JP2005088345A - 射出成形用金型及び平板成形品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱可塑性樹脂製平板成形品の射出成形用金型において、該金型が固定型と可動型からなり、可動型又は固定型が周囲4辺の外枠及び平板枠状の入れ子を有し、該平板枠状の入れ子の外側が周囲4辺の外枠と接する長方形であり、該平板枠状の入れ子の内側が平板成形品の形状に切り抜かれてなることを特徴とする射出成形用金型、及び、該射出成形用金型を用いることを特徴とする平板成形品の製造方法。
【選択図】図2
Description
射出成形用金型は、比較的納期が長く、高価なので、射出成形品の金型償却費負担が大きい。また、成形品の切り替えごとに金型を交換すると、その手間と時間的損失が大きく、射出成形機の稼働率が低下する。このために、射出成形用金型に入れ子を着脱することにより、同一の金型を用いて、異なる形状、寸法の射出成形品を成形する試みがなされている。
例えば、同一の金型で複数の異なる筺体を成形する方法として、金型の一部に着脱可能な入れ子部を設け、入れ子部を取り替えることにより、複数の異なる筺体を成形する電気機器における筺体の製造法が提案されている(特許文献1)。また、金型起型面数が1面で済み、切り替えごとに全ての成形金型を成形機から降ろす必要のない樹脂金型装置として、共通形状部分と固有形状部分とからなる樹脂成形品を成形する金型装置において、固有形状部分の成形金型のみを入れ子ユニットとして取り替えることにより、多機種の樹脂成形品の成形を可能とする成形金型装置が提案されている(特許文献2)。さらに、1台の成形用金型で、成形品の長辺寸法のみならず、短辺寸法や厚さについても複数種類に変更することができる寸法可変成形用金型として、寸法固定の可動側金型と、寸法可変の固定側金型からなり、固定側金型は、長辺方向に沿って分割された組み替え式の金型ブロックを圧受板上に連結して形成され、金型ブロックの成形面は、キャビティ内に突設するセパレータを短辺方向に沿って装着することにより、キャビティ内を区画する金型が提案されている(特許文献3)。
しかし、厳密な平面性が要求される光拡散板、導光板、反射板などの成形品には入れ子方式を適用することは困難であった。液晶表示装置に用いられる光拡散板、導光板などの平板成形品は、図1に3例を示すように、同じ15インチ型であっても装置への取り付け方法の相違などにより、平板成形品の周縁部いわゆるミミの形状が異なる。このような成形品に対しては、同一の金型を用い、キャビティ周縁部に形状の異なる入れ子を取り替えて装着し、ミミの形状の異なる成形品を成形する。成形品の入れ子の継ぎ目にあたる部分には段差が生ずる。この段差は液晶表示装置のハウジングの内側に入るように設計し、成形品の光学的有効面である液晶表示装置の光出射面に段差が露出することを避けている。15インチ型と17インチ型のように、有効面の面積の異なる平板成形品を得るために、同一の金型で入れ子方式を適用して設計するので、入れ子の継ぎ目が光学的有効面に位置することが避けられない。このため、射出成形用金型に入れ子を装着してキャビティ形状を変更すると、射出成形品の入れ子の継ぎ目にあたる部分に段差が生じやすい。このことから、より簡便かつ容易に同一の金型を用いて、形状又は寸法の異なる平板成形品を高精度で成形し得る方法が求められていた。
すなわち、本発明は、
(1)熱可塑性樹脂製平板成形品の射出成形用金型において、該金型が固定型と可動型からなり、可動型又は固定型が周囲4辺の外枠及び平板枠状の入れ子を有し、該平板枠状の入れ子の外側が周囲4辺の外枠と接する長方形であり、該平板枠状の入れ子の内側が平板成形品の形状に切り抜かれてなることを特徴とする射出成形用金型、
(2)金型を組み立てた状態で、平板枠状の入れ子の高さから周囲4辺の外枠の高さを減じた差が、+200〜−100μmである第1項記載の射出成形用金型、
(3)平板成形品が、光拡散板である第1項記載の射出成形用金型、
(4)熱可塑性樹脂製平板成形品の射出成形による製造方法において、射出成形用金型が固定型と可動型からなり、可動型又は固定型が周囲4辺の外枠及び平板枠状の入れ子を有し、該平板枠状の入れ子の外側が周囲4辺の外枠と接する長方形であり、該平板枠状の入れ子の内側が平板成形品の形状に切り抜かれてなる射出成形用金型を用いることを特徴とする平板成形品の製造方法、
(5)金型を組み立てた状態で、平板枠状の入れ子の高さから周囲4辺の外枠の高さを減じた差が、+200〜−100μmである第4項記載の平板成形品の製造方法、
(6)熱可塑性樹脂が、脂環式構造を有する樹脂である第4項記載の平板成形品の製造方法、
(7)熱可塑性樹脂が、芳香族ビニル系単量体と低級アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル系単量体との共重合体である第4項記載の平板成形品の製造方法、及び、
(8)平板成形品が、光拡散板である第4項記載の平板成形品の製造方法、
を提供するものである。
