JP2015155079A - 容器に入った廃水の量を低減する方法およびそれに用いる袋 - Google Patents

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Abstract

【課題】 除去しにくい極微量の汚染物質を含む廃水の量を簡単に効率的に低減する方法およびそれに用いる材料を提供する。【解決手段】 容器に入った廃水の量を低減する方法であって、通水性基材で形成され、水膨潤性吸水性樹脂が封入された袋を該廃水に浸して膨潤させた後、該膨潤した袋を容器から取り出し、乾燥して袋の中の水分を蒸発させる、容器に入った廃水の量を低減する方法、および布帛もしくはフィルムに不織布を重ねてニードルパンチおよび/または縫製により固定され一体化されてなる包材により作成されてなる袋である。【選択図】 図1

Description

本発明は容器に入った廃水の量を低減する方法およびそれに用いる袋に関する。詳しくは通水性基材で形成され、水膨潤性吸水性樹脂が封入された袋で廃水を吸収させた後、袋中の水分を乾燥蒸発させる廃水の量を低減する方法およびそれに用いる袋に関する。
微量の重金属などの多価金属を含有する産業廃水(鉱山廃水を含む)は、そのままでは自然界に放流できないため、何らかの廃水の無害化処理を施した後比較的容易に排出することができる。しかし、原子力発電などの事故で発生したセシウムやストロンチウムなどの放射性物質は微量存在したとしても放射性が基準値以下になるまで放射性物質を除去しなければならず、たとえばゼオライトなどの吸着物質を含む材料で放射性物質を吸着して除去している(たとえば、特許文献1)。
特開2013−246139号公報
しかしながら、ゼオライトなどを含む吸着材を廃水に浸して放射性物質を吸着させて放射性の排水基準を満たすのは非常に困難で、排水までにかなりの時間を要している。一方、炉心の冷却水はどんどん発生してくるので、廃水を貯蔵するタンクも増えてくるのが現状である。簡単で効率のよい放射性物質などの汚染物質を除去する方法、または廃水の量を低減する方法が望まれている。
本発明の目的は、容器に入った廃水の量を簡単に効率的に低減する方法およびそれに用いる材料を提供することである。
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究の結果、水膨潤性吸水性樹脂が封入された袋に廃水を吸収させて取り出し、袋中の水分を蒸発させれば廃水の量が低減できると共に廃水中の汚染物質が除去できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、容器に入った廃水の量を低減する方法であって、通水性基材で形成され、水膨潤性吸水性樹脂が封入された袋を該廃水に浸して膨潤させた後、該膨潤した袋を容器から取り出し、乾燥して袋の中の水分を蒸発させる、容器に入った廃水の量を低減する方法である。
さらに本発明は、上記水膨潤性吸水性樹脂が封入された袋を複数個廃水に浸して廃水の全量を吸収させることを特徴とする。
さらに本発明は、上記水膨潤性吸水性樹脂がポリカルボン酸アルカリ金属塩型吸水性樹脂であることを特徴とする。
さらに本発明は、上記廃水が放射性物質を含むことを特徴とする。
また本発明は、上記の容器に入った廃水の量を低減する方法に用いる、通水性基材で形成され、水膨潤性吸水性樹脂が封入された袋であって、布帛もしくはフィルムに不織布を重ねてニードルパンチおよび/または縫製により固定され一体化されてなる包材により作成されてなる袋である。
本発明によれば、通水性基材で形成され、水膨潤性吸水性樹脂(以下、単に吸水性樹脂という場合がある)が封入された袋を該廃水に浸して膨潤させた後、該膨潤した袋を取り出し、乾燥して袋の中の水分を蒸発させる方法であるので、廃水を該袋に吸収させて取り出した後水分のみを蒸発させることができると共に廃水から袋の中に入った微小分散物や水溶性物質(以下、これらを一括して汚染物質という場合がある)は水分が蒸発する際に袋の外に出ないので、水分が蒸発した後は袋と吸水性樹脂と汚染物質のみが残り、非常に少量の廃棄物となる。このようにして廃水を減らすことができ、簡単な方法で廃水の量を低減することができる。ここで、袋の中の吸水性樹脂が吸水膨潤する力が廃水を袋の中に入れる推進力となるので、廃水は袋の中に入っていくのである。
