JP2017003662A - 誘電体多層膜フィルム - Google Patents

誘電体多層膜フィルム Download PDF

Info

Publication number
JP2017003662A
JP2017003662A JP2015115085A JP2015115085A JP2017003662A JP 2017003662 A JP2017003662 A JP 2017003662A JP 2015115085 A JP2015115085 A JP 2015115085A JP 2015115085 A JP2015115085 A JP 2015115085A JP 2017003662 A JP2017003662 A JP 2017003662A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
refractive index
layer
film
dielectric multilayer
multilayer film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2015115085A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6536188B2 (ja
Inventor
力 安井
Chikara Yasui
力 安井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Konica Minolta Inc
Original Assignee
Konica Minolta Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Konica Minolta Inc filed Critical Konica Minolta Inc
Priority to JP2015115085A priority Critical patent/JP6536188B2/ja
Publication of JP2017003662A publication Critical patent/JP2017003662A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6536188B2 publication Critical patent/JP6536188B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Optical Filters (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)
  • Adhesive Tapes (AREA)
  • Adhesives Or Adhesive Processes (AREA)

Abstract

【課題】剥離時の粘着剤(糊)残りや基体に再貼合した際の可視光透過率の低下を抑えつつ、過酷な条件(特に高温)下でのフィルムの剥がれを抑制・防止する手段を提供する。【解決手段】低屈折率層および高屈折率層が少なくとも1つ以上積層された誘電体多層膜と、粘着層と、を有する誘電体多層膜フィルムであって、前記高屈折率層および前記低屈折率層の少なくとも1層が、水溶性高分子を含有し、水貼り直後の粘着力が0.5〜15gf/25mmであり、かつプローブタック試験のピーク値が100〜500N/mm2である、誘電体多層膜フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、誘電体多層膜フィルムに関する。
高屈折率層と低屈折率層とをそれぞれの光学的膜厚を調整して交互に積層させた積層膜(誘電体多層膜)は、特定の波長の光を選択的に反射することが理論的に裏付けられており、かような積層膜は、可視光線を透過し、近赤外線を選択的に反射することができる。したがって、かような積層膜は、建築物の窓や車輌用部材などに用いる熱線遮蔽用の反射膜(熱線反射膜)として用いられている。
熱線反射膜をフィルム上に形成した赤外(熱線)遮蔽フィルムは、建築物の窓や車輌用部材に貼り付けて用いられる。かような誘電体多層膜フィルムは、可視光線を透過させ、近赤外線を選択的に遮蔽するが、各層の膜厚や屈折率を調整するだけで、反射波長をコントロールすることができ、紫外線や可視光を反射することが可能である。
上記誘電体多層膜の形成方法としては、一般的には乾式製膜法で積層する方法があるが、乾式製膜法による熱線反射膜の形成は、多くの製造コストを要するため、実用的ではない。実用的な方法としては、水溶性樹脂および無機微粒子の混合物を含む塗布液を、湿式塗布方式により塗布して積層する方法(例えば、特許文献1参照)や、樹脂膜を積層する方法(例えば、特許文献2参照)が挙げられる。
国際公開第2012/014607号 特表2008−528313号公報
上記特許文献1に開示された技術によれば、高い遮熱特性を有する誘電体多層膜フィルムを得ることができる。通常、誘電体多層膜フィルムは、ガラスなどの基体に水貼り法により貼合される。しかしながら、過酷な条件(特に高温)下では、誘電体多層膜フィルムの端部が基体から剥離することがある。また、上記剥離を抑制するために、粘着層の密着性を上げると、剥離時に粘着剤(糊)が残ったり、剥離したフィルムを再度基体に貼合した際の可視光透過率が過度に低下することがある。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、剥離時の粘着剤(糊)残りや基体に再貼合した際の可視光透過率の低下を抑えつつ、過酷な条件(特に高温)下でのフィルムの剥がれを抑制・防止する手段を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、粘着層の粘着力(水貼り直後の粘着力)およびタック性(プローブタック試験のピーク値)を適切な範囲に調節することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、上記目的は、低屈折率層および高屈折率層が少なくとも1つ以上積層された誘電体多層膜と、粘着層と、を有する誘電体多層膜フィルムであって、前記高屈折率層および前記低屈折率層の少なくとも1層が、水溶性高分子を含有し、水貼り直後の粘着力が0.5〜15gf/25mmであり、かつプローブタック試験のピーク値が100〜500N/mmである、誘電体多層膜フィルムによって達成できる。
本発明の誘電体多層膜フィルムによれば、剥離時の粘着剤(糊)残りや基体に再貼合した際の可視光透過率の低下を抑えつつ、過酷な条件(特に高温)下でのフィルムの剥がれを抑制・防止できる。
本発明の誘電体多層膜フィルムは、低屈折率層および高屈折率層が少なくとも1つ以上積層された誘電体多層膜と、粘着層と、を有する。ここで、本発明は、(a)前記高屈折率層および前記低屈折率層の少なくとも1層が、水溶性高分子を含有し、(b)水貼り直後の粘着力が0.5〜15gf/25mmであり、かつプローブタック試験のピーク値が100〜500N/mmであることを特徴とする。以下、本明細書では、本発明の誘電体多層膜フィルムを単に「誘電体多層膜フィルム」または単に「フィルム」とも称する。
粘着層の粘着力およびタック性を上記(b)の構成によるように調節することによって、上記課題を解決できる。ここで、上記(b)の構成により上記課題を解決できるメカニズムは下記のように推測される。なお、本発明は、下記メカニズムによって限定されない。誘電体多層膜フィルムは、高屈折率層と低屈折率層とをそれぞれの光学的膜厚を調整して交互に積層させた積層膜であり、一般的にガラスなどの基体に水貼り法により貼合される。しかしながら、過酷な条件(特に高温)下では、フィルムが収縮してカールするため、端部が基体から剥離する。このため、中東などの高温地帯で誘電体多層膜フィルムをガラスなどの基体に水貼りしても短時間で端部から剥離してしまう。上記問題を解決する方法としては粘着層の密着性(粘着力)を上げることがある。しかし、粘着層の密着性(粘着力)を上げると、粘着力の高い粘着層を有するフィルムを水貼り後に基体から剥がすと、過酷な条件(特に高温)下でも端部が基体から剥離することは少なくなるまたはなくなるものの、基体からフィルムを剥がした後の基体に粘着剤が残ったり、誘電多層膜を構成する隣接する屈折率層のいずれかが剥離(層間剥離)してしまう。また、基体との密着性(粘着力)が強すぎて、いっきに剥離すると粘着面に凹凸を生じる(粘着面があれる;ジッピング)。ゆえに、このようなフィルムを再度基体に貼合した(リワーク)際には可視光透過率の低下を引き起こす。その一方で、タック性を上げると、剥離時に滑らかに剥離せず、やはり粘着面に凹凸が生じる(粘着面があれる;ジッピング)。ゆえに、このようなフィルムを再度基体に貼合した(リワーク)際には可視光透過率の低下を引き起こす。上記点を考慮して、本発明者は、粘着層の粘着力(水貼り直後の粘着力)およびタック性(プローブタック試験のピーク値)との最適なバランスについて鋭意検討した結果、上記(b)の構成を満たす粘着層を誘電体多層膜に設置することによって、剥離時の粘着剤(糊)残りや基体に再貼合した際の可視光透過率の低下を抑えつつ、過酷な条件(特に高温)下でのフィルムの剥がれを抑制・防止できることを見出したのである。
また、上記(a)の構成によるように、高屈折率層および/または低屈折率層に水溶性高分子を用いることにより、金属酸化物材料のみで形成される無機膜の誘電体多層膜に比して層の柔軟性が向上するため、膜割れを有効に防ぐことができる。また、各層間の密着性を向上させることができる。さらに、塗布等により誘電体多層膜を製膜できるため、均一でかつ大面積な製膜が容易である。また、製膜速度を上げることができるため、製造コストや量産の点からも好ましい。加えて、高温で製膜する必要がないため、基材の選択範囲が広く、温度変化による誘電体多層膜と他の層(例えば、樹脂フィルム)との間のまたは誘電体多層膜(積層形態の場合)間の収縮率差に起因する層の剥離を有効に防止できる。さらに、水溶性高分子を含む誘電体多層膜は、上述したように、柔軟性に優れるため、柔軟な基板に対しても適用でき、曲げ部分などに割れやキズなどの発生を抑制できる。
したがって、本発明の誘電体多層膜フィルムは剥離時の粘着剤(糊)残りや層間剥離、さらには基体に再貼合した際の可視光透過率の低下を抑えつつ、過酷な条件(特に高温)下でのフィルムの剥がれを抑制・防止できる。
以下、本発明の誘電体多層膜フィルムに係る実施の形態を説明する。なお、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
≪誘電体多層膜フィルム≫
本発明の誘電体多層膜フィルムは、低屈折率層および高屈折率層が少なくとも1つ以上積層された誘電体多層膜と、粘着層とを必須に有する。好ましくは、本発明の誘電体多層膜フィルムは、誘電体多層膜と粘着層とが接した(誘電体多層膜上に粘着層が形成した)構造を有する。本発明に係る誘電体多層膜において、高屈折率層および低屈折率層の少なくとも1層は、水溶性高分子を含有する。また、本発明の誘電体多層膜フィルムは、上記誘電体多層膜及び粘着層とを必須に有するが、上記に加えて他の部材を有していてもよい。例えば、最表層(ハードコート層)が、粘着層に対し誘電体多層膜を介して反対側に配置されてもよい。すなわち、本発明の誘電体多層膜フィルムは、粘着層、誘電体多層膜、最表層の順に形成されている構成であってもよい。さらに、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記各層の間に、その他の機能層や基材を有していてもよい。
以下、本発明の誘電体多層膜フィルムの各構成要素について、詳細に説明する。
[粘着層]
まず、本発明の誘電体多層膜フィルムにおける特徴的な要素である、粘着層について説明する。
本発明に係る粘着層は、水貼り直後の粘着力が0.5〜15gf/25mmであり、かつプローブタック試験のピーク値が100〜500N/mmである。ここで、水貼り直後の粘着力が0.5gf/25mm未満であると、過酷な条件(特に高温)下では、フィルム端部が基体から剥離してしまう。逆に、水貼り直後の粘着力が15gf/25mmを超えると、基体と粘着層との密着が強すぎて、剥離時に基体に粘着剤が残ったり、基体からフィルムを剥がす際に誘電体多層膜の層間剥離が起こる。また、プローブタック試験のピーク値が100N/mm未満であると、剥離時に基体に粘着剤が残ったり、基体からフィルムを剥がす際に誘電体多層膜の層間剥離が起こる。このため、フィルムを再度基体に貼合した(リワーク)際には可視光透過率の低下を引き起こす。逆に、プローブタック試験のピーク値が500N/mmを超えると、剥離後の粘着層の表面荒れが生じ光学特性が低下する。水貼り直後の粘着力は、好ましくは1〜15gf/25mm、より好ましくは5〜12gf/25mm、特に好ましくは6〜10gf/25mmである。このような粘着力(水貼り直後の粘着力)であれば、過酷な条件(特に高温)下でもフィルム端部が基体から剥離することをより有効に抑制・防止できる。また、タック性(プローブタック試験のピーク値)は、好ましくは100〜400N/mm、より好ましくは100〜350N/mm、特に好ましくは100〜300N/mmである。このようなタック性(プローブタック試験のピーク値)であれば、剥離時の基体への粘着剤残りや誘電体多層膜の層間剥離をより有効に抑制・防止できる。ゆえに、このような粘着層を有する誘電体多層膜フィルムは、いったん基体から剥がした後再貼合(リワーク)しても、可視光透過率の低下をより有効に抑制・防止できる。本明細書において、水貼り直後の粘着力およびプローブタック試験のピーク値は、それぞれ、下記実施例における(水貼り直後の粘着力の測定)および(プローブタック試験のピーク値の測定)に記載される方法に従って測定された値を採用する。
本発明に係る粘着層は、上述したような水貼り直後の粘着力およびプローブタック試験のピーク値を有するものであるが、このような水貼り直後の粘着力およびプローブタック試験のピーク値はいずれの材料から構成されてもよい。具体的には、粘着層は、粘着剤、前記粘着剤を硬化させる(適切な粘着力を付与する)ための硬化剤(架橋剤)を含む粘着剤組成物によって形成されることが好ましく、粘着剤、前記粘着剤を硬化させるための硬化剤(架橋剤)および適切なタック性を付与するためのシランカップリング剤を含む粘着剤組成物によって形成されることがより好ましい。
ここで、粘着層を構成する粘着剤としては、粘着層が上記特性を満たすことができるものであれば特に制限されず、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルアセタール系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤などを例示することができる。本発明の誘電体多層膜フィルムは、窓ガラスに貼り合わせる場合、窓に水を吹き付け、濡れた状態のガラス面に本誘電体多層膜フィルムの粘着層を合わせる貼り方、いわゆる水貼り法が張り直し、位置直し等の観点で好適に用いられる。そのため、水が存在する湿潤下では粘着力が弱い、(メタ)アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
使用される(メタ)アクリル系粘着剤は、溶剤系およびエマルジョン系どちらでもよいが、粘着力等を高め易いことから、溶剤系粘着剤が好ましく、その中でも溶液重合で得られたものが好ましい。このような溶剤系アクリル系粘着剤を溶液重合で製造する場合の原料としては、例えば、骨格となる主モノマーとして、一分子中に1個の(メタ)アクリル基を有するものが挙げられる。より具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)スクシネート等の脂肪族(メタ)アクリレート;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)テトラヒドロフタレート、モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)ヘキサヒドロフタレート等の脂環式(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、α−ブチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、α−エチル−6,7−エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基とエポキシ基を有する化合物;(2−エチル−2−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(2−メチル−2−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、2−(2−エチル−2−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−メチル−2−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、3−(2−エチル−2−オキセタニル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(2−メチル−2−オキセタニル)プロピル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基とオキセタニル基を有する化合物;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのエチレン性不飽和基とイソシアネート基を有する化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基とヒドロキシル基を有する化合物が挙げられる。これらのうち、アクリル系接着剤は、主モノマーとして、タック性の向上の観点から、脂肪族(メタ)アクリレートを有することが好ましく、ブチル(メタ)アクリレート等のような低いガラス転移温度(Tg)を有することがより好ましい。また、上記主モノマーに加えて、アクリル系接着剤は、他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。ここで、他のモノマーは、特に制限されないが、凝集力を向上させるためのコモノマーとして、酢酸ビニル、アクリルニトリル、スチレン、メチルメタクリレート等、さらに架橋を促進し、安定した粘着力を付与させ、また水の存在下でもある程度の粘着力を保持するために官能基含有モノマーとして、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
