JP2015147426A - インクジェットヘッド - Google Patents

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Abstract

【課題】印刷用インクに先立ってプレコートインクを使用する高画質印刷と、多数のノズルから印刷用インクを一度に噴射する高速印刷の、両方に対応できる、汎用性の高いインクジェットヘッドを提供する。【解決手段】インクジェットヘッド3は、印刷用紙の搬送方向に沿って所定のピッチPで配列された複数の第1ノズル50a〜50dからなり、印刷用インクを噴射する第1ノズル列51a〜51dと、第1ノズル列51a〜51dよりも搬送方向上流側の領域に配置され、複数の第1ノズル50a〜50dと同じピッチで配列された複数の第2ノズル50eからなり、印刷用インク又はプレコートインクを噴射可能な第2ノズル列51eとを備えている。【選択図】図2

Description

本発明は、印刷媒体に向けてインクの液滴を噴射するインクジェットヘッドに関する。
インクジェットプリンタに採用される一般的なインクジェットヘッドは、ブラックインクやカラーインクといった、文字や画像等を印刷するための印刷用インクを、所定の搬送方向に搬送される印刷媒体に向けて噴射する。さらに、近年では、印刷用インクに加えて、さらに、印刷用インク以外のインクを噴射可能なインクジェットヘッドも提案されている。そのようなインクジェットヘッドとして、印刷用インクの滲み防止等の目的で、前記印刷用インクに先だって、画像等の印刷には直接寄与しないインク(以下、プレコートインクという)を印刷媒体に噴射可能に構成されたものがある。
例えば、特許文献1に記載のインクジェットヘッドは、印刷用インクを噴射するインク吐出用ノズル列と、印刷用インクと反応してその滲みを防止するための反応液を噴射する反応液吐出用ノズル列とを有する。尚、反応液吐出用ノズル列は、インク吐出用ノズル列よりも、印刷媒体の搬送方向上流側に配置されている。これにより、搬送されてきた印刷媒体に対して、まず、反応液吐出用ノズル列から反応液が噴射され、その後、インク吐出用ノズル列から、反応液が着弾した領域に印刷用インクが噴射されることになる。
特開2005−119115号公報
しかし、前記特許文献1の反応液など、画像等の印刷に直接寄与しないプレコートインクを使用する必要があるのは、印刷用インクの滲みを抑えて非常に高品質の画像を印刷する場合に限られる。従って、反応液専用のノズル列を備えた前記特許文献1のインクジェットヘッドが使用されるのは、高画質の画像印刷を得意とする高性能のインクジェットプリンタに限られ、どちらかと言えば画質よりも印刷速度を優先する汎用的なプリンタには用いられない。つまり、特許文献1のインクジェットヘッドは高性能機種専用のヘッドとなって汎用性に欠けることから、コストが高くなる。
本発明の目的は、印刷用インクに先立ってプレコートインクを使用する高画質印刷と、多数のノズルから印刷用インクを一度に噴射する高速印刷の、両方に対応できる、汎用性の高いインクジェットヘッドを提供することである。
第1の発明のインクジェットヘッドは、
所定の走査方向に移動しながら、前記走査方向と交差する所定の搬送方向に搬送される印刷媒体に対してインクを噴射するインクジェットヘッドであって、前記搬送方向に沿って所定のピッチで配列された複数の第1ノズルからなる第1ノズル列と、前記第1ノズル列に連通し、且つ、印刷用インクの供給源と接続される第1インク供給口と、前記第1ノズル列よりも前記搬送方向上流側の領域において、前記複数の第1ノズルと同じく前記搬送方向に沿って前記所定のピッチで配列された複数の第2ノズルからなる第2ノズル列と、前記第2ノズル列に連通し、且つ、インクの供給源に接続される第2インク供給口と、前記第2ノズル列と対向する領域に設けられて、前記第2ノズル列のインクに噴射エネルギーを付与するアクチュエータとを備え、前記第1インク供給口は、前記第1ノズル列よりも前記搬送方向上流側の領域であって、前記アクチュエータとは前記走査方向において隣接する領域に配置され、前記第2インク供給口は、前記第2ノズル列よりも前記搬送方

向下流側の領域に配置されていることを特徴とするものである。
第1の発明のインクジェットヘッドは、
所定の走査方向に移動しながら、前記走査方向と交差する所定の搬送方向に搬送される印刷媒体に対してインクを噴射するインクジェットヘッドであって、 前記搬送方向に沿って所定のピッチで配列された複数の第1ノズルからなる第1ノズル列と、 前記第1ノズル列に連通し、且つ、印刷用インクの供給源と接続される第1インク供給口と、前記第1ノズル列よりも前記搬送方向上流側の領域において、前記複数の第1ノズルと同じく前記搬送方向に沿って前記所定のピッチで配列された複数の第2ノズルからなる第2ノズル列と、前記第2ノズル列に連通し、且つ、インクの供給源に接続される第2インク供給口と、前記第2ノズル列と対向する領域に設けられて、前記第2ノズル列のインクに噴射エネルギーを付与するアクチュエータとを備え、前記第2インク供給口は、前記第2ノズル列よりも前記搬送方向下流側の領域であって、前記アクチュエータとは前記搬送方向において隣接する領域に配置され、前記第1インク供給口は、前記第1ノズル列よりも前記搬送方向上流側の領域に配置されていることを特徴とするものである。
ここで、プレコートインクを噴射可能な第2ノズル列が、印刷用インクを噴射する第1ノズル列よりも搬送方向上流側に離れて配置されている。従って、プレコートインクを使用する場合には、まず、第2ノズル列からプレコートインクが印刷媒体へ向けて噴射されて下地層が印刷媒体に形成された後、第1ノズルから、下地層が形成された領域に印刷用インクが噴射される。これにより、印刷用インクの印刷媒体への浸透が抑制されることから、高画質印刷が可能となる。また、第2ノズル列が第1ノズル列に対して搬送方向に離れていると、第1ノズル列と第2ノズル列の一方に、他方から噴射された、溶剤等の成分が全く異なるインクが混入してしまうという不具合が生じにくい。
ここで、2ノズル列が、印刷用インクを噴射する第1ノズル列よりも搬送方向上流側に離れて配置されている。従って、プレコートインクを使用する場合には、まず、第2ノズル列からプレコートインクが印刷媒体へ向けて噴射されて下地層が印刷媒体に形成された後、第1ノズルから、下地層が形成された領域に印刷用インクが噴射される。これにより、印刷用インクの印刷媒体への浸透が抑制されることから、高画質印刷が可能となる。また、第2ノズル列が第1ノズル列に対して搬送方向に離れていると、第1ノズル列と第2ノズル列の一方に、他方から噴射された、溶剤等の成分が全く異なるインクが混入してしまうという不具合が生じにくい。
第2の発明のインクジェットヘッドは、前記第1の発明において、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列の前記搬送方向に関するノズル配列数が等しいことを特徴とするものである。
プレコートインクは、印刷用インクが着弾する領域に噴射されればよく、印刷用インクが着弾しない領域にまで噴射する必要はない。そこで、本発明では、印刷用ノズルを噴射する第1ノズル列と、プレコートインクを噴射する第2ノズル列は、ノズル配列ピッチとノズル配列数が共に等しくなっている。これにより、印刷媒体上の、第1ノズル列から噴射される印刷用インクが着弾することとなる領域のそれぞれに、第2ノズル列から噴射されるプレコートインクを先に着弾させておくことができる。つまり、印刷媒体の画像等を印刷する領域(印刷用インクが着弾する領域)にプレコートインクを確実に着弾させることができ、また、印刷用インクが着弾しない領域にプレコートインクが無駄に噴射されることを防止することもできる。
第3の発明のインクジェットヘッドは、前記第1又は第2の発明において、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列とが、前記搬送方向に関して、前記所定のピッチだけ離れていることを特徴とするものである。
この構成によれば、第1ノズル列と第2ノズル列をそれぞれ構成するノズルが、搬送方向に関して、一定ピッチで一列に配列されることになる。従って、第1ノズル列だけでなく、第2ノズル列からも印刷用インクを噴射する際には、両ノズル列を合わせた長い一列のノズル列により、連続した広い領域を一度に印刷することができる。
第4の発明のインクジェットヘッドは、前記第1〜第3の何れかの発明において、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列は、前記走査方向に関して互いに離れて配置されていることを特徴とするものである。
この構成によれば、第1ノズル列と第2ノズル列とが、走査方向に関しても離れているため、第1ノズル列と第2ノズル列の間でのインクの混入をより確実に抑制できる。また、離れて配置される第1ノズル列と第2ノズル列を覆うキャップを、それぞれ別個に構成することが可能になり、キャップが一体の場合には生じやすい、キャッピング時のインク混入を防止することができる。
第5の発明のインクジェットヘッドは、
前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータが別体で構成されていることを特徴とするものである。
第1ノズル列と第2ノズル列が、搬送方向及び走査方向の両方に関してそれぞれ離れている場合には、これら第1ノズル列と第2ノズル列と対向する位置に設けられて、両ノズル列をそれぞれ駆動する2つのアクチュエータの位置も離れることになるが、このような2つのアクチュエータを一体で製造しようとすると、無駄な部分が多くなってしまうし、1枚の基板材料からアクチュエータの基板を大きく切り出す必要もあって、製造コスト面で不利である。本発明では、2つのアクチュエータを別体で構成し、各アクチュエータのサイズを小さくすることで、製造コストを低減することが可能となる。
