[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1および図2を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る回転磁界センサの概略の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る回転磁界センサの概略の構成を示す斜視図である。図2は、本実施の形態における方向と角度の定義を示す説明図である。
図1に示したように、本実施の形態に係る回転磁界センサ1は、基準位置における回転磁界MFの方向が基準方向に対してなす角度を検出するものである。基準位置における回転磁界MFの方向は、回転磁界センサ1から見て回転する。図1には、回転磁界MFを発生する手段の例として、円柱状の磁石2を示している。この磁石2は、円柱の中心軸を含む仮想の平面を中心として対称に配置されたN極とS極とを有している。この磁石2は、円柱の中心軸を中心として回転する。これにより、磁石2が発生する回転磁界MFの方向は、円柱の中心軸を含む回転中心Cを中心として回転する。
基準位置は、磁石2の一方の端面に平行な仮想の平面(以下、基準平面と言う。)内に位置する。この基準平面内において、磁石2が発生する回転磁界MFの方向は、基準位置を中心として回転する。基準方向は、基準平面内に位置して、基準位置と交差する。以下の説明において、基準位置における回転磁界MFの方向とは、基準平面内に位置する方向を指す。回転磁界センサ1は、磁石2の上記一方の端面に対向するように配置される。なお、後で、他の実施の形態で説明するように、回転磁界MFを発生する手段は、図1に示した磁石2に限られるものではない。
ここで、図1および図2を参照して、本実施の形態における方向と角度の定義について説明する。まず、図1に示した回転中心Cに平行で、図1における下から上に向かう方向をZ方向と定義する。図2では、Z方向を図2における奥から手前に向かう方向として表している。次に、Z方向に垂直な2方向であって、互いに直交する2つの方向をX方向とY方向と定義する。図2では、X方向を右側に向かう方向として表し、Y方向を上側に向かう方向として表している。また、X方向とは反対の方向を−X方向と定義し、Y方向とは反対の方向を−Y方向と定義する。
基準位置PRは、回転磁界センサ1が回転磁界MFを検出する位置である。基準方向DRは、−X方向とする。基準位置PRにおける回転磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度を記号θで表す。回転磁界MFの方向DMは、図2において反時計回り方向に回転するものとする。角度θは、基準方向DRから反時計回り方向に見たときに正の値で表し、基準方向DRから時計回り方向に見たときに負の値で表す。回転磁界センサ1は、角度θと対応関係を有する角度検出値θsを出力する。
本実施の形態に係る回転磁界センサ1の構成は、第1の態様でもよいし第2の態様でもよい。第1の態様の回転磁界センサ1は、n個の検出回路と角度計算部とを備えている。n個の検出回路は、それぞれ、少なくとも1つの磁気検出素子を含み、回転磁界MFの方向DMに対応した出力信号を生成する。角度計算部は、n個の検出回路の中から選択されたm個の検出回路からなるg個のグループに対応させて、それぞれ、角度θと対応関係を有するg個の角度値を算出する。n,m,gは、それぞれ以下の要件を満たす。mは、2以上の整数である。以下、これを要件1と言う。nは、mよりも2以上大きい整数である。以下、これを要件2と言う。gは、3以上nCm以下の整数である。以下、これを要件3と言う。
角度計算部は、g個の角度値の各々を、対応する1つのグループを構成するm個の検出回路のm個の出力信号に基づいて算出する。n個の検出回路の各々は、g個のグループのうちの1個以上、(g−2)個以下のグループを構成するために用いられる。以下、これを要件4と言う。要件1〜4の意味については、後で詳しく説明する。
第1の態様の回転磁界センサ1は、更に、上記g個の角度値を利用して、角度検出値θsを決定する角度決定部を備えている。この角度決定部は、n個の検出回路のうちの1つが故障した場合に、g個の角度値の中から、故障した1つの検出回路を含まない複数のグループに対応する複数の正しい角度値を抽出し、複数の正しい角度値のうちの少なくとも1つに基づいて、角度検出値θsを決定する。本実施の形態では、検出回路の故障には、予め決められた正常値に対する検出回路の出力信号のずれ量が比較的小さい態様の故障も含まれる。このような態様の故障は、例えば、後述する複数のMR膜のうちの1つが短絡したり、MR膜が異方性を持ったりして発生する。
角度決定部は、角度差計算部と判定部とを有していてもよい。角度差計算部は、g個の角度値の中から選択された2つの角度値からなる少なくともg個の角度値対について、それぞれ、角度値対を構成する2つの角度値の差である少なくともg個の角度差を算出する。g個の角度値の各々は、少なくともg個の角度値対のうちの少なくとも2つの角度値対を構成するために用いられる。判定部は、少なくともg個の角度差のうち、所定の範囲内となる1つ以上の角度差を抽出する。そして、判定部は、抽出した1つ以上の角度差に対応する1つ以上の角度値対を構成する複数の角度値を複数の正しい角度値と判定する。
このように、第1の態様の回転磁界センサ1は、n個の検出回路のうちの1つが故障しても正しい角度検出値θsを出力することを可能にする。第2の態様の回転磁界センサ1は、更に、故障した検出回路を特定することを可能にする。
第2の態様の回転磁界センサ1は、第1の態様の回転磁界センサ1における角度決定部の代わりに、故障した検出回路を特定する故障検出部を備えている。故障検出部は、n個の検出回路のうちの1つが故障した場合に、上記g個の角度値の中から、故障した1つの検出回路を含む全てのグループに対応する全ての誤った角度値を抽出する。そして、故障検出部は、全ての誤った角度値に対応する全てのグループには含まれるが全ての誤った角度値以外の全ての角度値に対応する全てのグループには含まれない1つの検出回路を、故障した検出回路と特定する。
第2の態様の回転磁界センサ1では、gは、要件3に加えて、mよりも2以上大きく、且つ(n−m+1)以上であるという要件を満たす。以下、この要件を要件5と言う。また、第2の態様の回転磁界センサ1では、g個のグループは、n個の検出回路のうちのどの1つが故障した場合であっても、故障した1つの検出回路を含む全てのグループには含まれるが他の全てのグループには含まれない検出回路が、故障した1つの検出回路しか存在しないような検出回路の組み合わせで作成されている。以下、これを要件6と言う。要件5,6についての意味については、後で詳しく説明する。
第2の態様の回転磁界センサ1では、故障検出部が角度検出値θsを決定する。角度検出値θsは、全ての誤った角度値以外の1つ以上の角度値に基づいて決定される。
故障検出部は、角度差計算部と故障判定部とを有していてもよい。第2の態様の回転磁界センサ1における角度差計算部の機能は、第1の態様の回転磁界センサ1における角度差計算部と同じである。故障判定部は、少なくともg個の角度差のうち、所定の範囲内となる全ての角度差を抽出し、抽出した全ての角度差に対応する全ての角度値対のどれにも含まれない全ての角度値を全ての誤った角度値と判定する。
次に、本実施の形態に係る角度決定方法の概略について説明する。本実施の形態に係る角度決定方法は、第1の態様でもよいし第2の態様でもよい。第1の態様の角度決定方法では、第1の態様の回転磁界センサ1を用いて、角度検出値θsを決定する。第2の態様の角度決定方法では、第2の態様の回転磁界センサ1を用いて、角度検出値θsを決定する。また、第2の態様の角度決定方法では、n個の検出回路のうちの1つが故障した場合には故障した検出回路を特定する。
第1および第2の態様の角度決定方法は、いずれも、第1の手順と第2の手順とを備えている。第1の手順では、n個の検出回路の中から選択されたm個の検出回路からなるg個のグループに対応させて、それぞれ、角度θと対応関係を有するg個の角度値を算出する。g個の角度値の各々は、対応する1つのグループを構成するm個の検出回路のm個の出力信号に基づいて算出される。第2の手順では、上記g個の角度値を利用して、角度検出値θsを決定する。第1および第2の態様の角度決定方法は、いずれも、前述の要件1〜4を満たしている。第2の態様の角度決定方法は、更に、前述の要件5,6を満たしている。
第1の態様の角度決定方法における第2の手順では、n個の検出回路のうちの1つが故障した場合には、g個の角度値の中から、故障した1つの検出回路を含まない複数のグループに対応する複数の正しい角度値を抽出する。そして、複数の正しい角度値のうちの少なくとも1つに基づいて、角度検出値θsを決定する。
第1の態様の角度決定方法における第2の手順は、g個の角度値の中から選択された2つの角度値からなる少なくともg個の角度値対について、それぞれ、角度値対を構成する2つの角度値の差である少なくともg個の角度差を算出する手順と、少なくともg個の角度差のうち、所定の範囲内となる1つ以上の角度差を抽出し、抽出した1つ以上の角度差に対応する1つ以上の角度値対を構成する複数の角度値を複数の正しい角度値と判定する手順とを含んでいてもよい。g個の角度値の各々は、少なくともg個の角度値対のうちの少なくとも2つの角度値対を構成するために用いられる。
第2の態様の角度決定方法における第2の手順では、n個の検出回路のうちの1つが故障した場合には、g個の角度値の中から、故障した1つの検出回路を含む全てのグループに対応する全ての誤った角度値を抽出する。そして、全ての誤った角度値に対応する全てのグループには含まれるが全ての誤った角度値以外の全ての角度値に対応する全てのグループには含まれない1つの検出回路を、故障した検出回路と特定する。角度検出値θsは、全ての誤った角度値以外の1つ以上の角度値に基づいて決定される。
第2の態様の角度決定方法における第2の手順は、g個の角度値の中から選択された2つの角度値からなる少なくともg個の角度値対について、それぞれ、角度値対を構成する2つの角度値の差である少なくともg個の角度差を算出する手順と、少なくともg個の角度差に基づいて、故障した検出回路を特定する手順とを含んでいてもよい。g個の角度値の各々は、少なくともg個の角度値対のうちの少なくとも2つの角度値対を構成するために用いられる。故障した検出回路を特定する手順は、少なくともg個の角度差のうち、所定の範囲内となる全ての角度差を抽出し、抽出した全ての角度差に対応する全ての角度値対のどれにも含まれない全ての角度値を全ての誤った角度値と判定する。
以下、本実施の形態に係る回転磁界センサ1および角度決定方法についての理解を容易にするために、回転磁界センサ1の第1および第2の実施例と、角度決定方法の第1および第2の実施例について説明する。その後で、本実施の形態に係る回転磁界センサ1および角度決定方法について概念的に説明する。
第1の実施例の回転磁界センサ1は、前述の第1の態様の回転磁界センサ1に対応し、前述の要件1〜4を満たしている。第2の実施例の回転磁界センサ1は、前述の第2の態様の回転磁界センサ1に対応し、前述の要件1〜6を満たしている。第1および第2の実施例の回転磁界センサ1では、nが4、mが2、gが4であり、4個の検出回路の各々は、4個のグループのうちの2個のグループを構成するために用いられている。
図3は、第1および第2の実施例の回転磁界センサ1の一部を示す回路図である。図3に示したように、第1および第2の実施例の回転磁界センサ1は、4つの検出回路、すなわち第1の検出回路10、第2の検出回路20、第3の検出回路30および第4の検出回路40を備えている。図1では、理解を容易にするために、第1ないし第4の検出回路10〜40を別体として描いているが、第1ないし第4の検出回路10〜40は一体化されていてもよい。また、図1では、第1ないし第4の検出回路10〜40が回転中心Cに平行な方向に積層されているが、その積層順序は図1に示した例に限られない。
また、第1の検出回路10が配置されている位置を第1の位置P1と呼び、第2の検出回路20が配置されている位置を第2の位置P2と呼び、第3の検出回路30が配置されている位置を第3の位置P3と呼び、第4の検出回路40が配置されている位置を第4の位置P4と呼ぶ。第1および第2の実施例では、第1ないし第4の位置P1〜P4は、回転磁界MFの回転方向について同じ位置であり、基準位置PRと一致している。
第1ないし第4の検出回路10〜40は、それぞれ、少なくとも1つの磁気検出素子を含み、回転磁界MFの方向DMに対応した第1ないし第4の出力信号を生成する。具体的に説明すると、第1の検出回路10は、回転磁界MFの方向DMと第1の方向D1との相対角度に対応した第1の出力信号S1を生成する。第1の出力信号S1は、回転磁界MFの方向DMが第1の方向D1のときに最大になる。第2の検出回路20は、回転磁界MFの方向DMと第2の方向D2との相対角度に対応した第2の出力信号S2を生成する。第2の出力信号S2は、回転磁界MFの方向DMが第2の方向D2のときに最大になる。第3の検出回路30は、回転磁界MFの方向DMと第3の方向D3との相対角度に対応した第3の出力信号S3を生成する。第3の出力信号S3は、回転磁界MFの方向DMが第3の方向D3のときに最大になる。第4の検出回路40は、回転磁界MFの方向DMと第4の方向D4との相対角度に対応した第4の出力信号S4を生成する。第4の出力信号S4は、回転磁界MFの方向DMが第4の方向D4のときに最大になる。
図2に示したように、第1および第2の実施例では、第1の方向D1は、基準方向DR(−X方向)と一致している。第2の方向D2は、第1の方向D1(基準方向DR)から反時計回り方向にθ2だけ回転した方向である。第3の方向D3は、第1の方向D1から反時計回り方向にθ3だけ回転した方向である。第4の方向D4は、第1の方向D1から反時計回り方向にθ4だけ回転した方向である。第1および第2の実施例では特に、θ2、θ3、θ4は、それぞれ、45°、90°、135°である。また、第3の方向D3は、−Y方向と一致している。
第1ないし第4の出力信号S1〜S4は、それぞれ、所定の信号周期Tで周期的に変化し、互いに位相が異なっている。理想的には、第1ないし第4の出力信号S1〜S4の波形は、正弦曲線(サイン(Sine)波形とコサイン(Cosine)波形を含む)となる。第1の出力信号S1と第2の出力信号S2の位相差の絶対値は45°であり、第1の出力信号S1と第3の出力信号S3の位相差の絶対値は90°であり、第1の出力信号S1と第4の出力信号S4の位相差の絶対値は135°である。また、第2の出力信号S2と第3の出力信号S3の位相差の絶対値、第3の出力信号S3と第4の出力信号S4の位相差の絶対値は、いずれも、45°である。なお、磁気検出素子の作製の精度等の観点から、各位相差の絶対値は、それぞれ、上述の値から、わずかにずれていてもよい。
