次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)を示す全体構成図である。この図1に示すように、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材7を介して金属製のケース8が内蔵されている。この密閉空間であるケース8の下方部分である発電室10には、燃料と酸化剤ガス(空気)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。この燃料電池セル集合体12は、10個の燃料電池セルスタック14(図5参照)を備え、この燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16(図4参照)から構成されている。このように、燃料電池セル集合体12は、160本の燃料電池セルユニット16を有し、これらの燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。
燃料電池モジュール2のケース8の上述した発電室10の上方には、燃焼部である燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料と残余の酸化剤(空気)とが燃焼し、排気ガスを生成するようになっている。さらに、ケース8は断熱材7により覆われており、燃料電池モジュール2内部の熱が、外気へ発散するのを抑制している。
また、この燃焼室18の上方には、燃料を改質する改質器20が配置され、前記残余ガスの燃焼熱によって改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、残余ガスの燃焼ガスにより発電用の空気を加熱し、発電用の空気を予熱する熱交換器である空気用熱交換器22が配置されている。
次に、補機ユニット4は、燃料電池モジュール2からの排気中に含まれる水分を結露させた水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この貯水タンクから供給される水の流量を調整する水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料を遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)と、電源喪失時において、燃料流量調整ユニット38から流出する燃料ガスを遮断するバルブ39を備えている。さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される酸化剤ガスである空気を遮断する電磁弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、改質器20に供給される改質用空気を加熱する第1ヒータ46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒータ48とを備えている。これらの第1ヒータ46と第2ヒータ48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
次に、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
次に、図2及び図3により、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)の燃料電池モジュールの内部構造を説明する。図2は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)の燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。
図2及び図3に示すように、燃料電池モジュール2のハウジング6内のケース8には、上述したように、下方から順に、燃料電池セル集合体12、改質器20、空気用熱交換器22が配置されている。
改質器20は、その上流端側の端部側面に純水、改質される燃料ガス、及び改質用空気を導入するための改質器導入管62が取り付けられている。
改質器導入管62は、改質器20の一端の側壁面から延びる円管であり、90゜屈曲されて概ね鉛直方向に延び、ケース8の上端面を貫通している。なお、改質器導入管62は、改質器20に水を導入する水導入管として機能している。また、改質器導入管62の上端には、T字管62aが接続されており、このT字管62aの概ね水平方向に延びる管の両側の端部には、燃料ガス及び純水を供給するための配管が夫々接続されている。水供給用配管63aはT字管62aの一方の側端から斜め上方に向けて延びている。燃料ガス供給用配管63bはT字管62aの他方の側端から水平方向に延びた後、U字型に屈曲され、水供給用配管63aと同様の方向に、概ね水平に延びている。
一方、改質器20の内部には、上流側から順に、蒸発部20a、混合部20b、改質部20cが形成され、この改質部20cには改質触媒が充填されている。この改質器20に導入された水蒸気(純水)が混合された燃料ガス及び空気は、改質器20内に充填された改質触媒により改質される。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。
この改質器20の下流端側には、燃料ガス供給管64が接続され、この燃料ガス供給管64は、下方に延び、さらに、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内で水平に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、改質された燃料ガスがマニホールド66内に供給される。また、燃料ガス供給管64の鉛直部の途中には、流路が狭められた圧力変動抑制用流路抵抗部64cが設けられ、燃料ガスの供給流路の流路抵抗が調整されている。流路抵抗の調整については後述する。
このマニホールド66の上方には、上述した燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セルユニット16内に供給される。
一方、改質器20の上方には、空気用熱交換器22が設けられている。
また、図2に示すように、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
次に図4により燃料電池セルユニット16について説明する。図4は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
図4に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の両端部にそれぞれ接続されたキャップである内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
燃料電池セル84の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路細管98が形成されている。
この燃料ガス流路細管98は、内側電極端子86の中心から燃料電池セル84の軸線方向に延びるように設けられた細長い細管である。このため、マニホールド66(図2)から、下側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98を通って燃料ガス流路88に流入する燃料ガスの流れには、所定の圧力損失が発生する。従って、下側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98は、流入側流路抵抗部として作用し、その流路抵抗は所定の値となるように設定されている。また、燃料ガス流路88から、上側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98を通って燃焼室18(図2)に流出する燃料ガスの流れにも所定の圧力損失が発生する。従って、上側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98は、流出側流路抵抗部として作用し、その流路抵抗は所定の値となるように設定されている。
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
次に図5により燃料電池セルスタック14について説明する。図5は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図5に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16は、8本ずつ2列に並べて配置されている。各燃料電池セルユニット16は、下端側がセラミック製の長方形の下支持板68(図2)により支持され、上端側は、両端部の燃料電池セルユニット16が4本ずつ、概ね正方形の2枚の上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴がそれぞれ形成されている。
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、空気極である外側電極層92の外周面と電気的に接続される空気極用接続部102bとを接続するように一体的に形成されている。また、各燃料電池セルユニット16の外側電極層92(空気極)の外表面全体には、空気極側の電極として、銀製の薄膜が形成されている。この薄膜の表面に空気極用接続部102bが接触することにより、集電体102は空気極全体と電気的に接続される。
さらに、燃料電池セルスタック14の端(図5では左端の奥側)に位置する燃料電池セルユニット16の空気極86には、2つの外部端子104がそれぞれ接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の内側電極端子86に接続され、上述したように、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
次に図6により本実施形態による固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)に取り付けられたセンサ類等について説明する。図6は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)を示すブロック図である。
図6に示すように、固体酸化物型燃料電池システム1は、制御部110を備え、この制御部110には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置112、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置114、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置116が接続されている。また、制御部110には、マイクロプロセッサ、メモリ、及びこれらを作動させるプログラム(以上、図示せず)が内蔵されており、これらにより、各センサからの入力信号に基づいて、補機ユニット4、インバータ54等が制御される。なお、この報知装置116は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであっても良い。
次に、制御部110には、以下に説明する種々のセンサからの信号が入力されるようになっている。
先ず、可燃ガス検出センサ120は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。
CO検出センサ122は、本来排気ガス通路80等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。
貯湯状態検出センサ124は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
電力状態検出センサ126は、燃料電池モジュール2の出力電流及び電圧等を検知するためのものである。
発電用空気流量検出センサ128は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。
改質用空気流量センサ130は、改質器20に供給される改質用空気の流量を検出するためのものである。
燃料流量センサ132は、改質器20に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
水流量センサ134は、改質器20に供給される純水の流量を検出するためのものである。
水位センサ136は、純水タンク26の水位を検出するためのものである。
圧力センサ138は、改質器20の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。
排気温度センサ140は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
発電室温度センサ142は、図3に示すように、燃料電池セル集合体12の近傍の前面側と背面側に設けられ、燃料電池セルスタック14の近傍の温度を検出して、燃料電池セルスタック14(即ち燃料電池セル84自体)の温度を推定するためのものである。
燃焼室温度センサ144は、燃焼室18の温度を検出するためのものである。
排気ガス室温度センサ146は、排気ガス室78の排気ガスの温度を検出するためのものである。
改質器温度センサ148は、改質器20の温度を検出するためのものであり、改質器20の入口温度と出口温度から改質器20の温度を算出する。
外気温度センサ150は、固体酸化物型燃料電池システム(SOFC)が屋外に配置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサを設けるようにしても良い。
これらのセンサ類からの信号は、制御部110に送られ、制御部110は、これらの信号によるデータに基づき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、改質用空気流量調整ユニット44、発電用空気流量調整ユニット45に、制御信号を送り、これらのユニットにおける各流量を制御するようになっている。
