ところで、自動車用窓ガラスでは、外観上の見栄えを良くする観点から、周縁部に黒色セラミック層からなる遮光層(いわゆる、黒セラ)を焼結したものがある。遮光層は、黒又はグレーといった顔料及びガラスフリットを含む黒色セラミックスペーストをスクリーン印刷により窓ガラス表面に塗布し、加熱処理によって窓ガラス表面上に焼結させることによって形成される。上記の導電性パターン層は、目立たないようにするために窓ガラスの周縁部に設けられることがあるため、遮光層を設けた場合には、両者の配置箇所が重なることがある。
しかしながら、導電性パターン層を遮光層に重ねて配置する場合には、銀を含む導電性パターン層は、白色を呈するため、黒色の遮光層上で目立ち、外観上の見栄えが悪いという問題が生じる。また、製造上の問題として、焼結前の遮光層の表面は、ガラス基板に比べて表面粗さが粗いため、転写フィルムを用いる手法では、粘着層と遮光層との密着性が悪く、導電性パターン層と遮光層との間に気泡が残留する等の原因により、焼結不良及び導電性不良が生じることと、導電性パターン層の形成後も転写フィルムの跡が遮光層上に残ることとが考えられるため、これまで転写フィルムを用いて導電性パターン層を遮光層上に形成しようとする手法は実施されていなかった。
その他、出願人らの検討によって、転写フィルムを用いて導電性パターン層を遮光層上に形成しようとする場合には以下のような問題が確認されている。ガラス基板上で遮光層の端縁部は段部を形成するため、導電性パターン層が遮光層の端縁部を横切る部分を有する場合には、導電性パターン層が遮光層の端縁部の形状に追従できず、導電性パターン層と遮光層及びガラス基板との密着性が低下し、焼結不良により導電性が低下する虞がある。転写フィルムと遮光層とを共に加熱し、導電性パターン層及び遮光層を焼結させる場合には、粘着層が遮光層から発生するガスの拡散を妨げ、焼結後に遮光層の表面に気泡が残留し、外観上の見栄えが悪化する。
また、導電性パターン層を形成するために使用される転写フィルムにも種々の問題がある。転写フィルムは、複数枚が互いに積層された状態で保管されることがあり、例えば、導電性パターン層及び粘着層を含む積層体を、積層体に対して剥離可能な支持フィルムに支持させ、粘着層が他の支持フィルムの背面に剥離可能に接触するようにして互いに積層させたものがある。また、積層体を支持する支持フィルムを帯状とし、粘着層を支持フィルムともに連続したものとし、導電性パターン層を支持フィルムの長手方向に複数個断続的に配列し、転写フィルムをリールに巻き取り、各層をリールの径方向に積層させたものがある。このように積層させた状態で保管する転写フィルムでは、導電性パターン層の方が粘着層より硬いことが多いため、積層方向において導電性パターン層に挟まれた部分の粘着層が、導電性パターン層間で圧縮され膜厚が薄くなることがある。粘着層の膜厚が薄くなると、貼り付けられる表面への追従性(密着性)が低下し、導電性パターン層を適切に所定の位置に貼り付けることができないという問題がある。特に、遮光層はガラス基板に比べて表面粗さが粗いため、粘着層が適切に粘着することができないという問題がある。また、導電性パターン層間に挟まれた部分のみの膜厚が薄くなることで、粘着層の表面が凸凹になり、粘着層をガラス基板表面等に貼り付ける際に気泡を噛み込みやすくなるという問題がある。このような粘着層の薄膜化を避けるために、圧縮を受けても薄膜化しない比較的硬質な材料から粘着層を形成することが考えられるが、硬質な材料は粘着性が低くガラス基板等への密着性が低下するという問題がある。
合わせガラスを構成する車外側ガラス基板及び車内側ガラス基板を加熱成形する際には、両ガラス基板を重ね合わせた状態で行うことが一般的であるため、遮光層が両ガラス基板の接触面にある場合には遮光層を介して両ガラス基板が融着する。そのため、従来の自動車用合わせガラスでは、車外側ガラス基板の車内面に遮光層を形成し、車内側ガラス基板の車内面に導電性パターン層を形成し、遮光層と導電性パターン層とを重ねて形成しないようにする対策が採られていた。しかしながら、この場合には、遮光層を焼結させるための加熱工程と、車外側ガラス基板及び車内側ガラス基板を成形するための加熱工程とを別々に行わなければならず、生産性が悪いという問題があった。
本発明は、以上の問題を鑑みてなされたものであって、遮光層上においても目立つことなく、かつ遮光層と良好に結合した導電性パターン層を有するパターン付きガラス基板を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、表面に、ガラス成分を含む導電性パターン層(8)が焼結されたパターン付きガラス基板(1)の製造方法であって、ガラス基板(3)の一部に、顔料及びガラス成分を含む遮光ペーストを塗布し、前記ガラス基板上に遮光層(6)を形成する第1工程と、導電性パターン層(8)及び粘着層(28)を含む積層体(30)と、前記積層体の、前記粘着層とは反対側の面に剥離可能に積層された支持フィルム(21)とを有する転写フィルム(20)を前記遮光層の外面に前記粘着層が当接するように前記転写フィルムを前記ガラス基板に貼付し、続いて前記支持フィルムを前記積層体から剥離し、前記積層体を前記ガラス基板に転写する第2工程と、前記ガラス基板、前記遮光層、及び前記積層体を共に加熱し、前記粘着層を除去して、前記遮光層を前記ガラス基板上に焼結させ、かつ前記導電性パターン層を前記遮光層上に焼結させる第3工程とを含むことを特徴とする。
この構成によれば、転写フィルムを用いて遮光層上に導電性パターン層を良好に形成することができる。
本発明の他の側面は、前記第2工程において、前記導電性パターン層が、前記ガラス基板上の前記遮光層の端縁部を横切る部分を含み、前記第3工程において、前記導電性パターン層の一部が前記ガラス基板上に焼結されることを特徴とする。
この構成によれば、導電性パターン層の配置における自由度を高めることができる。
本発明の他の側面は、前記第1工程において、前記遮光層の前記ガラス基板上における前記端縁部が、前記ガラス基板の表面と10°以下の角度をなす傾斜面を形成するように前記遮光層を形成することを特徴とする。
この構成によれば、遮光層の端縁部において導電性パターン層が遮光層表面に追従しやすくなり、導電層の遮光層及びガラス基板への焼結不良を抑制し、導電性不良を抑制することができる。また、導電性パターン層の膜厚が遮光層より薄いような場合にも、遮光層の端縁部に導電層を良好に配設することができる。換言すると、導電性パターン層の膜厚を遮光層より薄くすることができる。
本発明の他の側面は、前記導電性パターン層を除く前記積層体の熱分解温度が前記遮光層に含まれるガラス成分の溶融温度よりも低いことを特徴とする。すなわち、第3工程における遮光層及び積層体の加熱過程では、遮光層に含まれるガラス成分が溶融を開始する前に、導電性パターン層を除く積層体の熱分解(重量減少)が完了することを特徴とする。
この構成によれば、導電性パターン層を除く積層体が、遮光層のガラス成分が溶融するよりも早く分解するため、遮光層のガラス成分が溶融してガスを発生する際には導電性パターン層を除く積層体は既に存在せず、遮光層から発生したガスは遮光層から外部へと拡散することができる。そのため、遮光層の内部および表面に気泡が残留せず、遮光層の外観上の見栄えがよくなる。
