JP2015168742A - インクジェット記録用ブラックインク - Google Patents

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Abstract

【課題】経時安定性が高く、黒色度の高いインクジェット記録用ブラックインクの提供。
【解決手段】(1)少なくとも着色剤としてのカーボンブラックとその補色顔料、水溶性有機溶媒及び水を含有し、前記カーボンブラックと補色顔料の少なくとも一方が自己分散型であるインクジェット記録用ブラックインク。
(2)インク全量中のカーボンブラック含有量が2〜10質量%、補色顔料含有量がカーボンブラック量に対して0.01〜0.2質量%である(1)のインクジェット記録用ブラックインク。
(3)前記補色顔料として、C.I.ピグメントブルー15:3及び/又はC.I.ピグメントレッド122を含む(1)又は(2)記載のインクジェット記録用ブラックインク。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録用ブラックインクに関する。
インクジェット記録用ブラックインクでは、着色剤としてカーボンブラックが使用されるのが一般的である。カーボンブラックは黒色であるが、僅かな色彩を有しており、完全な黒色(無彩色)ではない。そのためその僅かな色彩に対する補色を用いることにより、彩度を下げて無彩色化し、より黒色度の高い画像を得るという手段が知られている。
例えば特許文献1には、カーボンブラックにシアン顔料とマゼンタ顔料を加えたブラックインク組成物が記載されている。補色着色剤としては染料や顔料を使用できるが、得られる画像の耐光性からは顔料が好ましい。しかし複数の顔料を混合すると、各々の顔料を最適な分散状態に保つことが難しく、経時で顔料が凝集し、所望の黒色度が得られなくなるという課題がある。
本発明は、上記課題を解決し、保存安定性が高く、黒色度の高いインクジェット記録用ブラックインクの提供を目的とする。
上記課題は、次の1)の発明によって解決される。
1) 少なくとも着色剤としてのカーボンブラックとその補色顔料、水溶性有機溶媒及び水を含有し、前記カーボンブラックと補色顔料の少なくとも一方が自己分散型であることを特徴とするインクジェット記録用ブラックインク。
本発明によれば、保存安定性が高く、黒色度の高いインクジェット記録用ブラックインクを提供できる。
インクジェット記録装置の一例を示す図。 図1の記録装置の本体内部を示す図。 インクカートリッジのインク袋の一例を示す概略図。 図3のインク袋をカートリッジケース内に収容した状態を示す概略図。
以下、上記本発明1)について詳しく説明する。なお、本発明1)の実施の形態には、次の2)〜3)も含まれるので、これらについても併せて説明する。
2) インク全量中のカーボンブラック含有量が2〜10質量%、補色顔料含有量がカーボンブラック量に対して0.01〜0.2質量%であることを特徴とする1)記載のインクジェット記録用ブラックインク。
3) 前記補色顔料として、C.I.ピグメントブルー15:3及び/又はC.I.ピグメントレッド122を含むことを特徴とする1)又は2)記載のインクジェット記録用ブラックインク。
<インクジェット記録用ブラックインク>
本発明のインクジェット記録用ブラックインク(以下、インクということもある)は、少なくともカーボンブラック、補色顔料、水溶性有機溶媒及び水を含有する。また、界面活性剤及び抑泡剤を含有することが好ましい。
[カーボンブラック]
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、ガスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどが挙げられる。カーボンブラックのDBP吸収量は、通常、25〜400mL/100gであるが、30〜200mL/100gが好ましく、50〜150mL/100gが更に好ましい。
インク全量中のカーボンブラックの含有量は、1〜15質量%程度が好ましいが、2〜10質量%とすると、より保存安定性に優れたインクを得ることができる。
[補色顔料]
補色顔料としては、アントラキノン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジアゾ、モノアゾ、ピラントロン、ペリレン、複素環式イエロー、キナクリドン、(チオ)インジゴイドなどが挙げられる。
アントラキノンの代表的な例は、ピグメントレッド43、ピグメントレッド194(ペリノンレッド)、ピグメントレッド216(臭素化ピラントロンレッド)、ピグメントレッド226(ピラントロンレッド)である。
フタロシアニンブルーの代表的な例は、銅フタロシアニンブルー及びその誘導体(ピグメントブルー15:3)である。
ペリレンの代表的な例は、ピグメントレッド123(ベルミリオン)、ピグメントレッド149(スカーレット)、ピグメントレッド179(マルーン)、ピグメントレッド190(レッド)、ピグメントバイオレット、ピグメントレッド189(イエローシェードレッド)、ピグメントレッド224である。
複素環式イエローの代表的な例は、ピグメントイエロー117及びピグメントイエロー138である。
キナクリドンの代表的な例は、ピグメントオレンジ48、ピグメントオレンジ49、ピグメントレッド122、ピグメントレッド192、ピグメントレッド202、ピグメントレッド206、ピグメントレッド207、ピグメントレッド209、ピグメントバイオレット19及びピグメントバイオレット42である。
チオインジゴイドの代表的な例は、ピグメントレッド86、ピグメントレッド87、ピグメントレッド88、ピグメントレッド181、ピグメントレッド198、ピグメントバイオレット36、ピグメントバイオレット38である。
その他の使用可能な着色顔料の例は、The Colour Index、第三版(The Society of Dyers and Colourists,1982)に記載されている。
