JP2023097083A - 板状成形品 - Google Patents

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裕 多田
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Abstract

【課題】本発明は、外観が良好で透過率の高い、少なくとも一方の主面に複数の微細な凸形状を有する板状成形品を提供することを目的とする。【解決手段】板状成形品であり、少なくとも一方の主面に高さaが50~600μmの複数の微細な凸形状を有し、ガラス転移温度(Tg)が115~150℃のメタクリル系樹脂組成物を含み、表面にフッ素が付着しており、板状成形品をクロロホルムに溶解して得られた12質量%成形品含有クロロホルム溶液について、ろ過処理を行う前と後とに測定した波長600nmでの分光透過率の差が下記式を満たすことを特徴とする、板状成形品。(分光透過率B)-(分光透過率A)≦3.5[%](式中、分光透過率Aは、ろ過処理を行う前の分光透過率[%]を表し、分光透過率Bは、ろ過処理を行った後の分光透過率[%]を表す。)【選択図】なし

Description

本発明は、少なくとも一方の主面に微細な凸形状を有する板状成形品に関する。
微細な凸形状を有する射出成形品はフレネルレンズや導光板等の光学部材として広く使用されており、良好な外観、および透過率、Haze、イエローネスインデックス(YI)等の光学特性に優れることが求められる場合が多い。また、微細な凸形状を有する射出成形品の製造においては、金型凹形状部に樹脂が十分に充填されていることが求められる。
離型性の良否が成形品の外観や光学特性に大きく影響を及ぼすため、例えば、樹脂を射出する前に微細構造が形成されている側の金型表面を外部離型剤によって処理し、樹脂の離型性を向上させて離型不良を防止する手法が用いられている。(特許文献1、2)。特に、スプレー型の外部離型剤は金型に噴霧するだけで樹脂の離型性を向上させることが可能なので、合成樹脂の成形に広く使用されている。
特開2005-280200号公報 特開2005-111927号公報
スプレー型の外部離型剤を使用する場合には、離型剤を調整している溶媒成分を十分に揮発させ、金型上に離型被膜を形成させる必要がある。しかしながら、表面に微細な凸形状を有する金型にスプレー型の外部離型剤を噴霧すると、離型剤調整溶媒が微細凸形状の内部まで浸透したときに、溶媒の揮発効率が低下し、十分に離型被膜を形成することができず、溶媒成分が残った状態となる。特に、成形品の凸形状の高さが高い(成形品の凸形状を賦形する金型の凹部の深さが深い)場合にこの現象が顕著になることが本発明者らの検討により明らかになっており、離型被膜の形成が十分でない状態で樹脂を射出すると、樹脂の流動方向に離型剤成分が押し流され、金型内の特定の部分に滞留する。その結果、成形品の微細凸形状を賦形する金型の凹部に樹脂を十分に充填することができず、欠陥(凸部形状の欠けなど)が生じる原因となり、成形品を光学用途として使用する場合には、透過率等の光学特性が低下するという問題があった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、外観が良好で透過率の高い、少なくとも一方の主面に複数の微細な凸形状を有する板状成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは、少なくとも一方の主面に複数の微細な凸形状を有し、ガラス転移温度(Tg)が特定の範囲であるメタクリル系樹脂組成物を含み、表層にフッ素を含有する板状成形品において、前記板状成形品の12質量%クロロホルム溶液の、ろ過前後での600nmの分光透過率差を所定の範囲内とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
板状成形品であり、
少なくとも一方の主面に高さaが50~600μmの複数の微細な凸形状を有し、
ガラス転移温度(Tg)が115~150℃のメタクリル系樹脂組成物を含み、表面にフッ素が付着しており、
前記板状成形品をクロロホルムに溶解して得られた12質量%成形品含有クロロホルム溶液について、ろ過処理を行う前と後とに測定した波長600nmでの分光透過率の差が下記式を満たすことを特徴とする、板状成形品。
(分光透過率B)-(分光透過率A)≦3.5[%]
(式中、分光透過率Aは、ろ過処理を行う前の分光透過率[%]を表し、分光透過率Bは、ろ過処理を行った後の分光透過率[%]を表す。)
[2]
前記微細な凸形状を有する主面において、前記微細な凸形状の高さaに対する前記微細な凸形状のピッチbの比率b/aが0.1~1.0である、[1]に記載の板状成形品。
[3]
前記微細な凸形状を有する主面の面内位相差が100nm以下である、[1]又は[2]に記載の板状成形品
[4]
射出成形品であり、
金型の表面温度を前記メタクリル系樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)以上に加熱した後、前記金型内に前記メタクリル系樹脂組成物を射出充填して得られる、[1]~[3]のいずれかに記載の板状成形品。
本発明によれば、外観が良好で透過率の高い、少なくとも一方の主面に複数の微細な凸形状を有する板状成形品を得ることができる。
図1は、実施例の板状成形品を示す図である。(A)に凸形状を有する主面を上面とした時の平面図を示し、(B)に側面図を示す。 図2は、本実施形態の板状成形品の凸形状の一例(三角錐形)を示す一部断面図である。 図3は、変形例として図1とは異なる実施例の板状成形品を示す図である。(A)に凸形状を有する主面を上面とした時の平面図を示し、(B)に斜め上から観察した時の凸形状の斜視図を示す。 図4は、変形例として図2とは異なる本実施形態の板状成形品の凸形状の一例(四角錐台形)を示す一部断面図である。 図5(A)は、実施例及び比較例で得られた板状成形品を光方向変換素子として利用した時の特性を評価する際に用いた機器の配置図である。 図5(B)は、図5(A)で用いたUSAF Target7をX軸方向から見たときの平面図である。 図6は、実施例及び比較例で得られた板状成形品を光方向変換素子として利用した時の光路を示す図である。 図7は、実施例1及び比較例1で得られた板状成形品のXPS測定によるSurvey scanスペクトルを示す。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その用紙の範囲内で種々変形して実施できる。
(板状成形品)
本実施形態の板状成形品(以下、単に「成形品」ともいう。)は、板状成形品をクロロホルムに溶解して得られた12質量%成形品含有クロロホルム溶液の波長600nmでの分光透過率が以下の式を満たすことを特徴とする。
分光透過率B-分光透過率A≦3.5[%]
(式中、分光透過率Aは、ろ過処理を行う前の分光透過率[%]を表し、分光透過率Bは、ろ過処理を行った後の分光透過率[%]を表す。)
上記ろ過処理前後での600nmの分光透過率の差(分光透過率B-分光透過率A)は、3.5%以下であり、好ましくは2%以下であり、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。上記分光透過率の差が3.5%以下であると、成形品を光学部材として好適に用いることができ、分光透過率の差が小さければ小さいほど好ましい。
上記分光透過率の差を制御する方法としては、後述するように、成形品の射出成形時に金型を加熱した後、冷却する工程の中で、加熱時の最高温度を特定の範囲とする方法、成形品の射出成形時に使用する離型剤として、溶剤成分の沸点が特定範囲であるものを使用する方法等が挙げられる。成形品の射出成形時に離型剤成分が成形品表面に転写することで表面に曇りが発生すると、透過率が低下してしまい、上記分光透過率の差が大きくなる傾向にある。
なお、分光透過率は、後述する実施例において記載する方法により測定することができる。
本実施形態の板状成形品は、少なくとも一方の主面に複数の微細な凸形状(以下、「微細凸形状」、単に「凸形状」ともいう。)を有し、凸形状の高さaが50~600μmである。
また、凸形状の高さaに対する凸形状のピッチbの比率b/aは0.1~1.0であることが好ましい。
以下、本実施形態の板状成形品の形状等について詳述する。
少なくとも一方の主面に形成されている微細な凸形状は、特に限定されず、三角錐、四角錐、五角錐等の多角錐、円錐、楕円錐、半円錐、半楕円錐、長円形錐(一対の平行な直線の両端を半円で連結した形状の断面を有する錐体)等の曲面錐、三角錐台、四角錐台、五角錐台等の多角錐台、円錐台、楕円錐台、半円錐台、半楕円錐台、長円形錐台(一対の平行な直線の両端を半円で連結した形状の断面を有する錐台体)等の曲面錐台、三角柱、四角柱(立方体、直方体等)、五角柱等の多角柱、円柱、楕円柱、半円柱、半楕円柱、長円形錐(一対の平行な直線の両端を半円で連結した形状の断面を有する柱体)等の曲面柱、ドーム形状(半球、四分球、非球面を有する構造等、軸方向上方に向かうにつれて、軸方向に切断したときの断面積が徐々に小さくなっていく構造)等が挙げられる。多角錐、多角柱等の場合、角部が丸みを帯びていてもよい。また、凸形状の側面は、平面であっても曲面であってもよい。
これらの凸形状は、1種のみであっても、複数種の組み合わせであってもよいが、1種のみであることが好ましい。
図2は、微細な凸形状が三角錐形である本実施形態の板状成形品の一例を示す一部断面図である。また、図4は、微細な凸形状が四角錐台形である本実施形態の板状成形品の一例を示す一部断面図である。
凸形状は、直線状、曲線状、ドット状等に配置されていてもよい。また、凸形状は、一方の主面の全面に配置されていてもよく、一方の主面の一部のエリアのみに配置されていてもよく、両方の主面の全面に配置されていてもよく、両方の主面のそれぞれ一部のエリアのみに配置されていてもよく、一方の主面の全面ともう一方の主面の一部のエリアのみに配置されていてもよい。例えば、図1(A)、図3(A)は、凸形状が一方の主面の一部のエリアのみに配置されている板状成形品の一例を、当該主面側から見たときの平面図である。
微細な凸形状を有する主面において、上記の微細な凸形状の高さaに対するピッチbの比率b/aは0.1~1.0であることが好ましく、より好ましくは0.2~1.0、さらに好ましくは0.3~1.0である。b/aが上記範囲であると、極めて良好な金型転写率を保持しつつ、成形品をきれいに離型できる傾向にある。
b/aは、5個以上の凸形状について高さ及びピッチを測定して得られた値の平均値である。よって、b/aが上記の範囲内にあれば、各凸形状の高さ及び各ピッチは、任意に変化してもよい。