また、容器中の廃水の上部の液の表面積に比べて、袋の周囲の表面積は大きいので、廃水の液表面から水分が蒸発する速度に比較し、袋から水分が蒸発するのが速い。したがって、効率的に廃水を減らすことができる。吸水性樹脂の粒子が吸水膨潤したゲルとなっても、ゲルは均一なゲルではなく、膨潤した粒子の集合体であり、ゲル中において1個1個の粒子は連続せず離れている。その膨潤した粒子間には間隙があり、間隙も水が存在する。このようなゲルにおいて、まず間隙水が蒸発してゆきその後に1個1個の粒子内部の水分が蒸発する。袋の周囲のみから水分が蒸発するが、液体のように表面のみから水分が蒸発するのではなく、間隙を通って蒸発するので、袋の内部からも水分が蒸発することができるので、速く蒸発できる。
また、同じ袋を用いて本発明の方法を実施すれば袋の中の汚染物質は増えていくので、汚染物質を袋の中で濃縮することができる。
本発明によれば、上記吸水性樹脂が封入された袋を複数個廃水に浸して廃水の全量を吸収させるので、廃水中に含まれる汚染物質が水と共に吸収され、且つ容器中には廃水がなくなる。その後全量吸収した複数の袋を容器の外に出し、複数個の夫々の袋中の水分が自然蒸発して袋の中がどんどん少なくなり、最後には吸水性樹脂と袋の風袋のみとなり、容器の中は廃水が無くしかも廃棄すべきものは袋のみとなる。
本発明によれば、上記吸水性樹脂がポリカルボン酸アルカリ金属塩型吸水性樹脂であるので、吸水性樹脂中のカルボキシル基がアルカリ金属イオンに替えて他の金属イオンを捕捉して固定するので、廃水中に金属イオンを含有する場合は袋中にその金属イオンを固定することができる。金属イオンが多価金属イオンであったりアルカリ金属イオンよりもイオン化傾向が小さい金属イオンである場合には確実に袋中に固定しながら、上記のように廃水を減量することができる。
本発明によれば、上記廃水が放射性物質を含む場合においても、上記の方法を用いると簡単且つ効率的に廃水を無くし袋の中に放射性物質を濃縮することができると共に、放射性の廃水を減量することができる。
本発明によれば、上記の袋が布帛もしくはフィルムに不織布を重ねてニードルパンチおよび/または縫製により固定され一体化されてなる包材により作成されてなる袋であるので、袋の中の吸水性樹脂のゲルを通さず引張強度が大きいので、衝撃下や加圧下においても袋が破れず吸水性樹脂のゲルがはみ出すことがない。したがって、その袋を容器から取り出して積み重ねておいても吸水性樹脂のゲルが袋からはみ出さず、水分が蒸発して袋がどんどん小さくなり、最後には吸水性樹脂と袋の風袋のみとなる。また、廃水から取り出して積み重ねても膨潤した袋を滑らずに安定に積み重ねて置くことができる。
(a)は本発明の一実施態様である袋の斜視図である。(b)は(a)に記載した袋に廃水を吸収させて膨潤させた後の袋の斜視図である。(c)は(b)におけるX−Y軸を含む垂直な面で切断した断面図である。 試験例における、ビーカー中の液の表面と袋からの水分蒸発の蒸発状況を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
