JP5583375B2 - 水性インク組成物および画像形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水性インク組成物および画像形成方法に関する。
水を主たる媒体として含み、紫外線などの活性放射線の照射により硬化可能なインク組成物、すなわち、水性の活性放射線硬化型インクは、画像の印刷、被記録媒体に印刷適性を付与するための前処理や、印刷された画像の保護・装飾等の後処理などに好適に使用できる。また、水を主成分とするために安全性が高い。近年、このような水性の活性放射線硬化型インクをインクジェット記録用インク組成物として用い、高感度で硬化し、高画質の画像を形成することが求められている。
しかしながら、インクジェット記録方式に用いられるインクとして必要な経時安定性、吐出性などを満たし、かつ光照射により彩度、印字濃度、耐擦過性、彩度、定着性、耐マーカー性などに優れた硬化膜を形成する水性の活性放射線硬化型インクは得られていない。
インクジェット記録方式に用いられるインクの性能向上には様々な顔料分散剤ポリマーの使用が知られている。例えば、主鎖と直接結合していないベンゼン環を有するポリマーを顔料分散剤として用いたインクが開示され(例えば、特許文献1参照)、経時安定性、吐出性などに優れるとされている。また、水性の活性放射線硬化型インクとして、ベンジルジメチルケタール型の水溶性光開始剤を用い、スチレン/アクリル酸/アクリル酸エチル共重合体を分散剤として用いた架橋性組成物が開示され(例えば、特許文献2参照)、硬化感度が高いとされている。
特開2009−84494号公報 特開2008−247940号公報
しかしながら、特許文献1に記載のインクは、重合性化合物などが含まれておらず、また光硬化などの工程を含まないため、このインクを用いた印画物は耐擦過性、定着性、耐マーカー性などが十分とは言い難い場合があった。
また特許文献2に記載の水性インク溶液では、インクの安定性、吐出性分散性が不十分な場合があり、さらには硬化膜における彩度や印字濃度の点で満足できるものではなかった。
本発明は、印画濃度が高く、彩度、耐擦過性、定着性、耐マーカー性に優れた硬化膜を形成することが可能な水性インク組成物およびこれを用いた画像形成方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 着色剤(A)と、下記一般式(1)で表される疎水性構造単位(a)、酸性基を有する親水性構造単位(b)、及び芳香環を含有しない疎水性構造単位(c)を含有するポリマー(B)と、重合開始剤(C)と、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物(D)と、水(E)と、を含む水性インク組成物。
(一般式(1)中、Rは水素原子、メチル基、またはハロゲン原子を表す。Lは−COO−、−OCO−、−CONR−、−O−、または置換もしくは無置換のフェニレン基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。L は炭素数〜30の2価の連結基を表す。Rは水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールアルキル基、アリールオキシ基、アシル基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基を表す)
<2>前記ポリマー(B)は、ポリマー(B)の全質量に対して25質量%未満の前記親水性構造単位(b)を含有する<1>に記載の水性インク組成物。
<3> 前記ポリマー(B)は、アクリル酸またはメタクリル酸の炭素数1〜6のアルキルエステルに由来する前記疎水性構造単位(c)を含有する<1>または<2>に記載の水性インク組成物。
<4> 前記一般式(1)において、Rが水素原子である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の水性インク組成物。
<5> 前記親水性構造単位(b)は、前記酸性基として、カルボキシル基、リン酸基、およびスルホン酸基より成る群から選ばれる基の少なくとも1種を有する<1>〜<4>のいずれか1つに記載の水性インク組成物。
<6> 前記親水性構造単位(b)は、アクリル酸およびメタクリル酸の少なくとも一方に由来する構造単位を有する<1>〜<5>のいずれか1つに記載の水性インク組成物。
<7> 前記疎水性構造単位(a)は、フェノキシエチルアクリレートおよびフェノキシエチルメタクリレートの少なくとも一方に由来する構造単位を有する<1>〜<6>のいずれか1つに記載の水性インク組成物。
<8> 前記水性構造単位(c)は、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、およびメタクリル酸エチルより成る群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位を含む<1>〜<7>のいずれか1つに記載の水性インク組成物。
<9> 前記着色剤(A)は顔料である<1>〜<8>のいずれか1つに記載の水性インク組成物。
<10> インクジェット記録用である<1>〜<>のいずれか1つに記載の水性インク組成物。
<11> <1>〜<10>のいずれか1つに記載の水性インク組成物を、インクジェット法で被記録媒体上に付与する工程と、
前記被記録媒体上に付与された水性インク組成物に活性放射線を照射する工程と、
を含む画像形成方法。
本発明によれば、印画濃度が高く、彩度、耐擦過性、定着性、耐マーカー性に優れた硬化膜を形成することが可能な水性インク組成物およびこれを用いた画像形成方法を提供することができる。
<水性インク組成物>
本発明の水性インク組成物は、着色剤(A)の少なくとも1種と、下記一般式(1)で表される疎水性構造単位(a)を含有するポリマー(B)の少なくとも1種と、重合開始剤(C)の少なくとも1種と、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物(D)の少なくとも1種と、水(E)と、を含み、必要に応じてその他の成分をさらに含んで構成される。
かかる構成の水性インク組成物であることで、印画濃度が高く、彩度、耐擦過性、定着性、耐マーカー性に優れた硬化膜を、例えば、光照射により形成することができる。
一般式(1)中、Rは水素原子、メチル基、またはハロゲン原子を表す。Lは−COO−、−OCO−、−CONR−、−O−、または置換もしくは無置換のフェニレン基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。Lは単結合または炭素数1〜30の2価の連結基を表す。Rは水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールアルキル基、アリールオキシ基、アシル基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基を表す。
但し、本発明においては、ポリマー(B)として、酸性基を有する親水性構造単位(b)、及び芳香環を含有しない疎水性構造単位(c)を含有するポリマーを適用し、また、一般式(1)中のL は、炭素数2〜30の2価の連結基を表すこととする。
本発明の水性インク組成物は、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクを用いることができ、また、色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。また、イエロー、マゼンタ、シアン色調インク以外のレッド、グリーン、ブルー、白色インクやいわゆる印刷分野における特色インク(例えば無色)等を用いることができる。
(A)着色剤
本発明の水性インク組成物は、着色剤の少なくとも1種を含む。
本発明における着色剤としては、公知の染料、顔料等を特に制限なく用いることができる。中でも、インク着色性の観点から、水に殆ど不溶であるか、又は難溶である着色剤であることが好ましい。具体的には例えば、各種顔料、分散染料、油溶性染料、J会合体を形成する色素等を挙げることができ、更に、耐光性の観点から顔料であることがより好ましい。
本発明における顔料としては、その種類に特に制限はなく、従来公知の有機及び無機顔料を用いることができる。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
また前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。なお、前記カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
本発明に用いることができる顔料として具体的には、例えば、特開2007−100071号公報の段落番号[0142]〜[0145]に記載の顔料などが挙げられる。
