JP2004303463A - 色素増感型太陽電池モジュール及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第1支持体10と第2支持体11との間に、第1導電層111、色素を吸着させた多孔性光電変換層112、キャリア輸送層、第2導電層114がこの順に積層されてなる複数の光電変換素子を電気的に直列接続させて配置した色素増感型太陽電池モジュールであって、多孔性光電変換層112が、隣接する光電変換素子の多孔性光電変換層122と分離されているが、その一部とオーバーラップするように配置されてなる色素増感型太陽電池モジュール。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、色素増感型太陽電池モジュール及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、集積された色素増感型太陽電池モジュール及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
化石燃料に代るエネルギー源として、太陽光を電力に変換できる太陽電池が注目されている。現在、一部実用化されている太陽電池としては、結晶系シリコン基板を用いた太陽電池及び薄膜シリコン太陽電池がある。しかし、前者はシリコン基板の作製コストが高いこと、後者は多種の半導体ガスや複雑な装置を用いる必要があり、依然として製造コストが高いことが問題となっている。そのため、いずれの太陽電池においても光電変換の高効率化による発電出力当たりのコストを低減する努力が続けられているが、上記問題を解決するには到っていない。
【0003】
新しいタイプの太陽電池として、金属錯体の光誘起電子移動を応用した湿式太陽電池が示されている(例えば、特許文献1及び2)。
この湿式太陽電池は、2枚のガラス基板にそれぞれ形成された電極間に、光電変換材料と、電解質材料を挟持して構成されたものである。この光電変換材料は、光増感色素を吸着させることで、可視光領域に吸収スペクトルをもつようになる。この太陽電池において、光電変換層に光が照射されると電子が発生し、電子は外部電気回路を通って対向する電極に移動する。電極に移動した電子は、電解質中のイオンによって運ばれ、光電変換材料側にもどる。このようにして電気エネルギーが取り出せる。
【0004】
このような動作原理の太陽電池を、低コストで作製する方法が提案されている(例えば、特許文献3)。
まず、透明導電膜(電極)を形成したガラス基板を用意する。また、巻き取り可能なフレキシブルな他の基板上に白金導電膜(電極)および二酸化チタンコロイド発電層を形成し、ガラス基板を積層する。この積層体形成時又はそれ以降に、発電層に電解質液を含浸させる。このような方法により、単一ユニットの有機太陽電池が得られる。
【0005】
しかし、一定間隔に保持した2枚のガラス基板の間に電解液を注入することで単一セルを構成させる場合、小面積の太陽電池の試作は可能であっても、1m角のような大面積を必要とする太陽電池への適用は困難となる。このような太陽電池について、一つの太陽電池(単位セル)の面積を大きくすると、発生電流は面積に比例して増加するが、電極部分に用いる透明導電性膜の横方向の抵抗成分が極端に増大し、ひいては太陽電池としての内部直列電気抵抗が増大する。その結果、光電変換時の電流電圧特性における曲線因子(フィルファクタ、FF)が低下し、光電変換効率が低くなるという問題がある。
【0006】
また、フレキシブル基板を用いる場合、高速生産が可能となるが、一つの太陽電池(単位セル)を単に大面積化するものであることから、上記と同様に内部直列抵抗が増大して大面積化が困難であるという問題がある。
これらを解決するために、アモルファスシリコン層を第1および第2導電層で挟み込んだ構成のアモルファスシリコン太陽電池モジュールなどに使用されているように、長方形の単位セルの第1導電層と、隣り合う単位セルの第2導電層とを接触させる集積化構造が考えられる。しかし、この構造では、隣り合う光電変換層が接触しないように、ある一定の間隔の隙間をおいて形成させる必要がある。
【0007】
一般に、集積化を行った太陽電池のモジュールの変換効率とは、モジュール面積当たりの発電効率を意味する。そのため、隙間の面積が大きいと、隙間に当たった光は発電に寄与しないので、モジュールを構成する単位セルの変換効率が高くてもモジュール変換効率が悪くなり、単位出力当たりの製造費も悪くなる。そのため、隣り合う単位セル同士の間隔を小さくして隙間の占める面積を小さくし、発電に寄与するセル有効面積を大きくするため、モジュールの作製方法に工夫を行う必要があった。
【0008】
通常、アモルファスシリコン系太陽電池では、レーザー等によりスクライブを行い、集積パターニングを行っているが、これらの手法は色素増感型太陽電池への適用は困難である。つまり、色素増感型太陽電池の光電変換層は、より多くの色素を吸着させるため、多孔質体からなる。このような多孔質体にレーザー等により微細パターンを形成しようとしても、多孔質体表面が凹凸状になっているため、各部におけるレーザー照射時の焦点が異なるため、均一な微細パターンを形成することができないという問題がある。さらには、レーザーを使用することにより製造コストが高くなる問題がある。
【0009】
そこで、複数の色素増感型太陽電池を直列接続した色素増感型太陽電池モジュールが提案されている(例えば、特許文献4)。このモジュールの個々の色素増感型太陽電池は、図5に示すように、短冊形にパターニングを行った透明導電膜(電極)52を形成したガラス基板51上に、スクリーン印刷法により酸化チタン層53を形成し、さらにその上に絶縁性多孔質層54および対極55を順次積層した構造を有している。また、1つの色素増感型太陽電池の透明導電膜52を、隣接する色素増感型太陽電池の対極55と接触するように配置することで、両太陽電池が直列接続されている。
