つぎに、本発明の一実施の形態について説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
図1は、本発明の一実施の形態である化粧料容器の蓋体が閉じた状態を示す斜視図であり、図2は、これを開いた状態を示す斜視図である。この化粧料容器は、化粧料(この例ではフェイスカラー)を収容するコンパクトケースタイプの容器で、容器本体10と、容器本体10の上面を蓋する蓋体11とを備えている。そして、両者は、互いの後端部に設けられたヒンジ部12によって回動自在に連結されており、蓋体11側に設けられた係合片13と容器本体10側に設けられた係合用突起14との係合によって、互いに係止されるようになっている。
上記蓋体11は、全体が透明樹脂成形体からなり、その上面に、左右方向に延びる幅1mmの白色ライン15が、0.5mmの隙間をあけて容器の前後方向に平行に並ぶことにより、筋模様Pが形成されている。そして、この筋模様Pの、白色ライン15と白色ライン15との間は、透明な「地」の部分が線状に延びているため、筋模様Pは、別のいい方をすれば、「幅0.5mmの透明な線分が1mmの間隔で平行に並ぶ筋模様」ということもできる。そして、上記筋模様Pは、透明な「地」の部分が平行に並ぶことによって構成された「透かし模様」である。
上記筋模様Pは、例えば、透明樹脂成形体である蓋体11に、白色インクを用いて筋模様Pのシルクスクリーン印刷を行うことによって得ることができる。また、予め転写シートに、白色インクによる筋模様Pを形成しておき、これを透明な蓋体11の表面に転写することによっても得ることができる。
一方、容器本体10は、図2に示すように、その上面の略中央に、化粧料収容用の凹部16が形成されており、凹部16内に、中皿17に充填された化粧料18が収容されている。そして、上記凹部16の手前側には、化粧筆等の化粧用具19を収容するための化粧用具用凹部20が形成されている。
そして、上記化粧料18の平坦な表面には、これを真上から見た図3に示すように、化粧料18の肌色の地の上に、周囲が横縞模様になった淡いオレンジ色の水玉からなる水玉模様21が形成されている。
上記水玉模様21は、図1に示すように容器を閉じた状態で、蓋体11の筋模様Pの透明部分を透かして、目線の角度を変えながら見たときに、錯視によりスキャニメーションの効果が得られるような、特殊な構成のデザインになっている。ただし、図1において、蓋体11の透明部分から容器本体10側の水玉模様21の一部が透けて見えるが、その図示を省略している。
上記水玉模様21のデザインは、例えば以下のような手順で作ることができる。すなわち、まず、図4に示すように、蓋体11の上から筋模様Pの透明部分(白色ライン15同士の隙間部分:幅0.5mm)を透かして内側の水玉模様21を見るときに、筋模様Pに対して変化する目線の最大角度を、例えば60°と設定する。つぎに、この目線の角度の変化によって筋模様Pの透明部分から見える化粧料18の表面の領域幅D’を求める。
そして、目線の角度が60°変化する間に、4種類の模様パターンを順次見せてスキャニメーション効果を得る場合、この領域幅D’を、四つの帯領域A〜Dに分割する。そして、各帯領域A〜Dをさらにそれぞれ4分割して、各帯領域A〜Dの、図において最も左側にある筋領域a1 、b1 (b1 以下は図示を省略)を、第1の模様パターンを見せる領域とし、左から2番目にある筋領域a2 、b2 …を、第2の模様パターンを見せる領域とし、同様に、第3の模様パターンを見せる領域、第4の模様パターンを見せる領域として割り振り、見せる筋領域以外の部分は、帯状に模様が抜けた状態とする。
なお、上記水玉模様21を作るための第1〜第4の模様パターンを、図5(a)〜(d)に示す。ただし、各模様パターンは、各筋領域a1 、b1 …等に割り振る前の模様である。
そして、上記第1の模様パターンから第4の模様パターンが、各筋領域a1 、b1 …等に割り振られて、互いに見せる部分が所定ピッチずつずれて筋状模様となったものを、同一面上に重ねて示すことにより、図3に示すような水玉模様21を得ることができる。
このようにして得られた水玉模様21を、化粧料18の上面に付与し、蓋体11の上から、その筋模様Pの透明部分から透かして見れば、目線がずれるにしたがって、図5(a)〜(d)に示す第1の模様パターン、第2の模様パターン、第3の模様パターン、第4の模様パターン、がこの順で、あるいはこの逆の順で、繰り返し見えるようになっている。そして、各模様パターンの切り替わりによる変化が、人間の目の錯視によって、あたかも滑らかに動いて変化するように見えるため、上記水玉模様21のそれぞれの水玉が、目線の角度の変化に応じて、ゆらゆらと動きながら大きくなったり小さくなったりするように見える。
なお、上記水玉模様21は、模様を構成するそれぞれの水玉が、同じ位置でゆらゆら動くものであるが、他の例として、例えば、模様を構成する模様部分が、その配置を変えて動いていくように見えるものや、複数の模様部分が、互いに異なるタイミングで現出したり消えたりして、全く印象の異なる模様がつぎつぎと現れるように見えるもの等があげられる。