中でもC.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントレッド122が好ましく、カーボンブラックと混合すると、より黒色度の高い画像が得られる。
補色顔料の添加量は、カーボンブラック量に対して0.3質量%以下が好ましく、より好ましくは0.01〜0.2質量%とすると一層黒色度の高い画像が得られる。
(自己分散型顔料)
本発明では、カーボンブラックとその補色顔料の少なくとも一方に、顔料表面に少なくとも一種の親水性基が直接又は他の原子団を介して結合し、分散剤を使用することなく安定に分散しているいわゆる自己分散型顔料を使用する。自己分散型顔料としてはイオン性を有するものが好ましく、アニオン性に帯電したものやカチオン性に帯電したものが好適である。
アニオン性親水性基としては、例えば、−COOM、−SOM、−POHM、−PO、−SONH、−SONHCOR(但し、式中のMは水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表し、Rは炭素原子数1〜12のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基又は置換基を有してもよいナフチル基を表わす。)等が挙げられる。これらの中でも、−COOM、−SOMが結合したものが好ましい。
アニオン性に帯電した顔料を得る方法としては、例えば顔料を次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法、スルホン化処理する方法、ジアゾニウム塩を反応させる方法が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
カチオン性に帯電したカラー顔料表面に結合する親水基としては、例えば第4級アンモニウム基が挙げられる。中でも下記の第4級アンモニウム基の少なくとも一つが顔料表面に結合したものが好ましい。
Figure 2015168742
本発明では、カーボンブラック又はその補色顔料として、分散剤分散型顔料や樹脂被覆型顔料を併用してもよい。

(分散剤分散型顔料)
顔料の分散剤としては、顔料分散体調製に用いられる公知の分散剤を使用することができ、例えば以下のものが挙げられる。
ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等。
また、顔料を分散するのに用いるノニオン系又はアニオン系の界面活性剤系分散剤としては顔料種別又はインク処方に応じて適宜選択できる。
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレン−α−ナフチルエーテル、ポリオキシエチレン−β−ナフチルエーテル、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンモノスチリルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体等が挙げられる。
また、上記界面活性剤のポリオキシエチレンの一部をポリオキシプロピレンに置き換えた界面活性剤やポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の芳香環を有する化合物をホルマリン等で縮合させた界面活性剤も使用できる。
ノニオン系界面活性剤としてHLBが12〜19.5のもの、好ましくは13〜19のものを使用すると、界面活性剤と分散媒のなじみが良く、安定した分散状態を得ることができる。
アニオン系界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルカルボン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、メラニンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、スルホコハク酸アルキル二塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、N−アシルアミノ酸塩、アシル化ペプチド、石鹸等が挙げられる。これらのうち、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルの硫酸塩又はリン酸塩が特に好ましい。
界面活性剤系分散剤の添加量は、顔料に対して10〜50質量%とする。これにより、顔料分散体及びインクの保存安定性、吐出安定性が向上する。
(樹脂被覆型顔料)
樹脂被覆型顔料は、ポリマー微粒子に水不溶性又は難溶性の色材を含有させたポリマーエマルジョンからなる。前記「色材を含有させた」とは、ポリマー微粒子中に色材を封入した状態及び/又はポリマー微粒子の表面に色材を吸着させた状態を意味する。なお、本発明のインクに配合される色材は全てポリマー微粒子に封入又は吸着されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲で、色材がエマルジョン中に分散していてもよい。
前記色材としては、水不溶性又は水難溶性で、かつ前記ポリマーに吸着され得るものであれば特に制限はない。また、前記水不溶性又は水難溶性とは、20℃で水100質量部に対して、色材が10質量部以上溶解しないことをいい、溶解するとは、目視で水溶液表層又は下層に色材の分離や沈降が認められないことをいう。前記色材としては、例えば、油溶性染料、分散染料等の染料や、顔料等が挙げられる。良好な吸着・封入性の観点からは油溶性染料及び分散染料が好ましいが、得られる画像の耐光性からは顔料が好ましい。
