JP2015144235A - 光電変換装置作製キット、光電変換装置および光電変換装置付き携帯機器用カバー - Google Patents

光電変換装置作製キット、光電変換装置および光電変換装置付き携帯機器用カバー Download PDF

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Abstract

【課題】従来よりも低い設置コストで設置することができ、かつ高い変換効率を示す光電変換装置を実現することが可能な光電変換装置作製キット、光電変換装置および光電変換装置付き携帯機器用カバーを提供する。
【解決手段】光電変換装置作製キットは、既設の透明部材18に設置されるとともにキャリア輸送材料19が形成されることによって光電変換装置となる光電変換装置作製キットであって、支持基板11と、支持基板11上に設けられた第1導電層12と、第1導電層12上に設けられた触媒層17と、触媒層17上に設けられた多孔質絶縁層16と、多孔質絶縁層16上に設けられた第2導電層15と、第2導電層15上に設けられた光電変換層14とを備えている。光電変換層14は、多孔質半導体層と多孔質半導体層上の光増感剤とを有している。
【選択図】図7

Description

本発明は、光電変換装置作製キット、光電変換装置および光電変換装置付き携帯機器用カバーに関する。
化石燃料に代わるエネルギー源として太陽光が注目されており、太陽光を電力に変換することができる太陽電池が注目されている。さらに、新しいタイプの太陽電池として、金属錯体の光誘起電子移動を応用した色素増感太陽電池が提案されている。
図15に、特許文献1に記載の色素増感太陽電池の模式的な断面図を示す。図15に示す色素増感太陽電池は、基板101上に、順次積層された、第1導電層102、触媒層103、多孔性絶縁層104、第2導電層105、光増感剤が吸着された多孔性半導体層106および透光性カバー部材107を備えている。また、基板101上の第1導電層102と透光性カバー部材107との間の外周部に封止部108が設けられている。
第1導電層102は、スクライブライン110を封止部108の近傍の内側領域に有している。第1導電層102は、スクライブライン110を挟んで、太陽電池形成領域となる幅の広い部分と幅の狭い部分とに分割されている。幅の広い第1導電層102の外部に露出した部分と、幅の狭い第1導電層102の外部に露出した部分とが外部回路に接続されることになる。
図15に示す色素増感太陽電池の透光性カバー部材107に光109が入射すると、多孔性半導体層106に吸着された光増感剤において電子が発生し、電子は多孔性半導体層106を伝導して第2導電層105に移動し、第2導電層105に接続された幅の狭い方の第1導電層102から外部に取り出される。また、隣の色素増感太陽電池で発生した電子が幅の広い第1導電層102に移動してきて、第1導電層102と透光性カバー部材107との間に充填された電解質を伝導して多孔性半導体層106に吸着された光増感剤に補充される。図15に示す色素増感太陽電池においては、上記の一連の電子移動の繰り返しにより、電気エネルギーを取り出すことが可能となる。
また、特許文献1には、色素増感太陽電池を屋外に設置する場合には、強化ガラスを用いることが好ましいことが記載されている。
また、特許文献2には、TiO2層上に互いに異なる色の光増感色素を備えた色素増感型太陽電池層が設けられた色素増感型太陽電池が記載されている。また、特許文献3には、2種類以上の色を有する太陽電池素子を特定の文字や図形のパターンを形成するようにモザイク状に並べられることにより意匠性を備えた太陽電池モジュールが記載されている。さらに、特許文献4には、複数の配線材が設置された固定レールが垂直な方向に層状に設けられ、異なる色のセルユニットをそれぞれ同じ固定レールに設置する発電パネル装置が記載されている。
国際公開第2009/075229号 特開2005−346934号公報 特開2006−179380号公報 特開2012−114300号公報
色素増感太陽電池は、散乱光や様々な角度から入射した光に対して発電割合が高いという特徴を有することから、従来の太陽電池とは異なる設置場所への設置が検討されている。このような色素増感太陽電池の設置場所の1つとして、窓ガラスなどの透明部材からなる採光部を有する建材への設置が検討されている。
図16に、図15に示す色素増感太陽電池を取り付けた窓ガラスの模式的な断面図を示す。図16に示す窓ガラスは、図15に示す色素増感太陽電池204が取り付けられたガラス窓部201と、ガラス窓部201に取り付けられた窓枠202とを備えており、色素増感太陽電池204の透光性カバー部材107がガラス窓部201に貼り付けられた構造を有している。
しかしながら、図16に示す窓ガラスのガラス窓部201に光203が入射した場合には、採光部201および透光性カバー部材107による光203の吸収、および採光部201と透光性カバー部材107との界面における光203の反射によって、多孔性半導体層106に入射する光203の量が減少し、色素増感太陽電池204の変換効率が低下する。
また、図16に示す窓ガラスに色素増感太陽電池204を設置する際には、窓枠202からガラス窓部201を一旦取り外して、ガラス窓部201に色素増感太陽電池204を取り付けた後に、再度窓枠202に嵌め込むという作業を行なう必要があった。また、ビルの上階層などの高所においては、このようなガラス窓部201への色素増感太陽電池204の設置作業が困難であった。そのため、近年では、採光部への色素増感太陽電池204の設置コストを低減することが要望されている。
また、色素増感太陽電池は、窓ガラスなどの透明部材だけでなく、既存の建物の外壁のような不透明部材への設置も検討されている。しかしながら、図15に示す従来の色素増感太陽電池を既存の建物の外壁に取り付ける場合には、図15に示す色素増感太陽電池は基板101および透光性カバー部材107の2枚の支持基板を備えているために色素増感太陽電池自体が重くなり、さらには色素増感太陽電池を外壁に取り付けるための部材の重さも加わるために建物の外壁に所定の強度が要求されていた。
上記の事情に鑑みて、後述の態様においては、従来よりも低い設置コストで設置することができ、かつ高い変換効率を示す光電変換装置を実現することが可能な光電変換装置作製キットおよび光電変換装置を提供することを目的とする。
また、後述の態様においては、従来よりも軽量の光電変換装置を実現することが可能な光電変換装置作製キットおよび光電変換装置を提供することを目的とする。
本発明の一例である第1の態様によれば、既設の透明部材に設置されるとともにキャリア輸送材料が導入されることによって光電変換装置となる光電変換装置作製キットであって、支持基板と、支持基板上に設けられた第1導電層と、第1導電層上に設けられた触媒層と、触媒層上に設けられた多孔質絶縁層と、多孔質絶縁層上に設けられた第2導電層と、第2導電層上に設けられた光電変換層とを備え、光電変換層は、多孔質半導体層と多孔質半導体層上の光増感剤とを有する光電変換装置作製キットを提供することができる。
本発明の他の一例である第2の態様によれば、既設の透明部材と、本発明の第1の態様の光電変換装置作製キットと、透明部材と光電変換装置作製キットとを接合する封止部材と、透明部材と支持基板と封止部材とで取り囲まれている領域に導入されているキャリア輸送材料とを備えた光電変換装置を提供することができる。
本発明の他の一例である他の態様によれば、既設の部材に設置されるとともにキャリア輸送材料が導入されることによって光電変換装置となる光電変換装置作製キットであって、支持基板と、支持基板上に設けられた第1導電層と、第1導電層上に設けられた光電変換層と、光電変換層上に設けられた多孔質絶縁層と、多孔質絶縁層上に設けられた触媒層と第2導電層とを備え、光電変換層は、多孔質半導体層と多孔質半導体層上の光増感剤とを有する光電変換装置作製キットを提供することができる。
本発明の他の一例である他の態様によれば、既設の部材に設置されるとともにキャリア輸送材料が導入されることによって光電変換装置となる光電変換装置作製キットであって、支持基板と、支持基板上に設けられた第1導電層と、第1導電層上に設けられた第1の光電変換層と、第1導電層上に第1の光電変換層と間隔を空けて設けられた第2の光電変換層と、第1の光電変換層上に順次設けられた第1の多孔質絶縁層、第1の触媒層および第1の第2導電層と、第2の光電変換層上に順次設けられた第2の多孔質絶縁層、第2の触媒層および第2の第2導電層とを備え、第1の光電変換層および第2の光電変換層は、それぞれ、多孔質半導体層と多孔質半導体層上の光増感剤とを有し、第1の第2導電層は、第1導電層によって第2の光電変換層と電気的に接続されており、第1の多孔質絶縁層は、第1の光電変換層と第1の第2導電層とを電気的に絶縁するように第1導電層を電気的に分離しており、第2の多孔質絶縁層は、第2の光電変換層と第2の第2導電層とを電気的に絶縁するように第1導電層を電気的に分離しており、第1の第2導電層と、第2の光電変換層と第2の多孔質絶縁層と第2の触媒層と第2の第2導電層との積層体との間に間隔が設けられている光電変換装置作製キットを提供することができる。
本発明の他の一例である他の実施態様によれば、既設の透明部材としての携帯機器用カバーと、上記の態様の光電変換装置作製キットとを備えた光電変換装置付き携帯機器用カバーを提供することができる。
上記の実施態様によれば、従来よりも低い設置コストで設置することができ、かつ高い変換効率を示す光電変換装置を実現することが可能な光電変換装置作製キットおよび光電変換装置を提供することができる。さらには、異なる色の光電変換装置作製キットを用いることによって、採光部のデザイン性を向上させることができる。
また、上記の実施態様によれば、従来よりも軽量の光電変換装置を実現することが可能な光電変換装置作製キットおよび光電変換装置を提供することができる。
また、上記の実施態様によれば、軽量化を達成し得る光電変換装置付き携帯機器用カバーが提供される。
実施の形態1の光電変換装置作製キットの模式的な断面図である。 実施の形態1の光電変換装置の製造方法の一例の製造工程の一部を図解する模式的な断面図である。 実施の形態1の光電変換装置の製造方法の一例の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。 実施の形態1の光電変換装置の製造方法の一例の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。 実施の形態1の光電変換装置の製造方法の一例の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。 実施の形態1の光電変換装置の製造方法の一例の製造工程の他の一部を図解する模式的な断面図である。 実施の形態1の光電変換装置の模式的な断面図である。 実施の形態1の光電変換装置の模式的な平面図である。 実施の形態2の光電変換装置の製造方法の一例の製造工程の一部を図解する模式的な断面図である。 実施の形態3の光電変換装置の模式的な断面図である。 実施例5の光電変換装置の模式的な断面図である。 実施の形態4の光電変換装置の模式的な平面図である。 比較例1の光電変換装置の模式的な断面図である。 比較例2の光電変換装置の模式的な断面図である。 特許文献1に記載の色素増感太陽電池の模式的な断面図である。 図15に示す色素増感太陽電池を取り付けた窓ガラスの模式的な断面図である。 実施の形態5の光電変換装置作製キットの模式的な断面図である。 実施の形態5の光電変換装置の模式的な断面図である。 実施の形態6の光電変換装置の模式的な断面図である。 実施の形態7の光電変換装置の模式的な断面図である。 実施の形態8の光電変換装置付き携帯機器用カバーの模式的な断面図である。 光電変換装置作製キットと携帯機器用カバーの模式的な斜視図である。 実施の形態8の光電変換装置付き携帯機器用カバーの変形例の模式的な断面図である。 実施の形態8の光電変換装置付き携帯機器用カバーのさらなる変形例の模式的な断面図である。 実施の形態8の光電変換装置付き携帯機器用カバーのさらなる変形例の模式的な断面図である。 実施の形態8の光電変換装置付き携帯機器用カバーのさらなる変形例の模式的な断面図である。
以下、本発明の一例である実施の形態について説明する。なお、実施の形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
<実施の形態1>
≪光電変換装置作製キットの構成≫
図1に、実施の形態1の光電変換装置作製キットの模式的な断面図を示す。実施の形態1の光電変換装置作製キットは、支持基板11と、支持基板11上に設けられた第1導電層12と、第1導電層12を分離して支持基板11の表面を露出させるスクライブライン20と、第1導電層12上の触媒層17と、触媒層17を覆うとともにスクライブライン20を埋めるようにして設けられた多孔質絶縁層16と、スクライブライン20によって分離された第1導電層12の一方と電気的に接続されるように多孔質絶縁層16上に設けられた第2導電層15と、第2導電層15上に設けられた光電変換層14とを備えている。光電変換層14は、多孔質半導体層と、多孔質半導体層上に設けられた光増感剤とを有している。