例えば、図6(a)〜(d)に示すような4種類の模様パターンを準備し、上記水玉模様21の作り方と同様にして、各模様パターンにおいて、目線がずれたときに筋模様Pを透かして見える部分を割り振った後、これらを同一面上に重ねると、図6(e)に示す模様31となる。この模様31を、上記の例と同様の化粧料18の上面に付与し、蓋体11の上から、目線の角度を変えながら筋模様Pから透かして見ると、ヤツデの葉のような模様が、つぎつぎと右上奥側から左下手前側に向かって接近してくるようなスキャニメーション効果を得ることができる。
さらに他の例として、例えば、図7(a)〜(d)に示すような4種類の模様パターンを準備し、上記水玉模様21等の作り方と同様にして、各模様パターンにおいて、目線がずれたときに筋模様Pを透かして見える部分を割り振った後、これらを同一面上に重ねると、図7(e)に示す模様32となる。この模様32を、上記の例と同様の化粧料18の上面に付与し、蓋体11の上から、目線の角度を変えながら筋模様Pから透かして見ると、いくつかのアルファベットの文字と黒丸の模様が、互いに、消えたり現れたりするため、何かの謎解きを意味するようなスキャニメーション効果を得ることができる。また、その商品に関連するロゴ等を、同様の方法で見せることにより、顧客の興味をより一層強く惹きつけることができる。
なお、上記水玉模様21等の模様を化粧料18の上面に付与する方法としては、「地」の部分の化粧料18の色と異なる色味(前記の例では「地」の部分が肌色、水玉模様21がそれよりもやや濃いオレンジ色)の化粧料を用い、中皿17に充填された化粧料18の上面に、例えば静電スクリーン印刷によって、その模様を直接印刷する方法(特開2005−144935号公報等を参照)が好適である。
このようにして得られる化粧料容器は、すでに述べたように、この容器を手にとって、蓋体11の筋模様Pを見る目線の角度を変えるだけで、この筋模様Pから透けて見える化粧料18の上面模様(水玉模様21等)が動くように変化して見えるため、従来にない、強いインパクトを顧客に与えることができる。また、上記化粧料容器を複数個、その筋模様の並ぶ方向と化粧料容器の並ぶ方向とが一致する配置で通路沿いに並べて陳列しておけば、そばを通る顧客が、化粧料容器に対する目線の角度をつぎつぎと変えながら化粧料容器を見ることになるため、陳列された化粧料容器の模様がつぎつぎと変化するように見えて、高いアイキャッチ効果を奏する。
しかも、上記水玉模様21等の、スキャニメーション効果を得るための模様は、容器本体10に収容された化粧料18の上面に付与されているため、容器の蓋体11や容器本体10を量産しておき、最終工程において、容器本体10に収容する化粧料18の表面に特定の模様を付与するだけで、簡単に、スキャニメーション効果を奏する様々なデザインの化粧料容器を提供することができる。したがって、顧客ニーズに応じたデザインの化粧料容器を、低コストで、短期間で納品することができるという利点を有する。
なお、上記の例において、筋模様Pに対して変化する目線の最大角度を、60°として模様パターンを準備したが、その最大角度は、10〜90°とすることが好ましく、なかでも40〜90°とすることがより好ましく、45〜60°とすることが最適である。すなわち、目線の角度の変化が小さすぎると、筋模様Pを透かして動く領域の幅が狭くなるため、スキャニメーションの動作が小さくなって印象が弱くなるおそれがある。逆に、目線の角度の変化が大きすぎると、動く領域の幅が広いため、動きが早くなりすぎて模様の変化を捉えにくくなるおそれがある。
また、スキャニメーションによって変化させる模様パターンの数は、少なすぎると面白みに欠け、多ければ多いほど複雑な動きを表現することができる半面、筋模様Pで隠す領域幅も増えるため、限られた面積での表現では、模様が捉えにくくなるという問題がある。したがって、本発明においては、2〜10種類の模様パターンを変化させることが好ましく、なかでも4種類か5種類の模様パターンを変化させることが最も効果的である。
さらに、スキャニメーションを印象的に見せるには、蓋体11側の筋模様Pが形成された面(=蓋体11の上面)と水玉模様21等の模様が形成された面(=化粧料18の上面)との垂直距離(図4においてHで示す)も重要である。すなわち、上記垂直距離Hが短すぎると、模様の動き幅(図4におけるa1 、a2 等の幅)が小さいため模様の変化が乏しいものになるおそれがあり、逆に、上記垂直距離Hが長すぎると、模様の動き幅が大きく、変化が早すぎてその動きを捉えにくくなるおそれがある。また、その場合は、化粧料容器が上下方向に嵩張りすぎるため、その点においても好ましくない。したがって、上記垂直距離Hは、0.1〜20.0mmに設定することが好適であり、なかでも2.0〜7.0mmに設定することが最適である。
また、蓋体11に形成する筋模様Pは、不透明な線分(上記の例では白色ライン15)と、透明な線分とが交互に並んで形成されているが、図4に示すように、不透明な線分の幅Sと透明な部分の幅Tにおいて、不透明な線分の幅Sは、1.0〜5.0mmに設定することが好適であり、透明部分の幅Tは、0.3〜2.0mmに設定することが好適である。上記S、Tが大きすぎると、模様の変化に面白みがなくなるおそれがあり、逆にS、Tが小さすぎると、模様の変化を捉えにくくなるおそれがある。