本発明において、袋に封入される水膨潤性吸水性樹脂としては、水に不溶で、吸水して膨潤するものであれば、特に限定されるものではないが、安価で、安全性、耐久性、吸水倍率や吸水速度などの吸水特性に優れ、かつ、腐敗の心配の無いものが好ましい。上記水膨潤性吸水性樹脂としては公知のものが使用でき、たとえば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、デンプン−アクリル酸グラフト重合体の中和物、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合架橋体、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、アクリル酸塩−アクリルアミド共重合架橋体、ポリビニルアルコール架橋体、変性ポリエチレンオキサイド架橋体、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩共重合架橋体、(メタ)アクリロイルアルカンスルホン酸塩共重合架橋体、架橋カルボキシメチルセルロース塩、カチオン性モノマーの架橋重合体等が挙げられる。これらのうち、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、および、デンプン−アクリル酸グラフト重合体の中和物が、吸水膨潤特性、安全性や経済性などが良好であるため、特に好ましい。
また、廃水が金属イオンを含有している場合は、水膨潤性吸水性樹脂がポリカルボン酸アルカリ金属塩型吸水性樹脂であるのが好ましい。ポリカルボン酸と塩を形成するアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムが好ましい。重合前の単量体または重合後の樹脂中のカルボキシル基をNaOHやKOHで中和することにより、アルカリ金属塩とすることができる。中和度は特に限定はないが、多いほどよく、吸水性樹脂中のアクリル酸の30〜100モル%が好ましく、40〜100モルがより好ましい。
本発明における水膨潤性吸水性樹脂は、重合・架橋して得られる吸水性樹脂の含水ゲル状重合体を乾燥後、粉砕して得られるものが使用できるが、さらに必要により粒度調整して得られる吸水性樹脂粒子の表面近傍を、カルボキシル基などの酸基及び/又はその塩基と反応しうる官能基を少なくとも2個有する架橋剤で表面架橋した表面架橋型の吸水性樹脂とすればより好適に用いられる。
このような表面架橋型の吸水性樹脂は、常圧下だけでなく加圧下においても吸水膨潤特性に優れ、かつゲル強度も大きくなるので本発明に好適である。
水膨潤性吸水性樹脂は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。上記吸水性樹脂は粒子状であり、所定形状に造粒されていてもよく、また、不定形破砕状、球状、鱗片状、繊維状、棒状、塊状、粉末状など、形状には限定はないが、吸水膨潤特性を向上させるために、粉末状であることがより好ましい。平均粒子径(質量メジアン粒径)は好ましくは50〜1000ミクロンであり、25〜1200ミクロンの範囲の粒子が95質量%以上となるように粉砕したものを用いることができる。特に好ましくは平均粒径が100〜600ミクロンであり、50〜850ミクロンの範囲の粒子が95質量%以上である。ここで平均粒子径は質量平均粒子径を意味し、質量平均粒子径は、架橋重合体の各粒度分布を横軸が粒子径、縦軸が質量基準の含有量の対数確率紙にプロットし、全体の50%を占めるところの粒子径を求める方法により測定する。
水膨潤性吸水性樹脂の純水に対する吸水性は大きい程好ましく、好ましくは10〜1000倍、特に好ましくは100〜1000倍である。吸水性が10倍以上であると吸水した後膨潤する度合いが大きくなり、袋に入ってきた廃水をゲル化し、本発明における効果を奏することができる。1000倍以下であると、袋の中でもままこになりにくく、吸水速度も良好である。吸水量は種々の製造条件の制御によりコントロールできる。
吸水性は以下の方法で測定できる。
[吸水性の測定法]:250メッシュのナイロン製網で作成したティーバッグ(縦20cm、横10cm)に、30〜100メッシュ(150〜500μ)の粒径に調整した吸水性樹脂0.2gを入れ、純水500ml中に1時間浸漬して吸収させた後、15分間吊して水切りしてから増加質量を測定して純水に対する吸水性とする。
