紙文書などの原稿を、スキャナを介して読み込ませて電子データ化し、文字データあるいは画像データとして利用する所謂OCR(Optical Character Recognition)技術や、紙文書などの原稿を複写する所謂コピー技術などにおいては、複数枚セットされた原稿束から自動で順次1枚毎に原稿を抽出・分離して搬送乃至給送する分離機構を備えた原稿送り装置が利用される場合が多々ある。このような原稿送り装置としては、例えば特許文献1に記載されるような原稿送り装置であって、原稿束から原稿を呼び出し、この原稿のうちで最上面の読み込まれるべき原稿一枚だけに分離すると共に、次原稿の有無を検知して、さらなる原稿の呼び出しと分離とを次原稿が無くなるまで繰返す原稿送り装置が従来から知られている。
この種の原稿送り装置においては、例えばOCR技術のニーズの増大や生産性向上の観点から処理能力高速化の要求が近年特に顕著になってきている。このような処理能力の高速化の要求を満たすために、原稿読み取り速度の高速化や、読み取り時における原稿間の間隔短縮化を進める技術が開発されてきているが、これに伴い、読み取られるべき原稿を原稿束から確実に1枚毎に分離し、給送する動作もまた高速化する必要が高まっている。
しかしながら、原稿の分離動作では、給送されるべき原稿1枚目だけを送り、2枚目以降の原稿は給送を阻止されるか又は場合によっては逆送させられるため、1枚目の原稿(以下、前原稿と便宜上称する場合がある)と2枚目乃至それ以降の原稿(以下、次原稿と便宜上称する場合がある)との間では、互いに相反する動作が要求されることになる結果、前原稿の給送動作が完了した後の次原稿の位置がばらついて不安定となるという問題があった。分離動作を高速化するためには、前原稿の後端部が所定のセンサ位置を通過した後できるだけ早く次原稿を給送するのが望ましいのにもかかわらず、不安定な分離動作のために、すなわち前原稿を搬送した後の次原稿の不安定なばらつき位置のために、2枚目以降の次原稿の位置を予測して、給送タイミングを効率よく制御することが困難であるのは、分離動作の高速化を阻害する大きな要因の一つになっている。
この事象を、従来の原稿送り装置の分離機構部分の一例を拡大して示す概略断面図である図3、及び、従来の原稿送り装置の分離機構部において、前原稿を給送した後の次原稿の様々な先端位置を示す概略断面図である図4を用いてさらに詳しく説明する。
図3(a)は、セットされた原稿束1が給送される際の、原稿送り装置の分離機構部分を拡大して示す概略断面図であり、ここでは、まず、原稿束1が積載手段である原稿テーブル上に置かれたことが、原稿セットセンサS5により検知される。この原稿検知により、ピックアップローラ7が下降するなどして原稿束1の最上面と接触し、図3中時計回りに回転することにより、給送ベルト9と分離ローラ10とで構成される分離ニップ部の方向に原稿を搬送する。この搬送動作においては、例えば、ベルトプーリに所定の張力を持って掛け渡される給送ベルト9もまた、ベルトプーリを回転させることによりピックアップローラ7と同時に時計回りに回転させられ、この給送ベルト9の回転動作により、図3(b)に示すように原稿を分離ニップ部まで搬送することができるように構成されている。このとき、給送ベルト9は、上記したように分離ニップ部で対向して設けられた分離ローラ10と所定の圧力で圧接している。一方で、分離ローラ10は所定の大きさの設定トルクを有する図示しないトルクリミッタを介して摩擦駆動されており、給送ベルト9と直接係合している状態、または、原稿1枚を介して係合している状態では、給送ベルト9の回転に連れ回されて図中反時計方向に回転させられるが、原稿が2枚以上で分離ニップ部に進入した場合には、連れ回り力がトルクリミッタのトルクよりも低くなるように設定されており、分離ローラ10は、本来の駆動方向である時計方向に回転して、余分な原稿、すなわち次原稿を押し戻す働きをし、重送が防止されるように構成されている。
1枚だけに分離された原稿(前原稿P)が図3(b)の状態からさらに搬送されると、図3(c)に示されるように、前原稿Pの原稿先端位置が原稿検知センサS1の位置まで達し、これをトリガとしてピックアップローラ7が上昇して分離動作を終了させる。このピックアップローラ7の上昇タイミングは、前原稿Pが原稿検知センサS1の位置に達したのと同時である必要はなく、若干のタイムラグを設けることもできる。
この一連の分離動作においてピックアップローラ7が上昇させられても、給送ベルト9は未だ回転を続けている。したがって、原稿束1から分離された前原稿Pは、そのまま給送ベルト9によりさらに搬送され、図3(d)に示されるように、対向当接しながらも、未だ回転動作を開始していない一対のプルアウトローラ12で形成されるプルアウトニップ部に前原稿Pが達することになる。このとき、給送ベルト9は、前原稿Pの先端が原稿突き当て量検知センサ11を通過した後で所定の突き当て量に応じた時間だけさらに駆動させられ、その結果、前原稿Pは、所定の撓み量を持ってプルアウトローラ12に押し当てられる。この原稿の撓みに起因する、原稿自身が元に戻ろうとする作用により、前原稿Pの先端位置がプルアウトローラ対12によって形成されるニップ部手前で整合させられることになる。
その後、図3(e)に示すように、プルアウトローラ対12が駆動を開始することにより、図3には図示されていない原稿読み取り部へと前原稿Pはさらに搬送される。この従来技術の構成では、前原稿Pの後端部が原稿束1から正常に抜け出たとしても、その後端の通過を最も早く検知できるのは、前原稿Pの後端が原稿検知センサS1を通過した後であり、その結果、次原稿の給送を開始できるようになるのは、先の前原稿Pの後端が原稿検知センサS1を通過してからでなければならない。なお、この図3(e)に示されるようなプルアウトローラ対12が動いている状態では、給送ベルト9は駆動していないが、例えばワンウエイクラッチなどを用いることで、前原稿Pの搬送動作に伴って連れ回ることができるように構成されている。
上記したように、前原稿Pの後端が原稿テーブル上にセットされた原稿束1から正常に抜け出ても、あるいは、分離ニップ部を通過しても、従来のこの構成では、前原稿Pの後端がこれら原稿束1や分離ニップ部を抜けたことを即座に検知できないため、次原稿P’の給送を開始するために必要な信号を入手できず、その結果、次原稿P’の給送を開始できない。次原稿P’の給送を開始することができるのは、前原稿Pの後端が原稿検知センサS1を通過して初めて可能となる。
