JP2016181377A - 固体酸化物形燃料電池システム - Google Patents

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阿部 俊哉
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俊哉 阿部
めぐみ 島津
Megumi Shimazu
めぐみ 島津
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Abstract

【課題】十分に長い耐用年数を確保することができる固体酸化物形燃料電池システムを提供する。【解決手段】燃料電池セル16と、改質部と、燃料供給装置38と、水供給装置28と、蒸発部と、燃料電池セルの空気極に酸化剤を供給する第1酸化剤ガス供給装置44と、改質器20を介して燃料電池セルの燃料極に酸化剤を供給する第2酸化剤ガス供給装置45と、燃料電池モジュール2と、コントローラと、を有する。コントローラは、発電停止後、セル保護制御を実行して少量の原燃料ガス及び水を供給し、発電停止後も第2酸化剤ガス供給装置を作動させて燃料電池モジュール内の温度を低下させると共に、燃料電池セルの温度が350℃〜290℃の温度帯域に低下すると、第1酸化剤ガス供給装置を作動させ、改質器を介して燃料極側のガスを1分以内で酸化剤ガスに置換することにより、局部電池現象の発生を抑制する。【選択図】図1

Description

本発明は、固体酸化物形燃料電池システムに関し、特に、原燃料ガスを水蒸気改質して得られた水素と酸化剤ガスを反応させることにより発電する固体酸化物形燃料電池システムに関する。
特許第4906242号公報(特許文献1)には、燃料電池の稼働停止方法が記載されている。この燃料電池の稼働停止方法においては、燃料電池による発電を停止した後、燃料電池内への空気の供給を継続して行いながら、原燃料ガス(炭化水素ガス)の供給量を低減させ、低減された量の原燃料ガスと水蒸気との混合ガスを改質器を通して燃料電池内に供給している。この発電停止後の混合ガスの供給は、改質触媒の温度が、触媒の酸化発生温度±150℃の範囲に降温したときに停止される。その後、空気または原燃料ガスがパージガスとして改質器を通して燃料電池に流されパージされる。
この特許第4906242号公報記載の発明では、発電停止後において、改質器に燃料電池を通して空気が逆流し、改質器内の高温の改質触媒が雰囲気酸化されることを技術課題としている。この発明においては、発電停止後も改質器を介して原燃料ガスと水蒸気との混合ガスを供給し続けることにより、空気の逆流を防止している。また、混合ガスの供給は、改質器の触媒が雰囲気酸化される虞がなくなるまで、即ち、触媒の酸化発生温度±150℃の範囲に降温したときに停止される。
一方、特許第5316830号公報(特許文献2)には、固体酸化物形燃料電池が記載されている。この固体酸化物形燃料電池においては、発電の停止と共に原燃料ガスの供給も停止させることにより、発電に寄与しない燃料の消費を回避している。また、この発明においては、発電停止直後の、燃料電池セルスタックの燃料極側の圧力が高い状態において、燃料電池セルスタックの空気極側に空気を供給する温度降下制御が実行される。これにより、燃料電池セルスタックの燃料極の温度が実質的に雰囲気酸化が発生しない温度に低下するまで空気の逆流が抑制され、燃料極の雰囲気酸化が防止されている。
特許第4906242号公報 特許第5316830号公報
しかしながら、特許文献1及び2記載の発明のように、比較的高温領域において発生する雰囲気酸化を防止したとしても、雰囲気酸化とは異なるメカニズムで電気化学的な酸化が発生し、これが燃料電池に悪影響を与えているという新たな技術課題が本件発明者により見出された。特に、特許第5316830号公報記載の発明において問題にされている、燃料電池セルスタックの燃料極には、電気化学的酸化反応により微構造変化が発生し、長年月の使用によって固体酸化物形燃料電池システムの起動、停止が多数回繰り返されると損傷に至る場合がある、という新たな課題が本件発明者により見出された。
従って、本発明は、長年月に亘る燃料電池システムの起動、停止の繰り返しによっても、燃料極に微構造変化が発生しにくく、十分に長い耐用年数を確保することができる固体酸化物形燃料電池システムを提供することを目的としている。
上述した課題を解決するために、本発明は、原燃料ガスを水蒸気改質して得られた水素と酸化剤ガスを反応させることにより発電する固体酸化物形燃料電池システムであって、内側から順に、ニッケルを主成分とする燃料極層、LSGM製の固体電解質層、LSCF製の酸化剤ガス極層が設けられた筒状の燃料電池セルと、貴金属系の改質触媒を使用して、水蒸気改質により原燃料ガスから水素を生成し、生成された水素を燃料電池セルの燃料極側に下端から供給する改質部と、この改質部に原燃料ガスを供給する燃料供給装置と、水蒸気改質用の水を供給する水供給装置と、この水供給装置から供給された水により水蒸気を生成し、改質部に供給する蒸発部と、燃料電池セルの燃料極側に、改質部を介して酸化剤ガスを供給する第1酸化剤ガス供給装置と、燃料電池セルの酸化剤ガス極側に酸化剤ガスを供給する第2酸化剤ガス供給装置と、燃料電池セルを収容した燃料電池モジュールと、燃料供給装置、水供給装置、第1酸化剤ガス供給装置及び第2酸化剤ガス供給装置を制御すると共に、燃料電池モジュールからの電力の取り出しを制御するコントローラと、を有し、このコントローラは、燃料電池モジュールからの電力の取り出し停止後、燃料電池セルを保護するセル保護制御を実行するセル保護回路を有し、セル保護回路は、電力の取り出し停止後も、発電運転時よりも少量の原燃料ガス及び水が供給されるように燃料供給装置及び水供給装置の運転を継続することにより、改質部を介して燃料電池セルの燃料極側にガスを供給するセル保護制御を実行するようにプログラムされており、コントローラは、電力の取り出し停止後も第2酸化剤ガス供給装置の運転を継続して燃料電池モジュール内の温度を低下させると共に、セル保護制御を実行して、燃料電池セルの温度が350℃乃至290℃の温度帯域に低下すると、第1酸化剤ガス供給装置を作動させ、燃料電池セルの燃料極側のガスを1分以内で酸化剤ガスに置換することにより、局部電池現象の発生を抑制して、燃料電池セルを保護することを特徴としている。
従来の燃料電池システムにおいては、発電停止後における燃料極の雰囲気酸化が問題とされていた。特に、発電停止(電力の取り出しを停止)すると共に、原燃料ガスの供給も停止してしまうシャットダウン停止をした場合、高温状態で酸化剤ガス極側から燃料極側へ酸化剤ガスが逆流すると、燃料極が酸化され、燃料電池セルが損傷される場合がある。このような燃料電池セルの燃料極の雰囲気酸化の問題は、特許第5316830号公報(特許文献2)に記載されているように、本件発明者によって既に解決されている。
しかしながら、シャットダウン停止を実行した場合、雰囲気酸化とは全く異なるメカニズムで燃料極が酸化され得るという、新たな技術課題が本件発明者により見出された。即ち、燃料電池システムをシャットダウン停止した後、燃料電池セルの酸化剤ガス極側の酸化剤ガスは、少しずつ燃料極側に逆流し始める。この酸化剤ガスの逆流は極めて少しずつであるため、シャットダウン停止後の雰囲気酸化が発生し得る温度帯域においては、燃料極側に逆流する酸化剤ガスは微量であり、燃料極を実質的に雰囲気酸化させることはない。ところが、さらに時間が経過した後、燃料極の雰囲気酸化が問題とならない帯域まで温度低下した状態において、燃料極が電気化学的に酸化されてしまうことが本件発明者により見出された。
即ち、雰囲気酸化が問題とならない比較的低い温度帯域においては、LSCF製の酸化剤ガス極層及びLSGM製の電解質層が依然として触媒活性を維持している一方、ニッケルを主成分とする燃料極層の触媒活性が低下した状態となる。このような状態では、酸化剤ガス極層及び電解質層が酸素イオンを透過可能であるのに対し、燃料極層は、透過されてきた酸素イオンを水素イオンと反応させることができない。このような、燃料極層まで透過した、水素イオンと反応できない酸素イオンが、燃料極層を電気化学的に酸化させてしまうことが本件発明者により見出された。この電気化学的な酸化は、極めて微量であり直ちに燃料電池セルの性能を低下させるものではないが、固体酸化物形燃料電池システムを長期間使用し、起動及び停止が多数回繰り返されることにより、燃料電池セルが損傷に至る場合がある。
さらに、このような燃料極層において反応しない酸素イオンは、燃料電池セルの各部で一様に発生している限り、燃料電池システムの起動及び停止が多数回繰り返された場合でも殆ど問題とはならない。しかしながら、燃料電池システムのシャットダウン停止後の燃料電池セルにおいて、酸化剤ガス極側から燃料極側に酸化剤ガスが逆流し始めると、1つの燃料電池セルの燃料極の中で水素濃度が異なることとなり、この濃度勾配が燃料極の電気化学的酸化を促進してしまうことが、本件発明者により見出されている。即ち、燃料極側に水素の濃度勾配が存在すると、燃料極側と酸化剤ガス極側の酸素分圧差が燃料電池セルの各部で異なることとなる。ここで、燃料電池セルの酸素分圧差が大きい部分においては、燃料極と酸化剤ガス極の間で大きな起電力が発生する一方、酸素分圧差が小さい部分では起電力は小さくなる。このように、1つの燃料電池セルの中で起電力の大きい部分と小さい部分が存在すると、1つの燃料電池セルの内部で電流が流れる「局部電池現象」が発生することが、本件発明者により見出された。この「局部電池現象」が発生すると、燃料極層における電気化学的酸化の影響が、1つの燃料電池セルの一部に集中して、起動及び停止が多数回繰り返されることにより、燃料電池セルが損傷に至る場合がある。
このような「局部電池現象」を回避するために、本件発明者は、特許第4906242号公報(特許文献1)記載の発明のように、燃料電池システムの発電停止後も原燃料ガスの供給を継続することを試みた(なお、特許文献1記載の発明は、改質器における改質触媒の雰囲気酸化を防止することを目的としたものであり、燃料極の電気化学的酸化の回避を目的としている本件発明とは、技術思想が全く異なるものである。)。このように、燃料電池システムの発電停止後も原燃料ガスの供給を継続することにより、電気化学的酸化の悪影響は低減されたが、不十分であり、起動及び停止が多数回繰り返されると燃料極層に微構造変化が発生していることが本件発明者により確認された。
