以下で説明する本発明の複数の実施の形態は、所定の物理量と対応関係を有する情報を生成する物理量情報生成装置の状態を判別する状態判別装置および方法、ならびに状態判別装置を含む物理量情報生成装置および角度センサに関する。複数の実施の形態において、物理量情報生成装置は、所定の物理量と対応関係を有する情報を生成する物理量情報生成部と、上記状態判別装置とを備えている。角度センサは、物理量情報生成装置の一例である。以下、物理量情報生成装置が角度センサである場合を例にとって、複数の実施の形態について詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
始めに、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る角度センサを含む角度センサシステムの概略の構成について説明する。
本実施の形態に係る角度センサ1は、検出対象の角度θと対応関係を有する角度検出値θsを生成するものである。検出対象の角度θは、上記所定の物理量に対応する。角度検出値θsは、上記所定の物理量と対応関係を有する情報に対応する。
本実施の形態に係る角度センサ1は、特に、磁気式の角度センサである。図1に示したように、本実施の形態に係る角度センサ1は、方向が回転する回転磁界MFを検出する。この場合、検出対象の角度θは、基準位置における回転磁界MFの方向が基準方向に対してなす角度である。図1に示した角度センサシステムは、角度センサ1と、回転磁界MFを発生する手段の一例である円柱状の磁石5とを備えている。磁石5は、円柱の中心軸を含む仮想の平面を中心として対称に配置されたN極とS極とを有している。この磁石5は、円柱の中心軸を中心として回転する。これにより、磁石5が発生する回転磁界MFの方向は、円柱の中心軸を含む回転中心Cを中心として回転する。
基準位置は、磁石5の一方の端面に平行な仮想の平面(以下、基準平面と言う。)内に位置する。この基準平面内において、磁石5が発生する回転磁界MFの方向は、基準位置を中心として回転する。基準方向は、基準平面内に位置して、基準位置と交差する。以下の説明において、基準位置における回転磁界MFの方向とは、基準平面内に位置する方向を指す。角度センサ1は、磁石5の上記一方の端面に対向するように配置される。
なお、本実施の形態における角度センサシステムの構成は、図1に示した例に限られない。本実施の形態における角度センサシステムの構成は、基準位置における回転磁界MFの方向が角度センサ1から見て回転するように、回転磁界MFを発生する手段と角度センサ1の相対的位置関係が変化する構成であればよい。例えば、図1に示したように配置された磁石5と角度センサ1において、磁石5が固定されて角度センサ1が回転してもよいし、磁石5と角度センサ1が互いに反対方向に回転してもよいし、磁石5と角度センサ1が同じ方向に互いに異なる角速度で回転してもよい。
また、磁石5の代わりに、1組以上のN極とS極が交互にリング状に配列された磁石を用い、この磁石の外周の近傍に角度センサ1が配置されていてもよい。この場合には、磁石と角度センサ1の少なくとも一方が回転すればよい。
また、磁石5の代わりに、複数組のN極とS極が交互に直線状に配列された磁気スケールを用い、この磁気スケールの外周の近傍に角度センサ1が配置されていてもよい。この場合には、磁気スケールと角度センサ1の少なくとも一方が、磁気スケールのN極とS極が並ぶ方向に直線的に移動すればよい。
上述の種々の角度センサシステムの構成においても、角度センサ1と所定の位置関係を有する基準平面が存在し、この基準平面内において、回転磁界MFの方向は、角度センサ1から見て、基準位置を中心として回転する。
角度センサ1は、それぞれ検出対象の角度θと対応関係を有する第1ないし第3の検出信号S11,S12,S13を生成する検出信号生成部2を備えている。検出信号生成部2は、第1の検出信号S11を生成する第1の検出回路10と、第2の検出信号S12を生成する第2の検出回路20と、第3の検出信号S13を生成する第3の検出回路30とを含んでいる。図1では、理解を容易にするために、第1ないし第3の検出回路10,20,30を別体として描いているが、第1ないし第3の検出回路10,20,30は一体化されていてもよい。また、図1では、第1ないし第3の検出回路10,20,30が回転中心Cに平行な方向に積層されているが、その積層順序は図1に示した例に限られない。第1ないし第3の検出回路10,20,30の各々は、回転磁界MFを検出する少なくとも1つの磁気検出素子を含んでいる。
ここで、図1および図2を参照して、本実施の形態における方向と角度の定義について説明する。まず、図1に示した回転中心Cに平行で、図1における下から上に向かう方向をZ方向とする。図2では、Z方向を図2における奥から手前に向かう方向として表している。次に、Z方向に垂直な2方向であって、互いに直交する2つの方向をX方向とY方向とする。図2では、X方向を右側に向かう方向として表し、Y方向を上側に向かう方向として表している。また、X方向とは反対の方向を−X方向とし、Y方向とは反対の方向を−Y方向とする。
基準位置PRは、角度センサ1が回転磁界MFを検出する位置である。基準方向DRはX方向とする。前述の通り、検出対象の角度θは、基準位置PRにおける回転磁界MFの方向DMが基準方向DRに対してなす角度である。回転磁界MFの方向DMは、図2において反時計回り方向に回転するものとする。角度θは、基準方向DRから反時計回り方向に見たときに正の値で表し、基準方向DRから時計回り方向に見たときに負の値で表す。
次に、図3を参照して、検出信号生成部2の構成について詳しく説明する。図3は、検出信号生成部2の構成を示す回路図である。前述の通り、検出信号生成部2は、第1の検出回路10と第2の検出回路20と第3の検出回路30とを含んでいる。検出信号生成部2は、更に、電源ポートVとグランドポートGを含んでいる。電源ポートVとグランドポートGの間には、5V等の所定の大きさの電源電圧が印加される。
回転磁界MFの方向DMが所定の周期で回転すると、検出対象の角度θは所定の周期で変化する。この場合、第1ないし第3の検出信号S11,S12,S13は、いずれも、上記所定の周期と等しい信号周期で周期的に変化する。第1ないし第3の検出信号S11,S12,S13は、互いに位相が異なっている。
第1の検出回路10は、直列に接続された一対の磁気検出素子R11,R12と、出力ポートE10を有している。磁気検出素子R11の一端は、電源ポートVに接続されている。磁気検出素子R11の他端は、磁気検出素子R12の一端と出力ポートE10に接続されている。磁気検出素子R12の他端は、グランドポートGに接続されている。出力ポートE10は、磁気検出素子R11,R12の接続点の電位に対応する第1の検出信号S11を出力する。
第2の検出回路20は、直列に接続された一対の磁気検出素子R21,R22と、出力ポートE20を有している。磁気検出素子R21の一端は、電源ポートVに接続されている。磁気検出素子R21の他端は、磁気検出素子R22の一端と出力ポートE20に接続されている。磁気検出素子R22の他端は、グランドポートGに接続されている。出力ポートE20は、磁気検出素子R21,R22の接続点の電位に対応する第2の検出信号S12を出力する。
第3の検出回路30は、直列に接続された一対の磁気検出素子R31,R32と、出力ポートE30を有している。磁気検出素子R31の一端は、電源ポートVに接続されている。磁気検出素子R31の他端は、磁気検出素子R32の一端と出力ポートE30に接続されている。磁気検出素子R32の他端は、グランドポートGに接続されている。出力ポートE30は、磁気検出素子R31,R32の接続点の電位に対応する第3の検出信号S13を出力する。
本実施の形態では、磁気検出素子R11,R12,R21,R22,R31,R32の各々は、直列に接続された複数の磁気抵抗効果素子(MR素子)を含んでいる。複数のMR素子の各々は、例えばスピンバルブ型のMR素子である。このスピンバルブ型のMR素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、回転磁界MFの方向DMに応じて磁化の方向が変化する磁性層である自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置された非磁性層とを有している。スピンバルブ型のMR素子は、TMR素子でもよいし、GMR素子でもよい。TMR素子では、非磁性層はトンネルバリア層である。GMR素子では、非磁性層は非磁性導電層である。スピンバルブ型のMR素子では、自由層の磁化の方向が磁化固定層の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°のときに抵抗値は最小値となり、角度が180°のときに抵抗値は最大値となる。図3において、磁気検出素子に重なるように描かれた矢印は、その磁気検出素子に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向を表している。
第1の検出回路10では、磁気検出素子R11に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、X方向から反時計回り方向に120°だけ回転した方向である。以下、この方向を第1の方向D1と言う。磁気検出素子R12に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、第1の方向D1とは反対方向である。第1の検出回路10では、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度に応じて、磁気検出素子R11,R12の接続点の電位が変化する。従って、第1の検出回路10は、回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を第1の検出信号S11として出力する。回転磁界MFの第1の方向D1の成分の強度は、検出対象の角度θと対応関係を有する。
第2の検出回路20では、磁気検出素子R21に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向はX方向である。以下、この方向を第2の方向D2と言う。磁気検出素子R22に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、第2の方向D2とは反対方向すなわち−X方向である。第2の検出回路20では、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度に応じて、磁気検出素子R21,R22の接続点の電位が変化する。従って、第2の検出回路20は、回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を第2の検出信号S12として出力する。回転磁界MFの第2の方向D2の成分の強度は、検出対象の角度θと対応関係を有する。
第3の検出回路30では、磁気検出素子R31に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、X方向から時計回り方向に120°だけ回転した方向である。以下、この方向を第3の方向D3と言う。磁気検出素子R32に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、第3の方向D3とは反対方向である。第3の検出回路30では、回転磁界MFの第3の方向D3の成分の強度に応じて、磁気検出素子R31,R32の接続点の電位が変化する。従って、第3の検出回路30は、回転磁界MFの第3の方向D3の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を第3の検出信号S13として出力する。回転磁界MFの第3の方向D3の成分の強度は、検出対象の角度θと対応関係を有する。
なお、検出回路10,20,30内の複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子の作製の精度等の観点から、上述の方向からわずかにずれていてもよい。
ここで、図6を参照して、磁気検出素子の構成の一例について説明する。図6は、図3に示した検出信号生成部2における1つの磁気検出素子の一部を示す斜視図である。この例では、1つの磁気検出素子は、複数の下部電極62と、複数のMR素子50と、複数の上部電極63とを有している。複数の下部電極62は図示しない基板上に配置されている。個々の下部電極62は細長い形状を有している。下部電極62の長手方向に隣接する2つの下部電極62の間には、間隙が形成されている。図6に示したように、下部電極62の上面上において、長手方向の両端の近傍に、それぞれMR素子50が配置されている。MR素子50は、下部電極62側から順に積層された自由層51、非磁性層52、磁化固定層53および反強磁性層54を含んでいる。自由層51は、下部電極62に電気的に接続されている。反強磁性層54は、反強磁性材料よりなり、磁化固定層53との間で交換結合を生じさせて、磁化固定層53の磁化の方向を固定する。複数の上部電極63は、複数のMR素子50の上に配置されている。個々の上部電極63は細長い形状を有し、下部電極62の長手方向に隣接する2つの下部電極62上に配置されて隣接する2つのMR素子50の反強磁性層54同士を電気的に接続する。このような構成により、図6に示した磁気検出素子は、複数の下部電極62と複数の上部電極63とによって直列に接続された複数のMR素子50を有している。なお、MR素子50における層51〜54の配置は、図6に示した配置とは上下が反対でもよい。
