以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1及び図2に示されるように、第1実施形態に係る車両用情報表示装置1は、車両100に搭載されている。車両用情報表示装置1は、車両100周辺の対象物Tを検出して、表示系HMI(Human Machine Interface)であるHUD装置30の表示領域31に対象物Tに対応する表示枠Xを表示させる。車両100周辺の対象物Tとしては、例えば、車両100の走行を妨げる可能性がある歩行者、自転車、オートバイ又は車両100以外の他車両等の危険対象物が挙げられる。なお、車両100周囲の歩行者等から当該歩行者等が対象物Tであるか否かを判断する手法としては、種々の方法を採用することができる。
車両用情報表示装置1は、自車両である車両100の周辺に位置する対象物Tを検出する物体検出センサ(対象物検出部)11と、車両100の走行状態を検出する走行状態検出センサ12と、対象物Tを強調表示させるために対象物Tに対応付けられた表示枠Xを表示領域31に表示させるHUD装置30とを備えている。ここで、表示枠Xとは、表示領域31上に表示される枠状の図形であって、車両100周辺に位置する対象物Tの情報を表示領域31上で強調表示するものである。なお、表示枠Xには、例えば図6に示されるように、完全に閉じられていないものも含まれる。
本実施形態において表示領域31は、車両100内から前方を見た場合におけるフロントガラス35の運転席側に配置されたヘッドアップディスプレイであり、車両100の運転者が運転中に視認可能となっている。ここで、ヘッドアップディスプレイとは、車両100の運転者の視野に対して情報を重ね合わせるディスプレイである。ヘッドアップディスプレイとしては、例えばフロントガラス35又はフロントガラス35の手前側に設置された透明板を用いることができる。
また、車両100の運転者から見てフロントガラス35の外側に対象物Tが位置しているので、運転者は表示領域31越しに対象物Tを視認可能となっている。更に、表示領域31をフロントガラス35の運転席側に配置することによって、運転者がより表示領域31を視認しやすくなっており、このように運転者からの視認性を高めつつ表示領域31のコンパクト化を実現させることができる。
図4に示されるように、HUD装置30は、車両100の移動に伴って対象物Tが表示領域31上で移動する場合に、表示領域31上で移動する対象物Tを囲むために表示枠Xを拡大させる。そして、HUD装置30は、表示枠Xを拡大させる場合に、表示枠Xにおける拡大した拡大部分X1の強調度合と、表示枠Xにおける拡大していない部分X2との強調度合とを異ならせて、表示枠Xを表示領域31に表示させる。ここで、拡大部分X1は、表示枠Xにおける拡大した部分であってもよいし、又は表示枠Xにおける拡大している部分であってもよい。
ここで、本実施形態における拡大部分(拡大部分X1,X3(図8参照),X5(図9参照))について説明する。図5に示されるように、例えば車両100が上方にピッチングを起こして対象物Tが見かけ上表示領域31内で下方に移動する場合には、表示枠Xは下方に拡大した態様で表示領域31に表示される。このとき、表示枠Xの左辺部分及び右辺部分が下方に伸長すると共に表示枠Xの底辺部分が下方に移動する。
この場合、図5(a)に示されるように、底辺部分a1を拡大部分とし、この底辺部分a1の強調度合を小さくしてもよい。図5(b)に示されるように、底辺部分a1と、表示枠Xの左辺から下方に伸長した部分b1と、表示枠Xの右辺から下方に伸長した部分c1とを拡大部分として、底辺部分a1と下方に伸長した部分b1,c1の強調度合を小さくしてもよい。また、図5(c)に示されるように、底辺部分a1と伸長後における表示枠Xの左辺d1と伸長後における表示枠Xの右辺e1とを拡大部分として、底辺部分a1の強調度合を小さくすると共に、左辺d1及び右辺e1の強調度合を下方に向かうに従って徐々に小さくしてもよい。
