JP3170574U - 放射性物質吸着型水土嚢の構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】放射性物質で汚染された水が袋内に一度浸透すれば最終処分時まで二度と出ないようにした放射性物質吸着型水土嚢を提供する。【解決方法】全体を包覆する透水性カバー2の中に吸水体3を収納してなる構造の水土嚢において、該吸水体を吸水性高分子と放射性物質吸着剤粉末とキレート剤の複合体で形成し、吸水体表層部のキレート剤と放射性物質吸着剤粉末の混合比率をより高くする。透水性カバーを袋状に形成して、袋の中に放射性物質吸着剤粉末とキレート剤を充填して水土嚢とする。【選択図】図2

Description

本考案は放射性物質吸着型水土嚢の構造にかかわり、更に詳しくは、放射性物質を含む水の吸水に好適な放射性物質吸着型水土嚢の構造に関するものである。
水土嚢は、水害時積み重ねて堰を築き水の浸入防止のために使用されている。
水土嚢にかかわる代表的な公知文献としては、特許文献1(特許第4262737)がある。
この発明は、吸水性高分子を用いた水土嚢である。
吸水性高分子を用いた水土嚢は、吸水前は3〜5mmの厚みのものが吸水後は自重の約10〜100倍の水を吸水して膨張し、また吸水された水はゲル化するので多少の力を加えても外に染み出ることは無く、吸水した水そのものが水に対するバリヤー層(防波堤)を形成するようになる。
平時は薄く軽く保管でき、緊急時に自らが水を吸水してゲル化膨張し、このゲル化した水そのものが、水に対する防波堤を形成するものである。
特許文献1の発明は、水害時の水を堰き止める防波堤の役割のほか水漏れ事故において、隙間に充填して、膨張して隙間を塞いで水漏れを止める用途にも賞用されている。
また更に特許文献1の発明は、吸水膨張の後、必要に応じて内蔵するゲル化分解促進剤でゲル化した水を分解してすばやく排出できる利点もあるが、放射性物質を含む水の災害時の用途(防波堤、水漏れ事故等)には適用しがたい問題もある。
吸水した水は放射能で汚染されているので土嚢から外にそのまま放出できない欠点がある。
特許第4262737号
本考案は、かかる問題に鑑みてなされたもので、その目的は、放射性物質が含まれた水の災害時、水土嚢に吸水した水の中の放射性物質を土嚢の中で固定して不活性化して、土嚢に吸水された水中の遊離放射性物質の含量を減し、かつ放射性金属イオンも不活性化できるようにした放射性物質吸着型水土嚢の新規な構造を提供することである。
前記した課題は下記の手段で解決することができる。
即ち、全体を包覆する透水性カバーの中に吸水体を収納してなる構造の水土嚢において、吸水体の構造を吸水性高分子と放射性物質吸着剤とキレート剤の複合体からなる構造にすることで、水中の放射性物質(放射性懸濁粒子と放射性金属イオン)を放射性物質吸着剤に吸着させて固定化することができる。また放射性金属イオンはキレート剤と反応してキレート化合物に変化することで放射能毒性を不活性化させることができる。
放射性物質吸着剤に吸着される放射性物質の量をより多くするためには、放射能汚染水が吸水性高分子に吸水される前に放射性物質吸着剤層を通過させる必要がある。また、吸水性高分子に吸水される前にキレート剤と反応させる必要がある。
そのために有効な構造は、請求項2に記載の構造である。
すなわち吸水性高分子と放射性物質吸着剤とキレート剤の複合体の構造を吸水性高分子とキレート剤と放射性物質吸着剤を混合した構造にし、その際、吸水体表層部のキレート剤と放射性物質吸着剤の混合比率をより高くすることである。
かかる構造によって、水土嚢に浸入した放射能汚染水は放射性物質吸着剤とキレート剤の高密度層で放射性物質を優先的に吸着され、あるいはキレート剤と優先的に反応させられるために固定化と不活性化がより効率的になされる。
また更に請求項3に記載の構造がより有効である。
すなわち透水性カバーを袋状に形成して、この袋の中に放射性物質吸着剤とキレート剤を充填する構造である。
放射性物質吸着剤とキレート剤を透水性カバーの袋の中に充填することで、吸水性高分子層に到達する前に、放射能汚染水の放射性物質を吸着固定化および錯体化して不活性化することが可能になる。
放射性物質吸着剤とキレート剤は混合して袋に充填しても良いが、袋を二重の構造にして、各袋に放射性物質吸着剤とキレート剤を別々に充填するほうがより好ましい。そして表層に近い袋には放射性物質吸着剤を充填する方が好ましい。
このような構造にすることで、水土嚢に浸入した放射能汚染水は、先ず表層に近い袋に収納された放射性物質吸着剤層で放射性懸濁物質と放射性金属イオンが吸着固定化され、次にキレート剤の層を通過するときに、放射性金属イオンが更に錯体化されて不活性化される。
請求項1、2の構造では、吸水性高分子が吸水膨張するに従って、吸水体の吸水断面に占める放射性物質吸着剤とキレート剤の面積率が疎になり、放射性物質の吸着率および錯体化率が低下してくるが、透水性カバーの袋に収納することで、吸水性高分子が吸水膨張しても放射性物質の吸着率および錯体化率が低下することがない利点がある。
なお本考案の放射性物質吸着剤には、珪藻土、ゼオライト、活性炭、活性白土,活性アルミナ、シリカゲル,モレキュラシーブ等の無機質系多孔質材料のほか、その他有機質の吸着剤を使用することができる。
水土嚢を撤去する際、吸水体に吸収された水の放射能汚染濃度が希薄で、外に排出することが許された濃度の場合、吸水性高分子に隣接してゲル化した吸着水のゲル分解促進剤を非透水性膜で包んで土嚢の中に一緒に収納しておき、ゲル分解促進剤を包む非透水性膜を破断してゲル分解促進剤と吸水体と接触させることでゲル化した水を短時間で外に排出できる。
放射能の高濃度汚染水の場合、水土嚢全体を専用の蒸発タンク内で蒸発乾燥することで放射性物質を外に放出することなく安全に脱水乾燥できる。さらに使用後の後処理対策として、水土嚢の透水性カバーを熱可塑性樹脂で形成しておけば、乾燥後透水性カバーと吸水体を焼結あるいは溶融する工程で脱水後の放射性残留固形物(パーティクル)を内包固結して全体を樹脂固形化し、外への飛散を防ぐことができる。
・ 放射能汚染水の放射性懸濁粒子やイオン物質を吸着して固定化できる。
・ 放射能汚染水の放射性金属イオンを錯体化して毒性を抑制、緩和できる。
・ 水土嚢から放射性物質を含んだ水の染み出しがない。
・ 汚染水を乾燥固化後は放射性物質を含む固形物粉塵の飛散を防止できる。
請求項1の水土嚢の平面を一部切り開いたときの説明図。 請求項1の水土嚢の、吸水前の断面構造を示す説明図。 請求項1の水土嚢の、吸水後の断面構造を示す説明図である。 請求項2の水土嚢の構造を説明する図である。 請求項3の水土嚢の構造を説明する図である。 請求項4の水土嚢の構造を説明する図である。
図1は本考案請求項1の水土嚢の平面を一部切り開いたときの説明図、図2は、請求項1の水土嚢の、吸水前の断面構造を示す説明図、図3は吸水後の断面構造を示す説明図である。
図4は請求項2の水土嚢の構造を説明するための模式図である。
図5は請求項3の水土嚢の構造を説明するための説明図である。
図6は請求項4の水土嚢の構造を説明するための説明図である。
図1〜3で、1は水土嚢、2は袋状の透水性カバー、3は吸水性高分子と放射性物質吸着剤、キレート剤の複合体からなる吸水体であり、吸水体3は袋状の透水性カバー2の中に全体が収納された構造になっている。なお4は水土嚢を横に並べて多段に積み上げる際、上下左右方向に動かないように紐で結んで固定するための紐を通す穴である。
放射性物質を含む水は透水性カバー2を通過して吸水体3に吸収される。
図2に示すように、吸水前、吸水性高分子層は3〜5mm程度の厚さのものが、自重の約10〜100倍の水を吸収して、図3に示すように厚さが15〜50倍に膨張する。
吸水体3は、吸水性高分子と放射性物質吸着剤およびキレート剤の複合体からなる。
図4は、吸水体3の表層部に放射性物質吸着剤粒子5、キレート剤粒子6が密に充填された構造を模式的に説明したものである。
表層から内部に入るに従って吸水性高分子の比率が高くなり、ついには吸水性高分子が100%を占める構造になる。
上下面、両面がこの構造になる。必要に応じて側面にもこの構造が適用される。
透水性カバー2を通過した放射性物質を含む水は、先ず放射性物質吸着剤粒子5、キレート剤粒子6が密に充填された層を通過する。この際、放射性物質が放射性物質吸着剤に吸着固定され、放射性金属イオンはキレート剤と反応して錯イオン化してキレート化合物となって不活性化される。
放射性物質吸着剤粒子5、キレート剤粒子6の層を通過して放射性物質の濃度が低くなった水が吸水性高分子7に吸水されることとなる。
図5は、透水カバーの裏側に透水性の袋8を形成して、袋8の中にキレート剤と放射性物質吸着剤粉末を充填した構造である。
図5において、水土嚢1に浸入した放射能汚染水は全て、袋8の中に充填された放射性物質吸着剤粉末とキレート剤の混合層9を通過するときに放射性物質を吸着される、あるいはキレート剤と反応して錯体化され、混合層9を通り抜けた水が吸水性高分子層10に到達して吸水されることになる。従って放射性物質の吸着除去率および錯体化率は図4の構造よりも改善される。
図6は、図5の袋を更に二重にして各袋に放射性物質吸着剤粉末とキレート剤を別々に充填したものである。
放射性物質吸着剤粉末とキレート剤は放射性物質に対する作用効果はそれぞれ異なり、両者を混合すると、キレート剤と放射性物質吸着剤の作用効果が重複して効率が低下する場合も起こるので、両者の役割が重複することがないように分離して収納したものである。11は放射性物質吸着剤層、12はキレート剤層であり、表層に近い袋に放射性物質吸着剤を収納したものである。
吸水体3の中の吸水性高分子は、カルボキシル基、水酸基、エーテル基、アミド基等の親水性の官能基を有する高分子であり、澱粉にアクリル酸塩をグラフト重合させた澱粉系、カルボキシセルロースにアクリル酸塩をグラフト重合させたセルロース系、アクリル酸・ビニルアルコール共重合体、アクリル酸重合体、アクリル酸・アクリルアミド重合体、ポリエチレンオキサイド変性物等の合成系のものが適宜使用でき、シート、顆粒、繊維、粉末あるいはペレット状に加工して使用される。
吸水体3の中の、放射性物質吸着剤は、無機質系では、水素型、ナトリウム型、カリウム型、カルシウム型、マグネシウム型、アルミニウム型、鉄型、銀型、銅型あるいはこれら二つ以上を組合せたものを粒子状にして使用し、粒度は小さいものの方が、吸着性能が大きいのでより細かい粒度、概ね30μm以下の粒度が好ましい。
本考案のキレート剤としては通常のキレート剤を使用できるが、特にエデト酸、ペンテト酸カルシウム三ナトリウム、フミン酸、フルボ酸、NTA、EDTA等が最も好適である。
透水性カバー2は、それ自体が透水性である不織布や織布等の他に、ビニール等の非透水性シートに多数の小孔を設けて通水できるようにした構造で使用される。
不織布は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、アクリル、ポリアミド等の繊維をスパンボンド法、水流交絡法等により製造したものを使用される。
織布は、ビスコース法レーヨン等の再生繊維、酢酸セルロース繊維等の半合成繊維、ポリアミド、ポリエステル、アクリル等の合成繊維を素材として製造したものを使用される。
なお透水性カバーの袋も透水性カバーと同じ透水性材料で形成される。
吸収された水は吸水性高分子と結合してゲル化しており、膨張した水土嚢に多少の圧力を加えても水が外に染み出ることは無いので、水土嚢を多段に積み重ねても下段の土嚢から水が染み出ることはない。
吸水して膨張した使用済みの水土嚢の水は、放射性物質を外に放出させないために、自然乾燥あるいは強制乾燥して脱水する。
脱水後、土嚢の中には放射性物質の固形物が残る。
放置すると粉塵となって飛散する危険がある。
放射性固形物の飛散防止のために、土嚢を加熱して透水性カバー2と吸水性高分子層3を焼結あるいは溶融して放射性固形物を樹脂で固結させる。
放射性物質を含む水による災害時、堰を築き、水の浸入を阻止することができる。また水漏れ箇所に充填して水漏れを止めることができる。
また放射性物質を高濃度含むスラッジをそのままの状態で土嚢の中に吸引して収納できる。
原子力発電所の事故等、原子力関連部署の事故処理に広く使用されることが期待できる。
1 水土嚢
2 透水性カバー
3 吸水体
4 紐を通す穴
5 放射性物質吸着剤粉末
6 キレート剤
7 吸水性高分子
8 袋
9 放射性物質吸着剤粉末とキレート剤の混合層
10 吸水性高分子層
11 放射性物質吸着剤層
12 キレート剤層

Claims (4)

  1. 全体を包覆する透水性カバーの中に吸水体を収納してなる構造の水土嚢であって、該吸水体を吸水性高分子と放射性物質吸着剤とキレート剤の複合体で形成しなることを特徴とする放射性物質吸着型水土嚢の構造。
  2. 前記複合体の構造が、吸水性高分子とキレート剤と放射性物質吸着剤を混合した構造であって、吸水体表層部のキレート剤と放射性物質吸着剤の混合比率をより高くしてなることを特徴とする請求項1に記載の放射性物質吸着型水土嚢の構造。
  3. 全体を包覆する透水性カバーの中に吸水体を収納してなる構造の水土嚢において、該透水性カバーを袋状に形成して、該袋の中に放射性物質吸着剤とキレート剤を充填してなることを特徴とする放射性物質吸着型水土嚢の構造。
  4. 前記袋を二重の袋となして、各袋に放射性物質吸着剤とキレート剤を別々に充填してなることを特徴とする請求項3に記載の放射性物質吸着型水土嚢の構造。
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