本発明のサイズ剤用分散剤は、エンドキャッピング剤により、分子末端がキャッピングされているポリアミノポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂(以下、分子末端封止PAEと称する場合がある。)を、含んでいる。
分子末端封止PAEは、例えば、ポリアミノポリアミド樹脂と、エンドキャッピング剤と、エピクロロヒドリンとの反応により、得ることができる。
より具体的には、分子末端封止PAEを得るには、例えば、まず、ポリアミノポリアミド樹脂を合成する。
ポリアミノポリアミド樹脂は、特に制限されないが、例えば、ポリアルキレンポリアミンと、ジカルボン酸および/またはその誘導体との脱水縮合反応により、得ることができる。
ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジアミノジプロピルアミン(イミノビスプロピルアミン)などが挙げられる。
これらポリアルキレンポリアミンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリアルキレンポリアミンとして、好ましくは、ジエチレントリアミンが挙げられる。
また、この方法では、必要により、モノアルキレンジアミンを併用することができる。
モノアルキレンジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。
これらモノアルキレンジアミンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
なお、ポリアルキレンポリアミンとモノアルキレンジアミンとを併用する場合、それらの配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
ジカルボン酸および/またはその誘導体としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのジカルボン酸、および、それらジカルボン酸の無水物、さらには、ジカルボン酸のエステル化物などが挙げられる。
これらジカルボン酸および/またはその誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ジカルボン酸および/またはその誘導体として、好ましくは、ジカルボン酸(非誘導体)、より好ましくは、アジピン酸が挙げられる。
ポリアルキレンポリアミンと、ジカルボン酸および/またはその誘導体との配合割合は、それらの総量100モルに対して、ポリアルキレンポリアミンが、例えば、20モル以上、好ましくは、40モル以上であり、例えば、80モル以下、好ましくは、60モル以下である。また、ジカルボン酸および/またはその誘導体が、例えば、20モル以上、好ましくは、40モル以上であり、例えば、80モル以下、好ましくは、60モル以下である。
ポリアルキレンポリアミンとジカルボン酸および/またはその誘導体との配合割合が上記範囲であれば、良好にサイズ剤を分散させることができ、また、作業性に優れる粘度のポリアミノポリアミド樹脂を得ることができる。
また、ポリアルキレンポリアミンと、ジカルボン酸および/またはその誘導体との反応条件は、反応温度が、例えば、110℃以上、好ましくは、140℃以上であり、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、2時間以上であり、例えば、12時間以下、好ましくは、6時間以下である。
これにより、ポリアミノポリアミド樹脂を得ることができる。
得られるポリアミノポリアミド樹脂の数平均分子量(計算値)は、例えば、200以上、好ましくは、500以上であり、例えば、10000以下、好ましくは、5000以下である。
なお、ポリアミノポリアミド樹脂の数平均分子量(計算値)は、原料の仕込み量から算出することができる。
次いで、この方法では、ポリアミノポリアミド樹脂の分子末端の1級アミノ基と、エンドキャッピング剤とを反応させ、ポリアミノポリアミド樹脂の分子末端をキャッピングする。
エンドキャッピング剤は、1価の芳香族カルボン酸および/または1価の芳香脂肪族カルボン酸を含んでいる。
1価の芳香族カルボン酸としては、例えば、炭素数6以上20以下の芳香環を有する芳香族カルボン酸が挙げられ、より具体的には、安息香酸(芳香環の炭素数:6)、ナフタレンカルボン酸(芳香環の炭素数:10)、アントラセンカルボン酸(芳香環の炭素数:14)などの芳香族モノカルボン酸が挙げられる。これら1価の芳香族カルボン酸は、単独使用または2種類以上併用することができる。
1価の芳香脂肪族カルボン酸としては、例えば、炭素数6以上20以下の芳香環と、その芳香環に結合する炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基とを有する1価の芳香脂肪族カルボン酸が挙げられ、より具体的には、フェニル酢酸(芳香環の炭素数:6、脂肪族炭化水素基の炭素数:1)、フェニルプロピオン酸(芳香環の炭素数:6、脂肪族炭化水素基の炭素数:2)、フェニルデカン酸(芳香環の炭素数:6、脂肪族炭化水素基の炭素数:10)などの芳香脂肪族モノカルボン酸などが挙げられる。これら1価の芳香脂肪族カルボン酸は、単独使用または2種類以上併用することができる。
また、1価の芳香族カルボン酸および/または1価の芳香脂肪族カルボン酸は、置換基を有していてもよい。
置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子などが挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えば、臭素、塩素、フッ素、ヨウ素などが挙げられる。
なお、置換基が複数置換する場合には、各置換基は、互いに同一であっても、それぞれ異なっていてもよい。また、各置換基の置換位は、特に制限されず、適宜の位置とすることができる。
1価の芳香族カルボン酸および/または1価の芳香脂肪族カルボン酸として、好ましくは、1価の芳香族カルボン酸が挙げられ、より好ましくは、置換基を有していてもよい安息香酸、さらに好ましくは、置換基を有していない安息香酸が挙げられる。
これらを用いることにより、優れた分散性を確保するとともに、保存安定性の向上を図ることができる。
また、エンドキャッピング剤は、保存安定性の向上を図る観点から、好ましくは、さらに、1価の脂肪族カルボン酸を含んでいる。
1価の脂肪族カルボン酸としては、例えば、炭素数6以上22以下の炭化水素基を有する脂肪族カルボン酸などが挙げられ、より具体的には、ラウリン酸(炭化水素基の炭素数:11)、ステアリン酸(炭化水素基の炭素数:17)、オレイン酸(炭化水素基の炭素数:17)、ベヘニン酸(炭化水素基の炭素数:21)などが挙げられる。
これら1価の脂肪族カルボン酸は、単独使用または2種類以上併用することができる。
また、1価の脂肪族カルボン酸は、上記の置換基を有していてもよい。
