〔画像形成装置の全体の構成〕
図1には、一実施形態の画像形成装置1の全体の構成の例が示されている。なお、画像形成装置1は、フルカラーの電子写真方式の画像形成部および制御部などを備えているが、それらの一部の構成について図1では図示が省略されている。
図1において、画像形成装置1には、電子写真方式によりYMCKの各色のトナー像を形成するトナー像形成部11(11Y,11M,11C,11K)、トナー像形成部11で形成された各色のトナー像を転写して重ね合わせる転写ベルト12、転写ベルト12上に形成されたフルカラーのトナー像を用紙に2次転写するための2次転写ローラ13、および、用紙のトナー像を定着する定着ローラ14などが設けられている。
定着済みの用紙を排出するために、排紙前ローラ15および排紙ローラ16が設けられる。用紙を表裏反転するために、反転ローラ17、ADU搬送ローラ18〜21、および切換ガイトKG11が設けられる。切換ガイドKG11の駆動のために、例えばソレノイドが用いられる。
また、図示は省略したが、転写ベルト12を走行駆動するためにメインモータが設けられ、定着ローラ14および排紙前ローラ15を回転駆動するために定着モータが設けられる。また、排紙ローラ16、反転ローラ17、ADU搬送ローラ18〜21をそれぞれ回転駆動するために、排紙モータ、反転モータ、ADU搬送モータが設けられる。
また、用紙の搬送経路の所定の位置に、それぞれの位置における用紙の有無を検出するために、排紙センサSE11、ADU搬送センサSE12、SE13が設けられる。
また、2次転写ローラ13の上流側において、転写ベルト12上のトナー像と同期するように用紙を搬送するためのタイミングローラ22、およびタイミングローラ22を回転駆動するためのタイミングモータM5が設けられる。また、タイミングローラ22に用紙が到達したか否かを検出するために、タイミングセンサSE4が設けられる。
また、用紙を供給するために、第1段給紙部31、第2段給紙部32、および手差し給紙部33が設けられている。
第1段給紙部31には、用紙カセット311、リフトアップ機構312、ピックアップローラ313、給紙ローラ314、上限センサSU1、および給紙センサSE1が設けられる。
用紙カセット311は、用紙(用紙束)を収納する。リフトアップ機構312は、用紙カセット311に収納された用紙を、ピックアップローラ313による給紙が可能なように、つまり用紙の上面がピックアップローラ313に接するように、用紙束を押し上げる(リフトアップする)。
ピックアップローラ313は、用紙カセット311に収納された用紙の最上位置の1枚を前方(下流側)へ向かって送りだす。給紙ローラ314は、ピックアップローラ313によって送りだされた用紙を、下流側の搬送経路へ1枚ずつ所定の速度で搬送する。給紙ローラ314には、用紙を1枚ずつ送りだす給送するための重送防止ローラが含まれることがある。
上限センサSU1は、用紙カセット311に収納された用紙のリフトアップ機構312による押し上げの上限位置を検出する。つまり、上限センサSU1がオンした状態では、用紙の上面がピックアップローラ313に接し、ピックアップローラ313の回転駆動によってその用紙が前方に送りだされる。
また、ピックアップローラ313、給紙ローラ314、およびリフトアップ機構312を駆動するために、給紙モータM1が設けられる。つまり、ピックアップローラ313および給紙ローラ314とリフトアップ機構312とは、それらに共通の駆動源である給紙モータM1により、切り換えて駆動される。場合によっては、給紙モータM1の回転駆動力の伝達のオン・オフのために、クラッチが設けられる。
第2段給紙部32には、用紙カセット321、リフトアップ機構322、ピックアップローラ323、給紙ローラ324、縦搬送ローラ325、上限センサSU2、および給紙センサSE2、SE3が設けられる。
また、ピックアップローラ323、給紙ローラ324、およびリフトアップ機構322を駆動するために、給紙モータM2が設けられる。また、縦搬送ローラ325を駆動するために、縦搬送モータM3が設けられる。
第2段給紙部32の用紙カセット321、リフトアップ機構322、ピックアップローラ323、給紙ローラ324、上限センサSU2、給紙センサSE2、および給紙モータM2などの構成および動作は、第1段給紙部31のそれらと同じである。
手差し給紙部33には、手差し給紙ローラ331が設けられる。また、手差し給紙ローラ331を駆動するために、手差し給紙モータM4が設けられる。