凸形状の高さaは、50~600μmであり、100~600μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは200~500μm、さらに好ましくは350~500μmである。凸形状の高さaが高くなるほど、凸形状を賦形する金型の凹形状部が深くなるため、金型表面を離型処理した際に離型剤を調整している溶媒成分が揮発しにくくなるが、凸形状の高さaが上記範囲であれば、効率的に離型被膜を形成できる。凸形状の高さaがこの範囲より高くなると外観と光学特性共に良好な成形品が全く得られないというわけではないがが、金型からの樹脂の離型不良が起きやすいため、量産性を考えると、やはり上記範囲にあることが好ましい。
また、凸形状のピッチbは、50~600μmであることが好ましく、100~500μmの範囲であることがより好ましく、さらに好ましくは150~350μm、よりさらに好ましくは180~300μmの範囲である。凸形状のピッチbが上記範囲であると、金型からの樹脂の離型不良が生じにくく、凸形状を賦形する金型の凹形状部の深部まで離型被膜を形成することができ、外観と光学特性が共に良好な成形品が得られる傾向にある。
なお、本明細書において、凸形状の高さとは、一方の主面における他方の主面に平行な平面部分を基準として測定した成形品の厚み方向の高さのうち、最も高い値を意味し、高さaは、5個以上の凸形状の高さの平均値とする。例えば、図2に示すように、凸形状が錐体である場合は、錐体の頂点までの高さを意味する。一方の主面において、他方の主面に平行な平面部分が存在しない場合の凸形状の高さは、成形品の平均厚みに対する凸形状の厚み方向高さのうち、最も高い値としてよい。
また、本明細書において、凸形状のピッチとは、隣接する2つの凸形状の中心間距離を意味し(図2、図4参照)、ピッチbは、5個以上の凸形状について測定したピッチの平均値とする。
凸形状の高さa及びピッチbは、光学顕微鏡、電子顕微鏡、デジタルマイクロスコープ等を用いて得られる観察画像から視覚的に測定することができ、具体的には。後述する実施例において記載する方法により測定することができる。
凸形状を有する主面を上から観察した時の凸形状の平面視形状の大きさとしては、その径が0.1~600μmであることが好ましく、より好ましくは0.5~500μm、さらに好ましくは1~400μmである。
なお、凸形状の上記平面視形状がラインパターンの場合はライン方向に直行する方向の幅の長さとし、それ以外の場合で上記平面視形状が円形以外の形状である場合は、その外接円の径を意味するものとする。凸形状の平面視形状の径は、光学顕微鏡、電子顕微鏡、デジタルマイクロスコープ等を用いて得られる観察画像から視覚的に測定することができる。
凸形状のサイズ(高さ及び平面視形状の径)は、全ての凸形状で同じであっても、異なっていてもよい。
本実施形態の成形品全体の形状は、少なくとも一方の主面に複数の微細な凸形状を有する板状又は略板状であれば特に限定されない。
微細凸形状を持つ主面を上から観察した時の形状(平面視形状)として、例えば、三角形、正方形、長方形、平行四辺形、台形、五角形等の多角形、円形、楕円形、半円形、半楕円形、長円形(一対の平行な直線の両端を半円で連結した形状)、円環形等が挙げられる。多角形の場合、角部が丸みを帯びていてもよい。
また、微細な凸形状を有する主面の微細凸形状を有する部分の面積を100%とした時、裏側の他方の主面の平面部分の面積が、80%以上であることが好ましく、各種製品への成形品の搭載を考慮し、該他方の主面の一部に製品への接続用の凹凸部分を有しても構わない。該接続用の凹凸部分の形状は、特に限定されず、例えば、成形品外周付近に、製品への固定用として2~10mm大、高さ2~10mmの接続用の凹凸部分を付すことができる。
さらに、成形時の離型の観点から、成形品の外周部にエジェクターピンで突き出すための枠を設けても構わない。
本実施形態に於いて、成形品の厚みは、微細凸形状を除く平面部の厚みが1.5mm以上6mm未満であることが好ましく、より好ましくは2mm以上5mm未満、さらに好ましくは2mm以上4mm未満である。厚みが薄くなるほど反りの制御が難しくなり、また、厚みが厚くなるほど反りの制御には有利であるが、成形時の冷却に時間を要し、表面と内部の温度差が生まれ、中央部が凹んで平面の平坦性が損なわれ、成形品の光学特性に悪影響が出てしまうおそれがある。
成形品の各主面の大きさは、特に限定されず、目的に合わせて設定してよい。
本実施形態の板状成形品は、図1に示すような、一方の主面のみに微細凸形状が形成され、他方の主面は平面で、かつ凹凸部が形成されていない形状の場合、反り量が0.4mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.35mm以下、さらに好ましくは0.3mm以下である。反り量が0.4mm以下であると、寸法精度が良好な成形品といえる。
また、凸形状が形成された主面を上面として凸形状が形成された領域を平面視した時の面積値の平方根を算出し(例えば、図1では賦形面領域が80mm角のため平方根は80mm)、得られた値に対する反り量が0.50%以下であれば、成形品の寸法精度として好ましい範囲であると判断できる。より好ましくは0.44%以下、さらに好ましくは0.38%以下である。
なお、反り量は、凸形状を有する主面を上面として金属定盤上に置き、成形品の外周を4点で均等に分割し、該4点(例えば、図1の3a~3d参照)で成形品と定盤との間にできる隙間を測定したときに、最も隙間の大きい場所での値であり、具体的には、後述する実施例において記載する方法により測定することができる。
本実施形態の板状成形品は、充填度が0.92以上であることが好ましく、より好ましくは0.95以上、さらに好ましくは0.99以上である。充填度が0.92以上であると、凸形状が良好に形成された成形品といえる。
なお、充填度は、凸形状の高さaと、凸形状を賦形するための金型における凹形状部の深さとから、下記の計算式により算出される値であり、4箇所での平均値とする。具体的には、後述する実施例において記載する方法により測定することができる。
(充填度)=(成形品の凸形状の高さa)/(金型の凹形状部の深さ)
本実施形態の板状成形品は、複屈折の値が、微細な凸形状を有する主面の面内位相差として100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm未満、さらに好ましくは20nm未満である。面内位相差が上記範囲であると、成形品を透過した光の偏光が一定に保持される傾向にあり、光学特性に悪影響が生じにくい。偏光の光が成形品内部を透過する際、成形品内部で全反射を伴う場は位相差が変化するが、成形品の面内位相差の測定で位相差が小さいことが確認されれば、最終的な透過光に付与される位相差は一定であり、位相差板のような機能をもつことになる。偏光の特性が均一に揃ったものとなるため、特に各種偏光を活用したプロジェクターやHead Up Display、ヘッドセット等の光学機器、そして偏光サングラスで視認することが想定される車載ディスプレイ等の映像表示機器と組み合わせることで有効に働く。液晶ディスプレイや液晶を利用した光学素子、そして偏光板等と組み合わせれば、光の利用効率向上や、ノイズの低減に役立つ。また、外光カットに円偏光板や偏光板を利用する場合や、偏光サングラス着用時の視認性向上に有利に働く。
なお、面内位相差は、後述する実施例において記載する方法により測定することができる。
本実施形態の板状成形品は、ガラス転移温度(Tg)が115~150℃のメタクリル系樹脂組成物を含む。
((メタクリル系樹脂組成物))
本実施形態の板状成形品に含まれるメタクリル系樹脂組成物は、メタクリル系樹脂を含有することを特徴とし、この他に、任意選択的に添加剤を含んでいてもよく、また、メタクリル系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂、ゴム質重合体等を含んでいてもよい。
-メタクリル系樹脂-
以下、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物に含まれるメタクリル系樹脂について記載する。
メタクリル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を主体とする樹脂が挙げられ、これにはメタクリル酸メチルの単独重合体、又はメタクリル酸メチルと、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルピリジン、ビニルモルホリン、ビニルピリドンテトラヒドロフルフリルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-ヒドロキシアクリレート、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、エチレングリコールモノアクリレート、グリセリンモノアクリレート、無水マレイン酸、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、スチレン、もしくはα-メチルスチレンなどの共重合可能なモノマーのいずれか一つ以上との共重合体が挙げられる。その他にも、メタクリル酸メチルに由来する構造単位とラクトン環やグルタルイミドを主鎖に持つ耐熱性メタクリル系樹脂や、メタクリル酸メチルと低吸湿性メタクリル系樹脂などが含まれる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上をブレンドして用いてもよい。
本実施形態におけるメタクリル系樹脂は、透明性と耐熱性の観点から主鎖に環構造を有するメタクリル系樹脂であることが好ましく、他の熱可塑性樹脂をブレンドすることなく、固有複屈折および光弾性係数等の光学特性を高度に制御しやすい点から、N-置換マレイミド単量体由来の構造単位を有するメタクリル系樹脂であることが特に好ましい。
-メタクリル系樹脂の製造方法-
以下、本実施形態のメタクリル系樹脂の製造方法について記載する。
本実施形態における製造方法では、重合形式として、回分(バッチ)式、半回分(セミバッチ)式、連続式を用いることができる。ここで、回分式とは、反応器へ原料を全量投入後に反応を開始・進行させ、終了後に生成物を回収するプロセスであり、また、半回分式とは、原料投入あるいは生成物回収のどちらか一方を反応進行中に同時に行うプロセスであり、さらに連続式とは、原料投入及び生成物回収の両方を反応進行中に同時に行うプロセスである。本実施形態における主鎖に環構造を有するメタクリル系樹脂の製造方法としては、精密に共重合体組成を制御する観点から、反応開始後に一部の原料投入を行う形式の半回分式が好ましい。