図3に示したように、第1の検出回路10は、ホイートストンブリッジ回路14と、差分検出器15と、電源ポートV1と、グランドポートG1とを有している。ホイートストンブリッジ回路14は、直列に接続された第1の対の磁気検出素子R11,R12と、直列に接続された第2の対の磁気検出素子R13,R14と、2つの出力ポートE11,E12とを含んでいる。磁気検出素子R11,R13の各一端は、電源ポートV1に接続されている。磁気検出素子R11の他端は、磁気検出素子R12の一端と出力ポートE11に接続されている。磁気検出素子R13の他端は、磁気検出素子R14の一端と出力ポートE12に接続されている。磁気検出素子R12,R14の各他端は、グランドポートG1に接続されている。電源ポートV1とグランドポートG1との間には、所定の電圧が印加される。差分検出器15は、出力ポートE11,E12に接続された2つの入力端と、1つの出力端とを有している。差分検出器15は、出力ポートE11,E12の電位差に対応する信号を第1の出力信号S1として出力する。
第2ないし第4の検出回路20〜40の回路構成は、第1の検出回路10と同様である。すなわち、第2の検出回路20は、ホイートストンブリッジ回路24と、差分検出器25と、電源ポートV2と、グランドポートG2とを有している。ホイートストンブリッジ回路24は、直列に接続された第1の対の磁気検出素子R21,R22と、直列に接続された第2の対の磁気検出素子R23,R24と、2つの出力ポートE21,E22とを含んでいる。磁気検出素子R21,R23の各一端は、電源ポートV2に接続されている。磁気検出素子R21の他端は、磁気検出素子R22の一端と出力ポートE21に接続されている。磁気検出素子R23の他端は、磁気検出素子R24の一端と出力ポートE22に接続されている。磁気検出素子R22,R24の各他端は、グランドポートG2に接続されている。電源ポートV2とグランドポートG2との間には、所定の電圧が印加される。差分検出器25は、出力ポートE21,E22に接続された2つの入力端と、1つの出力端とを有している。差分検出器25は、出力ポートE21,E22の電位差に対応する信号を第2の出力信号S2として出力する。
第3の検出回路30は、ホイートストンブリッジ回路34と、差分検出器35と、電源ポートV3と、グランドポートG3とを有している。ホイートストンブリッジ回路34は、直列に接続された第1の対の磁気検出素子R31,R32と、直列に接続された第2の対の磁気検出素子R33,R34と、2つの出力ポートE31,E32とを含んでいる。磁気検出素子R31,R33の各一端は、電源ポートV3に接続されている。磁気検出素子R31の他端は、磁気検出素子R32の一端と出力ポートE31に接続されている。磁気検出素子R33の他端は、磁気検出素子R34の一端と出力ポートE32に接続されている。磁気検出素子R32,R34の各他端は、グランドポートG3に接続されている。電源ポートV3とグランドポートG3との間には、所定の電圧が印加される。差分検出器35は、出力ポートE31,E32に接続された2つの入力端と、1つの出力端とを有している。差分検出器35は、出力ポートE31,E32の電位差に対応する信号を第3の出力信号S3として出力する。
第4の検出回路40は、ホイートストンブリッジ回路44と、差分検出器45と、電源ポートV4と、グランドポートG4とを有している。ホイートストンブリッジ回路44は、直列に接続された第1の対の磁気検出素子R41,R42と、直列に接続された第2の対の磁気検出素子R43,R44と、2つの出力ポートE41,E42とを含んでいる。磁気検出素子R41,R43の各一端は、電源ポートV4に接続されている。磁気検出素子R41の他端は、磁気検出素子R42の一端と出力ポートE41に接続されている。磁気検出素子R43の他端は、磁気検出素子R44の一端と出力ポートE42に接続されている。磁気検出素子R42,R44の各他端は、グランドポートG4に接続されている。電源ポートV4とグランドポートG4との間には、所定の電圧が印加される。差分検出器45は、出力ポートE41,E42に接続された2つの入力端と、1つの出力端とを有している。差分検出器45は、出力ポートE41,E42の電位差に対応する信号を第4の出力信号S4として出力する。
第1および第2の実施例では、ホイートストンブリッジ回路(以下、ブリッジ回路と記す。)14,24,34,44に含まれる全ての磁気検出素子として、磁気抵抗効果素子(MR素子)、特にスピンバルブ型のMR素子を用いている。スピンバルブ型のMR素子は、TMR素子でもよいし、GMR素子でもよい。TMR素子またはGMR素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、回転磁界MFの方向DMに応じて磁化の方向が変化する磁性層である自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置された非磁性層とを有している。TMR素子では、非磁性層はトンネルバリア層である。GMR素子では、非磁性層は非磁性導電層である。TMR素子またはGMR素子では、自由層の磁化の方向が磁化固定層の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°のときに抵抗値は最小値となり、角度が180°のときに抵抗値は最大値となる。以下の説明では、ブリッジ回路14,24,34,44に含まれる磁気検出素子をMR素子と記す。図3において、塗りつぶした矢印は、MR素子における磁化固定層の磁化の方向を表し、白抜きの矢印は、MR素子における自由層の磁化の方向を表している。
第1の検出回路10では、MR素子R11,R14における磁化固定層の磁化の方向は、図2に示した第1の方向D1(−X方向)と同じ方向であり、MR素子R12,R13における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子R11,R14における磁化固定層の磁化の方向とは反対の方向である。この場合、回転磁界MFの方向DMと第1の方向D1との相対角度に応じて、出力ポートE11,E12の電位差が変化する。このようにして、第1の検出回路10によって、回転磁界MFの方向DMに対応した第1の出力信号S1が生成される。
第2の検出回路20では、MR素子R21,R24における磁化固定層の磁化の方向は、図2に示した第2の方向D2と同じ方向であり、MR素子R22,R23における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子R21,R24における磁化固定層の磁化の方向とは反対の方向である。この場合、回転磁界MFの方向DMと第2の方向D2との相対角度に応じて、出力ポートE21,E22の電位差が変化する。このようにして、第2の検出回路20によって、回転磁界MFの方向DMに対応した第2の出力信号S2が生成される。
第3の検出回路30では、MR素子R31,R34における磁化固定層の磁化の方向は、図2に示した第3の方向D3(−Y方向)と同じ方向であり、MR素子R32,R33における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子R31,R34における磁化固定層の磁化の方向とは反対の方向である。この場合、回転磁界MFの方向DMと第3の方向D3との相対角度に応じて、出力ポートE31,E32の電位差が変化する。このようにして、第3の検出回路30によって、回転磁界MFの方向DMに対応した第3の出力信号S3が生成される。
第4の検出回路40では、MR素子R41,R44における磁化固定層の磁化の方向は、図2に示した第4の方向D4と同じ方向であり、MR素子R42,R43における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子R41,R44における磁化固定層の磁化の方向とは反対の方向である。この場合、回転磁界MFの方向DMと第4の方向D4との相対角度に応じて、出力ポートE41,E42の電位差が変化する。このようにして、第4の検出回路40によって、回転磁界MFの方向DMに対応した第4の出力信号S4が生成される。
なお、検出回路10〜40内の複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子の作製の精度等の観点から、上述の方向からわずかにずれていてもよい。
また、ブリッジ回路14,24,34,44は、機械的構造と配置の姿勢は同じで、それらに含まれる複数の磁化固定層の磁化の方向のみが、図3に示したようにブリッジ回路14,24,34,44間で互いに異なっていてもよい。あるいは、ブリッジ回路14,24,34,44は、機械的構造が同じである上に、機械的構造と複数の磁化固定層の磁化の方向との位置関係も同じであってもよい。この場合には、ブリッジ回路14,24,34,44の配置の姿勢を互いに異ならせることによって、それらに含まれる複数の磁化固定層の磁化の方向を、図3に示したようにブリッジ回路14,24,34,44間で互いに異ならせることができる。
ここで、図6を参照して、MR素子の構成の一例について説明する。図6は、図3に示した回転磁界センサ1におけるMR素子の一部を示す斜視図である。この例では、1つのMR素子は、複数の下部電極142と、複数のMR膜150と、複数の上部電極143とを有している。複数の下部電極142は図示しない基板上に配置されている。個々の下部電極142は細長い形状を有している。下部電極142の長手方向に隣接する2つの下部電極142の間には、間隙が形成されている。図6に示したように、下部電極142の上面上において、長手方向の両端の近傍に、それぞれMR膜150が配置されている。MR膜150は、下部電極142側から順に積層された自由層151、非磁性層152、磁化固定層153および反強磁性層154を含んでいる。自由層151は、下部電極142に電気的に接続されている。反強磁性層154は、反強磁性材料よりなり、磁化固定層153との間で交換結合を生じさせて、磁化固定層153の磁化の方向を固定する。複数の上部電極143は、複数のMR膜150の上に配置されている。個々の上部電極143は細長い形状を有し、下部電極142の長手方向に隣接する2つの下部電極142上に配置されて隣接する2つのMR膜150の反強磁性層154同士を電気的に接続する。このような構成により、図6に示したMR素子は、複数の下部電極142と複数の上部電極143とによって直列に接続された複数のMR膜150を有している。なお、MR膜150における層151〜154の配置は、図6に示した配置とは上下が反対でもよい。
図3に示したように、第1および第2の実施例の回転磁界センサ1は、更に、角度計算部50を備えている。図5は、角度計算部50の構成を示すブロック図である。第1および第2の実施例では、角度計算部50は、4個の角度値を算出する。角度計算部50は、第1の角度計算回路51、第2の角度計算回路52、第3の角度計算回路53および第4の角度計算回路54を有している。第1ないし第4の角度計算回路51〜54は、それぞれ2つの入力端と1つの出力端とを有している。第1の角度計算回路51の2つの入力端は、第1の検出回路10の差分検出器15の出力端と第2の検出回路20の差分検出器25の出力端に接続されている。第2の角度計算回路52の2つの入力端は、第2の検出回路20の差分検出器25の出力端と第3の検出回路30の差分検出器35の出力端に接続されている。第3の角度計算回路53の2つの入力端は、第3の検出回路30の差分検出器35の出力端と第4の検出回路40の差分検出器45の出力端に接続されている。第4の角度計算回路54の2つの入力端は、第4の検出回路40の差分検出器45の出力端と第1の検出回路10の差分検出器15の出力端に接続されている。
第1の角度計算回路51は、正規化回路511,512,515,516と、加算回路513と、減算回路514と、演算部517とを含んでいる。正規化回路511,512,515,516は、それぞれ入力端と出力端とを有している。加算回路513、減算回路514および演算部517は、それぞれ2つの入力端と1つの出力端とを有している。第1の角度計算回路51の2つの入力端は、正規化回路511,512の各入力端によって構成されている。すなわち、正規化回路511,512の各入力端は、それぞれ差分検出器15,25の各出力端に接続されている。加算回路513の2つの入力端は、正規化回路511,512の各出力端に接続されている。減算回路514の2つの入力端も、正規化回路511,512の各出力端に接続されている。正規化回路515の入力端は、加算回路513の出力端に接続されている。正規化回路516の入力端は、減算回路514の出力端に接続されている。演算部517の2つの入力端は、正規化回路515,516の各出力端に接続されている。第1の角度計算回路51の出力端は、演算部517の出力端によって構成されている。
第2ないし第4の角度計算回路52〜54の構成は、第1の角度計算回路51と同様である。すなわち、第2の角度計算回路52は、正規化回路521,522,525,526と、加算回路523と、減算回路524と、演算部527とを含んでいる。正規化回路521,522,525,526は、それぞれ入力端と出力端とを有している。加算回路523、減算回路524および演算部527は、それぞれ2つの入力端と1つの出力端とを有している。第2の角度計算回路52の2つの入力端は、正規化回路521,522の各入力端によって構成されている。すなわち、正規化回路521,522の各入力端は、それぞれ差分検出器25,35の各出力端に接続されている。加算回路523の2つの入力端は、正規化回路521,522の各出力端に接続されている。減算回路524の2つの入力端も、正規化回路521,522の各出力端に接続されている。正規化回路525の入力端は、加算回路523の出力端に接続されている。正規化回路526の入力端は、減算回路524の出力端に接続されている。演算部527の2つの入力端は、正規化回路525,526の各出力端に接続されている。第2の角度計算回路52の出力端は、演算部527の出力端によって構成されている。
第3の角度計算回路53は、正規化回路531,532,535,536と、加算回路533と、減算回路534と、演算部537とを含んでいる。正規化回路531,532,535,536は、それぞれ入力端と出力端とを有している。加算回路533、減算回路534および演算部537は、それぞれ2つの入力端と1つの出力端とを有している。第3の角度計算回路53の2つの入力端は、正規化回路531,532の各入力端によって構成されている。すなわち、正規化回路531,532の各入力端は、それぞれ差分検出器35,45の各出力端に接続されている。加算回路533の2つの入力端は、正規化回路531,532の各出力端に接続されている。減算回路534の2つの入力端も、正規化回路531,532の各出力端に接続されている。正規化回路535の入力端は、加算回路533の出力端に接続されている。正規化回路536の入力端は、減算回路534の出力端に接続されている。演算部537の2つの入力端は、正規化回路535,536の各出力端に接続されている。第3の角度計算回路53の出力端は、演算部537の出力端によって構成されている。
