JP2015109833A - 線維芽細胞から血管内皮細胞を製造する方法 - Google Patents

線維芽細胞から血管内皮細胞を製造する方法 Download PDF

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昭彦 吉村
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Abstract

【課題】本発明は、発がん性のリスクが低く、比較的短期間で簡便かつ多量に、しかも低コストで血管内皮細胞を製造し得る、より実用的な血管内皮細胞の製造方法、該製造方法により製造される血管内皮細胞、及び該血管内皮細胞を含有する血管新生促進剤を提供する。【解決手段】線維芽細胞にETV2遺伝子又はETV2タンパク質を導入し、次いで、該線維芽細胞を血管内皮細胞増殖用培地で培養することを特徴とする。上記線維芽細胞の種類としては、皮膚線維芽細胞、肺線維芽細胞、心臓線維芽細胞、大動脈外膜線維芽細胞、子宮線維芽細胞を挙げることができ、中でも、採取が比較的容易であることから皮膚線維芽細胞を好ましく挙げることができる。【選択図】なし

Description

本発明は、人工多能性幹細胞を経由せずに、線維芽細胞から血管内皮細胞を製造する方法、該方法により製造される血管内皮細胞、及び該血管内皮細胞を含有する血管新生促進剤に関し、より詳しくは、ETV2遺伝子を線維芽細胞に導入し、該線維芽細胞を血管内皮細胞増殖用培地で培養することを含む血管内皮細胞の製造方法、該製造方法により製造される血管内皮細胞、及び該血管内皮細胞を含有する血管新生促進剤に関する。
胚性幹細胞(ESC)及び人工多能性幹細胞(iPSC)を含む多能性幹細胞(PSC)から作製されるヒト血管内皮細胞(VEC)は、虚血性血管疾患の治療法への応用が期待されている(非特許文献1及び2)。特にiPSCは、血管内皮細胞の有望な作製源であるが、不完全な分化及び発がん性といったリスクがiPSCの応用を主に制限している(非特許文献3及び4)。完全な多能性状態をバイパスするため、多数の研究グループが、2又は4つのiPSC誘導因子(OCT4、SOX2、KLF4、及びc−MYC)を形質導入した線維芽細胞を、規定の血管内皮細胞培養条件下にて培養することにより血管内皮細胞を作製してきた(非特許文献2、5及び6)。しかし、PSC由来の血管内皮細胞は増殖能が低く、徐々に非血管系になるため、長期的な安定性が十分でないという問題があった(非特許文献7及び8)。
特定の系統に特異的な複数の転写因子を組み合わせて発現させると、多能性をバイパスして体細胞を別の系統の細胞に直接転換させ得ることが示されている。例えばGata4、Mef2c、及びTbx5は、マウス心臓線維芽細胞を機能的心筋細胞に転換し(非特許文献9、特許文献1)、Ascl1、Brn2、及びMyt1は、マウス線維芽細胞からニューロンを誘導することが知られている(非特許文献10)。しかし、線維芽細胞を、iPSCを経由せずに、血管内皮細胞の系統に直接転換し得るかどうかなどは知られていなかった。
内皮及び造血系の細胞は両方とも、共通の前駆体である血球血管芽細胞(hemangioblast)から生じ、この前駆体は卵黄嚢の血島に存在する(非特許文献11及び12)。マウスとゼブラフィッシュの研究では、ETS転写因子が萌芽期の血液−内皮分化に関与すること(非特許文献13)、ErgがKlf2と関係して、血管発達の間にFlk1の発現を誘導すること(非特許文献14)、Fli1が、Tal1及びGata2をはじめとする多くの初期内皮遺伝子の上流で機能することにより、血球血管芽細胞の発生初期に働くこと(非特許文献15)、及び妊娠初期の内皮及び造血系分化にとってEtv2が必須であること(非特許文献16)が解明されている。最近では、3つのETS因子であるETV2、FLI1、及びERGの組合せがヒト羊膜細胞を、安定的なEC表現型を示す機能的血管内皮細胞に直接的に転換することが報告されている(非特許文献7)。上記羊膜細胞由来の血管内皮細胞は、低い増殖性及び系が不安定である等のPSC由来血管内皮細胞の問題点を克服できるかもしれない。しかし、羊膜細胞は採取が容易でない上、男性はかかる細胞を有していないため、拒絶反応のない、自己の細胞由来の血管内皮細胞をいずれの患者にも提供する上では、依然として問題があった。
特表2013−524837号公報
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前述したように、ESCやiPSCから血管内皮細胞(VEC)を作製する方法には、発がん性のリスクがあるという問題のほか、インビトロ培養での血管内皮細胞への誘導効率が低いという問題もあった。本発明の課題は、従来法のこれらの問題を克服した、血管内皮細胞の製造方法を提供することにあり、すなわち、発がん性のリスクが低く、比較的短期間で簡便かつ多量に、しかも低コストで血管内皮細胞を製造し得る、より実用的な血管内皮細胞の製造方法、該製造方法により製造される血管内皮細胞、及び該血管内皮細胞を含有する血管新生促進剤を提供することにある。
