以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
〔実施形態1〕
図面を参照して、実施形態1に係るコンバインについて説明する。図1は、実施形態1に係るコンバインの概略構成を示す側面図である。図2は、実施形態1に係るコンバインの概略構成を示す平面図である。図3は、実施形態1に係るコンバインの動力伝達経路の概略構成を示す図である。図4は、実施形態1に係るコンバインの高さ検出装置の構成を示す側面図である。図5は、実施形態1に係るコンバインの高さ検出装置が取り付けられた分草体などの平面図である。図6は、図4に示す高さ検出装置のユニット本体が上昇限界位置に位置付けられた状態を示す側面図である。図7は、実施形態1に係るコンバインの制御装置の概略構成を示すブロック図である。図8は、実施形態1に係るコンバインの制御装置による加重移動平均処理の一例を示す図表である。図9は、実施形態1に係るコンバインの制御装置による加重移動平均処理の一例を示す図表である。図10は、実施形態1に係るコンバインの制御装置による加重移動平均処理の一例を示す図表である。図11は、倒伏速の変速ラインを示す図である。図12は、実施形態1に係るコンバインの表示手段に表示される画面の表示例を示す図である。図13は、実施形態1に係るコンバインの表示手段に表示される画面の表示例を示す図である。図14は、実施形態1に係るコンバインの表示手段に表示されるパターン設定画面の表示例を示す図である。
なお、以下の説明では、前後方向とは、図1に示すコンバイン1の前後方向であり、コンバイン1が直進する際の進行方向に対して平行となる方向である。また、車幅方向とは、図2に示すコンバイン1の車幅方向であり、水平面において、前後方向に対して直交する方向である。さらに、鉛直方向とは、前後方向と車幅方向とに直交する方向であり、水平面に対して直交する方向である。これらの前後方向、車幅方向および鉛直方向は、互いに直交する。なお、コンバイン1の直進方向に対して、コンバイン1が左旋回する際に内側となる車幅方向左側を左側、コンバイン1が左旋回する際に外側となる車幅方向右側を右側、直進方向前方を前方、直進方向後方を後方という。
図1に示すコンバイン1は、図2に示すエンジン30が発生する駆動力によって、自走しながら稲、麦等の穀稈を刈り取り、脱穀することが可能なコンバインである。コンバイン1は、図1および図2に示すように、機体フレーム10と、運転席20と、エンジン30と、走行装置40と、脱穀装置50と、グレンタンク60と、搬送装置70と、フィードチェーン駆動機構80と、刈取装置90と、高さ検出装置100と、制御装置200(図7参照)と、を含んで構成されている。
機体フレーム10は、コンバイン1の車体の枠状の構造部材を構成する。運転席20は、作業員が着座した状態で、運転操作や刈取操作などを行うための運転座席である。運転席20は、機体フレーム10の鉛直方向の上側に設けられており、キャビン21で覆われている。エンジン30は、コンバイン1で用いる駆動力の発生源であり、燃焼室で燃料を燃焼させることにより燃料のエネルギーを機械的仕事に変換して回転力として出力する熱機関である。エンジン30は、機体フレーム10上の前後方向の前方に搭載されており、運転席20の鉛直方向の下側に搭載されている。
走行装置40は、エンジン30からの駆動力によって、コンバイン1全体を走行させるものである。走行装置40は、機体フレーム10の鉛直方向の下側に設けられている。走行装置40は、クローラ41を備えている。クローラ41は、機体フレーム10の鉛直方向の下側において、車幅方向に間隔をおいて一対設けられている。つまり、走行装置40は、エンジン30から伝達される駆動力によりクローラ41が駆動することで、コンバイン1全体を前後方向に走行させる。
脱穀装置50は、刈り取られた穀稈を脱穀し、藁等の夾雑物と穀粒とを分離するものである。脱穀装置50によって穀粒が扱ぎ取られた穀稈(排藁)は、コンバイン1の前後方向の後方に配置された排藁切断機へ搬送され、排藁切断により切断された後、例えば圃場等に放出される。脱穀装置50は、刈取装置90の前後方向の後方で、グレンタンク60の車幅方向の左側に設けられている。脱穀装置50は、その上部に脱穀部51を備え、その下部に選別部52を備えている。脱穀部51は、エンジン30からの駆動力により搬送された穀稈を脱穀するものであり、刈取装置90が刈り取った穀稈から穀粒を切り離すものである。選別部52は、エンジン30からの駆動力により、脱穀部51で脱穀された穀稈の藁等の夾雑物と穀粒とを分離するものである。
グレンタンク60は、脱穀装置50の車幅方向の右側に設けられている。グレンタンク60は、脱穀装置50の選別部52が分離した穀粒を一時的に貯蔵するものである。グレンタンク60は、排出オーガー61を備えている。排出オーガー61は、エンジン30からの駆動力により、グレンタンク60内の穀粒を排出し、グレンタンク60の外部へ穀粒を排出させるものである。
搬送装置70は、刈取装置90の前後方向の後方で、キャビン21の左右方向の左側に設けられている。搬送装置70は、刈取装置90からフィードチェーン駆動機構80に向けて、刈取装置90により刈り取られた穀稈を搬送する装置である。
フィードチェーン駆動機構80は、搬送装置70の前後方向の後方で、グレンタンク60の車幅方向の左側に設けられている。フィードチェーン駆動機構80は、フィードチェーン81を回転駆動して、搬送装置70から脱穀装置50の脱穀部51に向けて、刈取装置90により刈り取られた穀稈を搬送するものである。
刈取装置90は、機体フレーム10の前部に設けられており、図示しない昇降シリンダにより鉛直方向に沿って昇降自在に設けられている。刈取装置90は、エンジン30からの駆動力により駆動して穀稈を刈り取る装置であって、圃場に植生する穀稈(植生穀稈)を分草し、倒伏している穀稈を引き起し、引き起した穀稈を切断する装置である。刈取装置90は、引起し装置91と、刈刃92と、分草フレーム93、94と、ステー95(図4参照)と、分草体96、97と、を備えている。
引起し装置91は、分草体96、97の前後方向の後方に設けられており、倒伏している穀稈を引起す装置である。引起し装置91は、引起しラグ91aを備えている。引起しラグ91aは、引起しケース911の車幅方向に突出し、鉛直方向の下側から上側に向けて駆動され、穀稈を引き起す。
刈刃92は、引起しラグ91aにより引起された穀稈を切断して刈り取るものである。刈刃92は、搬送装置70の鉛直方向の下側に設けられている。
分草フレーム93、94は、その前部で分草体96、97を支持するものであり、分草フレーム93に分草体96が支持され、分草フレーム94に分草体97が支持されている。分草フレーム93、94は、種々の部材を介して機体フレーム10等に連結され、固定されている。分草フレーム94は、前後方向において、機体フレーム10側から前方に向けて延在されており、前端部94a(図4参照)が高さ検出装置100の後述するユニット本体120の後部に対向している。前端部94aには、図4および図6に示すように、分草体97を支持するステー95が取り付けられている。つまり、分草フレーム94は、ステー95を介して分草体97を支持している。
分草体96、97は、圃場に植立する穀稈(植生穀稈)を、分草体96、97間に分離するものである。分草体96、97は、図2に示すように、車幅方向に間隔をおいて交互に複数設けられており、刈取装置90の下部に配置されている。分草体97は、分草フレーム94の前部に配置されている。分草体97は、図4および図6に示すように、分草体カバー971と、分草体プレート972と、を備えている。
分草体カバー971は、前後方向に延在されており、車幅方向の両端部が中央部よりも鉛直方向の下側に位置する樋状に形成されている。分草体カバー971は、図6に示すように、前後方向の前方側から後方側に向けて鉛直方向の上側に高くなり、前後方向の後端部の上面971aが前後方向に平行となる平坦に形成されている。分草体カバー971は、分草体プレート972の鉛直方向の上側に取り付けられている。
分草体プレート972は、図5および図6に示すように、鉛直方向に平行な平板状に形成されており、前後方向に延在されて形成されている。分草体プレート972は、前後方向の前方側から後方側に向けてしだいに鉛直方向の上側に高くなるように形成されている。分草体プレート972は、鉛直方向の上側に分草体カバー971が取り付けられている。分草体プレート972は、図4および図6に示すように、前後方向の前方側の鉛直方向の下端部が地面GLと対向する下面972aとなっている。分草体プレート972は、前後方向の中央部の鉛直方向の下側に後述するブラケット110が取り付けられている。
高さ検出装置100は、図2に示すように、コンバイン1の刈取装置90の前部に有する分草体97に設けられており、地面GLに対する刈取装置90の刈高さ(対地高さ)を検出する装置である。本実施形態では、高さ検出装置100は、複数の分草体96、97のうち、車幅方向の左側から二番目の分草体97、および車幅方向の右側から二番目の分草体97に取り付けられている。高さ検出装置100は、典型的には、車幅方向の両端の分草体96および中央の分草体97を除いて取り付けられていればよい。なお、本実施形態では、地面GLに対する刈取装置90の刈高さ(対地高さ)とは、地面GLと下面972aとの距離である。また、本実施形態では、下面972aが地面GLに接地する刈高さを原点(ゼロポイント)としており、下面972aが地面GLよりも高い状態(下面972aと地面GLとが離れている状態)を通常状態(プラス状態)であるとし、下面972aが地面GLよりも低い状態(下面972aがゼロポイントよりも低い状態)を突込み状態(マイナス状態)であるとする。また、刈取装置90において許容できる最低の刈高さを最低対地高さHとし、ゼロポイントを含むプラス状態であっても最低対地高さHよりも低い刈高さを突込み高さとする。最低対地高さHは、例えば図4に示す地面GLに対する下面972aの高さである。つまり、突込み高さは、例えば図4に示す地面GLに対する下面972aの高さを下回る高さである。なお、最低対地高さHは、例えばコンバイン1の実機を用いた試験に基づいて予め設定されていてもよいし、穀稈や圃場の状態に応じて作業員が予め設定してもよい。
