JP2015132004A - 溶接熱影響部靱性に優れた鋼材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.02〜0.25%、Si:0.0001〜0.4%、Mn:0.5〜2.0%、S:0.001〜0.050%、O:0.001〜0.005%、Insol.Al:0.0001〜0.005%、sol.Al:0.0001〜0.0005%、Insol.Mg:0.0001〜0.005%、sol.Mg:0.0001〜0.0005%、Nb:0.01〜0.05%(必要に応じて、Cu、Ni、Cr、Mo、V、B、Ca、REM、Ti、Snの一種以上)残部:Feおよび不純物、不純物のP:0.03%以下、N:0.006%以下であり、粒径が0.6μm未満である、MgとMnとAlからなる酸化物およびMnSからなる複合介在物が鋼材中に1×106個/mm3以上存在し、かつ、粒径が0.6μm未満であるNb炭化物が鋼材中に1×105個/mm3以上存在する、溶接熱影響部の靱性に優れた鋼材。
【選択図】なし
Description
C:0.02〜0.25%、
Si:0.0001〜0.4%、
Mn:0.5〜2.0%、
S:0.001〜0.050%、
O:0.001〜0.005%、
Insol.Al:0.0001〜0.005%、
sol.Al:0.0001〜0.0005%、
Insol.Mg:0.0001〜0.005%、
sol.Mg:0.0001〜0.0005%、
Nb:0.01〜0.05%、
Cu:0〜1.0%、
Ni:0〜1.0%、
Cr:0〜0.5%、
Mo:0〜0.5%、
V:0〜0.2%、
B:0〜0.0005%、
Ca:0〜0.005%、
REM:0〜0.005%、
Ti:0〜0.02%、
Sn:0〜0.5%、
残部:Feおよび不純物、
不純物としてのPおよびNが
P:0.03%以下、
N:0.006%以下、
である化学組成を有し、
粒径が0.6μm未満である、MgとMnとAlからなる酸化物およびMnSからなる複合介在物が鋼材中に1×106個/mm3以上存在し、かつ、
粒径が0.6μm未満であるNb炭化物が鋼材中に1×105個/mm3以上存在する、
溶接熱影響部の靱性に優れた鋼材。
Cu:0.01〜1.0%、
Ni:0.01〜1.0%、
Cr:0.01〜0.5%、
Mo:0.01〜0.5%、
V:0.01〜0.2%および
B:0.0001〜0.0005%
から選択される1種以上を含有する、
上記(1)の溶接熱影響部靱性に優れた鋼材。
Ca:0.0005〜0.005%および
REM:0.0005〜0.005%
から選択される1種または2種を含有する、
上記(1)または(2)の溶接熱影響部靱性に優れた鋼材。
Ti:0.001〜0.02%
を含有する、
上記(1)〜(3)のいずれかの溶接熱影響部靱性に優れた鋼材。
Sn:0.05〜0.5%
を含有する、
上記(1)〜(4)のいずれかの溶接熱影響部靱性に優れた鋼材。
以下、本発明に係る鋼材の化学組成について説明する。なお、含有量に関する「%」は、質量%を意味する。
Cは母材および溶接部の強度および靱性を確保するのに有効な元素であるが、その含有量が0.02%未満ではその効果が得られない。しかし、0.25%を超えると溶接性を劣化させる。したがって、Cの含有量は0.05〜0.25%とする。Cの含有量の好ましい下限は0.04%であり、好ましい上限は0.18%である。
Siは、脱酸のために鋼に含有される。この効果を得るために、Siを0.0001%以上含有させる必要がある。しかし、多すぎると溶接性および溶接熱影響部靱性が劣化する。したがって、Siの含有量は0.0001〜0.4%とする。Si含有量の好ましい下限は0.01%であり、好ましい上限は0.2%である。
