JP2015124185A - 皮脂合成促進剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】皮脂腺細胞における皮脂合成を促進し、皮膚や頭皮における皮脂欠乏状態を根本的に改善し、持続性のある効果を有する皮脂合成促進剤を提供すること。
【解決手段】トリュフの抽出物を有効成分として含有する、皮脂合成促進剤、該皮脂合成促進剤を含有する医薬品、医薬部外品、化粧品及び飲食品。
【選択図】なし

Description

本発明は、トリュフの抽出物を有効成分として含有する皮脂合成促進剤、ならびに該皮脂合成促進剤を含む医薬品、医薬部外品、化粧品及び飲食品などの各種組成物に関する。
皮脂は、皮脂腺で皮脂腺細胞により合成され、皮膚表面に分泌される。分泌された皮脂は、皮膚を覆うことで体内からの水分の蒸発を防ぐとともに、外部からの物理的・化学的刺激、あるいは病原性の強い細菌・カビなどの侵入を防ぐなど、重要な機能を果している。このため、皮膚において皮脂の分泌が欠乏すると乾燥肌や座瘡等の皮膚トラブル及び皮脂欠乏性皮膚炎・湿疹(乾皮症)などの様々な皮膚疾患の原因となる(非特許文献1、2)。また、皮脂は、毛髪に対して必要かつ適度の油分を供給する働きもあり、毛髪のしなやかさや美しさを保つ上で有効な成分である。
皮脂は、上記のとおり、皮膚や髪のうるおいを保つ上で重要であるが、その合成は年齢と共に衰える。これは、加齢による皮脂腺の萎縮と皮脂合成能の低下によるものと考えられている(非特許文献3、4)。このような皮脂分泌機能の衰えた皮膚に対してはクリーム、ローション、乳液等の医薬品、医薬部外品及び化粧品により油分の補給が行われている。しかし、これらの油分の補給用の製品は、皮膚表面に一時的に滞留はするものの、その効果は一過性のもので、持続した効果及び根本的な改善には至っていない。また強いステロイド外用薬も効果はあるものの、長期使用によって、皮膚萎縮、毛細血管拡張、色素斑などの様々な副作用が生じるという問題がある。
これまで、皮脂腺細胞を直接賦活化することによって皮脂の合成および分泌を促す作用を有する成分として、例えば、γ−オリザノール(非特許文献5)、ウンデシレン酸(特許文献1)、マルトオリゴ糖(特許文献2)、ビタミンE誘導体(特許文献3)、シクレアニン抽出物(特許文献4)などが知られており、これらの有効成分を用いることで、皮脂分泌を促し、肌の乾燥やざ瘡などの発生を抑え、皮膚の恒常性維持に効果を発揮すると報告されている。しかし、その効果は満足いくものではなく、さらに持続性のある皮脂合成・分泌促進剤および皮膚保湿剤の開発が望まれている。
これまでの研究により、皮脂腺細胞は、その前駆細胞(皮脂腺未分化細胞)が分化することで生み出され、さらに皮脂腺細胞で合成された皮脂は皮脂腺細胞が破裂することで分泌されることが知られている(非特許文献6)。そのため皮脂の分泌を根本的に調節するためには、分化成熟した皮脂腺細胞の皮脂合成・分泌を制御するだけでなく、皮脂腺未分化細胞からはじまる分化過程を適切に制御する必要がある。
トリュフ(学名:Tuber spp.)はセイヨウショウロ目セイヨウショウロ科に属する子嚢菌で、様々な生理活性があることが知られている。例えば、生体の老化抑制効果(特許文献5)、IgA分泌促進効果・免疫バランス改善効果・抗高脂血症効果(特許文献6)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)産生促進効果(特許文献7)などが知られている。また、トリュフは、哺乳動物の幹細胞の未分化状態を維持させたまま増殖させる機能を有することも確認されている(特許文献8)。しかしながら、皮脂腺未分化細胞の皮脂腺細胞への分化促進効果や皮脂腺細胞による皮脂合成促進効果についてはこれまで何ら知られていない。
特開平4−134012 特開平5−294837 特開2007−99708 特開平4−95014 特開2002―249438 特開2010−222265 特開2013−112651 特開2009−232728
山本 綾子、香粧会誌、1991、1(4)、247-249 高安 進、フレグランスジャーナル、1998、92、10-13 増子 倫樹、日皮会誌、1998、98(4)、443-452 山本 綾子、フレグランスジャーナル、1994、10、11-17 小林 敏夫ら、皮膚、1979、21、566-570 Hinde E., Exp Dermatology, 2013, 22, 631-637
本発明の目的は、皮脂腺細胞における皮脂合成を促進し、皮膚や頭皮における皮脂欠乏状態を根本的に改善し、持続性のある効果を有する皮脂合成促進剤を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、トリュフの抽出物が、皮脂腺未分化細胞から皮脂腺細胞への分化を促進する作用とともに、皮脂腺細胞による皮脂合成を促進する作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)トリュフの抽出物を有効成分として含有する、皮脂合成促進剤。
