以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1A乃至図16は、本実施の形態による紙幣釣銭機およびこの紙幣釣銭機を備えた貨幣管理システムを示す図である。このうち、図1Aは、本実施の形態による紙幣釣銭機を備えた貨幣管理システムの構成の概略を示す概略構成図であり、図1Bは、本実施の形態における紙幣釣銭機の構成を示す斜視図である。また、図2は、図1B等に示す紙幣釣銭機の内部構成の概略を示す概略構成図である。また、図3Aおよび図3Bは、図2等に示す紙幣釣銭機に設けられた紙幣回収カセットの構成を示す図である。また、図4A乃至図4Dは、図2等に示す紙幣釣銭機に設けられた紙幣回収カセットやこの紙幣回収カセットの内部に設けられた搬送ベルトや紙幣押さえ部材を駆動する機構の構成を示す斜視図である。また、図5は、図1Aに示す貨幣管理システムにおける紙幣釣銭機、硬貨釣銭機およびPOSレジスタの制御系の構成を示す機能ブロック図である。また、図6乃至図16は、図2等に示す紙幣釣銭機における入金処理や出金処理の様々な処理時の紙幣の流れを示す図である。
まず、本実施の形態による紙幣釣銭機10を備えた貨幣管理システムの構成について図1Aを用いて説明する。図1Aに示すように、本実施の形態による貨幣管理システムでは、コンビニエンスストアやスーパーマーケット等の商業施設の店舗のフロント領域2のレジ精算所に設けられた紙幣釣銭機10、硬貨釣銭機70、POSレジスタ72ならびに店舗のバックヤード領域4の出納室等に設けられた売上金入出金機80をコンピュータ等の管理装置90で一体的に管理するようになっている。ここで、紙幣釣銭機10、硬貨釣銭機70およびPOSレジスタ72によりレジユニットが構成されており、このようなレジユニットでは紙幣釣銭機10および硬貨釣銭機70が左右方向に並べて配置されるとともにPOSレジスタ72が紙幣釣銭機10および硬貨釣銭機70の上方に配置されるようになっている。
次に、紙幣釣銭機10の構成の詳細について説明する。図1Bに示すように、本実施の形態による紙幣釣銭機10は、その前面に開口が設けられた略直方体形状のケーシング12と、ケーシング12の内部から手前側に引き出し可能となっている本体部14とを備えている。具体的には、本体部14の下部には左右一対の引き出しレール16が設けられており、各引き出しレール16に沿って本体部14をケーシング12の内部から手前側に引き出すことができるようになっている。なお、図1Bでは本体部14がケーシング12の内部から引き出されたときの状態が示されているが、紙幣釣銭機10が実際に使用される際には本体部14はケーシング12の内部に収容された状態で紙幣の入出金処理等の様々な処理が行われるようになっている。
図2等に示すように、本体部14には紙幣を1枚ずつ搬送する搬送部30が設けられている。搬送部30は本体部14の中央位置に配置された周回搬送部30aおよび複数の接続搬送部30bから構成されている。また、紙幣受入部20、紙幣払出部22、出金リジェクト部24、紙幣回収カセット40および3つの紙幣収納部34、36、38が、それぞれ、周回搬送部30aを外側から取り囲むように配置されている。また、図2等に示すように、複数の接続搬送部30bの各々により、紙幣受入部20、紙幣払出部22、出金リジェクト部24、紙幣回収カセット40および各紙幣収納部34、36、38と、周回搬送部30aとの間をそれぞれ接続するようになっている。また、周回搬送部30aには識別部32が設けられており、この識別部32は、周回搬送部30aにより搬送される紙幣の金種、真偽、正損等の識別を行うようになっている。
周回搬送部30aは、図2における時計回りの方向および反時計回りの方向の両方向に紙幣を1枚ずつ搬送することができるようになっている。また、搬送部30において、周回搬送部30aと各接続搬送部30bとの間で紙幣の搬送経路を切り換える経路切換部(図示せず)が、周回搬送部30aに沿って配置されている。
図1Bおよび図2に示すように、本体部14の前面には、紙幣受入部20の紙幣受入口20aと、紙幣払出部22の紙幣取出口22aとがそれぞれ設けられている。また、紙幣回収カセット40は本体部14に対して着脱可能に設置されている。
紙幣受入部20には紙幣繰出機構21が設けられており、紙幣受入口20aに1枚あるいは複数枚の紙幣が投入されたことが検知されると紙幣繰出機構21が駆動されることにより紙幣が接続搬送部30bを介して周回搬送部30a側へ1枚ずつ繰り出されるようになっている。
紙幣払出部22は、各紙幣収納部34、36、38から周回搬送部30aに繰り出された紙幣を紙幣取出口22aにより本体部14の外部へ放出するようになっている。
出金リジェクト部24は、出金処理時において各紙幣収納部34、36、38から繰り出された紙幣のうち、重送や斜行等の搬送異常により識別部32で識別することができない紙幣を出金リジェクト紙幣として収納するようになっている。また、紙幣受入部20から紙幣釣銭機10の筐体内に取り込まれた紙幣のうち、入金処理時において汚損等により識別部32で識別することができない紙幣は入金リジェクト紙幣として紙幣払出部22に返却されるようになっている。
本体部14の前面下部にはカセット収容部50が設けられており、このカセット収容部50に紙幣回収カセット40が着脱可能に収容されるようになっている。紙幣回収カセット40は本体部14の前面から手前側に引き出すことにより当該本体部14の外部に取り出すことができるようになっており、紙幣回収カセット40を着脱する際に、本体部14をケーシング12から引き出す必要がないためセキュリティ性が高い。このような紙幣回収カセット40やカセット収容部50の構成の詳細については後述する。
各紙幣収納部34、36、38は、識別部32の識別結果に基づいて紙幣を金種別に収納するようになっている。具体的には、例えば紙幣収納部34には千円札が収納され、紙幣収納部36には二千円札および五千円札が混合状態で収納され、紙幣収納部38には一万円札が収納されるようになっている。また、各紙幣収納部34、36、38にはそれぞれ紙幣繰出機構35、37、39が設けられており、これらの紙幣収納部34、36、38に収納されている紙幣は各紙幣繰出機構35、37、39により接続搬送部30bを介して周回搬送部30a側へ1枚ずつ繰り出されるようになっている。
次に、紙幣回収カセット40の構成の詳細について図3Aおよび図3Bを用いて説明する。なお、図3Aは、紙幣回収カセット40に紙幣が収納されているときの状態を示す図であり、図3Bは、紙幣回収カセット40に収納された紙幣を繰り出すときの状態を示す図である。また、本実施の形態では、紙幣回収カセット40は、カセット収容部50に収容されたときに搬送部30に接続され、この紙幣回収カセット40は搬送部30から送られた紙幣を収納するとともに収納された紙幣を搬送部30に繰り出し可能な補助収納部として用いられるようになっている。