第6の発明のインクジェットヘッドは、前記第6の発明において、前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータの、前記搬送方向に関する長さがほぼ等しいことを特徴とするものである。
このように、2つのアクチュエータの搬送方向に関する長さが等しい場合には、これら2つのアクチュエータを、1枚の基板材料から無駄なく切り出すことが可能となる。
本発明によれば、プレコートインクを噴射可能な第2ノズル列が、印刷用インクを噴射する第1ノズル列よりも搬送方向上流側に離れて配置されている。従って、プレコートインクを使用する場合には、まず、第2ノズル列からプレコートインクが印刷媒体へ向けて噴射されて下地層が印刷媒体に形成された後、第1ノズルから、下地層が形成された領域に印刷用インクが噴射される。これにより、印刷用インクの印刷媒体への浸透が抑制されることから、高画質印刷が可能となる。また、第2ノズル列が第1ノズル列に対して搬送方向に離れていると、第1ノズル列と第2ノズル列の一方に、他方から噴射された、溶剤等の成分が全く異なるインクが混入してしまうという不具合が生じにくい。
さらに、本発明においては、第1ノズル列と第2ノズル列はノズル配列ピッチが同じとなっている。そのため、第2ノズル列に連通する第2インク供給口を印刷用インクの供給源に接続した上で、第1ノズル列と第2ノズル列の両方から印刷用インクを噴射させることで、プレコートインクを使用する高画質印刷だけでなく、多数のノズルから印刷用インクを一度に噴射する高速印刷も可能となる。
次に、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明のインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタの概略構成を示す平面図である。図1に示すように、プリンタ1は、図1の走査方向に沿って往復移動可能に構成されたキャリッジ2と、このキャリッジ2に搭載されたインクジェットヘッド3及びサブタンク4a〜4eと、5つのインクカートリッジ5a〜5eと、印刷用紙100を図1の搬送方向に搬送する搬送機構6等を備えている。
キャリッジ2は、図1の左右方向(走査方向)に平行に延びる2本のガイド軸17に沿って往復移動可能に構成されている。また、キャリッジ2には、無端ベルト18が連結されており、キャリッジ駆動モータ19によって無端ベルト18が走行駆動されたときに、キャリッジ2は、無端ベルト18の走行に伴って走査方向に移動するようになっている。
このキャリッジ2には、インクジェットヘッド3と5つのサブタンク4a〜4eが搭載されている。インクジェットヘッド3は、その下面(図1の紙面向こう側の面)に多数のインク噴射用のノズル50を備えている。また、5つのサブタンク4a〜4eは、走査方向に沿って並べて配置されており、これら5つのサブタンク4a〜4eにはチューブジョイント20が一体的に設けられている。そして、チューブジョイント20に連結された可撓性のチューブ11によって、5つのサブタンク4a〜4eと、ホルダ10に着脱自在に装着された5つのインクカートリッジ5a〜5eとがそれぞれ接続されている。
5つのインクカートリッジ5a〜5eには、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの、4色の印刷用インクと、これら4色の印刷用インクに先立って印刷用紙100に対して噴射される無色透明のプレコートインクの、計5種類のインクがそれぞれ貯留されている。
そして、5つのインクカートリッジ5a〜5eにそれぞれ貯留された5種類のインクは、ホルダ10に接続された5本のチューブ11を介して5つのサブタンク4a〜4eに供給され、サブタンク4a〜4eにおいて一時的に貯留された後、インクジェットヘッド3に供給される。そして、インクジェットヘッド3は、キャリッジ2とともに走査方向に往復移動しつつ、その下面(液滴噴射面)に設けられた多数のノズル50から、搬送機構6により図1の下方(搬送方向)に搬送される印刷用紙100にインクの液滴を噴射する。
搬送機構6は、インクジェットヘッド3よりも搬送方向上流側に配置された給紙ローラ25と、インクジェットヘッド3よりも搬送方向下流側に配置された排紙ローラ26とを有する。給紙ローラ25と排紙ローラ26は、それぞれ、給紙モータ27と排紙モータ28により回転駆動される。そして、この搬送機構6は、給紙ローラ25により、印刷用紙100を図1の上方からインクジェットヘッド3に供給するとともに、排紙ローラ26により、インクジェットヘッド3によって画像や文字等が記録された印刷用紙100を図1の下方へ排出するように構成されている。
次に、インクジェットヘッド3について詳細に説明する。図2は、インクジェットヘッド3の上面図、図3は図2のA部拡大図、図4は図3のIV-IV線断面図である。但し、図
面を分かりやすくするため、図2においては図3では示されている圧力室44等の一部のインク流路の図示を省略するとともに、ノズル50を図3よりも大きく図示している。
図2に示すように、インクジェットヘッド3は、ノズル50や圧力室44を含むインク流路が形成された流路ユニット30と、流路ユニット30の上面に配置された2つの圧電アクチュエータ31a,31bを備えている。
図4に示すように、流路ユニット30は、ステンレス鋼等の金属材料で形成された、キャビティプレート40、ベースプレート41、及び、マニホールドプレート42と、合成樹脂材料からなるノズルプレート43を備えており、これら4枚のプレート40〜43は積層状態で接合されている。
4枚のプレート40〜43のうち、最下層に位置するノズルプレート43には、その下面(液滴噴射面)に開口する複数のノズル50が形成されている。複数のノズル50は、搬送方向(図2の上下方向)に沿って配列されて、5列のノズル列51a〜51eを構成している。ここで、図2に示すように、5列のノズル列51a〜51eのうち、4列のノズル列51a〜51dは、ノズルプレート43の搬送方向下流側領域(図2の下半分の領域)において、走査方向に並べて配置されている。一方、残りのノズル列51eは、4列のノズル列51a〜51dよりも搬送方向上流側に離れた領域(図2の上半分の領域)に配置されている。以下、4列のノズル列51a〜51dを第1ノズル列51a〜51d、第1ノズル列51a〜51dよりも搬送方向上流側に配置されたノズル列51eを第2ノズル列51eと称する。尚、後で詳述するが、このインクジェットヘッド3が図1のプリンタ1に組み込まれたときには、4列の第1ノズル列51a〜51dを構成するノズル50a〜50d(第1ノズル)は、4色(マゼンタ、シアン、イエロー、ブラック)の印刷用インクをそれぞれ噴射する一方、第2ノズル列51eを構成するノズル50e(第2ノズル)は、無色透明のプレコートインクを噴射することになる。
また、第2ノズル列51eは、4列の第1ノズル列51a〜51dに対して、搬送方向にだけでなく、走査方向(図2の左右方向)に関しても離れた位置に配置されている。その結果、図2に示すように、4列の第1ノズル列51a〜51dは図中右下領域に配置される一方で、1列の第2ノズル列51eは図中左上領域に配置されている。
また、5列のノズル列51a〜51eは、ノズル配列ピッチPとノズル配列数が全て等しくなっている。さらに、図2に示すように、4列の第1ノズル列51a〜51d(より詳しくは、ノズル列51a〜51dの搬送方向上流側の端に位置するノズル50)と、第2ノズル列51e(ノズル列51eの搬送方向下流側の端に位置するノズル50)とは、ノズル配列ピッチPだけ離れている。
図3、図4に示すように、4枚のプレートのうちの最上層に位置するキャビティプレート40には、複数のノズル50に対応して複数の圧力室44が形成されている。圧力室44は走査方向を長手方向とする略楕円の平面形状を有し、平面視で圧力室44の一方の端部がノズル50と重なるように配置されている。また、ベースプレート41には、平面視で圧力室44の長手方向の両端部に重なる位置に、それぞれ貫通孔45,46が形成されている。
マニホールドプレート42には、5列のノズル列51a〜51eにそれぞれ対応する5本のマニホールド流路47が形成されている。図2に示すように、各マニホールド流路47は、対応するノズル列51の横の位置において搬送方向に延在するとともに、図3に示すように、平面視で、対応する圧力室44の略左半分と重なっている。また、図2に示すように、最上層のキャビティプレート40には5つのインク供給口48a〜48eが形成されており、5本のマニホールド流路47の一端部は、これら5つのインク供給口48a〜48eにそれぞれ連通している。また、5つのインク供給口48a〜48eは、5つのインクカートリッジ5a〜5e(図1参照)とチューブ11を介して接続される。
尚、先にも述べたように、4列の第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eは、搬送方向と走査方向の両方に関して離れて配置されている。従って、インクジェットヘッド3の、第1ノズル列51よりも搬送方向上流側領域(図2の右上領域)と、第2ノズル列51eよりも搬送方向下流側領域(図2の左下領域)は、ノズル50が配置されない空いた領域となっている。そこで、4列の第1ノズル列51a〜51dにそれぞれ連通する4つのインク供給口48a〜48d(第1インク供給口)が第1ノズル列51a〜51dよりも搬送方向上流側の領域に配置されるとともに、第2ノズル列51eに連通するインク供給口48e(第2インク供給口)が第2ノズル列51eよりも搬送方向下流側の領域に配置されている。これにより、ノズル50の配置されない空いた領域に、インク供給口48a〜48e及びそれに連なるインク流路が設けられることになり、インクジェットヘッド3を小型化することが可能となる。