実施の形態1の光電変換装置作製キットは、既設の透明部材に設置されるとともにキャリア輸送材料が導入されることによって光電変換装置となる。
≪支持基板≫
支持基板11としては、支持基板11上の部材を支持することができる材料を特に限定なく用いることができ、たとえば、ソーダガラス、溶融石英ガラス、結晶石英ガラスなどのガラス基板、または可撓性フィルムなどの可撓性を有する基板などを用いることができる。
支持基板11に用いられる可撓性フィルム(以下、「フィルム」ともいう。)を構成する材料としては、たとえば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、フェノキシ樹脂およびテフロン(登録商標)からなる群から選択された少なくとも1種を含むものなどを挙げることができる。
支持基板11の厚さも特に限定されないが、0.2mm以上5mm以下とすることが好ましい。
≪第1導電層≫
第1導電層12としては導電性を有する材料を特に限定なく用いることができ、たとえば、インジウム錫複合酸化物(ITO)、酸化錫(SnO2)、フッ素をドープした酸化錫(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)、およびタンタルあるいはニオブをドープした酸化チタンからなる群から選択された少なくとも1種を含むものなどを用いることができる。
第1導電層12の厚さは、0.02μm以上5μm以下であることが好ましい。また、第1導電層12の表面抵抗率は低いほど好ましく、なかでも40Ω/sq以下であることが好ましい。
支持基板11してのソーダ石灰フロートガラス上に第1導電層12としてのFTOを積層した透光性導電基板を用いることが特に好ましく、透光性導電基板の市販品を用いてもよい。
≪触媒層≫
触媒層17としては、触媒層17の表面で電子の受け渡しができる材料であれば特に限定なく用いることができ、たとえば、白金、パラジウム、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブおよびフラーレンからなる群から選択された少なくとも1種を含む材料を用いることができる。
≪多孔質絶縁層≫
多孔質絶縁層16としては、多孔質絶縁層16を介して向かい合っている、集電電極15と、第1導電層12および触媒層17との間の短絡を防止できる程度の絶縁性を有する材料を特に限定なく用いることができ、たとえば、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよびチタン酸バリウムからなる群から選択された少なくとも1種を含む材料を用いることができる。また、多孔質絶縁層16には、たとえば、リチウム電池でセパレーターとして使用されている不織布なども必要に応じて用いることができる。
≪第2導電層≫
第2導電層15としては導電性を有する材料を特に限定なく用いることができ、たとえば、ITO、SnO2、FTOおよびZnOからなる群から選択された少なくとも1種を含む材料を用いることができる。なかでも、第2導電層15としては、キャリア輸送材料に対して腐食性を示さないチタン、ニッケルまたはタンタルなどの金属を含んでいることが好ましい。
第2導電層15の厚さは、0.02μm以上5μm以下であることが好ましい。また、第2導電層15の表面抵抗率は低いほど好ましいが、なかでも40Ω/sq以下であることが好ましい。
また、第2導電層15としては、たとえば、金網、または複数の小孔がマトリックス状に形成された金属フィルム(金属箔)などを用いることができる。上記の金網または金属箔としては、複数の透光用開口部を有するものであれば特に限定されないが、透光用開口部が均一な大きさでかつ整然と配置されていることが好ましい。
上記の金網または金属箔からなる第2導電層15の厚さは、5μm以上1mm以下であることが好ましい。この第2導電層15の厚さが1mm以下である場合には、多孔質絶縁層16の厚さが厚くなりすぎて、多孔質絶縁層16内の電荷輸送距離を短くすることができる傾向にある。また、上記の金網または金属箔からなる第2導電層15の厚さが5μm以上である場合には、当該第2導電層15をより容易に作製することができるとともに、第2導電層15の強度が高強度となるため、光電変換層14を構成する多孔質半導体層の形成時に破損するおそれがある。
また、透光用開口部を有する部分の全面積に対する開口部の総面積の割合である開口率は、10%以上90%以下であることが好ましく、30%以上90%以下であることがより好ましい。
≪光電変換層≫
光電変換層14は、多孔質半導体層と、多孔質半導体層上の光増感剤とを有している。以下に、光電変換層14に含まれる多孔質半導体層および光増感剤についてそれぞれ説明する。
[多孔質半導体層]
多孔質半導体層を構成する半導体の種類は、太陽電池分野で一般に光電変換材料に使用される多孔質半導体を含むものであれば特に限定されない。多孔質半導体層としては、たとえば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉄、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化タングステン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム、硫化鉛、硫化亜鉛、リン化インジウム、銅−インジウム硫化物(CuInS2)、CuAlO2およびSrCu22からなる群から選択された少なくとも1種を含む半導体化合物などを用いることができる。なかでも、多孔質半導体層としては、安定性および安全性を向上させる観点から、酸化チタンを含むものを用いることが特に好ましい。
多孔質半導体層に好適に用いられる酸化チタンとしては、たとえば、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、無定形酸化チタン、メタチタン酸を含む化合物、オルソチタン酸を含む化合物、水酸化チタンおよび含水酸化チタンからなる群から選択された少なくとも1種を含むものを用いることができる。アナターゼ型酸化チタンおよびルチル型酸化チタンの2種類の結晶系酸化チタンは、その製法や熱履歴によりいずれの形態にもなり得るが、アナターゼ型酸化チタンが一般的である。なかでも、アナターゼ型酸化チタンの含有率の高い酸化チタンを用いることが好ましく、たとえばアナターゼ型酸化チタンの含有率が80%以上の酸化チタンを用いることが特に好ましい。
多孔質半導体層の形態も、特に限定されず、たとえば単結晶または多結晶のいずれであってもよいが、安定性、結晶成長の容易さ、および製造コストなどの観点から、多結晶であることが好ましく、多結晶からなる半導体微粒子(ナノからマイクロスケール)の形態であることが特に好ましい。したがって、たとえば、多孔質半導体層の材料としては、たとえば酸化チタンの微粒子を用いることが特に好ましい。酸化チタンの微粒子は、たとえば、気相法または液相法(水熱合成法、硫酸法)など公知の方法により製造することができる。また、酸化チタンの微粒子は、たとえば、デグサ(Degussa)社が開発した塩化物を高温加水分解することにより得ることもできる。
多孔質半導体層の厚さは、特に限定されるものではなく、たとえば0.1μm以上100μm以下とすることが好適である。また、多孔質半導体層は、表面積が大きいことが好ましく、多孔質半導体層の表面積は、10m2/g以上200m2/g以下であることが好ましい。
[光増感剤]
多孔質半導体層上の光増感剤は、特に限定されないが、たとえば可視光領域または赤外光領域に吸収領域を有する種々の有機色素または金属錯体色素の1種または2種以上を用いることができる。
有機色素としては、たとえば、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、ペリレン系色素、インジゴ系色素およびナフタロシアニン系色素からなる群から選択された少なくとも1種を含むものを用いることができる。有機色素の吸光係数は、一般に、遷移金属に分子が配位結合した形態をとる金属錯体色素に比べて大きくなる。
金属錯体色素としては、たとえば、分子に金属が配位結合したものを用いることができる。分子としては、たとえば、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素およびルテニウム系色素からなる群から選択された少なくとも1種を含むものを用いることができる。金属としては、たとえば、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、V(バナジウム)、Sn(錫)、Si(珪素)、Ti(チタン)、Ge(ゲルマニウム)、Cr(クロム)、Zn(亜鉛)、Ru(ルテニウム)、Mg(マグネシウム)、Al(アルミニウム)、Pb(鉛)、Mn(マンガン)、In(インジウム)、Mo(モリブデン)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Sb(アンチモン)、La(ランタン)、W(タングステン)、Pt(白金)、Ta(タンタル)、Ir(イリジウム)、Pd(パラジウム)、Os(オスミウム)、Ga(ガリウム)、Tb(テルビウム)、Eu(ユーロピウム)、Rb(ルビジウム)、Bi(ビスマス)、Se(セレン)、As(ヒ素)、Sc(スカンジウム)、Ag(銀)、Cd(カドミウム)、Hf(ハフニウム)、Re(レニウム)、Au(金)、Ac(アクチニウム)、Tc(テクネチウム)、Te(テルル)およびRh(ルビジウム)からなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。なかでも、金属錯体色素としては、フタロシアニン系色素またはルテニウム系色素に金属が配位したものを用いることが好ましく、ルテニウム系金属錯体色素を用いることが特に好ましい。
金属錯体色素としては、特に、以下の式(I)〜(III)で表わされるルテニウム系金属錯体色素を用いることが好ましい。市販のルテニウム系金属錯体色素としては、たとえば、Solaronix社製の商品名Ruthenium535色素、Ruthenium535−bisTBA色素、Ruthenium620−1H3TBA色素などが挙げられる。
Figure 2015144235
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また、多孔質半導体層に色素を強固に吸着させるためには、色素の分子中に、たとえば、カルボキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基などのインターロック基を有するものが好ましい。なお、インターロック基とは、一般に、多孔質半導体層に色素が固定される際に介在し、励起状態の色素と半導体の伝導帯との間の電子の移動を容易にする電気的結合を提供するものである。
≪光電変換装置の製造方法≫
以下、図2〜図7の模式的断面図を参照して、実施の形態1の光電変換装置作製キットを用いて実施の形態1の光電変換装置を製造する方法の一例について説明する。まず、図2に示すように、支持基板11の表面上に第1導電層12を形成する。第1導電層12はたとえばスパッタリング法などにより、基板11上に形成することにより形成することができる。また、第1導電層12を表面に備えた支持基板11としては、市販の透明導電膜付ガラスを用いることもできる。
次に、図3に示すように、第1導電層12にスクライブライン20を形成する。スクライブライン20は、たとえばレーザスクライブ法などによって第1導電層12の一部を除去することにより形成することができる。
次に、図4に示すように、第1導電層12の表面の一部に触媒層17を形成した後に、スクライブライン20を埋めて触媒層17を覆うように多孔質絶縁層16を形成する。触媒層17は、たとえば触媒層17を構成する金属粒子等の導電性粒子を分散させたペーストを第1導電層12の表面に塗布した後に焼成する方法、若しくはスパッタリング法により形成することができる。また、多孔質絶縁層16は、たとえば多孔質絶縁層16を構成する金属酸化物粒子等の絶縁性粒子を分散させたペーストを触媒層17を覆い、スクライブライン20を埋めるようにして塗布した後に焼成することによって形成することができる。
次に、図5に示すように、スクライブライン20により分離した第1導電層12の一方と電気的に接続するように多孔質絶縁層16上に第2導電層15を形成する。第2導電層15は、たとえばスパッタリング法などにより形成することができる。