本発明の他の側面は、前記第1工程において前記ガラス基板上に形成する前記遮光層の表面粗さにおける最大高さが、前記転写フィルムの前記粘着層の膜厚未満となるように形成することを特徴とする。ここで、最大高さ(Rmax)とは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定し、この値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
この構成によれば、粘着層が遮光層の表面に密着し易くなる。
本発明の他の側面は、前記第2工程と前記第3工程の間に、前記積層体を前記ガラス基板上に押圧する工程を更に含むことを特徴とする。
この構成によれば、粘着層が遮光層及びガラス基板により密着しやすくなり、導電性パターンの遮光層及びガラス基板への焼結が確実に行われるようになる。
本発明の他の側面は、前記第2工程と前記第3工程の間に、前記積層体を加熱する工程を更に含むことを特徴とする。
この構成によれば、一般的に積層体よりも硬い支持フィルムを除去した後に、粘着層を軟化させるため、粘着層が遮光層及びガラス基板の表面形状に追従しやすくなる。
本発明の他の側面は、前記第1工程の後から前記第3工程の前までの間に、前記遮光層を加熱し、前記遮光層を前記ガラス基板上に仮焼結させる工程を更に含む。
この構成によれば、仮焼結によって遮光層の表面の凹凸及び端縁部の傾斜が緩和されるため、粘着層が密着しやすくなり、導電性パターンの遮光層及びガラス基板への焼結が確実に行われるようになる。また、転写フィルムを遮光層上に貼り付ける前に、予め遮光層を加熱し、焼成に伴うガスを放散させているため、導電性パターン層を焼成する際の加熱時で遮光層からガスが発生せず、遮光層の内部及び表面にガスが残留することがない。そのため、遮光層の外観を良好に形成することができる。
本発明の他の側面は、前記転写フィルムの前記粘着層を、ガラス転移温度が−60℃以上−20℃以下の材料で構成することを特徴とする。
この構成によれば、粘着層は比較的軟質に形成され、遮光層の表面に確実に密着することができる。
本発明の他の側面は、前記転写フィルムの前記粘着層の膜厚を、3μm以上15μm以下、より好ましくは3μm以上7μm以下とすることを特徴とする。
この構成によれば、表面の凹凸がガラス基板に比べて一般に大きくなる遮光層の表面に対して、粘着層は確実に密着できるようになる。また、膜厚を7μm以下とすることで、粘着層を粘着性が確保できる範囲内で可能な限り薄膜化し、加熱時に粘着層が早い段階で消失するようにすることができる。
本発明の他の側面は、前記第2工程において準備する前記転写フィルムの前記粘着層が、相対的に高いガラス転移温度を有する硬質内側層(36)と相対的に低いガラス転移温度を有する軟質外側層(37)とを含むことを特徴とする。
この構成によれば、保管時に積層され、粘着層が導電性パターン層間において圧縮されても、硬質内側層が圧縮に抗するため、粘着層は所定の膜厚を維持することができる。また、軟質外側層が粘着層表面の柔軟性を確保するため、ガラス基板等への密着性を高めることができる。
本発明の他の側面は、前記硬質内側層のガラス転移温度が−30℃以上0℃以下であり、前記軟質外側層のガラス転移温度が−20℃以下であり、かつ前記硬質内側層のガラス転移温度より10℃以上低温であることを特徴とする。また、前記軟質外側層の重量平均分子量が7万以上20万以下であり、前記硬質内側層の重量平均分子量が30万以上150万以下であることを特徴とする。
この構成によれば、硬質内側層及び軟質外側層を好適に形成することができる。
本発明の他の側面は、前記硬質内側層の厚さは、2μm以上7μm以下であることを特徴とする。
この構成によれば、粘着層のガラス基板等への粘着に必要な膜厚を確保することができる。
本発明の他の側面は、前記軟質外側層の厚さは、3μm以上10μm以下であることを特徴とする。
この構成によれば、転写フィルムが積層状態で保管され、粘着層が圧縮される場合にも、軟質外側層を粘着層の外面に残存させることができる。
本発明の他の側面は、パターン付きガラス基板(1)であって、ガラス基板(3)と、顔料及びガラス成分を含み、前記ガラス基板の表面に焼結された遮光層(6)と、前記遮光層上に焼結された導電性パターン層(8)とを含み、前記導電性パターン層が、ガラス成分を含む導電層(11)と、顔料及びガラス成分を含み、前記導電層を包囲する被覆層(15,16)とを有することを特徴とする。
この構成によれば、導電層は被覆層に包囲されているため、遮光層上においても目立たないようにすることができる。
本発明の他の側面は、前記導電性パターン層が、前記ガラス基板上の前記遮光層の端縁部を横切る部分を含むことを特徴とする。
この構成によれば、導電性パターン層の配置における自由度を高めることができる。
本発明の他の側面は、前記導電性パターン層の厚さが、20μm以下であり、前記端縁部が前記ガラス基板の表面と10°以下の角度をなす傾斜面を形成することを特徴とする。
この構成によれば、導電性パターン層が遮光層の端縁部を横切る場合にも導電性パターン層を良好に形成することができる。
本発明の他の側面は、前記ガラス基板は、自動車用窓ガラスであり、前記遮光層及び前記導電性パターン層は、前記ガラス基板の車内側の面上に設けられることを特徴とする。
この構成によれば、パターン付きガラス基板の外観上の見栄えを良くすることができる。
本発明の他の側面は、前記ガラス基板は、自動車用合わせ窓ガラスの車内側を構成するガラス基板であり、前記遮光層及び前記導電性パターン層は、該ガラス基板の車内側の面上に設けられることを特徴とする。
この構成によれば、合わせ窓ガラスを構成する各ガラス基板の合わせ面を避けて遮光層及び導電性パターン層を配置するため、各ガラス基板を重ね合わせて加熱成形する際に同時に、遮光層及び導電性パターン層の焼成を行うことができる。
本発明の他の側面は、導電性パターン層(8)及び粘着層(28)を含む積層体(30)と、前記積層体の、前記粘着層とは反対側の面に剥離可能に積層された支持フィルム(21)とを有し、前記積層体を基体の表面に転写し、加熱することによって前記導電性パターン層を前記基体に焼結するために用いる転写フィルムであって、前記粘着層は、相対的に高いガラス転移温度を有する硬質内側層(36)と相対的に低いガラス転移温度を有する軟質外側層(37)とを含むことを特徴とする。
この構成によれば、保管時に積層され、粘着層が導電性パターン層間において圧縮されても、硬質内側層が圧縮に抗するため、粘着層は所定の膜厚を維持することができる。また、軟質外側層が粘着層表面の柔軟性を確保するため、ガラス基板等への密着性を高めることができる。
本発明の他の側面は、当該転写フィルムは帯状をなして巻き取られた形態をなし、前記導電性パターン層は前記支持フィルムの長手方向に沿って複数個が配列されていることを特徴とする。
この構成によれば、粘着層は転写フィルムを積層状態で保管しても所定の膜厚を維持することができるため、転写フィルムをリールに巻き取った形態で保管することができる。この保管形態では、転写フィルムの取り出しが容易であり、作業性が良い。
本発明の他の側面は、前記粘着層の前記硬質内側層の厚さは、2μm以上7μm以下であることを特徴とする。
この構成によれば、粘着層のガラス基板等への粘着に必要な膜厚を確保することができる。
本発明の他の側面は、前記粘着層の前記軟質外側層の厚さは、3μm以上10μm以下であることを特徴とする。
この構成によれば、転写フィルムが積層状態で保管され、粘着層が圧縮される場合にも、軟質外側層を粘着層の外面に残存させることができる。