なお、置換基が複数置換する場合には、各置換基は、互いに同一であっても、それぞれ異なっていてもよい。また、各置換基の置換位は、特に制限されず、適宜の位置とすることができる。
1価の脂肪族カルボン酸として、好ましくは、ステアリン酸、ラウリン酸が挙げられ、より好ましくは、ステアリン酸が挙げられる。
すなわち、エンドキャッピング剤として、とりわけ好ましくは、置換基を有していない安息香酸と、ステアリン酸との併用が挙げられる。
エンドキャッピング剤が、1価の芳香族カルボン酸および/または1価の芳香脂肪族カルボン酸と、1価の脂肪族カルボン酸とを含有する場合、その含有量は、1価の芳香族カルボン酸および/または1価の芳香脂肪族カルボン酸の含有量100モルに対して、1価の脂肪族カルボン酸が、例えば、5モル以上、好ましくは、10モル以上であり、例えば、2000モル以下、好ましくは、1000モル以下である。
1価の芳香族カルボン酸および/または1価の芳香脂肪族カルボン酸と、1価の脂肪族カルボン酸との含有量が上記範囲であれば、より優れた保存安定性を確保することができる。
エンドキャッピング剤の配合割合は、ポリアミノポリアミド樹脂の原料成分であるポリアルキレンポリアミン100モルに対して、エンドキャッピング剤が、例えば、1.0モル以上、好ましくは、2.0モル以上であり、例えば、60モル以下、好ましくは、40モル以下である。
また、ポリアミノポリアミド樹脂の分子末端の1級アミノ基100モルに対して、エンドキャッピング剤が、例えば、2.0モル以上、好ましくは、4.0モル以上であり、例えば、70モル以下、好ましくは、50モル以下である。
ポリアミノポリアミド樹脂と、エンドキャッピング剤との反応条件は、反応温度が、例えば、110℃以上、好ましくは、140℃以上であり、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、2時間以上であり、例えば、12時間以下、好ましくは、6時間以下である。これにより、分子末端が封止されたポリアミノポリアミド樹脂(以下、分子末端封止PAと称する場合がある。)が得られる。
次いで、この方法では、必要により、得られた分子末端封止PAを、水で希釈し、分子末端封止PAの水溶液または水分散液を得る。
分子末端封止PAの固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、60質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
その後、この方法では、分子末端封止PAの分子鎖における途中部分(すなわち、非末端部分)の2級アミノ基に対して、エピクロロヒドリンを、付加反応させる。
分子末端封止PAと、エピクロロヒドリンとの配合割合は、ポリアミノポリアミド樹脂の原料成分であるポリアルキレンポリアミン100モルに対して、エピクロロヒドリンが、例えば、50モル以上、好ましくは、80モル以上であり、例えば、200モル以下、好ましくは、140モル以下である。
分子末端封止PAとエピクロロヒドリンとの反応条件は、反応温度が、例えば、30℃以上、好ましくは、40℃以上であり、例えば、80℃以下、好ましくは、70℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上であり、例えば、10時間以下、好ましくは、6時間以下である。これにより、分子末端封止PAEを得ることができる。
また、この方法では、必要により、分子末端封止PAEを加熱し、架橋反応(エピクロロヒドリンの架橋反応)させることができる。
架橋反応における反応条件は、反応温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、90℃以下、好ましくは、80℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、例えば、10時間以下、好ましくは、6時間以下である。
また、上記の架橋反応においては、必要に応じて、架橋剤を配合することができる。
架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
これら架橋剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
架橋剤の配合割合は、目的および用途により、適宜設定される。
このように架橋させることにより、より効率よくサイズ効果を発現させることができる。
また、この方法では、4級カチオン密度を向上させ、これによって、サイズ剤(後述)をパルプ繊維に対して抄紙pHに依存することなく定着させるため、必要により、分子末端封止PAEに含有される3級アミノ基を、4級化処理することもできる。
4級化処理では、例えば、上記のエピクロロヒドリンとともに、4級化剤を添加し、上記条件で反応させる。
4級化剤としては、例えば、硫酸ジメチル、炭酸ジメチル、塩化メチル、塩化アリル、塩化ベンジル、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、エピブロモヒドリン、エチレンクロルヒドリン、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシドール、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。
これら4級化剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
4級化剤として、好ましくは、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。
4級化剤の配合割合は、ポリアミノポリアミド樹脂の原料成分であるポリアルキレンポリアミン100モルに対して、例えば、0モルを超過し、好ましくは、5モル以上であり、例えば、100モル以下、好ましくは、50モル以下である。
4級化剤の配合割合が上記範囲であれば、コスト性および効率よく、4級化処理することができる。
また、この方法では、必要に応じて、酸を添加することにより、反応液のpHを2〜6程度に調整することができる。酸としては、特に制限されないが、例えば、硫酸、塩酸などの無機酸、例えば、ギ酸、酢酸などの有機酸などが挙げられる。
このような方法において、分子末端封止PAEは、例えば、水溶液または水分散液として得られ、その固形分濃度は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
また、得られる分子末端封止PAEの水溶液または水分散液の、28質量%における粘度(25℃)は、例えば、50mPa・s以上、好ましくは、100mPa・s以上であり、例えば、500mPa・s以下、好ましくは、300mPa・s以下である。
粘度が上記範囲であれば、優れた分散性を得ることができ、また、ゲル化を抑制することができる。
なお、粘度は、JISZ8803に準拠して測定することができる。
また、分子末端封止PAEのカチオン度(pH7)は、例えば、1.0meq/g以上、好ましくは、2.0meq/g以上である。