線維芽細胞に2又は4つのiPSC誘導因子(OCT4、SOX2、KLF4、及びc−MYC)の遺伝子を導入してiPSCを作製し、該iPSCをEGM−2培地等の血管内皮細胞増殖用培地で培養することによって、血管内皮細胞を製造する方法は従来より知られていた。しかし、この方法には前述したような問題点があったため、本発明者らは、これらの問題点を克服するべく鋭意研究を行ったところ、線維芽細胞にETV2遺伝子を導入した上で、EGM−2培地等の血管内皮細胞増殖用培地で培養することにより、線維芽細胞からiPSCを経由せずに血管内皮細胞を製造し得ることを見いだし、本発明を完成するに至った。なお、血管内皮細胞に本来分化しない線維芽細胞を、血管内皮細胞に分化し得る系統の細胞に直接的に転換するには、3種類か4種類以上の因子の遺伝子を線維芽細胞に導入する必要があると考えられていたが、意外なことに、わずか1種類の因子の遺伝子(ETV2遺伝子)を線維芽細胞に導入すれば、血管内皮細胞へ分化し得る系統の細胞に直接的に転換できること、すなわち、線維芽細胞を血管内皮細胞に誘導するために、細胞内に導入することが必要な因子はETV2のみであることが本発明者らの今回の実験によって判明した。
また、本発明者らは、本発明の血管内皮細胞の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」とも表示する。)により製造した血管内皮細胞を、生体内に移植したところ、機能的な血管構造を形成することが示された。また、本発明の製造方法により製造した血管内皮細胞を、生体の虚血部位に移植したところ、虚血部位の血流が有意に回復することが示された。
さらに、本発明者らは、ETV2による線維芽細胞からETVECへの誘導には、線維芽細胞中の内因性FOXC2が必須であることを見いだした。
以上の知見を得ることによって、本発明者らは本発明を完成した。
すなわち、本発明は、(1)以下の工程(P)及び工程(Q)を有することを特徴とする、血管内皮細胞の製造方法;
工程(P):以下の(a)〜(f)のいずれかのポリヌクレオチドからなるETV2遺伝子、又は以下の(A)〜(C)のいずれかのタンパク質からなるETV2タンパク質を線維芽細胞に導入する工程;及び
工程(Q):前記ETV2遺伝子又は前記ETV2タンパク質が導入された線維芽細胞を血管内皮細胞増殖用培地で培養する工程;
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつETV2活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつETV2活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
(e)配列番号1に示されるヌクレオチド配列において、1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換及び/又は付加されたヌクレオチド配列からなり、かつETV2活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(f)配列番号1に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、かつETV2活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(A)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(B)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつETV2活性を有するタンパク質;
(C)配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつETV2活性を有するタンパク質;や、
(2)さらに、以下の工程(R)を有することを特徴とする上記(1)に記載の血管内皮細胞の製造方法;
工程(R):工程(Q)で培養して得られる細胞から血管内皮細胞を分取する工程;や、(3)工程(R)において、工程(Q)で培養して得られる細胞から血管内皮細胞を分取する方法が、工程(Q)で得られる細胞から血管内皮細胞マーカー陽性細胞を分取する方法であることを特徴とする上記(2)に記載の血管内皮細胞の製造方法や、
(4)血管内皮細胞マーカーがCD31であることを特徴とする上記(3)に記載の血管内皮細胞の製造方法や、
(5)さらに、以下の工程(S)を有することを特徴とする上記(2)〜(4)のいずれかに記載の血管内皮細胞の製造方法;
工程(S):工程(R)で分取した血管内皮細胞を、血管内皮細胞増殖用培地で培養する工程;や、
(6)ETV2遺伝子の線維芽細胞への導入が、前記ETV2遺伝子を発現し得る発現ベクターを前記線維芽細胞へ導入することによりなされることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の血管内皮細胞の製造方法や、
(7)ETV2遺伝子を発現し得る発現ベクターが、ETV2遺伝子を発現し得るレンチウイルスベクターであることを特徴とする上記(6)に記載の血管内皮細胞の製造方法や、
(8)血管内皮細胞増殖用培地が、少なくとも血管内皮増殖因子(VEGF)及び塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含むことを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の血管内皮細胞の製造方法や、
(9)ETV2遺伝子がヒトETV2遺伝子であり、ETV2タンパク質がヒトETV2タンパク質であり、線維芽細胞がヒト線維芽細胞であることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の血管内皮細胞の製造方法や、
(10)線維芽細胞が、皮膚線維芽細胞であることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載の血管内皮細胞の製造方法に関する。
また、本発明は、(11)上記(1)〜(10)のいずれかに記載の血管内皮細胞の製造方法により製造される血管内皮細胞に関する。