そして、上記筋模様Pにおける不透明な線分は、白色である必要はなく、容器のデザインに応じた色を選択することができる。ただし、筋模様Pを透かして見せる模様の色とのバランスを考慮することが望ましい。
また、上記筋模様Pは、必ずしも蓋体11の上面に設ける必要はなく、場合によっては蓋体11の下面、すなわち容器本体10の上面と対峙する側の面に設けてもよい。ただし、その場合も、上記筋模様Pの形成面と、化粧料18の上面との垂直距離は、前述のとおり、0.1〜20.0mmに設定することが好適であり、なかでも2.0〜7.0mmに設定することが最適である。
さらに、上記の例では、蓋体11として、透明な樹脂成形体を用い、これに白色インクを印刷して筋模様Pを形成したが、透明な樹脂成形体の上面もしくは下面に、塗装や転写、金属蒸着等によって着色層を形成し、この層をレーザ照射等によって部分的に除去することによって、所定間隔で平行に並ぶ多数の透明な線分からなる筋模様Pを形成するようにしてもよい。この筋模様Pによっても、同様のスキャニメーション効果を奏することができる。
そして、上記の例では、容器本体10の凹部16内に、中皿17に化粧料18を充填して収容したが、凹部16内に、直接化粧料18を充填して収容したものであっても差し支えない。
また、上記の例は、本発明を、容器本体10と蓋体11とが後端部においてヒンジ連結され、蓋体11が前後に開閉するコンパクトタイプの化粧料容器に適用したものであるが、蓋体11を閉じた状態で、筋模様Pに対する目線の角度を変えることによってスキャニメーション効果が得られるものは、その目線の角度が変化する方向に沿って筋模様Pが移動した場合も、その筋模様Pを通して見える模様が変化する。したがって、目線の角度が変化する方向に蓋体11がスライド移動して開閉するよう構成された、スライドタイプの化粧料容器においては、目線の角度を変化させるだけでなく、蓋体11の開閉時にも、スキャニメーション効果を楽しむことができる。逆にいえば、スライドタイプの化粧料容器において、蓋体11の開閉によってスキャニメーション効果を奏するような工夫がなされたものは、必然的に、蓋体11を閉じた状態においても、目線の角度を変化させれば、同様のスキャニメーション効果が得られるようになっている。
本発明を、スライドタイプの化粧料容器に適用した一例を、図8に示す。図8(a)は、蓋体11が閉じた状態を示す斜視図であり、図8(b)は、蓋体11が途中まで開いた状態を示す斜視図である。この化粧料容器は、略板状の容器本体10に対し、略板状の蓋体11がスライド自在に取り付けられた構成になっており、それぞれの左右両側の側壁部に設けられたレール状の係合部(図示せず)によって、矢印Qで示すように蓋体11がスライドにより開閉して、容器本体10の上面を露出させることができるようになっている。
上記蓋体11は、全体が透明樹脂成形体からなり、その上面の、容器本体10側の化粧料18を覆う部分に、図1、図2に示す化粧料容器と同様の、左右方向に延びる平行な白色ライン15からなる筋模様Pが設けられている。また、上記容器本体10も、全体が透明樹脂成形体からなり、その上面の奥側に設けられた化粧料収容用の凹部16内に、中皿17に充填された化粧料18が収容されている。そして、上記凹部16の手前側には、化粧筆等の化粧用具を収容するための化粧用具用凹部20が形成されている。
そして、上記化粧料18の上面には、図1、図2に示す化粧料容器と同様の、化粧料18の肌色の地の上に、周囲が横縞模様になった淡いオレンジ色の水玉からなる水玉模様21が形成されている(図3参照)。なお、ただし、図8(a)、(b)において、蓋体11の透明部分から容器本体10側の水玉模様21の一部が透けて見えるが、その図示を省略している。
上記化粧料容器によれば、蓋体11を閉じた状態で、蓋体11の筋模様Pの透明部分を透かして、目線の角度を変えながら見ると、目線がずれるにしたがって、前記図1、図2に示す化粧料容器と同様、図5(a)〜(d)に示す4種類の模様パターンがこの順で、あるいはその逆の順で、繰り返し見えるようになっており、前記と同様のスキャニメーション効果を得ることができる。
しかも、上記化粧料容器では、蓋体11を前後方向にスライドさせて開閉するようになっているため、上記蓋体11を開くために後方にスライド移動させていくと、筋模様Pと、容器内側の水玉模様21との位置関係がずれて、筋模様Pに対する目線がずれていく場合と同様の、スキャニメーション効果を楽しむことができる。また、蓋11を閉じるために、再び前方にスライド移動させていくと、今度は逆動作で模様が変化するスキャニメーション効果を楽しむことができる。
したがって、上記化粧料容器によれば、蓋体11を閉じた状態で筋模様Pに対する目線の角度を変えたときだけでなく、蓋体11を開閉する際にも、模様の変化を見ることができる。
