JP2015128000A - 固体酸化物型燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】停止・起動を繰り返しても、電解質と燃料極の活性温度に差に起因した燃料電池セルの損傷発生を防止することができる固体酸化物型燃料電池を提供する。
【解決手段】複数の燃料電池セル84と、複数の燃料電池セル84を電気的に接続する電流回路と、この電流回路の電圧を測定する電圧センサ152と、電圧センサ152による測定電圧に基づいて燃料電池セル84の異常を判定する制御部110とを備えた固体酸化物型燃料電池1であって、燃料極の触媒活性が失活状態であるが、電解質が活性状態であり、酸素イオンを空気極から燃料極へ透過させることが可能な非正常電流発生可能温度帯域Tcを備え、停止工程中に、燃料電池セル84の温度が温度帯域Tcにあるときには、測定電圧に基づいた制御部110による異常判定が物理的にできないように、電流回路の電流を制限する電流制限機構152bを更に備えた。
【選択図】図7

Description

本発明は、固体酸化物型燃料電池に関し、特に、空気極,電解質及び燃料極を有する複数の燃料電池セルを備えた固体酸化物型燃料電池に関する。
固体酸化物型燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:以下「SOFC」とも言う)は、電解質として酸化物イオン導電性固体電解質を用い、その両側に電極を取り付け、一方の側に燃料ガスを供給し、他方の側に酸化剤(空気、酸素等)を供給して、比較的高温で動作する燃料電池である。
SOFCを例えば家庭用に供する場合、一般的に、燃料供給源にはマイコンメータが設けられているので、所定期間毎にSOFCを停止させる必要がある。即ち、マイコンメータは、約1ヶ月の間に、燃料ガスの供給が完全に停止された状態が連続して1時間程度以上存在しない場合には、ガス漏れが発生していると判断し、燃料ガスの供給を遮断させるように構成されている。このため、SOFCを、約1ヶ月に一度、1時間程度以上停止させる必要がある。従って、SOFCは、比較的高い頻度で停止及びその後の再起動が行われることになる。
また。特開2009−110806号公報(特許文献1)には、燃料電池システムが記載されている。この燃料電池システムにおいては、起動時に、燃料電池への反応ガスの供給が開始されると、燃料電池の開回路電圧(OCV)を測定し、開回路電圧が所定の閾値以上になったか否かに基づいて、燃料電池の発電異常の有無を判定するようになっている。
特開2009−110806号公報
上述のように、比較的高頻度で停止及びその後の再起動が行われることに関して、本発明者は、SOFCにおいて停止・起動が多くの回数繰り返されると、燃料電池セルに損傷が発生するという技術的課題を見出した。具体的には、停止・起動が繰り返されると、燃料電池セルの電解質に微小なクラックが発生し、燃料電池セルの寿命が短くなる。電解質に微小なクラックが発生すると、このクラックを通して燃料が漏れてしまい、燃料電池としての発電性能をもはや維持できなくなる。
そして、本発明者は、燃料電池セルの損傷の発生原因を追究すべく研究を重ねた結果、以下のような発生メカニズムを突き止めた。
先ず、SOFCで停止工程を実行すると、燃料電池セルは高温の運転状態から徐々に自然放熱等により冷却される。冷却時間は、SOFCの断熱性能にもよるが、一般に、1時間乃至数時間にも及ぶ。
停止工程中に電気負荷はSOFCの出力端子から切り離されるが、各燃料電池セルには温度に応じて起電力が生じる。SOFCの出力端子には開回路電圧を測定する電圧センサが接続されているため、燃料電池セル及び電圧センサによって常時、閉回路が形成されている。したがって、燃料電池セルには、起電力に起因した通常の発電反応によって、この閉回路を通じて停止工程中も通常供給電流と比べて極めて微弱ながらも電流が流れ得る。
電解質は、活性状態で酸素イオンを空気極から燃料極へ向けて透過させることが可能となる。電解質の活性状態は温度特性を有しており、この温度特性は下限温度値を有する。即ち、電解質は、下限温度以上で活性状態となる。また、燃料極は、活性状態で燃料(水素)と電解質からの酸素イオンとを反応させ、水を生成すると共に電子を放出する。このような反応を生じる燃料極の触媒活性も温度特性を有しており、この温度特性も下限温度値を有する。即ち、燃料極は、下限温度以上で活性状態となり、下限温度未満では失活状態となる。燃料極は、失活状態では酸素イオンが供給されても燃料と反応させるように作用することができない。
一般に、電解質の活性下限温度と燃料極の活性下限温度との間には温度差がある。したがって、電解質の活性下限温度よりも燃料極の活性下限温度の方が高い場合、停止工程中に、電解質は活性状態であるが、燃料極は失活状態になる温度帯域が存在することになる。空気極が活性状態にある場合、この温度帯域では、電解質から燃料極へ酸素イオンが提供されるが、燃料極では、提供された酸素イオンを燃料と反応させることができない。その代り、燃料極が、酸素イオンと電気化学的に酸化反応可能な物質(例えばニッケル)を含んでいると、この物質が酸素イオンと反応して酸化物(例えば酸化ニッケル)が生成されると共に、電子が放出されるので、微弱なリーク電流が流れる。このリーク電流は微弱ではあるが、上述のように冷却時間が数時間にも及ぶため、燃料電池セルが上記温度帯域を通過する時間も長時間になり、累積電流量(即ち、酸化物の生成量)は大きくなる。
そして、停止工程後に再起動され運転状態になると、停止工程中に燃料極に生成された酸化物が還元作用を受ける。このように、燃料電池の停止・起動及びその後の運転が行われると、電解質と燃料極の活性温度の差に起因して、燃料極に電気化学的酸化・還元反応が生じて、燃料極の微構造及び体積が変化する。そして、停止・起動が繰り返し行われる結果、燃料極の微構造及び体積の変化により燃料極が膨張すると、電解質に引張り応力を生じさせ、最終的には電解質に微小クラックが発生する。
このように、SOFCは、停止工程において、電解質と燃料極の活性温度の差に起因して、燃料極が電気化学的酸化反応を受ける。そして、このとき発生したリーク電流が開回路電圧の測定回路を通じて流れる。また、起動後において、燃料極に生成された酸化物が電気化学的還元反応を受ける。このような停止・起動の繰り返しにより、燃料極が電解質に引張り応力を生じさせ、電解質に微小なクラックを生じさせる。このような微小クラックによる燃料電池セルの損傷発生メカニズムを本発明者は突き止めたのである。
従って、本発明は、停止・起動を繰り返しても、電解質と燃料極の活性温度に差に起因した燃料電池セルの損傷発生を防止することができる固体酸化物型燃料電池を提供することを目的としている。
上述した課題を解決するために、本発明は、空気極,燃料極,及び空気極と燃料極の間に配置された電解質を有する複数の燃料電池セルと、複数の燃料電池セルを電気的に接続する電流回路と、電流回路に流れる電流に基づいて電流回路の電圧を測定する電圧測定回路と、電圧測定回路による測定電圧に基づいて燃料電池セルの異常を判定する制御手段と、を備えた固体酸化物型燃料電池であって、燃料極の触媒活性が失活状態であるが、電解質が活性状態であり、酸素イオンを空気極から燃料極へ透過させることが可能な非正常電流発生可能温度帯域を備え、少なくとも停止工程中に、燃料電池セルの温度が非正常電流発生可能温度帯域にあるときには、測定電圧に基づいた制御手段による異常判定が物理的にできないように、電流回路の電流を制限する電流制限機構を更に備えたことを特徴としている。
燃料電池セルの電解質の活性温度と燃料極の活性温度との間には、通常、ギャップがある。そして、電解質の活性温度の方が燃料極の活性温度よりも低いと、電解質が活性状態であるにもかかわらず、燃料極が失活状態である温度帯域が存在する。この温度帯域においては、電解質から酸素イオンが透過されてきても、燃料極では酸素イオンを通常の発電反応により燃料と反応させて消費することができない。しかしながら、酸素イオンは、燃料極が含有する酸化可能物質(例えば、ニッケル)と電気化学的な酸化反応を生じることにより、燃料極で消費され得る。酸素イオンが酸化可能物質と電気化学的に酸化反応した場合には電子が放出される。したがって、酸化可能物質の電気化学的酸化反応に起因して電流が生じ得る。
このような場合において、開回路電圧を測定可能な電圧測定回路を備えた固体酸化物型燃料電池では、燃料電池セルと電圧測定回路により閉回路が形成されるので、酸素イオンと燃料極の酸化可能物質との電気化学的酸化反応により放出された電子によって、上記閉回路に非正常で微弱なリーク電流が流れる。このリーク電流により、燃料極では酸化可能物質の酸化物が生成される。一方、正常な運転温度帯域では、生成された酸化物が還元作用を受ける。これにより、長期的な使用により停止・起動及びその後の運転が繰り返されると、燃料極の酸化可能物質が変性し、燃料極の微構造及び体積に変化を生じさせることにより、電解質に微小なクラックを生じさせるという新たな技術的課題を本発明者は見出した。特に停止工程では、燃料電池セルの温度が長時間にわたって徐々に降下するため、非正常なリーク電流を発生可能な温度帯域を通過する時間も長くなり、リーク電流の発生による燃料電池セルの劣化が進行して燃料電池セルの寿命を短くしてしまう。
そこで、本発明では、少なくとも停止工程中に燃料電池セルの温度が非正常電流発生可能温度帯域にあるときには、電圧測定回路による測定電圧に基づいた異常判定が物理的にできない程度にまで、電圧測定回路と複数の燃料電池セルからなる閉回路に流れるリーク電流を電流制限機構によって制限、即ち禁止又は低減するように構成している。リーク電流を制限することにより、燃料極において酸化可能物質が酸素イオンと結びつく酸化反応の発生が制限される。このように構成された本発明では、電圧測定回路を備えた固体酸化物型燃料電池において、長期的に燃料電池セルが破損してしまうという新たな技術的課題を、非正常電流発生可能温度帯域におけるリーク電流を制限するという簡単な構成により解決することができる。
本発明において、好ましくは、固体酸化物型燃料電池は、燃料電池セル内に一端から供給された燃料が他端から流出され、流出したオフガスを燃焼させることにより燃料電池セルが配置された発電室内を加熱するセルバーナー方式であり、起動工程においても、非正常電流発生可能温度帯域では、電流制限機構が電流回路の電流を制限するように構成されている。
