JP2015127482A - 路面ライン標示構造及びその施工法 - Google Patents

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Abstract

【課題】路面ライン標示がきれいな直線状又は曲線状でかつ均一幅に形成することが容易で、かつ、路面ライン標示が摩耗して標示視認性が低下したり消失したりしてもライン標示の視認性を確保可能な路面ライン標示構造およびその施工法を提供すること。
【解決手段】所定幅の路面ライン標示を形成するための路面ライン標示構造。路面の上面側に溶融式の標示用塗料の塗膜で形成される本標示部13と、該本標示部31の下面側で、本標示部13に沿って切削された複数本の地下標示部用溝17(地下標示部用溝群15)に充填された溶融式の標示用塗料の塗膜で形成される地下標示部19とを備えている。地下標示部用溝群15の幅方向外側線(地下標示部外側線)21、21´を、本標示部の幅方向外側線(本標示部外側線)23、23´より内側に位置して形成する。
【選択図】図1−4

Description

本発明は、道路、滑走路、駐車場等の路面に、施工時溶融可能な路面ライン標示用塗料を用いて施工する路面ライン標示の構造及びその施工法に関する。ここでは、道路用の路面ライン標示(以下、単に「ライン標示」と称することがある。)を例に採り説明するが、滑走路や駐車場等の路面にも適用可能である。ここで、ライン標示としては、車線境界線、車道中央線、車道外側線等を挙げることができる。
以下の説明で、配合単位を示す「%」は、特に断らない限り、「質量%」を意味する。
また、各塗料、成分の物性値は、特に断らない限り、下記方法で測定したものとする(特許請求の範囲もおなじ。)。
・メルトフローレート(MFR)(単位g/10min)・・・JIS K 7210-1999に準じて、190℃×2.16kgfの条件で測定したもの。以下、MFR(190℃)と表記する。
・ガラス転位点(Tg)(単位℃)・・・動的粘弾性法(DVE(Dynamic Viscoelasticity)法)で測定したもの。以下、Tg(DVE法)と表記する。
・塗料粘度(粘性率)(単位dPas)・・・塗料(組成物)を230℃で溶融させて調製した組成物試料を、230℃以上に保温した専用容器(深さ:120mm、直径:80mm)に8分目程度まで入れ、粘性率計(ビスコテスター「T−04」リオン(株)製)のローターを浸して、掻き混ぜながら200℃まで自然放冷させ、該200℃で測定したもの。以下、塗料粘度(200℃)と表記する。
従来から、上記のような路面ライン標示は、施工時溶融させた標示用塗料を路面に帯状に塗布することにより形成している。ところが、このようなライン標示は、路面上に突出した状態で塗布されている。このため、交通量の多いところでは、路面を走行する車両タイヤとの繰り返し接触により、運転者乃至歩行者の視認性に影響を与える程摩耗してしまったり、さらには、消失してしまったりする。これらの傾向は、冬季等において積雪すると、チェーン装着車両の走行により、さらには、除雪車グレーダによりライン標示が削りとられることになり、顕著となる。
このような場合、当然、ライン標示の塗替え補修の施工が必要となる。しかし、当該塗替え施工(補修を含む。)は、通行止めや交通渋滞等を招くため、短期間で集中して行う必要がある。他方、塗替え施工のスパン(間隔)は、可及的に長期間であることが望ましい。
この塗替え施工スパンを長期間とする要請に応えるため、例えば、特許文献1・2等において、ライン標示の幅と同一の扁平浅溝(切削溝)を形成し、扁平浅溝に標示用塗料が充填されるように標示用塗料を路面に塗布して、切削溝に充填塗膜を有する路面ライン標示(構造)に係る施工法が提案されている。
