本発明の透明電極は、導電性層と、当該導電性層に隣接して設けられる中間層とを有する透明電極であって、前記中間層が、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する非対称性化合物を含有し、前記式(1)で表される芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子含有率が0.40%以上であり、かつ前記導電性層が、銅、金、又は白金を主成分として構成されていることを特徴とし、十分な導電性と光透過性とを兼ね備え、かつ耐久性(高温高湿環境下における光透過率安定性)と電極寿命に優れた透明電極を実現することができる。この特徴は、請求項1から請求項7に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の目的とする上記効果をより発現できる観点から、前記導電性層が主成分として含有する金属元素が、銅であることが好ましい。
また、非対称性化合物が、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を含む芳香族ヘテロ環を有することが好ましい。更には、前記非対称性化合物が、アザカルバゾール環を有することが好ましい。
また、前記非対称性化合物が、ピリジン環を有することが好ましい。更には、前記非対称性化合物が、γ、γ′−ジアザカルバゾール環又はβ−カルボリン環を有することが、より均質な導電性層を形成することができる観点から好ましい。
また、本発明の電子デバイスは、本発明の透明電極を具備していることを特徴とする。 以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本発明において示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《透明電極》
図1は、本発明の透明電極の構成の一例を示す概略断面図である。
図1の(a)に示す透明電極1は、中間層3を有し、この中間層3の上部に導電性層5を積層した2層構造である。例えば、基材11の上部に、中間層3、導電性層5の順に設けられている。本発明に係る中間層3は、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を、窒素原子含有率として0.40%以上有する非対称性化合物を含有している層であり、その上に積層する本発明に係る導電性層5は、銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分として構成されている層であることを特徴とする。
なお、本発明において、金属元素を主成分とするとは、導電性層全質量に対し、本発明に係る銅、金又は白金のそれぞれの金属元素の含有率が90質量%以上であることを意味し、好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは99質量%以上であり、特に好ましくは銅、金又は白金の金属元素のみの構成である。本発明に係る導電性層5においては、銅、金又は白金のそれぞれが、他の金属元素と合金を形成することはなく、それぞれ単体の金属で構成されていることが最も好ましい態様である。
また、本発明の透明電極1の層構成としては、図1の(b)に示すように、基材11上に、中間層3A及び導電性層5を有し、更に、導電性層5上に、第2の中間層3Bを積層し、中間層3Aと中間層3Bとで導電性層5を挟持する層構成であることも、好ましい態様の一つである。このように、導電性層5上にさらに第2の中間層3Bを設けることにより、金属元素で構成されている導電性層5が、例えば、酸素雰囲気等に直接晒されることがなく、また、第2の中間層3Bで導電性層5が保護されることにより、擦り傷等の発生を防止することができる。
また、本発明においては、中間層3とこの上部に成膜された導電性層5とを有する積層構造の透明電極1においては、更に、導電性層5の上部が保護層で覆われている構成であること、あるいは第2の導電性層が積層されている構成であっても良い。この場合、透明電極1の光透過性を損なうことのないように、保護層及び第2の導電性層は、いずれも高い光透過性を有することが好ましい。また、中間層3の下部、すなわち中間層3と基材11との間にも、必要に応じ、機能層を設けた構成としても良い。
次に、このような積層構造の透明電極1を保持するのに用いられる基材11と、透明電極1を構成する中間層3及び導電性層5の順に、更に詳細な構成要件について説明する。
〔基材〕
本発明の透明電極1を保持するのに用いられる基材11としては、例えば、ガラス、プラスチック等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、基材11は、透明であっても不透明であってもよいが、本発明の透明電極1が、基材11側から光を取り出す電子デバイスに用いられる場合には、基材11は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な基材11としては、ガラス、石英、樹脂フィルムを挙げることができる。
ガラスとしては、例えば、シリカガラス、ソーダ石灰シリカガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。これらのガラス材料の表面には、中間層3との密着性、耐久性、平滑性の観点から、必要に応じて、研磨等の物理的処理が施されていても良いし、無機物又は有機物からなる被膜や、これらの被膜を組み合わせたハイブリッド被膜が形成されている構成であっても良い。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(略称:TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(略称:CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(略称:PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル又はポリアリレート類、アートン(商品名;JSR社製)又はアペル(商品名;三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を用いた樹脂フィルムが挙げられる。
上記樹脂フィルムの表面には、無機物又は有機物からなる被膜(以下、「ガスバリアー膜」ともいう。)や、これらの被膜を組み合わせたハイブリッド被膜が形成されている構成であっても良い。このような被膜及びハイブリッド被膜は、JIS−K−7129−1992に準拠した方法で測定される水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度90±2%RH)が0.01g/(m2・24時間)以下のガスバリアー性フィルムであることが好ましい。更には、JIS−K−7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/(m2・24時間・atm)以下、水蒸気透過度が1×10−5g/(m2・24時間)以下の高ガスバリアー性フィルムであることが好ましい。
以上のようなガスバリアー性フィルムを形成する材料としては、水分や酸素等の電子デバイスや有機EL素子の劣化を引き起こす要因の浸入を抑制する機能を備えた材料であればよく、例えば、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。更に、当該ガスバリアー性フィルムの脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層(有機層)の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