さらに、本発明は、(12)上記(1)〜(10)のいずれかに記載の血管内皮細胞の製造方法により製造される血管内皮細胞を含有する血管新生促進剤に関する。
本発明によれば、線維芽細胞からiPSCを経由せずに血管内皮細胞を製造することができるため、比較的短期間で簡便かつ多量に、しかも低コストで血管内皮細胞を製造することができる。例えば、線維芽細胞からiPSCを経由して血管内皮細胞を製造する場合、通常約5−6ヶ月の期間を要するが、本発明によれば、線維芽細胞から約1ヶ月間程度で血管内皮細胞を製造することが可能となる。
また、本発明の製造方法では、多能性状態の細胞を用いず、また、がん原遺伝子としても知られるc−Myc遺伝子も用いないため、ESCやiPSCを用いる場合に懸念される発がん性の問題もない。
また、本発明の製造方法により得られた血管内皮細胞を投与する対象の組織から採取した線維芽細胞を本発明の製造方法に用いれば、その対象に投与した際に拒絶反応が生じない血管内皮細胞を作製することができる。
また、本発明の製造方法により製造された血管内皮細胞は、生体内で機能的な血管構造を形成し、また、虚血部位の血流を有意に回復し得るなど、生体内で優れた機能を発揮することができる。
図1Aは、18種類のヒト転写因子(ERG、ETV2、FLI1、FOXC2、GATA2、HHEX、HOPX、HOXA9、HOXB4、KLF4、LMO2、MEF2A、MEIS1、RUNX1、SOX4、TAL1、TCF4、及びVEZF1)(以下、「18TF」ともいう)発現レンチウイルスベクターを導入した後、後述の[細胞培養]の4)の記載の方法にしたがって、本件EGM−2培地中で該細胞の培養を、導入から14日後まで行ったヒト繊維芽細胞(ヒト胎児肺線維芽細胞[Human fetal lung fibroblast-1;HFL-1細胞])について、CD31、Venus、及びVEGF−R2の発現を解析した結果を示す図である。図1Aの上段の四角で囲った箇所は、CD31陽性()VenusHFL−1細胞(全細胞中1.35%)を示す。図1Aの下段グラフ中の右側のピークは、CD31VenusHFL−1細胞を示し、左側のピークはCD31VenusHFL−1細胞を示す。図1Bは、上記CD31VenusHFL−1細胞を位相差顕微鏡(上段)及び蛍光顕微鏡(下段)で観察した結果を示す図である(スケールバーは50μmを示す)。図1Cは、上記CD31VenusHFL−1細胞の毛細血管様構造形成能を解析した結果を示す図である(スケールバーは300μmを示す)。 図2Aは、18TFDNAを検出するためのプライマーセットがアニールする部位を模式的に示す図である。図2B及びCは、18TF発現レンチウイルスベクターを導入し、その後本件EGM−2培地中で培養したHFL-1細胞から得られたCD31細胞について遺伝子解析した結果を示す図である。図中「M」はDNAサイズマーカーを示し、図中の数値は塩基対(bp)の長さを示す。図2Dは、HOPX発現レンチウイルスベクター又はETV2発現レンチウイルスベクターを導入し、その後本件EGM−2培地中で培養したHFL-1細胞について、CD31の発現を解析した結果を示す図である。縦軸は、全細胞に対するCD31HFL−1細胞の割合を示す(平均値±標準偏差、[n=4])。図2Eは、ETV2発現レンチウイルスベクターを導入したヒト新生児皮膚線維芽細胞(NB1RGB細胞)について、CD31及びVenusの発現を解析した結果を示す図である。図の四角で囲った箇所はCD31VenusNB1RGB細胞(全細胞中1.80%)を示す。 図3Aは、HAタグを付加した5種類のETV2(全長ETV2、ETSドメイン[239〜323番目アミノ酸領域]欠失ETV2[ΔETS]、TAD[1〜162番目アミノ酸領域]欠失ETV2[ΔTAD]、TADのN末端側領域[1〜81番目アミノ酸領域]欠失ETV2[ΔTADN]、及びTADのC末端側領域[81〜162番目アミノ酸領域]欠失ETV2[ΔTADC])を模式的に示した図である。図3Bは、HAタグを付加した上記5種類のETV2を発現する各レンチウイルスベクターを導入した初代ヒト成人皮膚線維芽細胞(HAFs細胞)について、CD31及びVEGF−R2の発現を解析した結果を示す図である。 図4Aは、ETV2発現レンチウイルスベクターを導入した後、後述の[細胞培養]の4)の記載の方法にしたがって、本件EGM−2培地中で該細胞の培養を行ったHAFs細胞について、導入後15日及び25日目にCD31の発現を解析した結果を示す図である。左図の四角で囲った箇所は、導入後15日目におけるCD31VenusHAFs細胞(全細胞中3.4±0.6%)を示し、右図の四角で囲った箇所は、かかるCD31VenusHAFs細胞を選別し、さらに10日間培養後(導入後25日目)のCD31VenusHAFs細胞(全細胞中95.3±3.2%)を示す。図4Bは、ETV2発現レンチウイルスベクターを導入したHAFs細胞について、導入後15日、25日及び32日目にCD31VenusHAFs細胞数を計測した結果を示す図である(平均値±標準偏差、[n=3])。図4Cは、ETV2発現レンチウイルスベクターを導入した後、後述の[細胞培養]の4)の記載の方法にしたがって、本件EGM−2培地中で該細胞の培養を行ったHAFs細胞について、導入後32日目に細胞の形態を位相差顕微鏡で解析した結果である。上段が低倍率画像(スケールバーは50μmを示す)を示し、下段が高倍率画像(スケールバーは50μmを示す)を示す。