Mnは母材および溶接部の強度および靱性の確保に不可欠であり、0.5%以上必要とする。しかし、Mnが多すぎると溶接熱影響部靱性の劣化およびスラブの中心偏析を助長し、溶接性を劣化させる。したがって、Mnの含有量は0.5〜2.0%とする。Mn含有量の好ましい下限は1.0%であり、好ましい上限は1.5%である。
Pは鋼材中に含まれる不純物元素である。Pを低減すると、スラブの中心偏析の軽減を通じて母材および溶接熱影響部の機械的性質を改善し、さらには、溶接熱影響部の粒界破壊を抑制する。このため、Pは少ないほど望ましいが、経済性を考慮してPの含有量は0.03%以下とする。
Sは、本発明において重要な元素である。粒内フェライト変態核として、MgとMnとAlからなる酸化物の上に、MnSを複合析出してなる複合介在物を分散・生成させるために、0.001%以上含有させる必要がある。しかし、Sが0.050%を超えると母材および溶接熱影響部の靱性が劣化する。したがって、Sの含有量は0.001〜0.050%とする。
O(酸素)は、ピンニング粒子であり、上記複合介在物の個数を制御する上で重要である。Oが0.001%未満の場合、上記複合介在物の個数が不足し、溶接熱影響部靱性が劣化する。一方、Oが0.005%を超える場合、鋼の清浄度が低下して機械的性質が劣化する。したがって、Oの含有量は0.001〜0.005%とする。
Nは不純物として存在する。母材靭性の低下、溶接時に希釈による溶接金属中への混入から溶接金属の靭性低下を招くため、Nの含有量の上限を0.006%とする。
Al:0.0001〜0.005%
sol. Al:0.0001〜0.0005%
Insol. Alは、旧オーステナイト粒成長のピンニング粒子である上記複合介在物の個数を1×106個/mm3以上存在するように制御する上で重要である。Insol. Alが0.0001%未満の場合、上記複合介在物の個数が1×106個/mm3未満になってしまい、旧オーステナイト粒が十分に細粒化されず、良好な溶接熱影響部靱性が得られない。また、Insol. Alが0.005%を超えると、上記複合介在物の個数が多く生成しすぎる。その結果、一旦生成した複合介在物が凝集して粗大な複合介在物になりやすくなる。その結果、粒径0.6μm未満の複合介在物の個数が1×106個/mm3未満となりやすく、この場合、旧オーステナイト粒界の移動を十分にピンニングすることはできない。また、粗大な複合介在物が形成されると、それに起因した溶接熱影響部靱性の劣化が起こる。したがって、Insol. Alの含有量は0.0001〜0.005%とする。
sol.Mg:0.0001〜0.0005%
Insol.Mgは、旧オーステナイト粒成長のピンニング粒子である上記複合介在物の個数を1×106個/mm3以上存在するように制御する上で重要である。Insol.Mgが0.0001%未満の場合、上記複合介在物の個数が1×106個/mm3未満になってしまい、旧オーステナイト粒が十分に細粒化されず、良好な溶接熱影響部靱性が得られない。また、Insol.Mgが0.005%を超えると、上記複合介在物の個数が多く生成しすぎる。その結果、一旦生成した複合介在物が凝集して粗大な複合介在物になりやすくなる。その結果、粒径0.6μm未満の複合介在物の個数が1×106個/mm3未満となりやすく、この場合、旧オーステナイト粒界の移動を十分にピンニングすることはできない。また、粗大な複合介在物が形成されると、それに起因した溶接熱影響部靱性の劣化が起こる。したがって、Insol.Mgの含有量は0.0001〜0.005%とする。
Nbは、ピン止め効果により旧オーステナイト粒の粗大化を抑制し、母材組織の微細化に有効な元素である。このため、Nbの含有量を0.01%以上とする。しかし、Nbの含有量が0.05%を超えると、溶接熱影響部靱性が悪化するので、Nb含有量は0.05%以下とする。0.04%以下とするのが好ましい。なお、Nb含有量は、0.02%以上とするのが好ましい。
