JP2015174879A - フッ素ゴム組成物およびシール部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】加硫物の硬度上昇を抑えてゴム弾性を確保しうるフッ素ゴムの割合をできるだけ小さくでき、しかも引張強さを低下させる固体潤滑剤を配合せずに、耐摩耗性に優れた加硫物を形成できるフッ素ゴム組成物と、当該フッ素ゴム組成物の加硫物からなるシール部材とを提供する。【解決手段】フッ素ゴム組成物は、フッ素ゴムに、粒子径90nm以上の大粒径カーボンブラックと、粒子径30nm以下のカラー用カーボンブラックとを配合した。シール部材は、上記フッ素ゴム組成物を所定の形状に成形するとともに加硫して製造される。【選択図】なし

Description

本発明は、オイルシール等のシール部材の形成材料として適したフッ素ゴム組成物と、当該フッ素ゴム組成物を用いて形成したシール部材に関するものである。
オイルシール等のシール部材の形成材料として、耐熱性、耐油性、耐薬品性等に優れた加硫物を構成できるフッ素ゴムが好適に用いられる(特許文献1等参照)。
フッ素ゴムは、補強材としてのカーボンブラックによる補強効果が他のゴムに比べて2倍程度大きいためその配合割合を小さくできる。ただし逆の観点では、補強用のカーボンブラックを過剰に配合すると加硫物が硬くなりすぎてゴム弾性が失われるため、当該カーボンブラックの配合割合が制限されているとも言える。
しかしフッ素ゴムは他のゴムに比べて高価なため、シール部材等の低コスト化等を考慮すると、カーボンブラックその他の成分を増量材として多量に配合してフッ素ゴムの割合をできるだけ小さくするのが望ましい。
そこで比較的補強効果が小さい粒子径90nm以上の大粒径カーボンブラックを、増量材を兼ねる補強材として、加硫物の硬度上昇を抑えてゴム弾性を確保できる範囲でできるだけ多めに配合するのが一般的である。
ところが大粒径カーボンブラックは粒子間の相互作用が弱く加硫物から脱落しやすいため、特に多めに配合すると加硫物の耐摩耗性が低下するという問題がある。
耐摩耗性の低下を防止するため、さらにPTFEやグラファイト等の固体潤滑剤を配合することも検討されているが、固体潤滑剤は一般にフッ素ゴムとの親和性が低く破壊起点となりやすいため、当該固体潤滑剤を配合した場合には加硫物の引張強さが低下するという新たな問題を生じる。
特開2008−138017号公報
本発明の目的は、加硫物の硬度上昇を抑えてゴム弾性を確保しうるフッ素ゴムの割合をできるだけ小さくでき、しかも引張強さを低下させる固体潤滑剤を配合せずに、耐摩耗性に優れた加硫物を形成できるフッ素ゴム組成物と、当該フッ素ゴム組成物の加硫物からなるシール部材とを提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明はフッ素ゴム、粒子径90nm以上の大粒径カーボンブラック、および粒子径30nm以下のカラー用カーボンブラックを含むフッ素ゴム組成物である(請求項1)。
前記大粒径カーボンブラックのDBP吸油量は20ml/100g以上、70ml/100g以下であるのが好ましい(請求項2)。
また前記カラー用カーボンブラックのDBP吸油量は40ml/100g以上、120ml/100g以下であるのが好ましい(請求項3)。
本発明は、前記本発明のフッ素ゴム組成物の加硫物からなるシール部材である(請求項4)。
請求項1記載の発明によれば粒子径30nm以下のカラー用カーボンブラックは、当該カラー用カーボンブラック同士および粒子径90nm以上の大粒径カーボンブラックとの間で、当該大粒径カーボンブラック同士よりも強い相互作用を生じて、かかる大粒径カーボンブラックが加硫物から脱落するのを抑制するべく機能するため、引張強さを低下させる固体潤滑剤を配合せずに加硫物の耐摩耗性を向上できる。
また請求項1記載の発明によれば上記カラー用カーボンブラックは、同程度の粒子径を有する小粒径の補強用のカーボンブラックと比べて補強効果が小さいため、同じく補強効果の小さい大粒径カーボンブラックと併用した際の両カーボンブラックの合計の配合割合を、当該大粒径カーボンブラックを単独で配合する場合と同等程度に維持しても、加硫物の硬度上昇を抑えて良好なゴム弾性を確保でき、相対的にフッ素ゴムの割合を小さくできる。