図4Dは、ETV2発現レンチウイルスベクターを導入した後、後述の[細胞培養]の4)の記載の方法にしたがって、本件EGM−2培地(VEGF及びbFGF添加;VF[+])、又はEGM−2培地(VEGF及びbFGF無添加;VF[−])中で該細胞の培養を行ったHAFs細胞について、導入後15日目にCD31VEGF−R2HAFs細胞を解析した結果を示す図である。右図の縦軸は、CD31VEGF−R2HAFs細胞数を示す(平均値±標準偏差、[n=4])。また、右図中の「**」は、統計的(スチューデントのt検定)に有意差(P<0.01)があることを示す。 図5Aは、ETV2発現レンチウイルスベクターを導入した後、後述の[細胞培養]の4)の記載の方法にしたがって、本件EGM−2培地中で該細胞の培養を行ったHAFs細胞について、導入後32日目にETV2遺伝子のmRNAの発現の他、8種類のVECマーカー遺伝子(ERG、FLI1、TAL1、PECAM1、CDH5、EGFL7、KDR、及びvWF)のmRNAの発現や、繊維芽細胞マーカー遺伝子(COL1A2)のmRNAの発現を解析した結果を示す図である。縦軸には、上記10種類の遺伝子のmRNAの発現量をHPRT1遺伝子のmRNAの発現量に対する相対値として示す(平均値±標準偏差、[n=3])。各遺伝子における3つの棒グラフは、左から順にHAFs細胞、ETV2発現レンチウイルスベクターを導入したHAFs細胞、及びヒト臍帯静脈内皮細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cells;HUVEC)から得られた結果を示す。図5B〜Dは、ETV2発現レンチウイルスベクターを導入したHAFs細胞について、導入後32日目にvWF(図5Bの右パネル)やVE-cadherinの発現(図5Bの左パネル)や、AcLDLの取り込み活性(図5C)や、毛細血管様構造形成能(図5D)を解析した結果を示す図である(図5C;スケールバーは50μmを示す)(図5D;スケールバーは300μmを示す)。 図6Aは、HAFs細胞における、FOXC1及びFOXC2のmRNA発現を示す図である。図6Bは、FOXC2のshRNAを発現するHAFs細胞へ、上記[繊維芽細胞への遺伝子導入法]の項目に記載の方法にしたがって、ETV2を発現するレンチウイルスベクターを導入し、その後、上記[細胞培養]の4)の記載の方法にしたがって、本件EGM−2培地中で該細胞の培養を行い、導入から15日後にセルソーター(FACSAria II[BD biosciences社製])を用いて選別したVenus細胞(FOXC2遺伝子ノックダウン細胞)における、ERG遺伝子(VECマーカー遺伝子の1種)、ETV2遺伝子、FLI1遺伝子(VECマーカー遺伝子の1種)、FOXC2遺伝子のmRNAの発現を解析した結果を示す図である。また、FOXC2のshRNAに代えて、コントロールのshRNAを用いて得たコントロール細胞についても同様の解析を行った結果を示す。縦軸には、上記4種類の遺伝子のmRNAの発現量をHPRT1遺伝子のmRNAの発現量に対する相対値として示す(平均値±標準偏差、[n=3])。各遺伝子に関する2つの棒グラフは、左の棒グラフがFOXC2遺伝子ノックダウン細胞の結果を示し、右の棒グラフがコントロール細胞の結果を示す。図中の「*」は、統計的(スチューデントのt検定)に有意差(P<0.01)があることを示す。図6Cは、FOXC2遺伝子ノックダウン細胞(図6右パネル)及びコントロール細胞(図6左パネル)において、CD31の発現を解析した結果を示す図である。両パネルにおいて、横軸はCD31の蛍光シグナルを表し、縦軸は細胞の側方散乱を表す。両パネル中の数値は、Venusの細胞中のCD31細胞の割合(%)を表す。 図7は、ETV2により誘導したCD31VenusHAFs細胞を、マウスに皮下移植した結果を示す図である(スケールバーはすべて50μmを示す)。図7Aは、移植後28日目に、移植部位のヒト(h)CD34の発現を解析した結果を示す。また、図7Bは、移植後28日目に、移植部位のハリエニシダアグルチニン−I(UEAI:Ulex europaeus agglutinin I)の局在を解析した結果を示す。また、図7Cは、移植後28日目に、移植部位のhCD34及びα−平滑筋アクチン(α−SMA)の発現を解析した結果を示す。なお、図7BやCにおける白矢印は、赤血球を含有する血管であることを示し、この血管内の球状の粒は赤血球を示す。また、図7Dは、移植後42日目に、移植部位のhCD34及びα−平滑筋アクチン(α−SMA)の発現を解析し、立体画像を作成した結果を示す。また、図7Eは、移植後28日目に、移植部位のhCD34及び内皮一酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現を解析した結果を示す。 図8は、ETV2により誘導したCD31VenusHAFs細胞を、後肢虚血モデルマウスの後肢虚血部位に移植した結果を示す図である。図8Aは、移植後14日目の後肢虚血部位を示す図である。また、図8Bは、移植後14日目の後肢虚血部位をヘマトキシリン・エオシン染色した結果を示す図である。また、図8C及びDは、移植後14日目の後肢虚血部位をレーザードップラー画像解析した結果を示す図である。図8Dの縦軸は、後肢虚血モデルマウスの後肢虚血部位における血流を同じマウスの非虚血後肢における血流も対する相対値として示す(平均値±標準偏差、[PBS溶液移植群;n=10、HAFs細胞移植群;n=10、ETV2により誘導したCD31VenusHAFs細胞移植群;n=6])。また、図8D中の「*」及び「**」は、それぞれ統計的に有意差(P<0.05及びP<0.01)があることを示す。なお、統計処理は、両側スチューデントのt検定(Student's t-test)又は片側ANOVA検定を用いて行った。図8Eは、移植後14日目の後肢虚血部位のhCD34の発現を解析した結果を示す図である(スケールバーは50μmを示す)。