しかし、路面は、硬く且つ不均一相であるアスファルトやコンクリート(主としてアスファルト)で構成されているため、あらかじめ路面に作図された切削ライン(塗布ラインを兼ねる。)に沿って綺麗に溝切削できず、蛇行したり溝内壁が欠けたりして切削ラインからの偏りが発生した。このため、標示用塗料が前記扁平浅溝に充填されて、路面ライン標示が形成された場合に、直線状で均一な所定幅の路面ライン標示を施工することが困難で、標示ラインが曲がった様に強調されて見えることがあった。
また、従来の標示用塗料で上記切削溝に充填された塗膜を有する路面ライン標示構造を施工した場合、充填された標示用塗膜に剥離さらにはクラックが発生し易いことが分かった。
なお、本発明で使用可能な塗布装置(ライン標示施工装置、スリッタ)が特許文献3に、標示用塗料(標示用塗料組成物)の基本組成が特許文献4にそれぞれ記載されている。
特開2006−144225号公報(要約、請求項1等) 特開2007−284900公報(段落0037等) 特開2000−144630公報(要約、請求項1等) 特開2007−326993号公報(要約、特許請求の範囲等)
本発明は、上記にかんがみて、きれいな直線状又は曲線状でかつ均一幅の路面ライン標示を形成することが容易で、さらには、路面ライン標示が摩耗して標示視認性が低下したり消失したりしてもライン標示の視認性を確保可能な路面ライン標示構造およびその施工法を提供することを目的(課題)とする。
本発明の他の目的は、上記目的を達成する構成の路面ライン標示構造およびその施工法において、路面ライン標示の施工性が良好となるとともに、路面ライン標示の塗膜にクラックや剥がれが発生し難い路面ライン標示用塗料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意、開発に努力をした結果、下記構成の路面ライン標示構造およびその施工法に想到した。
所定幅の路面ライン標示を形成するための路面ライン標示構造であって、
路面の上面側に溶融式の標示用塗料の塗膜で形成される本標示部と、
該本標示部の下面側で、前記本標示部に沿って切削された1本又は複数本の地下標示部用溝(以下まとめて「地下標示部用溝群」という。)に充填された標示用塗料の塗膜で形成される地下標示部とを備え、
前記地下標示部用溝群の幅方向外側線(以下「地下標示部外側線」という。)が、前記本標示部の幅方向外側線(以下「本標示部外側線」という。)より内側に位置して形成されている、ことを特徴とする。
そして、上記本発明の路面ライン標示構造における第一の施工法は、下記構成となる。
本発明の路面ライン標示構造の施工法であって、
(1)前記地下標示部用溝群の一本又は複数本の切削ラインおよび本標示部の塗布ラインを路面に作図する第一工程、
(2)前記切削ラインに沿って各地下標示部用溝が所定の開口幅となるように路面を切削して前記地下標示部用溝群を形成する第二工程、
(3)溶融させた標示用塗料を用いて前記塗布ラインに沿って塗布し地下標示部を形成する第三工程、
(4)溶融させた標示用塗料を用いて前記塗布ラインに沿って塗布し前記本標示部を形成する第四工程、
を含むことを特徴とする。
また、同じく路面ライン標示構造における第二の施工法は、下記構成となる。
前記本発明の路面ライン標示構造の施工法であって、
(1)前記地下標示部用溝群の一本又は複数本の切削ラインおよび本標示部の塗布ラインを路面に作図する第一工程、
(2)前記切削ラインに沿って路面を切削して地下標示部用溝群を形成する第二工程、
(3)溶融させた標示用塗料を用いて前記塗布ラインに沿って塗布し地下標示部及び本標示部を同時形成する第三工程、を含むことを特徴とする。