本発明において吸水性樹脂が封入される袋は、通水性基材で形成され、吸水性樹脂およびそのゲルが漏れなければ限定はない。このような袋を形成する通水性基材(以下、包材という場合がある)としては、たとえば綿、麻、羊毛、絹、セルロース、パルプなどの天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポバールなど及びその変性物などの合成樹脂又は繊維、レーヨン、アセテートなどの半合成繊維など及びこれらの混合素材が適用できる。好ましいのは吸水性のある天然繊維、およびそれらと他の繊維の混合素材である。
形態としては、たとえば、編布、織布、不織布などの布;ポリエチレン、ポリプロピレン等のシートに微細な孔を数多く開けたものなどのメッシュフィルム;洋紙、和紙などの紙などが挙げられる。これらの中で不織布が特に好ましい。本発明に用いられる不織布としては、工業的に使用されている不織布が使用できるが、「不織布の基礎と応用」(日本繊維機械学会発行)に詳細に記載されているものが挙げられる。また、熱融着法で固定する場合は熱融着繊維及び/又はフィルム等の熱融着物質を含んだものを使用するが、「熱融着不織布の実態と熱融着繊維全容」1989年4月24日発行、(株)大阪ケミカルマーケッティングセンターに詳細に記載されているものが挙げられる。
不織布の繊維素材としては、具体的には合成繊維(ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリオレフィン繊維など)、半合成繊維(アセテート、レーヨンなど)、天然繊維(綿、絹、羊毛など)、炭素繊維、およびこれらの混合品(混紡品など)などの繊維素材が挙げられる。不織布も吸水性、親水性のある繊維で形成されたものが、通水性がよく、袋内にある吸水性樹脂の膨潤を促進するので好ましい。不織布の目付量は、特に制限はないが30g〜800g/m2が好ましい。30g/m2以上であると吸水性樹脂またはそのゲルが不織布と絡み合い通過しにくいので好ましい。800g/m2以下であると不織布が硬くなりすぎず吸水性樹脂の膨潤に合わせて膨らむことができる。
また、不織布の中でも上記素材の短繊維または長繊維を集めて圧縮したフェルトはウェブが豊富であり、布帛もしくはフィルムと強固に結合するので特に好ましい。フェルトは織フェルト、プレスフェルト、ニードルパンチフェルトなど、一般にフェルトと称されるものであり、たとえば、「産業用繊維資材ハンドブック」(日本繊維機械学会、362頁〜381頁)に記載されているものが使用できる。
フェルトの目付量は、特に制限はないが30g〜500g/m2が好ましく、特に80〜300g/m2が好ましい。30g/m2以上であると吸水性樹脂またはそのゲルが不織布と絡み合い通過しにくいので好ましい。500g/m2以下であると不織布が硬くなりすぎず吸水性樹脂の膨潤に合わせて膨らむことができる。
通気性基材の通水性は100mlの25℃のイオン交換水が100cmの面積を通過する時間(秒)で表すと20秒以下であり、好ましくは10秒以下であり、特に好ましくは5秒以下である。常態強度は縦/横とも2kg/cm以上、好ましくは3kg/cm以上の引裂強度があり、湿潤強度(25℃のイオン交換水に1分浸漬後の引張強度)は0.05kg/cm以上、好ましくは0.1kg/cm以上が好ましい。
本発明において、特に好ましい袋は、布帛もしくはフィルムに不織布を重ねてニードルパンチおよび/または縫製により固定され一体化されてなる包材により作成されてなる袋である。
不織布は目付量が大きいと不織布のウェブと吸水性樹脂のゲルが絡んで袋を積み重ねた場合の加圧下においても吸水性樹脂のゲルを通しにくいが、不織布は引張強度が小さいので、引張ったり衝撃を加えたりするとウェブがずれて隙間ができゲルが出る場合がある。一方、布帛は引張強度が比較的大きいが、これも衝撃や張力がかかると繊維間が広がり中のゲルがはみ出すことがある。吸水性樹脂を入れた不織布の袋を布帛で作成した袋に入れたものは、二層の袋であるが衝撃や張力がかかるとそれぞれの袋が個別に破れたりして、ウェブや繊維の隙間からゲルがはみ出すことがある。しかし、この二つを重ねてニードルパンチおよび/または縫製をかけると、不織布のウェブが布帛の繊維と交絡したり、ウェブまたは縫製糸が布帛を貫通したりする。そうすると不織布と布帛が固定され一体化されるので繊維がずれず、それに応じて不織布のウェブもずれにくくなり隙間が広がらない。すなわち、この包材の引張強度が実質的に大きくなる。したがって、衝撃下や加圧下でも破れず袋の中のゲルがはみ出すことがない。