また、本発明において、スキャニメーション効果を得るための筋模様Pは、上記の例では、化粧料容器の左右方向に延びる白色ライン15が平行に並んだものであるが、筋模様Pを、化粧料容器の左右方向もしくは前後方向に対して傾斜させると、その目線の角度を変える方向もしくは上記のように蓋体11をスライドさせる方向に対して、筋模様Pの透明な部分と不透明な部分との入れ代わりのタイミングが緩やかになるため、スキャニメーション効果において、微妙な変化が捉えやすくなり、より滑らかな動きを演出することができる。
例えば、図8と同様の、スライドタイプの化粧料容器において、傾斜した筋模様Pを設けた例を図9に示す。この化粧料容器の、容器本体10内に収容された化粧料18の上面には、図9(a)に示すような、ヤツデの葉が重なったような模様35が付与されている。また、この化粧料容器の蓋体11には、図9(b)に示すように、化粧料容器の左右方向に対する傾斜角度θが88°に設定された筋模様Pが形成されている。それ以外の構成は、図8に示すものと同様であり、その説明を省略する。
なお、上記化粧料18の上面に付与された模様35は、上記傾斜した筋模様Pの透明部分を透かして見える4種類の模様パターンを組み合わせて同一面上に重ねて示したものであり、図6(e)に示す模様31の作り方と同様の考え方で作成されている。
この化粧料容器によれば、蓋体11を閉じた状態では、図9(c)に示すように、2枚の葉が見え、蓋体11を後方にスライド移動させていくにしたがって、図9(d)〜(f)に示すように、その位置が左側から右上に移っていき、しかもその大きさが小さくなっていくため、葉が左手前側から右上の奥側に向かって遠ざかっていくように見える。また、蓋体11を開いた状態から、手前にスライド移動させていくと、逆に、右上の小さな葉が、左側に大きくなりながら移動するため、右奥側から左手前側にぐっと接近してくるように見える。しかも、筋模様Pが傾斜しているため、その移り変わりが滑らかで、よりリアルに感じられる動きとなる。
また、この化粧料容器は、蓋体11を開閉しなくても、閉じた状態のまま容器を前後方向や左右方向、あるいはやや斜め方向に動かすと、模様35に対する目線の角度が動いて、葉が遠ざかったり接近したり、その枚数が増えたり減ったりするため、非常に興趣に富むものとなる。
さらに、上記の例と同様の、傾斜した筋模様Pを備えた化粧料容器であって、模様の異なる例を図10に示す。この例では、化粧料18の上面に、図10(a)に示すような、大小7個のアルファベットの文字からなる模様36が付与されており、蓋体11には、図10(b)に示すように、化粧料容器の左右方向に対する傾斜角度θが86°に設定された筋模様Pが形成されている。
上記化粧料18の上面に付与された模様36も、上記傾斜した筋模様Pの透明部分を透かして見える4種類の模様パターンを組み合わせて同一面上に重ねて示したものであり、図9(a)に示す模様35の作り方と同様の考え方で作成されている。
この化粧料容器によれば、蓋体11を閉じた状態では、図10(c)に示すように、「C」、「O」、「I」、「S」の4個の文字が見え、蓋体11を後方にスライド移動させていくにしたがって、図10(d)〜(f)に示すように、見えていた文字が消えたり現れたりする。また、蓋体11を開いた状態から、手前にスライド移動させていくと、逆の動きで文字が消えたり現れたりする。
したがって、これらの文字によって、何かの謎解きを意味するようなスキャニメーション効果を得ることができる。また、商品に関連するロゴ等を、上記のように見せることによって、顧客の興味を、さらに惹きつけることができる。しかも、図9に示す場合と同様、この化粧料容器は、蓋体11を開閉しなくても、閉じた状態のまま容器を動かすと、模様に対する目線の角度が動いて、文字が消えたり現れたりするため、非常に興趣に富むものとなる。
なお、これらの例のように、透かし模様として、斜めに傾斜した筋模様Pを用いる場合、その傾斜角度θ〔図9(b)、図10(b)を参照〕は、不透明な部分と透明な部分とが断続的に並ぶ方向(これらの例では、化粧料容器の左右方向)に対して、45〜135°、なかでも70〜110°に設定することが好適であり、さらに好ましくは80〜100°である。すなわち、上記筋模様Pの傾斜角度θが水平に近づきすぎる(傾きすぎる)と、動きが滑らかに見える効果が小さすぎて、傾斜をつける意味がなくなるおそれがある。ただし、傾斜角度θが垂直に近づきすぎると、スキャニメーションの効果が得られなくなるおそれがあり、注意を要する。
また、スキャニメーション効果を引き出すための透かし模様は、上記一連の例のように、化粧料容器に対して真っ直ぐに延びる筋模様Pや、斜め方向に延びる筋模様Pの他、不透明部分に対し透明部分が断続的に並ぶよう設定された透かし模様であれば、どのような模様であっても差し支えない。ただし、本発明のスキャニメーション効果を得るには、その断続的に並ぶ透明部分に位置決めされる化粧料上面の模様が、つぎつぎとずれることよって、異なる模様パターンが現出するよう設定されていなければならない。
筋模様P以外の透かし模様としては、例えば蓋体11の透明領域に不透明な点状部が規則的に並ぶものや、逆に蓋体11の不透明領域に透明な点状部が規則的に並ぶものがあげられる。その一例として、例えば、容器本体10に収容された化粧料18(図8参照)の上面に、図11(a)に示すような模様37が付与され、蓋体11(同じく図8参照)に、茶色の線が縦横に交差する格子状の透かし模様P′が付与されたものをあげることができる。