図6に示されるように、例えば表示枠Xが完全に閉じていない場合においても、拡大部分を図5に示される場合と同様とすることができる。すなわち、図6(a)に示されるように底辺部分a2を拡大部分としてもよいし、図6(b)に示されるように底辺部分a2と表示枠Xの左辺から下方に伸長した部分b2と表示枠Xの右辺から下方に伸長した部分c2とを拡大部分としてもよい。また、図6(c)に示されるように、底辺部分a2と伸長後における表示枠Xの左辺d2と伸長後における表示枠Xの右辺e2とを拡大部分としてもよい。
また、図7に示されるように、例えば対象物Tが見かけ上表示領域31内で左下に移動する場合には、表示枠Xの左辺部分b3が表示枠Xの左上の隅から左斜め下に移動し、表示枠Xの底辺部分a3が表示枠Xの右下の隅から左斜め下に移動する。そして、表示枠Xの左上の隅と左辺部分b3の上端とを結ぶ上側伸長部分e3と、表示枠Xの右下の隅と底辺部分a3の右端とを結ぶ下側伸長部分f3とが形成される。
この場合、図7(a)に示されるように、底辺部分a3と左辺部分b3とを拡大部分として、底辺部分a3と左辺部分b3の強調度合を小さくしてもよい。図7(b)に示されるように、底辺部分a3と左辺部分b3と上側伸長部分e3の左下部分c3と下側伸長部分f3の左下部分d3とを拡大部分として、底辺部分a3と左辺部分b3と左下部分c3,d3の強調度合を小さくしてもよい。また、図7(c)に示されるように、底辺部分a3と左辺部分b3と上側伸長部分e3と下側伸長部分f3とを拡大部分として、底辺部分a3と左辺部分b3の強調度合を小さくすると共に、上側伸長部分e3及び下側伸長部分f3の強調度合を左下に向かうに従って徐々に小さくしてもよい。
なお、図4(b)では図7の底辺部分a3及び左辺部分b3に相当する部分がほとんど見えなくなっており、図8では図5(c)の底辺部分a1に相当する部分がほとんど見えなくなっており、図9では表示枠Xの左辺部分がほとんど見えなくなっているが、これらは強調度合を小さくして表示の強さを弱めた結果見えなくなっている部分である。また、強調度合を小さくする優先度としては、図7に示される例では、底辺部分a3と左辺部分b3の交点を最も高くし、この交点から離れるにつれて低くなるようにすることができる。また、強調度合を小さくする優先度について、図5に示される例では、底辺部分a1を最も高くし、底辺部分a1から離れるにつれて低くなるようにすることができる。
ここで、表示枠Xの強調度合とは、表示枠Xの濃さ、表示枠Xの太さ、表示枠Xの輝度、表示枠Xが認識しやすい色であるか否か、又は表示枠Xの色が危険度が高いことを示すように予め設定された色(例えば赤色)であるか否か等、運転者にとっての表示枠Xの認識のしやすさを示している。なお、表示枠Xの強調度合には表示枠Xの大きさそのものは含まれず、強調度合を大きくすることに表示枠Xを拡大させることは含まれない。
また、強調度合を小さくするとは、表示枠Xを薄くしたり、表示枠Xを細くしたり、表示枠Xの輝度を下げたり、例えば表示枠Xの色を「赤」から「オレンジ」に変化させて表示枠Xを認識しにくくしたり、又は例えば表示枠Xの色を「赤」から「青」に変化させて危険度が高いことを示す色から危険度が低いことを示す色に変化させたり等、運転者にとって表示枠Xを視認しにくくすることを示している。なお、「強調度合を小さくする」ことには「強調度合をゼロにする」ことが含まれ、「輝度を下げる」ことには「輝度を無くす」ことが含まれる。また、「拡大した部分の強調度合を小さくする」ことには、拡大が完了した状態で拡大部分の強調度合を小さくすること、及び、拡大しながら拡大部分の強調度合を小さくすること、が含まれる。
図1に示されるように、物体検出センサ11は、車両100周辺の物体を対象物Tとして検出するセンサであり、特に障害物となり得る物体の有無を検出する。物体検出センサ11は、例えば、車両100の周辺に電磁波を出力し、車両100周辺の物体から反射される電磁波を受信することによって対象物Tを検出する。物体検出センサ11としては、例えば、ミリ波レーダ、レーザレーダ又はカメラ等を用いることが可能である。また、物体検出センサ11に代えて、車両用情報表示装置1が、他車両又は道路インフラ等の外部から情報を受信して、受信した情報から対象物Tを検出するようにしてもよい。