用紙カセット311,321は本発明における「用紙収納手段」の例であり、リフトアップ機構312、322は本発明における「押し上げ手段」の例である。また、ピックアップローラ313および給紙ローラ314は、第1段給紙部31における「給紙手段」の例であり、タイミングローラ22は第1段給紙部31における「用紙搬送手段」の例である。ピックアップローラ323および給紙ローラ324は、第2段給紙部32における「給紙手段」の例であり、縦搬送ローラ325は第2段給紙部32における「用紙搬送手段」の例である。
第1段給紙部31の給紙ローラ314からタイミングローラ22に至る搬送経路が第1搬送経路HK1であり、第2段給紙部32の給紙ローラ324からタイミングローラ22に至る搬送経路が第2搬送経路HK2である。第2搬送経路HK2の一部は第1搬送経路HK1と重複している。
第1搬送経路HK1において、給紙ローラ314とタイミングローラ22との間に、これらによって搬送される用紙が撓んだ状態で搬送されることの可能な用紙撓み空間TK1が設けられる。
第2搬送経路HK2において、給紙ローラ324と縦搬送ローラ325との間に、これらによって搬送される用紙が撓んだ状態で搬送されることの可能な用紙撓み空間TK2が設けられる。
これら用紙撓み空間TK1,2は、滑らかに湾曲して形成されて互いに対向する2枚の用紙搬送ガイド板によって形成することが可能であり、また、用紙の搬送経路を切り替えるための切換ガイドの表面を含めて形成することが可能である。
第1搬送経路HK1または第2搬送経路HK2において用紙を搬送するように配置された各部が、本発明における「用紙搬送装置」の例である。
なお、画像形成装置1において、トナー像形成部11、転写ベルト12、および2次転写ローラ13などによって画像形成部100が構成され、第1段給紙部31、第2段給紙部32、手差し給紙部33、およびタイミングローラ22などによって給紙部200が構成され、定着ローラ14などによって定着部300が構成される。
〔制御部の全体の構成〕
図2には、画像形成装置1の制御部400の全体の構成の例が示されている。
図2において、制御部400には、CPU401、I/F部402、画像処理部403、画像メモリ404、レーザダイオード駆動部405、ROM406、RAM407、エンジン制御部408、および操作パネル部500などが設けられる。
CPU401は、1個または複数個設けられ、画像形成装置1の全体的な制御および処理を行う。ROM406には種々のプログラムおよびデータが記憶されており、それらは必要に応じてRAM407に読み出され、読み出されたプログラムがCPU401によって実行される。
また、CPU401は、画像形成部100、給紙部200、および定着部300などに対して指示を与え、必要な制御を行う。
操作パネル部500は、タッチパネル方式の表示パネルであって、ユーザに対してメッセージまたは指示を与えるための画面、ユーザが所望する処理の種類及び処理条件を入力するための画面などを表示する。また、ユーザは、操作パネル部500の所定の位置に触れることによって画像形成装置1に対して指示を与えることができる。
制御部400は、給紙部200を初めとする画像形成装置1の全体に対し、以下に述べる一時リフトアップ制御および強制的リフトアップ制御を含むリフトアップ制御(一時押し上げ制御)を初めとして、種々の制御を行う。
〔給紙部の駆動機構〕
図3(A)(B)には、画像形成装置1における第1段給紙部31,31Bの駆動機構の構成例が示されている。図4(A)(B)には、図3(A)(B)に示す各第1段給紙部31,31Bの構成例に対応した制御部の部分構成の例が示されている。
図3(A)に示す第1段給紙部31は、図1においても説明したように、給紙モータM1によって、ピックアップローラ313、給紙ローラ314、およびリフトアップ機構312を駆動する。ピックアップローラ313および給紙ローラ314の駆動とリフトアップ機構312の駆動とは、給紙モータM1の正転と逆転とを切り換えることによってその駆動先を選択できる。つまり、給紙モータM1が正転したときはピックアップローラ313および給紙ローラ314が回転駆動され、給紙モータM1が逆転したときはリフトアップ機構312が駆動される。
正転と逆転とのいずれにおいても、給紙モータM1の回転速度を可変制御することが可能であり、これによって各ローラの回転速度およびリフトアップの速度が制御される。
図3(B)に示す第1段給紙部31Bでは、給紙モータM1の正逆転によることなく駆動を切り換えるために、第1段給紙部31の構成に加え、給紙クラッチCL1aおよびリフトアップクラッチCL1bが設けられている。つまり、給紙クラッチCL1aがオンしたときは、給紙モータM1の回転によりピックアップローラ313および給紙ローラ314が回転駆動され、リフトアップクラッチCL1bがオンしたときは、給紙モータM1の回転によりリフトアップ機構312が駆動される。
給紙クラッチCL1aとリフトアップクラッチCL1bとは、いずれか一方のみが選択されてオンする。つまり、これらは同時にはオンすることがない。