第4の角度計算回路54は、正規化回路541,542,545,546と、加算回路543と、減算回路544と、演算部547とを含んでいる。正規化回路541,542,545,546は、それぞれ入力端と出力端とを有している。加算回路543、減算回路544および演算部547は、それぞれ2つの入力端と1つの出力端とを有している。第4の角度計算回路54の2つの入力端は、正規化回路541,542の各入力端によって構成されている。すなわち、正規化回路541,542の各入力端は、それぞれ差分検出器45,15の各出力端に接続されている。加算回路543の2つの入力端は、正規化回路541,542の各出力端に接続されている。減算回路544の2つの入力端も、正規化回路541,542の各出力端に接続されている。正規化回路545の入力端は、加算回路543の出力端に接続されている。正規化回路546の入力端は、減算回路544の出力端に接続されている。演算部547の2つの入力端は、正規化回路545,546の各出力端に接続されている。第4の角度計算回路54の出力端は、演算部547の出力端によって構成されている。
第1ないし第4の角度計算回路51,52,53,54は、それぞれ角度θと対応関係を有する角度値θs1,θs2,θs3,θs4を算出する。角度値θs1〜θs4の算出方法については、後で説明する。
図4は、回転磁界センサ1のうちの、検出回路10〜40および角度計算部50を除いた部分を示す回路図である。図4に示したように、第1および第2の実施例の回転磁界センサ1は、更に、制御部60を備えている。制御部60は、第1の態様の回転磁界センサ1における角度決定部と第2の態様の回転磁界センサ1における故障検出部の両方に対応する。制御部60は、角度差計算部61と、判定部62と、角度出力部63とを有している。判定部62は、第1の態様の回転磁界センサ1における判定部と第2の態様の回転磁界センサ1における故障判定部の両方に対応する。
第1および第2の実施例では、角度差計算部61は、4つの角度値対について4つの角度差を算出する。角度差計算部61は、第1の減算回路61A、第2の減算回路61B、第3の減算回路61Cおよび第4の減算回路61Dを含んでいる。第1ないし第4の減算回路61A〜61Dは、それぞれ2つの入力端と1つの出力端とを有している。判定部62は、4つの入力端を有している。角度出力部63は、4つの入力端と1つの出力端とを有している。
第1の減算回路61Aの2つの入力端は、第1の角度計算回路51の出力端(演算部517の出力端)と、第2の角度計算回路52の出力端(演算部527の出力端)に接続されている。第2の減算回路61Bの2つの入力端は、第2の角度計算回路52の出力端(演算部527の出力端)と、第3の角度計算回路53の出力端(演算部537の出力端)に接続されている。第3の減算回路61Cの2つの入力端は、第3の角度計算回路53の出力端(演算部537の出力端)と、第4の角度計算回路54の出力端(演算部547の出力端)に接続されている。第4の減算回路61Dの2つの入力端は、第4の角度計算回路54の出力端(演算部547の出力端)と、第1の角度計算回路51の出力端(演算部517の出力端)に接続されている。
判定部62の4つの入力端は、それぞれ、第1ないし第4の減算回路61A〜61Dの出力端に接続されている。角度出力部63の4つの入力端は、それぞれ、第1ないし第4の角度計算回路51〜54の出力端(演算部517〜547の出力端)に接続されている。
第1の減算回路61Aは、角度値対(θs1,θs2)を構成する2つの角度値θs1,θs2の差(θs1−θs2)である角度差θAを算出する。第2の減算回路61Bは、角度値対(θs2,θs3)を構成する2つの角度値θs2,θs3の差(θs2−θs3)である角度差θBを算出する。第3の減算回路61Cは、角度値対(θs3,θs4)を構成する2つの角度値θs3,θs4の差(θs3−θs4)である角度差θCを算出する。第4の減算回路61Dは、角度値対(θs4,θs1)を構成する2つの角度値θs4,θs1の差(θs4−θs1)である角度差θDを算出する。
判定部62の動作は、第1の実施例と第2の実施例で以下のように異なる。第1の実施例では、判定部62は、4つの角度差θA〜θDの中から、複数の正しい角度値を抽出する。第2の実施例では、判定部62は、4つの角度差θA〜θDのそれぞれについて、正しい角度値であるか誤った角度値であるかを判定し、この判定結果に基づいて、故障した検出回路を特定する。この判定部62の動作については、後で詳しく説明する。
角度出力部63は、判定部62によって制御されて、角度検出値θsを決定し、出力端から出力する。判定部62および角度出力部63は、例えば、1つのマイクロコンピュータによって実現することができる。この場合、判定部62と角度出力部63は、物理的に別個の要素ではなく、ソフトウェアによって実現される。角度出力部63による角度検出値θsの決定方法については、後で説明する。
次に、角度計算部50および制御部60の動作と、第1および第2の実施例の角度決定方法について説明する。第1の実施例の角度決定方法は、第1の実施例の回転磁界センサ1を用いる。また、第1の実施例の角度決定方法は、前述の第1の態様の角度決定方法に対応し、前述の要件1〜4を満たしている。第2の実施例の角度決定方法は、第2の実施例の回転磁界センサ1を用いる。また、第2の実施例の角度決定方法は、前述の第2の態様の角度決定方法に対応し、前述の要件1〜6を満たしている。図7は、第1の実施例の角度決定方法を示すフローチャートである。図8は、第2の実施例の角度決定方法を示すフローチャートである。第1および第2の実施例の角度決定方法は、以下の第1の手順S101および第2の手順S102を備えている。
第1の手順S101では、角度計算部50によって、4つの検出回路10〜40の中から選択された2つの検出回路からなる4つのグループに対応させて、それぞれ、角度検出値θsと対応関係を有する4つの角度値θs1〜θs4を算出する。4つの検出回路10〜40の各々は、4つのグループのうちの1つ以上、2つ以下のグループを構成するために用いられる。第1および第2の実施例では特に、4つの検出回路10〜40の各々は、4つのグループのうちの2つのグループを構成するために用いられる。
以下、4つの角度値θs1〜θs4の算出方法の具体例を示す。この例では、4つの角度値θs1〜θs4の各々は、以下のように、対応する1つのグループを構成する2つの検出回路の2つの出力信号に基づいて算出される。角度値θs1は、第1および第2の検出回路10,20からなる第1のグループについて算出される角度値である。角度値θs1は、第1および第2の出力信号S1,S2に基づいて、第1の角度計算回路51によって算出される。角度値θs2は、第2および第3の検出回路20,30からなる第2のグループについて算出される角度値である。角度値θs2は、第2および第3の出力信号S2,S3に基づいて、第2の角度計算回路52によって算出される。角度値θs3は、第3および第4の検出回路30,40からなる第3のグループについて算出される角度値である。角度値θs3は、第3および第4の出力信号S3,S4に基づいて、第3の角度計算回路53によって算出される。角度値θs4は、第4および第1の検出回路40,10からなる第4のグループについて算出される角度値である。角度値θs4は、第4および第1の出力信号S4,S1に基づいて、第4の角度計算回路54によって算出される。
第2の手順S102では、制御部60によって、4つの角度値θs1〜θs4を利用して、角度検出値θsを決定する。図7に示したように、第1の実施例の角度決定方法における第2の手順S102は、4つの角度値θs1〜θs4の中から選択された2つの角度値からなる4つの角度値対について、それぞれ、角度値対を構成する2つの角度値の差である4つの角度差θA〜θDを算出する手順S102Aと、4つの角度差θA〜θDを利用して、複数の正しい角度値を抽出する手順S102Bと、手順S102Bで抽出された複数の正しい角度値のうちの少なくとも1つに基づいて、角度検出値θsを決定する手順S102Cとを含んでいる。手順S102Bでは、4個の検出回路のうちの1つが故障した場合には、4個の角度値θs1〜θs4の中から、故障した1つの検出回路を含まない複数のグループに対応する複数の正しい角度値を抽出する。また、手順S102Bでは、4つの角度差θA〜θDのうち、所定の範囲内となる1つ以上の角度差を抽出し、抽出した1つ以上の角度差に対応する1つ以上の角度値対を構成する複数の角度値を複数の正しい角度値と判定する。4つの角度値θs1〜θs4の各々は、4つの角度値対のうちの少なくとも2つの角度値対を構成するために用いられる。手順S102Aは、角度差計算部61によって実行される。手順S102Bは、判定部62によって実行される。手順S102Cは、角度出力部63によって実行される。
図8に示したように、第2の実施例の角度決定方法における第2の手順S102は、前述の手順S102Aと同様の手順であって、4つの角度差θA〜θDを算出する手順S102Dと、4つの角度差θA〜θDに基づいて、故障した検出回路を特定する手順S102Eと、角度検出値θsを決定する手順S102Fとを含んでいる。4つの角度値θs1〜θs4の各々は、4つの角度値対のうちの少なくとも2つの角度値対を構成するために用いられる。手順S102Eは、4つの角度差のうち、所定の範囲内となる全ての角度差を抽出し、抽出した全ての角度差に対応する全ての角度値対のどれにも含まれない全ての角度値を全ての誤った角度値と判定する。このようにして、4個の検出回路のうちの1つが故障した場合には、4個の角度値θs1〜θs4の中から、故障した1つの検出回路を含む全てのグループに対応する全ての誤った角度値が抽出される。手順S102Eは、更に、全ての誤った角度値に対応する全てのグループには含まれるが全ての誤った角度値以外の全ての角度値に対応する全てのグループには含まれない1つの検出回路を、故障した検出回路と特定する。手順S102Fは、手順S102Eで抽出された全ての誤った角度値以外の1つ以上の角度値に基づいて、角度検出値θsを決定する。手順S102Dは、角度差計算部61によって実行される。手順S102Eは、判定部62によって実行される。手順S102Fは、角度出力部63によって実行される。
以下、4つの角度値対と4つの角度差の具体例を示す。この例では、角度差θAは、2つの角度値θs1,θs2からなる角度値対について算出された角度差である。角度差θBは、2つの角度値θs2,θs3からなる角度値対について算出された角度差である。角度差θCは、2つの角度値θs3,θs4からなる角度値対について算出された角度差である。角度差θDは、2つの角度値θs4,θs1からなる角度値対について算出された角度差である。
次に、図5を参照して、第1の手順S101および角度計算部50における角度値θs1〜θs4の算出方法について詳しく説明する。なお、以下の説明では、検出回路10〜40に故障が発生していないものとする。第1の角度計算回路51は、以下のようにして角度値θs1を算出する。正規化回路511は、第1の出力信号S1を正規化した信号を加算回路513および減算回路514に対して出力する。正規化回路512は、第2の出力信号S2を正規化した信号を加算回路513および減算回路514に対して出力する。正規化回路511,512は、例えば、出力信号S1,S2の最大値が共に1になり、出力信号S1,S2の最小値が共に−1になるように、出力信号S1,S2を正規化する。第1の出力信号S1と第2の出力信号S2の位相差の絶対値は、45°(π/4)である。そこで、第1の出力信号S1を正規化した信号をcosθと表し、第2の出力信号S2を正規化した信号をcos(θ−π/4)と表す。
加算回路513は、第1の出力信号S1を正規化した信号cosθと第2の出力信号S2を正規化した信号cos(θ−π/4)の和を求めることを含む演算によって、加算信号を生成する。なお、「第1の出力信号S1を正規化した信号cosθと第2の出力信号S2を正規化した信号cos(θ−π/4)の和を求めることを含む演算」という表現は、演算は、信号cosθと信号cos(θ−π/4)の和を求めた後に、正規化等のために所定の係数を掛けたり、所定の値を加減したりする場合も含むという趣旨である。これは、他の同様の表現についても同様である。
減算回路514は、第1の出力信号S1を正規化した信号cosθと第2の出力信号S2を正規化した信号cos(θ−π/4)の差を求めることを含む演算によって、減算信号を生成する。正規化回路515は、加算信号を正規化した信号S11を演算部517に対して出力する。正規化回路516は、減算信号を正規化した信号S12を演算部517に対して出力する。正規化回路515,516は、例えば、加算信号および減算信号の最大値が共に1になり、加算信号および減算信号の最小値が共に−1になるように、加算信号および減算信号を正規化する。この場合、信号S11はcos(θ−π/8)となり、信号S12はsin(θ−π/8)となる。
演算部517は、信号S11と信号S12に基づいて、角度値θs1を算出する。ここで、θ−π/8をθp1と表す。θs1とθp1との間には、θs1=θp1+π/8の関係が成立する。演算部517は、下記の式(1)によって、θs1を算出する。なお、“atan”は、アークタンジェントを表す。
θs1=θp1+π/8
=atan(S12/S11)+π/8
=atan(sinθp1/cosθp1)+π/8 …(1)
式(1)におけるatan(sinθp1/cosθp1)は、θp1を求めるアークタンジェント計算を表している。なお、θp1が0°以上360°未満の範囲内では、式(1)におけるθp1の解には、180°異なる2つの値がある。しかし、S11,S12の正負の組み合わせにより、θp1の真の値が、式(1)におけるθp1の2つの解のいずれであるかを判別することができる。すなわち、S11が正の値のときは、θp1は、0°以上90゜未満、および270°より大きく360°以下の範囲内である。S11が負の値のときは、θp1は90°よりも大きく270°よりも小さい。S12が正の値のときは、θp1は0°よりも大きく180°よりも小さい。S12が負の値のときは、θp1は180°よりも大きく360°よりも小さい。演算部517は、式(1)と、上記のS11,S12の正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθp1を求める。
第2ないし第4の角度計算回路52〜54における角度値θs2〜θs4の算出方法は、基本的には、第1の角度計算回路51における角度値θs1の算出方法と同じである。すなわち、第2の角度計算回路52では、正規化回路521は、正規化回路511と同様に、第2の出力信号S2を正規化した信号を加算回路523および減算回路524に対して出力する。正規化回路522は、正規化回路512と同様に、第3の出力信号S3を正規化した信号を加算回路523および減算回路524に対して出力する。第1の出力信号S1と第3の出力信号S3の位相差の絶対値は、90°(π/2)である。そこで、第3の出力信号S3を正規化した信号をcos(θ−π/2)と表す。