これに加えて、前原稿Pの後端が原稿検知センサS1を抜けて、次原稿P’の搬送動作を実施しようとするときには、次原稿P’の先端位置は前原稿Pを搬送した際にいくらか引きずられることがあり、一定ではなく不安定な位置を取る。例えば、図4(a)のように、次原稿P’の先端がほとんどそのまま初期の原稿セット位置に止まっている場合もあれば、図4(b)のように、次原稿P’の先端が給送ベルト9の手前まで進んでいる場合、図4(c)のように、次原稿P’の先端が給送ベルト9と分離ローラ10とで構成される分離ニップ部まで達している場合、又は、図4(d)のように、分離ニップ部にかなり入り混んだ乃至分離ニップ部から突出した場合も、それぞれ起こりうる。
これは、互いの逆方向への移動に対する干渉力として作用する摩擦力が前原稿Pと次原稿P’との間で働き、この結果として、次原稿P’は、前原稿Pが給送される際の摩擦力の影響を受けることが原因であると考えられる。また、原稿束1から前原稿Pを分離する際に分離ニップ部まで次原稿P’が到達してしまった場合には、分離ローラ10による戻し方向への作用も同時に受けることも考えられ、次原稿P’の移動がどこで収束するか、すなわち前原稿Pの搬送動作に伴う次原稿P’の先端位置挙動を予測し、制御することはかなり困難である。
これに加えて、原稿の紙種はユーザーにより様々なものが使用されるために、使用されうる原稿によっても摩擦係数が変動することが考えられ、さらに分離ローラ10もまた、原稿の紙粉の影響によって摩擦係数を変動させられる。したがって、これら紙種の相違及び/又は原稿紙粉による摩擦係数の変動によっても、次原稿P’に加えられる摩擦力や逆送力に変動が生じることが考えられ、この観点からも、次原稿の位置を予測し、制御することは非常に困難であることが解っている。
ここで、前原稿Pの後端の通過を出来るだけ早く検知しようとするために、単に原稿検知センサS1の位置を原稿の搬送方向上流側に移動すると、既述したように次原稿P’の先端位置はばらつくことがあり、その結果、次原稿P’が重送気味に送られてしまうことにより、上流側に移動させられた原稿検知センサS1まで次原稿P’の先端が達してしまうと、前原稿Pとの境目を検知することができず、異常滞留による所謂搬送ジャムを引き起こしてしまうことになる。
したがって、次原稿P’の給送開始のタイミングを最適化して、生産性を向上させようとした際に、様々な位置に先端を置く次原稿P’の位置を確実に認識し、次の分離動作で的確に分離しえないとすると、画像形成装置の制御としては所謂搬送ジャムとして扱わざるをえない。したがって、従来の原稿送り装置の構成では、安全側を考慮して原稿の間隔は図4(d)に示されるような前原稿Pと次原稿P’との間隔が最も狭くなる場合を想定して制御しなければならなかった。すなわち、前原稿Pの後端が確実に原稿検知センサS1を通過した後でなければ、その先端部が分離ニップ部まで達しているかもしれない次原稿P’の給送を開始する制御を行うことができなかった。しかしながら、現実には、図4(a)のような状態である場合もあり、そのような場合には、前原稿Pの後端が原稿検知センサS1を通過する前に次原稿P’の給送を開始する制御を行うことも可能であり、上述したような従来の安全側を想定した制御では実際には不必要な前原稿Pと次原稿P’との間の原稿間隔を制御上取ることになるため、生産性に関してボトルネックになってしまう可能性がある。
以上のように、従来の原稿送り装置では、原稿検知センサS1の検知信号だけで次原稿P’の給送タイミングを図るというその構成上の観点からも、さらには、次原稿P’の不安定な先端位置制御の観点からも、次原稿P’の給送を開始しようとするタイミングは、前原稿Pの後端が原稿検知センサS1を通過した後でなければならず、このことは、次原稿P’の給送を開始することができるかもしれないのに、その給送を開始する制御を行うことができないという生産性に関してのボトルネックになってしまう可能性があった。
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
まず最初に、本願発明の原稿送り装置の一例を概略的に示した断面図である図1、及び、その制御ブロック図である図2を用いて、原稿送り装置の基本的な構成、動作、及び、作用等を説明する。なお、この原稿送り装置は、例えば複写機に搭載されている。
図1に示される原稿送り装置は、大きく別けて、読み取られるべき原稿をセットするための原稿セット部A、セットされた原稿束から原稿を1枚毎に分離して給送乃至搬送するための分離給送部B、給送されてきた原稿を一時突き当てて先端整合した後、原稿を引出して搬送するためのレジスト部C、搬送されてきた原稿をターンさせるターン部D、コンタクトガラス等を介して、原稿の表面画像(第一画像)を読み取らせるための従来から知られた読み取り手段が設けられている第一読み取り部E、表面画像読取後の原稿の裏面画像(第二画像)を読み取るための、やはり従来から公知の読み取り手段が設けられた第二読み取り部F、読み取り後の原稿を機外に排出するための排紙部G、及び、排出された原稿を積載保持するスタック部Hで概略構成される。これら各領域においては、原稿を搬送するための駆動部101〜105及び113〜115に加え、一連の動作を制御するコントローラ部100などが図1には図示されていないが存在し、コントローラ部100を用いてこれら駆動部などを適切に制御することによって、原稿を給送乃至搬送することができるように構成されている。
ここで、読み取られるべき原稿束1は、積載手段である原稿テーブル2であって、可動テーブル部3が備えられている原稿テーブル2上に、例えば原稿表面を上向きの状態でセットされる。その際、セットされた原稿束1がその幅方向を図示しないサイドガイドによって搬送されるべき方向と直行する方向に位置決めされるように構成されていると好適である。この原稿のセット状態は、セットフィラー4や原稿セット認識手段である原稿セットセンサS5により検知され、インターフェイス107(I/F107)により本体制御部111にコントローラ100を介して送信される。さらに、原稿テーブル2に設けられた原稿長さ検知センサ30又は31によって原稿の搬送方向長さの概略長さを判定することができるが、これら検知センサ30、31の配置には、少なくとも同一原稿サイズの縦か横かを判断可能に配置する必要がある。なお、この検知センサ30、31には、反射型センサを用いてもよいし、あるいは、原稿が1枚であっても検知可能なアクチェータータイプのセンサを用いることも可能である。
原稿テーブル2が備える可動テーブル部3には、底板上昇モータ105(図1には図示せず)が接続される。この底板上昇モータ105により、可動テーブル部3は、図1で示されるa,b方向に上下動可能な構成となっており、原稿束1が原稿テーブル2にセットされたことが原稿セットセンサS5などにより検知されると、底板上昇モータ105を駆動させて原稿束1の最上面が原稿呼び出し手段であるピックアップローラ7と接触するように、可動テーブル部3が上昇させられる。