請求項2記載の発明によれば、フッ素ゴムに対する分散性に優れたDBP吸油量20ml/100g以上の大粒径カーボンブラックを用いることにより、当該大粒径カーボンブラックをフッ素ゴム中にできるだけ均一に分散させて、強度や硬度等が均一な加硫物を形成できる。
また、フッ素ゴムに対する補強効果が特に小さいDBP吸油量70ml/100g以下の大粒径カーボンブラックを用いることにより、その配合割合をさらに大きくしても加硫物の硬度上昇を抑えて良好なゴム弾性を確保できるため、相対的にフッ素ゴムの割合をさらに小さくすることが可能となる。
請求項3記載の発明によれば、フッ素ゴムに対する分散性に優れたDBP吸油量40ml/100g以上のカラー用カーボンブラックを用いることにより、当該カラー用カーボンブラックをフッ素ゴム中にできるだけ均一に分散させて、大粒径カーボンブラックの粒子間の相互作用を加硫物中で均等に強化して部分的な脱落を防止でき、加硫物の耐摩耗性をさらに向上できる。
またフッ素ゴムに対する補強効果が特に小さいDBP吸油量120ml/100g以下のカラー用カーボンブラックを用いることにより、その配合割合をさらに大きくしても加硫物の硬度上昇を抑えて良好なゴム弾性を確保できるため、相対的にフッ素ゴムの割合をさらに小さくすることが可能となる。
請求項4記載の発明によれば、上記本発明のフッ素ゴム組成物の加硫物によって形成することで、上記各効果に優れた長寿命のシール部材を提供できる。
本発明の実施例1〜4、比較例1、および従来例1のDIN摩耗試験、および硬度試験の結果を示すグラフである。 本発明の実施例1、5、および従来例1のDIN摩耗試験、および硬度試験の結果を示すグラフである。
《フッ素ゴム組成物》
本発明のフッ素ゴム組成物は、フッ素ゴム、粒子径90nm以上の大粒径カーボンブラック、および粒子径30nm以下のカラー用カーボンブラックを含んでいる。
〈フッ素ゴム〉
フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン−三フッ化塩化エチレン二元共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン二元共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体等のフッ化ビニリデン系(FKM)、テトラフルオロエチレン−プロピレン系(FEPM)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル系(FFKM)等の、分子中にフッ素を有し、かつ加硫性を有するとともに、加硫によってゴム弾性を発現する種々のポリマの1種または2種以上が挙げられる。
またフッ素ゴムは、加硫系の種類によってポリオール加硫系、パーオキサイド加硫系、イソシアネート加硫系、ポリアミン加硫系等に分類されるが、このいずれも使用可能である。またフッ素ゴムとしては、既に加硫剤を内添した状態で供給されるものもあり、かかる加硫剤内添タイプのものも使用可能である。
中でも特にフッ化ビニリデン系で、かつポリオール加硫系の加硫剤内添タイプのフッ素ゴムが、汎用性、取扱性に優れる上、ゴム弾性や耐摩耗性、引張強さ等に優れた加硫物を形成できるため、好適に使用される。
〈大粒径カーボンブラック〉
大粒径カーボンブラックの粒子径が90nm以上に限定されるのは、粒子径がこの範囲未満である補強用のカーボンブラックは補強効果が大きいことから加硫物の硬度上昇を抑えてゴム弾性を確保できるカーボンブラックの合計の配合割合が制限されてしまい、相対的にフッ素ゴムの割合を小さくする効果が得られないためである。
なお補強効果を抑えて加硫物の硬度の上昇をさらに抑制することを考慮すると、大粒径カーボンブラックの粒子径は、上記の範囲でも大きいことが好ましく、100nm以上、特に120nm以上であるのが好ましい。
ただし大粒径カーボンブラックの粒子径は、上記の範囲でも150nm以下、特に130nm以下であるのが好ましい。
粒子径がこの範囲を超える大粒径カーボンブラックは、たとえカラー用カーボンブラックと併用したとしても粒子間で十分な相互作用が得られず、加硫物から脱落しやすくなって耐摩耗性が低下するおそれがある。