加算回路523は、第2の出力信号S2を正規化した信号cos(θ−π/4)と第3の出力信号S3を正規化した信号cos(θ−π/2)の和を求めることを含む演算によって、加算信号を生成する。また、減算回路524は、第2の出力信号S2を正規化した信号cos(θ−π/4)と第3の出力信号S3を正規化した信号cos(θ−π/2)の差を求めることを含む演算によって、減算信号を生成する。正規化回路525は、正規化回路515と同様に、加算信号を正規化した信号S21を演算部527に対して出力する。正規化回路526は、正規化回路516と同様に、減算信号を正規化した信号S22を演算部527に対して出力する。この場合、信号S21はcos(θ−3π/8)となり、信号S22はsin(θ−3π/8)となる。
演算部527は、信号S21と信号S22に基づいて、角度値θs2を算出する。ここで、θ−3π/8をθp2と表す。θs2とθp2との間には、θs2=θp2+3π/8の関係が成立する。演算部527は、下記の式(2)によって、θs2を算出する。
θs2=θp2+3π/8
=atan(S22/S21)+3π/8
=atan(sinθp2/cosθp2)+3π/8 …(2)
式(2)におけるatan(sinθp2/cosθp2)は、θp2を求めるアークタンジェント計算を表している。演算部527は、演算部517と同様に、式(2)と、S21,S22の正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθp2を求める。
また、第3の角度計算回路53では、正規化回路531は、正規化回路511と同様に、第3の出力信号S3を正規化した信号を加算回路533および減算回路534に対して出力する。正規化回路532は、正規化回路512と同様に、第4の出力信号S4を正規化した信号を加算回路533および減算回路534に対して出力する。第1の出力信号S1と第4の出力信号S4の位相差の絶対値は、135°(3π/4)である。そこで、第4の出力信号S4を正規化した信号をcos(θ−3π/4)と表す。
加算回路533は、第3の出力信号S3を正規化した信号cos(θ−π/2)と第4の出力信号S4を正規化した信号cos(θ−3π/4)の和を求めることを含む演算によって、加算信号を生成する。また、減算回路534は、第3の出力信号S3を正規化した信号cos(θ−π/2)と第4の出力信号S4を正規化した信号cos(θ−3π/4)の差を求めることを含む演算によって、減算信号を生成する。正規化回路535は、正規化回路515と同様に、加算信号を正規化した信号S31を演算部537に対して出力する。正規化回路536は、正規化回路516と同様に、減算信号を正規化した信号S32を演算部537に対して出力する。この場合、信号S31はcos(θ−5π/8)となり、信号S32はsin(θ−5π/8)となる。
演算部537は、信号S31と信号S32に基づいて、角度値θs3を算出する。ここで、θ−5π/8をθp3と表す。θs3とθp3との間には、θs3=θp3+5π/8の関係が成立する。演算部537は、下記の式(3)によって、θs3を算出する。
θs3=θp3+5π/8
=atan(S32/S31)+5π/8
=atan(sinθp3/cosθp3)+5π/8 …(3)
式(3)におけるatan(sinθp3/cosθp3)は、θp3を求めるアークタンジェント計算を表している。演算部537は、演算部517と同様に、式(3)と、S31,S32の正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθp3を求める。
また、第4の角度計算回路54では、正規化回路541は、正規化回路511と同様に、第4の出力信号S4を正規化した信号を加算回路543および減算回路544に対して出力する。正規化回路542は、正規化回路512と同様に、第1の出力信号S1を正規化した信号を加算回路543および減算回路544に対して出力する。
加算回路543は、第4の出力信号S4を正規化した信号cos(θ−3π/4)と第1の出力信号S1を正規化した信号cosθの和を求めることを含む演算によって、加算信号を生成する。また、減算回路544は、第4の出力信号S4を正規化した信号cos(θ−3π/4)と第1の出力信号S1を正規化した信号cosθの差を求めることを含む演算によって、減算信号を生成する。正規化回路545は、正規化回路515と同様に、加算信号を正規化した信号S41を演算部547に対して出力する。正規化回路546は、正規化回路516と同様に、減算信号を正規化した信号S42を演算部547に対して出力する。この場合、信号S41は−sin(θ−7π/8)となり、信号S42は−cos(θ−7π/8)となる。
演算部547は、信号S41と信号S42に基づいて、角度値θs4を算出する。ここで、θ−7π/8をθp4と表す。θs4とθp4との間には、θs4=θp4+7π/8の関係が成立する。演算部547は、下記の式(4)によって、θs4を算出する。
θs4=θp4+7π/8
=atan(S41/S42)+7π/8
=atan(sinθp4/cosθp4)+7π/8 …(4)
式(4)におけるatan(sinθp4/cosθp4)は、θp4を求めるアークタンジェント計算を表している。なお、S41が正の値のときは、θp4は180°よりも大きく360°よりも小さい。S41が負の値のときは、θp4は0°よりも大きく180°よりも小さい。S42が正の値のときは、θp4は90°よりも大きく270°よりも小さい。S42が負の値のときは、θp4は、0°以上90゜未満、および270°より大きく360°以下の範囲内である。演算部547は、式(4)と、上記のS41,S42の正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθp4を求める。
ここで、第1ないし第4の出力信号S1〜S4と第1ないし第4の角度値θs1〜θs4の性質について説明する。前述のように、理想的には、第1ないし第4の出力信号S1〜S4の波形は、正弦曲線となる。ここで、第1ないし第4の出力信号S1〜S4は、それぞれ、理想的な正弦曲線を描くように周期的に変化する理想成分と、それ以外の誤差成分とを含むものとする。なお、第1ないし第4の出力信号S1〜S4のそれぞれの誤差成分は、第1ないし第4の検出回路10〜40が故障していなくても生じ得る。
図9は、第1ないし第4の出力信号S1〜S4の理想成分の波形の一例を示す波形図である。図9において、横軸は角度θを示し、縦軸は理想成分の大きさを示している。符号81,82,83,84で示す波形は、それぞれ、出力信号S1,S2,S3,S4の理想成分を示している。なお、図9では、理想成分の最大値が1になり、最小値が−1になるように正規化している。
第1ないし第4の出力信号S1〜S4がそれぞれ誤差成分を含む場合、第1ないし第4の出力信号S1〜S4に基づいて算出される角度値θs1〜θs4は、それぞれ角度誤差を含むことになる。角度値θs1〜θs4の角度誤差は、それぞれ、回転磁界MFの方向DMが理想的に回転する場合に想定される角度値θs1〜θs4の理論値に対する誤差である。
次に、図7に示した手順S102A,S102Bにおいて正しい角度値を判定するための原理、ならびに図8に示した手順S102D,S102Eにおいて正しい角度値と誤った角度値を判定し、故障回路を特定するための原理について説明する。第1ないし第4の検出回路10〜40がいずれも正常である場合には、角度値θs1〜θs4は、一致するか極めて近い値になり、角度値θs1〜θs4のそれぞれの角度誤差も、一致するか極めて近い値になる。
第1ないし第4の検出回路10〜40のうちの1つが故障すると、故障した検出回路の出力信号は、その検出回路が正常であるときの出力信号とは異なったものとなる。その結果、4つの角度値θs1〜θs4のうち、故障した1つの検出回路を含む2つのグループに対応する2つの角度値は誤った角度値となり、他の2つの角度値は正しい角度値となる。2つの正しい角度値は、一致するか極めて近い値になるのに対し、2つの誤った角度値は、2つの正しい角度値とは明らかに異なる。同様に、2つの正しい角度値の角度誤差は、一致するか極めて近い値になるのに対し、2つの誤った角度値の角度誤差は、2つの正しい角度値の角度誤差とは明らかに異なる。従って、2つの誤った角度値は、2つの正しい角度値に対して識別可能である。以下、これについて、第1の検出回路10が故障した場合を例にとって具体的に説明する。
第1の検出回路10が故障した場合には、第1の検出回路10を含む2つのグループについて算出された2つの角度値θs1,θs4は、誤った角度値となり、第1の検出回路10を含まない2つのグループについて算出された2つの角度値θs2,θs3は、正しい角度値となる。すなわち、角度値θs2,θs3は、一致するか極めて近い値になるのに対し、角度値θs1,θs4は、互いに明らかに異なると共に、角度値θs2,θs3とも明らかに異なる。同様に、角度値θs2,θs3の角度誤差は、一致するか極めて近い値になるのに対し、角度値θs1,θs4の角度誤差は、互いに明らかに異なると共に、角度値θs2,θs3の角度誤差とも明らかに異なる。
図10は、第1の検出回路10が故障した場合における角度値θs1〜θs4のそれぞれの角度誤差の一例を示す波形図である。図10において、横軸は角度θを示し、縦軸は角度誤差の大きさを示している。符号91,92,93,94で示す波形は、それぞれ、角度値θs1,θs2,θs3,θs4の角度誤差を示している。この例では、角度値θs2,θs3の角度誤差92,93は、互いに一致している。一方、角度値θs1,θs4の角度誤差91,94は、互いに明らかに異なると共に、角度値θs2,θs3の角度誤差92,93とも明らかに異なる。
第1および第2の実施例の回転磁界センサ1ならびに第1および第2の実施例の角度決定方法では、角度差計算部61(減算回路61A〜61D)によって角度差θA〜θDを算出している。これは、以下のような角度差の性質を利用して、2つの誤った角度値と2つの正しい角度値を識別するためである。すなわち、2つの正しい角度値からなる角度値対について算出された角度差は、0または0に極めて近い値になる。これに対し、少なくとも一方が誤った角度値である角度値対について算出された角度差は、2つの正しい角度値からなる角度値対について算出された角度差に比べて大きくなる。第1および第2の実施例の回転磁界センサ1ならびに第1および第2の実施例の角度決定方法では、このような角度差の性質を利用して、4つの角度差θA〜θDのうち、所定の範囲内となる1つの角度差を抽出し、抽出した1つの角度差に対応する1つの角度値対を構成する2つの角度値を正しい角度値と判定する。第2の実施例の回転磁界センサ1および第2の実施例の角度決定方法では、更に、2つの正しい角度値以外の2つの角度値を誤った角度値と判定する。そして、2つの誤った角度値に対応する2つのグループには含まれるが、2つの正しい角度値に対応する2つのグループには含まれない1つの検出回路を、故障した検出回路と特定する。
図11は、第1の検出回路10が故障した場合の角度差θA〜θDの一例を示す波形図である。図11において、横軸は角度θを示し、縦軸は角度差の大きさを示している。この例では、正しい角度値である角度値θs2,θs3からなる角度値対について算出された角度差θBは、角度θに関わらずに常に0である。これに対し、誤った角度値である角度値θs1とθs4の少なくとも一方を含む角度値対について算出された角度差θA,θC,θDは、角度θに関わらずに常に0にはならずに、角度θの変化に伴って変化している。
判定部62は、4つの角度差θA〜θDのうち、所定の範囲内となる1つの角度差を抽出する。所定の範囲は、例えば−0.01°以上0.01°以下の範囲とする。判定部62は、抽出した角度差に対応する角度値対を構成する角度値を正しい角度値と判定し、抽出した角度差に対応する角度値対を構成する角度値以外の角度値を誤った角度値と判定する。第2の実施例の角度決定方法では、判定部62は、更に、2つの誤った角度値に対応する2つのグループには含まれるが、2つの正しい角度値に対応する2つのグループには含まれない1つの検出回路を、故障した検出回路と特定する。
図11に示した例では、所定の範囲内となる1つの角度差としてθBが抽出される。θBに対応する角度値対を構成する角度値はθs2,θs3であることから、θs2,θs3は正しい角度値と判定され、θs2,θs3以外のθs1,θs4が誤った角度値と判定される。θs1に対応する第1のグループは第1および第2の検出回路10,20によって構成され、θs4に対応する第4のグループは第4および第1の検出回路40,10によって構成されている。この場合、2つの誤った角度値θs1,θs4に対応する2つのグループには含まれるが、2つの正しい角度値θs2,θs3に対応する2つのグループには含まれない第1の検出回路10が、故障した検出回路と特定される。
なお、検出回路10〜40に故障が発生していない場合、4つの角度差θA〜θDは、いずれも、角度θに関わらずに常に所定の範囲内となる。この場合、判定部62は、4つの角度値θs1〜θs4の全てを正しい角度値と判定する。
次に、図7、図8に示した手順S102C,S102Fおよび角度出力部63における角度検出値θsの決定方法について説明する。検出回路10〜40に故障が発生していない場合には、判定部62では、4つの角度値θs1〜θs4の全てが正しい角度値と判定される。第1ないし第4の検出回路10〜40のうちの1つが故障した場合には、判定部62では、4つの角度値θs1〜θs4のうち、2つは誤った角度値と判定され、残りの2つは正しい角度値と判定される。角度出力部63は、予め決められた規則に従って、複数の正しい角度値に基づいて、角度検出値θsを決定する。予め決められた規則とは、例えば、複数の正しい角度値の平均値を、角度検出値θsとするといったものや、角度値をθsr(rは1〜4の整数)と表したときに、複数の正しい角度値のうち、rの値が小さい角度値を、角度検出値θsとするといったものである。4つの角度値θs1〜θs4の全てが正しい角度値と判定された場合には、角度出力部63は、例えば、θs1〜θs4の平均値を角度検出値θsとして出力したり、θs1を角度検出値として出力したりする。また、例えばθs1,θs4が誤った角度値と判定され、θs2,θs3が正しい角度値と判定された場合には、角度出力部63は、例えば、θs2,θs3の平均値を角度検出値θsとして出力したり、θs2を角度検出値θsとして出力したりする。
以上説明した第1および第2の実施例の回転磁界センサ1ならびに第1および第2の実施例の角度決定方法では、nが4、mが2、gが4である。しかし、本実施の形態に係る回転磁界センサ1および角度決定方法では、複数の検出回路のうちの1つが故障しても正しい角度検出値θsを出力できるようにするためには、前述の要件1〜4を満たしていればよく、更に、故障した検出回路を特定できるようにするためには、前述の要件1〜6を満たしていればよい。