ここで、コンバイン1の動力伝達経路の概略としては、例えば図3に示すように、エンジン30(図2参照)からの駆動力により駆動される油圧式無段変速機HSTと、油圧式無段変速機HSTからの駆動力で駆動される搬送装置70と、油圧式無段変速機HSTからの駆動力で駆動される刈刃92と、油圧式無段変速機HSTからの駆動力で駆動されるベルト式無段変速機CVTと、ベルト式無段変速機CVTからの駆動力で駆動される引起し装置91と、を含んでいる。油圧式無段変速機HSTおよびベルト式無段変速機CVTのそれぞれは、制御装置200により変速動作が制御される。
高さ検出装置100は、図4および図6に示すように、ブラケット110と、ユニット本体120と、検出手段130と、接地体140と、を含んで構成されている。
ブラケット110は、例えば溶接により、分草体プレート972に固定されている。ブラケット110は、固定部111と、ユニット取付部112と、補強部材113と、を備えている。
固定部111は、鉛直方向視において、車幅方向の中央部を前後方向の前方側に向けて屈曲させたV字状に形成されている。固定部111の前後方向の前端部は、溶接により分草体プレート972に固定されている。固定部111は、図5に示すように、一対の板状部材111a、111bを備えている。一対の板状部材111a、111bは、鉛直方向視において、板状部材111aと板状部材111bとが連なる前後方向の前端部から後方に向かうにしたがって、互いの車幅方向の間隔が拡がっている。一対の板状部材111a、111bは、鉛直方向視において、前後方向の先端同士が連なるV字状に形成されており、車幅方向視において、前後方向の後方に向かうにしたがって徐々に鉛直方向の上側に向かって形成されている。
ユニット取付部112は、図5に示すように、一対の板状部材111a、111bのうちの一方の板状部材111bから前後方向の後方に向けて、前後方向に沿って直線状に延在する平板状に形成されている。ユニット取付部112は、図4および図6に示すように、固定部111よりも地面GLから離れた高い位置に配置されている。ユニット取付部112には、ユニット本体120の後述する第1回転軸123が固定されている。ユニット取付部112の外側面112c(ユニット取付部112の車幅方向の左側の側面)は、ブラケット110の外側面に相当する。外側面112cには、ステー95の前端部95cが取り付けられている。
補強部材113は、図5に示すように、一対の板状部材111a、111bによって挟まれる三角形状の平板状に形成されている。補強部材113は、一対の板状部材111a、111bに挟まれた状態で、一対の板状部材111a、111bの鉛直方向の上端部同士を連結している。補強部材113は、その鉛直方向の上面が溶接により分草体プレート972に固定されている。
ユニット本体120は、図4および図6に示すように、ユニット取付部112に対して、第1回転軸123周りに回転自在に取り付けられている。本実施形態では、ユニット本体120は、図4に示す下降限界位置と図6に示す上昇限界位置とにわたって、ブラケット110に対して第1回転軸123周りに上下回転自在に取り付けられている。ユニット本体120は、下降限界位置から下側に向けて回転することが規制され、上昇限界位置から上側に向けて回転することが規制されている。ユニット本体120の下面120aには、前後方向の中央部に凹み120bが形成されている。ユニット本体120の鉛直方向の上端の前端部120fは、図6に示すように、分草体プレート972の前後方向の後端面972bと接触することによって、ユニット本体120が上昇限界位置から上側に向けて回転することを規制する。ユニット本体120の鉛直方向の上側(上面)は、ユニット本体120が上昇限界位置に位置付けられた状態で、分草体カバー971の上面971aよりも鉛直方向の下側に位置する。ユニット本体120の車幅方向の左側の外側面120dは、ユニット本体120が下降限界位置と上昇限界位置とにわたって第1回転軸123周りに回転する際に、車幅方向において、ステー95の前端部95cと重なる。ユニット本体120の前後方向の後端部120eは、ユニット本体120が下降限界位置に位置付けられた状態で、車幅方向において、ステー95の中央部95bと重なる。
ユニット本体120は、図4および図5に示すように、ケース体121と、蓋体122と、第1回転軸123と、第2回転軸124と、を備えている。
ケース体121は、金属製の鋳物で構成されており、車幅方向の右側に開口部を有し、車幅方向の幅よりも前後方向の幅が大きい扁平な箱状に形成されている。
蓋体122は、図5に示すように、ケース体121の車幅方向の右側の開口部に対応し、ケース体121の形状に対応する平板状に形成されている。蓋体122は、ケース体121の車幅方向の右側に取り付けられることで、ケース体121の開口部を塞ぐ。
第1回転軸123は、図4および図6に示すように、下降限界位置と上昇限界位置とにわたって、ブラケット110に対してユニット本体120を上下回転自在に回転させるものである。第1回転軸123は、軸線方向が車幅方向に対して平行であり、車幅方向に対して平行に延在されている。第1回転軸123は、車幅方向の左側の端部がユニット取付部112、すなわちブラケット110の前後方向の後端部に固定されており、車幅方向の右側の端部がユニット本体120内に回転自在に挿通されている。つまり、第1回転軸123は、ユニット本体120内に回転自在に挿通されることで、第1回転軸123周りに回転自在にユニット本体120をブラケット110に取り付ける。第1回転軸123は、図示しない付勢手段により、第1回転軸123周りにユニット本体120を上昇限界位置側から下降限界位置側に向けて回転するように付勢している。第1回転軸123は、図示しない規制手段により、ユニット本体120が下降限界位置よりも鉛直方向の下側に向けて回転することを規制する。
第2回転軸124は、軸線方向が車幅方向に対して平行であり、車幅方向に対して平行に延在されている。第2回転軸124は、車幅方向の左側の端部が接地体140の後述する取付部142に固定されており、車幅方向の右側の端部がユニット本体120内に回転自在に挿通されている。つまり、第2回転軸124は、ユニット本体120内に回転自在に挿通されることで、第2回転軸124周りに回転自在に接地体140をユニット本体120に取り付ける。第2回転軸124は、図示しない付勢手段により、第2回転軸124周りに接地体140を前後方向の前方側から後方側に向けて回転するように付勢している。第2回転軸124は、図示しない規制手段により、ユニット本体120が下降限界位置に位置付けられて接地体140の上端部141bと下端部141cとが鉛直方向に並ぶ位置(図4に示す)よりも、下端部141cが前後方向の後方に向かう方向に、接地体140が回転することを規制する。
検出手段130は、第1回転軸123周りのユニット本体120の回転位置を検出する検出装置であり、例えばロータリーポテンショメータである。検出手段130は、ユニット本体120の第1回転軸123周りの回転位置を検出する。検出手段130は、ケース体121に設けられたセンサーカバー131で覆われている。
接地体140は、図4および図6に示すように、ユニット本体120に対して第2回転軸124周りに回転自在に取り付けられており、地面GLに接触することが可能である。接地体140は、地面GLに接触する帯状部141と、この帯状部141の縁に連なる取付部142とで形成されている。
帯状部141は、図4に示すように、ユニット本体120が下降限界位置に位置付けられた状態で、中央部141aが上端部141bおよび下端部141cよりも前後方向の前方に位置するように、車幅方向視において、く字状に形成されている。中央部141aは、下端部141cが前後方向の前方に向かう方向に第2回転軸124周りに回転すると、中央部141aが凹み120bに当接(侵入)する。本実施形態では、中央部141aが接地体140の中央部に相当し、上端部141bが接地体140の上端部に相当し、下端部141cが接地体140の下端部に相当する。下端部141cは、水平方向の断面(前後方向の断面)が前後方向の前方に凸となるU字状に形成されている。
取付部142は、図4および図6に示すように、上端部141bの縁に連なっている。取付部142は、第2回転軸124に固定されている。このため、接地体140は、ユニット本体120に対して第2回転軸124周りに上下回転自在である。
制御装置200は、上記の脱穀装置50や刈取装置90などの動作を制御するものであり、刈取装置90の刈高さ(対地高さ)を制御するものである。制御装置200には、図7に示すように、刈取装置90と、刈取装置90の車幅方向の左側および右側の分草体97に取り付けられた高さ検出装置100、100と、油圧式無段変速機HST、ベルト式無段変速機CVTと、キャビン21内の運転席20の周囲に設けられた制御目標刈高さ設定手段(以下、単に「ダイヤル」と称する)22と、ダイヤル22と同様に運転席20の周囲に設けられた増減スイッチ23および表示手段24と、がそれぞれ電気的に接続されている。本実施形態では、制御装置200は、作業員がダイヤル22を操作して予め設定する制御目標刈高さに基づいて、刈取装置90の地面GLに対する刈高さを相対的に高くする高刈モード、または刈取装置90の地面GLに対する刈高さを相対的に低くする低刈モードに切り替えて、刈取装置90の刈高さを制御する。つまり、制御装置200による高刈モードまたは低刈モードへの切り替えは、ダイヤル22によって設定される制御目標刈高さに連動する。
ここで、ダイヤル22は、図2に示す運転席20に着座する作業員が回転操作により制御目標刈高さを入力するための入力装置であり、刈取装置90の刈高さ(対地高さ)を一定の高さに保つように制御するための制御目標刈高さを設定するための入力装置である。ダイヤル22は、その回転位置に対応する制御目標刈高さを制御装置200へ出力する。つまり、制御目標刈高さは、例えば刈り取る穀稈や圃場の状況に応じて、ダイヤル22を介して作業員により予め設定される。