起動工程において、セルバーナー方式の固体酸化物型燃料電池では、燃料電池セルの温度が非正常電流発生可能温度帯域を通過するのに要する時間は、停止工程よりは短いものの、ある程度の長い時間を要する。このため、起動工程が繰り返されて、上記リーク電流の累積量が大きくなると、燃料電池セルに損傷が発生し得る。しかしながら、本発明では、起動工程においても、非正常電流発生可能温度帯域では電流制限機構が電流回路の電流を制限する構成とすることにより、燃料電池セルの破損の原因であるリーク電流の発生を回避又は抑制することができる。
本発明において、好ましくは、電流制限機構は、電流回路に設けられた抵抗を備え、この抵抗は、非正常電流発生可能温度帯域において電流回路に生じる電流では、制御手段による異常判定が所定の精度以上で実行できないように電流の大きさを制限する電気抵抗値を有する。
電流制限機構は、種々の方式が考え得るが、本発明では、電流回路を流れる非正常電流の大きさを可能な限り小さくするような電気抵抗値を有する抵抗を電流回路中に設けることにより、燃料電池セルの破損につながるリーク電流量を低減している。本発明の方式は、簡単且つ低コストで実現可能であると共に、燃料電池セルにショック電流が流れることも回避できるので、燃料電池セルを保護する点において有利である。
本発明において、好ましくは、起動工程中において、燃料電池セルの温度が非正常電流発生可能温度帯域以上且つ発電温度以下であるときに電流回路に生じる電流では、制御手段による異常判定が所定の精度以上で実行できるように、抵抗の電気抵抗値が設定されている。
電流回路中に所定の電気抵抗値の抵抗を設けると、起動工程において、燃料電池セルの温度が非正常電流発生温度帯域を通過するときにも制御手段による異常判定が事実上実行できなくなり、異常判定の実行開始が遅れる。しかしながら、本発明では、起動工程中において、燃料電池セルの温度が非正常電流発生可能温度帯域以上になったときには、制御手段による異常判定が実行可能となるように抵抗の電気抵抗値を設定しているので、発電工程へ移行する前の起動工程のうちに異常判定の実行が可能となり、発電工程への移行後の異常発生を回避することができる。
本発明において、好ましくは、電流制限機構は、電気回路を開閉するリレーであり、制御手段は、停止工程において、少なくとも燃料電池セルへの燃料の供給を停止するシャットダウン停止を実行するように構成され、シャットダウン停止の実行時にリレーを開放するように構成されている。
複数配置された燃料電池セルが配置位置等によって温度ばらつきがあり、特定の燃料電池セルの温度が他の燃料電池セルの温度よりも早期に非正常電流発生可能温度帯域に到達するような状況が考え得る。しかしながら、そのような状況であったとしても、本発明では、停止工程において、シャットダウン停止後の全期間で電流回路を開放する構成であるので、すべての燃料電池セルに対して非正常なリーク電流による悪影響が生じることがなく、すべての燃料電池セルを確実に保護することができる。
本発明の固体酸化物型燃料電池によれば、停止・起動を繰り返しても、電解質と燃料極の活性温度に差に起因した燃料電池セルの損傷発生を防止することができる。
本発明の一実施形態による燃料電池装置を示す全体構成図である。 本発明の一実施形態による燃料電池装置の燃料電池モジュールを示す正面断面図である。 図2のIII-III線に沿った断面図である。 本発明の一実施形態による燃料電池装置の燃料電池セルユニットを示す部分断面図(図4(a))、及び部分横断面図(図4(b))である。 本発明の一実施形態による燃料電池装置の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。 本発明の一実施形態による燃料電池装置を示すブロック図である。 本発明の一実施形態による燃料電池装置の電圧センサの説明図である。 本発明の一実施形態による燃料電池装置の起動工程における燃料等の各供給量、及び各部の温度の一例を示すタイムチャートである。 本発明の一実施形態による燃料電池装置において、停止工程が実行された場合の停止挙動の一例を模式的に時系列で表したタイムチャートである。 本発明の一実施形態による燃料電池の停止工程の説明図である。 本発明の一実施形態による燃料電池の空気冷却の説明図である。 本発明の一実施形態による燃料電池において、非正常電流発生可能温度帯域で起こり得る燃料電池セルの反応の説明図である。 本発明の一実施形態による燃料電池の燃料電池セルの燃料極の断面の拡大写真図(図13(a))、及び、比較例に係る電解質層にクラックを生じた燃料電池セルの燃料極の断面の拡大写真(図13(b))である。 本発明の他の実施形態による燃料電池装置の電圧センサの説明図である。
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)を示す全体構成図である。この図1に示すように、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材7を介して金属製のケース8が内蔵されている。この密閉空間であるケース8の下方部分である発電室10には、燃料と酸化剤ガス(空気)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。この燃料電池セル集合体12は、10個の燃料電池セルスタック14(図5参照)を備え、この燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16(図4参照)から構成されている。このように、燃料電池セル集合体12は、160本の燃料電池セルユニット16を有し、これらの燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
燃料電池モジュール2のケース8の上述した発電室10の上方には、燃焼部である燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料と残余の酸化剤(空気)とが燃焼し、排気ガスを生成するようになっている。さらに、ケース8は断熱材7により覆われており、燃料電池モジュール2内部の熱が、外気へ発散するのを抑制している。
また、この燃焼室18の上方には、燃料を改質する改質器20が配置され、前記残余ガスの燃焼熱によって改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、残余ガスの燃焼ガスにより発電用の空気を加熱し、発電用の空気を予熱する熱交換器である空気用熱交換器22が配置されている。
次に、補機ユニット4は、燃料電池モジュール2からの排気中に含まれる水分を結露させた水を貯水してフィルタにより純水とする純水タンク26と、この貯水タンクから供給される水の流量を調整する水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料を遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)と、電源喪失時において、燃料流量調整ユニット38から流出する燃料ガスを遮断するバルブ39を備えている。さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される酸化剤ガスである空気を遮断する電磁弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、改質器20に供給される改質用空気を加熱する第1ヒータ46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒータ48とを備えている。これらの第1ヒータ46と第2ヒータ48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
次に、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
次に、図2及び図3により、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールの内部構造を説明する。図2は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、図3は、図2のIII-III線に沿って断面図である。
図2及び図3に示すように、燃料電池モジュール2のハウジング6内のケース8には、上述したように、下方から順に、燃料電池セル集合体12、改質器20、空気用熱交換器22が配置されている。
改質器20は、その上流端側の端部側面に純水、改質される燃料ガス、及び改質用空気を導入するための改質器導入管62が取り付けられている。
改質器導入管62は、改質器20の一端の側壁面から延びる円管であり、90゜屈曲されて概ね鉛直方向に延び、ケース8の上端面を貫通している。なお、改質器導入管62は、改質器20に水を導入する水導入管として機能している。また、改質器導入管62の上端には、T字管62aが接続されており、このT字管62aの概ね水平方向に延びる管の両側の端部には、燃料ガス及び純水を供給するための配管が夫々接続されている。水供給用配管63aはT字管62aの一方の側端から斜め上方に向けて延びている。燃料ガス供給用配管63bはT字管62aの他方の側端から水平方向に延びた後、U字型に屈曲され、水供給用配管63aと同様の方向に、概ね水平に延びている。
一方、改質器20の内部には、上流側から順に、蒸発部20a、混合部20b、改質部20cが形成され、この改質部20cには改質触媒が充填されている。この改質器20に導入された水蒸気(純水)が混合された燃料ガス及び空気は、改質器20内に充填された改質触媒により改質される。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。
この改質器20の下流端側には、燃料ガス供給管64が接続され、この燃料ガス供給管64は、下方に延び、さらに、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内で水平に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、改質された燃料ガスがマニホールド66内に供給される。また、燃料ガス供給管64の鉛直部の途中には、流路が狭められた圧力変動抑制用流路抵抗部64cが設けられ、燃料ガスの供給流路の流路抵抗が調整されている。流路抵抗の調整については後述する。