前述の通り、検出対象の角度θが前記所定の周期で変化する場合、第1ないし第3の検出信号S11,S12,S13は、いずれも、上記所定の周期と等しい信号周期で周期的に変化する。検出対象の角度θが前記所定の周期で変化する場合、検出信号S11,S12,S13の各々は、理想的な正弦曲線(サイン(Sine)波形とコサイン(Cosine)波形を含む)を描くように周期的に変化する理想成分と、この理想成分以外の誤差成分とを含んでいる。検出信号S11,S12,S13は、それらの理想成分の位相が互いに異なり且つ所定の位相関係を有するものである。本実施の形態では特に、検出信号S11,S12,S13では、それらの理想成分の位相が互いに120°異なっている。以下の説明では、検出信号S11,S12,S13は、いずれも、理想成分の変化の中心が0になるようにレベルが調整されているものとする。
検出信号S11,S12,S13の誤差成分の原因としては、MR素子50の自由層51が、MR素子50の磁化固定層53の磁化方向の磁気異方性を有することや、MR素子50の磁化固定層53の磁化方向が回転磁界MF等の影響によって変動することが挙げられる。これらの原因による誤差成分は、主に、理想成分に対する第3高調波に相当する誤差成分である。以下、理想成分に対する第3高調波に相当する誤差成分を、第3高調波誤差成分と言う。
誤差成分としては、上記第3高調波誤差成分の他に、理想成分に対する第3高調波以外の高調波に相当する誤差成分や、理想成分と同じ周期を有するが理想成分とは位相が異なる誤差成分が存在し得る。以下、理想成分と同じ周期を有するが理想成分とは位相が異なる誤差成分を、1次誤差成分と言う。1次誤差成分は、検出信号の位相を、理想成分の位相からずらすように作用する。1次誤差成分は、例えば、検出回路10,20,30内の複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向が、所望の方向からずれることによって生じる。
次に、図4を参照して、角度センサ1の、検出信号生成部2以外の部分について説明する。角度センサ1は、検出信号生成部2の他に、図4に示した角度検出部3および状態判別装置4を備えている。検出信号生成部2および角度検出部3は、物理量情報生成部に対応する。状態判別装置4は、物理量情報生成装置としての角度センサ1が、所定の状態にあるか否かを判別する。本実施の形態では特に、所定の状態とは、物理量情報生成装置すなわち角度センサ1が故障していない状態である。従って、状態判別装置4は、角度センサ1の故障を検出する。図4は、角度検出部3および状態判別装置4の構成を示す機能ブロック図である。角度検出部3および状態判別装置4は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)またはマイクロコンピュータによって実現することができる。
角度検出部3は、第1ないし第3の検出信号S11,S12,S13を用いた演算を行って、検出対象の角度θと対応関係を有する角度検出値θsを生成する。角度検出部3は、それぞれ検出信号S11,S12,S13が入力される入力ポートP10,P20,P30を備えている。角度検出部3は、更に、演算部31,32と、角度演算部33とを備えている。
演算部31は、入力ポートP10,P20から入力される検出信号S11と検出信号S12との差を表す信号Saを生成する。演算部32は、入力ポートP30,P20から入力される検出信号S13と検出信号S12との差を表す信号Sbを生成する。角度演算部33は、演算部31,32によって生成された信号Sa,Sbを用いた演算を行って角度検出値θsを生成する。信号Saと信号Sbは、下記の式(1)、(2)で表される。
Sa=S11−S12 …(1)
Sb=S13−S12 …(2)
図7は、第1ないし第3の検出信号S11,S12,S13と信号Sa,Sbの波形を示す波形図である。図7において、横軸は検出対象の角度θを示し、縦軸は信号S11,S12,S13,Sa,Sbを相対値で示している。
図5は、図4における角度演算部33の構成を示す機能ブロック図である。図5に示したように、角度演算部33は、正規化部331,332,335,336と、加算部333と、減算部334と、演算部337とを含んでいる。
正規化部331は、信号Saを正規化した信号Sanを生成する。正規化部332は、信号Sbを正規化した信号Sbnを生成する。正規化部331,332は、信号San,Sbnの最大値が共に1になり、信号San,Sbnの最小値が共に−1になるように、信号Sa,Sbを正規化して信号San,Sbnを生成する。
加算部333は、信号Sanと信号Sbnを加算して信号Scを生成する。減算部334は、信号Sanから信号Sbnを引いて信号Sdを生成する。
正規化部335は、信号Scを正規化した信号Scnを生成する。正規化部336は、信号Sdを正規化した信号Sdnを生成する。正規化部335,336は、信号Scn,Sdnの最大値が共に1になり、信号Scn,Sdnの最小値が共に−1になるように、信号Sc,Sdを正規化して信号Scn,Sdnを生成する。
演算部337は、下記の式(3)で表される演算を行って、角度検出値θsを生成する。式(3)における“atan”は、アークタンジェント計算を表している。
θs=atan(Scn/Sdn)+C1 …(3)
式(3)におけるC1は、角度を表わす定数である。定数C1は、例えば90°であるが、検出信号生成部2の取り付け精度等に応じて調整することができる。
θsが0°以上360°未満の範囲内では、式(3)におけるθsの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、Scn,Sdnの正負の組み合わせにより、θsの真の値が、式(3)におけるθsの2つの解のいずれであるかを判別することができる。演算部337は、式(3)と、上記のScn,Sdnの正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθsを求める。
以下、図4に示した状態判別装置4について説明する。状態判別装置4は、初期判定値生成部41と、補正処理部42と、判別部43とを備えている。初期判定値生成部41は、物理量情報生成装置すなわち角度センサ1の状態に対応する少なくとも1つの初期判定値を生成する。補正処理部42は、少なくとも1つの初期判定値に対して補正処理を行って、少なくとも1つの補正後判定値を生成する。判別部43は、少なくとも1つの補正後判定値に基づいて、物理量情報生成装置すなわち角度センサ1が所定の状態にあるか否かを判別する。前述の通り、本実施の形態では特に、所定の状態とは、物理量情報生成装置すなわち角度センサ1が故障していない状態である。以下、物理量情報生成装置すなわち角度センサ1が故障していない状態を、正常状態と言う。
物理量情報生成装置すなわち角度センサ1が所定の状態にあるときに、少なくとも1つの初期判定値は、理想値成分と、所定の物理量すなわち検出対象の角度θに応じて変動する変動成分とを含んでいる。補正処理は、物理量情報生成装置すなわち角度センサ1が所定の状態にあるときにおける少なくとも1つの補正後判定値を、物理量情報生成装置すなわち角度センサ1が所定の状態にあるときにおける少なくとも1つの初期判定値に比べて、変動成分が低減されたものとする処理である。本実施の形態では特に、変動成分は、前述の検出信号S11,S12,S13の誤差成分に起因する。
本実施の形態では特に、初期判定値生成部41は、入力ポートP10,P20,P30に入力された第1ないし第3の検出信号S11,S12,S13を用いた演算を行って少なくとも1つの初期判定値を生成する。補正処理部42は、第1ないし第3の検出信号S11,S12,S13のうちの少なくとも1つを用いて、少なくとも1つの初期判定値に対して補正処理を行って、少なくとも1つの補正後判定値を生成する。判別部43は、少なくとも1つの補正後判定値に基づいて、角度センサ1が所定の状態にあるか否かを判別する。
また、本実施の形態では特に、初期判定値生成部41は、第1ないし第3の検出信号S11,S12,S13の和を求めることを含む演算を行って、1つの初期判定値VHSを生成する。なお、「第1ないし第3の検出信号S11,S12,S13の和を求めることを含む演算」は、検出信号S11,S12,S13の和を求めた後に、正規化等のために所定の係数を掛けたり、所定の値を加減したりすることを含む。また、この演算に用いられる検出信号S11,S12,S13には、正規化された後の検出信号S11,S12,S13が含まれる。ここでは、初期判定値VHSは、下記の式(4)によって表わされるものとする。
VHS=S11+S12+S13 …(4)
検出信号S11,S12,S13がいずれも理想成分のみからなり且つ角度センサ1が故障していない場合には、初期判定値VHSは理想値成分のみからなる。本実施の形態では特に、理想値成分は、検出対象の角度θに関わらずに、一定の値、具体的には0である。
検出信号S11,S12,S13がいずれも理想成分のみからなり且つ角度センサ1が故障していない場合以外の場合には、初期判定値VHSは、理想値成分とは異なる値になり得る。初期判定値VHSは、理想値成分とは異なる値になる場合には、検出対象の角度θに応じて変動し得る。
特に、検出信号S11,S12,S13がそれぞれ誤差成分を含む場合には、角度センサ1が所定の状態すなわち正常状態にあるときに、初期判定値VHSは、理想値成分と、検出対象の角度θに応じて変動する変動成分とを含む。
本実施の形態では特に、補正処理部42は、第1ないし第3の検出信号S11,S12,S13のうちの少なくとも1つを用いて1つの初期判定値VHSに対して補正処理を行って、1つの補正後判定値VHSCを生成する。補正処理は、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける補正後判定値VHSCを、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける初期判定値VHSに比べて、変動成分が低減されたものとする処理である。言い換えると、補正処理は、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける補正後判定値VHSCを、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける初期判定値VHSに比べて、理想値成分に近づける処理である。
本実施の形態における補正処理は、具体的には、下記の式(5)によって表わされるように、初期判定値VHSから補正値CVを引いて補正後判定値VHSCを生成する処理である。
VHSC=VHS−CV …(5)
以下、補正値CVの第1および第2の例について説明する。第1の例の補正値CVは、下記の式(6)によって表わされる。式(6)中の“a”,“b”、“n”は係数である。
CV=(−3a/n)・S12+(4a/n3)・S123+b …(6)
ここで、第1の例の補正値CVの意味について説明する。角度センサ1が正常状態にあるときに、初期判定値VHSが変動成分を含む主な原因としては、検出信号S11,S12,S13がそれぞれ第3高調波誤差成分を含むことが挙げられる。検出信号S11,S12,S13がいずれも1次誤差成分を含まない場合には、検出信号S11,S12,S13の第3高調波誤差成分の位相は一致する。式(4)によって初期判定値VHSを生成すると、初期判定値VHSには、検出信号S11,S12,S13の第3高調波誤差成分を加算して得られる変動成分が含まれることになる。以下、この変動成分を3次変動成分と言う。3次変動成分は、検出信号S11,S12,S13のそれぞれの理想成分の周期の1/3の周期を有する。
検出信号S11,S12,S13がいずれも1次誤差成分を含まない場合には、3次変動成分の位相は、検出信号S11,S12,S13の第3高調波誤差成分の位相と一致し、3次変動成分の変動幅は、検出信号S11,S12,S13の第3高調波誤差成分の変動幅の和になる。角度センサ1が正常状態にあるときにおける初期判定値VHSは、主に、3次変動成分を含むことによって、検出対象の角度θに応じて変動する。