【0010】
しかし、この方法では、多孔性光電変換層の端の部分が傾斜をもつ形状となり、複数の多孔性光電変換層を形成するには印刷マージンを考慮する必要がある。
また、多孔性光電変換層上に導電層を形成するため、さらなる印刷マージンが必要となり、色素増感型太陽電池モジュールのセル有効面積が低下し、モジュール変換効率の低下は免れない。
【0011】
【特許文献1】
特開平5−504023号公報
【特許文献2】
特許第2664194号公報
【特許文献3】
特開2000−91609号公報
【特許文献4】
国際公開公報WO97/16838
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述のような問題に鑑みて鋭意研究した結果、隣り合う単位セルにおいて、基本構造要素となる多孔性光電変換層が重なり合う構造にすることにより、従来、発電に寄与しなかった部分においても光電変換層を配置することが可能となり、高いモジュール変換効率を得ることができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0013】
かくして本発明によれば、第1支持体と第2支持体との間に、第1導電層、色素を吸着させた多孔性光電変換層、キャリア輸送層、第2導電層がこの順に積層されてなる複数の光電変換素子を電気的に直列接続させて配置した色素増感型太陽電池モジュールであって、
前記多孔性光電変換層が、隣接する光電変換素子の多孔性光電変換層と分離されているが、その一部とオーバーラップするように配置されてなる色素増感型太陽電池モジュールが提供される。
【0014】
また、本発明によれば、第1支持体と第2支持体との間に、第1導電層、色素を吸着させた多孔性光電変換層、キャリア輸送層、第2導電層がこの順に積層されてなる複数の光電変換素子を電気的に直列接続させて配置した色素増感型太陽電池モジュールの製造に際して、
多孔性光電変換層および/又は第2導電層を、スクリーン印刷により形成する色素増感型太陽電池モジュールの製造方法が提供される。
【0015】
【発明の実施形態】
本発明の色素増感型太陽電池(以下、単に太陽電池とも称する)は、主として、第1導電層、色素を吸着させた多孔性光電変換層、キャリア輸送層、第2導電層を順次積層した積層体からなる光電変換素子の単位セルを複数有する。
【0016】
さらに、本発明では、支持体に対して垂直方向に、隣り合った多孔性光電変換層の一部が重なり合った構造を有している。言い換えると、多孔性光電変換層が、隣接する光電変換素子の多孔性光電変換層と分離されているが、その一部とオーバーラップするように配置されている。「重なり合った構造」とは、一の単位セルと、この一の単位セルに隣接する他の単位セルとの境界領域において、一の単位セルの多孔性光電変換層の右端が第1支持体側に存在し、かつ、他の一の単位セルの多孔性光電変換層の左端が、上記の右端に対して、第2支持体側及び上記右端よりも左側に存在するという意味である。なお、「境界領域」とは、隣接する二つの単位セルのそれぞれの第1導電層の間であって、第1導電層に被覆されていない第1支持体表面部分と、対応する第2支持体表面部分とに挟まれた領域を意味する。また、言い換えると、隣接する単位セルの多孔性光電変換層同士は、接触しておらず、分離した状態で、平面的に見るとオーバーラップするように配置されているという意味である。
【0017】
隣接する単位セルとの多孔性光電変換層同士の重なり(オーバーラップ)の程度は、特に限定されるものではなく、用いる多孔性光電変換層の材料、多孔性光電変換層の端部の傾斜角度、支持体の大きさ、得ようとする太陽電池モジュールの特性、変換効率等を考慮して適宜調製することができる。
【0018】
第1支持体は、多孔性光電変換層を、製造から製品使用段階まで、機能的に支持することのできる基板であり、光透過性を有し、かつ耐熱性の高い材料からなるものが好適である。ただし、第1支持体は、少なくとも後述の増感色素に実効的な感度を有する波長の光を実質的に透過するものであればよく、必ずしも全ての波長の光に対して透過性を有することは要求されない。
【0019】
第1支持体の材料としては、ソーダガラス、溶融石英ガラス、結晶石英ガラス等のガラス類、可撓性フィルム等の耐熱性樹脂基板が挙げられる。
また、0.2〜5mm程度の厚さで、250℃以上の耐熱性を有するのが好ましい。例えば、このような支持体としては、ガラス類や可撓性フィルム等が挙げられる。
【0020】
可撓性フィルム(以下、「フィルム」と略称する)は、例えば、ポリエステル、ポリアクリル、ポリイミド、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、PETなど長期耐候性のシートやフィルムが挙げられる。中でも導電層堆積時において200℃近い温度に加熱されることから、この温度で耐熱性を有するテフロン(登録商標)からなることが好ましい。
【0021】
さらに、支持体は、完成した色素増感型太陽電池を他の構造体に取り付けるときに利用することも可能である。つまり、ガラスなどの支持体を用いる際には、ガラス周辺部を、金属加工部品とねじを用いて他の支持体に容易に取り付けることができる。
【0022】
第2支持体は、特に限定されないが、具体的には、第1支持体と同様な支持体を使用することができる。さらに、第2支持体を設置した後に焼成工程を行わない場合は、第2支持体は耐熱性を有しなくてもよい。第1支持体側を太陽電池の受光面とする場合、第2支持体は不透明であってもよい。また、この場合、入射光を有効に使用するため、金属等の入射光を反射できる材料からなることが好ましい。また、太陽電池の重量を軽減するためには、フィルムを用いることが望ましく、防湿性強化の観点より、PETとアルミニウムの積層フィルムが好ましい。
