JP2015132588A - 筒状体の検査方法および検査装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】注射器用ピストンのような微小サイズの筒状体の内部の検査に適しており、しかも筒状体の内周面に付着した異物、汚れ等を容易に検出することができる筒状体の検査方法および検査装置を提供する。【解決手段】筒状体2の内部の状態を検査するための検査方法である。柱状体の先端部に凹型屈折面32が形成された凹型プリズム4を用い、筒状体2の内部に凹型プリズム4の少なくとも先端34が挿入された状態とし、筒状体2の内周面68から出射された光52を凹型プリズム4の外周面54から入射させ、光52を凹型プリズム4の凹型屈折面32で屈折させて筒状体2の開口端方向に進行する屈折光56とし、屈折光56により形成される筒状体2の内部の画像58を観察することにより、筒状体2の内部の状態を検査する。【選択図】図1

Description

本発明は、筒状体の内部の状態を検査するための検査方法および検査装置に関する。詳しくは、筒状体の内部に異物等が付着しているか否かを検査するための検査方法および検査装置に関する。
従来、注射器用ピストンの一形態として、筒状体構造のピストンが知られている。例えば図5に示す注射器用ピストン60は、外周壁62を有し、外周壁62の内側に空洞64が区画形成された筒状体構造のピストンである。注射器用ピストン60は、空洞64に押子(プランジャーロッド)の先端部をねじ込み、前記プランジャーロッドと一体化させた状態で用いられる。
ところで、注射器用ピストンに異物、汚れ等が付着していると、注入する薬液や採取した体液に異物や汚れ成分が混入し、前記薬液等が汚染されるおそれがある。特に、図5に示す注射器用ピストン60のような筒状体構造のピストンの場合、筒状体の外部(外周壁62の外側)の状態と比較して筒状体の内部(外周壁62の内側、空洞64)の状態が確認し難い。従って、筒状体構造のピストンについて、筒状体の内部の状態を検査したいという要望がある。
筒状体構造のピストンの内部の状態を検査するための検査方法ないし検査装置については、記載すべき先行技術文献情報がない。しかし、PETボトル、エンジンシリンダ等の筒状体構造の製品に関し、前記製品の内部の状態を検査するための検査装置がいくつか開示されている。
例えば、PETボトル等に充填された飲料等に異物が混入しているか否かを光学的に検出するための異物検査装置が提案されている(特許文献1)。前記異物検査装置は、飲料等が充填された有底筒状体(PETボトル等)を被検査体とし、前記被検査体を光学的に検査する撮像手段と、前記被検査体と前記撮像手段との間に配設された円錐プリズムと、を備えた検査装置である。特許文献1には、前記被検査体の底面外部に配設された円錐プリズムによって、被検査体の底面全体を一定の倍率で拡大するのではなく、異物が沈殿し易い部分(PETボトル等の底部外周側等)を部分的に拡大することが可能である旨が記載されている。
また、エンジンシリンダ等の内周面の傷や前記内周面上の異物等を、光学的に検出するための表面検査装置が提案されている(特許文献2)。前記表面検査装置は、エンジンシリンダ等の円筒体を被検査物とし、前記被検査物の表面へ検査光を投光する投光ファイバーと、前記被検査物からの反射光を受光する受光ファイバーと、前記検査光および前記反射光を集光させる集光手段(凸レンズ等)と、前記検査光および前記反射光の進路を変える光路変更手段(反射鏡、三角柱プリズム等)と、少なくとも前記光路変更手段を回転させる回転手段(電動モータ等)と、を備えた検査装置である。特許文献2には、前記円筒体の内部に前記光路変更手段を挿入した状態で、前記回転手段により前記光路変更手段を回転させると、その回転に伴って検査領域を前記円筒体の周方向に移動させることができる旨が記載されている。
特開2004−045364号公報 特開2007−017456号公報
しかし、特許文献1に記載の異物検査装置または特許文献2に記載の表面検査装置を用いて筒状体構造のピストンの内部の状態を検査した場合、以下に掲げるような問題があった。
特許文献1に記載の異物検査装置を用いた場合、筒状体構造のピストンの底面外部に、前記円錐プリズムが配置されることになる。そうすると、前記円錐プリズムを介して前記ピストンの底部を観察することはできたとしても、前記ピストンの内周面を観察することが難しいという問題がある。特に、前記ピストンが、図5に示す注射器用ピストン60のような、内周面68にネジ溝70が形成されたピストンである場合、前記円錐プリズムからは前記ネジ溝の内部が死角となる。従って、前記円錐プリズムを介して前記ネジ溝の内部を観察することは極めて困難であると言える。このように、特許文献1に記載の異物検査装置を用いて筒状体構造のピストンの内部の状態を検査した場合には、前記ピストンの内周面に付着した異物、汚れ等を検出し難いという問題があった。