また、図3、図4に示すように、マニホールドプレート42には、平面視で、ベースプレート41に形成された貫通孔46とノズルプレート43に形成されたノズル50の両方と重なる位置に、貫通孔49が形成されている。
そして、図4に示すように、流路ユニット30内において、インク供給口48に連なるマニホールド流路47が貫通孔45を介して圧力室44に連通し、圧力室44はさらに貫通孔46、49を介してノズル50に連通している。つまり、流路ユニット30には、マニホールド流路47の出口から圧力室44を経てノズル50に至る複数の個別インク流路が形成されている。
次に、第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eのインクにそれぞれ噴射エネルギーを付与する、第1圧電アクチュエータ31aと第2圧電アクチュエータ31bについて説明する。図2に示すように、第1圧電アクチュエータ31aは、4列の第1ノズル列51a〜51dからインクを噴射させるものであり、流路ユニット30の上面の、4列の第1ノズル列51a〜51d及びこれらノズル列に対応する圧力室44と対向する領域に配置されている。一方、第2圧電アクチュエータ31bは、第2ノズル列51eからインクを噴射させるものであり、流路ユニット30の上面の、第2ノズル列51e及びこのノズル列に対応する圧力室44と対向する領域に配置されている。尚、第1圧電アクチュエータ31aと第2圧電アクチュエータ31bの駆動対象となる5列のノズル列51a〜51eは、ノズル配列ピッチPとノズル配列数が全て同じであることから、5列のノズル列51a〜51eの長さは全て等しくなっている。そのため、第1圧電アクチュエータ31aと第2圧電アクチュエータ31bは、ノズル配列方向(搬送方向)に関して、長さがほぼ等しくなっている。
尚、第1圧電アクチュエータ31aと第2圧電アクチュエータ31bは、駆動対象であるノズル50(ノズル列51)の数が異なるためにサイズが異なるものの、それ以外はほぼ同じ構造を有する。従って、以下の圧電アクチュエータ31の構造に関する説明においては、第1圧電アクチュエータ31aで代表して説明し、第2圧電アクチュエータ31bについては構造の説明を省略する。
図3、図4に示すように、第1圧電アクチュエータ31aは、振動板60、圧電層61及び複数の個別電極62を備えている。振動板60は金属材料などの導電性材料からなり、第1ノズル列51a〜51dに連通する複数の圧力室44を覆うようにキャビティプレート40の上面に接合されている。尚、導電性を有する振動板60は常にグランド電位に保持されており、この振動板60と複数の個別電極62との間に位置する圧電層61の部分に、厚み方向の電界を作用させるためのグランド電極を兼ねている。
圧電層61は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であり、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛系の圧電セラミックス材料からなり、振動板60の上面に複数の圧力室44にまたがって連続的に配置されている。また、圧電層61は予めその厚み方向に分極されている。
複数の個別電極62は、圧電層61の上面に複数の圧力室44に対応して設けられている。個別電極62は、圧力室44よりも一回り小さい略楕円の平面形状を有しており、平面視で、圧力室44の略中央部に重なる位置に配置されている。また個別電極62の長手方向における一端部(図3の左端部)は、平面視で圧力室44と重ならない位置まで延びており、その先端部がランド62aとなっている。ランド62aには、図示しないフレキシブルプリント基板(FPC)等の配線部材を介してヘッドドライバが接続される。そして、ヘッドドライバから複数の個別電極62に対して、所定の駆動電位とグランド電位の何れか一方の電位が選択的に付与される。
以上の構成を有する圧電アクチュエータ31の作用について説明する。図示しないヘッドドライバからある個別電極62に対して所定の駆動電位が付与されると、駆動電位が付与された個別電極62とグランド電極としての振動板60との間に電位差が発生し、圧電層61の個別電極62と振動板60とに挟まれた部分に厚み方向の電界が発生する。ここで、圧電層61の分極方向が電界方向と同じである場合には、圧電層61は厚み方向に伸びて面方向に収縮する。そして、この圧電層61の収縮変形に伴って、振動板60の圧力室44と対向する部分が圧力室44側に凸となるように変形する(ユニモルフ変形)。このとき、圧力室44の容積が減少することから、その内部のインクの圧力が上昇し、圧力室44に連通するノズル50からインクの液滴が吐出される。
尚、本実施形態では、第1ノズル列51a〜51dを駆動する第1圧電アクチュエータ31aと、第2ノズル列51eを駆動する第2圧電アクチュエータ31bとが、別体で構成されている。第1ノズル列51を駆動する部分と第2ノズル列51eを駆動する部分とが一体化されて、流路ユニット30の上面のほぼ全域を覆う大きな面積を有する圧電アクチュエータを採用してもよいのだが、これだと、駆動に寄与しない無駄な部分が生じてしまう。即ち、本実施形態のように、第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eが、搬送方向及び走査方向の両方に関してそれぞれ離れている場合には、これら第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eと対向する位置に設けられて、双方をそれぞれ駆動する2つのアクチュエータ部分の位置も離れることになり、図2の右上領域及び左下領域に配置される振動板60や圧電層61は、ノズル列51の駆動に寄与しない無駄な部分となる。
また、図5(a)に示すように、圧電層61の製造方法として、1枚の焼成された圧電シート70から圧電層61を切り出す方法を採用する場合、各々の圧電層61が大きいと、1枚の圧電シート70から切り出せる圧電層61の枚数が減ってしまう(図5(a)では9枚しか切り出せない)。1枚の金属シートから振動板60を切り出す場合についても同様である。従って、圧電アクチュエータの製造コストが高いものとなってしまう。
そこで、本実施形態では、図2のように、2つの圧電アクチュエータ31a,31bを別体とすることで、各アクチュエータのサイズが小さくなり、ノズル列51の駆動に寄与しない無駄な部分を極力減らすことができる。また、図5(b)に示すように、1枚の圧電シート70から、面積の大きな第1圧電アクチュエータ31aの圧電層61aを切り出した後の残りから、面積の小さな第2圧電アクチュエータ31bの圧電層61bを切り出すということができるため、図5(a)と同じ大きさの1枚の圧電シート70から、より多くの枚数の圧電層61a,61bを切り出すことができ(図5(b)では24組)、製造コストを低減することが可能となる。また、第1圧電アクチュエータ31aと第2圧電アクチュエータ31bの搬送方向に関する長さ(図5における上下方向長さ)がほぼ等しくなっていると、図5(b)のように、第1圧電アクチュエータ31aの圧電層61aのすぐ横の余った部分から、第2圧電アクチュエータ31bの圧電層61bを切り出すことができるため、さらに無駄なく切り出すことが可能となる。
ところで、図2に戻って、4列の第1ノズル列51a〜51dにそれぞれ連通する4つのインク供給口48a〜48d(第1インク供給口)は、4色の印刷用インク(マゼンタ、シアン、イエロー、ブラック)をそれぞれ貯留する4つのインクカートリッジ5a〜5d(図1参照)と、チューブ11を介して接続される。従って、4つの第1インク供給口48a〜48dからインクジェットヘッド3に4色の印刷用インクが供給されるため、第1圧電アクチュエータ31aにより圧力室44内のインクに圧力が付与されることによって、4列の第1ノズル列51a〜51dを構成するノズル50a〜50d(第1ノズル)は、4色の印刷用インクを噴射することになる。
一方、第2ノズル列51eに連通するインク供給口48e(第2インク供給口)は、図1のように、プレコートインクを貯留するインクカートリッジ5eがホルダ10に装着された、プレコートインクを使用可能なプリンタ1においては、インクカートリッジ5e(図1参照)とチューブ11を介して接続される。従って、第2インク供給口48eからインクジェットヘッド3にプレコートインクが供給されるため、第2圧電アクチュエータ31bにより圧力室44内のインクに圧力が付与されることによって、第2ノズル列51eを構成するノズル50e(第2ノズル)はプレコートインクを噴射することになる。このように、第2ノズル列51eからプレコートインクが印刷用紙100に噴射されると、印刷用紙100にはプレコートインクにより下地層が形成される。その後で、下地層が形成された領域に、第2ノズル列51eよりも搬送方向下流側に位置する、第1ノズル列51a〜51dから印刷用インクが噴射される。このとき、着弾した印刷用インクが下地層の存在によって印刷用紙100に浸透しにくくなるため、高画質の画像印刷が可能となる。
