JP5171810B2 - 色素増感太陽電池モジュールおよびその製造方法 - Google Patents

色素増感太陽電池モジュールおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、色素増感太陽電池モジュールおよびその製造方法に関する。
化石燃料に代るエネルギー源として、太陽光を電力に変換できる太陽電池が注目されている。現在、結晶系シリコン基板を用いた太陽電池および薄膜シリコン太陽電池が一部実用化され始めている。しかし、前者はシリコン基板の製造コストが高いという問題があり、後者は多種の半導体製造用ガスや複雑な装置を用いる必要があるために製造コストが高くなるという問題がある。このため、いずれの太陽電池においても光電変換の高効率化による発電出力当たりのコストを低減する努力が続けられているが、上記の問題を解決するには到っていない。
新しいタイプの太陽電池として、金属錯体の光誘起電子移動を応用した湿式太陽電池が提案されている(日本特許第2664194号公報:特許文献1参照)。
この湿式太陽電池は、表面上に電極を形成した2枚のガラス基板の電極間に、光増感色素である金属錯体を吸着させて可視光領域に吸収スペクトルをもたせた光電変換材料と電解質材料とからなる光電変換層を挟持したものである。この湿式太陽電池に光が照射されると、光電変換層で電子が発生し、発生した電子が外部電気回路を通って電極に移動し、移動した電子が電解質中のイオンにより対向する電極に運ばれて光電変換層に戻る。このような一連の電子の流れにより、電気エネルギーが取り出される。
しかしながら、特許文献1に記載の色素増感太陽電池の基本構造は、対向する透明導電層付きガラス基板間に電解液を注入した形態であり、小面積の太陽電池の試作は可能であっても、1m角のような大面積の太陽電池への適用は困難である。つまり、1つの太陽電池の面積を大きくすると、発生電流は面積に比例して増加するが、電極部分に用いる透明導電性膜の面内方向の電圧降下が増大し、ひいては太陽電池としての内部直列抵抗が増大する。その結果、光電変換時の電流電圧特性におけるFF(フィルファクタ、曲線因子)、さらには短絡電流が低下し、光電変換効率が低下するという問題が起こる。
そこで、上記の問題を解決するために、隣り合う色素増感太陽電池(発電ユニット)の一方の対極と他方の導電層を、対極材料や導電接続層そのもので電気的に導通させ、複数個の発電ユニットを直列接続して集積化した色素増感太陽電池モジュールが提案されている。具体的には、背面電極である陽極と光電極(陰極)とを透明導電材料間に位置するの中間層を通じて接続した光起電力セル電池(日本特開平11−514787号公報:特許文献2)および対向電極部材と透明導電性部材とを導通手段を通じて接続した光電変換モジュール(日本特開2001−357897号公報:特許文献3)である。
これらの色素増感太陽電池モジュールでは、取り出される電流は1つの発電ユニットの電流と同等であるが、電圧は直列接続された発電ユニットの数だけ昇圧される。
また、透明導電層上に金属などの低抵抗材料を用いて線状や格子状の電極(金属リード)を敷設し、透明導電層の導電性を補った色素増感太陽電池モジュール(光電変換素子)が開示されている(日本特開2000−285977号公報:特許文献4)。
この色素増感太陽電池モジュールでは、大電流が得られるが、電圧は1つの発電ユニットの電圧と同等になる。
日本特許第2664194号公報 日本特開平11−514787号公報 日本特開2001−357897号公報 日本特開2000−285977号公報
一般に集積化された色素増感太陽電池モジュールでは、隣り合う色素増感太陽電池(「単セル」または「発電ユニット」ともいう)を分割するための隔壁が必要である。このような隔壁が受光面と接する部分は発電面積ロスとなるため、発電面積率(=色素増感太陽電池モジュール中の多孔性半導体層の面積/色素増感太陽電池モジュールのアパチャー面積)を向上することが課題となっている。
色素増感太陽電池モジュールの発電面積率を向上するためには、多孔性半導体層の直列接続方向の長さY(図1参照)を長くする必要がある。しかし、色素増感太陽電池の単位面積あたりの発生電流が15〜25mA/cm2程度と大きい場合には、現状用いられている透明導電層の抵抗値(シート抵抗値で8〜15Ω/□)では、Yが1cm以上になると太陽電池中の電圧降下が大きくなり、急激に性能、特にフィルファクター(FF)が低下するという課題がある。
したがって、本発明は、発電面積率を向上させかつ電圧降下を低減させた、高い変換効率を有する色素増感太陽電池モジュールおよびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、透光性基板上に透明導電層、光電変換層および対極が積層されてなる色素増感太陽電池の少なくとも2つ以上が同一の透光性基板上にセル間絶縁層を介して配置され、かつ接続層を介して1つの色素増感太陽電池と隣接する色素増感太陽電池とが直列に接続されてなる色素増感太陽電池モジュールにおいて、透光性基板上にグリッド電極を配置することにより、発電面積率を向上させかつ電圧降下を低減できることを見出し、本発明を完成するに到った。
かくして、本発明によれば、1つの色素増感太陽電池が、透光性基板上に透明導電層と、グリッド電極と、多孔性半導体層に色素を吸着させかつキャリア輸送材料を充填させた光電変換層と、対極とが積層されて形成され、かかる色素増感太陽電池の少なくとも2つ以上が、同一の透光性基板上にセル間絶縁層を介して配置され、かつ接続層を介して1つの色素増感太陽電池と隣接する色素増感太陽電池とが直列に接続されてなり、2つ以上の色素増感太陽電池におけるそれぞれの前記グリッド電極が前記接続層から延設されかつそれらが接続される前記接続層と共に櫛型形状を構成し、次式:
0.001<(1/2n)ISC・R・η<0.03