一方、布帛の代わりにフィルムを用いて不織布を重ねてニードルパンチおよび/または縫製をかけると、不織布のウェブまたは縫製糸がフィルムを貫通して固定されるので、衝撃がかかってもウェブ間がずれて広がることがなく袋の中のゲルがはみ出さない。フィルムは孔をあけない限りは通水しないが、ニードルパンチまたはミシンの針が貫通するとその隙間から通水するようになる。単位面積当たりの針数が多い程吸水性が上がる傾向にある。すなわち、フィルム自体に通水性がなくても通水性を有することになる。したがって、布帛の替わりにフィルムを用いて作成した袋は、吸水性樹脂を入れた後、その袋を水に接触させると通水して吸水性樹脂が膨潤しゲルが入った袋となる。このゲルの入った袋は衝撃下や加圧下でもゲルがはみ出さない。
ニードルパンチと縫製の内、好ましいのはニードルパンチである。ニードルパンチは新たな材料を必要とせず経済的であり、縫製のように糸が切れる心配がない。また、ニードルパンチをかけると不織布のウェブが布帛やフィルムを貫通して反対側に出てケバのようになり、これが滑り止めの効果を奏する。たとえば、膨潤した袋を積み重ねた場合に、布帛の面を外側にして袋を作成して積み重ねてもケバにより滑りにくいという効果を奏する。ニードルパンチと縫製を組み合わせればさらに強固に固定され一体化された包材が形成され、この包材で製造されて袋は特に好ましい。
このような袋に用いられる布帛もしくはフィルムとしては、吸水性樹脂の膨潤に応じて膨らむ柔軟性をもち、そのゲルを保持できれば限定はない。好ましくは通水性のある布帛である。
布帛としては、通気性基材に挙げられた素材と同じものが使用できる。これらの混合品(混紡品など)などすべての繊維素材が適用できる。それらのフィラメント糸条、及び短繊維紡績糸条、並びに各々からなるテープ糸条によって編織された織布、編布、又はその複合布が使用できる。
布帛が吸水性樹脂に水が接触できるように、若干なりとも通水性を有すれば袋にした場合吸水性を有するので好ましいが、通水性を有さなくても、不織布を重ねてニードルパンチおよび/または縫製をかけることにより不織布のウェブや縫製糸が布帛を貫通して隙間ができたり、針によって微小な孔が発生する。その隙間や孔により通水性が出るようになる。しかし、布帛に通水性があると布帛の吸水速度が速くなるので、吸水性、親水性のある繊維による布帛が好ましい。そして、吸水性樹脂が吸水膨潤した時においても破れが生じない程度の、湿潤強度及び湿潤状態での柔軟性を有する素材であることがより好ましい。
フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリオレフィン系フィルム(ポリエチレンフィルム、エチレン・αオレフィンコポリマーフィルム、ポリプロピレンフィルムなど)などの合成樹脂製フィルム;これらの積層ラミネートフィルム;アルミホイルなどの金属製フィルム、および合成樹脂製フィルムと金属フィルムとの多層ラミネートフィルムが挙げられる。柔軟性の点から合成樹脂製フィルム、およびその積層ラミネートフィルムが好ましい。厚みは特に限定はない。フィルムは通常通水性を有さないが、ニードルパンチをかけると通水性が出てくるので使用できる。しかし、フィルムとしてはメッシュフィルム(またはシート)などの微細な穴が空いたフィルムが、最初から通水性があるので好ましい。穴の大きさは、0.1〜2mm、より好ましくは0.1〜1mmである。好ましくはフィルムの厚さは30μm以上であれば引張強度が大きく、膨潤する吸水性樹脂のゲルを保持できるので好ましい。より好ましくは50μm以上である。
特に布帛もしくはフィルムの材質としてポリオレフィン系樹脂を用いると、ポリオレフィン系樹脂は熱融着性があることから、ニードルパンチおよび/または高速工業用ミシンの縫製によって不織布とより強固に結合し、より強く一体化した包材ができる。また、また、ポリオレフィン樹脂は安価であるのでこれを用いることにより経済的な包材が設計可能となる。
ニードルパンチの強さは、針の本数が好ましくは10本/cm2以上、200本/cm2以下であり、より好ましくは30本/cm2以上、100本/cm2以下である。10本/cm2以上であると、衝撃や加圧を加えても包材の布帛もしくはフィルムと不織布の結合が剥がれたり破れたりして袋の中のゲルがはみ出ることがない。200本/cm2以下であると、包材の柔軟性が十分であり、ゲルの膨潤に対応して膨らむことができる。ゲルの膨潤力がニードルパンチの押えの力に負け、吸水があまりおこらなくなることもない。
縫製は通常の家庭用または工業用ミシンによるミシン掛けが好ましく、特に高速工業用ミシンによる縫製が好ましい。縫製糸は、綿、絹や合成繊維(ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリプロピレンなど)が使用できる。縫製糸の太さなどは用途によって変えて用いられるが、糸本数はニードルパンチの場合の糸の本数と同じでよい。
布帛もしくはフィルムと不織布の重ね合わせは交互に何層も重ねてニードルパンチおよび/または縫製により固定してもよく、好ましくは1:1〜1:2である。特に好ましくは1:1である。1:1であると厚みの薄い包材となる。
また、不織布を何層にも重ねてニードルパンチおよび/または縫製で固定してもよい。不織布層は好ましくは1〜3層であり、経済面から1層がより好ましい。
このような好ましい袋の形態については、特許第5427995号報に記載されているものが使用できる。
本発明における袋は、上記通気性基材を縫製、ヒートシール、接着剤などの方法によって周囲を固定することができる。通常、袋はその一端を開けた袋を形成し、その中に吸水性樹脂を入れた後袋を閉じる方法で製造できる。袋は水で膨潤した後も破れないことが必要であるため、その一端も縫製、接着などで閉じられるが、閉じる前に袋の中に吸水性樹脂のを入れておく。
吸水性樹脂を袋に入れるときは、粉末状及び/又は粒状の吸水性樹脂を直接入れてもよいが、水崩壊性や水溶性を有する小袋(以下、ゲル化用袋といい、吸水性樹脂の入った袋をゲル化材という場合がある)を好ましくは1〜10個入れてもよい。吸水によって中に入った水がゲル化用袋の包材を崩壊したり溶解したりしてゲル化用袋の中の吸水性樹脂を膨潤させて、ゲル化用袋を破り外の袋をゲルで充満させることができる。この場合ゲル化用袋を両面テープなどで外袋の中に均等に固定すれば外袋を動かしても吸水性樹脂の偏りが生じない。
ゲル化用袋の中の吸水性樹脂の量は用途によって異なるが、たとえば、大量の廃水に適用する場合は、好ましくは30〜70g/袋である。
また、吸水性樹脂の吸水能を妨げない範囲で他の物質を併用しても良い。この物質は吸水速度を促進させる目的でパルプなどの有機性繊維、石綿、パーライトなどの無機性繊維、比重を上げる目的で珪砂、石などの無機物などがあげられる。さらに、必要に応じて防かび剤、抗菌剤、紫外線吸収剤などを加えても良い。
以下、吸水性樹脂が封入された袋を使用する方法を記載する。まず、容器に入った廃水に吸水性樹脂が封入された袋を浸漬するが、容器の大きさ、形状も限定はなく、材質も廃水の性質に対応できるものなら特に限定はない。
廃水中の汚染物質は水が吸収される際に水と共に袋の中に入る。ここで吸水性樹脂の粒子は粒子毎に水を吸収して膨潤するが、膨潤した粒子の間には間隙がある、この間隙を満たした水は袋を廃水から取り出せば間隙水は袋の外に出てしまう。この場合に、水と共に汚染物質も外に出る。容器中の廃水をすべて吸収できない場合には、廃水に浸漬した袋を取り出し、間隙水の水を切った後取り出すのが周囲が廃水で汚れないので好ましいが、廃水を全量吸収するためには、すべての廃水が吸水性樹脂の粒子内にあるようにするために、廃水の量は袋に封入された吸水性樹脂の吸水倍率の範囲内であるのが好ましい。すなわち、廃水の量に対して、袋の中にある全体の吸水性樹脂の吸水倍率の合計が廃水の量を上回るように複数の袋を投入して廃水の全量を吸収するのが好ましい。
好ましい方法は、前記吸水性樹脂が封入された袋を複数個廃水に浸して廃水の全量を吸収させる、容器に入った廃水の量を低減する方法である。
上記廃水を吸収する温度は、室温で行うことができる。時間は、対象とする廃水の量、汚染物質の濃度や吸水性樹脂の量などの条件によって異なるので、場合に応じて適宜決めればよい。これらの操作は、1回でもよいし、複数回繰り返してもよい。
廃水により膨潤した袋を容器から取り出した後、袋は外で乾燥し水を蒸発させると膨潤した袋の厚さが次第に薄くなり、最後には元の吸水性樹脂が封入された袋に近い状態になる。この場合、袋の表面積が大きいほど蒸発能力は大きくなるので、水の蒸発能力も考慮して袋の大きさ、形状などを決めるのが好ましい。
容器から取り出した袋は積み重ねておいて水を蒸発させるのが、置き場所の面積は広がらないので好ましい。
廃水が大量である場合には、吸水土嚢を用いるのが好ましい。吸水土嚢は、上記の様に吸水性樹脂若しくは上記の吸水性樹脂を含むゲル化材が土嚢袋の中に封入されてなるものである。土嚢袋の大きさは特に限定はないが、ゲル化材をいれる場合はゲル化材以上の大きさの袋の大きさであれば特に限定はないが、好ましくは20〜50cm×40〜80cm、より好ましくは25〜30cm×40〜70cmである。袋の形も限定はないが矩形状が経済面から好ましい。
図1に本発明の一実施態様の袋である吸水土嚢と、それが膨潤した状態を示した。(a)は本発明の一実施態様である袋の斜視図である。(b)は(a)に記載した袋に廃水を吸収させて膨潤させた後の袋の斜視図である。(c)は(b)におけるX−Y軸を含む垂直な面で切断した断面図である。
(a)は、矩形状に作製した袋1であり、吸水していないので袋1の厚さは薄い。(b)は袋1に廃水を吸収させて膨潤させた状態を示す。(c)は膨潤した袋2の断面図であり、吸水性樹脂3が膨潤していることを示す。
本発明の対象となる廃水は、重金属を扱う工場などの事業所から排出される工場廃水(たとえば、めっき廃水など)、鉱山廃水、放射性元素含有廃水またはその他の汚染物質を含有する廃水などであり、含有されている元素は特に限定されないが、重金属、希土類元素、放射性元素などが挙げられる。特にセシウム、ストロンチウムなどの放射性元素を含む原子炉の冷却廃水の場合には、ppm以下の放射性元素を吸着材で除去するのは容易ではないが、本発明の方法を用いると容易に処理でき、廃水を効率的に減量できると共に汚染物質を除去できるので、好適に使用できる。
以下、実施例により更に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
[製造例1](ゲル化材の作成)
「ハビックス JS45HD−W」(登録商標、ハビックス社製、乾式パルプ不織布)に厚さ30μmのポバール(PVA)フィルム(クラレ社製、CP−1220T10、鹸化度87〜89%)をラミネートしたシート(a)を10×15cmの大きさの長方形に切り、これをPVAフィルム側に重ねて3方の端(辺)をヒートシールして袋を製造した。この中に「サンフレッシュST−500D」(アクリル酸系吸水性樹脂、三洋化成工業社製、吸水倍率400倍)50gを入れ、次いで開口部をヒートシール(密封)してゲル化材を作製した。
[製造例2](包材の作成)
まず、ナイロン/アクリル(7/3)混毛を目付量:120g/m、針数200本/m2となるようにしてニードルパンチでフェルトを板状に作成した。次にポリプロピレン平織物基布(テープ条繊維:縦14本/インチ、横11本/インチ、目付量:93g/m)に上記のフェルトを重ねて針数45本/m2となるようにしてニードルパンチで固定して、吸水性樹脂が封入される袋の包材を作製した。
[実施例]
上記製造例2で作製した包材を用いて、40cm×60cmの大きさの矩形状の土嚢袋を作製した。最初一端を除いて三方の周囲をミシン掛けしてしっかりと閉じ、開いた一端から上記製造例1で作製したゲル化材を2個入れて、同じミシン掛けによって閉じて本発明の袋を作成した。
200KLの容器に硫酸銅を銅イオンとして10ppmを含有する水溶液170kgを入れ、その中に上記の袋を10枚入れた。10分後には容器の中の水溶液はほとんど吸収されて夫々の袋は膨潤した。この膨潤した容器から袋を取り出した後、容器の底にある少量の吸収されなかった水溶液を吸収するためにさらに1枚の土嚢袋を入れ、完全に水溶液を吸収させた。容器の中には銅イオンによる青色はなかった。銅イオンは土嚢袋に吸収されている。また、吸収された廃水の量は、用いる吸水性樹脂の吸水倍率から計算した10枚の合計した吸水可能量400kgの42.5%であった。これらの膨潤した袋の表面はさらさらとしていた。これらの袋を一列4段に重ねて雨が当たらない箇所に放置して自然乾燥した。袋を積み重ねても少々振動を与えてもずり落ちず安定であった。積み重ねた袋の合計高さは最初約60cmであったが、1ケ月後の合計高さは約10cmであり、元の袋だけになっていた。
[試験例]
水の蒸発速度を測定するために以下の模擬実験を行った。タンクを想定した場合のビーカーに入っている水が蒸発する蒸発速度と、同じ水の量を1枚の袋に吸収させた場合の蒸発速度とを比較した。
上記の製造例2で作製した包材を用いて13cm×18cmの大きさの袋を作成し、この中に吸水性樹脂「サンフレッシュST−500D」の粉末5.5gを入れて袋を作成して930gの水を吸収させた。水の量は袋の中にある吸水性樹脂の吸水可能量の42.3%であった。比較に同量(930g)の水を1Lのビーカーに入れた。これらを24℃の室内に入れ水の蒸発速度を比較した。
図2は、ビーカー中の液の表面と袋からの水分蒸発の蒸発状況を示すグラフである。横軸に日数(日)、縦軸に残留水量(%)を示した。
この図から、本発明の袋を用いて減量する方法は、液面からの水分蒸発に比較して格段に水分蒸発が大きい(約4〜5倍)ということがわかる。単純には袋の水分蒸発する表面積(全体の表面積から袋が底に接する除くべき部分を考慮した面積は、約400cm)はビーカーの液面(約109cm)の面積の約3.7倍であり、水分蒸発量はそれより大きい倍率を示している。袋からの水分蒸発は製造例2で作製した包材を通した蒸発であり、液面からの蒸発に比較して蒸発しにくいのであるが、予想を超えた水分蒸発を示していた。
すなわち、本発明の方法は、容器に入った廃水の量を効率的に低減することができる。
1 袋
2 膨潤した袋
3 吸水性樹脂

Claims (5)

  1. 容器に入った廃水の量を低減する方法であって、通水性基材で形成され、水膨潤性吸水性樹脂が封入された袋を該廃水に浸して膨潤させた後、該膨潤した袋を容器から取り出し、乾燥して袋の中の水分を蒸発させる、容器に入った廃水の量を低減する方法。
  2. 前記水膨潤性吸水性樹脂が封入された袋を複数個廃水に浸して廃水の全量を吸収させることを特徴とする請求項1記載の容器に入った廃水の量を低減する方法。
  3. 前記水膨潤性吸水性樹脂がポリカルボン酸アルカリ金属塩型吸水性樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載の容器に入った廃水の量を低減する方法。
  4. 前記廃水が放射性物質を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の容器に入った廃水の量を低減する方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の容器に入った廃水の量を低減する方法に用いる、通水性基材で形成され、水膨潤性吸水性樹脂が封入された袋であって、布帛もしくはフィルムに不織布を重ねてニードルパンチおよび/または縫製により固定され一体化されてなる包材により作成されてなる袋。
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