ここで、本実施形態のインクジェットヘッド3においては、プレコートインクを噴射する第2ノズル列51eが、常に印刷用インクを噴射する第1ノズル列51a〜51dよりも搬送方向上流側に離れて配置されている。従って、第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eの一方に、他方から噴射された、溶剤等の成分が全く異なるインクが混入してしまうという不具合が抑制される。さらに、第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eは走査方向に関しても離れて配置されている。そのため、第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eの間でのインクの混入をより確実に抑制できる。また、第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eが走査方向にも離れていると、ノズル50を覆う種々のキャップ(乾燥防止用のキャップやパージ用の吸引キャップ等)を、インクの種類が異なる第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eで、別々に構成することが可能になる。これにより、キャップが一体の場合に生じやすい、キャッピング時におけるノズル列51間でのインク混入を防止することができる。
また、第2ノズル列51eが第1ノズル列51a〜51dよりも先にインクを噴射するという動作は、第2ノズル列51eを、第1ノズル列51a〜51dに対して走査方向に離すだけでも実現可能であるが、本実施形態のように、第2ノズル列51eが第1ノズル列51a〜51dに対して搬送方向上流側に離れていると、先に、第2ノズル列51eから印刷用紙100にプレコートインクが噴射されてから、そのプレコートインクの着弾領域が第1ノズル列51a〜51dと対向する位置まで搬送されて、第1ノズル列51a〜51dから噴射された印刷用インクが着弾するまでに、ある程度の時間が経過する。そのため、先に着弾したプレコートインクが印刷用紙100に十分浸透して下地層が形成された後に、印刷用インクが印刷用紙100に着弾することになり、印刷用インクと、印刷用紙100に浸透する前のプレコートインクとが滲んでしまうといった問題が生じにくい。
尚、プレコートインクは、後で印刷用インクが着弾する領域に噴射されればよく、印刷用インクが着弾しない領域にまで噴射する必要はない。そこで、本実施形態では、図2に示すように、印刷用インクを噴射する第1ノズル列51a〜51dと、プレコートインクを噴射する第2ノズル列51eは、ノズル配列ピッチPとノズル配列数が共に等しくなっている。これにより、印刷用紙100上の、第1ノズル列51a〜51dから噴射される印刷用インクが着弾することとなる領域のそれぞれに、第2ノズル列51eから噴射させたプレコートインクを先に着弾させておくことができる。つまり、印刷用紙100の画像等を印刷する領域(印刷用インクが着弾する領域)にプレコートインクを確実に着弾させることができ、また、印刷用インクが着弾しない領域にプレコートインクが無駄に噴射されることを防止することもできる。
以上の効果は、第2ノズル列51eからプレコートインクを噴射する場合の効果である。しかし、本実施形態のインクジェットヘッド3は、図1のプレコートインクを貯留するインクカートリッジ5eの代わりに、印刷用インク(例えば、ブラックインク)を貯留する別のインクカートリッジを装着することで、プレコートインクを使用しないプリンタに用いることも可能となっている。
先にも述べたように、本実施形態では、第2ノズル列51eのノズル配列ピッチと、印刷用インクを噴射する第1ノズル列51のノズル配列ピッチとが等しくなっている。そのため、第2ノズル列51eに連通する第2インク供給口48eを、ブラックインク等の印刷用インクを貯留するインクカートリッジに接続し、第1ノズル列51a〜51dだけでなく第2ノズル列51eからも同じように印刷用インクを噴射させて文字や画像等を印刷することができる。この場合、第1ノズル列51a〜51dのみから印刷用インクを噴射させる場合と比べて、より多くのノズル50から同色のインクが一度に噴射されることになるため、印刷速度が上がる。
また、本実施形態では、第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eとが、搬送方向(ノズル配列方向)に関して、ノズル配列ピッチPと同じ距離だけ離れている。そのため、第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eをそれぞれ構成するノズル50が、搬送方向に関して、一定ピッチで一列に配列されることになる。従って、第1ノズル列51a〜51dだけでなく、第2ノズル列51eからも印刷用インクを噴射する際に、両ノズル列を合わせた、搬送方向に長い一列のノズル列により、印刷用紙100上の連続した広い領域を一度に印刷することができる。
尚、2列以上のノズル列51から同じ色のインクを同時に噴射させる場合には、これら2列以上のノズル列51は互いに近接している方が好ましい。これは、インクジェットヘッド3が走査方向に移動しながらノズル50からインクを噴射する際に、ガイド軸17のたわみやガタによって、インクジェットヘッド3が水平面内でわずかに傾くことがあるが、そのような場合でも、2列以上のノズル列51が近接していると、2列のノズル列51間での着弾位置ズレが小さくなり、印字品質低下を抑制できるからである。また、一般的に、高速印刷が特に要求されるのは、ブラックインクのみを使用するテキスト印字を行う場合である。そこで、本実施形態のインクジェットヘッド3では、図2に示すように、第2ノズル列51eは、4列の第1ノズル列51a〜51dのうち、カラーインクを噴射するノズル列51a〜51cよりも、ブラックインクを噴射するノズル列51dに近い位置に配置されている。このように、ブラックのノズル列51dと、第2ノズル列51eとが隣接していることから、第2ノズル列51eからもブラックインクを噴射させてテキスト印字を高速で行う際の、印字品質向上が期待できる。
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
1]前記実施形態では、第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eが、搬送方向(ノズル配列方向)に関してノズル配列ピッチPだけ離れていたが、このような形態には限らず、両ノズル列の搬送方向に関する離間距離が、ノズル配列ピッチPよりも大きくてもよい。例えば、図6に示すインクジェットヘッド3Aのように、第2ノズル列51eが、第1ノズル列51a〜51dに対して、キャリッジ2の1回の走査(パス)で印刷される長さL(即ち、ノズル列長さ)の半分(L/2)だけ搬送方向上流側に離れて配置されてもよい。
2]図7に示すインクジェットヘッド3Bのように、第1ノズル列51a〜51d(図7ではブラックのノズル列51d)と第2ノズル列51eが、走査方向に関して同じ位置にあってもよい。この場合には、インクジェットヘッド3Bの幅(走査方向の寸法)を小さくすることができ、インクジェットヘッド3Bの小型化が可能となる。
3]前記実施形態では、第1ノズル列51a〜51dを駆動する第1圧電アクチュエータ31aと、第2ノズル列51eを駆動する第2圧電アクチュエータ31bは、別体で構成されて完全に分離されているが、2つの圧電アクチュエータ31a,31bが一体に構成されてもよい。あるいは、振動板60が流路ユニット30の上面全域を覆うように設けられて、2つの圧電アクチュエータ31a,31bで振動板60が共通に構成された上で、2つの圧電アクチュエータ31a,31bの圧電層61だけが別体に構成されてもよい。
4]インクに噴射エネルギーを付与するアクチュエータは、前記実施形態のような圧電式のアクチュエータに限られず、その他の形式のアクチュエータを採用することもできる。例えば、ヒータでインクを加熱して膜沸騰を生じさせることによって、ノズルからインクを噴射させる形式のアクチュエータであってもよい。
本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略平面図である。 インクジェットヘッドの平面図である。 図2のA部拡大図である。 図3のIV-IV線断面図である。 1枚の圧電シートからの圧電層の切り出しを説明する図であり、(a)は第1、第2圧電アクチュエータの圧電層が一体である場合、(b)は第1、第2圧電アクチュエータの圧電層が別体である場合をそれぞれ示す。 変更形態のインクジェットヘッドの平面図である。 別の変更形態のインクジェットヘッドの平面図である。
1 プリンタ
3,3A,3B インクジェットヘッド
5a〜5d インクカートリッジ
5e インクカートリッジ
6 搬送機構
30 流路ユニット
31a 第1圧電アクチュエータ
31b 第2圧電アクチュエータ
48a〜48d 第1インク供給口
48e 第2インク供給口
50 ノズル
51a〜51d 第1ノズル列
51e 2ノズル列
100 印刷用紙
本発明は、印刷媒体に向けてインクの液滴を噴射するインクジェットヘッドに関する。
インクジェットプリンタに採用される一般的なインクジェットヘッドは、ブラックインクやカラーインクといった、文字や画像等を印刷するための印刷用インクを、所定の搬送方向に搬送される印刷媒体に向けて噴射する。さらに、近年では、印刷用インクに加えて、さらに、印刷用インク以外のインクを噴射可能なインクジェットヘッドも提案されている。そのようなインクジェットヘッドとして、印刷用インクの滲み防止等の目的で、前記印刷用インクに先だって、画像等の印刷には直接寄与しないインク(以下、プレコートインクという)を印刷媒体に噴射可能に構成されたものがある。
例えば、特許文献1に記載のインクジェットヘッドは、印刷用インクを噴射するインク吐出用ノズル列と、印刷用インクと反応してその滲みを防止するための反応液を噴射する反応液吐出用ノズル列とを有する。尚、反応液吐出用ノズル列は、インク吐出用ノズル列よりも、印刷媒体の搬送方向上流側に配置されている。これにより、搬送されてきた印刷媒体に対して、まず、反応液吐出用ノズル列から反応液が噴射され、その後、インク吐出用ノズル列から、反応液が着弾した領域に印刷用インクが噴射されることになる。
特開2005−119115号公報