[式中、ISCは1つの色素増感太陽電池の短絡時の発生電流[mA]であり;Rは櫛型形状のグリッド電極1本当たりの抵抗値(Ω)であり;ηは(1つの色素増感太陽電池における多孔性半導体層の面積)/(1つの色素増感太陽電池のアパチャー面積)であり;nは1つの色素増感太陽電池が有する櫛型形状のグリッド電極の本数である]
の関係を満たす色素増感太陽電池モジュールが提供される。
また、本発明によれば、透光性基板上に透明導電層を形成する工程と、前記透明導電層上にグリッド電極を形成する工程と、前記グリッド電極を形成した前記透明導電層上に多孔性半導体層を形成する工程と、前記グリッド電極および多孔性半導体層を形成した透明導電層上に、隣接する色素増感太陽電池と電気的に絶縁するセル間絶縁層を形成する工程と、前記多孔性半導体層上に対極を形成する工程と、1つの色素増感太陽電池と隣接する色素増感太陽電池とを直列に接続する接続層を形成する工程と、前記多孔性半導体層に色素を吸着させる工程と、前記多孔性半導体層およびその空隙にキャリア輸送材料を充填させる工程を含む上記の色素増感太陽電池モジュールの製造方法が提供される。
本発明によれば、発電面積率を向上させかつ電圧降下を低減させた、高い変換効率を有する色素増感太陽電池モジュールおよびその製造方法を提供することができる。
本発明の色素増感太陽電池モジュール(以下、「モジュール」ともいう)は、1つの色素増感太陽電池が、透光性基板上に透明導電層と、グリッド電極と、多孔性半導体層に色素を吸着させかつキャリア輸送材料を充填させた光電変換層と、対極とが積層されて形成され、かかる色素増感太陽電池の少なくとも2つ以上が、同一の透光性基板上にセル間絶縁層を介して配置され、かつ接続層を介して1つの色素増感太陽電池と隣接する色素増感太陽電池とが直列に接続されてなることを特徴とする。
課題において述べたように、本発明のモジュールのような集積型モジュールにおいて、発電面積率を向上するためには、多孔性半導体層の直列接続方向の長さYを長くする必要がある。しかし、1つの色素増感太陽電池が直列に接続された方向に垂直な方向の多孔性半導体層の長さX当たりの発生電流(=ISC/X)が大きい場合、すなわち収集される電流値が大きい場合には、Yを長くすると性能が大幅に低下することがある。そこで、FFの低下を抑制するために、色素増感太陽電池の直列接続方向(Y方向)にグリッド電極を設置するのが好ましい(図1参照)。
したがって、本発明のモジュールにおける色素増感太陽電池は、次式:
SC[mA]/X[cm]≧30[mA/cm]
(式中、ISCは1つの色素増感太陽電池の短絡時の発生電流[mA]であり;Xは色素増感太陽電池が直列に接続された方向に垂直な方向の多孔性半導体層の長さ[cm]である)
の関係を満たす場合に顕著な効果が得られる。
本発明のモジュールにおける色素増感太陽電池のグリッド電極の形状は、特に限定されないが、グリッド電極が接続層から延設される櫛型形状であるのが好ましい。
上記の櫛型形状の色素増感太陽電池は、次式:
0.001<(1/2n)ISC・R・η<0.03
[式中、ISCは1つの色素増感太陽電池の短絡時の発生電流[mA]であり;Rは櫛型形状のグリッド電極1本当たりの抵抗値(Ω)であり;ηは(1つの色素増感太陽電池における多孔性半導体層の面積)/(1つの色素増感太陽電池のアパチャー面積)であり;nは1つの色素増感太陽電池が有する櫛型形状のグリッド電極の本数である]
の関係を満たすのが好ましい。
ここで、nは1つの色素増感太陽電池に含まれるユニット数、すなわちグリッド電極間の距離(配置周期)Lx[cm]と多孔性半導体層の直列接続方向の長さY[cm]とで囲まれる領域の数を表す。
上記の((1/2n)ISC・R・η)を「E」とする。
このEはグリッド電極部における電圧降下量を表し、Eが0.03を超えると、グリッド電極部における電圧降下が無視できなくなり性能が低下するので好ましくない。またEが0.001未満であると、グリッド電極の幅Wが大きく、グリッド電極の抵抗値Rが小さくなり、受光面積率ηが減少して発生電流、ひいては性能が大幅に低下するので好ましくない。
本発明のモジュールは、受光面積率(または発電面積率)と電圧降下量のトレードオフにより、色素増感太陽電池のグリッド電極の形状が接続層から延設される櫛型形状であり、次の条件を満たす場合により顕著な効果が得られる。
(1)色素増感太陽電池が直列に接続された方向における櫛型形状のグリッド電極の長さLyが2cm以上10cm以下、好ましくは2cm以上8cm以下である場合
(2)櫛型形状のグリッド電極間の距離(配置周期)Lxが0.4cm以上1.5cm以下である場合
(3)櫛型形状のグリッド電極の幅Wが0.1mm以上1mm以下である場合
(4)1つの色素増感太陽電池と隣接する色素増感太陽電池との距離、すなわちそれらの色素増感太陽電池における多孔性半導体層間の幅が0.3mm以上3mm以下である場合
本発明者らは、次のようにして電圧降下パラメータを導出した。
図1のモジュールの1セルにおいて、
多孔性半導体層の幅(直列接続方向に垂直な方向の長さ)=X、
多孔性半導体層の長さ(直列接続方向の長さ)=Y、
グリッド電極間の距離(配置周期)=Lx、
グリッド電極の長さ=Ly、
グリッド電極の幅=W
であるから、1つの太陽電池の多孔性半導体層の面積=幅×長さ=XYである。
ここで、Y=Lyの場合、1ユニット(=Lx×Ly)の半分の面積部分における電圧降下を考える。
電流密度=JSCとすると、
発生電流I(x,y)=JSCΔxΔyで表される。
次に、(Lx/2)−(W/2)のエリアの発生電流を考える。
I(x,y)をx軸方向に積分し、y軸方向について
I(y)=JSC・(Lx−W)/2・y
次に、電圧降下について考える。
(A)抵抗=(比抵抗×長さ)/(幅×厚み)=(ρ/W・TH)Δy
(B)グリッド1本分は長さLyなので、R=(ρ・Ly)/(W・TH
(C)Lx・Lyを1ユニットとし、1セル中にn(個)のユニットがあるとすると、
X・Y=n・Lx・Ly
(D)1セルの発生電流をISCとすると、ISC=JSC・XYであるから、