ガスバリアー性フィルムの作製方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法(CVD:化学蒸着法、Chemical Vapor Deposition)、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載の大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
一方、基材11が不透明な材料で構成する場合には、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属基板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等を用いることができる。
〔中間層〕
本発明に係る中間層3は、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を、窒素原子含有率として0.40%以上有する非対称性化合物を用いて構成された層である。このような中間層3が基材11上に成膜されたものである場合、その成膜方法としては、塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法などのウェットプロセスを用いる方法や、蒸着法(抵抗加熱法、EB法(エレクトロンビーム法)など)、スパッタ法、CVD法などのドライプロセスを用いる方法などが挙げられる。なかでも蒸着法が好ましく適用される。
(芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する非対称性化合物)
本発明の透明電極1においては、中間層3には、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を、窒素原子含有率として0.40%以上有する非対称性化合物を有する非対称性化合物が含有されている。
本発明において、「芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子」とは、非共有電子対を持つ窒素原子であって、当該非共有電子対が不飽和環状化合物の芳香族性に必須要素として直接的に関与していない窒素原子のことをいう。すなわち、共役不飽和環構造(芳香環)上の非局在化したπ電子系に、非共有電子対が、化学構造式上、芳香性発現のために必須のものとして関与していない窒素原子をいう。
以下、本発明に係る「芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子」について説明する。
窒素原子は第15族元素であり、最外殻に5個の電子を有する。このうち3個の不対電子は他の原子との共有結合に用いられ、残りの2個は一対の非共有電子対となるため、通常窒素原子の結合本数は3本である。
例えば、アミノ基(−NR1R2)、アミド基(−C(=O)NR1R2)、ニトロ基(−NO2)、シアノ基(−CN)、ジアゾ基(−N2)、アジド基(−N3)、ウレア結合(−NR1C=ONR2−)、イソチオシアネート基(−N=C=S)、チオアミド基(−C(=S)NR1R2)などが挙げられ、これらは本発明の「芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子」に該当する。なお、R1及びR2はそれぞれ置換基を表す。
このうち、例えば、ニトロ基(−NO2)の共鳴式は、下記のように表すことができる。ニトロ基における窒素原子の非共有電子対は、厳密には、酸素原子との共鳴構造に利用されているが、本発明においては、ニトロ基の窒素原子も非共有電子対を持つこと定義する。
一方、窒素原子は、非共有電子対を利用することで4本目の結合を作り出すこともできる。例えば、下記に示すように、テトラブチルアンモニウムクロライド(略称:TBAC)は、四つ目のブチル基が窒素原子とイオン結合しており、対イオンとして塩化物イオンを有する第四級アンモニウム塩である。また、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)3)は、イリジウム原子と窒素原子が配位結合している中性の金属錯体である。これらの化合物は窒素原子を有するものの、その非共有電子対がそれぞれイオン結合、配位結合に利用されてしまっているため、本発明の「芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子」には該当しない。
すなわち、本発明は、結合に利用されていない窒素原子の非共有電子対を有効利用するというものである。
下記に示す構造式において、左側はテトラブチルアンモニウムクロライド(略称:TBAC)、右側はトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)3)の構造を示す。
また、窒素原子は、芳香環を構成することのできるヘテロ原子として一般的であり、芳香族性の発現に寄与することができる。この「含窒素芳香環」としては、例えばピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、などが挙げられる。
ピリジン環の場合、下記に示すように、6員環状に並んだ共役(共鳴)不飽和環構造において、非局在化したπ電子の数が6個であるため、4n+2(n=0又は自然数)のヒュッケル則を満たす。6員環内の窒素原子は、−CH=を置換したものであるため、1個の不対電子を6π電子系に動員するのみで、非共有電子対は、芳香族性発現のために必須のものとして関与していない。
したがって、ピリジン環の窒素原子は、本発明に係る「芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子」に該当する。以下に、ピリジン環の分子軌道を示す。
ピロール環の場合は、下記に示すように、5員環内を構成する炭素原子の一つが窒素原子に置換された構造であるが、やはりπ電子の数は6個であり、ヒュッケル則を満たした含窒素芳香環である。ピロール環の窒素原子は、水素原子とも結合しているため、非共有電子対が6π電子系に動員されている。
したがって、ピロール環の窒素原子は、非共有電子対を有するものの、芳香族性発現のために必須のものとして利用されてしまっているため、本発明の「芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子」には該当しない。
以下に、ピロール環の分子軌道を示す。
一方、イミダゾール環は、下記に示すように、5員環内に二つの窒素原子が1、3位に置換した構造を有しており、やはりπ電子数が6個の含窒素芳香環である。窒素原子N1は、1個の不対電子のみを6π電子系に動員し、非共有電子対を芳香族性発現のために利用していないピリジン環型の窒素原子である。一方、窒素原子N2は、非共有電子対を6π電子系に動員しているピロール環型の窒素原子である。
したがって、イミダゾール環の窒素原子N1は、本発明の「芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子」に該当する。以下に、イミダゾール環の分子軌道を示す。
また、含窒素芳香環骨格を有する縮環化合物の場合も同様である。例えば、δ-カルボリンは、下記に示すように、ベンゼン環骨格、ピロール環骨格及びピリジン環骨格がこの順に縮合したアザカルバゾール化合物である。ピリジン環の窒素原子N3は、1個の不対電子のみを、ピロール環の窒素原子N4は、非共有電子対を、それぞれπ電子系に動員しており、環を形成している炭素原子からの11個のπ電子とともに、全体のπ電子数が14個の芳香環となっている。
したがって、δ−カルボリンの二つの窒素原子のうち、ピリジン環の窒素原子N3は本発明に係る「芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子」に該当するが、ピロール環の窒素原子N4はこれに該当しない。
このように、ピリジン環やピロール環は、その骨格が縮環化合物中に組み込まれている場合でも、その効果が阻害されたり抑制されたりすることはなく、単環として利用したときとなんら相違はない。以下に、δ−カルボリンの分子軌道を示す。