連続式は、本実施形態における製造方法としては下記の理由により好ましくない。完全混合反応器一基で重合反応を実施する場合、メタクリル系樹脂中の分子量の異なる画分における各画分間での単量体組成の差を小さくできる利点があるが、重合後に未反応の単量体が多く残存するため、色調に悪影響を及ぼす傾向にある。一方で、プラグフロー反応器を使用した場合には、未反応の単量体の量を低減できるが、メタクリル系樹脂中の分子量の異なる画分における各画分間での単量体組成の差は大きくなる傾向がある。複数の完全混合反応器あるいは完全混合反応器とプラグフロー反応器とを直列に組み合わせた場合も、未反応の単量体量は低減できるが、上記各画分間での単量体組成の差が大きくなる傾向がある。
重合溶媒としては、特に制限されず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素;イソ酪酸メチル等のエステル類;メチルイソブチルケトン、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;ジメチルホルムアミド、2-メチルピロリドン等の極性溶媒を用いることができる。
また、重合時における重合生成物の溶解を阻害しない範囲で、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールを重合溶媒として併用してもよい。
重合時の溶媒量としては、重合が進行し、生産時に共重合体や使用モノマーの析出等が起こらず、容易に除去できる量であれば特に制限はないが、例えば、配合する単量体の総量を100質量部とした場合に、10~200質量部とすることが好ましく、より好ましくは25~200質量部、さらに好ましくは50~200質量部、さらにより好ましくは50~150質量部である
重合開始剤としては、一般にラジカル重合において用いられる任意の開始剤を使用することができ、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシイソノナノエート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物;2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物;等を挙げることができる。
これらは、単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。
これらの重合開始剤は、重合反応が進行中であれば、いずれの段階に添加してもよい。
重合開始剤の添加量としては、重合に用いる単量体の総量を100質量部とした場合に、0.01~1質量部としてよく、好ましくは0.05~0.5質量部である。
連鎖移動剤としては、一般的なラジカル重合において用いる連鎖移動剤が使用でき、例えば、n-ブチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-デシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸2-エチルヘキシル等のメルカプタン化合物;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム等のハロゲン化合物;α-メチルスチレンダイマー、α-テルピネン、ジペンテン、ターピノーレン等の不飽和炭化水素化合物;等が挙げられる。
これらは、単独で用いても2種以上を併用して用いてもよい。
これらの連鎖移動剤は、重合反応が進行中であれば、いずれの段階に添加してもよく、特に限定されるものではない。
連鎖移動剤の添加量としては、重合に用いる単量体の総量を100質量部とした場合に、0.01~1質量部としてよく、好ましくは0.05~0.5質量部である。
溶液重合により得られる重合液から重合物を回収する方法としては、特に制限はないが、例えば、重合により得られた重合生成物が溶解しないような炭化水素系溶媒やアルコール系溶媒等の貧溶媒が過剰量存在する中に重合液を添加した後、ホモジナイザーによる処理(乳化分散)を行い、未反応単量体について、液-液抽出、固-液抽出する等の前処理を施すことで、重合液から分離する方法;あるいは、脱揮工程と呼ばれる工程を経由して重合溶媒や未反応の単量体を分離し、重合生成物を回収する方法;等が挙げられる。
ここで、脱揮工程とは、重合溶媒、残存単量体、反応副生成物等の揮発分を、加熱・減圧条件下で、除去する工程をいう。
脱揮工程に用いる装置としては、例えば、管状熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置;神鋼環境ソリューション社製ワイブレン及びエクセバ、日立製作所製コントラ及び傾斜翼コントラ等の薄膜蒸発機;脱揮性能を発揮するに十分な滞留時間と表面積とを有するベント付き押出機;等を挙げることができる。
これらの中からいずれか2つ以上の装置を組み合わせた脱揮装置を用いた脱揮工程等も利用することができる。
色調を改良する観点からは、熱交換器と減圧容器とを主な構成とし、その構造として回転部を有しない脱揮装置を用いることが好ましい。
具体的には、その上部に熱交換器を配置し脱揮が可能な大きさを有する減圧容器に減圧ユニットが附帯した構成の脱揮槽と、脱揮後の重合物を排出するためのギアポンプ等の排出装置とから構成される脱揮装置を採用することができる。
上記脱揮装置は、重合溶液を、減圧容器の上部に配置され加熱された熱交換器、例えば、多管式熱交換器、プレートフィン式熱交換器、平板型流路とヒーターを有する平板式熱交換器等に供して予熱した後、加熱・減圧下にある脱揮槽に供給して、重合溶媒、未反応原料混合物、重合副生成物等と共重合体を分離除去する。上述のように回転部を有しない脱揮装置を用いることで、良好な色調を有するメタクリル系樹脂を得ることができるため好ましい。
脱揮装置での処理温度は、好ましくは150~350℃、より好ましくは170~300℃、さらに好ましくは200~280℃である。下限温度以上とすることで残存揮発分を抑制でき、上限温度以下とすることで得られるアクリル系樹脂の着色や分解を抑制できる。
-添加剤-
本実施形態に係るメタクリル系樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、種々の添加剤を含有していてもよい。
添加剤としては、特に制限はないが、例えば、酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、メタクリル系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、有機繊維、酸化鉄等の顔料等の無機充填剤、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤、着色剤、亜リン酸エステル類、ホスフォナイト類、リン酸エステル類等の有機リン化合物、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
--酸化防止剤--
本実施形態に係るメタクリル系樹脂組成物は、成形加工時あるいは使用中の劣化や着色を抑制する酸化防止剤を含有することが好ましい。
前記酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、金型の微細凸形状賦形部の転写性高めつつ、成形品の面の歪みや反りを高度に制御するため、金型キャビティ内で樹脂を高温に保持し、適度な冷却時間を設けることが肝要である。長時間の熱履歴を受ける場合、所望の熱安定性を得るために、熱安定剤の添加量を増やす必要があるが、熱安定剤のブリードアウト抑制や金型への張付き防止の観点から、複数種の熱安定剤を併用することが好ましく、例えば、リン系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤から選ばれる少なくとも一種とヒンダードフェノール系酸化防止剤を併用することが好ましい。
これらの酸化防止剤は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロ
ピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリン)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミン)フェノール、アクリル酸2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニル、アクリル酸2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル等が挙げられる。
特に、ペンタエリスリトールテラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、アクリル酸2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルが好ましい。
また、前記酸化防止剤としてのヒンダードフェノール系酸化防止剤は、市販のフェノール系酸化防止剤を使用してもよく、このような市販のフェノール系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、イルガノックス1010(Irganox1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASF社製)、イルガノックス1076(Irganox 1076:オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、BASF社製)、イルガノックス1330(Irganox1330:3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-t-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、BASF社製)、イルガノックス3114(Irganox3114:1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、BASF社製)、イルガノックス3125(Irganox3125、BASF社製)、アデカスタブAO-60(ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ADEKA社製)、アデカスタブAO-80(3、9-ビス{2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルキシオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ADEKA社製)、スミライザーBHT(Sumilizer BHT、住友化学製)、シアノックス1790(Cyanox1790、サイテック製)、スミライザーGA-80(Sumilizer GA-80、住友化学製)、スミライザーGS(Sumilizer GS:アクリル酸2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニル、住友化学製)、スミライザーGM(Sumilizer GM:アクリル酸2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル、住友化学製)、ビタミンE(エーザイ製)等が挙げられる。