しかし、前記特許文献1の反応液など、画像等の印刷に直接寄与しないプレコートインクを使用する必要があるのは、印刷用インクの滲みを抑えて非常に高品質の画像を印刷する場合に限られる。従って、反応液専用のノズル列を備えた前記特許文献1のインクジェットヘッドが使用されるのは、高画質の画像印刷を得意とする高性能のインクジェットプリンタに限られ、どちらかと言えば画質よりも印刷速度を優先する汎用的なプリンタには用いられない。つまり、特許文献1のインクジェットヘッドは高性能機種専用のヘッドとなって汎用性に欠けることから、コストが高くなる。
本発明の目的は、印刷用インクに先立ってプレコートインクを使用する高画質印刷と、多数のノズルから印刷用インクを一度に噴射する高速印刷の、両方に対応できる、汎用性の高いインクジェットヘッドを提供することである。
第1の発明のインクジェットヘッドは、刷媒体に対してインクを噴射するインクジェットヘッドであって、第1方向に沿って所定のピッチで配列された複数の第1ノズルからなる第1ノズル列と、前記第1ノズル列に連通し、且つ、印刷用インクの供給源と接続される第1インク供給口と、前記第1ノズル列よりも前記第1方向における一方側の領域において、前記複数の第1ノズルと同じく前記搬送方向に沿って前記所定のピッチで配列された複数の第2ノズルからなる第2ノズル列と、前記第2ノズル列に連通し、且つ、インクの供給源に接続される第2インク供給口と、前記第2ノズル列と対向する領域に設けられて、前記第2ノズル列のインクに噴射エネルギーを付与するアクチュエータとを備え、前記第2インク供給口は、前記第2ノズル列よりも前記第1方向における他方側の領域であって、前記アクチュエータとは前記第1方向において隣接する領域に配置され、前記第1インク供給口は、前記第1ノズル列よりも前記第1方向における一方側の領域に配置されていることを特徴とするものである。
ここで、プレコートインクを噴射可能な第2ノズル列が、印刷用インクを噴射する第1ノズル列よりも前記第1方向における一方側に離れて配置されている。従って、プレコートインクを使用する場合には、まず、第2ノズル列からプレコートインクが印刷媒体へ向けて噴射されて下地層が印刷媒体に形成された後、第1ノズルから、下地層が形成された領域に印刷用インクが噴射される。これにより、印刷用インクの印刷媒体への浸透が抑制されることから、高画質印刷が可能となる。また、第2ノズル列が第1ノズル列に対して第1方向に離れていると、第1ノズル列と第2ノズル列の一方に、他方から噴射された、溶剤等の成分が全く異なるインクが混入してしまうという不具合が生じにくい。
ここで、第2ノズル列が、印刷用インクを噴射する第1ノズル列よりも前記第1方向における一方側に離れて配置されている。従って、プレコートインクを使用する場合には、まず、第2ノズル列からプレコートインクが印刷媒体へ向けて噴射されて下地層が印刷媒体に形成された後、第1ノズルから、下地層が形成された領域に印刷用インクが噴射される。これにより、印刷用インクの印刷媒体への浸透が抑制されることから、高画質印刷が可能となる。また、第2ノズル列が第1ノズル列に対して第1方向に離れていると、第1ノズル列と第2ノズル列の一方に、他方から噴射された、溶剤等の成分が全く異なるインクが混入してしまうという不具合が生じにくい。
第2の発明のインクジェットヘッドは、前記第1の発明において、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列の前記第1方向に関するノズル配列数が等しいことを特徴とするものである。
プレコートインクは、印刷用インクが着弾する領域に噴射されればよく、印刷用インクが着弾しない領域にまで噴射する必要はない。そこで、本発明では、印刷用ノズルを噴射する第1ノズル列と、プレコートインクを噴射する第2ノズル列は、ノズル配列ピッチとノズル配列数が共に等しくなっている。これにより、印刷媒体上の、第1ノズル列から噴射される印刷用インクが着弾することとなる領域のそれぞれに、第2ノズル列から噴射されるプレコートインクを先に着弾させておくことができる。つまり、印刷媒体の画像等を印刷する領域(印刷用インクが着弾する領域)にプレコートインクを確実に着弾させることができ、また、印刷用インクが着弾しない領域にプレコートインクが無駄に噴射されることを防止することもできる。
第3の発明のインクジェットヘッドは、前記第1又は第2の発明において、前記第1ノ
ズル列と前記第2ノズル列とが、前記第1方向に関して、前記所定のピッチだけ離れていることを特徴とするものである。
この構成によれば、第1ノズル列と第2ノズル列をそれぞれ構成するノズルが、第1方向に関して、一定ピッチで一列に配列されることになる。従って、第1ノズル列だけでなく、第2ノズル列からも印刷用インクを噴射する際には、両ノズル列を合わせた長い一列のノズル列により、連続した広い領域を一度に印刷することができる。
第4の発明のインクジェットヘッドは、前記第1〜第3の何れかの発明において、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列は、前記第1方向と交差する第2方向に関して互いに離れて配置されていることを特徴とするものである。
この構成によれば、第1ノズル列と第2ノズル列とが、第2方向に関しても離れているため、第1ノズル列と第2ノズル列の間でのインクの混入をより確実に抑制できる。また、離れて配置される第1ノズル列と第2ノズル列を覆うキャップを、それぞれ別個に構成することが可能になり、キャップが一体の場合には生じやすい、キャッピング時のインク混入を防止することができる。
第5の発明のインクジェットヘッドは、前記第1ノズル列として、ブラックインクをそれぞれ噴射する複数のブラックノズルからなるブラックノズル列と、カラーインクをそれぞれ噴射する複数のカラーノズルからなるカラーノズル列とを有し、前記ブラックノズル列と前記カラーノズル列は前記第1方向と交差する第2方向に関して並べて配置され、前記第2ノズル列は、前記ブラックノズル列と前記カラーノズル列よりも前記第1方向一方側の領域において、前記第2方向に関して、前記カラーノズル列よりも前記ブラックノズル列に近い位置に配置されていることを特徴とするものである。
第6の発明のインクジェットヘッドは、前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータが別体で構成されていることを特徴とするものである。
第1ノズル列と第2ノズル列が、第1方向及び第2方向の両方に関してそれぞれ離れている場合には、これら第1ノズル列と第2ノズル列と対向する位置に設けられて、両ノズル列をそれぞれ駆動する2つのアクチュエータの位置も離れることになるが、このような2つのアクチュエータを一体で製造しようとすると、無駄な部分が多くなってしまうし、1枚の基板材料からアクチュエータの基板を大きく切り出す必要もあって、製造コスト面で不利である。本発明では、2つのアクチュエータを別体で構成し、各アクチュエータのサイズを小さくすることで、製造コストを低減することが可能となる。
の発明のインクジェットヘッドは、前記第6の発明において、前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータの、前記第1方向に関する長さがほぼ等しいことを特徴とするものである。
このように、2つのアクチュエータの第1方向に関する長さが等しい場合には、これら2つのアクチュエータを、1枚の基板材料から無駄なく切り出すことが可能となる。
第8の発明のインクジェットヘッドは、前記第1インク供給口が、前記第2アクチュエータとは前記第1ノズル列よりも前記第1方向の一方側の領域において隣接して設けられていることを特徴とするものである。
第9の発明のインクジェットヘッドは、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列とは、印刷インクを噴射することを特徴とするものである。
本発明によれば、プレコートインクを噴射可能な第2ノズル列が、印刷用インクを噴射する第1ノズル列よりも搬送方向上流側に離れて配置されている。従って、プレコートインクを使用する場合には、まず、第2ノズル列からプレコートインクが印刷媒体へ向けて噴射されて下地層が印刷媒体に形成された後、第1ノズルから、下地層が形成された領域に印刷用インクが噴射される。これにより、印刷用インクの印刷媒体への浸透が抑制されることから、高画質印刷が可能となる。また、第2ノズル列が第1ノズル列に対して搬送方向に離れていると、第1ノズル列と第2ノズル列の一方に、他方から噴射された、溶剤等の成分が全く異なるインクが混入してしまうという不具合が生じにくい。
さらに、本発明においては、第1ノズル列と第2ノズル列はノズル配列ピッチが同じとなっている。そのため、第2ノズル列に連通する第2インク供給口を印刷用インクの供給源に接続した上で、第1ノズル列と第2ノズル列の両方から印刷用インクを噴射させるこ
とで、プレコートインクを使用する高画質印刷だけでなく、多数のノズルから印刷用インクを一度に噴射する高速印刷も可能となる。
次に、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明のインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタの概略構成を示す平面図である。図1に示すように、プリンタ1は、図1の走査方向に沿って往復移動可能に構成されたキャリッジ2と、このキャリッジ2に搭載されたインクジェットヘッド3及びサブタンク4a〜4eと、5つのインクカートリッジ5a〜5eと、印刷用紙100を図1の搬送方向に搬送する搬送機構6等を備えている。