図3Aおよび図3Bに示すように、紙幣回収カセット40の内部にはステージ48が設けられており、搬送部30の接続搬送部30bから紙幣回収カセット40に送られた紙幣はステージ48上に積層状態で集積されるようになっている。また、ステージ48の下部にはパンタグラフ形状の昇降機構49が設けられており、当該昇降機構49によりステージ48を上下方向に移動させることができるようになっている。より詳細には、昇降機構49によりステージ48には常に上向きの力が付勢されるようになっている。また、紙幣回収カセット40の内部には、ステージ48上に集積された紙幣を上方から下向きに押さえる紙幣押さえ部材46が設けられている。紙幣押さえ部材46は上下方向に移動自在となっており、紙幣回収カセット40に紙幣を収納している状態では図3Aに示すように当該紙幣押さえ部材46は後述する搬送ベルト42よりも下方に位置し、一方、紙幣回収カセット40から紙幣を繰り出すときには図3Bに示すように紙幣押さえ部材46は後述する搬送ベルト42よりも上方の位置に移動するようになっている。
また、紙幣回収カセット40の内部には、ステージ48上に集積された紙幣を繰り出す搬送ベルト42が設けられている。図3Bに示すように紙幣押さえ部材46が搬送ベルト42よりも上方の位置に移動してステージ48上に集積された複数の紙幣のうち最上層にある紙幣が搬送ベルト42に接触したときに、当該搬送ベルト42が図3Bにおける時計回りの方向に循環移動することにより、ステージ48上に集積された紙幣が図3Bにおける左方向に1枚ずつ繰り出されるようになっている。また、搬送ベルト42にはピンチローラ44および分離ローラ45がそれぞれ当接しており、ステージ48上に集積された紙幣が繰り出されるときに当該紙幣は搬送ベルト42と分離ローラ45との間に形成されたゲート部により1枚ずつに分離され、また、搬送ベルト42とピンチローラ44との間のニップ部から接続搬送部30bに繰り出されるようになっている。
また、図3Aおよび図3Bに示すように、カセット収容部50には有無検知センサ52が設けられており、紙幣回収カセット40に紙幣が収納されているか否かが有無検知センサ52により検知されるようになっている。具体的には、有無検知センサ52は発光素子および受光素子を含む光センサからなり、発光素子から発せられた光が紙幣回収カセット40に収納されている紙幣により遮光されて受光素子に到達しなくなったときに紙幣回収カセット40に紙幣が収納されていることが検知されるようになっている。
図4Aは、紙幣回収カセット40を後方側から見たときの構成を示す斜視図である。図4Aに示すように、紙幣回収カセット40は略直方体形状のものからなり、その背面には紙幣出入口41が形成されている。このような紙幣回収カセット40がカセット収容部50に収容されているときに、本体部14の接続搬送部30bから紙幣回収カセット40に送られた紙幣はこの紙幣出入口41を通って当該紙幣回収カセット40の内部にあるステージ48上に集積される。また、紙幣回収カセット40から繰り出された紙幣が本体部14の接続搬送部30bに送られる際に、搬送ベルト42とピンチローラ44との間のニップ部から繰り出された紙幣は紙幣出入口41を通って接続搬送部30bに送られるようになっている。また、このような紙幣回収カセット40には、当該紙幣回収カセット40の扉等の開閉を行うための錠機構が設けられている。
本実施の形態では、紙幣回収カセット40がカセット収容部50に収容されているときに本体部14から紙幣回収カセット40の搬送ベルト42や紙幣押さえ部材46に動力が伝達されることによって搬送ベルト42は紙幣回収カセット40に収納された紙幣を接続搬送部30bに繰り出すようになっている。このような構成の詳細について図4B、図4Cおよび図4Dを用いて説明する。なお、図4Bは、図4Aに示す紙幣回収カセット40の内部に設けられた搬送ベルト42およびこの搬送ベルト42を駆動させる紙幣釣銭機10の本体部14側の駆動ギヤ54の構成を示す斜視図であり、図4Cは、図4Aに示す紙幣回収カセット40の内部に設けられた紙幣押さえ部材46の構成を示す斜視図である。また、図4Dは、図4Cに示す紙幣押さえ部材46を上下方向に移動させるリンク機構47および本体部14側の駆動ギヤ56の構成を示す斜視図である。
図4Bに示すように、搬送ベルト42は、ベルト用ギヤ43と同軸となるよう設けられたプーリ42aに張架されている。また、紙幣釣銭機10の本体部14側にはベルト用ギヤ43と係合可能な駆動ギヤ54が設けられており、紙幣回収カセット40がカセット収容部50に収容されたときに本体部14側の駆動ギヤ54が図4Bの矢印に示すように紙幣回収カセット40側のベルト用ギヤ43に向かって相対的に移動し、本体部14側の駆動ギヤ54と紙幣回収カセット40側のベルト用ギヤ43とが係合するようになる。このような状態で本体部14側の駆動ギヤ54が回転駆動されると紙幣回収カセット40側のベルト用ギヤ43も連れ回るようになり、プーリ42aを介して搬送ベルト42が駆動されるようになる。
また、図4Cに示すように、紙幣押さえ部材46にはリンク機構47が設けられており、このリンク機構47には開口47aが形成されている。また、紙幣釣銭機10の本体部14側には駆動ギヤ56が設けられており、この駆動ギヤ56にはリンク機構47の開口47aに入り込むことができるピン部材56aが設けられている。そして、紙幣回収カセット40がカセット収容部50に収容されたときに本体部14側の駆動ギヤ56が図4Dの矢印に示すように紙幣回収カセット40側のリンク機構47に向かって相対的に移動し、駆動ギヤ56に設けられたピン部材56aがリンク機構47の開口47aに入り込むようになる。このような状態で駆動ギヤ56が回転駆動されるとピン部材56aが上下方向に移動することによりリンク機構47もピン部材56aに押圧されて上下方向に移動するようになる。このようにして、紙幣押さえ部材46が上下方向に移動するようになる。
なお、上記説明では、搬送ベルト42を駆動する本体部14側の駆動ギヤ54および紙幣押さえ部材46を駆動する本体部14側の駆動ギヤ56として別々のものが用いられる態様について述べたが、搬送ベルト42および紙幣押さえ部材46を本体部14側の1つの駆動ギヤにより駆動するようになっていてもよい。また、カセット収容部50には、装着された紙幣回収カセット40を固定させる錠機構が設けられている。錠機構は電子錠からなり、本体操作または外部からの指示に基づいて解錠可能となっている。錠機構が解錠されると、カセット収容部50から紙幣回収カセット40を取り出すことができるようになる。