【0023】
第1及び/又は第2支持体をフィルムとすれば、フィルムがラミネーション法等により、多孔性光電変換層と共に、対向する第1もしくは第2支持体と共に密着封入させることができるので、不要な空隙を少なくすることができる。
第1導電層および第2導電層は、第1支持体と第2支持体を重ね合わせた場合、多孔性光電変換層とキャリア輸送層とを挟むように構成される。
【0024】
第1導電層は第1支持体上に形成され、第2導電層は第2支持体上もしくは後述の絶縁性多孔質層上に形成してもよい(第1支持体と第1導電層とを合わせた部分として、単に「基板」と記す場合もある)。
【0025】
第1及び第2導電層の材料としては、フッ素がドープされた酸化スズ、ITO(インジウム−スズ複合酸化物)、ボロン、ガリウムまたはアルミニウムがドープされた酸化亜鉛、ニオブがドープされた酸化チタン等の透明導電性金属酸化物等、金、銀、アルミニウム、インジウム、白金、カーボン(カーボンブラック、グラファイト、ガラス炭素、アモルファス炭素、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンホイスカー、カーボンナノチューブ、フラーレン)などが挙げられる。
【0026】
光透過が可能となるように、第1導電層または第2導電層の少なくとも一方は透明の材料からなることが好ましい。透明の材料として、例えば、酸化スズ等により構成されるか、不透明材料(例えば、アルミニウム等の金属材料)を薄膜にして光透過性を有するものが挙げられる。ただし、後述の増感色素に実効的な感度を有する波長の光を実質的に透過するものであればよく、必ずしも全ての光に対して透過性を有する必要はない。
【0027】
光透過性が必要ない側の導電層は、不透明材料を用いた場合でも必ずしも光透過性を有する膜厚の薄膜とする必要はない。そのため、白金や各種カーボン等、導電性の観点より任意の膜厚で作製することが可能であり、上述のカーボン中に白金粒等を混入させたものも使用できる。
【0028】
特に、隣接する単位セルの多孔性光電変換層同士がオーバーラップする部分の第2導電層は、光透過が可能となる透明材料であることが好ましい。具体的には、透過率が少なくとも50%以上あることが好ましい。後述の多孔性光電変換層のヘイズ率が50%以上であることを考慮すると、第2導電層の透過率が50%以上あれば、隣接する単位セルの多孔性光電変換層同士が重なった部分における第2支持体側に配置する多孔性光電変換層でも入射光が有効に使えるため、電流値がさらに増加するものである。なお、多孔性光電変換層のヘイズ率の制御としては、多孔性光電変換層を構成している微粒子の粒径を少なくとも2種類以上で構成させることにより行うことができる。
【0029】
また、この部分の第2導電層は、本発明の構造上、例えば、単位セル2の多孔性光電変換層と単位セル1の第2導電層が接触しており、単位セル2の多孔性光電変換層中には、後述のキャリア輸送層が充填されている。単位セル2の多孔性光電変換層で発生した電子が第1導電層に流入し、一方、第2導電層から流入した電子がキャリア輸送層を介して単位セル2の多孔性光電変換層に移動するという流れが正常な過程である。しかし、この電子が隣接する別の単位セルである単位セル1の第2導電層に移動することにより、電子のショートカットサイクルが発生し、効率を低下させる要因となる。そのため、単位セル1の第2導電層と単位セル2の多孔性光電変換層の間に、キャリア輸送材料が混入しない緻密な膜を設置することが好ましい。
【0030】
緻密な膜の材料としては、絶縁性を有する材料であれば問題はなく、後述の多孔性絶縁層と同様な材料が挙げられる。一方、第1導電層と同等のものとしてもよい。従って、光透過性の観点および電子のショートカットサイクルの観点を同時に満たす材料としては、フッ素がドープされた酸化スズ、ITO(インジウム−スズ複合酸化物)、ボロン、ガリウムまたはアルミニウムがドープされた酸化亜鉛、ニオブがドープされた酸化チタン等の透明導電性金属酸化物等が挙げられ、中でもフッ素がドープされた酸化スズが好ましい。
【0031】
多孔性光電変換層は、半導体から構成され、その形態は、粒子状、膜状等種々な形態のものを用いることができるが、膜状の形態であることが望ましい。多孔性光電変換層を構成する材料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウムなどの公知の半導体の1種または2種以上を用いることができる。なかでも、変換効率、安定性、安全性の点から酸化チタンまたは酸化亜鉛が好ましい。
【0032】
膜状の多孔性光電変換層を基板上に形成する方法としては、公知の種々の方法を使用することができる。具体的には、スクリーン印刷法、インクジェット法等の基板上に半導体粒子を含有する懸濁液を塗布・焼成する方法等が挙げられるが、厚膜化や製造コストの観点より、懸濁液を用いたスクリーン印刷法が好ましい。
【0033】
多孔性光電変換層の膜厚は、特に限定されるものではないが、透過性、変換効率等の観点より、0.5〜20μm程度が好ましい。多孔性光電変換層は、その材料、形成方法等によって異なるが、その端部は、支持体の表面に対してほぼ垂直であってもよいが、支持体表面と多孔性光電変換層との接触角(図1中のX)が30度以下程度の傾斜を有するように配置していることが適当である。
【0034】
なお、さらに変換効率を向上させるためには、後述する色素を多孔性光電変換層に、より多く吸着させることが必要である。このために、膜状の多孔性光電変換層は比表面積が大きなものが好ましく、10m2/g〜200m2/g程度が好ましい。本明細書において、比表面積は、BET吸着法により測定した値を使用する。
【0035】