原稿束1の最上面に接触するピックアップローラ7もまた、ピックアップ昇降モータ101により図1で示されるc,d方向にカム機構を用いて上下動可能であるが、可動テーブル部3が上昇して、ピックアップローラ7が原稿束1の上面に押圧されるとc方向に上昇する。なお、この上昇動作に関しては、テーブル上昇センサ8により上限を検知可能な構成となっている。
本発明の一例として例えば複写機本体の操作部108(図1には示されていない)をユーザーが操作することにより、複写機の動作を開始する指令がインターフェイス106(I/F106)を介して本体制御部111に伝達されると、今度は、本体制御部111からインターフェイス107を介してコントローラ部100に原稿給送信号が送信され、ピックアップローラ7がピックアップ搬送モータ115の駆動により回転駆動させられ、原稿テーブル2上の原稿がピックアップされる。なお、このピックアップ動作では、1枚の原稿のみがピックアップされるのが理想的であるが、実際には数枚の原稿がピックアップされることもある。また、ピックアップローラ7の回転方向は、次の分離給送部Bへ原稿を搬送できるような方向であり、図1では時計回りに回転駆動させられる。
分離給送部Bでは、ベルトプーリに巻きかけられた無端状の給送ベルト9と分離ローラ10とが互いに所定圧力で圧接することで原稿分離ニップ部を形成し、原稿分離手段を構成している。この給送ベルト9は、給送モータ102の駆動により原稿給送方向(本実施形態では図1中時計回り)に回転させられる。一方で、分離ローラ10もまた、給送モータ102の駆動により回転駆動させられるが、原稿給送方向とは逆方向に回転駆動され、最上位の原稿とその下の原稿とを分離できるように構成されている。この動作をより詳しく説明すると、分離ローラ10は、図示されていないトルクリミッタを介して給送モータ102と動力接続されている。そして、分離ローラ10が給送ベルト9と直接接触しているか、又は、原稿1枚だけを介して接触している場合には、給送ベルト9の回転トルクの作用を受けてこのトルクリミッタが作動し、図1中では設定回転方向とは逆方向(反時計回り)に連れ回りするようになっている。しかしながら、一方で、原稿が複数枚原稿分離ニップ部に進入したときには、給送ベルト9が分離ローラ10を連れ回ろうとするトルクよりもトルクリミッタの設定トルクが低く設定されていることにより、分離ローラ10は、本来の回転方向である時計回りに回転し、余分な原稿を押し戻す作用を発揮することができるようになっている。したがって、この機構及び動作によって、原稿を原稿束から確実に1枚毎に分離し、給送する動作が確保されている。
次いで、原稿分離ニップ部で給送ベルト9と分離ローラ10との作用により、1枚に分離された原稿は、給送ベルト9の回転によりさらに送られ、突き当てセンサ11によって先端が検知されるが、さらに搬送されて未だ駆動を開始していない一対のプルアウトローラ12によって形成されるプルアウトニップ部に突き当たる。その際、給送ベルト9は、前記した突き当てセンサ11の検知から所定の時間乃至距離だけ、すなわち所定の突き当て量に応じた時間乃至距離だけ駆動させられ、その後停止させられる。その結果、原稿はプルアウトローラ12に所定量の撓みを持って突き当たることになる。この原稿の撓みによる、原稿自身が元に戻ろうとする作用により、原稿の先端位置がプルアウトローラ対12によって形成されるプルアウトニップ部手前で整合させられることになり、所謂スキュー補正が行われる。なお、この作用の際には、ピックアップ昇降モータ101を駆動させることにより、ピックアップローラ7は原稿束1の上面から退避させられており、原稿は給送ベルト9の搬送力のみで送られているのは従来技術と同様である。
ここで、プルアウトローラ12は、前記スキュー補正機能を有するローラであると共に、分離後にスキュー補正された原稿を、原稿読み取り部Eまで搬送するために原稿ターン部Dに配置された中間ローラ14まで搬送するための搬送手段として用いられるローラでもある。このプルアウトローラ12が原稿を搬送するための駆動を、給送モータ102の、給送ベルト9及び分離ローラ10を駆動するのとは逆回転駆動により行うこともできる。すなわち、プルアウトローラ12と、給送ベルト9及び分離ローラ10とを同一のモータ102の正逆回転により切換駆動することも可能である。この場合には、駆動系を減らすことにより、省スペース化やコスト低減を図ることができるが、しかしながら、この構成では、前原稿Pの後端がプルアウトローラ12を抜けない限り給送ベルト9及びピックアップローラ7を駆動することができず生産性に関して不利益である。また、プルアウトローラ12を駆動する際のモータの立ち上げ及び立ち下げ時間を短縮することが可能になるという観点からも、独立した駆動源であるプルアウトモータ113を用いる方が生産性向上に関して有利である。
プルアウトローラ12の原稿搬送方向下流側には、原稿幅検知センサ13が配置される。この原稿幅検知センサ13は、図1の紙面に対して垂直乃至奥行方向に複数個並べられており、プルアウトローラ12により搬送された原稿の搬送方向に直行する幅方向のサイズを検知することができるように構成される。また、原稿の搬送方向の長さは、原稿の先端及び後端を突き当てセンサ11で読み取ることによりモータパルスから検知することができる。
プルアウトローラ12及び中間ローラ14の回転駆動によりレジスト部Cからターン部Dに原稿が搬送される際には、原稿を第一読み取り部Eへ送込むための処理時間短縮を図るために、レジスト部Cからターン部Dにおける搬送速度を第一読み取り部Eにおける搬送速度に比べて高速に設定することも可能である。このようにレジスト部Cからターン部Dにおける搬送速度を高速に設定した場合には、原稿先端が読み取り部入口センサ15により検知されると、一対の第一読み取り入口ローラ16によって構成される第一読み取り入口ニップ部に原稿先端が進入する前に、原稿の搬送速度を第一読み取り部Eにおける搬送速度と同速にするために減速を開始する。これと同時に、原稿先端が読み取り部入口センサ15により検知されると、第一読み取りモータ114を駆動して、このモータ114に動力接続されている第一読み取り入口ローラ16を駆動させ、加えて、読み取り出口モータ103を駆動して、このモータ103に動力接続されている第一読み取り出口ローラ23及び読み取り部出口ローラ27をそれぞれ駆動させる。
このようにして第一読み取り入口ローラ対16を経由して搬送された原稿の先端通過をレジストセンサ17が検知すると、所定の搬送距離をかけて原稿の搬送速度が減速され、さらに原稿読み取り位置20の手前で一時停止させられ、これがレジスト停止信号として本体制御部111にインターフェイス107を介して送信される。