即ち、特許第4906242号公報(特許文献1)記載の発明においては、改質触媒の温度が350℃程度まで低下したとき、原燃料ガスと水蒸気との混合ガスの供給を停止し、その後、空気等によりパージを行っている。しかしながら、このような停止工程を実行すると、改質触媒や燃料極層の雰囲気酸化を回避することは可能であるが、燃料電池セルにおける「局部電池現象」は却って促進されてしまうことが本件発明者により見出されている。これは、燃料極側に供給するガスを混合ガスからパージガスに切り替える350℃程度の温度帯域は、電気化学的酸化が発生しやすい温度帯域であり、この帯域において供給するガスの切り替えを行うと、燃料極側に濃度勾配が発生してしまい、「局部電池現象」が発生するものである。また、濃度勾配の発生を抑制すべく、電気化学的酸化が発生する温度帯域で燃料電池セルの燃料極側をパージすると、燃料極側をパージしている期間に濃度勾配が発生して、「局部電池現象」を誘発する結果となる。
これらの問題を解決するために、本発明においては、セル保護回路が、電力の取り出し停止後、少量の原燃料ガス及び水の供給を継続し、燃料電池セルの温度が350℃乃至290℃の温度帯域に低下すると、燃料電池セルの燃料極側のガスを1分以内で酸化剤ガスに置換している。これにより、電力の取り出し停止後の高温領域においては、各燃料電池セルの燃料極側に原燃料ガス(又は水素)及び水蒸気が供給されるため、燃料極層の雰囲気酸化及び電気化学的酸化が抑制される。また、燃料電池セルの温度が350℃乃至290℃の温度帯域まで低下すると、燃料極側のガスが1分以内で酸化剤ガスに置換されるので、置換の途中で発生する濃度勾配の影響を極めて少なくすることができ、置換完了後は電気化学的酸化のリスクを完全に解消することができる。また、水の沸点よりも十分に高い温度帯域において燃料極側のガスが酸化剤ガスに置換されるため、燃料極側の水蒸気を容易に排出することができ、水蒸気が燃料極層に結露して悪影響を与えるのを確実に防止することができる。さらに、改質部で使用されている改質触媒は酸化温度が極めて高い(約700℃以上)貴金属系であるため、350℃乃至290℃の温度帯域で改質器を介して燃料極側に酸化剤ガスを供給した場合でも、改質触媒の酸化を回避することができる。
本発明において、好ましくは、コントローラは、第1酸化剤ガス供給装置による酸化剤ガスの供給開始時において、酸化剤ガスの供給量をステップ状に変化させて、燃料電池セルの燃料極側のガスを酸化剤ガスに置換する。
このように構成された本発明によれば、酸化剤ガスの供給量がステップ状に変化されるので、各燃料電池セルの燃料極側の雰囲気が急速に酸化剤ガスに置換され、燃料極側に濃度勾配が発生する時間を極めて短くすることができ、電気化学的酸化の影響を極小にすることができる。
本発明の固体酸化物形燃料電池システムによれば、長年月に亘る燃料電池システムの起動、停止の繰り返しによっても、燃料極に微構造変化が発生しにくく、十分に長い耐用年数を確保することができる。
本発明の一実施形態による燃料電池システムを示す全体構成図である。 本発明の一実施形態による燃料電池システムの燃料電池モジュールを示す正面断面図である。 図2のIII-III線に沿った断面図である。 本発明の一実施形態による燃料電池システムの燃料電池セルを示す(a)部分断面図及び(b)横断面図である。 本発明の一実施形態による燃料電池システムの燃料電池セルスタックを示す斜視図である。 本発明の一実施形態による燃料電池システムを示すブロック図である。 本発明の一実施形態による燃料電池システムの起動工程における燃料等の各供給量、及び各部の温度の一例を示すタイムチャートである。 本発明の一実施形態による燃料電池システムにおいて、シャットダウン停止が実行された場合の処理手順を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態による燃料電池システムにおける停止挙動の一例を模式的に時系列で表したタイムチャートである。 本発明の一実施形態による燃料電池システムにおいて、停止工程が実行された場合における制御、燃料電池モジュール内の温度、及び燃料電池セルの先端部の状態を時系列で説明するための図である。 本発明の変形実施形態による燃料電池システムの燃料電池モジュールを示す正面断面図である。 従来の固体酸化物形燃料電池システムにおいて、シャットダウン停止が実行された場合における燃料電池モジュール内の温度、圧力、及び燃料電池セルの先端部の状態を時系列で説明するための図である。 燃料電池セルを構成する燃料極,電解質,空気極の活性温度と、停止工程の関係を模式的に示す説明図である。 燃料極側に水素ガスを供給し、空気極側に空気を供給した状態において、単一の燃料電池セルが発生する起電力を示すグラフである。 燃料電池モジュール内の温度が電気化学的酸化発生温度帯域を通過する場合の燃料電池セルの挙動を示す図である。 燃料電池セルにおける局部電池現象を模式的に示す図である。
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による固体酸化物形燃料電池(SOFC)システムを説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体酸化物形燃料電池(SOFC)システムを示す全体構成図である。この図1に示すように、本発明の一実施形態による固体酸化物形燃料電池(SOFC)システム1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、断熱材7を介して金属製のケース8が内蔵されている。この密閉空間であるケース8の下方部分である発電室10には、燃料(水素)と酸化剤ガス(空気)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。この燃料電池セル集合体12は、10個の燃料電池セルスタック14(図5参照)を備え、この燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セル16(図4参照)から構成されている。このように、燃料電池セル集合体12は、160本の燃料電池セル16を有し、これらの燃料電池セル16の全てが直列接続されている。
燃料電池モジュール2のケース8の上述した発電室10の上方には、燃焼部である燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されずに残った残余の燃料(オフガス)と残余の酸化剤(空気)とが燃焼し、排気ガスを生成するようになっている。さらに、ケース8は断熱材7により覆われており、燃料電池モジュール2内部の熱が、外気へ発散するのを抑制している。
また、この燃焼室18の上方には、原燃料ガスを改質する改質器20が配置され、前記残余ガスの燃焼熱によって改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、残余ガスの燃焼ガスにより発電用の空気を加熱し、発電用の空気を予熱する熱交換器である空気用熱交換器22が配置されている。
次に、補機ユニット4は、燃料電池モジュール2からの排気中に含まれる水分を結露させた水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この貯水タンクから供給される水の流量を調整する水供給装置である水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された原燃料ガスを遮断するガス遮断弁32と、原燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、原燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)と、電源喪失時において、燃料流量調整ユニット38から流出する原燃料ガスを遮断するバルブ39を備えている。さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される酸化剤ガスである空気を遮断する電磁弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、改質器20に供給される改質用空気を加熱する第1ヒータ46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒータ48とを備えている。これらの第1ヒータ46と第2ヒータ48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
次に、燃料電池モジュール2には、排気ガスを浄化するための燃焼触媒が内蔵された燃焼触媒器49が接続され、この燃焼触媒器49により浄化された排気ガスが温水製造装置50に供給されるようになっている。また、燃焼触媒器49には、触媒を活性温度に加熱する触媒ヒーター49aが内蔵されている。温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
次に、図2及び図3により、本発明の実施形態による固体酸化物形燃料電池(SOFC)システムの燃料電池モジュールの内部構造を説明する。図2は、本発明の一実施形態による固体酸化物形燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。
図2及び図3に示すように、燃料電池モジュール2のハウジング6内のケース8には、上述したように、下方から順に、燃料電池セル集合体12、改質器20、空気用熱交換器22が配置されている。
改質器20は、その上流端側の端部側面に純水、改質される原燃料ガス、及び改質用空気を導入するための改質器導入管62が取り付けられている。
改質器導入管62は、改質器20の一端の側壁面から延びる円管であり、90゜屈曲されて概ね鉛直方向に延び、ケース8の上端面を貫通している。なお、改質器導入管62は、改質器20に水を導入する水導入管として機能している。また、改質器導入管62の上端には、T字管62aが接続されており、このT字管62aの概ね水平方向に延びる管の両側の端部には、原燃料ガス及び純水を供給するための配管が夫々接続されている。水供給用配管63aはT字管62aの一方の側端から斜め上方に向けて延びている。燃料ガス供給用配管63bはT字管62aの他方の側端から水平方向に延びた後、U字型に屈曲され、水供給用配管63aと同様の方向に、概ね水平に延びている。