また、粘着剤は、市販品を使用してもよく、具体的には、東洋インキ社製BPS5978、日本合成化学工業(株)製コーポニール(例えば、N−2147、5697、5698、5705L)などが使用できる。
硬化剤(架橋剤)は、上記粘着剤を硬化できるものであれば特に制限されない。例えば、アクリル系粘着剤を使用する場合には、アクリル系粘着剤中に存在する水酸基との反応性を考慮すると、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する硬化剤が好ましい。このような硬化剤としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト(HDI)、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添化トリレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。また、これらの有機ポリイソシアネートと2官能以上のポリオールとの反応で得られるイソシアネートのポリオールアダクト、ポリメリックポリイソシアネート、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等も使用可能である。これらのうち、適切な粘着力(水貼り直後の粘着力)の調節のしやすさなどを考慮すると、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)が好ましい。また、硬化剤は、市販品を使用してもよく、具体的には、日本ポリウレタン工業(株)製のコロネートL、コロネート3041、コロネート2030、コロネート2031、コロネートHL、コロネートHX、ミリオネートMTL、ミリオネートMR、住化バイエル社製のDesmodur Z4470SN、三菱化学株式会社製のNY260A、NY718A、NY730A等が使用できる。
また、シランカップリング剤は、基体(例えば、ガラス)に対するタック性を付与できるものであれば特に制限されない。具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤などが挙げられる。これらのうち、基体(例えば、ガラス)に対する適切なタック性の調節のしやすさなどを考慮すると、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが好ましい。また、硬化剤は、市販品を使用してもよく、具体的には、信越化学工業(株)のKBMシリーズ、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、東レ・ダウ社製等が使用できる。
すなわち、本発明の好ましい形態によると、粘着層は、粘着剤、硬化剤およびシランカップリング剤を含む。本発明のより好ましい形態によると、粘着層は、(メタ)アクリル系粘着剤(特にアクリル系粘着剤)、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する硬化剤およびシランカップリング剤を含む。
粘着剤の組成は、本発明に係る水貼り直後の粘着力及びプローブタック試験のピーク値が本願発明に係る範囲に含まれる限りは特に制限されないが、本発明に係る水貼り直後の粘着力及びプローブタック試験のピーク値は、粘着層における硬化剤の含有量、シランカップリング剤の含有量、硬化剤とシランカップリング剤との混合比および粘着層の膜厚(乾燥膜厚)の少なくとも一を制御することによって達成できる。
例えば、粘着層が粘着剤、硬化剤およびシランカップリング剤を含む場合における、粘着層における硬化剤の含有量は、粘着剤(特にアクリル系粘着剤)100質量部に対して、好ましくは0.02質量部以上0.7質量部未満、より好ましくは0.05〜0.6質量部、さらにより好ましくは0.1〜0.5質量部、特に好ましくは0.4〜0.5質量部である。このような量であれば、本発明に係る水貼り直後の粘着力及びプローブタック試験のピーク値をより容易に達成できる。また、十分な粘着力を付与して、本発明の誘電体多層膜フィルムを粘着層を介して基体に十分固定化できる。さらに、粘着剤(特にアクリル系粘着剤)と十分反応して粘着層に適度な柔軟性やタック性を付与し、過酷な条件(特に高温)下での基体からの剥離をより有効に抑制・防止できる。加えて、本発明の誘電体多層膜フィルムは、再度基体に貼合した(リワーク)後であっても可視光透過率が高く維持できる。
また、粘着層におけるシランカップリング剤の含有量は、粘着剤(特にアクリル系粘着剤)100質量部に対して、好ましくは0.06質量部以上4質量部未満、より好ましくは0.1〜3質量部、さらにより好ましくは0.2〜1.8質量部、特に好ましくは0.8〜1質量部である。このような量であれば、本発明に係る水貼り直後の粘着力及びプローブタック試験のピーク値をより容易に達成できる。また、粘着層のタック性をより適切な範囲に調節できるので、剥離時の基体への粘着剤残りや誘電体多層膜の層間剥離をより有効に抑制・防止できる。ゆえに、このような粘着層を有する誘電体多層膜フィルムは、いったん基体から剥がした後再貼合(リワーク)しても、可視光透過率の低下をより有効に抑制・防止できる。
さらに、粘着層における硬化剤とシランカップリング剤との混合比(硬化剤:シランカップリング剤の質量比)は、好ましくは1:0.3を超えて25以下、より好ましくは1:0.5〜20、さらにより好ましくは1:1を超えて15以下、特に好ましくは1:1.5〜3である。このような混合比であれば、本発明に係る水貼り直後の粘着力及びプローブタック試験のピーク値をより容易に達成できる。また、粘着層の粘着性とタック性をより最適な範囲に制御できるため、過酷な条件(特に高温)下でもフィルム端部が基体から剥離することをより有効に抑制・防止できる。同時に、剥離時の基体への粘着剤残りや誘電体多層膜の層間剥離をより有効に抑制・防止できる。ゆえに、このような粘着層を有する誘電体多層膜フィルムは、いったん基体から剥がした後再貼合(リワーク)しても、可視光透過率の低下をより有効に抑制・防止できる。
すなわち、本発明の好ましい形態によると、粘着剤は、アクリル系粘着剤であり;硬化剤は、前記アクリル系粘着剤100質量部に対して、0.02質量部以上0.7質量部未満の割合で含まれ;シランカップリング剤は、前記アクリル系粘着剤100質量部に対して、0.06質量部以上4質量部未満の割合で含まれる。
上記に加えて、本発明に係る粘着層の厚み(乾燥膜厚)は、好ましくは1〜70μm、より好ましくは2〜50μm、さらにより好ましくは5〜40μm、特に好ましくは10〜30μmである。このような厚みであれば、粘着層は十分な粘着力を発揮して、本発明の誘電体多層膜フィルムを粘着層を介して基体に十分固定化できる。このため、過酷な条件(特に高温)下でもフィルム端部が基体から剥離することをより有効に抑制・防止できる。また、剥離時の基体への粘着剤残りや誘電体多層膜の層間剥離をより有効に抑制・防止できる。なお、本明細書において、粘着層表面が平滑でない場合の、粘着層の厚み(乾燥膜厚)は、粘着層の厚み(乾燥膜厚)の最大値を採用する。
粘着層の形成方法は、特に制限されないが、粘着剤を構成する成分(例えば、粘着剤、硬化剤、シランカップリング剤)を含む粘着層用塗布液を基材(セパレータフィルム)上に塗布した後乾燥する方法が好ましい。以下、上記好ましい方法について詳細に説明する。なお、本発明は下記方法に限定されない。
ここで、粘着層用塗布液を塗布する基材(セパレータフィルム)は、粘着層の粘着性を保護することができるものであればよく、例えば、アクリルフィルムまたはシート、ポリカーボネートフィルムまたはシート、ポリアリレートフィルムまたはシート、ポリエチレンナフタレートフィルムまたはシート、ポリエチレンテレフタレートフィルムまたはシート、シリコーンフィルムまたはシート、フッ素フィルムなどのプラスチックフィルムまたはシート、または酸化チタン、シリカ、アルミニウム粉、銅粉などを練り込んだ樹脂フィルムまたはシート、これらを練り込んだ樹脂にコーティングを施したりアルミニウム等の金属を金属蒸着したりなどの表面加工を施した樹脂フィルムまたはシートが用いられる。
基材(セパレータフィルム)の厚さは、特に制限されないが、通常12〜250μmの範囲であることが好ましい。上記基材は、2枚重ねたものであっても良く、この場合、その種類が同じでも異なってもよい。また、上記基材は、必要であれば剥離性を付与するために剥離性付与剤をコーティングされてもよい。
粘着層用塗布液は、粘着剤を構成する成分(例えば、粘着剤、硬化剤、シランカップリング剤)を適当な溶媒に添加することにより調製される。ここで、粘着層用塗布液を調製するための溶媒は、上記粘着剤を構成する成分を適当に溶解または分散できるものであれば特に制限されないが、水、有機溶媒またはその混合溶媒が好ましい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類、ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などが挙げられる。これら有機溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
粘着層用塗布液における溶媒の使用量は特に制限されないが、粘着層の形成しやすさなどを考慮すると、粘着層用塗布液における粘着剤の濃度が好ましくは40〜80質量%、より好ましくは50〜70質量%程度になるような量である。また、粘着層用塗布液における硬化剤及びシランカップリング剤の含有量は特に制限されないが、上記したような粘着層の組成となるような量に設定されることが好ましい。
粘着層用塗布液は、粘着剤、硬化剤、シランカップリング剤を含むことが好ましいが、上記に加えて、他の成分をさらに含んでもよい。ここで、他の成分としては、特に制限されず、粘着層に使用されるのと同様の成分が採用される。例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料などが挙げられる。ここで、紫外線吸収剤としては特に制限はないが、例えば、チアゾリドン系、ベンゾトリアゾール系、アクリロニトリル系、ベンゾフェノン系、アミノブタジエン系、トリアジン系、サリチル酸フェニル系、ベンゾエート系などの有機系の紫外線吸収剤、あるいは酸化セリウム、酸化マグネシウムなどの微粉末系の紫外線遮断剤や酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄等の無機系の紫外線吸収剤などが挙げられる。これらのうち、有機系の紫外線吸収剤や無機系の紫外線吸収剤が好ましく、トリアジン系紫外線吸収剤や無機系紫外線吸収剤がより好ましい。また、酸化防止剤としては特に制限はないが、例えば、フェノール系酸化防止剤、チオール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤などが挙げられる。光安定剤としては特に制限はないが、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられる。他の成分の添加量は特に制限されず、所望の効果に応じて適切に調節できる。
粘着層用塗布液の塗布方法は、特に制限はなく、公知の手法が同様にして採用できる。具体的には、ワイヤーバーによるコーティング、スピンコーティング、ディップコーティングなどの手法が採用されうる。また、ダイコーター、グラビアコーター、コンマコーターなどの連続塗布装置でも塗布することが可能である。
また、粘着層用塗布液の基材への塗布量もまた特に制限されないが、上記したような粘着層の厚みになるような量であることが好ましい。
上記したようにして基材に粘着層用塗布液を塗布した後、塗膜を乾燥する。これにより,粘着層が基材上に形成される。ここで、乾燥条件は、本発明に係る水貼り直後の粘着力及びタック性(プローブタック試験のピーク値)を有する粘着層が形成できる条件であれば、特に制限されない。具体的には、乾燥温度は、好ましくは60〜100℃、より好ましくは75〜90℃である。また、乾燥時間は、好ましくは1〜15分、より好ましくは1〜5分である。
上記したようにして、粘着層が基材(セパレータフィルム)上に形成された粘着層付フィルムが製造される。この粘着層付フィルムを下記で詳述される誘電体多層膜と、誘電体多層膜の最外屈折率層と粘着付フィルムの粘着層とが接するように貼合することにより、本発明の誘電体多層膜フィルムが製造される。なお、上記では、粘着層を基材(セパレータフィルム)上に形成したが、粘着層を直接誘電体多層膜上に形成してもよい。この場合であっても、上記方法が同様にしてまたは一部修飾して適用できる。
[誘電体多層膜]
誘電体多層膜は、少なくとも1つの低屈折率層と高屈折率層とが少なくとも1つ以上積層された積層体である。本発明に係る誘電体多層膜は、太陽光線、赤外線、可視光線、または紫外線を反射する機能を発現するものであり、前記高屈折率層および前記低屈折率層の少なくとも1層は、水溶性高分子を含む。このように水溶性高分子を用いることにより、金属酸化物材料のみで形成される無機膜の誘電体多層膜に比して層の柔軟性が向上するため、膜割れを有効に防ぐことができる。また、各層間の密着性を向上させることができる。さらに、塗布等により誘電体多層膜を製膜できるため、均一でかつ大面積な製膜が容易である。また、製膜速度を上げることができるため、製造コストや量産の点からも好ましい。加えて、高温で製膜する必要がないため、基材の選択範囲が広く、温度変化による誘電体多層膜と他の層(例えば、樹脂フィルム)との間のまたは誘電体多層膜(積層形態の場合)間の収縮率差に起因する層の剥離を有効に防止できる。さらに、水溶性高分子を含む誘電体多層膜は、上述したように、柔軟性に優れるため、柔軟な基板に対しても適用でき、曲げ部分などに割れやキズなどの発生を抑制できる。なお、誘電体多層膜は、水溶性高分子に加えて、例えば、金属酸化物材料、その他の添加剤等の他の物質を含んでもよい。ここで、金属酸化物材料としては、可視光を透過し、熱線(赤外線)を反射するものであれば特に制限されず、具体的には以下に詳述する。
誘電体多層膜は、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層された交互積層体の形態を有することが好ましい。なお、本明細書中、他方に対して屈折率の高い屈折率層を高屈折率層と、他方に対して屈折率の低い屈折率層を低屈折率層と称する。本明細書において、「高屈折率層」および「低屈折率層」なる用語は、隣接した2層の屈折率差を比較した場合に、屈折率が高い方の屈折率層を高屈折率層とし、低い方の屈折率層を低屈折率層とすることを意味する。したがって、「高屈折率層」および「低屈折率層」なる用語は、誘電体多層膜を構成する各屈折率層において、隣接する2つの屈折率層に着目した場合に、各屈折率層が同じ屈折率を有する形態以外のあらゆる形態を含むものである。
前記高屈折率層と前記低屈折率層とは、以下のように考える。例えば、高屈折率層を構成する成分(以下、高屈折率層成分)と低屈折率層を構成する成分(以下、低屈折率層成分)とが、2つの層の界面で混合され、高屈折率層成分と低屈折率層成分とを含む層(混合層)が形成される場合がある。この場合、混合層において、高屈折率層成分が50質量%以上である部位の集合を高屈折率層とし、低屈折率層成分が50質量%を超える部位の集合を低屈折率層とする。具体的には、低屈折率層が、例えば、低屈折率成分として第1の金属酸化物を、また、高屈折率層は高屈折率成分として第2の金属酸化物を含有している場合、これらの積層膜における膜厚方向での金属酸化物濃度プロファイルを測定し、その組成によって、高屈折率層または低屈折率層とみなすことができる。積層膜の金属酸化物濃度プロファイルは、スパッタ法を用いて表面から深さ方向へエッチングを行い、XPS表面分析装置を用いて、最表面を0nmとして、0.5nm/minの速度でスパッタし、原子組成比を測定することで観測することが出来る。また、低屈折率成分または高屈折率成分に金属酸化物粒子が含有されておらず、高屈折率層または低屈折率層の一方が水溶性樹脂(有機バインダー)のみから形成されている積層体においても、同様にして、水溶性樹脂(有機バインダー)濃度プロファイルにて、例えば、膜厚方向での炭素濃度を測定することにより混合領域が存在していることを確認し、さらにその組成をEDXにより測定することで、スパッタでエッチングされた各層が、高屈折率層または低屈折率層とみなすことができる。
誘電体多層膜における高屈折率層および低屈折率層の層数(屈折率層の総数)は、特に制限はないが、好ましくは6〜2000(すなわち、3〜1000ユニット)であり、より好ましくは10〜1000(すなわち、5〜500ユニット)であり、さらに好ましくは10〜500(すなわち、5〜250ユニット)である。層数が2000を超えるとヘイズが高くなり、6未満であると所望の反射率に達しないことがある。また、本発明の誘電体多層膜フィルムは、上記基材上にユニットを少なくとも1つ以上有する構成であればよい。例えば、積層膜の最下層および最表層は、高屈折率層および低屈折率層のいずれであってもよい。しかしながら、低屈折率層が最下層および最外層(最表層)に位置する層構成とすることにより、最下層の隣接層(例えば、基体)への密着性、最上層の吹かれ耐性に優れるという観点から、最下層および最外層(最表層)が低屈折率層である層構成が好ましい。
誘電体多層膜において、高屈折率層は、より高い屈折率が好ましいが、屈折率が、好ましくは1.70〜2.50であり、より好ましくは1.80〜2.20である。また、低屈折率層は、より低い屈折率が好ましいが、屈折率が、好ましくは1.10〜1.60であり、より好ましくは1.30〜1.55であり、さらに好ましくは1.30〜1.50である。