次に、図7乃至図9を参照して、改質器20の詳細な構成を説明する。
図7は改質器20の斜視図であり、図8は、天板を取り除いて改質器20の内部を示した斜視図である。図9は、改質器20内部の燃料の流れを示す平面断面図である。
図7に示すように、改質器20は、直方体状の金属製の箱であり、内部には燃料を改質するための改質触媒が充填されている。また、改質器20の上流側には水、燃料及び改質用空気を導入するための改質器導入管62が接続されている。さらに、改質器20の下流側には、内部で改質された燃料を流出させる燃料ガス供給管64が接続されている。
図8に示すように、改質器20の内部には、その上流側に蒸発室である蒸発部20aが設けられ、この蒸発部20aに隣接して、下流側には混合部20bが設けられている。さらに、混合部20bに隣接して、下流側には改質部20cが設けられている。蒸発部20aの内部には、複数の仕切り板が配置されることにより、曲がりくねって蛇行する通路が形成されている。改質器20に導入された水は、温度が上昇した状態では蒸発部20a内で蒸発され、水蒸気となる。さらに、混合部20bは所定の容積を有するチャンバーから構成され、その内部にも、複数の仕切り板が配置されることにより、曲がりくねって蛇行する通路が形成されている。改質器20に導入された燃料ガス、改質用空気は、混合部20bの曲がりくねった通路を通りながら蒸発部20aで生成された水蒸気と混合される。
一方、改質部20cの内部にも、複数の仕切り板が配置されることにより曲がりくねった通路が形成され、この通路に触媒が充填されている。蒸発部20a、混合部20bを通って燃料ガス、水蒸気及び改質用空気の混合物が導入されると、改質部20cでは、部分酸化改質反応及び水蒸気改質反応が発生する。さらに、燃料ガス、及び水蒸気の混合物が導入されると、改質部20cでは、水蒸気改質反応のみが発生する。
なお、本実施形態においては、蒸発部、混合部、改質部が一体に構成され、1つの改質器を形成しているが、変形例として、改質部のみを備えた改質器を設け、この上流側に隣接して混合部、蒸発室を設けることもできる。
図8及び図9に示すように、改質器20の蒸発部20aに導入された燃料ガス、水及び改質用空気は、改質器20の横断方向に蛇行して流れ、この間に、導入された水は蒸発し、水蒸気となる。蒸発部20aと混合部20bの間には、蒸発/混合部隔壁20dが設けられ、この蒸発/混合部隔壁20dには隔壁開口20eが設けられている。この隔壁開口20eは、蒸発/混合部隔壁20dの片側約半分のうちの、上側約半分の領域に設けられた長方形の開口部である。
また、混合部20bと改質部20cの間には、混合/改質部隔壁20fが設けられ、この混合/改質部隔壁20fには多数の連通孔20gを設けることにより狭小流路が形成されている。混合部20b内において混合された燃料ガス等は、これらの連通孔20gを通って改質部20cに流入する。
改質部20cに流入した燃料等は、改質部20cの中央を長手方向に流れた後、2つに分岐して折返し、2つの通路は再び折り返して改質部20cの下流端に向かい、そこで合流されて燃料ガス供給管64に流入する。燃料は、このように蛇行した通路を通過しながら、通路に充填された触媒により改質される。なお、蒸発部20a内においては、或る量の水が短時間に急激に蒸発する突沸が発生し、内部の圧力が上昇する場合がある。しかしながら、混合部20bには所定容積のチャンバーが構成され、混合/改質部隔壁20fには狭小流路が形成されているため、改質部20cには、蒸発部20a内の急激な圧力変動の影響が及びにくい。従って、混合部20bのチャンバー及び混合/改質部隔壁20fの狭小流路は圧力変動吸収手段として機能する。
次に、図10及び図11を新たに参照すると共に、図2及び図3を再び参照して、発電酸化剤ガス用熱交換器である空気用熱交換器22の構造を詳細に説明する。図10は、ハウジング6内に収納された金属製のケース8及び空気用熱交換器22を示す斜視図である。図11は、蒸発室用断熱材と、蒸発部の位置関係を示す断面図である。
図10に示すように、空気用熱交換器22は、燃料電池モジュール2内のケース8の上方に配置された熱交換器である。また、図2及び図3に示すように、ケース8の内部には燃焼室18が形成され、複数の燃料電池セルユニット16、改質器20等が収納されているので、空気用熱交換器22は、これらの上方に位置する。空気用熱交換器22は、燃焼室18内で燃焼され、排気として排出される燃焼ガスの熱を回収、利用して、燃料電池モジュール2内に導入された発電用の空気を予熱するように構成されている。また、図10に示すように、ケース8の上面と空気用熱交換器22の底面との間には、内部断熱材である蒸発室用断熱材23が、これらの間に挟まれるように配置されている。即ち、蒸発室用断熱材23は、改質器20と空気用熱交換器22の間に配置されている。さらに、図10に示されている空気用熱交換器22及びケース8の外側を、外側断熱材である断熱材7が覆っている(図2)。
図2及び図3に示すように、空気用熱交換器22は、複数の燃焼ガス配管70と発電用空気流路72と、を有する。また、図2に示すように、複数の燃焼ガス配管70の一方の端部には、排気ガス集約室78が設けられており、この排気ガス集約室78は、各燃焼ガス配管70に連通されている。また、排気ガス集約室78には、排気ガス排出管82が接続されている。さらに、各燃焼ガス配管70の他方の端部は開放されており、この開放された端部は、ケース8の上面に形成された連通開口8aを介して、ケース8内の燃焼室18に連通されている。
燃焼ガス配管70は、水平方向に向けられた複数の金属製の円管であり、各円管は夫々平行に配置されている。一方、発電用空気流路72は、各燃焼ガス配管70の外側の空間によって構成されている。また、発電用空気流路72の、排気ガス排出管82側の端部には、発電用空気導入管74(図10)が接続されており、燃料電池モジュール2の外部の空気が、発電用空気導入管74を通って発電用空気流路72に導入される。なお、図10に示すように、発電用空気導入管74は、排気ガス排出管82と平行に、空気用熱交換器22から水平方向に突出している。さらに、発電用空気流路72の他方の端部の両側面には、一対の連絡流路76(図3、図10)が接続されており、発電用空気流路72と各連絡流路76は、夫々、出口ポート76aを介して連通されている。
図3に示すように、ケース8の両側面には、発電用空気供給路77が夫々設けられている。空気用熱交換器22の両側面に設けられた各連絡流路76は、ケース8の両側面に設けられた発電用空気供給路77の上部に夫々連通されている。また、各発電用空気供給路77の下部には、多数の吹出口77aが水平方向に並べて設けられている。各発電用空気供給路77を通って供給された発電用の空気は、多数の吹出口77aから、燃料電池モジュール2内の燃料電池セルスタック14の下部側面に向けて噴射される。
また、ケース8内部の天井面には、隔壁である整流板21が取り付けられており、この整流板21には開口部21aが設けられている。
整流板21は、ケース8の天井面と改質器20の間に、水平に配置された板材である。この整流板21は、燃焼室18から上方に流れる気体の流れを整え、空気用熱交換器22の入り口(図2の連通開口8a)に導くように構成されている。燃焼室18から上方へ向かう発電用空気及び燃焼ガスは、整流板21の中央に設けられた開口部21aを通って整流板21の上側に流入し、整流板21の上面とケース8の天井面の間の排気通路21bを図2における左方向に流れ、空気用熱交換器22の入り口に導かれる。また、図11に示すように、開口部21aは、改質器20の改質部20cの上方に設けられており、開口部21aを通って上昇した気体は、蒸発部20aとは反対側の、図2、図11における左側の排気通路21bに流れる。このため、蒸発部20aの上方の空間(図2、図11における右側)は、改質部20cの上方の空間よりも排気の流れが遅く、排気の流れが淀む気体滞留空間21cとして作用する。
また、整流板21の開口部21aの縁には、全周に亘って縦壁21dが設けられており、この縦壁21dにより、整流板21の下側の空間から整流板21の上側の排気通路21bに流入する流路が狭められている。さらに、排気通路21bと空気用熱交換器22を連通させる連通開口8aの縁にも、全周に亘って下がり壁8b(図2)が設けられており、この下がり壁8bにより、排気通路21bから空気用熱交換器22に流入する流路が狭められている。これらの縦壁21d、下がり壁8bを設けることにより、燃焼室18から空気用熱交換器22を通って燃料電池モジュール2の外部に至る排気の通路における流路抵抗が調整されている。流路抵抗の調整については後述する。
蒸発室用断熱材23は、空気用熱交換器22の底面に、概ねその全体を覆うように取り付けられた断熱材である。従って、蒸発室用断熱材23は、蒸発部20a全体の上方に亘って配置されている。この蒸発室用断熱材23は、整流板21の上面とケース8の天井面の間に形成された排気通路21b及び気体滞留空間21c内の高温の気体が、空気用熱交換器22の底面を直接加熱するのを抑制するように配置されている。このため、燃料電池モジュール2の運転中においては、蒸発部20aの上方の排気通路に滞留している排気から、空気用熱交換器22の底面に直接伝わる熱が少なくなり、蒸発部20a周囲の温度は上昇しやすくなる。また、燃料電池モジュール2の停止後においては、蒸発室用断熱材23が配置されていることにより、改質器20からの熱の発散が抑制され、即ち、蒸発部20a周囲の熱が空気用熱交換器22に奪われにくくなり、蒸発部20aの温度低下が緩やかになる。
なお、蒸発室用断熱材23は、外気への熱の散逸を抑制するために、燃料電池モジュール2のケース8及び空気用熱交換器22全体を覆っている外側断熱材である断熱材7とは別に、断熱材7の内部に配置された断熱材である。また、断熱材7は、蒸発室用断熱材23よりも断熱性が高く構成されている。即ち、断熱材7の内面と外面の間の熱抵抗は、蒸発室用断熱材23の上面と下面の間の熱抵抗よりも大きくなっている。即ち、断熱材7と蒸発室用断熱材23を同一の材料で構成する場合には、断熱材7を蒸発室用断熱材23よりも厚く構成する。
次に、固体酸化物型燃料電池システム1の発電運転時における燃料、発電用空気、及び排気ガスの流れを説明する。
まず、燃料は、燃料ガス供給用配管63b、T字管62a、改質器導入管62を介して改質器20の蒸発部20aに導入されると共に、純水は、水供給用配管63a、T字管62a、改質器導入管62を介して蒸発部20aに導入される。従って、供給された燃料及び水はT字管62aにおいて合流され、改質器導入管62を通って蒸発部20aに導入される。発電運転中においては、蒸発部20aは高温に加熱されているため、蒸発部20aに導入された純水は、比較的速やかに蒸発され水蒸気となる。蒸発された水蒸気及び燃料は、混合部20b内で混合され、改質器20の改質部20cに流入する。水蒸気と共に改質部20cに導入された燃料は、ここで水蒸気改質され、水素を豊富に含む燃料ガスに改質される。改質部20cにおいて改質された燃料は、燃料ガス供給管64を通って下方に下り、分散室であるマニホールド66に流入する。
マニホールド66は、燃料電池セルスタック14の下側に配置された比較的体積の大きい直方体状の空間であり、その上面に設けられた多数の穴が燃料電池セルスタック14を構成する各燃料電池セルユニット16の内側に連通している。マニホールド66に導入された燃料は、その上面に設けられた多数の穴を通って、燃料電池セルユニット16の燃料極側、即ち、燃料電池セルユニット16の内部を通って、その上端から流出する。また、燃料である水素ガスが燃料電池セルユニット16の内部を通過する際、空気極(酸化剤ガス極)である燃料電池セルユニット16の外側を通る空気中の酸素と反応して電荷が生成される。この発電に使用されずに残った残余燃料は、各燃料電池セルユニット16の上端から流出し、燃料電池セルスタック14の上方に設けられた燃焼室18内で燃焼される。
一方、酸化剤ガスである発電用の空気は、発電用の酸化剤ガス供給装置である発電用空気流量調整ユニット45によって、発電用空気導入管74を介して燃料電池モジュール2内に送り込まれる。燃料電池モジュール2内に送り込まれた空気は、発電用空気導入管74を介して空気用熱交換器22の発電用空気流路72に導入され、予熱される。予熱された空気は、各出口ポート76a(図3)を介して各連絡流路76に流出する。各連絡流路76に流入した発電用の空気は、燃料電池モジュール2の両側面に設けられた発電用空気供給路77を通って下方に流れ、多数の吹出口77aから、燃料電池セルスタック14に向けて発電室10内に噴射される。
発電室10内に噴射された空気は、燃料電池セルスタック14の空気極側(酸化剤ガス極側)である各燃料電池セルユニット16の外側面に接触し、空気中の酸素の一部が発電に利用される。また、吹出口77aを介して発電室10の下部に噴射された空気は、発電に利用されながら発電室10内を上昇する。発電室10内を上昇した空気は、各燃料電池セルユニット16の上端から流出する燃料を燃焼させる。この燃焼による燃焼熱は、燃料電池セルスタック14の上方に配置された改質器20の蒸発部20a、混合部20b及び改質部20cを加熱する。燃料が燃焼され、生成された燃焼ガスは、上方の改質器20を加熱した後、改質器20上方の開口部21aを通って整流板21の上側に流入する。整流板21の上側に流入した燃焼ガスは、整流板21によって構成された排気通路21bを通って空気用熱交換器22の入り口である連通開口8aに導かれる。連通開口8aから空気用熱交換器22に流入した燃焼ガスは、開放された各燃焼ガス配管70の端部に流入し、各燃焼ガス配管70外側の発電用空気流路72を流れる発電用空気との間で熱交換を行い、排気ガス集約室78に集約される。排気ガス集約室78に集約された排気ガスは、排気ガス排出管82を介して燃料電池モジュール2の外部に排出される。これにより、蒸発部20aにおける水の蒸発、及び改質部20cにおける吸熱反応である水蒸気改質反応が促進されると共に、空気用熱交換器22内の発電用空気が予熱される。