一方、改質器20の内部には、上流側から順に、蒸発部20a、混合部20b、改質部20cが形成され、この改質部20cには改質触媒が充填されている。蒸発部20aは、改質器導入管62を介して導入された純水を加熱して、蒸発させるように構成されている。また、蒸発部20aには、蒸発部20aの加熱を補助するための加熱ヒータ81(図2)が設けられている。この加熱ヒータ81は、発電停止後等、燃料電池モジュール2内の温度が低下した状態で水蒸気を生成する場合に通電され、供給された純水を蒸発させることができるように構成されている。
さらに、蒸発部20aにおいて生成された水蒸気は、混合部20b内で原燃料ガスと混合され、改質部20cに流入する。改質部20cに導入された水蒸気及び原燃料ガスは、改質部20c内に充填された改質触媒により改質される。本実施形態においては、改質触媒として、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが用いられている。また、改質触媒として、アルミナの球体表面にロジウムを付与したもの等、貴金属系の改質触媒を使用することができる。なお、貴金属系の改質触媒は、一般に酸化温度が約700℃程度以上で、非常に高温であり、固体酸化物形燃料電池システム1の停止後に改質器20内に空気が侵入したとしても、改質触媒が雰囲気酸化されることはない。
この改質器20の下流端側には、燃料ガス供給管64が接続され、この燃料ガス供給管64は、下方に延び、さらに、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内で水平に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、改質された燃料ガスがマニホールド66内に供給される。また、燃料ガス供給管64の鉛直部の途中には、流路が狭められた圧力変動抑制用流路抵抗部64cが設けられ、燃料ガスの供給流路の流路抵抗が調整されている。流路抵抗の調整については後述する。
このマニホールド66の上方には、上述した燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セル16内に供給される。
一方、改質器20の上方には、空気用熱交換器22が設けられている。
また、図2に示すように、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
次に図4により燃料電池セル16について説明する。図4(a)は、本発明の一実施形態による固体酸化物形燃料電池(SOFC)システムの燃料電池セルを示す部分断面図である。図4(b)は、燃料電池セルの部分横断面図である。
図4(a)に示すように、燃料電池セル16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の両端部にそれぞれ接続されたキャップである内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある固体電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガス(水素)が通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
燃料電池セル84の第1の端部である下端側と第2の端部である上端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、固体電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、内側電極層90の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路細管98が形成されている。
この燃料ガス流路細管98は、内側電極端子86の中心から燃料電池セル84の軸線方向に延びるように設けられた細長い絞り部である。このため、マニホールド66(図2)から、下側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98を通って燃料ガス流路88に流入する燃料ガスの流れには、所定の圧力損失が発生する。従って、下側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98は、流入側流路抵抗部として作用し、その流路抵抗は所定の値となるように設定されている。また、燃料ガス流路88から、上側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98を通って燃焼室18(図2)に流出する燃料ガスの流れにも所定の圧力損失が発生する。従って、上側の内側電極端子86の燃料ガス流路細管98は、流出側流路抵抗部として作用し、その流路抵抗は所定の値となるように設定されている。
内側電極層90は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成される。
固体電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
次に、図4(b)を参照して、燃料電池セル84の構造を詳細に説明する。
図4(b)に示すように、内側電極層90は、燃料極層を構成する第1燃料極90dと第2燃料極90eから構成されており、さらに燃料極保護層90fを第1燃料極90dと第2燃料極90eの間に含んでいる。また、外側電極層92は、酸化剤ガス極層である空気極92aと集電層92bから構成されている。
本実施形態においては、第1燃料極90dは、Ni/YSZからなり、Niと、YをドープしたジルコニアであるYSZとの混合物を円筒状に焼成することにより形成されている。燃料極保護層90fは、ストロンチウムジルコネートとニッケルの混合物(Ni/SrZrO3)からなり、第1燃料極90d及び第2燃料極90eよりも薄い厚みで形成された薄膜である。第2燃料極90eは、Ni/GDCであり、Niと、GdをドープしたセリアであるGDCとの混合物を、燃料極保護層90fの外側に成膜することにより形成されている。このように、本実施形態においては、燃料極層は、ニッケルを主成分としたものが使用されている。
また、本実施形態においては、固体電解質層94は、Sr及びMgをドープしたランタンガレートであるLSGMを第2燃料極90eの外側に積層することにより形成されている。このように形成された成形体を焼成することにより焼成体を構成した。
また、本実施形態においては、空気極92aは、この焼成体の外側に、Sr及びFeをドープしたランタンコバルタイトであるLSCFを成膜することにより形成されている。集電層92bは、空気極92aの外側に、Ag層を形成することにより構成されている。
次に図5により燃料電池セルスタック14について説明する。図5は、本発明の一実施形態による固体酸化物形燃料電池(SOFC)システムの燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図5に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セル16を備え、これらの燃料電池セル16は、8本ずつ2列に並べて配置されている。各燃料電池セル16は、下端側がセラミック製の長方形の下支持板68(図2)により支持され、上端側は、両端部の燃料電池セル16が4本ずつ、概ね正方形の2枚の上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴がそれぞれ形成されている。
さらに、燃料電池セル16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、空気極である外側電極層92の外周面と電気的に接続される空気極用接続部102bとを接続するように一体的に形成されている。また、各燃料電池セル16の外側電極層92(空気極)の外表面全体には、空気極側の電極として、銀製の薄膜が形成されている。この薄膜の表面に空気極用接続部102bが接触することにより、集電体102は空気極全体と電気的に接続される。
さらに、燃料電池セルスタック14の端(図5では左端の奥側)に位置する燃料電池セル16の空気極86には、2つの外部端子104がそれぞれ接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セル16の内側電極端子86に接続され、上述したように、160本の燃料電池セル16の全てが直列接続されるようになっている。
次に図6により本実施形態による固体酸化物形燃料電池(SOFC)システムに取り付けられたセンサ類等について説明する。図6は、本発明の一実施形態による固体酸化物形燃料電池(SOFC)システムを示すブロック図である。
図6に示すように、固体酸化物形燃料電池システム1は、コントローラである制御部110を備え、この制御部110には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置112、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置114、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置116が接続されている。なお、この報知装置116は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであっても良い。また、制御部110には、マイクロプロセッサ、メモリ、及びこれらを作動させるプログラム(以上、図示せず)が内蔵されており、これらにより、各センサからの入力信号に基づいて、補機ユニット4、インバータ54等が制御される。
次に、制御部110には、以下に説明する種々のセンサからの信号が入力されるようになっている。
先ず、可燃ガス検出センサ120は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。
CO検出センサ122は、本来排気ガス通路80等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。
貯湯状態検出センサ124は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
電力状態検出センサ126は、インバータ54及び分電盤(図示せず)の電流及び電圧等を検知するためのものである。
発電用空気流量検出センサ128は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。
改質用空気流量センサ130は、改質器20に供給される改質用空気の流量を検出するためのものである。
燃料流量センサ132は、改質器20に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