また、特許文献2に記載の表面検査装置は、前記回転手段(電動モータ等)により前記光路変更手段(反射鏡、三角柱プリズム等)を回転させる方式を採用するため、装置構成が複雑であり、検査装置がある程度、大型とならざるを得ないという問題があった。このため、特許文献2に記載の表面検査装置は、注射器用ピストンのような微小サイズの筒状体の内部を検査するという目的には適していないという問題もあった。
本発明は、上記の従来技術の課題を解決するためになされたものである。即ち、本発明は、注射器用ピストンのような微小サイズの筒状体の内部の検査に適しており、しかも筒状体の内周面に付着した異物、汚れ等を容易に検出することができる筒状体の検査方法および検査装置を提供するものである。
本発明者は前記課題について鋭意検討を行った。その結果、検査対象である筒状体の内部に、凹型屈折面が形成された凹型プリズムを挿入し、前記凹型プリズムを介して前記筒状体の内部を観察することで、前記課題を解決可能であることに想到して本発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、以下に示す筒状体の検査方法および検査装置が提供される。
[1]筒状体の検査方法:
本発明によれば、筒状体の内部の状態を検査するための検査方法であって、柱状体の先端部に凹型屈折面が形成された凹型プリズムを用い、前記筒状体の内部に前記凹型プリズムの少なくとも先端が挿入された状態とし、前記筒状体に対して光を照射し、前記筒状体の内周面から出射された光を前記凹型プリズムの外周面から入射させ、前記光を前記凹型プリズムの凹型屈折面で屈折させて前記筒状体の開口端方向に進行する屈折光とし、前記屈折光により形成される前記筒状体の内部の画像を観察することにより、前記筒状体の内部の状態を検査することを特徴とする筒状体の検査方法;が提供される。
本発明の検査方法は、以下に示す形態であることが好ましい。
前記筒状体が、有底筒状体であること;
前記筒状体が、有底筒状体であり、かつ、その内周面にネジ溝が形成された注射器用ピストンであること;
前記凹型プリズムが、円柱体の先端部に、円錐内面、円錐台内面およびホーン内面からなる群より選択される少なくとも1つの凹型屈折面が形成された凹型プリズムであること;
前記凹型プリズムが、円柱体の先端部に、半頂角が45°±20°の円錐内面、および半頂角が45°±20°の円錐台内面からなる群より選択される1つの凹型屈折面が形成された凹型プリズムであること;
[2]筒状体の検査装置:
本発明によれば、筒状体の内部の状態を検査するための検査装置であって、柱状体の先端部に凹型屈折面が形成された凹型プリズムと、前記筒状体の中心軸と前記凹型プリズムの中心軸とを一致させた状態で、前記筒状体および前記凹型プリズムのうちの少なくとも1つの部材を、前記筒状体の内部に前記凹型プリズムの少なくとも先端が挿入された状態となるように運動させるアクチュエータと、前記筒状体に対して光を照射する照明と、前記筒状体の内部の状態を撮像するカメラと、を備えたことを特徴とする筒状体の検査装置;が提供される。
本発明の検査方法および検査装置は、注射器用ピストンのような微小サイズの筒状体の内部の検査に適しており、しかも筒状体の内周面に付着した異物、汚れ等を容易に検出することができる。
本発明の検査方法を模式的に示す概念図である。 凸型プリズムを用いた検査方法を模式的に示す概念図である。 図1に示す凹型プリズムを模式的に示す側面図である。 凹型プリズムの別の実施形態を模式的に示す側面図である。 凹型プリズムの更に別の実施形態を模式的に示す側面図である。 本発明の検査装置を模式的に示す概念図である。 図1に示す筒状体を、その中心軸を含む平面で切断した断面を模式的に示す断面図である。
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明は下記の実施形態に限定されず、その発明特定事項を有する全ての対象を含むものである。なお、同一構造の部材については図面において同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
[1]筒状体の検査方法:
図1は、本発明の検査方法を模式的に示す概念図である。本発明の検査方法は、図1に示すように、検査対象である筒状体2の内部に、凹型屈折面32が形成された凹型プリズム4を挿入し、凹型プリズム4を介して筒状体2の内部を観察する検査方法である。以下、本発明の検査方法について説明する。