また、本発明に用いられる着色剤は、ポリマー微粒子に効率的に含浸される観点から、有機溶媒、例えば、ケトン系溶媒に2g/リットル以上溶解することが好ましく、20〜600g/リットル溶解することが更に好ましい。前記ポリマーエマルジョンを形成するポリマーとしては、例えば、ビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー等を用いることができる。特に好ましいポリマーはビニル系ポリマーとポリエステル系ポリマーであり、具体的には、特開2000−53897号公報、特開2001−139849号公報に開示されているポリマーが好適である。
また、前記着色剤の配合量は、ポリマー100質量部に対し10〜200質量部が好ましく、25〜150質量部がより好ましい。着色材を含有するポリマー微粒子の平均粒径は、インク中において0.16μm以下が好ましい。
前記ポリマー微粒子の含有量は、インク中の固形分として8〜20質量%が好ましく、8〜12質量%がより好ましい。
[水溶性有機溶媒]
本発明のインクは溶媒として水を用いるが、インクの乾燥防止や分散安定性向上等の目的で水溶性有機溶媒を加える。これらの水溶性有機溶媒は複数混合して使用してもよい。
水溶性有機溶媒としては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物類、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
前記多価アルコール類としては、例えば、グリセリン、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペトリオール等が挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
含窒素複素環化合物類としては、例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−プチロラクトン等が挙げられる。
アミド類としては、例えばアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジエチルアセトアミドなどが挙げられる。
アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
これらの水溶性有機溶媒の中でも、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、テトラエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましい。これらは溶解性と水分蒸発による噴射特性不良の防止に対して優れた効果を奏する。また、保存安定性及び吐出安定性に優れたインクを作製することができる。
着色剤粒子と水溶性有機溶媒の配合比は、インクの吐出安定性に大きく影響する。顔料固形分が多いのに、水溶性有機溶媒の配合量が少ないと、ノズル付近の水分蒸発が進み、吐出不良をもたらすことになる。
本発明のインクは、前記水溶性有機溶媒以外に、必要に応じて、糖類やその誘導体などの他の水溶性有機溶媒を併用することもできる。糖類は主に耐乾燥性向上のために使用され、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類、四糖類も含む)、多糖類及びこれらの誘導体が挙げられる。具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キロース、トレハロース、マントトリオース等が挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロース等自然界に広く存在する物質を含むものとする。糖類の誘導体としては、前記糖類の還元糖や酸化糖類が挙げられる。これらの中でも糖アルコールが好ましく、具体的には、マルチトール、ソルビット等が挙げられる。
糖類の含有量は、インクに対して0.1〜40質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましい。
[界面活性剤]
インクに含有させる界面活性剤としては特に制限はなく、着色剤の種類や水溶性有機溶媒、浸透剤等の組み合わせによって、分散安定性を損なわない界面活性剤の中から目的に応じて適宜選択することができる。特に記録媒体に印刷する場合には、表面張力が低く、レベリング性の高いフッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が好適であり、中でもフッ素系界面活性剤が好ましい。
前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。
前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。
前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
前記パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルリン酸エステルの塩等が挙げられる。
前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。
これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
前記フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用しても、市販品を使用してもよい。該市販品としては、例えば、旭硝子社製のサーフロンシリーズ(S−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145)、住友スリーエム社製のフルラードシリーズ(FC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431)、大日本インキ社製のメガファックシリーズ(F−470、F−1405、F−474)、Dupont社製のZonyl TBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、UR、ネオス社製のFT−110、FT−250、FT−252、FT−400S、FT−150、FT−400SW、オムノバ社製のPF−151N等が挙げられるが、中でも次の一般式で表されるフッ素系界面活性剤が好ましい。