第1の例の補正値CVは、3次変動成分を近似した値である。第1の例の補正値CVは、以下のようにして導かれる。まず、3次変動成分は、a・cos(3θ)+bと表すことができる。これを変形すると、a・(−3・cosθ+4・cos3θ)+bとなる。cosθは、第2の検出信号S12の理想成分を、最大値が1、最小値が−1になるように正規化した信号に相当する。第2の検出信号S12そのものと、第2の検出信号S12の理想成分との差は、わずかである。そこで、第2の検出信号S12を、最大値が1、最小値が−1になるように正規化した信号をS12/nと表したときに、cosθはS12/nと近似することができる。この場合、3次変動成分は、a・{−3・(S12/n)+4・(S12/n)3}+bと近似することができる。これを変形すると、式(6)の右辺になる。以上のことから、式(6)で表される補正値CVは、3次変動成分を近似した値であると言える。式(6)中の係数“a”,“b”の値は、例えば、故障していない角度センサ1の出荷前に初期判定値VHSを測定し、その測定結果に応じて決定される。係数“n”は予め決められている。
なお、3次変動成分の振幅は、検出信号S11,S12,S13の各々の理想成分の振幅よりも極めて小さい。そのため、式(6)中の係数“a”の値も、検出信号S11,S12,S13の各々の理想成分の振幅よりも極めて小さい。具体的には、係数“a”の値は、検出信号S11,S12,S13の各々の理想成分の振幅の10%以下である。
検出信号S11,S12,S13のうちの少なくとも1つが1次誤差成分を含む場合には、検出信号S11,S12,S13の第3高調波誤差成分の位相および3次変動成分の位相は、完全には一致しない。第2の例の補正値CVは、このような場合にも対応できるようにしたものである。
第2の例の補正値CVは、下記の式(7)によって表わされる。式(7)中の“a”,“b”,“c”,“n”は係数である。
CV=(−3a/n)・S12+(4a/n3)・S123+(−3c/n)・S11+(4c/n3)・S113+b …(7)
第2の例の補正値CVは、2つの検出信号S11,S12を含んでいる。従って、第2の例の補正値CVを用いる場合には、補正処理部42は、2つの検出信号S11,S12を用いて初期判定値VHSに対して補正処理を行うことになる。
第2の例の補正値CVでは、係数“a”,“c”の値を変えることによって、補正値CVの位相を変えることができる。これにより、検出信号S11,S12,S13の第3高調波誤差成分の位相および3次変動成分の位相が完全には一致しない場合でも、3次変動成分を近似した補正値CVを設定することできる。式(7)中の係数“a”,“b”,“c”の値は、例えば、故障していない角度センサ1の出荷前に初期判定値VHSを測定し、その測定結果に応じて決定される。係数“n”は予め決められている。係数“a”と同様に、係数“c”の値は、検出信号S11,S12,S13の各々の理想成分の振幅よりも極めて小さく、具体的には、検出信号S11,S12,S13の各々の理想成分の振幅の10%以下である。
第1または第2の例の補正値CVを用いた補正処理は、初期判定値VHSにおける3次変動成分を低減して補正後判定値VHSCを生成する処理であると言える。
次に、判別部43について説明する。判別部43は、補正後判定値VHSCが所定の判定範囲内にある場合には角度センサ1は正常状態にあると判定し、それ以外の場合には角度センサ1は故障していると判定して、その判定結果を示す信号を出力する。判定範囲は、故障していない角度センサ1の出荷前に設定される。判定範囲の決定方法については、後で詳しく説明する。
次に、図8を参照して、本実施の形態に係る状態判別方法について説明する。本実施の形態に係る状態判別方法は、物理量情報生成装置すなわち角度センサ1の状態を判別する方法である。本実施の形態では特に、状態判別方法は、角度センサ1が所定の状態すなわち正常状態にあるか否かを判別する方法である。この状態判別方法は、本実施の形態に係る状態判別装置4によって実行される。
図8に示したように、本実施の形態に係る状態判別方法は、検出信号S11,S12,S13を用いた演算を行って初期判定値VHSを生成する手順S101と、検出信号S11,S12,S13のうちの少なくとも1つを用いて初期判定値VHSに対して補正処理を行って、補正後判定値VHSCを生成する手順S102と、補正後判定値VHSCに基づいて、角度センサ1が所定の状態にあるか否かを判別する手順S103とを含んでいる。
手順S101は、図4に示した初期判定値生成部41によって実行される。手順S101の内容は、前述の初期判定値生成部41の動作の内容と同じである。手順S102は、図4に示した補正処理部42によって実行される。手順S102の内容は、前述の補正処理部42の動作の内容と同じである。手順S103は、図4に示した判別部43によって実行される。手順S103の内容は、前述の判別部43の動作の内容と同じである。
次に、補正処理の作用を示すシミュレーションの結果と、本実施の形態の効果について説明する。図9は、シミュレーションで用いた第1ないし第3の検出信号S11,S12,S13の理想成分と第3高調波誤差成分の波形を示す波形図である。図9では、検出信号S11,S12,S13の理想成分を、それぞれ記号V11,V12,V13で表している。図9では、検出信号S11,S12,S13の第3高調波誤差成分の波形は一致している。図9では、検出信号S11,S12,S13の第3高調波誤差成分を、記号V3で表している。図9において、横軸は検出対象の角度θを示し、縦軸は理想成分V11,V12,V13と第3高調波誤差成分V3を示している。
シミュレーションでは、まず、角度センサ1が正常状態にあるときにおける初期判定値VHSと補正後判定値VHSCの波形を調べた。図10は、これらの波形を示している。図10において、横軸は検出対象の角度θを示し、縦軸は初期判定値VHSと補正後判定値VHSCを示している。
図10に示したように、角度センサ1が正常状態にあるときでも、初期判定値VHSは、3次変動成分を含むために、検出対象の角度θに応じて変動している。これに対し、角度センサ1が正常状態にあるときにおける補正後判定値VHSCは、検出対象の角度θに関わらずに理想値成分である0に近い。
シミュレーションでは、次に、正常な検出信号S11に100mVのオフセット値を加えた信号を、図4に示した入力ポートP10に入力して、角度センサ1を、故障を模擬した状態にした。以下、この状態を模擬故障状態と言う。そして、シミュレーションでは、模擬故障状態における初期判定値VHSと補正後判定値VHSCの波形を調べた。図11は、これらの波形を示している。図11において、横軸は検出対象の角度θを示し、縦軸は初期判定値VHSと補正後判定値VHSCを示している。
図11に示したように、模擬故障状態における初期判定値VHSは、100mVを中心にして、検出対象の角度θに応じて大きく変動している。これに対し、模擬故障状態における補正後判定値VHSCは、100mVの近傍で、検出対象の角度θに応じて変動しているものの、その変動幅は、初期判定値VHSの変動幅に比べて非常に小さくなっている。
ここで、角度検出値θsに生じる誤差を角度誤差と言い、記号AEで表す。角度センサ1が故障すると、角度誤差AEが、許容範囲を超える場合がある。シミュレーションでは、正常状態と模擬故障状態のそれぞれについて、検出対象の角度θが0°から360°まで変化する間における角度誤差AEと初期判定値VHSとの関係をグラフに描いた。以下の説明では、このグラフを初期関係図と言う。図12は、正常状態と模擬故障状態のそれぞれにおける初期関係図を示している。図12において、横軸は角度誤差AEを示し、縦軸は初期判定値VHSを示している。また、図12において、記号d(0)で示した直線は、正常状態における初期関係図を示し、記号d(100)で示した曲線は、模擬故障状態における初期関係図を示している。
また、シミュレーションでは、正常状態と模擬故障状態のそれぞれについて、検出対象の角度θが0°から360°まで変化する間における角度誤差AEと補正後判定値VHSCとの関係をグラフに描いた。以下の説明では、このグラフを補正後関係図と言う。図13は、正常状態と模擬故障状態のそれぞれにおける補正後関係図を示している。図13において、横軸は角度誤差AEを示し、縦軸は補正後判定値VHSCを示している。また、図13において、記号e(0)で示した点は、正常状態における補正後関係図を示し、記号e(100)で示した曲線は、模擬故障状態における補正後関係図を示している。
図12に示したように、初期関係図d(0)における初期判定値VHSの変動範囲と、初期関係図d(100)における初期判定値VHSの変動範囲は、オーバーラップしている。このことは、初期判定値VHSに基づいて、正常状態と、模擬故障状態に相当する故障を判別することができないことを意味している。
例えば、初期判定値VHSがしきい値以下であれば正常状態と判定し、初期判定値VHSがしきい値を超えたら故障と判定するとする。この場合、しきい値を、0mVよりも大きく、初期関係図d(100)における初期判定値VHSの最小値よりも小さい値に設定すると、正常状態でも初期判定値VHSがしきい値を超えて故障と判定される場合がある。しきい値を、初期関係図d(100)における初期判定値VHSの最小値以上で、初期関係図d(0)における初期判定値VHSの最大値以下の値に設定すると、正常状態でも初期判定値VHSがしきい値を超えて故障と判定される場合があると共に、模擬故障状態でも初期判定値VHSがしきい値以下となって正常状態と判定される場合がある。しきい値を、初期関係図d(0)における初期判定値VHSの最大値よりも大きく、初期関係図d(100)における初期判定値VHSの最大値以下の値に設定すると、模擬故障状態でも初期判定値VHSがしきい値以下となって正常状態と判定される場合がある。
これに対し、図13に示したように、補正後関係図e(0)における補正後判定値VHSCの変動範囲と、補正後関係図e(100)における補正後判定値VHSCの変動範囲は、オーバーラップしていない。この場合には、以下のようにして、補正後判定値VHSCに基づいて、正常状態と、模擬故障状態に相当する故障を判別することができる。すなわち、補正後判定値VHSCがしきい値以下であれば正常状態と判定し、補正後判定値VHSCがしきい値を超えたら故障と判定するとする。しきい値は、補正後関係図e(0)における補正後判定値VHSCの最大値以上で、補正後関係図e(100)における補正後判定値VHSCの最小値よりも小さい値に設定する。この場合には、正常状態では常に補正後判定値VHSCがしきい値以下になり、模擬故障状態で常に補正後判定値VHSCがしきい値を超える。従って、補正後判定値VHSCに基づいて、正常状態と、模擬故障状態に相当する故障を判別することができる。
ここまでは、シミュレーションの結果に基づいて、正常状態と、模擬故障状態に相当する故障を判別する場合について考察してきた。しかし、ここまでの考察は、補正後判定値VHSCの変動範囲が異なる2つの状態を判別する場合にも当てはまる。すなわち、2つの状態において、初期判定値VHSの変動範囲が異なっていても、それらがオーバーラップしている場合には、初期判定値VHSに基づいて、2つの状態を判別することができない。このような場合であって、2つの状態の補正後判定値VHSCの変動範囲がオーバーラップしていなければ、補正後判定値VHSCに基づいて、2つの状態を判別することができる。これが可能になるのは、補正後判定値VHSCの変動幅が、初期判定値VHSの変動幅に比べて非常に小さいためである。
上記の2つの状態が、角度センサ1が正常であると判断されるべき状態と、角度センサ1が故障している判断されるべき状態であるとすれば、初期判定値VHSに用いては角度センサ1の故障を検出できない場合でも、補正後判定値VHSCを用いれば角度センサ1の故障を検出することができることになる。以上の説明から理解されるように、本実施の形態によれば、角度センサ1の状態を精度よく判別することが可能になる。具体的には、本実施の形態によれば、角度センサ1が故障しているか否かを精度よく判別することが可能になる。
なお、式(6)で表される補正値CVを用いる場合には、正常状態と比べて検出信号S12が変化するような角度センサ1の故障が発生すると、正常状態と比べて補正値CVが変化する。しかし、式(6)中の係数“a”の値は検出信号S12の理想成分の振幅よりも極めて小さい。そのため、正常状態と比べて検出信号S12が変化するような角度センサ1の故障が発生した場合、補正値CVの変化量は、初期判定値VHSの変化量よりも極めて小さくなる。そのため、このような場合であっても、補正後判定値VHSCを用いて、角度センサ1の故障を精度よく検出することができる。
また、式(7)で表される補正値CVを用いる場合には、正常状態と比べて検出信号S11またはS12が変化するような角度センサ1の故障が発生すると、正常状態と比べて補正値CVが変化する。しかし、式(7)中の係数“a”,“c”の値は、検出信号S11,S12の各々の理想成分の振幅よりも極めて小さい。そのため、正常状態と比べて検出信号S11またはS12が変化するような角度センサ1の故障が発生した場合、補正値CVの変化量は、初期判定値VHSの変化量よりも極めて小さくなる。そのため、このような場合であっても、補正後判定値VHSCを用いて、角度センサ1の故障を精度よく検出することができる。