以上のように、本発明で規定する「芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子」は、その非共有電子対を導電性層の主成分である銅、金、又は白金と強い相互作用を発現するために重要である。そのような窒素原子としては、安定性、耐久性の観点から、含窒素芳香環中の窒素原であることが好ましい。
また、本発明でいう「非対称化合物」とは、化合物の化学構造が線対称軸及び回転軸を有していないことを意味する。ただし、回転異性体は区別せず、同一化合物とみなす。
例えば、下記に示す比較化合物(対象化合物)であるET−1及びET−2は、中央に線対称軸を有しており、この対称軸の左右は、鏡像で線対称を有しており、このような構造は、非対称性ではない。また、ET−3は、分子の中心を軸として、120度回転させると、自らと重なり3回転対称性を有している。これに対して、本発明に係る非対称化合物は、線対称軸を有しておらず、また、分子の中心を軸に回転させても、自らと重ねることができないため、回転対称軸を有していないことが構造上の特徴である。
本発明に係る芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する化合物が、非対称性構造を有することにより、中間層の均一性と膜密度が向上し、その結果、上層として形成される銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分として構成されている導電性層が、薄膜で、かつ均一になると考えられる。
また、本発明に係る芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する非対称性化合物は、下式(1)で規定する芳香族性に関与しない窒素原子の含有率が、0.40%以上であることを特徴とする。
式(1)
窒素原子含有率=(芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子数/非対称性化合物の分子量)×100(%)
本発明で規定する窒素原子含有率としては、更に好ましくは0.80%以上であり、上限値としては、1.50%以下であることが好ましい。上記の範囲で窒素原子を含有している非対称性化合物を、本発明に係る中間層に適用することにより、上部に形成する導電性層を構成する銅、金、又は白金原子が、モトル等の凝集を生じることなく、均一性に優れた導電性層を形成でき、その結果、光透過性と導電性とを兼ね備え、かつ耐久性に優れた透明電極を得ることができる。
以下、本発明に係る芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を、窒素原子含有率として0.40%以上有する非対称性化合物(以下、本発明に係る窒素原子含有の非対称性化合物ともいう)についてさらに説明する。
本発明に係る窒素原子含有の非対称性化合物としては、分子内に、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有し、かつ非対称構造であれば、特に限定されるものではないが、好ましくは、分子内に芳香族ヘテロ環を有する非対称化合物であること、分子内にアザカルバゾール環を有する非対称化合物であること、あるいはγ、γ′−ジアザカルバゾール環又はβ−カルボリン環を有する非対称性化合物であることが好ましい。
本発明に係る芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を、窒素原子含有率として0.40%以上有する非対称性化合物の具体例としては、下記一般式(1A)で表される構造を有する非対称性化合物を挙げることができる。
また、一般式(1A)で表される構造を有する非対称性化合物が、下記一般式(1B)、一般式(1C)又は一般式(1D)のいずれかで表される構造を有する非対称性化合物であることが好ましい。さらに、下記一般式(1E)又は一般式(1F)で表される構造を有する非対称性化合物も、中間層に含有される窒素原子含有の非対称性化合物として好ましく用いることができる。
上記一般式(1A)において、E101〜E108は、各々C(R12)又は窒素原子を表し、E101〜E108のうち少なくとも一つは窒素原子である。また、一般式(1A)におけるR11、及び上記R12は、各々水素原子又は置換基を表す。ただし、一般式(1A)で表される化合物の構造は、非対称性であることを特徴とする。
この置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素環基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基、ピペリジル基(ピペリジニル基ともいう)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、リン酸エステル基(例えば、ジヘキシルホスホリル基等)、亜リン酸エステル基(例えば、ジフェニルホスフィニル基等)、ホスホノ基等が挙げられる。
これらの置換基の一部は、上記の置換基によってさらに置換されていてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
上記一般式(1B)は、一般式(1A)の一形態でもある。
上記一般式(1B)において、Y21は、アリーレン基、ヘテロアリーレン基又はそれらの組み合わせからなる2価の連結基を表す。E201〜E216、E221〜E238は、各々C(R21)又は窒素原子を表し、R21は水素原子又は置換基を表す。ただし、E221〜E229の少なくとも一つ及びE230〜E238の少なくとも一つは窒素原子を表す。k21及びk22は、各々0〜4の整数を表すが、k21+k22は2以上の整数である。ただし、一般式(1B)で表される化合物の構造は、非対称性であることを特徴とする。
一般式(2)において、Y21で表されるアリーレン基としては、例えば、o−フェニレン基、p−フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、ナフタセンジイル基、ピレンジイル基、ナフチルナフタレンジイル基、ビフェニルジイル基(例えば、[1,1′−ビフェニル]−4,4′−ジイル基、3,3′−ビフェニルジイル基、3,6−ビフェニルジイル基等)、テルフェニルジイル基、クアテルフェニルジイル基、キンクフェニルジイル基、セキシフェニルジイル基、セプチフェニルジイル基、オクチフェニルジイル基、ノビフェニルジイル基、デシフェニルジイル基等が例示される。
また、一般式(1B)において、Y21で表されるヘテロアリーレン基としては、例えば、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(モノアザカルボリン環ともいい、カルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わった構成の環構成を示す)、トリアゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピラジン環、キノキサリン環、チオフェン環、オキサジアゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、インドール環からなる群から導出される2価の基等が例示される。
Y21で表されるアリーレン基、ヘテロアリーレン基又はそれらの組み合わせからなる2価の連結基の好ましい態様としては、ヘテロアリーレン基の中でも、3環以上の環が縮合してなる縮合芳香族複素環から導出される基を含むことが好ましく、また、当該3環以上の環が縮合してなる縮合芳香族複素環から導出される基としては、ジベンゾフラン環から導出される基又はジベンゾチオフェン環から導出される基が好ましい。
一般式(1B)において、E201〜E216、E221〜E238で各々表されるC(R21)のR21が置換基である場合、その置換基の例としては、一般式(1A)のR11、R12として例示した置換基が同様に適用される。
一般式(1B)において、E201〜E208のうちの六つ以上、及びE209〜E216のうちの六つ以上が、各々C(R21)で表されることが好ましい。