本発明の他の側面は、前記硬質内側層のガラス転移温度が−30以上0℃以下であり、前記軟質外側層のガラス転移温度が−20℃以下であり、かつ前記硬質内側層のガラス転移温度より10℃以上低温である。また、前記軟質外側層の重量平均分子量が7万以上20万以下であり、前記硬質内側層の重量平均分子量が30万以上150万以下であることを特徴とする。
この構成によれば、硬質内側層及び軟質外側層を好適に形成することができる。
以上の構成によれば、遮光層上においても目立つことなく、かつ遮光層と良好に結合した導電性パターン層を有するパターン付きガラス基板を提供することができる。
以下、図面を参照して、本発明を自動車のフロントガラス(ウインドシールドガラス)に適用した一実施形態を詳細に説明する。
(導電性パターン層付きガラス基板)
図1及び図2に示すように、実施形態に係る導電性パターン層付きガラス基板1は、合わせガラスである自動車用フロントガラス10の車内側基板に適用されるものである。フロントガラス10は、車外面を構成する車外側ガラス基板2と、車内面を構成する車内側ガラス基板3と、両ガラス基板2、3の間に介装され、両ガラス基板2、3を接着する樹脂製の中間膜4とを有している。車内側ガラス基板3の車内面5の周縁部には、黒色セラミック層からなる遮光層(いわゆる、黒セラ)6が焼結されている。ガラス基板3及び遮光層6の表面上には、ガラス基板3上における遮光層6の端縁部7を横切る部分を有して、導電性パターン層8が焼結されている。
本発明における遮光層6は、顔料を含むガラス成分からなる層であり、ガラス成分がガラス基板3の表面に融着することによって、ガラス基板3上に結合している。顔料は、酸化銅、酸化クロム、酸化鉄及び酸化マンガンの少なくとも一種を含むものであることが好ましく、これらを単独で、又は複数種を混合して、あるいは、その他の顔料と混合して用いてもよい。遮光層6は、遮光機能を有するものであれば特に制限はないが、黒又はグレーなどの濃色を呈することが好ましい。ガラス成分は、ホウケイ酸ビスマス、ホウケイ酸亜鉛などの結晶化ガラス及び非晶質ガラスを必須成分として含み、必要に応じてバナジウム、マンガン、鉄、及びコバルトの少なくとも1つの酸化物を含む遷移金属酸化物やアルミナ等の添加剤を含んでいる。
図3に示すように、導電性パターン層8は、導電性材料を含むガラス成分からなる導電層11と、顔料を含むガラス成分からなり、導電層11を包囲(被覆)する被覆層15、16とを有している。導電層11は、アンテナパターンを構成する線状部13と、線状部13の一端に設けられた線状部13よりも幅広の給電部14とを有している。導電性材料は、金、銀、銅や、これらの合金であってよく、本実施形態では銀を含むものとする。導電層11は、導電性材料を含むことで導電性を有している。被覆層15,16に含まれる顔料は、上述した遮光層6に適用可能な顔料を含むことができ、黒又はグレーなどの濃色を呈することが好ましく、遮光層6と同じ顔料で構成することが好ましい。導電層11及び被覆層15,16に含まれるガラス成分は、ホウケイ酸ビスマス、ホウケイ酸亜鉛などの結晶化ガラス及び非晶質ガラスを必須成分として含み、必要に応じてバナジウム、マンガン、鉄、及びコバルトの少なくとも1つの酸化物を含む遷移金属酸化物やアルミナ等の添加剤を含んでいる。
本実施形態における被覆層15、16は、導電層11を挟むように、第1の被覆層15及び第2の被覆層16の2つの層を積層することによって形成されており、導電層11の線状部13を全方位にわたって被覆する一方、給電部14をその車内側を向く外面が露呈するように被覆する。導電層11及び被覆層15、16は、それぞれのガラス成分が互いに融着すると共に、遮光層6の表面及びガラス基板3の表面に融着している。
以上のように構成したパターン付きガラス基板1は、合わせガラスを構成する車内側ガラス基板3に適用され、その車内面5に遮光層6及び導電性パターン層8を共に備えるため、車外側ガラス基板2と車内側ガラス基板3とを重ねて加熱成形する際に同時に、遮光層6及び導電性パターン層8の焼成を行うことができ、生産性が良い。また、銀を含み、焼成されることによって白色を呈する導電層11の線状部13を、遮光層6と同色または近い色を呈する被覆層15,16で隠蔽することによって、車内側から見ても導電性パターン層8が遮光層6上で目立たないようにし、フロントガラス10の外観上の見栄えを高めることができる。
(転写フィルム)
後述する導電性パターン層付き窓ガラスの製造工程において使用する転写フィルム20の構成について説明する。転写フィルム20は、加熱(焼成)処理されることによって導電性パターン層8となる、加熱処理前の導電性パターン層8を予め含むものであり、ガラス基板3及び遮光層6の表面上に貼り付けられることによって、ガラス基板3及び遮光層6の表面上に導電性パターン層8を簡単に形成することができる。
図4に示すように、剥離性を有する支持フィルム21の一面上には、導電性パターン層8を含む積層体30が積層されている。導電性パターン層8の両面には、転写性を向上させるために、焼成除去可能な有機物よりなる樹脂層が積層されている。具体的には、この実施形態による転写フィルム20は、支持フィルム21上に保護層23、第2の被覆層16、導電層11、第1の被覆層15、中間層27、粘着層28(硬質内側層36、軟質外側層37)がこの順に積層された構成となっている。
このような積層構造を形成するには、例えば、まず、中間層27用の塗布液を仮支持体の上に塗布して中間層27を形成し、その上に、第1の被覆層15用のペーストを、スクリーン印刷によりパターンを用いて印刷し、次に導電層11用のペーストを、パターンの版を用いてスクリーン印刷により第1の被覆層15上に印刷して、導電層11を形成し、次に、第2の被覆層16用のペーストを、スクリーン印刷によりパターンを用いて印刷して、導電層11を覆うように第2の被覆層16を形成し、この上に更に、保護層23用の塗布液を塗布して保護層23を形成し、そこに、剥離性を有する支持フィルム21を貼り合わせて、第1の積層物を得る。他方、別の仮支持体に、粘着層28を構成する軟質外側層37用の粘着剤及び硬質内側層36用の粘着材を順次塗布し、軟質外側層37及び硬質内側層36からなる粘着層28を形成して、第2の積層物を得る。最後に、第1の積層物から仮支持体を剥がし、第1の積層物の中間層27を第2の積層物の粘着層28(硬質内側層36)と貼り合わせれば、本発明の転写フィルム20を作製することができる。なお、他の実施形態においては、粘着層28を単一の層としてもよい。
支持フィルム21は、導電性パターン層8を含む積層体30と剥離性を有するものである。本実施形態では、支持フィルム21は、積層体30側と反対の面にシリコーン系やアルキド樹脂系などからなる剥離層31を有し、積層体30側の面に再剥離用の微粘着層32を有する。支持フィルム21は、施工性向上のために、エンボス加工やサンドブラスト等の粗面化処理したものであっても良い。支持フィルム21は、積層体30の遮光層6及びガラス基板3の表面への密着性を損なわないように、可撓性のある材料から構成されることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、アクリルなどのプラスチックや紙などを使用できる。各種材料を使用した場合において、支持フィルム21は、可撓性をより一層高めるために、薄膜化されることが望ましい。例えば、材質にポリエチレンを適用した場合には、25μm以下であることが好ましい。