SC=ISC/XY=ISC/(n・Lx・Ly)
(E)面積率η=[(Lx−W)/2・Ly]/[Lx/2・Ly]
=(Lx−W)/Lx
であるから、
ΔV(y)=I(y)・R(y)
=I(y)・ρ/(W・TH)・Δy
ΔV=(1/2n・ISC・η・R・1/2
上記は1ユニットの半分の面積当たりの電圧降下量なので1ユニットでは2倍になる。
したがって、電圧降下量は
(1/2n・ISC・η・R・1/2)×2=1/2n・ISC・R・η
となる。
本発明のモジュールの一例を、図面を用いて説明するが、この説明により本発明が限定されるものではない。
図1は、本発明のモジュールにおける(a)受光面の概略平面図および(b)接続部分の概略断面図である。このモジュールは、透光性基板1上に配置形成される、透明導電層2と、光電変換層3と、多孔性絶縁層4と、触媒層5と、導電層6と、グリッド電極7と、接続層8と、セル間絶縁層9と、封止用基板10を主な構成とする。光電変換層3は、多孔性半導体層に色素を吸着させかつキャリア輸送材料が充填されてなる。また、XおよびYはそれぞれ光電変換層における多孔性半導体層の長さおよび幅を示し、Lx、LyおよびWはそれぞれグリッド電極間の距離(配置周期)、グリッド電極の長さおよび幅を示す。
(透光性基板1)
透光性基板は、一般に太陽電池に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば特に限定されない。少なくとも後述する増感色素に実効的な感度を有する波長の光を実質的に透過させる材料であればよく、必ずしもすべての波長領域の光に対して透過性を有する必要はない。その厚さ0.2〜5mm程度が好ましい。
このような材料としては、例えば、ソーダ石灰フロートガラス、溶融石英ガラス、結晶石英ガラスなどのガラス基板、透明ポリマーシートなどが挙げられる。
透明ポリマーシートとしては、例えば、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、フェノキシ樹脂、テフロン(登録商標)などが挙げられる。
これらの透明ポリマーシートは、フレキシブルな太陽電池を製造する場合に有用であり、またコスト面でも有利である。
透明ポリマーシート上に加熱を伴って他の層を形成する場合、例えば支持体上に250℃程度の加熱を伴って透明導電層を形成する場合には、上記の透明ポリマーシートの中でも250℃以上の耐熱性を有するテフロン(登録商標)が特に好ましい。
また、完成した太陽電池を他の構造体に取り付けるときに透光性基板を利用することができる。すなわち、ガラス基板などの支持体の周辺部を、金属加工部品とねじを用いて他の支持体に容易に取り付けることができる。
(透明導電層2)
透明導電層は、一般に太陽電池に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば特に限定されない。少なくとも後述する増感色素に実効的な感度を有する波長の光を実質的に透過させる材料であればよく、必ずしもすべての波長領域の光に対して透過性を有する必要はない。
このような材料としては、例えば、インジウム錫複合酸化物(ITO)、酸化錫(SnO2)、酸化錫にフッ素をドープしたもの(F−doped SnO2、FTO)、酸化亜鉛(ZnO)などが挙げられる。
透明導電層は、スパッタ法、スプレー法などの公知の方法により透光性基板上に形成することができる。
透明導電層の膜厚は0.02〜5μm程度が好ましい。その膜抵抗は低いほどよく、40Ω/sq以下が好ましい。
本発明では、ソーダ石灰フロートガラスからなる透光性基板上に、FTOからなる透明導電層を積層した透光性導電基板が好適に用いられる。
(対極)
対極は、導電層6のみからなるかまたは触媒層5および導電層6からなる。すなわち、導電層自体が触媒機能を有する場合には触媒層は特に必要はないが、導電層自体が触媒機能を有さない場合には光電変換層4と導電層6との間に触媒層5が設けられているのが好ましい。
(導電層6)
導電層は、透明導電層の材料で形成されていてもよく、あるいは非光透過性の材料で形成されていてもよい。非光透過性の材料としては、例えば、チタン、タングステン、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケルなどの金属材料が挙げられる。
導電層は、スパッタ法、スプレー法などの公知の方法により形成することができる。
導電層の膜厚は0.02〜5μm程度が好ましい。その膜抵抗は低いほどよく、40Ω/sq以下が好ましい。
(触媒層5)
触媒層は、一般に太陽電池に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば、特に限定されない。このような材料としては、白金(仕事関数:6.35eV)、カーボンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト、ガラス炭素、アモルファス炭素、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンホイスカー、カーボンナノチューブ、フラーレンなどカーボン(仕事関数4.7ev)などが挙げられ、例えば多孔性半導体層に酸化チタン(電子親和力=伝導体順位:4.1eV)を用いる場合に好適に用いられる。
触媒層が白金である場合には、スパッタ法、塩化白金酸の熱分解、電着、PVC法、蒸着法などの公知の方法により形成することができ、その膜厚は0.5〜1000nm程度が好ましい。また、その形状は、膜状ではなく、アイランド状(島状)で基板上に形成されていてもよい。
触媒層がカーボンである場合には、カーボンを溶剤に分散してペースト状にしたものをスクリーン印刷法などの塗布法により形成することができる。
(光電変換層3)
光電変換層は、多孔性半導体層に色素を吸着させかつキャリア輸送材料が充填されてなる。
(多孔性半導体層)
