JP2015166119A - エンドミル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】軸体の先端部に複数の底刃を設けたエンドミルにおいて、前記底刃を芯上がりとして前記軸体の回転中心位置に対する進行方向へのシフト量(C)を刃部外径の7〜15%にすると共に、前記底刃のすかし角(θ5)を0.5〜2°に形成することで、切り屑を巻き込まなくなり、表面粗さの悪化や工具の刃先の摩耗やチッピングを防ぐことを特徴としている。また、底刃のすくい角(θ1)を30°以上に形成したことで。剛性が低い渦巻歯の、加工負荷による振動を抑制し、スクロール渦巻体の歯先の表面粗さを良好にしたことを特徴としている。
【選択図】図1
Description
また、この発明の第2の発明に係るエンドミルは、軸体の先端部に複数の底刃を設けたエンドミルにおいて、前記底刃のすくい角(θ1)を30°以上に形成したことを特徴とするものである。
また、この発明の第2の発明によれば、底刃のすくい角(θ1)を30°以上に大きく形成したことで、ワークが例えば剛性が低い渦巻歯の場合などに、加工負荷による振動が抑制され、加工面の表面粗さの悪化を防ぐことができる。
図1は本発明の実施の形態1によるエンドミルの先端部を概略的に示す図であり、(a)は底刃側から軸方向に見た正面図、(b)は側面図である。図2は底刃を芯下がりに配置したエンドミルの例を示す参考図、図3は本発明の実施の形態1によるエンドミルの底刃形状を説明する図であり、(a)はすかし角θ5とすくい面の幅Eを示す要部断面図、(b)は刃物角θ4を示す図である。なお、便宜上各図において、エンドミルの刃の外周部分は回転しているときの軌跡に相当する部分を示している。
まず、エンドミルの特徴について、図1を用いて説明する。エンドミル(超硬エンドミル)1は軸体の一端に複数の底刃4を有する刃部が形成されて成っており、底刃4は逃げ面2とすくい面3で形成されるエッジが刃先を形成している。加工中、エンドミル1は矢印Aの方向に回転しながら、矢印Bの方向に進む。ここで、エンドミル1の底刃4が、図1(a)のように、矢印Bで示す進行方向に対して、工具中心(回転中心軸)より前方にシフトしている場合を「芯上がり」と呼び、そのシフト量をCで表す。
また図1(b)において、エンドミル1の底刃4のすくい角をθ1、ねじれ角をθ2、底刃の逃げ角をθ3と表す。なお、一般的なエンドミルでは、底刃のすくい角θ1は1〜3°程度、底刃の逃げ角θ3は3〜7°程度に設定されている。
ギャッシュランド付きのエンドミルでは、図3(b)に示すように、刃物角θ4が大きく、刃先強度が上がるため耐チッピング性に富む一方、刃先コーナの後退により加工隅部にテーパ部が残るので、隅部の精密仕上げ加工には向かない。
一般的なエンドミルにおいてギャッシュランドを設ける場合、多くはそのときのすくい面の幅Eを、E=0.1〜0.4mm程度としている。この場合の加工隅部は、側面側での削り残し量Fが、すくい面の幅Eと等しい、F=0.1〜0.4mm、底刃側での削り残し量Gが、G=0.015〜0.05mmである。一方、シャープコーナのエンドミルでは、刃先がシャープなので隅部の加工精度が良く、図6に示す様に、ギャッシュランド付きエンドミルで発生するテーパ部の削り残しは発生しないので、精密仕上げ加工に適する一方、刃物角θ4が小さく、刃先強度が小さいため耐チッピング性に劣るという問題がある。
上記式(1)より、θ5を大きくすればするほど表面粗さRzが悪くなる事が分かる。
一般的なエンドミルにおいて、すかし角θ5は3〜5°程度である。
なお、本実施の形態1では、刃部外径(工具径)Dを9mm、底刃を0.8mmの芯上がり、底刃のすくい角θ1を30°、ねじれ角θ2を35°、底刃の逃げ角θ3を10°、すくい面の幅Eを0.5mm、すかし角θ5を1°、に設定している。
図8はスクロール渦巻体の要部形状を示す断面図である。スクロール渦巻体6は、台板7とインボリュート形状の渦巻歯8から成っている。ここで渦巻歯8の先端を歯先9、隣り合う渦巻歯8の間の台板部分を歯底10、と呼ぶ。スクロール圧縮機の運転においては、後述する図9に示すように、それぞれの歯先9が相手の歯底10と摺動し、渦巻歯8の側面が相手側の渦巻歯8の側面と摺動する。この時の摩擦による損失を減らすため、歯先9と歯底10には高い表面粗さが求められる。
ここで、底刃のシフト量Cについて説明する。シフト量Cが小さい場合、工具の回転による振れや、加工負荷の変動により振動が発生した場合、切り屑が工具の中心側から先端側に流れず、切り屑を噛み込む事がある。これを防ぐため、シフト量Cは刃部外径Dの7%以上に設定する必要がある。一方、シフト量Cが大きい場合、工具の特に中心部において製作が困難になる。このため、シフト量Cを15%以下に設定する必要がある。