カチオン度が上記範囲であれば、サイズ剤(後述)のパルプ繊維への定着性を向上させることができ、より優れたサイズ効果を発現することができる。
なお、カチオン度は、粒子電荷計などにより測定することができる。
上記した説明では、ポリアルキレンポリアミンと、ジカルボン酸および/またはその誘導体との反応によりポリアミノポリアミド樹脂を合成し、次いで、ポリアミノポリアミド樹脂の分子末端を、エンドキャッピング剤によりキャッピングしたが、反応順序は特に限定されず、例えば、ポリアミノポリアミド樹脂の合成前に、その原料成分(ポリアルキレンポリアミン、ジカルボン酸および/またはその誘導体)とエンドキャッピング剤とを予め反応させておいてもよく、さらには、ポリアルキレンポリアミンと、ジカルボン酸および/またはその誘導体との反応時に、エンドキャッピング剤を同時に反応させてもよい。
また、上記した説明では、ポリアミノポリアミド樹脂の分子末端を、エンドキャッピング剤によりキャッピングした後、エピクロロヒドリンを付加反応させることにより、分子末端封止PAEを合成したが、例えば、まず、ポリアミノポリアミド樹脂に、エピクロロヒドリンを付加反応させ、その後、得られたポリアミノポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂の分子末端を、エンドキャッピング剤によりキャッピングすることもできる。さらに、例えば、ポリアミノポリアミド樹脂と、エピクロロヒドリンと、エンドキャッピング剤とを、同時に反応させることもできる。
そして、このようなサイズ剤用分散剤は、ポリアミノポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂の分子末端が1価の芳香族カルボン酸および/または1価の芳香脂肪族カルボン酸を含むエンドキャッピング剤によりキャッピングされているため、優れたサイズ効果を発現するサイズ剤組成物を得ることができる。
また、サイズ剤用分散剤は、サイズ効果をより良好に発現させる観点から、好ましくは、分子末端封止PAEの他、さらに、カチオン系ポリマーを含み、とりわけ好ましくは、サイズ剤用分散剤は、上記の分子末端封止PAEと、カチオン系ポリマーとからなる。
カチオン系ポリマーとして、具体的には、例えば、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、アルキレンイミン変性ポリアノドポリアミド樹脂、ジエチルアミンエピクロロヒドリン樹脂、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドのホモポリマー、ポリアミノポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂(分子末端がキャッピングされていないポリアミノポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂)、カチオン澱粉などが挙げられる。
これらカチオン系ポリマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
カチオン系ポリマーとして、好ましくは、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミンが挙げられ、より好ましくは、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミンが挙げられ、さらに好ましくは、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。
カチオン系ポリマーとしてこれらを用いることにより、より優れたサイズ効果を発現するサイズ剤組成物を得ることができる。
カチオン系ポリマーの数平均分子量は、例えば、500以上、好ましくは、1000以上であり、例えば、100万以下、好ましくは、60万以下である。
カチオン系ポリマーの数平均分子量が上記範囲であれば、優れたカチオン密度を維持できるとともに、過度に粘度が高くなることを抑制することができる。
なお、数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィにより求めることができる。
また、サイズ剤用分散剤がカチオン系ポリマーを含有する場合、その含有量は、分子末端封止PAE100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、例えば、200質量部以下、好ましくは、180質量部以下である。
カチオン系ポリマーの含有量が上記範囲であれば、優れたカチオン密度を維持できるとともに、過度に粘度が高くなることを抑制することができ、また、優れた分散性を確保することができる。
また、カチオン系ポリマーは、例えば、予め上記の分子末端封止PAEと混合され、サイズ剤用分散剤として調製されていてもよく、また、例えば、サイズ剤用分散剤の使用時において、上記の分子末端封止PAEと同時に添加されてもよい。
なお、上記したサイズ剤用分散剤は、サイズ剤を分散させるために用いられる、紙とは独立した単独の薬剤であって、紙に含まれた状態は排除される。
そして、このようなサイズ剤用分散剤は、ロジン系サイズ剤を含むサイズ剤組成物の調製において、好適に用いられる。
より具体的には、サイズ剤組成物は、例えば、上記のサイズ剤用分散剤と、ロジン系サイズ剤とを含有しており、好ましくは、上記のサイズ剤用分散剤と、ロジン系サイズ剤とからなる。
ロジン系サイズ剤としては、例えば、ロジン類、ロジン誘導体などのロジン系樹脂が挙げられる。
ロジン類は、トールロジン、ガムロジン、ウッドロジンであり、また、不均斉化ロジン、重合ロジン、水素化ロジン、あるいは、その他の化学的に修飾されたロジン、またはこれらの精製物を含む概念である。
また、ロジン誘導体としては、ロジンエステル類、不飽和カルボン酸変性ロジン類、不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類、あるいは、ロジン変性フェノール類、ロジン類や不飽和カルボン酸で変性したロジン類のカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール類などが挙げられる。
ロジンエステル類は、例えば、上記したロジン類と多価アルコールとを、公知のエステル化法により反応させることによって、得ることができる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリエチロールエタンなどの3価アルコール、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの4価アルコール、例えば、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−イソブチルジエタノールアミン、N−ノルマルブチルジエタノールアミンなどのアミノアルコールなどが挙げられる。これら多価アルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