誘電体多層膜においては、高屈折率層と低屈折率層との屈折率の差を大きく設計することが、少ない層数で熱線反射率を高くすることができる観点から好ましい。高屈折率層および低屈折率層から構成されるユニットの少なくとも1つにおいて、隣接する該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.2以上であり、さらに好ましくは0.25以上である。誘電体多層膜が低屈折率層および高屈折率層のユニットを複数有する場合には、全てのユニットにおける低屈折率層と高屈折率層との屈折率差が上記好適な範囲内にあることが好ましい。ただし、誘電体多層膜の最表層や最下層に関しては、上記好適な範囲外の構成であってもよい。
特定波長領域の反射率は、隣接する2層(高屈折率層と低屈折率層)の屈折率差と積層数で決まり、屈折率差が大きいほど、少ない層数で同じ反射率を得られる。この屈折率差と必要な層数については、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。例えば、赤外反射率(赤外遮蔽率)90%以上を得るためには、屈折率差が0.1より小さいと、100層を超える積層が必要になり、生産性が低下するだけでなく、積層界面での散乱が大きくなり、透明性が低下する。反射率の向上と層数を少なくする観点からは、屈折率差に上限はないが、実質的には1.4程度である。
上記屈折率は、高屈折率層、低屈折率層の屈折率を下記の方法に従って求め、両者の差分として求める。すなわち、(必要により基材を用いて)各屈折率層を単層で作製し、このサンプルを10cm×10cmに断裁した後、下記の方法に従って屈折率を求める。分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定面とは反対側の面(裏面)を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率を25点測定して平均値を求め、その測定結果より平均屈折率を求める。
また、単層膜でみたとき層表面における反射光と、層底部における反射光の光路差を、n・d=波長/4、で表される関係にすると位相差により反射光を強めあうよう制御出来、反射率を上げることができる。ここで、nは屈折率、またdは層の物理膜厚、n・dは光学膜厚である。この光路差を利用することで、反射を制御出来る。この関係を利用して、各層の屈折率と膜厚を制御して、可視光や、近赤外光の反射を制御する。即ち、各層の屈折率、各層の膜厚、各層の積層のさせ方で、特定波長領域の反射率をアップさせることができる。
本発明の誘電体多層膜フィルムは反射率をアップさせる特定波長領域を変えることにより、可視光反射フィルムや近赤外線反射フィルムとすることができる。即ち、反射率をアップさせる特定波長領域を可視光領域に設定すれば可視光線反射フィルムとなり、近赤外領域に設定すれば近赤外線反射フィルムとなる。近赤外反射フィルムの場合、JIS R3106:1998で示される可視光領域の550nmでの透過率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。また、1200nmでの透過率が35%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。かような好適な範囲となるように光学膜厚とユニットを設計することが好ましい。また、波長900nm〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。
太陽光の入射スペクトルのうち赤外域が特に室内温度上昇に関係するため、近赤外光を遮蔽することが室内温度の上昇を抑えるのに特に有効である。日本工業規格JIS R3106:1998に記載された重価係数をもとに赤外の最短波長(760nm)から最長波長3200nmまでの累積エネルギー比率をみてみると、波長760nmから最長波長3200nmまでの赤外全域の総エネルギーを100としたときの、760nmから各波長までの累積エネルギーをみると、760から1300nmのエネルギー合計が赤外域全体の約75%を占めている。従って、1300nmまでの波長領域を遮蔽することが熱線遮蔽による省エネルギー効果の効率がよい。
低屈折率層及び高屈折率層の1層あたりの厚み(乾燥後の厚み)は、20〜1000nmであることが好ましく、50〜500nmであることがより好ましく、100〜300nmであることがさらにより好ましく、100〜200nmであることが特に好ましい。低屈折率層および高屈折率層の厚みは、同じであってもまたは異なるものであってもよい。各屈折率層の1層あたりの厚みは、ダイスの押出口におけるフィルム厚さ方向の幅を変更すること、および/または延伸条件により、調節することができる。なお、積層体を延伸する場合は、上記膜厚は延伸後の厚さを示す。ここで、1層あたりの厚さを測定する場合、高屈折率層と低屈折率層とは、これらの間に明確な界面をもっていても、連続的に組成が変化する構造であってもよい。界面から組成が連続的に変化している場合には、それぞれの層が混合し屈折率が連続的に変化する領域中で、最大屈折率−最小屈折率=Δnとした場合、2層間の最小屈折率+Δn/2の地点を層界面とみなす。
低屈折率層及び高屈折率層で使用される水溶性高分子は特に制限されない。各屈折率層は、塗布やスピンコートなどの成膜方法で水溶性高分子を用いて形成できる。これらの方法は簡便であり、基材の耐熱性を問わないので選択肢が広く、特に樹脂基材に対して有効な成膜方法といえる。たとえば塗布型ならばロール・ツー・ロール法などの大量生産方式が採用でき、コスト面でもプロセス時間面でも有利になる。また、水溶性高分子材料を含む膜はフレキシブル性が高いため、生産時や運搬時に巻き取りを行っても、これらの欠陥が発生しづらく、取扱性に優れているという長所がある。
屈折率層に含まれる水溶性高分子は、特に制限されず、特表2002−509279号公報(米国特許第6,049,419号明細書に相当する)に記載のものを用いることができる。具体例としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)およびその異性体(例えば、2,6−、1,4−、1,5−、2,7−および2,3−PEN)、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、およびポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリイミド(例えば、ポリアクリルイミド)、ポリエーテルイミド、アタクチックポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメタクリレート(例えば、ポリイソブチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、およびポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリアクリレート(例えば、ポリブチルアクリレート、およびポリメチルアクリレート)、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、アセチルセルロース、セルロースプロピオネート、アセチルセルロースブチレート、および硝酸セルロース)、ポリアルキレンポリマー(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン、ポリイソブチレン、およびポリ(4−メチル)ペンテン)、フッ素化ポリマー(例えば、パーフルオロアルコキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、およびポリクロロトリフルオロエチレン)、塩素化ポリマー(例えば、ポリ塩化ビニリデンおよびポリ塩化ビニル)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリエーテルアミド、アイオノマー樹脂、エラストマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレンおよびネオプレン)、ならびにポリウレタンが挙げられる。コポリマー、例えば、PENのコポリマー[例えば、(a)テレフタル酸もしくはそのエステル、(b)イソフタル酸もしくはそのエステル、(c)フタル酸もしくはそのエステル、(d)アルカングリコール、(e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタノールジオール)、(f)アルカンジカルボン酸、および/または(g)シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)と2,6−、1,4−、1,5−、2,7−、および/または2,3−ナフタレンジカルボン酸またはそれらのエステルとのコポリマー]、ポリアルキレンテレフタレートのコポリマー[例えば、(a)ナフタレンジカルボン酸もしくはそのエステル、(b)イソフタル酸もしくはそのエステル、(c)フタル酸もしくはそのエステル、(d)アルカングリコール、(e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタノールジオール)、(f)アルカンジカルボン酸、および/または(g)シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)と、テレフタル酸もしくはそのエステルとのコポリマー]、並びにスチレンコポリマー(例えば、スチレン−ブタジエンコポリマー、およびスチレン−アクリロニトリルコポリマー)、4,4−ビス安息香酸およびエチレングリコールも適している。さらに、各層はそれぞれ、2種またはそれ以上の上記のポリマーまたはコポリマーのブレンド(例えば、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)とアタクチックポリスチレンとのブレンド)を包含してよい。本形態において、高屈折率層および低屈折率層を形成するポリマーの好ましい組み合わせとしては、PEN/PMMA、PET/PMMA、PE/PMMA、PE/ポリフッ化ビニリデン、PEN/ポリフッ化ビニリデン、PEN/PET、PEN/ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
また、ポリマーとして、特開2010−184493号に記載のポリマーを用いてもよい。具体的には、ポリエステル(以下、ポリエステルAとする)と、エチレングリコール、スピログリコールおよびブチレングリコールの少なくとも3種のジオール由来の残基を含んでいるポリエステル(以下、ポリエステルBとする)とを、用いることができる。ポリエステルAは、ジカルボン酸成分とジオール成分とが重縮合して得られる構造を有するものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンジフェニルレートなどが挙げられる。ポリエステルAは共重合体であってもよい。ここで、共重合ポリエステルとは、ジカルボン酸成分とジオール成分が合わせて少なくとも3種以上用いて重縮合して得られる構造を有する。ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。グリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。ポリエステルAは、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートであることが好ましい。
上記ポリエステルBは、エチレングリコール、スピログリコールおよびブチレングリコールの少なくとも3種のジオール由来の残基を含んでいる。典型的な例としては、エチレングリコール、スピログリコールおよびブチレングリコールを用いて共重合して得られる構造を有した共重合ポリエステルや該3種のジオールを用いて重合して得られる構造を有したポリエステルをブレンドして得られるポリエステルがある。この構成だと成形加工がしやすくかつ層間剥離もしにくいために好ましい。また、ポリエステルBが、テレフタル酸/シクロヘキサンジカルボン酸の少なくとも2種のジカルボン酸由来の残基を含むポリエステルであることが好ましい。このようなポリエステルには、テレフタル酸/シクロヘキサンジカルボン酸を共重合したコポリエステル、またはテレフタル酸残基を含むポリエステルとシクロヘキサンジカルボン酸残基を含むポリエステルをブレンドして得られるものがある。シクロヘキサンジカルボン酸残基を含んだポリエステルは、A層の面内平均屈折率とB層の面内平均屈折率の差が大きくなり、高反射率なものが得られる。また、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成形時に過延伸になることがなりにくく、かつ層間剥離もしにくいために好ましい。
その他、ポリマーとして水溶性高分子を用いることも好ましい。水溶性高分子は、有機溶剤を用いないため、環境負荷が少なく、また、柔軟性が高いため、屈曲時の膜の耐久性が向上するため好ましい。水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩などの合成水溶性高分子;ゼラチン、増粘多糖類などの天然水溶性高分子などが挙げられる。これらの中で、特に好ましい例としては、製造時のハンドリングと膜の柔軟性の点から、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン類及びそれを含有する共重合体、ゼラチン、増粘多糖類(特にセルロース類)が挙げられる。これらの水溶性高分子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用して用いてもよい。
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、変性ポリビニルアルコールも含まれる。変性ポリビニルアルコールとしては、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、ノニオン変性ポリビニルアルコール、ビニルアルコール系ポリマーが挙げられる。
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1,500〜5,000のものが好ましく用いられる。また、ケン化度は、70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものが特に好ましい。
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号および同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体、シラノール基を有するシラノール変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基やカルボニル基、カルボキシル基などの反応性基を有する反応性基変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。またビニルアルコール系ポリマーとして、エクセバール(商品名:(株)クラレ製)やニチゴーGポリマー(商品名:日本合成化学工業(株)製)などが挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど2種類以上を併用することもできる。
本発明に適用可能なゼラチンとしては、石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンを使用してもよく、さらにゼラチンの加水分解物、ゼラチンの酵素分解物を用いることもできる。
本発明で用いることのできる増粘多糖類としては、例えば、一般に知られている天然単純多糖類、天然複合多糖類、合成単純多糖類及び合成複合多糖類に挙げることができ、これら多糖類の詳細については、「生化学事典(第2版),東京化学同人出版」、「食品工業」第31巻(1988)21頁等を参照することができる。
本発明でいう増粘多糖類とは、糖類の重合体であり分子内に水素結合基を多数有するもので、温度により分子間の水素結合力の違いにより、低温時の粘度と高温時の粘度差が大きな特性を備えた多糖類であり、さらに金属酸化物微粒子を添加すると、低温時にその金属酸化物微粒子との水素結合によると思われる粘度上昇を起こすものであり、その粘度上昇幅は、添加することにより40℃における粘度が1.0mPa・s以上の上昇を生じる多糖類であり、好ましくは5.0mPa・s以上であり、更に好ましくは10.0mPa・s以上の粘度上昇能を備えた多糖類である。
本発明に適用可能な増粘多糖類としては、例えば、β1−4グルカン(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等)、ガラクタン(例えば、アガロース、アガロペクチン等)、ガラクトマンノグリカン(例えば、ローカストビーンガム、グアラン等)、キシログルカン(例えば、タマリンドガム等)、グルコマンノグリカン(例えば、蒟蒻マンナン、木材由来グルコマンナン、キサンタンガム等)、ガラクトグルコマンノグリカン(例えば、針葉樹材由来グリカン)、アラビノガラクトグリカン(例えば、大豆由来グリカン、微生物由来グリカン等)、グルコラムノグリカン(例えば、ジェランガム等)、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸等)、アルギン酸及びアルギン酸塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、ファーセレラン等の紅藻類に由来する天然高分子多糖類等が挙げられる。特に後述するように金属酸化物粒子を含有する場合には、金属酸化微粒子の分散安定性を低下させない観点から、好ましくは、その構成単位がカルボン酸基やスルホン酸基を有しないものが好ましい。その様な多糖類としては、例えば、L−アラビトース、D−リボース、2−デオキシリボース、D−キシロースなどのペントース、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、D−ガラクトースなどのヘキソースのみからなる多糖類であることが好ましい。具体的には、主鎖がグルコースであり、側鎖がキシロースであるキシログルカンとして知られるタマリンドシードガムや、主鎖がマンノースで側鎖がガラクトースであるガラクトマンナンとして知られるグアーガム、ローカストビーンガム、タラガムや、主鎖がガラクトースで側鎖がアラビノースであるアラビノガラクタンを好ましく使用することができる。上記増粘多糖類は、1種を単独で使用してもまたは2種以上を併用してもよい。