Figure 2015168742
上記式中、nは2〜6の整数を、aは15〜50の整数を示す。Yは−C2b+1(bは11〜19の整数を示す)又はCHCH(OH)CH−C2m+1(mは2〜6の整数を示す)である。
上記化合物の具体例としては、例えば以下のものが挙げられるが、特に[化4]の界面活性剤が好ましい。
Figure 2015168742
Figure 2015168742
なお、上記構造のフッ素系界面活性剤はPFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)及びPFOA(パーフルオロオクタン酸)を含有しておらず、地球環境汚染の観点から見ても優れている。
前記シリコーン系界面活性剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられるが、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
シリコーン系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用しても、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー社、信越シリコーン社、東レ・ダウコーニング・シリコーン社等のものを容易に入手できる。
また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
ポリエーテル変性シリコーン化合物としては、適宜合成したものを使用しても、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、信越化学社製のKF−618、KF−642、KF−643等が挙げられる。
また、前記フッ素系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤以外にも、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができる。
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、コハク酸エステルスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩等が挙げられる。
前記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等が挙げられる。また、その市販品として、例えば、エアープロダクツ社製のサーフィノールシリーズ(104、82、465、485、TG)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミノピロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、ステアリルジメチルアミンオキシド、ジヒドロエチルラウリルアミンオキシド、ポリオキシエチレンヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド、ジメチルアルキル(ヤシ)ベタイン、ジメチルラウリルベタイン等が挙げられる。また、その市販品として、例えば、日光ケミカルズ社、日本エマルジョン社、日本触媒社、東邦化学社、花王社、アデカ社、ライオン社、青木油脂社、三洋化成社等のものを容易に入手できる。
前記種々の界面活性剤は、単独で用いても複数のものを混合して用いてもよい。単独ではインク中に容易に溶解しない場合でも、複数のものを混合することにより可溶化され、安定に存在することができる場合もある。
前記界面活性剤のインク中の含有量は、0.01〜4質量%が好ましく、より好ましくは、0.1〜1質量%である。これにより、記録媒体への浸透性が良くなり、画像濃度の高い画像を得ることができる。
[抑泡剤]
フッ素系界面活性剤の界面活性能は非常に高く、一般的に使用されているシリコーン系抑泡剤を添加しても、発生した気泡が消えずに残留してしまう。その結果、インクの吐出不良などが発生する可能性がある。従って本発明では、気泡の発生を抑えるために、N−オクチル−2−ピロリドン、2,4,7,9−テトラメチルデカン−4,7−ジオール、2,5,8,11−テトラメチルドデカン−5,8−ジオールのいずれかを添加する。
これらの抑泡剤と前記フッ素系界面活性剤を併用することにより気泡の発生を抑えることができ、気泡による不具合を解消することが可能となる。
フッ素系界面活性剤を含有するインクの表面張力はフッ素系界面活性剤と抑泡剤の割合で決まるが、記録媒体の種類によってインクの表面張力を下げる必要がある場合にはフッ素系界面活性剤の比率を多くする必要がある。ただし、当然のことながらフッ素系界面活性剤の比率を増やすと泡立ちの問題があるため、フッ素系界面活性剤の比率は、フッ素系界面活性剤と抑泡剤の合計量に対して40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
[その他の成分]
本発明のインクには、前記各成分の他に、必要に応じて公知の浸透剤、ポリマー粒子、pH調整剤、防腐防黴剤等を添加することができる。
浸透剤としては、炭素数8〜11のポリオール化合物又はグリコールエーテル化合物が好ましく用いられる。これらは、記録媒体への浸透速度を速めると共にブリードを防止する効果を有し、水よりも高沸点で、25℃で液体であり、25℃の水中において、0.1〜4.5質量%の溶解度を有する部分的に水溶性の化合物である。
前記炭素数8〜11のポリオール化合物としては、例えば、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,2−オクタンジオール等が挙げられる。