物体検出センサ11にはHUD装置30による画面表示を制御するECU(Electronic Control Unit)20が接続されており、ECU20にはHUD装置30と走行状態検出センサ12とが接続されている。物体検出センサ11によって検出された対象物Tの情報はECU20に出力される。また、走行状態検出センサ12は、車両100の車速を検出する車速センサ、車両100の加速度を検出する加速度センサ、車両100の旋回状態を検出する旋回センサ、車両100のヨーレートを検出するヨーレートセンサ、車両100のピッチングを検出するピッチングセンサ等からなるセンサ群である。走行状態検出センサ12で検出された車両100の車速、加速度、旋回状態、ヨーレート及びピッチング等の情報は、ECU20に出力される。
ECU20は、対象物Tの位置及び大きさを検出する位置大きさ検出部21と、表示領域31における対象物Tの表示位置を計算する表示位置計算部22と、表示領域31における対象物Tの移動方向及び移動量を計算する移動方向移動量計算部23と、表示領域31上で表示される表示枠Xとなる表示意匠を設定する表示意匠設定部24とを備えている。
ECU20は、CPUと、ROM及びRAM等のメモリとを備えて構成されており、CPUによるプログラムの実行を通じて、位置大きさ検出部21、表示位置計算部22、移動方向移動量計算部23及び表示意匠設定部24の機能を実現する。なお、位置大きさ検出部21、表示位置計算部22、移動方向移動量計算部23及び表示意匠設定部24の機能は、複数のECUによって実現されてもよい。
位置大きさ検出部21は、物体検出センサ11によって検出された車両100に対する対象物Tの位置及び移動情報(移動方向及び移動量)と、対象物Tの大きさとを検出する。表示位置計算部22は、例えば物体検出センサ11によって検出された対象物Tの位置をフロントガラス35越しに投影したときの座標に変換し、表示領域31内における対象物Tの位置を計算する。移動方向移動量計算部23は、走行状態検出センサ12から得られた車両100の走行状態に関する情報と対象物Tの移動情報とを用いて、表示領域31内における対象物Tの移動方向と移動量とを計算する。なお、対象物Tの位置計算、移動方向及び移動量を計算する手法は、上記に限られず、2次元平面上における対象物Tの移動状態を取得できれば別の手法を用いてもよい。
表示意匠設定部24は、表示領域31に表示させる表示枠Xを設定する。表示意匠設定部24は、表示領域31における対象物Tの移動方向及び移動量が移動方向移動量計算部23によって計算されると、表示領域31上で対象物Tを囲むための表示枠Xを設定する。表示意匠設定部24は、表示領域31上で対象物Tが表示されている際には表示枠Xの設定を繰り返し行っているので、表示領域31における対象物Tの移動方向及び移動量に応じて対象物Tを表示枠Xで囲むように表示枠Xの形状を適宜変化させる。
このように表示領域31における対象物Tの位置変化に応じて表示枠Xの形状は変化し続ける。また、表示意匠設定部24は、表示枠Xにおける拡大部分X1の強調度合が、拡大されていない部分X2の強調度合よりも小さくなるように表示枠Xの設定を行う。HUD装置30は、拡大部分X1の強調度合が拡大していない部分X2の強調度合よりも小さくなるように設定された表示枠Xを表示領域31に表示させる。このように、表示位置計算部22、移動方向移動量計算部23、表示意匠設定部24及びHUD装置30は、対象物Tに対応付けられた表示枠Xを表示領域31に表示させる表示部40として機能する。この表示部40によって対象物Tの強調表示を行うので、運転者は対象物Tを認識しやすくなっている。
次に、本実施形態に係る車両用情報表示方法について図3を参照して説明する。図3に示されるフローチャートは、車両用情報表示装置1を用いて行われる車両用情報表示処理のフローを示している。この車両用情報表示処理は、例えば一定時間ごとに繰り返し実行される。