上述の半導体粒子としては、市販されているもののうち適当な平均粒径、例えば1nm〜500nm程度の平均粒径を有する単一又は化合物半導体の粒子等が挙げられる。本明細書において、平均粒径は約20nmであり、SEM観察により測定した値である。また、この半導体粒子を懸濁するために使用される溶媒は、エチレングリコールモノメチルエーテル等のグライム系溶媒、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、イソプロピルアルコール/トルエン等の混合溶媒、水等が挙げられる。
【0036】
上述の多孔性光電変換層の乾燥及び焼成は、使用する基板や半導体粒子の種類により、温度、時間、雰囲気等を適宜調整することも必要になる。例えば、大気下または不活性ガス雰囲気下、50〜800℃程度の範囲内で、10秒〜12時間程度行うことができる。この乾燥及び焼成は、単一の温度で1回又は温度を変化させて2回以上行うことができる。
【0037】
形成された多孔性光電変換層のヘイズ率は少なくとも50%以上であることが好ましい。色素増感型太陽電池は、多孔性光電変換層を形成している微粒子上に後述の色素を吸着させ光電変換を行っているため、入射光を有効に利用するには、多孔性光電変換層において、入射光が散乱することが好ましい。そのため、多孔性光電変換層のヘイズ率は少なくとも50%以上、70%以上であることがさらに好ましい。これにより、重なり合った部分の第2導電層側に位置する多孔性光電変換層に対する入射光を増大させることができる。つまり、多孔性光電変換層が重なり合った部分において、第2導電層の光透過率に比例して、第2導電層側に位置する多孔性光電変換層の入射光量が減るため、光電変換効率が低下するが、ヘイズ率が50%以上の多孔性光電変換層にすることにより、光電変換効率の低下が低減できる。
【0038】
さらに、多孔性光電変換層が重なり合っている部分の第2導電層が光透過性の高い材料にて構成させることを特徴としており、第2導電層側の多孔性光電変換層への光入射量が増大するため、光電変換効率がさらに向上する。また、上述の第2導電層の透過率が50%以下であっても、ヘイズ率が50%以上であれば、基本的には単位セル1の多孔性光電変換層と単位セル2の多孔性光電変換層の重なった部分の単位セル2の多孔性光電変換層にも入射光が届くため、電流値の増加につながる。
【0039】
多孔性光電変換層に吸着して光増感剤として機能する色素としては、種々の可視光領域および/または赤外光領域に吸収をもつものであることが好ましい。多孔性光電変換層に色素を強固に吸着させるためには、色素分子中にカルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等のインターロック基を有するものが好ましく、これらの中でも、カルボン酸基およびカルボン酸無水基がより好ましい。なお、インターロック基は、励起状態の色素と多孔性光電変換層の伝導帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供するものである。
【0040】
これらインターロック基を含有する色素として、例えば、ルテニウムビピリジン系色素、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポリフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ベリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素等が挙げられる。
【0041】
色素を吸着させた多孔性光電変換層の作製方法としては、例えば導電性支持体に形成された多孔性光電変換層を、色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に浸漬する方法が挙げられる。
【0042】
色素を溶解させる溶媒としては、色素を溶解するものであればよく、具体的には、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等の窒素化合物類、クロロホルム等のハロゲン化脂肪族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル等のエステル類、水などが挙げられる。これらの溶剤は2種類以上を混合して用いることもできる。
【0043】
溶液中の色素濃度は、使用する色素および溶剤の種類により適宜調整することができるが、吸着機能を向上させるためにはできるだけ高濃度である方が好ましく、例えば、5×10−4モル/リットル以上であればよい。
【0044】
多孔性光電変換層と第2導電層との間に充填させるキャリア輸送層は、電子、ホール、イオンを輸送できる導電性材料から構成される。例えば、ポリカルバゾール等のホール輸送材、テトラニトロフロオルレノン等の電子輸送材、ポリロール等の導電性ポリマー、液体電解質、高分子電解質等のイオン導電体、ヨウ化銅、チオシアン酸銅等のp型半導体が挙げられる。
【0045】
上記の導電性材料の中でもイオン導電体が好ましく、酸化還元性電解質を含む液体電解質が特に好ましい。このような酸化還元性電解質としては、一般に電池や太陽電池などにおいて使用することができるものであれば特に限定されない。
具体的には、LiI、NaI、KI、CaI2等の金属ヨウ化物とヨウ素の組み合わせ、およびLiBr、NaBr、KBr、CaBr2等の金属臭化物と臭素の組み合わせが好ましく、この中でも、LiIとヨウ素の組み合わせが好ましい。
【0046】
また、溶剤としては、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、アセトニトリル等のニトリル化合物、エタノール等のアルコール類、その他、水や非プロトン極性物質等が挙げられるが、その中でも、カーボネート化合物やニトリル化合物が好ましい。これらの溶剤は2種類以上を混合して用いることもできる。