本発明に係る路面ライン標示構造およびその施工方法は、上記構成とすることにより、本標示部が摩耗して薄くなったり消失したりしても、地下標示部が残っているため路面ラインの視認が可能となる。したがって、路面標示の塗替え施工を即行う必要がなく、塗り替えの猶予期間の確保が可能となり、塗替え工事が極端に集中するのを回避できる。また、切削溝を複数本とした場合は、前記特許文献1・2に記載の従来例に比して、塗料消費を抑制できる。
なお、前記第一の施工法においては、本標示部と地下標示部とを別の標示用塗料で形成してもよい。すなわち、本標示部を汎用塗料で、地下標示部を専用塗料で施工できる長所がある。しかし、塗布施工が二度手間となり、施工工数が嵩み易い。
また、前記第二の施工法においては、前記第一の施工法とは逆で、塗布施工が一度で済み、施工工数が嵩まないが、高価な地下標示部用の専用塗料で本標示部も施工する必要がある。
そして、上記路面標示構造およびその施工法において、路面標示用塗料は、少なくとも地下標示部は、下記構成の標示用塗料を使用することが望ましい。ライン標示を形成する塗膜に剥がれやクラックが発生し難くなるためである。すなわち、本発明者らは、塗膜剥がれ及びクラック発生の理由が、地下標示部用溝に対する塗料の充填不良および路面ライン標示部を形成する塗膜厚が地下標示部を備えて厚肉となっていることに起因することを知見して、下記構成の路面ライン標示用塗料に想到した。
地下標示部用溝に充填された塗膜を有する路面ライン標示構造に使用する溶融式の標示用塗料であって、
熱可塑性結合剤、体質材、着色顔料及びガラスビーズを必須成分とする組成において、
前記体質材の一部が、MFR(190℃)500〜3000g/10minでTg(DVE法)30℃未満である極性熱可塑性高分子からなるクラック抑制材で置換されて、
塗料粘度(200℃)35〜90dPasに調節されてなる、ことを特徴とする。
望ましくは、上記構成の路面ライン標示用塗料において、前記体質材の一部が、MFR(190℃):700〜2500g/10minでTg:0℃未満である極性熱可塑性高分子からなるクラック抑制材で置換されて、塗料粘度(200℃)40〜85dPasに調節されてなる、ことを特徴とする。
上記路面標示用塗料は、溶融塗料粘度が従来品に比して低下しているため、切削溝に対する充填不良が発生し難い。また、クラック抑制材は、Tgが30℃未満(常温以下)であるため塗膜に非晶性部分(ゴム状部分)を含む結果となり、路面標示形成塗膜が地下標示部を有して厚肉であっても、塗布後収縮も発生し難くなるとともに耐衝撃性も向上する。したがって、充填塗膜の切削溝からの剥がれが発生し難くなり、さらには、クラックが発生し難い。上記溶融塗料の粘度が低下する理由は、体質材(無機微粉体)の一部が、流動性が通常の成形仕様のMFR(1〜50g/10min(190℃))に比して格段に大きいMFR(500〜3000g/10min(190℃))を示す非成形仕様(分子量が相対的に低い。)の極性熱可塑性樹脂を使用するためである。
なお、この標示用塗料は本発明の地下標示部と本標示部とを備えた路面ライン標示構造ばかりでなく、従来構成の切削溝に塗料を充填して形成する路面ライン標示構造にも適用できる。
本発明の施工法の一例における第一工程(作図工程)を示すモデル斜視図である。 同じく第二工程(地下標示部用溝群形成工程)を示すモデル斜視図である。 同じく第三工程(地下標示部形成工程)を示すモデル断面図およびモデル斜視図である。 同じく第四工程(本標示部形成工程)を示すモデル断面図およびモデル斜視図である。 本発明における路面ライン標示における本標示部の各設定幅に対応して溝ピッチ間隔を30mmとした場合の地下標示部用溝群の設計例である。 同じく本標示部の各設定幅に対応して溝ピッチ間隔を50mmとした場合の地下標示部用溝群の設計例である。 地下標示部用溝の各種断面形状を示す断面図である。
本発明の望ましい実施形態を図例に基づいて説明する。
本発明に係る路面ライン標示構造は、基本的には下記のような構成を有する(図1−4参照)。
