンの原子モル比Ti/Oの下限値は、バリア性などの観点から、1.0/4.0以上、より好ましくは、1.0/3.8以上、さらに好ましくは、1.0/3.5以上、さらにより好ましくは、1.0/3.0以上、最も好ましくは、1.0/2.8以上であると良い。
バリア薄膜が主にチタン酸化物より構成される場合、チタン酸化物における酸素に対するチタンの原子モル比Ti/Oの上限値は、可視光の透明性などの観点から、好ましくは、1.0/0.5以下、より好ましくは、1.0/0.7以下、さらに好ましくは、1.0/1.0以下、さらにより好ましくは、1.0/1.2以下、最も好ましくは、1.0/1.5以下であると良い。
上記Ti/O比は、当該薄膜の組成から算出することができる。当該薄膜の組成分析方法としては、極めて薄い薄膜の組成を比較的正確に分析することが可能な観点から、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDX)を好適に用いることができる。
具体的な組成分析方法について説明すると、先ず、超薄切片法(ミクロトーム)などを用いて、分析対象となる当該薄膜を含む薄膜層の断面方向の厚みが100nm以下の試験片を作製する。次いで、断面方向から薄膜層と当該薄膜の位置を、透過型電子顕微鏡(TEM)により確認する。次いで、EDX装置の電子銃から電子線を放出させ、分析対象となる当該薄膜の膜厚中央部近傍に入射させる。試験片表面から入射した電子は、ある深さまで入り込み、各種の電子線やX線を発生させる。この際の特性X線を検出して分析することで、当該薄膜の構成元素分析を行うことができる。
バリア薄膜は、緻密な膜を形成できる、数nm〜数十nm程度の薄膜を均一な膜厚で形成できるなどの観点から、気相法を好適に利用することができる。
上記気相法としては、具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、MBE法、レーザーアブレーションなどといった物理的気相成長法(PVD)、熱CVD法、プラズマCVD法などといった化学的気相成長法(CVD)などを例示することができる。上記気相法としては、真空蒸着法などと比較して膜界面の密着性に優れる、膜厚制御が容易であるなどの観点から、DCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法などのスパッタリング法を好適に用いることができる。
なお、上記薄膜層に含まれる各バリア薄膜は、これら気相法のうち何れか1つの方法を利用して形成されていても良いし、あるいは、2つ以上の方法を利用して形成されていても良い。
また、上記バリア薄膜は、上述した気相法を利用し、当初から金属酸化物薄膜として成膜しても良いし、あるいは、一旦、金属薄膜や部分酸化された金属酸化物薄膜を成膜した後、これを事後的に酸化して形成することも可能である。なお、部分酸化された金属酸化物薄膜とは、さらに酸化される余地がある金属酸化物薄膜を指す。
当初から金属酸化物薄膜として成膜する場合、具体的には、例えば、スパッタリングガスとしてのアルゴン、ネオンなどの不活性ガスに、さらに反応性ガスとして酸素を含むガスを混合し、金属と酸素とを反応させながら薄膜を形成すれば良い(反応性スパッタリング法)。反応性スパッタリング法を用いて、例えば、上記Ti/O比を有するチタン酸化物薄膜を得る場合、雰囲気中の酸素濃度(不活性ガスに対する酸素を含むガスの体積割合)は、上述した膜厚範囲を考慮して最適な割合を適宜選択すれば良い。
一方、金属薄膜や部分酸化された金属酸化物薄膜を成膜した後、これを事後的に後酸化する場合、具体的には、光透過性基板上に上述した薄膜層を形成した後、薄膜層中の金属薄膜や部分酸化された金属酸化物薄膜を後酸化させる等すれば良い。なお、金属薄膜の成膜には、スパッタリング法等を、部分酸化された金属酸化物薄膜の成膜には、上述した反応性スパッタリング法等を用いれば良い。