水流量センサ134は、改質器20に供給される純水の流量を検出するためのものである。
水位センサ136は、純水タンク26の水位を検出するためのものである。
圧力センサ138は、改質器20の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。
排気温度センサ140は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
発電室温度センサ142は、図3に示すように、燃料電池セル集合体12の近傍の前面側と背面側に設けられ、燃料電池セルスタック14の近傍の温度を検出して、燃料電池セルスタック14(即ち燃料電池セル84自体)の温度を推定するためのものである。
燃焼室温度センサ144は、燃焼室18の温度を検出するためのものである。
排気ガス室温度センサ146は、排気ガス室78の排気ガスの温度を検出するためのものである。
改質器温度センサ148は、改質器20の温度を検出するためのものであり、改質器20の入口温度と出口温度から改質器20の温度を算出する。
外気温度センサ150は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)システムが屋外に配置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサを設けるようにしても良い。
これらのセンサ類からの信号は、制御部110に送られ、制御部110は、これらの信号によるデータに基づき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、第1酸化剤ガス供給装置である改質用空気流量調整ユニット44、第2酸化剤ガス供給装置である発電用空気流量調整ユニット45に、制御信号を送り、これらのユニットにおける各流量を制御するようになっている。
図2及び図3に示すように、空気用熱交換器22は、複数の燃焼ガス配管70と発電用空気流路72と、を有する。また、図2に示すように、複数の燃焼ガス配管70の一方の端部には、排気ガス集約室78が設けられており、この排気ガス集約室78は、各燃焼ガス配管70に連通されている。また、排気ガス集約室78には、排気ガス排出管82が接続されている。さらに、各燃焼ガス配管70の他方の端部は開放されており、この開放された端部は、ケース8の上面に形成された連通開口8aを介して、ケース8内の燃焼室18に連通されている。
燃焼ガス配管70は、水平方向に向けられた複数の金属製の円管であり、各円管は夫々平行に配置されている。一方、発電用空気流路72は、各燃焼ガス配管70の外側の空間によって構成されている。また、発電用空気流路72の、排気ガス排出管82側の端部には、発電用空気導入管74が接続されており、燃料電池モジュール2の外部の空気が、発電用空気導入管74を通って発電用空気流路72に導入される。なお、発電用空気導入管74は、排気ガス排出管82と平行に、空気用熱交換器22から水平方向に突出している。さらに、発電用空気流路72の他方の端部の両側面には、一対の連絡流路76(図3)が接続されており、発電用空気流路72と各連絡流路76は、夫々、出口ポート76aを介して連通されている。
図3に示すように、ケース8の両側面には、発電用空気供給路77が夫々設けられている。空気用熱交換器22の両側面に設けられた各連絡流路76は、ケース8の両側面に設けられた発電用空気供給路77の上部に夫々連通されている。また、各発電用空気供給路77の下部には、多数の吹出口77aが水平方向に並べて設けられている。各発電用空気供給路77を通って供給された発電用の空気は、多数の吹出口77aから、燃料電池モジュール2内の燃料電池セルスタック14の下部側面に向けて噴射される。
また、ケース8内部の天井面には、隔壁である整流板21が取り付けられており、この整流板21には開口部21aが設けられている。
整流板21は、ケース8の天井面と改質器20の間に、水平に配置された板材である。この整流板21は、燃焼室18から上方に流れる気体の流れを整え、空気用熱交換器22の入り口(図2の連通開口8a)に導くように構成されている。燃焼室18から上方へ向かう発電用空気及び燃焼ガスは、整流板21の中央に設けられた開口部21aを通って整流板21の上側に流入し、整流板21の上面とケース8の天井面の間の排気通路21bを図2における左方向に流れ、空気用熱交換器22の入り口に導かれる。また、開口部21aは、改質器20の改質部20cの上方に設けられており、開口部21aを通って上昇した気体は、蒸発部20aとは反対側の、図2における左側の排気通路21bに流れる。このため、蒸発部20aの上方の空間(図2における右側)は、改質部20cの上方の空間よりも排気の流れが遅く、排気の流れが淀む気体滞留空間21cとして作用する。
また、整流板21の開口部21aの縁には、全周に亘って縦壁21dが設けられており、この縦壁21dにより、整流板21の下側の空間から整流板21の上側の排気通路21bに流入する流路が狭められている。さらに、排気通路21bと空気用熱交換器22を連通させる連通開口8aの縁にも、全周に亘って下がり壁8b(図2)が設けられており、この下がり壁8bにより、排気通路21bから空気用熱交換器22に流入する流路が狭められている。これらの縦壁21d、下がり壁8bを設けることにより、燃焼室18から空気用熱交換器22を通って燃料電池モジュール2の外部に至る排気の通路における流路抵抗が調整されている。流路抵抗の調整については後述する。
次に、固体酸化物形燃料電池システム1の発電運転時における燃料、発電用空気、及び排気ガスの流れを説明する。
まず、原燃料ガスは、燃料ガス供給用配管63b、T字管62a、改質器導入管62を介して改質器20の蒸発部20aに導入されると共に、純水は、水供給用配管63a、T字管62a、改質器導入管62を介して蒸発部20aに導入される。従って、供給された原燃料ガス及び水はT字管62aにおいて合流され、改質器導入管62を通って蒸発部20aに導入される。発電運転中においては、蒸発部20aは高温に加熱されているため、蒸発部20aに導入された純水は、比較的速やかに蒸発され水蒸気となる。蒸発された水蒸気及び原燃料ガスは、混合部20b内で混合され、改質器20の改質部20cに流入する。水蒸気と共に改質部20cに導入された原燃料ガスは、ここで水蒸気改質され、水素を豊富に含む燃料ガスに改質される。改質部20cにおいて改質された燃料は、燃料ガス供給管64を通って下方に下り、分散室であるマニホールド66に流入する。
マニホールド66は、燃料電池セルスタック14の下側に配置された比較的体積の大きい直方体状の空間であり、その上面に設けられた多数の穴が燃料電池セルスタック14を構成する各燃料電池セル16の内側に連通している。マニホールド66に導入された燃料は、その上面に設けられた多数の穴を通って、燃料電池セル16の燃料極側、即ち、燃料電池セル16の内部を通って、その上端から流出する。また、燃料である水素ガスが燃料電池セル16の内部を通過する際、空気極(酸化剤ガス極)である燃料電池セル16の外側を通る空気中の酸素と反応して電荷が生成される。この発電に使用されずに残った残余燃料は、各燃料電池セル16の上端から流出し、燃料電池セルスタック14の上方に設けられた燃焼室18内で燃焼される。
一方、酸化剤ガスである発電用の空気は、第2酸化剤ガス供給装置である発電用空気流量調整ユニット45によって、発電用空気導入管74を介して燃料電池モジュール2内に送り込まれる。燃料電池モジュール2内に送り込まれた空気は、発電用空気導入管74を介して空気用熱交換器22の発電用空気流路72に導入され、予熱される。予熱された空気は、各出口ポート76a(図3)を介して各連絡流路76に流出する。各連絡流路76に流入した発電用の空気は、燃料電池モジュール2の両側面に設けられた発電用空気供給路77を通って下方に流れ、多数の吹出口77aから、燃料電池セルスタック14に向けて発電室10内に噴射される。
発電室10内に噴射された空気は、燃料電池セルスタック14の空気極側(酸化剤ガス極側)である各燃料電池セル16の外側面に接触し、空気中の酸素の一部が発電に利用される。また、吹出口77aを介して発電室10の下部に噴射された空気は、発電に利用されながら発電室10内を上昇する。発電室10内を上昇した空気は、各燃料電池セル16の上端から流出する燃料を燃焼させる。この燃焼による燃焼熱は、燃料電池セルスタック14の上方に配置された改質器20の蒸発部20a、混合部20b及び改質部20cを加熱する。燃料が燃焼され、生成された燃焼ガスは、上方の改質器20を加熱した後、改質器20上方の開口部21aを通って整流板21の上側に流入する。整流板21の上側に流入した燃焼ガスは、整流板21によって構成された排気通路21bを通って空気用熱交換器22の入り口である連通開口8aに導かれる。連通開口8aから空気用熱交換器22に流入した燃焼ガスは、開放された各燃焼ガス配管70の端部に流入し、各燃焼ガス配管70外側の発電用空気流路72を流れる発電用空気との間で熱交換を行い、排気ガス集約室78に集約される。排気ガス集約室78に集約された排気ガスは、排気ガス排出管82を介して燃料電池モジュール2の外部に排出される。これにより、蒸発部20aにおける水の蒸発、及び改質部20cにおける吸熱反応である水蒸気改質反応が促進されると共に、空気用熱交換器22内の発電用空気が予熱される。また、燃料電池モジュール2から排出された排気ガスは燃焼触媒器49に流入し、ここで一酸化炭素等の有害な成分が除去され、温水製造装置50に送られる。
次に、図7を新たに参照して、固体酸化物形燃料電池システム1の起動工程における制御を説明する。
図7は、起動工程における燃料等の各供給量、及び各部の温度の一例を示すタイムチャートである。なお、図7の縦軸の目盛りは温度を示しており、燃料等の各供給量は、それらの増減を概略的に示したものである。
図7に示す起動工程においては、常温の状態にある燃料電池セルスタック14の温度を、発電が可能な温度まで上昇させる。
まず、図7の時刻t0において、発電用空気及び改質用空気の供給が開始される。具体的には、コントローラである制御部110が、第2酸化剤ガス供給装置である発電用空気流量調整ユニット45に信号を送って、これを作動させる。上述したように、発電用空気は、発電用空気導入管74を介して燃料電池モジュール2内に導入され、空気用熱交換器22、発電用空気供給路77を経て発電室10内に流入する。また、制御部110は、第1酸化剤ガス供給装置である改質用空気流量調整ユニット44に信号を送って、これを作動させる。燃料電池モジュール2内に導入された改質用空気は、改質器20、マニホールド66を経て、各燃料電池セル16の内部に流入し、その上端から流出する。なお、時刻t0においては、まだ燃料が供給されていないため、改質器20内において改質反応は発生しない。本実施形態においては、図7の時刻t0において開始される発電用空気の供給量は約100L/minであり、改質用空気の供給量は約10.0L/minである。