次に、判定範囲の決定方法の一例について説明する。始めに、角度センサ1の故障の態様について説明する。角度センサ1の故障には、検出回路10,20,30のうちの少なくとも1つの故障によるものが含まれる。検出回路の故障には、検出回路に含まれる複数のMR素子50のうちの少なくとも1つの短絡によるものと、下部電極62と上部電極63の少なくとも一方の断線によるものが含まれる。検出回路10,20,30のうちの少なくとも1つが故障すると、検出信号S11,S12,S13のうちの少なくとも1つが正常時とは異なるようになる。このような角度センサ1の故障が発生すると、正常時と比べて角度誤差AEが大きくなると共に、補正後判定値VHSCが正常時とは異なるようになる。角度誤差AEが生じる要因には、角度センサ1の故障によらない要因と、角度センサ1の故障による要因とがある。
判定範囲は、例えば、角度誤差AEが許容範囲を超えるような角度センサ1の故障を検出できるように決定される。以下、その判定範囲の決定方法について、具体的に説明する。この判定範囲の決定方法では、まず、シミュレーションまたは実験によって、角度誤差AEの絶対値の最大値と、補正後判定値VHSCの絶対値の最大値との関係を求める。この関係は、以下の第1の手順と第2の手順によって求めることができる。
第1の手順では、角度センサ1の故障を模擬して、正常な検出信号S11にオフセット値を加えた信号を、図4に示した入力ポートP10に入力する。入力ポートP20,P30には、それぞれ正常な検出信号S12,S13を入力する。そして、検出対象の角度θが0°から360°まで変化する間における角度誤差AEと補正後判定値VHSCとの関係を示す補正後関係図を描く。第1の手順では、この作業を、オフセット値を変えて複数回行う。これにより、複数のオフセット値に対応する複数の補正後関係図が得られる。
図14および図15は、第1の手順によって得られた複数の補正後関係図の一例を示している。図14および図15において、横軸は角度誤差AEを示し、縦軸は補正後判定値VHSCを示している。記号f(−200)で示した曲線は、オフセット値が−200mVのときの補正後関係図を示している。記号f(−100)で示した曲線は、オフセット値が−100mVのときの補正後関係図を示している。記号f(100)で示した曲線は、オフセット値が100mVのときの補正後関係図を示している。記号f(200)で示した曲線は、オフセット値が200mVのときの補正後関係図を示している。また、記号f(0)で示した点は、オフセット値が0のときの補正後関係図を示している。
第2の手順では、第1の手順によって得られた複数の補正後関係図を用いて、以下のようにして、角度誤差AEの絶対値の最大値と、補正後判定値VHSCの絶対値の最大値との関係を求める。以下の説明では、図14および図15中の点であって、角度誤差AEの任意の値AEnと、補正後判定値VHSCの任意の値VHSCnとの組み合わせを示す点を(AEn,VHSCn)と表す。
第2の手順では、まず、オフセット値が0のときの補正後関係図を除く複数の補正後関係図の各々に関して、角度誤差AEの絶対値の最大値AEmと、補正後判定値VHSCの絶対値の最大値VHSCmを求める。次に、オフセット値が負の値のときの補正後関係図に関しては、点(−AEm,−VHSCm)を第1点とし、点(AEm,−VHSCm)を第2点とする。また、オフセット値が正の値のときの補正後関係図に関しては、点(AEm,VHSCm)を第1点とし、点(−AEm,VHSCm)を第2点とする。
次に、図15に示したように、複数の補正後関係図に対応する複数の第1点を連結する直線、または直線に近い折れ線を描く。この直線または折れ線を第1の線と言い、記号L1で表す。また、複数の補正後関係図に対応する複数の第2点を連結する直線、または直線に近い折れ線を描く。この直線または折れ線を第2の線と言い、記号L2で表す。これらの第1の線L1と第2の線L2は、補正後判定値VHSCの絶対値の最大値と、角度誤差AEの絶対値の最大値との関係を表している。
判定範囲の決定方法では、第1の線L1と第2の線L2を用いて、以下のようにして、判定範囲を決定する。まず、許容できる角度誤差AEの絶対値の最大値AEmaxを決定する。図15では、一例としてAEmaxを7°としている。次に、図15において、AEmaxを示す第3の線L3と、−AEmaxを示す第4の線L4を描く。第3の線L3から第4の線L4までの角度誤差AEの範囲が、許容できる角度誤差AEの範囲を示している。次に、第3の線L3と第1の線L1との交点の補正後判定値VHSCの値を第1のしきい値VT1とし、第3の線L3と第2の線L2との交点の補正後判定値VHSCの値を第2のしきい値VT2とする。
補正後判定値VHSCが、第1のしきい値VT1から第2のしきい値VT2までの範囲内にあれば、角度誤差AEは、許容できる角度誤差AEの範囲内にある。従って、最も広い判定範囲は、第1のしきい値VT1から第2のしきい値VT2までの範囲となる。判定範囲は、第1のしきい値VT1から第2のしきい値VT2までの範囲内の、より狭い範囲としてもよい。
以下、状態判別装置4による効果以外の、本実施の形態に係る角度センサ1の効果について説明する。本実施の形態に係る角度センサ1では、検出信号生成部2は、それらの理想成分の位相が互いに120°異なる検出信号S11,S12,S13を生成する。角度検出部3では、演算部31によって、検出信号S11と検出信号S12との差を表す信号Saを生成し、演算部32によって、検出信号S13と検出信号S12との差を表す信号Sbを生成する。演算部31によって信号Saを生成する際には、検出信号S11の第3高調波誤差成分と検出信号S12の第3高調波誤差成分が相殺される。また、演算部32によって信号Sbを生成する際には、検出信号S13の第3高調波誤差成分と検出信号S12の第3高調波誤差成分が相殺される。角度演算部33は、信号Sa,Sbを用いた演算を行って角度検出値θsを生成する。そのため、本実施の形態によれば、検出信号S11,S12,S13の第3高調波誤差成分に起因した誤差が低減された角度検出値θsを生成することができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る角度センサ1は、第1の実施の形態における検出信号生成部2、角度検出部3および状態判別装置4の代わりに、検出信号生成部102、角度検出部103および状態判別装置104を備えている。検出信号生成部102および角度検出部103は、物理量情報生成部に対応する。
始めに、図16を参照して、検出信号生成部102について説明する。図16は、検出信号生成部102の構成を示す回路図である。検出信号生成部102は、それぞれ検出対象の角度θと対応関係を有する第1ないし第4の検出信号S21,S22,S23,S24を生成する。検出信号生成部102は、第1の検出信号S21を生成する第1の検出回路110と、第2の検出信号S22を生成する第2の検出回路120と、第3の検出信号S23を生成する第3の検出回路130と、第4の検出信号S24を生成する第4の検出回路140とを含んでいる。第1ないし第4の検出回路110,120,130,140の各々は、回転磁界MFを検出する少なくとも1つの磁気検出素子を含んでいる。検出信号生成部102は、更に、電源ポートVとグランドポートGを含んでいる。電源ポートVとグランドポートGの間には、5V等の所定の大きさの電源電圧が印加される。
回転磁界MFの方向DMが所定の周期で回転すると、検出対象の角度θは所定の周期で変化する。この場合、第1ないし第4の検出信号S21,S22,S23,S24は、いずれも、上記所定の周期と等しい信号周期で周期的に変化する。第1ないし第4の検出信号S21,S22,S23,S24は、互いに位相が異なっている。
第1の検出回路110は、直列に接続された一対の磁気検出素子R111,R112と、出力ポートE110を有している。磁気検出素子R111の一端は、電源ポートVに接続されている。磁気検出素子R111の他端は、磁気検出素子R112の一端と出力ポートE110に接続されている。磁気検出素子R112の他端は、グランドポートGに接続されている。出力ポートE110は、磁気検出素子R111,R112の接続点の電位に対応する第1の検出信号S21を出力する。
第2の検出回路120は、直列に接続された一対の磁気検出素子R121,R122と、出力ポートE120を有している。磁気検出素子R121の一端は、電源ポートVに接続されている。磁気検出素子R121の他端は、磁気検出素子R122の一端と出力ポートE120に接続されている。磁気検出素子R122の他端は、グランドポートGに接続されている。出力ポートE120は、磁気検出素子R121,R122の接続点の電位に対応する第2の検出信号S22を出力する。
第3の検出回路130は、直列に接続された一対の磁気検出素子R131,R132と、出力ポートE130を有している。磁気検出素子R131の一端は、電源ポートVに接続されている。磁気検出素子R131の他端は、磁気検出素子R132の一端と出力ポートE130に接続されている。磁気検出素子R132の他端は、グランドポートGに接続されている。出力ポートE130は、磁気検出素子R131,R132の接続点の電位に対応する第3の検出信号S23を出力する。
第4の検出回路140は、直列に接続された一対の磁気検出素子R141,R142と、出力ポートE140を有している。磁気検出素子R141の一端は、電源ポートVに接続されている。磁気検出素子R141の他端は、磁気検出素子R142の一端と出力ポートE140に接続されている。磁気検出素子R142の他端は、グランドポートGに接続されている。出力ポートE140は、磁気検出素子R141,R142の接続点の電位に対応する第4の検出信号S24を出力する。
磁気検出素子R111,R112,R121,R122,R131,R132,R141,R142の各々の構成は、磁化固定層の磁化の方向を除いて、第1の実施の形態における磁気検出素子R11,R12,R21,R22,R31,R32の各々の構成と同じである。
第1の検出回路110では、磁気検出素子R111に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向はX方向である。以下、この方向を第1の方向D11と言う。磁気検出素子R112に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、第1の方向D11とは反対方向すなわち−X方向である。第1の検出回路110では、回転磁界MFの第1の方向D11の成分の強度に応じて、磁気検出素子R111,R112の接続点の電位が変化する。従って、第1の検出回路110は、回転磁界MFの第1の方向D11の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を第1の検出信号S21として出力する。回転磁界MFの第1の方向D11の成分の強度は、検出対象の角度θと対応関係を有する。
第2の検出回路120では、磁気検出素子R121に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は−X方向である。以下、この方向を第2の方向D12と言う。磁気検出素子R122に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、第2の方向D12とは反対方向すなわちX方向である。第2の検出回路120では、回転磁界MFの第2の方向D12の成分の強度に応じて、磁気検出素子R121,R122の接続点の電位が変化する。従って、第2の検出回路120は、回転磁界MFの第2の方向D12の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を第2の検出信号S22として出力する。回転磁界MFの第2の方向D12の成分の強度は、検出対象の角度θと対応関係を有する。
第3の検出回路130では、磁気検出素子R131に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向はY方向である。以下、この方向を第3の方向D13と言う。磁気検出素子R132に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、第3の方向D13とは反対方向すなわち−Y方向である。第3の検出回路130では、回転磁界MFの第3の方向D13の成分の強度に応じて、磁気検出素子R131,R132の接続点の電位が変化する。従って、第3の検出回路130は、回転磁界MFの第3の方向D13の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を第3の検出信号S23として出力する。回転磁界MFの第3の方向D13の成分の強度は、検出対象の角度θと対応関係を有する。