より詳しく説明すると、上記化粧料18の模様37は、図11(a)に示すように、白色のベースに、白色部分と茶色部分とが特定の配置で設けられた、大小7個のアルファベットの文字が表示された模様である。また、蓋体11の透かし模様P′は、図11(b)に示すように、透明樹脂成形体からなる蓋体11の上面に、茶色の着色層からなる格子状の不透明部38が形成され、その不透明な格子状の不透明部38の間に、規則的に並ぶ小さな正方形の透明部39が形成された形になっている。
この構成によれば、蓋体11側の透明部39に、化粧料18の模様37のうち文字の白い部分が位置決めされるか茶色い部分が位置決めされるかによって、模様が変化するようになっており、上記蓋体11を閉じて透かし模様P′と化粧料18の模様37とを重ねた状態では、図11(c)に示すように、「C」、「O」、「E」、「I」、「S」の5文字がはっきり見えるようになっている。
そして、上記化粧料18が収容された容器本体10の上面から、蓋体11を前後方向もしくは左右方向にスライド移動させることにより、文字の白い部分が蓋体11側の透明部39に完全に重なって文字が消失したり、文字の白い部分が格子状の茶色い線(不透明部38)と重なり、文字から白い部分が消えて濃い色に変化したりする。また、それらの変化は、蓋体11を閉じた状態のまま、容器上面に対する目線の角度を変えることによっても視認することができる。したがって、このような化粧料容器も、非常に興趣に富むものとなる。
ちなみに、図12(a)は、蓋体11を閉じた状態で、透かし模様P′を左上から斜めに見たときの見え方を示しており、図12(b)は、同じく右上から斜めに見たときの見え方を示している。さらに、図12(c)は、同じく左下から斜めに見たときの見え方を示しており、図12(d)は、同じく右下から斜めに見たときの見え方を示している。
なお、上記の例とは逆に、蓋体11の上面全体に不透明な着色層を形成し、その着色層を、レーザ照射等によって部分的に除去することにより透明な格子状部を作ることにより、図11(b)における透明部と不透明部とが反転した構成の透かし模様P′とすることもできる(図示を省略)。このような透かし模様P′によっても、上記の例と同様の効果を得ることができる。もちろん、断続的に配置される点状の透明部や不透明部は、必ずしも上記の例のように、格子に囲まれた正方形でなくてもよく、小さな円や、他の多角形等が並んだ形になっていても差し支えない。
また、上記一連の例では、蓋体11に付与される透かし模様P、P′として、比較的緻密な筋模様や格子状のものを用い、化粧料18の表面に付与される模様も、それに併せて細かく変化して見えるデザインになっているため、蓋体11に対する目線の角度を変えたり蓋体11をスライドさせたりする度に、蓋体11を通して見える化粧料18の表面模様が、錯視によってあたかも動くように見えて、スキャニメーション効果が得られるようになっている。しかし、本発明には、完全なスキャニメーション効果が得られるものに限らず、規則的に模様が変化して見えるようになっているものも含むことができる。すなわち、模様の変化を、錯視によってあたかも動くように見せることはできなくても、蓋体11を通して見える化粧料18の表面の色や模様が、見る角度や蓋体11の位置によって規則的に変化してつぎつぎと異なる印象を与えるようになっていれば、充分に視覚的なインパクトがあり、高いアイキャッチ効果を奏するからである。
そのような例として、例えば、図8に示すようなスライドタイプの化粧料容器において、より幅の太い筋状の透かし模様が設けられたものをあげることができる。その一例を図13に示す。このものは、基本的な構成は、図8に示すものと同様であるが、容器本体10を上から見た図13(a)に示すように、化粧料18の表面に、三色(オレンジ、ピンク、クリームイエロー)の帯状の模様部分40〜42が規則的に並んだ色模様50が付与されている。
また、その蓋体11は、これを上から見た図13(b)に示すように、その上面の略全面に、白色インクを用いたスクリーン印刷によって、白色の着色層43が形成されている。そして、この着色層43は、蓋体11を閉じた状態で、容器本体10側の色模様50のうち、オレンジ色の模様部分40と対峙する四つの帯状部分には形成されておらず、その四つの未着色部分が、図示のように、それぞれ左右方向に帯状に延びる透明領域44になっている。この透明領域44が、前記一連の例における透かし模様P、P′の役割を果たすのであり、蓋体11を閉じた状態で、これを上から見ると、各透明領域44から、容器内側の、オレンジ色の模様部分40による縞だけが見える。したがって、容器本体10に収容された化粧料18は、一見、オレンジ色だけの単色のもののように見える。
しかし、上記蓋体11を、図13(b)において矢印Rで示すように後方にスライド移動させていくと、上記透明領域44の下に位置決めされる色模様50の色が、オレンジ(模様部分40の色)→クリームイエロー(模様部分42の色)→ピンク(模様部分41の色)と順次変化していくため、蓋体11の透明領域44を通して見える化粧料18の色がつぎつぎと変化して異なる印象となり、興趣に富むものとなる。しかも、手前で引き出された化粧料18は、その表面に、オレンジ、ピンク、クリームイエローの三色の色模様50が付与されており、意外性を有している。