ロジン類と多価アルコール類との配合割合は、ロジン類のカルボキシル基に対する、多価アルコールの水酸基のモル比(OH/COOH)が、例えば、0.2〜1.2である。また、ロジン類と多価アルコール類との反応では、反応温度が、例えば、150〜300℃であり、反応時間が、例えば、2〜30時間である。また、この反応では、必要に応じて公知の触媒を適宜の割合で配合することもできる。
不飽和カルボン酸変性ロジン類は、例えば、上記したロジン類にα,β−不飽和カルボン酸類を公知の方法により反応させることによって、得ることができる。
α,β−不飽和カルボン酸類としては、例えば、α,β−不飽和カルボン酸、および、その酸無水物などが挙げられ、具体的には、例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。これらα,β−不飽和カルボン酸類は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ロジン類とα,β−不飽和カルボン酸類との配合割合は、ロジン類1モルに対して、α,β−不飽和カルボン酸類が、例えば、1モル以下である。また、ロジン類とα,β−不飽和カルボン酸類との反応では、反応温度が、例えば、150〜300℃であり、反応時間が、例えば、1〜24時間である。また、この反応では、必要に応じて公知の触媒を適宜の割合で配合することもできる。
不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類は、例えば、上記したロジン類に、上記した多価アルコール類、および、上記したα,β−不飽和カルボン酸類を順次または同時に反応させることにより、得ることができる。
上記成分を順次反応させる場合は、まず、ロジン類と多価アルコールとを反応させ、その後、α,β−不飽和カルボン酸類を反応させるか、または、まず、ロジン類とα,β−不飽和カルボン酸類とを反応させ、その後、多価アルコールを反応させる。ロジン類と多価アルコールとのエステル化反応や、ロジン類とα,β−不飽和カルボン酸類との変性反応における反応条件は、上記と同様とすることができる。
また、ロジン誘導体としては、さらに、ロジンのアミド化合物、ロジンのアミン塩などが挙げられる。
ロジンのアミド化合物は、例えば、上記したロジン類と、アミド化剤とを反応させることによって、得ることができる。
アミド化剤としては、例えば、1級および/または2級ポリアミン化合物、ポリオキサゾリン化合物、ポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
1級および/または2級ポリアミン化合物は、1分子中に1級および/または2級アミノ基を2つ以上含有する化合物であって、ロジン類に含有されるカルボキシル基との縮合反応により、ロジンをアミド化することができる。このようなポリアミン化合物として、具体的には、例えば、エチレンジアミン、N−エチルアミノエチルアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エ−テル、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、1,3−ビス(3−アミノプロポキシ)−2,2−ジメチルプロパン、1,4−ジアミノブタン、ラウリルアミノプロピルアミンなどの鎖状ジアミン類、例えば、2−アミノメチルピペリジン、4−アミノメチルピペリジン、1,3−ジ(4−ピペリジル)−プロパン、ホモピペラジンなどの環状ジアミン類、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミンなどのポリアミン類、さらには、これらのハロゲン化水素酸塩などが挙げられる。
これら1級および/または2級ポリアミン化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリオキサゾリン化合物は、1分子中にポリオキサゾリン環を2つ以上含有する化合物であって、ロジン類に含有されるカルボキシル基との付加反応により、ロジンをアミド化することができる。このようなポリオキサゾリン化合物としては、例えば、2,2’−(1,3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)などが挙げられる。
これらポリオキサゾリン化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリイソシアネート化合物は、1分子中にイソシアネート基を2つ以上含有する化合物であって、ロジン類に含有されるカルボキシル基との付加縮合脱炭酸反応により、ロジンをアミド化することができる。このようなポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ジイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート(2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)、フェニレンジイソシアネート(m−、p−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’−、2,4’−または2,2’−ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)、4,4’−トルイジンジイソシアネートなど)、芳香脂肪族ジイソシアネート(例えば、キシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)など)、脂肪族ジイソシアネート(例えば、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなど)、脂環族ジイソシアネート(例えば、シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロジイソシアネート)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどのジイソシアネート、さらには、これらの誘導体(例えば、多量体、ポリオール付加体など)などが挙げられる。
これらポリイソシアネート化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
また、これらアミド化剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ロジン類とアミド化剤との配合割合は、ロジン類のカルボキシル基に対する、アミド化剤の活性基(1級および/または2級アミノ基、ポリオキサゾリン環、イソシアネート基)のモル比(OH/活性基)が、例えば、0.2〜1.2である。また、ロジン類と多価アルコール類との反応では、反応温度が、例えば、120〜300℃であり、反応時間が、例えば、2〜30時間である。また、この反応では、必要に応じて公知の触媒を適宜の割合で配合することもできる。