Cuを含有させると、溶接性および溶接熱影響部靱性に悪影響を及ぼすことなく母材の強度と靭性を向上させることができるので、含有させてもよい。しかし、その含有量が1.0%を超えると、逆に母材の強度と靭性を低下させる。したがって、Cuの含有量は1.0%以下とする。なお、Cuによる効果を得たい場合には、Cuを0.01%以上含有させることが好ましい。
Niは、溶接性および溶接熱影響部靱性に悪影響を及ぼすことなく母材の強度と靭性を確保するために有効な元素であるので、含有させてもよい。しかし、Niの含有量が1.0%を超えると、逆に母材の強度と靭性を低下させる。したがって、Niの含有量は1.0%以下とする。なお、Niによる効果を得たい場合には、Niを0.01%以上含有させることが好ましい。
Crは、溶接性および溶接熱影響部靱性に悪影響を及ぼすことなく母材の強度と靭性を確保するために有効な元素であるので、含有させてもよい。しかし、Crの含有量が0.5%を超えると、逆に母材の強度と靭性を低下させる。したがって、Crの含有量は0.5%以下とする。なお、Crによる効果を得たい場合には、Crを0.01%以上含有させることが好ましい。
Moは、溶接性および溶接熱影響部靱性に悪影響を及ぼすことなく母材の強度と靭性を確保するために有効な元素であるので、含有させてもよい。しかし、Moの含有量が0.5%を超えると、逆に母材の強度と靭性を低下させる。したがって、Moの含有量は0.5%以下とする。なお、Moによる効果を得たい場合には、Moを0.01%以上含有させることが好ましい。
Vは、母材の靱性を向上させるのに有効な元素である。しかし、Vの含有量が0.2%を超えると、逆に母材の靭性を低下させるので、含有させてもよい。したがって、Vの含有量は0.2%以下とする。なお、Vによる効果を得たい場合には、Vを0.01%以上含有させることが好ましい。
Bは、焼入れ性を高めて母材や溶接熱影響部の機械的性質を向上させるのに有効な元素であるので、含有させてもよい。しかし、Bの含有量が0.0005%を超えると、逆に溶接熱影響部靱性や溶接性を低下させる。したがって、Bの含有量は0.0005%以下とする。なお、Bによる効果を得たい場合には、Bを0.0001%以上含有させることが好ましい。
Caは、硫化物の形態を制御し、熱間加工性を増加させ、低温靭性を確保するために有効であるので、含有させてもよい。しかし、Caの含有量が0.005%を超えると、大型介在物やクラスターを生成して鋼の清浄度を害するので、Ca含有量は0.005%以下とする。なお、Caによる効果を得たい場合には、Caの含有量を0.0005%以上とするのが好ましい。
REMは、Caと同様に、硫化物の形態を制御し、熱間加工性を増加させ、低温靭性を確保するために有効であるので、含有させてもよい。しかし、REMの含有量が0.005%を超えると、大型介在物やクラスターを生成して鋼の清浄度を害するので、REM含有量は0.005%以下とする。なお、REMによる効果を得たい場合には、REMの含有量を0.0005%以上とするのが好ましい。ここで、REMとは、ランタノイドの15元素にYおよびScを合わせた17元素の総称であり、これらの元素のうちの1種または2種以上を含有させることができる。REMの混合体であるミッシュメタルを添加することでREMを含有させてもよい。なお、REMの含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。
Tiは、窒化物を生成し、鋼中の固溶N量を低減するとともに析出したTiNは作用を有するので、含有させてもよい。しかしながら、この含有量が0.02%を超えると、上記複合介在物の生成に必要なO量の低減を招くため、ピン止め効果が低減し溶接熱影響部靭性が悪化するので、Ti含有量は0.02%以下とする。なお、Tiによる効果を得たい場合には、Tiの含有量を0.001%以上とするのが好ましい。