多孔性半導体層に用いられる半導体は、一般に太陽電池に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば、特に限定されない。このような材料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉄、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化タングステン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム、硫化鉛、硫化亜鉛、リン化インジウム、銅−インジウム硫化物(CuInS2)、CuAlO2、SrCu22などの化合物またはこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、安定性および安全性の点から酸化チタンが特に好ましい。
酸化チタンは、アナタース型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、無定形酸化チタン、メタチタン酸、オルソチタン酸などの各種の狭義の酸化チタンおよび水酸化チタン、含水酸化チタンなどを包含し、これらは単独または混合物として用いることができる。アナターゼ型とルチル型の2種類の結晶系は、その製法や熱履歴によりいずれの形もとり得るが、アナターゼ型が一般的である。特に本発明においては、アナターゼ型の含有率の高いものが好ましく、その割合は80%以上が特に好ましい。
半導体の結晶形態は、単結晶、多結晶のいずれでもよいが、安定性、結晶成長の困難さ、製造コストなどの点から多結晶が好ましく、微粉末(ナノからマイクロスケール)の多結晶微粒子半導体が特に好ましい。
また、2種類以上の異なる粒径の半導体粒子を混合して用いてもよい。粒径の大きい半導体粒子(例えば、100〜500nm)は入射光を散乱させて光捕捉率の向上が期待でき、粒径の小さい半導体粒子(例えば、5nm〜50nm)は、吸着点をより多くして色素の吸着率の向上が期待できる。半導体粒子の平均粒径の比率は10倍以上が好ましい。また、各粒子の材料は同一でも異なっていてもよく、半導体化合物の異なる場合には、吸着作用の強い半導体を小粒径化するのが特に好ましい。
さらに、多孔性半導体層は、同一または異なる材料からなる多層構造であってもよい。
最も好ましい半導体微粒子の形態である酸化チタンは、各種文献などに記載されている方法に準じて製造することができる。また、Degussa社が開発した塩化物の高温加水分解による方法も挙げられる。
(多孔性半導体層の形成方法)
多孔性半導体層は、例えば、透明導電層2上に半導体粒子を含有する懸濁液を塗布し、乾燥および/または焼成する方法により形成することができる。
まず、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのグライム系溶剤、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、イソプロピルアルコール/トルエンなどのアルコール系混合溶剤、水などの溶剤に半導体微粒子を分散させて懸濁液を得る。このような懸濁液の代わりに市販の酸化チタンペースト(Solaronix社製、Ti−nanoxide、D、T/SP、D/SP)を用いてもよい。
次いで、例えば、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法など公知の方法により、得られた懸濁液を透明導電層2上に塗布し、乾燥および/または焼成を経て多孔性半導体層を得る。乾燥および焼成の温度、時間、雰囲気などの条件は、用いる材料の種類や形態に応じて適宜設定すればよい。焼成は、例えば大気下または不活性ガス雰囲気下、50〜800℃程度の温度で10秒〜12時間程度が挙げられる。乾燥および焼成は、単一の温度で1回のみまたは温度を変化させて2回以上行ってもよい。
多孔性半導体層が多層構造である場合には、上記の工程を繰り返せばよい。
多孔性半導体層の膜厚、多層構造である場合の合計膜厚は、0.1〜100μm程度が好ましい。また、色素の吸着率を向上させるためには、多孔性半導体層の表面積は大きいものが好ましく、例えば10〜200m2/g程度が好ましい。
透明導電層上に多孔性半導体層を形成した後、半導体微粒子同士の電気的接続の向上、多孔性半導体層の表面積の向上、半導体微粒子上の欠陥準位の低減を目的として、例えば多孔性半導体層が酸化チタン膜の場合には、四塩化チタン水溶液で多孔性半導体層を処理してもよい。
(色素)
多孔性半導体層に吸着して光増感剤として機能する色素としては、種々の可視光領域および/または赤外光領域に吸収をもつ有機色素、金属錯体色素などが挙げられ、これらの色素を1種または2種以上を選択的に用いることができる。
有機色素としては、例えば、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、ペリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素などが挙げられる。一般に有機色素の吸光係数は、遷移金属に分子が配位結合した形態をとる金属錯体色素に比べて大きい。
金属錯体色素としては、Cu、Ni、Fe、Co、V、Sn、Si、Ti、Ge、Cr、Zn、Ru、Mg、Al、Pb、Mn、In、Mo、Y、Zr、Nb、Sb、La、W、Pt、Ta、Ir、Pd、Os、Ga、Tb、Eu、Rb、Bi、Se、As、Sc、Ag、Cd、Hf、Re、Au、Ac、Tc、Te、Rhなどの金属に分子が配位結合した形態のものが挙げられ、これらの中でも、フタロシアニン系色素、ルテニウム系色素が好ましく、ルテニウム系金属錯体色素が特に好ましい。
特に、次式で表されるルテニウム系金属錯体色素、(1)Ruthenium535色素、(2)Ruthenium535−bisTBA色素および(3)Ruthenium620−1H3TBA色素(それぞれ商品名、すべてSolaronix社製)が好ましい。