次に、本実施の形態による紙幣釣銭機10を備えた貨幣管理システムの制御系の構成について図5を用いて説明する。図5は、図1Aに示す貨幣管理システムにおける紙幣釣銭機10、硬貨釣銭機70およびPOSレジスタ72の制御系の構成を示す機能ブロック図である。
図5に示すように、紙幣釣銭機10、硬貨釣銭機70、POSレジスタ72にはそれぞれ紙幣釣銭機制御部60、硬貨釣銭機制御部70a、POS制御部73がそれぞれ設けられている。ここで、紙幣釣銭機10の紙幣釣銭機制御部60および硬貨釣銭機70の硬貨釣銭機制御部70aは互いに通信可能となるよう接続されている。また、硬貨釣銭機70の硬貨釣銭機制御部70aおよびPOSレジスタ72のPOS制御部73は互いに通信可能となるよう接続されている。また、POSレジスタ72のPOS制御部73および管理装置90は互いに通信可能となるよう接続されている。
POSレジスタ72においてPOS制御部73にはカードリーダ74、印字部75、表示部76、操作部77、記憶部78およびインターフェース79がそれぞれ接続されている。カードリーダ74は、操作者のIDカードを読み取ることにより操作者IDや操作者の権限等に関する情報を取得するようになっている。また、印字部75は例えばプリンタから構成され、レシートに取引内容を印字したり、紙幣釣銭機10や硬貨釣銭機70の在高等の様々な情報を印字したりするようになっている。また、表示部76は、紙幣釣銭機10や硬貨釣銭機70における紙幣や硬貨の処理状況や、紙幣釣銭機10や硬貨釣銭機70の在高等の情報を表示するようになっている。また、操作部77は、操作者が操作することができるようになっており、POS制御部73に対して様々な指令を与えることができるようになっている。また、記憶部78は、紙幣釣銭機10や硬貨釣銭機70における紙幣や硬貨の処理状況や、紙幣釣銭機10や硬貨釣銭機70の在高等の情報を記憶するようになっている。また、POS制御部73はインターフェース79により硬貨釣銭機70の硬貨釣銭機制御部70aや管理装置90に対して信号の送受信を行うようになっている。
また、硬貨釣銭機70の硬貨釣銭機制御部70aは、当該硬貨釣銭機70の各構成要素の制御を行うようになっている。なお、図5に示す機能ブロック図では、硬貨釣銭機制御部70aにより制御される硬貨釣銭機70の各構成要素の図示を省略している。また、硬貨釣銭機制御部70aにはインターフェース71が接続されており、当該硬貨釣銭機制御部70aはインターフェース71によりPOSレジスタ72のPOS制御部73や紙幣釣銭機10の紙幣釣銭機制御部60に対して信号の送受信を行うようになっている。
また、紙幣釣銭機10において、紙幣釣銭機制御部60には、インターフェース61、紙幣受入部20に設けられた紙幣繰出機構21、搬送部30、識別部32、各紙幣収納部34、36、38に設けられた紙幣繰出機構35、37、39、ならびに紙幣回収カセット40の搬送ベルト42や紙幣押さえ部材46を駆動するための駆動ギヤ54、56がそれぞれ接続されている。ここで、識別部32による紙幣の識別結果に係る情報は紙幣釣銭機制御部60に送られるようになっている。また、紙幣釣銭機制御部60は、紙幣繰出機構21、搬送部30、各紙幣繰出機構35、37、39、各駆動ギヤ54、56にそれぞれ指令を送ることによりこれらの構成要素の制御を行うようになっている。また、紙幣釣銭機制御部60はインターフェース61により硬貨釣銭機70の硬貨釣銭機制御部70aに対して信号の送受信を行うようになっている。
次に、このような構成からなる紙幣釣銭機10による入出金処理等の様々な処理内容について図6乃至図16を用いて説明する。なお、以下に示すような紙幣の処理方法は、紙幣釣銭機制御部60が紙幣釣銭機10の各構成要素を制御することにより行われるようになっている。
まず、紙幣釣銭機10において入金処理が行われる際の紙幣の流れについて図6を用いて説明する。なお、図6に係る入金処理方法では、紙幣釣銭機10の筐体内に投入された紙幣は識別部32により識別された後、入金一時保留部に一時的に保留されることなく各紙幣収納部34、36、38に直接送られるようになっている。
操作者が紙幣受入部20の紙幣受入口20aに紙幣の束を投入すると、図6の矢印に示すように、投入された紙幣は紙幣繰出機構21により1枚ずつ搬送部30の接続搬送部30bに繰り出され、この接続搬送部30bから周回搬送部30aに紙幣が受け渡される。周回搬送部30aに送られた紙幣は当該周回搬送部30aで図6における反時計回りの方向に少なくとも1周回るよう搬送され、この際に識別部32により紙幣の金種、真偽、正損等の識別が行われる。ここで、周回搬送部30aにおいて、識別部32と各紙幣収納部34、36、38への分岐箇所との間の距離が小さいため、周回搬送部30aにより搬送される紙幣を識別部32により識別する際には、当該周回搬送部30aで紙幣を少なくとも1周させている。
識別部32により識別が行われた紙幣のうち正常な紙幣であると判別された紙幣は、その金種に対応する各紙幣収納部34、36、38に送られ、これらの紙幣収納部34、36、38に収納される。具体的には、紙幣収納部34には千円札が収納され、紙幣収納部36には二千円札および五千円札が混合状態で収納され、紙幣収納部38には一万円札が収納される。一方、識別部32による識別結果により正常な紙幣ではないと判別された紙幣は入金リジェクト紙幣として搬送部30により紙幣払出部22に搬送され、この紙幣払出部22に集積される。操作者は、紙幣払出部22に集積された入金リジェクト紙幣を紙幣取出口22aから取り出して紙幣受入部20の紙幣受入口20aに再投入することができるようになっている。