導電層11は、焼成後に導電性を発現するための導電性材料と、基板と熱融着して機械的強度を発現するためガラスフリットと、焼成により除去可能な有機バインダとを含有し、線状部及び給電部を有する形状に構成されている。導電性材料としては金、銀、銅等の粉体や、これらを含む合金の粉体を用いることができ、焼成後の所望の機能に応じた材料を適宜選択して使用すればよい。導電層11の焼結体を形成するという観点から、導電性に優れると共に、大気中での焼成が可能で、且つ安価である材料を選択するのが望ましく、銀、銀−パラジウム、銀−白金等の銀を主成分とした導電性材料を好適に用いることができる。
ガラスフリットは、熱溶融することによって、導電性パターン層8に機械的強度、硫酸や塩水等に対する耐薬品性を与えると共に、導電層11と被覆層15、16と融着する目的で含まれている。ガラスフリットは、焼成温度や熱収縮率などのバランスを考慮して、好適な組成のものを適宜選定して用いることができる。ガラスフリットは、例えば、ホウケイ酸ビスマス、ホウケイ酸亜鉛などの結晶化ガラス及び非晶質ガラスを必須成分として含み、必要に応じてバナジウム、マンガン、鉄、及びコバルトの少なくとも1つの酸化物を含む遷移金属酸化物やアルミナ等の添加剤を含んでいる。
本発明の導電層11に含まれる有機バインダとしては、焼成除去可能な材料であれば特に限定されない。焼成による熱分解によって除去されやすい材料としては、アクリル、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、酢酸ビニル、ポリビニルプチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエステルなどの樹脂が挙げられ、これらを単独で、または混合して使用することができる。また、有機成分として、焼成前の塗膜に可撓性を付与する目的で、可塑剤を加えてもよい。可塑剤は、脂肪酸エステルやリン酸エステルなどの中から、適宜選定して用いることができる。
被覆層15,16は、黒色顔料のほか、ガラスフリットと、焼成により除去可能な有機バインダとを含む。黒色顔料は、焼成後に隠蔽性を発現し、外観を黒色に見せるための酸化クロム、酸化コバルト、酸化銅またはこれらの組み合わせたもの少なくとも1種類含む。ガラスフリットは、熱溶融することによって、被覆層15、16に機械的強度、硫酸や塩水等に対する耐薬品性を与えると共に、被覆層15、16と導電層11、遮光層6及びガラス基板3とを融着する目的で含まれている。ガラスフリット及び有機バインダとしては、導電層11に用いるものと同様のものを、適宜選定して用いることができる。
導電性パターン層8は、導電層11を挟むように、第1の被覆層15及び第2の被覆層16の2つの黒色層を積層することによって形成される。この態様によれば、導電層11は、2つの被覆層15、16で包囲されるため、確実に隠蔽され外観を向上させることができる。なお、導電層11の給電部14に対応する部分は、焼結後において給電部14の車内面を露出させるために、第2の被覆層16が設けられていない。被覆層15、16の線幅は導電層11の線幅よりも広いことが好ましい。好ましくは、第2の被覆層16のパターン幅が導電層11のパターン幅より0.2mm以上広い方が良い。
粘着層28は、中間層27側に積層された硬質内側層36と、硬質内側層36の中間層27側と異なる側に積層され、ガラス基板3等の接触面となる軟質外側層37とを有する。硬質内側層36及び軟質外側層37は、遮光層6及びガラス基板3に貼り合せたときに適度な粘着性を有する焼成除去可能な有機物であれば特に限定されないが、常温でタック性を有するアクリル系、ゴム系、及びメタクリル系とアクリル系のモノマーを共重合し、所望のガラス転移温度に設定した樹脂などの粘着剤を使用できる。アクリル系モノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ステアリル及びアクリル酸2エチルヘキシル等を適用することができ、メタクリル系モノマーとしては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル及びメタクリル酸ステアリル等を適用することができる。また、ヒートラミネートなどで施工をする場合には、ラミネート温度で軟化する有機物を用いても良い。ガラス転移温度は、例えばメタクリル系とアクリル系のモノマーを共重合した樹脂の場合、各モノマーの配合比を変更することによって調整することができる。
硬質内側層36は、ガラス転移温度が−30℃以上0℃以下の高分子材料から形成されている。また、他のパラメータを用いて規定すると、硬質内側層36は、重量平均分子量が30万以上150万以下の高分子材料である。
軟質外側層37は、ガラス転移温度が、−20℃以下であり、かつ硬質内側層36に比較して10℃以上低い高分子材料から形成されている。また、他のパラメータを用いて規定すると、硬質内側層36は、重量平均分子量が7万以上20万以下の高分子材料である。
硬質内側層36の厚さは、2μm以上7μmであり、好ましくは4μm以上7μm以下である。軟質外側層37の厚さは、3μm以上10μm以下であり、好ましくは7μm以上10μm以下である。硬質内側層36及び軟質外側層37を合わせた膜厚が2μm未満だと粘着力が不足し転写性が低下し、10μmよりも厚くなると熱分解ガスの発生量が多くなると共に、分解が完了するまでに要する時間が長くなるため導電性パターン層8及び遮光層6に欠陥が生じやすく焼成不良になりやすい。
粘着層28は、遮光層6の表面に確実に密着できるように、遮光層6の表面粗さにおける最大高さRmaxよりも硬質内側層36と軟質外側層37とを合わせた膜厚が大きく形成されていることが好ましい。なお、軟質外側層37の膜厚が、遮光層6の表面粗さにおける最大高さRmaxよりも大きく形成されていてもよい。粘着層28の膜厚は、例えば2μm〜10μmである。密着性の観点からは、粘着層28の膜厚が7μm〜10μmであることが好ましい。膜厚が2μm未満だと粘着力が不足し転写性が低下し、10μmよりも厚くなると熱分解ガスの発生量が多くなると共に、分解が完了するまでに要する時間が長くなるため導電性パターン層8及び遮光層6に欠陥が生じやすく焼成不良になりやすい。
また、粘着層28(硬質内側層36及び軟質外側層37)を構成する有機物は、遮光層6に含まれるガラスフリットのガラス転移点よりも低い熱分解温度を有し、粘着層28を構成する有機物の熱分解温度は、遮光層6に含まれるガラスフリットのガラス転移点よりも30℃以上、より好ましくは50℃以上低いことが好ましい。例えば、遮光層6に含まれるガラスフリットのガラス転移点が550℃である場合には、粘着層28の熱分解温度は500℃以下にするとよい。
粘着層28は、導電性パターン層8及び遮光層6の加熱(焼成)時に、比較的速やかに熱分解するように、厚さが10μm以下である。熱分解の観点からは、粘着層28の膜厚が7μm以下であることが好ましい。上述したように、遮光層6表面への密着性を考慮すると、粘着層28の膜厚は、2μm以上10μm以下、より好ましくは2μm以上7μm以下である。
粘着層28は、導電性パターン層8を覆うように、剥離性を有する支持フィルム21の全面に形成してもよく、或いは導電性パターン層8と同様のパターンを形成するようにしてもよい。本実施形態では、粘着層28は支持フィルム21の全面に形成されるものとする。