Figure 0005171810
また、多孔性半導体層に色素を強固に吸着させるためには、色素分子中にカルボキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基などのインターロック基を有するものが好ましい。なお、インターロック基は、励起状態の色素と多孔性半導体層の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供するものである。
(色素吸着)
色素は、例えば、色素を溶解した溶液(色素溶液)に多孔性半導体層を浸漬する方法により、多孔性半導体層に吸着させることができる。
色素溶液の溶剤としては、用いる色素を溶解するものであればよく、具体的には、アルコール、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。溶剤は精製されたものが好ましく、色素の溶解性を向上させるために溶解温度を上げるか、2種類以上の異なる溶剤の混合溶剤を用いてもよい。
色素溶液中の色素濃度は、使用する色素、溶剤の種類、色素吸着工程などの条件に応じて設定すればよく、1×10-5モル/リットル以上が好ましい。
(キャリア輸送材料)
光電変換層3は、透明導電層2およびグリッド電極7と、対極(導電層6のみまたは触媒層5および導電層6)との間に挟持され、キャリア輸送材料は、その挟持された領域の多孔質半導体層とその空隙に注入されることにより、多孔質半導体層に充填される。
キャリア輸送材料は、一般に太陽電池に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば、特に限定されない。このような材料としては、例えば、酸化還元性電解質を含む電解液(液体電解質)が挙げられる。
酸化還元性電解質としては、例えば、I-/I3-系、Br2-/Br3-系、Fe2+/Fe3+系、キノン/ハイドロキノン系などの酸化還元種が挙げられる。
具体的には、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ化カルシウム(CaI2)などの金属ヨウ化物とヨウ素(I2)の組み合わせ、テトラエチルアンモニウムアイオダイド(TEAI)、テトラプロピルアンモニウムアイオダイド(TPAI)、テトラブチルアンモニウムアイオダイド(TBAI)、テトラヘキシルアンモニウムアイオダイド(THAI)などのテトラアルキルアンモニウム塩とヨウ素の組み合わせ、および臭化リチウム(LiBr)、臭化ナトリウム(NaBr)、臭化カリウム(KBr)、臭化カルシウム(CaBr2)などの金属臭化物と臭素の組み合わせが好ましく、これらの中でも、LiIとI2の組み合わせが特に好ましい。
また、電解液の溶剤としては、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、アセトニトリルなどのニトリル化合物、エタノールなどのアルコール類、水、非プロトン極性物質などが挙げられる。これらの中でも、カーボネート化合物やニトリル化合物が特に好ましい。これらの溶剤は2種類以上を混合して用いることもできる。
上記の電解液には、必要に応じて添加剤を加えてもよい。
従来から用いられている添加剤としては、t−ブチルピリジン(TBP)などの含窒素芳香族化合物、ジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド(DMPII)、メチルプロピルイミダゾールアイオダイド(MPII)、エチルメチルイミダゾールアイオダイド(EMII)、エチルイミダゾールアイオダイド(EII)、ヘキシルメチルイミダゾールアイオダイド(HMII)などのイミダゾール塩が挙げられる。
電解液中の酸化還元性電解質の濃度は、0.001〜1.5モル/リットルの範囲が好ましく、0.01〜0.7モル/リットルの範囲が特に好ましい。
(グリッド電極7)
グリッド電極は、一般に太陽電池に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば特に限定されない。このような材料としては、金(2.2μΩ・cm)、銀(1.6μΩ・cm)、銅(1.7μΩ・cm)、アルミニウム(2.7μΩ・cm)、ニッケル(7.0μΩ・cm)、チタン(47μΩ・cm)、タンタル(13.1μΩ・cm)などが挙げられる。これらの中でも、キャリア輸送材料(電解液)への耐腐食性を有するニッケル、チタン、タンタルが特に好ましく、高伝導性を有する金、銀、銅、アルミニウムが特に好ましい。但し、グリッド電極が電解液への耐腐食性を有さない材料で構成されている場合には、グリッド電極に酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、ルチル型酸化チタンなどからなる保護絶縁層を形成するのが好ましい。
グリッド電極は、スパッタ法、スプレー法、スクリーン印刷法などの公知の方法により、上記のような形状で透明導電層上に形成することができる。
グリッド電極の形状および寸法(Lx、LyおよびW)は、前述のように本発明の関係式を満たすように設定する。また、その膜厚は抵抗値を考慮して設定すればよく、例えば、0.5μm〜30μm程度である。
グリッド電極長さLyと多孔性半導体層の直列接続方向長さYは、透明導電層のシート抵抗が8〜15Ω/□の場合、次の関係式:
Y[cm]−1.0[cm]<Ly[cm]≦Y[cm]
を満たすことが好ましい。LyはXとYで囲まれた領域内での長さとする。
(接続層8)
接続層は、隣接する色素増感太陽電池同士を電気的に接続する。
接続層に用いられる材料としては、一般に太陽電池に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば、特に限定されない。このような材料としては、透明導電層および導電層に例示した材料が挙げられる。その形成方法およびその条件は、透明導電層や導電層に準ずる。
(多孔性絶縁層4)