前述のように、角度計算部は、g個のグループに対応するg個の角度値の各々を、対応する1つのグループを構成するm個の検出回路のm個の出力信号に基づいて算出する。ここで、mが3以上の場合におけるg個の角度値の算出方法の一例について説明する。この方法では、g個のグループに対応させて、図5に示した角度計算回路51〜54と同様の構成のg個の角度計算回路を用意する。また、グループ毎に、それぞれ1個以上、(m−1)個以下の検出回路からなる2つのサブグループを作成する。m個の検出回路の各々は、少なくとも一方のサブグループを構成するために用いられる。そして、サブグループ毎に1つのサブグループ信号を生成する。1個の検出回路からなるサブグループのサブグループ信号は、1個の検出回路の出力信号そのままでよい。複数の検出回路からなるサブグループのサブグループ信号は、複数の検出回路の複数の出力信号を用いた、和や差等を求める演算によって生成される。このようにして、グループ毎に2つのサブグループ信号が生成される。この方法では、グループ毎に、2つのサブグループ信号を、そのグループに対応する角度計算回路の2つの入力端に与える。角度計算回路は、2つの入力端に与えられた2つのサブグループ信号に基づいて、角度計算回路51〜54と同様にして、角度θと対応関係を有する角度値を算出する。
なお、mが2の場合、角度値を精度よく算出するために、1つのグループを構成する2つの検出回路の2つの出力信号の位相差の絶対値は、0°および180°以外であり、0°および180°から、ある程度離れていることが好ましい。具体的には、1つのグループを構成する2つの検出回路の2つの出力信号の位相差の絶対値は、15°〜165°の範囲内であることが好ましく、30°〜150°の範囲内であることがより好ましい。図3に示した例では、第1のグループを構成する第1の検出回路10の出力信号S1と第2の検出回路20の出力信号S2の位相差の絶対値、第2のグループを構成する第2の検出回路20の出力信号S2と第3の検出回路30の出力信号S3の位相差の絶対値、第3のグループを構成する第3の検出回路30の出力信号S3と第4の検出回路40の出力信号S4の位相差の絶対値は、それぞれ45°であり、第4のグループを構成する第4の検出回路40の出力信号S4と第1の検出回路10の出力信号S1の位相差の絶対値は135°であり、いずれも、上記の条件を満たしている。
同様に、mが3以上の場合、グループ毎の2つのサブグループ信号の位相差の絶対値は、15°〜165°の範囲内であることが好ましく、30°〜150°の範囲内であることがより好ましい。なお、この場合、2つのサブグループ信号が上記の条件を満たす限り、1つのグループを構成するm個の検出回路は、出力信号の位相差の絶対値が0°または180°となるような複数の検出回路を含んでいてもよい。
角度値の数がgである場合、角度値対の数は、gであってもよいし、gよりも大きくてもよい。図12は、角度値の数および角度値対の数がそれぞれgである場合の、角度値対を構成する2つの角度値の組み合わせの一例を模式的に示す説明図である。図12において、θs1、θs2、θsg−1、θsgは、それぞれ、g個の角度値のうちの1番目の角度値、2番目の角度値、(g−1)番目の角度値、g番目の角度値を表している。図12に示したように、角度値対を構成する2つの角度値の組み合わせは、θs1とθs2の組み合わせ、・・・θsg−1とθsgの組み合わせ、θsgとθs1の組み合わせとすることができる。この場合、g個の角度値の各々は、g個の角度値対のうちの2つの角度値対を構成するために用いられる。なお、角度値対の数がgより大きい場合、g個の角度値のうちの少なくとも2つは、3個以上の角度値対を構成するために用いられる。
次に、前述の要件1ないし要件6の意味について詳しく説明しながら、本実施の形態に係る回転磁界センサ1および角度決定方法について概念的に説明する。要件1ないし要件6は、以下の通りである。
要件1:mは、2以上の整数である。
要件2:nは、mよりも2以上大きい整数である。
要件3:gは、3以上nCm以下の整数である。
要件4:n個の検出回路の各々は、g個のグループのうちの1個以上、(g−2)個以下のグループを構成するために用いられる。
要件5:gは、mよりも2以上大きく、且つ(n−m+1)以上である。
要件6:g個のグループは、n個の検出回路のうちのどの1つが故障した場合であっても、故障した1つの検出回路を含む全てのグループには含まれるが他の全てのグループには含まれない検出回路が、故障した1つの検出回路しか存在しないような検出回路の組み合わせで作成されている。
第1の態様の回転磁界センサ1および第1の態様の角度決定方法のように、n個の検出回路のうちの1つが故障しても正しい角度検出値θsを出力できるようにするためには、要件1ないし要件4が必要である。第2の態様の回転磁界センサ1および第2の態様の角度決定方法のように、n個の検出回路のうちの1つが故障した場合に、正しい角度検出値θsを出力でき、且つ故障した検出回路を特定できるようにするためには、要件1ないし要件6が必要である。
要件1は、複数の検出回路の出力信号に基づいて角度値を算出するために必要な要件である。
要件2は、以下で説明するように、n個の検出回路のうちの1つが故障した場合に、正しい角度値を識別するために必要な要件である。n個の検出回路のうちの1つが故障しても正しい角度値が1つ以上得られるようにするためには、nはmよりも大きい整数である必要がある。n個の検出回路のうちの1つが故障した場合に、正しい角度値が1つしか得られないと、g個の角度値のうちのどれが正しい角度値であるかを知ることができない。n個の検出回路のうちの1つが故障した場合に、複数の正しい角度値が得られれば、複数の正しい角度値は一致するか極めて近い値であるという性質を利用して、複数の正しい角度値を識別することが可能である。nがmよりも2以上大きい整数であると、n個の検出回路のうちの1つが故障しても、複数の正しい角度値が得られるようにすることができる。従って、要件2は、n個の検出回路のうちの1つが故障した場合に、複数の正しい角度値が得られるようにして、この複数の正しい角度値を識別するために必要な要件である。
要件1および要件2が満たされることを前提として、要件3および要件4が満たされれば、n個の検出回路のうちの1つが故障しても、複数の正しい角度値が得られる。従って、要件3および要件4も、n個の検出回路のうちの1つが故障した場合に、複数の正しい角度値が得られるようにして、この複数の正しい角度値を識別するために必要な要件である。
なお、要件3におけるnCmは、n個の検出回路の中からm個の検出回路を選ぶときの組み合わせの総数である。nCmは、次の式で表される。
nCm={n×(n−1)×・・・×(n−m+1)}/{m×(m−1)×・・・×1}
以下、要件5および要件6について詳しく説明する。始めに、要件6について説明する。n個の検出回路のうちの任意の1つが故障した場合に、故障した1つの検出回路を含む全てのグループには含まれるが他の全てのグループには含まれない検出回路が複数存在すると、その複数の検出回路のうちのどれが故障した検出回路であるかを判別することができない。一方、n個の検出回路のうちのどの1つが故障した場合であっても、故障した1つの検出回路を含む全てのグループには含まれるが他の全てのグループには含まれない検出回路が、故障した1つの検出回路しか存在しなければ、その1つしか存在しない検出回路を、故障した1つの検出回路と特定することができる。従って、要件6は、n個の検出回路のうちの1つが故障した場合に、故障した検出回路を特定できるようにするための要件である。
次に、複数の具体例を参照しながら、要件5について詳しく説明する。要件5は、要件6を満たすためにgが満たすべき要件である。要件5は、gはmよりも2以上大きいという要件(以下、要件5−1と言う。)と、gは(n−m+1)以上であるという要件(以下、要件5−2と言う。)の両方を満たすことである。
以下の説明では、n個の検出回路を、それぞれ1〜nの整数の番号を付して表す。また、グループを、そのグループに含まれる複数の検出回路の複数の番号を括弧で括って表す。例えば、番号が1,2の2つの検出回路からなるグループは(1,2)と表し、番号が1,2,3の3つの検出回路からなるグループは(1,2,3)と表す。
[nが4の場合]
要件1および要件2から、nの最小値は4である。そこで、まず、nが4の場合について考える。nが4の場合は、要件1および要件2を満たすmは2だけである。nが4、mが2の場合、gが3では、要件1ないし要件4および要件6を満たす複数のグループを作成することができない。nが4、mが2の場合、gが4以上であれば、要件1ないし要件4および要件6を満たす複数のグループを作成することが可能である。nが4、mが2、gが3の場合、要件5−2は満たされるが、要件5−1は満たされない。nが4、mが2で、gが4以上の場合、要件5−1および要件5−2は満たされる。
nが4、mが2、gが4の場合の4つのグループの例としては、下記の例1がある。
例1:(1,2)、(2,3)、(3,4)、(4,1)
なお、図3および図4に示した回転磁界センサ1は、例1に従って構成されたものである。
ここで、図13を参照して、例1の4つのグループにおける検出回路の組み合わせについて模式的に説明する。図13は、4つの検出回路の中から選択された2つの検出回路からなる複数のグループを構成する場合の検出回路の組み合わせの一例を模式的に示す説明図である。図13において、数字を付した円は、その数字に対応する番号の検出回路を表している。図13では、例1に示した4つのグループの各々を構成する2つの検出回路を実線で結んでいる。図13に示したように、グループを構成する2つの検出回路を表す2つの円を実線で結び、円を点に変えると、四角形が描かれる。
[nが5の場合]
次に、nが5の場合について考える。nが5の場合は、要件1および要件2を満たすmとしては2と3がある。
nが5、mが2の場合には、gが4以上であれば、要件1ないし要件4および要件6を満たす複数のグループを作成することが可能である。nが5、mが2、gが3の場合、要件5−1および要件5−2は満たされない。nが5、mが2で、gが4以上の場合、要件5−1および要件5−2は満たされる。
nが5、mが2、gが4の場合の4つのグループの例としては、下記の例2がある。
例2:(1,2)、(2,3)、(3,4)、(4,5)
nが5、mが2、gが5の場合の5つのグループの例としては、下記の例3がある。
例3:(1,2)、(2,3)、(3,4)、(4,5)、(5,1)
ここで、図14を参照して、例2,3の4つまたは5つのグループにおける検出回路の組み合わせについて模式的に説明する。図14は、5つの検出回路の中から選択された2つの検出回路からなる複数のグループを構成する場合の検出回路の組み合わせの2つの例を模式的に示す説明図である。図14において、数字を付した円は、その数字に対応する番号の検出回路を表している。図14では、例2,3に示したグループ(1,2)、(2,3)、(3,4)、(4,5)の各々を構成する2つの検出回路を表す2つの円を実線で結び、例3に示したグループ(5,1)を構成する2つの検出回路を表す2つの円を破線で結んでいる。図14に示したように、グループを構成する2つの検出回路を表す2つの円を実線で結び、円を点に変えると、例2では五角形のうちの4つの辺が描かれ、例3では五角形が描かれる。
なお、例2では、要件4は以下のようにして満たされる。5つの検出回路のうち、3つの検出回路の各々は、4つのグループのうちの2つのグループを構成するために用いられる。残りの2つの検出回路の各々は、4つのグループのうちの1つのグループを構成するために用いられる。
nが5、mが3の場合には、gが5以上であれば、要件1ないし要件4および要件6を満たす複数のグループを作成することが可能である。nが5、mが3、gが4の場合、要件5−2は満たされるが、要件5−1は満たされない。nが5、mが3で、gが5以上の場合、要件5−1および要件5−2は満たされる。
nが5、mが3、gが5の場合の5つのグループの例としては、下記の例4がある。
例4:(1,2,3)、(2,3,4)、(3,4,5)、(4,5,1)、(5,1,2)
[nが6の場合]
次に、nが6の場合について考える。nが6の場合は、要件1および要件2を満たすmとしては2と3と4がある。
nが6、mが2の場合には、gが5以上であれば、要件1ないし要件4および要件6を満たす複数のグループを作成することが可能である。nが6、mが2、gが4の場合、要件5−1は満たされるが、要件5−2は満たされない。nが6、mが2で、gが5以上の場合、要件5−1および要件5−2は満たされる。
なお、nが4または5の場合には、要件5−1が満たされるとき、要件5−2も満たされる。しかし、nが6以上の場合には、上記のように、要件5−1は満たされるが要件5−2は満たされない場合が生じる。また、要件5−1は満たされるが要件5−2は満たされない場合は、要件1ないし要件4および要件6を満たす複数のグループを作成することができない。そのため、要件5は、要件5−1と要件5−2の両方を満たすことを必要としている。
nが6、mが2、gが5の場合の5つのグループの例としては、下記の例5がある。
例5:(1,2)、(2,3)、(3,4)、(4,5)、(5,6)
nが6、mが2、gが6の場合の6つのグループの例としては、下記の例6がある。
例6:(1,2)、(2,3)、(3,4)、(4,5)、(5,6)、(6,1)
図示しないが、図13および図14と同様の方法で図形を描くと、例5では六角形の5つの辺が描かれ、例6では六角形が描かれる。
なお、nが6、mが2の場合において、n個の検出回路のうちの1つが故障した場合に、故障した検出回路を特定できなくても、正しい角度検出値θsを出力できればよい場合には、要件5は満たさなくてもよく、例えばgは3であってもよい。この場合の3つのグループの例としては、(1,2)、(3,4)、(5,6)がある。
nが6、mが3の場合には、gが5以上であれば、要件1ないし要件4および要件6を満たす複数のグループを作成することが可能である。nが6、mが3、gが4の場合、要件5−2は満たされるが、要件5−1は満たされない。nが6、mが3で、gが5以上の場合、要件5−1および要件5−2は満たされる。
nが6、mが3、gが5の場合の5つのグループの例としては、下記の例7がある。
例7:(1,2,3)、(2,3,4)、(3,4,5)、(4,5,6)、(5,6,1)
nが6、mが4の場合には、gが6以上であれば、要件1ないし要件4および要件6を満たす複数のグループを作成することが可能である。nが6、mが4、gが5の場合、要件5−2は満たされるが、要件5−1は満たされない。nが6、mが4で、gが6以上の場合、要件5−1および要件5−2は満たされる。
nが6、mが4、gが6の場合の6つのグループの例としては、下記の例8がある。
例8:(1,2,3,4)、(2,3,4,5)、(3,4,5,6)、(4,5,6,1)、(5,6,1,2)、(6,1,2,3)
[nが8の場合]
次に、nが8の場合について考える。nが8の場合は、要件1および要件2を満たすmとしては2以上6以下の整数がある。