本発明の血管内皮細胞の製造方法としては、ETV2遺伝子又はETV2タンパク質を線維芽細胞に導入する工程(P)、及び、ETV2遺伝子又はETV2タンパク質が導入された線維芽細胞を血管内皮細胞増殖用培地で培養する工程(Q)を有する方法である限り特に制限されず、ここで「培地」とは、細胞を培養できる「培地成分」に水を添加した状態のものをいう。本発明の作用機序の詳細は不明であるが、導入したETV2遺伝子から発現したETV2タンパク質、又は、導入したETV2タンパク質が、線維芽細胞内で転写因子として作用することにより、線維芽細胞を、血管内皮細胞へ分化し得る系統の細胞に直接的に転換するものと考えられる。
本発明におけるETV2遺伝子としては、
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつETV2活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつETV2活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(d)配列番号1に示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
(e)配列番号1に示されるヌクレオチド配列において、1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換及び/又は付加されたヌクレオチド配列からなり、かつETV2活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(f)配列番号1に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、かつETV2活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
のいずれかのポリヌクレオチドからなるETV2遺伝子であれば特に制限されず、また、本発明におけるETV2タンパク質としては、
(A)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(B)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつETV2活性を有するタンパク質;
(C)配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつETV2活性を有するタンパク質;のいずれかのタンパク質であれば特に制限されず、ここで、「ETV2活性を有するタンパク質」とは、そのタンパク質、又はそのタンパク質をコードする遺伝子を線維芽細胞に導入し、次いで、該細胞を血管内皮細胞増殖用培地で培養した場合に、血管内皮細胞を製造し得るタンパク質を意味する。
上記の配列番号1はヒトETV2遺伝子のヌクレオチド配列を表し、上記の配列番号2はヒトETV2タンパク質のアミノ酸配列を表す(GenBankアクセッションナンバーNM_014209.2)。ETV2の配列データは、ヒト以外の様々な脊椎動物でもすでに公知となっており、GenBankのような公共のデータバンクに開示されている。例えばマウスについてはNM_007959.2、モルモットについてはXM_003466622.2、ヤギについてはXM_005692503.1、イノシシについてはXM_005664531.1、ハイイロオオカミについてはXM_005616699.1、カニクイザルについてはXM_005588874.1、ウシについてはNM_001191317.1、ウマについてはXM_001915107.3、アフルカツメガエルについてはNM_001096131.1、ゼブラフィッシュについてはNM_001037375.1に、ETV2の配列データが開示されている。
上記「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列」とは、例えば1〜30個の範囲内、好ましくは1〜20個の範囲内、より好ましくは1〜15個の範囲内、さらに好ましくは1〜10個の範囲内、より好ましくは1〜5個の範囲内、さらに好ましくは1〜3個の範囲内、より好ましくは1〜2個の範囲内の数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を意味し、また、上記「1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換及び/又は付加されたヌクレオチド配列」とは、例えば1〜40個の範囲内、好ましくは1〜30個の範囲内、より好ましくは1〜20個の範囲内、さらに好ましくは1〜15個の範囲内、より好ましくは1〜10個の範囲内、より好ましくは1〜5個の範囲内、さらに好ましくは1〜3個の範囲内、より好ましくは1〜2個の範囲内の数のヌクレオチドが欠失、置換及び/又は付加されたヌクレオチド配列を意味する。