[1−1]筒状体:
本発明の検査方法は、図1に示すように、筒状体2の内部の状態を検査するための検査方法である。「筒状体の内部の状態を検査」とは、筒状体の内周面または底面に異物、汚れ等が付着しているか否かを検査することを意味する。
図5は、図1に示す筒状体2を、その中心軸を含む平面で切断した断面を模式的に示す断面図である。「筒状体」とは、図5に示す筒状体2のように、柱状体の中心部に空洞64が形成された立体を意味する。即ち、「筒状体」は、図5に示す筒状体2のように、外周壁62を有し、外周壁62の内側に空洞64が区画形成された構造を有する立体である。そして、本発明の検査方法は、筒状体が、有底筒状体である場合に好適に用いることができる。則ち、「筒状体」には、2つの開口端がともに開放された筒状体の他、図5に示す筒状体2のように、1つの開口端が底部66によって閉塞された有底筒状体も含まれる。
図5に示す筒状体2は、略円柱体の中心部に空洞64が形成された略円筒体である。そして、筒状体2は略円筒状の外周壁62を有し、外周壁62の内側に略円柱状の空洞64が区画形成された構造を有している。また、筒状体2は、1つの開口端が底部66によって閉塞された有底筒状体である。
更に、「筒状体」は、円筒体等の単純形状の筒状体のみならず、図5に示す筒状体2のように、その外径、内径、外周壁62の壁厚、底部66の厚さ等が均一でない筒状体であってもよい。
図5に示す筒状体2は、その外径および外周壁62の壁厚が漸次変化し、底部66に最大外径部を有している筒状体である。筒状体2は、注射器用ピストン60であり、前記最大外径部が注射筒(不図示)の内周面と接触し、液密的な状態を維持しつつ摺動することができるように構成されている。また、筒状体2は、底部66の中心が突出し、外周側に向かうに従って底部66の厚さが徐々に薄くなっている筒状体である。
本発明の検査方法は、図5に示すように、筒状体2が、有底筒状体であり、かつ、その内周面68にネジ溝70が形成された注射器用ピストン60である場合に特に好適に用いることができる。本発明の検査方法によれば、注射器用ピストン60の内周面68、特にネジ溝70の内部に付着した異物、汚れ等を容易に検出することができる。
図5に示す筒状体2は、内周面68に螺旋状のネジ溝70が形成された、いわゆる雌ねじ部材である。ネジ溝70はプランジャーロッド(不図示)の先端部に形成されたネジ山と噛みあうように構成されている。このようなネジ溝70が形成されていることで、注射器用ピストン60の空洞64に前記プランジャーロッドの先端部をねじ込み、注射器用ピストン60と前記プランジャーロッドとを一体化させることが可能となる。
前記筒状体の材質は特に限定されない。前記筒状体が注射器用ピストンである場合には、液密性を確保するために弾性材料または可撓性材料により構成されていることが好ましい。弾性材料としては、例えば、加硫ゴム;ポリスチレン系エラストマー、エチレン・プロピレン系エラストマー、ポリイソブチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;等を挙げることができる。可撓性材料としては、例えば、PE系樹脂、PP系樹脂、PC系樹脂、ABS系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂;等を挙げることができる。
前記筒状体のサイズも特に限定されない。但し、本発明の検査方法は、注射器用ピストンのような微小サイズの筒状体の内部の検査に適している。注射器用ピストンとしては、例えば長さ6.0mm以上25.0mm以下、外径6.5mm以上55.0mm以下、内径2.3mm以上35.0mm以下、空洞の奥行き(深さ)3.8mm以上15.0mm以下の微小サイズのものが知られている。本発明の検査方法は、内径および空洞の奥行き(深さ)が前記範囲内である筒状体、即ち、空洞のサイズが極めて小さい筒状体に特に好適に用いることができる。
[1−2]凹型プリズム:
本発明の検査方法においては、図1に示すように、柱状体の先端部に凹型屈折面32が形成された凹型プリズム4を用いる。凹型プリズムは、反射鏡や三角柱プリズムとは異なり、周方向に回転させることなく筒状体の内周面全体(即ち360°方向)を一時に観察することができる。このため、反射鏡や三角柱プリズムのように回転手段を必要とせず、また、筒状体内部に挿入される器具が凹型プリズムのみであるため、検査器具の構成を簡素化し、小型化することが可能となる。