nが8、mが2の場合には、gが7以上であれば、要件1ないし要件4および要件6を満たす複数のグループを作成することが可能である。nが8、mが2、gが6の場合、要件5−1は満たされるが、要件5−2は満たされない。nが8、mが2で、gが7以上の場合、要件5−1および要件5−2は満たされる。
nが8、mが2、gが7の場合の7つのグループの例としては、下記の例9がある。
例9:(1,2)、(2,3)、(3,4)、(4,5)、(5,6)、(6,7)、(7,8)
nが8、mが2、gが8の場合の8つのグループの例としては、下記の例10がある。
例10:(1,2)、(2,3)、(3,4)、(4,5)、(5,6)、(6,7)、(7,8)、(8,1)
図示しないが、図13および図14と同様の方法で図形を描くと、例9では八角形の7つの辺が描かれ、例10では八角形が描かれる。
なお、nが8、mが2の場合において、n個の検出回路のうちの1つが故障した場合に、故障した検出回路を特定できなくても、正しい角度検出値θsを出力できればよい場合には、要件5は満たさなくてもよく、例えばgは4であってもよい。この場合の4つのグループの例としては、(1,2)、(3,4)、(5,6)、(7,8)がある。
nが8、mが3の場合には、gが6以上であれば、要件1ないし要件4および要件6を満たす複数のグループを作成することが可能である。nが8、mが3、gが5の場合、要件5−1は満たされるが、要件5−2は満たされない。nが8、mが3で、gが6以上の場合、要件5−1および要件5−2は満たされる。
nが8、mが3、gが6の場合の6つのグループの例としては、下記の例11がある。
例11:(1,2,3)、(2,3,4)、(3,4,5)、(4,5,6)、(5,6,7)、(6,7,8)
nが8、mが4の場合には、gが6以上であれば、要件1ないし要件4および要件6を満たす複数のグループを作成することが可能である。nが8、mが4、gが5の場合、要件5−2は満たされるが、要件5−1は満たされない。nが8、mが4で、gが6以上の場合、要件5−1および要件5−2は満たされる。
nが8、mが4、gが6の場合の6つのグループの例としては、下記の例12がある。
例12:(1,2,3,4)、(2,3,4,5)、(3,4,5,6)、(4,5,6,1)、(5,6,7,8)、(6,7,8,1)
例は示さないが、nが8で、mが5または6の場合も、要件5−1および要件5−2が満たされるときに、要件1ないし要件4および要件6を満たす複数のグループを作成することが可能である。
また、nが7の場合やnが9以上の場合についても、例を示さないが、要件5−1および要件5−2が満たされるときに、要件1ないし要件4および要件6を満たす複数のグループを作成することが可能である。
なお、要件1ないし要件5を満たしていても、n個の検出回路のうちの任意の1つが故障した場合に故障した検出回路を特定できなくなる複数のグループはあり得る。このようなグループの例としては、nが8、mが4、gが6の場合における(1,2,3)、(1,2,4)、(1,2,5)、(1,2,6)、(3,7,8)、(4,7,8)がある。
概念的に説明すると、n個の検出回路のうちの任意の1つが故障した場合に、故障した1つの検出回路を含む全てのグループには含まれるが他の全てのグループには含まれない検出回路が複数存在し得るように、複数のグループが作成されていると、故障した検出回路を特定できなくなる場合が生じる。上記の例では、番号が1または2の検出回路が故障した場合には、故障した1つの検出回路を含む全てのグループは、(1,2,3)、(1,2,4)、(1,2,5)、(1,2,6)であり、他の全てのグループは(3,7,8)、(4,7,8)になる。この場合、故障した1つの検出回路を含む全てのグループには含まれるが他の全てのグループには含まれない検出回路が、番号が1の検出回路と番号が2の検出回路の2つ存在する。そのため、その2つの検出回路のうちのどちらが故障した検出回路であるか判別することができない。
そのため、n個の検出回路のうちの1つが故障した場合に、故障した検出回路を特定できるようにするためには、要件1ないし要件5の他に、要件6も必要である。
なお、本実施の形態において、要件4を狭めた下記の要件4Aを定め、要件1ないし要件3、要件4Aおよび要件5を満たすように複数のグループを作成するようにしてもよい。
要件4A:n個の検出回路の各々は、g個のグループのうちの2個以上、(g−2)個以下のグループを構成するために用いられる。
mが2の場合には、g個のグループが、同じ2つの検出回路の組み合わせからなる2つ以上のグループを含まないことを前提として、要件1ないし要件3、要件4Aおよび要件5を満たすようにg個のグループを作成すると、要件6を満たすように考慮しなくても、要件6を満たすg個のグループになる。そのため、mが2の場合には、要件4の代わりに要件4Aを規定することにより、n個の検出回路のうちの1つが故障した場合に故障した検出回路を特定可能な複数のグループの作成が容易になる。要件1ないし要件3、要件4Aおよび要件5を満たす複数のグループの例としては、先に挙げた例1、例3、例6および例10がある。
本実施の形態に係る回転磁界センサ1では、g個の検出回路のうちの1つが故障しても、g個の角度値のうち、故障した1つの検出回路を含まない複数のグループに対応する複数の角度値は正しいものとなる。この複数の角度値は、一致するか極めて近い値であるため、抽出可能である。そして、この複数の正しい角度値のうちの少なくとも1つに基づいて、角度検出値θsを決定することが可能である。そのため、本実施の形態に係る回転磁界センサ1によれば、複数の検出回路のうちの1つが故障しても正しい角度検出値θsを出力することが可能になる。
第1の態様の回転磁界センサ1では、角度決定部(制御部60)によって、複数の検出回路のうちの1つが故障しても正しい角度検出値θsを出力することができる。第2の態様の回転磁界センサ1では、故障検出部(制御部60)によって、複数の検出回路のうちの1つが故障しても正しい角度検出値θsを出力することができると共に、故障した1つの検出回路を特定することができる。
本実施の形態に係る角度決定方法では、g個のグループに対応させてg個の角度値を算出し、このg個の角度値を利用して、角度検出値を決定する。上述のように、n個の検出回路のうちの1つが故障しても、g個の角度値のうち、故障した1つの検出回路を含まない複数のグループに対応する複数の角度値は正しいものとなる。従って、本実施の形態に係る角度決定方法によれば、回転磁界センサ1を用いて、複数の検出回路のうちの1つが故障しても正しい角度検出値θsを決定することができる。第2の態様の角度決定方法では、更に、n個の検出回路のうちの1つが故障した場合に、故障した1つの検出回路を特定することが可能になる。
ところで、故障した検出回路の出力信号は、その検出回路が正常であるときの出力信号とは異なったものとなる。しかし、出力信号を監視することによって検出回路の故障を検出する方法では、検出回路の故障を感度よく検出することができない。すなわち、この方法では、予め決められた正常値に対する検出回路の出力信号のずれ量が比較的小さい態様の検出回路の故障を検出することが難しい。
これに対し、本実施の形態では、それぞれm個の検出回路の出力信号に基づいて算出された複数の角度値に基づいて、故障した検出回路を特定する。予め決められた正常値に対する検出回路の出力信号のずれ量が比較的小さい態様の検出回路の故障の場合であっても、角度値は、比較的顕著に、正常時に比べて変化する。そのため、本実施の形態によれば、出力信号を監視することによって検出回路の故障を検出する方法に比べて、検出回路の故障を感度よく検出することができる。
[第2の実施の形態]
次に、図15を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る回転磁界センサについて説明する。図15は、本実施の形態に係る回転磁界センサの一部の構成を示す回路図である。本実施の形態では、第1の検出回路10は、ホイートストンブリッジ回路14および差分検出器15の代わりに、ハーフブリッジ回路16を有している。ハーフブリッジ回路16は、直列に接続された一対のMR素子R111,R112を含んでいる。MR素子R111のMR素子R112とは反対側の端部は、電源ポートV1に接続されている。MR素子R112のMR素子R111とは反対側の端部は、グランドポートG1に接続されている。第1の出力信号S1は、MR素子R111とMR素子R112の接続点J1から出力される。
また、第2の検出回路20は、ホイートストンブリッジ回路24および差分検出器25の代わりに、ハーフブリッジ回路26を有している。ハーフブリッジ回路26は、直列に接続された一対のMR素子R121,R122を含んでいる。MR素子R121のMR素子R122とは反対側の端部は、電源ポートV2に接続されている。MR素子R122のMR素子R121とは反対側の端部は、グランドポートG2に接続されている。第2の出力信号S2は、MR素子R121とMR素子R122の接続点J2から出力される。
また、第3の検出回路30は、ホイートストンブリッジ回路34および差分検出器35の代わりに、ハーフブリッジ回路36を有している。ハーフブリッジ回路36は、直列に接続された一対のMR素子R131,R132を含んでいる。MR素子R131のMR素子R132とは反対側の端部は、電源ポートV3に接続されている。MR素子R132のMR素子R131とは反対側の端部は、グランドポートG3に接続されている。第3の出力信号S3は、MR素子R131とMR素子R132の接続点J3から出力される。
また、第4の検出回路40は、ホイートストンブリッジ回路44および差分検出器45の代わりに、ハーフブリッジ回路46を有している。ハーフブリッジ回路46は、直列に接続された一対のMR素子R141,R142を含んでいる。MR素子R141のMR素子R142とは反対側の端部は、電源ポートV4に接続されている。MR素子R142のMR素子R141とは反対側の端部は、グランドポートG4に接続されている。第4の出力信号S4は、MR素子R141とMR素子R142の接続点J4から出力される。
MR素子R111,R112,R121,R122,R131,R132,R141,R142の構成は、それぞれ、第1の実施の形態におけるMR素子R11,R12,R21,R22,R31,R32,R41,R42の構成と同じである。すなわち、第1の検出回路10では、MR素子R111における磁化固定層の磁化の方向は、第1の実施の形態における図2に示した第1の方向D1(−X方向)と同じ方向であり、MR素子R112における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子R111における磁化固定層の磁化の方向とは反対の方向である。この場合、回転磁界MFの方向DMと第1の方向D1との相対角度に応じて、接続点J1の電位が変化する。
第2の検出回路20では、MR素子R121における磁化固定層の磁化の方向は、第1の実施の形態における図2に示した第2の方向D2と同じ方向であり、MR素子R122における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子R121における磁化固定層の磁化の方向とは反対の方向である。この場合、回転磁界MFの方向DMと第2の方向D2との相対角度に応じて、接続点J2の電位が変化する。
第3の検出回路30では、MR素子R131における磁化固定層の磁化の方向は、第1の実施の形態における図2に示した第3の方向D3(−Y方向)と同じ方向であり、MR素子R132における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子R131における磁化固定層の磁化の方向とは反対の方向である。この場合、回転磁界MFの方向DMと第3の方向D3との相対角度に応じて、接続点J3の電位が変化する。
第4の検出回路40では、MR素子R141における磁化固定層の磁化の方向は、第1の実施の形態における図2に示した第4の方向D4と同じ方向であり、MR素子R142における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子R141における磁化固定層の磁化の方向とは反対の方向である。この場合、回転磁界MFの方向DMと第4の方向D4との相対角度に応じて、接続点J4の電位が変化する。
本実施の形態では、第1の角度計算回路51の2つの入力端は、第1の検出回路10の接続点J1と第2の検出回路20の接続点J2に接続されている。第2の角度計算回路52の2つの入力端は、第2の検出回路20の接続点J2と第3の検出回路30の接続点J3に接続されている。第3の角度計算回路53の2つの入力端は、第3の検出回路30の接続点J3と第4の検出回路40の接続点J4に接続されている。第4の角度計算回路54の2つの入力端は、第4の検出回路40の接続点J4と第1の検出回路10の接続点J1に接続されている。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第3の実施の形態]
次に、図16を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る回転磁界センサについて説明する。図16は、本実施の形態に係る回転磁界センサの一部の構成を示す回路図である。本実施の形態に係る回転磁界センサ1は、第1の実施の形態におけるホイートストンブリッジ回路14,24,34,44の代わりに、2つのホイートストンブリッジ回路5,6を備えている。回転磁界センサ1は、更に、電源ポートV5,V6と、グランドポートG5,G6とを備えている。
ホイートストンブリッジ回路5は、直列に接続された第1の対のMR素子R51,R52と、直列に接続された第2の対のMR素子R53,R54とを含んでいる。MR素子R51のMR素子R52とは反対側の端部は、MR素子R53のMR素子R54とは反対側の端部と電源ポートV5に接続されている。MR素子R52のMR素子R51とは反対側の端部は、MR素子R54のMR素子R53とは反対側の端部とグランドポートG5に接続されている。電源ポートV5とグランドポートG5との間には、所定の電圧が印加される。これにより、MR素子R51,R52の互いに反対側の端部間と、MR素子R53,R54の互いに反対側の端部間に、所定の電圧が印加される。
ホイートストンブリッジ回路6は、直列に接続された第1の対のMR素子R61,R62と、直列に接続された第2の対のMR素子R63,R64とを含んでいる。MR素子R61のMR素子R62とは反対側の端部は、MR素子R63のMR素子R64とは反対側の端部と電源ポートV6に接続されている。MR素子R62のMR素子R61とは反対側の端部は、MR素子R64のMR素子R63とは反対側の端部とグランドポートG6に接続されている。電源ポートV6とグランドポートG6との間には、所定の電圧が印加される。これにより、MR素子R61,R62の互いに反対側の端部間と、MR素子R63,R64の互いに反対側の端部間に、所定の電圧が印加される。