これらの市販のフェノール系酸化防止剤の中でも、当該樹脂での熱安定性付与効果の観点から、イルガノックス1010、アデカスタブAO-60、アデカスタブAO-80、イルガノックス1076、スミライザーGS等が好ましい。
これらは1種のみを単独で用いても、2種以上併用してもよい。
また、前記酸化防止剤としてのリン系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)(1,1-ビフェニル)-4,4’-ジイルビスホスフォナイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト、テトラキス(2,4-t-ブチルフェニル)(1,1-ビフェニル)-4,4’-ジイルビスホスフォナイト、ジ-t-ブチル-m-クレジル-ホスフォナイト、4-[3-[(2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン)-6-イルオキシ]プロピル]-2-メチル-6-tert-ブチルフェノール等が挙げられる。
さらに、リン系酸化防止剤として市販のリン系酸化防止剤を使用してもよく、このような市販のリン系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、イルガフォス168(Irgafos168:トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、BASF製)、イルガフォス12(Irgafos12:トリス[2-[[2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェフィン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、BASF製)、イルガフォス38(Irgafos 38:ビス(2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、BASF製)、アデカスタブ329K(ADK STAB-229K、ADEKA製)、アデカスタブPEP-36(ADK STAB PEP-36、ADEKA製)、アデカスタブPEP-36A(ADK STAB PEP-36A、ADEKA製)、アデカスタブPEP-8(ADK STAB PEP-8、ADEKA製)、アデカスタブHP-10(ADK STAB HP-10、ADEKA製)、アデカスタブ2112(ADK STAB 2112、ADEKA社製)、アデカスタブ1178(ADKA STAB 1178、ADEKA製)、アデカスタブ1500(ADK STAB 1500、ADEKA製)Sandstab P-EPQ(クラリアント製)、ウェストン618(Weston 618、GE製)、ウェストン619G(Weston 619G、GE製)、ウルトラノックス626(Ultranox 626、GE製)、スミライザーGP(Sumilizer GP:4-[3-[(2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン)-6-イルオキシ]プロピル]-2-メチル-6-tert-ブチルフェノール、住友化学製)、HCA(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド、三光株式会社製)等が挙げられる。
これらの市販のリン系酸化防止剤の中でも、当該樹脂での熱安定性付与効果、多種の酸化防止剤との併用効果の観点から、イルガフォス168、アデカスタブPEP-36、アデカスタブPEP-36A、アデカスタブHP-10、アデカスタブ1178が好ましく、アデカスタブPEP-36A、アデカスタブPEP-36が特に好ましい。
これらのリン系酸化防止剤は、1種のみを単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、前記酸化防止剤としての硫黄系酸化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2、4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール(イルガノックス1726、BASF社製)、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6-メチルフェノール(イルガノックス1520L、BASF社製)、2,2-ビス{〔3-(ドデシルチオ)-1-オキソポロポキシ〕メチル}プロパン-1,3-ジイルビス〔3-ドデシルチオ〕プロピオネート〕(アデカスタブAO-412S、ADEKA社製)、2,2-ビス{〔3-(ドデシルチオ)-1-オキソポロポキシ〕メチル}プロパン-1,3-ジイルビス〔3-ドデシルチオ〕プロピオネート〕(ケミノックスPLS、ケミプロ化成株式会社製)、ジ(トリデシル)3,3’-チオジプロピオネート(AO-503、ADEKA社製)等が挙げられる。
これらの市販の硫黄酸化防止剤の中でも、当該樹脂での熱安定性付与効果、多種の酸化防止剤との併用効果の観点、取り扱い性の観点から、アデカスタブAO-412S、ケミノックスPLSが好ましい。
これらの硫黄系酸化防止剤は、1種のみを単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤の含有量は、熱安定性を向上させる効果が得られる量であればよく、含有量が過剰である場合、加工時にブリードアウトする等の問題が発生するおそれがあることから、メタクリル系樹脂100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下、さらにより好ましくは0.8質量部以下であり、よりさらに好ましくは0.01~0.8質量部、特に好ましくは0.01~0.5質量部である。
--紫外線吸収剤--
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、その極大吸収波長を280~380nmに有する紫外線吸収剤であることが好ましく、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンズオキサジノン系化合物等が挙げられる。
これらの紫外線吸収剤は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
紫外線吸収剤としては、特に、樹脂との相溶性、加熱時の揮散性の観点から、分子量400以上のベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物が好ましく、また、紫外線吸収剤自体の押出加工時加熱による分解抑制の観点から、ベンゾトリアジン系化合物が特に好ましい。
紫外線吸収剤の含有量は、耐熱性、耐湿熱性、熱安定性、及び成形加工性を阻害せず、本発明の効果を発揮する量であれば特に制限はないが、メタクリル系樹脂100質量部に対して、0.1~5質量部であることが好ましく、好ましくは0.2~4質量部であり、より好ましくは0.25~3質量部であり、さらに好ましくは0.3~3質量部である。この範囲にあると、紫外線吸収性能、成形性等のバランスに優れる。
--離型剤--
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、離型剤を含有することができる。前記離型剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩、炭化水素系滑剤、アルコール系滑剤、ポリアルキレングリコール類や、カルボン酸エステル類、炭化水素類のパラフィン系ミネラルオイル等が挙げられる。
これらの離型剤は、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
前記離型剤として使用可能な脂肪酸エステルとしては、特に制限はなく、従来公知のものを使用することができる。
脂肪酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキン酸、ベヘニン酸等の炭素数12~32の脂肪酸と、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の1価脂肪族アルコールや、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビタン等の多価脂肪族アルコールとのエステル化合物;脂肪酸と多塩基性有機酸と1価脂肪族アルコール又は多価脂肪族アルコールとの複合エステル化合物等を用いることができる。
このような脂肪酸エステル系滑剤としては、例えば、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、クエン酸ステアリル、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンジオレエート、グリセリントリオレエート、グリセリンモノリノレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノ12-ヒドロキシステアレート、グリセリンジ12-ヒドロキシステアレート、グリセリントリ12-ヒドロキシステアレート、グリセリンジアセトモノステアレート、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールアジピン酸ステアリン酸エステル、モンタン酸部分ケン化エステル、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ソルビタントリステアレート等を挙げることができる。
これらの脂肪酸エステル系滑剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
市販品としては、例えば、理研ビタミン社製リケマールシリーズ、ポエムシリーズ、リケスターシリーズ、リケマスターシリーズ、花王社製エキセルシリーズ、レオドールシリーズ、エキセパールシリーズ、ココナードシリーズが挙げられ、より具体的にはリケマールS-100、リケマールH-100、ポエムV-100、リケマールB-100、リケマールHC-100、リケマールS-200、ポエムB-200、リケスターEW-200、リケスターEW-400、エキセルS-95、レオドールMS-50等が挙げられる。