Snは耐食性を改善するために有効であるので、含有させてもよい。しかし、Snの含有量が0.5%を超えると、母材および熱影響部靭性が低下するので、Snの含有量は0.5%以下とする。Snの好ましい含有量は0.4%以下である。なお、Snの効果を得たい場合には、Snの含有量を0.002%以上とするのが好ましく、0.05%以上とするのがより好ましい。
本発明においては、粒径が0.6μm未満である、MgとMnとAlからなる酸化物とMnSからなる複合介在物が鋼材中に1×106個/mm3以上存在することが必要である。以下、その理由を詳述する。
Nbを適切な量添加することにより、粒径0.6μm未満のNb炭化物が鋼中に1×105個/mm3以上で存在させることができる。加熱温度が1400℃にもなる溶融線近傍では、一部炭化物が溶解・粗大化するが、上記複合介在物の効果に加えてさらに粗大化抑制効果が高まる。
微細酸化物を確実に得るには、酸化物を凝固段階で生成させる手法が最適である。凝固段階で溶存酸素をもとに酸化物が晶出した場合、凝集や成長が抑制されるため、溶鋼段階で生成される酸化物よりも微細なまま鋼材中に留まることになる。このため、製鋼段階では溶鋼中の粗大酸化物が少ない、すなわち溶鋼清浄度が高く、かつ、溶存酸素が高い状態にする必要がある。
log K=log(PCO/(aC・aO))=1160/T+2.003 ・・・(1)
ここで、KはC+O=CO(g)反応の平衡定数、PCOはCO分圧、aC、aOはそれぞれ炭素、酸素の活量、Tは温度(K)である。
Claims (5)
- 質量%で、
C:0.02〜0.25%、
Si:0.0001〜0.4%、
Mn:0.5〜2.0%、
S:0.001〜0.050%、
O:0.001〜0.005%、
Insol.Al:0.0001〜0.005%、
sol.Al:0.0001〜0.0005%、
Insol.Mg:0.0001〜0.005%、
sol.Mg:0.0001〜0.0005%、
Nb:0.01〜0.05%、
Cu:0〜1.0%、
Ni:0〜1.0%、
Cr:0〜0.5%、
Mo:0〜0.5%、
V:0〜0.2%、
B:0〜0.0005%、
Ca:0〜0.005%、
REM:0〜0.005%、
Ti:0〜0.02%、
Sn:0〜0.5%、
残部:Feおよび不純物、
不純物としてのPおよびNが
P:0.03%以下、
N:0.006%以下、
である化学組成を有し、
粒径が0.6μm未満である、MgとMnとAlからなる酸化物およびMnSからなる複合介在物が鋼材中に1×106個/mm3以上存在し、かつ、
粒径が0.6μm未満であるNb炭化物が鋼材中に1×105個/mm3以上存在する、
溶接熱影響部の靱性に優れた鋼材。 - さらに、質量%で、
Cu:0.01〜1.0%、
Ni:0.01〜1.0%、
Cr:0.01〜0.5%、
Mo:0.01〜0.5%、
V:0.01〜0.2%および
B:0.0001〜0.0005%
から選択される1種以上を含有する、
請求項1の溶接熱影響部靱性に優れた鋼材。 - さらに、質量%で、
Ca:0.0005〜0.005%および
REM:0.0005〜0.005%
から選択される1種または2種を含有する、
請求項1または2に記載の溶接熱影響部靱性に優れた鋼材。 - さらに、質量%で、
Ti:0.001〜0.02%
を含有する、
請求項1から3までのいずれかに記載の溶接熱影響部靱性に優れた鋼材。 - さらに、質量%で、
Sn:0.05〜0.5%
を含有する、
請求項1から4までのいずれかに記載の溶接熱影響部靱性に優れた鋼材。
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