所定幅の路面ライン標示11を形成するための路面ライン標示構造であって、路面の上面側に溶融式の標示用塗料の塗膜で形成される本標示部13と、該本標示部13の下面側で、前記本標示部に沿って切削された1本又は複数本の地下標示部用溝15(以下まとめて「地下標示部用溝群17」という。)(図1−2参照)に充填された溶融式の標示用塗料の塗膜で形成される地下標示部19と、を備えている。
そして、地下標示部用溝群17の幅方向外側線(以下「地下標示部外側線」という。)21、21´が、前記本標示部13の幅方向外側線(以下「本標示部外側線」という。)23、23´より内側に位置して形成されている。
上記構成の路面ライン標示構造の施工法の一例について説明する(図1参照)。
本施工法は、下記四工程を含むものである。
(1)第一工程(作図工程)図1−1:
切削ライン25および塗布ライン27を路面に作図(それぞれ一点鎖線で示す。)する工程である。なお、切削ライン25は、地下標示部用溝15に対応する本数とする。各切削ライン25に隣接する二点鎖線は溝の切削幅を示す。
ここで、切削ライン25および塗布ライン27は、それぞれ、ライン溝切削走行機および塗布施工走行機を走行させるガイドラインとなる。
また、塗布ライン27に隣接する切削ライン25が一方の地下標示部外側線21に対応する。塗布ライン27が一方の本標示部外側線23に対応する。
なお、ライン溝切削走行機が、一度に複数の地下標示部用溝15を切削可能な場合は、切削ライン25は、一本でよい。
例えば、ライン標示幅が、「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令(昭和35年総理府・建設省令第3号)」で規定されている各幅(図2に示す。)で溝ピッチ間隔の場合、地下標示部用溝15の本数は、下記の如くになる(図2参照)。すなわち、溝ピッチ間隔は約20〜400mmの範囲から適宜設定する。溝ピッチ間隔が短い場合において、溝が深いとき、アスファルト・コンクリート舗装の強度不足により、舗装に割れや欠けが発生しやすくなる。逆に、溝ピッチ間隔が長い場合は、溝の本数が少なくなって、本標示が消失したときの路面下標示部の視認性に欠けるおそれがある。
次に、溝ピッチ間隔が30mmと50mmの各場合についての設計例を下記するとともに、図2−1および図2−2にそれぞれ示す。
・溝ピッチ間隔30mm・・・ライン標示幅150mm:5本、同200mm:7本、同300mm: 10本、同450mm: 15本(図2−1)
・溝ピッチ間隔50mm・・・ライン標示幅150mm:3本、同200mm:4本、同300mm:6本、同450mm:9本(図2−2)
図1−1に示す作図例は、ライン標示幅150mmの場合で地下標示部用溝15の本数3本の例である。ここで、地下標示部用溝群17の幅方向外側線(以下「地下標示部外側線」という。)23、23´が、前記本標示部の幅方向外側線(以下「本標示部外側線」という。)21、21´より内側に位置して形成されるように作図する。そして、本標示部外側線と地下標示部外側線との距離aが、前記地下標示部用溝15の切削に際して発生する作図ラインからの偏り(バラツキ)を吸収可能なものとする。具体的には、切削のし易さ(舗装の種類等に依存する。)より異なるが、a=3〜30mmの範囲から適宜設定する。このとき、b=90〜144mmとなる。この距離aは、図2−1、図2−2に示す如く、ライン標示幅や溝ピッチ間隔が異なっても、変わらない。
(2)第二工程(地下標示部用溝群形成工程)図1−2:
前記切削ライン25に沿って各地下標示部用溝15が所定の溝幅(開口幅)wとなるように路面を切削して地下標示部用溝群17を形成する工程である。