次に、図1に示すように、第2導電層15上に光電変換層14を形成する。光電変換層14は、たとえば、多孔質半導体層を形成した後に、多孔質半導体層に光増感剤としての色素を吸着させることにより形成することができる。多孔質半導体層は、たとえば、多孔質半導体層を構成する半導体粒子を分散させたペーストを第2導電層15の表面に塗布した後に焼成することによって形成することができる。また、光増感剤としての色素は、色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に多孔質半導体層を浸漬することにより、多孔質半導体層に吸着させることができる。以上の工程を経ることにより、図1に示す実施の形態1の光電変換装置作製キットを作製することができる。
次に、図6に示すように、上述のようにして作製した実施の形態1の光電変換装置作製キットを採光部を構成する既設の透明部材21に封止部材18により接合する。ここで、封止部材18は、たとえば、既設の透明部材21の表面および実施の形態1の光電変換装置作製キットの第1導電層12の表面の少なくとも一方に塗布された後に、加熱および/または光照射されることによって硬化する。これにより、実施の形態1の光電変換装置作製キットを既設の透明部材21に接合することができ、実施の形態1の光電変換装置作製キットが既設の透明部材21に取り付けられる。
最後に、図7に示すように、既設の透明部材21に封止部材18によって接合された実施の形態1の光電変換装置作製キットの支持基板11と、封止部材18と、透明部材21とで取り囲まれた領域に液体状のキャリア輸送材料19を導入することによって、実施の形態1の光電変換装置が作製される。図8に、実施の形態1の光電変換装置の模式的な平面図を示す。
既設の透明部材21としては、透明部材21に入射してきた光31の少なくとも一部を透過させることができる部材であれば特に限定されず、たとえば、ソーダガラス、溶融石英ガラスまたは結晶石英ガラスなどのガラス基板を用いることができる。
封止部材18としては、支持基板11と封止部材18と透明部材21とで取り囲まれた領域に液体状のキャリア輸送材料19を保持することができ、外部からの水などの浸入を防ぐことができるものを好適に用いることができ、たとえば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソブチレン系樹脂、ホットメルト樹脂およびガラス系材料からなる少なくとも1種を含むものを用いることが好ましい。また、これらの2種以上を用いて、複数層構造の封止部材18を用いてもよい。封止部材18としては、たとえば、スリーボンド社製の型番:31X−101、スリーボンド社製の型番:31X−088または一般に市販されているエポキシ樹脂などを用いることができる。
液体状のキャリア輸送材料19としては、酸化還元種を含む液状物であればよく、たとえば、酸化還元種とこれを溶解可能な溶剤からなる電解液などを用いることができる。
酸化還元種としては、たとえば、I-/I3-系、Br2-/Br3-系、Fe2+/Fe3+系、キノン/ハイドロキノン系などを用いることができ、なかでも、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ化カルシウム(CaI2)などの金属ヨウ化物とヨウ素(I2)との組み合わせ、テトラエチルアンモニウムアイオダイド(TEAI)、テトラプロピルアンモニウムアイオダイド(TPAI)、テトラブチルアンモニウムアイオダイド(TBAI)、テトラヘキシルアンモニウムアイオダイド(THAI)などのテトラアルキルアンモニウム塩とヨウ素との組み合わせ、または臭化リチウム(LiBr)、臭化ナトリウム(NaBr)、臭化カリウム(KBr)、臭化カルシウム(CaBr2)などの金属臭化物と臭素との組み合わせを用いることが好ま
しく、なかでも、LiIとI2との組み合わせを用いることが特に好ましい。
また、酸化還元種の溶剤としては、たとえば、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、アセトニトリルなどのニトリル化合物、エタノールなどのアルコール類、水、または非プロトン極性物質などを用いることができる。なかでも、酸化還元種の溶剤としては、カーボネート化合物またはニトリル化合物を用いることが特に好ましい。これらの溶剤は2種類以上を混合して用いることもできる。
液体状のキャリア輸送材料19には、必要に応じて添加剤を加えてもよい。添加剤としては、たとえば、t-ブチルピリジン(TBP)などの窒素を含む芳香族化合物、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド(DMPII)、メチルプロピルイミダゾールアイオダイド(MPII)、エチルメチルイミダゾールアイオダイド(EMII)、エチルイミダゾールアイオダイド(EII)およびヘキシルメチルイミダゾールアイオダイド(HMII)からなる群から選択された少なくとも1種のイミダゾール塩などを用いることができる。
≪作用効果≫
実施の形態1の光電変換装置作製キットを用いて作製された実施の形態1の光電変換装置は、既設の透明部材21を受光面側の透光性基板として利用していることから、透明部材21側から光31が入射してきたとしても、従来のように、既設の透明部材21および受光面側の透光性基板の2枚の部材によって光31が吸収されず、また、既設の透明部材21と受光面側の透光性基板との界面による光31の反射によって、光電変換層14に入射する光31の量が低減するのを抑制することができる。これにより、実施の形態1の光電変換装置の短絡電流密度が増加して、変換効率を向上させることができる。
また、実施の形態1の光電変換装置作製キットを既設の透明部材21に設置して実施の形態1の光電変換装置を作製することができるため、受光面側の透光性基板に光電変換装置作製キットを接合する工程および既設の透明部材に透光性基板を接合する工程との2工程を省略することができるとともに、受光面側の透光性基板の材料コストも不要となる。これにより、実施の形態1の光電変換装置作製キットの設置コストも低減することができる。
以上の理由により、実施の形態1によれば、従来よりも低い設置コストで設置することができ、かつ高い変換効率を示す光電変換装置を実現することが可能な光電変換装置作製キット、光電変換装置および光電変換装置の製造方法を提供することができる。
<実施の形態2>
実施の形態2は、光電変換装置の製造方法が実施の形態1と異なっていることを特徴としている。以下、実施の形態2の光電変換装置の製造方法について説明する。まず、図1に示す光電変換装置作製キットを作製する工程までは実施の形態1と同様である。
次に、図9の模式的断面図に示すように、上記のようにして作製した光電変換装置作製キットの支持基板11から光電変換層14までの孔の空隙にキャリア輸送材料19として固体電解質を形成する工程を行なう。本実施の形態において、支持基板11から光電変換層14までの孔の空隙としては、多孔質絶縁層16の孔の空隙の少なくとも一部、第2導電層15の孔の空隙の少なくとも一部、および光電変換層14の多孔質半導体層の孔の空隙の少なくとも一部を挙げることができる。ここで、固体状のキャリア輸送材料19としては、たとえば、従来から公知の電解液、室温溶融塩に架橋させてマトリックスを形成するポリマー前駆体を添加したもの、または室温溶融塩に固体化する微粒子を添加したものを支持基板11から光電変換層14までの孔の空隙に注入した後に固体化したものなどを用いることができる。
その後は、実施の形態1と同様にして、固体状のキャリア輸送材料19の導入後の光電変換装置作製キットを既設の透明部材21に封止部材18によって接合することによって実施の形態2の光電変換装置が作製される。
実施の形態2における上記以外の説明は実施の形態1と同様であるため、ここではその説明については繰り返さない。
<実施の形態3>
図10に、実施の形態3の光電変換装置の模式的な断面図を示す。実施の形態3の光電変換装置は、既設の透明部材21が曲面状の表面21aを有しているとともに、支持基板11に可撓性フィルムなどの可撓性基板が用いられており、透明部材21の表面21aの曲面形状に沿って支持基板11の表面11aが曲げられて光電変換装置作製キットが接合されていることを特徴としている。
実施の形態3の光電変換装置は、既設の透明部材21の表面21aの形状に沿って、支持基板11の表面形状を変化させて光電変換装置作製キットを接合することが可能であるため、様々な表面形状を有する既設の透明部材21に光電変換装置作製キットを接合することができる。
また、実施の形態3の光電変換装置においても、透明部材21側から光31が入射してきたとしても、従来のように、既設の透明部材21および受光面側の透光性基板の2枚の部材によって光31が吸収されず、また、既設の透明部材21と受光面側の透光性基板との界面による光31の反射によって光電変換層14に入射する光31の量が低減するのを抑制することができる。これにより、実施の形態3の光電変換装置においても、短絡電流密度が増加して、変換効率を向上させることができる。
さらに、曲面状の表面を有する従来の透明部材に、受光面側および受光面側とは反対側の裏面側にそれぞれ同じ大きさの可撓性基板を有する色素増感太陽電池を接合した場合には、受光面側の可撓性基板に必要な長さに対して裏面側の可撓性基板に必要な長さが短くなることによって、裏面側の可撓性基板に局所的に弛みが生じて、色素増感太陽電池の特性が低下することがある。しかしながら、実施の形態3の光電変換装置は、既設の透明部材21の表面21aの曲面形状に沿って、最初から支持基板11の表面11aを曲げた状態で、既設の透明部材21に光電変換装置作製キットを接合して作製されているため、支持基板11の弛みによる光電変換装置の特性の低下を抑制することができる。
実施の形態3においては、支持基板11が可塑性を有することが必要であるため、材料が制限される。可塑性を有する支持基板11としては、ポリマーフィルムなどが主にあげられる。そのため、可塑性を有する支持基板11は、ガラス基板と比較して耐熱性が劣る場合が多い。そのため、第1導電層12を備えた支持基板11としては透明導電膜付フィルムを用いるか、支持基板11上にスパッタリング法により第1導電層12を形成したものなどを用いることができる。また、触媒層17としては、スパッタリング法により形成されたものを用いるか、たとえばカーボン系材料などの処理温度が低い触媒層17などを用いることができる。
また、実施の形態3においては、多孔質絶縁層16として、リチウム電池でセパレーターとして用いられる不織布を用いることができる。その上に特開2009−259485などに記載されている方法により、開口部か形成された導電性シート状に多孔質半導体層を形成したものを設置することで光電変換装置作製キットを作製することができる。
実施の形態3における上記以外の説明は実施の形態1および実施の形態2と同様であるため、ここではその説明については繰り返さない。
<実施の形態4>
図12に、実施の形態4の光電変換装置の模式的な平面図を示す。図12に示すように、実施の形態4の光電変換装置は、既設の透明部材21に、複数の光電変換層(第1の光電変換層14aおよび第2の光電変換層14b)を含む光電変換層を有する光電変換装置作製キットを封止部材18で接合することにより作製されていることを特徴としている。実施の形態4においては、複数の光電変換層として第1の光電変換層14aおよび第2の光電変換層14bの2種類の光電変換層を用いる場合について説明するが、2種類に限定されず、3種類以上であってもよい。
第1の光電変換層14aは、第1の多孔質半導体層と、第1の多孔質半導体層上の第1の光増感剤とを有しており、第2の光電変換層14bは、第2の多孔質半導体層と、第2の多孔質半導体層上の第2の光増感剤とを有している。
実施の形態4の光電変換装置においては、第1の光電変換層14aの第1の光増感剤と第2の光電変換層14bの第2の光増感剤とに、それぞれ、互いに異なる色の色素を用いることによって、第1の光電変換層14aと第2の光電変換層14bとが互いに異なる色を有するものとすることができ、光増感剤に1色の色素のみを用いる場合と比べて、採光部に様々なデザインを付与することができるため、採光部を構成する既設の透明部材21のデザイン性を向上することができる。
たとえば、図12の模式的平面図の上部に示すように、第1の光電変換層14aおよび第2の光電変換層14bの形状をそれぞれ1本の帯状とし、図12の下部に示すように、第1の光電変換層14aおよび第2の光電変換層14bの形状をそれぞれ複数の矩形状として、第1の光電変換層14aの第1の光増感剤に赤色の色素を用い、第2の光電変換層14bの第2の光増感剤に緑色の色素を用いることができる。この場合には、図12に示すように、既設の透明部材21の上部に赤色の帯と緑色の帯とが互いに間隔を空けて幅方向に延在して配置されるとともに、既設の透明部材21の下部に赤色の複数の矩形と緑色の複数の矩形とが互いに間隔を空けて幅方向に延在して配置されているデザインを付与することができる。赤色の色素としては、たとえば上記の式(II)で表わされるルテニウム系金属錯体色素を用いることができ、緑色の色素としては、たとえば上記の式(III)で表わされるルテニウム系金属錯体色素を用いることができる。