第4の検出回路140では、磁気検出素子R141に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は−Y方向である。以下、この方向を第4の方向D14と言う。磁気検出素子R142に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、第4の方向D14とは反対方向すなわちY方向である。第4の検出回路140では、回転磁界MFの第4の方向D14の成分の強度に応じて、磁気検出素子R141,R142の接続点の電位が変化する。従って、第4の検出回路140は、回転磁界MFの第4の方向D14の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を第4の検出信号S24として出力する。回転磁界MFの第4の方向D14の成分の強度は、検出対象の角度θと対応関係を有する。
なお、検出回路110,120,130,140内の複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子の作製の精度等の観点から、上述の方向からわずかにずれていてもよい。
検出対象の角度θが所定の周期で変化する場合、検出信号S21,S22,S23,S24の各々は、理想成分と誤差成分とを含む。以下の説明では、検出信号S21,S22,S23,S24は、いずれも、理想成分の変化の中心が0になるようにレベルが調整されているものとする。検出信号S21,S22,S23,S24は、それらの理想成分の位相が互いに異なり且つ所定の位相関係を有するものである。本実施の形態では特に、検出信号S21,S22では、それらの理想成分の位相が互いに180°異なっている。検出信号S21,S23では、それらの理想成分の位相が互いに90°異なっている。検出信号S23,S24では、それらの理想成分の位相が互いに180°異なっている。
次に、図17を参照して、角度検出部103および状態判別装置104について説明する。図17は、角度検出部103および状態判別装置104の構成を示す機能ブロック図である。角度検出部103および状態判別装置104は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)またはマイクロコンピュータによって実現することができる。
角度検出部103は、第1ないし第4の検出信号S21,S22,S23,S24を用いた演算を行って、検出対象の角度θと対応関係を有する角度検出値θsを生成する。角度検出部103は、それぞれ検出信号S21,S22,S23,S24が入力される入力ポートP110,P120,P130,P140を備えている。角度検出部103は、更に、演算部131,132と、角度演算部133とを備えている。
演算部131は、入力ポートP110,P120から入力される検出信号S21と検出信号S22との差を表す信号Seを生成する。演算部132は、入力ポートP130,P140から入力される検出信号S23と検出信号S24との差を表す信号Sfを生成する。角度演算部133は、演算部131,132によって生成された信号Se,Sfを用いた演算を行って角度検出値θsを生成する。信号Seと信号Sfは、下記の式(8)、(9)で表される。
Se=S21−S22 …(8)
Sf=S23−S24 …(9)
図18は、第1ないし第4の検出信号S21,S22,S23,S24と信号Se,Sfの波形を示す波形図である。図18において、横軸は検出対象の角度θを示し、縦軸は信号S21,S22,S23,S24,Se,Sfを相対値で示している。
角度演算部133の構成および動作は、演算部337が行う演算の内容を除いて、図5に示した第1の実施の形態における角度演算部33と同様である。ここで、図5を参照して、角度演算部133の動作について説明する。角度演算部133において、正規化部331は、信号Seを正規化した信号Senを生成する。正規化部332は、信号Sfを正規化した信号Sfnを生成する。正規化部331,332は、信号Sen,Sfnの最大値が共に1になり、信号Sen,Sfnの最小値が共に−1になるように、信号Se,Sfを正規化して信号Sen,Sfnを生成する。
加算部333は、信号Senと信号Sfnを加算して信号Sgを生成する。減算部334は、信号Senから信号Sfnを引いて信号Shを生成する。
正規化部335は、信号Sgを正規化した信号Sgnを生成する。正規化部336は、信号Shを正規化した信号Shnを生成する。正規化部335,336は、信号Sgn,Shnの最大値が共に1になり、信号Sgn,Shnの最小値が共に−1になるように、信号Sg,Shを正規化して信号Sgn,Shnを生成する。
演算部337は、下記の式(10)で表される演算を行って、角度検出値θsを生成する。式(10)における“atan”は、アークタンジェント計算を表している。
θs=atan(Sgn/Shn)+C2 …(10)
式(10)におけるC2は、角度を表わす定数である。定数C2は、例えば−45°であるが、検出信号生成部102の取り付け精度等に応じて調整することができる。
θsが0°以上360°未満の範囲内では、式(10)におけるθsの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、Sgn,Shnの正負の組み合わせにより、θsの真の値が、式(10)におけるθsの2つの解のいずれであるかを判別することができる。演算部337は、式(10)と、上記のSgn,Shnの正負の組み合わせの判定により、0°以上360°未満の範囲内でθsを求める。
以下、図17に示した状態判別装置104について説明する。状態判別装置104は、初期判定値生成部141と、補正処理部142と、判別部143とを備えている。初期判定値生成部141は、入力ポートP110,P120,P130,P140に入力された第1ないし第4の検出信号S21,S22,S23,S24を用いた演算を行って少なくとも1つの初期判定値を生成する。補正処理部142は、第1ないし第4の検出信号S21,S22,S23,S24のうちの少なくとも1つを用いて少なくとも1つの初期判定値に対して補正処理を行って、少なくとも1つの補正後判定値を生成する。判別部143は、少なくとも1つの補正後判定値に基づいて、角度センサ1が所定の状態すなわち正常状態にあるか否かを判別する。
角度センサ1が所定の状態にあるときに、少なくとも1つの初期判定値は、理想値成分と、所定の物理量すなわち検出対象の角度θに応じて変動する変動成分とを含んでいる。補正処理は、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける少なくとも1つの補正後判定値を、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける少なくとも1つの初期判定値に比べて、変動成分が低減されたものとする処理である。本実施の形態では特に、変動成分は、前述の検出信号S21,S22,S23,S24の誤差成分に起因する。
本実施の形態では特に、初期判定値生成部141は、入力ポートP110,P120,P130,P140に入力された第1ないし第4の検出信号S21,S22,S23,S24を、それぞれ、最大値が1になり、最小値が共に−1になるように正規化する。以下の初期判定値生成部141および補正処理部142の動作の説明中における第1ないし第4の検出信号S21,S22,S23,S24は、特に断りのない限り、正規化された後の信号である。
初期判定値生成部141は、第1の検出信号S21と第2の検出信号S22の和を求めることを含む演算を行って第1の初期判定値VHS1を生成し、第3の検出信号S23と第4の検出信号S24の和を求めることを含む演算を行って第2の初期判定値VHS2を生成する。なお、「第1の検出信号S21と第2の検出信号S22の和を求めることを含む演算」は、検出信号S21,S22の和を求めた後に、正規化等のために所定の係数を掛けたり、所定の値を加減したりすることを含む。また、この演算に用いられる検出信号S21,S22には、正規化された後の検出信号S21,S22が含まれる。同様に、「第3の検出信号S23と第4の検出信号S24の和を求めることを含む演算」は、検出信号S23,S24の和を求めた後に、正規化等のために所定の係数を掛けたり、所定の値を加減したりすることを含む。また、この演算に用いられる検出信号S23,S24には、正規化された後の検出信号S23,S24が含まれる。ここでは、第1および第2の初期判定値VHS1,VHS2は、それぞれ下記の式(11),(12)によって表わされるものとする。
VHS1=S21+S22 …(11)
VHS2=S23+S24 …(12)
検出信号S21,S22,S23,S24がいずれも理想成分のみからなり且つ角度センサ1が故障していない場合には、第1の初期判定値VHS1は第1の理想値成分のみからなり、第2の初期判定値VHS2は第2の理想値成分のみからなる。本実施の形態では特に、第1および第2の理想値成分は、いずれも、検出対象の角度θに関わらずに、一定の値、具体的には0である。
検出信号S21,S22,S23,S24がいずれも理想成分のみからなり且つ角度センサ1が故障していない場合以外の場合には、第1および第2の初期判定値VHS1,VHS2の少なくとも一方は、それに対応する第1および第2の理想値成分の少なくとも一方とは異なる値になり得る。第1の初期判定値VHS1は、第1の理想値成分とは異なる値になる場合には、検出対象の角度θに応じて変動し得る。同様に、第2の初期判定値VHS2は、第2の理想値成分とは異なる値になる場合には、検出対象の角度θに応じて変動し得る。
ここで、検出信号S21,S22,S23,S24がそれぞれ誤差成分を含む場合において、角度センサ1が所定の状態すなわち正常状態にあるときについて考える。このとき、第1の初期判定値VHS1は、第1の理想値成分と、検出対象の角度θに応じて変動する第1の変動成分とを含み、第2の初期判定値VHS2は、第2の理想値成分と、検出対象の角度θに応じて変動する第2の変動成分とを含む。
補正処理部142が行う補正処理は、第1の処理と第2の処理を含んでいる。第1の処理は、第1ないし第4の検出信号S21,S22,S23,S24のうちの少なくとも1つを用いて、第1の初期判定値VHS1を補正して、第1の補正後判定値VHSC1を生成する処理である。また、第1の処理は、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける第1の補正後判定値VHSC1を、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける第1の初期判定値VHS1に比べて、第1の変動成分が低減されたものとする処理である。言い換えると、第1の処理は、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける第1の補正後判定値VHSC1を、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける第1の初期判定値VHS1に比べて、第1の理想値成分に近づける処理である。
第2の処理は、第1ないし第4の検出信号S21,S22,S23,S24のうちの少なくとも1つを用いて、第2の初期判定値VHS2を補正して、第2の補正後判定値VHSC2を生成する処理である。また、第2の処理は、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける第2の補正後判定値VHSC2を、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける第2の初期判定値VHS2に比べて、第2の変動成分が低減されたものとする処理である。言い換えると、第2の処理は、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける第2の補正後判定値VHSC2を、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける第2の初期判定値VHS2に比べて、第2の理想値成分に近づける処理である。
第1の処理は、具体的には、下記の式(13)によって表わされるように、第1の初期判定値VHS1から第1の補正値CV1を引いて第1の補正後判定値VHSC1を生成する処理である。
VHSC1=VHS1−CV1 …(13)
第2の処理は、具体的には、下記の式(14)によって表わされるように、第2の初期判定値VHS2から第2の補正値CV2を引いて第2の補正後判定値VHSC2を生成する処理である。
VHSC2=VHS2−CV2 …(14)
以下、第1および第2の補正値CV1,CV2の一例について説明する。この例では、第1および第2の補正値CV1,CV2は、それぞれ下記の式(15),(16)によって表わされる。式(15)中の“d”,“e”,“f”、ならびに式(16)中の“g”,“h”,“i”は係数である。
CV1=d・S21+e・S23+f …(15)
CV2=g・S21+h・S23+i …(16)