このマニホールド66の上方には、上述した燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セルユニット16内に供給される。
一方、改質器20の上方には、空気用熱交換器22が設けられている。
また、図2に示すように、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
次に図4により燃料電池セルユニット16について説明する。図4(a)は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。図4(b)は、燃料電池セルユニットの部分横断面図である。
図4(a)に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の両端部にそれぞれ接続されたキャップである内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
燃料電池セル84の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路細管98が形成されている。
この燃料ガス流路細管98は、内側電極端子86の中心から燃料電池セル84の軸線方向に延びるように設けられた細長い細管である。このため、マニホールド66(図2)から、下側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98を通って燃料ガス流路88に流入する燃料ガスの流れには、所定の圧力損失が発生する。従って、下側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98は、流入側流路抵抗部として作用し、その流路抵抗は所定の値となるように設定されている。また、燃料ガス流路88から、上側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98を通って燃焼室18(図2)に流出する燃料ガスの流れにも所定の圧力損失が発生する。従って、上側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98は、流出側流路抵抗部として作用し、その流路抵抗は所定の値となるように設定されている。
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
次に、図4(b)を参照して、燃料電池セル84の構造を詳細に説明する。
図4(b)に示すように、内側電極層90は、第1燃料極90dと第2燃料極90eから構成されている。また、外側電極層92は、空気極92aと集電層92bから構成されている。
本実施形態においては、第1燃料極90dは、Ni/YSZからなり、Niと、YをドープしたジルコニアであるYSZとの混合物を円筒状に焼成することにより形成されている。第2燃料極90eは、Ni/GDCであり、Niと、GdをドープしたセリアであるGDCとの混合物を、第1燃料極90dの外側に成膜することにより形成されている。
また、本実施形態においては、電解質層94は、Sr及びMgをドープしたランタンガレートであるLSGMを第2燃料極90eの外側に積層することにより形成されている。このように形成された成形体を焼成することにより焼成体を構成した。
また、本実施形態においては、空気極92aは、この焼成体の外側に、Sr及びFeをドープしたランタンコバルタイトであるLSCFを成膜することにより形成されている。集電層92bは、空気極92aの外側に、Ag層を形成することにより構成されている。
次に図5により燃料電池セルスタック14について説明する。図5は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図5に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16は、8本ずつ2列に並べて配置されている。各燃料電池セルユニット16は、下端側がセラミック製の長方形の下支持板68(図2)により支持され、上端側は、両端部の燃料電池セルユニット16が4本ずつ、概ね正方形の2枚の上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴がそれぞれ形成されている。
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、空気極である外側電極層92の外周面と電気的に接続される空気極用接続部102bとを接続するように一体的に形成されている。また、各燃料電池セルユニット16の外側電極層92(空気極)の外表面全体には、空気極側の電極として、銀製の薄膜が形成されている。この薄膜の表面に空気極用接続部102bが接触することにより、集電体102は空気極全体と電気的に接続される。
さらに、燃料電池セルスタック14の端(図5では左端の奥側)に位置する燃料電池セルユニット16の外側電極層92には、2つの外部端子104がそれぞれ接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の内側電極端子86に接続され、上述したように、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
次に図6により本実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)に取り付けられたセンサ類等について説明する。図6は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)を示すブロック図である。
図6に示すように、固体酸化物型燃料電池1は、制御部110を備え、この制御部110には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置112、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置114、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置116が接続されている。
また、制御部110には、マイクロプロセッサ、メモリ、及びこれらを作動させるプログラム(以上、図示せず)が内蔵されており、これらにより、各センサからの入力信号に基づいて、補機ユニット4、インバータ54等が制御される。なお、この報知装置116は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであっても良い。
次に、制御部110には、以下に説明する種々のセンサからの信号が入力されるようになっている。
先ず、可燃ガス検出センサ120は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。
CO検出センサ122は、本来排気ガス通路80等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。
貯湯状態検出センサ124は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
電力状態検出センサ126は、インバータ54及び分電盤(図示せず)の電流及び電圧等を検知するためのものである。
発電用空気流量検出センサ128は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。
改質用空気流量センサ130は、改質器20に供給される改質用空気の流量を検出するためのものである。
燃料流量センサ132は、改質器20に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
水流量センサ134は、改質器20に供給される純水の流量を検出するためのものである。
水位センサ136は、純水タンク26の水位を検出するためのものである。
圧力センサ138は、改質器20の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。
排気温度センサ140は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
発電室温度センサ142は、図3に示すように、燃料電池セル集合体12の近傍の前面側と背面側に設けられ、燃料電池セルスタック14の近傍の温度を検出して、燃料電池セルスタック14(即ち燃料電池セル84自体)の温度を推定するためのものである。
燃焼室温度センサ144は、燃焼室18の温度を検出するためのものである。
排気ガス室温度センサ146は、排気ガス室78の排気ガスの温度を検出するためのものである。
改質器温度センサ148は、改質器20の温度を検出するためのものであり、改質器20の入口温度と出口温度から改質器20の温度を算出する。
外気温度センサ150は、固体酸化物型燃料電池(SOFC)が屋外に配置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサを設けるようにしても良い。
電圧センサ152は、160本の燃料電池セルユニット16による直列接続回路12aの両端電圧を測定する。図7に模式的に示すように、複数の燃料電池セルユニット16の直列接続回路12aの両端が、電圧センサ152に接続されている。電圧センサ152は、電圧センサ本体152aとリレー152bを備えている。したがって、本発明の電圧センサ152は、リレー152bが閉じているときに、電圧センサ本体152aによって、燃料電池モジュール2の出力電圧(開回路電圧を含む)を測定可能である。
これらのセンサ類からの信号は、制御部110に送られ、制御部110は、これらの信号によるデータに基づき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、改質用空気流量調整ユニット44、発電用空気流量調整ユニット45に、制御信号を送り、これらのユニットにおける各流量を制御するようになっている。
次に、図2及び図3を再び参照して、発電酸化剤ガス用熱交換器である空気用熱交換器22の構造を詳細に説明する。
