JP6310351B2 - 光学フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、耐熱性を有するアクリル系樹脂組成物からなる光学フィルムであり、その耐熱性を維持しつつ、フィルム可とう性を改良した光学フィルムに関する。
ノート型パソコン、大型テレビ、携帯電話、携帯情報端末等に代表されるように、近年、電子機器はますます小型化、薄型化している。上記に例示した電子機器のように表示装置を備える電子機器では、軽量かつコンパクトという特長を生かした液晶表示装置が多く用いられている。
これら液晶表示装置には、その表示品位を保つために偏光フィルム等の各種フィルムが用いられている。さらに、これら液晶表示装置では、携帯情報端末や携帯電話向けに、該液晶表示装置をさらに軽量化するため、ガラス基板の代わりに樹脂フィルムまたはシート(以下、特別に記載しない限り、シートおよびフィルムの区別は行わず、フィルムと記載する)を用いた液晶表示装置も実用化されている。
この場合、上記樹脂フィルムは、偏光を扱うため、光学的に透明であり、かつ複屈折が小さく、さらに、光学的に均質であることが求められる。つまり、液晶表示装置において、ガラス基板の代わりに用いられる樹脂フィルムには、複屈折と厚みとの積で表される位相差が小さいことが要求されることに加えて、温度や湿気等の使用環境によるフィルムの寸法変化を一例とする外部の応力等によりフィルムの位相差が変化しにくい(低光弾性)ことが要求される。
ところで、液晶表示装置においては、上記樹脂フィルムとして、非晶性の熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムが好適に用いられている。より具体的には、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のエンジニアリングプラスチックスや、トリアセチルセルロース等のセルロース類のプラスチックからなる樹脂フィルムを挙げることができる。
上記背景の中で、透明性、低複屈折、低透湿性、低光弾性の特性を満足させる樹脂組成物として、従来用いられていたトリアセチルセルロースに代わり、アクリル系樹脂の使用が実用化されている。代表的なアクリル系樹脂として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が挙げられるが、PMMAは耐熱性が劣ることから、グルタルイミド基の導入(例えば、特許文献1、2参照。)やラクトン基の導入(例えば、特許文献3参照。)により耐熱性を付与することが開示されている。
一方で、アクリル系樹脂からなる光学フィルムは、トリアセチルセルロース等のセルロース類のプラスチックからなる樹脂フィルムと比べて、用途によっては機械的特性、特に可とう性が不足することがあり、その改善を求められている。
国際公開第2005/054311号 国際公開第2005/108438号 特開2005−281589号公報
本発明は、従来の技術が有する上記課題に鑑みてなされるものであり、アクリル系樹脂の耐熱性、透明性を維持しつつ、MIT耐屈曲性に優れた光学フィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、(A)ガラス転移温度が120℃以上であるアクリル系樹脂および(B)融点が195℃以下である脂肪族ポリアミド樹脂を含有し、MIT耐屈曲試験において光学フィルムの長手方向(MD)および幅方向(TD)のいずれも500回以上でありかつ内部ヘイズが1.0%以下である光学フィルムが、上記課題を解決し得るとの知見を得、これらの知見に基づいて、本発明に達したものである。
すなわち、本願発明は、(A)ガラス転移温度が120℃以上であるアクリル系樹脂及び(B)融点が195℃以下である脂肪族ポリアミド樹脂を含有し、MIT耐屈曲試験において光学フィルムの長手方向(MD)および幅方向(TD)のいずれも500回以上であり、内部ヘイズが1.0%以下である光学フィルムである。
また、前記(A)成分の平均屈折率が1.48以上であり、かつ前記(A)成分と前記(B)成分の屈折率差が0.02以下であることが好ましい。
また、前記光学フィルムの以下に定義されるRthが50nm以下であることが好ましい。
[Rth={(nx+ny)/2−nz}×dである。フィルムの遅相軸方向、進相軸方向および厚さ方向の屈折率をそれぞれnx、ny、nzとし、フィルムの面内の屈折率が最大となる方向を遅相軸方向とする。d(nm)はフィルムの厚みである。]
また、前記光学フィルムの伸度が光学フィルムの長手方向(MD)および幅方向(TD)のいずれも10%以上であることが好ましい。
また、前記(B)成分の原料モノマーがアミノカルボン酸化合物及び/又はラクタム化合物であることが好ましい。
また、前記(A)成分が主鎖に環構造を持つことが好ましい。
また、前記環構造がグルタルイミド環、ラクトン環、無水マレイン酸、マレイミド及び無水グルタル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、前記(A)成分中の環構造の含有量が2重量%〜30重量%であることが好ましい。
また、前記環構造が下記一般式(1)を含むことが好ましい。
Figure 0006310351
(ここで、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、R3は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基を示す。)
また、前記光学フィルムが溶融押出法により得られることが好ましい。
また、前記光学フィルムが二軸延伸により得られることが好ましい。
また、前記光学フィルムが偏光子保護フィルムであることが好ましい。
本発明によれば、アクリル系樹脂の耐熱性、透明性を維持しつつMIT耐屈曲性に優れた光学フィルムを提供することが可能である。
本発明は、(A)ガラス転移温度が120℃以上であるアクリル系樹脂及び(B)融点が195℃以下である脂肪族ポリアミド樹脂を含有し、MIT耐屈曲試験において光学フィルムの長手方向(MD)および幅方向(TD)のいずれも500回以上であり、内部ヘイズが1.0%以下である光学フィルムであることを特徴とする。
ここでのMIT耐屈曲試験は、東洋精機(株)製のMIT耐柔疲労試験機型式Dを用い、幅15mmの短冊型試験片を使用し、折り曲げクランプの曲率半径Rが0.38mm、左右の折り曲げ角度135度、折り曲げ速度175回/分、荷重1.96Nの条件で測定した切断するまでの往復折り曲げ回数と定義する。また内部ヘイズは、液体測定用ガラスセルに得られたフィルムを入れ、その周辺に純水を充填した状態のガラスセルを対象に日本電色工業(株)製ヘイズメーターNDH2000を用い測定したヘイズ値と定義する。またガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC、(株)SII製、DSC7020)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minで測定し、中点法により解析した値と定義する。また融点は、示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA、(株)SII製、TG/DTA7200)を用いて、窒素雰囲気中、昇温速度20℃/minで測定を行った。
ここで、本発明の光学フィルムは、耐熱性および透明性を維持しつつ、本来アクリル系フィルムの弱点であったMIT耐屈曲性に優れることを見出したが、これは以下の理由によるのではないかと推測している。つまり、(B)成分である脂肪族ポリアミド樹脂の融点が低いことにより、(A)成分であるアクリル系樹脂との溶融混合において、(B)成分の溶融が促進され、溶融不足によるフィルム欠陥が発生しない。さらに驚くべきことに、アクリル系樹脂と脂肪族ポリアミド樹脂の適度な相溶性により分散粒径が制御され、フィルムの屈曲に対して、(B)成分の分散体で、応力を吸収しているのではないかと推測している。
(光学フィルム)
本発明の光学フィルムは、ガラス転移温度が120℃以上のアクリル系樹脂と、融点が195℃以下である脂肪族ポリアミド樹脂とを含んでいる。ここで脂肪族ポリアミド樹脂を含むアクリル系樹脂をアクリル系樹脂組成物と定義する。
尚、本発明の光学フィルムは、MIT耐屈曲試験における切断するまでの往復折り曲げ回数が改善されており、かつ内部ヘイズが1.0%以下であることに加え、更にガラス転移温度が115℃以上であることが好ましい。