図3は、図2に示す金型を用いて17インチ型平板成形品を製造するときの状態を示す金型の平面図及びそのB−B線断面図である。15インチ型平板成形品を製造していた図2に示す状態から、17インチ型成形品を製造する図3に示す状態に切り替えるためには、図2の内側を平板成形品の形状に切り抜いた平板枠状の入れ子4を取り外し、図3の内側を平板成形品の形状に切り抜いた平板枠状の入れ子6を周囲4辺の外枠の内側に嵌合して取り付ける。この平板枠状の入れ子の内側に、溶融した熱可塑性樹脂が射出され、樹脂が冷却され固化して、平板成形品7が製造される。
本発明の射出成形用金型においては、製造される平板成形品の形状は、内側を切り抜いた平板枠状の入れ子のみにより決められるので、ほとんど制約なく平板成形品の形状を選択することができる。例えば、図4に示す2種類の内側を切り抜いた平板枠状の入れ子を用いて、同一の金型を17インチ型平板成形品1個どりと、12インチ型平板成形品2個どりに切り替えることができる。
図5は、本発明方法の実施の一態様の説明図である。本図においては、熱可塑性樹脂の部分をハッチングにより示す。本態様においては、図2に示す金型部分が可動盤に取り付けられた可動側型板8、ランナーとピンポイントゲートが設けられた固定側型板9及びスプルーが設けられたランナーストリッパープレート10を有する3プレート金型が用いられている。金型が閉じられた状態で溶融状態の熱可塑性樹脂が上方から射出され、スプルー、ランナー及びキャビティが溶融樹脂で充填される(図5(1))。溶融樹脂が冷却されて固化したのち、可動盤が後退し、可動側型板と固定側型板の間が開いて、ピンポイントゲート部分の樹脂が切れ、平板成形品が露出する(図5(2))。次いで、可動盤がさらに後退して、固定側型板とランナーストリッパープレートの間が開く(図5(3))。平板成形品11をエジェクタピンにより取り出し、スプルーとランナー12をロボットなどにより取り出したのち、金型を閉じて、射出成形の1サイクルを終了する。形状又は寸法の異なる平板成形品の製造に移行する場合は、内側を平板成形品の形状に切り抜いた平板枠状の入れ子13を交換する。
本発明方法に用いる熱可塑性樹脂に特に制限はなく、例えば、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体樹脂、脂環式構造を有する樹脂、芳香族ビニル系単量体と低級アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル系単量体との共重合体、ポリエーテルスルホンなどを挙げることができる。これらの中で、脂環式構造を有する樹脂及び芳香族ビニル系単量体と低級アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル系単量体との共重合体を好適に用いることができ、脂環式構造を有する樹脂を特に好適に用いることができる。脂環式構造を有する樹脂は、溶融樹脂の流動性が良好なので、ピンポイントゲートを用いて金型のキャビティを充填することができ、吸湿性が極めて低いので、寸法安定性に優れ、平板成形品に反りを生ずることがなく、比重が小さいので、平板成形品を軽量化することができる。
脂環式構造を有する樹脂としては、例えば、ノルポルネン系単量体の開環重合体若しくは開環共重合体又はそれらの水素添加物、ノルボルネン系単量体の付加重合体若しくは付加共重合体又はそれらの水素添加物、単環の環状オレフィン系単量体の重合体又はその水素添加物、環状共役ジエン系単量体の重合体又はその水素添加物、ビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体若しくは共重合体又はそれらの水素添加物、ビニル芳香族炭化水素系単量体の重合体又は共重合体の芳香環を含む不飽和結合部分の水素添加物などを挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系単量体の重合体の水素添加物及びビニル芳香族炭化水素系単量体の重合体の芳香環を含む不飽和結合部分の水素添加物は、機械的強度と耐熱性に優れるので、特に好適に用いることができる。
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−クロルスチレン、p−クロルスチレン等が挙げられる。これらを単独若しくは2種以上併用して使用してもよい。
低級アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル系単量体としては、炭素数1〜4のアルキル基、好ましくは炭素数1又は2のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルが挙げられ、具体的にはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが挙げられる。これらを単独若しくは2種以上併用して使用してもよい。
前記共重合体を構成する各成分の割合は、芳香族ビニル系単量体が95〜5重量%、低級アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル系単量体が5〜95重量%の範囲である。中でも、光学特性、成形性などの点から、上記芳香族ビニル系単量体が60〜20重量%、低級アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル系単量体が80〜40重量%の範囲が好ましい。