このときの地下標示部用溝の断面形状は、標示用塗料を溶融させたとき流入可能な開口を有するものなら特に限定されない。例えば、図3(a)、(b)、(c)、(d)に示す如く三角形、四角形、U字形、台形等任意である。切削のし易さからは、溝両側内壁が垂直な四角形、U字形が望ましい。さらには、図3(e)に示す如く、幅広開口の扁平帯状部15aと、該扁平帯状部の底辺に形成される1個又は複数の幅狭開口の凹み部15bとから構成されているものとすることもできる。この構成とした場合は、凹み部15bを有するため各地下標示部の塗膜密着性が向上する。また、地下標示部用溝15を切削形成する必要があるため扁平帯状部15aの開口幅wが相対的に幅広となり、ライン標示の視認性が良好となる。
上記において、地下標示部用溝の開口幅wは、例えば、ライン標示幅が下記各場合、それぞれ、下記範囲から適宜設定する。
ライン標示幅150mmm・・・w:2〜144mm
同200mm・・・w:2〜194mm
同300mm・・・w:2〜294mm
同450mm・・・w:2〜444mm
開口幅wが狭いと、本標示部消滅後の地下標示部19の視認性を確保し難い。
また、溝深さhは1〜15mmから適宜設定する。溝深さが浅いと、本標示部の摩耗が進んだ段階で地下標示部の塗膜も剥離してしまうおそれがある。逆に、溝深さが深いと塗料が無駄となり(特に、開口幅(溝幅)が広い場合)、さらには、溝深さが深いとともに開口幅wが狭いと溶融塗料の流入不良が発生しやすい(塗膜剥離が発生するおそれがある。)。
上記溝切削は、汎用のライン溝切削走行機(特許文献2参照)を用いて行う。
(3)第三工程(地下標示部形成工程)図1−3:
標示用塗料を用いて前記塗布ライン27に沿って塗布し地下標示部19を形成するものである。
このとき使用する塗布施工走行機(スリッタ)としては、例えば、図1−3及び図1−4に示すようなものを使用する。特許文献3に示すようなものも使用可能である。
図に示す塗布施工走行機29は、塗料充填容器31の前面側に上下動する膜厚調節板33を備えるとともに、塗料供給口35を備え、該塗料供給口35は元側水平部と先側水平部との間が傾斜部で連結され、水平移動する水平シャッター37を備えている。該水平シャッター37は前進して先側水平部を膜厚調節板33に当接させることにより(二点鎖線位置)、塗料供給口35を閉じるようになっている。なお、図示しないが、水平シャッター37及び膜厚調節板33は、それぞれエアシリンダ等で水平・垂直移動可能とされている。また、塗料充填容器には、塗料を保温溶融可能な加熱手段(例えば、ガスバーナ)が付設されている。
本工程においては、膜厚調節板33の下端が路面に接触する高さに調節して塗布作業を行う。こうして、地下標示部用溝群17の各溝15に溶融塗料が流下しながら膜厚調節板33により押し込まれて充填される(図1−3参照)。なお、塗料の加熱温度(保温設定温度)は、塗料が溶融可能な温度、すなわち、塗料組成に対応して180〜220℃の範囲で適宜設定する(第四工程も同様である。)。
(4)第四工程(本標示部塗布工程)図1−4:
標示用塗料を用いて前記塗布ライン27に沿って塗布し、従来と同様の道路標示ラインである本標示部13を形成するものである。
このとき、第三工程で使用した塗布施工走行機29において、本標示部の塗膜厚に対応させて、膜厚調節板33をわずかに上昇させて、路面Rとの間に隙間(スリット)sを有した状態で使用する。このときの隙間sは、本標示部13の設定膜厚(通常、1〜3mm)と同一とする。
こうして、本標示部13の設定幅と略同一幅で路面Rに本標示部が形成される。
上記において、第三工程と第四工程で使用する塗料は、後述の路面ライン標示用塗料(組成物)を使用することが望ましい。地下標示部用溝群17への溶融塗料の流下充填性が良好となるとともに、路面ライン標示における塗膜のクラックがさらには剥がれが発生し難いためである。なお、第四工程では、従来の汎用標示用塗料を用いることもできる。