増減スイッチ23は、運転席20に着座する作業員が押下操作によって、コンバイン1の車速に対して刈取装置90の刈取搬送速度または引起し速度を複数段で設定するための入力装置である。増減スイッチ23は、運転席20の周囲に配置された主変速レバーに設けられている。増減スイッチ23は、作業員により押下操作可能な増加ボタンまたは減少ボタンを備えている。増加ボタンは、作業員が刈取装置90の刈取搬送速度または引起し速度を増加させる指示を入力するためのボタンである。減少ボタンは、作業員が刈取装置90の刈取搬送速度または引起し速度を減少させる指示を入力するためのボタンである。
表示手段24は、運転席20に着座する作業員に対してコンバイン1の運転状況などを表示する液晶モニタ装置等の表示装置である。本実施形態では、表示手段24は、刈取装置90の自動下降制御が停止された場合、自動下降制御が停止されたことを表示し、刈取装置90の自動下降制御が再開された場合、自動下降制御が再開されたことを表示する。また、表示手段24は、コンバイン1の車速に対して刈取装置90の刈取搬送速度または引起し速度を複数段で設定するための設定画面G5、G21(図12、図14参照)を表示し、設定された刈取搬送速度または引起し速度を通常画面G1、G11〜G14(図12、図13参照)に表示する。
制御装置200は、高刈モードでは、予め設定された所定の走行距離を走行する間、または予め設定された所定の走行時間が経過する間に、複数(本実施形態では二つ)の高さ検出装置100が検出した複数の刈高さの検出値のうち、低いほうの検出値の最新の検出値側ほど重み付けを重くした加重移動平均値を算出し、算出した加重移動平均値に基づいて刈取装置90の刈高さを制御する。また、制御装置200は、高刈モードでは、設定された制御目標刈高さより加重移動平均値が低い場合、刈取装置90を鉛直方向の上側に上昇させる。
制御装置200は、低刈モードでは、設定された制御目標刈高さより複数(本実施形態では二つ)の高さ検出装置100のうち二つ以上の高さ検出装置100の検出値が低い場合、刈取装置90を鉛直方向の上側に上昇させる。また、制御装置200は、低刈モードでは、複数(本実施形態では二つ)の高さ検出装置100が検出した複数の刈高さの検出値のうち、一つの検出値が予め設定された最低対地高さHよりも低い突込み高さである場合、刈取装置90を鉛直方向の上側に上昇させる。
制御装置200は、図5に示すように、機能概念的に、制御目標刈高さ設定部201と、刈取モード選択部202と、データ取得部203と、判定部204と、データ選択部205と、重み付け設定部206と、加重移動平均値算出部207と、刈取装置制御部208と、車速検出部209と、スイッチ検出部210と、長押し判定部211と、変速ライン設定部212と、変速制御部213と、画面記憶部214と、を含んで構成されている。
制御目標刈高さ設定部201は、作業員によるダイヤル22の回転操作に基づいて、刈取装置90の刈高さ(対地高さ)を一定に保つように制御するための制御目標刈高さを設定する。
刈取モード選択部202は、作業員によるダイヤル22の回転操作の結果、制御目標刈高さが所定値よりも高い領域内であれば高刈モードを選択し、制御目標刈高さが所定値よりも低い領域内であれば低刈モードを選択する。なお、所定値は、コンバイン1の実機を用いた試験により予め設定される。
データ取得部203は、複数(本実施形態では二つ)の高さ検出装置100の複数の検出値を取得し、取得した複数の検出値を図示しない記憶部に格納する。なお、記憶部に格納された検出値は、例えばイグニッションがOFFにされた際にクリアされる。
判定部204は、二つ以上の高さ検出装置100の検出値が制御目標刈高さより低い場合、二つ以上の高さ検出装置100が制御目標刈高さより低い対地高さを検出したと判定する。
データ選択部205は、加重移動平均値の算出に用いる検出値、すなわち加重移動平均処理を施す検出値を選択するものである。データ選択部205は、データ取得部203が取得して記憶部に格納した検出値から、加重移動平均値を算出する現時点(算出時点)に対して最新の所定の走行距離を走行する間、または最新の所定の走行時間が経過する間の検出値を選択する。データ選択部205は、複数(本実施形態では二つ)の高さ検出装置100の複数の検出値のうち、低いほうの検出値を選択する。つまり、データ選択部205は、二つの高さ検出装置100のうち、対地高さが低いほうの高さ検出装置100の検出値を選択する。データ選択部205は、走行距離の増加または走行時間の経過に伴って、選択する検出値を、現時点(算出時点)に対して最新の所定の走行距離を走行する間、または最新の所定の走行時間が経過する間の検出値で随時更新する。ここで、所定の走行距離を走行する間、または所定の走行時間が経過する間は、要求される加重移動平均値の精度等に応じて予め任意に設定される。典型的には、所定の走行距離を走行する間、または所定の走行時間が経過する間は、少なくとも複数の検出値を取得可能な走行距離、または走行時間に応じて設定される。
重み付け設定部206は、データ選択部205が選択した検出値に対して、所定の重み付けを行うものである。本実施形態では、重み付け設定部206は、最新の検出値側ほど重み付けを重くする。具体的には、重み付け設定部206は、コンバイン1の車速、刈り始めからの走行距離、制御目標刈高さと加重移動平均値との偏差に基づいて、各検出値に対する重み付けの度合を複数段階に変更する。つまり、重み付け設定部206は、最新の検出値側ほど重み付けを重くするように構成したうえで、これらの重み付けを、コンバイン1の車速、刈り始めからの走行距離、制御目標刈高さと加重移動平均値との偏差等に基づいて変更するようにしている。ここでは、重み付け設定部206は、各検出値に対する重み付けの度合を、図8から図10に示すように、三段階に変更することができる。図8は、最新の検出値に対する重み付けを相対的に重くし、最新の検出値に対してより敏感に加重移動平均値を算出する場合の重み付けの例である。図10は、最新の検出値に対する重み付けを相対的に軽くし、最新の検出値に対してより鈍感に加重移動平均値を算出する場合の重み付けの例である。図9は、図8の例と図10の例との中間の重み付けの例である。なおここでは、重み付け設定部206は、最新の検出値に対する重み付けの度合を三段階に変更するものとして説明するが、これに限らず、例えば四段階以上に変更できるようにしてもよい。
図8から図10は、加重移動平均処理区間が600mm、サンプリング単位区間が20mm、加重移動平均処理使用データ数が30個である場合の加重移動平均処理の一例を示している。ここで、加重移動平均処理区間とは、上記の所定の走行距離を走行する間に相当し、加重移動平均処理に用いる複数の検出値を取得するための走行区間に相当する。加重移動平均処理データ数は、加重移動平均処理で用いる検出値の数であり、上記の加重移動平均処理区間で上記のサンプリング単位区間ごとにサンプリングされる検出値の数に相当する。
また、図8、図9、図10中、「サンプルNo.」は、検出値の番号に相当し、随時最新の検出値に更新される。ここでは、加重移動平均処理使用データ数が30であるので、「サンプルNo.」は、「1」〜「30」となっており、数字が大きくなるほど現時点(算出時点)に近い最新の検出値であることを示している。「検出値」は、二つの高さ検出装置100のうち、対地高さが低いほうの高さ検出装置100の検出値に相当する。「検出値」は、図8、図9、図10のそれぞれにおいて、サンプルNo.1〜27では25mm、サンプルNo.28〜30では15mmとなっている。「加重掛け率」は、各検出値に対する重み付けに相当する。図8、図9、図10中、最も右の欄は、各サンプルNo.において、検出値と加重掛け率とを乗算した値(「検出値」×「加重掛け率」)となっている。
図8から図10の例では、加重掛け率の合計を「120」に設定した例を示している。ここでは、加重移動平均処理使用データ数が30であるので、平均掛け率は「4」となる。この平均掛け率の「4」が加重掛け率となっているサンプルNo.は、図8の例(敏感)ではサンプルNo.25〜27、図9の例(中間)ではサンプルNo.22〜27、図10の例(鈍感)ではサンプルNo.4〜27となっている。図8の例では、相対的に古い検出値であるサンプルNo.1〜24で平均掛け率より低い加重掛け率となっており、その加重掛け率は、「1」となっている。図9の例では、相対的に古い検出値であるサンプルNo.1〜21で平均掛け率より低い加重掛け率となっており、その加重掛け率は、「2」となっている。図10の例では、相対的に古い検出値であるサンプルNo.1〜3で平均掛け率より低い加重掛け率となっており、その加重掛け率は、「2」となっている。また、図8の例では、相対的に新しい検出値であるサンプルNo.28〜30で平均掛け率より高い加重掛け率となっており、サンプルNo.28の加重掛け率は「12」、サンプルNo.29の加重掛け率は「24」、サンプルNo.30の加重掛け率は「48」となっている。図9の例では、相対的に新しい検出値であるサンプルNo.28〜30で平均掛け率より高い加重掛け率となっており、サンプルNo.28の加重掛け率は「12」、サンプルNo.29の加重掛け率は「18」、サンプルNo.30の加重掛け率は「24」となっている。図10の例では、相対的に新しい検出値であるサンプルNo.28〜30で平均掛け率より高い加重掛け率となっており、サンプルNo.28〜30の加重掛け率は「6」となっている。
上記のような条件のものと、「加重平均高さ」、すなわち加重移動平均値は、図8の例(敏感)では18mm、図9の例(中間)では20.5mm、図10の例(鈍感)では23.5mmとなる。なお、加重掛け率の合計は、この例よりも多い設定としてもよく、例えば、上記のようにサンプリング単位区間が20mm、加重移動平均処理使用データ数が30個の場合、120〜1200程度が好ましい。この加重掛け率の合計を増加させた場合、例えば、湿田での低速作業などへの適応性が向上することになる。
ここで、重み付け設定部206は、コンバイン1の車速、刈り始めからの走行距離、制御目標刈高さと加重移動平均値(加重平均高さ)との偏差に対してそれぞれ閾値を設けて、図8の例(敏感)の重み付け、図9の例(中間)の重み付け、図10の例(鈍感)の重み付けを使い分けるようにしてもよいし、三つのパラメータを複合した条件付けに応じて使い分けるようにしてもよい。