(2)トリュフの抽出物を有効成分として含有する、皮脂腺未分化細胞から皮脂腺細胞への分化促進剤。
(3)(1)または(2)に記載の剤を含む、皮膚外用組成物。
(4)皮膚外用組成物が医薬品または医薬部外品である、(3)に記載の皮膚外用組成物。
(5)皮膚外用組成物が化粧品である、(3)に記載の皮膚外用組成物。
(6)(1)または(2)に記載の剤を含む、飲食品。
(7)飲食品が、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、または栄養補助食品である、(6)に記載の飲食品。
本発明の皮脂合成促進剤は、皮脂腺細胞による皮脂の合成を促進することができるので、皮脂欠乏による皮膚や頭皮のかさつき、皮脂欠乏症(乾皮症)などの皮膚疾患を予防、改善または治療することができる。また、本発明の皮脂合成促進剤の有効成分であるトリュフの抽出物は、皮脂腺未分化細胞から皮脂腺細胞への分化を促進する作用も有するため、皮脂合成および分泌器官である皮脂腺細胞が増加し、皮脂欠乏状態を根本的に改善することができ、持続性のある効果が得られる。また本発明の皮脂合成促進剤は、作用が緩和な天然物由来成分を有効成分とするから、副作用がなく安全性が高い。よって、化粧料、医薬品、医薬部外品、飲食品に安心して使用できる。
以下に、本発明について詳細に述べる。
本発明の皮脂合成促進剤は、トリュフの抽出物を有効成分として含有する。本発明に用いるトリュフ(学名:Tuber spp.)は、セイヨウショウロ目(Tuberales)、セイヨウショウロ科(Tuberaceae)に属する子嚢菌であり、塊状で地中に発生し、子実層は外に開いていない。子実体の多くは強い香りを持ち、リスやウサギのような動物が掘り出して食用とする。トリュフは、世界3大珍味のひとつであり高級フランス料理に使用される。本発明に用いるトリュフの種類としては、白トリュフ(Tuber magnatum Pico)、黒トリュフ(Tuber melanosporum Vitt)が好ましい。
本発明において、トリュフの抽出物は、子実体または菌糸体の抽出物をいうが、子実体の抽出物が好ましい。また、抽出には、子実体または菌糸体をそのまま使用してもよく、乾燥、粉砕、細切等の処理を行ってもよい。
抽出方法は、特に限定されないが、水もしくは熱水、または水と有機溶媒の混合溶媒を用い、攪拌またはカラム抽出する方法により行うことができる。有機溶媒としては、アルコール類、エーテル類、エステル類などを用いることができるが、エタノール、メタノール、アセトン等の水溶性有機溶媒が好ましく、これらの一種又は二種以上を用いてもよい。
特に好ましい抽出溶媒としては、水、または水−エタノール系の混合極性溶媒が挙げられる。溶媒の使用量については、特に限定はなく、例えば上記トリュフの子実体(乾燥重量)に対し、10倍以上、好ましくは20倍以上であればよいが、抽出後に濃縮を行なったり、単離したりする場合の操作の便宜上100倍以下であることが好ましい。また、抽出温度や時間は、用いる溶媒の種類によるが、例えば、10〜100℃、好ましくは30〜90℃で、30分〜24時間、好ましくは1〜10時間を例示することができる。また、抽出物は、抽出した溶液のまま用いてもよいが、必要に応じて、その効果に影響のない範囲で、濃縮(有機溶媒、減圧濃縮、膜濃縮などによる濃縮)、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭、エタノール沈殿等の処理を行ってから用いてもよい。さらには、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いてもよい。
本発明において「皮脂合成促進」とは、皮脂腺細胞における脂肪酸グリセリンエステルを主成分とする脂質の合成促進をいうが、皮脂腺未分化細胞から皮脂腺細胞への分化誘導促進、および、皮脂腺細胞で合成された上記脂質の皮膚表面への分泌促進をも包含する。従って、本発明の皮脂合成促進剤は、皮脂腺未分化細胞から皮脂腺細胞への分化促進剤
としても用いることができる。
また、本発明の皮脂合成促進剤は、皮脂腺未分化細胞から皮脂腺細胞へ効率的に分化誘導させるための細胞培養用添加剤、研究用試薬としても使用することができる。
本発明の皮脂合成促進剤を生体内に投与する場合は、そのまま投与することも可能であるが、本発明の効果を損なわない範囲で適当な添加物とともに皮膚外用組成物に配合して提供することが好ましい。本発明の皮膚外用組成物には、医薬品、医薬部外品、化粧品などが含まれる。