また、上記において、工数削減の見地から、第三工程と同時に第四工程を実施してもよい。すなわち、第三工程を、標示用塗料を用いて前記塗布ライン27に沿って塗布し地下標示部及び本標示部を同時形成するものとする。
そして、本発明で使用する路面ライン標示塗料は、下記構成のものとすることが望ましい。基本組成は、特許文献4に記載されている塗料組成物と同じである。
すなわち、基本組成は、熱可塑性結合材、体質材、可塑剤、着色顔料及びガラスビーズを必須成分とするものである。以下、特許文献4から編集を加えながら部分的に引用する。
「上記熱可塑性結合材は、特に限定されないが、粘性率:1〜2.6dPas(200℃)のものを使用することが望ましい。
例えば、脂肪族系石油樹脂、ポリブテン等の石油系炭化水素系樹脂;クマロン・インデン樹脂等のクマロン系樹脂;フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等のフェノール系樹脂;テルペン・フェノール樹脂、ポリテルペン樹脂等のテルペン系樹脂;合成ポリテルペン樹脂;芳香族系炭化水素樹脂;不飽和炭化水素重合体;イソプレン系樹脂;水素添加炭化水素樹脂;炭化水素系粘着化樹脂;水素添加ロジン、水素添加ロジンのエステル樹脂、重合ロジン、硬化ロジン等のロジン誘導体等が使用可能である。上記熱可塑性結合材のうち、淡色のものを使用することが、後述の着色の見地から好ましい。
また、熱可塑性結合材の含有率は、10〜25%、さらには13〜23%が望ましい。配合量が過少では、粘性率が高くて良好な流動性が得難く施工性(作業性)が低下し、他方、過多では、耐汚染性が低下したり、溶融時に体質材、着色顔料、ガラスビーズが沈降したりして(ガラスビーズの反射性が低下する。)、綺麗な塗膜を得難い。
体質材としては、通常、後述する着色顔料の着色性を損なわない、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム等の白色系フィラーを好適に使用できる。体質材の配合量は、40〜75%、さらには45〜70%が望ましい。配合量が過少では、耐摩耗性及び耐汚染性において劣りやすく、他方、過多では、耐衝撃性及び接着性に劣りやすい。
可塑剤としては、フタル酸エステル類(DOP、DBP等)、大豆油等の植物油、植物油変性アルキド樹脂、鉱物油、エポキシ化油、液状合成ゴム類等が使用できる。鉱物油としては、例えば、ナフテン系、パラフィン系、オレフィン系のものが使用できる。可塑剤の配合量は、0.5〜5%、さらには1〜3%が望ましい。配合量が過少では、耐衝撃性及び接着性において劣りやすく、他方、過多では、耐汚染性及び乾燥性に劣りやすい。
着色顔料としては、通常、酸化チタン、亜鉛華等の白色顔料を使用するが、耐熱黄鉛、黄色酸化鉄、チタンイエロー等の黄色顔料でもよい。
着色顔料の配合量は、1〜15%、さらには2〜10%が望ましい。配合量が過少では、着色力、隠蔽力、視認性及び耐候性に劣りやすく、他方、過多でも、視認性に大差なく実用的でない。
ガラスビーズとしては、粒径100〜900μm、さらには106〜850μmのものを使用することが望ましい。ガラスビーズの配合量は、10〜25%、さらには12〜20%が望ましい。配合量が過少では、経時塗料表面摩耗にともなって夜間の反射性能が低下しやすく、他方過多では、溶融中にガラスビーズが沈降しやすくなって、作業性が悪くなるためである。
さらに、その他の添加剤として、適宜、沈降防止剤、表面改質剤、汚れ防止剤及び流動性付与剤等を配合することができる。具体的には、添加剤として、未変性ポリエチレンワックス、酸変性ポリエチレンワックス(例えば、マレイン酸変性)等が好適に使用できる。
ここで、添加剤の配合量は、5%以下、さらには3%以下が望ましい。配合量が過多であると、体質材及びガラスビーズが沈降しやすくなり、耐汚染性が低下し易くなる。」