給紙モータM1の回転速度は可変制御することが可能であり、これによって各ローラの回転速度およびリフトアップの速度が制御される。
なお、第2段給紙部32においても、図3(A)で述べたと同様に、ピックアップローラ323および給紙ローラ324の駆動とリフトアップ機構322の駆動とを、給紙モータM2の正転と逆転とを切り換えることにより選択するように構成することができる。
また、第2段給紙部32Bにおいても、図3(B)で述べたと同様に、ピックアップローラ323および給紙ローラ324の駆動とリフトアップ機構322の駆動とを、あたらに追加した給紙クラッチCL2aとリフトアップクラッチCL2bとを切り換えることにより切り換えるように構成することができる。
図4(A)において、CPU401は、給紙モータM1、給紙モータM2、縦搬送モータM3、手差し給紙モータM4、およびタイミングモータM5を含む給紙部200を制御する。給紙モータM1および給紙モータM2は、それぞれ、正転または逆転するように制御される。
図4(B)において、CPU401は、給紙モータM1、給紙クラッチCL1a、リフトアップクラッチCL1b、給紙モータM2、給紙クラッチCL2a、リフトアップクラッチCL2b、縦搬送モータM3、手差し給紙モータM4、およびタイミングモータM5を含む給紙部200Bを制御する。
〔用紙撓み空間および用紙の搬送状態〕
図5には給紙部における搬送経路の例が示され、図6には用紙撓み空間における用紙の状態の変化の例が示されている。
図5において、第1段給紙部31による第1搬送経路HK1の途中に、切換ガイドKG1が設けられる。給紙ローラ314によって送りだされた用紙は、直進した後、切換ガイドKG1の上部の斜面に沿って上方へ送られ、用紙の先端部はやがてタイミングローラ22に達し、タイミングセンサSE4によって用紙が検出される。その時点において、通常、タイミングローラ22は停止しており、タイミングセンサSE4による用紙の検出に対応して給紙ローラ314が停止する。次に、転写ベルト12上のトナー像と同期したタイミングで、タイミングローラ22および給紙ローラ314が再駆動され、用紙は2次転写ローラ13による転写位置に送られる。この間において、用紙は用紙撓み空間TK1において撓んだ状態で搬送される。これが通常の動作である。
本実施形態においては、第1段給紙部31において、タイミングローラ22と給紙ローラ314とによって用紙が撓んだ状態で搬送されているときに、一時的に給紙ローラ314の回転を停止してリフトアップ機構312を駆動し、リフトアップを行う。このような制御を、本明細書において「一時リフトアップ制御」または「一時押し上げ制御」という。
なお、リフトアップ機構312によるリフトアップ制御は、このような一時リフトアップ制御の他に、通常のリフトアップ制御(本明細書において「通常リフトアップ制御」または「通常押し上げ制御」という)を行うことも可能である。
通常リフトアップ制御では、例えば、給紙ローラ314が1枚の用紙PPを送り出し終えた後で、次の1枚の用紙PPを送り出す前に、リフトアップ機構312を駆動してリフトアップを行う。
本明細書において、「リフトアップ制御」には「一時リフトアップ制御」および「通常リフトアップ制御」が含まれる。また、本明細書において、主として第1段給紙部31におけるリフトアップ制御について説明を行うが、リフトアップ制御は、第1段給紙部31のみならず、第2段給紙部32においても第1段給紙部31と同様に行うことが可能である。その場合に、第1段給紙部31におけるタイミングローラ22に代えて縦搬送モータM3および縦搬送ローラ325を制御すればよい。
次に、一時リフトアップ制御時の用紙PPの搬送状態について説明する。
図6(A)には、用紙PPのレジストが開始されてタイミングローラ22および給紙ローラ324がいずれも回転し、これによって用紙PPが撓んだ状態で搬送されている様子が示されている。
この状態で、給紙ローラ324の回転を停止すると、図6(B)に示すように、用紙PPは、給紙ローラ324の部分において制止されるので、タイミングローラ22の回転のみによって搬送されることとなる。つまり、用紙PPは、その一方がタイミングローラ22によって引っ張られ、用紙撓み空間TK1において撓みがなくなる方向である矢印Y1方向に移動する。
給紙ローラ324の回転が停止している間において、給紙モータM1によってリフトアップ機構312を駆動し、用紙カセット311内の用紙(用紙束)のリフトアップ(一時リフトアップ)を行う。
タイミングローラ22のみによって搬送されている間は、用紙PPの撓みは徐々に少なくなり真っ直ぐな状態になっていき、用紙撓み空間TK1における限界に近づいていく。そこで、用紙PPが用紙撓み空間TK1内で張り切ってしまう前に、図6(C)に示すように給紙ローラ314の回転を再開し、タイミングローラ22と給紙ローラ314とによる搬送を再開する。