例えば、重み付け設定部206は、コンバイン1の車速が第1車速閾値より低い場合、図8のような敏感側の重み付けとする。重み付け設定部206は、コンバイン1の車速が第1車速閾値以上であり、かつ第2車速閾値(第1車速閾値より高速側の閾値)より低い場合、図9のような中間の重み付けとする。重み付け設定部206は、コンバイン1の車速が第2車速閾値以上である場合、図10のような鈍感側の重み付けとする。ここで、制御装置200は、車速検出部209が検出した車速に基づいてコンバイン1の車速を検出しており、加重移動平均値において、コンバイン1の車速が低くなるほど、最新の検出値側がおよぼす影響を強くすることができる。
また、重み付け設定部206は、刈り始めからの走行距離が第1距離閾値より短い場合、図8のような敏感側の重み付けとする。重み付け設定部206は、刈り始めからの走行距離が第1距離閾値以上であり、かつ第2距離閾値(第1距離閾値より長い側の閾値)より低い場合、図9のような中間の重み付けとする。重み付け設定部206は、刈り始めからの走行距離が第2距離閾値以上である場合、図10のような鈍感側の重み付けとする。ここで、制御装置200は、車速検出部209が検出した車速に基づいてコンバイン1の刈り始めからの走行距離を算出することができ、加重移動平均値において、刈り始めからの距離が短いほど、最新の検出値側がおよぼす影響を強くすることができる。
また、重み付け設定部206は、制御目標刈高さと加重移動平均値との偏差が第1偏差閾値より大きい場合、図8のような敏感側の重み付けとする。重み付け設定部206は、上記の偏差が第1偏差閾値以下であり、かつ第2偏差閾値(第1偏差閾値より小さい側の閾値)より大きい場合、図9のような中間の重み付けとする。重み付け設定部206は、上記の偏差が第2偏差閾値以下である場合、図10のような鈍感側の重み付けとする。ここで、制御装置200は、作業員がダイヤル22を回転操作して設定した制御目標刈高さと、加重移動平均値算出部207が算出した加重移動平均値とに基づいて、制御目標刈高さと加重移動平均値との偏差を算出することができ、偏差が大きいほど、最新の検出値側がおよぼす影響を強くすることができる。
加重移動平均値算出部207は、データ選択部205が選択した検出値と、重み付け設定部206が設定した重み付けとに基づいて、加重移動平均値(加重平均高さ)を算出するものである。加重移動平均値算出部207は、走行距離の増加または走行時間の経過に伴って随時更新される検出値に対して加重移動平均処理を施しながら、加重移動平均値を最新の値に随時更新する。
刈取装置制御部208は、高刈モードにおいて、制御目標刈高さ設定部201が設定した制御目標刈高さと、加重移動平均値算出部207が算出した加重移動平均値とに基づいて、刈取装置90の刈高さを制御する。具体的には、刈取装置制御部208は、制御目標刈高さ設定部201が設定した制御目標刈高さに向かって、加重移動平均値算出部207が算出した加重移動平均値を収束させるように、刈取装置90の昇降シリンダを作動させ、刈取装置90の刈高さを制御する。つまり、刈取装置制御部208は、制御目標刈高さと加重移動平均値との偏差が許容範囲内に収まるように、刈取装置90の刈高さを制御する。刈取装置制御部208は、制御目標刈高さより加重移動平均値が低い場合、刈取装置90の昇降シリンダを作動させ、刈取装置90を鉛直方向の上側に上昇させる。つまり、刈取装置制御部208は、高刈モードにおいて、刈取装置90の刈高さが制御目標刈高さより低くならないように制御する。
また、刈取装置制御部208は、低刈モードにおいて、制御目標刈高さ設定部201が設定した制御目標刈高さと、データ取得部203が検出した検出値(二つの高さ検出装置100の複数の検出値)とに基づいて、刈取装置90の刈高さを制御する。具体的には、刈取装置制御部208は、制御目標刈高さ設定部201が設定した制御目標刈高さに向かって、データ取得部203が取得して記憶部に格納した検出値を収束させるように、刈取装置90の昇降シリンダを作動させ、刈取装置90の刈高さを制御する。刈取装置制御部208は、判定部204によって二つ以上の高さ検出装置100が制御目標刈高さより低い対地高さを検出したと判定された場合、すなわち制御目標刈高さより二つ以上の高さ検出装置100検出値が低い場合、刈取装置90の昇降シリンダを作動させ、刈取装置90を鉛直方向の上側に上昇させる。また、刈取装置制御部208は、複数(本実施形態では二つ)の高さ検出装置100が検出した複数(二つ)の刈高さの検出値のうち、一つの検出値が最低対地高さHよりも低い突込み高さである場合、刈取装置90の昇降シリンダを作動させ、刈取装置90を鉛直方向の上側に上昇させる。つまり、刈取装置制御部208は、低刈モードにおいて、刈取装置90が地面GLに突っ込まないように制御する。ここで、高刈モードおよび低刈モードにおいて、刈取装置制御部208が刈取装置90を上側へ上昇させる高さは、刈取装置90が地面GLに突っ込むことを抑制可能な高さであり、例えば数十mm程度の高さである。
車速検出部209は、コンバイン1に設けられた車速センサ300から出力される車速を検出し、検出した車速をコンバイン1の車速とする。
スイッチ検出部210は、作業員が増減スイッチ23の増加ボタンまたは減少ボタンを押下操作することで、増加ボタンまたは減少ボタンが押下操作されたことを検出する。また、スイッチ検出部210は、増加ボタンまたは減少ボタンが複数回押下操作されたことも検出する。
長押し判定部211は、作業員が増減スイッチ23の増加ボタンまたは減少ボタンを所定時間の間押下操作する、つまり長押しすることで、増加ボタンまたは減少ボタンが長押しされたことを検出する。増加ボタンまたは減少ボタンが押下操作される所定時間は、例えば1〜2秒程度である。
変速ライン設定部212は、スイッチ検出部210が検出した増減スイッチ23の押下操作に基づいて、刈取装置90の刈取搬送速度または引起し速度を変更させる変速ラインを設定する。また、変速ライン設定部212は、長押し判定部211が検出した増減スイッチ23の長押し判定に基づいて、刈取装置90の刈取搬送速度または引起し速度を変更させる変速ラインを設定する。本実施形態では、変速ライン設定部212は、図11に示すように、刈取装置90の刈取搬送速度または引起し速度の標準変速ラインL1に対して、例えば三段階で変速ラインを設定する。変速ライン設定部212は、変速ラインを、標準変速ラインL1、低側倒伏速ラインL2、中間倒伏速ラインL3、高側倒伏速ラインL4、の四段階で設定する。具体的には、変速ライン設定部212は、油圧式無段変速機HSTやベルト式無段変速機CVT(図3参照)の変速動作を制御することで、油圧式無段変速機HSTからベルト式無段変速機CVTまでの動力伝達経路のいずれかの回転数を、各ラインL1〜L4ごとに設定する。変速ライン設定部212は、作業員が増減スイッチ23の増加ボタンを押下操作するごとに変速ラインを一段上げて設定し、作業員が増減スイッチ23の減少ボタンを押下操作するごとに変速ラインを一段下げて設定する。また、変速ライン設定部212は、作業員が増減スイッチ23の増加ボタンを長押しすると、変速ラインを高側倒伏速ラインL4に設定し、作業員が増減スイッチ23の減少ボタンを長押しすると、変速ラインを標準変速ラインL1に設定する。なお、図11では、横軸がコンバイン1の車速となっており、縦軸が油圧式無段変速機HSTからベルト式無段変速機CVTまでの動力伝達経路のいずれかの回転数である。標準変速ラインL1は、圃場での通常の植生穀稈を引き起し、刈り取った通常の穀稈を搬送するための変速ラインであり、各倒伏速ラインL2〜L4より変速の遅い変速ラインである。一方、各倒伏速ラインL2〜L4は、圃場での倒伏穀稈を引起し、刈り取った倒伏穀稈を搬送するための変速ラインであり、標準変速ラインL1より変速の速い変速ラインである。
ここで、標準変速ラインL1では、車速が第1所定速度(同図に示す点a)以上では横軸に対して平行な頭打ちラインLaとなり、回転数が一定となる。低側倒伏速ラインL2では、車速が第2所定速度(同図に示す点b)以上では標準変速ラインL1より変速を抑える搬送乱れ抑制ラインLbとなり、車速が第5所定速度(同図に示す点e)以上では頭打ちラインLaとなり、回転数が一定となる。中間倒伏速ラインL3では、車速が第3所定速度(同図に示す点c)以上では搬送乱れ抑制ラインLbとなり、車速が第5所定速度(同図に示す点e)以上では頭打ちラインLaとなり、回転数が一定となる。高側倒伏速ラインL4では、車速が第4所定速度(同図に示す点d)以上では搬送乱れ抑制ラインLbとなり、車速が第5所定速度(同図に示す点e)以上では頭打ちラインLaとなり、回転数が一定となる。なお、車速が第1所定速度とは、標準変速ラインL1では、これ以上の速い速度では刈り取りを行わない速度である。車速が第5所定速度とは、各倒伏速ラインL2〜L4では、これ以上の速い速度では刈り取りを行わない速度である。頭打ちラインLaは、車速が第1所定速度または第5所定速度以上になると刈り取りが行われないため、回転数を一定に保つラインである。搬送乱れ抑制ラインLbは、刈り取った倒伏穀稈が搬送中に乱れることを抑制するラインであり、コンバイン1の車速の増加に対して回転数の変速を抑制するラインである。なおここでは、変速ライン設定部212は、三段階の各倒伏速ラインL2〜L4に設定するものとして説明するが、これに限らず、例えば四段階以上に設定できるようにしてもよい。
変速制御部213は、変速ライン設定部212が設定した変速ラインに基づいて、油圧式無段変速機HSTおよびベルト式無段変速機CVTの変速動作を制御するものである。変速制御部213は、コンバイン1の車速に応じて、油圧式無段変速機HSTからベルト式無段変速機CVTまでの動力伝達経路のいずれかの回転数を、変速ライン設定部212が設定した変速ラインに沿うように制御する。
画面記憶部214は、図12から図14に示すように、各種モードに応じた表示パターンが設定された操作画面や表示画面を表示するための表示画面情報を格納している。具体的には、画面記憶部214は、図12に示すように、通常画面G1、メンテナンスモード選択画面G2、エンジン始動設定選択画面G3、刈取変速パターン設定選択画面G4、パターン設定画面G5、液晶コントラスト調整選択画面G6、メンテナンス情報選択画面G7などの表示画面情報を格納している。