まず、ステップS11(以下、「S11」という。他のステップにおいても同様とする)では、物体検出センサ11によって対象物検出処理(対象物検出ステップ)が実行される。S11では、物体検出センサ11によって車両100の周辺に対象物Tが存在するか否かが判定される。具体的には、例えば車両100周辺の環境が物体検出センサ11によって計測され、車両100周辺に危険対象物である対象物Tが存在するか否かが判定される。S11で車両100の周辺に対象物Tが存在しないと判定された場合には一連の処理を終了する。一方、S11で車両100の周辺に対象物Tが存在すると判定された場合にはS12に移行し、位置大きさ検出部21によって車両100に対する対象物Tの位置及び対象物Tの大きさが検出される。
S12で対象物Tの位置と大きさが検出された後には、S13に移行して表示位置計算部22による表示位置計算処理が実行される。ここでは、S12で検出された対象物Tの位置と大きさから、表示領域31における対象物Tの位置と大きさが計算される。そして、S14に移行して、HUD装置30による枠表示処理が実行される。S14では、表示領域31で対象物Tを囲むように表示枠Xが表示される。その後、S15に移行して移動方向移動量計算部23による移動方向移動量計算処理が実行される。例えば、図4に示されるように、車両100が道路Rを直進している際には、対象物Tそのものの移動方向及び移動量(地面を基準とした対象物Tの移動方向及び移動量)と、車両100の直進による対象物Tの見かけ上の移動方向及び移動量と、が移動方向移動量計算部23によって算出される。ここで、対象物Tの見かけ上の移動とは、車両100の移動に伴った対象物Tの表示領域31上での移動を示している。
S15で算出された、対象物Tそのものの移動方向及び移動量、並びに対象物の見かけ上の移動方向及び移動量に基づいて、S16では、表示意匠設定部24によって表示枠Xの拡大方向が決定される。表示枠Xの拡大方向は、対象物Tが表示枠Xからはみ出ない形状となるように決定される。表示枠Xの拡大方向が決定されるとS17に移行して、表示枠Xの拡大方向と対象物Tの見かけ上の移動方向とが一致するか否かが表示意匠設定部24によって判定される。ここで、例えば、表示枠Xの拡大方向を方向P1、対象物Tの見かけ上の移動方向を方向P2としたときに、方向P1と方向P2との成す角度の絶対値Zが所定の閾値θz未満である場合には、表示枠Xの拡大方向(方向P1)と対象物Tの見かけ上の移動方向(方向P2)とが一致していると判定される(S17:YES)。一方、方向P1と方向P2との成す角度の絶対値Zが閾値θz以上である場合には、表示枠Xの拡大方向(方向P1)と対象物Tの見かけ上の移動方向(方向P2)とが一致していないと判定される(S17:YES)。なお、閾値θzの値は、例えば30°とすることができるが、30°でなくてもよく適宜変更可能である。
上記のようにS17において、表示枠Xの拡大方向と対象物Tの見かけ上の移動方向とが一致すると判定された場合はS18に移行して、HUD装置30により強弱を付けて枠が拡大される(表示ステップ)。一方、S17において表示枠Xの拡大方向と対象物Tの見かけ上の移動方向とが一致しないと判定された場合はS19に移行して、HUD装置30により強弱を付けずに枠が拡大される(表示ステップ)。ここで、強弱を付けるとは、表示枠Xにおける拡大部分X1の強調度合を小さくすることを示している。このように、S18又はS19において枠の拡大処理が実行された後に一連の処理が終了する。
ところで、車両100の速度が遅く対象物Tの見かけ上の移動量が小さい場合、且つ、対象物Tが車両100の進路を横断するように移動し地面に対する移動量が大きい場合、すなわち、進路を横断する対象物Tの見かけ上の移動量よりも地面に対する移動量の方が所定閾値以上多い場合に、見かけ上の移動よりも地面に対する移動の方が支配的になる。その結果、地面に対する対象物Tの移動方向に表示枠Xが拡大することになるが、この場合、運転者が注目すべき方向と表示枠Xの拡大方向とが一致し、対象物Tの見かけ上の移動方向と表示枠Xの拡大方向とが一致しないので、表示枠Xの強調度合を抑制する必要がない。従って、上記のS19のように、強弱をつけずに枠を拡大させることにより、不要な強調度合の抑制を防止することができる。