〔一時リフトアップ制御〕
以下において、制御部400における一時リフトアップ制御について説明する。
一時押し上げ制御においては、給紙ローラ314の駆動を停止したことによって用紙撓み空間TK1における用紙PPの撓みが無くなるまでに、リフトアップ機構312の駆動を停止しかつ給紙ローラ314を駆動して第1段給紙部31による用紙PPの搬送を再開するよう制御を行う。
すなわち、用紙撓み空間TK1は、図6(B)に示すように、用紙の最長経路RNと最短経路RMによって規定され、用紙PPは最長経路RNと最短経路RMとの間のみしか通過することができない。最長経路RNは、例えば、上に述べたような切換ガイドKG1または適当な用紙搬送ガイド板などによって規定される。最短経路RMは、例えば、上に述べたような適当な用紙搬送ガイド板または複数のガイド軸などによって規定される。
つまり、本実施形態の用紙撓み空間TK1においては、湾曲した搬送経路の外側と内側とで経路差が生じているので、この経路差を利用して一時リフトアップ制御が行われる。ただし、用紙撓み空間TKとして、単に用紙PPが撓むことの可能な空間であってもよい。例えば、通常は給紙ローラ314からタイミングローラ22へ直線状に用紙PPを搬送可能であるが、給紙ローラ314の搬送速度を速くすることによって用紙PPを撓ませることの可能な空間であってもよい。この場合は、経路差を直接的に利用するのではなく、用紙PPの撓みそのものを利用して一時リフトアップ制御を行うものであるといえる。
図6(B)に戻って、用紙PPの搬送中において、給紙ローラ314を停止してリフトアップを行える時間の上限値LUMは、用紙PPが最長経路RNから最短経路RMに至るまでの時間、つまり最長経路RNと最短経路RMとの差(RN−RM)を用紙PPの搬送速度V1で割った時間〔(RN−RM)/V1〕となる。
給紙ローラ314を停止して一時リフトアップを行う時間(第1の設定時間、給紙停止時間)TLは、この上限値LUMを越えないように、つまりTL<LUMとなるように設定される。第1の設定時間TLを上限値LUM以下とすることにより、用紙PPが用紙撓み空間TK1内で突っ張った状態となってタイミングローラ22が過負荷となることを防止できる。
なお、実際には、用紙PPが最短経路RMに至らないよう、例えば最短経路RMの用紙搬送ガイド板に張り付かないように、第1の設定時間TLは上限値LUMに対して余裕を持った小さ目の値に設定される。
このように、一時リフトアップ制御において、給紙ローラ314の駆動を停止したときから第1の設定時間TLを経過したときに、リフトアップ機構312の駆動を停止しかつ給紙ローラ314を駆動して第1段給紙部31による用紙PPの搬送を再開するよう制御を行う。用紙の搬送を再開した後は、その用紙PPをそのままタイミングローラ22によって送りだしてトナー像を転写するようにしてもよい。
また、次に述べた撓み形成制御を行うことにより、その用紙PPの搬送中に一時リフトアップ制御を繰り返して行ってもよい。例えば、上限センサSU1が上限位置を検出してオンになるまで、一時リフトアップ制御を繰り返してもよい。
〔撓み形成制御〕
つまり、リフトアップを終えて給紙ローラ314の回転を再開したときに、給紙ローラ314の回転速度を一時的に速くし、これによって給紙ローラ314による用紙PPの搬送速度をタイミングローラ22による搬送速度よりも一時的に速くして、用紙PPを再び撓んだ状態に戻すように制御を行うことが可能である。このような制御を、本明細書において「撓み形成制御」という。撓み形成制御を行うことにより、1枚の用紙PPを搬送中に一時リフトアップを繰り返して行うことができる。
図7(A)には、一時リフトアップ制御を行った後に給紙ローラ314の回転を再開したときの用紙PPの状態が示されている。この状態では、用紙PPは、用紙撓み空間TK1内において矢印Y1の方向に移動しており、最短経路RMに近い位置となっている。このときの給紙ローラ314の回転速度を一時的に速くすることにより、用紙PPに撓みが形成される。その結果、図7(B)に示されるように、用紙PPは用紙撓み空間TK1内を矢印Y2の方向に移動し、最長経路RNに近い位置となる。
したがって、再度、一時リフトアップ制御を行うことが可能となるので、例えば上限センサSU1が上限位置を検出してオンになるまでこの制御を繰り返すことができる。特に用紙PPの長さが長い場合には、撓み形成制御を伴う一時リフトアップ制御を何回も繰り返してリフトアップ制御の時間を増やすことができる。