本発明の皮脂合成促進剤は、皮脂腺細胞による皮脂の合成を促進することができるので、当該剤を含む皮膚外用組成物は、皮脂分泌の低下が原因と考えられている種々の皮膚の障害や損傷を予防、改善、および治療するのに有効である。ここで、皮脂分泌の低下による皮膚の障害や損傷としては、限定はされないが、皮脂欠乏症(乾皮症)、皮脂欠乏性湿疹、皮膚掻痒症、手湿疹、アトピー性皮膚炎、乾燥肌、ひび、あかぎれなどが挙げられ、乾性フケ、髪のぱさつきやツヤ不足、抜け毛や薄毛などの頭皮や毛髪の障害や損傷も含まれる。
本発明の皮脂合成促進剤を医薬品に配合する場合は、薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物と混合し、患部に適用するのに適した製剤形態の各種製剤に製剤化することができる。薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物としては、その剤形、用途に応じて賦形剤、増粘剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、保存剤、分散剤、乳化剤、ゲル化剤、色素、香料等を用いることができる。本発明の医薬品に適した形態は外用製剤であり、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、液剤、貼付剤などが挙げられる。軟膏剤は、均質な半固形状の外用製剤をいい、油脂性軟膏、乳剤性軟膏、水溶性軟膏を含む。ゲル剤は、水不溶性成分の抱水化合物を水性液に懸濁した外用製剤をいう。液剤は、液状の外用製剤をいい、ローション剤、懸濁剤、乳剤、リニメント剤等を含む。
本発明の皮脂合成促進剤を医薬部外品や化粧品に配合する場合は、その剤形は、水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、粉末分散系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水−油二層系、または水−油−粉末三層系等のいずれでもよい。また、当該医薬部外品や化粧品は、皮脂合成促進剤とともに、皮膚外用組成物において通常使用されている各種成分、添加剤、基剤等をその種類に応じて選択し、適宜配合し、当分野で公知の手法に従って製造することができる。その形態は、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、スプレー状等のいずれであってもよい。配合成分としては、例えば、油脂類(オリーブ油、ヤシ油、月見草油、ホホバ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油等)、ロウ類(ラノリン、ミツロウ、カルナウバロウ等)、炭化水素類(流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、ワセリン等)、脂肪酸類(ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等)、高級アルコール類(ミリスチルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等)、エステル類(ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、トリオクタン酸グリセリン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル等)、有機酸類(クエン酸、乳酸、α-ヒドロキシ酢酸、ピロリドンカルボン酸等)、糖類(マルチトール、ソルビトール、キシロビオース、N-アセチル-D-グルコサミン等)、蛋白質及び蛋白質の加水分解物、アミノ酸類及びその塩、ビタミン類、植物・動物抽出成分、種々の界面活性剤、保湿剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、安定化剤、防腐剤、殺菌剤、香料等が挙げられる。
医薬部外品や化粧品の種類としては、例えば、化粧水、乳液、ジェル、美容液、一般クリーム、日焼け止めクリーム、パック、マスク、洗顔料、化粧石鹸、ファンデーション、おしろい、浴用剤、ボディローション、ボディシャンプー、ヘアシャンプー、ヘアコンディショナー、頭皮用ローション、頭皮用クリーム、ヘアトニック、育毛剤等が挙げられる。
本発明の皮膚外用組成物における皮脂合成促進剤の含有量は、皮脂腺未分化細胞から皮脂腺細胞への分化促進作用とともに、皮脂腺細胞における皮脂合成促進作用を発揮できる量である限り特に限定はされないが、例えばトリュフの抽出物の乾燥固形物重量として0.00001〜10重量%が好ましく、0.0001〜1重量%がより好ましい。上記の量はあくまで例示であって、組成物の種類や形態、一般的な使用量、効能・効果、及びコストなどを考慮して適宜設定・調整すればよい。
また、本発明の皮脂合成促進剤は、飲食品にも配合できる。本発明において、飲食品とは、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、または特定保健用食品を含む意味で用いられる。飲食品の形態は、食用に適した形態、例えば、固形状、液状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状、ペースト状のいずれであってもよい。