中でも、着色性と色相の観点から、イエロー色調インクに含まれる顔料としてはC.I.ピグメントイエロー74(PY74)が好ましく、マゼンタ色調インクに含まれる顔料としてはC.I.ピグメントレッド122(PR122)が好ましく、シアン色調インクに含まれる顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:3(PB15:3)が好ましい。またブラック色調インクに含まれる顔料としてはカーボンブラックが好ましい。
本発明の水性インク組成物における顔料の含有率は、目的に応じて適宜設定することができるが、純顔料分(表面処理剤や、分散剤を含まない)として、水性インク組成物全量に対して質量基準で0.3〜10%の範囲であることが好ましい。顔料粒子の分散状態にも依存するが、顔料の含有率が概ね0.3〜1%の範囲であると淡色のインクとして使用することができる。またそれ以上の含有率であると、一般のカラー着色用に用いられる。
(B)ポリマー
本発明の水性インク組成物は、ポリマー(B)の少なくとも1種含み、該ポリマー(B)は下記一般式(1)で表される疎水性構造単位(a)の少なくとも1種を含有する。
前記ポリマー(B)は、例えば、前記着色剤(好ましくは、顔料)の分散剤として用いることができる。特定の構造単位を含むポリマー(B)を用いることで、顔料の分散性が高まり、硬化膜の光沢性や色再現性をよくすることができる。さらに水性インク組成物の安定性が保たれ、保存性が向上する。さらに本発明の水性インク組成物をインクジェット法に適用する場合には、水性インク組成物のノズルへの固着を抑制し、吐出性を向上させることができる。
(a)疎水性構成単位
下記一般式(1)で表される疎水性構造単位(a)は、主鎖を形成する原子に連結基を介して芳香環を含有する構造を有している。このような形態を有することで、例えば、ポリマー(B)に含まれることがある親水性構造単位と、疎水性の芳香環との間の適切な距離が維持されるため、ポリマー(B)と着色剤(A)とに相互作用が生じやすくなり、ポリマー(B)が着色剤(A)により強固に吸着し、その結果、分散性がより向上すると考えることができる。
一般式(1)中、Rは水素原子、メチル基、またはハロゲン原子を表す。
は−COO−、−OCO−、−CONR−、−O−、または置換もしくは無置換のフェニレン基を表す。ここで例えば、「−COO−」という記載は、カルボニル炭素が主鎖側で、アルコール性酸素原子がL側であることを意味する。Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。
本発明におけるLは、安定性、保存性、吐出性の観点から、−COO−であることが好ましい。
は単結合または炭素数1〜30の2価の連結基を表すが、安定性、保存性、吐出性の観点から、炭素数2〜25の連結基であることが好ましく、炭素数2〜20の連結基であることがより好ましく、炭素数2〜12の連結基であることがより好ましい。前記Lで表される2価の連結基は、飽和結合のみからなるものであっても、不飽和結合を含むものであってよい。また、直鎖構造でも、分岐構造でもよく、環構造を有していてもよく、置換基をさらに有していてもよい。さらに炭素原子に加えて、酸素原子、窒素原子、およびイオウ原子より選ばれるヘテロ原子を含有しても良い。
で表される2価の連結基の具体例としては、アルキレン基、オキシアルキレン基等を挙げることができ、安定性、保存性、吐出性の観点から、オキシアルキレン基であることが好ましい。
は水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールアルキル基、アリールオキシ基、アシル基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基を表す。またRの置換位置は特に制限はなく、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよい。
本発明におけるRは、安定性、保存性、吐出性の観点から、水素原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールアルキル基、アリールオキシ基、またはアシル基であることが好ましい。より好ましくは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ベンジル基、フェノキシ基、アセチル基、またはベンゾイル基であり、さらに好ましくは水素原子、フェニル基、ベンジル基、フェノキシ基、またはベンゾイル基であり、特に好ましくは水素原子である。
上記一般式(1)で表される疎水性構造単位の中でも、Rが水素原子またはメチル基であり、Lが−COO−であり、Lが炭素数2〜20の2価の連結基であり、Rが水素原子である疎水性構造単位が好ましく、Rが水素原子またはメチル基であり、Lが−COO−であり、Lが炭素数2〜12のアルキレン基またはオキシアルキレン基を含む2価の連結基であり、Rが水素原子である疎水性構造単位がより好ましい。
本発明におけるポリマー(B)は、前記一般式(1)で表される疎水性構造単位(a)を1種のみ含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
上記一般式(1)で表される疎水性構造単位の好ましい態様に対応するモノマーとしては、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、ならびに、オリゴ(繰り返し単位数が2〜6程度)エチレングリコールモノフェニルエーテルアクリレート類およびメタクリレート類が挙げられる。これらのなかでも、安定性、保存性、吐出性の観点から、2−フェノキシエチルアクリレートおよび2−フェノキシエチルメタクリレートが好ましく、特に好ましいのは2−フェノキシエチルメタクリレートである。
本発明において、前記一般式(1)で表される疎水性構造単位(a)は、芳香環の種類によっても異なるが、ポリマー(B)の全質量のうち25質量%以上83質量%未満であることが好ましく、30質量%以上80質量%未満であることがより好ましく、40質量%以上75質量%未満であることが特に好ましい。
また、前記一般式(1)で表される疎水性構造単位(a)が、フェノキシエチルアクリレートまたはフェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位である場合、前記フェノキシエチルアクリレートに由来する構造単位及びフェノキシエチルメタクリレートに由来する構造単位の合計のポリマー(B)に占める含有率は40質量%以上53質量%以下であることが好ましく、42質量%以上53質量%以下であることがより好ましく、45質量%以上53質量%以下であることが特に好ましい。
(b)親水性構造単位
本発明におけるポリマー(B)は、安定性、保存性、吐出性の観点から、上記疎水性構造単位(a)に加えて、親水性構造単位(b)の少なくとも1種をさらに含むことが好ましく、前記親水性構造単位(b)をポリマー(B)の全質量に対して25質量%未満含むことがより好ましい。さらに前記親水性構造単位(b)のポリマー(B)の全質量に対する含有率は、2質量%以上25質量%未満であることが好ましく、5質量%以上22質量%以下であることがより好ましく5質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。
前記親水性構造単位は、親水性基の少なくとも1種を含有する構造単位であれば特に制限はなく、また前記親水性基はノニオン性であってもイオン性基であってもよい。本発明においては、安定性、保存性、吐出性の観点から、イオン性基の少なくとも1種を含むことが好ましく、カルボキシル基、リン酸基およびスルホン酸基から選ばれるイオン性基の少なくとも1種を含むことがより好ましく、カルボキシル基を含むことがさらに好ましい。
イオン性基を含有する親水性構造単位(b)は、イオン性基含有モノマーを重合することにより形成することができるが、イオン性基を有さないポリマーの重合後、該ポリマー鎖にイオン性基を導入することで形成してもよい。
本発明に用いることができるイオン性基含有モノマーの例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。
アニオン性基含有モノマーのうち、カルボキシル基を含むものとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等の不飽和カルボン酸モノマー類及び、β−カルボキシエチルアクリル酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられ、スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸エステル、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、例えば、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