続いて、本体制御部111より読み取り開始信号が発せられると、レジスト停止していた原稿は、読み取り位置20に原稿先端が到達するまでの間に所定の搬送速度に到達するように増速されて搬送される。第一読み取り入口ローラ16を駆動する第一読み取りモータ114のパルスカウントにより検知された原稿の先端が読み取り位置20に到達するタイミングで、本体制御部111に対して原稿の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号が、第一読み取り部Eを原稿後端が抜けるまで送信される。
原稿の片面だけを読み取る場合には、第一読み取り部Eを抜けた原稿は、そのまま第二読み取り部Fを通過して排紙部Gに搬送される。この搬送動作において、排出センサ24が搬送されてきた原稿先端を検知すると、排出モータ104を駆動して排紙ローラ28を図1中では反時計回りに回転させ、排出原稿を積載保持するスタック部H、すなわち排紙トレイ29に原稿が排出される。この原稿排出動作の際には、原稿後端が一対の排紙ローラ28で構成される排出ニップから抜ける直前に、排紙ローラ28を駆動している排紙モータ104を減速させることにより、排紙トレイ29に排出される原稿が飛び出さない様に制御される。
原稿の両面を読み取る場合には、上記した片面読み取りの動作に加えて、第二読み取り部Fによる原稿読み取り動作が加わる。この第二読み取り部Fで原稿を読み取る際には、排出センサ24にて原稿先端の通過を検知してから読み取り出口モータ103のパルスカウントにより第二読み取り機器25に原稿先端が到達するタイミングで、原稿の副走査方向の有効画像領域を示すゲート信号が送信され、このゲート信号は、当該読み取り機器25を原稿後端が抜けるまで送信される。この第二読み取り機器25の対向ローラである第二読み取りローラ26は、第二読み取り機器25によって原稿が読み取られている間に、原稿が浮き上がるのを抑えるために設けられている一方で、所謂シェーディングデータを取得するための基準白部を兼ねるものでもある。
これまで、原稿送り装置の基本的な構成、動作、及び、作用等について説明してきたが、次いで、本発明にしたがう原稿送り装置の第一実施形態を、その原稿送り装置の分離機構部分を拡大して示す図5を用いて説明する。図5(a)から見て取れるように、搬送されてきた原稿の存在を検知することのできる第一原稿検出手段の原稿検知センサS1が、従来の原稿送り装置の分離機構部分を示す図3の(a)に示されるのと同様に、給送ベルト9と分離ローラ10とで構成される分離機構の分離ニップ部と原稿搬送手段である一対のプルアウトローラ12との間に配置されている。一方で、本実施形態では、当該第一原稿検知センサS1と前記した分離ニップ部との間に、すなわち、原稿の搬送方向で見て、第一原稿検知センサS1よりも上流側で、且つ、原稿分離ニップ部よりも下流側に、原稿の存在を検知することができる第二原稿検出手段である第二原稿検知センサS2がさらに配置されている。なお、この第一原稿検知センサS1や第二原稿検知センサS2は、原稿の存在を検知することのできる通常公知のセンサを使用することが可能であり、その一例としては、反射型や透過型の光学センサなどを用いることが可能である。
この第一実施形態における原稿送り動作を説明すると、この第一実施形態もまた図3に示される従来の原稿送り装置と同様に、積載手段である原稿テーブル2上にセットされた原稿束1は、原稿セットセンサS5によりチェックされ、搬送されるべき原稿が原稿テーブル2上に積載されていることを検知される。この状態から、図示しない本体操作部をユーザーが操作することで、原稿読み込みを開始する信号が本体制御部111に送信されると、コントローラ100を介して原稿呼び出し手段であるピックアップローラ7により1枚目の原稿(前原稿P)の給送が開始され(図5(a)参照)、その後、給送ベルト9と分離ローラ10とで構成される分離手段の内、給送ベルト9にまで前原稿Pが達し(図5(b)参照)、さらに給送ベルト9の作用も受けて分離ニップ部にまで前原稿Pは給送され(図5(c)参照)、当該分離ニップ部で1枚毎の前原稿Pとして分離された後で、さらに給送ベルト9により搬送されて第一原稿検知センサS1を通過し(図5(d)参照)、原稿読み取り部へ原稿を搬送するための搬送手段である1対のプルアウトローラ12に突き当たる(図5(e)参照)。ここで、前原稿Pに撓みを形成しスキュー補正することまでは従来の原稿送り装置と同様であり、以下に説明する原稿送り装置の生産性の向上とは直接的には関係しない。
一方で、従来技術と同様に前原稿Pのスキュー補正後、前原稿Pがさらにターン部Dを介して第一原稿読み取り部Eに搬送されると、上述したように、次原稿P’は前原稿Pとの間の摩擦力や分離ローラ10の押し戻し動作などの作用により、様々な原稿先端位置を取りうる。これを図解したのが図6であり、図6は、本発明にしたがう原稿送り装置の分離機構において、前原稿が給送された後の次原稿の様々な先端位置を示す概略断面図である。図6においては、第一実施形態において追加された第二原稿検知センサS2との関係で、次原稿P’の原稿先端位置を示している。
図5及び図6からも明らかなように、原稿送り装置で原稿の給送が開始されると、原稿束1から最上面の前原稿Pが給送されていくことにより、第一原稿検知センサS1に加えて第二原稿検知センサS2も前原稿Pの存在を検知することになる。この状態で、前原稿Pがプルアウトローラ12の回転動作により後段のターン部Dに搬送され始めた後の次原稿P’は、第二原稿検知センサS2との関係で、例えば図6(a)に示されるように、次原稿P’が未だ原稿セット位置から動かずに留まっている場合、図6(b)に示されるように、次原稿P’が原稿搬送方向に若干引込まれているが、第二原稿検知センサS2までには到達していない場合、図6(c)に示されるように、次原稿P’が分離ニップ部にまで引込まれ、第二原稿検知センサS2が次原稿P’を検知する程度にまで原稿搬送方向に引込まれている場合が考えられる。
図6(a)及び図6(b)に示されるような場合には、前原稿Pが第二原稿検知センサS2を抜け出ると、当該第二原稿検知センサS2が原稿非検知の状態になり、この非検知信号をトリガとして、直ちに次原稿P’の給送を開始することができる。なお、このように動作させるためには、プルアウトローラ12が動作している最中であっても、給送ベルト9の回転動作を開始しなければならないため、原稿読み取り部にまで原稿を搬送するための搬送手段であるプルアウトローラ12と、分離手段を構成する給送ベルト9との駆動は少なくとも互いに独立していなければならない。ここで言う独立とは同一駆動源を用いながらも、カムやギア等を用い、これらカムやギア等の構成要素を適宜制御することにより、プルアウトローラ12と給送ベルト9とを独立して制御できる場合も含むが、制御系が複雑になること、コスト的な問題、及び、プルアウトローラ12及び給送ベルト9個々の速度変化など詳細な制御を行う必要が生じうることなどを考慮すれば、駆動源自体を独立に設けることが望ましい。したがって、本実施形態では、プルアウトローラ12は、プルアウトモータ113で、給送ベルト9は、給送モータ102で駆動させている(図2参照)。なお、プルアウトローラ12及び給送ベルト9の駆動を独立にすることに加え、これらからピックアップローラ7の駆動を独立にすることも可能であり、このようにこれら3種の駆動源を互いに独立にすることで、生産性向上のために詳細なモータ制御を行うことが可能になるため好適である。