前記グリコールエーテル化合物としては、例えば、多価アルコールアルキルエーテル化合物、多価アルコールアリールエーテル化合物等が挙げられる。
前記多価アルコールアルキルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
前記多価アルコールアリールエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
これらの浸透剤のインク中の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。
ポリマー粒子としては造膜性を有するものを用いる。ここで造膜性とは、ポリマー粒子を水に分散させてエマルジョンの形態とした時、この水性エマルジョンの水分を蒸発させていくと、樹脂皮膜が形成される性質を意味する。
このようなポリマー粒子が含まれていると、インク中の揮発成分が蒸発した際に該ポリマー粒子が皮膜を形成し、インク中の着色剤を強固に記録媒体に固着する役割を果たす。これにより、耐擦過性、耐水性に優れた画像を実現することができる。
ポリマー粒子は、室温で皮膜を形成するため、最低造膜温度が30℃以下のものが好ましく、10℃以下のものがより好ましい。ここで、最低造膜温度とは、ポリマー粒子を水に分散させて得られたポリマーエマルジョンを、アルミニウム等の金属板の上に薄く流延し、温度を上げていった時に、透明な連続したフィルムが形成される最低の温度のことを意味する。このようなポリマー粒子としては、例えば、ミヨシ油脂社製のランディPLシリーズなどが挙げられる。
ポリマー粒子の体積平均粒子径は、5〜200nmが好ましく、10〜100nmがより好ましい。
ポリマー粒子としては、単粒子構造のものを使用することができる。例えば、エマルジョン粒子内にアルコキシシリル基を有すると、塗膜形成過程での水分蒸発によるエマルジョン同士の融着に伴って残存する水分と接触し、加水分解してシラノール基を形成する。また、シラノール基が残存するとアルコキシシリル基又はシラノール同士が反応して、シロキサン結合による強固な架橋構造を形成することができる。このようにポリマー微粒子内に反応性の官能基を共存させると、硬化剤を添加しなくても、造膜時にそれらの官能基を反応させて網目構造を形成させることができる。
また、コア部とそれを囲むシェル部からなるコアシェル構造を有するポリマー粒子を使用することも可能である。ここでいうコアシェル構造とは、組成の異なる2種以上のポリマーが粒子中に相分離して存在する形態を意味する。従って、シェル部がコア部に完全に被覆している形態のみならず、コア部の一部を被覆しているものであってもよい。また、シェル部のポリマーの一部がコア粒子内にドメイン等を形成しているものであってもよい。更にコア部とシェル部の間に、更に一層以上の組成の異なる層を含む3層以上の多層構造を持つものであってもよい。
ポリマー粒子は、不飽和ビニル単量体(不飽和ビニルポリマー)を重合触媒及び乳化剤を存在させた水中で乳化重合する等の公知の方法により得ることができる。ポリマー粒子のインク中の含有量は、0.5〜20質量%が好ましく、より好ましくは1〜5質量%とする。これにより、吐出不良などの不具合が生じず、耐擦過性、耐水性向上機能が良好な画像を得ることができる。
インクのpHは9〜11が好ましい。pHが11を超えると、インク供給ユニットなどの材質を溶かし出す量が大きくなり、インクの変質や漏洩、吐出不良等の問題が発生してしまう。そこで、pHを前記範囲に調整するためにpH調整剤を加える。
pH調整剤は、顔料を分散剤と共に水に混練分散する際に加えるよりも、混練分散体に湿潤剤、浸透剤等の添加剤と共に加える方が好ましい。これは、pH調整剤によっては添加により分散を破壊する場合もあるためである。
pH調整剤としては、例えばアルコールアミン類、アルカリ金属水酸化物、アンモニウム水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩等が挙げられる。
アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。アルカリ金属元素の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。アンモニウムの水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、第四級アンモニウム水酸化物等が挙げられる。ホスホニウム水酸化物としては、例えば、第四級ホスホニウム水酸化物等が挙げられる。アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が挙げられる。
<インクジェット記録装置>
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機などに好適に使用することができる。
以下、実施例でも用いたインクジェット記録装置について概要を説明する。
図1に示すインクジェット記録装置は、装置本体(101)と、装置本体(101)に装着した用紙を装填するための給紙トレイ(102)と、装置本体(101)に装着され画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ(103)と、インクカートリッジ装填部(104)とを有する。インクカートリッジ装填部(104)の上面には操作キーや表示器などの操作部(105)が配置されている。インクカートリッジ装填部(104)は、インクカートリッジ(200)の脱着を行うための開閉可能な前カバー(115)を有している。(111)は上カバー、(112)は前カバーの前面である。
装置本体(101)内では、図2に示すように、左右の側板(不図示)に横架したガイド部材であるガイドロッド(131)とステー(132)とで、キャリッジ(133)を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ(不図示)によって移動走査する。