次いで、図7の時刻t0から所定時間後の時刻t1において、原燃料ガスの供給が開始される。具体的には、制御部110が、燃料供給装置である燃料流量調整ユニット38に信号を送って、これを作動させる。本実施形態においては、時刻t1において開始される原燃料ガスの供給量は約5.0L/minである。燃料電池モジュール2内に導入された燃料は、改質器20、マニホールド66を経て、各燃料電池セル16の内部に流入し、その上端から流出する。なお、時刻t1においては、まだ改質器の温度が低温であるため、改質器20内において改質反応は発生しない。
次に、図7の時刻t1から所定時間経過した時刻t2において、供給されている燃料への点火工程が開始される。具体的には、点火工程においては、制御部110が、点火手段である点火装置83(図2)に信号を送り、各燃料電池セル16の上端から流出する燃料に点火する。点火装置83は、燃料電池セルスタック14の上端近傍で繰り返し火花を発生させ、各燃料電池セル16の上端から流出する燃料に点火する。
図7の時刻t3において着火が完了すると、改質用の水の供給が開始される。具体的には、制御部110が、水供給装置である水流量調整ユニット28(図6)に信号を送り、これを作動させる。本実施形態においては、時刻t3に開始される水の供給量は、2.0cc/minである。時刻t3においては、燃料供給量は、従前の約5.0L/minに維持される。また、発電用空気及び改質用空気の供給量も、従前の値に維持される。
図7の時刻t3において着火された後、供給された燃料は、各燃料電池セル16の上端からオフガスとして流出し、ここで燃焼される。この燃焼熱は、燃料電池セルスタック14の上方に配置された改質器20を加熱する。
このようにして、改質器20の温度が上昇した時刻t4において、蒸発部20aを経て改質部20bに流入した原燃料ガスと改質用空気が、式(1)に示す部分酸化改質反応を起こすようになる。
mn+xO2 → aCO2+bCO+cH2 (1)
この部分酸化改質反応は発熱反応であるため、改質部20b内で部分酸化改質反応が発生すると、その周囲の温度が局部的に急上昇する。
一方、本実施形態においては、着火が確認された直後の時刻t3から改質用の水の供給が開始されており、また、蒸発部20aの温度が急速に上昇するように構成されているため、時刻t4においては、既に蒸発部20a内で水蒸気が生成され、改質部20bに供給されている。即ち、オフガスに着火された後、改質部20bの温度が部分酸化改質反応が発生する温度に到達する所定時間前から水の供給が開始され、部分酸化改質反応が発生する温度に到達した時点においては、蒸発部20aに所定量の水が貯留され、水蒸気が生成されている。このため、部分酸化改質反応の発生により温度が急上昇すると、改質部20bに供給されている改質用の水蒸気と原燃料ガスが反応する水蒸気改質反応が発生する。この水蒸気改質反応は、式(2)に示す吸熱反応であり、部分酸化改質反応よりも高い温度で発生する。
mn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (2)
このように、図7の時刻t4に到達すると、改質部20b内では部分酸化改質反応が発生するようになり、また、部分酸化改質反応が発生することによる温度上昇で、水蒸気改質反応も同時に発生するようになる。従って、時刻t4以降に改質部20b内で発生する改質反応は、部分酸化改質反応と水蒸気改質反応が混在した式(3)に示すオートサーマル改質反応(ATR)となる。即ち、時刻t4においてATR1工程が開始される。
mn+xO2+yH2O → aCO2+bCO+cH2 (3)
次に、改質器温度センサ148による検出温度が約500℃以上に到達すると、図7の時刻t5において、ATR1工程からATR2工程に移行される。時刻t5において、水供給量が2.0cc/minから3.0cc/minに変更される。また、燃料供給量、改質用空気供給量及び発電用空気供給量は従前の値が維持される。
さらに、図7の時刻t6本実施形態において、発電室温度センサ142による検出温度が約400℃以上に到達すると、ATR2工程からATR3工程に移行される。これに伴い、燃料供給量が5.0L/minから4.0L/minに変更され、改質用空気供給量が9.0L/minから6.5L/minに変更される。また、水供給量及び発電用空気供給量は従前の値が維持される。
さらに、図7の時刻t7において、発電室温度センサ142による検出温度が約550℃以上に到達すると、SR1工程に移行される。これに伴い、燃料供給量が4.0L/minから3.0L/minに変更され、水供給量が3.0cc/minから7.0cc/minに変更される。また、改質用空気の供給は停止され、発電用空気供給量は従前の値が維持される。これにより、SR1工程では、改質部20b内で専ら水蒸気改質が発生するようになる。図7の時刻t7においては、改質器20、燃料電池セルスタック14とも、十分に温度が上昇しているので、改質部20bにおいて部分酸化改質反応が発生していなくとも、水蒸気改質反応を安定して発生させることができる。
次に、図7の時刻t8において、発電室温度センサ142による検出温度が約600℃以上に到達すると、SR2工程に移行される。これに伴い、燃料供給量が3.0L/minから2.5L/minに変更され、水供給量が7.0cc/minから6.0cc/minに変更される。また、発電用空気供給量は従前の値が維持される。
さらに、SR2工程を所定時間実行した後、発電工程に移行する。発電工程においては、燃料電池セルスタック14からインバータ54(図6)に電力が取り出され、発電が開始される。なお、発電工程では、改質部20bにおいて、専ら水蒸気改質により原燃料ガスが改質される。また、発電工程においては、燃料電池モジュール2に対して要求される出力電力に対応して、燃料供給量、発電用空気供給量、及び水供給量が変更される。
次に、図12乃至図15bを参照して、従来の固体酸化物形燃料電池システムにおけるシャットダウン停止処理を説明する。
まず、シャットダウン停止が行われると、原燃料ガスの供給、水の供給、及び発電用空気の供給が短時間に停止する。また、燃料電池モジュールからの電力の取り出しも停止する(出力電流=0)。シャットダウン停止の後、燃料電池モジュールは、この状態で自然放置される。このため、各燃料電池セル内部の燃料極側に存在していた燃料は、外部の空気極側との圧力差に基づいて、空気極側に噴出される。また、各燃料電池セルの空気極側に存在していた空気(及び燃料極側から噴出した燃料)は、空気極側の圧力(発電室内の圧力)と大気圧との圧力差に基づいて、燃料電池モジュールの外部に排出される。従って、シャットダウン停止の後、各燃料電池セルの燃料極側及び空気極側の圧力は、自然に低下する。
しかしながら、各燃料電池セルの上端部に流路抵抗部の大きい細管である絞り部を設けることにより、燃料供給及び発電が停止された後の燃料極側の圧力低下が、空気極側の圧力低下よりも緩やかにされ、シャットダウン停止後も長時間に亘って燃料が残存するように構成されている。このように、従来の固体酸化物形燃料電池システムにおいても、シャットダウン停止の後自然放置された後、燃料極側の圧力が空気極側の圧力よりも高い圧力を維持しながら酸化抑制温度以下に低下され、燃料極が雰囲気酸化されるリスクが抑制されている。
なお、本明細書において、酸化抑制温度とは、燃料極が雰囲気酸化されるリスクが十分に低下される温度を意味している。燃料極が酸化されるリスクは、温度の低下と共に少しずつ減少して、やがてゼロになる。このため、燃料極の酸化が発生し得る最低の温度である酸化下限温度よりも少し高い温度帯域の酸化抑制温度であっても、燃料極酸化のリスクを十分に低減することができる。一般的な燃料電池セルにおいては、このような酸化抑制温度は350℃乃至400℃程度であり、酸化下限温度は250℃乃至300℃程度であると考えられる。
図12は、従来の固体酸化物形燃料電池システムのシャットダウン停止後の動作を説明する図である。図12の上段には燃料極側及び空気極側の圧力変化を模式的に表すグラフを示し、中段には制御動作及び燃料電池モジュール内の温度を時系列で示し、下段には各時点における燃料電池セルの上端部の状態を示している。
まず、図12中段におけるシャットダウン停止の前は、通常の発電運転が行われている。この状態においては、燃料電池モジュール内の温度は600〜700℃程度である。また、図12の下段(1)に示すように、燃料電池セル上端からは、発電に使用されずに残った燃料ガスが噴出しており、この噴出する燃料ガスは上端で燃焼される。次いで、シャットダウン停止により、原燃料ガス、改質用の水、発電用の空気の供給が停止されると、噴出する燃料ガスの流量が低下し、図12の下段(2)に示すように、燃料電池セル先端の炎が消失する。
図12の下段(3)に示すように、シャットダウン停止後、炎が消失された後も、燃料電池セルの内部(燃料極側)の圧力は、外部(空気極側)よりも高いため、燃料電池セルからの燃料ガスの噴出は継続される。また、図12上段に示すように、シャットダウン停止直後において、燃料極側の圧力は空気極側の圧力よりも高く、各圧力は、この関係を維持したまま低下する。燃料極側と空気極側の圧力差は、シャットダウン停止の後、燃料ガスの噴出と共に低下する。燃料電池セルからの燃料ガスの噴出量は、燃料極側と空気極側の圧力差が低下するにつれて減少する(図12の下段(4)(5))。
シャットダウン停止後、5乃至6時間程度経過し、燃料電池モジュール内の温度が酸化抑制温度まで低下する頃には、各燃料電池セルの燃料極側、空気極側ともほぼ大気圧まで低下し、空気極側の空気が燃料極側に拡散し始める(図12の下段(6)(7))。また、酸化抑制温度近傍においては、燃料極の温度が低く、燃料極に空気が触れた場合にも発生する酸化は僅かであり、酸化により発生する悪影響は、実質的に無視することができる。さらに、図12の下段(8)に示すように、燃料極の温度が酸化下限温度よりも低下した後は、各燃料電池セルの燃料極側に空気が充満しても燃料極が雰囲気酸化されることはない。このように、従来の固体酸化物形燃料電池システムにおいて、機械的な構成により、酸化抑制温度以上の燃料極に進入した空気が接触し、燃料極が雰囲気酸化されるのを防止している。