また、MIT耐屈曲試験における折り曲げ回数は光学フィルムの長手方向(MD)および幅方向(TD)のいずれも500回以上、好ましくは700回以上、さらに好ましくは1000回以上がよい。500回以上になると、長尺製膜の工程による破断のリスクや、液晶パネルへ貼合した後のリワーク性の点で良好である。本発明による光学フィルムは一軸延伸もしくは二軸延伸の実施は任意で選択できる。ただし二軸延伸を施すことで、MIT耐屈曲試験における切断するまでの往復折り曲げ回数はさらに増大する。
脂肪族ポリアミド樹脂を含まないアクリル系樹脂のみのフィルムであっても、延伸条件等の加工方法によっては、MIT耐屈曲試験が500回以上を実現することは可能であるが、その際の延伸条件は延伸温度を下げる方向であったり、延伸倍率を上げる方向であることから、延伸工程においての破断のリスクが高くなる。本発明によれば、比較的高い延伸温度であっても、MIT耐屈曲試験における折り曲げ回数で500回以上を実現でき、延伸時の破断のリスクが低く、透明性の良好なアクリル樹脂組成物による光学フィルムを得ることができる。
本発明の光学フィルムの内部ヘイズは1.0%以下であり、、好ましくは0.5%以下であり、さらに好ましくは0.3%以下が良い。内部ヘイズが低いことにより、液晶パネルに実装したときの品質が良好になる。
本発明の(A)ガラス転移温度が120℃以上であるアクリル系樹脂の平均屈折率は1.48以上であり、かつ本発明の光学フィルムは(A)アクリル系樹脂と(B)融点が195℃以下である脂肪族ポリアミド樹脂の屈折率差が0.02以下であることが好ましく、さらに0.01以下であることが好ましい。本発明の光学フィルムはアクリル系樹脂中に脂肪族ポリアミド樹脂が分散した状態であることから、アクリル系樹脂と脂肪族ポリアミド樹脂との屈折率差が小さくなるほど、光学フィルムの内部ヘイズが低下する傾向にある。ここでの平均屈折率は(株)アタゴ社製アッベ屈折計3Tを用いて測定することが出来る。
また、光学フィルムを構成するアクリル系樹脂中の脂肪族ポリアミド樹脂の平均分散粒径は30〜700nmであり、さらには100〜300nmであることが好ましい。平均分散粒径が小さくなるほど光学フィルムの内部ヘイズが小さくなる傾向なり、平均分散粒径が30nm以上であることで、MIT耐屈曲性が増大する。脂肪族ポリアミドの平均分散粒径は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて目視測定することが一般的である。
平均分散粒径の制御方法としては、(1)(A)成分に対する(B)成分の溶融状態での粘度、(2)(A)成分に対する(B)成分の相溶性、(3)押出機中にニーディングセクションを設けたり、溶融樹脂が通過する配管中にスタティックミキサーを設置したり、ポリマーフィルターの設置等による溶融樹脂に対して物理的なせん断を加える、(4)(B)成分の融点、等が挙げられる。特に(4)(B)成分の融点は加工温度(押出機の設定温度)より高いと(B)成分の溶融不足が発生し、フィルム欠陥が生じる。(B)成分の融点が195℃以下であれば、ガラス転移温度が120℃以上であるアクリル系樹脂の一般的な加工温度に対して、安定的に溶融する。
本発明の光学フィルムの厚み方向位相差Rthは50nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは30nm以下であり、さらに好ましくは10nm以下である。厚み方向位相差が発現することにより、液晶パネル中で使用される用途(部位)が制限されるため、Rthは低いほど好ましい。Rthは以下に定義される。
[Rth={(nx+ny)/2−nz}×dである。フィルムの遅相軸方向、進相軸方向および厚さ方向の屈折率をそれぞれnx、ny、nzとし、フィルムの面内の屈折率が最大となる方向を遅相軸方向とする。d(nm)はフィルムの厚みである。]
Rthは王子計測機器(株)製、位相差測定装置KOBRA−WRを用いて測定を行うことが出来、測定波長は590nmで行った。
本発明の光学フィルムの伸度は光学フィルムの長手方向(MD)および幅方向(TD)のいずれも10%以上であることが好ましい。伸度が10%以上であることで、リワーク性に優れる。伸度は(株)島津製作所製オートグラフAGS−Jを用いて、JIS K7161に準拠して測定できる。
[フィルムサイズは150mm×15mmの短冊状に作成し、チャック間距離は50mm、引張速度は200mm/min)で測定する]
(光学フィルムの製造方法)
本発明に掛かる光学フィルムの製造方法の一実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。つまり、本発明に係るアクリル系樹脂を成形してフィルムを製造できる方法であれば、従来公知のあらゆる方法を用いることができる。
具体的には、例えば、射出成形、溶融押出成形、インフレーション成形、ブロー成形、圧縮成形、等を挙げることが出来る。また、本発明に係るアクリル系樹脂組成物を溶解可能な溶剤に溶解させた後、成形させる溶液流延法やスピンコート法によって、本発明に係るフィルムを製造することが出来る。
中でも溶剤を使用しない溶融押出法を用いることが好ましい。溶融押出法によれば、製造コストや溶剤による地球環境や作業環境への負荷を低減することができる。
以下、本発明に係るフィルムの製造方法の一実施形態として、本発明に係るアクリル系樹脂を溶融押出法により成形してフィルムを製造する方法について詳細に説明する。なお、以下の説明では、溶融押出法で得られたフィルムを、溶液流延法等の他の方法で得られたフィルムと区別して、「溶融押出フィルム」と称する。
本発明に係るアクリル系樹脂組成物を溶融押出法によりフィルムに成形する場合、まず、本発明に係るアクリル系樹脂組成物を、押出機に供給し、該アクリル系樹脂組成物を加熱溶融させる。
アクリル系樹脂組成物は、押出機に供給する前に、予備乾燥することが好ましい。このような予備乾燥を行うことにより、押出機から押し出される樹脂の発泡を防ぐことができる。
予備乾燥の方法は特に限定されるものではないが、例えば、原料(すなわち、本発明に係るアクリル系樹脂組成物)をペレット等の形態にして、熱風乾燥機や真空乾燥機等を用いて行うことができる。
次に、押出機内で加熱溶融されたアクリル系樹脂組成物を、ギアポンプやフィルターを通して、Tダイに供給する。このとき、ギアポンプを用いれば、樹脂の押出量の均一性を向上させ、フィルム長手方向の厚みムラを低減させることができる。一方、フィルターを用いれば、アクリル系樹脂組成物中の異物を除去し、欠陥の無い外観に優れたフィルムを得ることができる。
次に、Tダイに供給されたアクリル系樹脂組成物を、シート状の溶融樹脂として、Tダイから押し出す。そして、該シート状の溶融樹脂を2つの冷却ロールで挟み込んで冷却し、フィルムを製膜する。
上記シート状の溶融樹脂を挟み込む2つの冷却ロールの内、一方は、表面が平滑な剛体性の金属ロールであり、もう一方は、表面が平滑な弾性変形可能な金属製弾性外筒を備えたフレキシブルロールであることが好ましい。
このような剛体性の金属ロールと金属製弾性外筒を備えたフレキシブルロールとで、上記シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却して製膜することにより、表面の微小な凹凸やダイライン等が矯正されて、表面が平滑で厚みムラが5μm以下であるフィルムを得ることができる。
なお、本明細書において、「冷却ロール」とは、「タッチロール」および「冷却ロール」を包含する意味で用いられる。
上記剛体性の金属ロールとフレキシブルロールとを用いる場合であっても、何れの冷却ロールも表面が金属であるため、製膜するフィルムが薄いと、冷却ロールの面同士が接触して、冷却ロールの外面に傷が付いたり、冷却ロールそのものが破損したりすることがある。
そのため、上説したような2つの冷却ロールでシート状の溶融樹脂を挟み込んで製膜する場合、まず、該2つの冷却ロールで、シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却し、比較的厚みの厚い原反フィルムを一旦取得する。その後、該原反フィルムを、一軸延伸または二軸延伸して所定の厚みのフィルムを製造することが好ましい。
より具体的に説明すると、厚み40μmのフィルムを製造する場合、また、上記2つの冷却ロールで、シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却し、一旦、厚み150μmの原反フィルムを取得する。その後、該原反フィルムを縦横二軸延伸により延伸させ、厚み40μmのフィルムを製造すればよい。