なお、1本の帯状の第1の光電変換層14aおよび第2の光電変換層14bは、それぞれ、第1の多孔質半導体層および第2の多孔質半導体層の形状をそれぞれ1つの帯状に繋がった形状とすることによって作製することができる。また、複数の矩形状の第1の光電変換層14aおよび第2の光電変換層14bは、それぞれ、複数の矩形状の第1の多孔質半導体層および複数の矩形状の第2の多孔質半導体層を作製し、これらを直列または並列に接続することによって作製することができる。また、第1の光電変換層14aの第1の多孔質半導体層と、第2の光電変換層14bの第2の多孔質半導体層とは互いに異なる構成を有していることが好ましい。互いに異なる構成を有している第1の多孔質半導体層および第2の多孔質半導体層は、たとえば、第1の多孔質半導体層および第2の多孔質半導体層にそれぞれ互いに異なる材料および/または構造を有する多孔質半導体を用いることによって構成することができる。
また、実施の形態4の光電変換装置に含まれる複数の光電変換層の形状が同一のものを並べること、または複数の光電変換層の表面の面積および層厚等を調整することによって電流または電圧を合わせて、複数の光電変換層を電気的に接続(直列および/または並列)することもできる。
また、既設の透明部材21に取り付けられる光電変換装置作製キットの光電変換層の形状を選択することによって、既設の透明部材21にたとえば文字および/または模様などを付与することもできる。この場合には、光電変換層は必ずしも複数である必要はない。
また、光電変換装置作製キットに用いられる部材に光透過性のものを用いることによって、既設の透明部材21にたとえばステンドグラスのような模様を付与することができる。この場合には、たとえば支持基板11にガラス基板などの透明基板を使用し、第1導電層12、触媒層17および第2導電層15には光透過性の材料および厚さを用いることができる。たとえば、触媒層17は、層厚を薄くすることによって光透過性を確保することができる。また、第1導電層12および第2導電層15には、たとえばFTOまたはITOなどの透明導電膜を用いることによって光透過性を確保することができる。さらに、光電変換層14の多孔質半導体層および多孔質絶縁層16については、多孔質半導体層を構成する半導体粒子および多孔質絶縁層16を構成する絶縁体粒子に平均粒径がたとえば100nm以下程度の微粒子を用いることによって、光の散乱を抑制することができるとともに、外部からの光を透過させることが可能となる。この場合にも、光電変換層14は必ずしも複数である必要はない。
実施の形態4の光電変換装置においては、既設の透明部材21と、第1の光電変換層14aおよび第2の光電変換層14bとの間に、従来のように、受光面側の透光性基板が設置されていないことから、より鮮やかな色のデザインを既設の透明部材21に付与することができる。
実施の形態4における上記以外の説明は実施の形態1〜実施の形態3と同様であるため、ここではその説明については繰り返さない。
<実施の形態5>
≪光電変換装置作製キットの構成≫
実施の形態5の光電変換装置作製キットは、建物の外壁などの既設の不透明部材に取り付けることができ、当該既設の不透明部材を支持基板の一方として利用していることを特徴としている。
図17に、実施の形態5の光電変換装置作製キットの模式的な断面図を示す。実施の形態5の光電変換装置作製キットは、支持基板11と、支持基板11上に設けられた第1導電層12と、第1導電層12上に互いに間隔を空けて設けられた第1の光電変換層14aと第2の光電変換層14bとを備えている。第1の光電変換層14a上には、第1の多孔質絶縁層16a、第1の触媒層17aおよび第1の第2導電層15aがこの順に積層されている。第2の光電変換層14b上には、第2の多孔質絶縁層16b、第2の触媒層17bおよび第2の第2導電層15bがこの順に積層されている。第1導電層12の端部には第1導電層12に電気的に接続された電流取り出し用電極42が設けられている。なお、実施の形態5においては、第1の光電変換層14aと第2の光電変換層14bの2つの光電変換層を用いているが、光電変換層の数は特に限定されず、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
ここで、第1の第2導電層15aは、第1導電層12によって第2の光電変換層14bと電気的に接続されている。また、第1の多孔質絶縁層16aは、第1の光電変換層14aと第1の第2導電層15aとを電気的に絶縁するようにスクライブライン20を埋設することによって第1導電層12を電気的に分離している。また、第2の多孔質絶縁層16bは、第2の光電変換層14bと第2の第2導電層15bとを電気的に絶縁するようにスクライブライン20を埋設することによって第1導電層12を電気的に分離している。
≪支持基板≫
支持基板11は透明部材である。透明部材である支持基板11としては、支持基板11に入射してきた光の少なくとも一部を透過させることができる部材であれば特に限定されず、たとえば、ソーダガラス、溶融石英ガラスまたは結晶石英ガラスなどのガラス基板を用いることができる。また、支持基板11の厚さは、0.2mm以上5mm以下であることが好ましい。
≪第1導電層≫
第1導電層12も透明部材である。透明部材である第1導電層12としては、支持基板11に入射してきた光の少なくとも一部を透過させることができる部材であれば特に限定されず、たとえば、ITO、SnO2、FTO、ZnO、およびタンタルあるいはニオブをドープした酸化チタンからなる群から選択された少なくとも1種を含むものなどを用いることができる。また、第1導電層12には、低抵抗化のための金属リード線を設けることもできる。さらに、第1導電層12には、たとえばレーザースクライブで切断することによってスクライブライン20を形成してもよい。
≪光電変換層、触媒層、多孔質絶縁層および第2導電層≫
第1の光電変換層14aおよび第2の光電変換層14bについての説明は、実施の形態1〜3の光電変換層14、ならびに実施の形態4の第1の光電変換層14aおよび第2の光電変換層14bについての説明と同様である。すなわち、第1の光電変換層14aおよび第2の光電変換層14bは、それぞれ、多孔質半導体層と、多孔質半導体層上の光増感剤とを有している。
また、第1の触媒層17aおよび第2の触媒層17bについての説明は、実施の形態1〜4の触媒層17についての説明と同様である。また、第1の多孔質絶縁層16aおよび第2の多孔質絶縁層16bについての説明は、実施の形態1〜4の多孔質絶縁層16についての説明と同様である。さらに、第1の第2導電層15aおよび第2の第2導電層15bについての説明は、実施の形態1〜4の第2導電層15についての説明と同様である。
≪取り出し用電極≫
取り出し用電極42としては、第1の光電変換層14aおよび第2の光電変換層14bで発生した電流を外部に取り出すことができる導電性部材であれば特に限定されず、用いることができる。
≪光電変換装置作製キットの製造方法≫
実施の形態5の光電変換装置作製キットは、たとえば以下のようにして製造することができる。まず、支持基板11上に第1導電層12を形成し、第1導電層12上に互いに間隔を空けて第1の光電変換層14aと第2の光電変換層14bとを形成する。
次に、第1の光電変換層14a上に第1の多孔質絶縁層16a、第1の触媒層17aおよび第1の第2導電層15aをこの順に積層するとともに、第2の光電変換層14b上に第2の多孔質絶縁層16b、第2の触媒層17bおよび第2の第2導電層15bをこの順に積層し、さらには第1導電層12の端部に取り出し用電極42を形成する。これにより、実施の形態5の光電変換装置作製キットを作製することができる。
なお、たとえば図23に示すように、実施の形態5の光電変換装置作製キットにおいては、第1の第2導電層15aと第1の触媒層17aとは、第1の第2導電層15aおよび第1の触媒層17aの順に積層されてもよく、第2の第2導電層15bと第2の触媒層17bとは、第2の第2導電層15bおよび第2の触媒層17bの順に積層されてもよい。この場合に、第1の第2導電層15aおよび第2の第2導電層15bは、キャリア輸送材料19の移動のため、たとえば、微粒子の焼結体からなる多孔質膜、あるいは微粒子の焼結体上に真空プロセスやスプレー法などで製膜された多孔質膜などにより構成することができる。
なお、第1の多孔質絶縁層16a、第1の触媒層17a、第1の第2導電層15a、第2の多孔質絶縁層16b、第2の触媒層17bおよび第2の第2導電層15bは、たとえばスパッタリング法とフォトリソグラフィ法とを組み合わせた方法などを用いて形成することができる。
≪光電変換装置≫
図18に、実施の形態5の光電変換装置の模式的な断面図を示す。実施の形態5の光電変換装置は、上記の構造を有する実施の形態5の光電変換装置作製キットをたとえば建物の外壁などの既設の不透明部材41に取り付けることによって形成することができる。ここで、不透明部材41は、不透明部材41に入射してきた光31を透過させることのない部材であれば特に限定されず、たとえばコンクリートなどを用いることができる。
実施の形態5の光電変換装置は、たとえば以下のようにして製造することができる。まず、上述のようにして作製した実施の形態5の光電変換装置作製キットを既設の不透明部材41に封止部材18により接合する。ここで、封止部材18は、たとえば、既設の不透明部材41の表面および実施の形態5の光電変換装置作製キットの第1導電層12の表面の少なくとも一方に塗布された後に加熱および/または紫外線を照射することによって硬化し、既設の不透明部材41に実施の形態5の光電変換装置作製キットを接合する。なお、封止部材18は、後述の液体状のキャリア輸送材料19を封止する観点からは、第1の光電変換層14aおよび第2の光電変換層14bをそれぞれ取り囲むように配置されていることが好ましい。なお、紫外線としては、たとえば、発光ピーク波長が365nmであって、波長範囲が200nm〜450nm程度の紫外線を照射することができる。
なお、封止部材18としては、たとえば、熱硬化樹脂および紫外線硬化樹脂の少なくとも一方を用いることができるが、実施の形態5の光電変換装置作製キットを既設の不透明部材41から取り外さない場合には、紫外線硬化樹脂を用いることが好ましい。封止部材18として紫外線硬化樹脂を用いる場合には、支持基板11側から紫外線を入射して封止部材18を硬化させる必要があるため、支持基板11および第1導電層12は紫外線を透過させる材料からなることが好ましい。
また、支持基板11側から紫外線を入射して封止部材18を硬化させる観点からは、第1の第2導電層15aと、第2の光電変換層15bと第2の多孔質絶縁層16bと第2の触媒層17bとの積層体との間に間隔Gが設けられていることが好ましい。また、第1の第2導電層15aと上記の積層体との間の間隔Gは、10μm以上5mm以下であることがより好ましい。上記の間隔Gが10μm以上である場合には封止部材18に紫外線が入射しやすくなる。また、上記の間隔Gが5mm以下である場合には、第1の光電変換層14aと第2の光電変換層14bとの間の間隔を狭めることができるため、支持基板11の単位面積当たりの発電領域の面積(受光面積率)を大きくすることができる。これにより、実施の形態5の光電変換装置の発電効率を高めることができる。
次に、図7に示すように、既設の不透明部材41に封止部材18によって接合された実施の形態5の光電変換装置作製キットの支持基板11と、封止部材18と、不透明部材41とで取り囲まれた領域に液体状のキャリア輸送材料19を導入することによって、実施の形態5の光電変換装置が作製される。なお、キャリア輸送材料19についての説明は、実施の形態1〜4と同様である。
≪作用効果≫
実施の形態5の光電変換装置作製キットを用いて作製された実施の形態5の光電変換装置は、既設の不透明部材41を一方の支持基板として利用しているため、従来よりも軽量の光電変換装置を実現することできる。また、一方の支持基板として既設の不透明部材41を利用しており、支持基板が1枚不要となるため、光電変換装置の製造コストを低減することができる。さらに、光電変換装置の軽量化により、光電変換装置作製キットの設置面となる既設の外壁等の強度を低減でき、光電変換装置作製キットの設置箇所の選択の幅が広がるため、この観点からも、光電変換装置の製造コストを低減することができる。
なお、上記においては、既設の不透明部材41に実施の形態5の光電変換装置作製キットを設置して、実施の形態5の光電変換装置を作製する場合について説明したが、既設の不透明部材41ではなく、実施の形態5の光電変換装置作製キットを既設の透明部材21に設置してもよいことは言うまでもない。なお、実施の形態5の光電変換装置作製キットを既設の透明部材21に設置した場合には、実施の形態5の光電変換装置作製キットは、建物の内側および外側のいずれにも設置することができる。
<実施の形態6>
図19に、実施の形態6の光電変換装置の模式的な断面図を示す。実施の形態6の光電変換装置は、第1の第2導電層15aが紫外線を透過する部材からなることを特徴としている。この場合には、第1の第2導電層15aと、第2の光電変換層15bと第2の多孔質絶縁層16bと第2の触媒層17bと第2の第2導電層15bとの積層体との間の間隔Gをさらに狭くすることができるため、受光面積率を大きくすることができる。これにより、実施の形態6の光電変換装置の発電効率を高めることができる。