これらのうちでは、インク粘度及び吐出性の観点から、不飽和カルボン酸モノマー類が好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸が特に好ましく、メタクリル酸が最も好ましい。なお、イオン性基含有モノマーは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明におけるポリマー(B)がカルボキシル基等の酸性基を含有する場合、ポリマー(B)の酸価は13mgKOH/g以上、163mgKOH/g以下であることが好ましく、32mgKOH/g以上、144mgKOH/g以下であることがより好ましく、32mgKOH/g以上、131mgKOH/g以下であることが最も好ましい。なお、ここでいう酸価とは、ポリマー(B)の1gを完全に中和するのに要するKOHの質量(mg)で定義され、JIS規格(JISK0070:1992)記載の方法で測定することができ、本発明においてはこれを採用する。
(c)構造単位
本発明におけるポリマー(B)は、前記疎水性構造単位(a)とは異なる構造を有する疎水性の構造単位(c)(以下、単に「構造単位(c)」ともいう)の少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。
前記構造単位(c)は、前記一般式(1)で表される疎水性構造単位以外の構造を有していれば特に制限はなく、芳香環を含有する構造単位であっても、芳香環を含有しない構造単位であってもよい。
また単一の構造単位から成っても、2種類以上の構造単位を含んでいてもよい。
前記ポリマー(B)が前記構造単位(c)を含むことで、ポリマー(B)で分散された着色剤(A)は良好な分散性を示す。その機構は詳しくは不明だが、下記のように推測している。例えば、前記ポリマー(B)は主として着色剤との親和性を示す疎水性構造単位(a)と、主として水性媒体との親和性を示す親水性構造単位(b)という、いわば相反する性質の構造単位を含む。仮にポリマー(B)がこれらのみで形成された場合には、疎水性構造単位(a)、親水性構造単位(b)のそれぞれが互いの機能を阻害し、結果分散性が不十分となってしまう可能性が考えられる。ポリマー(B)が、疎水性構造単位(a)と親水性構造単位(b)との中間的な性質を示す構造単位(c)を含有することで、このような問題は緩和され、良好な分散性を示すと考えることができる。
本発明において構造単位(c)が芳香環を含有する構造単位の場合、前記芳香環は、主鎖を形成する原子に連結基を介して結合していても、主鎖を形成する原子に直接結合していてもよい。
前記芳香環としては、置換または無置換のベンゼン環、置換または無置換のナフタレン環であることが好ましく、置換または無置換のベンゼン環がより好ましく、無置換のベンゼン環が着色剤(A)の分散性、入手性、汎用性の観点から、特に好ましい。また置換基としてはアルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールアルキル基、アリールオキシ基、アシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等が挙げられ、アリール基、アリールアルキル基、アリールオキシ基、アシル基が好ましい。
前記構造単位(c)は、これに対応するモノマーを重合することにより形成することができる。また、ポリマーの重合後に、ポリマー鎖に疎水性官能基を導入して形成してもよい。
前記構造単位(c)を形成するモノマーは、前記疎水性構造単位(a)および親水性構造単位(b)と共重合体を形成しうる官能基と、疎水性の官能基とを有していれば特に制限はなく、公知のモノマー類を特に制限なく用いることができる。
前記構造単位(c)を形成しうるモノマーとしては、入手性、取り扱い性、汎用性の観点から、ビニルモノマー類(例えば、(メタ)アクレート類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、ビニルエステル類等)が好ましい。
前記ビニルモノマー類の例として、(メタ)アクリレート類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらのうち(メタ)アクリル酸の炭素数1〜6のアルキルエステルが好ましく、炭素数1〜4のアルキルエステルがより好ましい。
(メタ)アクリルアミド類としては、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチルアクリル(メタ)アミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ビニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド、N−アリル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類が挙げられ、中でも、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
スチレン類としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、n−ブチルスチレン、tert−ブチルスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、およびα−メチルスチレン、ビニルナフタレン等などが挙げられ、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
ビニルエステル類としては、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、および安息香酸ビニルなどのビニルエステル類が挙げられ、中でも、ビニルアセテートが好ましい。
本発明における構造単位(c)は、安定性、保存性、吐出性の観点から、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜6のアルキルエステル(炭素数1〜6のアルコールと(メタ)アクリル酸から構成されるエステル)が好ましく、炭素数1〜4のアルキルエステルに由来する構造単位であることが特に好ましく、これらの中でもアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、又はメタクリル酸エチルに由来する構造単位であることがさらにも好ましく、メタクリル酸メチルに由来する構造単位であることが最も好ましい。
本発明におけるポリマー(B)は、各構造単位が不規則的に導入されたランダム共重合体であっても、規則的に導入されたブロック共重合体であってもよく、ブロック共重合体である場合の各構造単位は、如何なる導入順序で合成されたものであってもよく、同一の構成成分を2度以上用いてもよいが、ランダム共重合体であることが汎用性、製造性の点で好ましい。
本発明におけるポリマー(B)は、定着性および彩度の観点から、前記一般式(1)におけるRが水素原子またはメチル基であって、Lが−COO−であって、Lが炭素数2〜20の2価の連結基であって、Rが水素原子である疎水性構造単位を30〜80質量%と、アニオン性の親水性構造単位を5〜22質量%と、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜6のアルキルエステルに由来する構造単位とを含んで構成されることが好ましく、前記一般式(1)におけるRが水素原子またはメチル基であって、Lが−COO−であって、Lが炭素数2〜12のアルキレン基またはオキシアルキレン基を含む2価の連結基であって、Rが水素原子である疎水性構造単位を40〜75質量%と、アニオン性の親水性構造単位を5〜20質量%と、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜4のアルキルエステルに由来する構造単位とを含んで構成されることがより好ましい。
また本発明におけるポリマー(B)は、安定性、保存性、および吐出性の観点から、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、およびオリゴ(繰り返し単位数が2〜6程度)エチレングリコールモノフェニルエーテル(メタ)アクリレート類から選ばれるモノマーに由来する構造単位を30〜80質量%と、アニオン性の親水性構造単位と、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜6のアルキルエステルに由来する構造単位とを含み、酸価が13〜163mgKOH/gであることが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、およびオリゴ(繰り返し単位数が2〜6程度)エチレングリコールモノフェニルエーテル(メタ)アクリレート類から選ばれるモノマーに由来する構造単位を40〜75質量%と、アニオン性の親水性構造単位と、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜4のアルキルエステルに由来する構造単位とを含み、酸価が32〜144mgKOH/gであることがより好ましい。