飲食品の種類としては、パン類、麺類、菓子類、乳製品、水産・畜産加工食品、油脂及び油脂加工食品、調味料、各種飲料(清涼飲料、炭酸飲料、美容ドリンク、栄養飲料、果実飲料、乳飲料など)および該飲料の濃縮原液及び調整用粉末等が挙げられるが、これらに限定はされない。
本発明の飲食品は、その種類に応じて通常使用される添加物を適宜配合してもよい。添加物としては、食品衛生上許容されうる添加物であればいずれも使用できるが、例えば、ブドウ糖、ショ糖、果糖、異性化液糖、アスパルテーム、ステビア等の甘味料;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料;デキストリン、澱粉等の賦形剤;結合剤、希釈剤、香料、着色料、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤などが挙げられる。
本発明の飲食品におけるトリュフの抽出物の配合量は、皮脂腺未分化細胞から皮脂腺細胞への分化促進作用と皮脂腺細胞における皮脂合成促進作用を発揮できる量であればよいが、対象飲食品の一般的な摂取量、飲食品の形態、効能・効果、呈味性、嗜好性及びコストなどを考慮して適宜設定すればよい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
トリュフの抽出物を以下のとおり製造した。
(製造例1)トリュフの熱水抽出物の調製
トリュフ(子実体)の粉砕物100gに精製水1Lを加え、90〜100℃で2時間抽出した後、濾過し、その濾液を濃縮し、凍結乾燥してトリュフの熱水抽出物5.1gを得た。
(製造例2)トリュフの50%エタノール抽出物の調製
トリュフ(子実体)の粉砕物100gに50%エタノール水溶液を500mLを加え、室温で1週間抽出した後、濾過し、その濾液を減圧濃縮し、凍結乾燥してトリュフの50%エタノール抽出物9.5gを得た。
(製造例3)トリュフのエタノール抽出物の調製
トリュフ(子実体)の粉砕物100gにエタノールを1L加え、室温で1週間抽出した後、濾過し、その濾液を減圧濃縮し、凍結乾燥してトリュフのエタノール抽出物2.4gを得た。
[実施例2]
トリュフの抽出物の効果の評価実験を次のとおり行った。
(試験例1)皮脂腺未分化細胞から皮脂腺細胞への分化促進効果の評価
実施例1で製造したトリュフの抽出物(製造例1〜3)の皮脂腺未分化細胞から皮脂腺細胞への分化効率に及ぼす影響を、皮脂腺細胞の特異的マーカーであるPparg(Peroxisome Proliferator-Activated Receptor γ)、Plin1(Perilipin1)、Fabp4(Fatty Acid Binding Protein 4)の発現を指標に評価した。具体的方法について以下に記載する。
ハムスター皮脂腺細胞増殖培地(KURABO社製)を用いて培養したハムスター皮脂腺未分化細胞(KURABO社製)を24ウェルディッシュに5x104個ずつ播種し、その後、培地を皮脂腺細胞分化誘導培地(KURABO社製)に置換することにより、分化誘導を行った。その際、実施例1で製造したトリュフの抽出物(製造例1〜3)を最終濃度が0.001%になるように添加し、6日間培養を続けた。
分化誘導後6日目の細胞を、PBS(-)にて2回洗浄し、RNA iso Plus (Takara社製)によって細胞からRNAを抽出した。2-STEPリアルタイムPCRキット(Applied Biosystems社製)を用いて、RNAをcDNAに逆転写後、ABI7300(Applied Biosystems)により、上記マーカー遺伝子(Pparg、Plin1、Fabp4)増幅用プライマーセットを用いてリアルタイムPCR(95℃:15秒間、60℃:30秒間、40サイクル)を実施し、各遺伝子の遺伝子発現を確認した。その他の操作は定められた方法に従って実施した。
(Pparg遺伝子用プライマーセット)
フォワードプライマー:5'-ATGTCTCACAATGCCATCAGGTT-3'(配列番号1)
リバースプライマー:5'-CCGCCAACAGCTTCTCCTT-3'(配列番号2)
(Plin1遺伝子用プライマーセット)
フォワードプライマー:5'-TCTGAGCTGAAAGGCACCATCT-3'(配列番号3)
リバースプライマー:5'-GATGGGCACACTGATGCTGTT-3'(配列番号4)
(Fabp4遺伝子用プライマーセット)
フォワードプライマー:5'-TGGCCAAACCCATCATGAT-3'(配列番号5)
リバースプライマー:5'-TGTGCTCTCTGTTCGGATGGT-3'(配列番号6)
(内部標準グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(Gapdh)遺伝子用プライマーセット)