水溶性高分子の重量平均分子量は、1,000以上200,000以下が好ましい。さらには、3,000以上40,000以下がより好ましい。本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて下記測定条件下で測定した値を採用する。
本発明においては、バインダーである水溶性高分子を硬化させるため、硬化剤を使用してもよい。
本発明に適用可能な硬化剤としては、水溶性高分子と硬化反応を起こすものであれば特に制限はないが、水溶性高分子がポリビニルアルコールの場合には、ホウ酸及びその塩が好ましいが、その他にも公知のものが使用でき、一般的には水溶性高分子と反応し得る基を有する化合物あるいは水溶性高分子が有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、水溶性高分子の種類に応じて適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリス−アクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
水溶性高分子がゼラチンの場合には、例えば、ビニルスルホン化合物、ホルマリン、尿素−ホルマリン縮合物、メラニン−ホルマリン縮合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、活性オレフィン類、イソシアネート系化合物などの有機硬膜剤、クロム、アルミニウム、ジルコニウムなどの無機多価金属塩類などを挙げることができる。
また、屈折率層中、水溶性高分子の含有量は、各屈折率層の全固形分に対して、例えば、好ましくは5〜75質量%であり、より好ましくは10〜70質量%である。水溶性高分子の含有量が5質量%以上であると、湿式製膜法で低屈折率層を形成する場合に、塗布して得られた塗膜の乾燥時に、膜面が乱れによる透明性の劣化を防止できることから好ましい。一方、水溶性高分子の含有量が75質量%以下であると、低屈折率層中に金属酸化物粒子を含有する場合に好適な含有量となり、低屈折率層と高屈折率層との屈折率差を大きくできることから好ましい。なお、本明細書において、水溶性高分子の含有量は、蒸発乾固法の残固形分より求められる。具体的には、誘電体多層膜フィルムを95℃の熱水に2時間浸し、残ったフィルムを除去した後、熱水を蒸発させ、得られた固形物の量を水溶性高分子量とする。この際、IR(赤外分光)スペクトルにおいて1700〜1800cm−1、900〜1000cm−1、および800〜900cm−1の領域にそれぞれ1つずつピークが見られる場合、その水溶性高分子はポリビニルアルコールであると断定することができる。
誘電多層膜の好適な形態は、大面積化が可能であり、コスト的に安価となること、また屈曲時や高温高湿時の膜の耐久性が向上することからポリマーを用いることが好ましく、誘電多層膜がポリマーのみで構成される形態か、誘電多層膜がポリマーと金属酸化物とを含む形態であることが好ましい。すなわち、誘電体多層膜フィルムにおける低屈折率層または高屈折率層の少なくとも一方は、金属酸化物(粒子)を含有することが好ましい。金属酸化物粒子を含有することで各屈折率層間の屈折率差を大きくすることができ、反射特性が向上する。低屈折率層および高屈折率層の双方が金属酸化物粒子を含有することにより、屈折率差をより大きくすることができる。金属酸化物粒子を含むことにより、積層数を低減することができ、薄膜とすることができる。層数を減らすことで、生産性が向上し、積層界面での散乱による透明性の減少を抑制することができる。
金属酸化物粒子としては、金属酸化物を構成する金属が、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi及び希土類金属からなる群より選ばれる1種または2種以上の金属である金属酸化物を用いることができる。
高屈折率層に用いる金属酸化物粒子としては、例えば、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化バリウム、酸化インジウム、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズ、酸化鉛、ならびにこれら酸化物より構成される複酸化物であるニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム、アルミニウム・マグネシウム酸化物(MgAl)などが挙げられる。
また、金属酸化物粒子として、希土類酸化物を用いることもでき、具体的には、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム等も挙げられる。
高屈折率層に用いられる金属酸化物粒子としては、屈折率が1.90以上の金属酸化物粒子が好ましく、例えば、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛等を挙げることができる。中でも、透明でより屈折率の高い高屈折率層を形成することのできることから、二酸化チタンが好ましく、特にルチル型(正方晶形)酸化チタン粒子を用いることが好ましい。高屈折率層に用いられる金属酸化物粒子は、1種単独であってもよいし、2種以上併用してもよい。
また、本発明において、高屈折率層の金属酸化物として酸化チタンが好ましいが、酸化チタンは含ケイ素の水和酸化物で被覆されたコアシェル粒子の形態であってもよい。当該コアシェル粒子は、酸化チタン粒子の表面を、コアとなる酸化チタンに含ケイ素の水和酸化物からなるシェルが被覆してなる構造を有する。かようなコアシェル粒子を高屈折率層に含有させることで、シェル層の含ケイ素の水和酸化物と水溶性樹脂との相互作用により、低屈折率層と高屈折率層との層間混合が抑制されうる。ここで、「被覆」とは、酸化チタン粒子の表面の少なくとも一部に、含ケイ素の水和酸化物が付着されている状態を意味する。すなわち、金属酸化物粒子として用いられる酸化チタン粒子の表面が、完全に含ケイ素の水和酸化物で被覆されていてもよく、酸化チタン粒子の表面の一部が含ケイ素の水和酸化物で被覆されていてもよい。被覆された酸化チタン粒子の屈折率が含ケイ素の水和酸化物の被覆量により制御される観点から、酸化チタン粒子の表面の一部が含ケイ素の水和酸化物で被覆されることが好ましい。以下ではこのような被覆された酸化チタン粒子を「シリカ付着二酸化チタンゾル」とも称する。酸化チタン粒子を含ケイ素の水和酸化物で被覆する方法としては、従来公知の方法により製造することができ、例えば、特開平10−158015号公報、特開2000−204301号公報、特開2007−246351号公報等に記載された事項を参照することができる。
高屈折率層で用いられる金属酸化物粒子の体積平均粒径は、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、ヘイズ値が低く可視光透過率に優れる観点から1〜50nmであることがさらに好ましく、5〜40nmであることがより好ましい。なお、ここで体積平均粒径とは、粒子そのものをレーザー回折散乱法、動的光散乱法、あるいは電子顕微鏡を用いて観察する方法や、屈折率層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法により、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2・・・di・・・dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2・・・ni・・・nk個存在する粒子状の金属酸化物の集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径である。
高屈折率層における金属酸化物粒子の含有量としては、高屈折率層の固形分100質量%に対して、熱線遮蔽の観点および曲面形状のガラスにフィルムを適用した場合の色ムラ低減の観点から、20〜80質量%であることが好ましく、30〜75質量%であることがより好ましく、40〜70質量%であることがさらに好ましい。
また、低屈折率層に用いられる金属酸化物粒子としては、二酸化ケイ素を用いることが好ましく、コロイダルシリカを用いることが特に好ましい。低屈折率層に含まれる金属酸化物粒子(好ましくは二酸化ケイ素)は、その平均粒径が3〜100nmであることが好ましい。一次粒子の状態で分散された二酸化ケイ素の一次粒子の平均粒径(塗布前の分散液状態での粒径)は、3〜50nmであるのがより好ましく、3〜40nmであるのがさらに好ましく、3〜20nmであるのが特に好ましく、4〜10nmであるのが最も好ましい。また、二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。低屈折率層中の金属酸化物の平均粒径は、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
低屈折率層における金属酸化物粒子の含有量としては、低屈折率層の固形分に対して、屈折率の観点から、5〜80質量%であることが好ましく、10〜75質量%であることがさらに好ましい。
コロイダルシリカは、珪酸ナトリウムの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通過させて得られるシリカゾルを加熱熟成して得られるものであり、たとえば、特開昭57−14091号公報、特開昭60−219083号公報、特開昭60−219084号公報、特開昭61−20792号公報、特開昭61−188183号公報、特開昭63−17807号公報、特開平4−93284号公報、特開平5−278324号公報、特開平6−92011号公報、特開平6−183134号公報、特開平6−297830号公報、特開平7−81214号公報、特開平7−101142号公報、特開平7−179029号公報、特開平7−137431号公報、および国際公開第94/26530号パンフレットなどに記載されているものである。この様なコロイダルシリカは合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。コロイダルシリカは、その表面をカチオン変性されたものであってもよく、また、Al、Ca、MgまたはBa等で処理された物であってもよい。
このようなコロイダルシリカは合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、日産化学工業(株)から販売されているスノーテックスシリーズ(スノーテックスOS、OXS、S、OS、20、30、40、O、N、C等)が挙げられる。
誘電多層膜を形成する各屈折率層には、必要に応じて各種の添加剤を含有させることができる。具体的には、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤;ポリカルボン酸アンモニウム塩、アリルエーテルコポリマー、ベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、グラフト化合物系分散剤、ポリエチレングリコール型ノニオン系分散剤などの分散剤;酢酸塩、プロピオン酸塩、またはクエン酸塩等の有機酸塩;一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、有機リン酸可塑剤、有機亜リン酸可塑剤等のリン酸可塑剤等の可塑剤;特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報および同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤;特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤;硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤;消泡剤;ジエチレングリコール等の潤滑剤;防腐剤;帯電防止剤;マット剤等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
本発明に係る高屈折率層および低屈折率層には、必要に応じて各種の添加剤を含有させることができる。また、高屈折率層における添加剤の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、0.0001〜20質量%であることが好ましい。当該添加剤の例を以下に記載する。
本発明においては、高屈折率層および低屈折率層の少なくとも1層は、さらに界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、両性イオン系、カチオン系、アニオン系、ノニオン系のいずれの種類も使用することができる。より好ましくは、ベタイン系両性イオン性界面活性剤、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤、フッ素系カチオン性界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸塩系アニオン性界面活性剤、アセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤、またはフッ素系カチオン性界面活性剤が好ましい。
本発明に係る界面活性剤の添加量としては、高屈折率層用塗布液または低屈折率層用塗布液の全質量を100質量%としたとき、0.0001〜0.30質量%の範囲であることが好ましく、0.0005〜0.10質量%であることがより好ましい。
誘電体多層膜は溶融押出成形によって形成されうる。より具体的には、例えば特表2002−509279号公報(米国特許第6,049,419号明細書に相当する)に記載されるように、樹脂を溶融して得られた溶融樹脂を、(多層)押出しダイスよりキャスティングドラム上に押出した後、急冷する。この際、溶融樹脂の押出し冷却後、樹脂シートを延伸させてもよい。塗布法や溶液流涎法のような溶媒を用いる方法と異なり、溶融押出成形によれば溶媒を用いずに誘電体多層膜を形成することができる。従って、溶融押出成形により誘電体多層膜を形成することは、製造効率の観点から利点がある。
また、誘電体多層膜フィルムは、高屈折率層と低屈折率層とが同時に積層される、多層押出しによって誘電体多層膜が形成されたものであることが好ましい。詳細には、基材(透明樹脂フィルム)上に、水溶性高分子を含む高屈折率層用塗布液と、水溶性高分子を含む低屈折率層用塗布液とを塗布する工程を含む製造方法が好ましい。塗布方法は、湿式塗布方法であれば特に制限されず、例えば、ローラーコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、スライド型カーテン塗布法、または米国特許第2,761,419号明細書、米国特許第2,761,791号明細書などに記載のスライドホッパー塗布法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。また、複数の層を重層塗布する方式としては、逐次重層塗布でもよいし、同時重層塗布でもよい。
以下、本発明の好ましい製造方法(塗布方法)であるスライドホッパー塗布法による同時重層塗布について詳細に説明する。
高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液を塗布する基材(透明樹脂フィルム)は、特に制限されず、種々の樹脂フィルムを用いることができる。具体的には、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、3酢酸セルロース等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルムである。ポリエステルフィルム(以降ポリエステルと称す)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性などの点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、およびこれらのポリエステルの二種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
本発明に用いられる基材の厚みは、特に制限されないが、10〜300μm、特に20〜150μmであることが好ましい。
基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、または基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸支持体を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することができるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。なお、粘着層を形成する際に使用される基材(セパレータフィルム)と、本方法にて使用される屈折率層を形成する際に使用される基材(透明樹脂フィルム)とは、同じであってもまたは異なるものであってもよい。
高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液を調製するための溶媒は、特に制限されないが、水、有機溶媒またはその混合溶媒が好ましい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類、ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などが挙げられる。これら有機溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。環境面、操作の簡便性などから、塗布液の溶媒としては、特に水、または水とメタノール、エタノール、もしくは酢酸エチルとの混合溶媒が好ましい。
