JP2015116789A - プラスチック成形方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】光学的な歪みのない、面形状に優れた寸法変化の少ない光学用途に好適なプラスチック成形体を与えるプラスチック成形方法を提供する。【解決手段】30t以上の型締め圧力下で成型用金型の型締めを行い、一定圧力の保圧をかけ(保圧工程)、次いで、一定時間金型の中で成型品を冷却した(冷却工程)後に金型を開き、成型品を取り出す射出成形、又は射出圧縮成形によるプラスチック成形法であって、前記冷却工程中に、型締め圧力を0t超過2t以下に下げ、かつ型締め圧力が0t超過2t以下である時間が冷却時間の50%以上であることを特徴とするプラスチック成形方法。【選択図】図1

Description

本発明は、透明性に優れた光学レンズに好適な射出成形法に関する。

携帯カメラレンズ、ピックアップレンズ、複写機、レーザービームプリンター等の光走査に用いられるfθレンズ、プロジェクションレンズに用いられる投射レンズ、車載用レンズ、各種プリズム等の光学素子の素材は、製品のコストダウンの要求からガラスからプラスチックへ移行している。これらの光学素子は、複数の機能を最小限の素子で補うために、平面及び球面のみならず、複雑な非球面形状を有するようになってきている。
近年の電子技術の発展をともに、電子電気機器の軽量化、小型化、薄型化が進んでいる。特に、携帯電話類においては、搭載されるカメラユニットには、形状が薄型・小径化されると共に、画質の面でもF値特性(絞り値)及びMTF特性(コントラスト再現比)が良いことが求められている。また、カメラユニットに採用されるレンズは、製造コストが低く大量生産に適している射出成形法で製造できることが求められている。
ところで、直径が1cmに満たないような小径のレンズは、光学有効面が広い。しかし、射出成形でレンズを形成する場合、ウェルドラインや複屈折の不均一化が生じるため、光学有効面を広げることが難しい。
小型で薄肉のレンズを射出成形する方法として、特許文献1にはノルボルネン系重合体とワックスからなる組成物を用いることが提案されている。しかしながら、ワックスを配合すると成形体表面にワックスがブリードすることがあり、金型汚れなどの問題が生じる。
また、特許文献2には、特定の単量体組成からなる重合体が薄肉成形性に優れ、しかも光学特性や耐熱性も高度にバランスされた小型で薄肉のレンズを与えることが開示されている。
ところで射出成形によるプラスチックの成形品は、金型内での樹脂の残留応力分布の不均等化が、成形品の性能に影響を及ぼす問題が指摘されている。
特に厚みに対して、面積の大きい板状成形体ではこの傾向が高く、例えば特許文献3や4では、樹脂製外層パネルやサンルーフなどの大型成形体では、保圧工程又は冷却工程中に圧の調整を行うことが提案されている。
特開2009−138111号公報 特開2010−150443号公報 特開2012−166517号公報 特開平5−031774号公報
本発明は、光学的な歪みのない、面形状に優れた寸法変化の少ない光学用途に好適なプラスチック成形体を与えるプラスチック成形方法を提供するものである。
本発明者らは、低複屈折で配光角制御性に優れた光学的な歪みのない光学素子を射出成形又は射出圧縮成形により得るべく鋭意検討した結果、保圧工程後の冷却工程で、金型に掛ける圧力を一定範囲の圧力に下げ、一定時間保持すると、プラスチック成形体表面の面形状が安定し、光学的な歪みのない光学素子が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、30t以上の型締め圧力下で成型用金型の型締めを行い、一定圧力の保圧をかけ(保圧工程)、一定時間金型の中で成型品を冷却した(冷却工程)後に金型を開き、成型品を取り出す射出成形、または射出圧縮成形によるプラスチック成形法であって、前記冷却工程中に、型締め圧力を0t超過2t以下に下げ、かつ型締め圧力が0t超過2t以下である時間が冷却時間の50%以上であることを特徴とするプラスチック成形方法が提供される。
前記冷却中に下げる型締め圧力は0t超過1t以下であり、かつ締め圧力が0t超過以上1t以下である時間は冷却時間の60%以上であるのが好ましい。
前記樹脂材料は、脂環構造含有樹脂であるの場合に著効が得られるので好ましい。
また本発明によれば、上述したプラスチック成形方法によって得られる光学素子が提供される。
実施例で用いた金型から得られる成形体の形状を説明する図である。
本発明に用いる樹脂材料は、プラスチックレンズに一般的に使用される、(メタ)アクリル樹脂、脂環構造含有樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ウレタン樹脂、チオウレタン樹脂等を例示することができる。特に本発明では脂環構造含有樹脂が好適に用いられる。
脂環構造含有樹脂は、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を有する樹脂である。脂環式構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などを挙げることができる。機械的強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が最も好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数は、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械的強度、耐熱性や、結像素子の成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。
脂環構造含有樹脂の具体例としては、