図2及び図3に示すように、空気用熱交換器22は、複数の燃焼ガス配管70と発電用空気流路72と、を有する。また、図2に示すように、複数の燃焼ガス配管70の一方の端部には、排気ガス集約室78が設けられており、この排気ガス集約室78は、各燃焼ガス配管70に連通されている。また、排気ガス集約室78には、排気ガス排出管82が接続されている。さらに、各燃焼ガス配管70の他方の端部は開放されており、この開放された端部は、ケース8の上面に形成された連通開口8aを介して、ケース8内の燃焼室18に連通されている。
燃焼ガス配管70は、水平方向に向けられた複数の金属製の円管であり、各円管は夫々平行に配置されている。一方、発電用空気流路72は、各燃焼ガス配管70の外側の空間によって構成されている。また、発電用空気流路72の、排気ガス排出管82側の端部には、発電用空気導入管74が接続されており、燃料電池モジュール2の外部の空気が、発電用空気導入管74を通って発電用空気流路72に導入される。さらに、発電用空気流路72の他方の端部の両側面には、一対の連絡流路76(図3)が接続されており、発電用空気流路72と各連絡流路76は、夫々、出口ポート76aを介して連通されている。
図3に示すように、ケース8の両側面には、発電用空気供給路77が夫々設けられている。空気用熱交換器22の両側面に設けられた各連絡流路76は、ケース8の両側面に設けられた発電用空気供給路77の上部に夫々連通されている。また、各発電用空気供給路77の下部には、多数の吹出口77aが水平方向に並べて設けられている。各発電用空気供給路77を通って供給された発電用の空気は、多数の吹出口77aから、燃料電池モジュール2内の燃料電池セルスタック14の下部側面に向けて噴射される。
また、ケース8内部の天井面には、隔壁である整流板21が取り付けられており、この整流板21には開口部21aが設けられている。
整流板21は、ケース8の天井面と改質器20の間に、水平に配置された板材である。
この整流板21は、燃焼室18から上方に流れる気体の流れを整え、空気用熱交換器22の入り口(図2の連通開口8a)に導くように構成されている。燃焼室18から上方へ向かう発電用空気及び燃焼ガスは、整流板21の中央に設けられた開口部21aを通って整流板21の上側に流入し、整流板21の上面とケース8の天井面の間の排気通路21bを図2における左方向に流れ、空気用熱交換器22の入り口に導かれる。また、開口部21aは、改質器20の改質部20cの上方に設けられており、開口部21aを通って上昇した気体は、蒸発部20aとは反対側の、図2における左側の排気通路21bに流れる。このため、蒸発部20aの上方の空間(図2における右側)は、改質部20cの上方の空間よりも排気の流れが遅く、排気の流れが淀む気体滞留空間21cとして作用する。
また、整流板21の開口部21aの縁には、全周に亘って縦壁21dが設けられており、この縦壁21dにより、整流板21の下側の空間から整流板21の上側の排気通路21bに流入する流路が狭められている。さらに、排気通路21bと空気用熱交換器22を連通させる連通開口8aの縁にも、全周に亘って下がり壁8b(図2)が設けられており、この下がり壁8bにより、排気通路21bから空気用熱交換器22に流入する流路が狭められている。これらの縦壁21d、下がり壁8bを設けることにより、燃焼室18から空気用熱交換器22を通って燃料電池モジュール2の外部に至る排気の通路における流路抵抗が調整されている。
蒸発室用断熱材23は、空気用熱交換器22の底面に、概ねその全体を覆うように取り付けられた断熱材である。従って、蒸発室用断熱材23は、蒸発部20a全体の上方に亘って配置されている。この蒸発室用断熱材23は、整流板21の上面とケース8の天井面の間に形成された排気通路21b及び気体滞留空間21c内の高温の気体が、空気用熱交換器22の底面を直接加熱するのを抑制するように配置されている。このため、燃料電池モジュール2の運転中においては、蒸発部20aの上方の排気通路に滞留している排気から、空気用熱交換器22の底面に直接伝わる熱が少なくなり、蒸発部20a周囲の温度は上昇しやすくなる。また、燃料電池モジュール2の停止後においては、蒸発室用断熱材23が配置されていることにより、改質器20からの熱の発散が抑制され、即ち、蒸発部20a周囲の熱が空気用熱交換器22に奪われにくくなり、蒸発部20aの温度低下が緩やかになる。
なお、蒸発室用断熱材23は、外気への熱の散逸を抑制するために、燃料電池モジュール2のケース8及び空気用熱交換器22全体を覆っている外側断熱材である断熱材7とは別に、断熱材7の内部に配置された断熱材である。また、断熱材7は、蒸発室用断熱材23よりも断熱性が高く構成されている。即ち、断熱材7の内面と外面の間の熱抵抗は、蒸発室用断熱材23の上面と下面の間の熱抵抗よりも大きくなっている。即ち、断熱材7と蒸発室用断熱材23を同一の材料で構成する場合には、断熱材7を蒸発室用断熱材23よりも厚く構成する。
次に、固体酸化物型燃料電池1の発電運転時における燃料、発電用空気、及び排気ガスの流れを説明する。
まず、燃料は、燃料ガス供給用配管63b、T字管62a、改質器導入管62を介して改質器20の蒸発部20aに導入されると共に、純水は、水供給用配管63a、T字管62a、改質器導入管62を介して蒸発部20aに導入される。従って、供給された燃料及び水はT字管62aにおいて合流され、改質器導入管62を通って蒸発部20aに導入される。発電運転中においては、蒸発部20aは高温に加熱されているため、蒸発部20aに導入された純水は、比較的速やかに蒸発され水蒸気となる。蒸発された水蒸気及び燃料は、混合部20b内で混合され、改質器20の改質部20cに流入する。水蒸気と共に改質部20cに導入された燃料は、ここで水蒸気改質され、水素を豊富に含む燃料ガスに改質される。改質部20cにおいて改質された燃料は、燃料ガス供給管64を通って下方に下り、分散室であるマニホールド66に流入する。
マニホールド66は、燃料電池セルスタック14の下側に配置された比較的体積の大きい直方体状の空間であり、その上面に設けられた多数の穴が燃料電池セルスタック14を構成する各燃料電池セルユニット16の内側に連通している。マニホールド66に導入された燃料は、その上面に設けられた多数の穴を通って、燃料電池セルユニット16の燃料極側、即ち、燃料電池セルユニット16の内部を通って、その上端から流出する。また、燃料である水素ガスが燃料電池セルユニット16の内部を通過する際、空気極(酸化剤ガス極)である燃料電池セルユニット16の外側を通る空気中の酸素と反応して電荷が生成される。この発電に使用されずに残った残余燃料は、各燃料電池セルユニット16の上端から流出し、燃料電池セルスタック14の上方に設けられた燃焼室18内で燃焼される。
一方、酸化剤ガスである発電用の空気は、発電用の酸化剤ガス供給装置である発電用空気流量調整ユニット45によって、発電用空気導入管74を介して燃料電池モジュール2内に送り込まれる。燃料電池モジュール2内に送り込まれた空気は、発電用空気導入管74を介して空気用熱交換器22の発電用空気流路72に導入され、予熱される。予熱された空気は、各出口ポート76a(図3)を介して各連絡流路76に流出する。各連絡流路76に流入した発電用の空気は、燃料電池モジュール2の両側面に設けられた発電用空気供給路77を通って下方に流れ、多数の吹出口77aから、燃料電池セルスタック14に向けて発電室10内に噴射される。
発電室10内に噴射された空気は、燃料電池セルスタック14の空気極側(酸化剤ガス極側)である各燃料電池セルユニット16の外側面に接触し、空気中の酸素の一部が発電に利用される。また、吹出口77aを介して発電室10の下部に噴射された空気は、発電に利用されながら発電室10内を上昇する。発電室10内を上昇した空気は、各燃料電池セルユニット16の上端から流出する燃料を燃焼させる。この燃焼による燃焼熱は、燃料電池セルスタック14の上方に配置された改質器20の蒸発部20a、混合部20b及び改質部20cを加熱する。燃料が燃焼され、生成された燃焼ガスは、上方の改質器20を加熱した後、改質器20上方の開口部21aを通って整流板21の上側に流入する。整流板21の上側に流入した燃焼ガスは、整流板21によって構成された排気通路21bを通って空気用熱交換器22の入り口である連通開口8aに導かれる。連通開口8aから空気用熱交換器22に流入した燃焼ガスは、開放された各燃焼ガス配管70の端部に流入し、各燃焼ガス配管70外側の発電用空気流路72を流れる発電用空気との間で熱交換を行い、排気ガス集約室78に集約される。排気ガス集約室78に集約された排気ガスは、排気ガス排出管82を介して燃料電池モジュール2の外部に排出される。これにより、蒸発部20aにおける水の蒸発、及び改質部20cにおける吸熱反応である水蒸気改質反応が促進されると共に、空気用熱交換器22内の発電用空気が予熱される。
次に、図8を新たに参照して、固体酸化物型燃料電池1の起動工程における制御を説明する。
図8は、起動工程における燃料等の各供給量、及び各部の温度の一例を示すタイムチャートである。なお、図8の縦軸の目盛りは温度を示しており、燃料等の各供給量は、それらの増減を概略的に示したものである。
図8に示す起動工程においては、常温の状態にある燃料電池セルスタック14の温度を、発電が可能な温度まで上昇させる。
まず、図8の時刻t0において、発電用空気及び改質用空気の供給が開始される。具体的には、コントローラである制御部110が、発電用の酸化剤ガス供給装置である発電用空気流量調整ユニット45に信号を送って、これを作動させる。上述したように、発電用空気は、発電用空気導入管74を介して燃料電池モジュール2内に導入され、空気用熱交換器22、発電用空気供給路77を経て発電室10内に流入する。また、制御部110は、改質用の酸化剤ガス供給装置である改質用空気流量調整ユニット44に信号を送って、これを作動させる。燃料電池モジュール2内に導入された改質用空気は、改質器20、マニホールド66を経て、各燃料電池セルユニット16の内部に流入し、その上端から流出する。なお、時刻t0においては、まだ燃料が供給されていないため、改質器20内において改質反応は発生しない。本実施形態においては、図8の時刻t0において開始される発電用空気の供給量は約100L/minであり、改質用空気の供給量は約10.0L/minである。