一方で、図6(c)のような場合は、前原稿Pが第二原稿検知センサS2を抜け出たとしても、次原稿P’により第二原稿検知センサS2は、未だ次原稿P’により原稿の存在を検知しているので、次原稿P’の給送を開始するためのトリガとしての信号をコントロール部100は入手することができない。このような場合は、図6(d)に示すような、前原稿Pが第一原稿検出手段である第一原稿検知センサS1を抜け出た後で、第一原稿検知センサS1が非検知になった非検知信号をトリガとして、次原稿P’の給送を開始する。
この図5に示されるような本願発明の第一実施形態の制御フローチャートを、図15を用いて具体的に説明する。図15に示されるように、原稿送り装置がユーザーの指令により読み取り動作を開始する場合(START)には、まず、原稿束1が原稿テーブル2上にセットされているか否かが原稿セットセンサS5によりチェックされ検知される(STEP1)。次いで、原稿セットセンサS5が原稿を検知している場合には、1枚目の原稿である前原稿Pの処理が開始され、上述のように、ピックアップローラ7、給送ベルト9、プルアウトローラ12などを用いて原稿読み取り部の方へ1枚毎に分離されて搬送される(STEP2)。この前原稿Pの搬送に対応して、原稿検知センサS1及びS2がまずは原稿を検知している状態に至る(STEP3)。その後、再度、原稿チェックセンサS5により次原稿P’が原稿テーブル2上に有るか否かがチェックされる(STEP4)。次原稿P’が無ければ(読み取り原稿が1枚だけであった場合)、そのまま原稿読み取り動作は完了する(END)が、次原稿P’がある場合(読み取り原稿が複数枚存在する場合)は、前原稿Pにより検知状態にされた第二原稿検出手段である原稿検知センサS2の状態がチェックされ、未だ原稿の存在を検知しているか否かが判断される(STEP5)。この時、前原稿Pが既に原稿ニップ部を通過し、且つ、次原稿P’が原稿検知センサS2にまで到達していない場合、すなわち、図6(a)及び(b)に示されるような場合は、そのまま次原稿P’の処理が開始される(STEP6)。しかしながら、原稿検知センサS2が未だ原稿の存在を検知したままであるときは、次原稿P’が原稿検知センサS2にまで到達している場合、すなわち、図6(c)のような場合も考えられるため、この場合は、第一原稿検出手段である原稿検知センサS1が未だ原稿検知を続けているか否かがチェックされる(STEP7)。この原稿検知センサS1が原稿非検知状態になっている場合は、前原稿Pは、図6(d)に示されるように、既に後段の原稿読み取り部の方へ搬送され、原稿検知センサS1を通過しているものと考えられるので、次原稿P’の処理を開始することが可能となる。一方で、原稿検知センサS1及びS2の両方が原稿を検知したままである場合は、未だ前原稿Pが分離部を通過していないのであるから、再度、STEP5である原稿検知センサS2のチェックに戻って前原稿Pの搬送の監視、言い換えれば、前原稿Pの後端が第一原稿検知センサS1及び第二原稿検知センサS2を通過したか否かの監視を続けることになる。この動作を、STEP4で原稿セットセンサS5が原稿セット状態を認識しなくなるまで続けることになる。まとめると、本発明の実施形態1では、搬送されるべき次原稿P’の存在を原稿セット認識手段である原稿セットセンサS5が検知して原稿有りと判断している場合であって、且つ、前原稿Pを搬送したことにより第一原稿検出手段である第一原稿検知センサS1と第二原稿検出手段である第二原稿検知センサS2とが原稿の存在を検知している状態から、これら検知手段のいずれかが非検知状態に移行した場合に、次原稿P’の給送処理を開始する。
このように、前原稿Pの通過状況及び次原稿P’の先端位置を原稿検知センサS1及びS2を用いて検知し、この原稿検知センサS1及びS2の検知信号及び非検知信号を用いて、次原稿P’の先端位置に応じた原稿送り制御を実施することにより、次原稿P’の給送タイミングを最適化して、原稿束からの分離動作における生産性のボトルネックを解消し、ひいては生産性の向上を図ることができるようになる。すなわち、図5に示したような本願発明の第一実施形態によれば、前原稿Pの後端と次原稿P’の先端との間の原稿間隔は、最大でも、第二原稿検知センサS2と原稿セット位置との間の距離、あるいは、原稿検知センサS1〜S2の距離のいずれかとなる一方で、図3に示すような従来の原稿送り装置では、前原稿Pと次原稿P’との間の原稿間隔が最大で原稿検知センサS1と原稿セット位置との間の間隔となり、これらを比較すれば、明らかに本願発明の方が前原稿P及び次原稿P’の間の原稿間隔を短くして給送制御を行うことが可能となっていることが解る。なお、次原稿P’の給送開始タイミングを出来るだけ早くするために、第二原稿検出手段である第二原稿検知センサS2の配置位置を、原稿分離ニップ部を抜け出た直後、すなわち原稿搬送方向で見た原稿分離ニップ部最下流部に配置するのが最も好適である。
次いで、本願発明の第二実施形態を図7及び図8を用いて説明する。図7は、本発明にしたがう原稿送り装置の第二実施形態を示す図であって、その原稿送り装置の分離機構部を拡大して示す概略断面図であり、図8は、本発明にしたがう原稿送り装置の第二実施形態の分離機構部において、前原稿が給送された後の次原稿の様々な先端位置を示す概略断面図である。
図7に示される本願発明の第二実施形態は、図5に示される本願発明の第一実施形態と比較して、第二原稿検出手段である第二原稿検知センサS2の配置位置が異なるだけである。具体的には、図7に示される第二実施形態の第二原稿検知センサS2は、給送ベルト9と分離ローラ10とで形成する原稿分離ニップ部と原稿セット認識手段である原稿セットセンサS5との間、すなわち、原稿の搬送方向で見て、原稿分離ニップ部よりも上流側で、且つ、原稿セット認識手段よりも下流側に配置されている。
