JP6229496B2 - 固体酸化物型燃料電池 - Google Patents
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Description
先ず、SOFCで停止工程を実行すると、燃料電池セルは高温の運転状態から徐々に自然放熱等により冷却される。冷却時間は、SOFCの断熱性能にもよるが、一般に、1時間乃至数時間にも及ぶ。
このように構成された本発明によれば、電解質の活性下限温度が、燃料極の活性下限温度と同じかそれ以上になるように、電解質の活性下限温度を高めるか、燃料極の活性温度を低めている。電解質や燃料極の活性温度のチューニングは、材料,粒径,層厚,製法工程の条件等を絞り込むことにより達成することができる。活性温度の低温化は特に条件の選定を慎重に行うことにより達成できる。一方、電解質の活性下限温度を高めることは、より活性しない方向へのチューニングであるから、燃料極の活性温度の低温化に比べれば比較的達成し易い。
図1は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)を示す全体構成図である。この図1に示すように、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
また、この燃焼室18の上方には、燃料を改質する改質器20が配置され、前記残余ガスの燃焼熱によって改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、残余ガスの燃焼ガスにより発電用の空気を加熱し、発電用の空気を予熱する熱交換器である空気用熱交換器22が配置されている。
また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
図2及び図3に示すように、燃料電池モジュール2のハウジング6内のケース8には、上述したように、下方から順に、燃料電池セル集合体12、改質器20、空気用熱交換器22が配置されている。
改質器導入管62は、改質器20の一端の側壁面から延びる円管であり、90゜屈曲されて概ね鉛直方向に延び、ケース8の上端面を貫通している。なお、改質器導入管62は、改質器20に水を導入する水導入管として機能している。また、改質器導入管62の上端には、T字管62aが接続されており、このT字管62aの概ね水平方向に延びる管の両側の端部には、燃料ガス及び純水を供給するための配管が夫々接続されている。水供給用配管63aはT字管62aの一方の側端から斜め上方に向けて延びている。燃料ガス供給用配管63bはT字管62aの他方の側端から水平方向に延びた後、U字型に屈曲され、水供給用配管63aと同様の方向に、概ね水平に延びている。
また、図2に示すように、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
図4(a)に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の両端部にそれぞれ接続されたキャップである内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に燃料ガス流路88を形成する円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。
図4(b)に示すように、内側電極層90は、第1燃料極90dと第2燃料極90eから構成されている。また、外側電極層92は、空気極92aと集電層92bから構成されている。
図5に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16は、8本ずつ2列に並べて配置されている。各燃料電池セルユニット16は、下端側がセラミック製の長方形の下支持板68(図2)により支持され、上端側は、両端部の燃料電池セルユニット16が4本ずつ、概ね正方形の2枚の上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴がそれぞれ形成されている。
図6に示すように、固体酸化物型燃料電池1は、制御部110を備え、この制御部110には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置112、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置114、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置116が接続されている。