さらに、凹型プリズムは、有底筒状体の底部近傍の状態を単位面積当たりの画素数が多く、解像度に優れた画像として観察することができるという利点がある。図1に示すように、凹型プリズム4は、筒状体2の底面72近傍から入射する光52を、凹型屈折面32のうち凹型プリズム4の先端34近傍の部分(則ち、凹型プリズム4の外周側の部分)において屈折させる。このため、屈折光56により形成される画像58は、凹型プリズム4の外周側の部分に投影されることになり、画像58の面積が大きくなる(画像58の半径が大きい)。則ち、画像58は、単位面積当たりの画素数が多く、解像度に優れる。凹型プリズム4の先端34の位置は、有底筒状体の開口部近傍から底面72近傍に至るまで移動することができる。そうすると、凹型プリズム4は、有底筒状体の開口部近傍から底面72近傍に至るまで、単位面積当たりの画素数が多く、解像度に優れた画像58を得られることになる。則ち、凹型プリズム4は、鮮明な観察画像を得られる範囲が広く、特に、微細な異物が溜まり易い有底筒状体の底部近傍において、より微細な異物、汚れ等を検出することが可能となる。以上の理由から、本発明の検査方法および検査装置は、注射器用ピストンのような微小サイズの筒状体、特に有底筒状体の内部の検査に適していると言える。
これに対し、凸型プリズムは、有底筒状体の底部近傍の状態を単位面積当たりの画素数が少なく、解像度に劣る画像としてしか観察することができない。図2に示すように、凸型プリズム104を使用した場合、その先端134を有底筒状体の底面72に限りなく近づけたとしても、有底筒状体の底面72近傍の部分については凸型プリズム104の先端134近傍の部分(先鋭部)を介して観察せざるを得ない。則ち、凸型プリズム104は、筒状体2の底面72近傍から入射する光152を、凸型屈折面132のうち凸型プリズム104の先鋭部(則ち、凸型プリズム104の中心側の部分)において屈折させることになる。このため、屈折光156により形成される画像158は、凸型プリズム104の中心側の部分に投影されることになり、画像158の面積が小さくなる(画像158の半径が小さい)。則ち、画像158は、単位面積当たりの画素数が少なく、解像度に劣る。このように、凸型プリズム104は、有底筒状体の底部66近傍を十分に観察することができないという問題がある。
図3Aは、図1に示す凹型プリズム4を模式的に示す側面図である。「凹型プリズム」とは、図3Aに示す凹型プリズム4のように、柱状体の先端部に凹型屈折面32が形成されたプリズムを意味する。「凹型屈折面」は、柱状体の中心軸を回転軸とする回転体の形状(例えば、円錐状、円錐台状、ドーム状等)と相補的な形状であることが好ましい。「柱状体」とは、ある平面図形を当該平面図形と直交する直線に沿って平行移動させた際に得られる立体形状を意味する。例えば円柱体、角柱体等を挙げることができる。「先端部」とは、柱状体の先端を含む部分であり、前記柱状体を長手方向に2等分した際に、その先端側1/2を占める部分を意味する。「凹型屈折面」とは、凹型に窪んだ屈折面を意味する。例えば図3Aに示す凹型プリズム4は、柱状体の先端34が窪んで凹面を形成しており、前記凹面が屈折面を構成している。
図3Bは、凹型プリズムの別の実施形態を模式的に示す側面図、図3Cは、凹型プリズムの更に別の実施形態を模式的に示す側面図である。本発明の検査方法においては、前記凹型プリズムが、図3A〜図3Cに示すような、円柱体の先端部に、円錐内面36、円錐台内面36Aおよびホーン内面36Bからなる群より選択される少なくとも1つの凹型屈折面32,32A,32Bが形成された凹型プリズム4,4A,4Bであることが好ましい。
図3Aに示す凹型プリズム4は、円錐内面36が形成された凹型プリズムの例である。「円錐内面」とは、円錐面のうち、円錐の内側に向いた面を意味する。図3Bに示す凹型プリズム4Aは、円錐台内面36Aが形成された凹型プリズムの例である。「円錐台内面」とは、円錐台の側面を構成する円錐面のうち、円錐台の内側に向いた面を意味する。図3Cに示す凹型プリズム4Bは、ホーン内面36Bが形成された凹型プリズムの例である。「ホーン内面」とは、ホーン形状(らっぱ形状、朝顔形状)の内側に向いた面を意味する。
図3Bに示す凹型プリズム4A、および図3Cに示す凹型プリズム4Bには、円柱状凹部38、38Aが形成されている。この円柱状凹部38、38Aは、例えば、プリズムの加工時にプリズムの固定具を取り付ける目的、或いは凹屈折面の収束点部分の精密加工を省略する目的で形成される(逆に、図3Aに示す凹型プリズム4は、円錐内面36の収束点部分の精密加工が困難である)。但し、このような円柱状凹部38、38Aは、光を屈折させるというプリズムの本来的な機能を果たす部分ではない。従って、円錐台内面やホーン内面を形成する際に、必ずしも円柱状凹部を形成する必要はない。