このように、本発明に係るフィルムが延伸フィルムである場合、本発明に係るアクリル系樹脂組成物を一旦、未延伸状態の原反フィルムに成形し、その後、一軸延伸または二軸延伸を行うことにより、延伸フィルムを製造することができる。
本発明の光学フィルムの長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)両方のMIT耐屈曲性を向上させるためには、二軸延伸を行うことが好ましい。
本明細書では、説明の便宜上、本発明に係るアクリル系樹脂組成物をフィルム状に成形した後、延伸を施す前のフィルム、すなわち未延伸状態のフィルムを「原反フィルム」と称する。
原反フィルムを延伸する場合、原反フィルムを成形後、直ちに、該原反フィルムの延伸を連続的に行ってもよいし、原反フィルムを成形後、一旦、保管または移動させて、該原反フィルムの延伸を行ってもよい。
なお、原反フィルムに成形後、直ちに該原反フィルムを延伸する場合、フィルムの製造工程において、原反フィルムの状態が非常に短時間(場合によっては、瞬間 )の場合、延伸されるのに充分な程度のフィルム状を維持していればよく、完全なフィルムの状態である必要はない。また、上記原反フィルムは、完成品であるフィルムとしての性能を有していなくてもよい。
(光学フィルムの延伸方法)
原反フィルムを延伸する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の任意の延伸方法を用いればよい。具体的には、例えば、テンターを用いた横延伸、ロールを用いた縦延伸、及びこれらを逐次組み合わせた逐次二軸延伸等を用いることができる。
また、縦と横とを同時に延伸する同時二軸延伸方法を用いたり、ロール縦延伸を行った後、テンターによる横延伸を行う方法を用いたりすることもできる。
原反フィルムを延伸するとき、原反フィルムを一旦、延伸温度より0.5℃〜5℃、好ましくは1℃〜3℃高い温度まで予熱した後、延伸温度まで冷却して延伸することが好ましい。
上記範囲内で予熱することにより、原反フィルムの幅方向の厚みを精度よく保つことができ、また、延伸フィルムの厚み精度が低下したり、厚みムラが生じたりすることがない。また、原反フィルムがロールに貼り付いたり、自重で弛んだりすることがない。
一方、原反フィルムの予熱温度が高すぎると、原反フィルムがロールに貼り付いたり、自重で弛んだりするといった弊害が発生する傾向にある。また、原反フィルムの予熱温度と延伸温度との差が小さいと、延伸前の原反フィルムの厚み精度を維持しにくくなったり、厚みムラが大きくなったり、厚み精度が低下したりする傾向がある。
なお、本発明に係るアクリル系樹脂組成物は、原反フィルムに成形後、延伸する際、ネッキング現象を利用して、厚み精度を改善することが困難である。したがって、本発明では、上記予熱温度の管理を行うことは、得られるフィルムの厚み精度を維持したり、改善したりするためには重要となる。
原反フィルムを延伸するときの延伸温度は、特に限定されるものではなく、製造する延伸フィルムに要求される機械的強度、表面性、および厚み精度等に応じて、変更すればよい。一般的には、DSC法によって求めた原反フィルム(アクリル系樹脂組成物)のガラス転移温度をTgとした時に、(Tg−30℃)〜(Tg+30℃)の温度範囲とすることが好ましく、(Tg−20℃)〜(Tg+30℃)の温度範囲とすることがより好ましく、(Tg)〜(Tg+30℃)の温度範囲とすることがさらに好ましく、(Tg+10℃)〜(Tg+30℃)の温度範囲とすることがさらに好ましい。すなわち光学フィルムの二軸延伸の延伸温度は、アクリル系樹脂組成物のガラス転移温度をTgとしたとき、Tg−30℃以上Tg+30℃以下の温度範囲であることが好ましい。
延伸温度が上記温度範囲内であれば、得られる延伸フィルムの厚みムラを低減し、さらに、伸び率、引裂伝播強度、およびMIT耐屈曲性の力学的性質を良好なものとすることができる。また、フィルムがロールに粘着するといったトラブルの発生を防止することができる。
一方、延伸温度が上記温度範囲よりも高くなると、得られる延伸フィルムの厚みムラが大きくなったり、伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質が十分に改善できなかったりする傾向がある。さらに、フィルムがロールに粘着するといったトラブルが発生しやすくなる傾向がある。
また、延伸温度が上記温度範囲よりも低くなると、得られる延伸フィルムの内部ヘイズが大きくなったり、極端な場合には、フィルムが裂けたり、割れたりするといった工程上の問題が発生したりする傾向がある。
上記原反フィルムを延伸する場合、その延伸倍率もまた、特に限定されるものではなく、製造する延伸フィルムの機械的強度、表面性、および厚み精度等に応じて、決定すればよい。延伸温度にも依存するが、延伸倍率は、一般的には、1.1倍〜3倍の範囲で選択することが好ましく、1.3倍〜2.5倍の範囲で選択することがより好ましく、1.5倍〜2.3倍の範囲で選択することがさらに好ましい。
延伸倍率が上記範囲内であれば、フィルムの伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質を大幅に改善することができる。それゆえ、厚みムラが5μm以下であり、さらに、内部ヘイズが1.0%以下である延伸フィルムを製造することができる。
(アクリル系樹脂)
本発明で使用する(A)アクリル系樹脂はガラス転移温度が120℃以上である。アクリル系樹脂のガラス転移温度が120℃未満であると、脂肪族ポリアミド樹脂と混合したアクリル系樹脂組成物フィルムのガラス転移温度が低くなり、ひいては高温環境下でのフィルムの寸法変化が大きくなる。実使用上、他の光学フィルムと積層することが多く、その場合反りが発生する可能性がある。
ここで、ガラス転移温度が120℃以上のアクリル系樹脂としては、主鎖に環構造を有しているアクリル系樹脂を好適に利用することができる。例えば、その環構造としてグルタルイミド環、ラクトン環、無水マレイン酸、マレイミド及び無水グルタル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の環構造を挙げることができる。これらによれば、耐熱性付与が可能となる。また、その中でも、特に環構造がグルタルイミドであることが、生産の簡便性やコスト、湿気に対する品質安定性の観点で好ましい。
また、ガラス転移温度が120℃以上のアクリル系樹脂としては、メタクリル酸などの酸構造を導入する手法が挙げられるが、脂肪族ポリアミド樹脂((B)成分)の種類によっては、架橋体を形成するリスクが起きたり、製膜するときに発泡するリスクが増大するため、ある一定量以上は抑えることが好ましい。具体的にはアクリル系樹脂中の酸成分の量は0.6mmol/g以下、好ましくは0.4mmol/g以下であることが好ましい。
ガラス転移温度が120℃以上のアクリル系樹脂中の環構造の含有量は2重量%〜30重量%の範囲であることが好ましい。この範囲内で環構造の含有量が多いとガラス転移温度が上がり、環構造の含有量が少ないと位相差が小さくなるので好ましい。アクリル系樹脂中の環構造の含有量は、1H−NMR BRUKER AvanceIII(400MHz)を用いて、対象となる環構造部分とそれ以外の部分のモル比を測定し、重量換算を行い算出した。
以下、各環構造について説明する。
環構造としてグルタルイミドを有するアクリル系樹脂は、下記一般式(1)で表されるグルタルイミド単位とメタクリル酸メチル単位とを含有する樹脂であり、アクリル酸エステル単位が1重量%未満であるポリメタクリル酸メチルを加熱溶融し、ポリメタクリル酸メチルに対してイミド化剤で処理することによって得られる。
Figure 0006310351
(ここで、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、R3は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基を示す。)
本発明に係るグルタルイミド環の含有量は、例えば以下の方法で測定できる値である。1H−NMR BRUKER AvanceIII(400MHz)を用いて、樹脂の1H−NMR測定を行う。3.5から3.8ppm付近のメタクリル酸メチルのO−CH3プロトン由来のピークの面積Aと、3.0から3.3ppm付近のグルタルイミドのN−CH3プロトン由来のピークの面積Bより、求められたモル比を用いて重量換算を行う。