次いで、図8の時刻t0から所定時間後の時刻t1において、燃料の供給が開始される。具体的には、制御部110が、燃料供給装置である燃料流量調整ユニット38に信号を送って、これを作動させる。本実施形態においては、時刻t1において開始される燃料の供給量は約5.0L/minである。燃料電池モジュール2内に導入された燃料は、改質器20、マニホールド66を経て、各燃料電池セルユニット16の内部に流入し、その上端から流出する。なお、時刻t1においては、まだ改質器の温度が低温であるため、改質器20内において改質反応は発生しない。
次に、図8の時刻t1から所定時間経過した時刻t2において、供給されている燃料への点火工程が開始される。具体的には、点火工程においては、制御部110が、点火手段である点火装置83(図2)に信号を送り、各燃料電池セルユニット16の上端から流出する燃料に点火する。点火装置83は、燃料電池セルスタック14の上端近傍で繰り返し火花を発生させ、各燃料電池セルユニット16の上端から流出する燃料に点火する。
図8の時刻t3において着火が完了すると、改質用の水の供給が開始される。具体的には、制御部110が、水供給装置である水流量調整ユニット28(図6)に信号を送り、これを作動させる。本実施形態においては、時刻t3に開始される水の供給量は、2.0cc/minである。時刻t3においては、燃料供給量は、従前の約5.0L/minに維持される。また、発電用空気及び改質用空気の供給量も、従前の値に維持される。なお、この時刻t3において、改質用空気中の酸素O2と燃料中の炭素Cの比O2/Cは約0.32になる。
図8の時刻t3において着火された後、供給された燃料は、各燃料電池セルユニット16の上端からオフガスとして流出し、ここで燃焼される。この燃焼熱は、燃料電池セルスタック14の上方に配置された改質器20を加熱する。ここで、改質器20の上方(ケース8の上)には、蒸発室用断熱材23が配置されており、これにより、燃料の燃焼開始直後において、改質器20の温度は常温から急激に上昇する。蒸発室用断熱材23の上に配置されている空気用熱交換器22には外気が導入されているため、空気用熱交換器22は、特に燃焼開始直後においては温度が低く、冷却源となりやすい。本実施形態においては、ケース8の上面と空気用熱交換器22の底面の間に蒸発室用断熱材23が配置されていることにより、ケース8内の上部に配置された改質器20から空気用熱交換器22への熱の移動が抑制され、ケース8内の改質器20付近には熱が籠もりやすくなる。加えて、蒸発部20aの上方の、整流板21の上側の空間は、燃焼ガスの流れが遅くなる気体滞留空間21c(図2)として構成されているため、蒸発部20a付近は二重に断熱され、より急速に温度が上昇する。
このように、蒸発部20aの温度が急速に上昇することにより、オフガスの燃焼開始後短時間で水蒸気を生成することが可能になる。また、蒸発部20aには、改質用の水が少量ずつ供給されているため、多量の水が蒸発部20aに貯留されている場合に比べ、わずかな熱で水を沸点まで加熱することができ、早急に水蒸気の供給を開始することができる。さらに、水流量調整ユニット28の作動開始直後から水が流入するため、水の供給遅れによる、蒸発部20aの過剰な温度上昇、及び水蒸気の供給遅れを回避することができる。
なお、オフガスの燃焼開始後、或る程度の時間が経過すると、燃焼室18から空気用熱交換器22に流入する排気ガスにより、空気用熱交換器22の温度も上昇する。改質器20と空気用熱交換器22の間を断熱する蒸発室用断熱材23は、断熱材7の内側に設けられた断熱材である。従って、蒸発室用断熱材23は、燃料電池モジュール2からの熱の散逸を抑制するものではなく、オフガスの燃焼開始直後において、改質器20、特に、その蒸発部20aの温度を急速に上昇させる。
このようにして、改質器20の温度が上昇した時刻t4において、蒸発部20aを経て改質部20cに流入した燃料と改質用空気が、式(1)に示す部分酸化改質反応を起こすようになる。
mn+xO2 → aCO2+bCO+cH2 (1)
この部分酸化改質反応は発熱反応であるため、改質部20c内で部分酸化改質反応が発生すると、その周囲の温度が局部的に急上昇する。
一方、本実施形態においては、着火が確認された直後の時刻t3から改質用の水の供給が開始されており、また、蒸発部20aの温度が急速に上昇するように構成されているため、時刻t4においては、既に蒸発部20a内で水蒸気が生成され、改質部20cに供給されている。即ち、オフガスに着火された後、改質部20cの温度が部分酸化改質反応が発生する温度に到達する所定時間前から水の供給が開始され、部分酸化改質反応が発生する温度に到達した時点においては、蒸発部20aに所定量の水が貯留され、水蒸気が生成されている。このため、部分酸化改質反応の発生により温度が急上昇すると、改質部20cに供給されている改質用の水蒸気と燃料が反応する水蒸気改質反応が発生する。この水蒸気改質反応は、式(2)に示す吸熱反応であり、部分酸化改質反応よりも高い温度で発生する。
mn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (2)
このように、図8の時刻t4に到達すると、改質部20c内では部分酸化改質反応が発生するようになり、また、部分酸化改質反応が発生することによる温度上昇で、水蒸気改質反応も同時に発生するようになる。従って、時刻t4以降に改質部20c内で発生する改質反応は、部分酸化改質反応と水蒸気改質反応が混在した式(3)に示すオートサーマル改質反応(ATR)となる。即ち、時刻t4においてATR1工程が開始される。
mn+xO2+yH2O → aCO2+bCO+cH2 (3)
このように、本発明の実施形態の固体酸化物型燃料電池1では、起動工程の全期間において水が供給されており、部分酸化改質反応(POX)が単独で発生することはない。なお、図8に示すタイムチャートでは、時刻t4における改質器温度は約200℃である。この改質器温度は部分酸化改質反応が発生する温度よりも低いが、改質器温度センサ148(図6)により検出されている温度は改質部20cの平均的な温度である。実際には、時刻t4においても、改質部20cは部分的には部分酸化改質反応が発生する温度に到達しており、発生した部分酸化改質反応の反応熱により、水蒸気改質反応をも誘発される。このように、本実施形態においては、着火された後、改質部20cが部分酸化改質が発生する温度に到達する前から、水の供給が開始されており、部分酸化改質反応が単独で発生することがない。
次に、改質器温度センサ148による検出温度が約500℃以上に到達すると、図8の時刻t5において、ATR1工程からATR2工程に移行される。時刻t5において、水供給量が2.0cc/minから3.0cc/minに変更される。また、燃料供給量、改質用空気供給量及び発電用空気供給量は従前の値が維持される。これにより、ATR2工程における水蒸気と炭素の比S/Cは0.64に増加される一方、改質用空気と炭素の比O2/Cは0.32に維持される。このように、改質用空気と炭素の比O2/Cを一定に維持しながら、水蒸気と炭素の比S/Cを増加させることにより、部分酸化改質可能な炭素の量を低下させずに、水蒸気改質可能な炭素の量が増加される。これにより、改質部20cにおける炭素析出のリスクを確実に回避しながら、改質部20cの温度上昇と共に、水蒸気改質される炭素の量を増加させることができる。
さらに、図8の時刻t6において、発電室温度センサ142による検出温度が約400℃以上に到達すると、ATR2工程からATR3工程に移行される。これに伴い、燃料供給量が5.0L/minから4.0L/minに変更され、改質用空気供給量が9.0L/minから6.5L/minに変更される。また、水供給量及び発電用空気供給量は従前の値が維持される。これにより、ATR3工程における水蒸気と炭素の比S/Cは0.80に増加される一方、改質用空気と炭素の比O2/Cは0.29に減少される。
さらに、図8の時刻t7において、発電室温度センサ142による検出温度が約550℃以上に到達すると、SR1工程に移行される。これに伴い、燃料供給量が4.0L/minから3.0L/minに変更され、水供給量が3.0cc/minから7.0cc/minに変更される。また、改質用空気の供給は停止され、発電用空気供給量は従前の値が維持される。これにより、SR1工程では、改質部20c内で専ら水蒸気改質が発生するようになり、水蒸気と炭素の比S/Cは、供給された燃料の全量を水蒸気改質するために適切な2.49に設定される。図8の時刻t7においては、改質器20、燃料電池セルスタック14とも、十分に温度が上昇しているので、改質部20cにおいて部分酸化改質反応が発生していなくとも、水蒸気改質反応を安定して発生させることができる。
次に、図8の時刻t8において、発電室温度センサ142による検出温度が約600℃以上に到達すると、SR2工程に移行される。これに伴い、燃料供給量が3.0L/minから2.5L/minに変更され、水供給量が7.0cc/minから6.0cc/minに変更される。また、発電用空気供給量は従前の値が維持される。これにより、SR2工程では、水蒸気と炭素の比S/Cは、2.56に設定される。
さらに、SR2工程を所定時間実行した後、発電工程に移行する。発電工程においては、燃料電池セルスタック14からインバータ54(図6)に電力が取り出され、発電が開始される。なお、発電工程では、改質部20cにおいて、専ら水蒸気改質により燃料が改質される。また、発電工程においては、燃料電池モジュール2に対して要求される出力電力に対応して、燃料供給量、発電用空気供給量、及び水供給量が変更される。
次に、図9乃至図11を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池1の停止工程について説明する。図9は本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池1において、停止工程が実行された場合の停止挙動の一例を模式的に時系列で表したタイムチャートである。図10は停止工程で実行される処理に関連する温度範囲を模式的に示す説明図である。図11は、燃料電池モジュール内の空気冷却の効果についての説明図であり、図11(a)は燃料電池モジュール内の温度の時間変化、図11(b)は代表的な燃料電池セル単体の電位及び燃料電池モジュールの開回路電圧の時間変化である。
制御部110は、停止指令に基づいて、シャットダウン停止回路110aに内蔵されているプログラムに基づいて停止工程を実行する。停止指令は、ユーザにより停止スイッチが操作された場合や、設定された停止条件が満足された場合等に発生する。