本発明の検査方法においては、前記凹型プリズムが、図3Aまたは図3Bに示す凹型プリズム4,4Aのように、円柱体の先端部に、半頂角が45°±20°の円錐内面36、および半頂角が45°±20°の円錐台内面36Aからなる群より選択される1つの凹型屈折面32,32Aが形成された凹型プリズムであることが更に好ましい。凹型屈曲面を円錐内面または円錐台内面とすることで、前記円柱体の中心軸を回転軸とする回転対称な形状となり、360°方向を均一に、しかも一時に観察することが可能となる。
「半頂角」とは、円錐の回転軸と円錐の母線がなす角度を意味する。前記半頂角を45°とすることで、45°とすると、プリズムの焦点が最も合い易いため特に好ましい。但し、図5に示すような内周面68にネジ溝70が形成された注射器用ピストン60等においては、前記半頂角を45°から若干ずらした方がネジ溝の内部等を観察し易くなる場合がある。このような観点からは、前記半頂角を45°±20°の範囲内とすることが好ましく、プリズムの焦点の合い易さとのバランスをとるためには、前記半頂角を45°±5°の範囲内とすることが好ましい。
前記凹型プリズムの材質は、特に限定されない。但し、光の屈折を正確に行うために均質性が高い材料であることが好ましい。そのような材料としては、例えば、光学ガラス等を挙げることができる。
前記凹型プリズムのサイズも、検査対象となる筒状体の内部(空洞)に挿入可能である限り、特に限定されない。則ち、筒状体の内径の他、検査装置の動作精度、筒状体の製品ごとの寸法ばらつき(成形や加工の精度によりばらつく場合がある)等を考慮して適宜設定すればよい。例えば、検査対象となる筒状体が注射器用ピストンである場合、凹型プリズムの外径は、凹型プリズムの外周面と筒状体の内周面とのクリアランスが0.05mm以上となるように設定することが好ましく、0.15mm以上となるように設定することが更に好ましい。検査装置の動作精度のみを考慮すれば、前記クリアランスは0.05mm程度で十分な場合もある。但し、製品ごとの寸法ばらつきや、筒状体の上部から空洞の位置を正確に捕捉し難い場合があることを考慮すると、前記クリアランスが0.15mm以上であることが好ましい。クリアランスの上限は特に限定されない。但し、筒状体の内周面を容易に観察するためには、5mm以下とすることが好ましく、3mm以下とすることが更に好ましい。
なお、ここに言う「クリアランス」とは、下記式(1)により算出される値を意味するものとする。内周面にネジ溝が形成された筒状体のように、筒状体の内径が漸次変化しているような場合には、下記式(1)における「筒状体の内径」は、筒状体の最小内径を意味するものとする。
クリアランス=(筒状体の内径−凹型プリズムの外径)×0.5 :(1)
[1−3]検査の工程:
本発明の検査方法においては、以下のような工程により検査を行う。
[1−3A]凹型プリズムの挿入:
まず、図1に示すように、筒状体2の内部に凹型プリズム4の少なくとも先端34が挿入された状態とする。この状態とすることにより、筒状体2の内部の状態を検査することが可能となる。また、筒状体2の内部に凹型プリズム4を挿入することで、筒状体2が透光性を有しない場合でも、筒状体2の内部の状態を検査することが可能となる。
本発明の検査方法においては、筒状体2の内部に凹型プリズム4の少なくとも先端34が挿入された状態とすれば検査を行うことが可能となる。但し、筒状体の内部を十分に検査するためには、凹型プリズム4の先端を筒状体の検査したい部位まで挿入することが好ましい。図1に示すように、筒状体2が有底筒状体である場合には、凹型プリズム4の先端34が筒状体2の底面72に近接する位置まで挿入された状態とすることもできる。
有底筒状体の底面と凹型プリズムの先端とが最も近接した場合のクリアランスは、検査装置の動作精度、筒状体の製品ごとの形状ばらつき(底部の凹凸や歪)等を考慮して適宜設定すればよい。例えば、検査対象となる筒状体が注射器用ピストンである場合、検査装置の動作精度のみを考慮すれば、前記クリアランスを0.1mm程度まで近づけることもできる。但し、製品ごとの形状ばらつきを考慮すると、前記クリアランスを0.2mm以上とすることが更に好ましく、0.3mm以上とすることが特に好ましい。前記クリアランスの上限は特に限定されない。但し、筒状体の底面近傍を容易に観察するためには、0.5mm以下とすることが好ましく、0.4mm以下とすることが更に好ましい。