しかしながら、燃料極の雰囲気酸化が防止されたとしても、雰囲気酸化とは異なるメカニズムで燃料極が電気化学的に酸化されるという現象が、本件発明者により見出された。
次に、図13を参照して、燃料極の電気化学的な酸化現象を説明する。
図13は、燃料電池セル16を構成する燃料極,電解質,空気極の活性温度と、停止制御の関係を模式的に示す説明図である。
本実施形態においては、第1燃料極90dはNi/YSZで形成され、第2燃料極90eはNi/GDCで形成され、固体電解質層94はLSGMで形成され、空気極92aはLSCFで形成されている。また、第1燃料極90dと第2燃料極90eの間には、Ni/SrZrO3からなる燃料極保護層90fが形成されている。
停止工程においては、第1燃料極90d及び第2燃料極90eに含まれているニッケルが雰囲気酸化されるリスクが高くなる。この雰囲気酸化のリスクは温度低下と共に減少し、燃料電池モジュール2内の温度がニッケルの酸化抑制温度Te(約350℃程度)に低下すると十分に減少し、雰囲気酸化安全温度Tsまで低下するとリスクがなくなる。本実施形態においては、雰囲気酸化安全温度Tsを約300℃として制御を行っている。
本実施形態では、第1燃料極90d及び第2燃料極90eの触媒の活性状態は、約450℃程度から低下し始め、活性状態の下限温度である燃料極の活性下限温度Taは約290℃である。燃料極は、固体電解質層94から酸素イオンを受け取って、受け取った酸素イオンを燃料(水素)と反応させて、水を生成すると共に電子を放出するが、この触媒作用は温度低下と共に低下する。燃料極の温度が活性下限温度Taまで低下すると、その能力が失われ、酸素イオンを受け取っても燃料と反応させて、発電反応を生じさせることができなくなる。
一方、固体電解質層94が酸素イオンを空気極から燃料極へ透過可能な活性状態は約350℃程度から低下し始め、その活性下限温度Tbは約150℃である。この電解質の活性下限温度Tbは、燃料極の活性下限温度Taよりも低くなっている。固体電解質層94は、燃料電池モジュール2の運転温度から活性下限温度Tbに低下するまでは、空気極から受け取った酸素イオンを燃料極へ透過可能である。しかしながら、固体電解質層94は、活性下限温度Tbよりも温度が低くなると、空気極から酸素イオンを受け取っても、燃料極へ酸素イオンを透過させることはできない。
また、空気極は、固体電解質層94の活性下限温度Tb以上では、空気中の酸素を酸素イオンに変換可能な活性状態となっている。
一般に、より低温での発電を可能にするためには、燃料電池セルの燃料極,固体電解質層、及び空気極の活性温度は低いことが好ましい。活性温度の低温化は、材料自体の選定だけに留まらず、選定された材料の粒径、層厚み、製造工程パラメータ等をチューニングすることにより達成される。このように各活性温度の低温化が進むと、燃料極、固体電解質層、空気極の各活性下限温度をニッケルの酸化抑制温度Teよりも低く構成することができる。また、固体電解質層及び空気極の活性下限温度は、燃料極の活性下限温度よりも低くなる。
図13は、燃料極の活性下限温度Taと電解質の活性下限温度Tbの関係を示している。上記のように、燃料極の活性状態は、約450℃程度から低下し始め、活性下限温度Ta(約290℃)で失活性状態となる。一方、固体電解質層の活性状態は、約350℃程度から低下し始め、活性下限温度Tb(約150℃)で失活性状態となる。従って、発電運転温度から固体電解質層の活性下限温度Tbまでは、固体電解質層94は酸素イオンを燃料極へ透過可能な状態にあるが、燃料極の活性状態は約450℃程度から低下し始めている。従って、約450℃から固体電解質層の活性下限温度Tbまでの温度帯域Tc(電気化学的酸化発生温度帯域)では、固体電解質層94は酸素イオンを透過するが、透過した酸素イオンを燃料極において燃料(水素)と反応させる能力が低下した状態になっている。
図14は、燃料極側に水素ガスを供給し、空気極側に空気を供給した状態において、単一の燃料電池セル16が発生する起電力を示すグラフである。
図14のグラフにおいて、横軸は燃料電池セル16の温度を示し、縦軸は発生する起電力を示している。また、図14の破線は、燃料極層、固体電解質層、及び空気極層が何れも活性状態にあると仮定して理論計算により得られた起電力を示し、実線は実験により測定された起電力を示している。このグラフから明らかなとおり、約450℃以上の温度帯域においては、理論的に計算された起電力と、実験により得られた起電力が比較的良く一致している。これに対し、温度が低下するにつれて、実験により得られた起電力が理論計算された起電力よりも低下していることがわかる。これは、燃料極層、固体電解質層、及び空気極層のうち、最も活性温度の高い燃料極層の活性が低下し、発電反応を生成する能力が低下しているためと考えられる。
次に、図15a及び図15bを参照して、燃料電池モジュール内の温度が電気化学的酸化発生温度帯域を通過する場合の燃料電池セルの挙動について説明する。
上記のように、温度帯域Tcでは、固体電解質層94及び空気極92aは活性状態にあり、酸素イオンは空気極92a、固体電解質層94を通して燃料極へ透過可能であるが、第1燃料極90d及び第2燃料極90eは触媒活性が低下した状態にある。したがって燃料極は、供給された酸素イオンを燃料(水素)と反応させる発電反応を生じさせる能力が低下している。
燃料極はニッケルを含んでおり、ニッケルは酸化抑制温度Te(約350℃)以上の高温雰囲気では、空気中の酸素と反応して酸化ニッケルになり易いが、酸化抑制温度Teよりも低い温度帯域においては、ニッケルは空気中の酸素とは反応しにくい状態にある。
しかしながら、酸化抑制温度Teよりも低い温度帯域であっても、固体電解質層94を通過した酸素イオンが燃料極に供給されると、燃料極中のニッケルは、電気化学的酸化反応により、酸素イオンと結びついて酸化ニッケルになり得る。この反応が生じると電子が放出される。したがって、上記の電気化学的酸化反応が起こると、通常の発電反応とは異なるメカニズムで電荷が生じる。
なお、燃料極の活性状態が低下していない場合は、酸素イオンが燃料と結びつく通常の発電反応のみが起こり、酸素イオンがニッケルと結びつく非正常な反応は実質的に起きないと考えられる。
一方、停止工程においては、燃料電池モジュール2からの電力の取り出しは停止されているため、電気化学的酸化反応により電荷が発生したとしても実質的に電流が流れることはないと考えられていた。しかしながら、本件発明者は、電力の取り出しが停止され、燃料極と空気極の間が電気的に非導通状態(開回路)とされていたとしても、局部的に微弱な電流が流れ得ることを見出した。
即ち、電気化学的酸化反応は、燃料極側と空気極側の酸素分圧の差に基づいて発生する。従って、燃料極側に多くの水素が残存している状態では、燃料極側の酸素分圧が低く、空気極側との酸素分圧の差が大きくなるため、固体電解質層94を通して燃料極へ酸素イオンが流れやすくなる。しかしながら、1本の燃料電池セル16の各部で酸素分圧差が一様である場合には、固体電解質層94を通して酸素イオンが流れ込んだ燃料極は、各部とも同電位であるため、燃料極内では殆ど電流は流れない。
ところが、図12により説明したように、シャットダウン停止後時間が経過すると、空気極側から燃料極側へ少しずつ空気が拡散し始めるので、燃料電池セル16の上端部付近では残存する水素の濃度が低下する。これにより、図15bに示すように、1本の燃料電池セル16の中で、その上端部付近では燃料極側と空気極側の酸素分圧の差が小さく、下端部付近では酸素分圧の差が大きい状態となる。
このように、燃料電池セル16の下端部付近では多くの電気化学的酸化反応が発生することにより多量の電荷が生成され、上端部付近では相対的に生成される電荷が少なくなる。この結果、1本の燃料電池セル16の燃料極の中で電位差が生まれ、局部的な電荷の移動(微弱な電流)が発生する。このような局部電池現象による微弱な電流が流れると、ニッケルの電気化学的酸化反応が著しく進行するようになる。特に、燃料極側と空気極側の酸素分圧の差が大きい各燃料電池セル16の下端部付近では多くの酸素イオンが固体電解質層94を通して燃料極に流れ込み、この部分で多くの電気化学的酸化反応が発生してしまう。
電気化学的酸化反応により生成された酸化ニッケルは、発電運転中において燃料極側に供給される燃料(水素)により還元を受ける。このように、燃料極に含有されたニッケルが、停止及び起動とその後の運転により、電気化学的酸化・還元反応を生じると、燃料極は微構造及び体積に変化を生じる。
さらに、燃料電池モジュールの停止・起動が高頻度で繰り返されることに加え、停止及び起動工程において、特に長時間を要する停止工程において、ニッケルの電気化学的酸化反応が比較的長い時間起こる。
このように、燃料極の微構造及び体積の変化が生じると、固体電解質層に引張り応力がかかる。そして、長期的な使用により停止・起動が多数回繰り返され、電気化学的酸化・還元反応を受けるニッケルの累積量が増えていくと、局部電池現象による酸素イオンの流れが集中する各燃料電池セル16の下端部付近において、最終的に固体電解質層に微小なクラックが生じる。
このように、本発明者は、温度帯域Tcにおいて、燃料極が含有する特定の物質であるニッケルが電気化学的な酸化を受ける状態にあり、電気化学的に酸化し、その後の運転時に還元を受けると、燃料極の微構造及び体積に変化を生じ、固体電解質層に引張り応力を与え、最終的に固体電解質層に微小なクラックが生じて燃料電池セルを損傷させることを発見した。
次に、本発明の実施形態による固体酸化物形燃料電池システム1における停止工程を説明する。この停止工程は、上記の雰囲気酸化及び電気化学的酸化による燃料電池セルの劣化を十分に抑制することを目的として構成されている。
図8は本発明の実施形態による固体酸化物形燃料電池システム1において、通常の停止工程が実行された場合の処理手順を示すフローチャートである。図9は、シャットダウン停止が実行された場合の停止挙動の一例を模式的に時系列で表したタイムチャートである。図10は停止工程が実行された場合における制御、燃料電池モジュール内の温度、及び燃料電池セルの先端部の状態を時系列で説明するための図である。
コントローラである制御部110は、内蔵されたマイクロプロセッサ、メモリ、及びこれらを作動させるプログラムにより、図8に示すフローチャートの処理を実行する。また、内蔵されたプログラムにより作動するマイクロプロセッサ、メモリ等は、セル保護制御を実行するセル保護回路110a(図6)、及びパージ制御回路110b(図6)として機能する。