第二実施形態における原稿送り動作もまた、上述した第一実施形態における原稿送り動作と同一である。すなわち、図示しない本体操作部をユーザーが操作することで、原稿読み込みを開始する信号が本体制御部111に送信されると、積載手段である原稿テーブル2上にセットされた原稿束1は、原稿セットセンサS5によりチェックされ、搬送されるべき原稿が原稿テーブル2上に積載されていることを検知される。この状態から、コントローラ100を介して原稿呼び出し手段であるピックアップローラ7により1枚目の原稿(前原稿P)の給送が開始され(図7(a)参照)、その後、給送ベルト9と分離ローラ10とで構成される分離手段の内、給送ベルト9にまで前原稿Pが達し(図7(b)参照)、さらに給送ベルト9の作用も受けて分離ニップ部にまで前原稿Pは給送され(図7(c)参照)、当該分離ニップ部で1枚毎の前原稿Pとして分離された後で、さらに給送ベルト9により搬送されて第一原稿検知センサS1を通過し(図7(d)参照)、原稿読み取り部へ原稿を搬送するための搬送手段である1対のプルアウトローラ12に突き当たる(図7(e)参照)。ここで、前原稿Pに撓みを形成しスキュー補正することまでは従来の原稿送り装置や上述した第一実施形態と同様であり、原稿送り装置の生産性の向上とは直接的には関係しない。また、第二実施形態における次原稿P’の給送タイミングを制御する制御フローチャートもまた、図15に示された第一実施形態と同一であるため、先の記述を参照して具体的な説明は省略する。
ここで、本願発明の第二実施形態では、上述した第一実施形態と比較して第二原稿検知センサS2が原稿搬送方向で見た上流側に配置されている。したがって、図8(a)に示されるように、前原稿Pが搬送されたことによる次原稿P’の先端位置が第二原稿検知センサS2まで引込まれていなければ、次原稿P’の搬送を第一実施形態の場合よりも早く開始することが可能となる点で第一実施形態と比較して生産性に関して有利である。また、図8(b)に示されているように、第二原稿検知センサS2に次原稿P’の先端が到達している場合には、第一実施形態と同様に、第一原稿検知センサS1を前原稿の後端が通過してから次原稿P’の搬送は開始されることになる(図8(c)参照)。なお、この第二実施形態のように第二原稿検知センサS2を配置した場合は、次原稿P’の給送を開始するためにピックアップローラ7が駆動する際に、未だ前原稿Pが給送ベルト9により搬送されていることも考えられるため、ピックアップローラ7及び給送ベルト9の駆動は少なくとも互いに独立でなければならない。ここで言う独立とは同一駆動源を用いながらも、カムやギア等を用い、これらカムやギア等の構成要素を適宜制御することにより、ピックアップローラ7と給送ベルト9とを独立して制御できる場合も含むが、制御系が複雑になること、コスト的な問題、及び、ピックアップローラ7及び給送ベルト9個々の速度変化など詳細な制御を行う必要が生じうることなどを考慮すれば、駆動源自体を独立に設けることが望ましい。したがって、本実施形態では、ピックアップローラ7は、ピックアップ搬送モータ115で、給送ベルト9は、給送モータ102で駆動させている(図2参照)。なお、ピックアップローラ7及び給送ベルト9の駆動を独立にすることに加え、これらからプルアウトローラ12の駆動を独立にすることも可能であり、このようにこれら3種の駆動源を互いに独立にすることで、生産性向上のための詳細なモータ制御を行うことが可能になるため好適であることも第一実施形態と同様である。
図9及び図10は、本願発明の第三実施形態を説明するための図であり、第三実施形態では、従来から用いられている第一原稿検出手段である第一原稿検知センサS1に加え、さらに2個の原稿検知センサ、すなわち第二原稿検出手段である第二原稿検知センサS2及び第三原稿検知センサS3を配置していることに特徴がある。なお、本実施形態では、第二原稿検知センサS2及び第三原稿検知センサS3は原稿分離ニップ部を挟んで配置されている。この第三実施形態の場合も第一及び第二実施形態と同様に、前原稿Pが原稿送り装置の給送信号を受けて、ピックアップローラ7によりピックアップされ(図9(a))、その後、給送ベルト9と分離ローラ10とで構成される分離手段の内、給送ベルト9にまで前原稿Pが達し(図9(b)参照)、さらに給送ベルト9の作用も受けて分離ニップ部にまで前原稿Pは給送され(図9(c)参照)、当該分離ニップ部で1枚毎の前原稿Pとして分離された後で、さらに給送ベルト9により搬送されて第一原稿検知センサS1を通過し(図9(d)参照)、原稿読み取り部の方へ原稿を搬送するための搬送手段である1対のプルアウトローラ12に突き当たる(図9(e)参照)。
ここで、第三実施形態では、読み取られるべき原稿の搬送方向(副走査方向)に2個配置された第二原稿検出手段の第二及び第三原稿検知センサS2及びS3を用いて、これら原稿検知センサS2及びS3から発せされる原稿検知及び非検知信号を使用して次原稿P’の給送タイミングを制御している。すなわち、様々な先端位置を取る次原稿P’が例えば、図10(a)に示されるように、ほとんど原稿セット位置を動いておらず、第二原稿検知センサS2にまで達していない場合には、図10(b)に示すように、前原稿Pが第二原稿検知センサS2を抜け出た段階で次原稿P’の搬送を開始することができる。次いで、次原稿P’の先端が図10(c)に示すように、第二原稿検知センサS2にはかかっているが、第三原稿検知センサS3にはかかっていない場合には、図10(d)に示すように前原稿Pが第三原稿検知センサS3を抜け出た段階で次原稿P’の搬送を開始することができる。さらに、図10(e)に示すように、次原稿P’の先端が第三原稿検知センサS3まで到達している場合には、図10(f)に示すように、前原稿Pが第一原稿検知センサS1に抜け出た段階で次原稿P’の搬送を開始することができる。なお、第三実施形態においては、様々な条件で次原稿P’の搬送を制御しなければならないので、プルアウトローラ12、給送ベルト9及びピックアップローラ7の駆動源全てを互いに対して独立にしておくことが好ましい。
このように、第二原稿検出手段である原稿検知センサを原稿の搬送方向に複数個(第三実施形態として説明した例では2個)設けることにより、前原稿Pと次原稿P’との間の原稿間隔をさらに詳細に制御することが可能になるため、生産性の向上を図る上で、第二原稿検出手段を複数個の原稿検知センサで構成することは好適である。