また、上記化粧料容器は、蓋体11を閉じた状態のままであっても、その蓋体11に対する目線を前後に動かすか、化粧料容器を手にとって前後に角度を付けるように動かすと、蓋体11をスライドさせたときと同じように、蓋体11の透明領域44から見える色模様50の色が変わり、あたかも内側の化粧料18の色が変化したかのように見えて、興味深いものとなっている。したがって、店頭において、顧客が手にとって見る際に、その色の変化を楽しむことができ、アイキャッチ効果が高い。また、人が容器を直接手にとらなくても、人が化粧料容器のそばを移動するだけで、蓋体11の透明領域44を通して見える容器内の化粧料18の色が変化するため、例えば、この化粧料容器を複数個、店頭において、蓋体11に対する目線が変化する方向と、化粧料容器の並ぶ方向とが一致するような配置で通路沿いに並べて陳列しておけば、そばを通る顧客が、化粧料容器に対する目線の角度をつぎつぎと変えながら化粧料容器を見ることになるため、陳列された化粧料容器から見える内側の色がつぎつぎと変化して見え、高いアイキャッチ効果を奏する。
なお、このように、スキャニメーションのように模様が動くような効果はないものの、蓋体11の開閉動作や目線の角度の変化によって、色や模様が規則的に変化するように見せるには、化粧料18の表面における色模様50の各縞の幅〔図13(a)においてWで示す〕と、蓋体11の透明領域44の幅〔図13(b)においてYで示す〕および配置を互いに関連付けて設定することが必要であり、上記の例では、三色の模様部分40〜42による各縞の幅と、透明領域44の幅を、ともに4mmに設定している。また、透明領域44の互いのピッチ〔図13(b)においてZで示す〕は、12mmに設定している。このピッチZは、幅4mmの、3種類の色の異なる縞を、蓋体11開閉時のスライド幅に応じて順次位置決めできるよう考慮したものである。
そして、上記色模様50の各縞の幅W(透明領域44の幅Yと等しく設定される)は、上記の例に限らず、1〜10mm、なかでも2〜6mmに設定することが好ましい。そして、縞模様として見せる色数(この例では、模様部分40〜42の三色)は、化粧料容器の大きさ等にもよるが、通常、2〜8種類、なかでも3〜5種類程度に設定することが好適である。また、上記透明領域44のピッチZは、W(=Y)×色数、として求められる。
また、上記縞模様の変化を効果的に見せるための、蓋体11側に設けられた透明領域44と、化粧料20の表面との垂直距離H(図4参照)は、前記スキャニメーション効果を得る場合と同様、通常、0.1〜20.0mmに設定することが好適であり、なかでも、目線の角度を変えて模様を変化させる効果をもたせるには、2.0〜7.0mmに設定することがとりわけ好適である。
さらに、上記色模様50の縞と、それを限定的に見せる透明領域44とを、蓋体11のスライド方向に対して斜めに傾斜させることもできる。例えば、基本的な構成は上記の例と同様の化粧料容器において、図14(a)に示すように、容器本体10の化粧料18の表面に付与された色模様50が、三色(オレンジ、ピンク、クリームイエロー)の模様部分40〜42が左下から右上に向かって斜め方向に延びた縞模様になっているものを準備する。また、この容器本体10に組み合わせられる蓋体11として、図14(b)に示すように、上記色模様50の斜めの縞模様に合わせて、斜めに延びる四つの透明領域44が形成されたものを準備する。なお、上記透明領域44を囲う着色層43は、色模様50の模様部分40と同じオレンジ色の着色層である。
上記容器本体10と蓋体11とを組み合わせた化粧料容器は、蓋体11を閉じた状態では、図14(c)に示すように、蓋体11の透明領域44に、色模様50のうちオレンジ色の模様部分40が位置決めされ、着色層43のオレンジ色と重なって、蓋体11と中味である化粧料18とがともにオレンジ色で統一されているように見える。そして、蓋体11をスライドさせて開くにしたがって、まず、透明領域44にオレンジ色の模様部分40とピンク色の模様部分41とが半分ずつ位置決めされると、図14(d)に示すように、ピンク色の化粧料とオレンジ色の化粧料とが細いストライプ状に嵌め込まれているかのように見える。つぎに、透明領域44にピンク色の模様部分41が完全に位置決めされると、図15(a)に示すように、化粧料18がピンク色の単色であるかのように見える。
そして、透明領域44に、今度はピンク色の模様部分41とクリームイエロー色の模様部分42とが半分ずつ位置決めされると、図15(b)に示すように、再び、ピンク色の化粧料とオレンジ色の化粧料とが細いストライプ状に嵌め込まれているかのように見え、さらに蓋体11をスライドさせると、図15(c)に示すように、完全にクリームイエロー色のストライプとなる。したがって、容器内側の化粧料18の色が、つぎつぎと変化するような印象を与え、興趣に富むものとなる。