さらに、本発明で用いるポリマー(B)の分子量範囲は、重量平均分子量(Mw)で、好ましくは1万〜30万であり、より好ましくは2万〜20万であり、最も好ましくは3万〜10万である。
前記分子量を上記範囲とすることにより、分散剤としての立体反発効果が良好な傾向となり、また立体効果により着色剤への吸着に時間がかからなくなる傾向の観点から好ましい。また前記分子量を10万以下とすることでより溶液粘度が高くなりにくく、取り扱いが容易となり、3万以上にすることで、経時安定性がより向上する。
また、本発明で用いるポリマーの分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で表される)は、1〜6であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。
前記分子量分布を上記範囲とすることにより、顔料の分散時間の短縮、及び分散物の経時安定性の観点から好ましい。ここで数平均分子量及び、重量平均分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用い換算して表した分子量である。
本発明に用いられるポリマーは、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合により合成することができる。重合反応は回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行うことができる。
重合の開始方法はラジカル開始剤を用いる方法、光または放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶剤の単独あるいは2種以上の混合物でも良いし、水との混合溶媒としても良い。
重合温度は生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、通常、0℃〜100℃程度であるが、50〜100℃の範囲で重合を行うことが好ましい。
反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は、1〜100kg/cm、特に、1〜30kg/cm程度が好ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。得られたポリマーは再沈殿などの精製を行っても良い。
本発明におけるポリマー(B)として好ましい具体例を以下に示すが、本発明は以下に限定されるものではない。
本発明における前記ポリマーの含有率としては特に制限はないが、前記着色剤との混合比(着色剤:ポリマー、質量基準)として、1:0.06〜1:3の範囲が好ましく、1:0.125〜1:2の範囲がより好ましく、更に好ましくは1:0.125〜1:1.5である。
本発明においては前記着色剤が前記ポリマーによって分散されて着色粒子の分散物を構成していることが好ましい。前記着色粒子は、例えば、前記着色剤と前記ポリマーと該ポリマーを溶解または分散する有機溶剤との混合物に、塩基性物質を含む水溶液を加える工程(混合・水和工程)の後、前記有機溶剤を除く工程(溶剤除去工程)を設けて分散物として製造することができる。これにより、着色剤が微細に分散され、保存安定性に優れた着色粒子の分散物を作製することができる。
有機溶剤は、前記ポリマーを溶解または分散できることが必要であるが、これに加えて水に対してある程度の親和性を有することが好ましい。具体的には、20℃下で水に対する溶解度が10質量%以上50質量%以下であるものが好ましい。
前記着色粒子の分散物は、更に詳細には、下記の工程(1)、(2)よりなる製造方法で製造することができるが、これに限定されるものではない。
工程(1):着色剤、ポリマー、及び該ポリマーを溶解または分散する有機溶剤と共に、塩基性物質を含み、水を主成分とする溶液を含有する混合物を分散処理する工程
工程(2):前記有機溶剤の少なくとも一部を除去する工程
前記工程(1)では、まず、ポリマーを有機溶剤に溶解または分散させて混合物を得る(混合工程)。次に、着色剤、塩基性物質を含み、水を主成分とする溶液、水、及び必要に応じて界面活性剤等を、前記混合物に加えて混合、分散処理し、水中油型の分散物を得る。
前記塩基性物質は、ポリマーが有することがあるアニオン性基(好ましくは、カルボキシル基)の中和に用いられる。前記アニオン性基の中和度には、特に限定がない。通常、最終的に得られる着色剤粒子の分散物の液性が、例えばpHが4.5〜10であるものが好ましい。前記ポリマーの望まれる中和度により、pHを決めることもできる。
前記着色剤粒子の分散物の製造方法で用いる着色剤、ポリマー、及びその他の添加剤は、既述の着色剤粒子の項において述べたものと同義であり、好ましい例も同様である。
前記有機溶剤の好ましい例としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒が挙げられる。これらのうちアルコール系溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、第3級ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、イソプロパノール、アセトン及びメチルエチルケトンが好ましく、特に、メチルエチルケトンが好ましい。有機溶剤は、1種単独で用いても複数併用してもよい。
前記着色粒子の分散物の製造においては、二本ロール、三本ロール、ボールミル、トロンミル、ディスパー、ニーダー、コニーダー、ホモジナイザー、ブレンダー、単軸若しくは2軸の押出機等を用いて、強い剪断力を与えながら混練分散処理を行なうことができる。なお、混練、分散についての詳細は、T.C. Patton著”Paint Flow and Pigment Dispersion”(1964年 John Wiley and Sons社刊)等に記載されている。
また、必要に応じて、縦型もしくは横型のサンドグラインダー、ピンミル、スリットミル、超音波分散機等を用い、0.01〜1mmの粒径のガラス、ジルコニア等でできたビーズを用いた微分散処理を行うことにより得ることができる。
本発明における着色粒子の分散物の製造方法における有機溶剤の除去は、特に方法が限定されるものではなく、減圧蒸留等の公知に方法により除去できる。
本発明における着色粒子の体積平均粒径としては、10nm以上200nm未満が好ましく、50nm以上130nm未満がより好ましく、60nm以上100nm未満がさらに好ましい。体積平均粒径が前記範囲内であることにより、発色性、分散安定性、インクジェット法における吐出安定性が良好となる。着色粒子の体積平均粒径は、動的光散乱法を用いて測定される値である。
(C)重合開始剤
本発明の水性インク組成物は、重合開始剤(C)の少なくとも1種を含む。
前記重合開始剤は熱重合開始剤、光重合開始剤のいずれであってもよいが、光重合開始剤であることが好ましい。また重合開始剤は、水不溶性の重合開始剤を水分散させたもの、水溶性の重合開始剤のいずれであっても使用可能であるが、水溶性の重合開始剤であることが好ましい。
尚、ここでいう水溶性とは、25℃において蒸留水に0.5質量%以上溶解することを意味する。前記水溶性の重合開始剤は、25℃において蒸留水に1質量%以上溶解することが好ましく、3質量%以上溶解することがより好ましい。
前記重合開始剤としては、アセトフェノン類、α−アミノケトン類、ベンゾフェノン類、アルキルフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジアルキルケタール類、チオキサントン類、アシルホスフィンオキシド類、金属錯体、p−ジアルキルアミノ安息香酸、アゾ化合物、およびパーオキシド化合物等を挙げることができる。中でも、アセトフェノン類、α−アミノケトン類、ベンジル類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジアルキルケタール類、チオキサントン類、およびアシルホスフィンオキシド類が好ましく、α−アミノケトン類、アシルホスフィンオキシド類、およびアルキルフェノン類がより好ましい。
前記α−アミノケトン類に包含される化合物の例としては、2−メチル−1−フェニル−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(ヘキシル)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−エチル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1等が挙げられる。