停止条件の設定例としては、例えば、燃料供給源30に設けられているマイコンメータに対応するために、定期的に停止時期を設定する場合である。即ち、一般に、燃料供給源30にはマイコンメータ(図示せず)が設けられており、このマイコンメータは、約1ヶ月の間に、燃料ガスの供給が完全に停止された状態が連続して1時間程度以上存在しない場合には、ガス漏れが発生していると判断し、燃料ガスの供給を遮断させるように構成されている。このため、一般に、固体酸化物型燃料電池1は、約1ヶ月に一度という高頻度で、1時間程度以上停止させるように設定される。
停止工程の実行前(図9の時刻t101まで)は、燃料電池モジュール2は通常運転を行っており、燃料電池モジュール2内、すなわち、発電室10及び燃料電池セル84は発電運転温度帯域にある。
まず、図9の時刻t101において、制御部110が停止指令を受けるとシャットダウン停止回路110aのプログラムが起動され、シャットダウン停止回路110aは温度降下制御を実行する。この温度降下制御は、燃料電池セルスタック14からの電力の取り出しが完全に停止される前の第1の温度降下工程(時刻t101〜t102)と、電力の取り出しが停止された後の第2の温度降下工程(時刻t102〜t103)から構成されている。即ち、第1の温度降下工程である停止前処理においては、まず、燃料電池モジュール2による発電電力のインバータ54への出力が停止され、固体酸化物型燃料電池1の補機ユニット4を作動させるための微弱な電流(1A程度)の取り出しのみが継続される。このように、停止前処理中において、電力の取り出し量を制限し、微弱な電流を取り出しながら所定電力の発電を継続することにより、供給された燃料の一部が発電に使用されるため、発電に使用されずに残る余剰燃料の著しい増加が回避され、燃料電池モジュール2内の温度が低下される。
さらに、停止前処理においては、時刻t101の後、図9に太い点線で示す燃料供給量、及び細い実線で示す改質用の水の供給量が低下される。一方、太い一点鎖線で示す発電用の空気供給量は増加される。第1の温度降下工程は時刻t101の後、10分間継続される。このような第1の温度降下工程により、燃料電池モジュール2内の温度は徐々に低下していく。
時刻t101の後10分間経過した、時刻t102において、シャットダウン停止回路110aは、シャットダウン停止を実行する。シャットダウン停止が行われると、燃料流量調整ユニット38による燃料の供給、及び水流量調整ユニット28による水の供給が短時間に停止する。また、燃料電池モジュール2からの電力の取り出しも停止する。
シャットダウン停止回路110aは、時刻t102のシャットダウン停止の後、温度降下制御のうちの第2の温度降下工程を実行し、発電用空気流量調整ユニット45による発電用空気の供給を更に約2分間継続する。このような第2の温度降下工程により、燃料電池モジュール2の温度は更に低下していく。その後、図9の時刻t103において、発電用空気流量調整ユニット45が停止された後は、自然放置される。
各燃料電池セルユニット16内部の燃料極側に存在していた燃料は、第2の温度降下工程において発電用空気が空気極側へ供給されても、空気極側との圧力差に基づいて、燃料ガス流路細管98(図4)を通って空気極側に噴出される。
また、各燃料電池セルユニット16の空気極側に存在していた空気(及び燃料極側から噴出した燃料)は、空気極側の圧力(発電室10(図1)内の圧力)と大気圧との圧力差に基づいて、排気通路21b、空気用熱交換器22等を通って、燃料電池モジュール2の外部に排出される。従って、シャットダウン停止の後、各燃料電池セルユニット16の燃料極側及び空気極側の圧力は、自然に低下する。
各燃料電池セルユニット16の上端部には、流出側流路抵抗部である燃料ガス流路細管98が設けられており、排気通路21bには、縦壁21d及び下がり壁8b(図2)が設けられている。この燃料ガス流路細管98の流路抵抗は、燃料供給及び発電が停止された後の燃料極側の圧力低下が、空気極側の圧力低下よりも緩やかになるように設定されている。本実施形態の固体酸化物型燃料電池1は、これらの燃料及び排気の通路各部における流路抵抗を適切にチューニングすることにより、各燃料電池セルユニット16の燃料極側に、シャットダウン停止後も長時間に亘って燃料が残存するように構成されている。
このように、本実施形態においては、燃料流量調整ユニット38から改質器20、各燃料電池セルユニット16の燃料極を通って燃料電池モジュール2の外部へ燃料及び/又は排気ガスを導く燃料/排気ガス通路が上記のようにチューニングされている。このため、シャットダウン停止の後自然放置された場合においても、燃料極側の圧力は、空気極側の圧力よりも高い圧力を維持しながら低下し、内側電極層90(燃料極)の温度が燃料極の酸化下限温度Teに低下した時点においても、大気圧よりも高い圧力に維持され、燃料極が酸化されるリスクを十分に抑制することができる。
なお、本明細書において、酸化下限温度Teとは、燃料極の酸化が発生し得る最低の温度である。本実施形態では、内側電極層90(燃料極)がニッケルを含んでおり、ニッケルの酸化下限温度Teは約350℃である。
さらに、停止工程では、シャットダウン停止後、約5時間経過し、燃料電池モジュール2内の温度が所定の温度まで低下した時刻t104において、シャットダウン停止回路110aは、圧力保持制御回路110b(図6)を作動させる。本実施形態においては、燃料電池モジュール2内の温度が、所定温度である400℃程度に低下した際には、燃料電池セルユニット16の燃料極側の圧力も低下して、空気極側の圧力に近付いている。圧力保持制御回路110bは、水流量調整ユニット28に信号を送り、これを作動させる。水流量調整ユニット28が作動されることにより、改質器20の蒸発部20aに水が供給される。燃料電池モジュール2の内部は、シャットダウン停止後、約5時間程度経過した時刻t104においても、依然として400℃程度の温度であるため、蒸発部20aに供給された水は、そこで蒸発される。なお、本実施形態においては、水は間欠的に供給され、水供給量は1分間に約1mLに設定されており、この水供給量は、発電運転中における最少の水供給量よりも少ない値である。
蒸発部20a内で水が蒸発して膨張されることにより、改質器20から、燃料ガス供給管64、マニホールド66(図2)を介して各燃料電池セルユニット16に至る燃料ガス通路内部の圧力が高められる。これにより、各燃料電池セルユニット16の燃料極側の圧力の低下が抑制され、より確実に、燃料極側への空気の逆流が防止される。なお、改質器20内の蒸発部20a、混合部20b、改質部20cの流路は、何れも蛇行して形成されているため、蒸発部20a内で水の急激な蒸発が発生した場合でも、圧力上昇の影響が下流側へ伝播しにくくなっている。これにより、急激な蒸発の発生により、各燃料電池セルユニット16の内側(燃料極側)の圧力が急上昇し、内部に滞留していた燃料ガスが短時間に大量に噴出されるのを防止することができる。
また、燃料ガス供給管64の途中に設けられている圧力変動抑制用流路抵抗部64c(図2)、及び各燃料電池セルユニット16の下端に設けられている流入側流路抵抗部である燃料ガス流路細管98も、燃料極側の圧力の急激な上昇を抑制し、燃料ガスを燃料極側に長時間滞留させるように作用する。
即ち、本実施形態の固体酸化物型燃料電池1おいては、燃料/排気ガス通路は、シャットダウン停止後、燃料極の温度が酸化下限温度Teに低下するまで、燃料電池モジュール2内の空気極側の圧力を大気圧よりも高く維持すると共に、燃料極側の圧力を空気極側の圧力よりも高く維持するように構成されている。従って、燃料/排気ガス通路は、燃料極側の圧力が空気極側の圧力に近付くまでの時間を延長する機械的圧力保持手段として機能する。
燃料電池モジュール2内の温度が内側電極層90(燃料極)の酸化下限温度Teまで低下すると、もはや燃料極が酸化されるおそれがなくなるので、空気が燃料電池セル84内に逆流してもよい。このため、圧力保持制御回路110bは、燃料電池モジュール2内の温度が内側電極層90(燃料極)の酸化下限温度Teまで低下した図9の時刻t105において、水流量調整ユニット28を停止させ、以後、燃料電池モジュール2は自然放置される。
さらに、シャットダウン停止回路110aは、燃料電池モジュール2内の温度が更に300℃まで低下した時刻t106において、改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45に信号を送り、これらを作動させる。これにより、改質器20、燃料ガス供給管64、マニホールド66等の燃料ガス通路、及び各燃料電池セルユニット16の内部の燃料極が空気によりパージされる。また、発電室10内の空気極側、排気通路21b、及び空気用熱交換器22等の排気ガス通路内も空気によりパージされる。このようなパージにより、燃料電池モジュール2内の空気冷却が行われ、燃料電池モジュール2内の温度は急激に低下する。また、燃料ガス通路及び燃料極をパージすることにより、これらの内部に残留していた水蒸気が結露し、燃料ガス通路及び燃料極の結露水による酸化が防止される。また、排気ガス通路内をパージすることにより、燃料極から排出された水蒸気の、排気ガス通路内における結露が防止される。また、発電室10内の空気極側をパージすることにより、燃料極側から排出された燃料ガスによる還元が防止される。
シャットダウン停止回路110aは、燃料電池モジュール2内の温度を、通常起動が可能な温度(約90℃)まで低下させると(時刻t107)、空気冷却を停止する。
図11を参照して、燃料電池モジュール2内の温度を約300℃から約90℃まで低下させる上述の空気冷却について更に説明する。
図11(a)の線a,bは、燃料電池モジュール2内の温度変化を示しており、線aが時刻t106から空気冷却を開始した場合、線bが空気冷却を実行しなかった場合である。また、図11(b)の線c,dは、代表的な燃料電池セル84単体のセル電位の変化を示しており、線e,fは、燃料電池モジュール2の開回路電圧(モジュール電位)の変化を示しており、線c,eが空気冷却を実行した場合、線d,fが空気冷却を実行しなかった場合である(セル電圧は左目盛、開回路電圧は右目盛を参照)。
停止工程では、インバータ54による電力の取り出しが停止された後も、燃料電池モジュール2内の温度が低下中において、燃料電池セル84は発電可能な状態にある。したがって、電力の取り出しが停止された後も、図11(b)から分かるように、燃料電池セル84には温度に応じて起電力が発生している。