次に、上記のように構成されたコンバイン1の制御装置200の制御について説明する。図15は、制御装置による刈取装置の制御に関する一例を示すフローチャートである。
まずは、制御装置200が高刈モードで刈取装置90を制御する場合について説明する。このような場合には、制御装置200は、作業員により回転操作されるダイヤル22の制御目標刈高さに基づいて、制御目標刈高さを設定する(ステップS1)。
制御装置200は、設定した制御目標刈高さに基づいて、刈取モードが高刈モードであるか低刈モードであるかを判断する(ステップS2)。このステップS2では、制御装置200は、制御目標刈高さ設定部201が設定した制御目標刈高さが所定値より高い領域内であれば高刈モードであると判断し、制御目標刈高さが所定値より低い領域内であれば低刈モードであると判断する。つまり、ステップS2では、制御装置200は、制御目標刈高さ設定部201が制御目標刈高さを設定した後、刈取モード選択部202が刈取モードを選択することで、刈取モードが高刈モードであるか低刈モードであるかを判断する。
制御装置200は、刈取モードが高刈モードであると判断する(ステップS2:高刈モード)と、刈取装置90により植生穀稈を刈り取りながら高さ検出装置100の検出値を取得する(ステップS7)。このステップS7では、制御装置200は、予め設定された所定の走行距離を走行する間、または予め設定された所定の走行時間が経過する間に、二つの高さ検出装置100が検出した複数の刈高さの検出値を取得する。
制御装置200は、加重移動平均値を算出する(ステップS8)。このステップS8では、制御装置200は、二つの高さ検出装置100が検出した二つの検出値のうち、低いほうの検出値の最新の検出値側ほど重み付けを重くした加重移動平均値を算出する。
制御装置200は、刈取装置90を制御する(ステップS9)。このステップS9では、制御装置200は、算出した加重移動平均値に基づいて、この加重移動平均値が制御目標刈高さに収束するように、刈取装置90の刈高さを制御する。この結果、コンバイン1は、例えば、刈り始めや凹凸の多い圃場であっても、単純に移動平均値を算出する場合と比較して、対地高さの算出精度を向上することができる。
また、ステップS9では、制御目標刈高さより加重移動平均値が低い場合、刈取装置90を鉛直方向の上側に上昇させる。つまり、制御装置200は、低いほうの検出値に加重をかけることによって刈取装置90の上昇量が不足せず、かつ一定区間、一定時間に検出される刈高さの検出値を、刈取装置90の上昇制御に用いられる加重移動平均値に反映させるので、より安定した加重移動平均値を算出することができる。この結果、コンバイン1は、低いほうの検出値の一つの影響をやや鈍らせることで、高刈モードにおいて、刈取装置90を安定した刈高さに制御することができる。したがって、コンバイン1は、適切に刈取装置90の刈高さを検出し、刈取装置90を適切に上昇させることができる。
次に、制御装置200が低刈モードで刈取装置90を制御する場合について説明する。このような場合には、制御装置200は、刈取モードが低刈モードであると判断する(ステップS2:低刈モード)と、刈取装置90により植生穀稈を刈り取りながら検出値を取得する(ステップS3)。このステップS3では、制御装置200は、二つの高さ検出装置100が検出した検出値を取得する。
制御装置200は、制御目標刈高さより二つ以上の高さ検出装置100の検出値が低いか否かを判断する(ステップS4)。このステップS4では、制御装置200は、制御目標刈高さ設定部201が設定した制御目標刈高さよりも、データ取得部203が取得した二つ以上の高さ検出装置100の検出値が低いと、制御目標刈高さより二つ以上の高さ検出装置100の検出値が低いと判断する。
制御装置200は、制御目標刈高さより二つ以上の高さ検出装置100の検出値が低いと判断する(ステップS4:Yes)と、刈取装置90を鉛直方向の上側に上昇させる(ステップS5)。この結果、コンバイン1は、制御目標刈高さより二つ以上の高さ検出装置100の検出値が低くなるまでは刈取装置90を上昇させないので、倒伏圃場のように穀稈を低く刈り取りたい場所において、刈取装置90の刈高さを安定に低く保つことができる。
また、制御装置200は、制御目標刈高さより二つ以上の高さ検出装置100の検出値が低くないと判断する(ステップS4:No)と、一つの検出値が最低対地高さHよりも低い突込み高さであるか否かを判断する(ステップS6)。このステップS6では、データ取得部203が取得した二つの高さ検出装置100の検出値のうち、一つの検出値が最低対地高さHよりも低い突込み高さであると、一つの検出値が最低対地高さHよりも低い突込み高さであると判断する。
制御装置200は、一つの検出値が最低対地高さHよりも低い突込み高さであると判断する(ステップS6:Yes)と、刈取装置90を鉛直方向の上側に上昇させる(ステップS5)。この結果、コンバイン1は、制御目標刈高さより二つ以上の高さ検出装置100の検出値が低くなくても、一つの高さ検出装置100の検出値が突込み高さであれば、刈取装置90を上昇させることができる。
なお、制御装置200は、一つの検出値が最低対地高さHよりも低い突込み高さではないと判断する(ステップS6:No)と、ステップS3の制御ステップを実行する。
以上のように、実施形態1に係るコンバイン1によれば、高刈モードにおいて、所定の走行距離を走行する間、または所定の走行時間が経過する間に二つの高さ検出装置100によって検出される検出値のうち、低いほうの検出値の最新の検出値側ほど重み付けを重くした加重移動平均値を算出するので、対地高さの算出精度を向上することができる。また、コンバイン1によれば、低いほうの検出値の最新の検出値側ほど重み付けを重くした加重移動平均値に基づいて刈取装置90の刈高さを制御するので、安定した加重移動平均値を算出することができ、かつ低いほうの検出値の一つの影響をやや鈍らせることで刈取装置90の刈高さを安定させることができる。したがって、コンバイン1によれば、高刈モードにおいて、刈取装置90の刈高さを安定させることができる。
また、コンバイン1によれば、高刈モードにおいて、二つの高さ検出装置100が検出した複数の刈高さの検出値のうち、低いほうの検出値の最新の検出値側ほど重み付けを重くした加重移動平均値を算出するので、刈取装置90を鉛直方向の上側に上昇させる際の上昇量(上昇高さ)が不足しないように制御することができる。
また、コンバイン1によれば、高刈モードにおいて、二つの高さ検出装置100が検出した複数の刈高さの検出値のうち、低いほうの検出値の最新の検出値側ほど重み付けを重くした加重移動平均値を算出するので、加重移動平均値の最終的な値が正確になっていく。つまり、コンバイン1によれば、加重移動平均値を制御目標刈高さに近づけることができる。
また、コンバイン1によれば、低刈モードにおいて、制御目標刈高さより二つ以上の高さ検出装置100の検出値が低い場合、刈取装置90を鉛直方向の上側に上昇させるので、二つの高さ検出装置100の検出値のうち一つでも制御目標刈高さより低い時に刈取装置90を上昇させる場合と比較して、検出値に対する刈取装置90の上昇動作をやや鈍らせることができ、刈取装置90の刈高さを安定させることができる。したがって、コンバイン1によれば、低刈モードにおいて、刈取装置90の刈高さを安定させることができる。
また、コンバイン1によれば、低刈モードにおいて、二つの高さ検出装置100が検出した複数の刈高さの検出値のうち、一つの検出値が最低対地高さHよりも低い突込み高さである場合、刈取装置90を鉛直方向の上側に上昇させるので、刈取装置90が地面GLに突っ込む前に刈取装置90を上昇させることができる。したがって、コンバイン1によれば、低刈モードにおいて、刈取装置90が地面GLに対して突っ込むことを抑制することができる。
次に、本実施形態1に係るコンバイン1により、倒伏圃場のように低く刈り取りたい場所で倒伏穀稈を刈り取る場合において、刈取装置90の刈取搬送速度または引起し速度の変速ラインの設定について説明する。ここで、表示手段24には、図12に示すように、通常画面G1として、前照灯や作業灯の点灯状況、水温の状況、変速ラインの設定状況などが表示される。また、通常画面G1中の刈取速表示部G1aは、変速ラインの設定状況を示す。具体的には、刈取速表示部G1aは、変速ラインが標準変速ラインL1に設定されている場合には図13に示す通常画面G11中の刈取速表示部G11aのように表示され、変速ラインが低側倒伏速ラインL2に設定されている場合には図13に示す通常画面G12中の刈取速表示部G12aのように表示され、変速ラインが中間倒伏速ラインL3に設定されている場合には図13に示す通常画面G13中の刈取速表示部G13aのように表示され、変速ラインが高側倒伏速ラインL4に設定されている場合には図13に示す通常画面G14中の刈取速表示部G14aのように表示される。
まずは、表示手段24に表示される画面で変速ラインを設定する場合について説明する。制御装置200は、表示手段24の周囲に配置された図示しない切替スイッチが作業員により押下操作されると、その押下操作に基づいて、表示手段24に表示される画面を切り替える。ここでは、制御装置200は、図12に示すように、表示手段24に表示される画面を通常画面G1からメンテナンスモード選択画面G2へと切り替える。
制御装置200は、メンテナンスモード選択画面G2が表示された状態では、表示手段24の周囲に配置された図示しないホーンスイッチが作業員により押下操作されると、「メンテナンスモード」が選択されたと判断し、表示手段24に表示される画面をメンテナンスモード選択画面G2からエンジン始動設定選択画面G3へと切り替える。
制御装置200は、エンジン始動設定選択画面G3が表示された状態では、切替スイッチが作業員により押下操作されると、「進む」が選択されたと判断し、表示手段24に表示される画面をエンジン始動設定選択画面G3から刈取変速パターン設定選択画面G4へと切り替える。