電解質濃度としては、0.1〜1.5モル/リットルの範囲が挙げられるが、この中で、0.1〜0.7モル/リットルが好ましい。
【0047】
キャリア輸送層は、多孔性光電変換層上に絶縁性の多孔質層を形成しその中に形成してもよい。固体キャリア輸送層を用いる場合、その上に第2導電層を形成させることはできるが、液体および液体を含むキャリア輸送層を用いる場合はその上に第2導電層を形成させることが困難である。その場合、上述のように第2支持体上に第2導電層を形成させるが、隣り合う単位素子の間隔が小さくなれば、第2導電層が形成された第2支持体を重ね合わせるには精度が必要となる。このような場合、多孔性光電変換層上に絶縁性多孔質層を形成し、その中にキャリア輸送層を形成させることにより、精度良く集積構造を形成させることができる。
【0048】
絶縁性多孔質層の材料としては、絶縁性材料であれば問題はなく、酸化ジルコニア、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ボロンなどが挙げられる。作製方法もキャリア輸送工程に影響を及ぼさない形状を作製できればよく、多孔性光電変換層を形成させる方法と同様な手法が用いられる。特に、微粒子を含有する懸濁液を塗布する方法としてスクリーン印刷法が好ましい。
【0049】
また、本発明においては、第1支持体と第2支持体との間であって、隣接する光電変換素子の第2導電層間に絶縁層が配置していることが好ましい。これにより、隣接する単位セルにおいて、第2導電層の短絡を防止することができる。絶縁層の材料は、絶縁性材料であれば問題はなく、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0050】
以下に、本発明の色素増感太陽電池モジュール及びその製造方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0051】
実施の形態1:色素増感型太陽電池および太陽電池モジュール
本発明の太陽電池モジュールは、図1に示すように、複数の単位セルが、第1支持体10と第2支持体11とに挟持されて、集積化されて構成される。
単位セル1は、第1支持体10上に、第1導電層111、多孔性光電変換層112、多孔性絶縁層113、第2導電層114、絶縁層115が積層されて構成される。単位セル2は、第1導電層121、多孔性光電変換層122、多孔性絶縁層123、第2導電層124、絶縁層125が積層されて構成される。単位セル3は、第1導電層131、多孔性光電変換層132、多孔性絶縁層133、第2導電層134、絶縁層(図示せず)が積層されて構成される。これら単位セルは、直列接続されている。
【0052】
図2に集積化された色素増感型太陽電池モジュールの接続部分を示す。図中、20は第1支持体であり、単位セルとして1、2が直列接続された色素増感型太陽電池であり、単位セル1は、第1導電層211、多孔性光電変換層212、多孔性絶縁層213、第2導電層214が積層されて構成され、単位セル2は、第1導電層221、多孔性光電変換層222、多孔性絶縁層223が積層されている。
【0053】
多孔性光電変換層212、222は10μm以上の膜厚が好ましく、多孔性光電変換層212、222の縁は傾斜を生じる。多孔性絶縁層および第2導電層も同様な形状を示す。
スクリーン印刷法により塗布した多孔性光電変換層212、222の端部では傾斜をともなって膜厚が漸減していく縁なまりと呼ぶ部分がある。ここで、多孔性光電変換層212の膜厚を15μm、膜の縁なまりが250μmであり、キャリア輸送層が形成された多孔性絶縁層213および第2導電層214も同様な縁なまりがあるとする。各層の傾斜角度は約3.5度となる。第1導電層のパターン間隔は約333μm、第1導電層と第2導電層の接触長さ(図2中Aは83μm)となる。
【0054】
図3(a)に従来技術による単位セル間の接続部、図3(b)に本発明によるものを示す。
図3(a)では、単位セル1、2が直列接続されており、30aは第1支持体、単位セル1として、311aは第1導電層、312aは多孔性光電変換層、313aは多孔性絶縁層、314aは第2導電層、単位セル2として、321aは第1導電層、322aは多孔性光電変換層、323aは多孔性絶縁層、324aは第2導電層を表す。
図3(b)では、単位セル1、2が直列接続されており、30bは第1支持体、単位セル1として、311bは第1導電層、312bは多孔性光電変換層、313bは多孔性絶縁層、314bは第2導電層、単位セル2として、321bは第1導電層、322bは多孔性光電変換層、323bは多孔性絶縁層、324bは第2導電層を表す。
【0055】
図3(a)の従来技術では、多孔性光電変換層の接触を避けるため、多孔性光電変換層は312aと323aになる。この場合、スクリーン印刷の印刷マージンを50μmと考えると、多孔性絶縁層313aと第1支持体30aの接触長さは、約83μm、第2導電層314aと第1支持体30aとの接触長さは、約83μmとなる。従って、各層を精密な印刷を行っても、多孔性光電変換層312aと322aの間隔(パターニング間隔)は少なくとも約220μmは必要となる。
【0056】
一方、図3(b)の本発明では、多孔性光電変換層は312bと322bとなるため、実質上の多孔性光電変換層のパターニング間隔はなくなり、集積度は飛躍的に向上できる。
【0057】
多孔性光電変換層322bは第1支持体から光入射する場合、少なくとも多孔性光電変換層322bが形成される部分の多孔性絶縁層と第2導電層は光透過性があるものが好ましい。従って、多孔性絶縁層は酸化珪素が好ましい。また、第2導電層は酸化スズなどが望ましい。また、絶縁性多孔質層および第2導電層の光透過性が悪い場合でも、多孔性光電変換層のヘイズ率が50%以上であれば、入射光は多孔性光電変換層Bにも入り、光電変換が行われる。