まず、図8のステップS1においては、固体酸化物形燃料電池システム1が発電運転中であるか否かが判断される。発電運転中である場合にはステップS2に進み、発電運転中でない場合には、図8に示すフローチャートの1回の処理を終了する。
次に、ステップS2においては、実行される停止処理が通常停止であるか否かが判断される。異常停止である場合には、図8に示すフローチャートの1回の処理を終了する。通常停止である場合には、図8のステップS3以下の処理が実行される。本実施形態において「通常停止」とは、固体酸化物形燃料電池システム1の使用者による停止操作に基づく停止、又は、制御部110に内蔵されているプログラムにより予め設定されている定期的な停止がこれに該当する。
ステップS3においては、燃料電池モジュール2からの電力の取り出しが停止される。また、図9に示すタイムチャートの例では、時刻t301において、使用者により停止スイッチが操作され(図10の上段(1))、燃料電池モジュール2からの電力の出力がゼロになっている。
次いで、ステップS4においては、固体酸化物形燃料電池システム1の再起動が禁止される。即ち、ステップS3において停止工程が開始された後、その処理を終了する前に、再び固体酸化物形燃料電池システム1を起動すると、燃料電池モジュール2内部の温度状態が不適切になり、燃料電池セル16を劣化させる虞があるため、再起動が禁止される。
さらに、ステップS5においては、燃料供給量及び改質用の水供給量は、燃料流量調整ユニット38、水流量調整ユニット28により供給可能な最少の供給量に設定される。即ち、停止工程中において、制御部110に内蔵されたセル保護回路110aは、発電運転時よりも少量の原燃料ガス及び水を供給するセル保護制御を実行する。この原燃料ガス及び水の供給量は、セル保護制御中において、常に一定値に維持される。また、この際に供給される水蒸気と燃料の供給量の比であるS/Cは3程度であり、発電運転中におけるS/Cと同程度である。なお、停止工程中においては、S/Cをさらに大きくすることもできる。一方、発電用の空気(ただし、発電は完全に停止されている)は、図9の時刻t301における停止操作後、冷却制御として、発電用空気流量調整ユニット45の最大供給量による供給が行われる。これにより、燃料電池モジュール2内(燃料電池セルスタック14の空気極側)の空気、残余燃料の燃焼ガス、及び停止工程中に燃料電池セルスタック14の燃料極側から流出した燃料(図10の上段(2))が、燃料電池モジュール2から排出される。また、各燃料電池セル16上端から流出した燃料ガスの燃焼は、原燃料ガスの供給量が最少にされることにより次第に消失する。
なお、図9の時刻t301の停止操作後においても最少量の燃料供給が継続されているため、発電用の空気を供給しても燃料極側に空気が進入することはない。これにより、停止工程中の高温状態において、各燃料電池セル16の燃料極側への空気の逆流が抑制され、各燃料電池セル16の燃料極層の雰囲気酸化が防止される。また、時刻t301の停止操作後においても改質部20cは依然として高温であるため、供給された原燃料ガス及び水蒸気により水蒸気改質反応が発生し、水素ガスが生成される。このような停止操作後における改質反応は、改質部20cの温度低下と共に次第に発生しなくなり、未改質の原燃料ガス及び水蒸気が各燃料電池セル16の燃料極側に供給されるようになる(図10の下段)。
次に、図8のステップS6においては、燃料電池モジュール2内の燃料電池セルスタック14の温度が300℃まで低下したか否かが判断される。300℃以下に低下した場合にはステップS7に進み、低下していない場合にはステップS5までの制御状態が維持される。ここで、燃料電池セルスタック14の温度が約450℃〜約150℃の温度帯域にある状態では、燃料極層が電気化学的酸化を受ける虞がある(図13)。しかしながら、本実施形態においては、図9の時刻t301の停止操作後においても一定量の燃料供給が継続されているため、各燃料電池セル16の燃料極側における雰囲気は一定となり、燃料の濃度勾配が抑制される。燃料極側の各部における濃度勾配を抑制することにより、各燃料電池セル16における局部電池現象の発生が抑制される。この結果、各燃料電池セル16の燃料極層の電気化学的酸化が防止される(図10の下段)。また、燃料供給と共に水蒸気の供給も継続されているため、燃料電池セル16の燃料極層や、改質部20c内の改質触媒への炭素析出も防止される。
なお、本実施形態においては、燃料電池セルスタック14の温度として、燃料電池セルスタック14の近傍に配置された温度センサである熱電対による検出温度が参照される。燃料電池セルスタック14の温度を参照することにより、各燃料電池セル16の燃料極層の雰囲気酸化、電気化学的酸化を確実に抑制することができる。一方、改質部20cの温度は、内部で発生する吸熱反応である水蒸気改質反応により大きく変化するため、燃料極層の温度を把握しにくく、燃料極層の雰囲気酸化及び電気化学的酸化の抑制には好適ではない。
ステップS7において、セル保護回路110aは燃料流量調整ユニット38及び水流量調整ユニット28に信号を送り、原燃料ガス及び水の供給を停止し、セル保護制御を終了する(図9の時刻t302)。なお、本実施形態においては、燃料電池セルスタック14の温度が300℃まで低下したときセル保護制御を終了しているが、セル保護制御を終了する温度は、燃料電池セルスタック14の構造等に応じて、約350℃〜約290℃の間の温度帯域に設定することができる。一方、発電用空気流量調整ユニット45による空気極側への空気の供給は、燃料電池セルスタック14を冷却するために継続される。
さらに、ステップS7において、パージ制御回路110bは、第1酸化剤ガス供給装置である改質用空気流量調整ユニット44を作動させ、空気を所定の流量Q1で改質器20に流入させる(図9の時刻t302)。改質用空気流量調整ユニット44から供給された空気は、改質器20の蒸発部20a、混合部20b、改質部20cを通って燃料ガス供給管64(図2)に流入し、さらに、マニホールド66を通って各燃料電池セル16の燃料極側に流入する。この改質用空気流量調整ユニット44による空気の供給により、各燃料電池セル16の燃料極側は短時間で空気雰囲気となり(図10の上段(3)→(4))、以後、この状態が維持される(図10の上段(5))。なお、本実施形態においては、燃料電池セルスタック14の温度300℃で、改質用空気流量調整ユニット44により改質器20に空気が供給されるが、改質触媒として酸化温度が約700℃以上のルテニウムが使用されているため、この空気の供給により改質触媒が酸化されることはない。
パージ制御回路110bにより設定される空気の流量Q1は、蒸発部20aから各燃料電池セル16の燃料極側までの間に残留している原燃料ガス、水蒸気等を1分以内でパージすることができる流量に設定されている。即ち、1分当たり、改質器20、燃料ガス供給管64、マニホールド66、及び各燃料電池セル16の内側の容積の合計よりも大きな体積の空気が、改質用空気流量調整ユニット44によって送り込まれる。また、改質用空気流量調整ユニット44により供給される空気の流量はステップ状に変化される。即ち、改質用空気流量調整ユニット44によって送り込まれる空気の流量は、瞬時に所定の流量Q1まで増加された後、その流量が維持される。
このように、パージ制御回路110bによって空気が送り込まれることにより、改質器20から各燃料電池セル16の燃料極側までの間の全ての燃料供給経路内に残留していたガス(原燃料ガス、水蒸気、水素ガス)が、1分以内に空気に置換される。このパージが実行される300℃(図9の時刻t302)付近の温度帯域は、燃料電池セル16の燃料極側に濃度勾配が存在すると電気化学的酸化が発生しやすい温度帯域である。しかしながら、パージ開始から極めて短時間(1分以内)で空気への置換が完了するため、空気への置換が行われている間の濃度勾配により発生する電気化学的酸化は極めて少なく無視できるものである。また、パージにより空気への置換が完了した後は、各燃料電池セル16の燃料極側、空気極側とも空気雰囲気となるため、電気化学的酸化のリスクは完全に解消される。
さらに、改質用空気流量調整ユニット44により供給する空気の流量Q1は、大きすぎると各燃料電池セル16が急速に冷却され過ぎ、燃料電池セル16に熱衝撃を与えるため、燃料電池セルスタック14の構造等に応じて適正値に設定することが好ましい。また、本実施形態においては、パージ開始後、一定流量の空気が供給されているが(図9の時刻t302〜)、変形例として、各燃料電池セル16の燃料極側に残留しているガスが空気に置換された後は、改質用空気流量調整ユニット44による供給流量を低下させることもできる。或いは、燃料電池セルスタック14が理想的な温度降下曲線を描くように、改質用空気流量調整ユニット44による供給流量を制御することもできる。
次に、ステップS8においては、燃料電池セルスタック14の温度が90℃まで低下したか否かが判断される。燃料電池セルスタック14の温度が90℃まで低下した場合にはステップS9に進み、経過していない場合にはステップS8までの制御状態が維持される。
次いで、ステップS9においては、改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45による空気の供給が停止される(図9の時刻t303)。このように、燃料電池セルスタック14の温度が90℃以下に低下した状態では、燃料極層の雰囲気酸化、電気化学的酸化が発生するリスクは完全に解消されると共に、固体酸化物形燃料電池システム1を再起動しても各燃料電池セル16に悪影響を与えることがない。
さらに、ステップS10においては、ステップS4において禁止されていた固体酸化物形燃料電池システム1の再起動を許可し、図8に示すフローチャートの1回の処理を終了する。これにより、停止工程が完了する。
本発明の実施形態の固体酸化物形燃料電池システム1によれば、セル保護回路110aが、電力の取り出し停止後、少量の原燃料ガス及び水の供給を継続し(図8のステップS5、図9の時刻t301〜)、燃料電池セルの温度が300℃に低下すると、燃料電池セル16の燃料極側のガスを1分以内で空気に置換している(図8のステップS6→S7、図9の時刻t302)。これにより、電力の取り出し停止後の高温領域においては、各燃料電池セル16の燃料極側に原燃料ガス(又は水素)及び水蒸気が供給されるため、燃料極層の雰囲気酸化及び電気化学的酸化が抑制される。また、燃料電池セル16の温度が300℃まで低下すると、燃料極側のガスが1分以内で空気に置換されるので、置換の途中で発生する濃度勾配の影響を極めて少なくすることができ、置換完了後は電気化学的酸化のリスクを完全に解消することができる。また、水の沸点よりも十分に高い温度帯域において燃料極側のガスが空気に置換されるため、燃料極側の水蒸気を容易に排出することができ、水蒸気が燃料極層に結露して悪影響を与えるのを確実に防止することができる。さらに、改質部30cで使用されている改質触媒は酸化温度が極めて高い(約700℃以上)ルテニウムであるため、300℃で改質器20を介して燃料極側に空気を供給した場合でも、改質触媒の酸化を回避することができる。