次に、紙幣釣銭機10において出金処理が行われる際の紙幣の流れについて図7を用いて説明する。出金される紙幣の合計金額あるいは金種別の枚数等を含む出金処理の開始指令が紙幣釣銭機制御部60に入力されると、各紙幣収納部34、36、38に収納されている紙幣が対応する各紙幣繰出機構35、37、39により1枚ずつ接続搬送部30bに繰り出され、この接続搬送部30bから周回搬送部30aに紙幣が受け渡される。周回搬送部30aに送られた紙幣は当該周回搬送部30aで図7における時計回りの方向に少なくとも1周回るよう搬送され、この際に識別部32により紙幣の金種、真偽、正損等の識別が行われる。識別部32により識別が行われた紙幣のうち正常な紙幣であると判別された紙幣は紙幣払出部22に搬送され、この紙幣払出部22に集積される。操作者は、紙幣払出部22に集積された出金紙幣を紙幣取出口22aから取り出すことができるようになっている。一方、識別部32による識別結果により正常な紙幣ではないと判別された紙幣(例えば、重送や斜行等の搬送異常の紙幣)は出金リジェクト紙幣として搬送部30により出金リジェクト部24に搬送され、この出金リジェクト部24に集積される。出金リジェクト部24に集積された出金リジェクト紙幣は、管理者等の所定の権限を有する者が紙幣釣銭機10のケーシング12から本体部14を手前側に引き出すことにより取り出すことができるようになっている。なお、出金リジェクト紙幣は、出金リジェクト部24に搬送される代わりに紙幣回収カセット40に搬送され、この紙幣回収カセット40に収納されるようになっていてもよい。
次に、紙幣釣銭機10において精査処理が行われる際の紙幣の流れについて図8および図9を用いて説明する。ここで、精査処理とは、紙幣釣銭機10の本体部14の内部(具体的には、各紙幣収納部34、36、38)に収納されている紙幣の在高を確認するために、各紙幣収納部34、36、38に収納されている全ての紙幣について識別部32により識別および計数を行う処理のことをいう。
全金種の精査処理開始の指令が操作者によってPOSレジスタ72の操作部77により入力されたり管理装置90からPOSレジスタ72のPOS制御部73に送信されたりすると、まず、紙幣回収カセット40に収納されているオーバーフロー紙幣(後述)や出金リジェクト紙幣が紙幣釣銭機10の本体部14における他の場所(例えば、出金リジェクト部24、紙幣払出部22、対応する金種の紙幣収納部34、36、38、等)に移動させられ、紙幣回収カセット40が空の状態となる。このような動作の詳細については後述する。
そして、紙幣回収カセット40が空の状態となると、複数の紙幣収納部34、36、38のうちまず紙幣収納部34に収納されている紙幣が紙幣繰出機構35により1枚ずつ接続搬送部30bに繰り出され、この接続搬送部30bから周回搬送部30aに紙幣が受け渡される。周回搬送部30aに送られた紙幣は当該周回搬送部30aで図8における時計回りの方向に少なくとも1周回るよう搬送され、この際に識別部32により紙幣の金種等の識別および計数が行われる。識別部32により正常な紙幣であると識別された紙幣は紙幣回収カセット40に送られ、この紙幣回収カセット40のステージ48上に集積される。一方、識別部32による識別結果により正常な紙幣ではないと判別された紙幣(例えば、重送や斜行等の搬送異常の紙幣)は検査リジェクト紙幣として搬送部30により出金リジェクト部24に搬送され、この出金リジェクト部24に集積される。出金リジェクト部24に集積された検査リジェクト紙幣は、管理者等の所定の権限を有する者が紙幣釣銭機10のケーシング12から本体部14を手前側に引き出すことにより取り出すことができるようになる。
そして、紙幣収納部34に収納されている紙幣が全て紙幣回収カセット40や出金リジェクト部24に送られると、図9に示すように、紙幣回収カセット40に収納されている紙幣が搬送ベルト42により1枚ずつ接続搬送部30bに繰り出され、この接続搬送部30bから周回搬送部30aに紙幣が受け渡される。そして、周回搬送部30aに送られた紙幣は識別部32により識別および計数が行われることなく紙幣収納部34に戻される。全ての紙幣が紙幣収納部34に戻されると、当該金種(千円)の紙幣の在高が確定する。この際に、図9に示すように紙幣は周回搬送部30aを1周することなく紙幣収納部34に送られるようになる。紙幣収納部34に収納されている紙幣について上述の動作が完了すると、紙幣収納部36、38に収納されている紙幣についても上述の動作が紙幣収納部毎に行われる。このようにして、全ての紙幣収納部34、36、38に収納されている紙幣について上述の動作が行われて識別部32により紙幣の識別および計数が行われると、紙幣釣銭機10における精査処理が完了する。
本実施の形態では、紙幣釣銭機10における精査処理が完了した後、当該精査処理が行われる前に、紙幣回収カセット40から出金リジェクト部24や紙幣払出部22へ退避させられていたオーバーフロー紙幣や出金リジェクト紙幣、ならびに精査処理が行われている間に発生した検査リジェクト紙幣を任意で紙幣釣銭機10の筐体内に補充することができるようになっている。このような処理を行う場合には、これらの紙幣を操作者が出金リジェクト部24や紙幣払出部22から取り出して紙幣受入部20の紙幣受入口20aに投入する。このことにより、投入された紙幣は紙幣繰出機構21により1枚ずつ搬送部30の接続搬送部30bに繰り出され、この接続搬送部30bから周回搬送部30aに紙幣が受け渡される。周回搬送部30aに送られた紙幣は当該周回搬送部30aで少なくとも1周回るよう搬送され、この際に識別部32により紙幣の金種、真偽、正損等の識別が行われる。識別部32により識別が行われた紙幣のうち正常な紙幣であると判別された紙幣は、その金種に対応する各紙幣収納部34、36、38に送られ、これらの紙幣収納部34、36、38に収納される。一方、識別部32による識別結果により正常な紙幣ではないと判別された紙幣はリジェクト紙幣として搬送部30により紙幣払出部22に搬送され、この紙幣払出部22に集積されることにより、操作者に紙幣が返却されるようになる。
本実施の形態では、図9に示すように、精査処理を行うにあたり紙幣回収カセット40から各紙幣収納部34、36、38に紙幣を戻す際に識別部32により紙幣の識別および計数が行われないため、周回搬送部30aで紙幣を1周させることなく紙幣回収カセット40から各紙幣収納部34、36、38に紙幣を戻すことができる。このため、紙幣回収カセット40から繰り出された紙幣に重送や連鎖等の搬送異常が生じた場合でも、周回搬送部30aから各接続搬送部30bを経て各紙幣収納部34、36、38に紙幣を強制的に送り込むことができるようになる。とりわけ、紙幣回収カセット40には様々な金種の紙幣を収納することができるような大きさの紙幣収納スペースが設けられているため、比較的サイズが小さい紙幣が紙幣回収カセット40から繰り出される際には当該紙幣回収カセット40から繰り出された紙幣に重送や連鎖等の搬送異常が生じやすくなるが、このような場合でも周回搬送部30aから各接続搬送部30bを経て各紙幣収納部34、36、38に紙幣を強制的に送り込むことにより精査処理において違算等のトラブルの発生を抑制することができるようになる。これに対し、精査処理を行うにあたり紙幣回収カセット40から各紙幣収納部34、36、38に紙幣を戻す際に識別部32により紙幣の識別および計数を行う場合には、紙幣回収カセット40から繰り出された紙幣に重送や連鎖等の搬送異常が生じたときに識別部32により紙幣の識別および計数を確実に行うことができないことがあり、精査処理において違算が発生してしまうおそれがある。