一般式(1B)において、E225〜E229の少なくとも一つ、及びE234〜E238の少なくとも一つが窒素原子であることが好ましい。
さらには、一般式(1B)において、E225〜E229のいずれか一つ、及びE234〜E238のいずれか一つが窒素原子であることが好ましい。
また、一般式(1B)において、E221〜E224及びE230〜E233が、各々C(R21)で表されることが好ましい態様として挙げられる。
さらに、一般式(1B)で表される化合物において、E203がC(R21)で表され、かつR21が連結部位を表すことが好ましく、さらに、E211も同時に−(R21)で表され、かつR21が連結部位を表すことが好ましい。
さらに、E225及びE234が窒素原子であることが好ましく、E221〜E224及びE230〜E233が、各々C(R21)で表されることが好ましい。
上記一般式(1C)は、一般式(1A)の一形態でもある。
上記一般式(1C)において、E301〜E312は、各々C(R31)を表し、R31は水素原子又は置換基を表す。また、Y31は、アリーレン基、ヘテロアリーレン基又はそれらの組み合わせからなる2価の連結基を表す。ただし、一般式(1C)で表される化合物の構造は、非対称性であることを特徴とする。
上記一般式(1C)において、E301〜E312で各々表されるC(R31)のR31が置換基である場合、その置換基の例としては、一般式(1)のR11、R12として例示した置換基が同様に適用される。
また一般式(1C)において、Y31で表されるアリーレン基、ヘテロアリーレン基又はそれらの組み合わせからなる2価の連結基の好ましい態様としては、一般式(1B)のY21と同様のものが挙げられる。
上記一般式(1D)は、一般式(1A)の一形態でもある。
上記一般式(1D)において、E401〜E414は、各々C(R41)を表し、R41は水素原子又は置換基を表す。またAr41は、置換あるいは無置換の、芳香族炭化水素環あるいは芳香族複素環を表す。さらにk41は3以上の整数を表す。ただし、上記一般式(1D)で表される化合物の構造は、非対称性であることを特徴とする。
上記一般式(1D)において、E401〜E414で各々表されるC(R41)のR41が置換基である場合、その置換基の例としては、一般式(1A)のR11、R12として例示した置換基が同様に適用される。
また一般式(1D)において、Ar41が芳香族炭化水素環を表す場合、この芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。これらの環は、さらに一般式(1A)のR11、R12として例示した置換基を有しても良い。
また一般式(1D)において、Ar41が芳香族複素環を表す場合、この芳香族複素環としては、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、アザカルバゾール環等が挙げられる。なお、アザカルバゾール環とは、カルバゾール環を構成するベンゼン環の炭素原子が一つ以上窒素原子で置き換わったものを示す。これらの環は、さらに一般式(1A)において、R11、R12として例示した置換基を有しても良い。
上記一般式(1E)において、E501及びE502のうちの少なくとも一つは窒素原子であり、E511〜E515のうちの少なくとも一つは窒素原子であり、E521〜E525のうちの少なくとも一つは窒素原子である。またR51は置換基を表す。ただし、上記一般式(1E)で表される化合物の構造は、非対称性であることを特徴とする。
上記一般式(1E)において、R51が置換基を表す場合、その置換基の例としては、一般式(1A)のR11及びR12として例示した置換基が同様に適用される。
上記一般式(1F)において、E601〜E612は、各々C(R61)又は窒素原子を表し、R61は水素原子又は置換基を表す。またAr61は、置換あるいは無置換の、芳香族炭化水素環あるいは芳香族複素環を表す。ただし、上記一般式(1F)で表される化合物の構造は、非対称性であることを特徴とする。
上記一般式(1F)において、E601〜E612で各々表されるC(R61)のR61が置換基である場合、その置換基の例としては、前記一般式(1A)のR11、R12として例示した置換基が同様に適用される。
また一般式(1F)において、Ar61が表す、置換あるいは無置換の、芳香族炭化水素環あるいは芳香族複素環は、一般式(1D)のAr41と同様のものが挙げられる。
以下に、本発明に係る芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有し、窒素原子含有率が0.40%以上である非対称性化合物の具体例を示す。下記例示化合物に記載した数値(N)は、窒素原子含有率(%)を示している。
本発明に係る芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する非対称性化合物は、従来公知の合成方法に準じて、容易に合成して得ることができる。
〔導電性層〕
本発明に係る導電性層5は、銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分として構成されている層で、中間層3上に形成される。本発明に係る導電性層5の成膜方法としては、例えば、塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法などのウェットプロセスを用いる方法や、蒸着法(抵抗加熱、EB法など)、スパッタ法、CVD法などのドライプロセスを用いる方法などが挙げられる。上記成膜方法のなかでも、蒸着法が好ましく適用される。また、導電性層5は、中間層3上に成膜されることにより、導電性層成膜後の高温アニール処理(例えば、150℃以上の加熱プロセス)等がなくても十分に導電性を発現することができるが、必要に応じて、成膜後に高温アニール処理等を施しても良い。
本発明でいう銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分として構成されている層とは、前述のとおり、導電性層5の全質量に対し、本発明に係る銅、金又は白金のそれぞれの金属元素の含有率が90質量%以上であることを意味し、好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは99質量%以上であり、特に好ましくは銅、金又は白金の金属元素のみで構成されていることであり、2種以上の金属元素による合金は形成しない。本発明に係る導電性層5においては、銅、金又は白金のそれぞれが、他の金属元素と合金を形成することはなく、それぞれ単体の金属で構成されていることが最も好ましい態様である。本発明においては、導電性層が主成分として含有する金属元素が、銅であることが、特に好ましい。
本発明に係る導電性層5においては、銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分として構成されている層が、必要に応じて複数の層に分けて積層された構成であっても良い。
更に、当該導電性層5は、層厚が4〜20nmの範囲内であることが好ましい。層厚が20nm以下であれば、層の吸収成分又は反射成分が少なくなり、透明電極の透過率が向上するためより好ましい。また、層厚が4nm以上であれば、層の導電性が十分になるため好ましい。さらに好ましくは、5〜10nmの範囲内である。
〔透明電極の効果〕
以上説明したように、本発明の透明電極1は、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する化合物を含有して構成された中間層3上に、銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分として構成されている導電性層5を設けた構成である。これにより、中間層3の上部に導電性層5を成膜する際には、導電性層5を構成する銅、金、又は白金原子が中間層3を構成する芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子と相互作用し、銅、金、又は白金原子の中間層3表面における拡散距離が減少し、銅、金、又は白金の凝集の生成を抑制することができる。