以上のように、本実施形態の車両用情報表示装置1及び車両用情報表示方法では、車両100の移動に伴って表示領域31における表示枠Xが拡大する場合に、拡大部分X1の強調度合を拡大していない部分X2の強調度合よりも小さくしている。よって、拡大していない部分X2と比較して、拡大部分X1の強調度合が小さくなるので、運転者が表示枠Xの拡大部分X1に注目してしまうことを回避することができる。従って、運転者が感じる煩わしさを低減させることができる。
図4に示される例を具体的に説明する。車両100が道路Rを前進する場合であって道路Rの左脇に歩行者である対象物Tが検出されたとすると、車両100の前進時に対象物Tは表示領域31で左斜め下に見かけ上移動することとなる。この対象物Tの見かけ上の移動に伴って表示枠Xは左斜め下に拡大して表示領域31に表示される。このとき、HUD装置30によって、左斜め下に拡大した拡大部分X1は、拡大していない部分X2よりも強調度合を小さくして表示される。また、表示枠Xは、対象物Tから離れるに従って強調度合が小さくなるように表示されるので、運転者の目が対象物Tから離れにくくなっている。
また、図8に示されるように、車両100が上方にピッチングを起こして対象物Tが見かけ上表示領域31内で下方に移動する場合には、表示枠Xは下方に拡大した態様で表示領域31に表示される。このとき、HUD装置30によって、下方に拡大した拡大部分X3は、拡大していない部分X4よりも強調度合を小さくして表示される。
また、図9に示されるように、車両100が道路R上で右方向に旋回しようとする場合であって道路Rの右脇に歩行者である対象物Tが検出されたとすると、車両100の右旋回時に対象物Tは見かけ上左側に移動することとなる。よって、表示枠Xは、左側に拡大した態様で表示領域31上に表示される。このとき、HUD装置30によって、左側に拡大した拡大部分X5は、拡大していない部分X6よりも強調度合を小さくして表示される。
以上のように、HUD装置30によって、拡大部分X1,X3又はX5は拡大していない部分X2,X4,X6よりも強調度合を小さくして表示されるので、車両100の運転者が拡大部分X1,X3,X5に目をとられにくくなる。よって、対象物Tから運転者の目が離れてしまう事態を回避することができると共に、運転者が感じる煩わしさを低減させることができる。
また、表示領域31は、車両100のヘッドアップディスプレイ上に設けられているので、対象物Tの情報は、運転者の略視線上に表示される。よって、運転者は、視線をほとんど移動させなくても対象物Tを把握することが可能となるので、運転者が対象物Tの存在に気付くタイミングを早めることができる。更に、運転者は、対象物Tに対する対処行動(例えば、減速や操舵等)を素早く実施できるようになる。
次に、第2実施形態に係る車両用情報表示装置及び車両用情報表示方法について図10及び図11を参照して説明する。第2実施形態に係る車両用情報表示装置は、第1実施形態に係る車両用情報表示装置1と同一構成であり、車両用情報表示方法の処理内容のみが第1実施形態と異なっている。よって、以下では第1実施形態と重複する部分について説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を重点的に説明する。