また、制御部110には、マイクロプロセッサ、メモリ、及びこれらを作動させるプログラム(以上、図示せず)が内蔵されており、これらにより、各センサからの入力信号に基づいて、補機ユニット4、インバータ54等が制御される。なお、この報知装置116は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであっても良い。
先ず、可燃ガス検出センサ120は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。
CO検出センサ122は、本来排気ガス通路80等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。
貯湯状態検出センサ124は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
発電用空気流量検出センサ128は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。
改質用空気流量センサ130は、改質器20に供給される改質用空気の流量を検出するためのものである。
燃料流量センサ132は、改質器20に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
水位センサ136は、純水タンク26の水位を検出するためのものである。
圧力センサ138は、改質器20の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。
排気温度センサ140は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
燃焼室温度センサ144は、燃焼室18の温度を検出するためのものである。
排気ガス室温度センサ146は、排気ガス室78の排気ガスの温度を検出するためのものである。
改質器温度センサ148は、改質器20の温度を検出するためのものであり、改質器20の入口温度と出口温度から改質器20の温度を算出する。
外気温度センサ150は、固体酸化物型燃料電池(SOFC)が屋外に配置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサを設けるようにしても良い。
例えば、制御部110は、特に起動工程において、電圧センサ152により測定された開回路電圧が燃料電池モジュール2内の温度に対応した値を有していない場合(温度上昇に追随して開回路電圧が上昇せず、開回路電圧が予定電圧上昇曲線よりも所定値以上低い場合等)、燃料電池セル84の破損等により発電異常が発生していると判定する。
図2及び図3に示すように、空気用熱交換器22は、複数の燃焼ガス配管70と発電用空気流路72と、を有する。また、図2に示すように、複数の燃焼ガス配管70の一方の端部には、排気ガス集約室78が設けられており、この排気ガス集約室78は、各燃焼ガス配管70に連通されている。また、排気ガス集約室78には、排気ガス排出管82が接続されている。さらに、各燃焼ガス配管70の他方の端部は開放されており、この開放された端部は、ケース8の上面に形成された連通開口8aを介して、ケース8内の燃焼室18に連通されている。
整流板21は、ケース8の天井面と改質器20の間に、水平に配置された板材である。
この整流板21は、燃焼室18から上方に流れる気体の流れを整え、空気用熱交換器22の入り口(図2の連通開口8a)に導くように構成されている。燃焼室18から上方へ向かう発電用空気及び燃焼ガスは、整流板21の中央に設けられた開口部21aを通って整流板21の上側に流入し、整流板21の上面とケース8の天井面の間の排気通路21bを図2における左方向に流れ、空気用熱交換器22の入り口に導かれる。また、開口部21aは、改質器20の改質部20cの上方に設けられており、開口部21aを通って上昇した気体は、蒸発部20aとは反対側の、図2における左側の排気通路21bに流れる。このため、蒸発部20aの上方の空間(図2における右側)は、改質部20cの上方の空間よりも排気の流れが遅く、排気の流れが淀む気体滞留空間21cとして作用する。
まず、燃料は、燃料ガス供給用配管63b、T字管62a、改質器導入管62を介して改質器20の蒸発部20aに導入されると共に、純水は、水供給用配管63a、T字管62a、改質器導入管62を介して蒸発部20aに導入される。従って、供給された燃料及び水はT字管62aにおいて合流され、改質器導入管62を通って蒸発部20aに導入される。発電運転中においては、蒸発部20aは高温に加熱されているため、蒸発部20aに導入された純水は、比較的速やかに蒸発され水蒸気となる。蒸発された水蒸気及び燃料は、混合部20b内で混合され、改質器20の改質部20cに流入する。水蒸気と共に改質部20cに導入された燃料は、ここで水蒸気改質され、水素を豊富に含む燃料ガスに改質される。改質部20cにおいて改質された燃料は、燃料ガス供給管64を通って下方に下り、分散室であるマニホールド66に流入する。