フォワードプライマー:5'-TCACATGTCGCCTGGAGAAAG-3'(配列番号7)
リバースプライマー:5'-GCCTTCGGATGCCTGCTT-3'(配列番号8)
各細胞の皮脂腺細胞への分化誘導効率については、トリュフの抽出物を添加せずに分化誘導した細胞における各遺伝子mRNAの発現量を内部標準であるGapdh mRNAの発現量に対する割合として算出した各遺伝子の相対発現量(各遺伝子発現量/ Gapdh遺伝子の発現量)の値を1.0とし、これに対し、トリュフの抽出物を添加して培養した細胞における各遺伝子の相対発現量の値を算出し、評価した。結果を表1に示す。
Figure 2015124185
表1に示すとおり、トリュフの抽出物(製造例1〜3)の全てに、顕著な皮脂腺未分化細胞から皮脂腺細胞への分化誘導促進効果が認められた。
(試験例2)皮脂合成促進効果の評価
ハムスター皮脂腺細胞増殖培地を用いて培養したハムスター皮脂腺未分化細胞を24ウェルディッシュに5x104個ずつ播種し、その後、培地を皮脂腺細胞分化誘導培地に置換することにより、分化誘導を行った。その際、実施例1で製造したトリュフの抽出物(製造例1〜3)を最終濃度が0.001%になるように添加し、12日間培養を続けた。培養12日後に細胞を回収し、PBS(-)にて2回洗浄し、脂質合成測定キット(KURABO社製)を用いて皮脂腺細胞で合成された脂質の測定を定められた方法に従って実施した。
皮脂合成促進効果は、試料を添加せずに培養した細胞における脂質の合成量をコントロール(1.0)とし、試料を添加して培養した細胞における脂質の合成量のコントロールの脂質の合成量に対する割合(コントロール比)を算出した。結果を表2に示す。
Figure 2015124185
表2に示すとおり、トリュフの抽出物(製造例1〜3)の全てに、顕著な皮脂腺細胞における皮脂合成促進効果が認められた。
[実施例3]製品の処方例
製造例1〜3で製造したトリュフの抽出物を配合した製品の処方例を以下に示す。
(処方例1)ローション
処方 配合量(重量%)
1.トリュフの抽出物 0.1
2.1,3−ブチレングリコール 8.0
3.グリセリン 2.0
4.キサンタンガム 0.02
5.クエン酸 0.01
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.エタノール 5.0
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
10.香料 0.1
11.精製水 残量
成分1〜6及び11と、成分7〜10をそれぞれ均一に溶解した後、両者を混合し濾過しローションを調製する。
(処方例2) クリーム
処方 配合量(重量%)
1.トリュフの抽出物 0.1
2.スクワラン 5.5
3.オリーブ油 3.0
4.ステアリン酸 2.0
5.ミツロウ 2.0
6.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ベヘニルアルコール 1.5
9.モノステアリン酸グリセリン 2.5
10.香料 0.1
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
12.パラオキシ安息香酸エチル 0.05
13.1,3−ブチレングリコール 8.5
14.精製水 残量
成分2〜9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び11〜14を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。次いで、油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、さらに30℃まで冷却して製品とする。
(処方例3)乳液
処方 配合量(重量%)
1.トリュフの抽出物 0.1
2.スクワラン 5.0
3.オリーブ油 5.0
4.ホホバ油 5.0
5.セタノール 1.5
6.モノステアリン酸グリセリン 2.0
7.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
8.ポリオキシエチレンソルビタン
モノオレエート(20E.O.) 2.0
9.香料 0.1
10.プロピレングリコール 1.0
11.グリセリン 2.0
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
13.精製水 残量
成分2〜8を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び10〜13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分9を加え、さらに30℃まで冷却して製品とする。
(処方例4)ゲル剤
処方 配合量(重量%)
1.トリュフの抽出物 0.1
2.エタノール 5.0