(1)ノルボルネン系単量体の開環重合体及びノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環共重合体、並びにこれらの水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加重合体及びノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加共重合体などのノルボルネン系重合体、
(2)単環の環状オレフィン系重合体及びその水素添加物、
(3)環状共役ジエン系重合体及びその水素添加物、
(4)ビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びビニル脂環式炭化水素系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との共重合体、並びにこれらの水素添加物、ビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環の水素添加物及びビニル芳香族単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との共重合体の芳香環の水素添加物などのビニル脂環式炭化水素系重合体、などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、脂環構造含有重合体が特に好ましい。
このような脂環構造含有重合体としては、具体的には特開平5−279554号公報に記載されている開環重合体およびその水素添加物、特開2004−067985号公報に記載のメタクリル基を側鎖にもつノルボルネン誘導体をメタロセン触媒等で開環重合させた後、水素化して得られる重合体、特開2001−26693号公報に記載されるエチレンと環状オレフィンの共重合体が挙げられる。
脂環構造含有樹脂の具体例としては、日本ゼオン社製ZEONEX(登録商標)、ZEONOR(登録商標)、三井化学社製APEL(登録商標)、JSR社製ARTON(登録商標)、ポリプラスチックス社製TOPAS(登録商標)などが挙げられる。
本発明においては、樹脂に、ゴム質重合体、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、帯電防止剤、滑剤など、任意の添加剤を配合することができる。
樹脂に添加剤を配合する方法に格別な制限はなく、例えば、ロール、ニーダー、押出混練機、バンバリーミキサー、フィーダールーダー等の混練器で練りながら、樹脂と添加剤とを混合する方法;樹脂を適当な溶剤に溶解し、これに添加剤を配合して混合し、次いで溶媒を除去する方法;などが挙げられる。
必要に応じて添加剤が配合された樹脂は、通常、ペレット化された後、シート状に成形される。ペレットの製造方法に格別な制限はないが、樹脂と必要に応じて配合された添加剤とを二軸混練機などの混合機を用いて混合した後、ストランド状に押出、それをペレタイザーなどで細かく切断することでペレットを得ることができる。
(3)射出成形
このペレットをホッパーに入れ、ホッパーからシリンダへ移送され、ここで溶融される。溶融樹脂は、シリンダからノズルを通して金型へ供給される。溶融樹脂の温度は、樹脂のガラス転移温度や融点に応じて任意に設定すれば良いが、脂環構造含有樹脂の場合、通常Tg+50℃〜Tg+200℃、好ましくは、Tg+120℃〜Tg+170℃である。また、金型の温度についても樹脂のガラス転移温度や融点に応じて任意に設定すればよく、脂環構造含有樹脂の場合、通常Tg−30℃〜Tg+10℃、好ましくは、Tg−20〜Tgである。
成形時、金型に加える圧力(型締め圧力)は、成形体の大きさや形状などにより任意に設定すればよいが、通常、20t〜150tである。
溶融樹脂が金型に充填された後、保圧工程に入るが、保圧力(射出圧力)も、成形品の大きさや形状などにより任意に設定すればよく、通常200〜2000kg/cmである。保圧時間についても成形体の大きさや形状などにより任意に設定すればよいが、通常2〜30秒である。
保圧工程が終了後、冷却工程に入る。冷却時間については格別な制限はないが、生産性の観点から通常1〜500秒である。
本発明において、この冷却工程で型締め圧力を下げることが特徴である。具体的には、0t超過2t以下、好ましくは0.1t超過1t以下の範囲に型締め圧力を下げる。また、このような圧力に下げてから金型を開くまでの時間は、冷却工程に要する時間全体の内、50%以上、好ましくは60%以上であり、冷却開始と同時に型締め圧力を下げても良い。
また、冷却工程での型締め圧力を下げる際は、圧力を一定速度で徐々に低下させても良いし、一気に所望の圧力まで減圧しても良い。但し、徐々に圧力を低下させる場合、型締め圧力が2t以下になった時点から冷却終了までの時間が50%以上でなければならない。
冷却後は、金型を開いて成形体を取り出す。
このようにして得られた射出成形体は、歪みの少ない、配光角制御性に優れた、面形状の安定した光学用途に好適なプラスチック成形体となる。光学用のプラスチック成形体としては、レンズ、プリズム、偏向フィルム等が挙げられる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。なお、各例中の部及び%は、特に断りのない限り、重量基準である。
また、各例における測定や評価は、以下の方法により行った。
・複屈折制御
複屈折制御については、樹脂成形レンズ検査システム「WPA−100」(フォトニックスラティス社製)を用いて評価した。
評価の方法としては成形品の位相差の値について、成形サイクル中に型締めを緩めない従来の手法と比較し、30%以上の位相差低減効果が確認できているものについては○、20%以上30%未満の位相差低減効果が確認できたものについては△、位相差低減効果が20%未満のものについては×で示した。
・配光角制御
配光角制御については、樹脂成形レンズ検査システム「WPA−100」(フォトニックスラティス社製)を用いて評価した。