ロジンのアミン塩は、ロジン類に含有されるカルボキシル基を、3級アミン化合物で中和することにより、得ることができる。
3級アミン化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのトリC1−4アルキルアミン、例えば、モルホリンなどの複素環式アミンなどが挙げられる。
これら3級アミン化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
また、これらロジン系サイズ剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
そして、サイズ剤組成物は、上記のサイズ剤用分散剤を用いて、ロジン系サイズ剤(ロジン系樹脂)を水分散させることによって、ロジンエマルションとして得ることができる。
より具体的には、サイズ剤組成物は、例えば、溶剤型乳化法、無溶剤型乳化法、転相乳化法、あるいはその他の公知の乳化法により製造される。
乳化法は、特に制限されないが、例えば、特開2008−303269の段落番号[0024]〜[0025]に記載の方法に準拠することができる。
具体的には、例えば、溶剤型乳化法では、まず、ロジン系サイズ剤を、例えば、メチレンクロライドなどの塩素系炭化水素溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、メチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、その他ロジン系サイズ剤を溶解可能な溶剤などの有機溶剤に溶解させ、ロジン系サイズ剤溶液を得る。次いで、別途、サイズ剤用分散剤および水を混合および溶解させた分散液を用意し、その分散液と上記のロジン系サイズ剤溶液とを予備混合して、粗粒子の水性エマルション(予備乳化物)を調製する。その後、得られた水性エマルションを、各種ミキサー、コロイドミル、高圧乳化機、高圧吐出型乳化機、高剪断型乳化分散機などを用いて微細乳化した後、常圧または減圧下で加熱しながら、有機溶剤を除去する。
また、無溶剤乳化法では、例えば、常圧または加圧下で、溶融したロジン系サイズ剤と分散液とを予備混合し、粗粒子の水性エマルションを調製した後、各種乳化機を用いて上記と同様に微細乳化させる。
また、転相乳化法では、常圧または加圧下でロジン系サイズ剤を加熱溶融した後、撹拌しながら分散液を徐々に加えることにより、まず、油中水型エマルションを得た後、その水中油型エマルションに相反転させる。なお、この方法は、溶剤法、無溶剤法いずれの方法でも採用することができる。
また、この方法では、必要に応じて、その他の分散剤(上記のサイズ剤用分散剤を除く分散剤)を用いることができる。
その他の分散剤として、具体的には、カチオン性分散剤、ノニオン性分散剤、両性分散剤、合成高分子系分散剤などが挙げられる。
カチオン性分散剤としては、例えば、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウム、塩化アルキルピリジニウムなどが挙げられる。
ノニオン性分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキル(またはアルケニル)エーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレエートなどのソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどのポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエートなどのポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル類、オレイン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマーなどが挙げられる。
両性分散剤としては、例えば、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとアルキルアミンまたはジアミンとの生成縮合物の硫酸化、あるいはスルホン酸化付加物などが挙げられる。
合成高分子系分散剤としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸エステル類、アクリルアマイド、酢酸ビニル、スチレンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などの重合性モノマーを2種以上重合させて得られる重合体を水に分散または可溶化させた水分散性重合体や、スチレン類と、アクリル酸またはメタクリル酸のアミノアルキルエステルとを共重合反応させ、カチオン化処理した水分散性または水溶性重合体などが挙げられる。
これらその他の分散剤(サイズ剤用分散剤を除く分散剤)は、単独使用または2種類以上併用することができる。
また、その他の分散剤(サイズ剤用分散剤を除く分散剤)との配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
このようにして得られるサイズ剤組成物(ロジンエマルション)において、ロジン系サイズ剤の固形分濃度は、例えば、30質量%以上、好ましくは、35質量%以上であり、例えば、55質量%以下、好ましくは、50質量%以下である。また、サイズ剤用分散剤の固形分濃度は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
また、ロジン系サイズ剤とサイズ剤用分散剤との配合割合は、ロジン系サイズ剤100質量部に対して、サイズ剤用分散剤の固形分が、例えば、3質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下である。
また、得られるサイズ剤組成物(ロジンエマルション)の平均粒子径は、例えば、0.3μm以上、好ましくは、0.4μm以上であり、例えば、2.0μm以下、好ましくは、1.5μm以下である。
なお、平均粒子径は、粒度分布計などにより測定することができる。
平均粒子径が上記範囲であれば、優れた発泡性、カチオン密度および保存安定性を得ることができる。
また、サイズ剤組成物には、必要により、添加剤を配合することができる。
添加剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩基性塩化アルミニウムなどの無機凝集剤などが挙げられる。
これら添加剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
添加剤として、好ましくは、無機凝集剤、より好ましくは、硫酸アルミニウムが挙げられる。
添加剤の配合割合は、サイズ剤組成物の固形分の総量100質量部に対して、例えば、0質量部を超過、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