多孔性半導体層と対極との間には、これらを絶縁するための多孔性絶縁層4が設けられているのが好ましい。
多孔性絶縁層に用いられる材料としては、一般に太陽電池に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば、特に限定されない。このような材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素(シリカガラス、ソーダガラス)、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムなどの化合物またはこれらの組み合わせが挙げられる。酸化チタンは平均粒径100nm以上の粒子状のものが好ましく、酸化チタン以外は平均粒径5〜500nm、好ましくは10〜300nmの粒子状のものが好ましい。
(多孔性絶縁層の形成方法)
多孔性絶縁層は、例えば、多孔性半導体層3上に多孔性絶縁層形成用粒子を含有する懸濁液を塗布し、乾燥および/または焼成する方法により形成することができる。
まず、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのグライム系溶剤、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、イソプロピルアルコール/トルエンなどのアルコール系混合溶剤、水などの溶剤に多孔性絶縁層形成用粒子を分散させ、さらにエチルセルロース、ポリエチレングリコール(PEG)などの高分子化合物を混合してペーストを得る。
次いで、例えば、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法など公知の方法により、得られたペーストを多孔性半導体層3上に塗布し、乾燥および/または焼成を経て多孔性絶縁層を得る。乾燥および焼成の温度、時間、雰囲気などの条件は、用いる材料の種類や形態に応じて適宜設定すればよい。
多孔性絶縁層の膜厚は、1〜10μm程度が好ましい。
(セル間絶縁層9)
セル間絶縁層は、隣接する色素増感太陽電池同士を電気的に絶縁する。
セル間絶縁層に用いられる材料としては、一般に太陽電池に使用可能で、かつ本発明の効果を発揮し得る材料であれば、特に限定されない。このような材料としては、多孔性絶縁層と同様の材料が挙げられる。これらの材料の中でも、ルチル型の酸化チタンや色素が吸着し難い酸化ケイ素が特に好ましい。
その形成方法およびその条件は、多孔性半導体層や多孔性絶縁層に準ずる。
(封止用基板10と封止材)
封止用基板としては、例えば、透光性または非透光性のガラス基板が挙げられる。
また、封止材は、透明性基板1と封止用基板10との間の光電変換層にキャリア輸送材料を充填し、これを封止するものである。封止材としては、有機高分子からなる樹脂、例えば、紫外線硬化性樹脂(スリーボンド社製の31X−101など)、熱硬化性樹脂(市販のエポキシ樹脂など)が挙げられる。
本発明を作製例、実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、これらの作製例および実施例により本発明が限定されるものではない。
(作製例1)
図1に示すようなモジュールを作製した。
図1は、本発明のモジュールにおける(a)受光面の概略平面図および(b)接続部分の概略断面図である。図中、1は透光性基板、2は透明導電層、3は光電変換層、4は多孔性絶縁層、5は触媒層、6は導電層、7はグリッド電極、8は接続層、9はセル間絶縁層、10は封止用基板である。光電変換層3は多孔性半導体層に色素を吸着させかつキャリア輸送材料を充填させたものである。また、XおよびYはそれぞれ光電変換層における多孔性半導体層の長さおよび幅を示し、Lx、LyおよびWはそれぞれグリッド電極間の距離(配置周期)、グリッド電極の長さおよび幅を示す。
なお、作製例における膜厚の測定には、汎用測定機器(株式会社東京精密製、型番:サーフコム1400A)を用いた。
透光性基板1上に透明導電層2として膜厚約0.5μmのSnO2膜が形成された市販のSnO2膜付きガラス基板(日本板硝子株式会社製、100mm×200mm×厚さ4mm)を用いた。
・グリッド電極の形成
スクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製、型番:LS−34TVA)および所定形状のマスク(スクリーン版)を用いて、SnO2膜付きガラス基板の透明導電層2上(図1(a)図番7の位置)に、市販の銀ペースト(株式会社ノリタケカンパニーリミテド製、型番:NP−4635P)を塗布(印刷)した。次いで、塗膜を空気中150℃で10分間予備乾燥し、空気中450℃で2時間焼成して、膜厚15μmの銀電極からなるグリッド電極7を得た。塗布においてグリッド電極間の距離Lxを1cmに、グリッド電極の幅Wを0.4cm(400μm)に固定し、グリッド電極の長さLyが1cm、2cm、4cm、5cm、8cm、10cm、12cmおよび15cmとなるように設定した。各グリッド電極の長さにおけるグリッド電極1本当たりの抵抗値は、それぞれ2.67×10-2Ω、5.33×10-2Ω、1.07×10-1Ω、1.32×10-1Ω、2.10×10-1Ω、2.61×10-1Ω、3.10×10-1および4.15×10-1Ωであった。また、グリッド電極の本数は、10本とした(X=10cm)。本例では、Y=Lyとした。
・保護絶縁層の形成
スクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製、型番:LS−34TVA)および所定形状のマスク(スクリーン版)を用いて、グリッド電極7を覆うように透明導電層2上に、市販のガラスフリット(株式会社ノリタケカンパニーリミテド製)を塗布(印刷)した。次いで、塗膜を空気中100℃で10分間予備乾燥し、空気中450℃で1時間焼成して、幅1mm、膜厚20μmの保護絶縁層(図示せず)を得た。
・多孔性半導体層の形成
スクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製、型番:LS−34TVA)および所定形状のマスク(スクリーン版)を用いて、グリッド電極7および保護絶縁層を形成した透明導電層2上(図1(a)図番3の位置)に、市販の酸化チタンペースト(Solaronix社製、商品名Ti−Nanoxide D/SP、平均粒径13nm)を塗布し、室温にて1時間レベリングを行った。次いで、塗膜を空気中80℃で20分間予備乾燥し、空気中450℃で1時間焼成して、膜厚28μmの酸化チタン膜からなる多孔性半導体層を得た。
・セル間絶縁層(封止部)の形成
スクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製、型番:LS−34TVA)および所定形状のマスク(スクリーン版)を用いて、グリッド電極7、保護絶縁層および多孔性半導体層を形成した透明導電層2上(図1(a)図番9の位置)に、市販のガラスフリット(株式会社ノリタケカンパニーリミテド製)を塗布(印刷)した。次いで、塗膜を空気中100℃で10分間予備乾燥し、空気中450℃で1時間焼成して、膜厚約25μmのセル間絶縁層9を得た。
・多孔性絶縁層の形成
スクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製、型番:LS−34TVA)および多孔性半導体層と同じマスク(スクリーン版)を用いて、多孔性半導体層上に、酸化ジルコニウム微粒子(シーアイ化成株式会社製、粒径100nm)を含むペーストを塗布し、室温にて1時間レベリングを行った。次いで、塗膜を空気中80℃で20分間予備乾燥し、空気中450℃で1時間焼成し、膜厚5μmの酸化ジルコニウム膜からなる多孔性絶縁層4を得た。
ペーストは、酸化ジルコニウム微粒子および高分子化合物としてのエチルセルロースを溶剤としてのテルピネオールに分散させることにより調製した。
・触媒層の形成
電子ビーム蒸着装置(アネルバ株式会社製、型式:EVD−500A)および所定形状のマスクを用いて、多孔性絶縁層4上に蒸着速度0.1Å/Sで白金を蒸着して、膜厚約5nmの白金からなる触媒層5を得た。
・導電層の形成
電子ビーム蒸着装置(アネルバ株式会社製、型式:EVD−500A)および所定形状のマスクを用いて、次工程で形成する接続層8を介して隣接する太陽電池のグリッド電極7と電気的に接続されるように、触媒層5および一部セル間絶縁層9上に蒸着速度0.1Å/Sでチタンを蒸着して、膜厚約500μmのチタン膜からなる導電層6を得た。
・接続層の形成
電子ビーム蒸着装置(アネルバ株式会社製、型式:EVD−500A)および所定形状のマスクを用いて、隣接する太陽電池のグリッド電極7と導電層6とが電気的に接続されるように、隣接するセル間絶縁層9間のグリッド電極7上に蒸着速度0.1Å/Sでチタンを蒸着して、チタン膜からなる接続層8を得た。
・色素溶液の調製
色素溶液は、次のルテニウム系金属錯体色素1〜3をそれぞれ色素濃度4×10-4モル/リットルになるように、体積比1:1のアセトニトリル(Aldrich Chemical Company製)/t−ブチルアルコール(Aldrich Chemical Company製)の混合溶剤に溶解させることにより調製した。
色素1:Solaronix社製、Ruthenium620−1H3TBA色素、前記式(3)
色素2:Solaronix社製、Ruthenium535−bisTBA色素、前記式(2)
色素3:株式会社林原生物化学研究所製、NKX2311色素
・色素の吸着
上記のようにして形成した積層体を予め調製しておいた色素溶液に40℃の温度条件で20時間浸漬し、色素を積層体に吸着させた。その後、積層体をエタノール(Aldrich Chemical Company製)で洗浄し、約60℃で約5分間乾燥させた。
・電解液の調製
キャリア輸送材料としての電解液(酸化還元性電解質を含む電解液)は、溶剤としてのアセトニトリルに、酸化還元種としての濃度0.1モル/リットルのLiI(Aldrich Chemical Company製)および濃度0.01モル/リットルのI2(東京化成工業株式会社製)、添加剤としての濃度0.5モル/リットルのt−ブチルピリジン(TBP、Aldrich Chemical Company製)および濃度0.6モル/リットルのジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド(DMPII、四国化成工業株式会社製)を溶解させることにより調製した。
・太陽電池モジュールの作製
透光性基板1のセル間絶縁層9上に紫外線硬化樹脂(スリーボンド社製、型番:31X−101)を塗布し、別途用意した石英ガラスからなる封止用基板10(Corning社製、型番:7059、50mm×70mm×厚さ1.1mm)を貼り合せた。次いで、紫外線照射ランプ(EFD社製、商品名:Novacure)を用いて、塗布部分に紫外線を照射して樹脂を硬化させ、2枚の基板を固定した。
予め封止用基板に設けておいた電解液注入用孔より、キャリア輸送材料として電解液を注入し、電解液注入用孔を封止することにより光電変換層3を形成し、モジュールを完成した。これらのモジュールは、グリッド電極のパターン(長さLy)8種、色素の3種からなる24種であった。
得られた太陽電池に1kW/m2の強度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射して短絡電流(ISC)、開放電圧(VOC)およびFFを測定し、光電変換効率(単に「変換効率」ともいう)を求めた。短絡電流(ISC)をモジュールのアパチャーエリア(モジュール内の数個の太陽電池(光電変換素子)の外枠を結んで囲むエリア)の面積Sで除したものに、開放電圧(VOC)およびFFを乗じて「変換効率」を得た。
得られた結果を表1に示す。なお、表1には本発明の関係式の数値「E」を示す。
Figure 0005171810