次に、図12を新たに参照して、固体酸化物型燃料電池システム1の起動工程における制御を説明する。
図12は、起動工程における燃料等の各供給量、及び各部の温度の一例を示すタイムチャートである。なお、図12の縦軸の目盛りは温度を示しており、燃料等の各供給量は、それらの増減を概略的に示したものである。
図12に示す起動工程においては、常温の状態にある燃料電池セルスタック14の温度を、発電が可能な温度まで上昇させる。
まず、図12の時刻t0において、発電用空気及び改質用空気の供給が開始される。具体的には、コントローラである制御部110が、発電用の酸化剤ガス供給装置である発電用空気流量調整ユニット45に信号を送って、これを作動させる。上述したように、発電用空気は、発電用空気導入管74を介して燃料電池モジュール2内に導入され、空気用熱交換器22、発電用空気供給路77を経て発電室10内に流入する。また、制御部110は、改質用の酸化剤ガス供給装置である改質用空気流量調整ユニット44に信号を送って、これを作動させる。燃料電池モジュール2内に導入された改質用空気は、改質器20、マニホールド66を経て、各燃料電池セルユニット16の内部に流入し、その上端から流出する。なお、時刻t0においては、まだ燃料が供給されていないため、改質器20内において改質反応は発生しない。本実施形態においては、図12の時刻t0において開始される発電用空気の供給量は約100L/minであり、改質用空気の供給量は約10.0L/minである。
次いで、図12の時刻t0から所定時間後の時刻t1において、燃料の供給が開始される。具体的には、制御部110が、燃料供給装置である燃料流量調整ユニット38に信号を送って、これを作動させる。本実施形態においては、時刻t1において開始される燃料の供給量は約5.0L/minである。燃料電池モジュール2内に導入された燃料は、改質器20、マニホールド66を経て、各燃料電池セルユニット16の内部に流入し、その上端から流出する。なお、時刻t1においては、まだ改質器の温度が低温であるため、改質器20内において改質反応は発生しない。
次に、図12の時刻t1から所定時間経過した時刻t2において、供給されている燃料への点火工程が開始される。具体的には、点火工程においては、制御部110が、点火手段である点火装置83(図2)に信号を送り、各燃料電池セルユニット16の上端から流出する燃料に点火する。点火装置83は、燃料電池セルスタック14の上端近傍で繰り返し火花を発生させ、各燃料電池セルユニット16の上端から流出する燃料に点火する。
図12の時刻t3において着火が完了すると、改質用の水の供給が開始される。具体的には、制御部110が、水供給装置である水流量調整ユニット28(図6)に信号を送り、これを作動させる。本実施形態においては、時刻t3に開始される水の供給量は、2.0cc/minである。時刻t3においては、燃料供給量は、従前の約5.0L/minに維持される。また、発電用空気及び改質用空気の供給量も、従前の値に維持される。なお、この時刻t3において、改質用空気中の酸素O2と燃料中の炭素Cの比O2/Cは約0.32になる。
図12の時刻t3において着火された後、供給された燃料は、各燃料電池セルユニット16の上端からオフガスとして流出し、ここで燃焼される。この燃焼熱は、燃料電池セルスタック14の上方に配置された改質器20を加熱する。ここで、改質器20の上方(ケース8の上)には、蒸発室用断熱材23が配置されており、これにより、燃料の燃焼開始直後において、改質器20の温度は常温から急激に上昇する。蒸発室用断熱材23の上に配置されている空気用熱交換器22には外気が導入されているため、空気用熱交換器22は、特に燃焼開始直後においては温度が低く、冷却源となりやすい。本実施形態においては、ケース8の上面と空気用熱交換器22の底面の間に蒸発室用断熱材23が配置されていることにより、ケース8内の上部に配置された改質器20から空気用熱交換器22への熱の移動が抑制され、ケース8内の改質器20付近には熱が籠もりやすくなる。加えて、蒸発部20aの上方の、整流板21の上側の空間は、燃焼ガスの流れが遅くなる気体滞留空間21c(図2)として構成されているため、蒸発部20a付近は二重に断熱され、より急速に温度が上昇する。
このように、蒸発部20aの温度が急速に上昇することにより、オフガスの燃焼開始後短時間で水蒸気を生成することが可能になる。また、蒸発部20aには、改質用の水が少量ずつ供給されているため、多量の水が蒸発部20aに貯留されている場合に比べ、わずかな熱で水を沸点まで加熱することができ、早急に水蒸気の供給を開始することができる。さらに、水流量調整ユニット28の作動開始直後から水が流入するため、水の供給遅れによる、蒸発部20aの過剰な温度上昇、及び水蒸気の供給遅れを回避することができる。
なお、オフガスの燃焼開始後、或る程度の時間が経過すると、燃焼室18から空気用熱交換器22に流入する排気ガスにより、空気用熱交換器22の温度も上昇する。改質器20と空気用熱交換器22の間を断熱する蒸発室用断熱材23は、断熱材7の内側に設けられた断熱材である。従って、蒸発室用断熱材23は、燃料電池モジュール2からの熱の散逸を抑制するものではなく、オフガスの燃焼開始直後において、改質器20、特に、その蒸発部20aの温度を急速に上昇させる。
このようにして、改質器20の温度が上昇した時刻t4において、蒸発部20aを経て改質部20bに流入した燃料と改質用空気が、式(1)に示す部分酸化改質反応を起こすようになる。
CmHn+xO2 → aCO2+bCO+cH2 (1)
この部分酸化改質反応は発熱反応であるため、改質部20b内で部分酸化改質反応が発生すると、その周囲の温度が局部的に急上昇する。
一方、本実施形態においては、着火が確認された直後の時刻t3から改質用の水の供給が開始されており、また、蒸発部20aの温度が急速に上昇するように構成されているため、時刻t4においては、既に蒸発部20a内で水蒸気が生成され、改質部20bに供給されている。即ち、オフガスに着火された後、改質部20bの温度が部分酸化改質反応が発生する温度に到達する所定時間前から水の供給が開始され、部分酸化改質反応が発生する温度に到達した時点においては、蒸発部20aに所定量の水が貯留され、水蒸気が生成されている。このため、部分酸化改質反応の発生により温度が急上昇すると、改質部20bに供給されている改質用の水蒸気と燃料が反応する水蒸気改質反応が発生する。この水蒸気改質反応は、式(2)に示す吸熱反応であり、部分酸化改質反応よりも高い温度で発生する。
CmHn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (2)
このように、図12の時刻t4に到達すると、改質部20b内では部分酸化改質反応が発生するようになり、また、部分酸化改質反応が発生することによる温度上昇で、水蒸気改質反応も同時に発生するようになる。従って、時刻t4以降に改質部20b内で発生する改質反応は、部分酸化改質反応と水蒸気改質反応が混在した式(3)に示すオートサーマル改質反応(ATR)となる。即ち、時刻t4においてATR1工程が開始される。
CmHn+xO2+yH2O → aCO2+bCO+cH2 (3)
このように、本発明の実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1では、起動工程の全期間において水が供給されており、部分酸化改質反応(POX)が単独で発生することはない。なお、図12に示すタイムチャートでは、時刻t4における改質器温度は約200℃である。この改質器温度は部分酸化改質反応が発生する温度よりも低いが、改質器温度センサ148(図6)により検出されている温度は改質部20bの平均的な温度である。実際には、時刻t4においても、改質部20bは部分的には部分酸化改質反応が発生する温度に到達しており、発生した部分酸化改質反応の反応熱により、水蒸気改質反応をも誘発される。このように、本実施形態においては、着火された後、改質部20bが部分酸化改質が発生する温度に到達する前から、水の供給が開始されており、部分酸化改質反応が単独で発生することがない。
次に、改質器温度センサ148による検出温度が約500℃以上に到達すると、図12の時刻t5において、ATR1工程からATR2工程に移行される。時刻t5において、水供給量が2.0cc/minから3.0cc/minに変更される。また、燃料供給量、改質用空気供給量及び発電用空気供給量は従前の値が維持される。これにより、ATR2工程における水蒸気と炭素の比S/Cは0.64に増加される一方、改質用空気と炭素の比O2/Cは0.32に維持される。このように、改質用空気と炭素の比O2/Cを一定に維持しながら、水蒸気と炭素の比S/Cを増加させることにより、部分酸化改質可能な炭素の量を低下させずに、水蒸気改質可能な炭素の量が増加される。これにより、改質部20bにおける炭素析出のリスクを確実に回避しながら、改質部20bの温度上昇と共に、水蒸気改質される炭素の量を増加させることができる。
さらに、図12の時刻t6本実施形態において、発電室温度センサ142による検出温度が約400℃以上に到達すると、ATR2工程からATR3工程に移行される。これに伴い、燃料供給量が5.0L/minから4.0L/minに変更され、改質用空気供給量が9.0L/minから6.5L/minに変更される。また、水供給量及び発電用空気供給量は従前の値が維持される。これにより、ATR3工程における水蒸気と炭素の比S/Cは0.80に増加される一方、改質用空気と炭素の比O2/Cは0.29に減少される。
さらに、図12の時刻t7において、発電室温度センサ142による検出温度が約550℃以上に到達すると、SR1工程に移行される。これに伴い、燃料供給量が4.0L/minから3.0L/minに変更され、水供給量が3.0cc/minから7.0cc/minに変更される。また、改質用空気の供給は停止され、発電用空気供給量は従前の値が維持される。これにより、SR1工程では、改質部20b内で専ら水蒸気改質が発生するようになり、水蒸気と炭素の比S/Cは、供給された燃料の全量を水蒸気改質するために適切な2.49に設定される。図12の時刻t7においては、改質器20、燃料電池セルスタック14とも、十分に温度が上昇しているので、改質部20bにおいて部分酸化改質反応が発生していなくとも、水蒸気改質反応を安定して発生させることができる。
次に、図12の時刻t8において、発電室温度センサ142による検出温度が約600℃以上に到達すると、SR2工程に移行される。これに伴い、燃料供給量が3.0L/minから2.5L/minに変更され、水供給量が7.0cc/minから6.0cc/minに変更される。また、発電用空気供給量は従前の値が維持される。これにより、SR2工程では、水蒸気と炭素の比S/Cは、2.56に設定される。
さらに、SR2工程を所定時間実行した後、発電工程に移行する。発電工程においては、燃料電池セルスタック14からインバータ54(図6)に電力が取り出され、発電が開始される。なお、発電工程では、改質部20bにおいて、専ら水蒸気改質により燃料が改質される。また、発電運転中においては、燃料電池モジュール2に対して要求される出力電力に対応して、燃料供給量、発電用空気供給量、及び水供給量が変更される。さらに、発電運転中においては、制御部110は、燃料供給量、発電用空気供給量、及び水供給量を、燃料電池セルスタック14の温度が所定の発電温度範囲である適正温度域内になるように制御している。
次に、図13乃至図29を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池システム1の停止について説明する。
まず、図29を参照して、従来の固体酸化物型燃料電池システムにおけるシャットダウン停止時の挙動を説明する。図29は、従来の固体酸化物型燃料電池システムの停止挙動の一例を模式的に時系列で表したタイムチャートである。
まず、図29の時刻t501において、発電運転されていた燃料電池のシャットダウン停止操作が行われている。これにより、燃料電池モジュール内の温度が低下するのを待つことなく、短時間で燃料供給量、改質用の水供給量、及び発電用の空気供給量がゼロにされ、燃料電池モジュールから取り出される電流(発電電流)もゼロにされる。即ち、燃料電池モジュールへの燃料、水、発電用の空気の供給が短時間で停止され、燃料電池モジュールからの電力の取り出しが停止される。また、災害等により、固体酸化物型燃料電池システムへの燃料及び電気の供給が喪失した場合も、停止挙動は図29と同様の状態になる。なお、図29における各供給量、電流、電圧のグラフは、単に変化傾向を示すものであり、具体的な値を表したものではない。
時刻t501において電力の取り出しが停止されたことにより、燃料電池セルスタックに生じる電圧値は上昇(ただし、電流はゼロ)する。また、時刻t501において、発電用の空気供給量がゼロにされているため、燃料電池モジュール内に空気が強制的に送り込まれることはなく、時刻t501以後、長時間に亘って燃料電池セルスタックは自然冷却される。
仮に、時刻t501の後も、燃料電池モジュール内に空気を供給し続けたとすれば、送り込まれた空気により燃料電池モジュール内の圧力は上昇する。一方、燃料の供給は既に停止されているので、燃料電池セルユニットの内部の圧力は低下し始める。このため、燃料電池モジュールの発電室内に送り込まれた空気が、上端から、燃料電池セルユニット内側の燃料極側に逆流すると考えられる。時刻t501においては、燃料電池セルスタックは高温状態にあるため、燃料極側に空気が逆流すると、燃料極が酸化して、燃料電池セルユニットは損傷されてしまう。これを避けるために、従来の燃料電池においては、図29に示すように、シャットダウン停止により燃料供給を停止した直後は、電源が喪失されていない場合であっても、発電用の空気も速やかに停止されていた。