添加剤の配合割合が上記範囲であれば、コスト性よく、サイズ効果の向上を図ることができる。
このような添加剤は、例えば、予め上記のサイズ剤用分散剤およびロジン系サイズ剤と混合され、サイズ剤組成物として調製されていてもよく、また、例えば、サイズ剤組成物の使用時において、上記のサイズ剤用分散剤およびロジン系サイズ剤と同時に添加されてもよい。
なお、上記したサイズ剤組成物は、紙とは独立した単独の薬剤であって、紙に含まれた状態は排除される。
そして、このようなサイズ剤組成物は、上記のサイズ剤用分散剤が用いられているため、優れたサイズ効果を発現することができ、紙に優れた耐水性を付与することができる。
そのため、上記のサイズ剤組成物は、紙の製造において、好適に用いられる。
紙の製造方法としては、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。
より具体的には、例えば、上記のサイズ剤組成物を、パルプスラリーに添加し、抄紙することにより、紙を得ることができる。また、例えば、パルプスラリーから抄紙により得られた紙(未処理の紙)に、上記のサイズ剤組成物を塗布および乾燥させることにより、サイズ剤組成物により処理された紙を得ることもできる。
このような紙は、上記のサイズ剤組成物を用いて得られるため、耐水性に優れる。
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下に示す実施例の数値は、実施形態において記載される数値(すなわち、上限値または下限値)に代替することができる。
<サイズ剤用分散剤>
実施例1
攪拌機、温度計、環流冷却器、分水器および窒素ガス導入管を具備した4つ口フラスコに、ジエチレントリアミン344部(3.34mol)、アジピン酸370部(2.53mol)を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、徐々に昇温させ、150〜160℃で3時間脱水縮合反応させ、ポリアミノポリアミド樹脂を得た。ポリアミノポリアミド樹脂の数平均分子量(計算値)は、523であった。
続いて、安息香酸80部(0.65mol)を添加し、160〜170℃で4時間脱水縮合反応させ、温水で希釈して30%の安息香酸導入ポリアミノポリアミド(分子末端封止PA)水溶液を得た。
次いで、攪拌機、温度計、環流冷却器、分水器および窒素ガス導入管を具備した4つ口フラスコに、30%の安息香酸導入ポリアミノポリアミド水溶液2490部を仕込み、撹拌しながら40℃でエピクロロヒドリン432部(4.67mol)を30分かけて滴下しながら加え、30分間放置した。
その後、温水を加え28%に希釈した後、60℃で3時間架橋反応させ、粘度が50mPa・s(60℃)以上となった時点で、10%硫酸でpH3以下に調整し、固形分濃度28.0%、粘度150mPa・s(25℃)、カチオン度2.1meq/g(pH7)の分子末端封止PAE(乳化分散剤)を得た。
なお、粘度はJIS Z 8803に準拠して測定し、また、カチオン度は、粒子電荷計(型番:PCD−04、BTG社製)により測定した。
実施例2
攪拌機、温度計、環流冷却器、分水器および窒素ガス導入管を具備した4つ口フラスコに、ジエチレントリアミン344部(3.34mol)、アジピン酸407部(2.79mol)を仕込み、フラスコ内を窒素雰囲気とした後、徐々に昇温させ、150〜160℃で3時間脱水縮合反応させた。
続いて、安息香酸40部(0.33mol)とステアリン酸18.5部(0.07mol)とを添加し、160〜170℃で4時間脱水縮合反応させ、温水で希釈して30%の安息香酸・ステアリン酸導入ポリアミノポリアミド(分子末端封止PA)水溶液を得た。
次いで、攪拌機、温度計、環流冷却器、分水器および窒素ガス導入管を具備した4つ口フラスコに、上記で得られた30%の安息香酸・ステアリン酸導入ポリアミノポリアミド水溶液2531部を仕込み、撹拌しながら40℃で、80%グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド溶液129部(0.68mol)を加え60分反応させた。
次いで、エピクロロヒドリン309部(3.34mol)を30分で滴下しながら加えた後、30分間放置した。
その後、温水を加え28%に希釈し、60℃架橋反応させ、粘度が50mPa・s(60℃)以上となった時点で、10%硫酸でpH3以下に調整し、固形分濃度28.6%、粘度260mPa・s(25℃)、カチオン度2.5meq/g(pH7)の分子末端封止PAE(乳化分散剤)を得た。
実施例3
ジエチレントリアミンの配合量を344部(3.34mol)、アジピン酸の配合量を360部(2.46mol)、安息香酸の配合量を8部(0.07mol)とし、ステアリン酸に代えてラウリン酸130部(0.65mol)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で、30%の安息香酸・ラウリン酸導入ポリアミノポリアミド(分子末端封止PA)水溶液を得た。
続いて、上記で得られた30%の安息香酸・ラウリン酸導入ポリアミノポリアミド水溶液2659部を仕込み、80%グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド溶液の配合量を317部(1.68mol)とした以外は、実施例2と同様の方法で、固形分濃度28.3%、粘度170mPa・s(25℃)、カチオン度2.7meq/g(pH7)の分子末端封止PAE(乳化分散剤)を得た。
実施例4
ジエチレンアミンの配合量を344部(3.34mol)、アジピン酸の配合量を360部(2.46mol)、安息香酸の配合量を80部(0.65mol)、ラウリン酸の配合量を13部(0.07mol)に変更した以外は、実施例3と同様の方法で、30%の安息香酸・ラウリン酸導入ポリアミノポリアミド(分子末端封止PA)水溶液を得た。
続いて、上記で得られた30%の安息香酸・ラウリン酸導入ポリアミノポリアミド水溶液2505部を仕込み、実施例3と同様の方法で、固形分濃度28.0%、粘度100mPa・s(25℃)、カチオン度2.7meq/g(pH7)の分子末端封止PAE(乳化分散剤)を得た。
実施例5
ジエチレンアミンの配合量を344部(3.34mol)、アジピン酸の配合量を436部(2.99mol)、安息香酸の配合量を16部(0.13mol)、ステアリン酸の配合量を19部(0.09mol)に変更した以外は、実施例2と同様の方法で、30%安息香酸・ステアリン酸導入ポリアミノポリアミド水溶液を得た。