なお、撓み形成制御において給紙ローラ314による搬送速度を高速にしておく時間(撓み形成時間)TT、および高速時の搬送速度VKは、用紙撓み空間TK1の状況および給紙ローラ314の通常の速度などに応じて予め設定することが可能である。
なお、撓み形成制御は、給紙ローラ314の回転を再開したときのみではなく、これ以外の適当なタイミングで行うことも可能である。つまり、例えば、用紙PPの撓みを積極的に形成したいときにも、撓み形成制御を行うことが可能である。
〔強制的リフトアップ制御〕
以下において、制御部400における強制的リフトアップ制御について説明する。ここで述べる「強制的リフトアップ制御」は一時リフトアップ制御の一種であり、一時リフトアップ制御の一形態として行うことが可能である。また、通常リフトアップ制御においても、強制的リフトアップ制御を行うことが可能である。
すなわち、リフトアップ制御は、用紙カセット311に収納された用紙をピックアップローラ313に接するように押し上げるものであるので、上限センサSU1がオンした状態であれば原則として行う必要がない。したがって、一時リフトアップ制御についても、上限センサSU1がオフのときのみ、つまり用紙の上限位置を検出していないときにのみ行えば一応十分である。
しかし、上限センサSU1のオンとオフとの間にはヒステリシスがあるので、また用紙束などに撓み代があるので、上限センサSU1がオンしている場合であっても、リフトアップ制御を行って用紙を押し上げることが可能である。
そこで、一時リフトアップ制御を、用紙カセット311に収納された用紙を第1段給紙部31が所定の枚数MSだけ給紙したときに、当該枚数に応じた所定の時間HSだけ行う。
この場合に、第1段給紙部31が複数枚給紙する毎に、必要となる押し上げ量を用紙の枚数(所定の枚数MS)および厚さから予測し、それに対応した時間(所定の時間HS)だけ一時リフトアップ制御を行う。所定の時間HSの算出に当たってはリフトアップ機構312によるリフトアップ速度を考慮する。
所定の枚数MSとしては例えば3〜10枚、所定の時間HSとしては例えば10〜50ms程度である。例えば、所定の枚数MSを3枚とし所定の時間HSを20msとした場合は、3枚の用紙PPを給紙するごとに20msの間リフトアップを行う。
このような一時リフトアップ制御は、上限センサSU1がオンであるにも係わらず強制的に行うので、ここでは「強制的リフトアップ制御」という。
強制的リフトアップ制御を行うことにより、給紙に影響を与えることなくリフトアップを行うことのできるタイミングおよび時間が増加し、用紙カセット311内の用紙を上限位置に維持し続けることができるので、用紙の搬送性がより一層確実に確保され、連続給紙がより一層円滑に行える。
なお、強制的リフトアップ制御を行う場合に、リフトアップのやり過ぎによるトラブルの発生、例えば第1段給紙部31の故障などを防止するために、通常、予測量は少なく見積もられる。例えば所定の枚数MSと紙の厚さを掛けた値(距離)に1以下の係数を掛けて予測量を算出する。したがって、強制的リフトアップ制御のみを行った場合には、用紙の上面は徐々に下降していき、やがて上限センサSU1がオンしない状態となる可能性がある。上限センサSU1がオフしたときには、上に述べた通常の一時リフトアップ制御が行われることとなる。
〔リフトアップ制御のタイミング図による説明〕
次に、図8〜図11に示すタイミング図を用いて、本実施形態におけるリフトアップ制御を説明する。
図8および図9には、通常リフトアップ制御の動作の例が示されており、図10および図11には一時リフトアップ制御の動作の例が示されている。
図8において、上限センサSU1がオンのときに、時刻t1で給紙モータM1が正転し、これによって給紙ローラ314が回転して給紙が開始される。時刻t2で用紙PPがタイミングローラ22の位置に到達し、タイミングセンサSE4がオンする。その後に給紙モータM1が停止する。
時刻t3でレジストが開始され、タイミングローラ22および給紙ローラ314が回転し、用紙PPが転写位置に送られ、用紙PPにトナー像が転写された後、定着されて排紙される。
次の用紙PPを給紙しようとしたときに、時刻t4において、上限センサSU1がオフし、給紙ウエイトが発生する。そのため、連続給紙における次の給紙を延期し、時刻t5において給紙モータM1が逆転し、リフトアップ機構312が駆動されてリフトアップが行われる。リフトアップによって、時刻t6において上限センサSU1がオンする。これにより給紙が可能となったので、時刻t7において給紙モータM1が正転し、給紙ローラ314によって次の用紙PPが給紙され、時刻t8においてレジストが開始される。
図8におけるリフトアップは、通常リフトアップ制御によるものであり、用紙PPの給紙と給紙との間に行われる。通常リフトアップ制御のみを行った場合には、リフトアップによって上限センサSU1がオンするまで、つまりリフトアップが完了するまで給紙を待つため、次の給紙の開始が遅れ、連続給紙の間隔が長くなる。