キャリッジ2は、図1の左右方向(走査方向)に平行に延びる2本のガイド軸17に沿って往復移動可能に構成されている。また、キャリッジ2には、無端ベルト18が連結されており、キャリッジ駆動モータ19によって無端ベルト18が走行駆動されたときに、キャリッジ2は、無端ベルト18の走行に伴って走査方向に移動するようになっている。
このキャリッジ2には、インクジェットヘッド3と5つのサブタンク4a〜4eが搭載されている。インクジェットヘッド3は、その下面(図1の紙面向こう側の面)に多数のインク噴射用のノズル50を備えている。また、5つのサブタンク4a〜4eは、走査方向に沿って並べて配置されており、これら5つのサブタンク4a〜4eにはチューブジョイント20が一体的に設けられている。そして、チューブジョイント20に連結された可撓性のチューブ11によって、5つのサブタンク4a〜4eと、ホルダ10に着脱自在に装着された5つのインクカートリッジ5a〜5eとがそれぞれ接続されている。
5つのインクカートリッジ5a〜5eには、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの、4色の印刷用インクと、これら4色の印刷用インクに先立って印刷用紙100に対して噴射される無色透明のプレコートインクの、計5種類のインクがそれぞれ貯留されている。
そして、5つのインクカートリッジ5a〜5eにそれぞれ貯留された5種類のインクは、ホルダ10に接続された5本のチューブ11を介して5つのサブタンク4a〜4eに供給され、サブタンク4a〜4eにおいて一時的に貯留された後、インクジェットヘッド3に供給される。そして、インクジェットヘッド3は、キャリッジ2とともに走査方向に往復移動しつつ、その下面(液滴噴射面)に設けられた多数のノズル50から、搬送機構6により図1の下方(搬送方向)に搬送される印刷用紙100にインクの液滴を噴射する。
搬送機構6は、インクジェットヘッド3よりも搬送方向上流側に配置された給紙ローラ25と、インクジェットヘッド3よりも搬送方向下流側に配置された排紙ローラ26とを有する。給紙ローラ25と排紙ローラ26は、それぞれ、給紙モータ27と排紙モータ28により回転駆動される。そして、この搬送機構6は、給紙ローラ25により、印刷用紙100を図1の上方からインクジェットヘッド3に供給するとともに、排紙ローラ26により、インクジェットヘッド3によって画像や文字等が記録された印刷用紙100を図1の下方へ排出するように構成されている。
次に、インクジェットヘッド3について詳細に説明する。図2は、インクジェットヘッド3の上面図、図3は図2のA部拡大図、図4は図3のIV-IV線断面図である。但し、図
面を分かりやすくするため、図2においては図3では示されている圧力室44等の一部のインク流路の図示を省略するとともに、ノズル50を図3よりも大きく図示している。
図2に示すように、インクジェットヘッド3は、ノズル50や圧力室44を含むインク
流路が形成された流路ユニット30と、流路ユニット30の上面に配置された2つの圧電アクチュエータ31a,31bを備えている。
図4に示すように、流路ユニット30は、ステンレス鋼等の金属材料で形成された、キャビティプレート40、ベースプレート41、及び、マニホールドプレート42と、合成樹脂材料からなるノズルプレート43を備えており、これら4枚のプレート40〜43は積層状態で接合されている。
4枚のプレート40〜43のうち、最下層に位置するノズルプレート43には、その下面(液滴噴射面)に開口する複数のノズル50が形成されている。複数のノズル50は、搬送方向(図2の上下方向)に沿って配列されて、5列のノズル列51a〜51eを構成している。ここで、図2に示すように、5列のノズル列51a〜51eのうち、4列のノズル列51a〜51dは、ノズルプレート43の搬送方向下流側領域(図2の下半分の領域)において、走査方向に並べて配置されている。一方、残りのノズル列51eは、4列のノズル列51a〜51dよりも搬送方向上流側に離れた領域(図2の上半分の領域)に配置されている。以下、4列のノズル列51a〜51dを第1ノズル列51a〜51d、第1ノズル列51a〜51dよりも搬送方向上流側に配置されたノズル列51eを第2ノズル列51eと称する。尚、後で詳述するが、このインクジェットヘッド3が図1のプリンタ1に組み込まれたときには、4列の第1ノズル列51a〜51dを構成するノズル50a〜50d(第1ノズル)は、4色(マゼンタ、シアン、イエロー、ブラック)の印刷用インクをそれぞれ噴射する一方、第2ノズル列51eを構成するノズル50e(第2ノズル)は、無色透明のプレコートインクを噴射することになる。
また、第2ノズル列51eは、4列の第1ノズル列51a〜51dに対して、搬送方向にだけでなく、走査方向(図2の左右方向)に関しても離れた位置に配置されている。その結果、図2に示すように、4列の第1ノズル列51a〜51dは図中右下領域に配置される一方で、1列の第2ノズル列51eは図中左上領域に配置されている。
また、5列のノズル列51a〜51eは、ノズル配列ピッチPとノズル配列数が全て等しくなっている。さらに、図2に示すように、4列の第1ノズル列51a〜51d(より詳しくは、ノズル列51a〜51dの搬送方向上流側の端に位置するノズル50)と、第2ノズル列51e(ノズル列51eの搬送方向下流側の端に位置するノズル50)とは、ノズル配列ピッチPだけ離れている。
図3、図4に示すように、4枚のプレートのうちの最上層に位置するキャビティプレート40には、複数のノズル50に対応して複数の圧力室44が形成されている。圧力室44は走査方向を長手方向とする略楕円の平面形状を有し、平面視で圧力室44の一方の端部がノズル50と重なるように配置されている。また、ベースプレート41には、平面視で圧力室44の長手方向の両端部に重なる位置に、それぞれ貫通孔45,46が形成されている。
マニホールドプレート42には、5列のノズル列51a〜51eにそれぞれ対応する5本のマニホールド流路47が形成されている。図2に示すように、各マニホールド流路47は、対応するノズル列51の横の位置において搬送方向に延在するとともに、図3に示すように、平面視で、対応する圧力室44の略左半分と重なっている。また、図2に示すように、最上層のキャビティプレート40には5つのインク供給口48a〜48eが形成されており、5本のマニホールド流路47の一端部は、これら5つのインク供給口48a〜48eにそれぞれ連通している。また、5つのインク供給口48a〜48eは、5つのインクカートリッジ5a〜5e(図1参照)とチューブ11を介して接続される。
尚、先にも述べたように、4列の第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eは、搬送方向と走査方向の両方に関して離れて配置されている。従って、インクジェットヘッド3の、第1ノズル列51よりも搬送方向上流側領域(図2の右上領域)と、第2ノズル列51eよりも搬送方向下流側領域(図2の左下領域)は、ノズル50が配置されない空いた領域となっている。そこで、4列の第1ノズル列51a〜51dにそれぞれ連通する4つのインク供給口48a〜48d(第1インク供給口)が第1ノズル列51a〜51dよりも搬送方向上流側の領域に配置されるとともに、第2ノズル列51eに連通するインク供給口48e(第2インク供給口)が第2ノズル列51eよりも搬送方向下流側の領域に配置されている。これにより、ノズル50の配置されない空いた領域に、インク供給口48a〜48e及びそれに連なるインク流路が設けられることになり、インクジェットヘッド3を小型化することが可能となる。
また、図3、図4に示すように、マニホールドプレート42には、平面視で、ベースプレート41に形成された貫通孔46とノズルプレート43に形成されたノズル50の両方と重なる位置に、貫通孔49が形成されている。
そして、図4に示すように、流路ユニット30内において、インク供給口48に連なるマニホールド流路47が貫通孔45を介して圧力室44に連通し、圧力室44はさらに貫通孔46、49を介してノズル50に連通している。つまり、流路ユニット30には、マニホールド流路47の出口から圧力室44を経てノズル50に至る複数の個別インク流路が形成されている。
次に、第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eのインクにそれぞれ噴射エネルギーを付与する、第1圧電アクチュエータ31aと第2圧電アクチュエータ31bについて説明する。図2に示すように、第1圧電アクチュエータ31aは、4列の第1ノズル列51a〜51dからインクを噴射させるものであり、流路ユニット30の上面の、4列の第1ノズル列51a〜51d及びこれらノズル列に対応する圧力室44と対向する領域に配置されている。一方、第2圧電アクチュエータ31bは、第2ノズル列51eからインクを噴射させるものであり、流路ユニット30の上面の、第2ノズル列51e及びこのノズル列に対応する圧力室44と対向する領域に配置されている。尚、第1圧電アクチュエータ31aと第2圧電アクチュエータ31bの駆動対象となる5列のノズル列51a〜51eは、ノズル配列ピッチPとノズル配列数が全て同じであることから、5列のノズル列51a〜51eの長さは全て等しくなっている。そのため、第1圧電アクチュエータ31aと第2圧電アクチュエータ31bは、ノズル配列方向(搬送方向)に関して、長さがほぼ等しくなっている。
尚、第1圧電アクチュエータ31aと第2圧電アクチュエータ31bは、駆動対象であるノズル50(ノズル列51)の数が異なるためにサイズが異なるものの、それ以外はほぼ同じ構造を有する。従って、以下の圧電アクチュエータ31の構造に関する説明においては、第1圧電アクチュエータ31aで代表して説明し、第2圧電アクチュエータ31bについては構造の説明を省略する。