離型剤の含有量は、離型剤としての効果が得られる量であればよく、含有量が過剰である場合、加工時にブリードアウトの発生やスクリューの滑りによる押出不良等の問題が発生するおそれがあることから、メタクリル系樹脂100質量部に対して、5質量部以下でることが好ましく、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下、さらにより好ましくは0.8質量部以下であり、よりさらに好ましくは0.01~0.8質量部、特に好ましくは0.01~0.5質量部である。上記範囲の量で添加すると、離型剤添加による透明性の低下を抑制されるうえ、射出成形時の離型不良が抑制される傾向にある。
--他の熱可塑性樹脂--
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、本発明の目的を損なわず、複屈折の調整や可とう性向上の目的で、メタクリル系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を含有することもできる。
他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリブチルアクリレート等のポリアクリレート類;ポリスチレン、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレンーブチルアクリレート共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;さらには、例えば、特開昭59-202213号公報、特開昭63-27516号公報、特開昭51-129449号公報、特開昭52-56150号公報等に記載の、3~4層構造のアクリル系ゴム粒子;特公昭60-17406号公報、特開平8-245854公報に開示されているゴム質重合体;国際公開第2014-002491号に記載の、多段重合で得られるメタクリル系ゴム含有グラフ卜共重合体粒子;等が挙げられる。
この中でも、良好な光学特性と機械的特性とを得る観点からは、スチレン-アクリロニトリル共重合体や、主鎖に環構造を有する構造単位(X)を含むメタクリル系樹脂と相溶し得る組成からなるグラフト部をその表面層に有するゴム含有グラフト共重合体粒子が好ましい。
前述のアクリル系ゴム粒子、メタクリル系ゴム含有グラフ卜共重合体粒子、及びゴム質重合体の平均粒子径としては、本実施形態の組成物より得られる成形品の衝撃強度及び光学特性等を高める観点から、0.03~1μmであることが好ましく、より好ましくは0.05~0.5μmである。
他の熱可塑性樹脂の含有量としては、メタクリル系樹脂を100質量部とした場合に、好ましくは0~50質量部、より好ましくは0~25質量である。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、JIS-K7121に準拠して中点法により測定したガラス転移温度(Tg)が115~150℃である。メタクリル系樹脂組成物のTgが115℃以上であると、成形時に使用する一般的な離型剤を調整する溶媒成分の沸点よりも高いため、当該沸点以上に金型温度を設定して調整溶媒を揮発させることができる。また、成形品に115℃以上の耐熱性がないと、高温エージング試験等の信頼性試験において、反り及び凸形状の変形等が発生し、光学特性に悪影響が生じる。一方で、ガラス転移温度(Tg)が150℃超であると、金型の最高温度Tmaxを適切な温度に昇温可能な装置の種類が少なく、金型昇降温に時間を要しサイクルタイムが長くなるため好ましくない。ガラス転移温度(Tg)は、好ましくは120~145℃、特に好ましくは125~140℃である。
なお、メタクリル系樹脂組成物のガラス転移温度は、具体的には、後述する実施例において記載する方法により測定することができる。
本実施形態で使用されるメタクリル系樹脂組成物は、微細な凸形状の転写性を高めるため、射出時に相当する粘度が低く、流動性が高いことが好ましい。従って、溶融粘度が、270℃、1000sec-1に於いて、20~235Pa・secであることが好ましく、20~230Pa・secであることがより好ましく、さらに好ましくは30~180Pa・sec、特に好ましくは、50~150Pa・secである。溶融粘度が20Pa・secよりも小さいと、射出時の樹脂の流動制御が困難で、エアーの巻き込みによって、微細な凸形状の転写性が悪くなる傾向にある。溶融粘度が235Pa・secよりも大きいと、樹脂の流動性が低下することで成形品凸形状の転写性が悪くなる傾向にある。
なお、溶融粘度は、JIS-K7199に準拠して測定される値であり、具体的には、後述する実施例において記載する方法により測定することができる。
本実施形態で用いられるメタクリル系樹脂組成物は、離型時の割れ、型内への樹脂残りを避けるため、引張り破断伸びが大きいことが好ましい。引張り破断伸びは、1.5%以上であり、好ましくは2.0%以上であり、より好ましくは2.5%以上である。
なお、引張り破断伸びは、ISO527に準拠して測定される値であり、具体的には、後述する実施例において記載する方法により測定することができる。
((メタクリル系樹脂組成物の製造方法))
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物の製造方法としては、例えば、押出機、加熱ロール、ニーダー、ローラミキサー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練する方法が挙げられる。中でも、押出機による混練が生産性の面で好ましい。
混練温度は、メタクリル系樹脂を構成する重合体や、混合する他の樹脂の好ましい加工温度に従えばよく、目安としては140~300℃の範囲、好ましくは180~280℃の範囲である。また、押出機には、揮発分を減じる目的で、ベント口を設けることが好ましい。
本実施形態の板状成形品は、後述するフッ素系離型剤に由来するフッ素が表面に付着している。フッ素が表面に付着していると、ろ過前の成形品の透過率(分光透過率A)が低下する傾向にある。
なお、板状成形品表面におけるフッ素の有無は、具体的には、後述する実施例において記載する方法により測定することができる。
以下、本実施形態の板状成形品の製造方法について記載する。
(板状成形品の製造方法)
本実施形態に於いては、射出成形機シリンダのノズル先端から中央にかけての温度設定として、使用するメタクリル系樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)に対して120~180℃高い温度に設定することで、溶融樹脂が十分に流動し、樹脂の熱分解による劣化を抑制した状態での成形が可能となる。樹脂の熱分解は、色調、透過率、Hazeに悪影響を与える他、射出成形時にガスを発生するため、発生したガスが金型内に充満し、樹脂充填時に凹凸部に押し込まれたガスが排出されず、樹脂の充填を阻害することにより金型転写率が悪くなる。より好ましくは、使用するメタクリル系樹脂組成物のガラス転移温度Tgに対して130~170℃高い温度である。
本実施形態に於いては、金型表面を離型剤で離型処理した後、離型剤を調整している溶媒成分を揮発させるために、一方の主面を形成する側の金型と他方の主面を形成する側の金型の温度を任意に設定することができる。成形品の転写性を向上させるために、メタクリル系樹脂組成物を金型に射出する前に、金型温度をメタクリル系樹脂組成物のTg以上に加熱して保持することが好ましい。
例えば、一方の主面にのみ微細な凸形状を有し、他方の主面は平面状である成形品を成形する場合、微細な凸形状を有する主面を形成する側の金型を第1の金型、平面状の主面を形成する側の金型を第2の金型とすると、金型にメタクリル系樹脂組成物が射出されるときの第1の金型の最高温度をTmaxとしたときに、第2の金型の温度を(Tmax-65)℃~(Tmax-50)℃とすることが好ましい。より好ましくは(Tmax-65)℃~(Tmax-40)℃であり、特に好ましくは(Tmax-60)℃~(Tmax-35)℃である。第2の金型の温度が(Tmax-65)℃以上であると、成形品の反り量が小さくなる傾向にある。一方、(Tmax-50)℃以下であると、樹脂の熱収縮や金型への張付き等の影響による成形品の第2の主面の平坦性悪化が抑制されるため、外観の良好な板状成形品を得ることができる。
また、本実施形態に於いては、微細な凸形状を有する主面を形成する金型を加熱した後、冷却することが好ましい。加熱した際の金型の最高温度Tmaxは、離型剤を調整している溶媒成分の揮発性を向上させ、微細な凸形状の転写性(成形性)を高めるため、メタクリル系樹脂組成物のガラス転移温度をTgとして、(Tg+15)℃~(Tg+40)℃の温度範囲に制御することが好ましく、より好ましくは(Tg+15)℃~(Tg+35)℃、さらに好ましくは(Tg+20)℃~(Tg+35)℃である。(Tg+40)℃超の温度に設定すると、離型剤を調整している溶媒成分の揮発性を向上させることはできるが、樹脂の流動性が高くなりすぎるため、空気やガスを巻き込むことによる成形不良が発生する傾向にある。一方で、(Tg+15)℃未満であると、転写性が低下し、成形品の外観が悪化する傾向にある。また、離型剤を調整している溶媒成分の揮発性が低下することにより離型被膜の形成が阻害され、離型成分の成形品表面への転写が多くなる。その結果、成形品の透過率が低下し、当該成形品をクロロホルムに溶解させて測定したろ過前後での波長600nmでの分光透過率の差が3.5%超になる傾向にある。そのため、微細な凸形状を有する主面を形成する金型の最高温度Tmaxは、(Tg+15)℃~(Tg+40)℃の温度範囲に制御することが好ましい。
冷却した際の微細な凸形状を有する主面を形成する金型の最低温度Tminは、メタクリル系樹脂組成物のガラス転移温度をTgとして、(Tg-75)℃~(Tg-45)℃の温度範囲に制御することが好ましく、より好ましくは(Tg-70)℃~(Tg-50)℃、さらに好ましくは(Tg-65)℃~(Tg-55)℃である。Tminを(Tg-75)℃未満の温度まで下げると、サイクルタイムが長くなる。また、(Tg-45)℃超であると、成形品の反り量が大きくなり、成形品の外観が悪化する傾向にある。
本実施形態に於いて、金型の加熱方法は特に限定されず、いかなる方法でもよい。例えば、水、オイルの流路を金型内に配置し、水、オイルなどの媒体により使用するメタクリル系樹脂組成物のTg以上に金型温度を調節する方法、金型内にヒーターを埋め込み、金型を加熱する方法、金型表面に通電可能な電気導電層を設け、通電することによって発熱させて加熱する方法、誘導加熱装置により金型外部または内部から加熱する方法、金型外部からハロゲンランプ、セラミックスヒーターによる遠赤外線による輻射によって加熱する方法などが挙げられる。
また、本実施形態に於いて、金型の冷却方法は特に限定されず、いかなる方法でもよい。例えば、水、オイルの流路を金型内に配置し、水、オイルなどの媒体により冷却する方法などが挙げられる。