グルタルイミド環の含有量が2重量%未満であると所望の耐熱性を付与することが出来ない場合があり、30重量%を超えるとイミド化剤の添加量が増加することや、残存揮発成分の増加による臭気や、厚み方向位相差Rthが増大する場合がある。
この工程において、メタクリル酸メチル以外にも、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなども併用しても良いが、これらを併用する場合はアクリル酸エステル単位が1重量%未満であることが好ましい。さらにアクリル酸メチル単位が0.5重量%未満であることがより好ましく、0.3重量%未満であることがさらに好ましい。
また上記モノマー以外にも、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体を共重合することも可能である。
上記ポリメタクリル酸メチル樹脂の構造は、特に限定されるものではなく、リニアー(線状)ポリマー、ブロックポリマー、コアシェルポリマー、分岐ポリマー、ラダーポリマー、および架橋ポリマー等のいずれであってもよい。
ブロックポリマーの場合、A−B型、A−B−C型、A−B−A型、およびこれら以外のタイプのブロックポリマーのいずれであってもよい。コアシェルポリマーの場合、ただ一層のコアおよびただ一層のシェルのみからなるものであってもよいし、それぞれが多層からなるものであってもよい。
ポリメタクリル酸メチル樹脂の製造方法としては特に限定されず、公知の乳化重合法、乳化−懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法などが適用可能であるが、光学分野に用いる場合、不純物が少ないとの観点から、塊状重合法、溶液重合法が特に好ましい。例えば、特開昭56−8404、特公平6−86492、特公平7−37482、あるいは特公昭52−32665などに記載の方法に準じて製造できる。
本発明の製造方法は、上記ポリメタクリル酸メチル樹脂を加熱溶融して、イミド化剤で処理する工程(イミド化工程)を含む。これによりグルタルイミドを有するアクリル系樹脂が製造できる。
上記イミド化剤は、上記一般式(1)で表されるグルタルイミド環を生成できるものであれば特に制限されず、WO2005/054311記載のもの等が挙げられる。具体的には、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン等の脂肪族炭化水素基含有アミン、アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、トリクロロアニリン等の芳香族炭化水素基含有アミン、シクロヘキシルアミン等などの脂環式炭化水素基含有アミンを挙げることができる。
また、尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素、1,3−ジプロピル尿素のように、加熱により、上記例示したアミンを発生する尿素系化合物を用いることもできる。
上記例示したイミド化剤のうち、コスト、物性の面からメチルアミン、アンモニア、シクロヘキシルアミンを用いることが好ましく、メチルアミンを用いることが特に好ましい。
また、常温にてガス状のメチルアミンなどは、メタノールなどのアルコール類に溶解させた状態で使用してもよい。
このイミド化の工程において、上記イミド化剤の添加割合を調整することにより、得られるアクリル系樹脂におけるグルタルイミド単位および(メタ)アクリル酸エステル単位の割合を調整することができる。
また、イミド化の程度を調整することにより、得られるアクリル系樹脂の物性や、本発明にかかるアクリル系樹脂を成形してなる光学用フィルムの光学特性等を調整することができる。
イミド化剤はポリメタクリル酸メチル樹脂100重量部に対して0.5〜20重量部であることが好ましい。イミド化剤の添加量が上記範囲を超えると、樹脂中にイミド化剤が残存し、成型後の外観欠陥や発泡を誘発することがある。また、イミド化剤の添加量が上記範囲を下回ると、最終的に得られる樹脂組成物のグルタルイミド環の含有量が低くなるためその耐熱性が著しく低下し、成型後の外観欠陥を誘発することがある。
なお、このイミド化の工程においては、上記イミド化剤に加えて、必要に応じて、閉環促進剤(触媒)を添加してもよい。
加熱溶融し、イミド化剤と処理する方法は、特に限定されなく、従来公知のあらゆる方法を用いることができる。例えば、押出機や、バッチ式反応槽(圧力容器)等を用いる方法により、上記ポリメタクリル酸メチル樹脂をイミド化することができる。
押出機を用いて加熱溶融し、イミド化剤と処理する場合、用いる押出機は特に限定されるものではなく、各種押出機を用いることができる。具体的には、例えば、単軸押出機、二軸押出機または多軸押出機等を用いることができる。
中でも、二軸押出機を用いることが好ましい。二軸押出機によれば、ポリメタクリル酸メチル樹脂に対するイミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)の混合を促進することができる。
二軸押出機としては、非噛合い型同方向回転式、噛合い型同方向回転式、非噛合い型異方向回転式、および噛合い型異方向回転式等を挙げることができる。中でも、噛合い型同方向回転式を用いることが好ましい。噛合い型同方向回転式の二軸押出機は、高速回転可能であるため、原料ポリマーに対するイミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)の混合を、より一層促進することができる。
上記例示した押出機は単独で用いてもよいし、複数を直列につないで用いてもよい。例えば、特開2008−273140に記載のタンデム型反応押出機を用いることができる。
押出機中でイミド化を行う場合は、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂を押出機の原料投入部から投入し、該樹脂を溶融させ、シリンダ内を充満させた後、添加ポンプを用いてイミド化剤を押出機中に注入することにより、押出機中でイミド化反応を進行させることができる。
この場合、押出機中での反応ゾーンの温度(樹脂温度)を180℃〜270℃にて行うことが好ましく、さらに200〜250℃にて行うことがより好ましい。反応ゾーンの温度(樹脂温度)が180℃未満では、イミド化反応がほとんど進行せず、耐熱性が低下する傾向にある。反応ゾーン温度が270℃を超えると、樹脂の分解が著しくなることから、得られるアクリル系樹脂から形成しうるフィルムの耐折曲性が低下する傾向がある。ここで、押出機中での反応ゾーンとは、押出機のシリンダにおいて、イミド化剤の注入位置から樹脂吐出口(ダイス部)までの間の領域をいう。
押出機の反応ゾーン内での反応時間を長くすることにより、イミド化をより進行させることができる。押出機の反応ゾーン内の反応時間は10秒より長くするのが好ましく、さらには30秒より長くするのがより好ましい。10秒以下の反応時間ではイミド化がほとんど進行しない可能性がある。
押出機での樹脂圧力は、大気圧〜50MPaの範囲内とすることが好ましく、さらには1MPa〜30MPaの範囲内が好ましい。1MPa未満ではイミド化剤の溶解性が低く、反応の進行が抑えられる傾向がある。また、50MPa以上では通常の押出機の機械耐圧の限界を越えてしまい、特殊な装置が必要となりコスト的に好ましくない。
また、押出機を使用する場合は、未反応のイミド化剤や副生物を除去するために、大気圧以下に減圧可能なベント孔を装着することが好ましい。このような構成によれば、未反応のイミド化剤、もしくはメタノール等の副生物やモノマー類を除去することができる。
また、上記グルタルイミド環を含有するアクリル系樹脂の製造には、押出機に代えて、例えば住友重機械(株)製のバイボラックのような横型二軸反応装置やスーパーブレンドのような竪型二軸攪拌槽などの高粘度対応の反応装置も好適に用いることができる。
上記グルタルイミド環を含有するアクリル系樹脂を、バッチ式反応槽(圧力容器)を用いて製造する場合、そのバッチ式反応槽(圧力容器)の構造は特に限定されるものでない。
具体的には、ポリメタクリル酸メチル樹脂を加熱により溶融させ、攪拌することができ、イミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)を添加することができる構造を有していればよいが、攪拌効率が良好な構造を有するものであることが好ましい。