前述のように、銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分として構成されている導電性層5の成膜においては、島状成長型(Volumer−Weber:VW型)で膜成長するため、銅、金、又は白金粒子が島状に孤立し易く、層厚が薄いときは導電性を得ることが困難となり、シート抵抗値が高くなる。したがって、導電性を確保するにはある程度層厚を厚くする必要があるが、層厚を厚くすると光透過率が低下し、透明電極としては不適であった。
しかしながら、本発明で規定する構成の透明電極1によれば、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する化合物を含有する中間層3上において、窒素原子と銅、金、又は白金との相互作用により、銅、金、又は白金の凝集が抑えられるため、銅、金、又は白金を主成分として構成されている導電性層5の成膜においては、単層成長型(Frank−van der Merwe:FM型)で膜成長するようになる。
なお、本発明でいう「透明電極1の透明」とは、波長550nmでの光透過率が50%以上であることをいうが、中間層3として用いられる上述した各材料は、銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分とした導電性層5と比較して、十分な光透過性を備えた良好な膜である。一方、透明電極1の導電性は、主に導電性層5によって確保される。したがって、上述のように、銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分として構成されている導電性層5が、より薄い層厚で導電性が確保されたものとなることにより、透明電極1の導電性の向上と光透過性の向上との両立を図ることができたものである。
《透明電極の用途》
上記構成からなる本発明の透明電極1は、各種電子デバイスに用いることができる。電子デバイスの例としては、例えば、タッチパネル、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス素子、LED(light Emitting Diode)、太陽電池等が挙げられ、これらの電子デバイスにおいて、光透過性を必要とされる電極部材として、本発明の透明電極1を用いることができる。
〔タッチパネル〕
以下、本発明の透明電極を適用した電子デバイスの一例として、本発明の透明電極にフォトリソグラフィー法による電極パターンを形成したのち、それをタッチパネルへの適用する例について説明する。
(透明電極のパターニング)
図1の(a)で示した基板11上に、中間層3と当該中間層3に隣接して、銅、金、又は白金を主成分とする導電性層5を有する本発明の透明電極1は、例えば、フォトリソグラフィー法により、例えば、有機溶媒を含有するエッチング液を用いて、図3〜図5に示すような電極パターンを形成することができる。
〈エッチング液:有機溶媒〉
本発明において、エッチング液としては、少なくとも有機溶媒を含有していることが好ましく、有機溶媒として、特に制限はないが、中間層に対する溶解能を備えた有機溶媒であることが好ましく、より好ましくは、エーテルアルコール、ケトン及びエステルから選ばれる少なくとも1種である。
また、本発明においては、エッチング液に、上記有機溶媒とともに、銅、金、又は白金で構成される導電性層をより完全に溶解して除去する目的で、各金属元素の溶剤を併用することもできる。
〈製造工程〉
以下、フォトリソグラフィー法による電極パターンの形成方法について説明する。
本発明に適用するフォトリソグラフィー法とは、硬化性樹脂等のレジスト塗布、予備加熱、露光、現像(未硬化樹脂の除去)、リンス、有機溶媒を含むエッチング液によるエッチング処理、レジスト剥離の各工程を経ることにより、透明電極を、図3〜図5に示すような所望のパターンに加工する方法である。
本発明では、従来公知の一般的なフォトリソグラフィー法を適宜利用することができる。例えば、レジストとしてはポジ型又はネガ型のいずれのレジストでも使用可能である。また、レジスト塗布後、必要に応じて予備加熱又はプリベークを実施することができる。露光に際しては、所期のパターンを有するパターンマスクを配置し、その上から、用いたレジストに適合する波長の光、一般には紫外線や電子線等を照射すればよい。露光後、用いたレジストに適合する現像液で現像を行う。現像後、水等のリンス液で現像を止めるとともに洗浄を行うことで、レジストパターンが形成される。次いで、形成されたレジストパターンを、必要に応じて前処理又はポストベークを実施してから、有機溶媒を含むエッチング液によるエッチングで、レジストで保護されていない領域の中間層の溶解及び導電性層の除去を行う。エッチング後、残留するレジストを剥離することによって、所期のパターンを有する透明電極が得られる。このように、本発明に適用されるフォトリソグラフィー法は、当業者に一般に認識されている方法であり、その具体的な適用態様は当業者であれば所期の目的に応じて容易に選定することができる。
次いで、図を交えて、本発明に適用可能な電極パターンの形成方法について説明する。
図2は、透明電極に電極パターンをフォトリソグラフィー法で形成する一例を示す工程フロー図である。
第1ステップとして、図2の(a)で示すように、透明基板11上に中間層3及び導電性層5を積層して、未加工の透明電極1を作製する。
次いで、図2の(b)で示すレジスト膜の形成工程で、導電性層5上に感光性樹脂組成物等から構成されるレジスト膜6を均一に塗設する。感光性樹脂組成物としては、ネガ型感光性樹脂組成物あるいはポジ型感光性樹脂組成物を用いることができる。
塗布方法としては、マイクログラビアコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、スリットコーティングなどの公知の方法によって導電性層上に塗布し、ホットプレート、オーブンなどの加熱装置でプリベークすることができる。プリベークは、例えば、ホットプレート等を用いて、50℃以上、150℃以下の範囲で30秒〜30分間行うことができる。
次いで、図2の(c)に示す露光工程で、所定の電極パターンにより作製したマスク7を介して、ステッパー、ミラープロジェクションマスクアライナー(MPA)、パラレルライトマスクアライナーなどの露光機8を用いて、10〜4000J/m2程度(波長365nm露光量換算)の光を、次工程で除去するレジスト膜6Aに照射する。露光光源に制限はなく、紫外線、電子線や、KrF(波長248nm)レーザー、ArF(波長193nm)レーザーなどを用いることができる。
次いで、図2の(d)に示す現像工程で、露光済みの透明電極を、現像液に浸漬して、光照射した領域のレジスト膜6Aを溶解する。
現像方法としては、シャワー、ディッピング、パドルなどの方法で現像液に5秒〜10分間浸漬することが好ましい。現像液としては、公知のアルカリ現像液を用いることができる。具体例としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩などの無機アルカリ、2−ジエチルアミノエタノール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、コリンなどの4級アンモニウム塩を1種あるいは2種以上含む水溶液などが挙げられる。現像後、水でリンスすることが好ましく、続いて50℃以上150℃以下の範囲で乾燥ベークを行ってもよい。
次いで、図2の(e)に示すように、上記説明したエッチング液9を用いたエッチング処理を行う。
具体的には、例えば、エーテルアルコール、ケトン、エステル等の有機溶媒を含むエッチング液に、透明電極1を浸漬し、レジスト膜6で保護されていない領域の中間層3を溶解するとともに及び中間層に保持されている薄膜の導電性層も同時に除去することにより、所定の電極パターンを形成する。