さらに、シャットダウン停止の後、6乃至7時間程度経過し、燃料電池モジュール内の温度が燃料極の酸化下限温度未満に低下した後、再び燃料電池モジュール内へ空気を供給することも行われている(図示せず)。このような空気の供給は、滞留している燃料ガスを排出する目的で実行されものであるが、燃料電池セルスタックの温度が燃料極の酸化下限温度未満に低下している状態では、仮に燃料極に空気が逆流したとしても、燃料極が酸化されることはない。
しかしながら、本件発明者は、このような従来の燃料電池におけるシャットダウン停止を行ったとしても、燃料極側に空気が逆流し、燃料極が酸化されるリスクがあることを見出した。
空気極側から燃料極側への空気の逆流は、燃料電池セルユニットの内側(燃料極側)と外側(空気極側)の圧力差に基づいて発生する。燃料ガス及び発電用空気が供給されているシャットダウン停止前の状態においては、燃料電池セルユニットの燃料極側には、改質された燃料が圧送されている。一方、燃料電池セルユニットの空気極側にも発電用空気が送り込まれている。この状態では、燃料電池セルユニットの燃料極側の圧力が、空気極側の圧力よりも高く、燃料電池セルユニットの燃料極側から空気極側へ燃料が噴出している。
次いで、シャットダウン停止により燃料ガス及び発電用空気の供給が停止されると、圧力が高い状態にあった燃料極側から、圧力の低い空気極側へ燃料が噴出する。また、燃料電池モジュール内の空気極側の圧力も、外気の圧力(大気圧)よりも高い状態にあるため、シャットダウン停止の後、燃料電池モジュール内の空気極側の空気(及び燃料極側から噴出した燃料ガス)は、排気通路を通って燃料電池モジュールの外部に排出される。このため、シャットダウン停止の後は、燃料電池セルユニットの燃料極側、空気極側とも圧力が低下し、最終的には大気圧に収斂する。従って、燃料極側及び空気極側において圧力が低下する挙動は、燃料電池セルユニットの燃料極側と空気極側の間の流路抵抗、燃料電池モジュール内の空気極側と外気との間の流路抵抗等の影響を受けることになる。なお、燃料極側と空気極側の圧力が等しい状態においては、拡散により、空気極側の空気が燃料極側へ侵入する。
しかしながら、実際には、燃料電池モジュールの内部は高温の状態にあるため、シャットダウン停止後における圧力の挙動は、燃料極側及び空気極側の温度変化にも影響を受ける。例えば、燃料電池セルユニットの燃料極側の温度が、空気極側よりも急激に低下した場合、燃料電池セルユニット内の燃料ガスの体積が収縮するため、燃料極側の圧力が低下して空気の逆流が発生する。このように、シャットダウン停止後における燃料極側及び空気極側の圧力は、燃料電池モジュール内各部の流路抵抗、燃料電池モジュール内の温度分布、蓄積されている熱量等の影響を受け、非常に複雑に変化する。
燃料電池セルユニットの燃料極側及び空気極側に存在する気体の成分は、電流を取りだしていない状態(出力電流=0)におけるセルスタックの出力電圧に基づいて推定することができる。図29の太い破線に示すように、時刻t501のシャットダウン停止の直後は、セルスタックの出力電圧は急激に上昇する(図29のA部)。これは、シャットダウン停止の直後は、燃料極側には多くの水素が存在し、空気極側には空気が存在すると共に、セルスタックから取り出される電流が0にされるためである。次いで、セルスタックの出力電圧は急激に低下するが(図29のB部)、これは、シャットダウン停止後に、各燃料電池セルユニットの燃料極側に存在していた水素が流出して燃料極側の水素の濃度が低下すると共に、流出した水素により、空気極側の空気の濃度が低下するためであると推定される。
次いで、セルスタックの出力電圧は時間の経過と共に低下し、燃料電池モジュール内の温度が酸化下限温度未満に低下した時点(図29のC部)では、出力電圧は大きく低下している。この状態においては、各燃料電池セルユニットの燃料極側には殆ど水素が残っていないものと推定され、従来の燃料電池においては、燃料極は酸化の危険に晒されている。実際に、従来の燃料電池においては、多くの場合に、燃料電池モジュール内の温度が酸化下限温度未満に低下する前に、燃料極側の圧力が空気極側の圧力よりも低下する現象が発生し、燃料電池セルユニットに悪影響が生じていると考えられる。
また、燃料電池モジュールの構造、シャットダウン停止前の運転条件によっては、シャットダウン停止の後、燃料供給が停止されているにも関わらず、燃料電池モジュール内上部の温度が上昇するという現象が発生する(図示せず)。即ち、燃料電池モジュール内の温度が、シャットダウン停止後の1時間程度、発電運転時よりも上昇する場合がある。このような温度上昇は、発電運転中に改質器内で発生していた吸熱反応である水蒸気改質反応が、燃料供給の停止により発生しなくなる一方、各燃料電池セルユニットの内部や、これらに燃料を分配するマニホールド内に残留している燃料が、燃料供給停止後も燃焼室内で燃焼し続けることが原因であると考えられる。
このように、燃料電池モジュール内の改質器付近の温度が上昇する一方、燃料電池セルスタックからの電流の取り出しは停止されているため、燃料電池セルスタックにおいては発電熱が発生しなくなる。これにより、燃料電池セルスタック上方の温度が上昇して圧力が上昇するのに対して、各燃料電池セルユニットの内部は、温度低下により圧力が低下する。このような燃料電池モジュール内の温度勾配に起因して、各燃料電池セルユニットの燃料極側の圧力が、空気極側の圧力よりも低くなる場合がある。このような場合には、燃料電池セルユニット外部の空気極側の空気が、内部の燃料極側に逆流し、燃料電池セルユニットが損傷される可能性が高い。
本発明の実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1においては、燃料電池モジュール内各部の流路抵抗を適切な値に設定すると共に、コントローラである制御部110に内蔵されているシャットダウン停止回路110a、圧力保持制御回路110b、停止前処理回路110c、排気制御回路110d、排気制御中止回路110e(以上、図6)の制御により、燃料極の酸化のリスクを大幅に抑制している。具体的には、制御部110は内蔵されている、マイクロプロセッサ、メモリ、プログラム(以上、図示せず)等を備えており、上記の各回路を構成すると共に、以下に説明する制御を実行する。
次に、図13乃至図28を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池システム1の停止について説明する。
図13は、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池システム1における停止モードの選択を行う停止判断のフローチャートである。図13のフローチャートは、所定の条件に基づいて、何れの停止モードを選択するかを判断するためのフローチャートであり、固体酸化物型燃料電池システム1の運転中において、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
まず、図13のステップS1においては、燃料供給源30(図1)からの燃料ガスの供給、及び商用電源からの電力の供給が停止されているか否かが判断される。燃料ガス及び電力の両方の供給が停止されている場合には、ステップS2に進み、ステップS2においては、緊急停止モードである停止モード1が選択されて、図13のフローチャートの1回の処理が終了する。停止モード1が選択される場合としては、自然災害等により、燃料ガス及び電力の供給が停止された場合が想定され、このような停止が行われる頻度は極めて少ないと考えられる。
一方、燃料ガス及び電力の少なくとも一方が供給されている場合には、ステップS3に進み、ステップS3においては、燃料ガスの供給が停止され、且つ電力が供給されている状態であるか否かが判断される。燃料ガスの供給が停止され、且つ電力が供給されている場合にはステップS4に進み、それ以外の場合にはステップS5に進む。ステップS4においては、通常停止モードのうちの一つである停止モード2が選択されて、図13のフローチャートの1回の処理が終了する。停止モード2が選択される場合としては、燃料ガス供給経路の工事等により、一時的に燃料ガスの供給が停止された場合等が想定され、このような停止が行われる頻度は少ないと考えられる。
さらに、ステップS5においては、使用者により停止スイッチが操作されたか否かが判断される。使用者により停止スイッチが操作された場合にはステップS6に進み、操作されていない場合にはステップS7に進む。ステップS6においては、通常停止モードのうちの一つのスイッチ停止モードである停止モード3が選択されて、図13のフローチャートの1回の処理が終了する。停止モード3が選択される場合としては、固体酸化物型燃料電池システム1の利用者が長期間不在になるため、比較的長期間に亘って固体酸化物型燃料電池システム1の運転を意図的に停止させる場合が想定され、このような停止が行われる頻度はあまり多くないと考えられる。
一方、ステップS7においては、予め予定された時機に定期的に実行される定期停止であるか否かが判断される。定期停止である場合にはステップS8に進み、定期停止でない場合には、図13のフローチャートの1回の処理が終了する。ステップS8においては、通常停止モードのうちの一つのプログラム停止モードである停止モード4が選択されて、図13のフローチャートの1回の処理が終了する。停止モード4が選択される場合としては、燃料供給源30に設けられているマイコンメータに対する対応が想定される。即ち、一般に、燃料供給源30にはマイコンメータ(図示せず)が設けられており、このマイコンメータは、約1ヶ月の間に、燃料ガスの供給が完全に停止された状態が連続して1時間程度以上存在しない場合には、ガス漏れが発生していると判断し、燃料ガスの供給を遮断させるように構成されている。このため、一般に、固体酸化物型燃料電池システム1は、約1ヶ月に一度、1時間程度以上停止させる必要がある。従って、停止モード4による停止は、約1ヶ月に1回以上の頻度で行われることが想定され、最も高頻度で行われる停止である。
なお、電力の供給が停止され、燃料ガスの供給が継続されている場合には、図13のフローチャートによっては、何れの停止モードも選択されない。このような場合においては、本実施形態による固体酸化物型燃料電池システム1は、燃料電池セルスタック14によって生成された電力によって補機ユニット4を作動させることにより、発電を継続することができる。なお、電力の供給のみが停止された場合においても、固体酸化物型燃料電池システム1を安全に停止させるために、停止モード4が選択されるように本発明を構成することもできる。
次に、図14乃至図28を参照して、各停止モードおける停止処理を説明する。
図14は本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池システム1において、停止モード1(図13のステップS2)が実行された場合の停止挙動の一例を模式的に時系列で表したタイムチャートである。図15は停止モード1が実行された場合における制御、燃料電池モジュール内の温度、圧力、及び燃料電池セルユニットの先端部の状態を時系列で説明するための図である。
まず、図14の時刻t101において、シャットダウン停止が行われると、燃料流量調整ユニット38による燃料の供給、水流量調整ユニット28による水の供給、及び発電用空気流量調整ユニット45による発電用空気の供給が短時間に停止する。また、インバータ54による燃料電池モジュール2からの電力の取り出しも停止する(出力電流=0)。停止モード1は燃料ガスの供給及び電力の供給が共に停止された場合に実行されるため、停止モード1では、シャットダウン停止の後、燃料電池モジュール2は、この状態で自然放置される。このため、各燃料電池セルユニット16内部の燃料極側に存在していた燃料は、外部の空気極側との圧力差に基づいて、燃料ガス流路細管98(図4)を通って空気極側に噴出される。また、各燃料電池セルユニット16の空気極側に存在していた空気(及び燃料極側から噴出した燃料)は、空気極側の圧力(発電室10(図1)内の圧力)と大気圧との圧力差に基づいて、排気通路21b、空気用熱交換器22等を通って、燃料電池モジュール2の外部に排出される。従って、シャットダウン停止の後、各燃料電池セルユニット16の燃料極側及び空気極側の圧力は、自然に低下する。
しかしながら、各燃料電池セルユニット16の上端部には、流出側流路抵抗部である燃料ガス流路細管98が設けられており、排気通路21bには、縦壁21d及び下がり壁8b(図2)が設けられている。この燃料ガス流路細管98の流路抵抗は、燃料供給及び発電が停止された後の燃料極側の圧力低下が、空気極側の圧力低下よりも緩やかになるように設定されている。本実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1は、これらの燃料及び排気の通路各部における流路抵抗を適切にチューニングすることにより、各燃料電池セルユニット16の燃料極側に、シャットダウン停止後も長時間に亘って燃料が残存するように構成されている。例えば、燃料ガス流路細管98における流路抵抗に対して、発電室10から外気へ至る排気経路の流路抵抗が小さすぎる場合には、シャットダウン停止後に空気極側の圧力が急激に低下するため、燃料極側と空気極側の圧力差が増大し、却って燃料極側からの燃料の流出が促進されてしまう。逆に、燃料ガス流路細管98の流路抵抗に対して、排気経路の流路抵抗が大きすぎる場合には、燃料極側の圧力低下と比較して、空気極側の圧力低下が緩やかになり、燃料極側と空気極側の圧力が接近するので、燃料極側への空気逆流のリスクが高くなる。
このように、本実施形態においては、燃料流量調整ユニット38から改質器20、各燃料電池セルユニット16の燃料極を通って燃料電池モジュール2の外部へ燃料及び/又は排気ガスを導く燃料/排気ガス通路が上記のようにチューニングされている。このため、シャットダウン停止の後自然放置された場合においても、燃料極側の圧力は、空気極側の圧力よりも高い圧力を維持しながら低下し、燃料極の温度が酸化抑制温度に低下した時点においても、大気圧よりも高い圧力に維持され、燃料極が酸化されるリスクを十分に抑制することができる。図14に示すように、本実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1では、時刻t101においてシャットダウン停止が行われた後、太い破線に示す燃料電池セルスタック14の出力電圧は一旦大きく上昇した後、低下するが、その落ち込みは、従来の固体酸化物型燃料電池システム(図29)よりも少なく、比較的高い電圧が長時間継続する。図14に示す例では、シャットダウン停止後、燃料極側及び空気極側の温度が所定の酸化抑制温度に低下する時刻t102まで、比較的高い電圧が維持されている。このことは、各燃料電池セルユニット16の燃料極側には、温度が酸化抑制温度に低下する時刻t102まで燃料が残存していることを示している。