キャリッジ(133)には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個のインクジェット記録用ヘッドからなる記録ヘッド(134)の複数のインク吐出口を、主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
記録ヘッド(134)を構成するインクジェット記録用ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、インクを吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどが使用できる。
また、キャリッジ(133)には、記録ヘッド(134)に各色のインクを供給するための各色のサブタンク(135)を搭載している。サブタンク(135)には、インク供給チューブ(不図示)を介して、インクカートリッジ装填部(104)に装填された本発明のインクカートリッジ(200)からインクが供給されて補充される。
一方、給紙トレイ(102)の用紙積載部(圧板)(141)上に積載した用紙(142)を給紙するための給紙部として、用紙積載部(141)から用紙(142)を1枚づつ分離給送する半月コロ〔給紙コロ(143)〕、及び給紙コロ(143)に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド(144)を備え、この分離パッド(144)は給紙コロ(143)側に付勢されている。
この給紙部から給紙された用紙(142)を記録ヘッド(134)の下方側で搬送するための搬送部として、用紙(142)を静電吸着して搬送するための搬送ベルト(151)と、給紙部からガイド(145)を介して送られる用紙(142)を搬送ベルト(151)との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ(152)と、略鉛直上方に送られる用紙(142)を略90°方向転換させて搬送ベルト(151)上に倣わせるための搬送ガイド(153)と、押さえ部材(154)で搬送ベルト(151)側に付勢された先端加圧コロ(155)とが備えられ、また、搬送ベルト(151)表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ(156)が備えられている。
搬送ベルト(151)は無端状ベルトであり、搬送ローラ(157)とテンションローラ(158)との間に張架されて、ベルト搬送方向に周回可能である。この搬送ベルト(151)は、例えば、抵抗制御を行っていない厚さ40μm程度の樹脂材〔例えばテトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(ETFE)〕で形成した用紙吸着面となる表層と、この表層と同材質でカーボンによる抵抗制御を行った裏層(中抵抗層、アース層)とを有している。搬送ベルト(151)の裏側には、記録ヘッド(134)による印写領域に対応してガイド部材(161)が配置されている。なお、記録ヘッド(134)で記録された用紙(142)を排紙するための排紙部として、搬送ベルト(151)から用紙(142)を分離するための分離爪(171)と、排紙ローラ(172)及び排紙コロ(173)とが備えられており、排紙ローラ(172)の下方に排紙トレイ(103)が配されている。
装置本体(101)の背面部には、両面給紙ユニット(181)が着脱自在に装着されている。両面給紙ユニット(181)は、搬送ベルト(151)の逆方向回転で戻される用紙(142)を取り込んで反転させて再度、カウンタローラ(152)と搬送ベルト(151)との間に給紙する。なお、両面給紙ユニット(181)の上面には手差し給紙部(182)が設けられている。
このインクジェット記録装置では、給紙部から用紙(142)が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙(142)は、ガイド(145)で案内され、搬送ベルト(151)とカウンタローラ(152)との間に挟まれて搬送される。更に先端を搬送ガイド(153)で案内されて先端加圧コロ(155)で搬送ベルト(151)に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、帯電ローラ(156)によって搬送ベルト(157)が帯電されており、用紙(142)は、搬送ベルト(151)に静電吸着されて搬送される。そこで、キャリッジ(133)を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド(134)を駆動することにより、停止している用紙(142)にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙(142)を所定量搬送した後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙(142)の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙(142)を排紙トレイ(103)に排紙する。
そして、サブタンク(135)内のインクの残量ニアーエンドが検知されると、インクカートリッジ(200)から所要量のインクがサブタンク(135)に補給される。
このインクジェット記録装置においては、インクカートリッジ(200)中のインクを使い切ったときには、インクカートリッジ(200)における筐体を分解して内部のインク袋だけを交換することができる。また、インクカートリッジ(200)は、縦置きで前面装填構成としても、安定したインクの供給を行うことができる。したがって、装置本体(101)の上方が塞がって設置されているような場合、例えば、ラック内に収納したり、あるいは装置本体(101)の上面に物が置かれているような場合でも、インクカートリッジ(200)の交換を容易に行うことができる。