本発明に用いる光拡散剤は、当業界で通常用いられているものであれば特に制限はなく、例えば、ポリスチレン系重合体、ポリシロキサン系重合体若しくはこれらの架橋物からなる微粒子、フッ素系樹脂、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ及びタルクなどが挙げられる。これらの中で、ポリスチレン系重合体、ポリシロキサン系重合体若しくはこれらの架橋物からなる微粒子は、高分散性、高耐熱性、成形時の着色(黄変)がないので、特に好適に用いることができる。
実施例1
脂環式構造を有する樹脂[日本ゼオン(株)、ゼオノア1060R]98重量部とポリシロキサン系重合体の架橋物からなる微粒子[ジーイー東芝シリコーン(株)、トスパール145]2重量部を混合し、二軸押出機[東芝機械(株)、TEM−35B]で混練してストランド状に押し出し、ペレタイザーで切断して光拡散板用ペレットを製造した。
型締装置に図3に示す17インチ型光拡散板用の金型が装着されている射出成形機[東芝機械(株)、IS350GS]の金型から内側を光拡散板の形状に切り抜いた平板枠状の入れ子を外し、図2に示す15インチ型光拡散板用の内側を切り抜いた平板枠状の入れ子を取り付けた。平板枠状の入れ子の材質はSUS304であり、平板成形品の寸法は、縦229.8mm、横306.0mm、厚さ2.0mmである。平板枠状の入れ子の交換に、約1時間を要した。平板枠状の入れ子の高さから、周囲4辺の外枠の高さを減じた差は、−3μmであった。
上記の光拡散板用ペレットを用い、シリンダ温度275℃、金型温度75℃、射出速度100mm/s、冷却時間45秒として、光拡散板を成形した。得られた光拡散板の状態は良好であり、バリは発生していなかった。
実施例2
実施例1で用いたSUS304の平板枠状の入れ子を取り外し、同じ寸法のポリテトラフルオロエチレン(テフロン)製の平板枠状の入れ子を取り付けた。平板枠状の入れ子の交換に、約1時間を要した。平板枠状の入れ子の高さから、周囲4辺の外枠の高さを減じた差は、+20μmであった。
実施例1で製造した光拡散板用ペレットを用い、実施例1と同じ射出成形条件で、光拡散板を成形した。得られた光拡散板の状態は良好であり、バリは発生していなかった。
実施例3
実施例2で用いたポリテトラフルオロエチレン(テフロン)製の平板枠状の入れ子を取り外し、平面形状は同一であるが、厚さがわずかに薄いSUS304の平板枠状の入れ子を取り付けた。平板枠状の入れ子の交換に、約1時間を要した。平板枠状の入れ子の高さから、周囲4辺の外枠の高さを減じた差は、−8μmであった。
実施例1で製造した光拡散板用ペレットを用い、実施例1と同じ射出成形条件で、光拡散板を成形した。得られた光拡散板の状態は良好であり、バリは発生していなかった。
実施例3で用いたSUS304の平板枠状の入れ子を取り外し、平面形状は同一であるが、厚さがさらに薄いSUS304の平板枠状の入れ子を取り付けた。平板枠状の入れ子の交換に、約1時間を要した。平板枠状の入れ子の高さから、周囲4辺の外枠の高さを減じた差は、−40μmであった。
実施例1で製造した光拡散板用ペレットを用い、実施例1と同じ射出成形条件で、光拡散板を成形した。得られた光拡散板には、バリは少しだけ発生していた。
実施例1〜4の結果を、第1表に示す。
2 外枠
3 コアプレート
4 平板枠状の入れ子
5 平板成形品
6 平板枠状の入れ子
7 平板成形品
8 可動側型板
9 固定側型板
10 ランナーストリッパープレート
11 平板成形品
12 スプルーとランナー
13 平板枠状の入れ子
Claims (8)
- 熱可塑性樹脂製平板成形品の射出成形用金型において、該金型が固定型と可動型からなり、可動型又は固定型が周囲4辺の外枠及び平板枠状の入れ子を有し、該平板枠状の入れ子の外側が周囲4辺の外枠と接する長方形であり、該平板枠状の入れ子の内側が平板成形品の形状に切り抜かれてなることを特徴とする射出成形用金型。
- 金型を組み立てた状態で、平板枠状の入れ子の高さから周囲4辺の外枠の高さを減じた差が、+200〜−100μmである請求項1記載の射出成形用金型。
- 平板成形品が、光拡散板である請求項1記載の射出成形用金型。
- 熱可塑性樹脂製平板成形品の射出成形による製造方法において、射出成形用金型が固定型と可動型からなり、可動型又は固定型が周囲4辺の外枠及び平板枠状の入れ子を有し、該平板枠状の入れ子の外側が周囲4辺の外枠と接する長方形であり、該平板枠状の入れ子の内側が平板成形品の形状に切り抜かれてなる射出成形用金型を用いることを特徴とする平板成形品の製造方法。
- 金型を組み立てた状態で、平板枠状の入れ子の高さから周囲4辺の外枠の高さを減じた差が、+200〜−100μmである請求項4記載の平板成形品の製造方法。
- 熱可塑性樹脂が、脂環式構造を有する樹脂である請求項4記載の平板成形品の製造方法。
- 熱可塑性樹脂が、芳香族ビニル系単量体と低級アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル系単量体との共重合体である請求項4記載の平板成形品の製造方法。
- 平板成形品が、光拡散板である請求項4記載の平板成形品の製造方法。
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