図3、図4に示すように、第1圧電アクチュエータ31aは、振動板60、圧電層61及び複数の個別電極62を備えている。振動板60は金属材料などの導電性材料からなり、第1ノズル列51a〜51dに連通する複数の圧力室44を覆うようにキャビティプレート40の上面に接合されている。尚、導電性を有する振動板60は常にグランド電位に保持されており、この振動板60と複数の個別電極62との間に位置する圧電層61の部分に、厚み方向の電界を作用させるためのグランド電極を兼ねている。
圧電層61は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であり、強誘電性を有するチタン酸
ジルコン酸鉛系の圧電セラミックス材料からなり、振動板60の上面に複数の圧力室44にまたがって連続的に配置されている。また、圧電層61は予めその厚み方向に分極されている。
複数の個別電極62は、圧電層61の上面に複数の圧力室44に対応して設けられている。個別電極62は、圧力室44よりも一回り小さい略楕円の平面形状を有しており、平面視で、圧力室44の略中央部に重なる位置に配置されている。また個別電極62の長手方向における一端部(図3の左端部)は、平面視で圧力室44と重ならない位置まで延びており、その先端部がランド62aとなっている。ランド62aには、図示しないフレキシブルプリント基板(FPC)等の配線部材を介してヘッドドライバが接続される。そして、ヘッドドライバから複数の個別電極62に対して、所定の駆動電位とグランド電位の何れか一方の電位が選択的に付与される。
以上の構成を有する圧電アクチュエータ31の作用について説明する。図示しないヘッドドライバからある個別電極62に対して所定の駆動電位が付与されると、駆動電位が付与された個別電極62とグランド電極としての振動板60との間に電位差が発生し、圧電層61の個別電極62と振動板60とに挟まれた部分に厚み方向の電界が発生する。ここで、圧電層61の分極方向が電界方向と同じである場合には、圧電層61は厚み方向に伸びて面方向に収縮する。そして、この圧電層61の収縮変形に伴って、振動板60の圧力室44と対向する部分が圧力室44側に凸となるように変形する(ユニモルフ変形)。このとき、圧力室44の容積が減少することから、その内部のインクの圧力が上昇し、圧力室44に連通するノズル50からインクの液滴が吐出される。
尚、本実施形態では、第1ノズル列51a〜51dを駆動する第1圧電アクチュエータ31aと、第2ノズル列51eを駆動する第2圧電アクチュエータ31bとが、別体で構成されている。第1ノズル列51を駆動する部分と第2ノズル列51eを駆動する部分とが一体化されて、流路ユニット30の上面のほぼ全域を覆う大きな面積を有する圧電アクチュエータを採用してもよいのだが、これだと、駆動に寄与しない無駄な部分が生じてしまう。即ち、本実施形態のように、第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eが、搬送方向及び走査方向の両方に関してそれぞれ離れている場合には、これら第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eと対向する位置に設けられて、双方をそれぞれ駆動する2つのアクチュエータ部分の位置も離れることになり、図2の右上領域及び左下領域に配置される振動板60や圧電層61は、ノズル列51の駆動に寄与しない無駄な部分となる。
また、図5(a)に示すように、圧電層61の製造方法として、1枚の焼成された圧電シート70から圧電層61を切り出す方法を採用する場合、各々の圧電層61が大きいと、1枚の圧電シート70から切り出せる圧電層61の枚数が減ってしまう(図5(a)では9枚しか切り出せない)。1枚の金属シートから振動板60を切り出す場合についても同様である。従って、圧電アクチュエータの製造コストが高いものとなってしまう。
そこで、本実施形態では、図2のように、2つの圧電アクチュエータ31a,31bを別体とすることで、各アクチュエータのサイズが小さくなり、ノズル列51の駆動に寄与しない無駄な部分を極力減らすことができる。また、図5(b)に示すように、1枚の圧電シート70から、面積の大きな第1圧電アクチュエータ31aの圧電層61aを切り出した後の残りから、面積の小さな第2圧電アクチュエータ31bの圧電層61bを切り出すということができるため、図5(a)と同じ大きさの1枚の圧電シート70から、より多くの枚数の圧電層61a,61bを切り出すことができ(図5(b)では24組)、製造コストを低減することが可能となる。また、第1圧電アクチュエータ31aと第2圧電アクチュエータ31bの搬送方向に関する長さ(図5における上下方向長さ)がほぼ等し
くなっていると、図5(b)のように、第1圧電アクチュエータ31aの圧電層61aのすぐ横の余った部分から、第2圧電アクチュエータ31bの圧電層61bを切り出すことができるため、さらに無駄なく切り出すことが可能となる。
ところで、図2に戻って、4列の第1ノズル列51a〜51dにそれぞれ連通する4つのインク供給口48a〜48d(第1インク供給口)は、4色の印刷用インク(マゼンタ、シアン、イエロー、ブラック)をそれぞれ貯留する4つのインクカートリッジ5a〜5d(図1参照)と、チューブ11を介して接続される。従って、4つの第1インク供給口48a〜48dからインクジェットヘッド3に4色の印刷用インクが供給されるため、第1圧電アクチュエータ31aにより圧力室44内のインクに圧力が付与されることによって、4列の第1ノズル列51a〜51dを構成するノズル50a〜50d(第1ノズル)は、4色の印刷用インクを噴射することになる。
一方、第2ノズル列51eに連通するインク供給口48e(第2インク供給口)は、図1のように、プレコートインクを貯留するインクカートリッジ5eがホルダ10に装着された、プレコートインクを使用可能なプリンタ1においては、インクカートリッジ5e(図1参照)とチューブ11を介して接続される。従って、第2インク供給口48eからインクジェットヘッド3にプレコートインクが供給されるため、第2圧電アクチュエータ31bにより圧力室44内のインクに圧力が付与されることによって、第2ノズル列51eを構成するノズル50e(第2ノズル)はプレコートインクを噴射することになる。このように、第2ノズル列51eからプレコートインクが印刷用紙100に噴射されると、印刷用紙100にはプレコートインクにより下地層が形成される。その後で、下地層が形成された領域に、第2ノズル列51eよりも搬送方向下流側に位置する、第1ノズル列51a〜51dから印刷用インクが噴射される。このとき、着弾した印刷用インクが下地層の存在によって印刷用紙100に浸透しにくくなるため、高画質の画像印刷が可能となる。
ここで、本実施形態のインクジェットヘッド3においては、プレコートインクを噴射する第2ノズル列51eが、常に印刷用インクを噴射する第1ノズル列51a〜51dよりも搬送方向上流側に離れて配置されている。従って、第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eの一方に、他方から噴射された、溶剤等の成分が全く異なるインクが混入してしまうという不具合が抑制される。さらに、第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eは走査方向に関しても離れて配置されている。そのため、第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eの間でのインクの混入をより確実に抑制できる。また、第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eが走査方向にも離れていると、ノズル50を覆う種々のキャップ(乾燥防止用のキャップやパージ用の吸引キャップ等)を、インクの種類が異なる第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eで、別々に構成することが可能になる。これにより、キャップが一体の場合に生じやすい、キャッピング時におけるノズル列51間でのインク混入を防止することができる。
また、第2ノズル列51eが第1ノズル列51a〜51dよりも先にインクを噴射するという動作は、第2ノズル列51eを、第1ノズル列51a〜51dに対して走査方向に離すだけでも実現可能であるが、本実施形態のように、第2ノズル列51eが第1ノズル列51a〜51dに対して搬送方向上流側に離れていると、先に、第2ノズル列51eから印刷用紙100にプレコートインクが噴射されてから、そのプレコートインクの着弾領域が第1ノズル列51a〜51dと対向する位置まで搬送されて、第1ノズル列51a〜51dから噴射された印刷用インクが着弾するまでに、ある程度の時間が経過する。そのため、先に着弾したプレコートインクが印刷用紙100に十分浸透して下地層が形成された後に、印刷用インクが印刷用紙100に着弾することになり、印刷用インクと、印刷用紙100に浸透する前のプレコートインクとが滲んでしまうといった問題が生じにくい。
尚、プレコートインクは、後で印刷用インクが着弾する領域に噴射されればよく、印刷用インクが着弾しない領域にまで噴射する必要はない。そこで、本実施形態では、図2に示すように、印刷用インクを噴射する第1ノズル列51a〜51dと、プレコートインクを噴射する第2ノズル列51eは、ノズル配列ピッチPとノズル配列数が共に等しくなっている。これにより、印刷用紙100上の、第1ノズル列51a〜51dから噴射される印刷用インクが着弾することとなる領域のそれぞれに、第2ノズル列51eから噴射させたプレコートインクを先に着弾させておくことができる。つまり、印刷用紙100の画像等を印刷する領域(印刷用インクが着弾する領域)にプレコートインクを確実に着弾させることができ、また、印刷用インクが着弾しない領域にプレコートインクが無駄に噴射されることを防止することもできる。