表1によれば、次のことがわかる。
(1)ISC/Xの値が30mA/cm以上の場合に変換効率が高くなる傾向のあること
(2)0.001<E<0.03の範囲で変換効率が高くなる傾向のあること
(3)使用する色素により変換効率が最大となるグリッド電極の長さLy(=多孔性半導体層の直列接続方向の長さY)は異なるが、2cm以上10cm以下である場合に変換効率が高くなる傾向のあること
(作製例2)
次のようにグリッド電極7を形成し、色素溶液の色素として色素1のみを用いること以外は作製例1と同様にして、図1に示すようなモジュールを作製し評価した。
グリッド電極の長さLy(=多孔性半導体層の直列接続方向の長さY)を5cmに、グリッド電極の幅Wを0.4cm(400μm)に固定し、グリッド電極間の距離Lxを、0.2cm、0.4cm、0.5cm、0.8cm、1.0cm、1.2cm、1.5cm、1.7cmとなるように設定した(それぞれX=2cm、4cm、5cm、8cm、10cm、12cm、15cm、17cm)。
得られた結果を表2に示す。
Figure 0005171810
表2によれば、グリッド電極間の距離Lxが0.4cm以上1.5cm以下である場合に変換効率が高くなる傾向のあることがわかる。
(作製例3)
次のようにグリッド電極7を形成し、色素溶液の色素として色素1のみを用いること以外は作製例1と同様にして、図1に示すようなモジュールを作製し評価した。
グリッド電極間の距離Lxを1.0cmに、グリッド電極の長さLy(=多孔性半導体層の直列接続方向の長さY)を5cmに固定し、グリッド電極の幅Wを0.005cm、0.008cm、0.01cm、0.04cm、0.08cm、0.1cm、0.15cm、0.18cmとなるように設定した。
得られた結果を表3に示す。なお、表3には本発明の関係式の数値「E」を示す。
Figure 0005171810
表3によれば、グリッド電極の幅Wが0.1mm以上1mm以下である場合に変換効率が高くなる傾向のあることがわかる。
(実施例1〜16および比較例1〜8)
表4に示すようなグリッド電極間の距離Lx、グリッド電極の長さLyおよびグリッド電極の幅Wに設定してグリッド電極7を形成し、色素溶液の色素として表4に示す色素を用いること以外は作製例1と同様にして、図1に示すようなモジュールを作製し評価した。
Figure 0005171810
本発明は、上記のように説明されるが、同様に多くの手段により自明に変形され得る。そのような変形例は、本発明の趣旨及び範囲から離れるものではなく、そのような当業者に自明である全ての変形例は、請求の範囲の範囲内に含まれることを意図されている。
本発明のモジュールにおける(a)受光面の概略平面図および(b)接続部分の概略断面図である。
符号の説明
1 透光性基板
2 透明導電層
3 光電変換層
4 多孔性絶縁層
5 触媒層
6 導電層
7 グリッド電極
8 接続層
9 セル間絶縁層
10 封止用基板
X 光電変換層における多孔性半導体層の長さ
Y 光電変換層における多孔性半導体層の幅
Lx グリッド電極間の距離(配置周期)
Ly グリッド電極の長さ
W グリッド電極の幅

Claims (6)

  1. 1つの色素増感太陽電池が、透光性基板上に透明導電層と、グリッド電極と、多孔性半導体層に色素を吸着させかつキャリア輸送材料を充填させた光電変換層と、対極とが積層されて形成され、かかる色素増感太陽電池の少なくとも2つ以上が、同一の透光性基板上にセル間絶縁層を介して配置され、かつ接続層を介して1つの色素増感太陽電池と隣接する色素増感太陽電池とが直列に接続されてなり、2つ以上の色素増感太陽電池におけるそれぞれの前記グリッド電極が前記接続層から延設されかつそれらが接続される前記接続層と共に櫛型形状を構成し、次式:
    0.001<(1/2n)ISC・R・η<0.03
    [式中、ISCは1つの色素増感太陽電池の短絡時の発生電流[mA]であり;Rは櫛型形状のグリッド電極1本当たりの抵抗値(Ω)であり;ηは(1つの色素増感太陽電池における多孔性半導体層の面積)/(1つの色素増感太陽電池のアパチャー面積)であり;nは1つの色素増感太陽電池が有する櫛型形状のグリッド電極の本数である]
    の関係を満たす色素増感太陽電池モジュール。
  2. 前記色素増感太陽電池が、次式:
    SC[mA]/X[cm]≧30[mA/cm]
    (式中、ISCは1つの色素増感太陽電池の短絡時の発生電流[mA]であり;Xは色素増感太陽電池が直列に接続された方向に垂直な方向の多孔性半導体層の長さ[cm]である)
    の関係を満たす請求項1に記載の色素増感太陽電池モジュール。
  3. 前記櫛型形状のグリッド電極の長さLyが、2cm以上10cm以下である請求項1または2に記載の色素増感太陽電池モジュール。
  4. 前記櫛型形状のグリッド電極間の距離(配置周期)Lxが、0.4cm以上1.5cm以下である請求項1〜3のいずれか1つに記載の色素増感太陽電池モジュール。
  5. 前記櫛型形状のグリッド電極の幅Wが、0.1mm以上1mm以下である請求項1〜4のいずれか1つに記載の色素増感太陽電池モジュール。
  6. 透光性基板上に透明導電層を形成する工程と、前記透明導電層上にグリッド電極を形成する工程と、前記グリッド電極を形成した前記透明導電層上に多孔性半導体層を形成する工程と、前記グリッド電極および多孔性半導体層を形成した透明導電層上に、隣接する色素増感太陽電池と電気的に絶縁するセル間絶縁層を形成する工程と、前記多孔性半導体層上に対極を形成する工程と、1つの色素増感太陽電池と隣接する色素増感太陽電池とを直列に接続する接続層を形成する工程と、前記多孔性半導体層に色素を吸着させる工程と、前記多孔性半導体層およびその空隙にキャリア輸送材料を充填させる工程を含む請求項1〜5のいずれか1つに記載の色素増感太陽電池モジュールの製造方法。
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