例えば、これら1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換及び/又は付加されたヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド(変異ポリヌクレオチド)は、化学合成、遺伝子工学的手法、突然変異誘発などの当業者に既知の任意の方法により作製することもできる。具体的には、配列番号1に示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドに対し、変異原となる薬剤と接触作用させる方法、紫外線を照射する方法、遺伝子工学的な手法等を用いて、これらポリヌクレオチドに変異を導入することにより、変異ポリヌクレオチドを取得することができる。遺伝子工学的手法の一つである部位特異的変異誘発法は特定の位置に特定の変異を導入できる手法であることから有用であり、Molecular Cloning: Alaboratory Mannual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor,NY.,1989.以後 "モレキュラークローニング第2版" と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38,John Wiley & Sons (1987-1997)等に記載の方法に準じて行うことができる。この変異ポリヌクレオチドを適切な発現系を用いて発現させることにより、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質を得ることができる。
上記「配列番号1に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の同一性を有するヌクレオチド配列」とは、配列番号1に示されるヌクレオチド配列との同一性が80%以上であれば特に制限されるものではなく、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上であることを含んでいる。
上記「配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列」とは、配列番号2に示されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であれば特に制限されるものではなく、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上であることを含んでいる。
上記のETV2遺伝子の取得方法や調製方法は特に限定されるものでなく、配列番号1や2に示されるヒトのETV2の配列情報や、他の生物種の公知のETV2の配列情報に基づいて適当なオリゴヌクレオチドをプローブもしくはプライマーとして合成し、ヒト等の脊椎動物の細胞・組織由来のmRNA、cDNAもしくはcDNAライブラリーから、ハイブリダイゼーション法や(RT−)PCR法(モレキュラークローニング第2版に記載の方法等)を用いてヒト等の脊椎動物のETV2のcDNAをクローニングし、ヒト等の脊椎動物のETV2遺伝子を取得する方法のほか、常法に従って化学合成により調製することもできる。また、取得したETV2遺伝子又はその一部をプローブとして用いたハイブリダイゼーション法などにより、そのETV2遺伝子の由来する脊椎動物とは別の種類の脊椎動物からETV2遺伝子を取得することもできる。
上記のETV2タンパク質の取得方法や、調製方法は特に限定されず、天然由来のタンパク質でも、化学合成したタンパク質でも、遺伝子組換え技術により作製した組み換えタンパク質の何れでもよい。天然由来のタンパク質を取得する場合には、かかるタンパク質を発現している細胞又は組織からタンパク質の単離・精製方法を適宜組み合わせることにより、本発明のタンパク質を取得することができる。化学合成によりタンパク質を調製する場合には、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法に従って本発明のタンパク質を合成することができる。また、各種の市販のペプチド合成機を利用して本発明のタンパク質を合成することもできる。遺伝子組換え技術によりETV2タンパク質を調製する場合には、該ETV2タンパク質をコードするポリヌクレオチド(ヒトETV2であれば、配列番号1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド)を好適な発現系に導入することにより本発明のタンパク質を調製することができる。これらの中でも、比較的容易な操作でかつ大量に調製することが可能な遺伝子組換え技術による調製が好ましい。
例えば、遺伝子組換え技術によって、本発明におけるETV2タンパク質を調製する場合、かかるタンパク質を細胞培養物から回収し精製するには、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含めた公知の方法、好ましくは、高速液体クロマトグラフィーが用いられる。特に、アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、例えば、本発明におけるETV2タンパク質に対するモノクローナル抗体等の抗体を結合させたカラムや、上記本発明におけるETV2タンパク質に通常のペプチドタグを付加した場合は、このペプチドタグに親和性のある物質を結合したカラムを用いることにより、これらのタンパク質の精製物を得ることができる。また、本発明におけるETV2タンパク質が細胞膜に発現している場合は、細胞膜分解酵素を作用させた後、上記の精製処理を行うことにより精製標品を得ることができる。