本実施形態に於いては、微細な凸形状を有する主面を形成する金型について、加熱時の表面温度の昇温速度は、1~10℃/秒であることが好ましく、より好ましくは1.5~10℃/秒、さらに好ましくは2~10℃/秒である。昇温速度が速いほどサイクル時間短縮に有効であるが、サイクル時間に制約がなく、シリンダ内での熱滞留による樹脂の劣化が問題ない範囲においては、この範囲を外れても構わない。また、当該金型の冷却時の表面温度の降温速度は0.5~10℃/秒であることが好ましく、より好ましくは1~10℃/秒、さらに好ましくは2~10℃/秒である。降温速度が速いほどサイクル時間短縮に有効であるが、後述の通り高温状態で金型温度を保持した方が転写性向上に有効である。ただし、降温速度がこの範囲を外れるとサイクル時間の冗長化、成形品反りの悪化に繋がる傾向にあるため好ましくない。
本実施形態に於いて温度制御は、一定の速度で昇降温させるほか、昇降温の速度を遅くする、または所定の温度で一定時間ホールドする等、成形品の状態を見ながら適宜設定することができる。凸形状の転写を良くするためには、樹脂が流動する温度(好ましくはガラス転移温度以上)での保持時間を長く保つことが好ましい。また、保持時間が短いとスキン層生成により複屈折が発現することから、これを抑制する観点に於いては、降温速度を遅くすることが好ましい。
本実施形態に於ける金型表面への離型加工としては、離型コーティングまたは塗布型の離型剤が好適に用いられる。離型コーティングとしては、焼き付け型フッ素系樹脂やシリコーン系樹脂等が使用できる。また、塗布型の離型剤としては、例えば、フッ素系、シリコーン系、ワックス系の離型剤を使用することができる。
特に、金型に噴霧して使用するスプレー式の外部離型剤については、例えば、離型性に優れ、金型微細形状の転写に影響しにくい単分子膜を形成するフッ素系の離型剤を使用することができる。金型への残存性の低さから、非硬化型の離型剤を使用することが好ましい。
また、有効成分を含有する高揮発性の溶剤成分については、金型に射出充填するメタクリル系樹脂組成物を溶解しにくい溶剤成分を主成分とし、また該溶剤成分の沸点がメタクリル系樹脂組成物のTgよりも低いもしくは近しいものを使用することで、凸形状を賦形する金型の凹形状部に溶剤が残りにくく、良好な離型被膜を形成することができる。離型剤の溶剤成分としては、沸点が低いものを使用することが好ましい。具体的には、メタクリル系樹脂組成物のガラス転移温度をTgとして、沸点が(Tg-50)℃~(Tg+5)℃の範囲にあることが好ましく、より好ましくは(Tg-40)℃~(Tg+5)℃であり、さらに好ましくは(Tg-30)℃~(Tg+5)℃の範囲である。この範囲の離型剤を使用することで、効率的に離型被膜が形成できるようになり、離型成分の成形品表面への転写が少なくなることで、成形品の透過率が向上し、当該成形品をクロロホルムに溶解させて測定したろ過前後での透過率差が3.5%以下になりやすくなる。その結果、良好な光学特性と外観を併せ持った成形品を得られやすくなる。
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[原料]
後述する実施例及び比較例において使用した原料について下記に示す。
[[メタクリル系樹脂を構成するモノマー]]
・メタクリル酸メチル(MMA):旭化成株式会社製
・N-フェニルマレイミド(PMI):株式会社日本触媒製
・N-シクロヘキシルマレイミド(CMI):株式会社日本触媒製
・スチレン:富士フィルム和光純薬工業株式会社製
・2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA):Combi-Blocks社製
[[有機溶媒]]
・メタキシレン(mXy):三菱瓦斯化学株式会社製
・イソ酪酸メチル:関東化学株式会社製
・トルエン:富士フィルム和光純薬工業株式会社製
[[重合開始剤]]
・1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン:日油株式会社製
・t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート:アルケマ吉富株式会社製「ルペロックス575」
・t-アミルパーオキシイソノナノエート:アルケマ吉富株式会社製
[[連鎖移動剤]]
・n-オクチルメルカプタン:シェブロンフィリップスケミカル社製
・n-ドデシルメルカプタン:富士フィルム和光純薬工業株式会社製
[[添加剤]]
・ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]:BASF社製「Irganox1010」
・トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト:BASF社製「Irgafos168」
・リケマールH-100:理研ビタミン株式会社製
・アデカスタブ2112:株式会社ADEKA製
・リン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物:堺化学工業株式会社製
・モノメチルアミン:三菱ガス化学株式会社製
・炭酸ジメチル:富士フィルム和光純薬株式会社製
・トリエチルアミン:富士フィルム和光純薬株式会社製
(メタクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂組成物の特性評価)
以下、メタクリル系樹脂組成物の特性の測定方法について記載する。
(1)ガラス転移温度の測定
メタクリル系樹脂組成物のガラス転移温度をJIS-K7121に準拠して測定した。
示差走査熱量計(株式会社パーキンルマージャパン製、DSC8000)を窒素ガス流量25mL/分の条件下で用いて、ここで、10℃/分で室温(23℃)から200℃まで昇温(1次昇温)し、200℃で5分保持して試料を完全に融解させた後、10℃/分で200℃から40℃まで降温し、40℃で5分間保持し、さらに上記昇温条件で再び昇温(2次昇温)する間に描かれるDSC曲線のうち、2次昇温時の階段状変化部分曲線と各ベースライン延長線から縦軸方向に等距離にある直線との交点(中間点ガラス転移温度)をガラス転移温度(Tg)(℃)として測定した。
(2)溶融粘度の測定
JIS-K7199に準拠した条件下、ツインキャピラリーレオメーター(ROSAND社製)を用いて、温度270℃、せん断速度1000sec-1、キャピラリーダイ径1mmにて、メタクリル系樹脂組成物の溶融粘度(Pa・sec)を測定した。
(3)引張り破断伸びの測定
メタクリル系樹脂組成物のペレットを80~100℃で24時間乾燥し、射出成形機(東芝機械株式会社製、EX-100SX)を用いて、JIS-K6717に従い、射出成形することにより、厚さ4.0mmのISO3167のA型ダンベル試験片を作製した。この試験片について、ISO527に従って低荷重用万能材料試験機(インスロン社製)により、測定温度23℃、クロスヘッド速度5mm/分で引張試験を行った。5回測定を行い、引張り破断時のチャック間伸びを測定し、その平均値を引張破断伸び(%)として算出した。
(成形品の測定・評価方法)
以下、板状成形品に関する測定・評価方法について記載する。
(1)成形品の分光透過率の測定
成形品を粉砕し、高速液体クロマトグラフ用クロロホルム(富士フィルム和光純薬株式会社製)に溶解させて12質量%のクロロホルム溶液を調製した。当該溶液を光路長10センチの石英セルに入れ、紫外可視分光光度計UV-2600(株式会社島津製作所製)にて分光透過率A(%)を測定した。
その後、12質量%成形品含有クロロホルム溶液に対し、細孔径1マイクロメートルのMSシリンジフィルター(大阪ケミカル株式会社製)を使用してろ過処理を行った。ろ過後の溶液の分光透過率B(%)をろ過前と同様の方法で測定し、以下の式で分光透過率差を算出した。
(分光透過率差)=(分光透過率B)-(分光透過率A)
(2)成形品の凸形状の高さ、ピッチの測定
板状成形品を主面に垂直な方向(厚み方向)に切断して得た断面をデジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX-1000)を用いて観察した。得られた観察画像から成形品の主面に形成された凸形状の高さ及びピッチを測定し、5個の凸形状の平均値をそれぞれ高さa、ピッチbとして表1に記載した。
(3)成形品の凸形状の充填度の測定
板状成形品を主面に垂直な方向(厚み方向)に切断して得た断面をデジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VHX-1000)を用いて観察した。成形品の主面に形成された凸形状の高さaを求め、下記の計算式によって該凸形状を賦形するための金型における凹形状部の深さに対する比率として定義される充填度を導出し、4箇所の平均値を充填度の値として表1に記載した。
実質的には、充填度が0.92以上であれば、凸形状が転写された成形品として好ましいと判断できる。
(充填度)=(成形品の凸形状の高さa)/(金型の凹形状部の深さ)
(4)成形品の反り量の測定
板状成形品を、凸形状を持つ主面を上面として金属定盤上に置き、成形品の外周を4点で均等に分割し、該4点(図1の3a~3d参照)で成形品と定盤との間にできる隙間をシックネスゲージにて測定し、最も隙間(反り量)の大きい場所での値を成形品の反り量(mm)とした。
なお、成形品の上記凸形状を持つ主面の裏面(他方の主面)に他の部品との接続用凹凸部が付された成形品の場合は、該接続用凹凸部を含まない部分のみが残るようにトリミングを行い、断面をサンドペーパーで研磨した後に、前記反り量の測定を行うものとする。
実質的には、図1、図3に示す形状の板状成形品においては、反り量が0.4mm以下であれば、成形品の寸法精度として好ましい範囲であると判断できる。
(5)成形品の外観の評価
板状成形品を目視で観察し、凸形状を有する主面側の金型の微細凸形状賦形面での樹脂の充填不良による凸形状を有する主面の光沢ムラ、及び凸形状を有する主面の裏面(平面状の他方の主面)のうねりに伴う外観不良を観察した。
樹脂の充填不良箇所があると、部分的に欠けたようなかたちで確認することができる。また、他方の主面のうねりは、例えば、一辺が長い直方形のケースに納められた蛍光灯を上からあてた際の反射像を確認した際、直線が歪むかどうかを確認することで平面の良し悪しを判断することができる。
凸形状を有する主面の光沢ムラ及び他方の主面のうねりのいずれも確認されなかった場合を「○(良好)」、凸形状を有する主面の光沢ムラ及び他方の主面のうねりの少なくとも一方が確認された場合を「×(不良)」と評価した。
(6)成形品の面内位相差の測定