中間層27及び保護層23は、選択的に付加し得る層であって、本発明に必須の構成ではない。中間層27は、粘着層28の粘着剤が含有する溶剤や有機物が導電性パターン層8に浸み込むことを防止するために、導電性パターン層8と粘着層28との間に設けられる。中間層27に用いる材料としては、焼成除去可能な有機物であれば特に限定されず、導電層11や被覆層15、16に用いられる有機バインダと同様なものであってよく、特にガラス転移温度が50℃以上の高分子樹脂を好適に使用することができる。例えば、中間層27は、メタクリル系とアクリル系のモノマーを共重合し、所望のガラス転移温度に設定したものであってよい。メタクリル系及びアクリル系モノマーは、粘着層28について例示したものについての配合比を変更して適用し得る。また、中間層27を構成する有機物は、粘着層28と同様に、遮光層6に含まれるガラスフリットのガラス転移点よりも低い熱分解温度を有し、中間層27を構成する有機物の熱分解温度は、遮光層6に含まれるガラスフリットのガラス転移点よりも30℃以上、より好ましくは50℃以上低いことが好ましい。例えば、中間層27に含まれるガラスフリットのガラス転移点が550℃である場合には、中間層27を構成する有機物の熱分解温度は500℃にするとよい。
中間層27は、導電性パターン層8及び遮光層6の加熱(焼成)時に、比較的速やかに熱分解するように、できるだけ薄膜化するのが好ましく、厚さが10μm以下、より好ましくは7μm以下、更に好ましくは5μm以下である。一方、中間層27は、バリア効果を安定にするために0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。そのため、粘着層28の厚さは、1μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上7μm以下、更に好ましくは1μm以上5μm以下である。
中間層27は、導電性パターン層8を覆うように、剥離性を有する支持フィルム21の全面に形成しても良く、導電性パターン層8と同様のパターンを形成するようにしてもよい。本実施形態では、中間層27は支持フィルム21の全面に形成されるものとする。
保護層23は、基板に転写した焼成前の導電性パターン層8に、異物が付着したり傷が発生したりするのを防ぐ等の目的で、導電性パターン層8を覆うように設けられる。保護層23に用いる材料としては、焼成除去可能な有機物であれば特に限定されず、導電層11や被覆層15、16に用いられる有機物と同様のものであってよい。例えば、保護層23は、メタクリル系とアクリル系のモノマーを共重合し、所望のガラス転移温度に設定したものであってよい。メタクリル系及びアクリル系モノマーは、粘着層28について例示したものについて配合比を変更して適用し得る。また、保護層23を構成する有機物は、粘着層28と同様に、遮光層6に含まれるガラスフリットのガラス転移点よりも低い熱分解温度を有する材料から形成されており、保護層23を構成する有機物の熱分解温度は、遮光層6に含まれるガラスフリットのガラス転移点よりも30℃以上、より好ましくは50℃以上低いことが好ましい。例えば、保護層23に含まれるガラスフリットのガラス転移点が550℃である場合には、中間層27の熱分解温度は500℃にするとよい。
保護層23は、導電性パターン層8及び遮光層6の加熱(焼成)時に、比較的速やかに熱分解するように、できるだけ薄膜化するのが好ましく、厚さが10μm以下、より好ましくは7μm以下である。なお、保護層23は、導電性パターン層8を覆うことができるように3μm以上であることが好ましい。そのため、保護層23の厚さは、3μm以上10μm以下、より好ましくは3μm以上6μm以下である。保護層23は、導電性パターン層8を覆うように、剥離性を有する支持フィルム21の全面に形成しても良く、導電性パターン層8と同様のパターンを形成するようにしてもよい。
図4に示すように、転写フィルム20の保管形態としては、リール形態41、スタック形態42及び単層形態43を取り得る。リール形態41では、支持フィルム21が帯状に形成され、支持フィルム21の長手方向に沿って、導電性パターン層8、保護層23、中間層27及び粘着層28からなる積層体30が断続的に支持フィルム21上に支持されている。積層体30は、支持フィルム21の外面及び内面のいずれに支持されていてもよい。なお、他の実施形態では、保護層23、中間層27及び粘着層28を支持フィルム21に沿って連続させ、導電性パターン層8のみを支持フィルム21の長手方向に断続的に配置してもよい。導電性パターン層8は、支持フィルム21の長手方向に沿って複数個が配置されている。転写フィルム20は、粘着層28が支持フィルム21の背面(保護層23側と異なる側)が接触するようにして、リール44に巻き取られた形態となっている。使用時には、連続した転写フィルム20の端部を引き出し、粘着層28を露出させて使用する。なお、導電性パターン層8を含む1枚の独立した転写フィルム20とすることができるように、支持フィルム21にミシン目等の加工を行ってもよい。
スタック形態42では、各転写フィルム20は、1つの導電性パターン層8を含むように予め切断され、各転写フィルム20の粘着層28が他の転写フィルム20の支持フィルム21の背面に接触するようにして積層されている。最下層に位置する粘着層28には、粘着層28に対して剥離可能なシリコーン層を備えたセパレータフィルム46が貼付されている。使用時には、最上層に位置する転写フィルム20を他の一層下の転写フィルム20から剥離し、粘着層28を露出させて使用する。
単層形態43では、各転写フィルム20は、1つの導電性パターン層8を含むように予め切断され、各転写フィルム20の粘着層28には、粘着層28に対して剥離可能なシリコーン層を備えたセパレータフィルム46が貼付されている。使用時には、転写フィルム20の粘着層28からセパレータフィルム46を剥離し、粘着層28を露出させて使用する。
リール形態41やスタック形態42は、単層形態43に比べてセパレータフィルム46を一枚ごとの転写フィルム20に設けなくてよい点で利点があるが、重なり合う導電性パターン層8間において粘着層28が圧縮力を受けるという欠点がある。
以上のように構成した転写フィルム20は、粘着層28が硬質内側層36と軟質外側層37とから構成されているため、硬質内側層36が圧縮力に抗して、粘着層28を所定の厚さ以上に維持することができる。そのため、転写フィルム20をリール形態41やスタック形態42で保管しても、硬質内側層36が重なり合う導電性パターン層8間において導電性パターン層8から加わる圧力に抗し、膜厚を維持することができる。これにより、粘着層28の厚さは、粘着性を発揮するのに必要な2μm以上に維持することができる。また、硬質内側層36に加えて、ガラス基板3等の接着対象物に対する接触面として硬質内側層36よりも軟質な軟質外側層37を設けたため、接着対象物の表面の表面に追従してより一層接着できるようになっている。
また、遮光層6の表面粗さにおける最大高さRmaxよりも膜厚を厚くしたため、粘着層28が遮光層6の表面の凹凸に追従して密着することができ、確実に粘着できる。また、支持フィルム21の可撓性を高めたことによって、支持フィルム21に支持された状態においても積層体30の可撓性が維持され、粘着層28が遮光層6の表面の凹凸や遮光層6の端縁部7に追従して密着することができる。
(導電性パターン層付き窓ガラスの製造方法)
図5及び図6を参照し、上述した転写フィルム20を用いて、ガラス基板3上に遮光層6及び導電性パターン層8を形成する第1の手順を説明する。
最初に、図5(A)に示すように、ガラス基板3を準備する。ガラス基板3は、一般的なフロート板ガラスを適用することができ、その軟化点は650〜700℃であってよい。