また、本発明の検査方法においては、前記筒状体の内部に前記凹型プリズムの少なくとも先端が挿入された状態において、前記筒状体の底面と前記凹型プリズムの先端との距離を逐次変更し、各々の距離ごとに前記筒状体の内部の画像を観察することが好ましい。このような方法により、前記筒状体の内周面を空洞の深さ方向全域に渡って観察することができる。前記方法は、図5に示す筒状体2のように内周面68にネジ溝70が形成された筒状体を検査対象とする場合に特に好適に用いることができる。即ち、凹型屈折面とねじ溝の位置を合わせることにより、ネジ溝70の内部を確実に観察することができる点において好ましい。
[1−3B]光の照射:
次いで、前記筒状体に対して光を照射する。前記筒状体に対して光を照射する限り、その照射方法は特に限定されない。例えば前記筒状体の内部(即ち、前記筒状体の空洞)に光を照射する方法を挙げることができる。但し、前記筒状体が透光性を有する場合には、前記筒状体の外周面に光を照射する方法を採用することもできる。
光の種類は特に限定されない。但し、可視光が好ましい。また、前記筒状体の内部の明るさ(照度)も特に限定されない。但し、前記筒状体の内部が観察することができる程度の照度は必要である。
[1−3C]光の入射および屈折:
更に、図1に示すように、筒状体2の内周面68から出射された光52を凹型プリズム4の外周面54から入射させ、光52を凹型プリズム4の凹型屈折面32で屈折させて筒状体2の開口端方向に進行する屈折光56とする。
筒状体2の内部に光を照射した場合には、筒状体2の内周面68を反射した反射光を凹型プリズム4の外周面54から入射させることができる。一方、筒状体2の外周面に光を照射した場合には、筒状体2(外周壁62または底部)を透過した透過光を凹型プリズム4の外周面54から入射させることができる。
[1−3D]筒状体の内部の画像の観察:
最後に、図1に示すように、屈折光56により形成される筒状体2の内部の画像58を観察することにより、筒状体2の内部の状態を検査する。本発明の検査方法は、図1に示すように、凹型プリズム4を用いているので、筒状体の内部を観察した際に画素数が多い鮮明な画像58を得ることができ、より微細な異物、汚れ等を検出することが可能となる。
本発明の検査方法と対比するため、凸型プリズムを用いた検査方法について説明する。図2は、凸型プリズム104を用いた検査方法を模式的に示す概念図である。凸型プリズム104は、円柱体の先端部に凸型屈折面132である円錐面136が形成された凸型プリズムである。図2に示す検査方法は、筒状体2の内部に凸型プリズム104の少なくとも先端134が挿入された状態とし、筒状体2に対して光を照射し、筒状体2の内周面68から出射された光152を凸型プリズム104の外周面154から入射させ、光152を凸型プリズム104の凸型屈折面132で屈折させて筒状体2の開口端方向に進行する屈折光156とし、屈折光156により形成される筒状体2の内部の画像158を観察することにより、筒状体2の内部の状態を検査する検査方法である。
図2に示す検査方法においては、凸型プリズム104を用いているため、その先端134を有底筒状体の底面72に限りなく近づけたとしても、有底筒状体の底面72近傍の部分については凸型プリズム104の先端134近傍の部分(先鋭部)を介して観察せざるを得ない。従って、図2に示す検査方法においては、屈折光156により得られる画像158の単位面積当たりの画素数が少なく、解像度が低くなる。これに対し、図1に示す本発明の検査方法においては、凹型プリズム4を用いているため、筒状体2の底面72近傍から入射する光52を、凹型屈折面32のうち凹型プリズム4の先端34近傍の部分(則ち、凹型プリズム4の外周側の部分)において屈折させる。従って、図1に示す本発明の検査方法においては、単位面積当たりの画素数が多く、解像度に優れた画像58を得られる。
[2]検査装置:
図4は、本発明の検査装置を模式的に示す側面図である。本発明の検査装置は、図4に示す検査装置1のように、筒状体2の内部の状態を検査するための検査装置であり、凹型プリズム4と、アクチュエータ6と、照明8と、カメラ10と、を備えた検査装置である。以下、既に説明した凹型プリズム以外の構成要素について説明する。
[2−1]アクチュエータ:
本発明の検査装置は、図4に示す検査装置1のように、筒状体2の中心軸と凹型プリズム4の中心軸とを一致させた状態で、筒状体2および凹型プリズム4のうちの少なくとも1つの部材を、筒状体2の内部に凹型プリズム4の少なくとも先端が挿入された状態となるように運動させるアクチュエータ6を備えている。「アクチュエータ」とは、供給されたエネルギーを物理的運動に変換する機械要素を意味する。筒状体2の中心軸と凹型プリズム4の中心軸とを一致させた状態とすることで、凹型プリズム4が筒状体2の内部に確実に挿入される。また、筒状体2の内部に凹型プリズム4の少なくとも先端が挿入された状態とすることで、筒状体2の内部の状態を検査することができる。