板状成形品を、PA-300-L(フォトニックラティス社製)の測定台の上に設置したシャーレ内に、凸形状を有する主面が上面に来るようにして置いた。そして、使用したメタクリル系樹脂の屈折率と近い屈折率を持ち、該メタクリル系樹脂を侵さない粘性が低い液体(株式会社島津製作所製の接触液)を、成形品の凸形状の頂部までが満たされるようにシャーレ内に加え、成形品の凸形状を有する主面が該液体に浸かり、該液体の液面が高低差なく平坦となるようにした。その状態のまま波長520nmでの面内位相差分布の測定を行った。凸形状が形成されているエリア(図1(A)、図3(A)参照)における面内位相差(Re)の絶対値の平均値を求め、位相差(nm)の測定値とした。
複屈折の値は、光学特性に悪影響を与えにくくする範囲として、面内位相差として100nm未満であることが好ましい。
(7)成形品表面に付着しているフッ素の定性分析
成形品の中央部と端部からそれぞれ5mm四方の小片を切り出し、VersaprobellII(アルバック・ファイ社製)を用い、XPSによる組成分析で成形品表面から検出される元素と相対元素濃度を測定し、成形品表面にフッ素が存在しているか否かを確認した。
(XPS測定条件)
・使用機器:アルファバックファイVersaprobeII
・励起源:mono.A1Kα 20kV×5mA 100
・分析サイズ:100μm×1.4mm
・光電子取り込み角:65°
合成例1〔メタクリル系樹脂組成物A〕
メタクリル酸メチル(以下、MMAと記す)318.7kg、N-フェニルマレイミド(以下、PMIと記す)35.5g、N-シクロヘキシルマレイミド(以下、CMIと記す)63.7kg、連鎖移動剤であるn-オクチルメルカプタンを0.341kg、メタキシレン(以下、mXyと記す)225.1kgを計量し、ジャケットによる温度調節装置と撹拌翼を具備した1.25m反応器に加え撹拌し、混合単量体溶液を得た。
次いで、mXy116.9kgを計量してタンク1に加え、追添溶媒を準備した。
さらに、タンク2にMMA104.5kg、mXy85.5kgを計量し、撹拌して追添用MMA溶液を得た。
反応器の内容液については30L/分の速度で窒素によるバブリングを1時間実施し、タンク1、タンク2のそれぞれについては10L/分の速度で窒素によるバブリングを30分間実施し、溶存酸素を除去した。
その後、ジャケット内にスチームを吹き込んで反応器内の溶液温度を125℃に上昇させ、50rpmで撹拌しながら、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.457kgをmXy2.67kgに溶解させた重合開始剤溶液を、1kg/時間の速度で添加することで重合を開始した。なお、重合中は反応器内の溶液温度をジャケットによる温度調節で125±2℃に制御した。重合開始から30分後、重合開始剤溶液の添加速度を0.25kg/時間に低下させ、さらにタンク1から29.24kg/時間で3.5時間の間mXyを添加した。
次いで、重合開始から4時間後に重合開始剤溶液の添加速度を0.75kg/時間に上げるとともにタンク2から追添用MMA溶液を95kg/時間で2時間の間添加した。
さらに、重合開始から6時間後に重合開始剤溶液の添加速度を0.25kg/時間に低下させ、重合開始7時間後に添加を停止した。
重合開始から8時間経過した後、メタクリル系樹脂を含む重合溶液を得た。これに酸化防止剤としてIrganox1010 0.261kg、Irgafos168 0.784kg、離型剤としてリケマールH-100 0.784kgを添加した。
次に、得られた重合溶液を、予め250℃に加熱された管状熱交換器と気化槽からなる濃縮装置に供給して脱揮を行った。気化槽の真空度は10~15Torrの条件とした。気化槽を流下した樹脂をスクリューポンプで払い出し、ストランドダイから押出し、水冷後ペレット化して、N-置換マレイミド構造単位を有するメタクリル系樹脂組成物Aを得た。
得られたペレットのTgは133℃、溶融粘度が131Pa・sec、引張り破断伸びが1.7%であった。
合成例2〔メタクリル系樹脂組成物B〕
メタクリル酸メチル60.000モル%、スチレン39.998モル%、重合開始剤としてt-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.002モル%からなるモノマー組成物を、ヘリカルリボン翼付き10L完全混合槽に1kg/hで連続的に供給し、平均滞留時間2.5時間、重合温度150℃で連続重合を行った。重合槽の液面が一定となるよう底部から連続的に抜き出し、管状熱交換器と気化槽からなる濃縮装置に供給して脱揮を行った。気化槽の真空度は10~15Torrの条件とした。気化槽を流下した樹脂をスクリューポンプで払い出し、ストランドダイから押出し、水冷後ペレット化して、脱溶剤装置に導入してペレット状のメタクリル酸メチル-スチレン共重合体を得た。
この共重合体をイソ酪酸メチルに溶解し、10質量%イソ酪酸メチル溶液を調製した。1000mLオートクレーブ装置に、この共重合体の10質量%イソ酪酸メチル溶液を500質量部、水素化触媒として10質量%Pd/C(NEケムキャット社製)を1質量部仕込み、水素圧9MPa、200℃で15時間保持して、共重合体のスチレン部位の芳香族二重結合を水素化した。フィルターにより水素化触媒を除去し、この重合体溶液に対して0.1質量部のリケマールH-100を添加混合した後、管状熱交換器と気化槽からなる濃縮装置に供給して脱揮を行った。気化槽の真空度は10~15Torrの条件とした。気化槽を流下した樹脂をギアポンプで払い出し、ストランドダイから押出し、水冷後ペレット化し、メタクリル系樹脂組成物Bを得た。
得られたペレットのTgは118℃、溶融粘度67Pa・sec、引張り破断伸び2.2%であった。
合成例3〔メタクリル系樹脂組成物C〕
パドル翼を備え付けた撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管及び滴下ポンプを付した30Lの反応釜に、2.25kgのメタクリル酸メチル、0.32kgの2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、0.024kgのスチレン、連鎖移動剤として最終的に反応釜に仕込む全単量体の総量100質量部に対して0.025質量部のn-ドデシルメルカプタン、0.025部のアデカスタブ2112、そして5.39kgのトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、撹拌しつつ105℃まで昇温した。
初期開始剤として、重合槽内にトルエン0.20kg、t-アミルパーオキシイソノナノエート0.014kgからなる溶液を10分かけて滴下しながら105℃~110℃で重合を行った。さらにその10分後に、トルエン0.26kgとt-アミルパーオキシイソノナノエート0.017kgからなる溶液を3時間かけて滴下しながら、また、この開始剤溶液との投入と同時に、メタクリル酸メチル2.75kg、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル0.40kg、スチレン0.24kgからなる溶液を3時間かけて滴下しながら重合温度105~110℃にて重合を行い、さらに2時間かけて熟成を行った。
得られた重合体溶液に、4.5gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物と72gのトルエンの混合溶液を加え、90~110℃で1.5時間、環化縮合反応を行った。その後、最終的に反応釜に仕込む全単量体総量100質量部に対して0.10質量部のリケマールH-100を添加、撹拌して混合を行った。
得られた重合液を4フォアベント、1バックベント付φ42mm脱揮押出機を用いて、バレル温度220℃、120rpm、樹脂量換算で5kg/時で環化縮合反応及び脱揮処理を行い、メタクリル系樹脂組成物Cのペレットを得た。
得られたペレットのTgは127℃、溶融粘度72Pa・sec、引張り破断伸び2.2%であった。
合成例4〔メタクリル系樹脂組成物D〕
同方向回転式の二軸押出機を用いてポリメタクリル酸メチルをモノメチルアミンでイミド化することで、グルタルイミド構造を有するメタクリル系樹脂組成物を得た。
スクリュー径40mmの同方向回転式二軸押出機を用い、押出機シリンダ温度を275℃、スクリュー回転数を150rpmとし、ホッパーよりリケマールH-100をポリマー全体の質量を100質量部とした時、0.1質量部含む重量平均分子量10,8000のポリメタクリル酸メチルを20kg/時間で供給するとともに、窒素を200mL/minの流量で押出機内にフローした。ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルから原料樹脂100質量部に対して1.8質量部のモノメチルアミンを注入し、イミド化反応を行った。反応ゾーンの末端(ベント口の手前)にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰のモノメチルアミンをベント口の圧力を50Torrに減圧して除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂は、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することによりイミド樹脂を得た。
次いでスクリュー径40mmの同方向回転式二軸押出機を用い、押出機シリンダ温度を255℃、スクリュー回転数を150rpmに設定し、得られたイミド樹脂を20kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルからエステル化剤として炭酸ジメチルとトリエチルアミンの混合液を注入し、樹脂中のカルボン酸基の低減を行った。イミド樹脂100質量部に対して炭酸ジメチルは3.2質量部、トリエチルアミンは0.8質量部とした。反応後の副生成物および過剰の炭酸ジメチルをベント口の圧力を50Torrに減圧して除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化しグルタルイミド構造を有するメタクリル系樹脂組成物Dを得た。
得られたペレットのTgは122℃、溶融粘度は158Pa・sec、引張り破断伸び7.9%であった。
(実施例1)
・片側主面に凸形状を有する板状成形品の成形