なお、ここでは、キャリッジが走査するシリアル型(シャトル型)インクジェット記録装置に適用した例で説明したが、ライン型ヘッドを備えたライン型インクジェット記録装置にも同様に適用することができる。
<インクカートリッジ>
本発明のインクは、容器に収容してインクカートリッジとして用いることができ、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を付設してもよい。
容器としては特に制限はなく、目的に応じて、その形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋などを有するものなどが好適に挙げられる。
上記インクカートリッジについて図3及び図4を参照して説明する。図3は、インクカートリッジのインク袋241の一例を示す概略図、図4は図3のインク袋241をカートリッジケース244内に収容した状態を示す概略図である。
図3に示すように、インク注入口242からインクをインク袋241内に充填し、該インク袋中に残った空気を排気した後、インク注入口242を融着により閉じる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口243に装置本体の針を刺して装置に供給する。インク袋241は、透気性のないアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成する。そして、図4に示すように、通常、プラスチック製のカートリッジケース244内に収容し、インクカートリッジ200として各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、例中の「%」は「質量%」である。
<顔料分散体の調製>
調製例1(表面処理したカーボンブラック顔料分散体の調製)
CTAB比表面積が150m/g、DBP吸油量100mL/100gのカーボンブラック90gを、2.5規定の硫酸ナトリウム溶液3000mLに添加し、温度60℃、速度300rpmで攪拌し、10時間反応させて酸化処理した。この反応液を濾過し、濾別したカーボンブラックを水酸化ナトリウム溶液で中和し、限外濾過を行った。得られたカーボンブラックを水洗いして乾燥させ、濃度が20%となるよう純水中に分散させて、表面処理したカーボンブラック顔料分散体を得た。
調製例2(表面処理したイエロー顔料分散体の調製)
イエロー顔料のC.I.ピグメントイエロー128を低温プラズマ処理し、カルボン酸基を導入した顔料を作製した。この顔料をイオン交換水中に分散させ、限外濾過膜で脱塩濃縮して、顔料濃度15%の表面処理したイエロー顔料分散体を得た。
調製例3(表面処理したマゼンタ顔料分散体の調製)
マゼンタ顔料のC.I.ピグメントレッド122を低温プラズマ処理し、カルボン酸基を導入した顔料を作製した。この顔料をイオン交換水中に分散させ、限外濾過膜で脱塩濃縮して、顔料濃度15%の表面処理したマゼンタ顔料分散体を得た。
調製例4(表面処理したシアン顔料分散体の調製)
シアン顔料のC.I.ピグメントブルー15:3を低温プラズマ処理し、カルボン酸基を導入した顔料を作製した。この顔料をイオン交換水中に分散させ、限外濾過膜で脱塩濃縮して、顔料濃度15%の表面処理したシアン顔料分散体を得た。
調製例5(カーボンブラック顔料分散体の調製)
CTAB比表面積が150m/g、DBP吸油量100mL/100gのカーボンブラック150g、ポリエキシエチレン−β−ナフチルエーテル(RT−100:竹本油脂社製)110g、ジオクチルスルホサクシネートNa塩(パイオニンA−51−B:竹本油脂社製)2g、蒸留水738gを混合し、この混合物をプレ分散させた後、ディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製KDL型、メディア:0.3mmφジルコニアボール使用)で20時間循環分散し、カーボンブラック顔料分散体を得た。
調製例6(シアン顔料分散体の調製)
カーボンブラックをC.I.ピグメントブルー15:3に変えた点以外は調製例5と同様にして、シアン顔料分散体を得た。
調製例7(マゼンタ顔料分散体の調製)
カーボンブラックをC.Iピグメントレッド122に変えた点以外は調製例5と同様にして、マゼンタ顔料分散体を得た。
調製例8(シアン顔料含有ポリマー微粒子分散体の調製)
・ポリマーの合成
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下ロートを備えた1Lフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー(東亜合成社製、商品名:AS−6)4.0g及びメルカプトエタノール0.4gを仕込み、65℃に昇温した。次にスチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー(東亜合成社製、商品名:AS−6)36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスジメチルバレロニトリル2.4g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内に、メチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50%のポリマー溶液800gを得た。

・シアン顔料含有ポリマー微粒子分散体の調製
上記ポリマー溶液28g、26gのC.I.ピグメントブルー15:3、1mol/Lの水酸化カリウム溶液13.6g、メチルエチルケトン20g、及びイオン交換水30gを十分に攪拌した後、三本ロールミルを用いて混練した。得られたペーストをイオン交換水200gに投入し、十分に攪拌した後、エバポレーターでメチルエチルケトン及び水を留去し、シアン顔料含有ポリマー微粒子分散体を得た。