図9において、図8の場合と同様に、時刻t5にリフトアップが開始される。図8においては、上限センサSU1がオンするまでリフトアップを行ったので、次の給紙が遅くなった。しかし、図9においては、次の給紙は予め定められた時間が経過した時点で行う。そのため、上限センサSU1がオンしない場合でもリフトアップを短時間で中止し、時刻t7において次の給紙を開始する。
したがって、図9の通常リフトアップ制御による場合は、次の給紙の開始が遅れることはないが、リフトアップの時間が少ないためにリフトアップが十分に行われず、上限センサSU1がオンしない状態、つまり用紙カセット311の用紙がピックアップローラ313に接しない状態が発生し易い。そのため、用紙PPの搬送性に問題が生じ、結果として連続給紙の間隔が長くなることがある。
図10において、用紙PPの給紙と給紙との間に通常リフトアップ制御が行われ、かつ、用紙PPの給紙の途中に一時リフトアップ制御が行われる。
つまり、最初の給紙が終わった後、時刻t5で通常リフトアップ制御によるリフトアップが開始される。このリフトアップは図9におけると同様に短時間のみ行い、予め定められた時刻t7において次の給紙を開始する。
そして、時刻t8においてレジストを開始し、その後、時刻t9において、一時リフトアップ制御によるリフトアップを行う。つまり、時刻t9において、給紙モータM1を逆転させてリフトアップ機構312を駆動する。このリフトアップによって、時刻t10において上限センサSU1がオンし、用紙カセット311の用紙がピックアップローラ313に接した状態が維持される。
一時リフトアップ制御を完了した後、時刻t11において給紙モータM1を再び正転し、給紙ローラ314を回転させて給紙を継続する。この一時リフトアップ制御を行っている間は、給紙ローラ314が停止しているため、タイミングローラ22のみによって用紙PPが搬送され、用紙PPの撓みが少なくなっていく。したがって、時刻t8の後に給紙モータM1が停止されてから時刻t11において正転が開始されるまでの時間は、第1の設定時間TLであり、これは上に述べたように上限値LUM以下に設定されている。
なお、一時リフトアップ制御を行っているときに上限センサSU1がオンすれば、第1の設定時間TLが経過していなくても一時リフトアップ制御を終えて給紙を再開する。
図11において、図10の場合と同様に、時刻t9において一時リフトアップ制御によるリフトアップが開始される。しかし、第1の設定時間TL以内に上限センサSU1がオンせず、したがってリフトアップが完了しなかったが、一時リフトアップ制御を終え、時刻t11において給紙を再開してその用紙PPの給紙を完了する。
次の給紙を開始する前である時刻t12において、通常リフトアップ制御を行う。しかし、これによっても、上限センサSU1がオンしない。
そこで、時刻t13において次の給紙を行い、時刻t15において一時リフトアップ制御を行う。これによって、時刻t16において上限センサSU1がオンし、一時リフトアップ制御を終える。
このように、一時リフトアップ制御を適時行うことにより、用紙カセット311の用紙がピックアップローラ313に接した状態が維持され、用紙PPの搬送性が良好に維持される。
なお、図10および図11において、時刻t5およびt12でおよびリフトアップ制御は、上限センサSU1がオンしている場合であっても行ってもよい。この場合のリフトアップ制御は、上に述べた強制的リフトアップ制御である。
なお、上の各タイミング図において、タイミングローラ22、給紙ローラ314、およびリフトアップ機構312などの立ち上がりおよび立ち下がりを斜め線で示し、また、動作の切り換え時に停止またはオフの時間を設けて示した。これは、それらの機器の動作には応答時間が必要であるからであるが、使用する機器などによってはそれらの時間は極小であり、無視することも可能である。
上に述べた例では、図3(A)および図4(A)に示すように給紙モータM1の正転と逆転とを切り換えることによって給紙ローラ314の回転とリフトアップ機構312の駆動とを切り換える場合について説明した。図3(B)および図4(B)に示すように給紙クラッチCL1aとリフトアップクラッチCL1bとを制御して給紙ローラ314の回転とリフトアップ機構312の駆動とを切り換える場合についても同様に制御できる。
〔リフトアップ制御のフローチャートによる説明〕
図12には給紙部における一時リフトアップ制御の動作の例を示すフローチャートが、図13には一時リフトアップ制御を繰り返して行う場合の例を示すフローチャートが、それぞれ示されている。なお、図13のフローチャートは、図12におけるステップ#14に対応する動作から以降を示したものであり、例えば給紙が行われた後にレジストが開始され、かつ上限センサSU1がオフである場合に行われる動作を示す。