この第二原稿検出手段である原稿検知センサを原稿の搬送方向に複数個設ける場合における次原稿P’の給送タイミングの制御フローチャートを図16に示す。図16は、図15の場合と似ているが、複数個配置される第二原稿検出手段の原稿検知又は非検知信号を原稿搬送方向で見て上流側から順次チェックすることが相違している。すなわち、前原稿Pが搬送されることにより、第一原稿検出手段S1及び第二原稿検出手段S2、S3・・・が原稿の存在を検知してONになった後で(STEP3)、給送されるべき次原稿が存在していれば(STEP4)、第二原稿検出手段S2、S3・・・を原稿搬送方向の順番にチェックしていき(STEP5)、これら原稿検知手段S2、S3・・・のいずれかが原稿非検知になった状態を検知できれば、次原稿P’の搬送を開始するように制御される(STEP6)。一方で、第二検知手段S2、S3・・・全てが原稿を検知している状態の場合は、図15で示したフローチャートの場合と同様に、第一原稿検出手段である原稿検知センサS1が未だ原稿検知を続けているか否かがチェックされる(STEP7)。この原稿検知センサS1が原稿非検知状態になっている場合は、前原稿Pは、既に後段の原稿読み取り部の方へ搬送され、第一原稿検知センサS1を通過しているものと考えられるので、次原稿P’の給送処理を開始することが可能となる。しかしながら、第一原稿検出手段S1及び第二原稿検出手段S2、S3・・・の全てが原稿を検知したままである場合は、未だ前原稿Pがプルアウトローラ12の作用を受けて原稿読み取り部の方に搬送されていないのであるから、再度、STEP5である第二原稿手段S2、S3・・・のチェックに戻って前原稿Pの搬送の監視、言い換えれば、前原稿Pの後端が第一原稿検出手段S1及び第二原稿検出手段S2、S3・・・を通過したか否かの監視を続けることになる。この動作を、STEP4で原稿セットセンサS5が原稿セット状態を認識しなくなるまで続けることになる。
なお、第二原稿検出手段を複数個の原稿検知センサで構成する場合において、例えば図10(c)に示すように次原稿P’の先端は第二原稿検出手段である原稿検知センサS2及びS3の間にあるが、その一方で、第三原稿検知センサS3が図10(c)や(d)に示す場合とは相違して原稿分離ニップ部よりも原稿搬送方向上流側に配置されているときには、前原稿Pが当該第三原稿検知センサS3を抜けた段階で次原稿P’の搬送を開始する搬送制御を実施すると、プルアウトローラ12の駆動により後段の原稿読み取り部の方へ前原稿Pが搬送を開始しているとしても、未だ原稿分離ニップ部を通過していない前原稿Pの後端に次原稿P’が衝突してしまう場合が考えられる。したがって、第三原稿検知センサS3が原稿分離ニップ部の原稿搬送方向上流側に配置される場合では、この読み取られるべき原稿P及びP’らの衝突を回避するために、前原稿Pがプルアウトローラ12により引き抜かれていく搬送速度と、次原稿P’のピックアップローラ7による搬送速度とを同一に合せるなどの衝突回避策を講じた追加的な制御が必要となるため、第二原稿検出手段を構成する原稿検知センサS3は、原稿分離ニップ部よりも原稿搬送方向で見て下流側に配置されているのが好ましい。さらに、次原稿P’の給送開始タイミングを出来るだけ早くするために、当該原稿検知センサS3の配置位置を、原稿分離ニップ部を抜け出た直後、すなわち原稿搬送方向で見た原稿分離ニップ部最下流部に配置するのが最も好適である。
ところで、ここまで第一実施形態から第三実施形態までの態様を説明してきたが、例えば、読み取られるべき原稿にはパンチ穴などの原稿中断部が開けられている場合があり、この原稿中断部を第一及び第二原稿検知センサS1、S2、S3・・・が検知して、原稿通過信号としての原稿非検知信号を発してしまうことがあり、これは次原稿P’の誤搬送を誘発してしまう可能性となりうる。また、生産性を高めるためには出来るだけ早く次原稿P’の給送を開始したいのではあるが、適切な原稿送り制御を達成するために、意図的に最低限の原稿間隔を設けたいと考える場合もある。そのような場合には、第一及び第二原稿検知センサS1、S2、S3・・・から送信されてくる原稿検知乃至非検知信号をダイレクトに参照して次原稿P’の搬送開始制御を実行するのではなく、継続的に当該原稿検知センサの原稿検知又は非検知信号を監視し、次原稿P’の搬送開始を所定時間保留することで対応することが可能である。
このような制御を実施する際には、例えば図17に示すように、原稿検知センサS1、S2、S3・・・のセンサON信号が切れて原稿非検知であることを認識することを開始信号として(STEP A)、この非検知信号パルスのカウントを開始し、当該パルスカウントが所定値以上の間継続するか否かを監視し続け(STEP B)、当該パルスカウントが所定値以上に維持された場合は、原稿検知センサの論理値を更新して原稿検知センサがOFFであることを認識させ、制御上の原稿非検知信号を発する。一方で、当該パルスカウントが所定値維持できない場合は、原稿検知センサの論理値を更新せず、その結果、制御上は原稿検知センサがONであると認識させることになる。
これを、第一実施形態及び第二実施形態の制御フローチャートを示した図15に当てはめると、例えば図15のSTEP5で、第二原稿検知センサS2がチェックされ、第二原稿検知センサS2がOFFである、すなわち当該原稿検知センサS2が原稿非検知と初めて判断した場合(図15では、STEP5でNOの側に進もうとした場合)、これをトリガーとして、図17のSTEP Aが開始される。さらに、図17のSTEP Bで、原稿検知センサS1から送られてくる非検知信号のパルスカウントが所定値以上と判断されると、論理値が更新され、初めて図15ではSTEP5がNoであると判断され、STEP6の次原稿処理開始に進むことになる。また、図17のSTEP Bで第二原稿検知センサS2の非検知信号であるパルスカウントが所定値以下と判断され、論理値が更新されない場合は、図15においてはSTEP5はYesであると判断されるので、図15ではSTEP7の第一原稿検知センサS1のチェックを開始することになる。このSTEP7においても、第一原稿検知センサS1で図17に示す論理値が更新されるか否かの判断が同様に行われて、当該原稿検知センサS1の原稿非検知信号が所定値以上に維持されて論理値が更新された場合は、図15のSTEP7で原稿検知センサS1がNoと判断したとされ、STEP6の次原稿処理開始にフローは移動するが、原稿検知センサS1の原稿非検知信号が所定値以下であり、論理値が更新されない場合は、図15のSTEP7で原稿検知センサS1はYesと判断したものとされ、図15では、再びSTEP5に戻ることになる。
このように制御することで、例えばパンチ穴のような原稿中断部が存在していたために、原稿検知センサが原稿非検知信号を発したとしても、原稿中断部が搬送されて再度原稿検知センサが原稿の存在を検知すれば論理値が更新されないため、原稿検知センサの誤検知を回避することができる。また、所定のパルスカウント経過後に論理値が更新されて始めて、原稿検知センサが原稿非検知であると判断するため、前原稿Pの後端が原稿検知センサを通過してから次原稿P’の搬送を開始するのに所望のタイムラグを設けることが可能となり、意図的な原稿間隔を設定することが可能となる。なお、このパルスカウントの所定値を決定するに際しては、例えば、10mmや15mmといったパンチ穴や、所望の原稿間隔を得られるように、対応するモータの線速と所望の間隔乃至長さを考慮して、計算により及び/又は実機による実験を繰返すことにより決定される。