ここで、上記の例の補正値CV1,CV2の意味について説明する。角度センサ1が正常状態にあるときに、第1の初期判定値VHS1が第1の変動成分を含む主な原因としては、角度センサ1の製造上の精度等の観点から、検出信号S21,S22の少なくとも一方の位相が所望の位相からずれることが挙げられる。この場合、検出信号S21,S22の少なくとも一方は、1次誤差成分を含むことになる。その結果、第1の初期判定値VHS1は、第1の変動成分を含むことになる。第1の変動成分は、検出信号S21,S22のそれぞれの理想成分と同じ周期を有する。同様に、第2の初期判定値VHS2は、第2の変動成分を含む。第2の変動成分は、検出信号S23,S24のそれぞれの理想成分と同じ周期を有する。
第1の補正値CV1は、第1の変動成分を近似した値である。第1の補正値CV1は、以下のようにして導かれる。まず、第1の変動成分は、d・cosθ+e・sinθ+fと表すことができる。cosθは、第1の検出信号S21の理想成分に相当する。また、sinθは、第3の検出信号S23の理想成分に相当する。そこで、cosθをS21と近似し、sinθをS23と近似して、第1の変動成分を、d・S21+e・S23+fと近似することができる。以上のことから、式(15)で表される第1の補正値CV1は、第1の変動成分を近似した値であると言える。
同様に、式(16)で表される第2の補正値CV2は、第2の変動成分を近似した値であると言える。式(15)中の係数“d”,“e”,“f”の値、ならびに式(16)中の係数“g”,“h”,“i”の値は、例えば、故障していない角度センサ1の出荷前に初期判定値VHS1,VHS2を測定し、その測定結果に応じて決定される。
なお、第1の変動成分と第2の変動成分の各々の振幅は、検出信号S21,S22,S23,S24の各々の理想成分の振幅よりも極めて小さい。そのため、式(15)中の係数“d”,“e”の値、ならびに式(16)中の係数“g”,“h”の値も、検出信号S21,S22,S23,S24の各々の理想成分の振幅よりも極めて小さい。具体的には、係数“d”,“e”,“g”,“h”の値は、検出信号S21,S22,S23,S24の各々の理想成分の振幅の10%以下である。
補正値CV1,CV2を用いた補正処理は、第1の初期判定値VHS1における第1の変動成分を低減して第1の補正後判定値VHSC1を生成すると共に、第2の初期判定値VHS2における第2の変動成分を低減して第2の補正後判定値VHSC2を生成する処理であると言える。
次に、判別部143について説明する。判別部143は、第1および第2の補正後判定値VHSC1,VHSC2がいずれも所定の判定範囲内にある場合には角度センサ1は正常状態にあると判定し、それ以外の場合には角度センサ1は故障していると判定して、その判定結果を示す信号を出力する。判定範囲は、VTHを所定の正の値として、−VTHからVTHまでの範囲である。判定範囲は、故障していない角度センサ1の出荷前に設定される。
次に、本実施の形態に係る状態判別方法について説明する。本実施の形態に係る状態判別方法は、本実施の形態に係る角度センサ1が所定の状態すなわち正常状態にあるか否かを判別する方法である。この状態判別方法は、本実施の形態に係る状態判別装置104によって実行される。
本実施の形態に係る状態判別方法は、基本的には、図8に示したフローチャートの通りである。本実施の形態における手順S101では、検出信号S21,S22,S23,S24を用いた演算を行って初期判定値VHS1,VHS2を生成する。本実施の形態における手順S101は、図17に示した初期判定値生成部141によって実行される。手順S101の内容は、前述の初期判定値生成部141の動作の内容と同じである。
本実施の形態における手順S102では、第1の初期判定値VHS1に対して第1の処理を行って第1の補正後判定値VHSC1を生成すると共に、第2の初期判定値VHS2に対して第2の処理を行って第2の補正後判定値VHSC2を生成する。本実施の形態における手順S102は、図17に示した補正処理部142によって実行される。手順S102の内容は、前述の補正処理部142の動作の内容と同じである。
本実施の形態における手順S103では、第1および第2の補正後判定値VHSC1,VHSC2がいずれも所定の判定範囲内にある場合には角度センサ1は正常状態にあると判定し、それ以外の場合には角度センサ1は故障していると判定する。本実施の形態における手順S103は、図17に示した判別部143によって実行される。手順S103の内容は、前述の判別部143の動作の内容と同じである。
本実施の形態によれば、角度センサ1が正常状態にあるときにおいて、補正後判定値VHSC1,VHSC2の変動幅を、初期判定値VHS1,VHS2の変動幅に比べて非常に小さくすることができる。以下、このことによる効果について説明する。
始めに、初期判定値VHS1,VHS2を用いて角度センサ1の故障を検出する場合について考える。この場合には、初期判定値VHS1,VHS2がいずれも所定の比較例の判定範囲内にある場合には角度センサ1は正常状態にあると判定し、それ以外の場合には角度センサ1は故障していると判定することが考えられる。比較例の判定範囲は、角度センサ1が正常状態にあるときにおける初期判定値VHS1,VHS2の変動範囲を含み、この変動範囲よりも広い範囲に設定する必要がある。しかし、角度センサ1が正常状態にあるときにおける初期判定値VHS1,VHS2の変動幅は広いため、実際に角度センサ1の故障が発生した瞬間に、初期判定値VHS1,VHS2の少なくとも一方が比較例の判定範囲を超えるとは限らない。また、実際に角度センサ1の故障が発生した後、検出対象の角度θが変化し続けても、初期判定値VHS1,VHS2の少なくとも一方が比較例の判定範囲を超えない状態が、しばらく続く可能性もある。更に、故障の態様によっては、実際に角度センサ1の故障が発生した後、検出対象の角度θが変化し続けても、初期判定値VHS1,VHS2の少なくとも一方が比較例の判定範囲を超えない状態が、いつまでも続く可能性もある。従って、初期判定値VHS1,VHS2を用いて角度センサ1の故障を検出する場合には、角度センサ1の故障を精度よく検出することができない。
これに対し、本実施の形態では、補正後判定値VHSC1,VHSC2がいずれも所定の判定範囲内にある場合には角度センサ1は正常状態にあると判定し、それ以外の場合には角度センサ1は故障していると判定する。本実施の形態における判定範囲は、角度センサ1が正常状態にあるときにおける補正後判定値VHSC1,VHSC2の変動範囲を含み、この変動範囲よりも広い範囲に設定する必要がある。前述の通り、本実施の形態によれば、角度センサ1が正常状態にあるときにおいて、補正後判定値VHSC1,VHSC2の変動幅を、初期判定値VHS1,VHS2の変動幅に比べて非常に小さくすることができる。そのため、本実施の形態における判定範囲は、比較例の判定範囲に比べて狭くすることができる。そのため、本実施の形態によれば、実際に角度センサ1の故障が発生した瞬間に、補正後判定値VHSC1,VHSC2の少なくとも一方が判定範囲を超えるようにすることができる。従って、本実施の形態によれば、角度センサ1の状態、すなわち角度センサ1が故障しているか否かを精度よく判別することが可能になる。
また、初期判定値VHS1,VHS2を用いて角度センサ1の状態を判別する場合には、角度センサ1が正常状態にあるときにおける初期判定値VHS1,VHS2の変動幅が大きいため、限られたビット数で表される初期判定値VHS1,VHS2の精度が悪い。これに対し、本実施の形態によれば、角度センサ1が正常状態にあるときにおける補正後判定値VHSC1,VHSC2の変動幅が小さいため、補正後判定値VHSC1,VHSC2の精度を高くすることができる。この点からも、本実施の形態によれば、角度センサ1の状態を精度よく判別することが可能になる。
なお、それぞれ式(15),(16)によって表わされる補正値CV1,CV2を用いる場合には、正常状態と比べて検出信号S21またはS23が変化するような角度センサ1の故障が発生すると、正常状態と比べて補正値CV1,CV2が変化する。しかし、式(15)中の係数“d”,“e”の値、ならびに式(16)中の係数“g”,“h”の値は、検出信号S21,S23の各々の理想成分の振幅よりも極めて小さい。そのため、正常状態と比べて検出信号S21またはS23が変化するような角度センサ1の故障が発生した場合、補正値CV1,CV2の各々の変化量は、初期判定値VHS1,VHS2の各々の変化量よりも極めて小さくなる。そのため、このような場合であっても、補正後判定値VHSC1,VHSC2を用いて、角度センサ1の故障を精度よく検出することができる。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態に特有な構成と、それに基づく作用および効果を除いて、第1の実施の形態と同様である。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。以下、本実施の形態に係る角度センサ1は、状態判別装置104の初期判定値生成部141、補正処理部142および判別部143のそれぞれの動作の内容を除いて、第2の実施の形態に係る角度センサ1と同様である。
本実施の形態における初期判定値生成部141は、第2の実施の形態と同様に、入力ポートP110,P120,P130,P140に入力された第1ないし第4の検出信号S21,S22,S23,S24を、それぞれ、最大値が1になり、最小値が共に−1になるように正規化する。以下の初期判定値生成部141および補正処理部142の動作の説明中における第1ないし第4の検出信号S21,S22,S23,S24は、特段の断りがない限り、正規化された後の信号である。
初期判定値生成部141は、第1ないし第4の検出信号S21,S22,S23,S24を用いた演算を行って1つの初期判定値Lrを生成する。具体的に説明すると、初期判定値生成部141は、第1の検出信号S21と第2の検出信号S22の差の二乗と、第3の検出信号S23と第4の検出信号S24の差の二乗との和を求めることを含む演算を行って初期判定値Lrを生成する。なお、「第1の検出信号S21と第2の検出信号S22の差の二乗と、第3の検出信号S23と第4の検出信号S24の差の二乗との和を求めることを含む演算」は、検出信号S21,S22の差の二乗と、検出信号S23,S24の差の二乗との和を求めた後に、正規化等のために所定の係数を掛けたり、所定の値を加減したりすることを含む。また、この演算に用いられる検出信号S21,S22,S23,S24は、正規化された後の検出信号S21,S22,S23,S24が含まれる。ここでは、初期判定値Lrは、下記の式(17)によって表わされるものとする。
Lr=(S21−S22)2+(S23−S24)2 …(17)
検出信号S21,S22,S23,S24がいずれも理想成分のみからなり且つ角度センサ1が故障していない場合には、初期判定値Lrは理想値成分のみからなる。この理想値成分は、検出対象の角度θに関わらずに、一定の値、具体的には1である。
検出信号S21,S22,S23,S24がいずれも理想成分のみからなり且つ角度センサ1が故障していない場合以外の場合には、初期判定値Lrは、理想値成分とは異なる値になり得る。初期判定値Lrは、理想値成分とは異なる値になる場合には、検出対象の角度θに応じて変動し得る。
ここで、検出信号S21,S22,S23,S24がそれぞれ誤差成分を含む場合において、角度センサ1が所定の状態すなわち正常状態にあるときについて考える。このとき、初期判定値Lrは、理想値成分と、検出対象の角度θに応じて変動する変動成分とを含む。
本実施の形態における補正処理部142は、第1ないし第4の検出信号S21,S22,S23,S24のうちの少なくとも1つを用いて、初期判定値Lrに対して補正処理を行って、補正後判定値LrCを生成する。補正処理は、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける第1の補正後判定値LrCを、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける初期判定値Lrに比べて、変動成分が低減されたものとする処理である。言い換えると、補正処理は、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける補正後判定値LrCを、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける初期判定値Lrに比べて、理想値成分に近づける処理である。具体的に説明すると、補正処理は、下記の式(18)によって表わされるように、初期判定値Lrから補正値frを引いて補正後判定値LrCを生成する処理である。
LrC=Lr−fr …(18)
以下、補正値frの第1および第2の例について説明する。第1の例の補正値frは、下記の式(19)によって表わされる。式(19)中の“j”,“k”は係数である。
fr=j・(8・S214−8・S212+1)+k …(19)