実施の形態6における上記以外の説明は実施の形態5と同様であるため、ここではその説明については繰り返さない。
<実施の形態7>
図20に、実施の形態7の光電変換装置の模式的な断面図を示す。実施の形態7の光電変換装置は、封止部材18の内部に、第1導電層12と既設の不透明部材41との間の間隔を保持するための間隔保持部材43を備えていることを特徴としている。この場合には、間隔保持部材43によって、既設の不透明部材41と第1の第2導電層15aおよび第2の第2導電層15bとの接触および既設の不透明部材41と間隔保持部材43との接触を抑制することができるため、光電変換装置作製キットを構成する部材の破損を抑制することができる。なお、間隔保持部材43は、特に限定されず、既設の不透明部材41と光電変換装置作製キットとの接触を抑制することができるものであれば特に限定されない。
実施の形態7における上記以外の説明は実施の形態5および6と同様であるため、ここではその説明については繰り返さない。
<実施の形態8>
図21に、実施の形態8の光電変換装置付き携帯機器用カバーの模式的な断面図を示す。実施の形態8の光電変換装置付き携帯機器用カバーは、既設の透明部材としての携帯機器用カバー51と、実施の形態5の光電変換装置作製キットとを備えている。実施の形態8の光電変換装置付き携帯機器用カバーにおいては、カバーガラスを省略することが可能となり、光電変換装置付き携帯機器用カバーの軽量化と薄型化とを実現することが可能となる。
図22に、実施の形態8の光電変換装置付き携帯機器用カバーの製造方法の一例の製造工程の一部を図解する模式的な斜視図を示す。実施の形態8の光電変換装置付き携帯機器用カバーは、携帯機器用カバー51に実施の形態5の光電変換装置作製キット10を取り付けることにより作製することができる。
図23に、実施の形態8の光電変換装置付き携帯機器用カバーの変形例の模式的な断面図を示す。図23に示す実施の形態8の光電変換装置付き携帯機器用カバーは、図21に示す実施の形態8の光電変換装置付き携帯機器用カバーと、第1の第2導電層15aと第1の触媒層17aとの積層順序および第2の第2導電層15bと第2の触媒層17bとの積層順序が逆になっていることを特徴としている。
図24に、実施の形態8の光電変換装置付き携帯機器用カバーのさらなる変形例の模式的な断面図を示す。図24に示す実施の形態8の光電変換装置付き携帯機器用カバーは、第2の光電変換層15bと第2の多孔質絶縁層16bと第2の触媒層17bとの積層体と、第1の第2導電層15aとの間に間隔Gが設けられていることを特徴としている。
図25に、実施の形態8の光電変換装置付き携帯機器用カバーのさらなる変形例の模式的な断面図を示す。図25に示す実施の形態8の光電変換装置付き携帯機器用カバーは、封止部材18の内部に、第1導電層12と既設の不透明部材41との間の間隔を保持するための間隔保持部材43を備えていることを特徴としている。
図26に、実施の形態8の光電変換装置付き携帯機器用カバーのさらなる変形例の模式的な断面図を示す。図26に示す実施の形態8の光電変換装置付き携帯機器用カバーは、携帯機器用カバー51のキャリア輸送材料19と接する部分に、キャリア輸送材料19に対して耐腐食性を有する材料(たとえば、チタン、タンタルおよびモリブデンからなる群から選択された少なくとも1つの金属)からなる耐腐食性部材52が設けられていることが好ましい。この場合には、キャリア輸送材料19による携帯機器用カバー51の腐食を抑制することができるため、携帯機器用カバー51の腐食に起因する実施の形態8の光電変換装置付き携帯機器用カバーの変換効率等の特性の低下を抑制することができる。
実施の形態8における上記以外の説明は実施の形態5〜7と同様であるため、ここではその説明については繰り返さない。
以下に、実施例によって本発明についてより具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
<実施例1>
実施例1においては、図1に示す構造を有する光電変換装置作製キットを用いて図7に示す構造を有する実施例1の光電変換装置を作製した。具体的には、実施例1の光電変換装置は以下のようにして作製された。
まず、図2に示すように、厚さ1mmのガラス基板からなる透光性の支持基板11上にFTO膜からなる第1導電層12が形成された市販のFTO基板を用意した。次に、第1導電層12をレーザースクライブ法により切断して、図3に示すように、第1導電層12を分離する分離溝としてスクライブライン20を形成した。
次に、第1導電層12の表面上に、スクリーン版とスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製、型番:LS−150)とを用いて、市販の白金ペーストをスクリーン印刷した後に焼成することによって、図4に示すように、多孔質の白金層からなる触媒層17を形成した。
次に、スクライブライン20を埋めて触媒層17を覆うように、スクリーン版とスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製、型番:LS−150)とを用いて、酸化ジルコニウム粒子(平均粒経100nm)を含むペーストをスクリーン印刷した後に500℃で60分間焼成することによって、図4に示すように、厚さ7μmの多孔質の酸化ジルコニウム層からなる多孔質絶縁層16を形成した。
次に、チタンをスパッタリングすることによって、図5に示すように、スクライブライン20により分離した第1導電層12の一方と電気的に接続するように、多孔質絶縁層16の表面上に厚さ500nmのチタン膜からなる第2導電層15を形成した。
次に、図1に示すように、第2導電層15上に光電変換層14を形成した。光電変換層14は、スクリーン版とスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製、型番:LS−150)とを用いて、市販の酸化チタンペーストを第1導電層12上に塗布し、室温で1時間レベリングを行なった。ここで、酸化チタンペーストは、第1導電層12側から厚さ6μmのSolaronix社製のT/SPおよび厚さ6μmのSolaronix社製のD/SPをこの順にスクリーン印刷した。そして、第1導電層12上に塗布された酸化チタンペーストを80℃に設定したオーブンで20分間乾燥させ、その後、500℃に設定した焼成炉(株式会社デンケン製、型番:KDF P−100)を用いて空気中で60分間焼成することによって、第1導電層12上に厚さ12μmの多孔質半導体層を形成した。
次に、予め調製しておいた色素吸着用溶液に、市販のFTO基板上に上記の多孔質半導体層をまでを形成した積層体を室温で100時間浸漬し、その後、当該積層体をエタノールで洗浄した後に、約60℃で約5分間乾燥させた。これにより、多孔質半導体層に色素が吸着して光電変換層14を形成した。これにより、図1に示す構造を有する実施例1の光電変換装置作製キットが作製された。
なお、色素吸着用溶液は、上記の式(II)で表わされる赤色の色素(Solaronix社製、商品名:Ruthenium620 1H3TBA)を濃度4×10-4モル/リットルになるように、体積比1:1のアセトニトリルとt−ブタノールとの混合溶剤に溶解して調製した。
次に、図6に示すように、上述のようにして作製した実施例1の光電変換装置作製キットの周縁の第1導電層12の表面上に市販の紫外線硬化樹脂(スリーボンド社製のTB3035B)からなる封止部材18を塗布した後に、実施例1の光電変換装置作製キットを封止部材18によって建物の窓ガラスからなる既設の透明部材21に貼り付けた後に封止部材18に紫外線を照射して封止部材18を硬化させた。これにより、建物の窓ガラスからなる既設の透明部材21に実施例1の光電変換装置作製キットを封止部材18によって接合した。
最後に、封止部材18に予め設けてあった電解液注入用孔から予め調製しておいた液体状のキャリア輸送材料19として電解液を注入し、その後、紫外線硬化樹脂(スリーボンド社製、型番:31X−101)を用いて電解液注入用孔を封止することによって、図7に示すように、キャリア輸送材料19を導入した。これにより、図7に示す断面構造および図8に示す平面構造を有する実施例1の光電変換装置を作製した。
なお、電解液としては、溶剤としてのアセトニトリルに、酸化還元種としてLiI(アルドリッチ社製)が濃度0.1モル/リットル、I2(キシダ化学社製)が濃度0.01モル/リットルになるように、さらに添加剤としてt−ブチルピリジン(アルドリッチ社製)が濃度0.5モル/リットル、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド(四国化成工業社製)が濃度0.6モル/リットルになるように添加し、溶解させて得たものを用いた。
そして、ソーラシミュレータを用いて、実施例1の光電変換装置の透明部材21に疑似太陽光(エアマス1.5)を1kW/cm2のエネルギー密度で照射することによって、実施例1の光電変換装置の電流−電圧曲線を作製し、短絡電流密度[mA/cm2]、開放電圧[V]、フィルファクター(F.F)および変換効率[%]を求めた。その結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1の光電変換装置の短絡電流密度は17.5[mA/cm2]であり、開放電圧は0.71[V]であり、F.Fは0.68であり、変換効率は8.4[%]であった。
<比較例1>
比較例1においては、図13に示す断面構造を有する比較例1の光電変換装置を作製した。比較例1の光電変換装置は、厚さ1mmのガラス基板からなる受光面側の透光性基板22に封止部材18によって光電変換装置作製キットを取り付けた後に、光電変換装置作製キット上の封止部材18と透光性基板22とによって取り囲まれた領域に液体状のキャリア輸送材料19を導入し、建物の窓ガラスからなる既設の透明部材21に受光面側の透光性基板22を接合したこと以外は実施例1の光電変換装置と同様にして作製された。
そして、ソーラシミュレータを用いて、比較例1の光電変換装置の透明部材21に疑似太陽光(エアマス1.5)を1kW/cm2のエネルギー密度で照射することによって、比較例1の光電変換装置の電流−電圧曲線を作製し、短絡電流密度[mA/cm2]、開放電圧[V]、フィルファクター(F.F)および変換効率[%]を求めた。その結果を表1に示す。表1に示すように、比較例1の光電変換装置の短絡電流密度は16.2[mA/cm2]であり、開放電圧は0.72[V]であり、F.Fは0.69であり、変換効率は8.0[%]であった。
<評価>
表1に示すように、実施例1の光電変換装置は、比較例1の光電変換装置よりも短絡電流密度を高くすることができ、変換効率を向上できることが確認された。これは、比較例1の光電変換装置においては、封止部材18および透光性基板22による光の吸収、ならびに封止部材18と透光性基板22との界面における光の反射によって、実施例1の光電変換装置と比べて、光電変換層14に入射する光の量が低減したためと考えられる。
また、比較例1の光電変換装置は、実施例1の光電変換装置と比べて、受光面側の透光性基板22に光電変換装置作製キットを取り付ける工程と、透光性基板22を透明部材21に取り付ける工程との2工程が増加するとともに、受光面側の透光性基板22の材料コストも増加する。
したがって、実施例1の光電変換装置作製キットにおいては、比較例1の光電変換装置と比べて、低い設置コストで設置することができ、かつ高い変換効率を示す光電変換装置を実現することが可能となる。
Figure 2015144235
<実施例2>
実施例2においては、市販のFTO基板の代わりに厚さ1mmのPEN基板からなる支持基板11上にITO膜からなる第1導電層12が形成された市販のITO−PEN基板を用い、第1導電層12上に触媒層17としての白金を形成した。その上に市販のセパレーターを設置した。さらに線径50μmのチタンワイヤーからなる250メッシュの金網からなる第2導電層15上に実施例1と同様に多孔質半導体層を塗布焼成したものをセパレーター上に設置して実施例2の光電変換装置作製キットを作製した。そして、実施例2の光電変換装置作製キットを、曲面状の表面を有する建物の窓ガラスからなる既設の透明部材21に接合した。その他は実施例1と同様にして、図10に示す構造を有する実施例2の光電変換装置を作製した。
そして、ソーラシミュレータを用いて、実施例2の光電変換装置の透明部材21に疑似太陽光(エアマス1.5)を1kW/cm2のエネルギー密度で照射することによって、実施例2の光電変換装置の電流−電圧曲線を作製し、短絡電流密度[mA/cm2]、開放電圧[V]、フィルファクター(F.F)および変換効率[%]を求めた。その結果を表2に示す。表2に示すように、実施例2の光電変換装置の短絡電流密度は12.5[mA/cm2]であり、開放電圧は0.68[V]であり、F.Fは0.62であり、変換効率は5.3[%]であった。