なお、本明細書において、酸化抑制温度とは、燃料極が酸化されるリスクが十分に低下される温度を意味している。燃料極が酸化されるリスクは、温度の低下と共に少しずつ減少して、やがてゼロになる。このため、燃料極の酸化が発生し得る最低の温度である酸化下限温度よりも少し高い温度帯域の酸化抑制温度であっても、燃料極酸化のリスクを十分に低減することができる。一般的な燃料電池セルユニットにおいては、このような酸化抑制温度は350℃乃至400℃程度であり、酸化下限温度は250℃乃至300℃程度であると考えられる。
即ち、本実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1おいては、燃料/排気ガス通路は、シャットダウン停止後、燃料極の温度が酸化抑制温度に低下するまで、燃料電池モジュール2内の空気極側の圧力を大気圧よりも高く維持すると共に、燃料極側の圧力を空気極側の圧力よりも高く維持するように構成されている。従って、燃料/排気ガス通路は、燃料極側の圧力が空気極側の圧力に近付くまでの時間を延長する機械的圧力保持手段として機能する。
図15は停止モード1の動作を説明する図であり、上段には燃料極側及び空気極側の圧力変化を模式的に表すグラフを示し、中段には制御部110による制御動作及び燃料電池モジュール2内の温度を時系列で示し、下段には各時点における燃料電池セルユニット16の上端部の状態を示している。
まず、図15中段におけるシャットダウン停止の前は、発電運転が行われている。図14、図15に示す例においては、発電運転中の燃料電池モジュール2内の温度は700℃程度である。また、図15の下段(1)に示すように、燃料電池セルユニット16上端の燃料ガス流路細管98からは、発電に使用されずに残った燃料ガスが噴出しており、この噴出する燃料ガスは燃料ガス流路細管98の上端で燃焼される。次いで、シャットダウン停止により、燃料ガス、改質用の水、発電用の空気の供給が停止されると、噴出する燃料ガスの流量が低下し、図15の下段(2)に示すように、燃料ガス流路細管98先端の炎が消失する。燃料ガス流路細管98は細長く形成されているため、燃料ガス流量の低下により炎が燃料ガス流路細管98の中に引き込まれると、炎は速やかに消失する。炎が速やかに消失されることにより、燃料電池セルユニット16の内部等に残存している燃料ガスの消費が抑制され、残存する燃料を燃料極側に維持することができる時間が延長される。
図15の下段(3)に示すように、シャットダウン停止後、炎が消失されたあとも、燃料電池セルユニット16の内部(燃料極側)の圧力は、外部(空気極側)よりも高いため、燃料ガス流路細管98からの燃料ガスの噴出は継続される。また、図15上段に示すように、シャットダウン停止直後において、燃料極側の圧力は空気極側の圧力よりも高く、各圧力は、この関係を維持したまま低下する。燃料極側と空気極側の圧力差は、シャットダウン停止の後、燃料ガスの噴出と共に低下する。
燃料ガス流路細管98からの燃料ガスの噴出量は、燃料極側と空気極側の圧力差が低下するにつれて減少する(図15の下段(4)(5))。一方、シャットダウン停止時においては、改質器20の内部にも、改質された燃料ガス、未改質の燃料ガス、水蒸気、水が残存しており、シャットダウン停止後も、余熱により未改質の燃料ガスが水蒸気により改質される。また、残存している水も、改質器20に蒸発部20aが一体的に備えられているため、余熱により蒸発されて水蒸気となる。改質器20における、燃料ガスの改質及び水の蒸発に伴い体積膨張が発生するため、改質器20内、燃料ガス供給管64、マニホールド66(図2)内に残存していた燃料ガスが、各燃料電池セルユニット16の中(燃料極側)に順次押し出される。このため、燃料ガス流路細管98からの燃料ガスの噴出に伴う燃料極側の圧力低下が抑制される。
さらに、改質器20内の改質部20cは触媒が充填されているため、流路抵抗が比較的大きい。このため、残存している水が蒸発部20aにおいて蒸発された際、水蒸気は改質部20cに流入する一方、改質器導入管62(図2)の方へ逆流する。この改質器導入管62は蒸発部20aの側面から概ね水平に延びた後、屈曲されて、概ね鉛直上方に延びるように構成されている。従って、逆流した水蒸気は、改質器導入管62の中を鉛直方向に上昇し、改質器導入管62の上端に接続されているT字管62aに到達する。ここで、蒸発部20aから延びる改質器導入管62は、ケース8を覆う断熱材7の内部に配置されているため、温度が高い。また、改質器導入管62の上端部及びT字管62aは、断熱材7の外部に位置するため、温度が低くなっている。このため、改質器導入管62の中を上昇した水蒸気は、温度の低い改質器導入管62の上端部及びT字管62aの内壁面に当たって冷却されて結露し、水が生成される。
結露により生成された水は、T字管62a及び改質器導入管62の上端部から、改質器導入管62下部の内壁面に落下し、ここで再び加熱されて温度が上昇し、蒸発部20aに再び流入する。改質器導入管62は屈曲して構成されているため、結露した後落下した水滴は、蒸発部20aには直接流入せず、改質器導入管62下部の内壁面上に落下する。従って、改質器導入管62の断熱材7の内側に配置された部分は、供給された水、又は結露した水を予熱する予熱部として機能し、この予熱部よりも温度が低い改質器導入管62の上端部及びT字管62aは、結露部として機能する。
また、改質器導入管62内を上昇した水蒸気は、T字管62aから水供給用配管63aまで逆流する場合がある。しかしながら、水供給用配管63aは、T字管62aから上方へ向かうように傾斜して配置されているため、水蒸気が水供給用配管63a内で結露された場合にも、結露水は、水供給用配管63aからT字管62aの方へ流れ、改質器導入管62内に落下する。また、図2に示すように、改質器導入管62の下部は、断熱材7の内側において、排気ガス排出管82と交差するように近接して配置されている。このため、予熱部である改質器導入管62と排気ガス排出管82の間で熱交換が行われ、排気の熱によっても加熱される。
このように、蒸発部20aにおいて蒸発された水蒸気の一部は、改質器導入管62に逆流し、これが結露水を生成し、再び蒸発部20aにおいて蒸発される。このため、シャットダウン停止時において水の供給が停止された後も、残留している水が少しずつ蒸発部20a内で蒸発され、シャットダウン停止の後、比較的長時間に亘って水の蒸発が発生する。さらに、改質器導入管62は蒸発部20aの側面から延びた後、屈曲されて、概ね鉛直上方に延びて断熱材7を貫通している。従って、改質器導入管62が断熱材7を貫通している箇所は、改質器20の鉛直上方の領域から外れており、改質器20の熱は、改質器導入管62による断熱材7の貫通箇所を通って外部に逃げにくく、改質器導入管62によって断熱性が著しく損なわれることはない。
一方、改質器20内において発生する水の蒸発は、蒸発部20a内の温度分布等に依存して急激に発生することがある。このような場合には、蒸発部20a内の圧力が急上昇するので、高い圧力が下流側に伝搬し、燃料電池セルユニット16内の燃料ガスが、急激に空気極側へ噴出する虞がある。しかしながら、燃料ガス供給管64には、圧力変動抑制用流路抵抗部64c(図2)が設けられているため、改質器20内の急激な圧力上昇に基づく、燃料電池セルユニット16内の燃料ガスの急激な噴出が抑制される。また、各燃料電池セルユニット16の下端にも、燃料ガス流路細管98(図4)が設けられているため、この燃料ガス流路細管98の流路抵抗により、各燃料電池セルユニット16内部の急激な圧力上昇が抑制される。従って、各燃料電池セルユニット16下端の燃料ガス流路細管98及び圧力変動抑制用流路抵抗部64cは、燃料極側の圧力を高く維持する機械的圧力保持手段として機能する。
このように、機械的圧力保持手段により、各燃料電池セルユニット16の燃料極側の圧力低下は、シャットダウン停止後、長時間に亘って抑制される。シャットダウン停止後、5乃至6時間程度経過し、燃料電池モジュール2内の温度が酸化抑制温度まで低下する頃には、各燃料電池セルユニット16の燃料極側、空気極側ともほぼ大気圧まで低下し、空気極側の空気が燃料極側に拡散し始める(図15の下段(6)(7))。しかしながら、燃料ガス流路細管98、及び燃料電池セル84上端部の外側電極層92が形成されていない部分(図15下段(6)のA部)は、空気が侵入しても酸化されることはなく、この部分はバッファ部として機能する。特に、燃料ガス流路細管98は細長く構成されているため、バッファ部が長くなり、燃料電池セルユニット16の上端から空気が侵入した場合にも、燃料極の酸化が発生しにくい。また、酸化抑制温度近傍においては、燃料極の温度が低く、燃料極に空気が触れた場合にも発生する酸化は僅かであり、また、停止モード1が実行される頻度は極めて低いため、酸化により発生する悪影響は、実質的に無視することができる。さらに、図15の下段(8)に示すように、燃料極の温度が酸化下限温度よりも低下した後は、各燃料電池セルユニット16の燃料極側に空気が充満しても燃料極が酸化されることはない。
次に、図16及び図17を参照して、停止モード2を説明する。
図16は本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池システム1において、停止モード2(図13のステップS4)が実行された場合の停止挙動の一例を模式的に時系列で表したタイムチャートである。図17は停止モード2が実行された場合における制御、燃料電池モジュール内の温度、圧力、及び燃料電池セルユニットの先端部の状態を時系列で説明するための図である。
まず、停止モード2は、燃料ガスの供給のみが停止された場合に実行される停止モードである。図16の時刻t201において、シャットダウン停止が行われると、燃料流量調整ユニット38による燃料の供給、及び水流量調整ユニット28による水の供給が短時間に停止する。また、インバータ54による燃料電池モジュール2からの電力の取り出しも停止する(出力電流=0)。停止モード2が実行された場合には、制御部110に内蔵されたシャットダウン停止回路110aは、時刻t201のシャットダウン停止の直後に、排気制御を実行し、発電用空気流量調整ユニット45を所定の排熱時間に亘って作動させる。なお、本実施形態においては、所定の排熱時間は最大で約2分間であり、この間、水流量調整ユニット28は停止されている。さらに、図16の時刻t202において、発電用空気流量調整ユニット45が停止された後は、停止モード1と同様に、自然放置される。なお、排気制御の終了時期については後述する。
停止モード2による停止では、シャットダウン停止の後、排気制御により、燃料電池セルユニット16の空気極側に空気が送り込まれる。これにより、図16のA部において、空気極側の温度が、停止モード1の場合(図14)よりも急激に低下している。上述したように、燃料供給が完全に停止された後、燃料電池セルスタック14の温度が酸化抑制温度に低下するまでは、燃料極を酸化させ、損傷する危険があるため、空気の供給は必ず停止されていた。しかしながら、燃料供給を停止した直後においては、安全に空気極側に発電用の空気を供給できることが、本件発明者により見出された。
即ち、シャットダウン停止の直後においては、各燃料電池セルユニット16の燃料極側に十分に燃料ガスが残存しており、これが各燃料電池セルユニット16上端から噴出している状態であるため、空気極側に空気を送り込むことにより、燃料極側に空気が逆流することはない。即ち、この状態においては、排気制御によって空気を送り込むことにより、空気極側の圧力が上昇するが、依然として燃料極側の圧力が空気極側の圧力よりも高い状態にある。なお、各燃料電池セルユニット16の上端に設けられた燃料ガス流路細管98は、流路断面積を狭くした絞り流路であり、これにより、各燃料電池セルユニット16から流出する燃料ガスの流速が高くなる。従って、上端に設けられた燃料ガス流路細管98は、燃料ガスの流速を高くする加速部として機能する。さらに、時刻t202において空気の供給が停止された後は、停止モード1と同様に自然放置され、機械的圧力保持手段によって燃料極側の圧力が空気極側の圧力よりも高い状態が所定期間維持される。しかしながら、停止モード2においては、排気制御により、燃料電池モジュール2内に滞留していた高温の空気及び燃焼ガスが排出されるため、停止モード1よりも低い温度から自然放置が開始される。このため、燃料極の温度が酸化抑制温度に低下する前に空気の逆流が発生するリスクが低下される。このように、シャットダウン停止後において、燃料極側の圧力低下は、空気極側の圧力低下よりも緩やかになる。また、排気制御により、燃料電池モジュール2内の温度が均一化されるため、燃料電池セルユニット16内側の燃料ガスが急激に収縮し、燃料極側に空気が引き込まれるリスクが低減される。
さらに、シャットダウン停止後、排気制御により空気極側に空気が送り込まれるため、燃料ガス流路細管98上端の炎は、より速やかに消失され、残存している燃料の消費が抑制される。また、シャットダウン停止直後は、燃料電池セルユニット16から噴出した多くの燃料ガスが、燃焼されることなく燃料電池セルユニット16の空気極側に流出する。停止モード2においては、シャットダウン停止後、空気極側に空気が送り込まれ、噴出した燃料ガスが空気と共に排出されるので、燃料極から流出した燃料ガスが空気極に触れて空気極が部分的に還元されるリスクが回避される。