以上の効果は、第2ノズル列51eからプレコートインクを噴射する場合の効果である。しかし、本実施形態のインクジェットヘッド3は、図1のプレコートインクを貯留するインクカートリッジ5eの代わりに、印刷用インク(例えば、ブラックインク)を貯留する別のインクカートリッジを装着することで、プレコートインクを使用しないプリンタに用いることも可能となっている。
先にも述べたように、本実施形態では、第2ノズル列51eのノズル配列ピッチと、印刷用インクを噴射する第1ノズル列51のノズル配列ピッチとが等しくなっている。そのため、第2ノズル列51eに連通する第2インク供給口48eを、ブラックインク等の印刷用インクを貯留するインクカートリッジに接続し、第1ノズル列51a〜51dだけでなく第2ノズル列51eからも同じように印刷用インクを噴射させて文字や画像等を印刷することができる。この場合、第1ノズル列51a〜51dのみから印刷用インクを噴射させる場合と比べて、より多くのノズル50から同色のインクが一度に噴射されることになるため、印刷速度が上がる。
また、本実施形態では、第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eとが、搬送方向(ノズル配列方向)に関して、ノズル配列ピッチPと同じ距離だけ離れている。そのため、第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eをそれぞれ構成するノズル50が、搬送方向に関して、一定ピッチで一列に配列されることになる。従って、第1ノズル列51a〜51dだけでなく、第2ノズル列51eからも印刷用インクを噴射する際に、両ノズル列を合わせた、搬送方向に長い一列のノズル列により、印刷用紙100上の連続した広い領域を一度に印刷することができる。
尚、2列以上のノズル列51から同じ色のインクを同時に噴射させる場合には、これら2列以上のノズル列51は互いに近接している方が好ましい。これは、インクジェットヘッド3が走査方向に移動しながらノズル50からインクを噴射する際に、ガイド軸17のたわみやガタによって、インクジェットヘッド3が水平面内でわずかに傾くことがあるが、そのような場合でも、2列以上のノズル列51が近接していると、2列のノズル列51間での着弾位置ズレが小さくなり、印字品質低下を抑制できるからである。また、一般的に、高速印刷が特に要求されるのは、ブラックインクのみを使用するテキスト印字を行う場合である。そこで、本実施形態のインクジェットヘッド3では、図2に示すように、第2ノズル列51eは、4列の第1ノズル列51a〜51dのうち、カラーインクを噴射するノズル列51a〜51cよりも、ブラックインクを噴射するノズル列51dに近い位置に配置されている。このように、ブラックのノズル列51dと、第2ノズル列51eとが隣接していることから、第2ノズル列51eからもブラックインクを噴射させてテキスト印字を高速で行う際の、印字品質向上が期待できる。
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
1]前記実施形態では、第1ノズル列51a〜51dと第2ノズル列51eが、搬送方向(ノズル配列方向)に関してノズル配列ピッチPだけ離れていたが、このような形態には限らず、両ノズル列の搬送方向に関する離間距離が、ノズル配列ピッチPよりも大きくてもよい。例えば、図6に示すインクジェットヘッド3Aのように、第2ノズル列51eが、第1ノズル列51a〜51dに対して、キャリッジ2の1回の走査(パス)で印刷される長さL(即ち、ノズル列長さ)の半分(L/2)だけ搬送方向上流側に離れて配置されてもよい。
2]図7に示すインクジェットヘッド3Bのように、第1ノズル列51a〜51d(図7ではブラックのノズル列51d)と第2ノズル列51eが、走査方向に関して同じ位置にあってもよい。この場合には、インクジェットヘッド3Bの幅(走査方向の寸法)を小さくすることができ、インクジェットヘッド3Bの小型化が可能となる。
3]前記実施形態では、第1ノズル列51a〜51dを駆動する第1圧電アクチュエータ31aと、第2ノズル列51eを駆動する第2圧電アクチュエータ31bは、別体で構成されて完全に分離されているが、2つの圧電アクチュエータ31a,31bが一体に構成されてもよい。あるいは、振動板60が流路ユニット30の上面全域を覆うように設けられて、2つの圧電アクチュエータ31a,31bで振動板60が共通に構成された上で、2つの圧電アクチュエータ31a,31bの圧電層61だけが別体に構成されてもよい。
4]インクに噴射エネルギーを付与するアクチュエータは、前記実施形態のような圧電式のアクチュエータに限られず、その他の形式のアクチュエータを採用することもできる。例えば、ヒータでインクを加熱して膜沸騰を生じさせることによって、ノズルからインクを噴射させる形式のアクチュエータであってもよい。
本実施形態に係るインクジェットプリンタの概略平面図である。 インクジェットヘッドの平面図である。 図2のA部拡大図である。 図3のIV-IV線断面図である。 1枚の圧電シートからの圧電層の切り出しを説明する図であり、(a)は第1、第2圧電アクチュエータの圧電層が一体である場合、(b)は第1、第2圧電アクチュエータの圧電層が別体である場合をそれぞれ示す。 変更形態のインクジェットヘッドの平面図である。 別の変更形態のインクジェットヘッドの平面図である。
1 プリンタ
3,3A,3B インクジェットヘッド
5a〜5d インクカートリッジ
5e インクカートリッジ
6 搬送機構
30 流路ユニット
31a 第1圧電アクチュエータ
31b 第2圧電アクチュエータ
48a〜48d 第1インク供給口
48e 第2インク供給口
50 ノズル
51a〜51d 第1ノズル列
51e 2ノズル列
100 印刷用紙

Claims (7)

  1. 所定の走査方向に移動しながら、前記走査方向と交差する所定の搬送方向に搬送される印刷媒体に対してインクを噴射するインクジェットヘッドであって、
    前記搬送方向に沿って所定のピッチで配列された複数の第1ノズルからなる第1ノズル列と、
    前記第1ノズル列に連通し、且つ、印刷用インクの供給源と接続される第1インク供給口と、
    前記第1ノズル列よりも前記搬送方向上流側の領域において、前記複数の第1ノズルと同じく前記搬送方向に沿って前記所定のピッチで配列された複数の第2ノズルからなる第2ノズル列と、
    前記第2ノズル列に連通し、且つ、インクの供給源に接続される第2インク供給口と、前記第2ノズル列と対向する領域に設けられて、前記第2ノズル列のインクに噴射エネルギーを付与するアクチュエータと
    を備え、
    前記第2インク供給口は、前記第2ノズル列よりも前記搬送方向下流側の領域であって、前記アクチュエータとは前記搬送方向において隣接する領域に配置され、前記第1インク供給口は、前記第1ノズル列よりも前記搬送方向上流側の領域に配置されていることを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 前記第1ノズル列と前記第2ノズル列の前記搬送方向に関するノズル配列数が等しいことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
  3. 前記第1ノズル列と前記第2ノズル列とが、前記搬送方向に関して、前記所定のピッチだけ離れていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットヘッド。
  4. 前記第1ノズル列と前記第2ノズル列は、前記走査方向に関して互いに離れて配置されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のインクジェットヘッド。
  5. 前記第1ノズル列として、ブラックインクをそれぞれ噴射する複数のブラックノズルからなるブラックノズル列と、カラーインクをそれぞれ噴射する複数のカラーノズルからなるカラーノズル列とを有し、
    前記ブラックノズル列と前記カラーノズル列は前記走査方向に関して並べて配置され、
    前記第2ノズル列は、前記ブラックノズル列と前記カラーノズル列よりも前記搬送方向上流側の領域において、前記走査方向に関して、前記カラーノズル列よりも前記ブラックノズル列に近い位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のインクジェットヘッド。
  6. 前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列が形成された液滴噴射面を有するとともに、前記ノズル列に連通するインク流路が形成された流路ユニットと、
    前記流路ユニットの前記液滴噴射面と反対側の面の、前記第1ノズル列と対向する領域に設けられて、前記第1ノズル列のインクに噴射エネルギーを付与する第1アクチュエータと、
    前記流路ユニットの前記液滴噴射面と反対側の面の、前記第2ノズル列と対向する領域に設けられて、前記第2ノズル列のインクに噴射エネルギーを付与する第2アクチュエータを備え、
    前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータが別体で構成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のインクジェットヘッド。
  7. 前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータの、前記搬送方向に関する長さがほぼ等しいことを特徴とする請求項6に記載のインクジェットヘッド。
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