3.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
4.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.1
5.香料 適量
6.1,3−ブチレングリコール 5.0
7.グリセリン 5.0
8.キサンタンガム 0.1
9.カルボキシビニルポリマー 0.2
10.水酸化カリウム 0.2
11.精製水 残量
成分2〜5と、成分1及び6〜11をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合して製品とする。
(処方例5)軟膏
処方 配合量(重量%)
1.トリュフの抽出物 2.0
2.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0
3.モノステアリン酸グリセリン 10.0
4.流動パラフィン 5.0
5.セタノール 6.0
6.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
7.プロピレングリコール 10.0
8.精製水 残量
成分2〜5を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1及び6〜8を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化し、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
(処方例6)パック
処方 配合量(重量%)
1.トリュフの抽出物 0.1
2.ポリビニルアルコール 12.0
3.エタノール 5.0
4.1,3−ブチレングリコール 8.0
5.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
6.パラオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.) 0.5
7.クエン酸 0.1
8.クエン酸ナトリウム 0.3
9.香料 適量
10.精製水 残量
成分1〜10を均一に溶解し製品とする。
(処方例7)ファンデーション
処方 配合量(重量%)
1.トリュフの抽出物 1.0
2.ステアリン酸 2.4
3.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(20E.O.) 1.0
4.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0
5.セタノール 1.0
6.液状ラノリン 2.0
7.流動パラフィン 3.0
8.ミリスチン酸イソプロピル 6.5
9.パラオキシ安息香酸ブチル 0.1
10.カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
11.ベントナイト 0.5
12.プロピレングリコール 4.0
13.トリエタノールアミン 1.1
14.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
15.二酸化チタン 8.0
16.タルク 4.0
17.ベンガラ 1.0
18.黄酸化鉄 2.0
19.香料 適量
20.精製水 残量
成分2〜9を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分20に成分10をよく膨潤させ、続いて、成分1及び11〜14を加えて均一に混合する。これに粉砕機で粉砕混合した成分15〜18を加え、水相とする。水相を80℃に昇温し、油相に水相を徐々に加え乳化する。その後、撹拌しながら冷却し、45℃で成分19を加え、30℃まで冷却して製品とする。
(処方例8)ハンドクリーム
処方 配合量(重量%)
1.トリュフの抽出物 0.5
2.セタノール 4.0
3.ワセリン 2.0
4.流動パラフィン 10.0
5.酢酸トコフェロール 0.1
6.ビタミンD 0.1
7.尿素 2.0
8.グリセリン 20.0
9.ポリオキシエチレン(60)イソステアリン酸グリセリン 2.5
10.モノステアリン酸グリセリン 1.5
11.防腐剤 0.1
12.香料 適量
13.精製水 残量
成分2〜6を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1、7〜11及び13を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。次いで、油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分12を加え、さらに30℃まで冷却して製品とする。
(処方例9)固形石鹸
処方 配合量(重量%)
1.トリュフの抽出物 0.1
2.石鹸素地(*) 80.0
3.グリセリン 10.0
4.ソルビトール 1.0
5.エデト酸 0.1
6.酸化チタン 0.1