また、本実施形態の固体酸化物形燃料電池システム1によれば、改質用空気流量調整ユニット44による空気の供給量がステップ状に変化されるので、各燃料電池セル16の燃料極側の雰囲気が急速に空気に置換され、燃料極側に濃度勾配が発生する時間を極めて短くすることができ、電気化学的酸化の影響を極小にすることができる。
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、燃料電池モジュール2の内部に改質器20が配置され、この改質器20の内部に水蒸気改質用の水蒸気を生成する蒸発器が設けられていたが、異なる構成の燃料電池モジュールを備えた固体酸化物形燃料電池システムに本発明を適用することができる。
図11は、本発明の変形例による固体酸化物形燃料電池システムに備えられている燃料電池モジュールの正面断面図である。
図11に示すように、本変形例における燃料電池モジュール200は、モジュールケース208と、このモジュールケース208に収容された複数の燃料電池セル216と、これらの燃料電池セル216に燃料ガスを分配するマニホールド266と、燃料電池セル216の上方に配置された改質部である改質器220と、モジュールケース208の上方に配置された熱交換器である空気用熱交換器222と、を有する。さらに、燃料電池モジュール200は、空気用熱交換器222の上方に配置された燃焼触媒器249と、この燃焼触媒器249の上方に配置された蒸発部である蒸発器224と、燃焼触媒器249と蒸発器224の間に配置され、これらを加熱する加熱ヒーター250と、を有する。また、以上の構成を取り囲むように、断熱材207が配置されており、モジュールケース208内の熱の消散を抑制している。さらに、モジュールケース208と空気用熱交換器222の間、燃焼触媒器249と空気用熱交換器222の間にも、それらの間の熱の移動を抑制する断熱材が配置されている。
本変形例において、発電に利用されずに残った燃料は、各燃料電池セル216の上端で燃焼され、上方に配置された改質器220を加熱する。また、モジュールケース208から排出された高温の排気ガスは、モジュールケース208の外側に配置されている空気用熱交換器222に流入し、供給された発電用空気を加熱する。発電用空気を加熱した排気ガスは燃焼触媒器249に流入し、燃焼触媒を加熱する。さらに、燃焼触媒を加熱した排気ガスは蒸発器224に流入し、供給された水を加熱して水蒸気を生成する。
生成された水蒸気は原燃料ガスと混合され、改質器220に流入する。原燃料ガスは改質器220において水蒸気改質され、マニホールド266に流入する。マニホールド266に流入した燃料ガスは、各燃料電池セル216内側の燃料極に流入し、各燃料電池セル216内を上方に向けて流れる。一方、空気用熱交換器222によって加熱された発電用空気は、モジュールケース208の外側に設けられた空気通路(図示せず)を通って下方へ流れ、モジュールケース208の側壁面下部に設けられた複数の吹出口から噴射される。吹出口から噴射された発電用空気は、モジュールケース208内の空気極側(各燃料電池セル216の外側)に流入し、各燃料電池セル216内の燃料との間で発電反応が発生する。発電に利用されずに残った燃料は、各燃料電池セル216の上端で燃焼される。
また、加熱ヒーター250は、固体酸化物形燃料電池システムの起動工程おいて通電が開始され、起動初期における低温状態の蒸発器224及び燃焼触媒器249を加熱する。これにより、起動初期から蒸発器224及び燃焼触媒器249の温度を上昇させることができるので、蒸発器224において早期に水蒸気を生成することができると共に、燃焼触媒により早期に排気ガスを浄化することが可能になる。さらに、加熱ヒーター250は、固体酸化物形燃料電池システムの停止工程おいても通電され、発電が停止された後、温度が低下した蒸発器224及び燃焼触媒器249を加熱する。これにより、発電停止から時間が経過した後も、蒸発器224において水蒸気を生成することができると共に、燃焼触媒器249により排気を浄化することができる。また、起動工程又は発電運転中において、蒸発器224及び燃焼触媒器249の温度が十分に上昇すると、加熱ヒーター250への通電が停止され、排気の熱のみによって蒸発器224及び燃焼触媒器249が加熱される。本変形例による固体酸化物形燃料電池システムの起動については、上記の点を除き、上述した本発明の実施形態と同様である。
一方、本変形例における発電停止後の処理についても、上述した本発明の実施形態と同様であるが、発電停止後において温度が低下したとき、蒸発器224内の水が確実に蒸発されるよう、加熱ヒーター250に通電しても良い。
また、上述した実施形態においては、燃料電池セル16として、1本のセルが1組の燃料極及び空気極を有するものが使用されていたが、変形例として、1本のセルに燃料極及び空気極が複数組形成され、各組の電極によって形成される単セルが直列に接続された、円筒横縞型の燃料電池セル等、任意の燃料電池セルを使用した燃料電池システムに本発明を適用することができる。
1 固体酸化物形燃料電池システム
2 燃料電池モジュール
4 補機ユニット
7 断熱材
8 ケース
8a 連通開口
8b 下がり壁
10 発電室
12 燃料電池セル集合体
14 燃料電池セルスタック
16 燃料電池セル
18 燃焼室(燃焼部)
20 改質器
20a 蒸発部(蒸発室)
20b 混合部(圧力変動吸収手段)
20c 改質部
21 整流板(隔壁)
21a 開口部
21b 排気通路
21c 気体滞留空間
21d 縦壁
22 空気用熱交換器(熱交換器)
23 蒸発室用断熱材(内部断熱材)
24 水供給源
26 純水タンク
28 水流量調整ユニット(水供給装置)
30 燃料供給源
38 燃料流量調整ユニット(燃料供給装置)
39 バルブ
40 空気供給源
44 改質用空気流量調整ユニット(第1酸化剤ガス供給装置)
45 発電用空気流量調整ユニット(第2酸化剤ガス供給装置)
46 第1ヒータ
48 第2ヒータ
49 燃焼触媒器
49a 触媒ヒーター
50 温水製造装置(排熱回収用の熱交換器)
52 制御ボックス
54 インバータ
62 改質器導入管(水導入管、予熱部、結露部)
62a T字管(結露部)
63a 水供給用配管
63b 燃料ガス供給用配管
64 燃料ガス供給管
64c 圧力変動抑制用流路抵抗部
66 マニホールド(分散室)
76 空気導入管
76a 吹出口
81 加熱ヒータ
82 排気ガス排出管
83 点火装置
84 燃料電池セル
85 排気バルブ
86 内側電極端子(キャップ)
90d 第1燃料極(燃料極層)
90e 第2燃料極(燃料極層)
92a 空気極(酸化剤ガス極層)
94 固体電解質層
98 燃料ガス流路細管(絞り部)
110 制御部(コントローラ)
110a セル保護回路
110b パージ制御回路
112 操作装置
114 表示装置
116 警報装置
126 電力状態検出センサ
132 燃料流量センサ(燃料供給量検出センサ)
138 圧力センサ(改質器圧力センサ)
142 発電室温度センサ(温度検出手段)
148 改質器温度センサ
150 外気温度センサ
200 本発明の変形例における燃料電池モジュール
207 断熱材
208 モジュールケース
216 燃料電池セル
220 改質器(改質部)
222 空気用熱交換器(熱交換器)
224 蒸発器(蒸発部)
249 燃焼触媒器
250 加熱ヒーター
266 マニホールド

Claims (2)

  1. 原燃料ガスを水蒸気改質して得られた水素と酸化剤ガスを反応させることにより発電する固体酸化物形燃料電池システムであって、
    内側から順に、ニッケルを主成分とする燃料極層、LSGM製の固体電解質層、LSCF製の酸化剤ガス極層が設けられた筒状の燃料電池セルと、
    貴金属系の改質触媒を使用して、水蒸気改質により原燃料ガスから水素を生成し、生成された水素を上記燃料電池セルの燃料極側に下端から供給する改質部と、
    この改質部に原燃料ガスを供給する燃料供給装置と、
    水蒸気改質用の水を供給する水供給装置と、
    この水供給装置から供給された水により水蒸気を生成し、上記改質部に供給する蒸発部と、
    上記燃料電池セルの燃料極側に、上記改質部を介して酸化剤ガスを供給する第1酸化剤ガス供給装置と、
    上記燃料電池セルの酸化剤ガス極側に酸化剤ガスを供給する第2酸化剤ガス供給装置と、
    上記燃料電池セルを収容した燃料電池モジュールと、
    上記燃料供給装置、上記水供給装置、上記第1酸化剤ガス供給装置及び上記第2酸化剤ガス供給装置を制御すると共に、上記燃料電池モジュールからの電力の取り出しを制御するコントローラと、を有し、
    このコントローラは、上記燃料電池モジュールからの電力の取り出し停止後、上記燃料電池セルを保護するセル保護制御を実行するセル保護回路を有し、
    上記セル保護回路は、電力の取り出し停止後も、発電運転時よりも少量の原燃料ガス及び水が供給されるように上記燃料供給装置及び上記水供給装置の運転を継続することにより、上記改質部を介して上記燃料電池セルの燃料極側にガスを供給する上記セル保護制御を実行するようにプログラムされており、
    上記コントローラは、電力の取り出し停止後も上記第2酸化剤ガス供給装置の運転を継続して上記燃料電池モジュール内の温度を低下させると共に、上記セル保護制御を実行して、上記燃料電池セルの温度が350℃乃至290℃の温度帯域に低下すると、上記第1酸化剤ガス供給装置を作動させ、上記燃料電池セルの燃料極側のガスを1分以内で酸化剤ガスに置換することにより、局部電池現象の発生を抑制して、上記燃料電池セルを保護することを特徴とする固体酸化物形燃料電池システム。
  2. 上記コントローラは、上記第1酸化剤ガス供給装置による酸化剤ガスの供給開始時において、酸化剤ガスの供給量をステップ状に変化させて、上記燃料電池セルの燃料極側のガスを酸化剤ガスに置換する請求項1記載の固体酸化物形燃料電池システム。
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