<比較例2>
比較例2においては、図14に示す断面構造を有する比較例2の光電変換装置を作製した。比較例2の光電変換装置は、厚さ1mmのガラス基板からなる受光面側の透光性基板22に封止部材18によって光電変換装置作製キットを接合した後に、光電変換装置作製キット上の封止部材18と透光性基板22とによって取り囲まれた領域に液体状のキャリア輸送材料19を導入し、建物の窓ガラスからなる既設の透明部材21に受光面側の透光性基板22を取り付けたこと以外は実施例2の光電変換装置と同様にして作製された。
そして、ソーラシミュレータを用いて、比較例2の光電変換装置の透明部材21に疑似太陽光(エアマス1.5)を1kW/cm2のエネルギー密度で照射することによって、比較例2の光電変換装置の電流−電圧曲線を作製し、短絡電流密度[mA/cm2]、開放電圧[V]、フィルファクター(F.F)および変換効率[%]を求めた。その結果を表2に示す。表2に示すように、比較例2の光電変換装置の短絡電流密度は11.7[mA/cm2]であり、開放電圧は0.68[V]であり、F.Fは0.61であり、変換効率は4.9[%]であった。
<評価>
表2に示すように、実施例2の光電変換装置は、比較例2の光電変換装置よりも短絡電流密度を高くすることができ、変換効率を向上できることが確認された。これは、比較例2の光電変換装置においては、封止部材18および透光性基板22による光の吸収、ならびに封止部材18と透光性基板22との界面における光の反射によって、実施例2の光電変換装置と比べて、光電変換層14に入射する光の量が低減したためと考えられる。
また、比較例2の光電変換装置は、実施例2の光電変換装置と比べて、受光面側の透光性基板22に光電変換装置作製キットを取り付ける工程と、透光性基板22を透明部材21に取り付ける工程との2工程が増加するとともに、受光面側の透光性基板22の材料コストも増加する。
したがって、実施例2の光電変換装置作製キットにおいては、比較例2の光電変換装置と比べて、低い設置コストで設置することができ、かつ高い変換効率を示す光電変換装置を実現することが可能となる。
Figure 2015144235
<実施例3>
実施例3においては、図7に示す断面構造を有する図12に示す実施例3の光電変換装置を作製した。具体的には、第1導電層12上に厚さ6μmの市販の酸化チタンペースト(Solaronix社製のT/SP)を2回スクリーン印刷した後に焼成することによって第1の光電変換層14aを構成する多孔質半導体層および第2の光電変換層14bを構成する多孔質半導体層を形成し、第1の光電変換層14aを構成する多孔質半導体層に上記の式(II)で表わされる赤色の色素を吸着させ、第2の光電変換層14bを構成する多孔質半導体層に上記の式(III)で表わされる緑色の色素を吸着させたこと以外は実施例1と同様にして実施例3の光電変換装置を作製した。
そして、ソーラシミュレータを用いて、実施例3の光電変換装置の透明部材21に疑似太陽光(エアマス1.5)を1kW/cm2のエネルギー密度で照射することによって、実施例3の光電変換装置の電流−電圧曲線を作製し、短絡電流密度[mA/cm2]、開放電圧[V]、フィルファクター(F.F)および変換効率[%]を求めた。その結果を表3に示す。表3に示すように、実施例3の光電変換装置の短絡電流密度は9.6[mA/cm2]であり、開放電圧は0.70[V]であり、F.Fは0.67であり、変換効率は4.5[%]であった。
<比較例3>
比較例3の光電変換装置は、厚さ1mmのガラス基板からなる受光面側の透光性基板に封止部材18によって光電変換装置作製キットを接合して、封止部材18と透光性基板とによって取り囲まれた領域に液体状のキャリア輸送材料19を導入した後に、建物の窓ガラスからなる既設の透明部材21に受光面側の透光性基板を取り付けたこと以外は実施例3の光電変換装置と同様にして作製された。
そして、ソーラシミュレータを用いて、比較例3の光電変換装置の透明部材21に疑似太陽光(エアマス1.5)を1kW/cm2のエネルギー密度で照射することによって、比較例3の光電変換装置の電流−電圧曲線を作製し、短絡電流密度[mA/cm2]、開放電圧[V]、フィルファクター(F.F)および変換効率[%]を求めた。その結果を表3に示す。表3に示すように、比較例3の光電変換装置の短絡電流密度は8.9[mA/cm2]であり、開放電圧は0.69[V]であり、F.Fは0.67であり、変換効率は4.1[%]であった。
<評価>
表3に示すように、実施例3の光電変換装置は、比較例3の光電変換装置よりも短絡電流密度を高くすることができ、変換効率を向上できることが確認された。これは、比較例3の光電変換装置においては、封止部材18および透光性基板22による光の吸収、ならびに封止部材18と透光性基板22との界面における光の反射によって、実施例3の光電変換装置と比べて、光電変換層14に入射する光の量が低減したためと考えられる。
また、比較例3の光電変換装置は、実施例3の光電変換装置と比べて、受光面側の透光性基板22に光電変換装置作製キットを取り付ける工程と、透光性基板22を透明部材21に取り付ける工程との2工程が増加するとともに、受光面側の透光性基板22の材料コストも増加する。
したがって、実施例3の光電変換装置作製キットにおいては、比較例3の光電変換装置と比べて、低い設置コストで設置することができ、かつ高い変換効率を示す光電変換装置を実現することが可能となる。
Figure 2015144235
<実施例4>
実施例4の光電変換装置は、厚さ500nmのチタン膜からなる第2導電層15に代えて厚さ500nmのITO膜からなる第2導電層15をスパッタリング法により形成したこと以外は実施例3と同様にして作製した。
そして、ソーラシミュレータを用いて、実施例4の光電変換装置の透明部材21に疑似太陽光(エアマス1.5)を1kW/cm2のエネルギー密度で照射することによって、実施例4の光電変換装置の電流−電圧曲線を作製し、短絡電流密度[mA/cm2]、開放電圧[V]、フィルファクター(F.F)および変換効率[%]を求めた。その結果を表4に示す。表4に示すように、実施例4の光電変換装置の短絡電流密度は6.4[mA/cm2]であり、開放電圧は0.71[V]であり、F.Fは0.64であり、変換効率は2.9[%]であった。
<比較例4>
比較例4の光電変換装置は、厚さ1mmのガラス基板からなる受光面側の透光性基板に封止部材18によって光電変換装置作製キットを接合し、封止部材18と透光性基板とによって取り囲まれた領域に液体状のキャリア輸送材料19を導入した後に、建物の窓ガラスからなる既設の透明部材21に受光面側の透光性基板を取り付けたこと以外は実施例4の光電変換装置と同様にして作製された。
そして、ソーラシミュレータを用いて、比較例4の光電変換装置の透明部材21に疑似太陽光(エアマス1.5)を1kW/cm2のエネルギー密度で照射することによって、比較例4の光電変換装置の電流−電圧曲線を作製し、短絡電流密度[mA/cm2]、開放電圧[V]、フィルファクター(F.F)および変換効率[%]を求めた。その結果を表4に示す。表4に示すように、比較例4の光電変換装置の短絡電流密度は5.8[mA/cm2]であり、開放電圧は0.70[V]であり、F.Fは0.64であり、変換効率は2.6[%]であった。
<評価>
表4に示すように、実施例4の光電変換装置は、比較例4の光電変換装置よりも短絡電流密度を高くすることができ、変換効率を向上できることが確認された。これは、比較例4の光電変換装置においては、封止部材18および透光性基板による光の吸収、ならびに封止部材18と透光性基板との界面における光の反射によって、実施例4の光電変換装置と比べて、光電変換層14に入射する光の量が低減したためと考えられる。
また、比較例4の光電変換装置は、実施例4の光電変換装置と比べて、受光面側の透光性基板に光電変換装置作製キットを取り付ける工程と、透光性基板を透明部材21に取り付ける工程との2工程が増加するとともに、受光面側の透光性基板の材料コストも増加する。
したがって、実施例4の光電変換装置作製キットにおいては、比較例4の光電変換装置と比べて、低い設置コストで設置することができ、かつ高い変換効率を示す光電変換装置を実現することが可能となる。
Figure 2015144235
<実施例5>
実施例5においては、図11に示す断面構造を有する光電変換装置を作製した。実施例5の光電変換装置の作製においては、支持基板11上のそれぞれの第1導電層12が隣の光電変換素子の第2導電層15と電気的に接続されており、封止部材18の形成においては隣り合う光電変換素子に注入されるキャリア輸送材料19としての電解液が分離できるように封止部材18を形成する。それ以外は実施例1と同様にして光電変換装置を作製した。
そして、ソーラシミュレータを用いて、実施例5の光電変換装置の透明部材21に疑似太陽光(エアマス1.5)を1kW/cm2のエネルギー密度で照射することによって、実施例5の光電変換装置の電流−電圧曲線を作製し、短絡電流密度[mA/cm2]、開放電圧[V]、フィルファクター(F.F)および変換効率[%]を求めた。その結果を表5に示す。表5に示すように、実施例5の光電変換装置の短絡電流密度は1.6[mA/cm2]であり、開放電圧は2.84[V]であり、F.Fは0.64であり、変換効率は2.9[%]であった。
<比較例5>
比較例5の光電変換装置は、厚さ1mmのガラス基板からなる受光面側の透光性基板に封止部材18によって光電変換装置作製キットを接合し、封止部材18と透光性基板とによって取り囲まれた領域に液体状のキャリア輸送材料19を導入した後に、建物の窓ガラスからなる既設の透明部材21に受光面側の透光性基板を取り付けたこと以外は実施例5の光電変換装置と同様にして作製された。
そして、ソーラシミュレータを用いて、比較例5の光電変換装置の透明部材21に疑似太陽光(エアマス1.5)を1kW/cm2のエネルギー密度で照射することによって、比較例5の光電変換装置の電流−電圧曲線を作製し、短絡電流密度[mA/cm2]、開放電圧[V]、フィルファクター(F.F)および変換効率[%]を求めた。その結果を表5に示す。表5に示すように、比較例5の光電変換装置の短絡電流密度は1.5[mA/cm2]であり、開放電圧は2.82[V]であり、F.Fは0.64であり、変換効率は2.7[%]であった。
<評価>
表5に示すように、実施例5の光電変換装置は、比較例5の光電変換装置よりも短絡電流密度および開放電圧を高くすることができ、変換効率を向上できることが確認された。これは、比較例5の光電変換装置においては、封止部材18および透光性基板による光の吸収、ならびに封止部材18と透光性基板との界面における光の反射によって、実施例5の光電変換装置と比べて、光電変換層14に入射する光の量が低減したためと考えられる。
また、比較例5の光電変換装置は、実施例5の光電変換装置と比べて、受光面側の透光性基板に光電変換装置作製キットを取り付ける工程と、透光性基板を透明部材21に取り付ける工程との2工程が増加するとともに、受光面側の透光性基板の材料コストも増加する。
したがって、実施例5の光電変換装置作製キットにおいては、比較例5の光電変換装置と比べて、低い設置コストで設置することができ、かつ高い変換効率を示す光電変換装置を実現することが可能となる。
Figure 2015144235
<実施例6>
実施例6においては、図17に示す構造を有する光電変換装置作製キットを用いて図24に示す構造を有する実施例6の光電変換装置付き携帯機器用カバーを作製した。具体的には、実施例6の光電変換装置付き携帯機器用カバーは以下のようにして作製された。
まず、図2に示すように、厚さ1mmのガラス基板からなる透光性の支持基板11上にFTO膜からなる第1導電層12が形成された市販のFTO基板を用意した。次に、第1導電層12をレーザースクライブ法により切断して、図3に示すように、第1導電層12を分離する分離溝としてスクライブライン20を形成した。
次に、第1導電層12の表面上に、スクリーン版とスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製、型番:LS−150)とを用いて、市販の酸化チタンペーストを第1導電層12上に塗布し、室温で1時間レベリングを行なった。ここで、酸化チタンペーストは、第1導電層12側から厚さ6μmのSolaronix社製のT/SPおよび厚さ6μmのSolaronix社製のD/SPをこの順にスクリーン印刷した。そして、第1導電層12上に塗布された酸化チタンペーストを80℃に設定したオーブンで20分間乾燥させ、その後、500℃に設定した焼成炉(株式会社デンケン製、型番:KDF P−100)を用いて空気中で60分間焼成することによって、第1導電層12上に厚さ12μmの多孔質半導体層を形成した。