評価の方法としては成形品の長手方向Lのうち、L/4と3L/4の位置における配光角度の差が、成形サイクル中に型締めを緩めない従来の方法と比較して20%以上配光角差が低減できているものについては○、10%以上20%未満配光角差が低減できているものについては△、配光角差低減が10%未満のものについては×で示した。
・形状
形状については、成形品の形状にヒケ又はバリ等の不良が発生するか否かを目視で評価した。
ヒケ又はバリ等の不良が無く、形状が制御されているものについては○、ヒケ又はバリ等の不良が発生し、形状不良の発生しているものについては×で示した。
<実施例1>
樹脂材料としてノルボルネン系開環重合体水素化物(製品名「ZEONEX(登録商標)E48R」、日本ゼオン社製)を用い、射出成形機(製品名「S2000i−100A」、FANUC社製、スクリュー径32mm)で、以下の要領にて射出成形を行った。
100tで型締めした成型用金型にシリンダ温度280℃で溶融させた樹脂を流し込んだ後、1300kg/cmで15秒間保圧工程を行った。保圧工程が終了した後、75秒後に型締め圧を0.1tまで下げた。保圧工程終了時から200秒経過後に金型を開き、成型品(図1参照)を取り出した。
得られた成型品の位相差、配向角、形状を上記に示す方法で評価した。
尚、成形体の最厚部W1は10mm、ランナー部厚W2は1mm、ゲート部厚W3は2mm、曲率半径(設計値)Rは3.01mmである。
<実施例2>
保圧工程が終了した後、25秒後に型締め圧を0.1tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った。
<実施例3>
保圧工程が終了した後、50秒後に型締め圧を0.5tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った。
<実施例4>
保圧工程が終了した後、100秒後に型締め圧を1.5tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った。
<実施例5>
保圧工程が終了した後、25秒後に型締め圧を1.5tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った。
<実施例6>
樹脂材料としてノルボルネンとエチレンとの付加型共重合体(製品名「TOPAS(登録商標)6013L−17」、三井化学社製)を用い、保圧工程が終了した後、50秒後に型締め圧を0.5tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った
<実施例7>
保圧工程が終了した後、100秒後に型締め圧を1.5tまで下げたこと以外は実施例6と同様の方法で成形、評価を行った。
<実施例8>
保圧工程が終了した後、25秒後に型締め圧を1.5tまで下げたこと以外は実施例6と同様の方法で成形、評価を行った。
<比較例1>
保圧工程が終了した後、175秒後に型締め圧を0.5tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った。
<比較例2>
保圧工程が終了した後、175秒後に型締め圧を1.5tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った。
<比較例3>
保圧工程が終了した後、175秒後に型締め圧を2.5tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った。
<比較例4>
保圧工程が終了した後、100秒後に型締め圧を2.5tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った。
<比較例5>
保圧工程が終了した後、25秒後に型締め圧を2.5tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った。
<比較例6>
保圧工程が終了した後、100秒後に型締め圧を10tまで下げたこと以外は実施例1と同様の方法で成形、評価を行った。
<比較例7>
保圧工程が終了した後、175秒後に型締め圧を0.5tまで下げた以外は実施例6と同様の方法で成形、評価を行った。
<比較例8>
保圧工程が終了した後、100秒後に型締め圧を2.5tまで下げた以外は実施例6と同様の方法で成形、評価を行った。
実施例1〜8、および比較例1〜8で得られた結果を表1に示す。
Figure 2015116789
この結果から、保圧工程が終了した後の冷却工程において、冷却工程中に型締め圧力を0t以上2t以下に下げ、かつ型締め圧力が0t以上2t以下である時間が冷却時間の50%以上に調整することで、光学的な歪みのない、面形状に優れた寸法変化の少ない光学用途に好適なプラスチック成形体を得ることができることがわかる。

Claims (4)

  1. 30t以上の型締め圧力下で成型用金型の型締めを行い、一定圧力の保圧をかけ(保圧工程)、次いで、一定時間金型の中で成型品を冷却した(冷却工程)後に金型を開き、成型品を取り出す射出成形、又は射出圧縮成形によるプラスチック成形法であって、前記冷却工程中に、型締め圧力を0t超過2t以下に下げ、かつ型締め圧力が0t超過2t以下である時間が冷却時間の50%以上であることを特徴とするプラスチック成形方法。
  2. 冷却工程に下げる型締め圧力が0t超過1t以下であり、かつ締め圧力が0t超過1t以下である時間が冷却時間の60%以上である請求項1記載のプラスチック成形方法。
  3. 前記樹脂材料が、脂環構造含有樹脂である請求項1又は2記載のプラスチック成形方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載されたプラスチック成形方法によって得られる光学素子。
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