制御装置200は、刈取変速パターン設定選択画面G4が表示された状態では、ホーンスイッチが作業員により押下操作されると、「刈取変速パターン設定」が選択されたと判断し、表示手段24に表示される画面を刈取変速パターン設定選択画面G4からパターン設定画面G5へと切り替える。また、制御装置200は、刈取変速パターン設定選択画面G4が表示された状態では、切替スイッチが作業員により押下操作されると、「進む」が選択されたと判断し、表示手段24に表示される画面を刈取変速パターン設定選択画面G4から液晶コントラスト調整選択画面G6へと切り替える。
制御装置200は、パターン設定画面G5が表示された状態では、表示手段24の周囲に配置された図示しない左ウィンカスイッチが作業員により押下操作されると、変速ラインを設定することを中止し、表示手段24に表示される画面をパターン設定画面G5から刈取変速パターン設定選択画面G4へと切り替える。また、制御装置200は、パターン設定画面G5が表示された状態では、表示手段24の周囲に配置された図示しない右ウィンカスイッチが作業員により押下操作されると、その押下操作に基づいてカーソルG5eを移動する。また、制御装置200は、パターン設定画面G5が表示された状態では、切替スイッチが作業員により押下操作されると、カーソルG5eが位置する刈取変速パターン(つまり、各倒伏速ラインL2〜L4)の有効または無効を切り替える。また、制御装置200は、パターン設定画面G5が表示された状態では、ホーンスイッチが作業員により長押しされると、パターン設定画面G5に表示される設定を確定し、表示手段24に表示される画面をパターン設定画面G5から刈取変速パターン設定選択画面G4へと切り替える。
ここで、作業員は、表示手段24にパターン設定画面G5が表示された状態で、倒伏穀稈の状態や圃場の状態などに応じて、右ウィンカスイッチや切替スイッチを押下操作して変速ラインを標準変速ラインL1から各倒伏速ラインL2〜L4へ変更したり、各倒伏速ラインL2〜L4から標準変速ラインL1へ変更したり、各倒伏速ラインL2〜L4内で変更したりした後、ホーンスイッチを長押しすることによって、変速ラインを設定する(刈取変速パターンを設定する)。
制御装置200は、液晶コントラスト調整選択画面G6が表示された状態では、切替スイッチが作業員により押下操作されると、「進む」が選択されたと判断し、表示手段24に表示される画面を液晶コントラスト調整選択画面G6からメンテナンス情報選択画面G7へと切り替える。
制御装置200は、メンテナンス情報選択画面G7が表示された状態では、切替スイッチが作業員により押下操作されると、「進む」が選択されたと判断し、表示手段24に表示される画面をメンテナンス情報選択画面G7から通常画面G1へと切り替える。
一方、増減スイッチ23により変速ラインを設定する場合について説明する。制御装置200は、主変速レバーに設けられた増減スイッチ23の増加ボタンまたは減少ボタンが押下操作されると、その押下操作に基づいて、図13に示すように、それぞれの通常画面G11〜G14に切り替える。ここで、通常画面G11は標準変速ラインL1が設定されている場合に表示手段24に表示される画面であり、通常画面G12は低側倒伏速ラインL2が設定されている場合に表示手段24に表示される画面であり、通常画面G13は中間倒伏速ラインL3が設定されている場合に表示手段24に表示される画面であり、通常画面G14は高側倒伏速ラインL4が設定されている場合に表示手段24に表示される画面である。
制御装置200は、通常画面G11が表示された状態では、増加ボタンが作業員により押下操作されると、変速ラインを低側倒伏速ラインL2へ切り替え、表示手段24に表示される画面を通常画面G11から通常画面G12へと切り替える(同図に示す矢印a)。また、制御装置200は、通常画面G11が表示された状態では、増加ボタンが作業員により長押しされると、変速ラインを高側倒伏速ラインL4へ切り替え、表示手段24に表示される画面を通常画面G11から通常画面G14へと切り替える(同図に示す矢印g)。
制御装置200は、通常画面G12が表示された状態では、増加ボタンが作業員により押下操作されると、変速ラインを中間倒伏速ラインL3へ切り替え、表示手段24に表示される画面を通常画面G12から通常画面G13へと切り替える(同図に示す矢印b)。また、制御装置200は、通常画面G12が表示された状態では、減少ボタンが作業員により押下操作されると、変速ラインを標準変速ラインL1へ切り替え、表示手段24に表示される画面を通常画面G12から通常画面G11へと切り替える(同図に示す矢印f)。また、制御装置200は、通常画面G12が表示された状態では、増加ボタンが作業員により長押しされると、変速ラインを高側倒伏速ラインL4へ切り替え、表示手段24に表示される画面を通常画面G12から通常画面G14へと切り替える(同図に示す矢印i)。
制御装置200は、通常画面G13が表示された状態では、増加ボタンが作業員により押下操作されると、変速ラインを高側倒伏速ラインL4へ切り替え、表示手段24に表示される画面を通常画面G13から通常画面G14へと切り替える(同図に示す矢印c)。また、制御装置200は、通常画面G13が表示された状態では、減少ボタンが作業員により押下操作されると、変速ラインを低側倒伏速ラインL2へ切り替え、表示手段24に表示される画面を通常画面G13から通常画面G12へと切り替える(同図に示す矢印e)。また、制御装置200は、通常画面G13が表示された状態では、減少ボタンが作業員により長押しされると、変速ラインを標準変速ラインL1へ切り替え、表示手段24に表示される画面を通常画面G13から通常画面G11へと切り替える(同図に示す矢印j)。
制御装置200は、通常画面G14が表示された状態では、減少ボタンが作業員により押下操作されると、変速ラインを中間倒伏速ラインL3へ切り替え、表示手段24に表示される画面を通常画面G14から通常画面G13へと切り替える(同図に示す矢印d)。また、制御装置200は、通常画面G14が表示された状態では、減少ボタンが作業員により長押しされると、変速ラインをL1へ切り替え、表示手段24に表示される画面を通常画面G14から通常画面G11へと切り替える(同図に示す矢印h)。
ここで、制御装置200は、増減スイッチ23の増加ボタンまたは減少ボタンが作業員により押下操作されたり長押しされたりすることで、作業員が所望する変速ラインに切り替える。つまり、制御装置200は、作業員が増加ボタンまたは減少ボタンを押下操作したり長押ししたりすることによって、図12に示すパターン設定画面G5を介すことなく、変速ラインを直接変更することができる。
なお、制御装置200は、例えば図14に示すパターン設定画面G21のように、切替スイッチが作業員により押下操作されて刈取速表示部G21cに「ムコウ」を表示し、低側倒伏速ラインL2を無効に設定した場合には、通常画面G11が表示された状態で増加ボタンが作業員により押下操作されると、変速ラインを標準変速ラインL1から中間倒伏速ラインL3へ切り替え、表示手段24に表示される画面を通常画面G11から通常画面G13へと切り替える(同図に示す矢印k)。また、制御装置200は、低側倒伏速ラインL2を無効に設定した場合には、通常画面G13が表示された状態で減少ボタンが作業員により押下操作されると、変速ラインを中間倒伏速ラインL3から標準変速ラインL1へ切り替え、表示手段24に表示される画面を通常画面G13から通常画面G11へと切り替える(同図に示す矢印l)。
このように、コンバイン1では、制御装置200によって、各倒伏速ラインL2〜L4は車速が第5所定速度(図11に示す点e)以上で同等速度(標準変速ラインL1)に近づくように制御する、つまり車速が高速域では各倒伏速ラインL2〜L4を一定に抑えるように制御することで、搬送乱れを防止することができる。また、コンバイン1では、作業員の操作によって各ラインL1〜L4の切り替えを変更可能に構成したので、例えばジャンパスイッチのブロック(ピン)などにより各ラインL1〜L4を切り替える場合と比較して、倒伏圃場の状態や圃場の状態に対する各ラインL1〜L4の適応性を向上させることができる。また、コンバイン1では、主変速レバーに設けられた増減スイッチ23により各ラインL1〜L4の切り替えを変更可能に構成したので、作業員に対する操作性を向上させることができる。また、コンバイン1では、増減スイッチ23の長押しにより、低側倒伏速ラインL2および中間倒伏速ラインL3(変速では中間段数)を飛び越えて、標準変速ラインL1(変速では最低段数)と高側倒伏速ラインL4(変速では最高段数)とに切り替え可能とするので、作業員による操作性を向上させることができる。また、コンバイン1では、作業員が各倒伏速ラインL2〜L4を任意に無効にすることができるので、増減スイッチ23の操作回数を少なくすることができ、無効にした倒伏速ラインの誤使用を防ぐことができる。
〔実施形態2〕
次に、図16から図20を参照して、実施形態2に係るコンバイン1Aについて説明する。図16は、実施形態2に係るコンバインの制御装置の概略構成を示すブロック図である。図17は、実施形態2に係るコンバインの制御装置による刈取装置の制御に関する一例を示すフローチャートである。図18は、実施形態2に係るコンバインの制御装置による刈取装置の制御に関する一例を示すフローチャートである。図19は、実施形態2に係るコンバインの制御装置による刈取装置の制御に関する一例を示すフローチャートである。図20は、実施形態2に係るコンバインの制御装置による刈取装置の制御に関する一例を示すフローチャートである。実施形態2に係るコンバイン1Aは、制御装置200に上昇推進制御部215が設けられている点で実施形態1に係るコンバイン1とは異なっている。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略する(以下で説明する他の実施形態でも同様である。)。
図16に示すコンバイン1Aの制御装置200は、刈取装置90が地面GLに突っ込んだ際に、刈取装置90を鉛直方向の上側へ上昇させる。本実施形態では、制御装置200は、刈取モードが低刈モードである場合において、刈取装置90の地面GLへの突っ込みを検出することで、刈取装置90の突込み状態が解消するまで上昇させる。