続いて、上記で得られた30%の安息香酸・ステアリン酸導入ポリアミノポリアミド水溶液2535部を仕込み、エピクロロヒドリンの配合量を309部(3.34mol)とし、80%グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド溶液に代えて65%3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド溶液160部(0.68mol)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で、固形分濃度28.3%、粘度200mPa・s(25℃)、カチオン度2.8meq/g(pH7)の分子末端封止PAE(乳化分散剤)を得た。
実施例6
ジエチレンアミンの配合量を344部(3.34mol)、アジピン酸の配合量を365部(2.50mol)、安息香酸の配合量を4部(0.03mol)、ラウリン酸の配合量を185部(0.65mol)に変更した以外は、実施例4と同様の方法で、30%安息香酸・ラウリン酸導入ポリアミノポリアミド水溶液を得た。
続いて、上記で得られた30%の安息香酸・ラウリン酸導入ポリアミノポリアミド水溶液2659部を仕込み、実施例4と同様の方法で、固形分濃度28.3%、粘度145mPa・s(25℃)、カチオン度2.6meq/g(pH7)の分子末端封止PAE(乳化分散剤)を得た。
実施例7
ジエチレンアミンの配合量を344部(3.34mol)、アジピン酸の配合量を365部(2.50mol)、安息香酸の配合量を80部(0.65mol)、ラウリン酸の配合量を7部(0.03mol)に変更した以外は、実施例4と同様の方法で、30%安息香酸・ラウリン酸導入ポリアミノポリアミド水溶液を得た。
続いて、上記で得られた30%の安息香酸・ラウリン酸導入ポリアミノポリアミド水溶液2498部を仕込み、実施例4と同様の方法で、固形分濃度28.0%、粘度150mPa・s(25℃)、カチオン度2.7meq/g(pH7)の分子末端封止PAE(乳化分散剤)を得た。
比較例1
ジエチレントリアミンの配合量を344部(3.34mol)、アジピン酸の配合量を370部(2.53mol)、ステアリン酸の配合量を185部(0.65mol)に変更した以外は、実施例3と同様の方法で、30%のステアリン酸導入ポリアミノポリアミド水溶液を得た。
続いて、上記で得られた30%のステアリン酸導入ポリアミノポリアミド水溶液2842部を仕込み、実施例4と同様の方法で、固形分濃度28.5%、粘度180mPa・s(25℃)の分子末端封止PAE(乳化分散剤)を得た。
実施例1〜7および比較例1における配合処方を、表1に示す。
<ロジン系サイズ剤>
製造例1(不飽和カルボン酸変性ロジンの製造)
攪拌機、温度計、環流冷却器、分水器および窒素ガス導入管を具備した4つ口フラスコに、窒素ガス導入下でトール油ロジン(酸価170)1000部を仕込み、165℃まで昇温した後、無水マレイン酸100部を添加した。そして、200℃まで昇温した後、2時間反応させ、不飽和カルボン酸変性ロジンを得た。
得られた不飽和カルボン酸変性ロジンは酸価235、軟化点118℃(環球法)であった。
製造例2(ロジン系樹脂混合物の製造)
上記製造例1と同様の4つ口フラスコに、窒素ガス導入下でトール油ロジン(酸価170)887部を仕込み、180℃まで昇温した後、グリセリン83部を添加し、250℃で6時間エステル化反応させ、酸価35以下、軟化点85℃のロジンエステル類を得た。
その後、得られたロジンエステル類50部と、製造例1の不飽和カルボン酸変性ロジン50部とを混合して、ロジン系樹脂の混合物を得た。
製造例3(不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類の製造)
上記製造例1と同様の4つ口フラスコに、窒素ガス導入下でトール油ロジン(酸価170)9002部を仕込み、160℃まで昇温した後、155℃でプロピレングリコール726部、無水マレイン酸1098部仕込んだ。そして、2時間かけて200℃まで昇温し、260℃で5時間保持しながら反応させた後、冷却して、酸価127、軟化点90℃(環球法)の不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類10470部を得た。
<サイズ剤組成物>
実施例8
製造例1で得た不飽和カルボン酸変性ロジン200部を、トルエン200部に溶解し、実施例1の分子末端封止PAE(乳化分散剤)64部と、イオン交換水281部とを添加し、40℃にてホモミキサーで混合して、粗製エマルションを得た。
次いで、この粗製エマルションをピストン型高圧乳化機(300kg/cm2)に2回通して微細エマルションを得た。その後、減圧蒸留により、トルエンを留去した。
次いで、得られたエマルションに30%硫酸アルミニウム(硫酸バンド)溶液125.3部を添加し、その後、水で希釈してサイズ剤組成物を得た。
得られたサイズ剤組成物の固形分濃度は35.1%、平均粒子径は0.80μmであった。
実施例9〜14
表2に示すように、実施例1の分子末端封止PAE(乳化分散剤)に代えて、実施例2〜7の分子末端封止PAE(乳化分散剤)を用いた以外は、実施例8と同様の方法でサイズ剤組成物を得た。得られたサイズ剤組成物の固形分濃度、平均粒子径を、表2に示す。
比較例2
実施例1の分子末端封止PAE(乳化分散剤)に代えて、比較例1の分子末端封止PAE(乳化分散剤)を用いた以外は、実施例8と同様の方法で、固形分濃度35.3%、平均粒子径0.54μmのサイズ剤組成物を得た。得られたサイズ剤組成物の固形分濃度、平均粒子径を、表2に示す。
実施例15
製造例1で得た不飽和カルボン酸変性ロジン200部を、トルエン200部に溶解し、実施例2の分子末端封止PAE(乳化分散剤)25.7部と、40%ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド溶液(SNF社製:FL−4440)(数平均分子量30万)27.0部と、イオン交換水292.3部とを添加し、40℃にてホモミキサーで混合して、粗製エマルションを得た。
次いで、この粗製エマルションをピストン型高圧乳化機(300kg/cm2)に2回通して微細エマルションを得た。その後、減圧蒸留により、トルエンを留去した。
次いで、得られたエマルションに、30%硫酸アルミニウム(硫酸バンド)溶液125.3部を添加し、その後、水で希釈してサイズ剤組成物を得た。
得られたサイズ剤組成物の固形分濃度は35.1%、平均粒子径は0.83μmであった。
実施例16
実施例2の分子末端封止PAE(乳化分散剤)の配合量を38.6部、40%ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド溶液の配合量を18部、イオン交換水の配合量を288.4部に変更した以外は、実施例15と同様の方法で、固形分濃度35.6%、平均粒子径0.72μmのサイズ剤組成物を得た。
実施例17
実施例2の分子末端封止PAE(乳化分散剤)の配合量を57.9部、40%ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド溶液の配合量を4.5部、イオン交換水の配合量を282.6部に変更した以外は、実施例15と同様の方法で、固形分濃度35.1%、平均粒子径0.58μmのサイズ剤組成物を得た。
実施例18