ここで、第1の例の補正値frの意味について説明する。角度センサ1が正常状態にあるときに初期判定値Lrが変動成分を含む主な原因としては、検出信号S21,S22,S23,S24がそれぞれ第3高調波誤差成分を含むことが挙げられる。この場合、式(17)によって初期判定値Lrを生成すると、初期判定値Lrは変動成分を含むことになる。この変動成分は、検出信号S21,S22,S23,S24のそれぞれの理想成分の周期の1/4の周期を有する。以下、この変動成分を4次変動成分と言う。
第1の例の補正値frは、4次変動成分を近似した値である。第1の例の補正値frは、以下のようにして導かれる。まず、4次変動成分は、j・cos(4θ)+kと表すことができる。これを変形すると、j・(8・cos4θ−8・cos2θ+1)+kとなる。cosθは、第1の検出信号S21の理想成分に相当する。そこで、cosθをS21と近似して、4次変動成分を、j・(8・S214−8・S212+1)+kと近似することができる。以上のことから、式(19)で表される補正値frは、4次変動成分を近似した値であると言える。式(19)中の係数“j”,“k”の値は、例えば、故障していない角度センサ1の出荷前に初期判定値Lrを測定し、その測定結果に応じて決定される。係数“k”の値は、例えば、検出対象の角度θが0°から360°まで変化したときの初期判定値Lrの平均値に設定される。
なお、4次変動成分の振幅は、検出信号S21,S22,S23,S24の各々の理想成分の振幅よりも極めて小さい。そのため、式(19)中の係数“j”の値も、検出信号S21,S22,S23,S24の各々の理想成分の振幅よりも極めて小さい。具体的には、係数“j”の値は、検出信号S21,S22,S23,S24の各々の理想成分の振幅の10%以下である。
検出信号S21,S22,S23,S24のうちの少なくとも1つが1次誤差成分を含む場合には、検出信号S21,S22,S23,S24がいずれも1次誤差成分を含まない場合に比べて、4次変動成分の位相がずれる。第2の例の補正値frは、このような場合にも対応できるようにしたものである。
第2の例の補正値frは、下記の式(20)によって表わされる。式(20)中の“j”,“k”,“m”は係数である。
fr=j・(8・S214−8・S212+1)+m・(8・S234−8・S232+1)+k …(20)
第2の例の補正値frは、2つの検出信号S21,S23を含んでいる。従って、第2の例の補正値frを用いる場合には、補正処理部142は、2つの検出信号S21,S23を用いて初期判定値Lrに対して補正処理を行うことになる。
第2の例の補正値frでは、係数“j”,“m”の値を変えることによって、補正値frの位相を変えることができる。これにより、検出信号S21,S22,S23,S24のうちの少なくとも1つが1次誤差成分を含む場合でも、4次変動成分を近似した補正値frを設定することできる。式(20)中の係数“j”,“k”,“m”の値は、例えば、故障していない角度センサ1の出荷前に初期判定値Lrを測定し、その測定結果に応じて決定される。係数“k”の値は、例えば、検出対象の角度θが0°から360°まで変化したときの初期判定値Lrの平均値に設定される。係数“j”と同様に、係数“m”の値は、検出信号S21,S22,S23,S24の各々の理想成分の振幅よりも極めて小さく、具体的には、検出信号S21,S22,S23,S24の各々の理想成分の振幅の10%以下である。
第1または第2の例の補正値frを用いた補正処理は、初期判定値Lrにおける4次変動成分を低減して補正後判定値LrCを生成する処理であると言える。
判別部143は、補正後判定値LrCに基づいて、角度センサ1が所定の状態にあるか否かを判別する。具体的に説明すると、判別部143は、補正後判定値LrCが所定の判定範囲内にある場合には角度センサ1は正常状態にあると判定し、それ以外の場合には角度センサ1は故障していると判定して、その判定結果を示す信号を出力する。判定範囲は、LTHを所定の正の値として、−LTHからLTHまでの範囲である。判定範囲は、故障していない角度センサ1の出荷前に設定される。
次に、本実施の形態に係る状態判別方法について説明する。本実施の形態に係る状態判別方法は、本実施の形態に係る角度センサ1が所定の状態すなわち正常状態にあるか否かを判別する方法である。この状態判別方法は、本実施の形態に係る状態判別装置104によって実行される。
本実施の形態に係る状態判別方法は、基本的には、図8に示したフローチャートの通りである。本実施の形態における手順S101では、検出信号S21,S22,S23,S24を用いた演算を行って初期判定値Lrを生成する。本実施の形態における手順S101は、図17に示した初期判定値生成部141によって実行される。手順S101の内容は、前述の初期判定値生成部141の動作の内容と同じである。
本実施の形態における手順S102では、初期判定値Lrに対して補正処理を行って補正後判定値LrCを生成する。本実施の形態における手順S102は、図17に示した補正処理部142によって実行される。手順S102の内容は、前述の補正処理部142の動作の内容と同じである。
本実施の形態における手順S103では、補正後判定値LrCが所定の判定範囲内にある場合には角度センサ1は正常状態にあると判定し、それ以外の場合には角度センサ1は故障していると判定する。本実施の形態における手順S103は、図17に示した判別部143によって実行される。手順S103の内容は、前述の判別部143の動作の内容と同じである。
本実施の形態によれば、補正後判定値LrCの変動幅を初期判定値Lrの変動幅に比べて非常に小さくすることができる。
ここで、図19ないし図21を参照して、初期判定値Lrの変動幅と、補正後判定値LrCの変動幅の違いについて説明する。まず、初期判定値Lrの平均値Lravと偏差dLrを以下のように定義する。平均値Lravは、角度センサ1が正常状態にあるときに検出対象の角度θが0°から360°まで変化したときの初期判定値Lrの平均値である。偏差dLrは、初期判定値Lrから平均値Lravを引いた値である。
図19は、角度センサ1が正常状態にあるときに検出対象の角度θが0°から360°まで変化したときの初期判定値Lrおよびその偏差dLrの変化を示している。図19において、横軸は検出対象の角度θを示し、縦軸は初期判定値Lrおよび偏差dLrを示している。
図20は、角度センサ1が正常状態にあるときに検出対象の角度θが0°から360°まで変化したときの補正値frおよび補正後判定値LrCの変化を示している。図20において、横軸は検出対象の角度θを示し、縦軸は補正値frおよび補正後判定値LrCを示している。
図21は、図20に示した補正後判定値LrCを拡大して示している。図21において、横軸は検出対象の角度θを示し、縦軸は補正後判定値LrCを示している。
図19ないし図21から明らかなように、角度センサ1が正常状態にあるときにおいて、補正後判定値LrCの変動幅は、初期判定値Lrの変動幅に比べて非常に小さくなっている。以下、このことによる効果について説明する。
始めに、初期判定値Lrを用いて角度センサ1の故障を検出する場合について考える。この場合には、例えば、図19に示した初期判定値Lrの偏差dLrが所定の比較例の判定範囲内にある場合には角度センサ1は正常状態にあると判定し、それ以外の場合には角度センサ1は故障していると判定することが考えられる。比較例の判定範囲は、角度センサ1が正常状態にあるときにおける偏差dLrの変動範囲を含み、この変動範囲よりも広い範囲に設定する必要がある。しかし、角度センサ1が正常状態にあるときにおける偏差dLrの変動幅は広いため、実際に角度センサ1の故障が発生した瞬間に、偏差dLrが比較例の判定範囲を超えるとは限らない。また、実際に角度センサ1の故障が発生した後、検出対象の角度θが変化し続けても、偏差dLrが比較例の判定範囲を超えない状態が、しばらく続く可能性もある。更に、故障の態様によっては、実際に角度センサ1の故障が発生した後、検出対象の角度θが変化し続けても、偏差dLrが比較例の判定範囲を超えない状態が、いつまでも続く可能性もある。従って、偏差dLrを用いて角度センサ1の故障を検出する場合には、角度センサ1の故障を精度よく検出することができない。
これに対し、本実施の形態では、補正後判定値LrCが、所定の判定範囲内にある場合には角度センサ1は正常状態にあると判定し、それ以外の場合には角度センサ1は故障していると判定する。本実施の形態における判定範囲は、角度センサ1が正常状態にあるときにおける補正後判定値LrCの変動範囲を含み、この変動範囲よりも広い範囲に設定する必要がある。前述の通り、角度センサ1が正常状態にあるときにおいて、補正後判定値LrCの変動幅は、偏差dLrの変動幅に比べて非常に小さい。そのため、本実施の形態における判定範囲は、比較例の判定範囲に比べて狭くすることができる。そのため、本実施の形態によれば、実際に角度センサ1の故障が発生した瞬間に、補正後判定値LrCが判定範囲を超えるようにすることができる。従って、本実施の形態によれば、角度センサ1の状態、すなわち角度センサ1が故障しているか否かを精度よく判別することが可能になる。
また、偏差dLrを用いて角度センサ1の状態を判別する場合には、角度センサ1が正常状態にあるときにおける偏差dLrの変動幅が大きいため、限られたビット数で表される偏差dLrの精度が悪い。これに対し、本実施の形態によれば、角度センサ1が正常状態にあるときにおける補正後判定値LrCの変動幅が小さいため、補正後判定値LrCの精度を高くすることができる。この点からも、本実施の形態によれば、角度センサ1の状態を精度よく判別することが可能になる。
なお、式(19)で表される補正値frを用いる場合には、正常状態と比べて検出信号S21が変化するような角度センサ1の故障が発生すると、正常状態と比べて補正値frが変化する。しかし、式(19)中の係数“j”の値は検出信号S21の理想成分の振幅よりも極めて小さい。そのため、正常状態と比べて検出信号S21が変化するような角度センサ1の故障が発生した場合、補正値frの変化量は、初期判定値Lrの変化量よりも極めて小さくなる。そのため、このような場合であっても、補正後判定値LrCを用いて、角度センサ1の故障を精度よく検出することができる。
また、式(20)で表される補正値frを用いる場合には、正常状態と比べて検出信号S21またはS23が変化するような角度センサ1の故障が発生すると、正常状態と比べて補正値frが変化する。しかし、式(20)中の係数“j”,“m”の値は、検出信号S21,S23の各々の理想成分の振幅よりも極めて小さい。そのため、正常状態と比べて検出信号S21またはS23が変化するような角度センサ1の故障が発生した場合、補正値frの変化量は、初期判定値Lrの変化量よりも極めて小さくなる。そのため、このような場合であっても、補正後判定値LrCを用いて、角度センサ1の故障を精度よく検出することができる。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第2の実施の形態と同様である。
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る角度センサ1は、第1の実施の形態における検出信号生成部2、角度検出部3および状態判別装置4の代わりに、検出信号生成部202、角度検出部203および状態判別装置204を備えている。検出信号生成部202および角度検出部203は、物理量情報生成部に対応する。
始めに、図22を参照して、検出信号生成部202について説明する。図22は、検出信号生成部202の構成を示す回路図である。検出信号生成部202は、それぞれ検出対象の角度θと対応関係を有する第1および第2の検出信号S31,S32を生成する。検出信号生成部202は、第1の検出信号S31を生成する第1の検出回路210と、第2の検出信号S32を生成する第2の検出回路220とを含んでいる。第1および第2の検出回路210,220の各々は、回転磁界MFを検出する少なくとも1つの磁気検出素子を含んでいる。検出信号生成部202は、更に、電源ポートVとグランドポートGを含んでいる。電源ポートVとグランドポートGの間には、5V等の所定の大きさの電源電圧が印加される。
回転磁界MFの方向DMが所定の周期で回転すると、検出対象の角度θは所定の周期で変化する。この場合、第1および第2の検出信号S31,S32は、いずれも、上記所定の周期と等しい信号周期で周期的に変化する。第1および第2の検出信号S31,S32は、互いに位相が異なっている。
第1の検出回路210は、直列に接続された一対の磁気検出素子R211,R212と、出力ポートE210を有している。磁気検出素子R211の一端は、電源ポートVに接続されている。磁気検出素子R211の他端は、磁気検出素子R212の一端と出力ポートE210に接続されている。磁気検出素子R212の他端は、グランドポートGに接続されている。出力ポートE210は、磁気検出素子R211,R212の接続点の電位に対応する第1の検出信号S31を出力する。