大粒径カーボンブラックのDBP吸油量は20ml/100g以上、特に40ml/100g以上であるのが好ましく、70ml/100g以下、特に45ml/100g以下であるのが好ましい。
この範囲よりDBP吸油量が小さい大粒径カーボンブラックはフッ素ゴム中に均一に分散させるのが難しいため、その分布に偏りを生じて加硫物の強度や硬度等が不均一になるおそれがある。
また上記範囲よりDPB吸油量が大きい大粒径カーボンブラックは補強効果が大きいため、加硫物の硬度上昇を抑えてゴム弾性を確保できるカーボンブラックの合計の配合割合が制限されてしまい、相対的にフッ素ゴムの割合を小さくできないおそれがある。
これに対しDBP吸油量が上記範囲を満足する大粒径カーボンブラックを用いることにより、当該大粒径カーボンブラックをフッ素ゴム中にできるだけ均一に分散させて、強度や硬度等が均一な加硫物を形成できるとともに、その配合割合をさらに大きくしても加硫物の硬度上昇を抑えて良好なゴム弾性を確保して、相対的にフッ素ゴムの割合をさらに小さくすることが可能となる。
大粒径カーボンブラックの配合割合は、フッ素ゴム100質量部あたり20質量部以上、特に25質量部であるのが好ましく、40質量部以下、特に35質量部以下であるのが好ましい。
配合割合がこの範囲未満では、大粒径カーボンブラックを配合することによる補強効果が十分に得られないため、加硫物の耐摩耗性や引張強さ等が低下するおそれがある。
一方、配合割合が上記範囲を超える場合には、過剰の大粒径カーボンブラックが加硫物から脱落しやすくなって、却って耐摩耗性が低下するおそれがある。また加硫物が硬くなりすぎてゴム弾性が失われるおそれもある。
なお配合割合の基準となるフッ素ゴムとして先に説明した加硫剤内添タイプのものを使用する場合は、内添された加硫剤を含む総量を100質量部として、大粒径カーボンブラックの配合割合を上記の範囲に設定することとする。後述する加硫促進助剤、受酸剤、加工助剤等についても同様である。
〈カラー用カーボンブラック〉
カラー用カーボンブラックの粒子径が30nm以下に限定されるのは、粒子径がこの範囲を超えるカラー用カーボンブラックは補強効果が大きいことから加硫物の硬度上昇を抑えてゴム弾性を確保できるカーボンブラックの合計の配合割合が制限されてしまい、相対的にフッ素ゴムの割合を小さくする効果が得られないためである。
また相互作用が弱くなって大粒径カーボンブラックの粒子間の相互作用を高め、脱落を防止して加硫物の耐摩耗性を向上する効果が得られないためでもある。
なお、かかる効果をさらに向上することを考慮すると、カラー用カーボンブラックの粒子径は、上記の範囲でも26nm以下であるのが好ましい。
またカラー用カーボンブラックの粒子径の下限は特に限定されず、カラー用として供給されている最小の粒子径のものまで、具体的には粒子径10nm程度のものまでの種々のカラー用カーボンブラックがいずれも使用可能である。
ただしカラー用カーボンブラックの粒子径が小さいほど補強効果が強くなって加硫物の硬度が上昇する傾向があり、かかる硬度の上昇を抑制するためには、当該カラー用カーボンブラックの粒子径は、上記の範囲でも15nm以上、特に18nm以上であるのが好ましい。
カラー用カーボンブラックのDBP吸油量は40ml/100g以上、特に50ml/100g以上であるのが好ましく、120ml/100g以下であるのが好ましい。
この範囲よりDBP吸油量が小さいカラー用カーボンブラックはフッ素ゴム中に均一に分散させるのが難しく、その分布に偏りを生じて、大粒径カーボンブラックの相互作用を強化する効果が加硫物中で不均一になるおそれがある。そして大粒径カーボンブラックが加硫物から脱落するのを部分的に抑制できなくなって、加硫物の耐摩耗性が低下するおそれがある。
また上記範囲よりDPB吸油量が大きいカラー用カーボンブラックは補強効果が大きいため、加硫物の硬度上昇を抑えてゴム弾性を確保できるカーボンブラックの合計の配合割合が制限されてしまい、相対的にフッ素ゴムの割合を小さくできないおそれがある。
これに対しDBP吸油量が上記範囲を満足するカラー用カーボンブラックはフッ素ゴム中に均一に分散させるのが容易で、大粒径カーボンブラックの相互作用を加硫物中で均一に強化して部分的な脱落を防止できるため、加硫物の耐摩耗性を向上できる上、補強効果が小さいためその配合割合を大きくして、相対的にフッ素ゴムの割合を小さくできる。