また、チバ・ジャパン社製のイルガキュアシリーズ、例えばイルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379等の如き市販品としても入手可能であり、これらもα−アミノケトン類に包含される化合物であり、本発明に好適に使用しうる。
前記アシルホスフィンオキシド類に包含される化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。
前記アルキルフェノン類に包含される化合物の例としては、2,2−ジメトキシ1,2−ジフェニルエタン1−1オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1等が挙げられる。これらは、チバ・ジャパン社製のイルガキュアシリーズ、例えばイルガキュア651、イルガキュア184、イルガキュア1173、イルガキュア2959、イルガキュア127等の如き市販品としても入手可能であり、本発明に好適に使用しうる。
さらに光重合開始剤の例としては、加藤清視著「紫外線硬化システム」(株式会社総合技術センター発行:平成元年)の第65〜148頁に記載されている光重合開始剤などを挙げることができる。これらの光重合開始剤は1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、増感剤と併用しても良い。
また、光重合開始剤は、80℃まで熱分解を起こさないものであることが好ましい。80℃以下で熱分解を起こす開始剤を用いると、製品保存上問題があるため好ましくない。
本発明において重合開始剤(C)は1種単独でも2種以上を組合せて用いてもよい。
本発明の水性インク組成物における重合開始剤(C)の含有率は、水性インク組成物全量に対して、質量基準で0.1〜7%であることが好ましく、0.3〜5%であることがより好ましい。
また、本発明の水性インク組成物における重合開始剤(C)の含有量は、後述するエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物(D)100質量部に対して、好ましくは0.01〜35質量部、より好ましくは0.1〜30質量部、さらに好ましくは0.5〜30質量部の範囲で含有されるのが適当である。なお、ここで重合開始剤の含有量とは、重合開始剤の総含有量を意味する。
(D)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物
本発明のインク組成物は、エチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物(D)の少なくとも1種を含む。前記エチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物(D)は、水不溶性の化合物であっても水溶性の化合物であってもよいが、エチレン性不飽和二重結合を有する水溶性の重合性化合物(以下、「特定重合性化合物」と称することがある)であることが好ましい。
前記特定重合性化合物は、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であれば、どのようなものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態を持つものが含まれる。特定重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。好ましくは2種以上併用して用いることが、反応性、物性などの性能を制御する上で好ましい。またインクの吐出安定性の観点から、水に対する溶解性が良く、且つ、水性インク組成物中に析出しにくい化合物を用いることが好ましい。
本発明で用いられる特定重合性化合物は、25℃において蒸留水に2質量%以上溶解するものであるが、15質量%以上溶解することが好ましく、任意の割合で水と均一に混合するものが特に好ましい。
特定重合性化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、およびマレイン酸等の不飽和カルボン酸、ならびに、そのエステル誘導体、アミド誘導体およびその塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン、ビニルエーテル、アリルエーテル等が挙げられる。中でも、アクリル酸およびメタクリル酸、ならびに、そのエステル誘導体、アミド誘導体およびその塩から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アクリル酸のモノエステルおよびメタクリル酸のモノエステル(以下、「モノアクリレート」ということがある)、アクリル酸とポリオール化合物とのエステルおよびメタクリル酸とポリオール化合物とのエステル(以下、「多官能アクリレートモノマー」または「多官能アクリレートオリゴマー」ということがある)、アクリルアミドおよびメタクリルアミドならびにその誘導体から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
本発明で用いられる特定重合性化合物は水溶性を付与するために、ポリ(エチレンオキシ)鎖、ポリ(プロピレンオキシ)鎖、あるいはイオン性基(例えばカルボキシル基、スルホ基など)、水酸基を有することが好ましい。ポリ(エチレンオキシ)鎖、ポリ(プロピレンオキシ)鎖を有する場合はエチレンオキシ、およびプロピレンオキシのユニットの数は1〜10の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜5の範囲である。ユニットの数が10以下であることで硬化した時の皮膜の硬度や被記録媒体に対する密着性等が向上する。
また、感度、滲み、被記録媒体との密着性をより改善するためには、特定重合性化合物として、モノアクリレートと、分子量400以上、好ましくは500以上の多官能アクリレートモノマー又は多官能アクリレートオリゴマーを併用することが好ましい。特に、PETフィルムやPPフィルムといった柔軟な被記録媒体への記録に使用するインク組成物においては、上記化合物群の中から選ばれるモノアクリレートと、多官能アクリレートモノマー又は多官能アクリレートオリゴマーとの併用は、膜に可撓性を持たせて密着性を高めつつ、膜強度を高められるため好ましい。
さらに、単官能、2官能、および3官能以上の多官能モノマーの少なくとも3種の特定重合性化合物を併用する態様が、安全性を維持しつつ、更に、感度、滲み、被記録媒体との密着性をより改善することができるという観点から好ましい。
特定重合性化合物の特に好ましい具体例としては、例えば、以下に示す構造の化合物が挙げられるが、本発明で使用する特定重合性化合物はこれらに限定されるものではない。
また上記例示化合物以外に、メタクリル酸、3-スルホプロピルアクリレートのカリウム塩などのイオン性基を有する化合物も好ましく用いられる。
本発明の水性インク組成物におけるエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物(D)の含有率としては、水性インク組成物全量に対して、質量基準で1〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがより好ましい。
(E)水
本発明の水性インク組成物において、主たる溶媒として用いる水は、イオン交換水、蒸留水などのイオン性不純物を含まない水を用いることが好ましい。
本発明の水性インク組成物における水の含有率は、目的に応じて適宜選択されるが、通常、10〜95質量%であることが好ましく、30〜90質量%であることがより好ましい。
(有機溶剤)
本発明の水性インク組成物は水を溶媒として含むが、有機溶剤の少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。有機溶剤を含むことにより、水性インク組成物に不揮発性を与え、粘度を低下させ、且つ、被記録媒体への濡れ性を向上することができる。
前記有機溶剤は乾燥防止剤、湿潤剤あるいは浸透促進剤などの目的で用いられる。
乾燥防止剤は、インク噴射口におけるインクの乾燥によって発生し得るノズルの目詰まりを効果的に防止することができる。また乾燥防止剤は、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶媒であることが好ましい。
乾燥防止剤の具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体等が挙げられる。中でも、乾燥防止剤としては、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールが好ましい。また、上記の乾燥防止剤は単独で用いても、2種以上併用しても良い。