このようなバッチ式反応槽(圧力容器)によれば、反応の進行によりポリマー粘度が上昇し、撹拌が不十分となることを防止することができる。このような構造を有するバッチ式反応槽(圧力容器)としては、例えば、住友重機械(株)製の攪拌槽マックスブレンド等を挙げることができる。
イミド化方法の具体例としては、例えば、特開2008−273140、特開2008−274187記載の方法など公知の方法をあげることができる。
本発明の製造方法では、上記イミド化工程に加え、エステル化剤で処理する工程を含むことができる。このエステル化工程によって、イミド化工程で得られたイミド化樹脂の酸価を所望の範囲内に調整することができる。
エステル化剤としては、例えば、ジメチルカーボネート、2,2−ジメトキシプロパン、ジメチルスルホキシド、トリエチルオルトホルメート、トリメチルオルトアセテート、トリメチルオルトホルメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルサルフェート、メチルトルエンスルホネート、メチルトリフルオロメチルスルホネート、メチルアセテート、メタノール、エタノール、メチルイソシアネート、p−クロロフェニルイソシアネート、ジメチルカルボジイミド、ジメチル−t−ブチルシリルクロライド、イソプロペニルアセテート、ジメチルウレア、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ジメチルジエトキシシラン、テトラ−N−ブトキシシラン、ジメチル(トリメチルシラン)フォスファイト、トリメチルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、ジアゾメタン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、コスト、反応性などの観点から、ジメチルカーボネート、トリメチルオルトアセテートが好ましく、コストの観点からジメチルカーボネートが好ましい。
このイミド化の工程において、エステル化剤はポリメタクリル酸メチル樹脂100重量部に対して0〜12重量部であることが好ましく、0〜8重量部であることがより好ましい。
エステル化剤が上記範囲内であれば酸価を適切な範囲に調整できる。一方上記範囲を外れると未反応のエステル化剤が樹脂中に残存する可能性があり、当該樹脂を使って成型を行った際、発泡や臭気発生の原因となることがある。
上記エステル化剤に加え、触媒を併用することもできる。触媒の種類は特に限定されるものではないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族3級アミンが挙げられる。これらの中でもコスト、反応性などの観点からトリエチルアミンが好ましい。
このエステル化工程では、エステル化剤によって処理することなく、加熱処理等のみを行うこともできる。加熱処理(押出機内での溶融樹脂の混練/分散)のみを行った場合、イミド化工程にて副生したイミド樹脂中のカルボン酸同士の脱水反応および/またはカルボン酸とアルキルエステル基の脱アルコール反応、等によりカルボン酸の一部または全部を酸無水物基とすることができる。このとき、閉環促進剤(触媒)を使用することも可能である。
エステル化剤によって処理する場合であっても、加熱処理による酸無水物基化が進行させることも可能である。
イミド化工程およびエステル化工程を経たイミド樹脂中には、未反応のイミド化剤や、未反応のエステル化剤、反応により副生した揮発成分および樹脂分解物等を含んでいるため、大気圧以下に減圧可能なベント口を装着することが可能である。
環構造としてラクトン環を有するアクリル系樹脂は、分子内にラクトン環構造を持つ熱可塑性の重合体(分子鎖中にラクトン環構造が導入された熱可塑性の重合体)であれば、限定はされず、その製造方法についても限定されないが、好ましくは、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)を重合によって得た(重合工程)後に、得られた重合体(a)を加熱処理することによりラクトン環構造を重合体に導入する(ラクトン環化縮合工程)ことによって得られる。
重合工程においては、下記一般式(2)で表される不飽和単量体を含む単量体成分の重合反応を行うことにより、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得る。
Figure 0006310351
(ただし、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
上記一般式(2)で表される不飽和単量体としては、例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ノルマルブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ターシャリーブチルなどが挙げられる。なかでも、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、耐熱性向上効果が高い点で、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが特に好ましい。これらの不飽和単量体は1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
単量体成分中の、上記一般式(2)で表される不飽和単量体の含有割合は、5〜50重量%が好ましく、より好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは10〜30重量%である。上記含有割合が5重量%よりも少ないと、得られるラクトン環含有重合体の耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が低下するおそれがあり、50重量%よりも多いと、ラクトン環構造を形成する際に架橋反応が起こってゲル化し易くなり、流動性が低下して溶融成形しにくくなる場合があったり、未反応の水酸基が残りやすくなるために成形の際にさらに縮合反応が進行して揮発性物質が発生してシルバーストリークが入りやすくなったり、厚み方向位相差Rthが増大するなどのおそれがある。
単量体成分は、上記一般式(2)で表される不飽和単量体以外の、その他の単量体を含むことが好ましい。該その他の単量体としては、本発明の効果を損なわない範囲で選択すれば、限定はされないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、下記一般式(3)で表される不飽和単量体が好ましく挙げられる。上記その他の単量体は、1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
Figure 0006310351
(ただし、R6は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R7基、または−C−O−R8基を表し、Ac基はアセチル基を表し、R7およびR8は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、上記一般式(2)で表される不飽和単量体以外の(メタ)アクリル酸エステルであれば、限定はされないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル;が挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよい。なかでも特に、耐熱性、透明性の点から、メタクリル酸メチルが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合、単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、10〜95重量%が好ましく、より好ましくは10〜90重量%、さらに好ましくは40〜90重量%、特に好ましくは50〜90重量%である。
(脂肪族ポリアミド樹脂)
本発明で使用する(B)脂肪族ポリアミド樹脂は、アミド結合を有する樹脂であり、好ましくは融点は195℃以下であり、さらに好ましくは190℃以下であり、さらに好ましくは180℃以下であれば、特に限定はされない。代表例としては、ナイロン樹脂であり、11−ナイロン(融点:187℃)、12−ナイロン(融点:176℃)が一般的である。特に溶融時のアクリル系樹脂とのゲル化に起因するフィルム欠陥発生の観点から、原料モノマーがアミノカルボン酸化合物もしくは/またはラクタム化合物であることが好ましく、ジアミン系化合物を使用しないことが好ましい。