そして、これらの変化は、規則的に繰り返し、しかも縞模様が左右に延びる場合に比べてゆっくりと変化するため、微妙な変化を視認することができる。そして、これらの変化は、前記の例と同様、化粧料容器を閉じた状態においても、蓋体11表面への目線を動かしたり容器自体を動かしたりすることによって、ある程度視認することができ、単なる化粧料容器とは異なる、目新しい印象を与えることができる。
また、上記の例では、色数が三色であるが、デザインによっては、二色であっても大きく変化したかのように見せることができる。例えば、基本的な構成は図14に示す例と同様の化粧料容器において、図16(a)に示すように、色模様50として、ピンク色の模様部分60とオレンジ色の模様部分61が斜めに延びる縞模様になったものを準備する。そして、蓋体11には、図16(b)に示すように、上記色模様50に合わせて斜めに延びる複数の透明領域を組み合わせたものを準備する。上記透明領域は、斜めに延びる四つの透明領域からなり、その全体の輪郭が円形に見える第1の透明領域44aと、同じく斜めに延びる四つの透明領域からなり、その全体の輪郭が円形に見える第2の透明領域44bとで構成されている。ただし、上記第1の透明領域44aと第2の透明領域44bとは、一部重なっており、その下に位置決めされる色模様50の縞模様の色が、互いに反対の色になるよう設定されている。43は、白色の着色層である。
上記容器本体10と蓋体11とを組み合わせた化粧料容器は、蓋体11を閉じると、図16(c)に示すように、蓋体11の第1の透明領域44aに、色模様50のうちオレンジ色の模様部分61が位置決めされ、第2の透明領域44bに、ピンク色の模様部分60が位置決めされるようになっている。したがって、この容器内側には、オレンジ色の化粧料とピンク色の化粧料とが並んで収容されているかのように見える。そして、蓋体11を後方にスライド移動させて少し開くと、まず、図16(d)に示すように、第1の透明領域44aと第2の透明領域44bのどちらにも、オレンジ色の模様部分61とピンク色の模様部分60とが半分ずつ位置決めされて、どちらも同じ二色の細い縞模様の円に見える。ただし、正確には、第1の透明領域44aにおける二色の配置と、第2の透明領域44bにおける二色の配置は、互いに左右反対になっている。
つぎに、蓋体11をより後方にスライド移動させると、図17(a)に示すように、第1の透明領域44aにピンク色の模様部分60が位置決めされ、第2の透明領域44bにオレンジ色の模様部分61が位置決めされる。したがって、当初見えていた二つの円の配色が、全く反対になり、その印象が大きく変化する。そして、さらに蓋体11を後方にスライド移動させると、図17(b)に示すように、再び、第1の透明領域44aと第2の透明領域44bのどちらにも、オレンジ色の模様部分61とピンク色の模様部分60とが半分ずつ位置決めされて、どちらも同じ二色の細い縞模様の円に見える。ただし、図16(d)の場合と色の配置が逆になっている。そして、図17(c)に示すように、第1の透明領域44aにオレンジ色の模様部分61が位置決めされ、第2の透明領域44bにピンク色の模様部分60が位置決めされて、図17(a)において見えていた二つの円の配色が、再び反対になり、その印象が大きく変化する
このように、上記の例では、色模様50が二色だけで構成されているにもかかわらず、蓋体11に設けられた二つの透明領域44a、44bを通して見える2つの円の色が、蓋体11の開度、目線の角度、あるいは化粧料容器を手に持った角度等によって様々な色合いに見えるため、アイキャッチ効果が高いものとなる。
また、上記一連の例では、上記化粧料18の上面に、直接、視覚的な効果を得るための特定の模様(図2に示す水玉模様21等)を付与したが、この構成では、化粧料18を未使用の状態でしか、その視覚的な効果を楽しむことができない。すなわち、化粧料18を使用し始めると、その上面の模様が崩れてしまうからである。
そこで、化粧料18の使用後もスキャニメーション等の視覚的な効果を楽しむために、例えば図18に示すように、化粧料18の上面に載置される透明保護シート70の上面に、スキャニメーション等の視覚的な効果を得るための、水玉模様21等の特定の模様を印刷するようにしてもよい。この構成によれば、化粧料18の使用、未使用に関係なく、蓋体11を閉じてさえいれば、いつでもどこでもスキャニメーション等の視覚的な効果を楽しむことができ、好適である。なお、上記透明保護シート70の下面側から特定の模様を印刷して、これを透明保護シート70の上面側から透かして見せるようにしても同様の効果が得られる。したがって、本発明において、「透明保護シートの上面に、特定の模様を付与する」とは、上記のように、透明保護シート70の下面側に模様を印刷等して、これを上面側から透かして見せる場合も含む趣旨である。
なお、図8等に示すように、化粧料容器がスライドタイプのものである場合は、模様が付与された透明保護シート70が、蓋体11のスライド動作によって化粧料18の上面からずれないように、凹部16内の化粧料18の上面が、凹部16の周囲よりも一段低く設定され、その一段低い部分において、透明保護シート70が動かないようになっていることが好ましい。