本実施の形態では、第1の検出回路10は、MR素子R51,R52によって構成されている。第2の検出回路20は、MR素子R53,R54によって構成されている。第3の検出回路30は、MR素子R61,R62によって構成されている。第4の検出回路40は、MR素子R63,R64によって構成されている。第1の出力信号S1は、MR素子R51とMR素子R52の接続点J51から出力される。第2の出力信号S2は、MR素子R53とMR素子R54の接続点J52から出力される。第3の出力信号S3は、MR素子R61とMR素子R62の接続点J61から出力される。第4の出力信号S4は、MR素子R63とMR素子R64の接続点J62から出力される。
MR素子R51,R52,R53,R54,R61,R62,R63,R64の構成は、それぞれ、第1の実施の形態におけるMR素子R11,R12,R21,R22,R31,R32,R41,R42の構成と同じである。すなわち、第1の検出回路10では、MR素子R51における磁化固定層の磁化の方向は、第1の実施の形態における図2に示した第1の方向D1(−X方向)と同じ方向であり、MR素子R52における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子R51における磁化固定層の磁化の方向とは反対の方向である。この場合、回転磁界MFの方向DMと第1の方向D1との相対角度に応じて、接続点J51の電位が変化する。
第2の検出回路20では、MR素子R53における磁化固定層の磁化の方向は、第1の実施の形態における図2に示した第2の方向D2と同じ方向であり、MR素子R54における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子R53における磁化固定層の磁化の方向とは反対の方向である。この場合、回転磁界MFの方向DMと第2の方向D2との相対角度に応じて、接続点J52の電位が変化する。
第3の検出回路30では、MR素子R61における磁化固定層の磁化の方向は、第1の実施の形態における図2に示した第3の方向D3(−Y方向)と同じ方向であり、MR素子R62における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子R61における磁化固定層の磁化の方向とは反対の方向である。この場合、回転磁界MFの方向DMと第3の方向D3との相対角度に応じて、接続点J61の電位が変化する。
第4の検出回路40では、MR素子R63における磁化固定層の磁化の方向は、第1の実施の形態における図2に示した第4の方向D4と同じ方向であり、MR素子R64における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子R63における磁化固定層の磁化の方向とは反対の方向である。この場合、回転磁界MFの方向DMと第4の方向D4との相対角度に応じて、接続点J62の電位が変化する。
本実施の形態では、第1の角度計算回路51の2つの入力端は、ホイートストンブリッジ回路5の接続点J51,52に接続されている。第2の角度計算回路52の2つの入力端は、ホイートストンブリッジ回路5の接続点J52とホイートストンブリッジ回路6の接続点J61に接続されている。第3の角度計算回路53の2つの入力端は、ホイートストンブリッジ回路6の接続点J61,62に接続されている。第4の角度計算回路54の2つの入力端は、ホイートストンブリッジ回路6の接続点J62とホイートストンブリッジ回路5の接続点J51に接続されている。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第4の実施の形態]
次に、図17を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る回転磁界センサについて説明する。図17は、本実施の形態に係る回転磁界センサの構成を示す説明図である。図17には、方向が回転する回転磁界を発生する手段の例として、1組以上のN極とS極が交互にリング状に配列された磁石102を示している。図17に示した例では、磁石102は、2組のN極とS極とを含んでいる。本実施の形態に係る回転磁界センサ1は、磁石102の外周部から発生する回転磁界の方向を検出する。図17に示した例では、図17における紙面がXY平面となり、紙面に垂直な方向がZ方向となる。磁石102のN極とS極は、Z方向に平行な回転中心を中心として対称な位置に配置されている。磁石102は、回転中心を中心として回転する。これにより、磁石102が発生する磁界に基づいて、回転磁界が発生される。回転磁界は、回転中心(Z方向)を中心として回転する。図17に示した例では、磁石102は時計回り方向に回転し、回転磁界は反時計回り方向に回転する。
本実施の形態では、第1の検出回路10が回転磁界を検出する位置である第1の位置P1、第2の検出回路20が回転磁界を検出する位置である第2の位置P2、第3の検出回路30が回転磁界を検出する位置である第3の位置P3、および第4の検出回路40が回転磁界を検出する位置である第4の位置P4を、磁石102の回転方向について同じ位置としている。すなわち、本実施の形態では、第1ないし第4の検出回路10〜40は、磁石102の回転方向について同じ位置に配置されている。
図17に示した例では、第1の検出回路10が生成する第1の出力信号S1が最大となる回転磁界の方向である第1の方向D1を、磁石102の半径方向に設定している。第2の検出回路20が生成する第2の出力信号S2が最大となる回転磁界の方向である第2の方向D2は、XY平面内において、第1の方向D1から、反時計回り方向にθ2だけ回転した方向である。第3の検出回路30が生成する第3の出力信号S3が最大となる回転磁界の方向である第3の方向D3は、XY平面内において、第1の方向D1から、反時計回り方向にθ3だけ回転した方向である。第4の検出回路40が生成する第4の出力信号S4が最大となる回転磁界の方向である第4の方向D4は、XY平面内において、第1の方向D1から、反時計回り方向にθ4だけ回転した方向である。本実施の形態では特に、θ2、θ3、θ4は、それぞれ、45°、90°、135°である。
図17に示した回転磁界センサ1のその他の構成は、第1ないし第3のいずれかの実施の形態と同様である。
[変形例]
次に、図18を参照して、本実施の形態における変形例について説明する。図18は、本実施の形態における変形例の回転磁界センサの構成を示す説明図である。図18には、方向が回転する回転磁界を発生する手段の例として、複数組のN極とS極が交互に直線状に配列された磁石103を示している。変形例における回転磁界センサ1は、磁石103の外周部から発生する回転磁界の方向を検出する。図18に示した例では、図18における紙面がXY平面となり、紙面に垂直な方向がZ方向となる。磁石103は、対象物の直線的な運動に連動して、その長手方向に直線的に移動する。これにより、磁石103が発生する磁界に基づいて、回転磁界が発生される。回転磁界は、Z方向を中心として回転する。
図18に示した例では、第1の方向D1を、XY平面内において、磁石103の移動方向に直交する方向に設定している。第2の方向D2は、XY平面内において、第1の方向D1から、反時計回り方向にθ2すなわち45°だけ回転した方向である。第3の方向D3は、XY平面内において、第1の方向D1から、反時計回り方向にθ3すなわち90°だけ回転した方向である。第4の方向D4は、XY平面内において、第1の方向D1から、反時計回り方向にθ4すなわち135°だけ回転した方向である。図18に示した回転磁界センサ1のその他の構成は、図17に示した回転磁界センサ1と同様である。
なお、図17および図18では、便宜上、第1ないし第4の検出回路10〜40をY方向に離間させて描いている。しかし、第1ないし第4の検出回路10〜40のY方向の位置は、互いに近いことが好ましく、一致していることがより好ましい。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1ないし第3のいずれかの実施の形態と同様である。
[第5の実施の形態]
次に、図19を参照して、本発明の第5の実施の形態に係る回転磁界センサについて説明する。図19は、本実施の形態に係る回転磁界センサの構成を示す説明図である。本実施の形態に係る回転磁界センサ1は、第4の実施の形態における図17に示した例と同様に、磁石102の外周部から発生する回転磁界の方向を検出する。本実施の形態に係る回転磁界センサ1では、第1の検出回路10が回転磁界を検出する位置である第1の位置P1、第2の検出回路20が回転磁界を検出する位置である第2の位置P2、第3の検出回路30が回転磁界を検出する位置である第3の位置P3、および第4の検出回路40が回転磁界を検出する位置である第4の位置P4を、磁石102の回転方向について互いに異なる位置としている。すなわち、本実施の形態では、第1ないし第4の検出回路10〜40は、磁石102の回転方向について異なる位置に配置されている。
図19に示した例では、磁石102は、2組のN極とS極とを含み、磁石102が1回転する間に、回転磁界は2回転する。この場合、第1ないし第4の出力信号S1〜S4における1周期すなわち電気角の360°は、磁石102の1/2回転すなわち磁石102の回転角の180°に相当する。図19では、第1の位置P1と第2の位置P2のずれ、第2の位置P2と第3の位置P3のずれ、第3の位置P3と第4の位置P4のずれは、いずれも、電気角の45°、すなわち磁石102の回転角の22.5°である。また、第1の位置P1と第3の位置P3のずれは、電気角の90°、すなわち磁石102の回転角の45°であり、第1の位置P1と第4の位置P4のずれは、電気角の135°、すなわち磁石102の回転角の67.5°である。
また、図19に示した例では、第1の検出回路10が生成する第1の出力信号S1が最大となる回転磁界の方向である第1の方向D1、第2の検出回路20が生成する第2の出力信号S2が最大となる回転磁界の方向である第2の方向D2、第3の検出回路30が生成する第3の出力信号S3が最大となる回転磁界の方向である第3の方向D3、第4の検出回路40が生成する第4の出力信号S4が最大となる回転磁界の方向である第4の方向D4を、いずれも磁石102の半径方向に設定している。図19に示した回転磁界センサ1のその他の構成は、第1ないし第3のいずれかの実施の形態と同様である。
[変形例]
次に、図20を参照して、本実施の形態における変形例について説明する。図20は、本実施の形態における変形例の回転磁界センサの構成を示す説明図である。変形例の回転磁界センサ1は、第4の実施の形態における図18に示した例と同様に、磁石103の外周部から発生する回転磁界の方向を検出する。図20に示した例では、磁石103が、1ピッチ分すなわちN極とS極の1組分だけ移動すると回転磁界が1回転する。この場合、第1ないし第4の出力信号S1〜S4における1周期すなわち電気角の360°は、磁石103の1ピッチに相当する。図20では、第1の位置P1と第2の位置P2のずれ、第2の位置P2と第3の位置P3のずれ、第3の位置P3と第4の位置P4のずれは、いずれも1/8ピッチである。また、第1の位置P1と第3の位置P3のずれは、1/4ピッチであり、第1の位置P1と第4の位置P4のずれは、3/8ピッチである。
図20に示した例では、第1ないし第4の方向D1〜D4を、いずれも、XY平面内において、磁石103の移動方向に直交する方向に設定している。図20に示した回転磁界センサ1のその他の構成は、図19に示した回転磁界センサ1と同様である。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1ないし第4のいずれかの実施の形態と同様である。
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態に係る回転磁界センサについて説明する。本実施の形態に係る回転磁界センサ1は、第1の実施の形態で説明した要件1〜4を満たしている。本実施の形態に係る回転磁界センサ1は、更に、第1の実施の形態で説明した要件5,6を満たしていてもよい。以下、本実施の形態に係る回転磁界センサ1が第1の実施の形態に係る回転磁界センサ1と異なる点について説明する。本実施の形態に係る回転磁界センサ1は、第1の実施の形態における第1の態様の回転磁界センサ1と同様に、g個の角度値を利用して角度検出値θsを決定する角度決定部を備えている。ただし、本実施の形態では、角度決定部の構成および動作が、第1の実施の形態とは異なっている。
本実施の形態における角度決定部は、所定の時間dt毎に角度検出値θsを繰り返し決定すると共に、既に決定された複数の角度検出値θsに基づいて、次に決定される角度検出値θsの推測値θsdを作成する。そして、角度決定部は、n個の検出回路のうちの1つが故障した場合において、g個の角度値の中から、故障した1つの検出回路を含まない複数のグループに対応する複数の正しい角度値を特定することが可能な場合には、複数の正しい角度値のうちの少なくとも1つに基づいて角度検出値θsを決定し、複数の正しい角度値を特定できない場合には、推測値θsdを角度検出値θsとする。
角度決定部は、角度差計算部と暫定正常角度値判定部と角度出力部とを有していてもよい。角度差計算部は、第1の実施の形態と同様に、g個の角度値の中から選択された2つの角度値からなる少なくともg個の角度値対について、それぞれ、角度値対を構成する2つの角度値の差である少なくともg個の角度差を算出する。暫定正常角度値判定部は、少なくともg個の角度差のうち、所定の範囲内となる1つ以上の角度差を抽出し、抽出した1つ以上の角度差に対応する1つ以上の角度値対を構成する複数の角度値を、複数の暫定正常角度値とする。角度出力部は、所定の時間dt毎に角度検出値θsを繰り返し決定し出力する。
角度出力部は、角度値推測部と角度検出値決定部とを有している。角度値推測部は、既に決定された複数の角度検出値θsに基づいて、次に決定される角度検出値θsの推測値θsdを作成する。角度検出値決定部は、n個の検出回路のうちの1つが故障した場合において、複数の暫定正常角度値の中から、故障した1つの検出回路を含まない複数のグループに対応する複数の正しい角度値を特定することが可能な場合には、複数の正しい角度値のうちの少なくとも1つに基づいて角度検出値θsを決定し、複数の正しい角度値を特定できない場合には、推測値θsdを角度検出値θsとする。g個の角度値の各々は、少なくともg個の角度値対のうちの少なくとも2つの角度値対を構成するために用いられる。