浸透促進剤は、インク組成物を記録媒体(印刷用紙)により良く浸透させる目的で、好適に使用される。
浸透促進剤の具体的な例としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を好適に用いることができる。また、浸透促進剤は、印画の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲内で、使用されることが好ましい。
また、水溶性有機溶媒は、上記以外にも、粘度の調整に用いることができる。粘度の調整に用いることができる水溶性有機溶媒の具体的な例としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。
本発明において前記有機溶剤としては、インクジェット記録適性においても高い実績を有するグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコールあるいはこれらの混合物から選択するのが好ましい。
本発明において前記有機溶剤は、通常は水性インク組成物全体に対して、質量基準で0.5〜5%含有されることが好ましい。
また本発明の水性インク組成物における水の含有率は、目的に応じて適宜選択されるが、通常、10〜95質量%であることが好ましく、30〜90質量%であることがより好ましい。
(表面張力調整剤)
本発明の水性インク組成物は、表面張力調整剤の少なくとも1種含むことが好ましい。表面張力調整剤を含むことで、画像形成方法に応じた適切な表面張力に調整することができる。例えば、水性インク組成物をインクジェット記録方式に用いる場合、水性インク組成物の表面張力を、特に普通紙上で高品位、高濃度の画像が形成できるよう、硬化と浸透のバランスの観点において最適化することができる。
表面張力調整剤としてはノニオン、カチオン、アニオン、ベタイン界面活性剤が挙げられる。表面張力の調整剤の添加量は、インクジェットで良好に打滴するために、本発明のインクの表面張力を20〜60mN/mに調整する量が好ましく、より好ましくは20〜45mN/m、更に好ましくは25〜40mN/mに調整できる量である。
本発明における界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等が有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれも使用することができる。更には、高分子化合物(例えば、高分子分散剤)を界面活性剤としても使用することもできる。
アニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテ硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、t−オクチルフェノキシエトキシポリエトキシエチル硫酸ナトリウム塩等が挙げられ、これらの1種、又は2種以上を選択することができる。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、t−オクチルフェノキシエチルポリエトキシエタノール、ノニルフェノキシエチルポリエトキシエタノール等や、アセチレングリコール系界面活性剤(例えば、SURFYNOLS(AirProducts&ChemicaLs社)やオルフィン(日信化学工業(株)製)等)が挙げられ、これらの1種、又は2種以上を選択することができる。
カチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられ、具体的には、例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド等が挙げられる。
水性インク組成物に添加する界面活性剤の量は、特に限定されるものではないが、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは1〜3質量%である。
(樹脂粒子)
本発明の水性インク組成物は、印刷物の定着性、耐擦性を高める目的で樹脂粒子をさらに含有してもよい。本発明に用いられることができる樹脂粒子としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、パラフィン系樹脂、フッ素系樹脂等あるいはそのラテックスを用いることができる。アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂を好ましい例として挙げることができる。
また樹脂粒子はラテックスの形態で用いることもできる。
樹脂粒子の重量平均分子量は1万以上、20万以下が好ましく、より好ましくは10万以上、20万以下である。
また樹脂粒子の平均粒径は、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましく、20〜100nmの範囲が更に好ましく、20〜50nmの範囲が特に好ましい。
樹脂粒子のガラス転移温度Tgは30℃以上であることが好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。
樹脂粒子の添加量は水性インク組成物に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましく、0.1〜15質量%がさらに好ましい。
また、樹脂微子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つ樹脂粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
(その他の添加剤)
本発明において、放射線硬化型の水性インク組成物中に上記の化合物以外に任意の添加剤を含有してもよい。このような添加剤の例として、pH調整剤、レベリング剤、粘度調整剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、防腐剤、防かび剤等が含まれる。使用する場合には通常は水性インク組成物全体に対して、質量基準で0.1〜5%含有させる。
本発明の水性インク組成物を、例えば、インクジェット記録方式に適用する場合、粘度としては、5mPa・s以上15mPa・s以下の範囲であることが好ましい。微細な高密度高駆動周波数ノズルを備えるインクジェット記録方式の場合には、その上限は、10mPa・sとなることが好ましい。
水性インク組成物の粘度は、例えば、20℃でブルックフィールド粘度計を用いて測定することができる。
また、表面張力については、普通紙に印字することも鑑みて、35mN/m(dyne/cm)以上50mN/m以下の範囲であることが好ましい。通常の水性インクジェットインクでは、表面張力を30mN/m程度の低い値に調整し、短時間の内に浸透させることによってブリード現象を抑制するが、この場合画像濃度の低下を伴う。これに対し、本発明の水性インク組成物では、硬化により水性インク組成物の流動性を抑制可能なため、表面張力を高くしてインク滴をできるだけ被記録媒体表層に滞留させれば、ブリード、画像濃度ともに満足することが出来る。
画像濃度を確保するためには更に、放射線照射時に、被記録媒体に対してインク滴がある程度濡れている必要があるため、表面張力の上限は50mN/m程度であることがより好ましい。
尚、水性インク組成物の表面張力は、例えば、25℃でプレート法を用いて測定することができる。
<画像形成方法>
本発明の画像形成方法は、前記水性インク組成物を被記録媒体上に付与する工程と、前記被記録媒体上に付与された水性インク組成物に活性放射線を照射する工程とを含み、必要に応じてその他の工程を含んで構成される。
前記構成であることにより、高い印画濃度と、光沢性、耐擦性、定着性、耐マーカー性に優れた画像を形成することができる。
本発明の水性インク組成物を被記録媒体上に付与して画像を形成する方法としては、特に制限はなく公知の画像形成方法を用いることができ、例えば、インクジェット方式、謄写方式、捺転方式等の手段により、被記録媒体に水性インク組成物を付与する方法を挙げることができる。中でも、記録装置のコンパクト化と高速記録性の観点から、本発明の水性インク組成物をインクジェット方式によって付与する工程を含む画像形成方法であることが好ましい。
[インクジェット方式]
インクジェット方式を利用した画像の記録は、具体的には、エネルギーを供与することにより、所望の被記録媒体、すなわち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報等に記載のインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に液体組成物を吐出することにより行なえる。なお、本発明に好ましいインクジェット方式として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法も適用できる。