屈折率層用塗布液中の水溶性高分子の濃度は、特に制限されない。例えば、高屈折率層用塗布液中の水溶性高分子の濃度は、1〜10質量%の範囲内であることが好ましい。また、低屈折率層用塗布液中の水溶性高分子の濃度は、1〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の調製方法は、特に制限されず、例えば、水溶性高分子、ならびに必要に応じて添加される金属酸化物およびその他の添加剤を添加し、攪拌混合する方法が挙げられる。この際、水溶性高分子ならびに必要に応じて添加される金属酸化物およびその他の添加剤の添加順も特に制限されず、攪拌しながら各成分を順次添加し混合してもよいし、攪拌しながら一度に添加し混合してもよい。必要に応じて、さらに溶媒を用いて、適当な粘度に調整される。
塗布および乾燥方法は、特に制限されないが、高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液を30℃以上に加温して、基材(透明樹脂フィルム)上に高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の同時重層塗布を行った後、形成した塗膜の温度を好ましくは1〜15℃に一旦冷却し(セット)、その後10℃以上で乾燥することが好ましい。より好ましい乾燥条件は、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件である。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜の均一性向上の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の塗布厚は、高屈折率層及び低屈折率層が上記で示したような好ましい乾燥時の厚さとなるように塗布すればよい。
ここで、前記セットとは、冷風等を塗膜に当てて温度を下げるなどの手段により、塗膜組成物の粘度を高め各層間および各層内の物質の流動性を低下させる工程のことを意味する。冷風を塗布膜に表面から当てて、塗布膜の表面に指を押し付けたときに指に何もつかなくなった状態を、セット完了の状態と定義する。
塗布した後、冷風を当ててからセットが完了するまでの時間(セット時間)は、5分以内であることが好ましい。また、下限の時間は特に制限されないが、45秒以上の時間をとることが好ましい。セット時間が短すぎると、層中の成分の混合が不十分となる虞がある。一方、セット時間が長すぎると、屈折率調整剤の層間拡散が進み、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が不十分となる虞がある。なお、高屈折率層と低屈折率層との間の高弾性化が素早く起こるのであれば、セットさせる工程は設けなくてもよい。
セット時間の調整は、水溶性高分子の濃度の濃度を調整し、ゼラチン、ペクチン、寒天、カラギーナン、ゲランガム等の各種公知のゲル化剤など、他の成分を添加することにより調整することができる。
冷風の温度は、0〜25℃であることが好ましく、5〜10℃であることがより好ましい。また、塗膜が冷風に晒される時間は、塗膜の搬送速度にもよるが、10〜120秒であることが好ましい。
本発明の誘電体多層膜フィルムのその他の構成要素は従来公知のものを適宜使用することができる。その他の構成要素について、以下、詳細に説明する。
[最表層(ハードコート層)]
本発明の誘電体多層膜フィルムは、耐擦過性等を高めるための表面保護層として、基材の誘電体多層膜側の最表面に、最表層(ハードコート層)が設けられていてもよい。
本発明に係る最表層は、本発明の誘電体多層膜フィルムの片表面にのみ形成してもよく、両表面に形成してもよい。最表層は、外部からの物理的損傷を抑制し、誘電体多層膜を保護するために、貼り付ける対象物と反対側のフィルム表面に形成される。したがって、最表層は、誘電体多層膜を介して粘着層と反対側に配置(積層)される。
最表層は、表面保護機能を有するものであればその構成は限定されないが、誘電体多層膜に紫外線が照射されることに起因する劣化を抑制し、より耐久性の高い誘電体多層膜フィルムを得るために、最表層もまた、紫外線吸収剤を含んでいると好ましい。最表層に含まれる紫外線吸収剤は、特に制限されないが、たとえば、上記の粘着層に含まれる紫外線吸収剤と同様のものを使用すると好ましい。上記の紫外線吸収剤の中でも、より誘電体多層膜を保護する効果が高く、当該効果が長期にわたって持続する理由から、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。さらに、これらの中でも、2,4,6−トリス(ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(ビフェニリル)−1,3,5−トリアジンおよびこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも一種の化合物が紫外線吸収剤として用いられると好ましい。
最表層に含まれる紫外線吸収剤の量は、誘電体多層膜に入射する紫外線量を減らすことができる量であれば特に制限されない。目安として、上記紫外線吸収剤の最表層の単位面積(1m)当たりの付量が、80mg/m以上であると好ましく、100mg/m以上であるとより好ましく、155mg/m以上であるとさらにより好ましく、160mg/m以上であると特に好ましく、170mg/m以上であると最も好ましい。80mg/m以上であれば、誘電体多層膜に含まれる化合物の光触媒作用を促進する波長領域の光を十分に吸収することができる。一方で、付量は、特に制限されないが、2500mg/m以下であると好ましく、2000mg/m以下であるとより好ましく、1500mg/m以下であるとさらにより好ましく、500mg/m以下であると特に好ましい。2500mg/m以下とすることにより、ブリードアウト(添加剤が時間の経過によりフィルム(層)の表面に浮き出てくる現象)を抑制し、ヘイズ(曇り度)の悪化を防止することができる。
また、最表層は、赤外線吸収剤を含んでいると好ましい。本発明において、上記フィルムの特性を満たす限りは、用いられる赤外線吸収剤の種類は特に限定されないが、たとえば、無機ナノ微粒子を含んでいると好ましい。ここでナノ微粒子とは、平均(一次)粒径が1000nm以下の粒子を指し、平均粒径が1〜500nmの範囲にあるものがより好ましく、1〜100nmの範囲にあるものがさらに好ましい。粒径は、透過型電子顕微鏡などの観察手段を用いて観察される粒子(観察面)の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち最大の距離を意味する。平均粒径の値としては、透過型電子顕微鏡などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒径の個数平均値として算出される値を用いる。
無機粒子がナノ微粒子であることで、最表層の可視光線の透過性が確保される。このような無機ナノ微粒子としては、酸化亜鉛、酸化錫、酸化珪素、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、ホウ素化ランタンまたは酸化セリウム、および他の金属でドープされたこれらの化合物、ならびにこれらの混合物が挙げられる。他にもCd/Se、GaN、Y、Au、Ag、Cuナノ粒子も利用可能である。好適な無機ナノ微粒子としては、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化錫、ジルコニア、ホウ素化ランタンおよび他の金属でドープされたこれらの化合物が挙げられ、より好ましくは、酸化亜鉛、他の金属でドープされた酸化亜鉛、酸化錫、他の金属でドープされた酸化錫、ジルコニア、ホウ素化ランタンおよびこれらの混合物である。中でも、無機ナノ微粒子は、酸化亜鉛、他の金属でドープされた酸化亜鉛、酸化錫、他の金属でドープされた酸化錫であると特に好ましい。
無機ナノ微粒子のハードコート層中の配合量は、最表層全量(固形分換算)に対して、30〜80質量%であることが好ましく、50〜70質量%であることがより好ましい。無機ナノ微粒子の含有量がかような範囲にあることで、最表層のハードコート性とフィルムの剥がれまたは割れの抑制との両立がしやすくなる。本明細書にて他の金属でドープされた化合物とは、化合物中に他の金属が混合されている状態、または化合物と他の金属(酸化物)とが結合している状態の双方を指す。例えば、アンチモンでドープされた酸化亜鉛は、酸化亜鉛中にアンチモンが混合されている状態、または酸化亜鉛とアンチモン酸化物が結合している状態の双方を意味する。
他の金属でドープされた酸化亜鉛としては、アンチモンドープ酸化亜鉛、アンチモン酸亜鉛(ZnO・Sb)、インジウムドープ酸化亜鉛(インジウム亜鉛複合酸化物:IZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(ガリウム亜鉛複合酸化物:GZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(アルミニウム亜鉛複合酸化物:AZO)が好ましく、アンチモン酸亜鉛(ZnO・Sb)、ガリウムドープ酸化亜鉛(ガリウム亜鉛複合酸化物:GZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(アルミニウム亜鉛複合酸化物:AZO)がより好ましい。
また、他の金属でドープされた酸化錫としては、アンチモンドープ酸化錫(アンチモン錫複合酸化物:ATO)、インジウムドープ酸化錫(インジウム錫複合酸化物:ITO)、ガリウムドープ酸化錫(ガリウム錫複合酸化物:GTO)が好ましく、アンチモンドープ酸化錫(アンチモン錫複合酸化物:ATO)、インジウムドープ酸化錫(インジウム錫複合酸化物:ITO)がより好ましい。
上記無機ナノ微粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
すなわち、本発明の好適な実施形態において、最表層は、好適には酸化亜鉛および/または他の金属でドープされた酸化亜鉛(以下、「酸化亜鉛系粒子」とも称する)、ならびに酸化錫および/または他の金属でドープされた酸化錫(以下、「酸化錫系粒子」とも称する)を含む。
酸化亜鉛系粒子は酸化錫系粒子と比較して、近赤外領域の吸収能が低く、酸化錫系粒子に対し、質量にして1.3倍程度添加する必要があるが、その最表層中の樹脂の含有量が少なくなる。その結果、収縮応力の原因である樹脂成分が少ないため、最表層の収縮が低減され、従来よりも小さいカールのフィルムを作製することができる。そのため、酸化亜鉛類を赤外線吸収剤として最表層中に用いれば、割れ、剥がれが少ない誘電体多層膜フィルムを形成することができる。
また、酸化亜鉛系粒子は酸化錫系粒子よりも紫外線吸収能が高いという特徴を有するため、ハードコート層の紫外線による劣化を低減することができ、長期間暴露による耐擦傷性の低減を防ぐことができる。このとき、内張り用途よりも外張り用途にフィルムを用いた場合、紫外線の影響をより大きく受けるため、上記効果がより顕著に現れる。
酸化亜鉛系粒子および酸化錫系粒子は、溶剤または水に分散された市販品を用いてもよい。例えば、酸化亜鉛粒子系として、セルナックス(登録商標)シリーズ(日産化学工業株式会社製)、パゼットシリーズ(ハクスイテック株式会社製)、酸化錫粒子系として、ATO分散液、ITO分散液(以上、三菱マテリアル株式会社製)、KHシリーズ(住友金属鉱山株式会社製)等が挙げられる。
本発明において、最表層は、上記の無機ナノ微粒子以外の赤外線吸収剤を含んでいてもよい。このような赤外線吸収剤としては、無機ナノ微粒子以外の無機系赤外線吸収剤および有機系赤外線吸収剤に大別される。無機系赤外線吸収剤としては、ホウ素化ランタン、ニッケル錯体系化合物等が挙げられる。また、有機系赤外線吸収剤としては、イモニウム系、フタロシアニン系、アミニウム系化合物を利用することができる。
有機系の市販品としては、例えば、NIR−IM1、NIR−AM1(以上、ナガセケミテックス株式会社製)、Lumogen(登録商標)シリーズ(BASF社製)等が挙げられる。
最表層の構成は、上記の紫外線吸収剤および/または赤外線吸収剤以外に、熱や紫外線などで硬化する樹脂(本明細書中、単に「硬化性樹脂」とも称する)を含む構成であると好ましい。
硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂や活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられるが、成形が容易なことから、活性エネルギー線硬化性樹脂が好ましい。かような硬化性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。また、硬化型樹脂は市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。
・熱硬化性樹脂
熱硬化性樹脂としては、ポリシロキサンに代表される無機系材料が挙げられる。
本発明に係る最表層の形成に適用可能なポリシロキサン系ハードコート材料としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
上記一般式(1)において、R10は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜10の直鎖状、分枝状、または環状のアルキル基を表し、aおよびbは、a+b=4の関係を満たす整数である。なお、aが2以上の整数である場合の、上記各R10はそれぞれ同じであってもまたは異なるものであってもよい。同様にしてbが2以上の整数である場合の、上記各R10はそれぞれ同じであってもまたは異なるものであってもよい。また、「R10」および「OR10」中のR10は、同じあってもまたは相互に異なるものであってもよい。
具体的な化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(N−アミノベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルメトキシシラン・塩酸塩、オクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライドを挙げることができる。これらのメトキシ基、エトキシ基などの加水分解性基がヒドロキシ基に置換した状態のものが、一般的にポリオルガノシロキサン系ハードコート材料といわれている。
前記ポリオルガノシロキサン系ハードコート材料の具体的には、サーコートシリーズ、BP−16N(以上、株式会社動研製)、SR2441(東レ・ダウコーニング株式会社製)、Perma−New 6000(California Hardcoating Company社製)などを利用することができる。
・活性エネルギー線硬化性樹脂
本発明に係る最表層で使用される硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂や活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられるが、成形が容易なことから、活性エネルギー線硬化性樹脂が好ましい。このような硬化性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
活性エネルギー線硬化性樹脂とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性エネルギー線を照射することによって硬化させて、活性エネルギー線硬化性樹脂層、すなわち最表層が形成される。活性エネルギー線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、製造工程の複雑化を抑制するという観点からは、紫外線照射によって硬化する紫外線硬化性樹脂が好ましい。
ただし、本発明では、誘電体多層膜の劣化を抑制するため、誘電体多層膜フィルムの製造時においても誘電体多層膜に入射する紫外線量を低減することが好ましい。よって、フィルムの使用時のみならず、製造時においても紫外線による劣化を抑制するという意味で、紫外線硬化性樹脂を用いて最表層を形成する場合、最表層中に上記紫外線吸収剤が添加されているとよい。かような構成とすることにより、最表層の下層に設けられる誘電体多層膜に入射する紫外線量を低減し、耐久性に優れた誘電体多層膜フィルムを得ることができる。
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化性ウレタンアクリレート樹脂、紫外線硬化性ポリエステルアクリレート樹脂、紫外線硬化性エポキシアクリレート樹脂、紫外線硬化性ポリオールアクリレート樹脂、紫外線硬化性アクリルアクリレート樹脂、または紫外線硬化性エポキシ樹脂等を用いることができる。中でも、耐傷性、屈曲性の観点から、最表層は、紫外線硬化性ウレタンアクリレート系樹脂を含んでいると好ましい。
紫外線硬化性ウレタンアクリレート樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物にさらに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば、特開昭59−151110号公報に記載のユニディック(登録商標)17−806(DIC株式会社製)100質量部とコロネート(登録商標)L(日本ポリウレタン工業株式会社製)1質量部との混合物等が好ましく用いられる。
紫外線硬化性ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステル末端の水酸基やカルボキシル基に2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸のようなモノマーを反応させることによって容易に得ることができる(例えば、特開昭59−151112号公報)。
紫外線硬化性エポキシアクリレート系樹脂は、エポキシ樹脂の末端の水酸基にアクリル酸、アクリル酸クロライド、グリシジルアクリレートのようなモノマーを反応させて得られる。
紫外線硬化性ポリオールアクリレート系樹脂としては、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレートのようなモノマーを反応させて得られるものを挙げることができる。
最表層形成に用いられる活性エネルギー線硬化性樹脂の市販品の例としては、上記の他に、例えば、ヒタロイド(登録商標)シリーズ(日立化成株式会社製)、紫光シリーズ(日本合成化学工業株式会社製)、ビームセットシリーズ(荒川化学工業株式会社)、ETERMER2382(ETERNAL CHEMICAL社製)等を挙げることができる。