次に、図21を参照して、本実施の形態に係る回転磁界センサ1の実施例について説明する。図21は、本実施の形態に係る回転磁界センサの一部を示す回路図である。以下、本実施例に係る回転磁界センサ1を、第3の実施例の回転磁界センサ1と言う。第3の実施例の回転磁界センサ1の構成は、以下の点を除いて、第1の実施の形態で説明した第1または第2の実施例の回転磁界センサ1と同様である。第3の実施例における制御部60は、第1または第2の実施例における判定部62の代わりに、暫定正常角度値判定部162を有している。暫定正常角度値判定部162の構成および動作は、第1または第2の実施例における判定部62と同様である。ただし、暫定正常角度値判定部162は、複数の正しい角度値の代わりに、後で説明する複数の暫定正常角度値を抽出する。また、第3の実施例では、角度出力部63の構成が第1または第2の実施例とは異なっている。以下、第3の実施例における角度出力部63の構成について説明する。
第3の実施例における角度出力部63は、角度検出値決定部631と、角度値記憶部632と、角度値推測部633と、推測値記憶部634とを含んでいる。なお、角度検出値決定部631と角度値推測部633は、物理的に別個の要素ではなく、ソフトウェアによって実現される。角度値記憶部632と推測値記憶部634は、例えば、マイクロコンピュータのRAM(ランダムアクセスメモリ)によって実現される。
角度検出値決定部631は、角度出力部63の4つの入力端に入力された4つの角度値θs1〜θs4を受け取る。また、第3の実施例では、暫定正常角度値判定部162によって、4つの角度値θs1〜θs4の中から複数の暫定正常角度値が抽出される。複数の暫定正常角度値には、本来の複数の正しい角度値の他に、誤った角度値であるが正しい角度値と判別できない複数の角度値が含まれ得る。複数の暫定正常角度値の抽出方法については、後で説明する。
角度検出値決定部631は、暫定正常角度値判定部162によって制御されて、複数の暫定正常角度値の中から複数の正しい角度値を特定することが可能か否かを判定する。複数の正しい角度値を特定することが可能な場合、角度検出値決定部631は、例えば、第1の実施の形態で説明した手順S102C,S102Fおよび角度出力部63における角度検出値θsの決定方法と同様の方法によって、複数の暫定正常角度値に基づいて、角度検出値θsを決定する。このようにして決定された角度検出値θsを実角度検出値θsaと言う。実角度検出値θsaは、角度値記憶部632によって保存される。
また、第3の実施例では、角度出力部63は、角度検出値θsを決定する一連の手順を繰り返し実行して、所定の時間dt毎に、角度検出値θsを繰り返し決定し出力する。ここで、繰り返し決定される角度検出値θsのうち、最新の角度検出値θsを現在角度値と言い、過去の1つ以上の角度検出値θsを前角度値と言う。現在角度値θsbと1つ以上の前角度値θscは、角度値記憶部632によって保存される。
角度値推測部633は、既に決定された複数の角度検出値θsに基づいて、次に決定される角度検出値θsの推測値θsdを作成する。具体的には、角度値推測部633は、角度値記憶部632に保存されている現在角度値θsbおよび1つ以上の前角度値θscに基づいて、上記一連の手順によって現在角度値θsbの次に決定される角度検出値θsを推測する。このようにして推測される角度検出値θsが上記推測値θsdである。推測値θsdは、例えば、現在角度値θsbと、1つ以上の前角度値θscに基づいて、線形近似によって角度値を従属変数とする近似式を求めることによって推測される。推測値θsdは、推測値記憶部634によって保存される。
角度検出値決定部631は、角度値記憶部632および推測値記憶部634を制御して、実角度検出値θsaまたは推測値θsdを現在角度値θsbとして角度値記憶部632に保存すると共に、角度値記憶部632に保存された現在角度値θsbを、角度出力部63が出力する角度検出値θsとして、角度値記憶部632から出力させる。実角度検出値θsaまたは推測値θsdを現在角度値θsbとして保存する手順については、後で説明する。
次に、本実施の形態に係る角度決定方法について説明する。本実施の形態に係る角度決定方法は、第1の実施の形態で説明した要件1〜4を満たしている。本実施の形態に係る角度決定方法は、更に、第1の実施の形態で説明した要件5,6を満たしていてもよい。以下、本実施の形態に係る角度決定方法が第1の実施の形態に係る角度決定方法と異なる点について説明する。本実施の形態に係る角度決定方法では、第2の手順の内容が、第1の実施の形態とは異なっている。本実施の形態における第2の手順は、所定の時間dt毎に角度検出値θsを繰り返し決定すると共に、既に決定された複数の角度検出値θsに基づいて、次に決定される角度検出値θsの推測値θsdを作成する。また、本実施の形態における第2の手順は、n個の検出回路のうちの1つが故障した場合において、g個の角度値の中から、故障した1つの検出回路を含まない複数のグループに対応する複数の正しい角度値を特定することが可能な場合には、複数の正しい角度値のうちの少なくとも1つに基づいて角度検出値θsを決定し、複数の正しい角度値を特定できない場合には、推測値θsdを角度検出値θsとする。
本実施の形態における第2の手順は、特に、g個の角度値の中から選択された2つの角度値からなる少なくともg個の角度値対について、それぞれ、角度値対を構成する2つの角度値の差である少なくともg個の角度差を算出する手順と、少なくともg個の角度差のうち、所定の範囲内となる1つ以上の角度差を抽出し、抽出した1つ以上の角度差に対応する1つ以上の角度値対を構成する複数の角度値を、複数の暫定正常角度値とする手順と、所定の時間dt毎に角度検出値θsを繰り返し決定する角度検出値決定手順とを含んでいる。角度検出値決定手順は、既に決定された複数の角度検出値θsに基づいて、次に決定される角度検出値θsの推測値θsdを作成する手順と、n個の検出回路のうちの1つが故障した場合において、複数の暫定正常角度値の中から、故障した1つの検出回路を含まない複数のグループに対応する複数の正しい角度値を特定することが可能な場合には、複数の正しい角度値のうちの少なくとも1つに基づいて角度検出値θsを決定し、複数の正しい角度値を特定できない場合には、推測値θsdを角度検出値θsとする手順とを含んでいる。
以下、本実施の形態に係る角度決定方法の実施例について説明する。以下、この実施例に係る角度決定方法を、第3の実施例の角度決定方法と言う。第3の実施例の角度決定方法は、第3の実施例の回転磁界センサ1を用いる。
第3の実施例の角度決定方法は、第1の手順および第2の手順を備えている。第3の実施例の角度決定方法における第1の手順は、第1の実施の形態で説明した第1および第2の実施例の角度決定方法における第1の手順S101(図7および図8参照)と同じである。第3の実施例の角度決定方法における第2の手順は、図21に示した制御部60によって、4つの角度値θs1〜θs4を利用して、角度検出値θsを決定する手順である。
第3の実施例の角度決定方法における第2の手順は、4つの角度差θA〜θDを算出する手順と、4つの角度差θA〜θDを利用して、複数の暫定正常角度値を抽出する手順と、所定の時間dt毎に角度検出値θsを繰り返し決定する角度検出値決定手順とを含んでいる。4つの角度差θA〜θDを算出する手順は、第1の実施の形態で説明した手順S102A(図7参照)と同じである。複数の暫定正常角度値を抽出する手順は、第1の実施の形態で説明した手順S102B(図7参照)または手順S102E(図8参照)と同様の方法で、複数の暫定正常角度値を抽出する。複数の暫定正常角度値を抽出する手順が、手順S102Bと同様の方法で、複数の暫定正常角度値を抽出する場合には、複数の暫定正常角度値は、手順S102Bにおいて抽出される複数の正しい角度値に相当する。複数の暫定正常角度値を抽出する手順が、手順S102Eと同様の方法で複数の暫定正常角度値を抽出する場合には、手順S102Eと同様に、全ての誤った角度値を抽出し、故障した検出回路を特定すると共に、全ての誤った角度値以外の全ての角度値を複数の暫定正常角度値とする。複数の暫定正常角度値を抽出する手順は、暫定正常角度値判定部162によって実行される。
以下、図21および図22を参照して、第3の実施例の角度決定方法における角度検出値決定手順と、角度検出値決定部631、角度値記憶部632、角度値推測部633および推測値記憶部634の動作について説明する。図22は、角度検出値決定手順を示すフローチャートである。
角度検出値決定手順では、まず、手順S201で、角度検出値決定部631によって、複数の暫定正常角度値の中から複数の正しい角度値を特定することが可能か否かを判定する。回転磁界センサ1の第1ないし第4の検出回路10〜40(図3参照)に故障が発生していない場合には、複数の暫定正常角度値は、いずれも同じ値または極めて近い値になる。この場合、角度検出値決定部631は、複数の正しい角度値を特定することが可能と判定する。
一方、第1ないし第4の検出回路10〜40のうちの1つが故障すると、4つの角度値θs1〜θs4のうち、故障した1つの検出回路を含む2つのグループに対応する2つの角度値は誤った角度値となる。この場合、あるタイミングで、複数の暫定正常角度値として、本来の複数の正しい角度値の他に、2つの誤った角度値が抽出される場合がある。すなわち、あるタイミングで、2つの誤った角度値からなる角度値対について算出された角度差が0または0に極めて近い値になると、この2つの誤った角度値は、複数の暫定正常角度値として抽出される。
複数の暫定正常角度値が誤った角度値を含んでいる場合であっても、複数の暫定正常角度値の全てが、同じ値または極めて近い値である場合には、誤った角度値を正しい角度値とみなしても問題はない。従って、この場合には、角度検出値決定部631は、複数の正しい角度値を特定することが可能と判定する。
一方、複数の暫定正常角度値の全てが同じ値または極めて近い値ではない場合には、複数の暫定正常角度値の中で正しい角度値と誤った角度値とを判別することができない。この場合、角度検出値決定部631は、複数の正しい角度値を特定することができないと判定する。
手順S201において複数の正しい角度値を特定することが可能であると判定された場合(手順S201におけるY)には、次に、手順S202Aで、角度検出値決定部631が角度値記憶部632を制御して、角度値記憶部632において、保存されている現在角度値θsbを前角度値θscにする。次に、手順S203Aで、角度検出値決定部631によって実角度検出値θsaを決定し、更に、角度検出値決定部631が角度値記憶部632を制御して、実角度検出値θsaを現在角度値θsbとして角度値記憶部632に保存する。
手順S201において正常な角度値を特定することができないと判定された場合(手順S201におけるN)には、次に、手順S202Bで、角度検出値決定部631が角度値記憶部632を制御して、角度値記憶部632において、保存されている現在角度値θsbを前角度値θscにする。次に、手順S203Bで、角度検出値決定部631が角度値記憶部632および推測値記憶部634を制御して、推測値記憶部634に保存されている推測値θsdを現在角度値θsbとして角度値記憶部632に保存する。
手順S203Aまたは手順S203Bが実行されると、次に、手順S204で、角度検出値決定部631は、角度値記憶部632に保存されている現在角度値θsbを、角度出力部63が出力する角度検出値θsとして、角度値記憶部632から出力させる。この手順S204では、手順S203Aにおいて保存された実角度検出値θsa、または手順S203Bにおいて保存された推測値θsdが、角度検出値θsとして出力される。
次に、手順S205で、角度値推測部633によって、角度値記憶部632に保存されている現在角度値θsbおよび前角度値θscに基づいて、現在角度値θsbの次に決定される角度検出値θsを推測して、推測値θsdを作成する。次に、手順S206で、角度検出値決定部631が推測値記憶部634を制御して、推測値θsdを推測値記憶部634に保存する。
次に、手順S207で、角度検出値決定部631が、角度検出値決定手順を終了するか否かを判定する。手順S207で、終了すると判定された場合(Y)は、角度検出値決定手順を終了する。角度検出値決定手順は、例えば、終了を指示する信号が角度検出値決定部631に入力されることによって終了する。手順S207で、終了しないと判定された場合(N)は、手順S201に戻る。このようにして、所定の時間dt毎に、繰り返し、角度検出値θsが決定されて角度出力部63から出力される。
なお、第3の実施例の角度決定方法における角度検出値決定手順は、角度値記憶部632に現在角度値θsbおよび前角度値θscが保存され、推測値記憶部634に推測値θsdが保存されていることを前提としている。そのため、角度検出値決定手順を実行する前に、以下の準備手順を実行してもよい。準備手順では、まず、角度検出値決定部631によって、複数の暫定正常角度値に基づいて、実角度検出値θsaを決定する。なお、複数の暫定正常角度値の全てが同じ値または極めて近い値ではなく、実角度検出値θsaを決定できない場合には、複数の暫定正常角度値の全てが同じ値または極めて近い値になるまで、実角度検出値θsaを決定する手順を繰り返し実行してもよい。実角度検出値θsaが決定されたら、実角度検出値θsaを現在角度値θsbとして角度値記憶部632に保存する。
準備手順では、次に、角度検出値決定部631によって、新たな複数の暫定正常角度値に基づいて、新たな実角度検出値θsaを決定する。次に、現在角度値θsbを前角度値θscにし、新たな実角度検出値θsaを現在角度値θsbとして角度値記憶部632に保存する。次に、手順S205、S206と同様に、現在角度値θsbおよび前角度値θscに基づいて推測値θsdを作成し保存する。このような準備手順を実行することにより、角度値記憶部632に現在角度値θsbおよび前角度値θscが保存され、推測値記憶部634に推測値θsdが保存される。これにより、角度検出値決定手順を実行する準備が完了する。準備手順は、例えば、回転磁界センサ1による角度θの検出開始直後に実行される。
以上説明したように、本実施の形態では、あるタイミングで、2つの誤った角度値からなる角度値対について算出された角度差が0または0に極めて近い値になって、複数の正しい角度値を特定することができないときには、推測値θsdが角度検出値θsとして出力される。これにより、本実施の形態によれば、常に角度検出値θsを出力することが可能になる。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、各実施の形態における第1ないし第4の検出回路10〜40の配置や第1ないし第4の方向D1〜D4は一例であり、第1ないし第4の検出回路10〜40の配置と第1ないし第4の方向D1〜D4は、特許請求の範囲に記載された要件を満たす範囲内で種々の変更が可能である。
また、第2ないし第6の実施の形態では、回転磁界センサ1は第1ないし第4の検出回路10〜40の代わりに、第1の実施の形態において要件5を説明する際に示したグループの例に従うn個の検出回路を備えていてもよい。
また、本発明における磁気検出素子は、磁気検出素子を含む検出回路が回転磁界MFの方向DMに対応した出力信号を出力することができるものであれば、スピンバルブ型のMR素子(GMR素子、TMR素子)に限られない。例えば、磁気検出素子としては、AMR素子、ホール素子、フラックスゲート型磁気センサ等を用いることもできる。