カラー用カーボンブラックの配合割合は、大粒径カーボンブラック100質量部あたり3質量部以上、中でも5質量部以上、特に8質量部以上であるのが好ましく、20質量部以下、中でも15質量部以下、特に12質量部以下であるのが好ましい。
配合割合がこの範囲未満では、カラー用カーボンブラックを併用することによる、大粒径カーボンブラックの粒子間の相互作用を高め、脱落を防止して加硫物の耐摩耗性を向上する効果が十分に得られないおそれがある。
一方、配合割合が上記範囲を超える場合には加硫物が硬くなりすぎてゴム弾性が失われるおそれがある。
〈その他の成分〉
本発明のフッ素ゴム組成物には、従来同様に加硫促進助剤、受酸剤、加工助剤等を配合してもよい。
このうち加硫促進助剤としては、例えばポリオール加硫系の場合、水酸化カルシウムが好適に使用される。
水酸化カルシウムの配合割合は、フッ素ゴム100質量部あたり3質量部以上であるのが好ましく、10質量部以下であるのが好ましい。
また受酸剤としては、例えば酸化マグネシウム、酸化鉛(リサージ)等が挙げられる。
受酸剤の配合割合は、フッ素ゴム100質量部あたり1質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下であるのが好ましい。
加工助剤としては種々のワックス等が挙げられる。特に各種グレードのカルナバワックスが好ましい。
加工助剤の配合割合は、フッ素ゴム100室要部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、5質量部以下であるのが好ましい。
《シール部材》
本発明のシール部材としては、例えば各種オイルシール、パッキン、Oリング、ガスケット等が挙げられる。
かかるシール部材は、先に説明した各成分を所定の割合で配合したフッ素ゴム組成物を射出成型、押出成形、プレス成形等の任意の成形法によって所定の形状に成形し、加硫させて製造される。
〈実施例1〉
フッ化ビニリデン系で、かつポリオール加硫系の加硫剤内添タイプのフッ素ゴム〔住友スリーエム(株)製のDyneon(登録商標)FE5641Q、二元共重合体、フッ素含有量65.9%〕100質量部に、下記表1に示す各成分を配合し、混練してフッ素ゴム組成物を調製した。
Figure 2015174879
表1中の各成分は下記のとおり。
大粒径カーボンブラック:旭カーボン(株)製の旭#15〔平均粒子径:122nm、DBP吸油量(A法):41ml/100g〕
カラー用カーボンブラック:旭カーボン(株)製のSun Black(登録商標)SB300〔平均粒子径:18nm、DBP吸油量(A法):119ml/100g〕
加硫促進助剤:水酸化カルシウム、近江化学工業(株)製のCALDIC#2000
受酸剤:酸化マグネシウム、協和化学工業(株)製のキョーワマグ(登録商標)150
加工助剤:精製カルナバワックス1号粉体
次に調製したフッ素ゴム組成物を厚み6mm以上のシート状に成形し、170℃で10分間加熱して1次加硫させ、次いで230℃で10時間加熱して2次加硫させたのち直径16.0±0.2mmの円盤状に切り抜いて日本工業規格JIS K6264−2:2005「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−耐摩耗性の求め方−第2部:試験方法」に規定されたDIN摩耗試験用の試験片を作製した。
〈実施例2〉
カラー用カーボンブラックとして、旭カーボン(株)製のSun Black SB720〔平均粒子径:20nm、DBP吸油量(A法):56ml/100g〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてフッ素ゴム組成物を調製し、試験片を作製した。
〈実施例3〉
カラー用カーボンブラックとして、旭カーボン(株)製のSun Black SB200〔平均粒子径:26nm、DBP吸油量(A法):100ml/100g〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてフッ素ゴム組成物を調製し、試験片を作製した。
〈実施例4〉