本発明の検査装置において、アクチュエータの種類は特に限定されない。例えば、電気エネルギーを直線運動に変換するリニアモータ、空気圧を直線運動に変換するエアシリンダ、油圧を直線運動に変換する油圧シリンダ等を挙げることができる。但し、図4に示す検査装置1のように、アクチュエータ6としてリニアモータを備えていることが好ましい。リニアモータは機械要素自体がコンパクトで、部材の位置制御も容易であるという利点がある。図4に示すアクチュエータ6は、電気エネルギーを図面上下方向(図中の白抜き矢印で示す方向)の直線運動に変換するリニアモータである。図4に示す検査装置においては、アクチュエータ6がガイド14に支持されており、アクチュエータ6がガイド14に沿って図面上下方向に往復運動するように構成されている。ガイド14は、筒状体2を固定するステージ18とともに、支持台20上に固定されている。
「筒状体および凹型プリズムのうちの少なくとも1つの部材を、・・・運動させる」とは、本発明の検査装置が、凹型プリズムを運動させるアクチュエータを備えていてもよいし、検査対象の筒状体を運動させるアクチュエータを備えていてもよいことを意味する。
例えば、図4に示す検査装置1は、凹型プリズム4を運動させるアクチュエータ6を備えた検査装置の例である。検査装置1において、アクチュエータ6は、連結部材16および鏡筒12を介して凹型プリズム4に接続されている。従って、アクチュエータ6は凹型プリズム4を運動させることができる。
検査対象の筒状体を運動させるアクチュエータを備えた検査装置の例としては、図4に示す検査装置1と同様の構成において、アクチュエータ6とは異なる第2のアクチュエータが、ステージ18(筒状体2が固定されている)に接続された構成を挙げることができる(前記第2のアクチュエータは不図示)。このような構成であれば、前記第2のアクチュエータはステージ18を介して筒状体2に接続される。従って、前記第2のアクチュエータは筒状体2を運動させることができる。
本発明の検査装置は、筒状体を運動させるアクチュエータのみを備えた形態、凹型プリズムを運動させるアクチュエータのみを備えた形態、筒状体を運動させるアクチュエータと凹型プリズムを運動させるアクチュエータの双方を備えた形態のいずれであってもよい。
アクチュエータによる運動の位置制御は、例えば(サーボ機構、コンピュータを用いた数値制御(CNC:Computer Numerical Control))等の手法により行うことができる。
[2−2]照明:
本発明の検査装置は、図4に示す検査装置1のように、筒状体2に対して光を照射する照明8を備えている。「照明」とは、光を照射する器具を意味する。
筒状体2に対して光を照射することができる限り、照明の種類や方式は特に限定されない。例えば、筒状体2の外周面に対して光を照射し、筒状体2を透過した透過光により筒状体2の内部を照らす透過照明22であってもよいし、筒状体2の内部に光を照射し、筒状体2の内部を直接的に照らす直接照明24であってもよい。
例えば、図4に示す検査装置1は、照明8として、透過照明22と直接照明24の双方を採用した例である。透過照明22は、筒状体2の外周面に対して光を照射し、筒状体2を透過した透過光により筒状体2の内部を照らす照明である。透過照明22は、筒状体2が透光性を有する場合に好適に用いることができる。透過照明22は、直接照明24と比較して、筒状体2の内周面に付着しているのではなく、筒状体2の外周壁の内部に埋め込まれてしまった異物、筒状体2と同色の異物等を検出し易い点において好ましい。透過照明によれば、筒状体2の外周壁の内部に埋め込まれてしまった異物;或いは、筒状体2と同色の異物;等であっても、これらを影として容易に検出することができる。図4に示す検査装置1は、透過照明22として、筒状体2を取り囲むように多数のライトが配置されたリング照明を備えている。
また、直接照明24は、筒状体2の内部に光を照射し、筒状体2の内部を直接的に照らす照明である。直接照明は、筒状体が透光性を有しない場合でも筒状体の内部を照らすことができるという利点がある。また、透過照明と比較して、筒状体の内周面の表面、内周面と底面とのコーナー部、エッジ部、或いはこれらの輪郭等が視認し易く、また、外周壁の壁厚の影響を受けずに筒状体の内部を観察することができる点において好ましい。なお、前記スポット照明は、凹型プリズムを介して筒状体の内部に光を照射するように構成してもよい。図4に示す検査装置1は、直接照明24として、筒状体2の上部に配置されたスポット照明を備えている。