図8は、起動工程における燃料等の各供給量、及び各部の温度の一例を示すタイムチャートである。なお、図8の縦軸の目盛りは温度を示しており、燃料等の各供給量は、それらの増減を概略的に示したものである。
まず、図8の時刻t0において、発電用空気及び改質用空気の供給が開始される。具体的には、コントローラである制御部110が、発電用の酸化剤ガス供給装置である発電用空気流量調整ユニット45に信号を送って、これを作動させる。上述したように、発電用空気は、発電用空気導入管74を介して燃料電池モジュール2内に導入され、空気用熱交換器22、発電用空気供給路77を経て発電室10内に流入する。また、制御部110は、改質用の酸化剤ガス供給装置である改質用空気流量調整ユニット44に信号を送って、これを作動させる。燃料電池モジュール2内に導入された改質用空気は、改質器20、マニホールド66を経て、各燃料電池セルユニット16の内部に流入し、その上端から流出する。なお、時刻t0においては、まだ燃料が供給されていないため、改質器20内において改質反応は発生しない。本実施形態においては、図8の時刻t0において開始される発電用空気の供給量は約100L/minであり、改質用空気の供給量は約10.0L/minである。
CmHn+xO2 → aCO2+bCO+cH2 (1)
この部分酸化改質反応は発熱反応であるため、改質部20c内で部分酸化改質反応が発生すると、その周囲の温度が局部的に急上昇する。
CmHn+xH2O → aCO2+bCO+cH2 (2)
CmHn+xO2+yH2O → aCO2+bCO+cH2 (3)
停止条件の設定例としては、例えば、燃料供給源30に設けられているマイコンメータに対応するために、定期的に停止時期を設定する場合である。即ち、一般に、燃料供給源30にはマイコンメータ(図示せず)が設けられており、このマイコンメータは、約1ヶ月の間に、燃料ガスの供給が完全に停止された状態が連続して1時間程度以上存在しない場合には、ガス漏れが発生していると判断し、燃料ガスの供給を遮断させるように構成されている。このため、一般に、固体酸化物型燃料電池1は、約1ヶ月に一度という高頻度で、1時間程度以上停止させるように設定される。
まず、図9の時刻t101において、制御部110が停止指令を受けるとシャットダウン停止回路110aのプログラムが起動され、シャットダウン停止回路110aは温度降下制御を実行する。この温度降下制御は、燃料電池セルスタック14からの電力の取り出しが完全に停止される前の第1の温度降下工程(時刻t101〜t102)と、電力の取り出しが停止された後の第2の温度降下工程(時刻t102〜t103)から構成されている。即ち、第1の温度降下工程である停止前処理においては、まず、燃料電池モジュール2による発電電力のインバータ54への出力が停止され、固体酸化物型燃料電池1の補機ユニット4を作動させるための微弱な電流(1A程度)の取り出しのみが継続される。このように、停止前処理中において、電力の取り出し量を制限し、微弱な電流を取り出しながら所定電力の発電を継続することにより、供給された燃料の一部が発電に使用されるため、発電に使用されずに残る余剰燃料の著しい増加が回避され、燃料電池モジュール2内の温度が低下される。
また、各燃料電池セルユニット16の空気極側に存在していた空気(及び燃料極側から噴出した燃料)は、空気極側の圧力(発電室10(図1)内の圧力)と大気圧との圧力差に基づいて、排気通路21b、空気用熱交換器22等を通って、燃料電池モジュール2の外部に排出される。従って、シャットダウン停止の後、各燃料電池セルユニット16の燃料極側及び空気極側の圧力は、自然に低下する。
なお、本明細書において、酸化下限温度Teとは、燃料極の酸化が発生し得る最低の温度である。本実施形態では、内側電極層90(燃料極)がニッケルを含んでおり、ニッケルの酸化下限温度Teは約350℃である。
即ち、本実施形態の固体酸化物型燃料電池1おいては、燃料/排気ガス通路は、シャットダウン停止後、燃料極の温度が酸化下限温度Teに低下するまで、燃料電池モジュール2内の空気極側の圧力を大気圧よりも高く維持すると共に、燃料極側の圧力を空気極側の圧力よりも高く維持するように構成されている。従って、燃料/排気ガス通路は、燃料極側の圧力が空気極側の圧力に近付くまでの時間を延長する機械的圧力保持手段として機能する。