最表層は、従来公知の方法によって作製することができるが、最表層形成用組成物(塗布液)をワイヤーバーによるコーティング、スピンコーティング、ディップコーティングにより塗布する方法を用いると好ましい。上記の組成物(塗布液)をダイコーター、グラビアコーター、コンマコーターなどの連続塗布装置でも塗布・製膜することも可能である。
[アンカー層]
最表層の下層への密着性が得られない場合、最表層を積層する前にアンカー層(プライマー層)を形成してもよい。アンカー層の膜厚は特に限定されるものではないが、0.1〜10μm程度である。好適な例として、アンカー層を構成する樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂が挙げられ、以下に例を示す。
ここで、ポリビニルアセタール系樹脂とは、例えば、ポリビニルアルコールを少なくとも1種の適当なアルデヒドとの反応によりアセタール化した樹脂であり、具体的には、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールや部分的にホルマール化した部分を含むポリビニルブチラール、ポリビニルブチラールアセタール等の共重合アセタール等が挙げられる。これらのポリビニルアセタール系樹脂は、例えば、特開2012−242500号公報の段落「0098」に記載の市販品として入手が可能である。また、これらのポリビニルアセタール系樹脂は、その他の繰り返し単位を含有していても良い。
アクリル樹脂としては、たとえば、特開2012−139948号公報の段落「0069」に記載されたモノマーをポリマー構成成分とする樹脂が挙げられる。これらのモノマーは1種もしくは2種以上を併用することができる。メタクリル酸メチル−アクリル酸エチル−アクリル酸アンモニウム−アクリルアミド共重合体、メタクリルアミド−アクリル酸ブチル−アクリル酸ソーダ−メタクリル酸メチル−N−メチロールアクリルアミド系共重合体等が好ましく挙げられる。アクリル系樹脂はアクリルエマルジョン、アクリル水溶液、アクリルディスパージョン等として製造でき、また入手できる。
上記のこれら樹脂は1種又は2種以上の混合物として用いることができる。また、架橋剤としてイソシアネートを用いることができ、有機ジイソシアネート化合物としては、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等や脂環式ジイソシアネート類等の環状ジイソシアネート類、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類等が好適である。水系で用いる場合、ブロックイソシアネートを用いることもでき、例えば、Baxenden社の品番214を用いることができる。
[その他の機能層]
本発明の誘電体多層膜フィルムは、さらなる機能の付加を目的として、導電性層、帯電防止層、ガスバリア層、易接着層(接着層)、防汚層、消臭層、流滴層、易滑層、耐摩耗性層、反射防止層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、赤外吸収層、印刷層、蛍光発光層、ホログラム層、剥離層、接着層、本発明の高屈折率層および低屈折率層以外の赤外線カット層(金属層、液晶層)、着色層(可視光線吸収層)、合わせガラスに利用される中間膜層などの機能層の1つ以上を有していてもよい。
≪赤外遮蔽体≫
本発明の誘電体多層膜フィルムは、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備に貼り合せ、熱線反射効果を付与する熱線反射フィルム等の窓貼用フィルムや、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。また、自動車用の合わせガラスなどのガラスとガラスとの間に挟む、自動車用誘電体多層膜フィルム誘電体多層膜フィルムとしても好適に用いられる。この場合、外気ガスから誘電体多層膜フィルムを封止できるため、耐久性の観点から好ましい。
特に、本発明に係る誘電体多層膜フィルムは、直接または接着剤を介して、ガラスまたはガラス代替の樹脂などの基体に貼合される部材に好適に用いられる。
基体として好ましいものは、プラスチック基体、金属基体、セラミック基体、布状基体等であり、フィルム状、板状、球状、立方体状、直方体状等様々な形態の基体に本発明の誘電体多層膜フィルムを設けることができる。これらの中でも、板状のセラミック基体が好ましく、ガラス板に本発明の誘電体多層膜フィルムを設けた赤外遮蔽体がより好ましい。ガラス板の例としては、例えば、JIS R3202:1996に記載されたフロート板ガラス、および磨き板ガラスが挙げられ、ガラス厚みとしては0.01〜20mmが好ましい。
基体に本発明の誘電体多層膜フィルムを設ける方法としては、上述のように誘電体多層膜フィルムの粘着層を介して基体に貼り付ける方法が好適に用いられる。貼合方法としては、そのまま基体にフィルムを貼る乾式貼合、上述のように水貼り貼合する方法が適応できるが、基体と誘電体多層膜フィルムとの間に空気が入らないようにするため、また基体上での誘電体多層膜フィルムの位置決め等、施工のしやすさの観点で水貼り法により貼合することがより好ましい。なお、本明細書において、水貼り法とは、本発明の誘電体多層膜フィルムの粘着層面、あるいは基体面に水を付与した後、本発明の誘電体多層膜フィルムと基体、例えば、窓ガラスと加圧下で貼合する方法を意味する。
前記赤外遮蔽体は、本発明の誘電体多層膜フィルムを基体の少なくとも一方の面に設けられた態様であるが、基体の複数面に設けた態様や、本発明の誘電体多層膜フィルムに複数の基体を設けた態様でも構わない。例えば、上述の板ガラスの両面に本発明の誘電体多層膜フィルムを設けた態様、本発明の誘電体多層膜フィルムの両面に粘着層を塗設し、誘電体多層膜フィルムの両面に上述の板ガラスを貼り合わせた、合わせガラス状の態様でも構わない。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
《誘電体多層膜の作製》
(低屈折率層用塗布液の調製)
純水の87質量部に、水溶性高分子として酸処理ゼラチン(等電点:9.5、重量平均分子量:2万)の3質量部を添加し、室温でしばらく膨潤させた後、40℃に昇温し撹拌混合することでゼラチンを溶解することで、ゼラチン水溶液を得た。
次いで、平均粒径が5nmのシリカ微粒子を含む10質量%の酸性シリカゾル(スノーテックスOXS:日産化学社製)の10質量部中に、上記ゼラチン水溶液を撹拌しながら徐々に添加し、混合した。更に、フッ素系カチオン界面活性剤として、サーフロンS221(AGCケミカル社製)を0.02質量部添加することで、低屈折率層用塗布液1を調製した。
なお、下記の方法に従って基材上に低屈折率層用塗布液1を塗布する直前に、水溶性樹脂であるゼラチンの架橋剤として、ホルマリン(関東化学社製)を0.1質量部添加した。
(高屈折率層用塗布液の調製)
純水の82質量部に、水溶性高分子として酸処理ゼラチン(等電点:9.5、重量平均分子量:2万)3質量部を添加し、室温でしばらく膨潤させた後、40℃に昇温して、撹拌、混合することでゼラチンを溶解して、ゼラチン水溶液を得た。
次いで、体積平均粒径が35nmのルチル型酸化チタン微粒子を20質量%の比率で含む酸化チタンゾルの15質量部中に、上記ゼラチン水溶液を撹拌しながら徐々に添加し、混合した。更に、フッ素系カチオン界面活性剤として、サーフロンS221(AGCケミカル社製)を0.07質量部添加することで高屈折率層用塗布液1を調製した。
なお、下記の方法に従って基材上に高屈折率層用塗布液1を塗布する直前に、水溶性樹脂であるゼラチンの架橋剤として、ホルマリン(関東化学社製)を0.1質量部添加した。
(誘電体多層膜の形成)
21層同時重層塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用い、層構成として上記調製した低屈折率層用塗布液1及び高屈折率層用塗布液1を用い、基材に近い側を低屈折率層、その上に高屈折率層を形成し、それぞれ交互に低屈折率層は11層、高屈折率層は10層、計21層から構成となるようにして、45℃に保温しながら、45℃に加温した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300:両面易接着層)上に、同時重層塗布を行った。その直後、膜面が15℃以下となる条件で冷風を1分間吹き付けてセットさせた後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、基材上に21層からなる誘電体多層膜1を形成した。なお、SEMにより塗布膜の断面を観察したところ、低屈折率層の膜厚は165〜183nm(平均膜厚170nm)、高屈折率層の膜厚は124〜141nm(平均膜厚133nm)であった。
《粘着層付フィルムの作製》
[実施例1:粘着層付誘電体多層膜フィルム1の作製]
(粘着層用塗布液1の調製)
アクリル系粘着剤(コーポニールN−2147:日本合成化学工業(株)製)32gの酢酸エチル20gで希釈して、HDI系硬化剤(日本ポリウレタン工業(株)製、コロネートHL、多官能アルコールのヘキサンジイソシアネート付加物)およびシランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルメトキシシラン、KBM−403、信越化学工業(株)製)を、アクリル系粘着剤に対して、それぞれ、0.5質量%および0.3質量%添加することにより、粘着層用塗布液1を調製した。
(粘着層付フィルム1の作製)
セパレータフィルムとして25μm厚のポリエステルフィルム(セラピール、東レフィルム加工(株)製;PETフィルムに剥離性付与剤をコーティングした剥離フィルム)を用い、セパレータフィルムの上に、上記調製した粘着剤塗布液1をワイヤーバーにより、乾燥後の膜厚が10μmになる条件で塗布し、80℃で、2分間乾燥して、粘着層付フィルム1を作製した。この粘着層付フィルム1を、上記にて作製した誘電体多層膜と、誘電体多層膜の最外層(低屈折率層)と粘着層付フィルムの粘着層とが接するように貼合して、粘着層付の誘電体多層膜フィルム1を作製した。
[実施例2〜11、比較例1〜6:粘着層付誘電体多層膜フィルム2〜17の作製]
(粘着層用塗布液2〜17の調製)
実施例1において、下記表1に示されるように、HDI系硬化剤の添加量およびシランカップリング剤の添加量を変更した以外は、実施例1の(粘着層用塗布液1の調製)と同様にして、粘着層用塗布液2〜17を調製した。
(粘着層付フィルム2〜17の作製)
実施例1において、粘着層用塗布液1の代わりに、上記にて調製した粘着層用塗布液2〜17をそれぞれ使用した以外は、実施例1の(粘着層付フィルム1の作製)と同様にして、粘着層付の誘電体多層膜フィルム2〜17を作製した。
[実施例12〜17:粘着層付誘電体多層膜フィルム18〜23の作製]
(粘着層用塗布液18の調製)
実施例6において、実施例6の粘着層用塗布液6と同様にして、粘着層用塗布液18を調製した。詳細には、アクリル系粘着剤(N−2147:東亞合成社製)32gの酢酸エチル20gで希釈して、HDI系硬化剤(日本ポリウレタン工業(株)製、コロネートHL、多官能アルコールのヘキサンジイソシアネート付加物)およびシランカップリング剤(KBM403:信越化学)を、アクリル系粘着剤に対して、それぞれ、0.4質量%および0.8質量%添加することにより、粘着層用塗布液18を調製した。
(粘着層付フィルム18〜23の作製)
実施例1において、粘着層用塗布液1の代わりに、上記にて調製した粘着層用塗布液18をそれぞれ使用し、かつ粘着量の厚みを下記表2に変更した以外は、実施例1の(粘着層付フィルム1の作製)と同様にして、粘着層付の誘電体多層膜フィルム18〜23を作製した。
[誘電体多層膜フィルムの性能評価]
上記実施例1〜17及び比較例1〜6で作製した粘着層付の誘電体多層膜フィルム1〜23について、下記方法に従って、水貼り直後の粘着力、プローブタック試験のピーク値、高温剥がれ、糊残り耐性(層間剥離耐性)およびリワーク後の可視光透過率を評価し、その結果を、表1及び2に示す。
(水貼り直後の粘着力の測定)
各誘電体多層膜フィルムを、幅20mm、長さ100mmに断裁した後、粘着層上のセパレータフィルム(25μm厚のポリエステルフィルム)を剥がし、厚さ1.3mmのガラス板(松浪硝子工業社製、「スライドガラス 白縁磨」)に、ガラス板面に水を付与し、水貼り法により貼り合わせた。次に、直径が15.2cm(6インチ)、幅が45mmのロール上に、厚さ6mmのゴムで被覆した鋼ローラーを使用し、ローラーの自重のみが誘電体多層膜フィルム面にかかるように、ローラーでフィルムとガラスを圧着した。
上記誘電体多層膜フィルム(サンプル)を、23℃、50%RHの雰囲気中で30分間放置した後、引張試験機(商品名「TCM−1kNB」、ミネベア社製)を用いて、180°剥離試験を行い、ガラス板に対する180°ピール粘着力(180度引き剥がし粘着力)(gf/25mm)を測定し、得られた測定値を水貼り直後の粘着力(gf/25mm)とした。なお、上記測定は、23℃、50%RHの雰囲気下、剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件で行った。
(プローブタック試験のピーク値の測定)
各誘電体多層膜フィルムについて、タッキング試験機(TAC−1000レスカ社)を用いて、プローブタック試験を行い、ピーク値をプローブタック試験のピーク値(N/mm)とした。なお、上記測定は、下記の条件で実施した。
(プローブタック試験の測定条件)
プローブ材:SUS
プローブ径:φ(直径)5mm
押し付けスピード:1[mm/s]
押し付け荷重:25[gf]
保持時間:1[s]
引き上げスピード:0.3[mm/s]
上記で測定されたプローブタック試験のピーク値を下記評価基準に従って、評価し、その結果を下記表1及び2に示す。
(高温剥がれの評価)
各誘電体多層膜フィルムを60×150mmに切り出し、5分間、水に浸漬した後に、厚さが1.3mmのガラス板(松浪硝子工業社製、「スライドガラス 白縁磨」)に、水貼り法で貼り合わせた後、直径が15.2cm(6インチ)、幅が45mmのロール上に、厚さ6mmのゴムで被覆した鋼ローラーを使用し、ローラーの自重のみが誘電体多層膜フィルム面にかかるように、ローラーでフィルムとガラスを圧着した。その後、120℃のオーブンに10分間入れ、フィルムが剥がれているかどうかを目視により確認を行った。フィルムが剥がれていることが観察された面積を測定した。各誘電体多層膜フィルム全面積に対する上記剥がれが観察された面積の割合(%)を算出し、その結果を下記評価基準に従って、評価し、その結果を下記表1及び2に示す。
(糊残り耐性/層間剥離耐性の評価)
以下のようにして、誘電体多層膜フィルムを基体(ガラス)から剥離した際の粘着剤の残り(糊残り)や誘電体多層膜を構成する屈折層の分離(層間剥離)を観察し、糊残り耐性および層間剥離耐性を評価した。
すなわち、各誘電体多層膜フィルムを、幅20mm、長さ100mmに断裁した後、粘着層上のセパレータフィルム(25μm厚のポリエステルフィルム)を剥がし、厚さ1.3mmのガラス板(松浪硝子工業社製、「スライドガラス 白縁磨」)に、ガラス板面に水を付与し、水貼り法により貼り合わせた。次に、直径が15.2cm(6インチ)、幅が45mmのロール上に、厚さ6mmのゴムで被覆した鋼ローラーを使用し、ローラーの自重のみが誘電体多層膜フィルム面にかかるように、ローラーでフィルムとガラスを圧着して、測定サンプルを作製した。
上記測定サンプルを、23℃、50%RHの雰囲気中で24時間放置した後、引張試験機(商品名「TCM−1kNB」、ミネベア社製)を用いて、180°剥離試験を行い、ガラス板に対する糊残り(層間剥離)を目視により確認した。ガラス板表面に付着した、糊残りや誘電体多層膜の面積を、剥離試験面積に対する割合(%)を算出し、その結果を下記評価基準に従って、評価し、その結果を下記表1及び2に示す。
(リワーク後の可視光透過率の測定)
各誘電体多層膜フィルムを、幅20mm、長さ100mmに断裁した後、粘着層上のセパレータフィルム(25μm厚のポリエステルフィルム)を剥がし、厚さ1.3mmのガラス板(松浪硝子工業社製、「スライドガラス 白縁磨」)に、ガラス板面に水を付与し、水貼り法により貼り合わせた。次に、直径が15.2cm(6インチ)、幅が45mmのロール上に、厚さ6mmのゴムで被覆した鋼ローラーを使用し、ローラーの自重のみが誘電体多層膜フィルム面にかかるように、ローラーでフィルムとガラスを圧着して、測定サンプルを作製した。
上記測定サンプルを、23℃、50%RHの雰囲気中で15時間放置した後、手で剥離し、再度同ガラスに上記と同様の方法により貼り合わせた後、可視光透過率を測定した。なお、この際、基体として上記ガラスに貼り付けた誘電体多層膜フィルムを分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、可視光の領域における透過率を測定した。測定は3回行い、その平均値を求め、可視光透過率(%)とした。得られた可視光透過率(%)を下記評価基準に従って、評価し、その結果を下記表1及び2に示す。
上記表1に示されるように、本発明の誘電体多層膜フィルムは、剥離時の粘着剤(糊)残りや基体に再貼合した際の可視光透過率の低下を抑えつつ、高温下でのフィルムの剥がれが少ない。これに対して、水貼り直後の粘着力が本発明の下限を下回る比較例1、2では、高温下でのフィルムの剥がれが過度に大きくなり、逆に水貼り直後の粘着力が本発明の上限を超える比較例5では、高温下でのフィルムの剥がれは少ないものの、誘電体多層膜の屈折率層同士が剥がれてしまう。また、タック性(プローブタック試験のピーク値)が本発明の下限を下回る比較例3では、剥離時に粘着剤が残ってしまい、逆にタック性が本発明の上限を超える比較例7では、剥離後に粘着面に凹凸を生じる(粘着面があれる)ため再度基体に貼合した(リワーク)後の可視光透過率が低下してしまう。
また、上記表2から、粘着層の厚みが2〜50μmであると、高温下でのフィルムの剥がれ、剥離時の粘着剤(糊)残りおよび基体に再貼合した際の可視光透過率の低下をより有効に低減できることが考察される。