7、香料 適量
8.精製水 残量
(*)ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムを含む高級脂肪酸ナトリウム混合物
全成分を混合して、ミキサー及びローラーで混練し、プロッダーで圧縮することによって棒状の成型物に型打ちし、次いで、成形物を冷却し、乾燥することによって、製品を得る。
(処方例10)ボディ用洗浄料
処方 配合量(重量%)
1.トリュフの抽出物 0.2
2.ステアリン酸 10.0
3.パルミチン酸 8.0
4.ミリスチン酸 12.0
5.ラウリン酸 4.0
6.オレイルアルコール 1.5
7.精製ラノリン 1.0
8.ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 1.0
9.グリセリン 10.0
10.水酸化カリウム 6.0
11.香料 適量
12.防腐剤 適量
13.金属イオン封鎖剤 適量
14.精製水 残量
成分2〜5を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分14の適量に成分10を溶解し、油相に添加しケン化を行う。続いて、成分6〜9をケン化物に添加し、室温でさらに成分1、11〜13及び残りの成分14を添加する。
(処方例11)ヘアローション
処方 配合量(重量%)
1.トリュフの抽出物 0.2
2.ステアリン酸 5.0
3.セチルアルコール 5.0
4.流動パラフィン 2.0
5.グリセリンモノステアレート 1.3
6.ソルビタンモノオレート 1.5
7.ポリオキシエチレン(10)ソルビタンモノオレート 0.8
8.グリセリン 6.0
9.防腐剤 適量
10.精製水 残量
成分2〜7を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とした。成分1および8〜10を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とした。油相に水相を加えて乳化し、かき混ぜながら冷却して製品とした。
(処方例12)ヘアトニック
処方 配合量(重量%)
1.トリュフの抽出物 2.0
2.95%エタノール 60.0
3.グリセリン 2.0
4.精製水 残量
成分1を2に溶解し、成分3及び4を加え、十分撹拌混合し、製品とする。
(処方例13)シャンプー
処方 配合量(重量%)
1.トリュフの抽出物 0.1
2.アルキル硫酸トリエタノールアミン 18.0
3.ラウリン酸ジエタノールアミド 3.0
4.メチルセルロース 0.5
5.香料 適量
6.精製水 残量
成分6に成分4を均一に溶解した後、成分1及び2を加え、70〜75℃で加熱溶解した後、成分3を加え、冷却途中に成分5を加え30℃まで冷却し製品とした。
(処方例14)浴用剤
処方 配合量(重量%)
1.トリュフの抽出物 5.0
2.炭酸水素ナトリウム 50.0
3.黄色202号 適量
4.香料 適量
5.無水硫酸ナトリウム 残量
成分1〜5を均一に混合し製品とする。
(処方例15)錠剤
処方 配合量(重量%)
1.トリュフの抽出物 1.0
2.乾燥コーンスターチ 25.0
3.カルボキシメチルセルロースカルシウム 20.0
4.微結晶セルロース 40.0
5.ポリビニルピロリドン 7.0
6.タルク 3.0
成分1〜5を混合し、次いで10%の水を結合剤として加えて、押出し造粒後乾燥する。成形した顆粒に成分6を加えて混合し打錠する。1錠0.52gとする。
(処方例16)飲料
処方 配合量(重量%)
1.トリュフの抽出物 0.1
2.ステビア 0.05
3.リンゴ酸 5.0
4.香料 0.1
5.精製水 残量
成分1〜4を成分5の一部の精製水に撹拌溶解する。次いで、成分5の残りの精製水を加えて混合し、90℃に加熱して50mLのガラス瓶に充填する。
本発明は、皮脂分泌の低下が原因となる皮脂欠乏症(乾皮症)や皮脂欠乏性湿疹などの種々の皮膚の障害や損傷の予防、改善、および治療を目的とした医薬品、医薬部外品、化粧品、および飲食品の製造分野において利用できる。

Claims (7)

  1. トリュフの抽出物を有効成分として含有する、皮脂合成促進剤。
  2. トリュフの抽出物を有効成分として含有する、皮脂腺未分化細胞から皮脂腺細胞への分化促進剤。
  3. 請求項1または2に記載の剤を含む、皮膚外用組成物。
  4. 皮膚外用組成物が医薬品または医薬部外品である、請求項3に記載の皮膚外用組成物。
  5. 皮膚外用組成物が化粧品である、請求項3に記載の皮膚外用組成物。
  6. 請求項1または2に記載の剤を含む、飲食品。
  7. 飲食品が、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、または栄養補助食品である、請求項6に記載の飲食品。
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