実施例2の分子末端封止PAE(乳化分散剤)の配合量を22.5部、40%ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド溶液の配合量を29.3部、イオン交換水の配合量を293.3部に変更した以外は、実施例15と同様の方法で、固形分濃度35.2%、平均粒子径1.28μmのサイズ剤組成物を得た。
実施例19
実施例2の分子末端封止PAE(乳化分散剤)の配合量を61.1部、40%ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド溶液の配合量を2.3部、イオン交換水の配合量を281.7部に変更した以外は、実施例15と同様の方法で、固形分濃度35.4%、平均粒子径0.55μmのサイズ剤組成物を得た。
実施例20
実施例2の分子末端封止PAE(乳化分散剤)の配合量を41.8部とし、40%ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド溶液に代えて、20%ポリエチレンイミン(日本触媒社製:エポミンSP−006)(数平均分子量600)31.5部を用い、また、イオン交換水の配合量を271.7部に変更した以外は、実施例15と同様の方法で、固形分濃度35.0%、平均粒子径0.66μmのサイズ剤組成物を得た。
実施例21
実施例2の分子末端封止PAE(乳化分散剤)の配合量を41.8部とし、40%ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド溶液に代えて20%ポリビニルアミン(ダイヤニトリイクス社製:PVAm−0570B)(数平均分子量10万)31.5部を用い、また、イオン交換水の配合量を271.7部に変更した以外は、実施例15と同様の方法で、固形分濃度35.4%、平均粒子径0.63μmのサイズ剤組成物を得た。
実施例22
製造例1で得た不飽和カルボン酸変性ロジンに代えて、製造例2で得たロジン系樹脂の混合物を用い、また、硫酸アルミニウムに代えて、30%ポリ塩化アルミニウム溶液125.3部を用いた以外は、実施例15と同様の方法で、固形分濃度35.3%、平均粒子径0.81μmのサイズ剤組成物を得た。
実施例23
製造例1で得た不飽和カルボン酸変性ロジンに代えて、製造例3で得た不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類を用い、また、硫酸アルミニウムに代えて、30%ポリ塩化アルミニウム溶液125.3部を用いた以外は、実施例15と同様の方法で、固形分濃度35.2%、平均粒子径0.75μmのサイズ剤組成物を得た。
比較例3
実施例2の分子末端封止PAE(乳化分散剤)に代えて、比較例1の分子末端封止PAE(乳化分散剤)を用いた以外は、実施例16と同様の方法で、固形分濃度35.1%、平均粒子径0.65μmのサイズ剤組成物を得た。
<評価>
(1)抄紙評価1(コッブ吸水度)
100%段ボール古紙を用いて、40℃で3%のパルプスラリーを調製した。
次いで、このパルプスラリー中に、対パルプ0.5%(絶乾質量基準)の硫酸アルミニウム(硫酸バンド)と、対パルプ0.2%(絶乾質量基準)の各サイズ剤組成物とを順次添加した後、このパルプスラリーを1%まで希釈した。得られたパルプスラリーのpHは7.0であった。
次いで、パルプスラリーを均一に攪拌した後、TAPPIスタンダード・シートマシーン(熊谷理機工業社製)を用いて坪量80±1g/cm2を目標とし、5kg/cm2の圧力下で1分間脱水した後、ドラムドライヤーで105℃にて3分間乾燥した。
そして、得られた紙を23℃、相対湿度50%の条件下で24時間調湿した後、コッブ吸水度(JIS P 8140)を測定した。その結果を、表2に示す。
なお、コッブ吸水度の測定方法を、下記する。
すなわち、まず、紙紙片をリングに挟み込み、規定量の水をリングの中に注ぎ込む。そして、一定時間(通常は2分)経過後、リングの中の水を取り除き、紙表面の余分な水をぬぐい取った後、質量を測定する。なお、一定時間に紙中に吸収する水の量を測定したものであり、数値が小さいほどサイズ効果が良好となる。
(2)抄紙評価2(ステキヒトサイズ度)
70%広葉樹パルプ(LBKP)と、30%針葉樹パルプ(NBKP)との混合シートを用いて、40℃で3%のパルプスラリーを調製した。
次いで、このパルプスラリー中に、対パルプ10%(絶乾質量基準)の炭酸カルシウム(奥多摩工業社製;TP−121)、対パルプ1.0%(絶乾質量基準)の硫酸アルミニウム(硫酸バンド)と、対パルプ0.5%(絶乾質量基準)のカチオン澱粉(日本食品加工社製;ネオテック40T)と、対パルプ0.02%(絶乾質量基準)のポリアクリルアミド系の歩留まり剤(ハイモロックNR−12MLH;ハイモ社製)と、対パルプ0.4%(絶乾質量基準)の各サイズ剤組成物とを順次添加した後、このスラリーを1%まで希釈した。得られたパルプスラリーのpHは7.5であった。
次いで、パルプスラリーを均一に攪拌した後、TAPPIスタンダード・シートマシーン(熊谷理機工業社製)を用いて坪量64±1g/cm2を目標とし、5kg/cm2の圧力下で1分間脱水した後、ドラムドライヤーで105℃にて3分間乾燥した。
そして、得られた紙を23℃、相対湿度50%の条件下で24時間調湿した後、ステキヒトサイズ度(JIS P 8122)を測定した。
なお、ステキヒトサイズ度の測定方法を、下記する。
すなわち、まず、5cm四方の紙試験片を作製し、刷子で塩化第二鉄溶液を紙表面に塗ると同時に、チオシアン酸アンモニウム溶液の上に浮かべる。試験片を浮かべると同時にストップウォッチを作動させ、チオシアン酸アンモニウムと塩化第二鉄が接触するまでの秒数を測定する。なお、ステキヒトサイズ度は、紙の裏から染みこんだ水が表に到達するまでの時間を測定したものであり、数値が大きいほどサイズ効果が良好となる。
(3)保存安定性(遠心沈降性テスト(Fallout))
各サイズ剤組成物を44g秤量し、50ccの遠心分離管を用いて、4000rpmで30分間、遠心分離処理した。その後、上澄みを除去(デカンテート)し、底部に沈降した樹脂をアセトンに溶解させ、予め秤量したカップに移した。
その後、ホットプレートの上でアセトンを除去し、100℃において1時間乾燥させ、質量を測定した。
そして、下記式により、遠心沈降率を求めた。その結果を、表2に示す。
遠心沈降率(%)=(沈降した樹脂の質量(g)×100/44×試料の固形分濃度(%))×100
なお、遠心沈降率は、低いほど、保存安定性に優れる。
なお、表中の略号の詳細を下記する。
pDADMAC:ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、SNF社製FL−4440
PEI:ポリエチレンイミン、日本触媒社製、エポミンSP−006
PVAm:ポリビニルアミン、ダイヤニトリックス社製、PVAm−0570B
Alum:硫酸アルミニウム、浅田化学社製
PAC:ポリ塩化アルミニウム、多木化学社製:PAC−250A