また、後酸化手法としては、加熱処理、加圧処理、化学処理、自然酸化等を例示することができる。これら後酸化手法のうち、比較的簡単かつ確実に後酸化を行うことができるなどの観点から、加熱処理が好ましい。上記加熱処理としては、例えば、上述した薄膜層を有する光透過性高分子フィルムを加熱炉等の加熱雰囲気中に存在させる方法、温水中に浸漬する方法、マイクロ波加熱する方法や、薄膜層中の金属薄膜や部分酸化された金属酸化物薄膜等を通電加熱する方法などを例示することができる。これらは1または2以上組み合わせて行っても良い。
上記加熱処理時の加熱条件としては、具体的には、例えば、好ましくは、30℃〜60℃、より好ましくは、32℃〜57℃、さらに好ましくは、35℃〜55℃の加熱温度、加熱雰囲気中に存在させる場合、好ましくは、5日間以上、より好ましくは、10日間以上、さらに好ましくは、15日間以上の加熱時間から選択すると良い。上記加熱条件の範囲内であれば、後酸化効果、光透過性高分子フィルム12の熱変形・融着抑制等が良好だからである。
また、上記加熱処理時の加熱雰囲気は、大気中、高酸素雰囲気中、高湿度雰囲気中など酸素や水分の存在する雰囲気が好ましい。特に好ましくは、製造性、低コスト化等の観点から、大気中であると良い。
薄膜層中に上述した後酸化薄膜を含んでいる場合には、後酸化時に、金属酸化物薄膜中に含まれていた水分や酸素が消費されているため、太陽光が当たっても金属酸化物薄膜が化学反応し難くなる。具体的には、例えば、金属酸化物薄膜がゾル−ゲル法により形成されている場合、後酸化時に、金属酸化物薄膜中に含まれていた水分や酸素が消費されているため、金属酸化物薄膜中に残存していたゾル−ゲル法による出発原料(金属アルコキシド等)と水分(吸着水等)・酸素等とが、太陽光によってゾルゲル硬化反応し難くなる。そのため、硬化収縮等の体積変化によって生じる内部応力を緩和することが可能となり、薄膜層の界面剥離等を抑制しやすくなる等、太陽光に対する耐久性を向上させやすくなる。
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
実施例および比較例に係る遮熱性粘着フィルムとして、基材フィルムと、基材フィルムの一方面に形成された概略以下の3層薄膜からなる薄膜層と、基材フィルムの他方面に形成された粘着剤層と、を有する遮熱性粘着フィルムを作製した。
実施例および比較例に係る遮熱性粘着フィルムは、基材フィルムの一方面に、ゾル−ゲル法及びUV照射によるTiO薄膜(1層目)│チタン酸化物薄膜/Ag−Cu合金薄膜/チタン酸化物薄膜(2層目)│ゾル−ゲル法及びUV照射によるTiO薄膜(3層目)が順に積層されてなる薄膜層を有している。
なお、チタン酸化物薄膜は、金属Ti薄膜が熱酸化されて形成されたものであり、これがバリア薄膜に該当する。このチタン酸化物薄膜は、Ag−Cu合金薄膜に付随する薄膜として、Ag−Cu合金薄膜に含めて積層数を数えている。
以下、具体的な作製手順を示す。
(コーティング液の調製)
先ず、ゾル−ゲル法によるTiO薄膜の形成に使用するコーティング液を調製した。すなわち、チタンアルコキシドとして、テトラ−n−ブトキシチタン4量体(日本曹達(株)製、「B4」)と、紫外線吸収性のキレートを形成する添加剤として、アセチルアセトンとを、n−ブタノールとイソプロピルアルコールとの混合溶媒に配合し、これを攪拌機を用いて10分間混合することにより、コーティング液を調製した。この際、テトラ−n−ブトキシチタン4量体/アセチルアセトン/n−ブタノール/イソプロピルアルコールの配合は、それぞれ6.75質量%/3.38質量%/59.87質量%/30.00質量%とした。
(薄膜層の形成)
基材フィルムとして、一方面に易接着層を有する厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、「コスモシャイン(登録商標)A4100」)(以下、「PETフィルム」という。)を用い、このPETフィルムの易接着層面側とは反対側の面(PET面)側に、1層目として、TiO薄膜を以下の手順により成膜した。