また、本実施の形態による紙幣釣銭機10では、紙幣釣銭機制御部60は、精査処理が終了した後にPOSレジスタ72の記憶部78に元々記憶されていた各紙幣収納部34、36、38の在高データと精査処理における精査結果(すなわち、紙幣の計数結果)とが異なる場合には、操作者による承認操作を経た上で、精査処理における精査結果を正として、記憶部78に記憶されている各紙幣収納部34、36、38の在高データを精査結果に基づいて書き換えるようにしてもよい。このことにより、紙幣釣銭機10においてエラー発生時に当該紙幣釣銭機10の筐体内への紙幣の戻し入れが行われていなかったりリジェクト紙幣が紙幣釣銭機10の筐体内へ再投入されていなかったりした場合でも、紙幣釣銭機10において各紙幣収納部34、36、38に実際に収納されている紙幣の合計金額と記憶部78に記憶されている各紙幣収納部34、36、38の在高データとが一致するようになる。また、精査処理が終了した後に記憶部78に元々記憶されていた各紙幣収納部34、36、38の在高データと精査処理における精査結果(すなわち、紙幣の計数結果)とが異なる場合には、両者の間に差異があるという情報がPOSレジスタ72の表示部76に表示されたり、記憶部78に記憶されたり、あるいは管理装置90に送信されたりするようになっていてもよい。このことにより、操作者や管理者はエラー発生時における紙幣釣銭機10の筐体内への紙幣の戻し入れ動作や紙幣釣銭機10の筐体内へのリジェクト紙幣の再投入動作に取り扱いミスがあったことを認識することができるようになる。なお、本実施の形態による紙幣釣銭機10では、全金種の精査処理ではなく、一部の金種を指定してこの指定された一部の金種について精査処理を行うことも可能である。
また、本実施の形態による紙幣釣銭機10では、紙幣回収カセット40は当該紙幣回収カセット40に収納された紙幣を本体部14の接続搬送部30bに繰り出すことができるようになっているため、紙幣釣銭機10において入金処理を行う際に紙幣回収カセット40を入金一時保留部として使用することができる。紙幣釣銭機10において入金処理時に紙幣回収カセット40を入金一時保留部として使用したときの紙幣の流れについて図10および図11を用いて説明する。
操作者が紙幣受入部20の紙幣受入口20aに紙幣の束を投入すると、投入された紙幣は紙幣繰出機構21により1枚ずつ搬送部30の接続搬送部30bに繰り出され、この接続搬送部30bから周回搬送部30aに紙幣が受け渡される。周回搬送部30aに送られた紙幣は当該周回搬送部30aで図10における矢印に示すようにまず反時計回りの方向に搬送された後、途中で搬送方向が切り替えられて時計回りの方向に搬送される。また、このような紙幣の搬送時に識別部32により当該紙幣の金種、真偽、正損等の識別が行われる。識別部32により識別が行われた紙幣のうち正常な紙幣であると判別された紙幣は紙幣回収カセット40に送られ、この紙幣回収カセット40のステージ48上に集積される。紙幣回収カセット40では、紙幣が金種混合状態で一時的に保留されるようになる。一方、識別部32による識別結果により正常な紙幣ではないと判別された紙幣は入金リジェクト紙幣として搬送部30により紙幣払出部22に搬送され、この紙幣払出部22に集積される。操作者は、紙幣払出部22に集積された入金リジェクト紙幣を紙幣取出口22aから取り出して紙幣受入部20の紙幣受入口20aに再投入することができるようになっている。
そして、紙幣受入部20に受け入れられた紙幣が全て紙幣回収カセット40または紙幣払出部22に搬送された後、操作者がPOSレジスタ72の操作部77により入金確定(承認)の指令を入力すると、紙幣回収カセット40に収納されている紙幣が搬送ベルト42により1枚ずつ接続搬送部30bに繰り出され、この接続搬送部30bから周回搬送部30aに紙幣が受け渡される。そして、周回搬送部30aに送られた紙幣は図11に示すように当該周回搬送部30aで反時計回りの方向に搬送され、その後その金種に対応する各紙幣収納部34、36、38に送られ、これらの紙幣収納部34、36、38に収納される。具体的には、紙幣収納部34には千円札が収納され、紙幣収納部36には二千円札および五千円札が混合状態で収納され、紙幣収納部38には一万円札が収納される。一方、紙幣受入部20に受け入れられた紙幣が全て紙幣回収カセット40または紙幣払出部22に搬送された後、操作者がPOSレジスタ72の操作部77により入金確定(承認)の指令の代わりに返却(非承認)の指令を入力すると、紙幣回収カセット40に収納されている紙幣が搬送ベルト42により1枚ずつ接続搬送部30bに繰り出され、この接続搬送部30bから周回搬送部30aに紙幣が受け渡された後、紙幣払出部22に搬送されることにより、操作者に紙幣が返却されるようになる。
また、本実施の形態による紙幣釣銭機10では、紙幣回収カセット40は当該紙幣回収カセット40に収納された紙幣を本体部14の接続搬送部30bに繰り出すことができるようになっているため、紙幣釣銭機10において入金処理を行う際に識別部32により識別された紙幣の金種に対応する紙幣収納部34、36、38がフル状態またはニヤフル状態の場合には当該紙幣をオーバーフロー紙幣として紙幣回収カセット40に一時的に収納させるような運用を行うことができる。紙幣回収カセット40において、このようなオーバーフロー紙幣は金種混合状態で収納されるようになる。そして、紙幣釣銭機10において入金処理の後に行われる出金処理においてフル状態またはニヤフル状態となっている紙幣収納部34、36、38から紙幣が繰り出されることにより当該紙幣収納部34、36、38において紙幣の収納スペースに空きができた場合には、紙幣回収カセット40からオーバーフロー紙幣を繰り出して当該紙幣の金種に対応する紙幣収納部34、36、38に送るようになっている。
このようなオーバーフロー紙幣の再配分の処理方法における紙幣の流れについて図12を用いて説明する。紙幣回収カセット40に収納されているオーバーフロー紙幣について、当該紙幣の金種に対応する紙幣収納部34、36、38における紙幣の収納スペースに空きができると、紙幣回収カセット40に収納されている紙幣が搬送ベルト42により1枚ずつ接続搬送部30bに繰り出され、この接続搬送部30bから周回搬送部30aに紙幣が受け渡される。そして、周回搬送部30aに送られた紙幣は図12に示すように当該周回搬送部30aで少なくとも1周回るよう反時計回りの方向に搬送され、この際に識別部32により紙幣の識別が行われる。識別部32により識別が行われた紙幣はその金種に対応する各紙幣収納部34、36、38に送られ、これらの紙幣収納部34、36、38に収納される。このようにして、紙幣回収カセット40に収納されているオーバーフロー紙幣が各紙幣収納部34、36、38に戻されるようになる。