インクジェット方式は、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。
また、インクジェット方式で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。さらに前記インクジェット法により記録を行う際に使用するインクノズル等についても特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
尚、前記インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
またインクジェット方式として、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、記録媒体の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とがある。ライン方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。
本発明の画像形成方法は、被記録媒体上に付与された水性インク組成物に活性放射線を照射する工程を含む。活性放射線を照射することで水性インク組成物の重合性化合物が重合して、着色剤を含む硬化膜を形成する。
本発明に用いられる活性放射線としては、前記重合性化合物を重合可能なものであれば特に制限はない。例えば、紫外線、電子線等挙げることができ、中でも、汎用性の観点から、紫外線であることが好ましい。
[紫外線照射ランプ]
紫外線を照射する手段としては、通常用いられる手段を用いることができ、特に紫外線照射ランプが好適に使用される。
紫外線照射ランプは、水銀の蒸気圧が点灯中で1〜10Paであるような、いわゆる、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、蛍光体が塗布された水銀灯等が好ましい。これらの水銀ランプにおける紫外線領域の発光スペクトルは、450nm以下、特には184nm〜450nmの範囲であり、黒色或いは、着色された水性インク組成物中の重合性化合物を効率的に反応させるのに適している。また、電源をプリンタに搭載する上でも、小型の電源を使用できるので、適している。水銀ランプには、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンフラッシュランプ、ディープUVランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、UVレーザー等が実用されており、発光波長領域としては上記範囲を含むので、電源サイズ、入力強度、ランプ形状等が許されれば、基本的には適用可能である。光源は、用いる重合開始剤の感度にも合わせて選択する。
必要な紫外線強度は、硬化に有効な波長領域において500〜5000mW/cmであることが好ましい。照射強度が弱いと高い品位、堅牢性を有する画像の形成が達成されない。また、照射強度が強すぎると、被記録媒体がダメージを受けたり、色材の退色を生じたりすることがある。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
但し、本実施例においては、ポリマーB−34含む水性インク組成物F−15を用いた例を、参考例とする。
[合成例1]
下記スキームに従って、ポリマーB−3を合成した。
攪拌機、冷却管を備えた500mlの三口フラスコにメチルエチルケトン33gを加え窒素雰囲気下で75℃に加熱し、ここにメチルエチルケトン70gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート2g、フェノキシエチルメタクリレート50g、メタクリル酸11g、メチルメタクリレート39gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後メチルエチルケトン2gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.2gを溶解した溶液を加えた。その後、78℃に昇温して、そのまま4時間加熱を続けた。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出したポリマーを乾燥してポリマーB−3を95g得た。
得られたポリマーB−3の組成はH−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は41,000であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)記載の方法により、このポリマーB−3の酸価を求めたところ、71.7mgKOH/gであった。
上記ポリマーB−3の合成において、使用したモノマーの種類と使用量を下記表1および下記化学式に示した構成となるようにそれぞれ変更した以外は、上記と同様にしてポリマーB−1、B−2、B−4、B−6〜B−11、B−18およびB−34をそれぞれ合成した。
尚、分子量の調整は、開始剤であるジメチル2,2’−アゾビスイソブチレートの添加量を、酸価の調整はモノマーの仕込み比を調整することで行った。
[合成例2]
(ポリマーD−1)
特開2009−84494号公報の段落番号[0087]〜[0089]に記載の方法に従い、下記スキームのようにして、ポリマーD−1を合成した。得られたポリマーの組成はH−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は36,000であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)記載の方法により、このポリマーの酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
[合成例3]
(比較ポリマーD−2)
攪拌機、冷却管を備えた500mlの三口フラスコにメチルエチルケトン33gを加え窒素雰囲気下で75℃に加熱し、ここにメチルエチルケトン70gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート8g、スチレン66g、ブチルアクリレート10g、アクリル酸24gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後メチルエチルケトン2gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.2gを溶解した溶液を加えた。その後、78℃に昇温して、そのまま4時間加熱を続けた。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出したポリマーを乾燥して比較ポリマーD−2を95g得た。
得られたポリマーの組成はH−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は16,200であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)記載の方法により、このポリマーの酸価を求めたところ、187.0mgKOH/gであった。
[顔料含有樹脂粒子の分散物(顔料分散物(E−3))の調製]
ピグメントブルー15:3(PB15:3、大日精化株式会社製 フタロシアニンブル−A220) 10部と、前記ポリマーB−3のポリマー溶液5部と、メチルエチルケトン42部と、1mol/L NaOH水溶液 6.2部と、イオン交換水87.2部を混合し、ビーズミルで0.1mmΦジルコニアビーズを使い、2〜6時間分散処理した。
得られた分散物を減圧下55℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去することにより、顔料濃度が10.2%の顔料含有樹脂粒子の分散物を得た。さらに、遠心分離機(05P−21、日立製作所製)により30分5000rpmで遠心分離させた後、顔料濃度5%になるようにイオン交換水を添加した。これを2.5μmのメンブレンフィルター(アドバンテック社製)を用いて加圧ろ過した後、顔料濃度4%になるようにイオン交換水を添加し、顔料分散物(E−3)を得た。
[顔料分散物(E−1)、(E−2)、(E−4)〜(E−15)の調製]
顔料分散物(E−3)の調製において、ポリマーB−3およびピグメントブルー15:3に代えて、表2に示したポリマーおよび顔料に変更したこと以外は、上記顔料分散物(E−3)の調製と同様にして、顔料分散物(E−1)、(E−2)、(E−4)〜(E−15)をそれぞれ調製した。表に記載の顔料の詳細は下記の通りである。
・C.I.Pigment Red 122(PR122、チバ・ジャパン(株)製 商品名:CROMOPHTAL Jet Magenta DMQ)
・C.I.Pigment Yellow 74(PY74、チバ・ジャパン(株)製 商品名:Irgalite Yellow GS)