【0058】
実施の形態2:色素増感型太陽電池モジュールの製造方法
第1支持体10として、100mm×100mmの日本板ガラス社製のSnO2付きガラス基板を用いた(第1導電層111、121、131=フッ素ドープ酸化スズ)。
この第1支持体10は、例えば、以下のように作製する。
厚さ4mm程度のガラス基板の片面に、900nm程度のSnO2を、スパッタ法を用いて成膜して、第1導電層を形成する。なお、ガラス基板およびSnO2は450℃以上の耐熱性を有するものである。次に、成膜したSnO2を、YAGレーザー等をその上に照射し、蒸発させることによりパターニングする。第1導電層のパターンは、第1導電層が後述する第2導電層と部分的に接触して、複数の単位セルが直列接続させるように行われるのが好ましい。
【0059】
次に、金属酸化物であるTiO2粉末に溶媒、バインダーを混ぜてスラリー状あるいはペースト状とする。これを、別途パターン形成を行ったスクリーン版を用いて、第1導電層の所定の位置にスクリーン印刷し、多孔性光電変換層112を作製する。その後、多孔性光電変換層112のレベリングを行った後、80℃のオーブン中で乾燥させる。
【0060】
具体的には、酸化チタンからなる多孔性光電変換層112、122、132は、下記の酸化チタンペーストの作製手法により作製したものを使用し、スクリーン印刷機(ニューロング精密工業社製、LS−150)にて作製を行った。
酸化チタン粒子の作製方法として、チタンイソプロポキシド(キシダ化学株式会社製)125mlを0.1Mの硝酸水溶液(キシダ化学株式会社製)750mLに滴下し加水分解をさせ、80℃で8時間加熱することにより、ゾル液の作製を行った。その後、チタン製オートクレーブにて230℃で11時間、粒子成長させ、超音波分散を30分間行うことにより、平均一次粒径15nmの酸化チタン粒子を含むコロイド溶液の作製を行った。(この工程にて作製された酸化チタン粒子を酸化チタンAとする。)
【0061】
そのコロイド溶液をエバポレーターにて、酸化チタンが15wt%の濃度になるまでゆっくりと濃縮を行い、市販の酸化チタン粒子(酸化チタンB)(日本アエロジル株式会社製、商品名P−25、アナターゼ型:ルチル型(7:3)混合、平均一次粒径20nm)を添加し、コロイド溶液の2倍のエタノールを加え、5000rpmにて遠心分離を行った。この工程により作製した酸化チタン粒子を洗浄した後、エチルセルロース(キシダ化学株式会社製)とテルピネオール(キシダ化学株式会社製)を無水エタノールに溶解させたものを加え、攪拌することにより酸化チタン粒子を分散させた。その後、40mbarの真空下、50℃にてエタノールを蒸発させて酸化チタンペーストの作製を行った。なお、最終的な組成として、酸化チタン固体濃度20wt%、エチルセルロース10wt%、テルピネオール64wt%となるように濃度調整を行った。
【0062】
次いで、酸化アルミニウム粉末に溶媒等を混ぜてスラリー状あるいはペースト状とし、多孔性光電変換層112と同様に多孔性絶縁層113を作製する。
具体的には、多孔性絶縁層113、123、133の材料としては、酸化アルミニウムを使用して、次のようにして酸化アルミニウムペーストを作製した。先ず、酸化アルミニウム粒子(直径500μm)を用意し、界面活性剤(キシダ化学社製、商品名:Triton−X)、ジルコニアビーズ(直径3mm)およびジエチレングリコールモノメチルエーテルと混合させ、ペイントシェーカーにより分散させることで酸化アルミニウムペーストを調整した。重量混合比は酸化アルミニウム濃度30%、Triton−X濃度1%に調整した。分散条件は、ジルコニアビーズを溶媒40mlに対して100g加えた上で、ペイントシェーカーにより分散時間を2時間とした。
【0063】
さらに、同様にカーボン粉末および白金粒子を用いて第2導電層114を作製する。
具体的には、第2導電層114、124、134の主材料としては、カーボンと白金を用いた。次のようにしてカーボンペーストを作製した。まず、カーボン粒子と白金粒子を用意し、重量比7:3で混合し、バインダーとしてPVDF系ポリマー、溶媒としてn−メチル−2−ピロリドンを混合し、その中に混合粒子を入れ混煉機で分散させることによりカーボンペーストを調製した。重量混合比はカーボン50%、バインダー濃度10%とし、混煉機による分散時間を2時間とした。
【0064】
上述の工程と同様な工程により、単位セル2、3を形成させた後、500℃の空気中で焼成することにより各層を焼結する。ペーストは重ね塗りしても積層構造を保持できる適度の粘性があるものを使用することが好ましい。
【0065】
得られた基板を、色素溶液中に浸漬し、約2時間還流することにより多孔性光電変換層に色素を吸着させる。
【0066】
具体的には、色素は、下記(1)
【0067】
【化1】
のルテニウム色素(Solaronix社製、商品名Ruthenium535、λmax=540nm)を用いた。無水エタノールに濃度4×10−4モル/リットルで溶解させ、吸着用色素溶液を作製し、この吸着用色素溶液および上述で得られた積層した基板を容器にそれぞれ入れ、約30分間還流させることにより色素を吸着させた。その後、無水エタノールで数回洗浄し約60℃で約20分間乾燥させた。
なお、酸化アルミニウムにも色素は吸着するが、その吸着量は少なく、太陽電池特性には影響はない。
【0068】
その後、エポキシ樹脂を用いて絶縁層を形成させ、キャリア輸送層として、高分子電解質形成用のモノマーを全体に注入し、90℃で2時間、重合させる。