空気冷却を実行しない場合、燃料電池モジュール2内の温度は緩やかに低下していき(図11(a)の線b参照)、この緩やかな温度低下に併せて、セル電位及びモジュール電位も比較的緩やかに低下していく(図11(b)の線d,f参照)。
一方、空気冷却を実行した場合、燃料電池モジュール2内の温度は急速に低下していくが(図11(a)の線a参照)、セル電位及びモジュール電位は、温度低下よりも更に速やかに低下させることができる(図11(b)の線c,e参照)。即ち、空気冷却の開始と共にセル電位及びモジュール電位は急激に低下している。これは燃料電池セル84自体の温度低下によるが、これに加えて、空気極側へ供給された冷却空気が上端側の燃料ガス流路細管98を逆流して燃料極側へ流入したことによる、空気極側と燃料極側との酸素分圧差の減少にもよる。
再び図10を参照して、燃料電池セル84を構成する燃料極,電解質,空気極の活性温度について説明する。
本実施形態では、第1燃料極90dはNi/YSZで形成され、第2燃料極90eはNi/GDCで形成され、電解質層94はLSGMで形成され、空気極92aはLSCFで形成されている。
本実施形態における停止工程では、第1燃料極90d及び第2燃料極90eが含んでいるニッケルの酸化を防止するため、燃料電池モジュール2内の温度が少なくともニッケルの酸化下限温度Te(約350℃)よりも低い空気冷却開始温度(300℃)に低下するまでは、外部から冷却空気を供給することなく、自然放置により冷却を行っている。なお、酸化下限温度Teは、ニッケルが酸素含有雰囲気中に放置された際に、雰囲気中の酸素によってニッケルが酸化される下限温度である。
本実施形態では、第1燃料極90d及び第2燃料極90eの触媒活性が活性状態となる活性下限温度Taは、酸化下限温度Te及び空気冷却開始温度よりも低い約290℃である。燃料極は、活性下限温度Taから少なくとも燃料電池モジュール2の運転温度までを含む燃料極触媒活性温度帯域では、電解質層94から酸素イオンを受け取って、受け取った酸素イオンと燃料(水素)とを反応させて、水を生成すると共に、電子を放出することができる。しかしながら、燃料極は、活性下限温度Taよりも低いときには、酸素イオンを受け取っても燃料と反応させて、発電反応を生じさせることはできない。
また、電解質層94が酸素イオンを空気極から燃料極へ透過可能な活性状態となる活性下限温度Tbは、活性下限温度Taよりも低い約200℃である。電解質層94は、活性下限温度Tbから少なくとも燃料電池モジュール2の運転温度までを含む電解質活性温度帯域では、空気極から受け取った酸素イオンを燃料極へ透過可能である。しかしながら、電解質層94は、活性下限温度Tbよりも低いときには、空気極から酸素イオンを受け取っても、燃料極へ酸素イオンを透過させることはできない。
なお、空気極は、電解質層94の活性下限温度Tb以上では、空気中の酸素を酸素イオンに変換可能な活性状態となる。
本実施形態では、運転温度を低温化するため、燃料電池セルの燃料極,電解質層,空気極の活性温度を低温化している。活性温度の低温化は、材料自体の選定だけに留まらず、選定された材料の粒径,層厚み,製造工程パラメータ等をチューニングすることにより達成されている。そして、本実施形態では、燃料極,電解質層,空気極の活性下限温度がニッケルの酸化下限温度Teよりも低くなるように構成され、さらに、電解質層及び空気極の最低下限温度が燃料極の活性下限温度よりも低くなるように構成されている。
図10は、活性下限温度Ta及びTbの関係を示している。これら温度Ta,Tbの間の温度帯域(非正常電流発生可能温度帯域)Tcは、電解質層94が酸素イオンを燃料極へ透過可能な活性状態にあるが、燃料極の触媒活性が失活状態にある温度範囲である。
したがって、停止工程(及び起動工程)において、燃料電池モジュール2内がこの温度帯域Tcにあるとき、燃料極には電解質層を通して酸素イオンが供給される状態にある。この温度帯域Tcは、燃料極中のニッケルが電気化学的酸化反応を生じ得る温度帯域である。
次に、図12及び図13を参照して、燃料電池モジュール内の温度が非正常電流発生可能温度帯域を通過する場合の燃料電池セルの挙動について説明する。図12は、非正常電流発生可能温度帯域における燃料電池セルで起こり得る反応の説明図である。図13(a)は正常な燃料電池セルの燃料極の断面の拡大写真、図13(b)は比較例に係る電解質層にクラックを生じた燃料電池セルの燃料極の断面の拡大写真である。
温度帯域Tcでは、電解質層94及び空気極92aは活性状態にあり、酸素イオンを燃料極へ透過可能であるが、第1燃料極90d及び第2燃料極90eは触媒活性が失活状態にある。したがって燃料極は、供給された酸素イオンを燃料(水素)と反応させる通常の発電反応を生じさせることができない。
燃料極はニッケルを含んでおり、ニッケルは酸化下限温度Te(約350℃)以上の高温雰囲気では、空気中の酸素と反応して酸化ニッケルになり易いが、酸化下限温度Teよりも低い温度帯域Tcでは、ニッケルは空気中の酸素とは反応しにくい状態にある。
しかしながら、温度帯域Tcにおいて、電解質層94を通過した酸素イオンが燃料極90に供給されると、燃料極中のニッケルは、電気化学的酸化反応により、酸素イオンと結びついて酸化ニッケルになり得る。この反応が生じると電子が放出される。したがって、上記の電気化学的酸化反応が起こると、通常の発電反応による発生電流とは異なる非正常なリーク電流が生じる。
なお、燃料極が活性状態にある場合は、酸素イオンが燃料と結びつく通常の発電反応のみが起こり、酸素イオンがニッケルと結びつく非正常な反応は実質的に起きないと考えられる。
したがって、燃料電池セルユニットの直列接続回路と電圧センサが常時、閉回路を形成していると、温度帯域Tcでは、燃料極中のニッケルの電気化学的酸化反応により、微弱なリーク電流が生じ、ニッケルの電気化学的酸化反応が進行する。また、この反応により生成された酸化ニッケルは、運転中において還元を受ける。このように、燃料極に含有されたニッケルが、停止及び起動とその後の運転により、電気化学的酸化・還元反応を生じると、燃料極は微構造及び体積に変化を生じる。
さらに、燃料電池モジュールの停止・起動が高頻度で繰り返されることに加え、停止及び起動工程において、特に長時間を要する停止工程において、ニッケルの電気化学的酸化反応が比較的長い時間起こる。
このように、燃料極の微構造及び体積の変化が生じると、電解質層に引張り応力がかかる。そして、長期的な使用により停止・起動が多数回繰り返され、電気化学的酸化・還元反応を受けるニッケルの累積量が増えていくと、最終的に電解質層に微小なクラックが生じる。
このように、本発明者は、温度帯域Tcにおいて、燃料極が含有する特定の物質であるニッケルが電気化学的な酸化を受ける状態にあり、電気化学的に酸化し、その後の運転時に還元を受けると、燃料極の微構造及び体積に変化を生じ、電解質層に引張り応力を与え、最終的に電解質層に微小なクラックが生じて燃料電池セルを損傷させることを発見した。
図13(a)は、正常な燃料電池セル84の燃料極の拡大断面を示している。一方、図13(b)は、比較例であり、電解質にクラックが生じた燃料電池セルの燃料極の拡大断面を示しており、破線で囲んだ複数の部分に形態変化したニッケルが見出される。
次に、図7を参照して、本実施形態における作用について説明する。本実施形態では、微小なクラックの発生を防止するため、温度帯域Tcにおいて、ニッケルの電気化学的酸化の発生を抑制し、燃料電池セルユニット16の直列接続回路12aに流れ得るリーク電流を制限するように構成している。
図7を参照して説明したように、燃料電池セルユニット16の直列接続回路12aの両端(出力端)には、電圧センサ152が接続されている。電圧センサ152の電圧センサ本体152aは、高抵抗値(数十k〜数百kΩ)の内部電気抵抗を含む回路装置である。リレー152bは、作動停止時には開状態にあり、電圧センサ152と燃料電池セルユニット16の直列接続回路12aとの電気的接続を分断している。
本実施形態では、電圧測定開始温度Td(300℃)が設定されており、電圧測定開始温度Td以下は電圧測定禁止温度帯域、電圧測定開始温度Td以上は電圧測定許可温度帯域にそれぞれ設定されている。
なお、電圧測定開始温度Tdは、燃料電池セル84の燃料極,電解質層,空気極のすべてが活性状態になる温度(本例の場合、活性下限温度Ta)よりも所定温度だけ高く設定されている。即ち、少なくとも電圧測定開始温度Td以上の温度帯域では、通常の発電反応による発電電流を生成可能である。
制御部110は、起動工程において、燃料電池モジュール2内の温度(即ち、発電室10及び燃料電池セル84の温度)が電圧測定開始温度Tdに昇温するまでは、リレー152bを開状態に維持し、電圧測定開始温度Tdになるとリレー152bを閉状態にする。これにより、電圧センサ152は、燃料電池モジュール2の開回路電圧を測定可能となり、有意な測定電圧値を制御部110へ送信することができる。一方、制御部110は、有意な測定電圧値を電圧センサ152から受け取ると、この電圧値に基づいて燃料電池モジュール2の発電状態の異常判定を開始する。制御部110は、特に起動工程において、開回路電圧が燃料電池モジュール2内の温度に対応した値を有していない場合(温度上昇に追随して開回路電圧が上昇せず、開回路電圧が予定電圧上昇曲線よりも所定値以上低い場合等)、燃料電池セル84の破損等により発電異常が発生していると判定する。
また、制御部110は、停止工程においては、停止工程の開始段階、好ましくはシャットダウン停止の開始時である時刻t102にリレー152bを開状態にする。これにより、停止工程においては、電圧センサ152と燃料電池セルユニット16の直列接続回路12aとの電気的接続は分断されており、閉回路は形成されないように構成されている。
上述のように、本実施形態では、制御部110は、起動工程では、燃料電池モジュール2内の温度が温度帯域Tcよりも高い温度である電圧測定開始温度Tdまではリレー152bを開状態とし、一方、停止工程では、停止工程の開始段階に発電運転温度付近である間にリレー152bを開状態としている。リレー152bが開状態であることにより、電圧センサ152は電圧測定を行うことができず、よって、制御部110は、電圧センサ152からの測定電圧値に基づいて、少なくとも温度帯域Tcでは燃料電池モジュール2の発電異常の判定を行うことができない。本実施形態では、リレー152bは電流制限機構として機能する。