最後に、図2の(f)に示すように、レジスト膜剥離液、例えば、ナガセケムテックス社製のN−300に浸漬して、導電性層5上のレジスト膜6を除去する。
《タッチパネルの構成》
次いで、本発明の透明電極を適用することができるタッチパネルの構成について、代表的な実施形態の詳細について説明する。
〔実施形態1:2枚の透明基板上にそれぞれ透明電極を設けた構成〕
図3は、上述した本発明の透明電極を用い、後述の図7で示す構成からなるタッチパネル21aの概略構成を示す斜視図である。また、図4は、タッチパネル21の電極構成を示す2枚の透明電極1−1及び1−2の平面図である。
これらの図に示すタッチパネル21は、投影型静電容量式のタッチパネルである。このタッチパネル21は、透明基板11−1、11−2の一主面上に、第1の透明電極1−1及び第2の透明電極1−2がこの順に配置され、この上部が前面板13で覆われている。
第1の透明電極1−1及び第2の透明電極1−2は、それぞれが、図1及び図2を用いて説明したタッチパネル用の電極パターンが形成された透明電極1である。したがって、第1の透明電極1−1は、第1の中間層3−1と第1の導電性層5−1とがこの順に積層された構成である。同様に第2の透明電極1−2は、第2の中間層3−2と第2の導電性層5−2とがこの順に積層された構成である。
以下、タッチパネル21を構成する主要各層の詳細を、透明基板11−1、11−2側から順に説明する。なお、ここでは、図3及び図4とともに、図5の電極部分の平面模式図及び、そのA−A断面に相当する図7の断面模式図を用いて説明を行う。また、図1及び図2で説明したと同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
(透明基板11)
図3及び図5に示す透明基板11−1、11−2は、先の透明電極1で説明した基板11(以下、透明基板ともいう。)である。
(第1の中間層3−1(第1の透明電極1−1))
第1の中間層3−1は、先の透明電極1で説明した中間層3であり、基板11上に成膜されている。ここでは一例として、第1の中間層3−1は、透明基板11−1に導電性層5−1と同一形状にパターニングされている。
(第1の導電性層5−1(第1の透明電極1−1))
第1の導電性層5−1は、先の透明電極で説明した導電性層5であり、第1の中間層3−1上においてパターニングされた複数のx電極パターン5x1、5x2、(中略)等として構成されている。各x電極パターン5x1、5x2、(中略)等は、それぞれがx方向に延設された状態で、互いに間隔を保って並列に配置されている。これらの各x電極パターン5x1、5x2、(中略)等は、例えば、x方向に配列されたひし形のパターン部分を、ひし形の頂点付近において、x方向に直線状に連結した形状であることとする。
また、各x電極パターン5x1、5x2、(中略)等には、それぞれの端部にx配線17xが接続されている。これらのx配線17xは、透明基板11−1上における周縁領域において配線され、透明基板11−1の端縁に引き出されている。このような各x配線17xは、x電極パターン5x1、5x2、(中略)等と同様に、銅、金、又は白金を主成分とする第1の導電性層5−1として構成されたものである。
(第2の中間層3−2(第2の透明電極1−2))
第2の中間層3−2は、先の透明電極1で説明した中間層3であり、透明基板11−2上に成膜されていて、第2の電極層5−2と同一形状にパターニングされている。
(第2の電極層5−2(第2の透明電極1−2))
第2の電極層5−2は、先の透明電極1で説明した導電性層5であり、第2の中間層3−2上においてパターニングされた複数のy電極パターン5y1、5y2、(中略)等として構成されている。各y電極パターン5y1、5y2、(中略)等は、それぞれがx電極パターン5x1、5x2、(中略)等と直交するy方向に延設された状態で、互いに間隔を保って並列に配置されている。これらの各y電極パターン5y1、5y2、(中略)等は、例えば、y方向に配列されたひし形のパターン部分を、ひし形の頂点付近においてy方向に直線状に連結した形状であることとする。
ここで、図5に示すように、各y電極パターン5y1、5y2、(中略)等を構成するひし形のパターン部分は、x電極パターン5x1、5x2、(中略)等を形成するひし形のパターン部分に対して平面視的に重なることのない位置に配置され、重なることのない範囲でできるだけ大きな範囲を占める形状となっている。これにより、透明基板11−2の中央部の領域においては、第1の電極層5−1で構成されたx電極パターン5x1、5x2、(中略)等及び第2の電極層5−2で構成されたy電極パターン5y1、5y2、(中略)等が視認され難い構成となっている。
各y電極パターン5y1、5y2、(中略)等は、ひし形の電極パターンの連結部分においてのみ、各x電極パターン5x1、5x2、(中略)等と積層される。これらの積層部分には、第2の中間層3−2が挟持され、これによってx電極パターン5x1、5x2、(中略)等とy電極パターン5y1、5y2、(中略)等との絶縁性が確保された状態となっている。
また、各y電極パターン5y1、5y2、(中略)等には、それぞれの端部にy配線17yが接続されている。これらのy配線17yは、透明基板11−2上における周縁領域において配線され、x配線17xと並ぶように透明基板11−2の端縁に引き出されている。このような各y配線17yは、y電極パターン5y1、5y2、(中略)等と同様に、銅、金、又は白金を主成分とする第2の導電性層5−2として構成されたものである。
なお、透明基板11−2の端縁に引き出されたx配線17x及びy配線17yには、フレキシブルプリント基板などが接続される構成となっている。
(前面板13)
図3に図示した前面板13は、タッチパネル21において入力位置に対応する部分が押圧される板材である。このような前面板13は、光透過性を有する板材であって、透明基板11と同様のものが用いられる。またこの前面板13は、必要に応じた光学特性を備えた材料を選択して用いても良い。このような前面板13は、例えば接着剤15に(図6参照。)よって第2の透明電極1−2側に張り合わせられていることとする。この接着剤15は、光透過性を有するものであれば、特に材料が限定されることはない。
またこの前面板13には、透明基板11−1及び11−2の周縁を覆う遮光膜が設けられ、x電極パターン5x1、5x2、(中略)等から引き出されたx配線17x、及びy電極パターン5y1、5y2、(中略)等から引き出されたy配線17yが、前面板13側から視認されることを防止している。
(タッチパネルの動作)
以上のようなタッチパネル21を動作させる場合、x配線17x及びy配線17yに接続させたフレキシブルプリント基板などから、x電極パターン5x1、5x2、(中略)等及びy電極パターン5y1、5y2、(中略)等に対して電圧を印加しておく。この状態で、前面板13の表面に指又はタッチペンが触れると、タッチパネル21内に存在する各部の容量が変化し、x電極パターン5x1、5x2、(中略)等及びy電極パターン5y1、5y2、(中略)等の電圧の変化となって現れる。この変化は、指又はタッチペンが触れた位置からの距離によって異なり、指又はタッチペンが触れた位置で最も大きくなる。このため、電圧の変化が最大となる、x電極パターン5x1、5x2、(中略)等及びy電極パターン5y1、5y2、(中略)等でアドレスされた位置が、指又はタッチペンが触れた位置として検出される。
(タッチパネル21の効果)
以上のようなタッチパネル21は、2層の透明電極1−1及び1−2として、先に説明した光透過性とともに充分な導電性を備えた透明電極を用いている。これにより、下地の表示画像の視認性を良好に保ちつつ、タッチパネル用の透明電極を大型化した際の電圧降下を抑えることができ、タッチパネル21の大型化をすることが可能となる。