さらに、配列番号2に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質や、配列番号2に示されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質は、配列番号1や2に示されるヒトのETV2の配列情報や、他の生物種の公知のETV2の配列情報に基づいて、当業者であれば適宜調製又は取得することができる。例えば、配列番号1や2に示されるヒトのETV2の配列情報や、他の生物種の公知のETV2の配列情報に基づいて適当なオリゴヌクレオチドをプローブもしくはプライマーとして合成し、ヒト等の脊椎動物の細胞・組織由来のmRNA、cDNAもしくはcDNAライブラリーから、ハイブリダイゼーション法や(RT−)PCR法(モレキュラークローニング第2版に記載の方法等)を用いてヒト等の脊椎動物のETV2のcDNAをクローニングし、ヒト等の脊椎動物のETV2タンパク質をコードするポリヌクレオチドを取得する。また、かかるポリヌクレオチドをプローブとして用いたハイブリダイゼーション法などにより、そのポリヌクレオチドが由来する脊椎動物とは別の種類の脊椎動物からETV2タンパク質をコードするポリヌクレオチドを取得することもできる。このようにして得られたETV2タンパク質をコードするポリヌクレオチドを発現ベクターに組み込んだ後、適当な宿主細胞に導入して培養し、培養した細胞又はその馴化培地から組換えタンパク質を回収することにより、ヒト等の脊椎動物由来のETV2タンパク質を取得することができる。
本発明におけるETV2遺伝子を線維芽細胞へ導入する方法としては、本発明におけるETV2遺伝子を線維芽細胞へ導入できる方法である限り特に制限されないが、該ETV2遺伝子を発現し得る発現ベクターを線維芽細胞へ導入する方法を挙げることができる。発現ベクターの種類としては、例えば、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、センダイウイルスベクターなどのウイルスベクター、動物細胞発現プラスミドベクター(例、pA1-11,pXT1,pRc/CMV,pRc/RSV,pcDNAI/Neo)などを挙げることができ、中でもレンチウイルスベクターを好ましく挙げることができる。
上記のETV2遺伝子を発現し得る発現ベクターにおいて、ETV2遺伝子は、目的の線維芽細胞で機能し得るプロモーターに作動可能に連結されていることが好ましく、かかるプロモーターとしては、例えばEF−1αプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、MoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス)LTR、HSV−TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロモーター、CAGプロモーターなどを挙げることができ、中でも、EF−αプロモーター、CMVプロモーター、SRαプロモーター、MoMuLV LTR、CAGプロモーターなどを好ましく挙げることができる。
上記の発現ベクターは、ETV2遺伝子及びプロモーターの他に、所望によりエンハンサー、ポリA付加シグナル、選択マーカー遺伝子、SV40複製起点などを含有していてもよい。選択マーカー遺伝子としては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子等を挙げることができる。
ETV2遺伝子を発現し得る発現ベクターは、ベクターの種類に応じて、自体公知の手法により線維芽細胞に導入することができる。例えば、ウイルスベクターの場合、ETV2遺伝子を含むプラスミドを適当なパッケージング細胞(HEK293T細胞細胞など)に導入して、培養上清中に産生されるウイルスベクターを回収し、各ウイルスベクターに応じた適切な方法により、該ベクターを線維芽細胞に感染させることができる。例えば、ベクターとしてレンチウイルスベクターを用いる場合の具体的手段については、Science,318, 1917-1920 (2007)などを参照することができ、レトロウイルスベクターを用いる場合については、WO2007/69666、Cell, 126, 663-676 (2006) 及び Cell, 131, 861-872 (2007)などを参照することができ、アデノウイルスベクターを用いる場合については、Science, 322, 945-949 (2008)を参照することができる。
一方、ETV2遺伝子を発現し得る発現ベクターが、非ウイルスベクターであるプラスミドベクターには、リポフェクション法、リポソーム法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム共沈殿法、DEAE(ジエチルアミノエチル)デキストラン法、マイクロインジェクション法、遺伝子銃法などを用いて該ベクターを線維芽細胞に導入することができる。
本発明におけるETV2タンパク質を線維芽細胞へ導入する方法としては、本発明におけるETV2タンパク質を線維芽細胞へ導入できる方法である限り特に制限されないが、例えば、タンパク質導入試薬を用いる方法、タンパク質導入ドメイン(PTD)−又は細胞膜透過ペプチド(CPP)−融合タンパク質を用いる方法、マイクロインジェクション法などを挙げることができる。タンパク質導入試薬としては、カチオン性脂質をベースとしたBioPOTER Protein Delivery Reagent(Gene Therapy Systmes社製)、Pro-JectTM Protein Transfection Reagent(PIERCE社製)及びProVectin(IMGENEX社製)、脂質をベースとしたProfect-1(Targeting Systems社製)、膜透過性ペプチドをベースとしたPenetrain Peptide(Q biogene社製)及びChariot Kit(Active Motif社製)、HVJエンベロープ(不活化センダイウイルス)を利用したGenomONE(石原産業社製)等が市販されている。導入はこれらの試薬に添付のプロトコルに従って行うことができるが、一般的な手順は以下の通りである。ETV2タンパク質を適当な溶媒(例えば、PBS、HEPES等の緩衝液)に希釈し、導入試薬を加えて室温で5−15分程度インキュベートして複合体を形成させ、これを無血清培地に交換した細胞に添加して37℃で1ないし数時間インキュベートすることができる。その後培地を除去して血清含有培地に交換することができる。