第2の検出回路220は、直列に接続された一対の磁気検出素子R221,R222と、出力ポートE220を有している。磁気検出素子R221の一端は、電源ポートVに接続されている。磁気検出素子R221の他端は、磁気検出素子R222の一端と出力ポートE220に接続されている。磁気検出素子R222の他端は、グランドポートGに接続されている。出力ポートE220は、磁気検出素子R221,R222の接続点の電位に対応する第2の検出信号S32を出力する。
磁気検出素子R211,R212,R221,R222の各々の構成は、磁化固定層の磁化の方向を除いて、第1の実施の形態における磁気検出素子R11,R12,R21,R22,R31,R32の各々の構成と同じである。
第1の検出回路210では、磁気検出素子R211に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向はX方向である。以下、この方向を第1の方向D21と言う。磁気検出素子R212に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、第1の方向D21とは反対方向すなわち−X方向である。第1の検出回路210では、回転磁界MFの第1の方向D21の成分の強度に応じて、磁気検出素子R211,R212の接続点の電位が変化する。従って、第1の検出回路210は、回転磁界MFの第1の方向D21の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を第1の検出信号S31として出力する。回転磁界MFの第1の方向D21の成分の強度は、検出対象の角度θと対応関係を有する。
第2の検出回路220では、磁気検出素子R221に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向はY方向である。以下、この方向を第2の方向D22と言う。磁気検出素子R222に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、第2の方向D22とは反対方向すなわち−Y方向である。第2の検出回路220では、回転磁界MFの第2の方向D22の成分の強度に応じて、磁気検出素子R221,R222の接続点の電位が変化する。従って、第2の検出回路220は、回転磁界MFの第2の方向D22の成分の強度を検出して、その強度を表す信号を第2の検出信号S32として出力する。回転磁界MFの第2の方向D22の成分の強度は、検出対象の角度θと対応関係を有する。
なお、検出回路210,220内の複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、MR素子の作製の精度等の観点から、上述の方向からわずかにずれていてもよい。
検出対象の角度θが所定の周期で変化する場合、検出信号S31,S32の各々は、理想成分と誤差成分とを含む。以下の説明では、検出信号S31,S32は、いずれも、理想成分の変化の中心が0になるようにレベルが調整されているものとする。検出信号S31,S32は、それらの理想成分の位相が互いに異なり且つ所定の位相関係を有するものである。本実施の形態では特に、検出信号S31,S32は、それらの理想成分の位相が互いに90°異なるものである。
次に、図23を参照して、角度検出部203および状態判別装置204について説明する。図23は、角度検出部203および状態判別装置204の構成を示す機能ブロック図である。角度検出部203および状態判別装置204は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)またはマイクロコンピュータによって実現することができる。
角度検出部203は、第1および第2の検出信号S31,S32を用いた演算を行って、検出対象の角度θと対応関係を有する角度検出値θsを生成する。角度検出部203は、それぞれ検出信号S31,S32が入力される入力ポートP210,P220と、角度演算部133とを備えている。
角度演算部133の構成および動作は、以下の点を除いて、第2の実施の形態と同様である。本実施の形態では、角度演算部133の正規化部331(図5参照)には、第2の実施の形態における信号Seの代わりに、第1の検出信号S31が入力される。また、角度演算部133の正規化部332(図5参照)には、第2の実施の形態における信号Sfの代わりに、第2の検出信号S32が入力される。
以下、図23に示した状態判別装置204について説明する。状態判別装置204は、初期判定値生成部241と、補正処理部242と、判別部243とを備えている。
初期判定値生成部241は、入力ポートP210,P220に入力された第1および第2の検出信号S31,S32を、それぞれ、最大値が1になり、最小値が共に−1になるように正規化する。以下の初期判定値生成部241および補正処理部242の動作の説明中における第1および第2の検出信号S31,S32は、特段の断りがない限り、正規化された後の信号である。
初期判定値生成部241は、第1および第2の検出信号S31,S32を用いた演算を行って1つの初期判定値Lr2を生成する。具体的に説明すると、初期判定値生成部241は、第1の検出信号S31の二乗と、第2の検出信号S32の二乗との和を求めることを含む演算を行って初期判定値Lr2を生成する。なお、「第1の検出信号S31の二乗と、第2の検出信号S32の二乗との和を求めることを含む演算」は、検出信号S31の二乗と検出信号S32の二乗との和を求めた後に、正規化等のために所定の係数を掛けたり、所定の値を加減したりすることを含む。また、この演算に用いられる検出信号S31,S32には、正規化された後の検出信号S31,S32が含まれる。ここでは、初期判定値Lr2は、下記の式(21)によって表わされるものとする。
Lr2=S312+S322 …(21)
検出信号S31,S32がいずれも理想成分のみからなり且つ角度センサ1が故障していない場合には、初期判定値Lr2は理想値成分のみからなる。この理想値成分は、検出対象の角度θに関わらずに、一定の値、具体的には1である。
検出信号S31,S32がいずれも理想成分のみからなり且つ角度センサ1が故障していない場合以外の場合には、初期判定値Lr2は、理想値成分とは異なる値になり得る。初期判定値Lr2は、理想値成分とは異なる値になる場合には、検出対象の角度θに応じて変動し得る。
ここで、検出信号S31,S32がそれぞれ誤差成分を含む場合において、角度センサ1が所定の状態すなわち正常状態にあるときについて考える。このとき、初期判定値Lr2は、理想値成分と、検出対象の角度θに応じて変動する変動成分とを含む。
本実施の形態における補正処理部242は、第1および第2の検出信号S31,S32の少なくとも一方を用いて、初期判定値Lr2に対して補正処理を行って、補正後判定値Lr2Cを生成する。補正処理は、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける補正後判定値Lr2Cを、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける初期判定値Lr2に比べて、変動成分が低減されたものとする処理である。言い換えると、補正処理は、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける補正後判定値Lr2Cを、角度センサ1が所定の状態にあるときにおける初期判定値Lr2に比べて、理想値成分に近づける処理である。具体的に説明すると、補正処理は、下記の式(22)によって表わされるように、初期判定値Lr2から補正値fr2を引いて補正後判定値Lr2Cを生成する処理である。
Lr2C=Lr2−fr2 …(22)
以下、補正値fr2の第1および第2の例について説明する。第1の例の補正値fr2は、下記の式(23)によって表わされる。式(23)の右辺は、式(19)におけるS21をS31に変えたものである。
fr2=j・(8・S314−8・S312+1)+k …(23)
第2の例の補正値fr2は、下記の式(24)によって表わされる。式(24)の右辺は、式(20)におけるS21,S23を、それぞれS31,S32に変えたものである。
fr2=j・(8・S314−8・S312+1)+m・(8・S324−8・S322+1)+k …(24)
補正値fr2の第1および第2の例の意味は、第3の実施の形態における補正値frの第1および第2の例と同様である。第1または第2の例の補正値fr2を用いた補正処理は、初期判定値Lr2における4次変動成分を低減して補正後判定値Lr2Cを生成する処理であると言える。第3の実施の形態と同様に、係数“j”,“m”の値は、検出信号S31,S32の各々の理想成分の振幅よりも極めて小さく、具体的には、検出信号S31,S32の各々の理想成分の振幅の10%以下である。
判別部243は、補正後判定値Lr2Cに基づいて、角度センサ1が所定の状態にあるか否かを判別する。具体的に説明すると、判別部243は、補正後判定値Lr2Cが所定の判定範囲内にある場合には角度センサ1は正常状態にあると判定し、それ以外の場合には角度センサ1は故障していると判定して、その判定結果を示す信号を出力する。判定範囲は、LTHを所定の正の値として、−LTHからLTHまでの範囲である。判定範囲は、故障していない角度センサ1の出荷前に設定される。
次に、本実施の形態に係る状態判別方法について説明する。本実施の形態に係る状態判別方法は、本実施の形態に係る角度センサ1が所定の状態すなわち正常状態にあるか否かを判別する方法である。この状態判別方法は、本実施の形態に係る状態判別装置204によって実行される。
本実施の形態に係る状態判別方法は、基本的には、図8に示したフローチャートの通りである。本実施の形態における手順S101では、検出信号S31,S32を用いた演算を行って初期判定値Lr2を生成する。本実施の形態における手順S101は、図23に示した初期判定値生成部241によって実行される。手順S101の内容は、前述の初期判定値生成部241の動作の内容と同じである。
本実施の形態における手順S102では、初期判定値Lr2に対して補正処理を行って補正後判定値Lr2Cを生成する。本実施の形態における手順S102は、図23に示した補正処理部242によって実行される。手順S102の内容は、前述の補正処理部242の動作の内容と同じである。
本実施の形態における手順S103では、補正後判定値Lr2Cが所定の判定範囲内にある場合には角度センサ1は正常状態にあると判定し、それ以外の場合には角度センサ1は故障していると判定する。本実施の形態における手順S103は、図23に示した判別部243によって実行される。手順S103の内容は、前述の判別部243の動作の内容と同じである。
本実施の形態によれば、第3の実施の形態と同様に、角度センサ1が正常状態にあるときにおいて、補正後判定値fr2Cの変動幅を初期判定値fr2の変動幅に比べて非常に小さくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、角度センサ1の状態、すなわち角度センサ1が故障しているか否かを精度よく判別することが可能になる。
なお、式(23)で表される補正値fr2を用いる場合には、正常状態と比べて検出信号S31が変化するような角度センサ1の故障が発生すると、正常状態と比べて補正値fr2が変化する。しかし、式(23)中の係数“j”の値は検出信号S31の理想成分の振幅よりも極めて小さい。そのため、正常状態と比べて検出信号S31が変化するような角度センサ1の故障が発生した場合、補正値fr2の変化量は、初期判定値Lr2の変化量よりも極めて小さくなる。そのため、このような場合であっても、補正後判定値Lr2Cを用いて、角度センサ1の故障を精度よく検出することができる。
また、式(24)で表される補正値fr2を用いる場合には、正常状態と比べて検出信号S31またはS32が変化するような角度センサ1の故障が発生すると、正常状態と比べて補正値fr2が変化する。しかし、式(24)中の係数“j”,“m”の値は、検出信号S31,S32の各々の理想成分の振幅よりも極めて小さい。そのため、正常状態と比べて検出信号S31またはS32が変化するような角度センサ1の故障が発生した場合、補正値fr2の変化量は、初期判定値Lr2の変化量よりも極めて小さくなる。そのため、このような場合であっても、補正後判定値Lr2Cを用いて、角度センサ1の故障を精度よく検出することができる。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第3の実施の形態と同様である。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明は、磁気式の角度センサに限らず、所定の物理量と対応関係を有する情報を生成する物理量情報生成装置全般に適用することができる。磁気式の角度センサ以外の物理量情報生成装置の例としては、光学式の角度センサや、インダクタンス式のポテンショメータや、レゾルバが挙げられる。