シャットダウン停止回路110aは、燃料電池モジュール2内の温度を、通常起動が可能な温度(約90℃)まで低下させると(時刻t107)、空気冷却を停止する。
即ち、燃料極は、活性下限温度Taから少なくとも燃料電池モジュールの運転温度までは、電解質層から酸素イオンを受け取って、受け取った酸素イオンと燃料(水素)とを反応させて、水を生成すると共に、電子を放出することができる。しかしながら、燃料極は、活性下限温度Taよりも低いときには、酸素イオンを受け取っても燃料と反応させて、発電反応を生じさせることはできない。
なお、空気極は、電解質層の活性下限温度Tb以上では、空気中の酸素を酸素イオンに変換可能な活性状態とする。
しかしながら、温度帯域Tcにおいて、酸素イオンが電解質層を通して燃料極に供給されると、燃料極が含むニッケルが、電気化学的酸化反応により、酸素イオンと結びついて酸化ニッケルになり得る(図12参照)。この温度帯域Tcは、燃料極中のニッケルが電気化学的酸化反応を生じ得る温度帯域である。この反応が生じると電子が放出される。したがって、上記の電気化学的酸化反応が起こると、通常の発電反応による発生電流とは異なる非正常なリーク電流が生じる。
なお、燃料極が活性状態にある場合は、酸素イオンが燃料と結びつく通常の発電反応のみが起こり、酸素イオンがニッケルと結びつく非正常な反応は実質的に起きないと考えられる。
さらに、燃料電池モジュールの停止・起動が高頻度で繰り返されることに加え、停止及び起動工程において、特に長時間を要する停止工程において、ニッケルの電気化学的酸化反応が比較的長い時間起こる。
このように、本発明者は、温度帯域Tcにおいて、燃料極が含有する特定の物質であるニッケルが電気化学的な酸化を受ける状態にあり、電気化学的に酸化し、その後の運転時に還元を受けると、燃料極の微構造及び体積に変化を生じ、電解質層に引張り応力を与え、最終的に電解質層に微小なクラックが生じて燃料電池セルを損傷させることを発見した。
本実施形態では、第1燃料極90dはNi/YSZで形成され、第2燃料極90eはNi/GDCで形成され、電解質層94はLSGMで形成され、空気極92aはLSCFで形成されている。
本実施形態では、活性下限温度TaとTbとの間の温度帯域Tfでは、燃料極90が活性状態であり、酸素イオンが電解質層94から供給されれば、酸素イオンと燃料とを通常の発電反応させることが可能である。しかしながら、電解質層94は、失活状態であるので、酸素イオンを透過させて燃料極へ供給することができない。
2 燃料電池モジュール
4 補機ユニット
6 ハウジング
7 断熱材
8 ケース
10 発電室
12 燃料電池セル集合体
12a 直列接続回路
14 燃料電池セルスタック
16 燃料電池セルユニット
18 燃焼室
20 改質器
22 空気用熱交換器
24 水供給源
26 純水タンク
28 水流量調整ユニット
30 燃料供給源
38 燃料流量調整ユニット
40 空気供給源
54 インバータ
84 燃料電池セル
90 内側電極層
90d 第1燃料極
90e 第2燃料極
92 外側電極層
92a 空気極
92b 集電層
94 電解質層
110 制御部
110a シャットダウン停止回路
110b 圧力保持制御回路
152 電圧センサ
Ta 活性下限温度
Tb 活性下限温度
Tc 温度帯域(非正常電流発生可能温度帯域)
Te 酸化下限温度
Tf 温度帯域
Claims (2)
- 空気極,燃料極,及び前記空気極と燃料極の間に配置された電解質を有する複数の燃料電池セルと、
前記複数の燃料電池セルを電気的に接続する電流回路と、
前記電流回路の電圧を測定する電圧測定回路と、
前記電圧測定回路による測定電圧に基づいて、前記燃料電池セルの異常を判断する制御手段と、を備えた固体酸化物型燃料電池であって、
前記電解質は、酸素イオンを前記空気極から前記燃料極へ透過可能な活性状態となる下限温度が、前記燃料極の触媒活性が活性状態となる下限温度以上であるように構成されていることを特徴とする固体酸化物型燃料電池。 - 前記電解質の活性状態の下限温度を高めるか、前記燃料極の活性状態の下限温度を低めることにより、前記電解質の活性状態の下限温度が、前記燃料極の活性状態の下限温度以上であるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物型燃料電池。
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