また、本実施の形態による紙幣釣銭機10では、紙幣回収カセット40は当該紙幣回収カセット40に収納された紙幣を本体部14の接続搬送部30bに繰り出すことができるようになっているため、紙幣回収カセット40を用いて各紙幣収納部34、36、38への紙幣の補充処理を行うことができるようになる。すなわち、従来技術の紙幣釣銭機では、各紙幣収納部34、36、38への紙幣の補充処理を行う際に、紙幣受入部20に紙幣の束を投入し、上述した入金処理と同様の処理を行うことにより紙幣受入部20に受け入れられた紙幣を識別部32により識別した後に各紙幣収納部34、36、38に収納していた。これに対し、本実施の形態による紙幣釣銭機10における紙幣の補充処理では、出納室等において紙幣回収カセット40に紙幣を補充し、この紙幣回収カセット40を紙幣釣銭機10まで運搬してカセット収容部50に収容させることにより、各紙幣収納部34、36、38に収納されるべき補充紙幣を紙幣回収カセット40から繰り出して識別部32により識別した後に各紙幣収納部34、36、38に収納することができるようになる。このような紙幣回収カセット40を用いた紙幣の補充処理方法では、紙幣受入部20に紙幣を投入する方法と比較して操作者が補充紙幣に直接手を触れることが無くなるためセキュリティ性を向上させるとともに、紙幣を取り扱うことに起因する当該操作者の精神的負担を軽減することができる。
このような紙幣回収カセット40を用いた紙幣の補充処理方法における紙幣の流れについて図12を用いて説明する。補充紙幣が収納された紙幣回収カセット40をカセット収容部50に収容すると、紙幣回収カセット40に収納されている紙幣が搬送ベルト42により1枚ずつ接続搬送部30bに繰り出され、この接続搬送部30bから周回搬送部30aに紙幣が受け渡される。そして、周回搬送部30aに送られた紙幣は図12に示すように当該周回搬送部30aで少なくとも1周回るよう反時計回りの方向に搬送され、この際に識別部32により紙幣の金種、真偽、正損等の識別が行われる。識別部32により識別が行われた紙幣はその金種に対応する各紙幣収納部34、36、38に送られ、これらの紙幣収納部34、36、38に収納される。なお、搬送異常等により識別できなかった紙幣は、紙幣払出部22または出金リジェクト部24へ搬送される。そして、紙幣回収カセット40が空になると、紙幣収納部34、36、38への紙幣の補充処理が完了する。
また、本実施の形態では、紙幣釣銭機10において紙幣の出金処理が行われる際に、各紙幣収納部34、36、38に収納されている紙幣の量が不足する場合には、紙幣が収納された紙幣回収カセット40をカセット収容部50に収容することによりこの紙幣回収カセット40に収納されている紙幣を紙幣払出部22に直接払い出すことができるようになっている。このようなダイレクト出金処理時の紙幣の流れについて図13を用いて説明する。出金処理が行われている際に、各紙幣収納部34、36、38における収納量が不足する金種の紙幣が収納された紙幣回収カセット40をカセット収容部50に収容すると、図13に示すように、当該紙幣回収カセット40から繰り出された紙幣は識別部32により識別が行われ、不足していた金種の紙幣は紙幣払出部22に搬送され、この紙幣払出部22に集積されるようになる。また、対象外の金種の紙幣は、対応する紙幣収納部34、36、38へ搬送される。このようなダイレクト出金処理を行った場合には、紙幣の出金処理が行われる際に各紙幣収納部34、36、38に収納されている紙幣の量が不足するときに、紙幣回収カセット40から繰り出された紙幣が全て紙幣収納部34、36、38に収納された後にこれらの紙幣収納部34、36、38から出金紙幣を繰り出して紙幣払出部22に送るような方法と比較して、紙幣払出部22に出金紙幣が送られる時間を大幅に短縮することができ、操作者の待ち時間を短縮することができるようになる。
また、本実施の形態では、紙幣釣銭機10において紙幣の出金処理が行われる際に、各紙幣収納部34、36、38に収納されている紙幣の量が不足する場合において不足する紙幣の金種に対応するオーバーフロー紙幣が紙幣回収カセット40に収納されているときには、この紙幣回収カセット40に収納されているオーバーフロー紙幣を紙幣払出部22に直接払い出すことができるようになっている。
また、本実施の形態では、紙幣回収カセット40を用いて各紙幣収納部34、36、38への紙幣の補充処理を行っている間に紙幣の出金処理開始の指令がPOSレジスタ72のPOS制御部73に与えられたときに、紙幣回収カセット40から繰り出された紙幣を各紙幣収納部34、36、38に収納する代わりに紙幣払出部22に直接払い出すことができるようになっている。より詳細には、紙幣回収カセット40を用いた紙幣の補充処理が行われている間に紙幣の出金処理開始の指令がPOSレジスタ72のPOS制御部73に与えられると、図13に示すように、紙幣回収カセット40から繰り出された紙幣は識別部32により識別が行われた後、出金対象となる金種の紙幣は紙幣払出部22に搬送され、この紙幣払出部22に集積されるようになる。一方、紙幣回収カセット40から繰り出されて識別部32により識別された紙幣のうち出金対象とならない紙幣は、当該紙幣の金種に対応する紙幣収納部34、36、38に収納される。このようなダイレクト出金処理を行った場合には、紙幣回収カセット40から繰り出された補充紙幣が全て紙幣収納部34、36、38に収納された後にこれらの紙幣収納部34、36、38から出金紙幣を繰り出して紙幣払出部22に送るような方法と比較して、紙幣払出部22に出金紙幣が送られる時間を大幅に短縮することができ、操作者の待ち時間を短縮することができるようになる。
また、本実施の形態では、オーバーフロー紙幣を紙幣回収カセット40に一時的に収納させるような処理が行われる場合、紙幣回収カセット40にオーバーフロー紙幣が収納されている状態で精査処理開始の指令が操作者によってPOSレジスタ72の操作部77により入力されたり管理装置90からPOSレジスタ72のPOS制御部73に送信されたりすると、各紙幣収納部34、36、38に収納されている紙幣を紙幣回収カセット40に送る前にこの紙幣回収カセット40に収納されているオーバーフロー紙幣を当該紙幣回収カセット40から繰り出して紙幣釣銭機10における他の場所に移動させるようになっている。このようなオーバーフロー紙幣を紙幣回収カセット40から紙幣釣銭機10における他の場所に移動させる処理における紙幣の流れについて図14乃至図16を用いて説明する。