図17は停止モード2の動作を説明する図であり、上段には燃料極側及び空気極側の圧力変化を模式的に表すグラフを示し、中段には制御部110による制御動作及び燃料電池モジュール2内の温度を時系列で示し、下段には各時点における燃料電池セルユニット16の上端部の状態を示している。
まず、図17中段におけるシャットダウン停止前は、発電運転が行われており、シャットダウン停止後は、排気制御が実行される。約2分間の排気制御の後、発電用空気流量調整ユニット45が停止され、その後は停止モード1と同様に自然放置される。しかしながら、停止モード2においては、自然放置が開始される時点(図16の時刻t202)における燃料電池モジュール2内の温度、及び燃料極側、空気極側の圧力が停止モード1の場合よりも低下されている。このため、燃料極の温度が酸化抑制温度に低下する前に、燃料極側に空気が侵入するリスクは、更に低減される。
次に、図18乃至図22を参照して、停止モード3を説明する。
図18は本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池システム1において、停止モード3(図13のステップS6)が実行された場合の停止挙動の一例を模式的に時系列で表したタイムチャートである。図19はシャットダウン停止直後を拡大して示すタイムチャートである。図20は停止モード3が実行された場合における制御、燃料電池モジュール内の温度、圧力、及び燃料電池セルユニットの先端部の状態を時系列で説明するための図である。図22は停止モード3の変形例を示すタイムチャートである。
まず、停止モード3は、使用者により停止スイッチが操作された場合に実行される停止モードである。図18、図19に示すように、停止モード3においては温度降下制御が実行され、この温度降下制御は、燃料電池セルスタック14からの電力の取り出しが完全に停止される前の停止前処理と、電力の取り出しが停止された後の排気制御から構成されている。排気制御は停止モード2における排気制御と同様であり、停止前処理は、電力の取り出しが停止される前に実行される。
図19に示すタイムチャートの例では、時刻t301において、使用者により停止スイッチが操作され、停止前処理が開始されている。停止前処理においては、まず、燃料電池モジュール2による発電電力のインバータ54への出力が停止される。これにより、図19に細い一点鎖線で示すように、燃料電池モジュール2から取り出される電流、電力が急速に低下する。なお、停止前処理においては、燃料電池モジュール2からインバータ54への電流出力は停止されるが、固体酸化物型燃料電池システム1の補機ユニット4を作動させるための一定の微弱な電流(1A程度)の取り出しは継続される。このため、時刻t301において発電電流が大幅に低下した後も、停止前処理中においては燃料電池モジュール2から微弱な電流が取り出される。また、図19に破線で示すように、燃料電池モジュール2の出力電圧は、取り出される電流の低下と共に上昇する。このように、停止前処理中において、電力の取り出し量を制限し、微弱な電流を取り出しながら所定電力の発電を継続することにより、供給された燃料の一部が発電に使用されるため、発電に使用されずに残る余剰燃料の著しい増加が回避され、燃料電池モジュール2内の温度が低下される。
さらに、停止前処理においては、時刻t301の後、図19に点線で示す燃料供給量、及び細い実線で示す改質用の水の供給量が直線的に低下される。一方、太い一点鎖線で示す発電用の空気供給量は最大値に設定される。従って、停止前処理中においては、燃料電池モジュール2から取り出される電力に対応した量よりも多くの空気が供給される。このように、空気供給量を増加させることにより、改質器20から熱を奪い、燃料電池モジュール2内の温度上昇を抑制している。続いて、図19に示す例では、時刻t301から約20秒後の時刻t302において、燃料供給量及び水供給量が、燃料電池モジュール2から取り出されている微弱な電流に対応した供給量まで低下され、その後、低下された供給量が維持される。このように、停止前処理として、燃料供給量及び水供給量を低下させておくことにより、燃料供給の完全停止時に大流量の燃料が急激に停止されることによる燃料電池モジュール2内の気流の乱れや、燃料供給の完全停止後における大量の燃料の改質器20、マニホールド66内への残留を防止している。なお、時刻t301の後、燃料供給量を減少させ、空気供給量を増加させることにより、図19に太い実線で示す燃料電池モジュール2内の空気極側の温度は低下される。しかしながら、燃料電池モジュール2を取り囲む断熱材7等には依然として大量の熱量が蓄積されている。また、停止前処理中においては、インバータ54への電流出力は停止されているものの、燃料及び水の供給が継続されているため、発電用の空気の供給を継続しても、各燃料電池セルユニット16内部の燃料極側へ空気が逆流することはない。従って、安全に空気の供給を継続することができる。
図19に示す例では、停止前処理が開始された時刻t301から約2分後の時刻t303において、燃料供給量及び改質用の水供給量がゼロにされ、燃料電池モジュール2からの取り出し電流もゼロにされ、シャットダウン停止されている。なお、停止前処理の終了時期については後述する。また、図19に示す例では、時刻t303において、燃料電池モジュール2からの取り出し電流がゼロにされる直前に、水供給量が僅かに増加されている。この水供給量の増加は、シャットダウン停止の時点において、蒸発部20a内に適正な量の水が残るよう、水量を調整するものである。この水供給量の制御については後述する。
図19に示す例では、時刻t303におけるシャットダウン停止後も、排気制御により、発電用空気の供給(ただし、発電は完全に停止されている)が継続されている。これにより、燃料電池モジュール2内(燃料電池セルスタック14の空気極側)の空気、残余燃料の燃焼ガス、及びシャットダウン停止後に燃料電池セルスタック14の燃料極側から流出した燃料が排出される。本実施形態においては、時刻t303において、燃料供給が完全に停止された後、時刻t304までの間、発電用空気の供給が継続されている。また、発電用の空気供給量は、停止前処理中における最大の空気供給量から、所定の供給量まで低下される。
図18に示すように、時刻t304において、発電用空気の供給が停止された後は、停止モード1と同様に自然放置される。しかしながら、停止モード3においては、シャットダウン停止前に停止前処理が実行され、シャットダウン停止後に排気制御が実行されるので、図18のA部における温度低下が停止モード1及び2よりも大きく、より低温、低圧の状態から自然放置が開始される。
図20は停止モード3の動作を説明する図であり、上段には燃料極側及び空気極側の圧力変化を模式的に表すグラフを示し、中段には制御部110による制御動作及び燃料電池モジュール2内の温度を時系列で示し、下段には各時点における燃料電池セルユニット16の上端部の状態を示している。
まず、図20中段における停止スイッチ操作前は、発電運転が行われており、停止スイッチ操作後は、停止前処理が実行される。停止前処理においては、燃料ガスの供給量が低下されるので、図20の下段(1)のように、発電運転中には大きかった各燃料電池セルユニット16上端の炎が、下段(2)に示すように小さくなる。このように、燃料ガスの供給量及び発電量が低下されるため、燃料電池モジュール2内の温度は、発電運転中よりも低下される。停止前処理の後、シャットダウン停止が行われる。シャットダウン停止の後、排気制御により、発電用空気流量調整ユニット45が発電用の空気を2分間供給する。排気制御の後、発電用空気流量調整ユニット45が停止され、その後は停止モード1と同様に自然放置される。
上述したように、シャットダウン停止の時点においては、各燃料電池セルユニット16の燃料極側の圧力は空気極側の圧力よりも高いため、燃料供給が停止された後も、燃料極側の燃料ガスが各燃料電池セルユニット16の上端から噴出する。なお、燃料ガスが燃焼される炎は、シャットダウン停止時に消失する。シャットダウン停止後において、各燃料電池セルユニット16の上端から噴出する燃料ガスは、シャットダウン停止直後が最も多く、その後次第に減少する。このシャットダウン停止直後に噴出される大量の燃料ガスは、排気制御において供給される発電用の空気によって、燃料電池モジュール2の外へ排出される。また、排気制御終了後にも、燃料ガスは各燃料電池セルユニット16の上端から噴出されるが、その燃料ガスの量は比較的少なくなっている。
このため、排気制御終了後に噴出された燃料ガスである水素は、燃料電池モジュール2内の上部(燃料電池セルスタック14よりも上方)に滞留するが、噴出された燃料ガスは、各燃料電池セルユニット16の空気極には、実質的に接触しない。従って、燃料ガスが高温の空気極に接触することにより還元され、空気極が劣化されることはない。また、シャットダウン停止前の停止前処理においては、所定範囲の分量の適量の水が蒸発部20a内に貯留されるように水が供給されている。このため、シャットダウン停止後の排気制御中において、蒸発部20a内で水が蒸発されることにより、各燃料電池セルユニット16の燃料極側の圧力が高められ、適量の燃料ガスが各燃料電池セルユニット16の上端から噴出される。排気制御中に噴出された燃料ガスは速やかに燃料電池モジュール2内から排出される。排気制御中において適量の燃料ガスが噴出されているため、排気制御後において、過剰な量の燃料ガスが各燃料電池セルユニット16から噴出され、空気極を劣化させることはない。
ここで、停止モード3においては、排気制御終了後、自然放置が開始される時点(図18の時刻t304)における燃料電池モジュール2内の温度、及び燃料極側、空気極側の圧力が停止モード1及び2の場合よりも低下されている。また、停止モード3においては、停止前処理により、シャットダウン停止前の燃料ガスの供給量、水供給量等が所定の値に固定されている。これにより、発電運転中における運転状態に依存した、自然放置が開始される時点における圧力、温度分布等のバラツキが少なくなり、常に適正な状態から自然放置が開始される。このため、燃料極の温度が酸化抑制温度に低下する前に、燃料極側に空気が侵入するリスクは、極めて低いものになる。
次に、図21を参照して、停止前処理における水の供給を説明する。
図21は、停止前処理における水供給のフローチャートであり、固体酸化物型燃料電池システム1の運転中において、シャットダウン停止回路110aにより所定の時間間隔で繰り返し実行される。まず、図21のステップS11において、停止前処理が開始されるか否かが判断される。停止前処理が開始された場合には、ステップS12に進み、開始されていない場合には、図21のフローチャートの1回の処理を終了する。
次に、ステップS12においては、供給水確保工程として、温水製造装置50(図1)に内蔵されている給湯器用ラジエータ(図示せず)が2分間作動される。この給湯器用ラジエータは、燃料電池モジュール2からの高温の排気ガスとの間で熱交換を行うことにより水を温め、排気ガス中の排熱を回収するように構成されている。一方、排気ガス中には水蒸気が含まれており、この水蒸気は給湯器用ラジエータとの間で熱交換を行い、冷却されることによって水となり、結露する。給湯器用ラジエータを作動させることにより、排気ガスの冷却量が増加して結露水が増加する。増加した結露水は回収され、純水タンク26(図1)に貯留される。この純水タンク26に回収された水は、フィルタ処理(図示せず)等を経た後、水蒸気改質用の水として利用される。このステップS12の処理により生成された水は、停止前処理中における水の供給、及び後述する停止モード4において実行される圧力保持制御に利用される。なお、停止前処理中及び圧力保持制御に使用される水の量は僅かである一方、多くの水蒸気が含まれた高温の排気ガスが給湯器用ラジエータ(図示せず)によって急激に冷却されるため、停止前処理中の2分間で所要量の水を十分に確保することができる。
次に、ステップS13においては、停止前処理が開始される図19の時刻t301直前の10分間における発電量の時系列データW0が、制御部110に読み込まれる。さらに、ステップS14においては、読み込まれた発電量の時系列データW0の10分間の平均値W1が計算される。次に、ステップS15においては、固体酸化物型燃料電池システム1の最大定格発電量と平均値W1の差W2が計算される。さらに、ステップS16においては、差W2に基づいて、不足水量Q1が計算される。最後に、ステップS17において、計算された不足水量Q1が、停止前処理の終了直前(図19、時刻t303の直前)に供給され、図21のフローチャートの1回の処理を終了する。
この不足水量Q1の供給により、蒸発部20aには、最大定格発電量の運転が継続された後にシャットダウン停止が行われた場合と同程度の量の改質用の水が貯留される。この水は、シャットダウン停止後の排気制御(図19の時刻t303〜t304)中において、蒸発されることにより、各燃料電池セルユニット16の燃料極側の圧力が高められ、適量の燃料ガスが各燃料電池セルユニット16の上端から噴出される。
次に、図22を参照して、停止モード3の変形例を説明する。
図22に示す変形例では、第2の温度降下工程における発電用空気の供給の仕方が図19とは異なる。図22に示すように、本変形例においては、時刻t303でシャットダウン停止が行われた後、時刻t304まで所定量の発電用空気が供給される。時刻t304においては、発電用空気の供給量が段階的に減少され、減少された供給量が時刻t305まで継続される。
本変形例においては、シャットダウン停止直後の燃料極側の圧力が高い状態において大量の発電用空気を供給することにより、空気極側の高温の空気が速やかに排出される。一方、シャットダウン停止から或る程度時間が経過し、燃料極側の圧力が低下した状態においては、発電用空気の供給量を減少させることにより、逆流のリスクを回避しながら、高温の空気を排出する。
次に、図23及び図24を参照して、停止モード4を説明する。
図23は本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池システム1において、停止モード4(図13のステップS8)が実行された場合の停止挙動の一例を模式的に時系列で表したタイムチャートである。図24は停止モード4が実行された場合における制御、燃料電池モジュール内の温度、圧力、及び燃料電池セルユニットの先端部の状態を時系列で説明するための図である。