調製例9(マゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散体の調製)
C.I.ピグメントブルー15:3を、C.I.ピグメントレッド122に変えた点以外は調製例8と同様にして、マゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散体を得た。
調製例10(カーボンブラック顔料含有ポリマー微粒子分散体の調製)
C.I.ピグメントブルー15:3を、CTAB比表面積が150m/g、DBP吸油量100mL/100gのカーボンブラックに変えた点以外は調製例8と同様にして、カーボンブラック顔料含有ポリマー微粒子分散体を得た。
実施例1〜11、比較例1〜6
<インクの調製>
表1、表2の実施例及び比較例の各欄に示す水溶性有機溶媒、浸透剤、pH調整剤、抗菌剤、界面活性剤及び水を1時間攪拌し均一に混合した。次に抑泡剤を加えて更に1時間攪拌し均一に混合した。その後、調製例1〜10で得た顔料分散体を加えて更に1時間攪拌し均一に混合した。この混合物を平均孔径0.8μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターで加圧濾過し、粗大粒子やゴミを除去して、実施例及び比較例の各インクを得た。
実施例及び比較例の各インクについて、以下のようにして特性を測定し評価した。
結果を纏めて表1、表2に示す。なお、表中の数値は質量%である。

(画像の黒色度評価)
各インクをリコー社製インクジェットプリンターIPSiO GX e5500に充填し、記録密度600×300dpi、ワンパスで、A4全面べた画像の印字を行った。
印刷試験用紙は普通紙:P−PAPER GF−500(A4、キヤノン社製)を使用し、印字乾燥後、明度及び彩度を反射型カラー分光測色濃度計X−Rite938(X−Rite社製)で測定した。
得られたL値、a値、b値から黒色度を算出し、次の基準で評価した。なお、黒色度の算出には次式を用いた。
黒色度=L+(a+b1/2

〔評価基準〕
◎:黒色度30未満
○:黒色度30以上、32未満
△:黒色度32以上、34未満
×:黒色度34以上
(保存安定性評価)
各インクを、それぞれ20mLのガラス瓶に入れ、70℃の恒温槽内に2週間放置し、初期と2週間保存後のインクの体積平均粒径の差(顔料凝集レベル)を測定して、下記の基準で評価した。
体積平均粒径の測定にはマイクロトラック社製のUPA−EX150を用い、イオン交換水でインクを250倍に希釈して測定セルに投入し、25℃で60秒間測定した。なお、インクの体積平均粒径とは、実質上、インク中の顔料の体積平均粒径である。

〔評価基準〕
○:初期粒径からの変化率が10%未満
△:初期粒径からの変化率が10%以上、20%未満
×:初期粒径からの変化率が20%以上
Figure 2015168742
Figure 2015168742
上記表中に略号で示した成分の詳細は次のとおりである。
・13BD:1,3−ブタンジオール
・MBD:3−メチル−1,3−ブタンジオール
・EHD:2−エチル−1,3−ヘキサンジオール
・KM−72F:自己乳化型シリコーン消泡剤(信越シリコーン社製)
・AEPD:2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール
・Proxel GXL:1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン・ジプロピレングリコール20%水溶液(アビシア社製)
・界面活性剤:〔化4〕で表される化合物
表1、表2の結果から、着色剤としてカーボンブラックとその補色顔料を含み、前記カーボンブラック又はその補色顔料の少なくとも一方が自己分散型であると、黒色度に優れ、かつ保存安定性に優れるインクが得られることが分かる。
また、請求項2のカーボンブラック含有量及び補色顔料含有量の要件を満たすと黒色度が一層優れることが分かる。
また、補色顔料として、C.I.ピグメントブルー15:3やC.I.ピグメントレッド122を含むと、一層黒色度に優れ、かつ保存安定性に優れることが分かる。
101 装置本体
102 給紙トレイ
103 排紙トレイ
104 インクカートリッジ装填部
105 操作部
111 上カバー
112 前カバーの前面
115 前カバー
131 ガイドロッド
132 ステー
133 キャリッジ
134 記録ヘッド
135 サブタンク
141 用紙載置部
142 用紙
143 給紙コロ
144 分離パッド
145 ガイド
151 搬送ベルト
152 カウンタローラ
153 搬送ガイド
154 押さえ部材
155 加圧コロ
156 帯電ローラ
157 搬送ローラ
158 テンションローラ
161 ガイド部材
171 分離爪
172 排紙ローラ
173 排紙コロ
181 両面給紙ユニット
182 手差し給紙部
200 インクカートリッジ
241 インク袋
242 インク注入口
243 インク排出口
244 カートリッジケース
特許第3859109号公報

Claims (3)

  1. 少なくとも着色剤としてのカーボンブラックとその補色顔料、水溶性有機溶媒及び水を含有し、前記カーボンブラックと補色顔料の少なくとも一方が自己分散型であることを特徴とするインクジェット記録用ブラックインク。
  2. インク全量中のカーボンブラック含有量が2〜10質量%、補色顔料含有量がカーボンブラック量に対して0.01〜0.2質量%であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用ブラックインク。
  3. 前記補色顔料として、C.I.ピグメントブルー15:3及び/又はC.I.ピグメントレッド122を含むことを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録用ブラックインク。
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