紙幣回収カセット40にオーバーフロー紙幣が収納されている状態で精査処理開始の指令がPOSレジスタ72のPOS制御部73に入力されると、紙幣回収カセット40に収納されているオーバーフロー紙幣は出金リジェクト部24、紙幣払出部22、ならびに紙幣収納部34、36、38のうち何れかの場所に移されるようになる。紙幣回収カセット40に収納されているオーバーフロー紙幣を出金リジェクト部24に移動させる場合には、紙幣回収カセット40から繰り出された紙幣は搬送部30により図14の矢印で示す流れに沿って搬送される。また、紙幣回収カセット40に収納されているオーバーフロー紙幣を紙幣払出部22に移動させる場合には、紙幣回収カセット40から繰り出された紙幣は搬送部30により図15の矢印で示す流れに沿って搬送される。また、紙幣回収カセット40に収納されているオーバーフロー紙幣を紙幣収納部34、36、38に移動させる場合には、紙幣回収カセット40から繰り出された紙幣は搬送部30により図16の矢印で示す流れに沿って搬送され、識別部32により識別が行われた後、当該紙幣の金種に対応する紙幣収納部34、36、38に収納されるようになる。このような処理を行うことにより、紙幣の精査処理を行う際に紙幣回収カセット40を空の状態とすることができるようになり、オーバーフロー紙幣が収納されている紙幣回収カセット40を空の紙幣回収カセット40に交換する必要がなくなる。
以上のような構成からなる本実施の形態の紙幣釣銭機10によれば、精査処理を行う際に、各紙幣収納部34、36、38に収納されている紙幣を搬送部30により補助収納部としての紙幣回収カセット40に送った後にこの紙幣回収カセット40に収納された紙幣を搬送部30により各紙幣収納部34、36、38に戻し、この間に搬送部30の周回搬送部30aにより搬送される紙幣を識別部32により識別するようになっている。この場合には、精査処理を行う際に紙幣収納部34、36、38とは別に設けられた紙幣回収カセット40を補助収納部として用いることにより紙幣収納部34、36、38に収納された紙幣を他の紙幣収納部34、36、38に移す必要がないため、紙幣収納部34、36、38に収納されている紙幣が多い場合でも確実に精査処理を行うことができ、また複数の金種の紙幣が混合してしまうことを防止することができる。
また、本実施の形態の紙幣釣銭機10においては、上述したように、補助収納部としての紙幣回収カセット40は紙幣釣銭機10の筐体内(具体的には、本体部14内)から取り出し可能となっている。このことにより、紙幣回収カセット40を用いて各紙幣収納部34、36、38に紙幣を補充することができるようになる。ここで、補助収納部としての紙幣回収カセット40は紙幣釣銭機10の筐体の前面から手前側に引き出し可能となっている。
また、本実施の形態の紙幣釣銭機10においては、上述したように、補助収納部としての紙幣回収カセット40には、当該紙幣回収カセット40に収納された紙幣を搬送部30に繰り出す繰出機構として搬送ベルト42が設けられており、紙幣回収カセット40が紙幣釣銭機10の筐体内(具体的には、本体部14内)に収容されているときに紙幣釣銭機10の本体部14側から紙幣回収カセット40の繰出機構に動力が伝達されることによってこの繰出機構は紙幣回収カセット40に収納された紙幣を搬送部30に繰り出すようになっている。この場合には、紙幣回収カセット40に繰出機構の動力源を設ける必要がなくなるため、当該紙幣回収カセット40の小型化や軽量化を図ることができるようになる。
また、本実施の形態の紙幣釣銭機10においては、上述したように、補助収納部としての紙幣回収カセット40を、紙幣受入部20により筐体内に投入されて識別部32により識別された紙幣を一時的に保留する入金一時保留部として機能させることができるようになっており、入金確定の指令がPOSレジスタ72のPOS制御部73に与えられたときに、入金一時保留部として機能する紙幣回収カセット40に一時的に保留された紙幣が各紙幣収納部34、36、38に送られるようになっている。
また、本実施の形態の紙幣釣銭機10においては、上述したように、紙幣釣銭機制御部60は、各紙幣収納部34、36、38に収納されている紙幣の在高データと精査処理による精査結果とが異なるときに、操作者による承認操作を経ることで、在高データを精査結果と合致させるよう当該在高データの更新を行うようになっている。このことにより、紙幣釣銭機10においてエラー発生時に当該紙幣釣銭機10の筐体内への紙幣の戻し入れが行われていなかったりリジェクト紙幣が紙幣釣銭機10の筐体内へ再投入されていなかったりした場合でも、紙幣釣銭機10において各紙幣収納部34、36、38に実際に収納されている紙幣の合計金額とPOSレジスタ72の記憶部78に記憶されている各紙幣収納部34、36、38の在高データとが一致するようになる。
なお、本実施の形態による紙幣釣銭機10は、上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
例えば、精査処理において各紙幣収納部34、36、38から繰り出された紙幣が一時的に収納される補助収納部は紙幣回収カセット40に限定されることはない。収納された紙幣を搬送部30に繰り出すことができるものであれば、紙幣釣銭機10における補助収納部として紙幣回収カセット40以外のものを用いてもよい。また、このような精査処理において用いられる補助収納部は、当該紙幣釣銭機10の本体部14から着脱可能となっていなくてもよい。
また、図2等に示すような紙幣釣銭機10において精査処理が行われる際に、各紙幣収納部34、36、38から繰り出された紙幣が紙幣回収カセット40に送られるまでの間に識別部32により紙幣の識別および計数を行う代わりに、紙幣回収カセット40から各紙幣収納部34、36、38に紙幣が戻される際に識別部32により紙幣の識別および計数を行うようになっていてもよい。紙幣回収カセット40から紙幣が繰り出される精度が高いものであれば、このような運用を行っても問題とならない。
また、精査処理が行われる際に紙幣回収カセット等の補助収納部に紙幣が一時的に収納されるような紙幣釣銭機は、図2乃至図16に示すような環状の周回搬送部30aを有する構成のものに限定されることはない。本発明に係る紙幣釣銭機の他の構成例について図17を用いて説明する。