図12において、ピックアップローラ313および給紙ローラ314が回転して給紙が開始される(#11)。用紙PPがタイミングローラ22に到達し、その後にレジストが開始される(#12)。上限センサSU1がオンでない場合に(#13でノー)、一時リフトアップ制御のために、給紙ローラ314が停止し(#14)、リフトアップ機構312によるリフトアップが開始される(#15)。
リフトアップによって上限センサSU1がオンするかまたは第1の設定時間TLが経過したときに(#16でイエス)、リフトアップが停止され(#17)、給紙ローラ314の回転が再開される(#18)。
ステップ#13において上限センサSU1がオンのときは、ステップ#19において用紙PPの後端部が給紙ローラ314に到達したと判断されるまで、ステップ#13において上限センサSU1がオフになるタイミングが監視される。なお、ステップ#19では、例えば給紙センサSE2がオフしたときにイエスとなるように判断すればよい。
なお、ステップ#16において、第1の設定時間TLが経過したことによりイエスとなってステップ#17でリフトアップを停止した場合には、用紙は上限に達しておらず、リフトアップは未だ完了していない。したがって、その場合は、次の用紙PPの給紙の際に、再度、図12のフローチャートの動作によって一時リフトアップ制御が行われることとなる。
図13において、一時リフトアップ制御を行うために、給紙ローラ314が停止し(#21)、リフトアップ機構312によるリフトアップが開始される(#22)。
リフトアップを開始した後、上限センサSU1がオフであり(#23でノー)、用紙PPの後端部が給紙ローラ314に到達しておらず(#24でノー)、かつ第1の設定時間TLが経過していない場合に(#25でノー)、そのリフトアップを継続する。
ステップ#25で第1の設定時間TLが経過した場合には、リフトアップを停止し(#26)、撓み形成制御を行うために給紙ローラ314を高速で回転駆動する(#27)。設定された撓み形成時間TTが経過すると(#28でイエス)、再度ステップ#21以降に戻り、条件が整っている場合に同じ用紙PPについて2回目の一時リフトアップ制御を行う。条件が整っている限りは、同じ用紙PPについて一時リフトアップ制御が繰り返される。
用紙PPの後端部が給紙ローラ314に到達した場合には(#29でイエス)、給紙ローラ314を停止する(#30)。なお、ステップ#24において用紙PPの後端部が給紙ローラ314に到達した場合には給紙ローラ314の停止を継続する(#30)。
また、ステップ#23において上限センサSU1がオンになったときは、リフトアップを停止し(#31)、給紙ローラ314を通常の速度で回転させる(#32)。
〔給紙モータを共通化した給紙部の例〕
図14には、第1段給紙部31および第2段給紙部32に対して共通の給紙モータM1Cを用いた給紙部200Cの例が示されている。
図14において、給紙部200Cは、第1段給紙部31Cおよび第2段給紙部32Cを備える。第1段給紙部31Cおよび第2段給紙部32Cは、それぞれ、上に述べた第1段給紙部31および第2段給紙部32とほぼ同じ構成であるが、2つの給紙モータM1,2に代えて1つの共通の給紙モータM1Cが用いられている点が相違している。
つまり、給紙モータM1Cには、1段給紙クラッチCL1a、1段リフトアップクラッチCL1b、2段給紙クラッチCL2a、2段リフトアップクラッチCL2bの4つのクラッチが接続されている。これら4つのクラッチは、同時には1つのみがオンし、給紙ローラ314,324、リフトアップ機構312,322のいずれか1つのみが駆動される。
1段および2段のいずれも給紙が行われていないとき、つまり給紙ローラ314,324が停止しているときは、1段のリフトアップ機構312または2段のリフトアップ機構322のいずれかを駆動してリフトアップ制御(通常リフトアップ制御)を行うことが可能である。
また、1段または2段のいずれかにおいて給紙が行われているとき、つまり給紙ローラ314,324のいずれかが回転しているときに、条件が整っていれば、同じ段の給紙部に対して一時リフトアップ制御を行うことが可能である。
また、1段または2段のいずれかにおいて給紙が行われているときに、条件が整っていれば、他の段の給紙部に対してリフトアップ制御を行うことが可能である。