次に、スクライブライン20を埋めて多孔質半導体層を覆うように、スクリーン版とスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製、型番:LS−150)とを用いて、酸化ジルコニウム粒子(平均粒経100nm)を含むペーストをスクリーン印刷した後に500℃で60分間焼成することによって、厚さ7μmの多孔質の酸化ジルコニウム層からなる第1の多孔質絶縁層16aおよび第2の多孔質絶縁層16bを形成した。
次に、スクリーン版とスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製、型番:LS−150)とを用いて、市販の白金ペーストをスクリーン印刷した後に焼成することによって、多孔質の白金層からなる第1の触媒層17aおよび第2の触媒層17bをそれぞれ第1の多孔質絶縁層16aおよび第2の多孔質絶縁層16bの表面上に形成した。
次に、チタンをスパッタリングすることによって、スクライブライン20により分離した第1導電層12の一方と電気的に接続するように、第1の触媒層17aおよび第2の触媒層17bの表面上に厚さ500nmのチタン膜からなる第1の第2導電層15aおよび第2の第2導電層15bをそれぞれ形成した。ここで、図24に示すセル間に紫外線を照射するための間隔Gが形成されるようにチタン膜からなる第1の第2導電層15aおよび第2の第2導電層15bをそれぞれ形成した。
次に、予め調製しておいた色素吸着用溶液に、市販のFTO基板上に上記の多孔質半導体層をまでを形成した積層体を室温で100時間浸漬し、その後、当該積層体をエタノールで洗浄した後に、約60℃で約5分間乾燥させた。これにより、多孔質半導体層に色素が吸着して第1の光電変換層14aおよび第2の光電変換層14bを形成した。これにより、図17に示す構造を有する実施例6の光電変換装置作製キットが作製された。
なお、色素吸着用溶液は、上記の式(II)で表わされる赤色の色素(Solaronix社製、商品名:Ruthenium620 1H3TBA)を濃度4×10-4モル/リットルになるように、体積比1:1のアセトニトリルとt−ブタノールとの混合溶剤に溶解して調製した。
次に、図24に示すように、上述のようにして作製した実施例6の光電変換装置作製キットの周縁の第1導電層12の表面上に市販の紫外線硬化樹脂(スリーボンド社製のTB3035B)からなる封止部材18を塗布した後に、実施例6の光電変換装置作製キットを封止部材18によって透明部材としての携帯機器用カバー51に貼り付けた後に封止部材18に紫外線を照射して封止部材18を硬化させた。これにより、透明部材としての携帯機器用カバー51に実施例6の光電変換装置作製キットを封止部材18によって接合した。
最後に、封止部材18に予め設けてあった電解液注入用孔から予め調製しておいた液体状のキャリア輸送材料19として電解液を注入し、その後、紫外線硬化樹脂(スリーボンド社製、型番:TB3035B)を用いて電解液注入用孔を封止することによって、図24に示すように、キャリア輸送材料19を導入した。これにより、図24に示す断面構造を有する実施例6の光電変換装置付き携帯機器用カバーを作製した。
なお、電解液としては、溶剤としてのアセトニトリルに、酸化還元種としてLiI(アルドリッチ社製)が濃度0.1モル/リットル、I2(キシダ化学社製)が濃度0.01モル/リットルになるように、さらに添加剤としてt−ブチルピリジン(アルドリッチ社製)が濃度0.5モル/リットル、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド(四国化成工業社製)が濃度0.6モル/リットルになるように添加し、溶解させて得たものを用いた。
そして、ソーラシミュレータを用いて、実施例6の光電変換装置付き携帯機器用カバーの透光性の支持基板11に疑似太陽光(エアマス1.5)を1kW/cm2のエネルギー密度で照射することによって、実施例6の光電変換装置付き携帯機器用カバーの電流−電圧曲線を作製し、短絡電流密度[mA/cm2]、開放電圧[V]、フィルファクター(F.F)および変換効率[%]を求めた。その結果を表6に示す。表6に示すように、実施例6の光電変換装置付き携帯機器用カバーの短絡電流密度は9.52[mA/cm2]であり、開放電圧は1.43[V]であり、F.Fは0.68であり、変換効率は9.26[%]であった。
<比較例6>
図24に示す間隔Gの幅が50μm以下となるようにチタン膜からなる第1の第2導電層15aおよび第2の第2導電層15bを形成したこと以外は実施例6と同様にして光電変換装置付き携帯機器用カバーを作製したが、紫外線硬化樹脂が硬化しなかったため、光電変換装置付き携帯機器用カバーは作製できなかった。
Figure 2015144235
<実施例7>
実施例7においては、図24に示す紫外線を照射するための間隔Gを設けず、紫外線を透過するITO膜からなる第1の第2導電層15aおよび第2の第2導電層15bをスパッタ法により形成したこと以外は実施例6と同様にして実施例7の光電変換装置付き携帯機器用カバーを作製した。
そして、ソーラシミュレータを用いて、実施例7の光電変換装置付き携帯機器用カバーの透光性の支持基板11に疑似太陽光(エアマス1.5)を1kW/cm2のエネルギー密度で照射することによって、実施例7の光電変換装置付き携帯機器用カバーの電流−電圧曲線を作製し、短絡電流密度[mA/cm2]、開放電圧[V]、フィルファクター(F.F)および変換効率[%]を求めた。その結果を表7に示す。表7に示すように、実施例7の光電変換装置付き携帯機器用カバーの短絡電流密度は9.76[mA/cm2]であり、開放電圧は1.42[V]であり、F.Fは0.68であり、変換効率は9.43[%]であった。
<比較例7>
ITO膜の代わりにチタン膜を用いて第1の第2導電層15aおよび第2の第2導電層15bを形成したこと以外は実施例7と同様にして光電変換装置付き携帯機器用カバーを作製したが、紫外線硬化樹脂が硬化しなかったため、光電変換装置付き携帯機器用カバーは作製できなかった。そのため、比較例7においては、光電変換装置付き携帯機器用カバーの特性を測定することができなかった。
Figure 2015144235
<実施例8>
実施例8においては、図17に示す構造を有する光電変換装置作製キットを用いて図26に示す構造を有する実施例8の光電変換装置付き携帯機器用カバーを作製した。具体的には、実施例8の光電変換装置付き携帯機器用カバーは、透明部材としての携帯機器用カバー51のキャリア輸送材料19と接する部分に、キャリア輸送材料19に対して耐腐食性を有する材料からなる耐腐食性部材52が設けられていることを特徴としている。
具体的には、携帯機器用カバー51の光電変換作製キットを設置する部分に、電解液に対して耐腐食性を有するチタン、タンタルおよびモリブデンをそれぞれスパッタ法で形成することによって耐腐食性部材52を形成した後に、光電変換作製キットを貼り付けた。それ以外は、実施例6と同様にして実施例8の光電変換装置付き携帯機器用カバーを作製した。
実施例8の光電変換装置付き携帯機器用カバーの作製初日とその30日後とにそれぞれ変換効率を測定した。その結果を表8に示す。表8に示すように、実施例8の光電変換装置付き携帯機器用カバーの30日後の性能低下率(作製初日の変換効率に対する30日後の変換効率の低下割合)は0.2%であり、変換効率の実質的な低下は見られなかった。
<比較例8>
携帯機器用カバー51の光電変換作製キットを設置する部分に、電解液に対して耐腐食性を有するチタン、タンタルおよびモリブデンをそれぞれスパッタ法で形成しなかったこと以外は実施例8と同様にして、比較例8の光電変換装置付き携帯機器用カバーを作製した。そして、実施例8と同様にして、比較例8の光電変換装置付き携帯機器用カバーの作製初日とその30日後とにそれぞれ変換効率を測定し、30日後の性能低下率を求めた。その結果を表8に示す。表8に示すように、比較例8の光電変換装置付き携帯機器用カバーの30日後の性能低下率は15%であり、変換効率の大幅な低下が見られた。
Figure 2015144235
<付記>
(1)本発明の第1の態様によれば、既設の透明部材に設置されるとともにキャリア輸送材料が導入されることによって光電変換装置となる光電変換装置作製キットであって、支持基板と、支持基板上に設けられた第1導電層と、第1導電層上に設けられた触媒層と、触媒層上に設けられた多孔質絶縁層と、多孔質絶縁層上に設けられた第2導電層と、第2導電層上に設けられた光電変換層とを備え、光電変換層は、多孔質半導体層と多孔質半導体層上の光増感剤とを有する光電変換装置作製キットを提供することができる。本発明の第1の態様においては、受光面側の透光性基板を用いることなく、既設の透明部材を受光面側の透光性基板として利用していることから、従来のように、既設の透明部材および受光面側の透光性基板の2枚の部材によって光が吸収されず、また、既設の透明部材と受光面側の透光性基板との界面による光の反射によって、光電変換層に入射する光の量が低減するのを抑制することができる。また、本発明の第1の態様においては、受光面側の透光性基板を用いる必要がないため、受光面側の透光性基板の材料コストを低減することができるとともに、光電変換装置作製キットを受光面側の透光性基板に取り付ける工程および受光面側の透光性基板を既設の透明部材に取り付ける工程の2工程を削減することができるため、設置コストも低減することができる。
(2)本発明の第1の態様においては、支持基板が可撓性を有していてもよい。支持基板が可撓性を有する場合には、既設の透明部材の表面形状に沿って、支持基板の表面形状を変化させて光電変換装置作製キットを設置することが可能であるため、様々な表面形状を有する既設の透明部材に光電変換装置作製キットを設置することができる。
(3)本発明の第2の態様によれば、既設の透明部材と、本発明の第1の態様の光電変換装置作製キットと、透明部材と本発明の第1の態様の光電変換装置作製キットとを接合する封止部材と、透明部材と支持基板と封止部材とで取り囲まれている領域に導入されているキャリア輸送材料とを備えた光電変換装置を提供することができる。本発明の第2の態様においては、受光面側の透光性基板を用いることなく、既設の透明部材を受光面側の透光性基板として利用していることから、従来のように、既設の透明部材および受光面側の透光性基板の2枚の部材によって光が吸収されず、また、既設の透明部材と受光面側の透光性基板との界面による光の反射によって、光電変換層に入射する光の量が低減するのを抑制することができる。また、本発明の第2の態様においては、受光面側の透光性基板を用いる必要がないため、受光面側の透光性基板の材料コストを低減することができるとともに、光電変換装置作製キットを受光面側の透光性基板に取り付ける工程および受光面側の透光性基板を既設の透明部材に取り付ける工程の2工程を削減することができるため、設置コストも低減することができる。
(4)本発明の第2の態様においては、光電変換装置作製キットは、第1の光電変換装置作製キットと、第2の光電変換装置作製キットとを含み、第1の光電変換装置作製キットは、光電変換層として第1の光電変換層を含み、第2の光電変換装置作製キットは、光電変換層として第2の光電変換層を含み、第1の光電変換層と第2の光電変換層とは互いに異なる色を有していてもよい。この場合には、採光部に様々なデザインを付与することができるため、採光部を構成する既設の透明部材のデザイン性を向上することができる。
(5)本発明の第2の態様においては、第1の光電変換層は光増感剤として第1の光増感剤を有し、第2の光電変換層は光増感剤として第2の光増感剤を有し、第1の光増感剤および第2の光増感剤には、互いに異なる色の色素が用いられていてもよい。この場合にも、採光部に様々なデザインを付与することができるため、採光部を構成する既設の透明部材のデザイン性を向上することができる。
(6)本発明の第2の態様においては、第1の光電変換層は多孔質半導体層としての第1の多孔質半導体層を有し、第2の光電変換層は多孔質半導体層として第2の多孔質半導体層を有し、第1の多孔質半導体層および第2の多孔質半導体層は、互いに異なる構成を有していてもよい。この場合にも、採光部に様々なデザインを付与することができるため、採光部を構成する既設の透明部材のデザイン性を向上することができる。
(7)本発明の第2の態様においては、透明部材が曲面状の表面を有していてもよい。透明部材が曲面状の表面を有する場合にも、本発明の第1の態様の光電変換装置作製キットを封止部材を用いて透明部材に接合することができるため、様々な表面形状を有する既設の透明部材に光電変換装置作製キットを設置することができる。
(8)本発明の第3の態様によれば、既設の透明部材上に本発明の第1の態様の光電変換装置作製キットを封止部材により接合する工程と、透明部材と支持基板と封止部材とで取り囲まれた領域にキャリア輸送材料を形成する工程とを含む光電変換装置の製造方法を提供することができる。本発明の第3の態様においては、受光面側の透光性基板を用いることなく、既設の透明部材を受光面側の透光性基板として利用していることから、従来のように、既設の透明部材および受光面側の透光性基板の2枚の部材によって光が吸収されず、また、既設の透明部材と受光面側の透光性基板との界面による光の反射によって光電変換層に入射する光の量が低減するのを抑制できる光電変換装置を製造することができる。また、本発明の第3の態様においては、受光面側の透光性基板を用いる必要がないため、受光面側の透光性基板の材料コストを低減することができるとともに、光電変換装置作製キットを受光面側の透光性基板に取り付ける工程および受光面側の透光性基板を既設の透明部材に取り付ける工程の2工程を削減することができ、設置コストを低減できる光電変換装置を製造することができる。