図17に示すような内部構成を有する紙幣釣銭機110も、図2乃至図16に示す紙幣釣銭機10と同様に、店舗のフロント領域のレジ精算所において硬貨釣銭機(図示せず)に併設されるようになっており、これらの硬貨釣銭機や紙幣釣銭機110にはPOSレジスタ(図示せず)が通信可能に接続されるようになっている。
図17に示すように、変形例に係る紙幣釣銭機110の筐体の内部には搬送部130が設けられており、この搬送部130は紙幣を1枚ずつ搬送するよう構成されている。また、この搬送部130には、紙幣受入部120、紙幣払出部122、出金リジェクト部124、紙幣回収カセット140および3つの紙幣収納部134、136、138がそれぞれ接続されている。また、搬送部130には入金識別部132および出金識別部133が設けられている。ここで、入金識別部132は、紙幣の入金処理時において搬送部130により搬送される紙幣の識別を行うようになっており、また、出金識別部133は、紙幣の出金処理時において搬送部130により搬送される紙幣の識別を行うようになっている。また、搬送部130には、紙幣の搬送経路を切り換える経路切換部(図示せず)が複数配置されている。
各紙幣収納部134、136、138は、紙幣を1枚ずつ一対のテープ間に挟み込んだ状態で当該テープを紙幣とともに回転ドラム135、137、139に巻き取るテープリール式のものからなる。このような紙幣収納部134、136、138には、入金識別部132の識別結果に基づいて紙幣が金種別に収納されるようになっている。具体的には、例えば紙幣収納部134には千円札が収納され、紙幣収納部136には二千円札および五千円札が混合状態で収納され、紙幣収納部138には一万円札が収納されるようになっている。また、各紙幣収納部134、136、138に収納されている紙幣は、回転ドラム135、137、139を紙幣の収納方向とは逆方向に回転させることにより、搬送部130側へ1枚ずつ繰り出されるようになっている。
紙幣受入部120には紙幣繰出機構121が設けられており、当該紙幣受入部120に紙幣が投入されたことが検知されると紙幣繰出機構121が駆動されることにより紙幣が搬送部130側へ1枚ずつ繰り出されるようになっている。
紙幣払出部122は、出金処理時等において各紙幣収納部134、136、138から搬送部130に繰り出された紙幣を筐体の外部へ払い出すようになっている。
出金リジェクト部124は、出金処理時において各紙幣収納部134、136、138から繰り出された紙幣のうち、重送や斜行等の搬送異常により出金識別部133で識別することができない紙幣を出金リジェクト紙幣として収納するようになっている。また、紙幣受入部120から紙幣釣銭機110の筐体内に取り込まれた紙幣のうち、入金処理時において汚損等により入金識別部132で識別することができない紙幣は入金リジェクト紙幣として紙幣払出部122に返却されるようになっている。
紙幣釣銭機110の筐体の前面下部にはカセット収容部150が設けられており、このカセット収容部150に紙幣回収カセット140が着脱可能に収容されるようになっている。紙幣回収カセット140は筐体の前面から手前側に引き出すことにより当該筐体の外部に取り出すことができるようになっている。このような紙幣回収カセット140は、図2乃至図16に示す紙幣釣銭機10における紙幣回収カセット40と同様の構成となっている。
図17に示す紙幣釣銭機110における精査処理について以下に説明する。全金種の精査処理開始の指令がPOSレジスタのPOS制御部(図示せず)に与えられると、複数の紙幣収納部134、136、138のうちまず紙幣収納部134に収納されている紙幣が1枚ずつ搬送部130に繰り出され、この搬送部130により搬送される。そして、紙幣が搬送部130により搬送される際に入金識別部132または出金識別部133により紙幣の金種等の識別および計数が行われる。入金識別部132や出金識別部133により正常な紙幣であると識別された紙幣は紙幣回収カセット140に送られ、この紙幣回収カセット140内に収納される。一方、入金識別部132や出金識別部133による識別結果により正常な紙幣ではないと判別された紙幣(例えば、重送や斜行等の搬送異常の紙幣)は検査リジェクト紙幣として搬送部130により出金リジェクト部124に搬送され、この出金リジェクト部124に集積される。
そして、紙幣収納部134に収納されている紙幣が全て紙幣回収カセット140や出金リジェクト部124に送られると、紙幣回収カセット140に収納されている紙幣が1枚ずつ搬送部130に繰り出され、この搬送部130により搬送される。搬送部130により搬送される紙幣は入金識別部132や出金識別部133により識別および計数が行われることなく紙幣収納部134に戻される。紙幣収納部134に収納されている紙幣について上述の動作が完了すると、紙幣収納部136、138に収納されている紙幣についても上述の動作が紙幣収納部毎に行われる。このようにして、全ての紙幣収納部134、136、138に収納されている紙幣について上述の動作が行われて入金識別部132や出金識別部133により識別および計数が行われると、紙幣釣銭機110における精査処理が完了する。なお、上記の紙幣釣銭機110では、全金種の精査処理ではなく、一部の金種を指定してこの指定された一部の金種について精査処理を行うことも可能である。
図17に示すような紙幣釣銭機110によれば、図2乃至図16に示す紙幣釣銭機10と同様に、精査処理を行う際に、各紙幣収納部134、136、138に収納されている紙幣を搬送部130により補助収納部としての紙幣回収カセット140に送った後にこの紙幣回収カセット140に収納された紙幣を搬送部130により各紙幣収納部134、136、138に戻し、この際に搬送部130により搬送される紙幣を入金識別部132または出金識別部133により識別するようになっている。この場合には、精査処理を行う際に紙幣収納部134、136、138とは別に設けられた紙幣回収カセット140を補助収納部として用いることにより紙幣収納部134、136、138に収納された紙幣を他の紙幣収納部134、136、138に移す必要がないため、紙幣収納部134、136、138に収納されている紙幣が多い場合でも確実に精査処理を行うことができ、また複数の金種の紙幣が混合してしまうことを防止することができる。
なお、本発明による紙幣処理装置は、図2乃至図16に示すような構成の紙幣釣銭機10や図17に示すような構成の紙幣釣銭機110等の紙幣釣銭機に限定されることはない。本発明による紙幣処理装置として、バックヤード領域の出納室に設置される紙幣入出金機等の、紙幣釣銭機以外のものを用いてもよい。また、本発明は、紙幣釣銭機と硬貨釣銭機とが一体となった釣銭機に適用されてもよい。