すなわち、PETフィルムのPET面側に、マイクログラビアコーターを用いて、所定の溝容積のグラビアロールで上記コーティング液を連続的に塗工した。次いで、インラインの乾燥炉を用いて、塗工膜を乾燥させ、TiO薄膜の前駆体膜を形成した。次いで、インラインの紫外線照射機〔高圧水銀ランプ(160W/cm)〕を用いて、上記塗工時と同線速で、上記前駆体膜に対して連続的に紫外線を照射した。これによりPETフィルム上にTiO薄膜(1層目)を成膜した。
次に、1層目の上に、2層目を構成する各薄膜を成膜した。
すなわち、DCマグネトロンスパッタ装置を用い、1層目のTiO薄膜上に、下側の金属Ti薄膜をスパッタリングにより成膜した。次いで、この下側の金属Ti薄膜上に、Ag−Cu合金薄膜をスパッタリングにより成膜した。次いで、このAg−Cu合金薄膜上に、上側の金属Ti薄膜をスパッタリングにより成膜した。
次に、3層目として、2層目の上に、(ゾルゲル+UV)によるTiO薄膜を成膜した。
次に、得られた薄膜層付きフィルムを、加熱炉内にて、大気中で加熱処理することにより、薄膜層中に含まれる金属Ti薄膜を熱酸化させ、チタン酸化物薄膜とした。
なお、TiO薄膜の屈折率(測定波長は633nm)は、FilmTek3000(Scientific Computing International社製)により測定した。
また、金属Ti薄膜を熱酸化させて形成したチタン酸化物薄膜についてEDX分析を行い、Ti/O比を次のようにして求めた。
すなわち、薄膜層付きフィルムをミクロトーム(LKB(株)製、「ウルトロームV2088」)により切り出し、分析対象となるチタン酸化物薄膜(バリア薄膜)を含む薄膜層の断面方向の厚みが100nm以下の試験片を作製した。作製した試験片の断面を、電界放出型電子顕微鏡(HRTEM)(日本電子(株)製、「JEM2001F」)により確認した。そして、EDX装置(分解能133eV以下)(日本電子(株)製、「JED−2300T」)を用い、この装置の電子銃から電子線を放出させ、分析対象となるチタン酸化物薄膜(バリア薄膜)の膜厚中央部近傍に入射させ、発生した特性X線を検出して分析することにより、チタン酸化物薄膜(バリア薄膜)の構成元素分析を行った。
また、合金薄膜中の副元素(Cu)含有量を次のようにして求めた。すなわち、各成膜条件において、別途、ガラス基板上にAg−Cu合金薄膜を形成した試験片を作製し、この試験片を6%HNO溶液に浸漬し、20分間超音波による溶出を行った後、得られた試料液を用いて、ICP分析法の濃縮法により測定した。
また、各薄膜の膜厚を、上記電界放出型電子顕微鏡(HRTEM)(日本電子(株)製、「JEM2001F」)による試験片の断面観察から測定した。
表1に、薄膜層の詳細な層構成を示す。
(粘着剤液の調製)
表2、3に記載の配合組成(質量部)となるように各成分をトルエンに溶解することにより、粘着剤液を調製した。なお、各成分の詳細は以下に示す通りである。
(スチレン系エラストマー)
・セプトン2063:SEPS(クラレ社製)、スチレン含有率15質量%
・セプトン2002:SEPS(クラレ社製)、スチレン含有率30質量%
・セプトン8007L:SEBS(クラレ社製)、スチレン含有率30質量%
・タフテックH1051:SEBS(旭化成ケミカルズ社製)、スチレン含有率70質量%
(可塑剤)
・パラフィンオイル:出光興産社製「PW90」
(光安定剤)
・Tinuvin326:BASF社製
(酸化防止剤)
・Irganox1010:BASF社製
(シランカップリング剤)
・KBM−1003:ビニル基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製)
・KBM−303:エポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製)
・KBM−503:メタクリロキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製)
・KBM−603:アミノ基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製)