まず、停止モード4は、上述したように、マイコンメータ(図示せず)に対応するために、概ね1ヶ月に1回の割合で定期的に実行される停止であり、停止モードの中で実行される頻度が最も高いものである。従って、停止モード4の実行時において、燃料電池セルユニット16に僅かでも燃料極の酸化等の悪影響があると、燃料電池セルスタック14の耐久性に与える影響が大きいため、より確実に燃料極の酸化を防止する必要がある。この停止モード4による停止は、シャットダウン停止回路110aに内蔵されているプログラムに基づいて、定期的に実行される。
まず、図23の時刻t401において、シャットダウン停止回路110aのプログラムにより予定されているシャットダウン停止時刻の所定時間前になると、シャットダウン停止回路110aは停止前処理を開始する。停止モード4においても停止モード3と同様に、停止前処理、及び排気制御が実行される。即ち、停止前処理においては、まず、燃料電池モジュール2による発電電力のインバータ54への出力が停止され、固体酸化物型燃料電池システム1の補機ユニット4を作動させるための微弱な電流(1A程度)の取り出しのみが継続される。また、停止前処理中においては、上記のように、図21に示す停止前処理水供給フローも実行される。
さらに、停止前処理においては、時刻t401の後、図23に太い点線で示す燃料供給量、及び細い実線で示す改質用の水の供給量が低下される。一方、太い一点鎖線で示す発電用の空気供給量は最大値に増加される。
次いで、時刻t402において、シャットダウン停止回路110aは、シャットダウン停止を実行する。シャットダウン停止が行われると、燃料流量調整ユニット38による燃料の供給、及び水流量調整ユニット28による水の供給が短時間に停止する。また、インバータ54による燃料電池モジュール2からの電力の取り出しも停止する(出力電流=0)。
シャットダウン停止回路110aは、時刻t402のシャットダウン停止の後、排気制御を実行し、発電用空気流量調整ユニット45を所定期間作動させる。さらに、図23の時刻t403において、発電用空気流量調整ユニット45が停止された後は、停止モード1と同様に、自然放置される。
さらに、停止モード4では、シャットダウン停止後、約5時間経過し、燃料電池モジュール2内の温度が所定の温度まで低下した時刻t404において、シャットダウン停止回路110aは、圧力保持制御回路110b(図6)を作動させる。本実施形態においては、燃料電池モジュール2内の温度が、所定温度である400℃程度に低下した際には、燃料電池セルユニット16の燃料極側の圧力も低下して、空気極側の圧力に近付いている。圧力保持制御回路110bは、水流量調整ユニット28に信号を送り、これを作動させる。水流量調整ユニット28が作動されることにより、改質器20の蒸発部20aに水が供給される。燃料電池モジュール2の内部は、シャットダウン停止後5時間程度経過した時刻t404においても、依然として400℃程度の温度であるため、蒸発部20aに供給された水は、そこで蒸発される。なお、本実施形態においては、水は間欠的に供給され、水供給量は1分間に約1mLに設定されており、この水供給量は、発電運転中における最少の水供給量よりも少ない値である。
蒸発部20a内で水が蒸発して膨張されることにより、改質器20から、燃料ガス供給管64、マニホールド66(図2)を介して各燃料電池セルユニット16に至る燃料ガス通路内部の圧力が高められる。これにより、各燃料電池セルユニット16の燃料極側の圧力の低下が抑制され、より確実に、燃料極側への空気の逆流が防止される。なお、改質器20内の蒸発部20a、混合部20b、改質部20cの流路は、何れも蛇行して形成されているため、蒸発部20a内で水の急激な蒸発が発生した場合でも、圧力上昇の影響が下流側へ伝播しにくくなっている。これにより、急激な蒸発の発生により、各燃料電池セルユニット16の内側(燃料極側)の圧力が急上昇し、内部に滞留していた燃料ガスが短時間に大量に噴出されるのを防止することができる。
また、燃料ガス供給管64の途中に設けられている圧力変動抑制用流路抵抗部64c(図2)、及び各燃料電池セルユニット16の下端に設けられている流入側流路抵抗部である燃料ガス流路細管98も、燃料極側の圧力の急激な上昇を抑制し、燃料ガスを燃料極側に長時間滞留させるように作用する。
圧力保持制御回路110bは、燃料電池モジュール2内の温度が酸化下限温度まで低下した図23の時刻t405において、水流量調整ユニット28を停止させ、以後、燃料電池モジュール2は自然放置される。
さらに、シャットダウン停止回路110aは、燃料電池モジュール2内の温度が更に低下した時刻t406において、改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45に信号を送り、これらを作動させる。これにより、改質器20、燃料ガス供給管64、マニホールド66等の燃料ガス通路、及び各燃料電池セルユニット16の内部の燃料極が空気によりパージされる。また、発電室10内の空気極側、排気通路21b、及び空気用熱交換器22等の排気ガス通路内も空気によりパージされる。燃料ガス通路及び燃料極をパージすることにより、これらの内部に残留していた水蒸気が結露し、燃料ガス通路及び燃料極の結露水による酸化が防止される。また、排気ガス通路内をパージすることにより、燃料極から排出された水蒸気の、排気ガス通路内における結露が防止される。また、発電室10内の空気極側をパージすることにより、燃料極側から排出された燃料ガスによるの還元が防止される。
図24は停止モード4の動作を説明する図であり、上段には燃料極側及び空気極側の圧力変化を模式的に表すグラフを示し、中段には制御部110による制御動作及び燃料電池モジュール2内の温度を時系列で示し、下段には各時点における燃料電池セルユニット16の上端部の状態を示している。
まず、図24中段におけるシャットダウン停止前は、発電運転が行われており、プログラムにより予定されているシャットダウン停止時刻の10分前になると、停止前処理が実行される。シャットダウン停止後は、排気制御として発電用の空気が供給され、発電用空気流量調整ユニット45が停止される。発電用空気流量調整ユニット45が停止された後は停止モード3と同様に自然放置される。
加えて、停止モード4においては、自然放置により各燃料電池セルユニット16の燃料極側の圧力が空気極側の圧力に近付いた時点において、圧力保持制御回路110bが作動され、各燃料電池セルユニット16の燃料極側の圧力が高められる。圧力保持制御により、まず、マニホールド66や燃料ガス供給管64(図2)に滞留していた改質された燃料ガスが各燃料電池セルユニット16の燃料極に少しずつ送り込まれ、次いで、改質器20内に残存していた未改質の燃料ガスが燃料極に少しずつ送り込まれるようになる。さらに、未改質の燃料ガスが全て送り込まれた後は、蒸発部20aで蒸発された水蒸気が各燃料電池セルユニット16の燃料極に少しずつ送り込まれるようになる。圧力保持制御回路110bが作動される時点においては、各燃料電池セルユニット16の燃料極の温度は、酸化抑制温度付近にまで低下しているため、燃料極側への空気の逆流が発生したとしても、その影響は僅かである。しかしながら、停止モード4を実行するプログラム停止は、最も頻繁に実行される停止モードであるため、燃料極の酸化が発生するリスクを更に低下させ、各燃料電池セルユニット16への酸化の影響を極限まで低下させている。
また、図24の上段左側に示すように、停止モード1乃至3においては、各燃料電池セルユニット16の燃料極側の圧力は、シャットダウン停止後低下して、燃料極の温度が酸化抑制温度付近まで低下する頃には、空気極側の圧力に近くなる。これに対して、停止モード4においては、図24の上段右側に示すように、燃料極側の圧力と空気極側の圧力が近接する領域において、圧力保持制御回路110bによる圧力保持制御が実行され、燃料極側の圧力が空気極側よりも低下するのを、より確実に防止する。
また、図24の下段に示すように、第2の温度降下工程終了後の自然放置中(図24中段の「自然放置1」)においては、各燃料電池セルユニット16の燃料極に滞留していた燃料ガスが少しずつ流出し、その終期には、空気極側の空気が燃料極側へ拡散し始める場合がある(図24下段(1))。しかしながら、その後、圧力保持制御が開始されるため、蒸発部20a内で発生する水蒸気の圧力により、改質器20下流側の燃料ガス通路内に滞留していた燃料ガスが再び各燃料電池セルユニット16内に移動され、燃料極内の燃料ガス濃度が再び上昇する(図24下段(2))。その後も圧力保持制御により、蒸発部20a内で水蒸気が発生されるため、各燃料電池セルユニット16の燃料極からの燃料ガスの流出分は、燃料ガス通路内に滞留していた燃料ガスにより補われ、燃料極への空気の逆流が防止される。さらに、圧力保持制御の終期において、図24下段(3)に示すように、滞留していた燃料ガスがほぼ全量流出した場合であっても、各燃料電池セルユニット16の燃料極には、圧力保持制御により生成された水蒸気が充満するため、燃料極への空気の逆流が確実に防止される。
さらに、圧力保持制御の終了後、自然放置され(図24中段の「自然放置2」)、その後、改質用空気及び発電用空気(改質及び発電は行われない)が供給され、パージが実行される。これにより、各燃料電池セルユニット16の燃料極側に残留している燃料ガス及び水蒸気が排出され、発電室10内の空気極側に残留している燃料ガス等も燃料電池モジュール2から排出される。これにより、最も高い頻度で実行される停止モード4において、各燃料電池セルユニット16の燃料極の酸化が確実に回避される。
次に、図25乃至図27を参照して、停止モード2乃至4において実行される停止前処理、及び排気制御を説明する(停止モード2においては排気制御のみ実行される)。
図25は、停止前処理及び排気制御の実行を制御するフローチャートであり、このフローチャートは、固体酸化物型燃料電池システムの運転中に所定の時間間隔で実行される。図26は、排気制御における発電用空気供給量の補正係数を示す図である。図27は、各停止モード、温度帯域における停止前処理及び排気制御の実行条件表である。
本実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1においては、温度検出センサである発電室温度センサ142によって検出された燃料電池セルスタック14の温度に基づいて、停止前処理及び排気制御の実行態様が変更される。また、本実施形態においては、電圧検出センサである電力状態検出センサ126による検出電圧に基づいて、実行中の排気制御が中止される。
まず、固体酸化物型燃料電池システム1の発電運転中においては、制御部110は燃料電池モジュール2を制御して、要求された電力を生成すると共に、燃料電池セルスタック14の温度が所定の発電温度範囲である適正温度域内に入るようにしている。なお、本実施形態においては、燃料電池セルスタック14の適正温度域は620℃〜680℃であり、この温度帯域を目標に燃料電池セルスタック14の温度が制御される。
発電運転中に図25のフローチャートが実行され、ステップS21においては、制御部110に対する運転停止指示の有無が判断される。停止モード2が実行される場合には、燃料ガスの供給停止が運転停止指示に該当する。停止モード3が実行される場合には、停止スイッチ(図示せず)の操作が運転停止指示に該当する。また、停止モード4が実行される場合には、所定のプログラム停止の実行時機の到来が運転停止指示に該当する。また、固体酸化物型燃料電池システム1への電力の供給停止により停止モード4が実行される場合には、電力の供給停止が運転停止指示に該当する。この場合には、制御部110、発電用空気流量調整ユニット45等は、電力の供給停止以降、燃料電池モジュール2自身が生成した電力により作動される。
運転停止指示がない場合には、図25のフローチャートの1回の処理が終了し、運転停止指示があった場合にはステップS22に進む。
ステップS22においては、発電室温度センサ142によって検出された燃料電池セルスタック14の温度が適正温度域にあるか否かが判断される。適正温度域内にある場合にはステップS28に進み、適正温度域外である場合にはステップS23に進む。
ステップS23においては、燃料電池セルスタック14の温度が適正温度域よりも高いか否かが判断される。適正温度域よりも高い場合にはステップS25に進み、適正温度域よりも低い場合にはステップS24に進む。
ステップS24においては、制御部110に内蔵されたシャットダウン停止回路110a(図6)により、燃料供給、水供給、発電用空気供給、及び電力の取り出しを短時間で停止させるシャットダウン停止が実行される。シャットダウン停止の後、燃料電池モジュール2は自然放置される。即ち、燃料電池セルスタック14の温度が適正温度域の下限温度よりも低い場合には、停止モード2乃至4の何れが選択された場合であっても、停止前処理回路110c(図6)による停止前処理、及び排気制御回路110d(図6)による排気制御は実行されない(図27の「低温温度域」参照)。なお、停止モード4が選択されている場合には、図25のフローチャートの処理が終了した後、圧力保持制御回路110bによる保圧制御が実行される(図23のt404〜t405)。
このように、適正温度域の下限温度よりも低い場合には、停止前処理による燃料電池セルスタック14の温度低下を行う必要がなく、そのまま自然放置された場合であっても、十分に燃料極酸化のリスクを回避することができる。また、適正温度域の下限温度よりも低い場合においては、シャットダウン停止直前の発電電力が少ないため、シャットダウン停止直前の燃料供給量も少なく、燃料電池セルスタック14の燃料極側や改質器20の内部に残留している燃料も比較的少ない。このため、シャットダウン停止後に、燃料電池セルスタック14の燃料極側から空気極側へ流出する燃料の量は比較的少なく、シャットダウン停止後の排気制御を実行しなくとも、流出した燃料により空気極が部分的に還元されることはない。また、燃料極側や改質器20の内に残留している燃料が少ない状態において、排気制御により燃料電池モジュール2内へ空気を供給すると、空気極側から燃料極側へ空気が逆流し、燃料極が酸化されるリスクが高くなる。本実施形態においては、排気制御を実行しないことにより、このリスクを回避している。