そして、本発明においては、さらに、前記体質材の一部(全体組成で1〜10%の範囲)が下記特性値を有する極性熱可塑性高分子からなるクラック抑制材(塗膜割れ防止剤)に置換されている。したがって、前記体質材の配合量は、通常配合量40〜75%が30〜74%となり、望ましい配合量45〜70%が35〜69%となる。
また、クラック抑制材を極性熱可塑性高分子とするのは、通常、極性を有する結合材(タッキファイア)との相溶性(混和性)を確保し難いためである。
ここで、極性熱可塑性高分子の特性値は、MFR(190℃)500〜3000 g/10min(望ましくは700〜2500 g/10min)でTg(DVE法)30℃未満(望ましくは0℃未満)である極性熱可塑性高分子が配合されて、塗料粘度(200℃)35〜90dPa(望ましくは40〜85dPas)に調節されてなるものを使用する。
MFRが小さいと塗料溶融時の低粘度化が困難となり、MFRが大きいと溶融塗料が低粘度化されすぎる。溶融時の粘度が低粘度になりすぎると、スリッタによる地下標示部施工時において、地下標示部用溝に流下した塗料に対して膜厚調節板による押し込みができないとともに、掻き取りを綺麗に行うことが困難となる。
下記のようなもののうちから、上記特性を有するものを使用可能である。
エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンビニルアルコール重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン塩化ビニル共重合体、ポリビニルエーテル、脂肪族ポリエステル、ポリエステルポリオール、軟質ポリアミド(ナイロン11、ナイロン12等)、スチレンイソプロピレン共重合体等を挙げることができる。また、このクラック抑制材の配合量は、1〜10%、望ましくは1〜7%とする。これらのうちで、エチレンと極性基導入ビニルモノマー(置換エチレンモノマー)との共重合体が、PE単位を軟質タイプとすることにより、容易にメルトフローレートの大きなものを合成し易く望ましい。
例えば、EVAの場合、成形品仕様でも非成形品(塗料等)仕様でも酢酸ビニル(VA)含有率に関係なく、Tgは略-30〜-25℃の間にある。しかし、MFR(190℃)は、PE単位の特性(軟質・硬質等)によって、非成形品仕様であっても、10〜800g/10min(190℃)と広範囲のものが存在する。
表1に実施例及び比較例(従来例)の標示用塗料組成物の処方を示すとともに、クラック抑制材の各MFR、及び、塗料組成物の各粘性率を示す。
そして、実施例および比較例の上記組成の標示用塗料を用いて、前記図2−2(A)に示す設計例の路面ライン標示を、工場内の敷地に全長75m施工した(施工日:平成25年10月22日)。そのときの気象条件は、曇り、気温20℃、湿度80%であった。
施工後、車両走行を繰り返して、1か月経過後の塗膜の表面状態は、実施例の場合も比較例の場合も、なんら塗膜にクラックや剥離が発生しなかった。しかし、過去の経験から2年前後経過すると、これらの問題点が、実施例では発生しないが、比較例の場合発生すると考えられる。また、下記の促進摩耗試験を行った結果、綺麗な視認性の良好な地下標示部が顕れた。
<促進摩耗試験>
超高圧水表面処理法による標示塗膜消去システム(排水性舗装用区画線消去工法「Jリムーバー」;NETIS登録No.CB-00013-V)による摩耗処理。
11・・・路面ライン標示
13・・・本標示部
15・・・地下標示部用溝
17・・・地下標示部用溝群
19・・・地下標示部
21、21´・・・地下標示部外側線
23、23´・・・本標示部外側線
25・・・切削ライン
27・・・塗布ライン
29・・・塗布施工走行機

Claims (8)

  1. 所定幅の路面ライン標示を形成するためのライン標示構造であって、