特に、このタッチパネル21は、x電極パターン5x1、5x2、(中略)等及びこれに直交して配置された電極パターン5y1、5y2、(中略)等を有する投影型静電容量式である。このため、x電極パターン5x1、5x2、(中略)等及びy電極パターン5y1、5y2、(中略)等には、高い導電性が要求される。しかしながら、これらのx電極パターン5x1、5x2、(中略)等及びy電極パターン5y1、5y2、(中略)等は、先に説明したタッチパネル用透明電極の導電性層(電極層)5であるため、導電性を維持しつつ薄膜化が可能である。したがって、x電極パターン5x1、5x2、(中略)等及びy電極パターン5y1、5y2、(中略)等自体が視認され難くなり、タッチパネル21を介しての下地の表示画像の視認性を劣化させることをも防止できる。
図7は、実施形態のタッチパネルで、本発明で特に好ましく適用することができるタッチパネルの構成を説明するための断面模式図であり、図5に示したA−A断面に相当する図である。この図に示すタッチパネル21aは、2枚の透明基板11−1及び11−2の一主面上に、第1の透明電極1−1及び第2の透明電極1−2を設けた構成であり、それ以外の構成は先に説明した実施形態1と同様である。このため、先の実施形態1のタッチパネルと同様の構成には同様の符号を付し、重複する説明は省略する。
すなわち、図7に示すタッチパネル21aは、第1の透明電極1−1が設けられた第1の基板11−1と、第2の透明電極1−2が設けられた第2の基板11−2とを有する。これらの基板11−1及び11−2は、透明電極1−1及び1−2の形成面を同一方向に向け、第1の基板11−1における第1の透明電極1−1の形成面上に、第2の基板11−2が位置するように重ねて配置されている。
第1の基板11−1及び第2の基板11−2は、先の透明電極で説明したと同様の基板11である。また、第1の透明電極1−1及び第2の透明電極1−2は、それぞれが先の実施形態1と同様の構成であり、それぞれが基板11−1及び11−2上に、中間層3−1及び3−2と、導電性層5−1及び5−2をこの順に積層した構成となっている。
さらに各導電性層5−1及び5−2の構成も、先の実施形態1と同様であり、第1の導電性層5−1で構成されたx電極パターン5x1、5x2、(中略)等、及び第2の電極層5−2で構成されたy電極パターン5y1、5y2、(中略)等が視認され難いパターン構成及び配置構成となっている。ただし、第1の導電性層5−1と第2の導電性層5−2との間は、第2の基板11−2と第2の中間層3−2とによって絶縁性が確保された状態となっている。
また、積層された第1の基板11−1と第2の基板11−2との間は、ここでの図示を省略した接着剤によって貼り合せられており、この接着剤によっても、第1の電極層5−1と第2の電極層5−2とが絶縁される。
〔実施形態2:透明基板上に2層の透明電極を設けた構成〕
図6は、実施形態のタッチパネルの他の一例を説明するための断面模式図であり、図6に示すタッチパネル21は、透明基板11上に第1の透明電極1−1及び第2の透明電極1−2を設けた構成であり、それ以外の構成は先の実施形態1と同様である。このため、先の実施形態のタッチパネルと同様の構成には同様の符号を付し、重複する説明は省略する。
〔液晶表示装置への適用〕
次いで、電子デバイスとして液晶表示装置への本発明の透明電極を組み入れた例を説明する。
図8は、本発明の透明電極を具備した液晶表示装置の構成の一例を示す概略断面図である。液晶表示装置は一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
液晶表示装置は、一般に、液晶ディスプレイ、液晶パネルともいわれ、液晶の駆動方式によって、STN、TN、OCB、HAN、VA(MVA、PVA)、IPS、OCBなどの各種駆動方式の液晶表示装置が挙げられる。通常、液晶ディプレイとしてTVや液晶パネル等好ましく用いられる方式は、VA(MVA,PVA)型液晶表示装置である。
図8で示す液晶表示装置100は、バックライト側から、出入りの光をコントロールする偏光フィルター101A、電極部から電気が他の領域に漏洩しないようにするガラス基板102A、液晶ディスプレイを駆動するための本発明の透明電極1A、液晶分子を一定方向に配向させるための配向膜104A、液晶105、スペーサー106、他方の配向膜104B、他方の透明電極1B、RGBのそれぞれのフィルターをかけ、色を表示するカラーフィルター103、他方のガラス基板102B、他方の偏光フィルター101Bで構成され、本発明の透明電極1A及び1Bは、十分な導電性と光透過性とを兼ね備え、かつ低シート抵抗値を有し、耐久性(高温高湿環境下における光透過率安定性)と電極寿命耐性に優れている。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
実施例1
《透明電極の作製》
以下に示す方法に従って、透明電極1〜93を、導電性領域の面積が5cm×5cmとなる条件で作製した。透明電極1〜4は、単層構造の透明電極として作製し、透明電極5〜83、透明電極91〜93は、図1の(a)に示す中間層3と導電性層5との積層構造からなる透明電極であり、透明電極84〜90は、図1の(b)に示す中間層3A、導電性層5及び第2の中間層3Bの3層の積層構造からなる透明電極である。
〔透明電極1の作製〕
下記に示す方法に従って、単層構造からなる比較例の透明電極1を作製した。
透明な無アルカリガラス製の基材を、市販の真空蒸着装置の基材ホルダーに固定し、これを真空蒸着装置の真空槽内に取り付けた。一方、タングステン製の抵抗加熱ボートに銅(Cu)を充填し、当該真空槽内に取り付けた。次に、真空槽内を4×10−4Paまで減圧した後、抵抗加熱ボートを通電及び加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲内で、基材上に銅からなる層厚5nmの導電性層の単膜を蒸着して、透明電極1を作製した。
〔透明電極2〜4の作製〕
上記透明電極1の作製において、導電性層の層厚を、それぞれ9nm、11nm及び15nmに変更した以外は同様にして、透明電極2〜4を作製した。
〔透明電極5の作製〕
透明な無アルカリガラス製の基材上に、下記に構造を示すAlq3をスパッタ法により層厚22nmの中間層として成膜し、この上部に、透明電極1において、導電性層の形成に用いたのと同様の方法(真空蒸着法)で、層厚が9nmの銅(Cu)からなる導電性層を蒸着成膜して、透明電極5を作製した。
〔透明電極6の作製〕
透明な無アルカリガラス製の基材を市販の真空蒸着装置の基材ホルダーに固定し、下記に示す構造のET−1をタンタル製抵抗加熱ボートに充填し、これらの基板ホルダーと加熱ボートとを真空蒸着装置の第1真空槽内に取り付けた。また、タングステン製の抵抗加熱ボートに銅(Cu)を入れ、第2真空槽内に取り付けた。
次いで、第1真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、ET−1の入った加熱ボートを通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲内で基材上に蒸着し、層厚が22nmのET−1からなる中間層を形成した。
次に、中間層を形成した基材を真空状態のまま第2真空槽に移し、第2真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、銅の入った加熱ボートを通電及び加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲で、層厚が9nmの銅からなる導電性層を蒸着し、中間層とこの上部に銅からなる導電性層を積層した透明電極6を得た。
〔透明電極7及び8の作製〕
上記透明電極6の作製において、中間層の形成に用いたET−1を、それぞれ、下記ET−2、ET−3に変更した以外は同様にして、透明電極7及び8を作製した。
〔透明電極9〜11の作製〕
上記透明電極6の作製において、中間層の形成に用いたET−1を、それぞれ、下記比較化合物1、比較化合物2、比較化合物3に変更した以外は同様にして、透明電極9〜11を作製した。
〔透明電極12の作製〕