具体的には、制御装置200は、機能概念的に、制御目標刈高さ設定部201と、刈取モード選択部202と、データ取得部203と、判定部204と、データ選択部205と、重み付け設定部206と、加重移動平均値算出部207と、刈取装置制御部208と、車速検出部209と、スイッチ検出部210と、長押し判定部211と、変速ライン設定部212と、変速制御部213と、画面記憶部214と、を含み、さらに上昇推進制御部215を含んで構成されている。
上昇推進制御部215は、刈取モードが低刈モードである場合において、一つ以上の高さ検出装置100により最低対地高さH(例えば図4に示す地面GLに対する下面972aの高さ)よりも低い検出値(つまり突込み高さ)が検出されると、刈取装置90が地面GLに対して突込み状態であると判定し、刈取装置90の昇降シリンダの油圧バルブ90aの開度を大きくし、刈取装置90を上昇させる。本実施形態では、このような上昇推進制御部215の制御を、基本の制御とする。
また、上昇推進制御部215は、刈取モードが低刈モードである場合において、一つ以上の突込み高さが検出されると、刈取装置90が地面GLに対して突込み状態であると判定し、かつ車速センサ300に基づいて検出されたコンバイン1Aの車速に応じて、刈取装置90の昇降シリンダの油圧バルブ90aの開度を調整する。ここでは、上昇推進制御部215は、コンバイン1の車速が所定速度以上になると、その所定速度以上の車速が高くなるにつれて、油圧バルブ90aの開度を徐々に大きくする。本実施形態では、このような上昇推進制御部215の制御を、車速に応じた制御とする。
また、上昇推進制御部215は、刈取モードが低刈モードである場合において、一つ以上の突込み高さが検出されると、刈取装置90が地面GLに対して突込み状態であると判定し、突込み高さを検出する高さ検出装置100の数に応じて、刈取装置90の昇降シリンダの油圧バルブ90aの開度を調整する。ここでは、上昇推進制御部215は、突込み高さを検出する高さ検出装置100の数が増えるにつれて、油圧バルブ90aの開度を徐々に大きくする。本実施形態では、このような上昇推進制御部215の制御を、突込み高さの検出数に応じた制御とする。なお、上昇推進制御部215は、突込み高さを検出する高さ検出装置100の突込み量にも応じて、刈取装置90の昇降シリンダの油圧バルブ90aの開度を調整する。
また、上昇推進制御部215は、刈取モードが低刈モードである場合において、一つ以上の突込み高さが検出されると、刈取装置90が地面GLに対して突込み状態であると判定し、かつ補助引起し装置の重量に応じて、刈取装置90の昇降シリンダの油圧バルブ90aの開度を調整する。ここでは、上昇推進制御部215は、補助引起し装置の重量が大きければ、油圧バルブ90aの開度も大きくする。本実施形態では、このような上昇推進制御部215の制御を、補助引起し装置の重量に応じた制御とする。なお、補助引起し装置は、長稈圃場での刈取作業を行う際に、予め刈取装置90に装着されるものであり、前後方向の前方に突出させる引起しラグにより、倒伏長稈を引き起す装置である。
次に、刈取モードが低刈モードである場合において、コンバイン1Aの制御装置200による基本の制御について説明する。制御装置200は、図17に示すように、刈取装置90が地面GLに対して突込み状態であるか否かを判断する(ステップS11)。次に、制御装置200は、刈取装置90が地面GLに対して突込み状態であると判断する(ステップS11:Yes)と、刈取装置90の昇降シリンダの油圧バルブ90aの開度を大きくする(ステップS12)。次に、制御装置200は、突込み状態が解消されるまで、昇降シリンダを駆動して刈取装置90を鉛直方向の上側へ上昇させる(ステップS13)。このステップS13では、制御装置200は、二つの高さ検出装置100が最低対地高さHよりも高い刈高さ(対地高さ)を検出するまで刈取装置90を鉛直方向の上側へ上昇、あるいは予め設定された所定量(例えば数十mm程度)だけ強制的に刈取装置90を鉛直方向の上側へ上昇させる。この結果、コンバイン1Aは、油圧バルブ90aの開度が通常の開度である場合に比べて、刈取装置90を鉛直方向の上側へ高速で上昇させることができる。
次に、刈取モードが低刈モードである場合において、コンバイン1Aの制御装置200による車速に応じた制御について説明する。制御装置200は、図18に示すように、刈取装置90が地面GLに対して突込み状態であるか否かを判断する(ステップS21)。次に、制御装置200は、刈取装置90が地面GLに対して突込み状態であると判断する(ステップS21:Yes)と、コンバイン1Aの車速が所定速度以上か否かを判断する(ステップS22)。次に、制御装置200は、コンバイン1Aの車速が所定速度以上であると判断する(ステップS22:Yes)と、コンバイン1Aの車速に応じて油圧バルブ90aの開度を調整する(ステップS23)。次に、制御装置200は、突込み状態が解消されるように、昇降シリンダを駆動して刈取装置90を鉛直方向の上側へ上昇させる(ステップS24)。このステップS24では、制御装置200は、二つの高さ検出装置100が最低対地高さHよりも高い刈高さ(対地高さ)を検出するまで刈取装置90を鉛直方向の上側へ上昇、あるいは予め設定された所定量(例えば数十mm程度)だけ強制的に刈取装置90を鉛直方向の上側へ上昇させる。この結果、コンバイン1Aは、コンバイン1Aの車速が所定速度以上になると、コンバイン1Aの車速が所定速度よりも遅い場合に比べて、刈取装置90を鉛直方向の上側へ高速で上昇させることができる。
次に、刈取モードが低刈モードである場合において、コンバイン1Aの制御装置200による突込み高さの検出数に応じた制御について説明する。制御装置200は、図19に示すように、刈取装置90が地面GLに対して突込み状態であるか否かを判断する(ステップS31)。次に、制御装置200は、刈取装置90が地面GLに対して突込み状態であると判断する(ステップS31:Yes)と、複数の高さ検出装置100が突込み高さを検出したか否かを判断する(ステップS32)。次に、制御装置200は、複数の高さ検出装置100が突込み高さを検出したと判断する(ステップS32:Yes)と、突込み高さを検出した高さ検出装置100の検出数に応じて油圧バルブ90aの開度を調整する(ステップS33)。次に、制御装置200は、突込み状態が解消されるように、昇降シリンダを駆動して刈取装置90を鉛直方向の上側へ上昇させる(ステップS34)。このステップS34では、制御装置200は、二つの高さ検出装置100が最低対地高さHよりも高い刈高さ(対地高さ)を検出するまで刈取装置90を鉛直方向の上側へ上昇、あるいは予め設定された所定量(例えば数十mm程度)だけ強制的に刈取装置90を鉛直方向の上側へ上昇させる。この結果、コンバイン1Aは、複数の高さ検出装置100が突込み高さを検出すると、一つの高さ検出装置100が突込み高さを検出した場合に比べて、刈取装置90を鉛直方向の上側へ高速で上昇させることができる。
なお、上記のステップS32において、複数の高さ検出装置100が突込み高さを検出していない、つまり一つの高さ検出装置100のみが突込み高さを検出したと判断する(ステップS32:No)と、図17に示す基本の制御と同様に、油圧バルブ90aの開度を大きくした(ステップS35)後、刈取装置90を鉛直方向の上側へ上昇させる(ステップS34)。
次に、刈取モードが低刈モードである場合において、コンバイン1Aの制御装置200による補助引起し装置の重量に応じた制御について説明する。制御装置200は、図20に示すように、刈取装置90が地面GLに対して突込み状態であるか否かを判断する(ステップS41)。次に、制御装置200は、刈取装置90が地面GLに対して突込み状態であると判断する(ステップS41:Yes)と、補助引起し装置を装着しているか否かを判断する(ステップS42)。このステップS42では、制御装置200は、図示しない設定手段等を介して作業員により予め設定される装着の有無に基づいて、補助引起し装置を装着しているか否かを判断する。次に、制御装置200は、補助引起し装置を装着していると判断する(ステップS42:Yes)と、補助引起し装置の重量に応じて油圧バルブ90aの開度を調整する(ステップS43)。このステップS43では、制御装置200は、図示しない設定手段等を介して作業員により予め設定される重量に基づいて、油圧バルブ90aの開度を調整する。次に、制御装置200は、突込み状態が解消されるように、昇降シリンダを駆動して刈取装置90を鉛直方向の上側へ上昇させる(ステップS44)。このステップS44では、制御装置200は、二つの高さ検出装置100が最低対地高さHよりも高い刈高さ(対地高さ)を検出するまで刈取装置90を鉛直方向の上側へ上昇、あるいは予め設定された所定量(例えば数十mm程度)だけ強制的に刈取装置90を鉛直方向の上側へ上昇させる。この結果、コンバイン1Aは、補助引起し装置を装着していても、未装着状態と同様に、刈取装置90を鉛直方向の上側へ上昇させることができる。
なお、上記のステップS42において、制御装置200が補助引起し装置を装着していないと判断する(ステップS42:No)と、図17に示す基本の制御と同様に、油圧バルブ90aの開度を大きくした(ステップS45)後、刈取装置90を鉛直方向の上側へ上昇させる(ステップS44)。
以上のように、実施形態2に係るコンバイン1Aによれば、刈取装置90の昇降シリンダの油圧バルブ90aの開度を大きくすることで、地面GLに対して刈取装置90が突込み状態となった時に、刈取装置90を速やかに鉛直方向の上側へ上昇させることができる。したがって、コンバイン1Aによれば、刈取装置90の突込み状態を速やかに解消することができるという効果を奏する。
また、コンバイン1Aによれば、コンバイン1Aの車速、突込み高さを検出する高さ検出装置100の数、高さ検出装置100の突込み量、補助引起し装置の重量などに応じて油圧バルブ90aの開度を大きくすることで、地面GLへの刈取装置90の突っ込み時に、刈取装置90の上昇量が不足しないようにすることができるという効果を奏する。
〔実施形態3〕