高分子電解質中の電解液は、γ―ブチロラクトン(キシダ化学社製)とエチレンカーボネート(キシダ化学社製)の混合溶媒(混合比は、γ―ブチロラクトン:エチレンカーボネート=7:3(容積比))に、ジメチルプロピルイミダゾリウムアイオダイド0.6モル/リットル、リチウムアイオダイド0.1モル/リットル、ヨウ素0.1モル/リットルを溶解させたものを用いた。
【0069】
高分子材料としては、化合物Aとして下記の合成方法1により得られた化合物、化合物Bとしてジエチルトルエンジアミンを用いた(混合比は、化合物A:化合物B=13:1(重量比))。
【0070】
(合成方法1)
反応容器中にポリテトラメチレングリコール(三菱化成工業社製、商品名PTMG2000)100重量部に対して、トリレンジイソシアネート18重量部と触媒としてのジブチルチンジラウレート0.05重量部を加え、80℃で反応を行い、分子量2350の化合物Aを作製した。
第2支持体11として、PET−アルミニウム−PETが積層されたフィルムをEVAシート(エチルビニルアセテート)を用いて、約100℃でラミネートすることにより集積化された色素増感型太陽電池モジュールが得られる。
なお、高分子電解質を用いる場合、重合を行う前に第2支持体11を設置し、重合を行ってもよい。
【0071】
実施の形態3:太陽電池モジュールの評価
7個の単位セルを直列に接続した集積化された種々の色素増感型太陽電池モジュールを作製した。その作製工程を以下に示す。
なお、以下の実施例および比較例については、本発明の集積化された色素増感型太陽電池概略断面図である図4(a)、(b)に基づいて説明する。
【0072】
図4中、40は第1支持体、41は第2支持体を示しており、単位セルとして1、2が直列接続された色素増感型太陽電池モジュール概略図の断面図である。セル1として、411は第1導電層、412は多孔性光電変換層、413は多孔性絶縁層、414は第2導電層、415は絶縁層、単位セル2として、421は第1導電層、422は多孔性光電変換層、423は多孔性絶縁層、424は第2導電層である。
【0073】
【実施例】
(実施例1)
第1支持体40として、10cm×10cm×4mmのサイズのガラス基板表面に膜厚900nmのSnO2膜を形成したSnO2付きガラス基板を用いた(日本板ガラス製、第1導電層411、421=フッ素ドープ酸化スズ)。幅1cm、隣り合うSnO2との間隔を500μmの短冊状になるように、SnO2にレーザー光(YAGレーザー・基本波長・1.06μm)を照射しSnO2を蒸発させることによりパターニングを行った。
【0074】
次に、スクリーン印刷機により、酸化チタンペースト(酸化チタンAに対して酸化チタンBを10wt%添加したもの)を1.05cm×8.05cm、膜厚15μmとなるように単位セル1の多孔性光電変換層412を単位セル1の第1導電層412上に印刷した。その結果、単位セル1の多孔性光電変換層412の膜なまり長さが250μmであった。(即ち、単位セル1の多孔性光電変換層412の合計幅1.05cm)。単位セル1の多孔性光電変換層412のレベリングを行ってから、80℃で30分乾燥を行った。なお、多孔性光電変換層のヘイズ率は87%であった。
【0075】
その後、酸化アルミペースト(単位セル1の多孔性絶縁層413形成用)およびカーボンペースト(単位セル1の第2導電層414形成用)を図4(a)に示した順に積層されるようにスクリーン印刷を行った。なお、膜厚は、絶縁性多孔質膜A5、5μm、第2導電層A7(光透過性0%)、膜厚5μmとした。
【0076】
次に、同様な作製工程にて、図4(b)に示すように、単位セル2の多孔性光電変換層422と単位セル2の絶縁性多孔質膜423、単位セル2の第2導電層424を作製した後、約500℃、1.5時間、酸素雰囲気中で焼成させることにより、各層を同時に焼結を行うことで、それぞれの多孔性光電変換層、多孔性絶縁層、第2導電層A、Bを形成した。
上記工程を合計7回繰り返すことにより、7個の単位セルが直列するように各構成を形成した。
【0077】
次に、色素をそれぞれの多孔性光電変換層に吸着させた後、絶縁層415として、ウレタン樹脂を形成させた。さらに、高分子電解質をそれぞれの多孔性光電変換層および多孔性絶縁層中に形成させ、PET−アルミニウム−PETの積層構造を持つ第2支持体41を設置することにより、集積化された色素増感型太陽電池モジュールの作製を行った。
【0078】
上記の工程にて作製された色素増感型太陽電池モジュールは、単位素子が7個直列に接続されたものであり、その有効受光面積は61.5825cm2であった。この太陽電池をAM1.5疑似太陽光照射下の動作特性を調べた結果、短絡電流密度13.4mA/cm2、開放電圧値4.48V、FF0.56、変換効率4.8%であった。これをモジュール効率に換算すると、変換効率3.0%である。
ここで、モジュール効率とは、セル有効受光面積基準ではなく、ガラスの大きさ(10cm×10cm)を基準とした変換効率とする。
【0079】
(実施例2)
単位セル1の多孔性光電変換層412と単位セル2の多孔性光電変換層421の重なり合う部分の第2導電層と単位セル2の多孔性光電変換層421の間の多孔性絶縁層413として酸化アルミニウム絶縁物をコーティングさせたこと以外は、実施例1に準じて作製を行った。なお、作製方法はスクリーン印刷法を用いた。
【0080】
上記の工程にて作製された色素増感型太陽電池モジュールは、単位素子が7個直列に接続されたものであり、その有効受光面積は61.5825cm2であった。この太陽電池をAM1.5疑似太陽光照射下の動作特性を調べた結果、短絡電流密度14.0mA/cm2、開放電圧値4.55V、FF0.57、変換効率5.2%であった。これをモジュール効率に換算すると、変換効率3.2%である。
【0081】
(実施例3)
多孔性光電変換層Aと多孔性光電変換層Bの重なり合う部分の第2導電層を蒸着法にてフッ素がドープされた酸化スズ(光透過性80%)にて構成させたこと以外は、実施例1に準じて作製を行った。