従来、燃料電池モジュールでは、燃料電池セルユニットの直列接続回路と開回路電圧を測定するための電圧センサとが常時、閉回路を形成していた。したがって、起動工程及び停止工程において、燃料電池セルに起電力が生じると、極めて微弱な電流が閉回路に流れることが可能となっていた。
しかしながら、本実施形態では、この閉回路中にリレー152bを設ける構成とし、少なくとも燃料電池モジュール2内の温度が温度帯域Tcであるときには、リレー152bを開状態とすることにより、リーク電流が流れることを制限又は禁止している。これにより、温度帯域Tcにおいて、電解質層94から燃料極に酸素イオンが供給されても、燃料極のニッケルは酸素イオンと結びついて電子を放出させることができない。このため、燃料極が有するニッケルの電気化学的酸化反応の発生を防止することができる。
なお、本実施形態では、温度帯域Tcで酸素イオンと電気化学的酸化反応を生じる物質が、燃料極が含有するニッケルであったが、温度帯域Tcで酸素イオンと結びついて電気化学的に酸化され電子を放出する物質であればニッケルに限定されず、燃料極が含有する他の物質であってもよい。
本実施形態では、停止工程において、燃料電池モジュール2内の温度が比較的長い時間をかけて温度帯域Tcを通過する。このため、燃料電池モジュール2内の温度が温度帯域Tcに到達するよりも前にリレー152bを開状態とすることにより、長時間留まる温度帯域Tcにおいて、リーク電流を制限して燃料極のニッケルの電気化学的酸化反応を抑制する累積的効果が大きい。また、本実施形態では、リレー152bを停止工程の開始段階、具体的にはシャットダウン工程の開始時に開放するので、複数の燃料電池セル84に温度ばらつきがあったとしても、いずれの燃料電池セル84の温度も温度帯域Tcまで低下する前に、電圧センサ152の測定回路を開放状態にすることができる。このため、すべての燃料電池セル84において、上記の電気化学的酸化反応が発生することを防止することができる。
一方、本実施形態は、燃料電池セルユニット16の上端から流出するオフガス燃料を燃焼させ、燃料電池モジュール2内の発電室10,燃焼室18,改質器20等を昇温させるセルバーナー方式である。このため、起動工程において、燃料電池モジュール2内の温度は、徐々にしか上昇せず、燃料電池モジュール2内の温度が温度帯域Tcを通過するのにも、ある程度の長い時間を要する。したがって、停止工程と同様に、起動工程においても、燃料極のニッケルの電気化学的酸化が起こり得る。しかしながら、本実施形態では、燃料電池モジュール2内の温度が温度帯域Tcを通過した後に、リレー152bを閉状態にするため、起動工程においてもリーク電流を制限することができ、燃料極のニッケルの電気化学的酸化を抑制することが可能である。
次に、図14を参照して、本発明の他の実施形態による電流制限機構について説明する。図14は、電流制限機構としてリレーの代わりに電気抵抗を用いた例を示している。
図14に模式的に示すように、本実施形態では、複数の燃料電池セルユニット16の直列接続回路12aの両端が、電圧センサ153を介して接続されている。電圧センサ153は、電圧センサ本体153aと電気抵抗153bを備えている。電圧センサ本体153aは、電圧センサ本体152aと同様なものである。
本実施形態では、燃料電池セルユニット16の直列接続回路12a,及び電圧センサ153によって、従来と同様、常時、閉回路が形成されているので、電圧センサ153は、常時、この閉回路を流れる電流値に基づいて、燃料電池モジュール2の開回路電圧を測定可能である。
しかしながら、温度帯域Tc(本実施形態では、200〜290℃)において、燃料極のニッケルが酸素イオンによって電気化学的な酸化を受けた際に生じる電流は微量であり、起電力もわずかである。そして、本実施形態では、電圧センサ153に設けられた電気抵抗153bの電気抵抗値が、温度帯域Tcにおける起電力によって閉回路を流れる電流の大きさを所定の値以下に制限するように設定されている。即ち、本実施形態では、電気抵抗153bの電気抵抗値は、電圧センサ153が有意な精度で電圧値を測定することができず、このため、制御部110が測定電圧値に基づいて、燃料電池モジュール2の発電状態の異常判定を有意な精度で実行することができない程度まで、閉回路電流の大きさを制限するように設定されている。
一方、温度帯域Tcを所定温度幅(本例では約10℃)だけ超えた電圧測定開始温度Td(300℃)では、燃料極が活性状態となっているので、通常の発電反応により上記閉回路に正常な発電電流が流れ得る。電圧測定開始温度Td以上では、温度帯域Tcよりも起電力が大きく、また、電圧測定開始温度Td以上における通常の発電反応で発生し得る電流は、ニッケルの電気化学的酸化反応により発生するリーク電流よりも大きい。よって、電気抵抗153bの電気抵抗値は、電圧測定開始温度Td以上の通常の発電反応による電流に基づいて電圧センサ153が有意な精度で電圧値を測定可能であり、制御部110は、この測定電圧値に基づいて、発電状態の異常判定を有意な精度で実行することができる大きさに設定されている。
このように、本実施形態では、電圧測定開始温度Tdを温度帯域Tcよりも所定温度幅だけ高く設定することにより、制御部110が電圧センサ153による測定電圧値によって有意な精度で発電状態の異常判定を実行できるようになる閾値温度を、温度帯域Tcと電圧測定開始温度Tdの間に設定可能なように、電気抵抗153bの電気抵抗値を選択することが可能である。なお、上記所定温度幅は、本例では約10℃であるが、これに限らず、0℃以上の任意の値に設定することができる。
このような構成により、本実施形態では、停止工程及び起動工程において、燃料電池モジュール2内の温度が温度帯域Tcを通過する際に、燃料極が含有するニッケルの電気化学的酸化反応に起因するリーク電流を低減して、上記閉回路を実質的に絶縁状態に近い状態とすることにより、ニッケルの電気化学的酸化反応の発生を抑制し、電解質層の微小なクラックの発生を防止することができる。
1 固体酸化物型燃料電池
2 燃料電池モジュール
4 補機ユニット
6 ハウジング
7 断熱材
8 ケース
10 発電室
12 燃料電池セル集合体
12a 直列接続回路
14 燃料電池セルスタック
16 燃料電池セルユニット
18 燃焼室
20 改質器
22 空気用熱交換器
24 水供給源
26 純水タンク
28 水流量調整ユニット
30 燃料供給源
38 燃料流量調整ユニット
40 空気供給源
54 インバータ
84 燃料電池セル
90 内側電極層
90d 第1燃料極
90e 第2燃料極
92 外側電極層
92a 空気極
92b 集電層
94 電解質層
110 制御部
110a シャットダウン停止回路
110b 圧力保持制御回路
152,153 電圧センサ
152a,153a 電圧センサ本体
152b リレー(電流制限機構)
153b 電気抵抗(電流制限機構)
Ta 活性下限温度
Tb 活性下限温度
Tc 温度帯域(非正常電流発生可能温度帯域)
Td 電圧測定開始温度
Te 酸化下限温度

Claims (6)

  1. 空気極,燃料極,及び前記空気極と燃料極の間に配置された電解質を有する複数の燃料電池セルと、
    前記複数の燃料電池セルを電気的に接続する電流回路と、
    前記電流回路に流れる電流に基づいて前記電流回路の電圧を測定する電圧測定回路と、
    前記電圧測定回路による測定電圧に基づいて前記燃料電池セルの異常を判定する制御手段と、を備えた固体酸化物型燃料電池であって、
    前記燃料極の触媒活性が失活状態であるが、前記電解質が活性状態であり、酸素イオンを前記空気極から前記燃料極へ透過させることが可能な非正常電流発生可能温度帯域を備え、
    少なくとも停止工程中に、前記燃料電池セルの温度が前記非正常電流発生可能温度帯域にあるときには、前記測定電圧に基づいた前記制御手段による前記異常判定が物理的にできないように、前記電流回路の電流を制限する電流制限機構を更に備えたことを特徴とする固体酸化物型燃料電池。
  2. 前記固体酸化物型燃料電池は、前記燃料電池セル内に一端から供給された燃料が他端から流出され、流出したオフガスを燃焼させることにより前記燃料電池セルが配置された発電室内を加熱するセルバーナー方式であり、起動工程においても、前記非正常電流発生可能温度帯域では、前記電流制限機構が前記電流回路の電流を制限するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物型燃料電池。
  3. 前記電流制限機構は、前記電流回路に設けられた抵抗を備え、この抵抗は、前記非正常電流発生可能温度帯域において前記電流回路に生じる電流では、前記制御手段による前記異常判定が所定の精度以上で実行できないように前記電流の大きさを制限する電気抵抗値を有することを特徴とする請求項2に記載の固体酸化物型燃料電池。
  4. 起動工程中において、前記燃料電池セルの温度が前記非正常電流発生可能温度帯域以上且つ発電温度以下であるときに前記電流回路に生じる電流では、前記制御手段による前記異常判定が所定の精度以上で実行できるように、前記抵抗の電気抵抗値が設定されていることを特徴とする請求項3に記載の固体酸化物型燃料電池。
  5. 前記電流制限機構は、前記電気回路を開閉するリレーであり、
    前記制御手段は、停止工程において、少なくとも前記燃料電池セルへの燃料の供給を停止するシャットダウン停止を実行するように構成され、前記シャットダウン停止の実行時に前記リレーを開放するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物型燃料電池。
  6. 前記電流制限機構は、前記制御手段が、起動工程において、前記非正常電流発生可能温度帯域よりも所定温度だけ高い電圧測定開始温度未満の電圧測定禁止温度帯域では、前記測定電圧に基づく前記燃料電池セルの異常判定を実行することができず、前記電圧測定開始温度以上の電圧測定許可温度帯域では、前記測定電圧に基づく前記燃料電池セルの異常判定を実行することが可能であるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物型燃料電池。
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