また、脂肪族ポリアミド樹脂の融点が195℃以下であると、アクリル系樹脂との混練時に脂肪族ポリアミド樹脂の安定した溶融状態が得られ、結果として欠陥の少ないフィルムが得られる。一方で、代表的な脂肪族ポリアミド樹脂である6−ナイロン(融点:225℃)は混練温度や混練時間にもよるが、安定した溶融状態が得られない可能性が高い。
代表的な原料モノマーとしては、ウンデカンラクタム、ラウリルラクタム、アミノウンデカン酸、アミノドデカン酸が挙げられ、これらは単一種であるホモポリマーであっても複数種を用いた共重合ポリマーであっても良い。
脂肪族ポリアミド樹脂の数平均分子量は10,000〜50,000であることが好ましく、さらには15,000〜30,000であることが好ましい。数平均分子量が10,000よりも低い場合は平均分散粒径が大きくなる場合があり、内部ヘイズが0.3%を超える場合がある。数平均分子量が50,000よりも高い場合は、(A)成分と(B)成分を混合した溶融樹脂の粘度が上昇し、加工性が悪化する場合がある。
本発明の脂肪族ポリアミド樹脂としては、宇部興産株式会社製「UBEナイロン」、宇部興産株式会社製「UBESTA」、宇部興産株式会社製「UBEナイロン66」、東レ株式会社製「アミラン」、ユニチカ株式会社製「ユニチカナイロン」、ダイセル・エボニック株式会社製「ダイアミド」、ダイセル・エボニック株式会社製「ベスタミド」等が挙げられる。
(アクリル系樹脂組成物)
本発明の光学フィルムを構成するアクリル系樹脂組成物中の、脂肪族ポリアミド樹脂の配合割合は、好ましく1〜40重量%であり、さらに好ましくは2〜30重量%であり、さらに好ましくは2〜15重量%である。脂肪族ポリアミド樹脂の配合割合が低いとMIT耐屈曲性が十分ではなく、配合割合が多いと添加する脂肪族ポリアミド樹脂によっては透明性が悪化する可能性があったり、アクリル系樹脂組成物のガラス転移温度の低下が大きい場合がある。
また本発明の光学フィルムを構成するアクリル樹脂組成物のガラス転移温度は115℃以上であることが好ましく、さらには120℃以上であることが好ましい。ここでのガラス転移温度は示差走査熱量計(DSC、(株)SII製、DSC7020)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minで測定し、中点法により解析した値と定義した。ガラス転移温度が115℃であると、偏光子保護フィルムに代表される液晶パネルを構成するフィルムとして積層したときに寸法変化が小さく、また寸法変化に伴う積層フィルムの反りが小さくかつ位相差変化が小さくなり、実使用上の不具合が少ない。
上記、アクリル系樹脂組成物には、必要に応じ、一般に用いられる酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤などの耐光性安定剤や、位相差調整剤、触媒、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、収縮防止剤、抗菌・脱臭剤、蛍光増白剤、相溶化剤等を単独または2種以上組み合わせて、本発明の目的を損なわない範囲であれば添加してもよい。
紫外線吸収剤については、例えば、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾオキサジン系化合物およびオキサジアゾール系化合物等が挙げられる。これらの中でも添加量に対する紫外線吸収性能や溶融押出をする場合、揮発性の観点でトリアジン系化合物が好ましい。
位相差調整剤については、負の位相差を付与する場合は、例えばスチレン骨格を持つ化合物であればよく、アクリロニトリル−スチレン共重合体が例示される。
(A)成分のアクリル系樹脂と(B)成分の脂肪族ポリアミド樹脂の混合方法に関しては、特に限定されなく、従来公知のあらゆる方法を用いることができる。例えば、押出機や(A)成分および(B)成分ともに可溶な溶媒により溶液の状態で混合する等が挙げられる。
押出機を用いて混合する場合、用いる押出機は特に限定されるものではなく、各種押出機を用いることができる。具体的には単軸押出機、二軸押出機または多軸押出機等を用いることができる。中でも二軸押出機を用いることが好ましい。二軸押出機によれば、(A)成分と(B)成分を均一混合する条件の自由度が広い。
本発明における(B)成分と混合する前の(A)成分の状態、および/もしくは(A)成分と(B)成分の混合した状態において、樹脂中の異物低減を目的として、押出機の最後にフィルターを設置することも可能である。フィルターの前にはアクリル系樹脂/アクリル系樹脂組成物を昇圧するためにギアポンプを設置した方が好ましい。フィルターの種類としては、溶融ポリマーからの異物除去が可能なステンレス製のリーフディスクフィルターを使用するのが好ましく、フィルターエレメントとしてはファイバータイプ、パウダータイプ、あるいはそれらの複合タイプを使用するのが好ましい。
(用途)
本発明に係るフィルムの用途は特に限定されるものではないが、例えば、カメラやVTR、プロジェクター用の撮影レンズやファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズなどの映像分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤーなどの光ディスク用ピックアップレンズなどのレンズ分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤーなどの光ディスク用の光記録分野、液晶用導光板、偏光子保護フィルムや位相差フィルムなどの液晶ディスプレイ用フィルム、表面保護フィルムなどの情報機器分野、光ファイバ、光スイッチ、光コネクターなどの光通信分野、自動車ヘッドライトやテールランプレンズ、インナーレンズ、計器カバーなどの車両分野、等に好適に用いることができる。
本発明に係るフィルムは、上説したように光学的に透明であることやアクリル系材料が主材であることから、耐透湿性に優れることから、偏光子保護フィルムに好適に用いることができる。ここでの偏光子は特に限定されるものではなく、従来公知の任意の偏光子を用いることができる。具体的には延伸されたポリビニルアルコールにヨウ素を含有させて得た偏光子等を挙げることができる。
本発明について、実施例および比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。
(ガラス転移温度)
アクリル系樹脂およびアクリル系樹脂組成物10mgを用いて、示差走査熱量計(DSC、(株)SII製、DSC7020)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minで測定し、中点法により決定した。
(融点)
脂肪族ポリアミド樹脂を示差熱熱重量同時測定装置(TG/DTA、(株)SII製、TG/DTA7200)を用いて、窒素雰囲気中、昇温速度20℃/minで測定を行った。
(MIT耐屈曲試験)
フィルムを幅15mmの短冊型試験片を作成し、東洋精機(株)製のMIT耐柔疲労試験機型式Dを用いて、試験荷重1.96N、速度175回/分、折り曲げクランプの曲率半径Rは0.38mm、折り曲げ角度は左右へ135°で測定した。
(内部ヘイズ)
フィルムを日本電色工業(株)製ヘイズメーターNDH2000を用いて測定した。内部ヘイズは、液体測定用ガラスセルに得られたフィルムをいれ、フィルムの両面に純水が接触するように測定した。
(平均屈折率)
(株)アタゴ社製アッベ屈折計3Tを用いて測定した。
(環構造の含有量の算出)
得られたアクリル系樹脂を1H−NMR BRUKER AvanceIII(400MHz)を用いて測定を行った。対象となる環構造部分とそれ以外の部分のモル比から重量換算を行い算出した。具体的にグルタルイミドのケースでは、3.5から3.8ppm付近のメタクリル酸メチルのO−CH3プロトン由来のピークの面積Aと、3.0から3.3ppm付近のグルタルイミドのN−CH3プロトン由来のピークの面積Bより、求められたモル比を用いて重量換算を行い算出できる。
(伸度)
フィルムを(株)島津製作所製オートグラフAGS−Jを用いて、JIS K7161に準拠して測定した。フィルムサイズは150mm×15mmの短冊状に作成し、チャック間距離は50mm、引張速度は200mm/minで測定を行った。
(平均分散粒径)
得られた延伸フィルムを(株)日立ハイテクノロジーズ製、透過型電子顕微鏡H−7650を用いて観察を行った。平均分散粒径は、延伸フィルムのMD方向にカットした断面の濃く染色された分散体を大きいものから5点抽出し、フィルム長手方向、幅方向、厚み方向の平均で算出した。