図10に示されるように、HUD装置30は、対象物Tが地面を基準として移動する方向D1と、車両100の移動に伴って対象物Tが表示領域31上で見かけ上移動する方向D2との角度θに応じて表示枠Xの強調度合を異ならせる。方向D1と方向D2とのなす角度θが大きいほど運転者の目が対象物Tから離れやすくなるが、本実施形態では、上記角度θが大きいほど拡大部分X1の強調度合を小さくする。すなわち、図10(a)に示される例よりも図10(b)に示される例の方が角度θが大きいので拡大部分X1の強調度合が小さくなる。よって、運転者の目が対象物Tから一層離れにくくなる。一方、角度θが小さい場合における拡大部分X1の強調度合は、角度θが大きい場合における拡大部分X1の強調度合よりも大きい。
ここで、対象物Tが地面を基準として移動する方向D1は、例えば、対象物Tの見かけ上の方向D2と車両100の運動方向との差分から算出することができる。また、方向D1は、物体検出センサ11がカメラである場合は、例えば、撮像画像の解析結果やパターンマッチングの結果に基づいて、歩行者の顔の向き又は自転車若しくは自動車の先端方向等を判断することによって算出することもできる。更に、方向D1は、上記以外の種々の方法を用いて算出することも可能である。
第2実施形態に係る車両用情報表示方法は、例えば図11に示されるフローチャートに従って実行される。このフローチャートにおける車両用情報表示処理は、例えば一定時間ごとに繰り返し実行される。
S21〜S27における処理は図3に示されるS11〜S17における処理と同一であるため詳細な説明を省略する。なお、S27では、S17と同様、例えば、表示枠Xの拡大方向を方向P1、対象物Tの見かけ上の移動方向を方向P2としたときに、方向P1と方向P2との成す角度の絶対値Zが所定の閾値θz未満である場合には、表示枠Xの拡大方向(方向P1)と対象物Tの見かけ上の移動方向(方向P2)とが一致していると判定される(S27:YES)。一方、方向P1と方向P2との成す角度の絶対値Zが閾値θz以上である場合には、表示枠Xの拡大方向(方向P1)と対象物Tの見かけ上の移動方向(方向P2)とが一致していないと判定される(S27:YES)。
S28では、移動方向移動量計算部23によって、対象物Tの地面に対する移動方向(対地移動方向)である方向D1と対象物Tの見かけ上の移動方向である方向D2とのなす角度である角度θが計算される。その後、S29に移行して、角度θが所定の閾値Th以上であるか否かが移動方向移動量計算部23によって判定される。ここで、所定の閾値Thとは、強弱をつけて枠を拡大させるか又は強弱をつけずに枠を拡大させるかの判定基準となる値である。この閾値Thは、例えば、予め定められた固定値であってもよいし、所定の規則に応じて変更される変動値であってもよい。角度θが閾値Th以上であると判定された場合にはS30に移行し、角度θが閾値Th未満であると判定された場合にはS31に移行する。S30では、HUD装置30において強弱をつけて枠が拡大される。一方、S31では、HUD装置30において強弱をつけずに枠が拡大される。このように、S30又はS31において枠の拡大処理が実行された後に一連の処理が終了する。なお、上述した閾値Thの値は、適宜変更可能である。
以上のように、第2実施形態の車両用情報表示装置及び車両用情報表示方法では、対象物Tが地面を基準として移動する方向D1と、車両100の移動に伴って対象物Tが見かけ上移動する方向D2との角度θが大きい場合における強調度合を、角度θが小さい場合における強調度合よりも小さくして表示枠Xを表示させる。ここで、角度θが大きい場合とは、角度θが閾値Th以上であることを示しており、角度θが小さい場合とは、角度θが閾値Th未満であることを示している。このように、角度θが閾値Th以上である場合における強調度合を、角度θが閾値Th未満である場合における強調度合よりも小さくしているので、車両100の運転者は、表示枠Xにおける拡大部分X1と拡大していない部分X2との差を容易に理解することができる。従って、運転者の目が対象物Tから離れてしまう事態を確実に回避することができると共に、運転者が感じる煩わしさを低減させることができる。
なお、第2実施形態では、角度θが閾値Th以上である場合に、拡大部分X1の強調度合を拡大していない部分X2の強調度合よりも小さくした。しかしながら、閾値Thを使わなくてもよく、例えば、角度θが大きくなるに従って拡大部分X1の強調度合を徐々に小さくしてもよい。