次の工程では、図5(B)に示すように、スクリーン印刷によって、着色セラミックスペースト(遮光ペースト)をガラス基板3の表面上に所定のパターンで印刷し、乾燥させて遮光層6を形成する。着色セラミックスペーストは、顔料及びガラスフリットを主要成分とするものであり、必要に応じてエチルセルロース等の樹脂や、パインオイル等の有機溶剤を含有する。
顔料は、酸化銅、酸化クロム、酸化鉄及び酸化マンガンの少なくとも一種を含むものであることが好ましく、これらを単独で、又は複数種を混合して、或いはその他の顔料と混合して用いてもよい。ガラスフリットは、ホウケイ酸ビスマス、ホウケイ酸亜鉛などの結晶化ガラス及び非晶質ガラスを必須成分として含み、必要に応じてバナジウム、マンガン、鉄、及びコバルトの少なくとも1つの酸化物を含む遷移金属酸化物やアルミナ等の添加剤を含んでいる。
着色セラミックスペーストにおける各成分の含有量は、例えば、顔料が10〜35質量%、ガラスフリットが50〜70質量%、樹脂が5〜20質量%、有機溶媒が5〜30質量%である。着色セラミックスペーストにおける各成分の含有量は、乾燥後の遮光層6のガラス基板3上における端縁部7に形成される傾斜面9と、ガラス基板3の表面とのなす角度θが、0°より大きく10°以下、より好ましくは0°より大きく5°以下となるように設定されることが望ましい。傾斜面9とガラス基板3の表面とのなす角度θは、着色セラミックスペーストの粘度が低いほど小さくなるため、遮光層6の形態を維持できる範囲で、樹脂の質量%を低下させ、有機溶媒の質量%を増大させるとよい。また、粘度の低い樹脂を選択するとよい。
また、着色セラミックスペーストにおける各成分の含有量は、乾燥後の遮光層6の表面粗さの最大高さRmaxが10μm以下、より好ましくは5μm以下となるように、設定されていることが好ましい。最大高さRmaxは、着色セラミックスペーストの粘度が低いほど小さくなる。
スクリーン印刷は、100〜300メッシュ程度のポリエステルスクリーン等を用いて行えばよく、乾燥は150℃で10分程度行えばよい。乾燥によって、遮光層6中の有機溶剤が蒸発し、遮光層6は蒸発乾固される。
次の工程では、上述した構成を有する転写フィルム20を準備する。そして、続く工程では、図5(C)及び図6に示すように、転写フィルム20を遮光層6が形成されたガラス基板3に、その粘着層28によって貼り付ける。転写フィルム20は、導電性パターン層8が遮光層6のガラス基板3の表面上における端縁部7を横切る(跨ぐ)ように配置され、粘着層28は遮光層6及びガラス基板3の表面に粘着する。なお、他の実施形態では、転写フィルム20が遮光層6の表面上のみに位置するように貼り付けてもよい。
次の工程では、図5(D)に示すように、粘着層28と遮光層6及びガラス基板3の表面との密着性を高めるために、転写フィルム20の支持フィルム21の背面をローラ50でガラス基板3側へと押圧する。ローラ50の表面の材質は、特に限定しないが、柔軟性を有するゴム、シリコーン材料や樹脂材料であることが好ましい。ローラ50によって転写フィルム20に加える圧力は、積層体30が圧壊(座屈)しない範囲で大きいほど好ましい。ローラ50による押圧は、遮光層6の端縁部7の隅部に粘着層28が回り込むようにするために、遮光層6の端縁部7に対応する部分に特に圧力が加わるようにすることが好ましい。
次の工程では、図5(E)に示すように、転写フィルム20の支持フィルム21を保護層23から剥離する。
次の工程では、図5(F)に示すように、転写フィルム20の保護層23の背面を加熱したローラ51でガラス基板3側へと押圧し、粘着層28と遮光層6及びガラス基板3の表面との密着性を高めるエイジング処理を行う。エイジング処理は、ローラ51の温度を100℃以上に加熱し、約10分間押圧を行う。押圧は、圧力を0.5MPaとし、ローラ51を保護層23に沿って10mm/秒で移動させることによって行うとよい。このエイジング処理によって、積層体30を構成する保護層23、中間層27及び粘着層28が軟化し、粘着層28が遮光層6により一層密着する共に、遮光層6の端縁部7の隅部に回り込むようになる。
ローラ51の表面の材質は、特に限定しないが、保護層23に粘着せず、柔軟性を有するシリコーン材料であることが好ましい。ローラ51によって転写フィルム20に加える圧力は、粘着層28と遮光層6及びガラス基板3の表面との密着性を高めるために、積層体30が圧壊(座屈)しない範囲で大きいほど好ましい。ローラ51による押圧は、遮光層6の端縁部7の隅部に粘着層28が回り込むようにするために、遮光層6の端縁部7に対応する部分に特に圧力が加わるようにすることが好ましい。この保護層23の背面を押圧する工程は、支持フィルム21の背面を押圧する工程よりも、粘着層28を遮光層6に密着させる効果が高い。支持フィルム21は、積層体30よりも硬いため、支持フィルム21を取り除くことで積層体30の遮光層6への追従性を高めることができるためである。
上述した、支持フィルム21の剥離後のエイジング処理工程は、付加的な工程であるため、他の実施形態においては、実施しなくてもよい。
次の工程では、遮光層6及び積層体30が積層されたガラス基板3の加熱処理(焼成)を行い、図5(G)に示すように、導電性パターン層8を遮光層6及びガラス基板3上に融着させ、焼結後の導電性パターン層8を形成する。加熱処理は、焼成温度550〜700℃で1〜20分間行う。より好ましくは、加熱処理は、焼成温度550〜650℃で1〜10分間行う。この焼成は、ガラス板の曲げ加工や必要に応じて強化処理と同時に行ってもよい。加熱処理の後は、ガラス基板3に歪み(透視及び反射)が発生或いは残存しないように、ガラス基板3の徐冷(冷却速度を緩和する操作)を行う。
この加熱処理の際、遮光層6、保護層23、導電層11、被覆層15、16、中間層27及び粘着層28に含まれる有機物は揮発または燃焼して分解する。保護層23、中間層27及び粘着層28の分解が進むにつれて、導電性パターン層8は、遮光層6及びガラス基板3の表面に接近し、最終的に第1の被覆層15において遮光層6及びガラス基板3の表面に接触する。続いて、遮光層6、導電層11及び被覆層15、16に含まれるガラスフリットが、溶融し、互いに融着する。ガラスフリットの流動点は300〜700℃である。また、ガラス基板3の流動点は850℃以上であり、焼成において流動することはないが、曲げ加工可能な程度に軟化するので、ガラス基板3と遮光層6、導電層11及び被覆層15、16とは強固に結合され、互いの密着性も向上する。
この加熱処理における温度は、最初に、粘着層28、中間層27及び保護層23に含まれる有機物の熱分解温度以上であり、かつ遮光層6に含まれるガラスフリットのガラス点移転以下の所定温度に昇温した後、この温度を例えば1〜5分といった所定期間維持し、その後に遮光層6に含まれるガラスフリットのガラス点移転以上の温度に昇温するようにしてもよい。このように昇温することによって、遮光層6に含まれるガラスフリットの溶融が開始する前に、粘着層28、中間層27及び保護層23を確実に分解することができる。
以上に説明した製造方法によれば、積層体30を遮光層6及びガラス基板3上に貼り付け、支持フィルム21を剥離した後に、粘着層28を軟化させるべく加熱処理を行うため、粘着層28は遮光層6の表面及び端縁部7の形状により一層追従し、密着することができる。支持フィルム21は、積層体30よりも可撓性が低く、積層体30の撓みを抑制する虞があるため、この支持フィルム21を取り除いた状態では、粘着層28は遮光層6等により一層追従して撓むことができるためである。同様に、支持フィルム21を剥離した後に、積層体30をガラス基板3に押圧する工程によっても、粘着層28と遮光層6及びガラス基板3との密着性を高めることができる。粘着層28と遮光層6及びガラス基板3との密着性が高まることによって、積層体30を焼成した後の、導電性パターン層8と遮光層6及びガラス基板3との焼結不良や、導電性パターン層8と遮光層6及びガラス基板3との間への気泡の噛み込みが抑制される。