Claims (4)

  1. 低屈折率層および高屈折率層が少なくとも1つ以上積層された誘電体多層膜と、
    粘着層と、を有する誘電体多層膜フィルムであって、
    前記高屈折率層および前記低屈折率層の少なくとも1層が、水溶性高分子を含有し、
    水貼り直後の粘着力が0.5〜15gf/25mmであり、かつプローブタック試験のピーク値が100〜500N/mmである、
    誘電体多層膜フィルム。
  2. 前記粘着層の厚みは、2〜50μmである、請求項1に記載の誘電体多層膜フィルム。
  3. 前記粘着層は、(メタ)アクリル系粘着剤、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する硬化剤およびシランカップリング剤を含む粘着剤組成物によって形成される、請求項1または2に記載の誘電体多層膜フィルム。
  4. 前記粘着剤は、アクリル系粘着剤であり、
    前記硬化剤は、前記アクリル系粘着剤100質量部に対して、0.02質量部以上0.7質量部未満の割合で含まれ、
    前記シランカップリング剤は、前記アクリル系粘着剤100質量部に対して、0.06質量部以上4質量部未満の割合で含まれる、請求項3に記載の誘電体多層膜フィルム。
JP2015115085A 2015-06-05 2015-06-05 誘電体多層膜フィルム Expired - Fee Related JP6536188B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015115085A JP6536188B2 (ja) 2015-06-05 2015-06-05 誘電体多層膜フィルム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015115085A JP6536188B2 (ja) 2015-06-05 2015-06-05 誘電体多層膜フィルム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017003662A true JP2017003662A (ja) 2017-01-05
JP6536188B2 JP6536188B2 (ja) 2019-07-03