図11はエンドミルの軸方向の切り込み量が同じ場合に於ける、すかし角θ5が底刃のすくい面に与える影響を説明するための図であり、(a)はすかし角θ5が小さい場合、(b)はすかし角θ5が(a)よりも大きい場合である。図11から明らかなように、すかし角θ5が小さい方が加工に使用する刃底のすくい面3の面積が広い。このため、摩耗やチッピングに対しては、すかし角θ5が小さい方が強い事が分かる。
ここで、すかし角θ5について説明する。すかし角θ5が小さ過ぎると底刃全面がワークに接するため加工負荷が増大し、工具が振動する。そのため、すかし角θ5を0.5°以上に設定する必要がある。一方、すかし角θ5が大き過ぎると、表面粗さが悪化し、さらに摩耗やチッピングに対して弱くなる。そのため、すかし角θ5を2°以下に設定する必要がある。
渦巻歯8は台板7に比べ剛性が低いため、歯先9の加工時の加工負荷の変動により振動し易い。そのため、歯底10より歯先9の方が表面粗さが悪い。従来のエンドミルでは図12(b)に示すように、底刃のすくい角θ1が1〜3°と小さいため、加工開始時の加工負荷が渦巻歯8に対して横方向に加わり、渦巻歯8が振動する。それに比べ図12(a)に示す本実施の形態では、底刃のすくい角θ1を30°と大きく設けているため、加工開始時の加工負荷が斜め上に加わり、渦巻歯8の振動を抑制できる。その結果、良好な歯先9の表面粗さを得ることができる。
ここで、歯底のすくい角θ1が30°未満であれば、歯先9の加工時に渦巻歯8が振動し、表面粗さが悪化する。
また、底刃の逃げ角θ3が小さい場合、底刃の逃げ面と歯先9とが接触する事で加工負荷が増大し、渦巻歯8が振動する事で表面粗さが悪化する。これを防ぐため、底刃の逃げ角θ3を10°以上に設定する必要がある。
さらに、刃物角θ4が小さい場合、エンドミル刃先強度が弱く、チッピングを起こしやすくなる。そのため、刃物角θ4を30°以上に設定する必要がある。
ここで、正面戻しの幅Eについて説明する。正面戻しの幅Eが小さ過ぎる場合、刃先強度が弱くなりチッピングを起こしやすくなる。そのため、正面戻しの幅Eを0.1mm以上に設定する必要がある。正面戻しの幅Eが大き過ぎる場合、ワークの隅部の削り残し量が大きくなってしまう。そのため、正面戻しの幅Eを1.0mm以下に設定する必要がある。
また、底刃のすくい角(θ1)を30°以上に大きく形成したことにより、剛性が低いスクロール渦巻体の歯先の加工において、加工負荷による渦巻歯の振動を抑制しスクロール渦巻体の歯先の良好な表面粗さを得ることができる。
また、底刃の逃げ角(θ3)を10°以上、刃物角(θ4)を30°以上、とした(ただし、刃物角(θ4)=90°−〔すくい角(θ1)〕−〔逃げ角(θ3)〕)ことにより、スクロール渦巻体の歯先の加工において、渦巻歯の振動を抑制し良好な表面粗さを得ることができる。
また、底刃すくい角θ1を大きく形成した上ですくい面の幅Eを大きく形成した事で、ワーク隅部のテーパ状の削り残しをスペック内に収めることが容易となる上に、工具の刃先先端部の摩耗やチッピングを抑制する、といった従来にない顕著な効果を奏するものである。このように、スクロール渦巻体6の歯先9、ならびに歯底10において、良好な表面粗さを得ることができる上、隅部Rの削り残しと摩耗やチッピングの両対策を施しているので、安価なエンドミル1にも関わらず、従来のCBN工具より長い工具寿命を得ることができる。
Claims (5)
- 軸体の先端部に複数の底刃を設けたエンドミルにおいて、
前記底刃を芯上がりとして前記軸体の回転中心位置に対する進行方向へのシフト量(C)を刃部外径の7〜15%にすると共に、前記底刃のすかし角(θ5)を0.5〜2°に形成したことを特徴とするエンドミル。 - 軸体の先端部に複数の底刃を設けたエンドミルにおいて、
前記底刃のすくい角(θ1)を30°以上に形成したことを特徴とするエンドミル。 - 軸体の先端部に複数の底刃を設けたエンドミルにおいて、
前記底刃を芯上がりとして前記軸体の回転中心位置に対する進行方向へのシフト量(C)を刃部外径の7〜15%にして、前記底刃のすかし角(θ5)を0.5〜2°に形成すると共に、前記底刃のすくい角(θ1)を30°以上に形成したことを特徴とするエンドミル。 - 前記底刃の逃げ角(θ3)を10°以上、刃物角(θ4)を30°以上、としたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のエンドミル。
ただし、刃物角(θ4)=90°−〔すくい角(θ1)〕−〔逃げ角(θ3)〕 - 前記底刃の外周に於ける底刃のすくい面の幅(E)を0.1〜1.0mmに形成したことを特徴とする請求項4に記載のエンドミル。
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