一方、図25のステップS22において、燃料電池セルスタック14の温度が適正温度域内であると判断された場合には、ステップS28に進み、ステップS28においては、シャットダウン停止回路110aによりシャットダウン停止が実行される。このシャットダウン停止は、ステップS24と同様である。
次いで、ステップS29においては、排気制御回路110dによる排気制御が実行される。即ち、燃料電池セルスタック14の温度が適正温度域内にある場合には、停止モード3又は4が選択された場合であっても、停止前処理回路110cによる停止前処理は実行されず、排気制御回路110dによる排気制御のみが実行される(図27の「適正温度域」参照)。このように、適正温度域内の場合には、停止前処理による燃料電池セルスタック14の温度低下を行う必要がなく、所定期間の排気制御のみによって十分に燃料極酸化のリスクを回避することができる。
また、排気制御の最長の実行期間は、排気制御が開始された時点における燃料電池セルスタック14の温度に基づいて補正係数が乗じられ、決定される。図26に示すように、補正係数は、排気制御開始時点における燃料電池セルスタック14の温度が高い場合には、低い場合よりも排気制御の実行時間が長くなるように設定されている。即ち、発電室温度センサ142の検出温度に応じて排気制御が実行される。本実施形態においては、基準となる排気制御実行期間は2分であり、空気の供給量は15L/minである。また、燃料電池セルスタック14の温度が660〜680℃である場合には、基準の排気制御実行期間に1.5を乗じた3分が排気制御実行期間として設定され、640〜659℃である場合には1.25を乗じた2分30秒が排気制御実行期間として設定され、620〜639℃である場合には2分が排気制御実行期間として設定される。このように、発電室温度センサ142の検出温度が低い場合には、高い場合よりも、排気制御における排気が抑制され、検出温度が低い場合には、高い場合よりも、排気制御中に供給される空気の総量が少なくなる。なお、変形例として、排気制御における空気の供給量を補正係数によって補正し、検出温度が高い場合には、低い場合よりも、空気の供給量を増加させることもできる。また、排気制御実行期間及び空気供給量の両方を補正係数によって補正することもできる。
さらに、ステップS29において排気制御が開始されると、制御部110に内蔵された排気制御中止回路110e(図6)は、排気制御実行期間中における燃料電池モジュール2の出力電圧の監視を開始する。即ち、排気制御中止回路110eは、電力状態検出センサ126によって検出される燃料電池モジュール2の出力電圧の低下を監視する。なお、排気制御が開始されるシャットダウン停止以後は、燃料電池モジュール2からの電力の取り出しが停止されているので、電力状態検出センサ126によって検出される電圧は、出力電流がゼロの状態における出力電圧である。
次に、ステップS30においては、排気制御開始後、排気制御実行期間が経過したか否か、又は、排気制御中止回路110eによって監視されている出力電圧が所定の停止条件を満足したか否かが判断される。何れの条件も満足されていない場合には排気制御が継続される。これにより、排気制御実行期間中に停止条件が満たされた場合には、その時点まで排気制御が実行され、排気制御実行期間中に停止条件が満たされない場合には、排気制御実行期間が経過するまで排気制御が実行される。排気制御終了後は、燃料電池モジュール2は自然放置される。なお、停止モード4が選択されている場合には、図25のフローチャートの処理が終了した後、圧力保持制御回路110bによる保圧制御が実行される(図23のt404〜t405)。
本実施形態においては、直列に接続された160本の燃料電池セルユニット16が燃料電池モジュール内に収容されている。各燃料電池セルユニット16の燃料極側、空気極側に夫々十分な燃料ガス(水素)及び空気(酸素)が供給されている場合には、電力を取り出していない状態において、燃料電池モジュール2の出力電圧は約160Vとなる。シャットダウン停止後、空気極側から燃料極側への空気の逆流が発生すると、燃料極側における水素ガスの分圧が低下するため、燃料電池モジュール2の出力電圧が急激に低下する。排気制御中止回路110eは、この電力を取り出していない状態における燃料電池モジュール2の出力電圧(OCV)の低下を監視し、出力電圧の低下が発生した場合には直ちに排気制御回路110dによる排気制御を中止する。これにより、燃料電池モジュール2内への空気の供給が停止され、空気極側の圧力を低下させることにより、空気の逆流が抑制される。
本実施形態においては、排気制御中止回路110eは、基準電圧160Vに対し、電力状態検出センサ126の検出電圧(OCV)が40V低下し、120V以下になったとき、停止条件が満たされたとして排気制御が中止される。なお、基準電圧は燃料電池モジュールの構成に基づいて予め設定しておく所定の電圧である。また、変形例として、検出電圧が基準電圧から所定割合低下したとき、排気制御を中止しても良い。例えば、基準電圧160Vに対し、この電圧が25%低下した、120Vにおいて排気制御を中止するように本発明を構成することができる。或いは、基準電圧に代えて、シャットダウン停止時における検出電圧から所定量(例えば40V)低下したとき、又はシャットダウン停止時における検出電圧から所定割合(例えば25%)低下したとき、排気制御を中止するように本発明を構成することもできる。さらに、検出電圧が単位時間当たり所定量以上低下したとき、排気制御を中止しても良い。例えば、検出電圧が5V/sec以上の割合で低下したとき、排気制御を中止するように本発明を構成することもできる。
一方、図25のステップS23において、燃料電池セルスタック14の温度がシャットダウン温度である適正温度域の上限温度よりも高いと判断された場合には、ステップS25に進む。ステップS25においては、選択されている停止モードが停止モード2であるか否かが判断される。停止モード2である場合にはステップS28に進み、停止モード3又は4である場合にはステップS26に進む。ステップS26においては、停止前処理回路110cにより、停止前処理が実行される。このように、停止モード3又は4が選択され、燃料電池セルスタック14の温度が適正温度域の上限温度(シャットダウン温度)よりも高い場合には、停止前処理が実行された後、シャットダウン停止(ステップS28)が実行され、その後、排気制御(ステップS29、S30)が実行される(図27の「高温温度域」参照)。一方、燃料電池セルスタック14の温度がシャットダウン温度よりも低い場合には、停止前処理は実行されない(ステップS22→S28及びステップS23→S24)。なお、上述した、停止モード3、4における図18、図19及び図23の例では、運転停止指示の時点における温度が、何れも適正温度域(620〜680℃)よりも高いため、停止前処理及び排気制御が実行されている。
また、停止モード2の場合には、燃料ガスの供給が停止されているため、停止前処理は実行不可能であり、停止前処理を行うことなく排気制御(ステップS29、S30)が実行される。排気制御終了後は、燃料電池モジュール2は自然放置される。なお、停止モード4が選択されている場合には、図25のフローチャートの処理が終了した後、圧力保持制御回路110bによる保圧制御が実行される(図23のt404〜t405)。
停止前処理においては、燃料電池モジュール2への燃料供給量、水供給量、及び燃料電池モジュール2からの電力取り出し量が、発電運転中よりも低下される。一方、空気供給量は、燃料電池モジュール2から取り出す電力に応じた量よりも多くされ、発電用空気流量調整ユニット45の供給能力の最大値まで増加される。この停止前処理により、燃料電池セルスタック14の温度が低下される。
次いで、ステップS27においては、燃料電池セルスタック14の温度が、適正温度域の上限温度以下に低下したか否かが判断される。適正温度域の上限温度以下に低下していない場合には停止前処理が継続され、上限温度(シャットダウン温度)以下に低下した場合にはステップS28に進み、シャットダウン停止が実行される。このように、停止前処理は、燃料電池セルスタック14の温度がシャットダウン温度に低下するまで継続される。従って、本実施形態においては、運転停止指示の時点における燃料電池セルスタック14の温度に応じて異なる停止前処理が実行され、燃料電池セルスタック14の温度が低い場合には、高い場合よりも、停止前処理における温度低下量は減少する。停止前処理の終了後は、シャットダウン停止が実行され、その後のステップS29、S30における排気制御は、上述した通りである。なお、停止前処理中においては少量の燃料が供給されているため、停止前処理が長時間実行された場合でも、燃料極側に空気が逆流する虞はない。停止前処理を実行することにより、燃料電池セルスタック14の温度は適正温度域まで低下され、シャットダウン停止時において、適量の燃料が燃料電池セルスタック14の燃料極側に残留するようになり、燃料極の酸化、空気極の還元のリスクを回避することができる。
本発明の実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1は、燃料電池モジュール2内における空気の燃料極側への逆流は、電力が取り出されていない状態における燃料電池モジュール2の出力電圧に基づいて、非常に高感度で検出できる、という新たな知見に基づくものである。本実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1は、電力状態検出センサ126の検出電圧が所定の停止条件(図25のステップS30)を満足した場合に排気制御を中止させる排気制御中止回路110eを備えているので、適確に空気の逆流を検知することができ、空気の供給を直ちに中止することができる。
また、排気制御中止回路110eが、空気の逆流の発生を検知した後であっても、空気の供給を直ちに停止した場合には、供給の停止により空気極側の圧力が低下し、相対的に燃料極側の圧力が高くなる。このため、燃料極側の、空気が侵入した部分には、燃料極側に残留していた燃料が再び充満される。これにより、空気の侵入により燃料極の一部が酸化されていたとしても、燃料極の温度が高い状態において燃料極側に燃料が充満されることにより、燃料極の酸化された部分は燃料により再び還元され、劣化又は損傷を十分に抑制することができる。
また、本実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1によれば、電力が取り出されていない状態における出力電圧(OCV)が、基準電圧160Vに対し、所定量(40V)低下されたか否かを停止条件として排気制御を中止させている(図25のステップS30)ので、簡単な判定アルゴリズムで、確実に空気の逆流を判別することができる。
さらに、本実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1によれば、燃料電池セルユニット16の端部に、加速部である燃料ガス流路細管98(図4)が設けられており、噴出した燃料が高い流速で燃料電池セルユニット16から遠ざかるので、噴出した燃料が燃料電池セルスタック14の空気極に接触するリスクを軽減することができる。
また、本実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1によれば、燃料ガス流路細管98が細長い絞り流路により構成されているので、燃料電池セルユニット16の空気極から離れた位置から燃料が噴出され、噴出した燃料が燃料電池セルスタック14の空気極に接触するリスクを軽減することができる。
さらに、本実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1によれば、電力状態検出センサ126の検出電圧が停止条件(図25のステップS30)を満足した場合、排気制御が中止されるので、燃料極側への空気の逆流が始まったとき直ちに排気制御を中止することができる。これにより、排気制御実行期間を十分長い時間に設定した場合でも、燃料極酸化のリスクを確実に回避することができる。
また、本実施形態の固体酸化物型燃料電池システム1によれば、燃料電池セルスタック14の温度が所定温度以下の場合には排気制御が実行されない(図27の「低温温度域」)ので、温度が低く、燃料電池セルスタック14から噴出される燃料の量が少ない状態では排気制御が行われない。このため、排気制御の必要性が少ない状態で空気が供給され、燃料極を酸化させるリスクを回避することができる。
なお、上述した実施形態においては、停止モード4が選択された場合に、圧力保持制御回路110bによる保圧制御が実行されているが、燃料/排気ガス通路の構成による機械的圧力保持手段により、燃料極酸化のリスクが十分に低減されている場合には、保圧制御を省略することもできる。
また、上述した本発明の実施形態においては、使用者により停止スイッチが操作された場合(図13のステップS5)には、停止モード3が実行されていたが、変形例として、図28に示すように、停止モード2を実行してもよい。図28は、本発明の変形例による固体酸化物型燃料電池システムにおいて、停止モードの選択を行う停止判断のフローチャートである。即ち、この変形例においては、燃料ガスが停止され、電気のみが供給されている場合(図28のステップS3→S4)、及び使用者により停止スイッチが操作された場合(図28のステップS5→S4)に、停止モード2が実行される。本変形例によれば、停止スイッチが操作された場合に、停止前処理が実行されることなく、シャットダウン停止が実行されるため、使用者による停止スイッチ操作後、シャットダウン停止に係る制御を速やかに終了することができる。