図4に示す検査装置1は、照明8として、透過照明22と直接照明24の双方を備えている。但し、透過照明と直接照明の一方のみを備えるものも当然に本発明の範囲に含まれる。照明の種類は特に限定されず、必要な照度等に応じて適宜選択すればよい。例えば(LEDライト)等を用いることができる。
[2−3]カメラ:
本発明の検査装置は、図4に示す検査装置1のように、筒状体2の内部の状態を撮像するカメラ10を備えている。「カメラ」とは、画像(静止画)や動画を撮像するための撮像機器を意味する。
筒状体2の内部の状態を撮像することができる限り、カメラ10の種類は特に限定されない。例えば、電荷結合素子(CCD:charge-coupled device)を撮像素子とするCCDカメラ、相補性金属酸化膜半導体(CMOS:Complementary Metal Oxide Semiconductor)を撮像素子とするCMOSカメラ等を挙げることができる。本発明の検査装置は、図4に示す検査装置1は、カメラ10として、CCDカメラを備えている検査装置の例である。
また、筒状体2の内部の状態を撮像することができる限り、カメラの設置方法も特に限定されない。但し、図4に示す検査装置1のように、筒状の固定部材である鏡筒12の内部に、凹型プリズム4とともに収納する形で設置することが好ましい。このような設置方法は、凹型プリズム4の中心軸上にカメラ10を固定した状態のまま、カメラ10と凹型プリズム4を同時に移動させることができる点において好ましい。
本発明の検査方法および検査装置は、注射器用ピストンのような微小サイズの筒状体の内部の状態を確認する検査方法および検査装置として好適に利用することができる。
1:検査装置、2:筒状体、4、4A、4B:凹型プリズム、6:アクチュエータ、8:照明、10:カメラ、12:鏡筒、14:ガイド、16:連結部材、18:ステージ、20:支持台、22:透過照明、24:直接照明、32、32A、32B:凹型屈折面、34、34A、34B:先端、36:円錐内面、36A:円錐台内面、36B:ホーン内面、38、38A:円柱状凹部、50:(筒状体の)内周面、52:光、54:(凹型プリズムの)外周面、56:屈折光、58:画像、60:ピストン、62:外周壁、64:空洞、66:底部、68:内周面、70:ネジ溝、72:底面、104:凸型プリズム、132:凸型屈折面、134:先端、136:円錐面、152:光、154:(凸型プリズムの)外周面、156:屈折光、158:画像。

Claims (6)

  1. 筒状体の内部の状態を検査するための検査方法であって、
    柱状体の先端部に凹型屈折面が形成された凹型プリズムを用い、
    前記筒状体の内部に前記凹型プリズムの少なくとも先端が挿入された状態とし、
    前記筒状体に対して光を照射し、前記筒状体の内周面から出射された光を前記凹型プリズムの外周面から入射させ、前記光を前記凹型プリズムの凹型屈折面で屈折させて前記筒状体の開口端方向に進行する屈折光とし、
    前記屈折光により形成される前記筒状体の内部の画像を観察することにより、前記筒状体の内部の状態を検査することを特徴とする筒状体の検査方法。
  2. 前記筒状体が、有底筒状体である請求項1に記載の筒状体の検査方法。
  3. 前記筒状体が、有底筒状体であり、かつ、その内周面にネジ溝が形成された注射器用ピストンである請求項1または2に記載の検査方法。
  4. 前記凹型プリズムが、円柱体の先端部に、円錐内面、円錐台内面およびホーン内面からなる群より選択される少なくとも1つの凹型屈折面が形成された凹型プリズムである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の検査方法。
  5. 前記凹型プリズムが、円柱体の先端部に、半頂角が45°±20°の円錐内面、および半頂角が45°±20°の円錐台内面からなる群より選択される1つの凹型屈折面が形成された凹型プリズムである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の検査方法。
  6. 筒状体の内部の状態を検査するための検査装置であって、
    柱状体の先端部に凹型屈折面が形成された凹型プリズムと、
    前記筒状体の中心軸と前記凹型プリズムの中心軸とを一致させた状態で、前記筒状体および前記凹型プリズムのうちの少なくとも1つの部材を、前記筒状体の内部に前記凹型プリズムの少なくとも先端が挿入された状態となるように運動させるアクチュエータと、
    前記筒状体に対して光を照射する照明と、
    前記筒状体の内部の状態を撮像するカメラと、を備えたことを特徴とする筒状体の検査装置。
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