(厚み方向位相差Rth)
得られた延伸フィルムを王子計測機器(株)製、位相差測定装置KOBRA−WRを用いて測定を行った。測定波長590nmで行った。
(滞留熱安定性試験)
得られたアクリル系樹脂組成物を(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1D PMD−Cを用いて測定を行った。予め270℃に加熱したシリンダーにアクリル系樹脂組成物を溶融状態で詰め、せん断速度24sec−1の条件で押出した時の粘度上昇の有無を評価した。
(アクリル樹脂製造例1)
使用した押出機は口径40mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機(L/D=90)である。押出機の各温調ゾーンの設定温度を250〜280℃、スクリュー回転数は85rpmとした。ポリメタクリル酸メチル樹脂(Mw:10.5万)を42.4kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルから樹脂に対して1.8重量部のモノメチルアミン(三菱ガス化学株式会社製)を注入した。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰のメチルアミンをベント口の圧力を−0.092MPaに減圧して除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することにより、樹脂(I)を得た。
次いで、口径40mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機にて、押出機各温調ゾーンの設定温度を240〜260℃、スクリュー回転数102rpmとした。ホッパーから得られた樹脂(I)を41kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルから樹脂に対して0.56重量部の炭酸ジメチルを注入し樹脂中のカルボキシル基の低減を行った。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰の炭酸ジメチルをベント口の圧力を−0.092MPaに減圧して除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化し、グルタルイミド環を有するアクリル系樹脂(A1)を得た。
当該アクリル系樹脂(A1)のグルタルイミド含有量は6重量%、ガラス転移温度は125℃、平均屈折率は1.50であった。
(実施例1)
上記、アクリル系樹脂製造例1で製造したアクリル系樹脂(A1)97重量部に対して、(B)成分としてUBESTA3020U(宇部興産株式会社製、12−ナイロン、融点176℃、平均屈折率1.50)(B1)を3重量部に計量した混合物を、口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機(L/D=30)にて混練した。ホッパーから樹脂混合物を2kg/hrで供給し、押出機各温調ゾーンの設定温度を260℃、スクリュー回転数300rpmとした。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化し、アクリル系樹脂組成物(C1)を得た。
得られたアクリル系樹脂組成物(C1)を、100℃5時間乾燥後、押出機出口にTダイを備えた口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機(L/D=30)を用いて製膜した。ホッパーからアクリル系樹脂組成物(C1)を2kg/hrで供給し、押出機各温調ゾーンの設定温度を260℃、スクリュー回転数150rpmとした。押出機出口に設けられたTダイから押し出されたシート状の溶融樹脂を冷却ロールで冷却して幅120mm、厚み160μmの原反フィルム(D1)を得た。
このフィルムについて、上記の方法に従って、ガラス転移温度を測定した結果、125℃であった。
得られた原反フィルム(D1)を、(株)井元製作所製、二軸延伸装置(IMC−1905)を用いて、延伸倍率2倍(縦・横)、ガラス転移温度より7℃高い温度で同時二軸延伸を行い、二軸延伸フィルムを作成した。
この二軸延伸フィルムについて、平均分散粒径を測定したところ、150nmであった。さらに、上記の方法に従って、MIT耐屈曲試験、伸度、内部ヘイズ、厚み方向位相差Rthを測定した。結果を表1に示す。
Figure 0006310351
(実施例2)
アクリル系樹脂製造例1で製造したアクリル系樹脂(A1)95重量部に対して(B)成分としてUBESTA3020U(B1)を5重量部に計量した以外は実施例1と同様の操作を行い、原反フィルム(D2)を得た。
このフィルムについて上記の方法に従って、ガラス転移温度を測定した結果、124℃であった。
得られた原反フィルム(D2)を(株)井元製作所製、二軸延伸装置(IMC−1905)を用いて、延伸倍率2倍(縦・横)、ガラス転移温度より7℃高い温度で同時二軸延伸を行い、二軸延伸フィルムを作成した。
この二軸延伸フィルムについて、上記の方法に従って、MIT耐屈曲試験、伸度、内部ヘイズ、厚み方向位相差Rthを測定した。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例2で得られた原反フィルム(D2)を(株)井元製作所製、二軸延伸装置(IMC−1905)を用いて、延伸倍率2倍(縦・横)、ガラス転移温度より20℃高い温度で同時二軸延伸を行い、二軸延伸フィルムを作成した。
得られた二軸延伸フィルムの平均分散粒径は200nmであった。
この二軸延伸フィルムについて、上記の方法に従って、MIT耐屈曲試験、伸度、内部ヘイズ、厚み方向位相差Rthを測定した。結果を表1に示す。
(実施例4)
アクリル系樹脂製造例1で製造したアクリル系樹脂(A1)90重量部に対して(B)成分としてUBESTA3020U(B1)を10重量部に計量した以外は実施例1と同様の操作を行い、アクリル系樹脂組成物(C3)および、原反フィルム(D3)を得た。
アクリル系樹脂組成物(C3)を用いて、滞留熱安定性試験を行ったところ、粘度上昇の挙動は見られなかった。
このフィルムについて上記の方法に従って、ガラス転移温度を測定した結果、125℃であった。
得られた原反フィルム(D3)を(株)井元製作所製、二軸延伸装置(IMC−1905)を用いて、延伸倍率2倍(縦・横)、ガラス転移温度より7℃高い温度で同時二軸延伸を行い、二軸延伸フィルムを作成した。
この二軸延伸フィルムについて、上記の方法に従って、MIT耐屈曲試験、伸度、内部ヘイズ、厚み方向位相差Rthを測定した。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例4で得られた原反フィルム(D3)を(株)井元製作所製、二軸延伸装置(IMC−1905)を用いて、延伸倍率2倍(縦・横)、ガラス転移温度より20℃高い温度で同時二軸延伸を行い、二軸延伸フィルムを作成した。
得られた二軸延伸フィルムの平均分散粒径は240nmであった。
この二軸延伸フィルムについて、上記の方法に従って、MIT耐屈曲試験、伸度、内部ヘイズ、厚み方向位相差Rthを測定した。結果を表1に示す。
(実施例6)
アクリル系樹脂製造例1で製造したアクリル系樹脂(A1)85重量部に対して(B)成分としてUBESTA3020U(B1)を15重量部に計量した以外は実施例1と同様の操作を行い、原反フィルム(D4)を得た。
このフィルムについて上記の方法に従って、ガラス転移温度を測定した結果、124℃であった。
得られた原反フィルム(D4)を(株)井元製作所製、二軸延伸装置(IMC−1905)を用いて、延伸倍率2倍(縦・横)、ガラス転移温度より20℃高い温度で同時二軸延伸を行い、二軸延伸フィルムを作成した。
この二軸延伸フィルムについて、上記の方法に従って、MIT耐屈曲試験、伸度、内部ヘイズ、厚み方向位相差Rthを測定した。結果を表1に示す。
(実施例7)
アクリル系樹脂製造例1で製造したアクリル系樹脂(A1)95重量部に対して(B)成分としてUBESTA3020U(B1)を5重量部、および紫外線吸収剤としてTinuvin460(BASF株式会社製)を1重量部に計量した以外は実施例1と同様の操作を行い、原反フィルム(D5)を得た。
このフィルムについて上記の方法に従って、ガラス転移温度を測定した結果、125℃であった。