次に、本願発明の第四実施形態を説明する。第三実施形態では、原稿検知センサの数を増やすことで前原稿Pと次原稿P’との間の原稿間隔を詳細に制御することを可能にしているが、第四実施形態では複数個原稿検知センサを配置する代わりに、連続的に原稿の存在を検知することのできるリニア原稿検出手段S4を図11のように配置することで原稿間隔を詳細に制御することを可能にしている。このリニア原稿検出手段であるリニアセンサS4は、例えば原稿セット認識手段である原稿セットセンサS5から搬送手段であるプルアウトローラ12までの間で少なくとも部分的にあるいは全体的に配置され、例えば、原稿有りの場合をHi信号として、原稿無しの場合をLo信号として出力することが出来るセンサである。また、このリニアセンサとしてはやはり通常公知の、例えば反射型や透過型の光学センサを採用することができる。
このリニアセンサが配置された場合の原稿間隔検知の例を図12〜14を用いて説明する。図12(a)に示すように、前原稿Pがプルアウトローラ12により既に後段の原稿読み取り部の方へ搬送を開始されている一方で、次原稿P’が前原稿Pの搬送動作の際に原稿セット位置から若干搬送方向に移動している場合は、この原稿間隔をリニアセンサS4は、図12(b)に示す紙間として認識する。このリニアセンサS4の原稿間隔の認識は、例えば、図13(a)のように、前原稿Pが搬送されたが次原稿P’は原稿セット位置を動いていない場合は、図13(b)に示す紙間のようになり、図14(a)のように、前原稿Pが大分搬送されてプルアウトローラを抜け出そうとしている一方で、次原稿P’が原稿分離ニップ部に挟まれている場合には、図14(b)に示される紙間のようになる。
このように、リニアセンサS4を用いれば、前原稿Pと次原稿P’との原稿間隔を直接的に認識することが可能となる結果、第三実施形態で複数のセンサを設けた場合よりも、より詳細に前原稿Pと次原稿P’との原稿間隔を検知することが出来るようになり、原稿分離時以降における次原稿P’の給送タイミングを最適化することが出来るようになる。なお、第四実施形態においては、次原稿P’の給送を開始したことで、前原稿Pの後端と原稿同士が接触してしまうことを回避するために、前原稿Pがプルアウトローラ12により搬送を開始した後で、少なくとも前原稿Pの後端と次原稿P’の先端との間に原稿間隔があることをリニアセンサS4が検知している場合に、次原稿P’の給送を開始するように制御することも可能であり、また、前原稿Pと次原稿P’とが衝突しないような適切な原稿送り制御を達成するために、前原稿Pがプルアウトローラ12により搬送を開始した後であって、所定の原稿間隔が開いている場合に次原稿P’の搬送を開始する制御を行うことも可能である。この場合、この所定の間隔長さを、原稿セットセンサS5と原稿分離ニップとの間の原稿間隔長さとすることも出来る。なお、第四実施形態においては、第三実施形態と同様に、様々な条件で次原稿P’の搬送を制御しなければならないので、プルアウトローラ12、給送ベルト9及びピックアップローラ7の駆動源全てを互い対して独立にしておくことが好ましい。
さらに、先に記述した第一実施形態から第四実施形態において、図18〜図20に示すように、第一原稿検出手段が原稿の搬送方向とは直交する方向に複数個設けられているか、又は、第二原稿検出手段あるいはリニア原稿検知手段のどちらか又は前記第一原稿検出手段と前記リニア検知手段との組み合わせが読み込まれるべき原稿の搬送方向とは直交する方向に複数個配置されていてもよい。ここで示される例では、図18では、原稿検知センサS1と原稿検知センサS1’とを分離ベルト9を挟んで配置しており、、図19では、リニア原稿検知手段であるリニアセンサS4を複数配置しており、図20では、リニアセンサS4と原稿検知センサS1’とを組み合わせて配置している。このように配置することで、搬送されてきた原稿のスキュー状態乃至スキュー量(図18ではX)を判断することが可能になり、最終的にはスキュー補正のために駆動される給送ベルト9の駆動時間を調節できるようになるため生産性に関して好適である。このスキュー状態をどの原稿検知センサで判断するか又はどのように組み合わせるかは原則的に特定する必要はないが、プルアウトローラ12の直前に配置される第一原稿検知センサS1でスキュー量を検知することにより、スキュー補正に必要な給送ベルト9の駆動をどの程度にする必要があるかを出来る限り直前で且つ正確に判断することが可能になるため、第一原稿検知センサS1を読み込まれるべき原稿の搬送方向とは直交する方向に複数個配置するのが好適である。
これまで本願発明の原稿送り装置について説明してきたが、最後に、本願発明の原稿送り装置が搭載される画像形成装置の一例である複写機を、その概略断面図である図21を用いて説明する。
図21に示されるように、複写機は、感光体41及び周辺作像機器等を備えた画像形成部40と、この画像形成部40に供給される記録紙などの記録媒体を積層して収納する記録媒体収納部50と、画像形成部40の上方に配置され、原稿読み取り部を構成するスキャナ部60と、さらに、上述してきた自動原稿送り装置70とを備えて成る。
この画像形成部40では、像担持体である感光体41の周変に、感光体41を所定の極性に一様に帯電させる帯電器42と、帯電させられた感光体41の表面にスキャナ部60により読み込まれた画像に対応する静電潜像を書き込むための書込みユニット43の露光部と、当該静電潜像をトナーなどにより現像して可視像化する現像部44と、感光体41上に現像部44によって現像された画像を、搬送されてきた記録媒体に転写する転写部45と、記録媒体への転写後の感光体41の表面をクリーニングするクリーニング部46とが配置されている。
この図示された複写機は、以下のように動作する。すなわち、上述した本願発明の原稿読み取り装置にセットされた原稿は、上述の通り順次1枚ずつ搬送されて原稿読み取り部のスキャナ部60における光学系によって読み取られ、電気信号に変換される。また、複写機下部に設置された記録媒体収納部50からは、記録媒体がレジストローラ47にまで搬送され、駆動を開始していないレジストローラ47に記録媒体が撓むまで搬送されることで、所謂スキュー補正がなされる。画像形成部40では、先に述べた構成要素が駆動し、まずは感光体41が図中時計回りに回転する。この感光体41は、帯電器42により一様に帯電させられ、その後、スキャナ部60によって読み取られた画像の電気信号に対応した書込みユニット43からの露光によって、感光体41上の電荷が部分的に消失させられ静電潜像が形成される。次いで、現像部44でこの静電潜像の電荷に応じたトナーが転移し、可視像化される。そして、この感光体41上に可視像化された画像と所定のタイミングを計って、レジストローラ47まで搬送されてきていた記録媒体が転写部45に搬送され、可視像化されたトナー像が記録媒体に転写される。その後、記録媒体上に転写されたトナー像は、定着部48を当該記録媒体が通過することにより、熱と圧力の作用で定着され、永久画像のコピーとして機外に排出される。