上記の工程にて作製された色素増感型太陽電池モジュールは、単位素子が7個直列に接続されたものであり、その有効受光面積は61.5825cm2であった。この太陽電池をAM1.5疑似太陽光照射下の動作特性を調べた結果、短絡電流密度14.2mA/cm2、開放電圧値4.56V、FF0.57、変換効率5.3%であった。これをモジュール効率に換算すると、変換効率3.2%である。
【0082】
(比較例1)
ヘイズ率が50%以下の多孔性光電変換層AおよびBを使用した場合の色素増感型太陽電池モジュールの作製を行った。ここで、使用した多孔性光電変換層用の酸化チタンペーストは、上述の酸化チタンB(P−25)を添加しないものを使用した。その他の材料および作製工程については実施例1に準じて行った。なお、この時、多孔性光電変換層のヘイズ率は10%であった。
作製した従来技術型の色素増感型太陽電池モジュールは、その有効受光面積は61.5825cm2であり、AM1.5疑似太陽光照射下の動作特性を調べた結果、短絡電流密度12.5mA/cm2、開放電圧値4.55V、FF0.54、変換効率4.4%であった。これをモジュール効率に換算すると、変換効率2.7%である。
【0083】
(比較例2)
比較例として、従来技術構造を用いた集積化した色素増感型太陽電池の作製を行った。用いた構造としては、図5に示す構造とし、その他の材料および作製工程については実施例1に準じて行った。
【0084】
作製した従来技術型の色素増感型太陽電池モジュールは、受光面積は59.1675cm2であり、AM1.5疑似太陽光照射下の動作特性を調べた結果、短絡電流密度11.0mA/cm2、開放電圧値4.55V、FF0.43、変換効率3.1%であった。これをモジュール効率に換算すると、変換効率1.8%である。
以上のように、実施例の集積化された色素増感型太陽電池モジュールは、本発明の構成を有することで、変換効率が向上した。
【0085】
【発明の効果】
本発明によれば、同じ面積の太陽電池モジュールにより、より変換効率が向上した色素増感型太陽電池モジュールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの概略断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】本発明の太陽電池モジュールと従来の技術太陽電池との比較を説明するための概略断面図である。
【図4】本発明の色素増感型太陽電池モジュールの製造方法を説明するための概略断面工程図である。
【図5】従来の色素増感型太陽電池の概略断面図である。
【符号の説明】
10、20、30a、30b、40 第1支持体
11、41 第2支持体
111、121、131、211、221、311a、321a、311b、321b、411、421 第1導電層
112、122、132、212、222、312a、322a、312b、322b、412、422 多孔性光電変換層
113、123、133、213、213、313a、323a、313b、323b、413、423 多孔性絶縁層
114、124、134、214、314a、324a、314b、324b、414、424 第2導電層
115、125、415 絶縁層
Claims (12)
- 第1支持体と第2支持体との間に、第1導電層、色素を吸着させた多孔性光電変換層、キャリア輸送層、第2導電層がこの順に積層されてなる複数の光電変換素子を電気的に直列接続させて配置した色素増感型太陽電池モジュールであって、
前記多孔性光電変換層が、隣接する光電変換素子の多孔性光電変換層と分離されているが、その一部とオーバーラップするように配置されてなることを特徴とする色素増感型太陽電池モジュール。 - 多孔性光電変換層のヘイズ率が50%以上である請求項1に記載の色素増感型太陽電池モジュール。
- 第2導電層が、透過率50%以上の透明導電膜で構成されている請求項1又は2に記載の色素増感型太陽電池モジュール。
- 透明導電膜が、少なくとも酸化スズを含む請求項3に記載の色素増感型太陽電池モジュール。
- 第1支持体と第2支持体との間であって、第2導電層と隣接する光電変換素子の第2導電層間に絶縁層を配置してなる請求項1〜4のいずれか一つに記載の色素増感型太陽電池モジュール。
- 多孔性光電変換層および/又は第2導電層が、スクリーン印刷により形成された層である請求項1〜5のいずれか一つに記載の色素増感型太陽電池モジュール。
- さらに、多孔性光電変換層と第2導電層との間に多孔性絶縁層が配置されてなる請求項1〜6のいずれか一つに記載の色素増感型太陽電池モジュール。
- 多孔性絶縁層がスクリーン印刷により形成された層である請求項7に記載の色素増感型太陽電池モジュール。
- 多孔性光電変換層、多孔性絶縁層および第2導電層が、それぞれのペーストを積層させた後、同時に焼成させることにより作製されたものである請求項7又は8に記載の色素増感型太陽電池モジュール。
- 第1支持体と第2支持体との間に、第1導電層、色素を吸着させた多孔性光電変換層、キャリア輸送層、第2導電層がこの順に積層されてなる複数の光電変換素子を電気的に直列接続させて配置した色素増感型太陽電池モジュールの製造に際して、
多孔性光電変換層および/又は第2導電層を、スクリーン印刷により形成する請求項1に記載の色素増感型太陽電池モジュールの製造方法。 - さらに、多孔性光電変換層と第2導電層との間に、多孔性絶縁層をスクリーン印刷により形成する請求項10に記載の方法。
- 多孔性光電変換層、多孔性絶縁層および第2導電層を、それぞれのペーストを積層した後、同時に焼成する請求項10又は11に記載の方法。
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