例えば、第1段給紙部31において給紙が行われているとき、つまり給紙ローラ314が回転しているときに、条件が整っていれば、給紙ローラ314を停止し、第2段給紙部32のリフトアップ機構322を駆動してリフトアップ制御(一時リフトアップ制御)を行うことができる。また、逆に、第2段給紙部32において給紙が行われているとき、つまり給紙ローラ324が回転しているときに、条件が整っていれば、給紙ローラ324を停止し、第1段給紙部31のリフトアップ機構312を駆動してリフトアップ制御(一時リフトアップ制御)を行うことができる。
このように他の段の給紙部に対して行う一時リフトアップ制御を、「変形一時リフトアップ制御」ということがある。変形一時リフトアップ制御においても、撓み形成制御を行うことによって、リフトアップを繰り返して行うことが可能である。
また、1段および2段のいずれも給紙が行われていないとき、または1段または2段のいずれかにおいて給紙が行われているときのいずれであっても、条件が整っていれば、強制的リフトアップ制御を行うことが可能である。
例えば、給紙ローラ314,324のいずれもが停止しているときに、1段のリフトアップ機構312または2段のリフトアップ機構322のいずれかを駆動してリフトアップ制御(強制的リフトアップ制御)を行うことが可能である。また、いずれかの給紙ローラ314,324が回転しているときに、条件が整っていれば給紙ローラ314,324を停止し、1段のリフトアップ機構312または2段のリフトアップ機構322のいずれかを駆動してリフトアップ制御(強制的リフトアップ制御)を行うことが可能である。
このように、制御部400は、給紙モータM1Cによって、給紙が行われていない第1段給紙部31Cまたは第2段給紙部32Cについてのリフトアップ機構312,322を駆動し、用紙カセット311,321に収納された用紙を押し上げるように制御を行うことができる。
このような給紙部200Cによると、単一の小型の給紙モータM1Cのみを用いることによって給紙およびリフトアップを行うことができるので、省スペース化が図られ、コスト的にも有利である。
〔本実施形態における効果〕
本実施形態の段給紙部31,31C,32,32Cおよび制御部400,400Cによると、用紙カセットから用紙を給紙して下流側の搬送ローラに到達した後も給紙ローラを回転させなければならないという機械構成上の制約があってかつ給紙トレイから複数枚を給紙する度にリフトアップする必要があるという機械構成において、給紙ローラとリフトアップ機構の駆動源を共通化した場合の種々の課題が解決される。
つまり、給紙ローラとリフトアップ機構の駆動源を共通化した場合に、給紙ローラとリフトアップ機構とを同時に動作させられないという制約があるため、従来においては給紙トレイから連続給紙中にリフトアップが行えないため、リフトアップのために給紙を一旦停止しなければならなかった。給紙中のリフトアップは複数枚を給紙する度に発生するため、その度に給紙を停止すると、生産性が大きく低下してしまうこととなっていた。
これに対し、上に述べた本実施形態によると、生産性を低下させずに給紙を行うために、給紙ローラとその下流側の搬送ローラとの間の湾曲した搬送経路に存在する用紙撓み空間TKを用い、その最長経路RNと最短経路RMとの経路差を利用することにより一時リフトアップ制御を行い、これによって課題の解決が図られる。
本実施形態の画像形成装置1においては、一時リフトアップ制御を行うことにより、用紙PPの搬送を停止することなくリフトアップを行うことができ、用紙カセット311,321内の用紙を上限位置に維持して給紙ミスを防止し、用紙PPの搬送性を確保できる。したがって、給紙間隔を延ばす必要がないので、また給紙待ちが発生し難いので、円滑な連続給紙を行うことができて生産性を低下させることがない。
しかも、1つの給紙モータM1,2で給紙ローラ314,324の駆動とリフトアップ機構312,322の駆動とを共用することができ、コスト低減に有利である。また、給紙ローラ314,324とリフトアップ機構312,322とを同時に駆動することがないので、給紙モータM1,2として小型のものを用いることができ、コスト的にも有利である。
また、上限センサSU1,2がオフしているときにのみ一時リフトアップ制御を行うようにした場合には、給紙モータM1,2の寿命への影響を低減させることができ、長期に渡って安定した動作が可能である。
また、強制的リフトアップ制御を行った場合には、用紙の搬送性が一層確保され、連続給紙がより一層確実に円滑に行える。
上に述べた実施形態において、給紙モータM1,2、用紙カセット311,321、リフトアップ機構312,322、給紙ローラ314,324、タイミングローラ22、縦搬送ローラ325、第1段給紙部31,31C、第2段給紙部32,32C、給紙部200,200C、制御部400,400C、または画像形成装置1の各部または全体の構成、構造、形式、形状、個数、配置、制御内容、制御タイミング、制御時間などは、本発明の主旨に沿って適宜変更することができる。