Family

ID=57754147

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015115085A Expired - Fee Related JP6536188B2 (ja) 2015-06-05 2015-06-05 誘電体多層膜フィルム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6536188B2 (ja)

Citations (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001011423A (ja) * 1999-06-29 2001-01-16 Ge Toshiba Silicones Co Ltd 感圧粘着テープ用シリコーン粘着剤組成物
JP2007063491A (ja) * 2005-09-02 2007-03-15 Emulsion Technology Co Ltd 水性エマルジョン型粘着剤組成物
JP2009038078A (ja) * 2007-07-31 2009-02-19 Konica Minolta Holdings Inc 電磁波シールドフィルム及びプラズマディスプレイパネル
JP2011145683A (ja) * 2011-02-04 2011-07-28 Hitachi Chem Co Ltd ディスプレー用フィルター、ディスプレー用フィルター用衝撃吸収透明粘着材層及び衝撃吸収透明粘着材層用紫外線硬化性組成物
JP2011232493A (ja) * 2010-04-27 2011-11-17 Konica Minolta Opto Inc 偏光板、及びそれを用いた液晶表示装置
JP2012131130A (ja) * 2010-12-22 2012-07-12 Konica Minolta Holdings Inc 赤外反射フィルム及びそれを用いた赤外反射体
WO2013061931A1 (ja) * 2011-10-28 2013-05-02 古河電気工業株式会社 半導体加工用ダイシングテープ
WO2013151136A1 (ja) * 2012-04-05 2013-10-10 コニカミノルタ株式会社 赤外遮蔽フィルムおよび赤外遮蔽体
US20140192413A1 (en) * 2011-06-24 2014-07-10 Konica Minolta , Inc. Optical reflective film
CN104081231A (zh) * 2012-01-11 2014-10-01 柯尼卡美能达株式会社 红外遮蔽膜
WO2015093413A1 (ja) * 2013-12-18 2015-06-25 コニカミノルタ株式会社 光反射フィルムおよびこれを用いた光反射体
JP2015140378A (ja) * 2014-01-28 2015-08-03 住友理工株式会社 フィルム用粘着剤組成物およびこれを用いた粘着フィルムならびに遮熱性粘着フィルム、粘着フィルムの施工方法ならびに遮熱性粘着フィルムの施工方法
WO2015159647A1 (ja) * 2014-04-17 2015-10-22 コニカミノルタ株式会社 光反射フィルムロール及び光反射フィルムロール包装体

Patent Citations (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001011423A (ja) * 1999-06-29 2001-01-16 Ge Toshiba Silicones Co Ltd 感圧粘着テープ用シリコーン粘着剤組成物
JP2007063491A (ja) * 2005-09-02 2007-03-15 Emulsion Technology Co Ltd 水性エマルジョン型粘着剤組成物
JP2009038078A (ja) * 2007-07-31 2009-02-19 Konica Minolta Holdings Inc 電磁波シールドフィルム及びプラズマディスプレイパネル
JP2011232493A (ja) * 2010-04-27 2011-11-17 Konica Minolta Opto Inc 偏光板、及びそれを用いた液晶表示装置
JP2012131130A (ja) * 2010-12-22 2012-07-12 Konica Minolta Holdings Inc 赤外反射フィルム及びそれを用いた赤外反射体
JP2011145683A (ja) * 2011-02-04 2011-07-28 Hitachi Chem Co Ltd ディスプレー用フィルター、ディスプレー用フィルター用衝撃吸収透明粘着材層及び衝撃吸収透明粘着材層用紫外線硬化性組成物
US20140192413A1 (en) * 2011-06-24 2014-07-10 Konica Minolta , Inc. Optical reflective film
WO2013061931A1 (ja) * 2011-10-28 2013-05-02 古河電気工業株式会社 半導体加工用ダイシングテープ
CN104081231A (zh) * 2012-01-11 2014-10-01 柯尼卡美能达株式会社 红外遮蔽膜
WO2013151136A1 (ja) * 2012-04-05 2013-10-10 コニカミノルタ株式会社 赤外遮蔽フィルムおよび赤外遮蔽体
WO2015093413A1 (ja) * 2013-12-18 2015-06-25 コニカミノルタ株式会社 光反射フィルムおよびこれを用いた光反射体
JP2015140378A (ja) * 2014-01-28 2015-08-03 住友理工株式会社 フィルム用粘着剤組成物およびこれを用いた粘着フィルムならびに遮熱性粘着フィルム、粘着フィルムの施工方法ならびに遮熱性粘着フィルムの施工方法
WO2015159647A1 (ja) * 2014-04-17 2015-10-22 コニカミノルタ株式会社 光反射フィルムロール及び光反射フィルムロール包装体

Also Published As

Publication number Publication date
JP6536188B2 (ja) 2019-07-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6443341B2 (ja) 光反射フィルムおよびこれを用いた光反射体
WO2014024873A1 (ja) 光反射フィルムおよびこれを用いた光反射体
WO2016027733A1 (ja) 光反射フィルム、光反射フィルムの製造方法、光反射フィルムの加飾成型加工方法、合わせガラス及び曲面形状体
WO2013099564A1 (ja) 赤外遮蔽フィルム、これを用いた熱線反射合わせガラス、および熱線反射合わせガラスの製造方法
EP2873993A1 (en) Infrared-shielding film
WO2013151136A1 (ja) 赤外遮蔽フィルムおよび赤外遮蔽体
JPWO2014199872A1 (ja) 赤外遮蔽フィルムおよびこれを用いた赤外遮蔽体および熱線反射合わせガラス
JP6428608B2 (ja) 赤外線遮蔽フィルム、赤外線遮蔽フィルムの設置方法及び赤外線遮蔽フィルムの虹彩防止方法
JP2014201450A (ja) 熱線遮断性合わせガラス及び熱線遮断性合わせガラスの製造方法
WO2016194560A1 (ja) 赤外遮蔽フィルム
JPWO2015056752A1 (ja) 赤外遮蔽フィルムおよびこれを用いた赤外遮蔽体および熱線反射合わせガラス
WO2017077839A1 (ja) 自己修復性フィルム
JP2015125168A (ja) 誘電体多層膜フィルム
JP6759697B2 (ja) ロール状の光学反射フィルム
JP6787336B2 (ja) 光学反射フィルムおよび光学反射体
JP2016155256A (ja) 遮熱フィルム、およびその製造方法
JP2017219694A (ja) 光学反射フィルム、光学反射フィルムの製造方法、及び、光学反射体
JP6326780B2 (ja) 窓貼り用フィルム
JP6536188B2 (ja) 誘電体多層膜フィルム
WO2015037514A1 (ja) 誘電体多層膜フィルムの製造方法
JP2016118632A (ja) 光学制御フィルムの製造方法
JP2016083903A (ja) 積層フィルム
JP6672984B2 (ja) 光学反射フィルム、光学反射フィルムの製造方法、及び、光学反射体
JP2017090714A (ja) 赤外遮蔽フィルム、及び、赤外反射体
WO2016068211A1 (ja) 光学制御フィルムおよびこれを用いた光制御体

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180514

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190405

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190507

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190520

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6536188

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees