JP2015028473A - 環境中に放出された放射性物質の吸着剤を含む基材、及び、その製造方法、並びに、放射性物質汚染水(以下汚染水と略す)からの放射性物質低減方法及び装置 - Google Patents

環境中に放出された放射性物質の吸着剤を含む基材、及び、その製造方法、並びに、放射性物質汚染水(以下汚染水と略す)からの放射性物質低減方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【課題】人が生活する環境中に存在する放射性物質を低減する吸着剤を含む基材を提供する。【解決手段】基材表面に、放射性物質吸着剤を結着剤を介して貼着することにより放射性物質吸着剤を含む糸及びシートを製造し、この糸及びシートを利用して、編織物やネットを製造し、大気中に放出されたり、水中に溶出している放射性物質を、編織物やネットに吸着せしめ低減させる。【選択図】なし

Description

本発明は、水中や大気中等の人が生活する環境中に放出された放射性物質の低減に有効な環境中に放出された放射性物質の吸着剤を含む基材、及び、その製造方法、並びに、人が近づいて作業することの出来ない高濃度放射性物質汚染水(以下高濃度汚染水と略す)からの放射性物質低減方法及び装置に関する。又、本発明は、水田に流入する環境中に放出された放射性物質の低減方法及び装置にも関する。
非特許文献1には、チェルノブイリ原発事故の間に放出された主な放射性核種の放出量の推定値と半減期が、記載されている。これを、放出量の多い順番に整理し直すと、表1のようになる。
上記表1より、原子力発電所の重大事故では、a)不活性ガスのキセノン133が最も多量に大気中に放出され、b)揮発性元素の沃素133及び131が上記キセノンの39%及び27%、それぞれ放出され、c)テルル132及び129mが、上記キセノンの17.7%及び3.7%、それぞれ放出され、d)ネプチウム239が、上記キセノンの6.15%放出され、e)バリウム140が、上記キセノンの3.7%放出され、f)ルテニウム103及び106が、上記キセノンの2.58%及び1.12%、それぞれ放出され、ストロンチウム89及び90が、上記キセノンの1.77%及び0.15%、それぞれ放出され、g)セシウム137、134及び136が、上記キセノンの1.31、0.72%及び0.55%、それぞれ放出され、h)ジルコニウム95が、上記キセノンの1.29%放出され、i)セリウム141及び144が、上記キセノンの1.29%及び0.77%、それぞれ放出され、j)モリブデン99が、上記キセノンの1.11%放出され、k)プルトニウム241が、上記キセノンの0.04%放出されている。
2011年3月11日の地震後、福島第一原子力発電所では、重大な爆発事故が4件発生したが、運転停止中の原子炉が爆発するなど、その原因は不明である。爆発後、行政機関から、沃素131、セシウム137及びセシウム134の測定データが断片的に公表されているが、緊急時炉心冷却装置(ECCS)が撤去されている状態で日本全国に散在している多数の原子力発電所では、将来的に、再び全電源が喪失した場合、運転中の原子力発電所を非常停止させた瞬間から、原子炉のメルトダウンが開始され、格納容器が、何らかの原因に基づく爆発により崩壊し、内部の全ての微細化した放射性物質が、大気中にただ漏れ状態になる潜在的危険性があり、上記沃素131、セシウム137及びセシウム134に対する放射線防護対策だけでは、まったく不十分である。
大気中に放出され続けている放射性物質の全ての核種に対する総量の推定値が公表されていないので、チェルノブイリ原発事故で放出された総量から推定すると、例えば、セシウム137の放出量に対して、表1より、キセノン133は、76.47倍多く放出されているので、半減期5.25日のキセノン133であっても、64倍した31.5日(1か月以上)たっても、まだ、セシウム137より大量の放射性物質として、環境中に浮遊していることになる。
同様にして、沃素133は、セシウム137より29.4倍多量に放出されているので、その半減期は、20.8時間しかないが、約5倍の4.3日前後、セシウム137より大量の放射性物質として、環境中に浮遊していることになる。また、沃素131は、セシウム137より20.7倍多量に放出されているので、その半減期は、8.04日なので、4倍以上となる32日以上、セシウム137より大量の放射性物質として、環境中に浮遊していることになる。
かかる事態に対応するため、一般には、放射性沃素に対しては、沃化カリウム錠剤が用意され、重大事故等が発生し、放射能漏れの恐れが予想される場合には事前に服用することになっているが、放出期間の長さが1年以上もの間、放射性物質がただ漏れ状態となって継続するような場合には、常時、沃化カリウム錠剤を服用すると、人体に対しても、深刻な副作用を発症させる危険性がある。
更にまた、表1からも明らかなように、原子力発電所で格納容器が崩壊する重大事故が発生した場合には、約1か月間、沃素以外にも、キセノン、テルル、ネプチウム、バリウム、及び、ストロンチウム89等の放射性核種が大量に環境中に浮遊しているので、沃化カリウムを服用するだけでは、全く放射性物質からの防護対策になっていないことは、明白である。
更にまた、日本は地理的に、中国大陸の東側に位置しており、黄砂等と共に、過去中国大陸で実施された大気中核実験の影響である放射性セシウム/ストロンチウムが、偏西風の強い日には大量に飛来して大気中の放射線濃度が西日本一帯で急上昇する現象が観測されていると共に、中国大陸や韓国の東側に位置している日本国では、中国大陸や韓国に設置され運転中の原子力発電所において、全電源喪失等の重大事故が万一発生した場合、日本の西側半分は、約1か月間、相当量の放射性物質で大気が汚染され続ける潜在的危険性に晒されている状況にある。
特許文献1には、液中のセシウムを、ケイ酸塩鉱物モルデナイトにより、吸着し除去する方法が記載されている。この方法は、原子力発電所の排水や廃液中に含まれるセシウムを除去するもので、液中でセシウムをモルデナイトに吸着させ、その後、吸着したモルデナイトを、沈降させ分離し、更に脱水し、廃棄物として管理する技術が記載されている。
特許文献2には、セシウムを含有した廃液または汚染水に天然鉱石を無機酸で処理しミネラル成分を可溶化させた処理用凝集剤を添加し、その後、処理用凝集剤にて凝集したセシウムを含有した凝集物を濾過して除去する技術が記載されている。
また、特許文献3には、放射性セシウム、放射性ストロンチウム或は放射性沃素で汚染された水溶液から、ゼオライト、ベントナイト、非ゼオライト系無機イオン交換体(フェロシアン化合物など)粘土性無機物、活性炭等から構成された除去剤によって、放射性物質を効率よく除去する方法が記載されている。
特許文献4には、モルデナイトやアルミノケイ酸塩などのゼオライト類、リンモリブデン酸アンモニウムなどのヘテロポリ酸塩類、リン酸チタンなどの多価金属の酸性塩類、不溶性フェロシアン化物類などの無機イオン交換体から構成された除去剤を利用し、放射性セシウム、放射性ストロンチウム、あるいは放射性ヨードを含む溶液に、それぞれ、非放射性のセシウム塩、非放射性ストロンチウム塩、あるいは非放射性ヨード塩を大量に加えて、その混合物を上記の除去剤で除く方法が記載されている。
特許文献5には、海水などの塩類が混入した放射性汚染水に、オキシン(8-Hydroxyquinoline)、リンモリブデン酸アンモニウム(AMP)、Br3をそれぞれ添着し、担持させた細粒の活性炭を投入し、放射性のCP(放射性腐食生成物)、FP(放射性核分裂生成物)、TRU(ウランを含む超ウラン元素類:U、Pu、Am、Cm)、Cs(セシウム)、Iodine(ヨウ素)を捕捉し、ロジゾン酸(RHOD)の粉末あるいは溶液を添加して放射性Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)とキレート化し、それらを沈殿剤で凝集沈殿させて1次浄化処理し、さらに1次浄化処理した放射性汚染水についてオキシン(8-Hydroxyquinoline)、リンモリブデン酸アンモニウム(AMP)、Brをそれぞれ担持した粗粒の活性炭を充填した浄化塔へ通液する2次浄化処理により、海水などの塩類が混入した放射性汚染水から放射性物質を除去する方法が記載されている。
特許文献6には、ウエア及び装身具に、複数の空気放散孔又は開口溝を形成した新鮮空気放散管を備え、送気管を経由して、脱着開閉弁により、新鮮空気供給源に結続で、常温常湿無添加、或は温冷、乾湿、各種添加等の新鮮空気を身辺に放散して、気中有害物質の呼吸吸引及び付着防止するようにした新鮮空気供給装置が記載されている。
特許文献7には、粉末状イオン交換型吸着剤と、0.1重量%以上のイオン性基を含有するアクリロニトリル系重合体(バインダー)からなる、スキン・コア構造をもつ多孔性成型物であって、1μ以下の厚さの半透性のスキン層と、50%以上の空隙率をもつ複合吸着体成型物が記載されている。
又、特許文献8には、雰囲気の悪臭を取り除くとともに繊維布帛に悪臭が残存しない優れた機能を有する着臭防止材料を提供する技術が記載されている。
更に、特許文献9には、ポリマーの溶融糸条に、防ダニ性,抗菌性,消臭性,吸湿性,保温性,マイナスイオン発生,難燃性,帯電防止性などの機能性を有する粉体からなる改質剤を吹き付けて固着させる事により、機能性や風合いの改良効果が大きく且つ耐久性のある改質合成繊維を容易に安価で製造する技術が記載されている。
特許文献10には、磁性複合粒子により、放射性物質類を、環境耐性が高く、大量処理にも好適な、放射性物質類除染システムが記載されている。
特許文献11には、セピオライトが含まれた濾過層内を、放射性汚染物質を含んだ流体を通過させ、濾過層との接触により、放射性汚染物質を吸着除去する流体内の放射性汚染物質の除去技術が記載されている。
特許文献12には、キトサンと、酸性基を有するポリマーと、アルカリ金属又はアンモニウム基からなる化合物を主成分とする顔料とを含有する吸着剤組成物により、放射性汚染物質を高選択的に吸着して、効率よく汚染水を浄化する放射性物質の処理方法が記載されている。
特許文献13には、環状オリゴ糖を、放射性物質の捕捉成分として含む放射性物質回収材、及び、この回収材を利用した放射性物質回収器具や放射性物質回収方法が記載されている。
特許文献14には、吸着剤、鉄系凝集剤、及びアルカリ性物質を含む浄化剤を水に添加し、水中の汚染物質を吸着剤に吸着させ、汚染物質が吸着した吸着剤を鉄系凝集剤によって沈降させ、その後、沈降物を水から除去する水の浄化方法が、記載されている。
特許文献15には、光変換能のある蛍光色素を含有し、放射線を含む短波長域の電磁波を吸収して長波長域の電磁波を放射する樹脂成形体を用いて、放射線を樹脂成形体に吸収させることにより放射能汚染を防除する技術が記載されている。
特許文献16には、安定相であるアラゴナイト又はカルサイトと比較して、モノハイドロカルサイトの準安定相を利用し、モノハイドロカルサイトの反応性をヒ素の吸着に活用した技術が記載されている。
特許文献17には、モノハイドロカルサイトの準安定相を利用し、モノハイドロカルサイトの反応性をリン回収剤に活用した技術が記載されている。
特許文献18には、ナトリウム、カルシウム等のアルカリ金属は吸着せず、セシウム及びその化合物を選択的に反応して吸着するフェロシアン化金属化合物を結着剤と混合して分散液を作成し、該分散液を支持基材に含浸或は塗布させたセシウム除去材が記載されている。
特許文献19には、ガス吸着性,吸放湿性,脱臭性,帯電防止性,イオン交換機能,遠赤外線放射性等を有する微粉木質炭を分散性良好な状態で合成繊維に練込み、高機能性繊維を容易に製造する技術が記載されている。
特開2012−022482号公報 特開2012−225714号公報 特開2002−267795号公報 特開2012−225892号公報 特開2012−229998号公報 特開2007−275537号公報 特開昭57―140644号公報 特開平10−219569号公報 特開2003−129384号公報 特開2012−237738号公報 特開2012−242143号公報 特開2012−236190号公報 特開2012−112769号公報 特開2013−696号公報 特開2013−6号公報 国際公開WO2010/087297号公報 特開2012−30210号公報 特開2013−050438号公報 特開2004−149998号公報
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/09/09030112/01.gif
特許文献1〜4及び14に記載されている水に溶けた放射性物質の除去方法では、いずれも、放射性物質吸着剤を水中に投入し吸着させた後、吸着材を沈殿・凝集させる工程が必要であった。この沈殿/凝集工程は、一般に数時間という長時間を必要とし、大量の高濃度汚染水を処理する場合には、非現実的であるという問題点となっていた。また、2013年2月現在、福島第一原子力発電所からは、少なくとも300〜400ton/日の割合で放射能汚染水が生成されており、すでに貯蔵されている汚染水とあわせると、汚染水の高速浄化処理は、緊急の課題となっている。更に、高濃度の放射性物質を吸着させた場合には、放射性物質吸着剤を人間が近寄って、容易に収集/保管処理できないという問題点があった。更に又、2013年8月23日現在、東京電力は、福島第一原子力発電所内の汚染水から8千万ベクレル/リットルのストロンチウム90を中心とした放射性物質が検出されたと発表したが、作業者に対する放射能の被曝量が多すぎるとして、放射性物質の回収作業を放棄している。
又、特許文献5の技術では、活性炭を積極的かつ多量に活用することにより、多種類の放射性核種を除去する構成であるが、実際の除染作業では、活性炭に放射性物質を吸着させた瞬間から、活性炭が高濃度の放射性物質となってしまい、これらの高濃度放射性物質で汚染された活性炭を、作業者が極力被曝せずに、毎時6トンの処理能力のある1つの浄化塔当たり860Kgの汚染活性炭を脱水する作業(脱水せず水分を含んだまま活性炭を処理する場合には、非常に重い重量物を大量に作業者が取り扱う作業が必須となる)や、極力被曝せずに浄化塔から汚染活性炭を迅速に排出/取出す作業、及び取出した汚染活性炭を極力被曝せずに搬送し保管する作業、更には、その後新しい活性炭を搬入して詰め替える作業に関しては一切記載されていない。しかも活性炭は、放射性物質のみならず微粒子であれば何でも吸着する性質があるので、汚染水等に泥やコロイド状の微粒子が含まれている場合には、放射性物質の吸着効率が著しく低下するという問題点がある。
更に、特許文献13では、環状オリゴ糖を、放射性物質の捕捉成分として含む放射性物質回収材を利用して、液体や気体中の放射性物質を回収するようになっているが、流体中に環状オリゴ糖を含む放射性物質回収材をフィルタ構成で、直接、直列に挿入しているだけなので、フィルタを挿入した場合の流体抵抗の大きさが全く考慮されておらず、特許文献14の構成では、毎時1トンの汚染水を処理することは、非常に多量のエネルギーを消費することになる。又、高濃度に放射能汚染されたフィルタを作業者が被曝せずに交換作業する手段/方法に関しても、まったく言及されていない。
一方、放射性物質の吸着効率の観点からは、吸着材の表面積ができるだけ広い方が、吸着効率が向上して好ましい。しかしながら、吸着剤の表面積を拡大するため、吸着剤の大きさを微粒子化すればするほど、水中での凝集・沈澱工程に長時間を必要とし、放射性物質の除去処理に必要な時間の効率化が図れないという問題点が、特許文献12、14及び18でも指摘されている。
更に、沃化カリウムの服用だけでは、根本的な放射性物質に対する防護対策になっておらず、重大な原子力発電所の事故が発生した場合には、少なくとも1か月の期間、放出されるすべての放射性核種に対して有効な放射性物質に対する防護対策が、世界的に望まれている。
更にまた、大気中には、長期間にわたり、放射性物質が浮遊し続けるので、水中だけでなく、大気中の放射性物質を効率的に低減・除去する技術・方法が実現できることが好ましい。
更に、特許文献15には、放射性物質から放射される放射線をそれより長波長の電磁波に変換して無害化する技術が記載されているが、放射性物質そのものを除去する技術ではないので、外部から飛来する放射性物質の微粒子に対しては、多少の効果はあるが、すでに農作物に付着している放射性物質や土壌中に存在する放射性物質、更には、河川の水中に混入して水田に流入する放射性物質に対しては、その効果は、非常に疑問である。
又、従来の放射性物質を吸着/除去する技術では、吸着効率が主として課題とされてきたが、実際に衣料/家庭用や産業用/農業用に使用する場合には、一旦放射性物質を吸着した吸着剤が、容易に剥離/分解して、環境中に再度放出されるようでは、まったく実用に耐えないので、放射性物質の吸着剤が、環境中に放出されにくく、かつ、吸着した放射性物質から放射される放射線を所定の期間浴びても、糸/シート状物等の吸着剤を含む基材が耐放射線性を具えた材料で構成される必要がある。
特許文献18には、ナトリウム、カルシウム等のアルカリ金属は吸着せず、セシウム及びその化合物を選択的に反応して吸着するフェロシアン化金属化合物を結着剤と混合して支持基材に含浸或は塗布させたセシウム除去材が記載されている。しかして、放射性セシウムは、人体の体内に摂取した場合、70〜100日でその一部が体外に排出されるが、放射性ストロンチウムは、人体の体内に摂取された場合、18〜30年以上骨髄等に蓄積され、非常に人体に有害なことが知られているが、特許文献18の吸着剤では、放射性ストロンチウムは吸着せず全く除去できない。又、特許文献18の吸着剤では、放射性沃素も吸着せず全く除去できない。
特許文献19には、ガス吸着性や遠赤保温性などを有する微粉木質炭を分散性良好な状態で合成繊維に練込み、高機能性繊維を容易に製造する技術が記載されているが、ガス吸着性,吸放湿性,脱臭性,帯電防止性,イオン交換機能,遠赤外線放射性等の機能は付加されているが、放射性物質の吸着機能に関しては一切記載されていない。
よって、本発明は、上述したような課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、上述の従来の各種課題を解決し、使用する材料が比較的低価格で調達でき、高効率で環境中に放出された各種の放射性物質吸着性能を発揮すると共に、その製造方法も効率的な環境中に放出された放射性物質の吸着剤を含む基材を提供することにある。
又、人体の体内に摂取された場合、放射性セシウムよりはるかに有毒な放射性ストロンチウムを、大気中や飲料水、河川の流水等から低減/除去する基材を提供することにある。更に、人体に有毒な放射性ストロンチウムを環境中から低減/除去すると同時に、同一の基材から放射性セシウムも低減/除去可能な基材を提供することにある。更に又、乳幼児や20歳以下の少女等に極めて有害な放射性沃素を、環境中から低減/除去可能な基材を提供することにある。
又、高濃度汚染水から放射性物質を回収/低減処理する場合、汚染水の現場には作業者が極力接近して作業する動作を回避し、遠隔の場所から全ての作業が確実に遂行でき、システムの設置や稼働・運用コストが極めて低廉で済ますことができると共に、現場での作業者の被曝線量を極力低減することが可能であり、更に、吸着した放射性物質の後処理が人手を介さずに簡略化可能な、環境中に放出され拡散している放射性物質の低減方法及び装置を提供することにある。
本発明では、環境中に放出された放射性物質の吸着剤を含む基材として、ア)基材表面に、該放射性物質吸着剤が結着剤を介して付着していることを特徴とする環境中に放出された放射性物質の吸着剤を含む基材、及び、イ)基材自体に、放射性物質吸着剤を混練せしめ吸着剤と基材原料とを混練して練込み基材と一体化させたことを特徴とする環境中に放出された放射性物質の吸着剤を含む基材が利用可能である。
上記ア)の本発明の糸状物/シート状物の基材表面に、放射性物質吸着剤が結着剤を介して付着している環境中に放出された放射性物質吸着剤を含む基材に関して説明すると、この基材では、支持基材は予め別途通常の常法で糸又はシートとして製造され用意されており、この準備された基材表面に、別工程で放射性物質吸着剤を結着剤を介して貼着/塗布して付着させるもので、例えば、特許文献7〜9及び18と同様の方法により、少なくとも1種類の放射性物質吸着/吸収剤を、糸状繊維の外周、又は、テープ状シートの外周面に含ませ、放射性物質吸着剤を含む織物用糸状物を製造し、次に、この糸状物/シート状物を利用して、布、織物、ネット、構造体等に加工し、これらの加工物を、更に、放射性物質吸着剤、好ましくはイオン交換型放射性物質吸着剤を含む布、織物、ネット、構造体等に変換して、水中や大気中の放射性物質を低減/除去する。
しかして、糸状物の太さは、断面が略円形状の場合には、その直径が、10mmから5μmの範囲のものが好ましく、5mmから10μmのものがより好ましく、2.5mmから20μmのものが更により好ましい。また、断面がテープ状シートのような矩形の場合には、厚さ5μmから5mm、幅0.1mmから50mmの範囲のものが好ましく、厚さ10μmから2.5mm、幅0.2mmから25mmのものがより好ましく、厚さ15μmから1.5mm、幅0.3mmから10mmのものが更により好ましい。
更に、高濃度放射性物質汚染水から大量の放射性物質を効率よく除去する場合や水田等に流入する放射性物質を所定の期間吸着させるような場合には、放射性物質吸着剤、特に、イオン交換型放射性物質吸着剤を大量に、接着、付着、溶着、含侵、担持、混練、混合等により含ませた糸/シート状物が有効であり、スリット状の紡糸口金から溶融紡糸したシート状物の基材片面又は両面の外周、或いは、基材と一体化させて、放射性物質吸着材を,貼着、接着、付着、溶着、含侵、担持、混練、混合等により含ませた糸/シート状物を製造し、かかる糸/シート状物で、編織物やネット状物を加工し、大量の放射性物質を後述する低減/除去プロセスを応用して、一気に大量に吸着処理することが効率的である。
また、大気中に放出され浮遊している放射性物質から人体を保護するような場合には、その直径が、5〜500μmφの細めの合成繊維製や金属製の糸状物に対し、イオン交換型放射性物質吸着剤を、接着、付着、溶着、含侵、担持、混練、混合等により含ませた糸状物を製造し、この細めの糸状物で、人間の皮膚等が接触した場合でも、織物や衣料品に対して、ゴツゴツやザラザラした違和感を感じさせない、自然な接触感を与える加工物を製造し、かかる細めの糸状物で構成された加工物により、衣類や放射性物質防護製品を製造するのが好ましい。
本発明の環境中に放出された放射性物質の吸着剤を含む基材から製造/加工される糸状物又はシート状物は、更に、衣料、布、編織物、ネット状物、構造体、シート状ネット状物等の製品に加工可能であり、これらの製品に含まれている吸着剤により、大気中や水中に拡散している放射性物質が該吸着剤に一旦吸着/捕捉され固定されると、簡単に剥離/分離して環境中に再度放出されるようなことを防止できると共に、使用する材料が比較的低価格で調達できるので、非常に経済的であり、吸着した放射性物質から放射される放射線を所定の期間浴びても、糸やシート状/ネット状物等の構造形体であると、その一部分が破損してもフェールセイフ構造を維持することが可能であり、大気中や高濃度汚染水等の水中で所定の期間使用しても、環境を再汚染することも少なく安定的に使用できる。
更に、本発明の放射性物質吸着剤を含む基材は、タオル、靴下、手袋、マスク、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、レインコート、割烹着、ベビー用衣料品、エアコン/真空掃除機/空気清浄器等の家電製品のエアフィルタ等の衣料/家庭用資材や、カーテン、ブラインド、雨戸、簾、暖簾、ルーバー、テーブルクロス、壁紙、カーペット、椅子/ソファーのカバー等のインテリア資材,蚊帳、布団カバー、シーツ、ベットカバー、寝巻等の寝具資材,手術着/手袋等の医療用資材、更には、自動車/電車/飛行機/客船等の乗物のシートカバー、自動車/トラックのエアフィルタ、エアコンプレッサのエアフィルタ、トラック等の荷台シート/カバー、包装紙/包装カバー、荷紐、荷物袋、新聞紙、ダンポール、寒冷紗、虫除けカバー、農業用マルチ等の産業用/農業用資材、作業用手袋/靴下、ブルーシート、雑草抑制カバー、塗料等の土木/建築用資材等として使用しても、環境を再汚染することなく、安心して安全に使用することが可能であると共に、大気中や水中に放出されて浮遊したり拡散している放射性物質を吸着/捕捉することができるので、環境中に放出された放射性物質を捕捉して固定化し、放射性物質の低減/除染効果が多大であり、かつ、人体内部への放射性物質の摂取/取込みを大幅に低減することが可能である。
又、本発明の高濃度放射性物質汚染水からの放射性物質低減方法及び装置によれば、高濃度汚染水が貯蔵されたり、流出している現場において、放射性物質低減処理中に、作業員が被曝する被曝線量を極力低減することが可能であり、24時間、365日無人運転することも非常に低コストで実現可能であり、大量の高濃度汚染水を高速かつ効率的に短時間で処理できると共に、処理費用も、極めて低廉に抑制することが可能である。
図1は、メルトダウンを起こした原発事故現場の構造の1例を示す断面図である。 図2Aは、本発明をトレンチに溜まった高濃度汚染水に適用する構成の1例であり、 図2Bは、放射性物質吸着媒体を供給し、搬送経路を構築する工程の1例を示す図であり、 図2Cは、吸着媒体の搬送経路を、確立した状態の1例を示す図であり、 図2Dは、吸着媒体を汚染水に侵漬し、汚染水から放射性物質を吸着する工程を示す図である。 図3は、本発明の吸着基材の効果を説明するための、液体の試料濃度と計測値の関係を示すグラフである。
本発明でいう基材とは、糸状或はシート状物/ネット状物であれば何でもよいが、好ましくは繊維構造物、フィルム状物及びこれらの複合材料のいずれかであり、かかる繊維構造物としては、編織物、不織布、紙状物及び網状物から選ばれた少なくとも1種のシート状物であるか、更には綿状のものや立毛構造体を使用することもできるが、本発明の基材で空気又は液体を被包した状態でも、内部及び外部の流体が、編織物、不織布、紙状物及び網状物の基材表面と接触しながら通過/貫通移動可能な構造のものが好ましい。
本発明では、環境中に放出された放射性物質の吸着剤を含む基材として、ア)基材表面に、放射性物質吸着剤が結着剤を介して付着していることを特徴とする放射性物質吸着剤を含む基材、及び、イ)基材原料自体に、放射性物質吸着剤を混練せしめ吸着剤と基材原料とを混練して練込み基材と一体化させたことを特徴とする放射性物質吸着剤を含む基材が、それぞれその製法に違いはあるが、利用可能である。
上記ア)の本発明の糸状物/シート状物の基材表面に、放射性物質吸着剤が結着剤を介して付着している環境中に放出された放射性物質の吸着剤を含む基材に関して説明すると、例えば、特許文献7〜9及び18と同様の方法により、少なくとも1種類の放射性物質吸着/吸収剤を、糸状繊維の外周、又は、テープ状シートの外周面に含ませ、放射性物質吸着剤を含む織物用糸状物を製造し、次に、この糸状物/シート状物を利用して、布、織物、ネット、構造体等に加工し、これらの加工物を、更に、放射性物質吸着剤、好ましくはイオン交換型放射性物質吸着剤を含む布、織物、ネット、構造体等に変換して、水中や大気中の放射性物質を低減/除去する。尚、上記基材表面とは、繊維外周表面及びシート表裏面の少なくとも1つの面であり、単糸または糸条の外周表面でもよいし、シートの両面又は表裏面のいずれか片方でもよい。
又、糸状物/シート状物の基材としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム状弾性体、天然木、セルロース系材料、無機材料、金属材料等の材質からなるものを種々使用することができ、熱可塑性樹脂の、ポリオレフィン系(例えば、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等)、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリエチレンテレフタレート系、ポリブチレンテレフタレート系、ポリスチレン系、ABS樹脂系、AS樹脂系、ポリメチルメタクリレート系、ビニロン系等の合成樹脂からなる材料や、熱硬化性樹脂の、メラミン樹脂系、不飽和ポリエステル樹脂系等の合成樹脂材料が挙げられる。また、ゴム状弾性体としては、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。更に、セルロース系材料としては、レーヨン(銅アンモニアレーヨン、ビスコースレーヨン等)、テンセル、ポリノジック等が挙げられ、金属材料としては、鉄、ステンレス、銅、真鍮、アルミニウム、金、銀、チタン、マグネシウム、亜鉛等が挙げられる。更に、ガラス繊維強化プラスチック、炭素繊維、ボロン繊維、アラミド繊維等からなる強化繊維プラスチック(FRP)で構成された糸状物/シート状物等も、利用可能である。
上記イ)の本発明の糸状物/シート状物の基材原料と一体化させて製造する、環境中に放出された放射性物質の吸着剤を含む基材の場合には、吸着剤と基材原材料とを混合/混練して基材と一体化させるが、熱可塑性樹脂の、ポリオレフィン系(例えば、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等)、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリエチレンテレフタレート系、ポリブチレンテレフタレート系、ポリスチレン系、ABS樹脂系、AS樹脂系、ポリメチルメタクリレート系、ビニロン系等の合成樹脂や、熱硬化性樹脂の、メラミン樹脂系、不飽和ポリエステル樹脂系等の合成樹脂の原材料に、分散剤と共に、所望の大きさの粒径を有する粒子状の放射性物質吸着剤を混合/混練して、所定の断面形状を有するノズルから押出すことにより放射性物質吸着剤と一体化した糸状物/シート状物の基材を製造可能であり、混練した放射性物質吸着剤がその性能を発揮するためには、繊維状糸状物の場合には、吸着剤の粒径は、糸の直径の75%以下の大きさであることが好ましく、糸の直径の50%以下であれば、より好ましい。一体化したシート状物の場合には、吸着剤の粒径は、シート状物の厚さの75%以下の大きさであることが好ましく、シート状物の厚さの50%以下であれば、より好ましい。
又、上記ア)及びイ)の本発明の糸状物の断面形状もなんら制限されるものではなく、円形断面、楕円形断面、扁平断面、三葉断面、中空断面、Y型断面、田型断面、C型断面、W型断面、三角断面、又はこれらの組合わせ等を採用することができ、断面形状を異型断面とすることで、柔らかさ、膨らみ感、嵩高性、軽量性、保温性等を付与することも可能となる。しかして、糸状物の太さは、断面が略円形状の場合には、その直径が、10mmから1μmの範囲のものが好ましく、5mmから5μmのものがより好ましく、2.5mmから10μmのものが更により好ましい。また、断面がテープ状シートのような矩形の場合には、厚さ1μmから5mm、幅0.1mmから5000mmの範囲のものが好ましく、厚さ2μmから2.5mm、幅0.2mmから3000mmのものがより好ましく、厚さ2.5μmから2mm、幅0.3mmから2000mmのものが更により好ましい。
更に、高濃度放射性物質汚染水から大量の放射性物質を効率よく除去する場合や水田等に流入する放射性物質を所定の期間吸着させるような場合には、放射性物質吸着剤、特に、イオン交換型放射性物質吸着剤を大量に、接着、付着、溶着、含侵、担持、混練、混合等により含ませた糸/シート状物が有効であり、スリット状の紡糸口金から溶融紡糸したシート状物の基材片面又は両面の外周に、貼着、接着、付着、溶着、含侵、担持させ含ませた糸/シート状物を製造したり、或いは、基材と吸着剤を混合一体化させて、該吸着剤を混練し含ませた糸/シート状物を製造し、かかる糸/シート状物で、編織物やネット状物を加工し、大量の放射性物質を後述する低減/除去プロセスを応用して、一気に大量に吸着処理することが効率的であり、吸着剤の反応/活性表面積をできる限り広くした吸着媒体を使用するのが好ましく、例えば、その基材断面が矩形であり、厚さ2μmから5mm前後、幅0.3〜50mmのテープ状又はシート状物を基材とし、当該基材の外周表面全体に、バインダーを介してその直径が100μm以下のイオン交換型等の放射性物質吸着剤を大量に、貼着、接着、付着、溶着、含侵、担持等により含ませたり、合成樹脂の基材原料に、その直径が100μm以下の放射性物質吸着剤を分散剤と共に混練したスラリーを連続して定量的に注入し、基材原料とスラリーを均一に攪拌した後、直ちに攪拌体を固化させることなく溶融紡糸して、所定の配合重量成分を含有するテープ状又はシート状物を生成/製造し、次に、かかるテープ状又はシート状物を、織機にかけ、その幅が10mmから10000mmの編織物やネット状物に加工し、より好ましくは、幅15mmから5000mmに加工し、ドラム等に巻き取り反物状の放射性物質吸着媒体を形成し利用することも可能であり、又、放射性物質吸着剤を含むテープ状又はシート状物の応用としては、上述と同様のテープ状又はシート状物乃至糸状物を更に加工処理して、編織物やネット状物に加工し、所定の幅を有し比較的長い巻取り長さを有する反物状の編織物、シート状物、ネット状物の少なくとも1つを含む放射性物質吸着媒体を形成することも可能であり、又更に放射性物質吸着媒体(以下、短く吸着媒体と略す)としては、上記反物状の編織物、シート状物、ネット状物の少なくとも1つを含み、これらを単独又は組合せて、複数枚重ねて更に積層し、所望の厚さを有する吸着媒体を形成することも可能である。かかるテープ状又はシート状物で構成された加工物により、産業用/農林水産業用に大量の放射性物質を後述する低減プロセスを応用して、効率良く吸着処理することが可能となる。
また、大気中に放出され浮遊している放射性物質から人体を保護するような場合には、その直径が、5〜500μmφの細めの合成繊維製の糸状物に対し、イオン交換型等の吸着剤を、接着、付着、溶着、含侵、担持、混練、混合等により含ませた糸状物を製造し、この細めの糸状物で、人間の皮膚等が接触した場合でも、織物や衣料品に対して、ゴツゴツやザラザラした違和感を感じさせない、自然な接触感を与える衣料品や加工物を製造し、かかる細めの糸状物で構成された加工物により、衣類や放射性物質防護製品を製造するのが好ましい。
次に本発明にいう放射性物質吸着剤に関して説明すると、放射性物質吸着剤とは、放射性物質を捕捉できるものであればよく、捕捉したい放射性物質に応じて任意の公知のものを任意の組合せで制限なく用いることができ、その形状は、例えば、ペレット、ボール(粒子)状、顆粒状、粒状もしくは微粒子(パウダー)状等の形状で提供され得るが、吸着剤の性能は、吸着剤表面と溶質との物理化学的な親和性と、吸着剤の有効表面の広さに大きく依存し、有効表面積ができるだけ広い方が、吸着効率が向上するので、好ましい。
しかして、本発明の特徴の一つは、平均粒径が所定の範囲の微粒子状の吸着剤を用いることにあるが、平均粒径が小さい微粒子状の吸着剤を用いると、吸着性能は改善するが、一方で吸着剤自体を水から沈澱処理等で除去するプロセスに時間がかかり問題点となっていたが、本発明では、基材となるシート状物や、その一部である繊維構造物、フィルム状物の表面に吸着剤自体を固定/固着することにより、吸着剤自体を水から除去する操作を、簡単かつ高速化すると共に、現場の作業者が極力被曝せずに放射性物質低減作業を実行することを可能ならしめている。
本発明に使用可能な吸着剤の例には、特許文献14と同様にして、無機化合物、有機化合物、及び金属錯体のいずれも含まれる。本発明において吸着剤として使用可能な無機化合物の例には、活性炭、ゼオライト、モノハイドロカルサイト、アルミナ、ジルコニア、酸化マンガン、アルミン酸マグネシウム、ポリアンチモン酸、層状ケイ酸塩、ベーマイト、アパタイト、ヒドロキシアパタイト、ハイドロタルサイト、及びシュベルトマナイト等が含まれる。本発明において吸着剤として使用可能な有機化合物の例には、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、及びキレート交換樹脂等が含まれる。本発明において吸着剤として使用可能な金属錯体の例には、フェロシアン化鉄、硫酸マグネシウムマンガン、ポルフィリン金属錯体、フタロシアニン金属錯体、シッフ(Schiff)塩基金属錯体、イミノジ酢酸金属錯体、及び多孔性金属錯体等が含まれる。本発明において吸着剤は、一種を単独で用いてもよく、また、複数種を併用してもよい。
本発明において吸着剤の粒径は、10nm以上かつ5000μm以下であることが好ましく、2000μm未満であることがより好ましく、25nm以上1000μm以下であることがさらに好ましく、50nm以上かつ100μm以下であることがよりさらに好ましく、100nm以上かつ25μm以下であることが特に好ましい。吸着剤の粒子径がこの範囲よりも小さい場合、吸着剤粒子の製造が高価となり、吸着剤の粒子径がこの範囲以上である場合、吸着剤の吸着効率が低下する。
吸着剤は、表面に細孔を有する多孔質体であるのが好ましい。細孔のサイズは、直径2nm以下のマイクロ孔、直径2〜50nmのメソ孔、直径50nm以上マクロ孔に分類されることがIUPACにより定義されている。本発明において吸着剤は、マイクロ孔を有することが好ましい。多様なサイズの被吸着物質除去の観点から、本発明においては、マイクロ孔を有する吸着剤とメソ孔を有する吸着剤を併用することが好ましく、マイクロ孔を有する吸着剤とメソ孔を有する吸着剤とマクロ孔を有する吸着剤とを併用することがより好ましい。
又、吸着剤が人の皮膚に接触する用途では、粒径が100μmより大きい場合には、繊維材料表面のザラツキ感が大きくなり、風合いも粗硬になる傾向がある。該多孔質物質としては、ゼオライト、モルデナイトや活性炭などの非晶性物質が経済性と吸着効率の面から好ましい。かかる多孔質物質としては、好ましくは10m2 /g以上、さらに好ましくは50m2 /g以上の比表面積を有するものはがよい。
これらの無機化合物系イオン交換型放射性物質吸着剤の付着量は、たとえば繊維構造体でいえば、繊維材料に対して好ましくは0.03〜25%owf、さらに好ましくは0.1〜15%owfである。付着量が0.03%owfより小さい場合、十分な吸着効果を得にくくなり、25%owfより大きい場合、繊維材料から剥離しやすくなる傾向にある。
本発明では、イオン交換型放射性物質吸着剤として、ゼオライトを使用してもよい。ゼオライトとしては、天然および合成品のゼオライトを使用することが可能である。本発明において天然のゼオライトとしては、アナルシン、チャバサイト、クリノプチロライト、エリオナイト、フォジャサイト、モルデナイト、フィリップサイト、火山灰等を用いることが可能である。本発明において合成ゼオライトとしては、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト等を用いることが可能である。
本発明では、吸着剤としてチタン酸アルカリ金属塩、結晶性シリコチタネート(CST)を使用してもよい。チタン酸アルカリ金属塩としては、チタン酸ホランダイト、チタン酸ジルコノライトあるいはチタン酸ペロブスカイト等が利用可能である。
本発明では、吸着剤として活性炭を使用してもよい。活性炭としては、植物質(木材、セルロース、のこくず、木炭、椰子殻炭、素灰等)、石炭質(泥炭、亜炭、褐炭炭、瀝青炭、無煙炭、タール等)、石油質(石油残査、硫酸スラッジ、オイルカーボン等)、パルプ廃液、合成樹脂などを炭化し、必要に応じてガス賦活(塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、リン酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)したものを使用することが可能である。
又、本発明では、吸着剤として、ヒドロキシアパタイトをはじめ多孔質アパタイト等公知の天然・人工のナノ多孔体、ペクチンなどの食物繊維、金属フェロシアン化物、微孔質テフロン(登録商標)等が利用可能である。金属フェロシアン化物の具体例としては、フェロシアン化鉄(プルシアンブルー)、フェロシアン化ニッケル、フェロシアン化コバルト、フェロシアン化銅などのフェロシアン化金属が挙げられる。イオン交換体は、イオン交換樹脂、バーミキュライト・ベントナイトなどの天然イオン交換体、リン酸ジルコニウム・酸化アルミニウム・フェロシアン化鉄などの無機イオン交換体などが挙げられる。
本発明では、吸着剤として、層状ケイ酸塩を使用してもよい。層状ケイ酸塩としては、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト、ヘクトライト、マーガライト、タルク、金雲母、クリソタイル、緑泥石、バーミキュライト、カオリナイト、白雲母、ザンソフィライト、ディッカイト、ナクライト、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、アンチゴライト、ハロイサイト等を使用することが可能である。本発明において使用可能な層状ケイ酸塩の市販品としては、ラポナイトXLG(英国、ラポート社製の合成ヘクトライト類似物質)、ラポナイトRD(英国、ラポート社製の合成ヘクトライト類似物質)、サーマビス(独国、ヘンケル社製の合成ヘクトライト類似物質)、スメクトンSA−1(クニミネ工業(株)製のサポナイト類似物質)、ベンゲル((株)豊順洋行販売の天然モンモリロナイト)、クニピアF(クニミネ工業(株)販売の天然モンモリロナイト)、ビーガム(米国、バンダービルト社製の天然ヘクトライト)、ダイモナイト(トピー工業(株)製の合成膨潤性雲母)、ソマシフ(ME−100、コープケミカル(株)製の合成膨潤性雲母)、SWN(コープケミカル(株)製の合成スメクタイト)、SWF(コープケミカル(株)製合成スメクタイト)等を挙げることが可能である。
本発明では、吸着剤として、陽イオン交換樹脂を使用してもよい。陽イオン交換樹脂としては、ジビニルベンゼンで架橋したアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのポリマーを加水分解して得られる弱酸性陽イオン交換樹脂、スチレン−ジビニルベンゼンのコポリマーをスルホン化した強酸性陽イオン交換樹脂、等を使用することが可能である。
本発明では、吸着剤として、陰イオン交換樹脂を使用してもよい。陰イオン交換樹脂としては、スチレン−ジビニルベンゼンのコポリマーの芳香環に、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アンモニウムのいずれか結合した陰イオン交換樹脂等を使用することが可能である。陰イオン交換樹脂に結合しているアミノ基が、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アンモニウム塩となるのに伴い、陰イオン交換樹脂の塩基性は強くなる。
本発明では、吸着剤として、キレート樹脂を使用してもよい。キレート樹脂としては、イミノジ酢酸、イミノジプロピオン酸、ポリアミン、アミノリン酸、イソチオウロニウム、ジチオカルバミン酸、グルカミン等の官能基が導入されたもの等を使用することが可能である。本発明において使用可能な市販のキレート樹脂としては、ダイヤイオン(三菱化学(株))CR10、CR11、CR20等、アンバーライト(ローム・アンド・ハース・ジャパン(株))IRC718等、ダウエックス(ダウ・ケミカル日本(株))、デュオライト(住友化学(株))CS−346、ES−467等を挙げることが可能である。
本発明では、吸着材としてカルシウム炭酸塩を使用してもよい。カルシウム炭酸塩としては、霰石、石灰石、貝化石あるいは、有孔虫。サンゴ、魚介類など生物由来の殻や骨類、また、消石灰や漆喰などのカルシウム塩類を用いることが可能である。
本発明では、吸着剤として多孔性が互いに異なる2以上の微粒子を用いることにより吸着効率を改善することができる。当該併用と共に、又はそれに代えて、互いに異なる物質に対する吸着性に優れる吸着剤を2種以上併用してもよい。1種のみの吸着剤では、汚染水中の全ての被吸着物質に万能と言うわけではないが、複数種を併用することで、汚染水や大気中のより多くの種類の被吸着物質を除去可能となる。
吸着剤は、種類によってそれぞれ、吸着特異性が異なる。
一般的に、被吸着物質が放射性物質の吸着では、活性炭及びゼオライトのいずれか少なくとも1種を吸着剤として選択することが有効であり、好ましくは、ゼオライトを選択することが有効であり、放射性物質が有機化合物として吸収されている場合には、活性炭及びゼオライトを吸着剤として併用することが有効である。
また、被吸着物質がカチオン性化合物である場合、ゼオライト、層状ケイ酸塩、カチオン交換性樹脂、及びキレート樹脂のいずれか少なくも1種を吸着剤として選択することが有効であり、好ましくはゼオライト、及び層状ケイ酸塩の少なくとも1種を選択することが有効である。
また、被吸着物質がアニオン性化合物である場合、ハイドロタルサイト、シュベルトマナイト、及びアニオン交換性樹脂のいずれか少なくも1種を吸着剤として選択することが有効であり、好ましくは、ハイドロタルサイト、及びシュベルトマナイトの少なくとも1種を選択することが有効である。
しかして、被吸着物質がヨウ素である場合、活性炭、アパタイト、セオライト等の多孔質物質の他かに、シュベルトマナイト、ハイドロタルサイト、ベーマイト、及びシクロデキストリン含有ポリマー架橋体のいずれか少なくとも1種を吸着剤として選択することが有効であり、好ましくは、シュベルトマナイトを吸着剤として選択することが有効である。
また、被吸着物質がストロンチウムである場合、活性炭、アパタイト、セオライト等の多孔質物質の他かに、キトサン、リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、カルシウム炭酸塩、チタン酸アルカリ金属塩、結晶性シリコチタネート等を吸着剤として選択することが可能である。カルシウム炭酸塩には、カルサイト(CaCO)とアラゴナイト(CaCO)とが存在し、カルサイトは、日本語名が方解石あるいは石灰石と称され、アラゴナイトは日本語名が霰石と称され、これらカルサイトとアラゴナイトは結晶構造が異なるため鉱物としては区分されている。一方、水和カルシウム炭酸塩としては、モノハイドロカルサイト(CaCO・HO),非晶質炭酸カルシウム(CaCO・nHO)、イカイト(CaCO・6HO)及びアモルファスカルサイト等の形態が知られている。かかるモノハイドロカルサイトは海水に炭酸ナトリウムを添加することで得られることも知られている。モノハイドロカルサイト(Monohydrocalcite:CaCO・HO)は、結晶構造がTrigonal,a=10.5547Å,c=7.5644Åであり、液中のMg/Ca=0.3以上で、過飽和CO下で沈殿生成し、乾燥状態では安定であるが、水中において一度溶解し、その後アラゴナイト又はカルサイトに再結晶する。従って、安定相であるアラゴナイト又はカルサイトと比較して、モノハイドロカルサイトは準安定相であり、高い反応性を有することが期待され、その反応性を放射性ストロンチウムの吸着に活用することが可能となる。
他方、吸着する放射性物質が放射性セシウムの場合には、モルデナイトやアルミノケイ酸塩などのゼオライト類、活性炭、リンモリブデン酸アンモニウムなどのヘテロポリ酸塩類、リン酸チタン、酸化マンガンなどの多価金属の酸性塩類、バーミキュライト、不溶性フェロシアン化物などの無機イオン交換体、フェロシアン化鉄、フェロシアン化ニッケル、フェロシアン化コバルト、粘土鉱物、ペクチン(食物繊維)、多孔質アパタイト等が特に有効である。その他、グアー豆酵素分解物、アガロース、グルコマンナン、ポリデキストロース、アルギン酸ナトリウム、イヌリン、カラギーナン、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン、キトサンなども利用可能である。プルシアンブルーは、セシウムの他、タリウム除去等にも有効である。
本発明の方法を、低濃度の汚染物質を含む水/空気等の流体から、短時間に効率的に低減/除去するためには、汚染流体中に複数の汚染放射性物質が混合/溶解している可能性が高いため、1回の処理/操作でより多くの汚染物質を取り除くため、吸着剤として、有機化合物、カチオン性化合物、アニオン性化合物のいずれかに対する吸着剤を2種類組み合わせて使用することが好ましく、吸着剤3種類を組み合わせて使用することがより好ましく、吸着剤4種類を組み合わせて使用することが更に好ましい。
本発明の方法を、セシウム/ストロンチウムや沃素の放射性同位体が混合している流体、例えば、原子炉爆発事故直後の大気、雨水、海水、冷却水、農業用水、水道水、河川の流水等から、これら複数の放射性物質を同時に一括除去処理するために利用する場合には、吸着剤としては、ストロンチウムの吸着剤とセシウム又は沃素の吸着剤の2種類を混合して併用することが可能であり、ストロンチウムとセシウムと沃素の3種類の吸着剤を同時に混合し一括して併用することも好ましい。
尚、ストロンチウムとセシウムの吸着剤を混合して使用する場合、その配合割合は、ストロンチウムの吸着剤99〜1重量%に対して、セシウムの吸着剤1〜99重量%が利用可能であるが、環境中に放出された放射性ストロンチウムとセシウムの大気や水中での混合割合が計測可能又は予測可能の場合には、計測/予測されたストロンチウム及びセシウムの分布割合に応じて、適宜両吸着剤の配合割合を所望の割合に調整することが望ましく、又、人体内へ摂取された場合の悪影響を低減する用途では、生体内半減期が放射性ストロンチウムはセシウムより約100倍長いので、かかる事情を配慮した配合比率が好ましく、原発事故直後の用途では、放射性沃素を集中的に吸着するような配合比率が好ましい。
更に、本発明の方法では、予め、ヨウ素やセシウムやストロンチウム等の特定の放射性同位体を吸着する吸着剤のみでそれぞれ別々に糸状物を製造しておき、次に、編織物やネット状物を加工/製造する際に、セシウムを吸着する糸とストロンチウムを吸着する糸とを所定の割合で混合させて2種類の放射性物質吸着機能を有する編織物やネット状物を製造したり、ヨウ素、セシウム及びストロンチウムの3種類の放射性物質吸着機能を有する糸を複数種類組合わせて、所望の吸着剤の配合比率を有する編織物やネット状物を製造したり、更に多種類の放射性物質吸着機能を有する編織物やネット状物を製造することも可能である。
更に又、本発明の方法では、予め、ヨウ素やセシウムやストロンチウム等の特定の放射性同位体を吸着する吸着剤のみで糸状物を製造し、次に、編織物やネット状物を、上記特定の放射性同位体を吸着する吸着剤のみを貼着させた糸状物のみで加工/製造し、次に編織物やネット状物を使用する段階で、セシウムを吸着する編織物やネット状物とストロンチウムを吸着する編織物やネット状物とを所定の割合で重ね合わせ、積層し2種類の放射性物質吸着機能を有する編織物やネット状物として使用したり、ヨウ素、セシウム及びストロンチウムの3種類の放射性物質吸着機能をそれぞれ有する3種類の編織物やネット状物を積層して使用したり、更に多種類の放射性物質吸着機能を有する編織物やネット状物を積層して使用することも可能である。
又、乳幼児等の被曝防止用に、本発明の放射性物質吸着剤を含む基材を利用する場合には、ヨウ素、セシウム、ストロンチウムの各放射性物質吸着剤の配合割合や吸着剤を含む糸/シート/ネット等の装着割合は、例えば、表1に示すような総放出量に対応した比率に準じて設計するのが好ましい。
次に、本発明のア)基材表面に、放射性物質吸着剤が結着剤を介して付着していることを特徴とする放射性物質吸着剤を含む基材を製造する方法を説明する。本発明の基材とは、繊維単体、又は、シート状物であれば何でもよいが、好ましくは合成樹脂繊維や繊維構造物、フィルム状物及びこれらの複合材料のいずれかであり、かかる繊維構造物としては、編織物、不織布、紙状物及び網状物から選ばれた少なくとも1種のシート状物であるか、更には綿状のものや立毛構造体を使用することもできる。
本発明の上述のア)に記載の基材では、結着剤は、特許文献18と同様の結着剤及び分散剤が利用可能であり、分散液を支持基材に含浸或は塗布した際に、放射性物質吸着剤を支持基材に結着させ、基材から吸着剤が簡単に剥離/離脱しないよう十分な接着強度を維持するために使用される。本発明で使用する結着剤としては、液状重合体、液状重合性モノマー、バインダー樹脂、金属石鹸、界面活性剤、ワックス等が挙げられる。以下、これらの具体的な化合物について説明する。
先ず、液状重合体の結着剤としては、シリコーン系液状重合体、ウレタン系液状重合体、ジエン系液状重合体、オレフィン系液状重合体、アクリル系液状重合体等を挙げることができる。具体的には、シリコーンオイル、液状ポリブタジエン、流動パラフィン等を挙げることができる。また、液状重合性モノマーとしては、ブタンジオールモノアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル等が挙げられる。液状重合体や液状重合性モノマーは分散媒の役割もするので分散媒の使用を避ける事ができ、上記結着剤の中で、液体吸収性の良い基材に使用する場合は液状重合体でも良いが、吸収性の悪い基材では基材への保持性の観点から液状重合性モノマーの方が好ましい。ここで、液状重合性モノマーは通常使用する方法(例えば紫外線硬化性があれば紫外線で硬化させる)を用いて重合させて結着剤とする。
バインダー樹脂の結着剤としては、石油樹脂、ロジン誘導体、硝化綿やアセチルブチルセルロース等のセルロース誘導体、環化ゴムや塩化ゴム等のゴム誘導体、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アミノプラスト樹脂、エポキシ系樹脂、グリオキザール系樹脂、エチレン尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド系樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。この中で、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂が分散性及び基材との接着性の観点から好ましい。又、基材との接着性を向上させる等の目的で、イソシアネートやアミノ基を持つ化合物等の使用可能な硬化剤を併用しても良い。
金属石鹸の結着剤としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸バリウム、2−エチルヘキサン酸亜鉛、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛等が挙げられる。
界面活性剤の結着剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリル酸ジエタノールアミド等のアルキロールアマイド類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のポリオキシアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ジステアリン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、モノカプリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、ジステアリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリコールエーテル類等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムに代表されるアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ジ2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジイソトリデシルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩、ジ(ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテル)スルホコハク酸ナトリウム、ジ(ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル)スルホコハク酸ナトリウム等のジポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸塩、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、半硬化牛脂脂肪酸ナトリウム等の脂肪酸塩、ポリカルボン酸ナトリウム塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、特殊ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリリン酸アミノアルコール中和品、縮合ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩、縮合ナフタレンスルホン酸アンモニウム塩、高縮合ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩、特殊芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩等が挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩類、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム塩等のアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩類等が挙げられる。両性界面活性剤としては、ヤシ油アルキルベタイン等のアルキルベタイン類、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルアミドベタイン類、Z−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリームベタイン等のイミダゾリン類、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン等のグリシン類が挙げられる。ワックスの結着剤としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、サゾールワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木蝋、蜜蝋、脂肪酸エステルワックス等が挙げられる。上記結着剤は、それぞれを単独で使用することも、又複数種を併用して使用することも可能である。
次に、本発明において、放射性物質吸着剤と結着剤とを分散液とするため使用することができる分散媒について説明すると、分散媒としては、水、有機溶媒等が挙げられ、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ブチルセロソルブ、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、キシレン、トルエン、酢酸ブチル、酢酸エチル、エトキシエチルプロピオネート、メトキシプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブタノール等が使用できる。これらの分散媒は、それぞれを単独で使用することも、又複数種を併用して使用することも可能であるが、使用する結着剤が分散媒としての役割も果たす場合は、上記分散媒は必ずしも必要ではない。
本発明の放射性物質吸着剤を含む基材には、吸着剤及び結着剤と共に、その機能を向上させるため成分を必要により添加含有させることができる。添加成分としては、分散安定剤、ポリアミン系やグアニジン系帯電防止剤、アミノやハイドロゼンポリシロキサン系シリコン柔軟剤、弗素系防汚剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、セラミック、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、抗菌防臭加工剤、撥水剤、防汚剤、艶消し剤、耐熱剤、耐光剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、架橋剤、硬化剤、防腐剤、防黴剤、消泡剤、浸透剤、凍結防止剤、乾燥遅延剤、炭化水素系溶剤、乳化剤、増粘剤、可塑剤、造膜助剤、吸水性ポリマー、保湿剤、着色顔料等を挙げることができる。ここで、吸水性ポリマーや保湿剤は水分を保持して放射性物質の吸着を補助する成分であり、吸水性ポリマーとしてはポリアクリル酸ナトリウムや変性ポリアルキレンオキサイド等が挙げられ、保湿剤としてはポリエチレングリコールやソルビトール等の合成多価アルコール、各種アミノ酸やキチン、キトサン、タンパク質分解物などの生物系保湿剤が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において、放射性物質吸着剤と結着剤との配合割合は、支持基材に含浸或は塗布する分散液中に吸着剤と結着剤との合計量に基づいて、吸着剤が0.01〜80質量%、好ましくは0.1〜50質量%、結着剤が99.9〜20質量%、好ましくは99.9〜50質量%含むように配合される。吸着剤が、0.01質量%未満であると放射性物質の吸着効率が低下し、望ましくない。また、吸着剤が80質量%を超えると支持基材に含浸あるいは塗布した後に、吸着剤が支持基材から剥離/離脱する恐れがあり望ましくない。
分散液中に使用される分散媒の量は、使用される吸着剤及び結着剤が分散状態となり、液状とすることができる量であればよく、通常は、吸着剤と結着剤との合計量100質量部に対して、0〜900質量部、好ましくは0〜400質量部である。上述したように、使用する結着剤が分散媒としての役割を果たす場合は、分散媒は必ずしも必要ではない。本発明に使用される分散液は、上記にて説明した各成分を所定量配合して混合後、分散液とするものである。
本発明のア)基材表面に、放射性物質吸着剤が結着剤を介して付着していることを特徴とする放射性物質吸着剤を含む基材は、上記にて記載した吸着剤及び結着剤を含む分散液を上記基材に公知の方法で含浸或は塗布して得られるが、2〜3種類の吸着材を配合した吸着剤を採用する場合には、人体により有害なストロンチウムの吸着剤をセシウムより優先した配合割合を採用するのが好ましく、放射性沃素の吸着剤をストロンチウム/セシウムの吸着剤と併用する場合には、沃素はセシウムの30倍以上大量に放出されるので、かかる事情を考慮した配合比率を採用するのが好ましい。
しかして、支持基材への結着剤の付着量は、たとえば繊維構造物では、繊維材料に対して0.01〜20%owf、好ましくは0.02〜10%owf、より好ましくは0.03〜8%owfである。付着量が0.01%owfより小さいと耐久性が不十分となり、20%owfより大きいと得られる繊維材料の風合いが粗硬になる。
本発明の上記ア)の基材の製法は、上述の放射性物質吸着剤を結着剤を介して、予め用意した支持基材表面に付着させるが、本発明の基材の完成までには、支持基材の製造工程と、基材への吸着剤の塗布/貼着工程の2つの製造工程が最小限必要である。その付着形態としては、混合体の形や、該結着剤上に放射性物質吸着剤が、熱風と共に吹き付けされ貼着されている構造等の形態が採用される。かかる結着剤を付与する方法としては、パディング法、浸漬法、スプレー法、コーティング法、プリント法などいずれの方法でもよい。これらの中でもパディング法が、耐久性、均一性の上からは好ましく使用される。かかる結着剤を付与した後、熱処理するが、かかる熱処理としては、乾熱処理及び湿熱処理のいずれでもよい。
これら吸着剤及び結着剤を一浴に含む処理液を繊維/シート又は該繊維構造物の基材にパッド法、スプレー法、コーティング法などの方法により均一に付与し、例えば、100℃前後で乾燥し、120〜200℃、好ましくは140〜180℃で15秒〜5分、好ましくは30秒〜2分間熱処理することにより基材表面に放射性物質吸着剤を結着/接合/貼着し固着することができる。
次に、本発明のイ)基材原料自体に、放射性物質吸着剤を混練せしめ吸着剤と基材原料とを混練して練込み基材と一体化させたことを特徴とする放射性物質吸着剤を含む基材の製造方法に関して説明する。この基材の製造方法では、予め支持基材の糸やシートを別工程で製作し準備する必要がないので、放射性物質吸着剤を含む基材の製造コストを低減することが可能である。本発明のイ)に言う基材としては、合成樹脂として、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂や、ゴム状弾性体、天然木、セルロース系材料、無機材料等の材質からなるものを種々使用することができ、熱可塑性樹脂では、ポリオレフィン系(例えば、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等)、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリエチレンテレフタレート系、ポリブチレンテレフタレート系、ポリスチレン系、ABS樹脂系、AS樹脂系、ポリメチルメタクリレート系、ビニロン系等の合成樹脂からなる材料や、熱硬化性樹脂では、メラミン樹脂系、不飽和ポリエステル樹脂系等の合成樹脂材料が使用できる。また、ゴム状弾性体としては、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレンゴム、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。更に、セルロース系材料としては、レーヨン(銅アンモニアレーヨン、ビスコースレーヨン等)、テンセル、ポリノジック等が挙げられるが、再生ポリエステル、例えばPETボトルやPETフィルムなどの回収品を粉砕・再溶融したポリエステル系の合成樹脂が資源の有効活用の点からは好ましい。
本発明のア)の基材に付着させたり、又、イ)の基材に練込む放射性物質吸着剤は、上述と同様の吸着剤が利用可能であるが、環境中に放出された放射性物質を効率良く吸着/低減させるためには、複数の放射性核種を同一の基材で吸着可能とすることが好ましく、乳幼児向け製品に使用される基材や原発事故等の事故発生初期等の放射性沃素の残存率が高い環境で使用される製品用の基材には、放射性沃素の吸着率が高い吸着剤の配合比率を高めることが好ましく、例えば、沃素吸着剤:(ストロンチウム又はセシウム吸着剤)の配合比率は、(99〜10):(1〜90)の範囲が好ましく、(99〜40):(1〜60)の範囲がより好ましく、放射性沃素の残存率が充分低下した環境で使用する製品では、セシウムより100倍近く人体に有害な放射性ストロンチウムの吸着を重視した配合比率が好ましく、ストロンチウムの吸着剤:セシウの吸着剤の配合比率は、(99.9〜1):(0.1〜99)の範囲が好ましく、(99〜5):(1〜95)の範囲がより好ましい。
又、沃素、ストロンチウム、セシウムの3種類の吸着剤を同一の基材で混合して使用する場合には、その配合比率は、沃素;ストロンチウム:セシウムの比率で、放射性沃素の残存率が高い環境で使用される製品や乳幼児向け製品では、沃素;ストロンチウム:セシウムの順番で、(99.8〜3):(0.1〜97):(0.1〜97)の範囲が好ましく、(99〜5):(0.5〜95):(0.5〜95)の範囲がより好ましい。更に、放射性沃素の残存率が低い環境では、沃素;ストロンチウム:セシウムの順番で、(10〜0.01):(0.01〜99.99):(0.01〜99.99)の範囲が好ましく、(5〜0.1):(0.1〜99.8):(0.1〜99.8)の範囲がより好ましい。
又、イ)の基材に練込む放射性物質吸着剤が、その性能を発揮するためには、微細な粉体にして使用することが好ましく、基材断面が略円形の糸状繊維の場合には、吸着剤の粒径は、糸の直径の75%以下の大きさであることが好ましく、糸の直径の50%以下であれば、より好ましく、糸の直径の30%以下の大きさであれば更に好ましい。一方、基材断面が略矩形のテープ状又はシート状基材の場合には、吸着剤の粒径は、シート状物の厚さの75%以下の大きさであることが好ましく、シート状物の厚さの50%以下であれば、より好ましく、シート状物の厚さの30%以下の大きさであれば更に好ましい。
しかして、吸着剤の絶対的大きさである平均粒径は、100μ以下、より好ましくは、30μ以下、更に好ましくは15μ以下、更により好ましくは10μ以下である。平均粒径が100μを超えたり、最大粒径が150μを超えると、紡糸時のフィルタ詰まりや糸切れ等で繊維製造が困難となり、更に粒径が大きい為に表面積が少なくなり吸着剤の効果が減少する。
又、該吸着剤の練込む量は30重量%以下、好ましくは20重量%以下、更に好ましくは0.5〜10重量%である。吸着剤が30重量%を超えると、凝集やポリマーの粘度低下などで繊維/シートの製造が困難となり、0.5重量%未満では吸着剤の機能を十分に発揮出来なく好ましくない。
更に本発明では、分散剤を用いて支持基材中に該吸着剤を出来る限り均一に分散させる必要があり、かかる分散剤としては、上述と同様の分散剤も利用可能であるが、特に、200℃以上好ましくは250℃以上の耐熱性があり、且つ合成ポリマーと吸着剤の相溶性を助長させたり、ポリマーの流動性を促進するものが好ましく、例えば、ビスフェノールSやビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物,モンタン酸グリセリンエステル,モンタン酸カルシュウム系ワックス,ポリエステルワックス,リン酸エステル,フタール酸エステル,クエン酸エステル,マレイン酸エステル,ステアリン酸カルシュウム等が挙げられる。尚、ポリマーや基材の種類によって該分散剤は選択され、2種類以上の分散剤を併用しても何ら支障ない。
該分散剤の添加量は、基材中に10重量%以下、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは0.05〜3重量%である。10重量%を超えると、紡糸・延伸が困難になったり、基材の強伸度等の物性が低下し、更にコスト高となる問題が生じて来る。一方0.05重量%未満では、分散性が低下して紡糸・延伸での糸切れが起こりやすく且つ吸着剤の効果が減少して好ましくない。
次に、前記吸着剤及び分散剤を合成ポリマーと混合して、該ポリマーの溶融液又は溶剤溶液の中に分散させる。この場合、予め該吸着剤や分散剤を多量に練込んだポリマーのマスターペレットを作成し、該マスターペレットを合成ポリマーペレットに添加して練込む方法が、2回の練込み(混合分散)工程を通す為、吸着剤の均一分散基材が得やすいので好ましい。マスターペレットを作成する場合、そのベースポリマーは支持基材を形成するポリマーと同種又は異種のいずれでも良いが、相溶性の点で同種ポリマーが望ましい。
また、吸着剤と分散剤は別々に又は伺時に添加混合しても良いが、均一分散化と工程簡素化の点で同時に混合したマスターペレットを作成するのが好ましい。尚、マスターペレット中の吸着剤と分散剤の含有量は、出来るだけ多い方がその後の合成ポリマーへの添加が少なく望ましいが、繊維化工程でのトラブルを考慮して少なくとも100メッシュ以上、好ましくは200メッシュ以上の金網フィルタを通過する含有量が良く、一般には吸着剤10〜50重量%,分散剤5〜30重量%が考えられる。
続いて、熱又は溶剤で溶解された合成ポリマーは、該吸着剤及び分散剤を練込み分散した状態で、通常の溶融紡糸,乾式紡糸,湿式紡糸,乾湿式紡糸などの方法で円形断面や矩形断面のノズルより吐出される。尚、紡糸工程では、ポリマーフィルターやノズルフィルターを設けて吸着剤や分散剤の凝集物を除去し紡糸を容易にさせる。凝集物が多いと、フィルタ圧上昇により寿命が短くなったり、あるいはフィルタを通過した凝集物が糸切れを起こしたり、更には吸着剤の効果が減少する恐れがあり、如何に凝集物を少なくして吸着剤の分散性を向上させるかが重要なポイントになる。次いで、得られた紡糸原糸を延伸して分子の配向結晶化を進め、強伸度等の物性や寸法安定性を向上させる。更に必要に応じて、短繊維(ステープル)では捲縮・乾燥・カット・梱包の工程を、長繊維(フィラメント)では捲縮・絡合・巻取の工程を通して出荷される。
本発明の放射性物質吸着剤を含む基材から成る繊維/糸状物や、テープ状又はシート状物は、かくして得ることができる。
次に、本発明の放射性物質吸着剤を含む繊維/糸状物や、テープ状又はシート状物を利用した一例として、環境中に放出された放射性物質との接触表面積を飛躍的に向上させると共に、空気/水等の流体の貫流抵抗を低減させた編織物/ネット状物に関して説明すると、先ず、ネット形状は、菱目、亀甲目、角目、千鳥目、六角目等の網目形状を用いることが好ましく、かかる網目形状を採用することで、ネット状物に空隙部が形成され、流体の貫流抵抗を低減させる効果が発揮でき、更に、通常使用されている製網機を使用することができる利点があり、製網時のコスト上昇を抑えることが可能となる。又、網地種としては蛙又、本目のような結節網、無結節網、ラッセル網、もじ網、織網等を利用することが好ましく、中でも結節を形成しない網地種や絡み織を採用するほうが応力分散によりネット破断し難いため好ましい。
目合いは、製作されたネットの適用・用途によって異なるが、一般的に水中に溶けだした放射性物質を吸着する用途では、1〜100mmであること好ましく、好ましくは3〜75mm、更に好ましくは5〜50mmである。目合いが1mm未満の場合には容易に目詰まりを起こすという問題や細かい網構造となるためにコストが高くなるという問題があり、目合いが100mmを超える場合には所望の吸着効率/性能が得難くなる。本発明のネット状物は、土壌中の放射性物質の吸着や、汚泥/焼却灰中の放射性物質の吸着、空気中の放射性物質の吸着、河川/湖/用水路/海水等水中の放射性物質の吸着に効果があり、公共施設や、家庭用、又、土木/農業用、水産資材用、林業用、建築用等、用途を問わず採用することができると共に、原子力発電所等での重大事故の場合発生する高濃度汚染水から放射性物質を吸着低減する場合にも、極めて有効に応用することが可能である。
次に、本発明のネット製造方法を、無結節網を例にとって示すが、本発明の効果を損ねない範囲であれば、以下の方法に限定されるものではない。
上記本発明のア)又はイ)の製法により製造された放射性物質を含むポリエステル系基材(1例としてホリエステル系基材で説明するが、他の合成樹脂基材も使用可能である)よりマルチフィラメント及び/又はモノフィラメントの吸着剤を含む繊維及び/又はテープ状又はシート状物を数本引き揃え、網糸として必要な繊度とする。この時網糸の繊度に特に限定は無く、用途に応じて適宜変更すればよい。引き揃えた糸は、下撚りをかけ下撚糸となし、下撚糸2本を合わせて中撚りをかけ、中撚糸を2本合わせて撚って上撚りをかけることにより網糸を構成しながら、網糸を互いに組み合わせて結節部を形成し、同時に網目を作っていく無結節編網機によって無結節のネットとする方法や、細長い断面が矩形の薄いテープ状又はシート状物の網糸をラッセル編機を用いて編みこんでいく方法を採用することができる。
尚、ポリエステル系繊維から成る網糸により得られたネットは、テンター等によって60〜160℃の範囲内で熱処理に供することが好ましい。熱処理温度が160℃以下であればポリエステル繊維間での融着が発生することなく品位の良いネットを得ることができ、60℃以上であれば目的とする熱セット効果を得ることできる。好ましい熱セット温度の範囲としては80〜150℃、更に好ましくは100〜140℃である。尚、熱セットは製網前の撚糸をする際に行ってもかまわない。熱セット時にネットに与える張力については、好ましい範囲として0.05〜2cN/dtexが例示できるが、特に制限されるものでは無く、用途に応じて適宜最適な張力を付与すれば良い。張力の測定方法としては例えば、検出器としてエイコー測器(株)製TensionPickup(BTB1‐R03)を用い、エイコー測器(株)製TensionMeter(HS−3060)を用いてモニタリングする方法が挙げられる。
かくして、本発明の放射性物質吸着材を含む編織物又はネット状物を得ることができる。上記本発明の編織物/ネット状物は、本発明の放射性物質吸着材を含む基材で構成され、空気/水等の流体が該編織物/ネット状物を貫流する構造を提供でき、編織物/ネット状物に設けられた空隙部により流体の貫流抵抗を低減させる効果があると共に、流体の貫流方向の表面積が、貫流方向に垂直な方向の表面積よりも遙かに大きい構造を形成可能であり、放射性物質吸着剤の性能を十分に発揮可能な空間を提供することができ、かかる表面積の構造を有する編織物/ネット状物を製造するには、円形断面の基材を使用するよりは、矩形断面を有する吸着剤を含むテープ状基材を使用することが、その製造コストを非常に抑制でき、経済的である。
次に、本発明の放射性物質吸着ネット、例えば、ラッセル織りした吸着ネットを利用した環境中(例えば、稲作の水田中)の放射性物質低減方法及び装置に関して説明する。
(A1)用水路の水面と水田の水面との間に所定の高低差があり、塩ビパイプ等により用水路の水を水田に落とし込んでいる場合。
この場合には、水田の塩ビパイプ等で構成された取水口の直下に、石積み等で形成された土台の上に、底の比較的深いザル等で構成された通水手段を載置し、この通水手段の内側に、本発明の放射性物質吸着剤を含むラッセル織り等により水の貫流抵抗を低減させたネット状物を敷設して通水し、水田に流入する水中に含まれる放射性物質を吸着するようにする。
(A2)用水路の水面と水田の水面との間に所定の高低差があるが、そのまま用水路の水をパイプ等を使用せず水田に落とし込んでいる場合、又は、用水路の水面と水田の水面との間に所定の高低差が確保できず、単純に用水路の水をパイプ等を使用せず水田に引き込んでいる場合。
この場合には、水田の取水口の直下の下流側に、その断面積が取水口の2〜100倍有する貯水地を水田の土壌等で形成し、この貯水池の内側表面及び内部に、本発明の放射性物質吸着剤を含むラッセル織り等により水の貫流抵抗を低減させたネット状物を敷設して通水手段を形成し、この通水手段を介して用水路の水を通水し、水田に流入する水中に含まれる放射性物質を吸着するようにする。
かくして、水田の取水口上流側及び/又はその直下に通水手段を設け、上記通水手段に放射性物質吸着剤、好ましくは、イオン交換型放射性物質吸着剤を含むラッセル織り等により水の貫流抵抗を低減させたシート状物及び/又はネット状物を介在させて通水し、水田に流入する水中に含まれる放射性物質を吸着せしめ、水田に流入する放射性物質を低減することが可能となる。
次に、本発明の別の1実施例として、土壌や焼却灰、下水汚泥等に含まれる比較的多量の放射性物質を低減する場合、猛毒である放射性物質を取り扱うには、一般的に、放射性物質を吸着した後で、その空間占有率、体積ができるだけ少ないものが、吸着後の処理において好ましい。従って、合成樹脂繊維等の細い糸状物の外周表面に吸着剤を固着させた繊維や、糸/テープの基材に吸着剤が練込まれで構成されているネット状シートの構造が好ましく、大気や水等の流体が該ネットを貫流する場合、貫流抵抗が小さく、かつ、流体がネットを貫流中に基材表面との接触面積が大きな構造が、放射性物質の吸着/除染/低減効率の観点からは好ましい。
かくして、各種の処理において、糸の絡み/シート状物の重量/汚染水との接触面積等を考慮すると、編織物や網状物等が水中における攪拌/吸着操作や、攪拌兼脱水槽への投入/取出し操作に基づく空間的移動や搬送処理において好ましい。そこで、土壌や焼却灰、下水汚泥等に含まれる放射性物質を低減する場合には、放射性物質吸着剤を含む糸(断面が矩形の細長いテープ状シートを含む)を、織機等により織り上げるシート状物の編織物製造工程が高速/大量生産には好ましい。
次に、土壌や焼却灰、下水汚泥等に含まれる放射性物質を水中に溶出させるため、上記ラッセル織り等により水の貫流抵抗を低減させたシート状物と共に、土壌や焼却灰、下水汚泥等を攪拌兼脱水槽に投入するシート状物の投入工程を経て、所定量の水の注水終了後、攪拌兼脱水槽での水の攪拌工程に移り、この攪拌工程で所望の放射性物質を水中に溶出させた後に、上記シート状物の放射性物質吸着剤に吸着せしめる。
尚、放射性物質で汚染された放射性物質汚染水から放射性物質を低減する場合には、上記攪拌兼脱水槽に上記シート状物を投入した後、又は、上記シート状物を投入するのと同時並行して放射性物質汚染水を注水する汚染水注水工程に移り、その後、所定量の汚染水の注水終了後、攪拌兼脱水槽での汚染水の攪拌工程に移り、この攪拌工程で水中に溶出している所望の放射性物質を、上記ラッセル織り等により水の貫流抵抗を低減させたシート状物の放射性物質吸着剤に吸着せしめる。
その後、脱水工程に移り、所望の放射性物質を除去・低減された汚染水は、脱水されて排水され、攪拌兼脱水槽に残った放射性物質を含む脱水されたシート状物が上記槽から挟持操作や吸引操作により取出され、所定の保管手段に格納・保管される。尚、合成樹脂繊維等の糸/シート状物でネットを構成すると、放射性物質を吸着したネットを高温加熱処理により焼却減容処理すれば、更に一段と少ない空間で格納・保管することが可能となる。
次に、本発明の高濃度放射性物質汚染水の除染作業等で、作業員の被曝量を非常に低減可能な放射性物質汚染水からの放射性物質を低減する放射性物質低減方法及び装置に関して、図面を参照しながら説明する。
図1は、メルトダウンを起こした原発事故現場の構造の1例を示す断面図である。
図2Aは、本発明をトレンチに溜まった高濃度汚染水に適用する構成の1例であり、
図2Bは、放射性物質吸着媒体を供給し、搬送経路を構築する工程の1例を示す図であり、
図2Cは、吸着媒体の搬送経路を、確立した状態の1例を示す図であり、
図2Dは、吸着媒体を汚染水に侵漬し、汚染水から放射性物質を吸着する工程を示す図である。
先ず、メルトダウンを起こした原子力発電所の事故現場の構造の1例を図1の断面図を参照して説明すると、山間部2から流れ出る地下水4は、地中6に浸み込み、透水層8に達し、この中を遮水層10に沿って流れ、海12に流出するようになっている。しかして、原子炉建屋14の中で、格納容器16の内側にあった原子炉18が、全電源喪失等の事故にあうと、収納されていた核燃料22が高熱を発し、メルトダウンを起こし、原子炉の底18aを溶かして、コンクリート19の床の上に落下し、その一部を溶かし、溶融燃料20として集合し、図示しない冷却注水により徐冷されつつある。更に、溶融燃料20に触れた冷却水は、汚染水24となり、圧力抑制室(以下、SCと略す)22の損傷した側壁22aから原子炉建屋14の床面に拡散すると共に、タービン建屋26内のタービン28の設置されている床面にも拡散し、その一部が更にまた溢れ出て、トレンチ30に溜まっている。また、原子炉建屋14の床下6aやタービン建屋26の床下6bからも汚染水24は透水層8に流出し、地下水4と共に合流して海12に流れ込み、汚染水24の海への拡散を防止するため、シルトフェンス32が海上に設置されている。
かくして流出した高濃度汚染水24が溜っているトレンチ30から、ラッセル織り等により水の貫流抵抗を低減させたシート状或はネット状の吸着媒体82を利用した放射性物質を低減する方法を次に説明すると、図2Aに示すように、トレンチ30の両側にステンレス材等で構成された支柱34,34が立設され、ステンレス製の線材でロープ状に構成された移動路36、66が支柱34の所定の高さに架設されるようになっている。しかして、移動路36の上には、ステンレス製の滑車38が、左右に移動可能に載置され、その回転軸にステンレス細線等で構成された駆動ワイヤ40が固定又は係止され、回転自在に左右に移動可能となると共に、ワイヤ40の一端は、ガイドローラ42を介して鉛板等で外周を遮蔽された吸着媒体供給側作業室44の内部に設けられている巻取ドラム46に所定の長さが巻回されて固定され、ワイヤ40の他端は、ガイドローラ42を介して鉛板等で外周を遮蔽された吸着媒体巻取収納側作業室48の内部に設けられている巻取ドラム50に所定の長さが巻回されて固定されるようになっている。尚、ワイヤ巻取ドラム46、50は、手動でも、モータ等を利用した電動でも回転可能であり、図示しない計算機やシーケンサ等を使用すれば、自動運転も可能であると共に、手動及び自動運転が切り替えて実行できることが好ましい。
更に、滑車38の回転軸には、一端にU字溝の形成された連結棒52が垂下され、その他端には、また別に形成されたU字溝を介して滑車54が回転自在に埋め込まれ、滑車54にはステンレス細線等で構成された操作ワイヤ56が架けられ、その一端には、吸着媒体82を水中に押下げ、汚染水24に侵漬する棒体58が垂下され、棒体58の他端には、形成されたU字溝を介して吸着媒体82のガイドローラ60が、回転自在に埋設され、棒体58とガイドローラ60とで、媒体侵漬手段61を形成すると共に、操作ワイヤ56により上下自在に移動可能なようになっている。
又、操作ワイヤ56の他端は、ガイドローラ62を介して吸着媒体巻取収納側作業室48の内部に設けられている巻取ドラム64に所定の長さが巻回されて固定されるようになっている。尚、ワイヤ巻回ドラム64は、手動でも、モータ等を利用した電動でも回転可能であり、図示しない計算機やシーケンサ等を使用すれば、自動運転も可能であると共に、手動及び自動運転が切り替えて実行できることが好ましい。
しかして、移動路66の上には、ステンレス製の滑車68が、左右に移動可能に載置され、滑車68の回転軸には、U字状に先端部が形成されたワイヤ70が係止されると共に懸架され、その他端には、吸着媒体82の幅方向の長さに対応した単独又は複数のJ字状の係止部又は把持部72が形成されると共に、滑車68の回転軸には、更に、ステンレス細線等で構成された駆動ワイヤ74が固定又は係止され、回転自在に左右に移動可能となると共に、ワイヤ74の一端は、ガイドローラ76を介して吸着媒体供給側作業室44の内部に設けられている巻取ドラム77に所定の長さが巻回されて固定され、ワイヤ74の他端は、ガイドローラ76を介して吸着媒体巻取収納側作業室48の内部に設けられている巻取ドラム78に所定の長さが巻回されて固定されるようになっている。尚、ワイヤ巻取ドラム77、78は、手動でも、モータ等を利用した電動でも回転可能であり、図示しない計算機やシーケンサ等を使用すれば、自動運転も可能であると共に、手動及び自動運転が切り替えて実行できることが好ましい。
又、作業室44の内部には、所望の長さ、例えば、30cm〜30Km,好ましくは、3m〜10Kmの長さの吸着媒体82を巻回した吸着媒体供給ドラム80が回転自在に装着可能となっており、ドラム80は、モータ等の回転駆動手段81により回動自在に、手動又は自動で制御されると共に、吸着媒体82の一端がガイドローラ110及び遮蔽鉛板の所望の大きさの空隙部を介して、外部に引き出せるようになっている。尚、回転駆動手段81は、手動及び自動運転が切り替えて実行できることが好ましい。
更に、巻取収納側作業室48のトレンチ30側には、トレンチ30側が低く、作業室48側が高くなるような勾配を形成して、レール84が敷設され、レール84の上には、巻取ドラム96を前後に運搬する台車86が載置され、台車86は、車輪88によりレール84上を、車台90の後端に連結された走行ワイヤ92により牽引されて走行すると共に、走行ワイヤ92の他端は、台車駆動部94の巻回ドラムに所定の長さが巻き付けられて係止されるようになっている。尚、台車駆動部94は、手動でも、電動若しくは自動でも操作可能であり、手動及び自動運転が切り替えて実行できることが好ましく、又、車台90の上には、巻取ドラム96が回動自在に装着され、巻取ドラム96全体を遮蔽鉛板106で被覆すると共に、巻取ドラム96の回転軸が側面に立設された鉛板106に穿設された細孔を貫通して出力され、その回転軸には、歯車100が嵌合されて図示しない歯車ユニットに歯合され、モータ等の歯車駆動手段102により回転駆動されるようになっている。尚、歯車駆動手段102は、手動でも、電動若しくは自動でも操作可能であり、手動及び自動運転が切り替えて実行できることが好ましく、又、巻取ドラム96の前方に立設された鉛板108は、図示しない蝶番等により、上下方向に開閉自在に配設され、吸着媒体82の先端部は、ガイドローラ104を介して、巻取ドラム96に巻き取られ、図示しないドラム96の回転軸に穿設して形成された溝に付設されている係止部等に固着されるようになっている。尚、巻取ドラム96、及び、遮蔽鉛板106、108は、一体化されると共に、車台90の上に着脱可能な状態で載置されているのが、放射性物質を吸着した後の巻取りドラム96の取扱いが容易となり、好ましい。
かくして、回転駆動手段81と、供給ドラム80と、ドラム80から繰り出される吸着媒体82により、本発明の媒体供給手段が構築されると共に、巻取ドラム96、歯車100、歯車駆動手段102により本発明の媒体収納手段が構成され、ガイドローラ110、供給ドラム80、及び、上記媒体収納手段により本発明の媒体搬送手段が構成されている。
かかる構成において、トレンチ30に溜まっている高濃度汚染水24から、作業者の被曝を極力低減させた高濃度放射性物質を低減する放射性物質低減方法を次に説明する。
先ず、所望の長さ、例えば、3m〜10Kmの長さの吸着媒体82を巻回した吸着媒体供給ドラム80を鉛板で外周全面を被覆された図示しない車両等で、媒体供給側作業室44の周辺に運搬すると、ドラム80が作業者により作業室44の内部の所定の場所に装着され、続いて、作業者が回転駆動手段81を操作し、ドラム80を回転させ、吸着媒体82の先端をガイドローラ110及び鉛板44の前面に設けられた所定の間隔の空隙部から作業室44の外部に繰り出し、その後、作業者が作業室44の外部で、吸着媒体82の先端を、滑車68から懸下されている図2Aに示すJ字状の係止部72に固着する。
次に、作業者は、ドラム80を運搬してきた車両に乗り、作業室44から退去することが可能である。以上の作業で、作業者は、ドラム80を車両から作業室44に搬入する期間と、作業室44の所定の空隙部から繰り出された吸着媒体82を係止部72に固着する期間の間だけ、外部被曝するが、高濃度汚染水24から充分に離れた場所で以上の作業は遂行可能であるので、その外部被曝量は極力低減することが可能である。
次に、高濃度汚染水24から充分に離れた場所に設置された巻取収納側作業室48では、別の作業者が、図2Bに示すように、台車駆動部94を操作して、ワイヤ92により台車86を作業室48の出来るだけ近くに牽引し停止させると共に、巻取ドラム77、78を操作してワイヤ74を引き寄せ、滑車68に懸下されている吸着媒体82を、トレンチ30の上空を飛び越えて空中を右側に移動させ、台車86の手前で停止させる。尚、滑車68の移動中は、滑車の速度に協調同期させて、回転駆動手段81を制御し、吸着媒体82を供給ドラム80から右方向に繰り出すように制御するのが好ましい。
続いて、作業者は、作業室48の外部に出て、係止部72に固着された吸着媒体82の先端を係止部72から取り外し、鉛板108を上方に引き上げて所定の開放角度で下端を開放したまま保持すると共に、かかる隙間から吸着媒体82の先端を巻取ドラム96の内部にガイドローラ104を介して引き込み、ドラム96の回転軸に穿設して形成された溝に付設されている係止部等に固着する。かくして、吸着媒体82のドラム96への固定作業が終了したら、作業者は直ちに作業室48の内部に退去する。かかる作業で作業者が外部被曝する期間は、トレンチ30の上空を移動してきた吸着媒体82を係止部72から取り外して、ドラム96の所定の箇所に取付け固定するまでの期間のみであり、非常に短時間でかかる作業を遂行できると共に、高濃度汚染水24からは遠く離れた場所で作業をすることが可能である。
続いて、作業室48に戻った図示しない作業者は、台車駆動部94を操作して、下り勾配の傾斜を有するレール84に沿って台車86をトレンチ30の右端まで下降させ、所定の場所で停止させる。尚、台車86の下降速度に協調同期させて、供給ドラム80の回転駆動手段81を制御し、台車86の左方向への移動速度と、吸着媒体82の左方向への移動速度とが同期するように、ドラム80の巻取り方向に駆動手段81を回転制御することが好ましい。
かかる左方向への台車86及び媒体82の移動制御と並行して、又は、この移動制御の前の時点で予め、巻回ドラム50及び64を協調同期制御して、滑車38及び54をトレンチ30の中央部上空付近に図2Cに示すように移動させ、媒体82のガイドローラ60がトレンチ30のほぼ中央部上空近傍に停止しているように制御するのが好ましい。
次に、作業室48の作業者が、巻回ドラム64からワイヤ56を繰り出すように制御すると、媒体侵漬手段61が滑車54を介して徐々に鉛直に自重で降下してゆき、地表面付近まで降下して先端のガイドローラ60が吸着媒体82に当接した後は、巻ドラム64のワイヤ繰り出し速度と、回転駆動手段81の媒体82の繰り出し速度とを協調同期させつつ制御して、ローラ60が完全に汚染水24の水中に水没する所定の深さまで、媒体侵漬手段61を降下させることにより、図2Dに示すように、吸着媒体82のガイドローラ60に当接している部位を作業者がまったく被曝することなく高濃度汚染水24に侵漬し、媒体82の表面に予め貼着されている放射性物質吸着剤により、吸着媒体82に放射性物質を吸着させることが開始される。
所定の水中深さまで媒体侵漬手段61を降下させた後に、作業者は、回転駆動手段81及び歯車駆動手段102を操作し吸着媒体82の供給ドラム80と巻取収納ドラム96との回転速度を同期させて、吸着媒体82の繰り出し速度と巻取速度を同じに保ち、滑らかに、ガイドローラ110,60及び104を経由して供給ドラム80から巻取ドラム96まで搬送することが可能である。かくして、本発明の媒体搬送手段が、図2Dに示す供給ドラム側のガイドローラ110と、トレンチ30の左側に予め設置されているガイドローラ110と、侵漬手段の一部であるガイドローラ60と、トレンチ30の右側に予め設置されているガイドローラ110と、台車86に設置されているガイドローラ104と、巻取ドラム96と、歯車駆動手段102とにより構築される。
尚、媒体82の搬送速度は、放射性物質吸着剤が水中から放射性物質を吸着するのに十分な期間であれば、適当に設定することが可能であり、ゆっくり連続して移動させることも可能であるが、例えば、30cm吸着媒体を移動させたら、15〜30分停止し、次に又、30cm吸着媒体を移動させたら、15〜30分停止させるといった、間欠動作による搬送運転も可能である。尚、シート/ネット状の吸着媒体を有効に活用するためには、図示しない水中ポンプ/スクリュー等により吸着媒体周辺の汚染水を攪拌又は循環させて絶えず入れ替えることが好ましい。
更に、高濃度の放射性物質を放射性物質吸着剤が充分に吸着して、放射性物質の崩壊熱により吸着媒体82が加熱される場合には、吸着媒体82から水分を完全に脱水させないで、水滴が付着している状態で、収納ドラム96に巻取ることが好ましく、又、収納ドラム周辺への放射線の放射をより低減させるためには、ドラム96全体を水中に水没させた状態で、吸着媒体82をドラム96に巻取ることがより好ましい。
尚、レール84にはトレンチ30方向に下り勾配が付勢されているので、台車86に吸着媒体82を巻取っている期間中、媒体82から落下した汚染水は、図示しない台車86の前端に付設された流し板により地中6に浸透させないで、トレンチ30に戻すことが可能である。
かくして、所望の長さ又は容量の媒体82が収納ドラム96に巻取られると、作業室44に設けられた図示しない切断手段(例えば、カッタ、鋏、ニクロム線等の加熱抵抗体等)により吸着媒体82が切断され、切断された媒体82の終端が巻取ドラム96に収納されると、放射性物質の低減処理の終了工程に入る。この終了工程では、開放されていた鉛板108が閉鎖密閉されると共に、台車86がトレンチ30から引き離され、作業室48側に引き戻され、更に、巻回ドラム64により媒体侵漬手段61が汚染水24から上方に所定の高さまで引き上げられて停止する。
続いて、台車86から遮蔽鉛板106と共に、収納ドラム96が図示しないホーク部分が充分に長いホークリフトやクレーン等により、次の吸着した放射性物質の中間処理施設/貯蔵施設等に移送されると共に、まだ媒体が何も収納されていない空の収納ドラム96及び遮蔽鉛板106、108が、所定の倉庫等から搬入され、上記処理が、再び最初から繰り返される。尚、上記処理において、媒体82が供給ドラム80に巻回されている長さより、収納ドラム96に巻取られる媒体の長さが充分に短い場合には、1回供給ドラム80を装着して媒体82を供給すれば、複数回、巻取ドラム96側では、放射性物質の吸着低減処理が可能である。
以上説明したように、本発明の放射性物質を低減する放射性物質低減方法及び装置によれば、汚染水処理施設等の特別な装置/施設は一切不要であり、高濃度の汚染水から放射性物質を吸着する場合でも、作業者が高濃度の放射性物質に一切接近して作業を遂行する必要が無く、媒体82の供給及び巻取り端の固着初期化処理のみを汚染水から離れた場所で、一時的に外部に出て行えばよく、作業者の外部被曝を非常に低減できると共に、ワイヤ、ガイドローラ等の放射性物質低減処理に使用する部材、機材が、放射性物質から出力される放射線により材質が劣化して使用できなくなった場合でも、非常に低廉な価格で、代替部材や機材が供給可能である。又、ラッセル織り等により水の貫流抵抗を低減させたシート状或はネット状の吸着媒体を使用することにより、放射性物質との接触表面積を飛躍的に向上させることが可能であり、大量の放射性物質を一度に一括して吸着/除染処理できると共に、無結節網のシート/ネット状物を採用すると、ネットにかかる応力を分散でき、シート/ネット状物の一部が破損したり、放射線等の影響で、ネットの一部が切断した場合でも、多数の糸状物でネットが構成されているので、シート/ネットの一部切断/破損による吸着処理への影響を最小限に留めることができ、システムの稼働率を大幅に向上させることが可能である。
次に、本発明のまた別の1実施例として、大気中に浮遊する放射性物質の低減方法及び装置に関して説明すると、この例では、上記本発明の編織物/ネット状物を、移動する車両、自動車、バス、トラック、タクシー、列車、船舶、自転車等の前面或はボンネットの内部に取り付け、該車両等が移動中に、放射性物質を含む大気と、本発明の編織物/ネット状物とを、流入してくる空気が該編織物/ネット状物を貫流するように設置/固定することにより、流入する空気の貫流方向の表面積が、貫流方向に垂直な方向の表面積よりも遙かに大きい構造なので、非常に有効に大気中の放射性物質を吸着剤を含むネット状物で捕捉/固定することが可能であり、山間部等に降り注いで容易に除染/低減できない放射性物質を、生活空間から効率良く吸着/低減でき、人体への被曝を低減する効果がある。
次に、本発明のストロンチウム及びセシウムの2種類の吸着剤を混合して使用した基材表面に、放射性物質吸着剤が2種類結着剤を介して付着していることを特徴とする放射性物質吸着剤を含む基材の製造例、及び、実施例に関して説明する。
先ず、ストロンチウムの吸着剤としては、炭酸カルシウム(日東粉化工業株式会社製:商品名:NS#1000)で平均粒径1.2μmのもの5質量部と、セシウムの吸着剤としては、ゼオライト(日東粉化工業株式会社製:商品名:SP#2300)で平均粒径1.25μmのもの5質量部を混合し、アクリル樹脂を含むアクリルエマルジョン(商品名:パワーテック ;丸長商事株式会社製)25質量部及び水65質量部を加え、ディゾルバーにて混練し、分散液1000mLを調製した。この分散液には、2種類の吸着剤とアクリル樹脂(結着剤)との合計量に基づいて、吸着剤は37質量%含まれていた。この分散液をロールコーターにてポリエステル製の布及びナイロン製の布(1.5平方m、約200g)に塗布し、130〜150℃で2分以上乾燥させて、塗布量が乾燥重量として15g/m2のコーティング布(ポリエステル製コーティング布:試料1及びナイロン製コーティング布:試料2)を得た。
続いて、上記コーティング布(試料1及び2)の吸着性能を評価するため、pH約7のブランクの水溶液、及び、非放射性のストロンチウムーセシウム標準液(濃度がそれそれ、10,50,100ppbに調製したもの)を用意し、ICP質量分析装置(エス・アイ・アイ ナノテクノロジー製SPQ9000)にて上記4種類の標準液の1秒当りのカウント数を計測し、図3に示すようなグラフが得られた。同図より、ストロンチウム及びセシウムそれぞれに対して、試料濃度xと計測値yとを、それぞれ直線近似して、次式に示す係数a及びbを求めると、表2に示す値as、bs(ストロンチウムの係数)及びac、bc(セシウムの係数)が、それぞれ得られた。
(式1) y = a・x + b
次に、上式を式2のように変形すると、ICP質量分析装置の計測値yから検査液の濃度xが計算でき、試料1及び2で吸着できずに液中に残されたストロンチウム及びセシウムの残量が計算できる。
(式2) x = (y−b)/a
実験では、pH約7で、非放射性ストロンチウム及びセシウムをそれぞれ100ppb含む水溶液50mLに、試料1、2のコーティング布約300平方cm(約10g)を15分、及び、1夜放置後、それぞれ取出し、残液中のストロンチウム及びセシウムの濃度を上記式2により計算し、表2に示す結果を得た。それぞれ、水溶液中のストロンチウム及びセシウムを15分間浸すだけでも50%以上吸着できているので、上記した高濃度放射性物質汚染水の除染作業に十分応用可能である。
通常の利用であれば、吸着率は高ければ高いほど、その利用効果は大きいが、放射性物質の取扱いでは、吸着率が高いということは、吸着した物質の近くで作業すると被曝してしまうことに直結し、吸着剤を塗布した基材をカラム等に充填して通水すると、カラム自体が即差に高濃度放射性物質と化してしまうので、除染プラントを連続運転して稼働させることは、作業員を危険に曝し、非常に困難となる。
しかしながら、本発明の高濃度汚染水からの放射性物質低減方法及び装置によれば、作業者の外部被曝を非常に低減できると共に、24時間365日、確実に大量の放射性物質を収集できるので、原子力発電所等での重大事故の後処理に大きく貢献できる。
本発明の環境中に放出された放射性物質の吸着剤を含む基材から製造/加工される糸状物又はシート状物は、更に、衣料、布、編織物、ネット状物、構造体、シート状ネット状物、空気/水等の流体の貫流抵抗を低減させたネット状物等の製品に加工可能であり、これらの製品に含まれている吸着剤により、大気中や水中に拡散している放射性物質が該吸着剤に一旦吸着/捕捉され固定されると、簡単に剥離/分離して環境中に再度放出されるようなことを防止できると共に、使用する材料が比較的低価格で調達できるので、非常に経済的であり、吸着した放射性物質から放射される放射線を所定の期間浴びても、糸やシート状/ネット状物等の構造形体であると、その一部分が破損してもフェールセイフ構造を維持することが可能であり、大気中や高濃度汚染水等の水中で所定の期間使用しても、環境を再汚染することも少なく安定的に使用できる。
更に、本発明の放射性物質吸着剤を含む基材は、タオル、靴下、手袋、マスク、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、レインコート、割烹着、ベビー用衣料品、エアコン/真空掃除機/空気清浄器等の家電製品のエアフィルタ等の衣料/家庭用資材や、カーテン、ブラインド、雨戸、簾、暖簾、ルーバー、テーブルクロス、壁紙、カーペット、椅子/ソファーのカバー等のインテリア資材,蚊帳、布団カバー、シーツ、ベットカバー、寝巻等の寝具資材,手術着/手袋等の医療用資材、更には、自動車/電車/飛行機/客船等の乗物のシートカバー、乗物の前面に配設した放射性物質捕捉/収集ネット、自動車/トラックのエアフィルタ、エアコンプレッサのエアフィルタ、トラック等の荷台シート/カバー、包装紙/包装カバー、荷紐、荷物袋、新聞紙、ダンポール、寒冷紗、虫除けカバー、農業用マルチ等の産業用/農業用資材、作業用手袋/靴下、ブルーシート、雑草抑制カバー、塗料等の土木/建築用資材等として使用しても、環境を再汚染することなく、安心して安全に使用することが可能であると共に、大気中や水中に放出されて浮遊したり拡散している放射性物質を吸着/捕捉することができるので、環境中に放出された放射性物質を捕捉して固定化し、放射性物質の低減/除染効果が多大であり、かつ、人体内部への放射性物質の摂取/取込みを大幅に低減することが可能である。
又、本発明の高濃度放射性物質汚染水からの放射性物質低減方法及び装置によれば、高濃度汚染水が貯蔵されたり、流出している現場において、放射性物質低減処理中に、作業員が被曝する被曝線量を極力低減することが可能であり、24時間、365日無人運転することも非常に低コストで実現可能であり、ラッセル織り等により水の貫流抵抗を低減させたシート状或はネット状の吸着媒体を使用することにより、放射性物質との接触表面積を飛躍的に向上させることが可能であり、大量の放射性物質を一度に一括して吸着/除染処理できると共に、シート/ネット状物の一部が破損したり、放射線等の影響で、ネットの一部が切断した場合でも、多数の糸状物でネットが構成されているので、シート/ネットの一部切断/破損による吸着処理への影響を最小限に留めることができ、システムの稼働率を大幅に向上させることが可能であり、大量の高濃度汚染水を高速かつ効率的に短時間で処理できると共に、処理費用も、極めて低廉に抑制することが可能である。
24:汚染水
30:トレンチ
40:駆動ワイヤ
42,60,110:ガイドローラ
46、50:ワイヤ巻取ドラム
61:媒体侵漬手段
80:吸着媒体供給ドラム
82:放射性物質吸着媒体
96:収納ドラム

Claims (24)

  1. 基材表面に、環境中に放出された放射性物質吸着剤が結着剤を介して付着していることを特徴とする放射性物質吸着剤を含む基材。
  2. 基材自体に、環境中に放出された放射性物質吸着剤を混練せしめ一体化させたことを特徴とする放射性物質吸着剤を含む基材。
  3. 前記環境中に放出された放射性物質が、放射性ストロンチウム、放射性沃素の少なくとも1つを含む請求項1又は2に記載の放射性物質吸着剤を含む基材。
  4. 前記放射性物質吸着剤が、放射性セシウム及び放射性ストロンチウムを共に吸着可能である請求項1乃至3のいずれかに記載の放射性物質吸着剤を含む基材。
  5. 前記放射性物質吸着剤が、2種類の吸着剤を配合して構成され、ストロンチウム吸着剤対セシウム吸着剤の比率が、(99.9〜1):(0.1〜99)の範囲である請求項4に記載の放射性物質吸着剤を含む基材。
  6. 前記基材が、糸状物、シート状物の少なくとも1つを含む請求項1乃至5に記載の放射性物質吸着剤を含む基材。
  7. 前記放射性物質吸着剤が、放射性ストロンチウム、放射性沃素の少なくとも1つを吸着可能であり、カルシウム炭酸塩、チタン酸アルカリ金属塩、結晶性シリコチタネート、シュベルトマナイト、ゼオライト、ハイドロタルサイト、ベーマイト、アパタイト、シクロデキストリン含有ポリマー架橋体、モノハイドロカルサイトの少なくとも1つを含む請求項1乃至6のいずれかに記載の放射性物質吸着剤を含む基材。
  8. 前記放射性物質吸着剤が、2種類の吸着剤を配合して構成され、沃素吸着剤対ストロンチウム吸着剤の比率、及び、沃素吸着剤対セシウム吸着剤の比率が、(99〜10)対(1〜90)の範囲である請求項1乃至7に記載の放射性物質吸着剤を含む基材。
  9. 前記放射性物質吸着剤が、3種類の吸着剤を配合して構成され、沃素吸着剤対ストロンチウム吸着剤対セシウム吸着剤の配合比率が、この順番で、(99.8〜3):(0.1〜97):(0.1〜97)の範囲である請求項1乃至7のいずれかに記載の放射性物質吸着剤を含む基材。
  10. 前記放射性物質吸着剤が、3種類の吸着剤を配合して構成され、沃素吸着剤対ストロンチウム吸着剤対セシウム吸着剤の配合比率が、この順番で、(10〜0.01):(0.01〜99.99):(0.01〜99.99)の範囲である請求項1乃至7のいずれかに記載の放射性物質吸着剤を含む基材。
  11. 放射性物質吸着材を含む基材で構成されたネット状物であって、空気/水等の流体が該ネット状物を貫流する構造を有し、前記ネット状物に設けられた空隙部により流体の貫流抵抗を低減させると共に、流体の貫流方向の表面積が、貫流方向と垂直な方向の表面積よりも大きい構造を形成したことを特徴とする放射性物質吸着剤を含む基材で構成されたネット状物。
  12. 前記基材が矩形断面を有する請求項11に記載の放射性物質吸着剤を含む基材で構成されたネット状物。
  13. 前記放射性物質吸着剤が、放射性ストロンチウム、放射性沃素、放射性セシウムの少なくとも1つを吸着可能である請求項11又は12のいずれかに記載の放射性物質吸着剤を含む基材で構成されたネット状物。
  14. 前記ネット状物の網地種が結節を形成しない無結節網、ラッセル網、もじ網、織網の少なくとも1つを含む請求項11乃至13のいずれかに記載の放射性物質吸着剤を含む基材で構成されたネット状物。
  15. 前記放射性物質吸着剤が、カルシウム炭酸塩、チタン酸アルカリ金属塩、結晶性シリコチタネート、シュベルトマナイト、ゼオライト、ハイドロタルサイト、ベーマイト、アパタイト、シクロデキストリン含有ポリマー架橋体、モノハイドロカルサイトの少なくとも1つを含む請求項11乃至14のいずれかに記載の放射性物質吸着剤を含む基材で構成されたネット状物。
  16. 放射性物質汚染水(以下、汚染水と略す)から放射性物質を低減する放射性物質低減装置であって、
    放射性物質吸着媒体を供給する媒体供給手段と、この媒体を搬送する媒体搬送手段と、前記媒体を前期汚染水に侵漬する媒体侵漬手段と、前記媒体を収納する媒体収納手段とを具え、
    前記媒体の搬送中に、当該媒体を前記媒体侵漬手段により前記汚染水に侵漬し、放射性物質を吸着せしめるようにしたことを特徴とする汚染水から放射性物質を低減する放射性物質低減装置。
  17. 前記媒体搬送手段により、前記媒体を、連続的に搬送する動作と、間欠的に搬送する動作の少なくとも1つが可能である請求項16に記載の汚染水から放射性物質を低減する放射性物質低減装置。
  18. 前記媒体を切断する媒体切断手段を更に具え、所望の大きさ又は容量で前記媒体を切断し収納するようにした請求項16又は17に記載の汚染水から放射性物質を低減する放射性物質低減装置。
  19. 前記媒体が、編織物、シート状物、ネット状物の少なくとも1つを含み、前記放射性物質が、放射性セシウム、放射性ストロンチウム、放射性沃素の少なくとも1つを含む請求項16乃至18のいずれかに記載の汚染水から放射性物質を低減する放射性物質低減装置。
  20. 前記汚染水を移動させる汚染水攪拌手段又は汚染水移動手段を更に具えた請求項16乃至19のいずれかに記載の汚染水から放射性物質を低減する放射性物質低減装置。
  21. 汚染水から放射性物質を低減する放射性物質低減方法であって、
    放射性物質吸着媒体を供給する媒体供給工程と、この媒体を搬送する媒体搬送工程と、前記媒体を前期汚染水に侵漬する媒体侵漬工程と、前記媒体を収納する媒体収納工程とを含み、
    前記媒体の搬送中に当該媒体を前期汚染水に侵漬し放射性物質を吸着するようにしたことを特徴とする汚染水から放射性物質を低減する放射性物質低減方法。
  22. 前記媒体が、編織物、シート状物、ネット状物の少なくとも1つを含み、前記放射性物質が、放射性セシウム、放射性ストロンチウム、放射性沃素の少なくとも1つを含む請求項21に記載の汚染水から放射性物質を低減する放射性物質低減方法。
  23. 前記汚染水を移動させる汚染水攪拌工程を更に含む請求項21又は22に記載の汚染水から放射性物質を低減する放射性物質低減方法。
  24. 水田の取水口上流側及び/又はその直下に通水手段を設け、前記通水手段に放射性物質吸着剤を含むシート状物及び/又はネット状物を介在させて通水し、水田に流入する水中に含まれる放射性物質を吸着するようにしたことを特徴とする水田に流入する放射性物質の低減方法。
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