なお、本発明に係る車両用情報表示装置及び車両用情報表示方法は、上記実施形態に記載されたものに限定されない。本発明に係る車両用情報表示装置及び車両用情報表示方法は、各請求項に記載した要旨を変更しないように本実施形態に係る車両用情報表示装置及び車両用情報表示方法を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
上記実施形態では、拡大部分X1を拡大していない部分X2よりも薄くする態様で表示枠Xを表示領域31に表示させたが、表示枠Xの表示態様は上記実施形態に限定されない。例えば、拡大部分を拡大していない部分よりも細く表示してもよいし、拡大部分の輝度を拡大していない部分の輝度より小さくしてもよいし、表示枠Xの色を認識しにくい色にしてもよいし、又は表示枠Xの色を危険度が低いことを示す色(例えば青色)に変化させてもよい。
また、上記実施形態では、HUD装置30が拡大部分X1の強調度合を拡大していない部分X2の強調度合よりも小さくする例について説明したが、表示枠が拡大したか否かを判定する方法としては種々の手法を採用することができる。例えば、表示領域における表示枠の拡大量が基準値を超えた場合に表示枠が拡大したと判定してもよい。この場合、上記基準値は適宜の値に設定可能である。また、表示枠の拡大量の増減に対応付けて強調度合の調整量を変化させることも可能である。
また、上記実施形態では、HUD装置30が、拡大部分X1の強調度合を小さくすることによって、拡大部分X1の強調度合を拡大していない部分X2の強調度合よりも相対的に小さくして強弱を付ける例について説明した。しかし、この例に限られず、拡大していない部分X2の強調度合を大きくすることによって、拡大部分X1の強調度合を相対的に小さくして強弱を付けることも可能である。
また、上記実施形態では、図3のフローチャートに示されるように、枠拡大方向と対象物Tの見かけ上の移動方向とが一致する場合に強弱を付けて枠を拡大させた。しかし、この例に限られず、例えばS17〜S19に示される処理に代えて、単に拡大部分X1の強調度合を拡大していない部分X2の強調度合よりも小さくする処理を行うことも可能である。
また、上記実施形態では、走行状態検出センサ12から得られた車両100の走行状態の情報を用いて移動方向移動量計算部23が移動状態の計算を行ったが、車両100周囲の道路におけるカーブの有無に関する情報や、道路の凹凸に関する情報等の環境情報を用いて移動状態の計算を行ってもよい。
また、上記実施形態では、表示領域31が車両100のヘッドアップディスプレイ上に設けられていたが、表示領域としてはヘッドアップディスプレイ以外のものを用いることもできる。つまり、表示領域31に代えて、例えばメーターパネルや車載ナビ画面等、他の表示領域を用いてもよい。また、上記実施形態では、HUD装置30が車両100に設けられていたが、このHUD装置30に代えて、車両100内に持ち込み可能な機器を表示部として用いてもよい。具体的には、車内に持ち込まれた表示画面付きの通信端末(例えばスマートフォンやタブレット端末等)を表示部とすることも可能である。この場合、メータパネルの画面上、車載ナビの画面上、あるいは通信端末の表示画面上等に表示領域を設定することが可能である。
上記のように、メーターパネルの表示画面や車載ナビ画面、あるいは通信端末の表示画面を表示領域とした場合でも、表示枠における拡大部分の強調度合を拡大していない部分の強調度合と変えることによって、運転者が拡大部分に目をとられる事態を回避可能となるので、上記実施形態と同様の効果が得られる。
更に、上述した第1実施形態と第2実施形態とは適宜組み合わせることも可能である。この場合、例えば図10に示される角度θが大きい場合に表示枠X拡大時における強調度合の差を一層異なるようにする(拡大部分X1の強調度合を一層小さくする)一方で、角度θが小さい場合には角度θが大きい場合と比較して強調度合の差の拡大を抑制することも可能である。