・KBM−846:スルフィド基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製)
(粘着剤層の形成)
上記粘着剤液を上記PETフィルムの易接着層面の上にブレード法で塗工し、130℃で乾燥することにより、粘着剤層(厚み30μm)を形成した。
作製した各遮熱性粘着フィルムについて、自己粘着性を評価した。また、ガラスに対する密着性(初期、経時)を測定した。また、光学特性(可視光透過率、遮蔽係数)、耐久性を評価した。測定方法、評価方法、評価基準は、以下に示す通りである。なお、各遮熱性粘着フィルムは、厚さ3mmのフロートガラスの片面に貼り付けた。
(自己粘着性)
図3に示すように、遮熱性粘着フィルム1の一端側を支持体2にテープ3で固定し、粘着面1aを外側にして遮熱性粘着フィルム1を180°湾曲させた状態で、他端側の辺を幅50mm、厚み3mmのガラス板4の一辺に合わせ、ガラス板4の一辺から対向する他辺に向かって支持体2を移動させながらガラス板4の面に遮熱性粘着フィルム1の粘着面1aを合わせることにより、ガラス板4に遮熱性粘着フィルム1を貼り合わせた。貼り合わせ速度は1.0m/分とした。貼り合わせ後、45mm×55mmの範囲内でガラス面4aと粘着面1aの界面に残存する空気層が占める面積の割合を計測した。空気層が占める面積が小さいほど、自己粘着性に優れる。
(密着性)
自己粘着性の評価で行った貼り合わせ方法と同じ方法で、ガラス面に遮熱性粘着フィルムの粘着面を合わせることにより、ガラス板に遮熱性粘着フィルムを貼り合わせた。ただし、貼り合わせは、施工液を用いない方法、施工液A(水のみ)を用いた方法、施工液B(中性洗剤「チャーミーVクイック」0.1質量%含有水)を用いた方法の3方法で行った。施工液A、Bは、霧吹きを用い、貼り合わせ前にガラス面および粘着面の両方に吹き付けた上で貼り合せ、貼り合せ後に再度フィルム表面に施工液A、Bを霧吹きで吹き付け、ヘラで表面を擦って貼り合せ界面から施工液を押し出して密着させた。貼り合わせてから所定時間経過後に、JIS K6854−2に規定される180度剥離法により、密着力(N/25mm)を測定した。なお、サンプルの幅は50mm、引張速度は50mm/分とした。
(リワーク性)
(密着性)で説明する施工液Aを用いた方法で、ガラス板に遮熱性粘着フィルムを貼り合せた後、3時間経過時に剥離、再貼り付け、すなわちリワーク性の可否を確認した。フィルムが折れたりガラス面に糊が残る等の問題がある場合はリワーク不可、とした。
(施工性)
幅50cm×長さ100cmの粘着フィルムを窓ガラスに貼り合せ、貼り合せ後に界面に残留した空気の量、リワーク性の可否(フィルムが折れたりガラス面に糊が残る等の問題がある場合はリワーク不可)を評価した。貼り合せは(密着性)の場合と同様、施工液を用いない方法、施工液Aを用いた方法、施工液Bを用いた方法の3方法で行った。霧吹きの代わりにシャワー、ヘラも大型のものを用いた。なお貼り合せを行った者は施工技能士ではない。リワーク性が不可であれば×、リワーク性が良好で、残留空気の量もゼロであれば◎、少量の空気が残れば〇、大量に空気が残れば△と判定した。
(可視光透過率)
JIS A5759に準拠し、分光光度計(島津製作所(株)製、「UV3100」)を用いて、波長300〜1000nmの透過スペクトルを測定し、計算により求めた。
(日射遮蔽係数)
JIS A5759に準拠して測定した。分光光度計(島津製作所製「UV3100」)を用い、波長300〜2500nmの透過スペクトル、反射スペクトルを測定することにより、日射透過率、日射反射率を計算し、日射透過率、日射反射率、修正放射率から日射遮蔽係数を計算により求めた。
(耐久性)
ガラス面側からガラス面に貼り着けた遮熱性粘着フィルムの粘着剤層にUV照射を行った。下記条件において、粘着面で遮熱性粘着フィルムの剥離が生じたものを不良「B」、剥離が生じなかったものを良好「A」とした。
照射条件:
・光フィルター(分光透過率:275nmで2%以下、400nmで90%以上)
・平均放電電圧電流(50V±1V、60A±1.2A)
・ブラックパネル温度計の示す温度(63℃±3℃)
・試験片表面の放射照度(255(±10%)W/m、300〜700nmにおいて)
・水の噴射(120分分照射中に18分間水噴射を行う)
・光源:カーボンサンシャインアーク1灯
実施例の粘着剤組成物によれば、自己粘着性を有し、初期の密着性が低いので、施工液Bを用いなくても、水のみからなる施工液Aを使い、また施工液を使わなくとも遮熱性粘着フィルムの位置を調整して位置ずれなく、気泡やシワなく貼り着けられた。なお施工液Aを使う方が施工液を使わない場合よりも容易に高品質な貼り付けを行うことができた。そして、圧力で遮熱性粘着フィルムをガラスに密着させなくても、密着性の増加により優れた密着性を有することが確認できた。1か月後の密着力は3N/25mmを超えガラスが割れても飛散せず安全性が付与されることが確認できた。
これに対し、比較例3から、感圧式の粘着剤では、粘着性が強いため、施工液を用いないと貼り直しができなかった。また、水のみからなる施工液Aでは、ガラス面上での遮熱性粘着フィルムの滑りが悪く、界面活性剤を添加した施工液Bを用いないと、遮熱性粘着フィルムの位置を調整することが困難であり、また密着力が強いため密着界面から空気を押し出すことが困難であった。
そして、実施例1〜11、比較例4〜6および比較例2から、スチレン系エラストマーのスチレン含有率が40質量%以下であると、自己粘着性に優れることがわかる。特に、スチレン系エラストマーのスチレン含有率が20質量%以下であると、自己粘着性が極めて高く、可塑剤を配合しなくても高いレベルの自己粘着性を示すことがわかる。また、経時で密着力が向上し、貼り合わせ後1カ月で密着力が3N/25mmを超えるため、ガラスが破損したときにガラスが飛散するのを防ぐガラス飛散防止機能を有することもわかる。
図4(a)に示すように、実施例1〜2のスチレン含有率が20質量%以下であるスチレン系エラストマーは、球状のミクロ層分離構造を有するのに対し、図4(b)に示すように、比較例5〜6のスチレン含有率が20質量%超であるスチレン系エラストマーは、紐状のミクロ層分離構造を有する。スチレン含有率の違いからこれらのスチレン系エラストマーはミクロ層分離構造が異なると推察される。スチレン含有率が20質量%以下であるスチレン系エラストマーは、球状のミクロ層分離構造を有するために、変形しやすく、ガラス面への濡れ性が高くなって、優れた自己粘着性および経時で密着力の増加を示すものと推察される。なお、その粒径は0.1μmよりも小さくなっている。
また、実施例では、施工方法の違いによっても、経時での密着力の増加に違いがあることがわかる。施工液A(水のみ)を用いた方法が最も経時での密着力の増加が大きく、次いで、施工液を用いない方法、施工液Bを用いた方法の順で経時での密着力の増加が小さくなっていることがわかる。
なお、比較例1では、スチレン系エラストマーのスチレン含有率が30質量%であるが、20質量%未満ではなく、可塑剤やシランカップリング剤、粘着付与樹脂も配合していないので、自己粘着性が低い。比較例2では、スチレン系エラストマーのスチレン含有率が60質量%超であるため、可塑剤を配合しても自己粘着性が極めて低い。比較例4〜6では、密着力の上昇が小さい。
そして、実施例1と実施例2、比較例1と比較例5から、可塑剤を配合することにより、自己粘着性が向上し、初期の密着性を向上できることがわかる。また、実施例1と実施例4〜8、比較例6と実施例10、比較例1と実施例9から、シランカップリング剤を配合することにより、自己粘着性が向上し、初期の密着性を向上できることがわかる。また、経時で増加する密着力を大きくすることができることがわかる。シランカップリング剤のうちでは、アミノ基を有するシランカップリング剤を含有するものは、自己粘着性が特に優れることがわかる。また、ビニル基、メタクリロキシ基、またはアミノ基を有するシランカップリング剤を含有するものは、経時で増加する密着力が特に大きいことがわかる。