(9)本発明の第3の態様においては、封止部材により接合する工程の後にキャリア輸送材料を形成する工程が行なわれ、キャリア輸送材料を形成する工程は、透明部材と支持基板と封止部材とで取り囲まれた領域にキャリア輸送材料として液体状のキャリア輸送材料を導入する工程を含んでいてもよい。この場合には、液体状のキャリア輸送材料を効率的に導入することができる。
(10)本発明の第3の態様においては、封止部材により接合する工程の前に光電変換装置作製キットの支持基板から光電変換層までの孔の空隙にキャリア輸送材料として固体電解質を形成する工程を含み、封止部材により接合する工程は、透明部材と支持基板とを封止部材により接合する工程を含んでいてもよい。
(11)本発明の第3の態様においては、透明部材が曲面状の表面を有していてもよい。透明部材が曲面状の表面を有する場合にも、本発明の第1の態様の光電変換装置作製キットを封止部材により透明部材に接合することができるため、様々な表面形状を有する既設の透明部材に光電変換装置作製キットが接合されてなる光電変換装置を作製することができる。
(12)本発明の他の態様においては、既設の部材に設置されるとともにキャリア輸送材料が導入されることによって光電変換装置となる光電変換装置作製キットであって、支持基板と、支持基板上に設けられた第1導電層と、第1導電層上に設けられた光電変換層と、光電変換層上に設けられた多孔質絶縁層と、多孔質絶縁層上に設けられた触媒層と第2導電層とを備え、光電変換層は、多孔質半導体層と、多孔質半導体層上の光増感剤とを有する光電変換装置作製キットを提供することができる。この場合には、既設の部材を一方の支持基板として利用することができるため、従来よりも軽量の光電変換装置を実現することできる。また、一方の支持基板として既設の部材を利用しており、支持基板が1枚不要となるため、光電変換装置の製造コストを低減することができる。さらに、光電変換装置の軽量化により、光電変換装置作製キットの設置面となる既設の外壁等の強度を低減でき、光電変換装置作製キットの設置箇所の選択の幅が広がるため、この観点からも、光電変換装置の製造コストを低減することができる。
(13)本発明の他の態様の光電変換装置作製キットにおいては、既設の部材に設置されるとともにキャリア輸送材料が導入されることによって光電変換装置となる光電変換装置作製キットであって、支持基板と、支持基板上に設けられた第1導電層と、第1導電層上に設けられた第1の光電変換層と、第1導電層上に第1の光電変換層と間隔を空けて設けられた第2の光電変換層と、第1の光電変換層上に順次設けられた第1の多孔質絶縁層、第1の触媒層および第1の第2導電層と、第2の光電変換層上に順次設けられた第2の多孔質絶縁層、第2の触媒層および第2の第2導電層とを備え、第1の光電変換層および第2の光電変換層は、それぞれ、多孔質半導体層と多孔質半導体層上の光増感剤とを有し、第1の第2導電層は、第1導電層によって第2の光電変換層と電気的に接続されており、第1の多孔質絶縁層は、第1の光電変換層と第1の第2導電層とを電気的に絶縁するように第1導電層を電気的に分離しており、第2の多孔質絶縁層は、第2の光電変換層と第2の第2導電層とを電気的に絶縁するように第1導電層を電気的に分離している光電変換装置作製キットを提供することができる。この場合にも、既設の部材を一方の支持基板として利用することができるため、従来よりも軽量の光電変換装置を実現することできる。また、一方の支持基板として既設の部材を利用しており、支持基板が1枚不要となるため、光電変換装置の製造コストを低減することができる。さらに、光電変換装置の軽量化により、光電変換装置作製キットの設置面となる既設の外壁等の強度を低減でき、光電変換装置作製キットの設置箇所の選択の幅が広がるため、この観点からも、光電変換装置の製造コストを低減することができる。
(14)本発明の他の態様の光電変換装置作製キットにおいては、第1の第2導電層が紫外線を透過する部材からなることが好ましい。この場合には、第1の第2導電層と、第2の光電変換層と第2の多孔質絶縁層と第2の触媒層と第2の第2導電層との積層体との間の間隔を狭くすることができるため、受光面積率を大きくすることができ、光電変換装置の発電効率を高めることができる。
(15)本発明の他の態様の光電変換装置作製キットにおいては、第1の第2導電層と、第2の光電変換層と第2の多孔質絶縁層と第2の触媒層と第2の第2導電層との積層体との間に間隔が設けられていることが好ましい。この場合には、この間隔の間から紫外線を照射して、封止部材を硬化することができる。
(16)本発明の他の態様の光電変換装置作製キットにおいては、第1の第2導電層と、第2の光電変換層と第2の多孔質絶縁層と第2の触媒層と第2の第2導電層との積層体との間の間隔は、10μm以上5mm以下であることが好ましい。この場合には、紫外線の照射を行うことができるとともに、受光面積率の増大を図ることができる。
(17)本発明の他の態様の光電変換装置作製キットにおいては、支持基板および第1導電層が透明部材であることが好ましい。この場合には、光電変換装置作製キットが取り付けられる既設の部材が不透明部材であっても、支持基板および第1導電層を通して光を光電変換層に入射することができるため、発電が可能となる。
(18)本発明の他の態様の光電変換装置作製キットは、第1導電層に電気的に接続された電流取り出し用電極をさらに備えていることが好ましい。この場合には、電流取り出し用電極を通して、電流を外部に取り出すことができる。
(19)本発明の他の態様の光電変換装置作製キットは、既設の部材と、上記のいずれかに記載の光電変換装置作製キットと、既設の部材と光電変換装置作製キットとを接合する封止部材と、既設の部材と支持基板と封止部材とで取り囲まれている領域に導入されているキャリア輸送材料とを備えた光電変換装置である。この場合にも、光電変換装置の軽量化が可能になるとともに光電変換装置の製造コストを低減することができる。
(20)本発明の他の態様の光電変換装置作製キットにおいて、封止部材は、第1の光電変換層および第2の光電変換層をそれぞれ取り囲むように配置されていることが好ましい。この場合には、封止部材で取り囲まれた領域内にキャリア輸送材料を封止することができる。
(21)本発明の他の態様の光電変換装置は、第1導電層と既設の部材との間の間隔を保持するための間隔保持部材を封止部材の内部にさらに備えていることが好ましい。この場合には、光電変換装置作製キットの部材の破損を抑制することができる。
(22)本発明の他の態様の光電変換装置においては、間隔保持部材によって、既設の部材と光電変換装置作製キットとが接触しないことが好ましい。この場合にも、光電変換装置作製キットの部材の破損を抑制することができる。
(23)本発明の他の態様の光電変換装置において、既設の部材は不透明部材であってもよい。この場合には、建物の外壁に光電変換装置を設置することができる。
(24)本発明の他の態様の光電変換装置において、封止部材は紫外線硬化樹脂であることが好ましい。この場合には、既存の部材に光電変換装置作製キットをより容易に取り付けることができる。
(25)本発明の他の態様の光電変換装置付き携帯機器用カバーは、透明部材としての携帯機器用カバーと、上記の態様の光電変換装置作製キットとを備えている。この場合には、光電変換装置付き携帯機器用カバーの軽量化と薄型化とが可能となる。
(26)本発明の他の態様の光電変換装置付き携帯機器用カバーにおいては、携帯機器用カバーのキャリア輸送材料が接する部分に、キャリア輸送材料に対して耐腐食性を有する材料を含む耐食性部材が形成されていることが好ましい。この場合には、この場合には、キャリア輸送材料による携帯機器用カバーの腐食を抑制することができるため、携帯機器用カバーの腐食に起因する光電変換装置付き携帯機器用カバーの変換効率等の特性の低下を抑制することができる。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および各実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、光電変換装置作製キット、光電変換装置および光電変換装置の製造方法に利用することができ、特に光増感剤として色素を用いる色素増感太陽電池作製キット、色素増感太陽電池および色素増感太陽電池の製造方法に利用することができる。
10 光電変換装置作製キット、11 支持基板、11a 表面、12 第1導電層、14 光電変換層、14a 第1の光電変換層、14b 第2の光電変換層、15 第2導電層、15a 第1の第2導電層、15b 第2の第2導電層、16 多孔質絶縁層、16a 第1の多孔質絶縁層、16b 第2の多孔質絶縁層、17 触媒層、17a 第1の触媒層、17b 第2の触媒層、18 封止部材、19 キャリア輸送材料、20 スクライブライン、21 透明部材、21a 表面、22 透光性基板、31 光、41 不透明部材、42 電流取り出し用電極、43 間隔保持部材、51 携帯機器用カバー、52 耐腐食性部材、101 基板、102 第1導電層、103 触媒層、104 多孔性絶縁層、105 第2導電層、106 多孔性半導体層、107 透光性カバー部材、108 封止部、109 光、201 ガラス窓部、202 窓枠、203 光、204 色素増感太陽電池。

Claims (5)

  1. 既設の透明部材に設置されるとともにキャリア輸送材料が導入されることによって光電変換装置となる光電変換装置作製キットであって、
    支持基板と、
    前記支持基板上に設けられた第1導電層と、
    前記第1導電層上に設けられた触媒層と、
    前記触媒層上に設けられた多孔質絶縁層と、
    前記多孔質絶縁層上に設けられた第2導電層と、
    前記第2導電層上に設けられた光電変換層とを備え、
    前記光電変換層は、多孔質半導体層と、前記多孔質半導体層上の光増感剤とを有する、光電変換装置作製キット。
  2. 既設の透明部材と、
    請求項1に記載の光電変換装置作製キットと、
    前記透明部材と前記光電変換装置作製キットとを接合する封止部材と、
    前記透明部材と前記支持基板と前記封止部材とで取り囲まれている領域に導入されているキャリア輸送材料とを備えた、光電変換装置。
  3. 既設の部材に設置されるとともにキャリア輸送材料が導入されることによって光電変換装置となる光電変換装置作製キットであって、
    支持基板と、
    前記支持基板上に設けられた第1導電層と、
    前記第1導電層上に設けられた光電変換層と、
    前記光電変換層上に設けられた多孔質絶縁層と、
    前記多孔質絶縁層上に設けられた触媒層と第2導電層とを備え、
    前記光電変換層は、多孔質半導体層と、前記多孔質半導体層上の光増感剤とを有する、光電変換装置作製キット。
  4. 既設の部材に設置されるとともにキャリア輸送材料が導入されることによって光電変換装置となる光電変換装置作製キットであって、
    支持基板と、
    前記支持基板上に設けられた第1導電層と、
    前記第1導電層上に設けられた第1の光電変換層と、
    前記第1導電層上に前記第1の光電変換層と間隔を空けて設けられた第2の光電変換層と、
    前記第1の光電変換層上に順次設けられた第1の多孔質絶縁層、第1の触媒層および第1の第2導電層と、
    前記第2の光電変換層上に順次設けられた第2の多孔質絶縁層、第2の触媒層および第2の第2導電層とを備え、
    前記第1の光電変換層および前記第2の光電変換層は、それぞれ、多孔質半導体層と、前記多孔質半導体層上の光増感剤とを有し、
    前記第1の第2導電層は、前記第1導電層によって前記第2の光電変換層と電気的に接続されており、
    前記第1の多孔質絶縁層は、前記第1の光電変換層と前記第1の第2導電層とを電気的に絶縁するように前記第1導電層を電気的に分離しており、
    前記第2の多孔質絶縁層は、前記第2の光電変換層と前記第2の第2導電層とを電気的に絶縁するように前記第1導電層を電気的に分離しており、
    前記第1の第2導電層と、前記第2の光電変換層と前記第2の多孔質絶縁層と前記第2の触媒層と前記第2の第2導電層との積層体との間に間隔が設けられている、光電変換装置作製キット。
  5. 透明部材としての携帯機器用カバーと、
    請求項3または請求項4に記載の光電変換装置作製キットとを備えた、光電変換装置付き携帯機器用カバー。
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