    路面の上面側に溶融式の標示用塗料の塗膜で形成される本標示部と、
    該本標示部の下面側で、前記本標示部に沿って切削された1本又は複数本の地下標示部用溝(以下まとめて「地下標示部用溝群」という。)に充填された溶融式の標示用塗料の塗膜で形成される地下標示部と、を備え、
    前記地下標示部用溝群の幅方向外側線(以下「地下標示部外側線」という。)が、前記本標示部の幅方向外側線(以下「本標示部外側線」という。)より内側に位置して形成されている、
    ことを特徴とする路面ライン標示構造。
  2. 前記本標示部外側線と地下標示部外側線との距離が、前記地下標示部用溝の切削に際して発生する作図ラインからの偏り(バラツキ)を吸収可能なものであることを特徴とする請求項1記載の路面ライン標示構造。
  3. 前記地下標示部用溝群における地下標示部用溝の本数および切削幅が、前記本標示部の視認性低下乃至消滅時において、前記本標示部に代わってライン標示機能を発揮可能なものであるとともに、切削深さが車両走行時や除雪時において充填塗膜を保持可能なものであることを特徴とする請求項1又は2記載の路面ライン標示構造。
  4. 前記地下標示部用溝の断面が、幅広開口の扁平帯状部と、該扁平帯状部の底辺に形成される複数の幅狭開口の凹み部とから構成されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の路面ライン標示構造。
  5. 請求項1記載の路面ライン標示構造の施工法であって、
    (1)前記地下標示部用溝群の一本又は複数本の切削ラインおよび本標示部の塗布ラインを路面に作図する第一工程、
    (2)前記切削ラインに沿って各地下標示部用溝が所定の開口幅となるように路面を切削して前記地下標示部用溝群を形成する第二工程、
    (3)溶融させた標示用塗料を用いて前記塗布ラインに沿って塗布し前記地下標示部を形成する第三工程、
    (4)溶融させた標示用塗料を用いて前記塗布ラインに沿って塗布し前記本標示部を形成する第四工程、
    を含むことを特徴とする路面ライン標示構造の施工法。
  6. 請求項1記載の路面ライン標示構造の施工法であって、
    (1)前記地下標示部用溝群の一本又は複数本の切削ラインおよび前記本標示部の塗布ラインを路面に作図する第一工程、
    (2)前記切削ラインに沿って路面を切削して前記地下標示部用溝群を形成する第二工程、
    (3)溶融させた標示用塗料を用いて前記塗布ラインに沿って塗布し前記地下標示部及び前記本標示部を同時形成する第三工程、
    を含むことを特徴とする路面ライン標示構造の施工法。
  7. 地下標示部用溝に充填された塗膜を有する路面ライン標示構造に使用する溶融式の標示用塗料であって、
    熱可塑性結合剤、体質材、着色顔料及びガラスビーズを必須成分とする組成において、
    前記体質材の一部が、MFR(190℃)500〜3000g/10minでTg(DVE法)30℃未満である極性熱可塑性高分子からなるクラック抑制材で置換されて、
    塗料粘度(200℃)35〜90dPasに調節されてなる、
    ことを特徴とする路面ライン標示用塗料。
  8. 地下標示部用溝に充填された塗膜を有する路面ライン標示構造に使用する溶融式の標示用塗料であって、
    熱可塑性結合剤、体質材、着色顔料及びガラスビーズを必須成分とする組成において、
    前記体質材の一部が、MFR(190℃):700〜2500g/10minでTg:0℃未満である極性熱可塑性高分子からなるクラック抑制材で置換されて、
    塗料粘度(200℃)40〜85dPasに調節されてなる、
    ことを特徴とする路面ライン標示用塗料。
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