そして、実施例の遮熱性粘着フィルムによれば、光透過性、遮熱性、耐久性に優れ、光学特性を満足することも確認できた。
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
10 遮熱性粘着フィルム
12 基材フィルム
14 薄膜層
20 硬化樹脂層
22 粘着剤層
24 セパレータ
30 被着体

Claims (16)

  1. スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体、または、スチレン−エチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体が含まれるスチレン含有率が40質量%以下のスチレン系エラストマーを含有し、
    施工液として水を用いて被着体に貼着したときの、JIS−A−5759に準拠し、引張速度50mm/分の条件で測定される初期の密着力が0.5N/25mm以下であり、被着体に貼着してから1カ月経過後の密着力が3.0N/25mm以上であることを特徴とするフィルム用粘着剤組成物。
  2. 前記スチレン系エラストマーのスチレン含有率が20質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム用粘着剤組成物。
  3. さらにシランカップリング剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム用粘着剤組成物。
  4. 前記シランカップリング剤が、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、または、スルフィド基を有するシランカップリング剤であることを特徴とする請求項3に記載のフィルム用粘着剤組成物。
  5. 可塑剤を含有しないことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のフィルム用粘着剤組成物。
  6. さらに可塑剤を含有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のフィルム用粘着剤組成物。
  7. 前記可塑剤がパラフィンオイルであることを特徴とする請求項6に記載のフィルム用粘着剤組成物。
  8. 前記可塑剤の含有量が、前記スチレン系エラストマー100質量部に対し、1〜60質量部の範囲内であることを特徴とする請求項6または7に記載のフィルム用粘着剤組成物。
  9. さらに酸化防止剤、光安定剤の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のフィルム用粘着剤組成物。
  10. 請求項1から9のいずれか1項に記載のフィルム用粘着剤組成物を用いて形成される粘着剤層をフィルム面に有することを特徴とする粘着フィルム。
  11. 請求項10に記載の粘着フィルムにおいて、さらに金属薄膜が含まれる単層または複数層からなる薄膜層を有することを特徴とする遮熱性粘着フィルム。
  12. 前記金属薄膜の金属が銀または銀合金であることを特徴とする請求項11に記載の遮熱性粘着フィルム。
  13. 請求項10に記載の粘着フィルムを、滑り性を付与する添加剤を含有しない水を用いて被着体の面に貼り着けることを特徴とする粘着フィルムの施工方法。
  14. 前記滑り性を付与する添加剤が界面活性剤であることを特徴とする請求項13に記載の粘着フィルムの施工方法。
  15. 請求項11または12に記載の遮熱性粘着フィルムを、滑り性を付与する添加剤を含有しない水を用いて被着体の面に貼り着けることを特徴とする遮熱性粘着フィルムの施工方法。
  16. 前記滑り性を付与する添加剤が界面活性剤であることを特徴とする請求項15に記載の遮熱性粘着フィルムの施工方法。
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