カラー用カーボンブラックとして、旭カーボン(株)製のSun Black SB910〔平均粒子径:14nm、DBP吸油量(A法):55ml/100g〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてフッ素ゴム組成物を調製し、試験片を作製した。
〈比較例1〉
カラー用カーボンブラックとして、旭カーボン(株)製のSun Black SB260〔平均粒子径:45nm、DBP吸油量(A法):114ml/100g〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてフッ素ゴム組成物を調製し、試験片を作製した。
〈従来例1〉
カラー用カーボンブラックを配合せず、大粒径カーボンブラックの配合割合を35質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてフッ素ゴム組成物を調製し、試験片を作製した。
〈DIN摩耗試験〉
上記実施例1〜4、比較例1、従来例1で作製した試験片について、上述のJIS K6264−2:2005所載のDIN摩耗試験を実施して耐摩耗性を評価した。
試験条件は、研磨布:アルミナ粒度P60、押付荷重:7.5N、ロール回転数:40min−1、摩耗距離:40mとした。
〈硬度試験〉
上記実施例1〜4、比較例1、従来例1で作製した試験片についてタイプAデュロメータ硬さを測定し、従来例1の硬度を基準(±0)として硬さの差を求めて硬度の変化を評価した。
結果を図1に示す。
図1より、粒子径90nm以上の大粒径カーボンブラックとともに粒子径が30nmを超えるカラー用カーボンブラックを配合した比較例1、およびカラー用カーボンブラックを配合しなかった従来例1はいずれも摩耗量が大きく、耐摩耗性が不十分であることが判った。
これに対し粒子径90nm以上の大粒径カーボンブラックとともに粒子径30nm以下のカラー用カーボンブラックを併用した実施例1〜4はいずれも、上記比較例1、従来例1に比べて摩耗量が小さいことから耐摩耗性に優れることが判った。
また実施例1〜4の結果より、加硫物の硬度の上昇を抑制するためには、カラー用カーボンブラックの粒子径は、上記30nm以下の範囲でも15nm以上、特に18nm以上であるのが好ましいことが判った。
〈実施例5〉
大粒径カーボンブラックとして、旭カーボン(株)製の旭#51〔平均粒子径:91nm、DBP吸油量(A法):67ml/100g〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてフッ素ゴム組成物を調製し、試験片を作製した。
〈比較例2〉
大粒径カーボンブラックとして、旭カーボン(株)製の旭#50〔平均粒子径:80nm、DBP吸油量(A法):63ml/100g〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてフッ素ゴム組成物を調製し、試験片を作製しようとしたが、加硫したシートが硬くなりすぎてゴム弾性が失われたため、試験片の作製とDIN摩耗試験を断念した。
上記実施例5で作製した試験片について先のDIN摩耗試験を実施して耐摩耗性を評価した。また硬度試験を実施して硬度変化を評価した。
結果を実施例1、従来例1の結果と併せて図2に示す。
図2より、加硫物の硬度の上昇を抑えてゴム弾性を確保するためには、大粒径カーボンブラックの粒子径は90nm以上である必要があること、その中でも100nm以上、特に120nm以上であるのが好ましいことが判った。

Claims (4)

  1. フッ素ゴム、粒子径90nm以上の大粒径カーボンブラック、および粒子径30nm以下のカラー用カーボンブラックを含むフッ素ゴム組成物。
  2. 前記大粒径カーボンブラックのDBP吸油量は20ml/100g以上、70ml/100g以下である請求項1に記載のフッ素ゴム組成物。
  3. 前記カラー用カーボンブラックのDBP吸油量は40ml/100g以上、120ml/100g以下である請求項1または2に記載のフッ素ゴム組成物。
  4. 前記請求項1ないし3のいずれか1項に記載のフッ素ゴム組成物の加硫物からなるシール部材。
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