得られた原反フィルム(D5)を(株)井元製作所製、二軸延伸装置(IMC−1905)を用いて、延伸倍率2倍(縦・横)、ガラス転移温度より20℃高い温度で同時二軸延伸を行い、二軸延伸フィルムを作成した。
この二軸延伸フィルムについて、上記の方法に従って、MIT耐屈曲試験、伸度、内部ヘイズ、厚み方向位相差Rthを測定した。結果を表1に示す。
(実施例8)
上記、アクリル系樹脂製造例1で製造したアクリル系樹脂(A1)90重量部に対して、UBESTA XPA9068(宇部興産株式会社製、アミド系エラストマー、ジアミンおよびジカルボン酸の縮合重合体、融点176℃、平均屈折率1.50)(B2)を10重量部に計量した混合物を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、アクリル系樹脂組成物(C6)および、原反フィルム(D6)を得た。
アクリル系樹脂組成物(C6)を用い、滞留熱安定性試験を行ったところ、粘度上昇の挙動は見られなかった。
このフィルムについて上記の方法に従って、ガラス転移温度を測定した結果、125℃であった。
得られた原反フィルム(D6)を(株)井元製作所製、二軸延伸装置(IMC−1905)を用いて、延伸倍率2倍(縦・横)、ガラス転移温度より7℃高い温度で同時二軸延伸を行い、二軸延伸フィルムを作成した。
この二軸延伸フィルムについて、上記の方法に従って、MIT耐屈曲試験、伸度、内部ヘイズ、厚み方向位相差Rthを測定した。結果を表1に示す。
(比較例1)
上記、アクリル系樹脂製造例1で製造したアクリル系樹脂(A1)100重量部のみで、(B)成分である脂肪族ポリアミド樹脂を添加しなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行い、原反フィルム(D7)を得た。
アクリル系樹脂(A1)を用い、滞留熱安定性試験を行ったところ、粘度上昇の挙動は見られなかった。
このフィルムについて上記の方法に従って、ガラス転移温度を測定した結果、125℃であった。
得られた原反フィルム(D7)を(株)井元製作所製、二軸延伸装置(IMC−1905)を用いて、延伸倍率2倍(縦・横)、ガラス転移温度より7℃高い温度で同時二軸延伸を行い、二軸延伸フィルムを作成した。
この二軸延伸フィルムについて、上記の方法に従って、MIT耐屈曲試験、伸度、内部ヘイズ、厚み方向位相差Rthを測定した。結果を表1に示す。
(比較例2)
上記、アクリル系樹脂製造例1で製造したアクリル系樹脂(A1)90重量部に対して、セプトンS2104(株式会社クラレ製、スチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレンのトリブロック体、平均屈折率1.54)(B3)を10重量部に計量した混合物を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、原反フィルム(D8)を得た。
このフィルムについて上記の方法に従って、ガラス転移温度を測定した結果、125℃であった。
得られた原反フィルム(D8)を(株)井元製作所製、二軸延伸装置(IMC−1905)を用いて、延伸倍率2倍(縦・横)、ガラス転移温度より7℃高い温度で同時二軸延伸を行い、二軸延伸フィルムを作成した。
この二軸延伸フィルムについて、上記の方法に従って、MIT耐屈曲試験、伸度、内部ヘイズ、厚み方向位相差Rthを測定した。結果を表1に示す。
(比較例3)
上記、アクリル系樹脂製造例1で製造したアクリル系樹脂(A1)90重量部に対して、セプトンS4099(株式会社クラレ製、スチレン系熱可塑性エラストマー)(B4)を10重量部に計量した混合物を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、原反フィルム(D9)を得た。
このフィルムについて上記の方法に従って、ガラス転移温度を測定した結果、125℃であった。
得られた原反フィルム(D9)を(株)井元製作所製、二軸延伸装置(IMC−1905)を用いて、延伸倍率2倍(縦・横)、ガラス転移温度より7℃高い温度で同時二軸延伸を行い、二軸延伸フィルムを作成した。
この二軸延伸フィルムについて、上記方法に従って、MIT耐屈曲試験、伸度、内部ヘイズ、厚み方向位相差Rthを測定した。結果を表1に示す。
(比較例4)
上記、アクリル系樹脂製造例1で製造したアクリル系樹脂(A1)90重量部に対して、YSポリスターG150(ヤスハラケミカル株式会社製、テルペンフェノール樹脂)(B5)を10重量部に計量した混合物を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、原反フィルム(D10)を得た。
このフィルムについて上記の方法に従って、ガラス転移温度を測定した結果、123℃であった。
得られた原反フィルム(D10)を(株)井元製作所製、二軸延伸装置(IMC−1905)を用いて、延伸倍率2倍(縦・横)、ガラス転移温度より7℃高い温度で同時二軸延伸を行い、二軸延伸フィルムを作成した。
この二軸延伸フィルムについて、上記方法に従って、MIT耐屈曲試験、伸度、内部ヘイズ、厚み方向位相差Rthを測定した。結果を表1に示す。

Claims (12)

  1. 以下の成分(A)及び(B)を含有し、MIT耐屈曲試験が光学フィルムの長手方向(MD)および幅方向(TD)のいずれも500回以上であり、内部ヘイズが1.0%以下である光学フィルム。
    (A)ガラス転移温度が120℃以上であるアクリル系樹脂
    (B)融点が195℃以下である脂肪族ポリアミド樹脂
  2. 前記(A)成分の平均屈折率が1.48以上であり、かつ前記(A)成分と前記(B)成分の屈折率差が0.02以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
  3. 前記光学フィルムの以下に定義されるRthが50nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。
    [Rth={(nx+ny)/2−nz}×dである。フィルムの遅相軸方向、進相軸方向および厚さ方向の屈折率をそれぞれnx、ny、nzとし、フィルムの面内の屈折率が最大となる方向を遅相軸方向とする。d(nm)はフィルムの厚みである。]
  4. 前記光学フィルムの伸度が光学フィルムの長手方向(MD)および幅方向(TD)のいずれも10%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学フィルム。
  5. 前記(B)成分の原料モノマーがアミノカルボン酸化合物及び/又はラクタム化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学フィルム。
  6. 前記(A)成分が主鎖に環構造を持つことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学フィルム。
  7. 前記環構造がグルタルイミド環、ラクトン環、無水マレイン酸、マレイミド及び無水グルタル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載の光学フィルム。
  8. 前記(A)成分中の環構造の含有量が2重量%〜30重量%であることを特徴とする請求項6または7に記載の光学フィルム。
  9. 前記環構造が下記一般式(1)を含むことを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の光学フィルム。
    Figure 0006310351
    (ここで、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、R3は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基を示す。)
  10. 前記光学フィルムが溶融押出法により得られることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学フィルム。
  11. 前記光学フィルムが二軸延伸により得られることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学フィルム。
  12. 前記光学フィルムが偏光子保護フィルムであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の偏光子保護フィルム。
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