また、粘着層28、中間層27及び保護層23に含まれる有機物の熱分解温度を遮光層6中のガラスフリットの溶融温度よりも低くしたため、導電性パターン層8及び遮光層6の焼成時に、遮光層6中のガラスフリットが溶融するよりも早く、粘着層28、中間層27及び保護層23が分解する。そのため、遮光層6のガラスフリットが溶融することによって発生するガスが外部へと拡散することができ、遮光層6が良好に焼成される。特に、加熱処理における温度を、最初に、粘着層28、中間層27及び保護層23に含まれる有機物の熱分解温度以上であり、かつ遮光層6に含まれるガラスフリットのガラス点移転以下の所定温度に昇温し、この温度を所定期間維持し、その後に遮光層6に含まれるガラスフリットのガラス点移転以上の温度に昇温することによって、遮光層6のガラスフリットの溶融する前に、確実に粘着層28、中間層27及び保護層23を分解することができる。
次に、上述した第1の手順と一部の工程が異なる第2の手順について説明する。第2の手順では、図5(B)に示す第1の手順の遮光層6を印刷、乾燥させる工程の後であって転写フィルム20を貼り付ける工程の前に、遮光層6を焼成温度580〜700℃で1〜20分間の加熱処理を行い、遮光層6を焼結させる仮焼成の工程を含む。これにより、遮光層6中の有機物が揮発または燃焼して分解すると共に、ガラスフリットが、溶融して互いに融着する。この工程の後は、第1の手順と同様である。
この第2の手順によれば、仮焼成よるガラスフリットの溶融によって遮光層6の表面の凹凸および端縁部7の形状の傾斜が緩和され、転写フィルム20の粘着層28と遮光層6との密着性(接着性)を高めることができる。また、遮光層6を焼成する際には遮光層6を覆う積層体30が存在しないため、焼成によって遮光層6から発生したガスは遮光層6の内部や表面に保持されることなく拡散し、遮光層6が良好に形成される。
(転写フィルム)
転写フィルム20の一実施例である実施例1を以下のように構成した。仮支持体として、シリコーン系剥離層を設けたPETフィルム「A70」(帝人デュポンフイルム(株)製、フイルムサイズ20cm×30cm厚さ50μm)を用意した。中間層27の塗布液としては、アクリル酸メチルとメタクリル酸メチルとを所定の配合比で共重合させて、ガラス転移温度Tgが55℃となるように調整したポリマー(熱分解温度450℃)をトルエンに溶解した溶液を用意した。保護層23の塗布液としては、アクリル酸メチルとメタクリル酸イソブチルとを所定の配合比で共重合させて、ガラス転移温度Tgが50℃となるように調整したポリマー(熱分解温度400℃)の水溶液を用意した。また、導電層用のペーストとして、ガラスフリット、銀粉体及び有機バインダを含有する導電層ペーストを用意した。導電層ペーストの成分は、銀:70〜80%、ターピネオール、ジブチカルビトール:10〜20%、エチルセルロース、ロジン系樹脂:1〜10%、ビスマス、亜鉛、ホウ素、シリカ、バリウム等よりなるガラス及び金属酸化物:1〜10%、添加剤1〜10%である。被覆層用のペーストは、酸化クロムと酸化銅の複合顔料と、ガラスフリット、及び有機バインダを、3本ロールミルで分散して作製した。有機バインダとしては、アクリル系樹脂であるBR102(三菱レーヨン(株)製)を、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル(和光純薬工業(株)製)で溶解し、P/R=80/20に調整したものを用意した。
まず、中間層用の塗布液を、仮支持体の剥離性を有する側の全面に、メイヤーバーを用いて、厚さ1.5μmとなるように塗布し、中間層27を形成した。その上に、被覆層用のペーストを、スクリーン印刷により、導電性パターン層8の線状部13に対応する部分のサイズが幅0.4mm×長さ500mm、給電部14に対応する部分のサイズが5.4mm×5.4mm、厚さ5μmとなるように印刷し、第1の被覆層15を形成した。次に、この第1の被覆層15の上に、導電層ペーストを、スクリーン印刷により、導電性パターン層8の線状部13に対応する部分のサイズが幅0.2mm×長さ500mm、給電部14に対応する部分のサイズが5mm×5mm、厚さ10μmとなるように印刷し、導電層11を形成した。次に、この導電層11の上に、被覆層用ペーストを、スクリーン印刷により、導電性パターン層8のうち給電部14に対応する部分を除いた部分、すなわち線状部13に対応する部分について、サイズが幅0.4mm×長さ500mm、厚さ5μmとなるように印刷し、導電層11を覆うように第2の被覆層16を形成した。この第2の被覆層16及び中間層27の上に、上記の保護層用の塗布液を、メイヤーバーを用いて、厚さ5μmとなるように塗布し、中間層27の全面を覆うように、保護層23を形成した。
次に、支持フィルム21となる、微粘着層32が塗布された膜厚25μmのPETフィルム「SRL−0504」(リンテック(株)製)を用意した。このPETフィルムの微粘着面を、仮支持体上に形成した保護層23と貼り合わせ、ゴムローラーを用いて、0.5kg/cmの圧力で仮支持体上から加圧を行い、第1の積層物を作製した。
他方、別の仮支持体として、シリコーン系剥離層を設けたPETフィルム「A31」(帝人デュポンフイルム(株)製、フイルムサイズ20cm×30cm、厚さ50μm)を用意した。この別の仮支持体の剥離性を有する側全面に、粘着材を、メイヤーバーを用いて各種厚さになるように塗布し、第2の積層物を作製した。粘着材には、アクリル酸メチルとアクリル酸nブチルとを所定の配合比で共重合させて、ガラス転移温度Tgが−36℃となるように調整したポリマーをトルエンに溶解し、使用した。粘着層28の厚さは、7μmとした。最後に、第1の積層物から仮支持体を剥がし、第1の積層物の中間層27を第2の積層物の粘着層28と貼り合わせ、転写フィルム20を作製した。
以上に説明した転写フィルム20の実施例1と対比する目的で、実施例1に対して粘着層28の厚さのみを変更して、実施例2(12μm)、実施例3(22μm)、比較例1(3μm)を作製した。また、実施例1に対して粘着層28の材質および厚さのみを変更して、比較例2(ガラス転移温度Tg:−19℃、6μm)を作製した。比較例2の、粘着層28のガラス転移温度Tg−19℃は、アクリル酸メチルとアクリル酸nブチルとの配合比を変更することによって調整した。
(パターン付きガラス基板)
パターン付きガラス基板1の一実施例である実施例10を以下のように構成した。ガラス基板3には、厚さ2.0mmのガラス板(フロートガラス、日本板硝子株式会社製)を用意した。着色セラミックスペーストは、酸化銅、酸化クロム、酸化鉄または酸化マンガンを主成分とする顔料を20質量%、セルロース樹脂を10質量%、パインオイルを10質量%、ホウケイ酸ビスマスまたはホウケイ酸亜鉛を主成分とするガラスフリット(溶融温度約500℃)を65質量%含む構成とし、粘度を200dPa・sとした。ガラス基板3の一面の周縁部に、着色セラミックスペーストをスクリーン印刷し、遮光層6を形成した。スクリーン印刷の条件は、ポリエステルスクリーン:200メッシュ、コート厚み:6μm、テンション:20Nm、スキージ硬度:65度、取り付け角度:75度、印刷速度:300mm/sである。印刷後は、ガラス基板3を乾燥炉にて150℃、10分の乾燥を行った。乾燥後の遮光層6は、膜厚が25μm、表面粗さの最大高さRmaxが5μm、端縁部7の傾斜面9とガラス基板3の表面とのなす角度θが5°であった。