透明な無アルカリガラス製の基材を市販の真空蒸着装置の基材ホルダーに固定し、本発明の例示化合物(1)をタンタル製抵抗加熱ボートに充填し、これらの基板ホルダーと加熱ボートとを真空蒸着装置の第1真空槽内に取り付けた。また、タングステン製の抵抗加熱ボートに銀(Ag)を入れ、第2真空槽内に取り付けた。
次いで、第1真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、例示化合物(1)の入った加熱ボートを通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲内で基材上に蒸着し、層厚が22nmの例示化合物(1)からなる中間層3を形成した。
次に、中間層3を形成した基材を真空状態のまま第2真空槽に移し、第2真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、銀の入った加熱ボートを通電及び加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲で、層厚が9nmの銀からなる導電性層5を蒸着し、中間層3とこの上部に銀からなる導電性層5を積層した透明電極12を得た。
〔透明電極13の作製〕
透明な無アルカリガラス製の基材を市販の真空蒸着装置の基材ホルダーに固定し、本発明の例示化合物(1)をタンタル製抵抗加熱ボートに充填し、これらの基板ホルダーと加熱ボートとを真空蒸着装置の第1真空槽内に取り付けた。また、タングステン製の抵抗加熱ボートに銅(Cu)を入れ、第2真空槽内に取り付けた。
次いで、第1真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、例示化合物(1)の入った加熱ボートを通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲内で基材上に蒸着し、層厚が22nmの例示化合物(1)からなる中間層3を形成した。
次に、中間層3を形成した基材を真空状態のまま第2真空槽に移し、第2真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、銅の入った加熱ボートを通電及び加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲で、層厚が3.5nmの銅からなる導電性層5を蒸着し、中間層3とこの上部に銅からなる導電性層5を積層した透明電極12を得た。
〔透明電極14及び15の作製〕
上記透明電極13の作製において、導電性層5の銅膜厚を、5nm、9nmにそれぞれ変更した以外は同様にして、透明電極14及び15を作製した。
〔透明電極16及び17の作製〕
上記透明電極15の作製において、導電性層5の構成金属元素を、それぞれ、金(Au)及び白金(Pt)に変更した以外は同様にして、透明電極16及び17を作製した。
〔透明電極18及び19の作製〕
上記透明電極15の作製において、導電性層5の銅膜厚を、12nm、20nmにそれぞれ変更した以外は同様にして、透明電極14及び15を作製した。
〔透明電極20〜83の作製〕
上記透明電極15の作製において、中間層3の形成に用いた芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する化合物である例示化合物(1)に代えて、それぞれ表1〜表4に記載の各例示化合物を用いた以外は同様にして、透明電極20〜83を作製した。
〔透明電極84〜90の作製〕
上記透明電極15、20〜25の作製において、基材上に中間層3A及び導電性層5を同様の方法で形成した後、更に、導電性層5上に、中間層3の形成と同様の方法で、第2の中間層3Bを形成し、図1の(b)に記載の導電性層5を2層の中間層3A及び3Bで挟持した構成の透明電極84〜90を作製した。
〔透明電極91〜93の作製〕
上記透明電極15、24及び25の作製において、基材を無アルカリガラスからPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更した以外は同様にして、透明電極91〜93を作製した。
《透明電極の評価》
上記作製した透明電極1〜93について、下記の方法に従って、光透過率、シート抵抗値、耐久性1(光透過率の変化比率)及び耐久性2(電極寿命)の測定を行った。
〔光透過率の測定〕
上記作製した各透明電極について、分光光度計(日立ハイテク社製U−3300)を用い、各透明電極の作製に用いた基材をリファレンスとして、波長550nmにおける光透過率(%)を測定した。
〔シート抵抗値の測定〕
上記作製した各透明電極について、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製MCP−T610)を用い、4端子4探針法定電流印加方式でシート抵抗値(Ω/□)の測定を行った。
〔耐久性1の評価:高温・高湿環境下における光透過率の変化幅の測定〕
上記作製した各透明電極について、高温高湿環境(温度60℃、湿度90%)で300時間保存した後の光透過率を測定し、下式に従って初期の波長550nmにおける光透過率に対する高温高湿環境下で保存したのちの波長550nmにおける光透過率の変化比率を測定した。
光透過率の変化比率=〔(初期の光透過率−高温高湿環境下で保存後の光透過率)/初期の光透過率〕×100
なお、各透明電極の光透過率の変化比率は、透明電極7の変化比率を100とする相対値で表示した。
〔耐久性2の評価:電極寿命の評価(有機溶媒耐性)〕
各透明電極について、上記シート抵抗値の測定に記載の方法と同様にして、初期のシート抵抗値R1を測定したのち、各透明電極を25℃の酢酸エチル液に浸漬し、30分ごとに取り出して、乾燥させたのち、シート抵抗値を測定し、酢酸エチル液への浸漬と、シート抵抗値の測定を繰り返して行い、シート抵抗値が、初期のシート抵抗値R1の2倍になるまでの浸漬時間Tを求め、これを電極寿命の尺度とした。浸漬時間Tが大きいほど、電極寿命(有機溶媒耐性)に優れていることを表す。なお、各透明電極の浸漬時間Tは、透明電極7のシート抵抗値が2倍になるのに要した浸漬時間を100とする相対値で表示した。
以上により得られた結果を、表1〜表4に示す。
表1〜表4に記載の結果より明らかなように、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する化合物を用いて形成した中間層上に、銅、金及び白金から選ばれるいずれか1種の金属元素を主成分とした導電性層を設けた本発明の透明電極13〜83は、いずれも光透過率が66%以上であり、かつシート抵抗値が10Ω/□以下に抑えられている。これは、中間層を、芳香族性に関与しない非共有電子対を持つ窒素原子を有する化合物を用いて形成することにより、その上に形成する銅、金又は白金膜の凝集やモトルの発生を抑制することができ、ある程度の厚さを有する銅、金又は白金膜を形成しても、銅、金又は白金の凝集が抑制され、高い光透過性と低いシート抵抗値の両立を果たすことができた。すなわち、本発明の透明電極は、比較例に対し、耐久性(高温高湿環境下における透過率安定性)と電極寿命耐性に優れていることがわかる。
更に、導電性層を、2層の中間層で挟持した構成として透明電極84〜90においても、より好ましい結果を得ることができることを確認することができた。
上記実施例においては、金及び白金については、透明電極16及び17のみでその効果を実証したが、表1〜表4に示した透明電極18〜93について、銅に代えて、金又は白金を用いて同様の方法でその効果を確認した結果、銅と同様の効果を得ることができることを確認した。
一方、中間層を有していない比較例の透明電極1〜4では、銅層である導電性層の層厚を厚くするに従い、シート抵抗値の低下は認められるものの、導電性層形成時の銅の凝集(モトル)に起因する光透過率の低下が著しくなり、光透過性とシート抵抗値の両立を達成することができない。また、中間層としてAlq3あるいはET−1〜ET−3を用いた透明電極5〜8でも、光透過率が低く、かつシート抵抗値が所望の条件まで低下させることができなかった。また、耐久性(高温高湿環境下における透過率安定性)と電極寿命耐性についても不十分な特性であった。