・カーボンブラック(CB、degussa社製 商品名:NIPEX180−IQ)
[顔料分散物(E−16)の調製]
特開2009−84494号公報の段落番号[0091]〜[0093]に記載の方法に従い、ポリマーD−1およびピグメントブルー15:3を用いて顔料分散物(E−16)を調製した。
[顔料分散物(E−17)の調製]
特開2008−247940号公報の段落番号[0072]に記載の方法に従い、カーボンブラック(CB)を用いて顔料分散物(E−17)を調製した。
<実施例1>
水性インク組成物F−3の調製
上記で得られた顔料分散物E−3を用い、下記インク組成に示した各成分を、高速水冷式撹拌機を用いて混合・撹拌して、本発明の水性インク組成物F−3を得た。
〜インク組成〜
・顔料分散物E−3 33部
・重合性化合物:例示化合物2−1 18部
・重合性化合物:例示化合物2−4 2部
・重合開始剤:イルガキュア2959 3部
・オルフィンE1010 1部
・イオン交換水 43部
<実施例2>
水性インク組成物F−1、F−2、F−4〜F−13の調製
実施例1の水性インク組成物の調製において、顔料分散物E−3に代えて、顔料分散物E−1、E−2、E−4〜E−12に変更したこと以外は、実施例1の水性インク組成物F−3の調製と同様にして、本発明の水性インク組成物F−1、F−2、F−4〜F−13をそれぞれ調製した。
<比較例1>
水性インク組成物F−16の調製
特開2009−84494号公報の段落番号0095に記載の方法に従い、顔料分散物E−16を用いて水性インク組成物F−16を調製した。
<比較例2>
水性インク組成物F−17の調製
実施例1において、顔料分散物E−3の代わりに、上記で得られた顔料分散物E−17を用いたこと以外は実施例1と同様にして、水性インク組成物F−17を調製した。
<画像形成および評価>
上記で得られた水性インク組成物を、インクジェット記録装置(セイコーエプソン社製、PX−G930)を用いて、被記録媒体であるFX−L(富士ゼロックス社製)上に、ベタ画像および文字を印画した後、鉄ドープ処理した紫外線ランプ(出力120W/cm)の光線下、1秒間かけて搬送することにより照射を行って、サンプル印画物を得た。
得られたサンプル印画物について、下記の評価を行った。結果を表2に示す。
(1)定着性
上記で得られたサンプル印画物のベタ画像形成面上に、シルボン紙を載せて、40g/cmの加重をかけた状態で、シルボン紙を引っ張って、シルボン紙に汚れが生じるか否かを目視にて観察し、下記評価基準に基づき評価した。
〜評価基準〜
◎・・・擦れによる汚れ部分が殆どみられなかった。
○・・・擦れによる汚れ部分がわずかにみられた。
×・・・擦れによる汚れ部分が目立ち、実用上問題があるレベルだった。
(2)耐擦性
上記で得られたサンプル印画物の文字印画部分に対し、事務用消しゴム(MONO、トンボ鉛筆社製)を用いて、その画像表面を10回往復擦過した。10人の一般評価者が目視で観察し、下記評価基準に基づき評価した。
〜評価基準〜
◎・・・ほぼ原画像の濃度が残存していると評価した人が8人以上だった。
○・・・ほぼ原画像の濃度が残存していると評価した人が4以上7人以下だった。
×・・・ほぼ原画像の濃度が残存していると評価した人が3人以下だった。
(3)耐マーカー性
上記で得られたサンプル印画物の文字印画部分に対し、蛍光イエローペン(BEAMLINERS:ゼブラ社製)を用い、通常の筆圧で1度マークし、印画文字の乱れ有無を目視で観察し、下記評価基準に基づき評価した。
〜評価基準〜
◎・・・マーカーによる文字乱れが殆ど生じなかった。
○・・・マーカーによる文字乱れがわずかに生じた。
×・・・マーカーによる文字乱れが著しく生じた。
(4)彩度
上記で得られたサンプル印画物のベタ印画領域について、光学濃度計X−rite938(X−rite社製)を用いて光学濃度の測定を行い、CIE1976で規定されるL表示系におけるaを求め、下式に従って彩度Cを求め、下記評価基準に基づき評価した。
=((a+(b1/2 (式)
〜評価基準〜
◎・・・彩度(C)が80以上
○・・・彩度(C)が70〜80
×・・・彩度(C)が69以下
−・・・評価せず。
(5)印画濃度
上記で得られたサンプル印画物のベタ印画領域の光学濃度をマクベス濃度計(グレタグマクベス社製、品番:RD914)で測定(25℃)し、下記評価基準に基づき評価した。
〜評価基準〜
○・・・反射濃度が1.0以上であった。
×・・・反射濃度が1.0未満であった。
表2から、本発明の水性インク組成物を用いることで、印画濃度が高く、彩度、耐擦過性、定着性、耐マーカー性に優れた画像を形成できることが分かる。特に、フェノキシエチルメタクリレートを含むポリマーB−1〜B−18を分散剤に用いたF−1〜F−14のような水性インクは特に優れた性能を示すことが分かる。
一方、比較例F−16のような重合性化合物を含まないインクでは定着性、耐擦性、耐マーカー性が悪化し、比較例F−17のような分散剤ポリマーとしてスチレン/アクリル酸/ブチルアクリレート共重合体(D−2)を用いたインクでは、彩度、文字濃度などが劣ることがわかる。

Claims (11)

  1. 着色剤(A)と、下記一般式(1)で表される疎水性構造単位(a)、酸性基を有する親水性構造単位(b)、及び芳香環を含有しない疎水性構造単位(c)を含有するポリマー(B)と、重合開始剤(C)と、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物(D)と、水(E)と、を含む水性インク組成物。

    (一般式(1)中、Rは水素原子、メチル基、またはハロゲン原子を表す。Lは−COO−、−OCO−、−CONR−、−O−、または置換もしくは無置換のフェニレン基を表し、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を表す。Lは炭素数2〜30の2価の連結基を表す。Rは水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルキルオキシ基、アリール基、アリールアルキル基、アリールオキシ基、アシル基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基を表す)
  2. 前記ポリマー(B)は、ポリマー(B)の全質量に対して25質量%未満の前記親水性構造単位(b)を含有する請求項1に記載の水性インク組成物。
  3. 前記ポリマー(B)は、アクリル酸またはメタクリル酸の炭素数1〜6のアルキルエステルに由来する前記疎水性構造単位(c)を含有する請求項1または請求項2に記載の水性インク組成物。
  4. 前記一般式(1)において、Rが水素原子である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
  5. 前記親水性構造単位(b)は、前記酸性基として、カルボキシル基、リン酸基、およびスルホン酸基より成る群から選ばれる基の少なくとも1種を有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
  6. 前記親水性構造単位(b)は、アクリル酸およびメタクリル酸の少なくとも一方に由来する構造単位を有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
  7. 前記疎水性構造単位(a)は、フェノキシエチルアクリレートおよびフェノキシエチルメタクリレートの少なくとも一方に由来する構造単位を有する請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
  8. 前記水性構造単位(c)は、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、およびメタクリル酸エチルより成る群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位を含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
  9. 前記着色剤(A)は顔料である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
  10. インクジェット記録用である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
  11. 請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の水性インク組成物を、インクジェット法で被記録媒体上に付与する工程と、
    前記被記録媒体上に付与された水性インク組成物に活性放射線を照射する工程と、
    を含む画像形成方法。
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