また、上記のように、透明保護シート70に模様を付与するのではなく、化粧料18に直接、その厚み方向全体に同じ模様を形成するようにしてもよい。このようにすると、繰り返し化粧料18を使用して化粧料18がすり減っても、スキャニメーション等の視覚的な効果を奏する模様が崩れないため、好適である。
そのような化粧料18自身による、厚み方向全体に同じ模様を形成する方法としては、例えば、(1)予め模様を形成するための、複数の、色の異なる化粧料片を、小さな板状に賦形しておき、これを並べて化粧料収容用の凹部(中皿17の凹部もしくは容器本体10内に直接収容する場合は凹部16)内に収容した後、上からプレスして固定する方法や、(2)凹部内を塞ぐ大きさの異なる複数の雄型を用意し、この雄型を、大きい方から順に凹部内に配置して、一層ずつ化粧料片材料の充填・固化を行う方法等があげられる。また、(3)流動性のある状態で各色の化粧料材料を、上記所定の色模様が形成されるよう仕切られた凹部内にそれぞれ充填した後、仕切りを除去して固化する方法を用いることもできる。なかでも、上記(1)の方法が、互いの境界面において形が崩れにくいことから好適である。
さらに、スキャニメーション等の視覚的な効果を得るための模様を付与する化粧料18の上面もしくは透明保護シート70の平面視形状は、上記の例のように、正方形等の矩形状(角部がRになっていてもよい。以下同じ)である必要はなく、三角形や五角形等の多角形状、円形状、楕円形状等、どのような形状であっても差し支えない。ただし、図8等に示す化粧料容器のように、蓋体11をスライドさせてスキャニメーション等の視覚的な効果を得る場合、化粧小物の収容部を容器手前側に設ける等の構成により、容器がスライド方向に長くなっていると、蓋体11のスライド距離が長くなって、その視覚的な効果を長く見せることができ、好適である。また、蓋体11がスライドするか否かに関わらず、色や模様の変化を見せるのに充分な広さの面を確保して、その視覚的な効果を見やすくするには、その平面視形状が矩形状の場合、縦35〜70mm×横35〜130mmであることが好ましい。また、同じく多角形状や、円形状、楕円形状等の場合、その最大幅が35〜80mmであることが好ましい。
また、スキャニメーション等の視覚的な効果を得るための模様を化粧料18の上面に付与する場合、その化粧料18の上面は、平坦であっても、凹凸による立体模様が付与されたものであってもよい。視覚的な効果を得るための模様と立体模様とを組み合わせるには、例えば型押し打型によって化粧料18の上面に立体模様を付与した後、その凹凸面に静電印刷を付与する等の方法を用いることができる。
さらに、本発明において、蓋体11の透明部分の表面や裏面に凹凸を形成するようにしてもよい。凹凸の形成によって、その部分を透かして見える模様が、より複雑な見え方をして、より興趣に富む視覚的な効果が得られるからである。
なお、本発明において、容器本体10の色と、蓋体11に設けられ不透明部の色とを、同じ色に揃えると、透かし模様を通して見える模様部分が、周囲から視覚的に限定され、際立った形で見えるため、印象が強いものとなって好適である。また、同様に、化粧料18の上面や透明保護シート70の上面に付与される模様を構成する色のうち、その模様に占める面積の割合が最も大きい色と容器本体10の色とを同じ色に揃えた場合も、模様の変化の見え方が際立ったものとなって好適である。
また、スキャニメーション等の視覚的な効果を得るために、特定の模様を付与した透明保護シート70を用いる場合、単に、その模様の視覚的な変化を見せるだけでなく、その下の化粧料18の上面にも、第2の特定の模様を付与し、その第2の特定の模様と透明保護シート70の模様とが組み合わさった複雑な模様を、蓋体11の透かし模様から見せるようにしてもよい。この構成によれば、化粧料18を使用していない段階では、上記特殊な組み合わせ模様の視覚的な変化を楽しむことができ、化粧料18の使用によってその上面に付与された第2の特定の模様が消失していくにつれて、透明保護シート70の模様との組み合わせ模様の見え方が変化するため、経時的に、その視覚的な効果も変化する。そして、最終的には、透明保護シート70の模様単独による視覚的な効果が得られるようになる。したがって、長期間にわたって、組み合わせられる模様の変化に伴って異なる見え方となる、興味深い視覚的な効果を得ることができる。
そして、本発明の化粧料容器は、コンパクトケースタイプの容器やスライドタイプの容器に限るものではなく、例えば広口容器等において、ねじ係合によって蓋体を開閉するものであっても差し支えない。すなわち、このような容器であっても、蓋体に対する目線の角度を変えれば一定のスキャニメーション等の視覚的な効果が得られるからである。
ただし、上記化粧料容器内に収容される化粧料は、その上面にスキャニメーション等の視覚的な効果を得るための特定の模様を付与することができるか、あるいはその上に透明保護シートを載置することができるものでなければならないため、一定の固さが必要である。したがって、このような化粧料としては、ファンデーションやフェイスカラー等、粉末タイプの化粧料であるか、容器への充填温度で溶融して流動性を有し冷却によって固化する油性化粧料であることが好適である。