続いて、上述した実施例1に係る転写フィルム20の粘着層28側を、導電性パターン層8が遮光層6の端縁部7を横切るようにして、遮光層6及びガラス基板3の表面に貼り付けた。そして支持フィルム21の背面側をゴム製のローラ50によって、ガラス基板3側に0.5MPaの圧力で押圧を行った。続いて、支持フィルム21を保護層23から剥離し、保護層23の背面側を200℃に加熱したシリコーン製のローラ51で、ガラス基板3側に押圧し、エイジング処理を行った。ローラ51の保護層23に対する圧力は0.5MPaとし、ローラ51を保護層23に沿って10mm/秒で移動させた。
導電性パターン層8を含む積層体30が転写されたガラス基板3を、電気炉を用いて、焼成した。焼成は、大気雰囲気中で、昇温速度95℃/分で、室温から600℃まで昇温し、その温度を3分間維持した後、加熱を停止し、自然放冷で100℃以下まで冷却すること(徐冷)により、行った。冷却されたガラス板を電気炉から取り出し、導電性パターン層8の焼成体を形成したパターン付きガラス基板1を得た。このようにして得たパターン付きガラス基板1を実施例10とする。
以上に説明した実施例10と対比する目的で、実施例10に対して、支持フィルム21剥離後のエイジング処理において、ローラ51の加熱を行わずに室温で押圧処理のみを行って得たパターン付きガラス基板1を比較例10、支持フィルム21剥離後の保護層23のローラ51による押圧処理のみを省略し、代わりに積層体30を200℃に10分間加熱して得たパターン付きガラス基板1を比較例11、支持フィルム21剥離後の加熱処理及び保護層23の押圧処理を省略して得たパターン付きガラス基板1を比較例12とする。また、ガラス基板3上に遮光層6を印刷・乾燥工程と転写フィルム20の貼り付け工程との間に、遮光層6を加熱焼成し、焼成後の遮光層6及びガラス基板3上に転写フィルムを貼り付けたものを実施例11とする。遮光層6の焼成条件は、実施例10を作製する過程において遮光層6及び導電性パターン層8を焼成するときの条件と同じである。また、実施例13において、支持フィルム21剥離後の加熱処理及び保護層23の押圧処理を省略して得たパターン付きガラス基板1を実施例12とする。
(転写フィルムの密着性評価)
実施例1〜3及び比較例1〜2の転写フィルム20の遮光層6への密着性について評価を行った。評価は、上述したパターン付きガラス基板1の作製過程において、転写フィルム20の粘着層28側を、遮光層6及びガラス基板3の表面に貼り付け、ローラ50で押圧した後の支持フィルム21を剥離する際に、積層体30が支持フィルム21に追従して粘着層28が遮光層6から剥離したか否かによって行った。評価は、目視によって行い、粘着層28の遮光層6からの剥離が全く確認されなかったものを○、一部において剥離が確認されたものを△、大部分において剥離が確認されたものを×とした。結果を、以下の表1に示す。
表1に示すように、実施例1と比較例2との比較から、ガラス転移温度が低い材質、すなわち軟らかい材質で粘着層28を作製した方が、遮光層6への密着性が高いことが確認された。また、実施例1〜3及び比較例1との比較から粘着層28が厚い方が遮光層6への密着性が高いことが確認された。これは、粘着層28が軟らかい方が、また厚い方が遮光層6表面の凹凸の深部まで粘着層28が入り込み、接触面積が増大するともに、粘着層28及び遮光層6との間に気泡を噛み込まないためであると考えられる。
(製造方法の評価)
実施例10〜12及び比較例10〜12のパターン付きガラス基板1について、導電性パターン層8の形態について評価を行った。評価は、焼成後の導電性パターン層8の外観を目視で確認することによって行った。評価は、導電性パターン層8が遮光層6に確実に融着し、気泡の噛み込みがないものを○、一部において導電性パターン層8の遮光層6からの浮き上がりや気泡の噛み込みが確認されたものを△、大部分において導電性パターン層8の遮光層6からの浮き上がりや気泡の噛み込みが確認されたもの×とした。この評価では、特に遮光層6の端縁部7における導電性パターン層8の形態に注目した。結果を、以下の表2に示す。
表2に示すように、実施例10と比較例10〜12との比較から、支持フィルム21を剥離した後に、加熱したローラ51で押圧処理を行ったものは、焼成後の導電性パターン層8が遮光層6に良好に融着することが確認された。これは、積層体30に比べて硬い支持フィルム21を除去した状態で加熱及び押圧処理を行うことにより、積層体30が軟化して遮光層6表面への追従性が高まったことに起因すると考えられる。なお、加熱または押圧の一方しか行わなかったものは、積層体30の遮光層6への追従が未だ不十分であることが確認された。
また、実施例11及び12と、比較例12との比較から、転写フィルム20を遮光層6に貼り付ける工程の前に遮光層6を仮焼成することで、焼結後の導電性パターン層8が遮光層6に良好に融着することが確認された。図7に、実施例10及び実施例11の、転写フィルム20を貼り付ける直前における遮光層6の端縁部付近の表面形状を測定した結果を示す。図7に示すように、仮焼結を行った遮光層6は、仮焼成を行っていないものに比較して膜厚が薄くなるとともに表面粗さが小さくなり、さらに端縁部7における立ち上がり角度(ガラス基板3表面となす角度)が小さくなっている。これは、遮光層6の仮焼成を行うことによって、遮光層6中の有機物が揮発または燃焼して分解すると共に、遮光層6中のガラスフリットが溶融され、遮光層6の表面形状が鈍らされたためである。そのため、実施例13では比較例10に対して、粘着層28が遮光層6に密着し易くなり、導電性パターン層8が遮光層6に良好に融着したと考えられる。そのため、仮焼成を行った場合には、支持フィルム21を剥離した後に、加熱処理及び押圧処理のいずれも実施しなくても良好な導電性パターン層8が得られることが確認された。なお、実施例10〜12及び比較例10〜12のいずれも、焼成後の遮光層6の膜厚は13〜18μmであり、焼成後の導電性パターン層8の膜厚は16〜17μmであった。また、焼成後の端縁部7の傾斜面9とガラス基板3の表面とのなす角度θが9°であった。
他の実施例として、粘着層28を硬質内側層36及び軟質外側層37の2層とする場合には、仮支持体としてのPETフィルム「A31」の剥離性を有する側全面に、軟質粘着材を、メイヤーバーを用いて厚さが5μmになるように塗布し、軟質外側層37を作製した。軟質粘着材には、アクリル酸メチルとアクリル酸nブチルとを所定の配合比で共重合させて、ガラス転移温度Tgが−36℃となるように調整したポリマーをトルエンに溶解し、使用した。次に、軟質外側層37の上に硬質粘着材を、メイヤーバーを用いて厚さが5μmになるように塗布し、硬質内側層36を作製した。硬質粘着材には、アクリル酸メチルとアクリル酸nブチルとを所定の配合比で共重合させて、ガラス転移温度Tgが−29℃となるように調整したポリマーをトルエンに溶解し、使用した。最後に、第1の積層物から仮支持体を剥がし、第1の積層物の中間層を第2の積層物の硬質内側層36と貼り合わせ、転写フィルム20を作製した。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、本発明は、リアウインドウガラスやサイドドアガラスを構成する強化ガラスに適用することができる。