次に、図21から図24を参照して、実施形態3に係るコンバイン1Bについて説明する。図21は、実施形態3に係るコンバインの制御装置の概略構成を示すブロック図である。図22は、実施形態3に係るコンバインの制御装置による刈取装置の制御に関する一例を示すフローチャートである。図23は、実施形態3に係るコンバインの制御装置による刈取装置の制御に関する一例を示すフローチャートである。図24は、実施形態3に係るコンバインの制御装置による刈取装置の制御に関する一例を示すフローチャートである。実施形態3に係るコンバイン1Bは、制御装置200が機能概念的に、浮き上がり判定部216、自動下降制御部217、接地判定部218、強制上昇制御部219、刈取状態検出部220を含んでいる点で実施形態1、2とは異なっている。
図21に示すコンバイン1Bの制御装置200は、高さ検出装置100が地面GLから浮き上がった浮遊状態になると、高さ検出装置100が地面GLに接地するように、刈取装置90を自動的に鉛直方向の下側へ下降させる自動下降制御を実施する。また、制御装置200は、ダイヤル22の制御目標刈高さが高くなる側へ設定する操作が作業員により行われると、高さ検出装置100の状態(浮遊状態や接地状態)にかかわらず刈取装置90を所定量だけ自動的に鉛直方向の上側へ上昇させる強制上昇制御を実施する。本実施形態では、制御装置200は、刈取モードが低刈モードである場合において、自動下降制御と強制上昇制御とを実施する。
具体的には、制御装置200は、機能概念的に、制御目標刈高さ設定部201と、刈取モード選択部202と、データ取得部203と、判定部204と、データ選択部205と、重み付け設定部206と、加重移動平均値算出部207と、刈取装置制御部208と、を含み、さらに浮き上がり判定部216と、自動下降制御部217と、接地判定部218と、強制上昇制御部219と、刈取状態検出部220と、を含んで構成されている。
浮き上がり判定部216は、高さ検出装置100の接地体140が地面GLに対して非接触状態になることで、刈取装置90が地面GLに対して浮遊状態であると判定する。つまり、本実施形態では、浮遊状態として、刈取装置90と地面GLとの間隔が高刈モードで想定する刈高さよりも広がった状態を想定しており、ユニット本体120が図4に示す下降限界位置に位置付けられ、かつ接地体140の下端部141cと地面GLとが離間している状態を想定している。
自動下降制御部217は、浮き上がり判定部216により刈取装置90が地面GLに対して浮遊状態であると判定されると、高さ検出装置100の接地体140が地面GLに接地するまで、刈取装置90を鉛直方向の下側へ下降させる。
接地判定部218は、強制上昇制御の実施中(自動下降制御の停止中)に、高さ検出装置100の接地体140が地面GLに接地したことを検出すると、強制上昇制御を終了させ、かつ自動下降制御を再開させる。また、接地判定部218は、自動下降制御の再開について、表示手段24に案内表示する。
強制上昇制御部219は、ダイヤル22の制御目標刈高さが高くなる側へ設定されると、高さ検出装置100の浮遊状態や接地状態にかかわらず刈取装置90を所定量だけ強制的に鉛直方向の上側へ上昇させ、自動下降制御を停止させる。また、強制上昇制御部219は、自動下降制御の停止について、表示手段24に案内表示する。
刈取状態検出部220は、刈取装置90の状態が非刈取状態であるか刈取状態であるか検出する。また、刈取状態検出部220は、刈取装置90の状態が非刈取状態であることを検出すると、刈取装置90の駆動、およびフィードチェーン駆動機構80の駆動を停止させる。なお、非刈取状態は、例えば、刈取装置90の対地高さが数百mm程度となる状態であり、植生穀稈の刈り取りを行わない状態である。
次に、コンバイン1Bの制御装置200による基本的な制御について説明する。制御装置200は、図22に示すように、高さ検出装置100の浮き上がりを検出したか否かを判断する(ステップS51)。次に、制御装置200は、高さ検出装置100の浮き上がりを検出したと判断する(ステップS51:Yes)と、高さ検出装置100が接地するまで刈取装置90を鉛直方向の下側へ下降させる(ステップS52)。次に、制御装置200は、ダイヤル22が高くなる側へ設定(制御目標刈高さが高くなる側へ設定)されたか否かを判断する(ステップS53)。次に、制御装置200は、ダイヤル22が高くなる側へ設定されたと判断する(ステップS53:Yes)と、刈取装置90を所定量だけ鉛直方向の上側へ強制上昇させる(ステップS54)。この結果、コンバイン1Bは、例えば畝間の溝がある麦圃場等のように、高さ検出装置100が溝内に入り込みやすい場合には、自動下降制御により高さ検出装置100が接地するまで刈取装置90を鉛直方向の下側へ下降させると、地面GLに対して刈取装置90が突込み状態となる虞があるが、作業員がダイヤル22を制御目標刈高さが高くなる側へ設定することで、刈取装置90を所定量だけ鉛直方向の上側へ強制上昇させることができる。
次に、コンバイン1Bの制御装置200により、接地を検出する場合の制御について説明する。制御装置200は、図23に示すように、上記の基本的な制御と同様に、高さ検出装置100の浮き上がりを検出する(ステップS61:Yes)と、高さ検出装置100が接地するまで刈取装置90を下降させ(ステップS62)、ダイヤル22が高くなる側へ設定されたと判断する(ステップS63:Yes)と、刈取装置90を所定量だけ鉛直方向の上側へ強制上昇させ(ステップS64)、自動下降制御を停止し、かつ自動下降制御の停止について表示手段24に案内表示する。次に、制御装置200は、高さ検出装置100が接地を検出したか否かを判断する(ステップS65)。次に、制御装置200は、高さ検出装置100が接地を検出したと判断する(ステップS65:Yes)と、ステップS61の制御ステップにリターンし、自動下降制御を再開し、かつ自動下降制御の再開について表示手段24に案内表示する。この結果、コンバイン1Bは、接地を検出した後に浮き上がりを検出すると、自動下降制御を再開することができる。
次に、コンバイン1Bの制御装置200により、刈取状態を検出する場合の制御について説明する。制御装置200は、図24に示すように、上記の接地を検出する場合の制御と同様に、高さ検出装置100の浮き上がりを検出する(ステップS71:Yes)と、高さ検出装置100が接地するまで刈取装置90を下降させ(ステップS72)、ダイヤル22が高くなる側へ設定されたと判断する(ステップS73:Yes)と、刈取装置90を所定量だけ鉛直方向の上側へ強制上昇させ(ステップS74)、自動下降制御を停止し、かつ自動下降制御の停止について表示手段24に案内表示する。次に、制御装置200は、刈取装置90の状態が非刈取状態であるか否かを判断する(ステップS75)。次に、制御装置200は、刈取装置90の状態が非刈取状態であると判断する(ステップS75:Yes)と、刈取装置90を非刈取高さに鉛直方向の上側へ上昇させる(ステップS76)。次に、制御装置200は、刈取装置90の状態が刈取状態であるか否かを判断する(ステップS77)。このステップS77では、制御装置200は、植生穀稈の刈り取りを行うために作業員が非刈取状態にある刈取装置90を鉛直方向の下側に下降させる操作(制御目標刈高さよりも鉛直方向の上側に位置する)を行うと、刈取装置90の状態が非刈取状態から刈取状態になったと判断する。次に、制御装置200は、刈取装置90の状態が刈取状態であると判断する(ステップS77:Yes)と、刈取装置90を制御目標刈高さに鉛直方向の下側へ下降させる(ステップS78)。次に、制御装置200は、ステップS71の制御ステップにリターンし、自動下降制御を再開し、かつ自動下降制御の再開について表示手段24に案内表示する。この結果、コンバイン1Bは、非刈取状態で強制上昇制御により停止された自動下降制御を、刈取状態で再開することができる。
以上のように、実施形態3に係るコンバイン1Bによれば、畝間の溝がある麦圃場等のように、自動下降制御を実施していると高さ検出装置100が溝内に入り込みやすくなる場合であっても、作業員がダイヤル22を制御目標刈高さが高くなる側へ設定することで、強制的に刈取装置90を鉛直方向の上側へ上昇させることができる。したがって、コンバイン1Bによれば、作業員がダイヤル22を制御目標刈高さが高くなる側へ設定することで、刈取装置90の地面GLへの突っ込みを抑制することができるという効果を奏する。
また、コンバイン1Bによれば、ダイヤル22を上げる操作(ダイヤル22を高くなる側へ設定する操作)しても、刈取装置90が鉛直方向の上側へ上昇しない(ダイヤル22が効かない)ことがないので、作業員が落ち着いて刈取作業を続けることができるという効果を奏する。
また、コンバイン1Bによれば、作業員がダイヤル22を制御目標刈高さが高くなる側へ設定することで、刈取装置90の自動下降制御が停止されるので、この自動下降制御を停止させるための操作を作業員が行わなくてもよい。また、コンバイン1Bによれば、自動下降制御を停止した状態で、高さ検出装置100が接地を検出すると、自動下降制御を再開するので、この自動下降制御を再開させるための操作を作業員が行わなくてもよい。また、コンバイン1Bによれば、刈取装置90の状態が非刈取状態から刈取状態になると、自動下降制御を再開するので、非刈取状態から刈取状態になった際に自動下降制御を再開させるための操作を作業員が行わなくてもよい。したがって、コンバイン1Bによれば、自動下降制御を停止させるための操作、および自動下降制御を再開させるための操作を作業員が行わなくてもよいので、作業員に対して操作性を向上することができるという効果を奏する。
また、コンバイン1Bによれば、自動下降制御の停止、および自動下降制御の再開について表示手段24に案内表示するので、作業員が刈取装置90の自動下降制御の停止および再開を視認することができるという効果を奏する。したがって、コンバイン1Bによれば、作業員に対して操作性が向上するという効果を奏する。
なお、上述した本発明の実施形態1から実施形態3に係るコンバインは、上述した実施形態1から実施形態3に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。