合成例1で得られたメタクリル系樹脂組成物Aを使用し、射出成形機(住友重機械工業社製、SE180EV-A)にて射出成形を行った。金型には、凸形状高さa=400μm、ピッチb=300μmの三角錐形の凸形状を有する主面を形成する側の金型(第1の金型)と平面である主面を形成する側の金型(第2の金型)からなり、各主面を形成する面近傍の金型内部にヒーター線を埋め込んだ入れ子式金型を用い、射出成形機に取り付けた。第1の金型の金型温度を165℃、第2の金型の温度を105℃までヒーター加熱により約3℃/秒の昇温速度で加熱した。昇温後、第1金型の表面にイソオクタン(沸点:99℃)、n-オクタン(沸点:126℃)、酢酸n-ブチル(沸点:126℃)を用い調整したフッ素系離型剤を噴霧し、エアーブローを行い、金型に樹脂組成物を射出するまでに300秒かけて金型表面に離型処理を施した。その後、金型を閉じて射出成形を行った。樹脂組成物を金型内に充填した後、第1の金型の金型温度を70℃まで約1.2℃/秒の降温速度で冷却し、70℃に到達後、90秒間の冷却を行い、片側主面に凸形状を有する板状成形品(縦90mm、横90mm、厚さ2.5mm、図1参照)を得た。なお、保持圧力は、射出直後は良好な転写を得るため1段目を80MPaと高く設定し、その後、成形品内部の応力歪を緩和するため保圧を1段目より下げ、2段目は30MPaに設定した。評価結果を表1に示す。
表1からも明らかなように、実施例1では、使用した樹脂組成物のTgが高いため、第1の金型温度を高温に設定することができた。そのため、離型剤調整溶媒の沸点よりも金型温度が十分に高温になることで離型剤調整溶媒の揮発効率が高くなり、効率的に離型被膜を形成することが可能であった。その結果、成形品表面に対する離型剤成分の転写が少なくなり、外観が良好で、分光透過率が高い成形品を得ることができた。また、XPSの測定結果より、成形品表面からフッ素のピークが検出された。図7に、XPS測定によるSurvey scanスペクトルを示す。
(実施例2)
・片側主面に凸形状を有する板状成形品の成形
合成例2で得られたメタクリル系樹脂組成物Bを使用し、第1の金型の金型温度を150℃に設定し、イソプロピルアルコール(沸点:83℃)を用い調整したフッ素系離型剤を使用した以外は、実施例1と同様の条件で成形を行った。評価結果を表1に示す。
実施例2では、使用した樹脂組成物のTgが実施例1の樹脂組成物と比較し低いため、実施例1のように第1の金型の温度を高温に設定することができない。そのため、実施例2において沸点が高い溶媒を用い調整した離型剤を使用すると、溶媒の揮発効率が低下し、凸形状を賦形する金型の凹形状部に溶媒が残存する状態で樹脂組成物を射出することになる。その結果、成形品表面の溶解による外観不良や離型成分の転写による成形品の透過率悪化の原因となる。実際には、沸点の低いイソプロピルアルコールを用いて調整した離型剤を使用したため、外観と分光透過率が良好な成形品を得ることができた。また、XPSの測定結果より、成形品表面からフッ素のピークが検出された。
(実施例3)
・片側主面に凸形状を有する板状成形品の成形
合成例3で得られたメタクリル系樹脂組成物Cを使用した以外は、実施例1と同様の条件で成形を行った。評価結果を表1に示す。
XPSの測定結果より、成形品表面からフッ素のピークが検出された。
(実施例4)
・片側主面に凸形状を有する板状成形品の成形
合成例4で得られたメタクリル系樹脂組成物Dを使用し、第1の金型の金型温度を155℃に設定し、イソプロピルアルコールを用い調整したフッ素系離型剤を使用した以外は、実施例1と同様の条件で成形を行った。評価結果を表1に示す。
XPSの測定結果より、成形品表面からフッ素のピークが検出された。
(実施例5)
・片側主面に凸形状を有する板状成形品の成形
金型に、片側主面に凸形状高さa=50μm、ピッチb=50μmの四角錐台形(底面は140μm四方、底面と側面とのなす角度は85度)の凸形状を有し、もう一方の主面は平面である、板状成形品(縦90mm、横90mm、厚さ2.4mm、図3参照)用であり、各主面を形成する面近傍の金型内部にヒーター線を埋め込んだ入れ子式金型を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で成形を行った。評価結果を表1に示す。
XPSの測定結果より、成形品表面からフッ素のピークが検出された。
表1からも明らかなように、実施例5ではろ過前の分光透過率Aが97.7%を示し、非常に優れた結果が得られた。また、外観についても良好なものであった。
(実施例6)
・片側主面に凸形状を有する板状成形品の成形
金型に、片側主面に凸形状高さa=400μm、ピッチb=160μmの四角錐台形(底面は140μm四方、底面と側面とのなす角度は85度)の凸形状を有し、もう一方の主面は平面である、板状成形品(縦90mm、横90mm、厚さ2.4mm、図3参照)用であり、各主面を形成する面近傍の金型内部にヒーター線を埋め込んだ入れ子式金型を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で成形を行った。評価結果を表1に示す。
XPSの測定結果より、成形品表面からフッ素のピークが検出された。
表1からも明らかなように、実施例5では透過率97.7%を示し、非常に優れた結果が得られた。また、外観についても良好なものであった。
(比較例1)
フッ素系離型剤の噴霧後、樹脂組成物を射出するまでの時間を90秒にした以外は実施例1と同じ条件で成形を行った。評価結果を表1に示す。
離型剤の噴霧後、樹脂組成物を射出するまでの時間が短いと、離型剤調整溶媒が揮発するための十分な時間を確保することができないため、成形品表面の溶解や、成形品に対する離型成分の転写が多くなる。実際に、比較例1では、評価の結果、成形品表面が曇っており透過率が低く、凸形状が充分に転写されているとは言えないものであった。
また、XPSの測定結果より、成形品表面からフッ素のピークが検出された。図7に、XPS測定によるSurvey scanスペクトルを示す
(比較例2)
ヒーターによる加熱を行わず、第1の金型の金型温度を110℃にして、射出した以外は実施例6と同じ条件で成形を行った。評価結果を表1に示す。
評価の結果、成形品表面が曇っており透過率が低く、凸形状が充分に転写されているとは言えないものであった。
また、XPSの測定結果より、成形品表面からフッ素のピークが検出された。
(比較例3)
第1の金型の金型温度を120℃にして射出した以外は実施例5と同じ条件で成形を行った。評価結果を表1に示す。
XPSの測定結果より、成形品表面からフッ素のピークが検出された。
(比較例4)
合成例2で得られたメタクリル系樹脂組成物Bを使用し、第1の金型の金型温度を155℃にして射出した以外は実施例1と同じ条件で成形を行った。評価結果を表1に示す。
評価の結果、ろ過前の分光透過率Aが96.0%であり、ろ過後の分光透過率Bが99.7%、透過率差が3.7%であった。また、成形品表面が曇っており外観が良好とは言えないものであった。
また、XPSの測定結果より、成形品表面からフッ素のピークが検出された。実施例の成形品の表面組成解析結果と比較し、フッ素の相対強度が強く検出された。
Figure 2023097083000001
実施例1および比較例1で得られた微細凸形状を持つ板状成形品を光方向変換素子として利用した時の特性を評価した。
図6に示されるように、微細凸形状を持つ板状成形品8の入射面(微細凸形状を有する主面の裏側の主面)81に対して45度の入射角で入ってきた光は、底面82とのなす角度が85度である斜面83で反射された後、底面82とのなす角度が65度の斜面84から屈折して外に出射される。この時、光は斜面84から屈折角64度で出射されるため、入射面81に対しては約90度の角度で光が出射されることとなる。つまり、入射面に45度の入射角で入射した光を入射面に垂直な方向に曲げる光方向変換素子であると換言できる。
図5(A)に示す配置で成形品8を配置し、光方向変換素子として、反射透過像の鮮明度を評価した。530nmの光を発するコリメートレンズ付きLED光源5(Thorlabs社製、M530L4)とフロスト拡散板6(シグマ光機社製、#240)を配置し、USAF Target7(Edmund社製、USAF1951ターゲットネガ、ターゲット領域は約12mm)を背面より照射した。Targetの透過領域71(図5(B)参照)を抜けた光で形成されたTarget像の光が、45°の入射角で成形品8の入射面81より入射し、成形品6の凸形状賦形面((微細凸形状を有する主面)から射出される光について、反射像(斜面83で反射した後、斜面84より透過する光で形成される像)を、入射面81に対して垂直方向に350mm離した位置に配置した一眼レフカメラ9(オリンパス社製、E-PL5)で撮影した。
実施例1にて得られた成形品を使用した際に観察される反射像は、鮮明な像であったが、比較例1で得られた成形品を使用した際に観察される反射像は、Target像のぎらつきが強く(遮光領域72(図5(B)参照)に相当する箇所の光漏れが多く)、鮮明度が低い状態であった。
本発明により提供される板状成形品は、透過率および外観が良好なため、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、導光板、反射防止シート、アンチグレアシート、細胞培養用シート等の各種光学部材として好適に用いることができる。
1:微細な凸形状を有する主面
2:微細な凸形状が形成されているエリア
3a、3b、3c、3d:反り量の測定点
4:凸形状
5:LED光源
6:フロスト拡散板
7:USAF Target
71:透過領域
72:遮光領域
8:板状成形品
81:入射面
82:底面
83、84:斜面
9:一眼レフカメラ

Claims (4)

  1. 板状成形品であり、
    少なくとも一方の主面に高さaが50~600μmの複数の微細な凸形状を有し、
    ガラス転移温度(Tg)が115~150℃のメタクリル系樹脂組成物を含み、表面にフッ素が付着しており、
    前記板状成形品をクロロホルムに溶解して得られた12質量%成形品含有クロロホルム溶液について、ろ過処理を行う前と後とに測定した波長600nmでの分光透過率の差が下記式を満たすことを特徴とする、板状成形品。
    (分光透過率B)-(分光透過率A)≦3.5[%]
    (式中、分光透過率Aは、ろ過処理を行う前の分光透過率[%]を表し、分光透過率Bは、ろ過処理を行った後の分光透過率[%]を表す。)
  2. 前記微細な凸形状を有する主面において、前記微細な凸形状の高さaに対する前記微細な凸形状のピッチbの比率b/aが0.1~1.0である、請求項1に記載の板状成形品。
  3. 前記微細な凸形状を有する主面の面内位相差が100nm以下である、請求項1又は2に記載の板状成形品
  4. 射出成形品であり、
    金型の表面温度を前記メタクリル系樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)以上に加熱した後、前記金型内に前記メタクリル系樹脂組成物を射出充填して得られる、請求項1~3のいずれか一項に記載の板状成形品。
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