上記のPDTとしては、ショウジョウバエ由来のAntP(アンティナペディア)、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)由来のTAT(Frankel, A. et al, Cell 55,1189-93 (1988) 又は Green, M. & Loewenstein, P. M. Cell 55, 1179-88 (1988))、Penetratin (Derossi, D. et al, J. Biol. Chem. 269, 10444-50 (1994))、Buforin II (Park, C. B. etal. Proc. Natl Acad. Sci. USA 97, 8245-50 (2000))、Transportan (Pooga, M. et al. FASEB J. 12, 67-77 (1998))、MAP (model amphipathic peptide) (Oehlke, J. et al.Biochim. Biophys. Acta. 1414, 127-39 (1998)), K-FGF (Lin, Y. Z. et al. J. Biol.Chem. 270, 14255-14258 (1995))、Ku70 (Sawada, M. et al. Nature Cell Biol. 5, 352-7 (2003))、Prion (Lundberg, P. et al. Biochem. Biophys. Res. Commun. 299, 85-90 (2002))、pVEC (Elmquist, A. et al. Exp. Cell Res. 269, 237-44 (2001))、Pep-1 (Morris, M. C. et al. Nature Biotechnol. 19, 1173-6 (2001))、Pep-7 (Gao, C. et al. Bioorg. Med. Chem. 10, 4057-65 (2002))、SynBl (Rousselle, C. et al. MoI. Pharmacol. 57, 679-86 (2000))、HN-I (Hong, F. D. & Clayman, G L. Cancer Res. 60, 6551-6 (2000))、及びHSV(単純ヘルペスウイルス)由来のVP22等のタンパク質の細胞通過ドメインを用いたものが開発されている。PTD由来のCPPとしては、11R (Cell Stem Cell, 4:381-384 (2009)) 及び 9R (Cell Stem Cell, doi:10.1016/j.stem.2009.05.005 (2009))のようなポリアルギニンが挙げられる。ETV2タンパク質のcDNAとPTD又はCPP配列とを組み込んだ融合タンパク質発現ベクターを作製して組換え発現させ、融合タンパク質を回収して導入に用いることができる。この場合の導入は、タンパク質導入試薬を添加しない以外は上記と同様にして行うことができる。
上記のマイクロインジェクションは、先端径1μm程度のガラス針にタンパク質溶液を入れ、細胞に穿刺導入する方法であり、確実に細胞内にタンパク質を導入することができる。
本発明の製造方法に用いる上記線維芽細胞の種類としては、皮膚線維芽細胞、肺線維芽細胞、心臓線維芽細胞、大動脈外膜線維芽細胞、子宮線維芽細胞を挙げることができ、中でも、採取が比較的容易であることから皮膚線維芽細胞を好ましく挙げることができる。また、上記線維芽細胞の由来となる生物種としては、脊椎動物である限り特に制限されず、該脊椎動物としては、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類等を挙げることができ、中でも、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、サル、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の哺乳動物を好ましく挙げることができ、中でもヒトを特に好ましく挙げることができる。また、上記線維芽細胞は、株化細胞であってもよいし、組織から採取した細胞(初代培養細胞や継代培養細胞を含む)であってもよい。本発明に用いる線維芽細胞のより具体的な例として、初代ヒト成人皮膚線維芽細胞(HAFs細胞)、株化されたヒト胎児肺線維芽細胞(HFL−1細胞)、株化されたヒト新生児皮膚線維芽細胞(NB1RGB細胞)などを挙げることができる。
本発明の製造方法に用いる線維芽細胞は、Invitrogen社、Lonza社やPromoCell社やCELLAPPLICATIONS社や、RIKEN Bioresource Center CELL BANK、独立行政法人医薬基盤研究所 JCRB細胞バンクなどの企業や独立行政法人から市販又は分譲しているものを用いてもよいが、本発明の製造方法により得られた血管内皮細胞を投与する対象の組織から採取した線維芽細胞を本発明の製造方法に用いれば、その対象に投与した際に拒絶反応が生じない血管内皮細胞を作製することができるため、かかる線維芽細胞を好ましく挙げることができる。
線維芽細胞をドナー(採取源)の組織から採取、分離する方法としては、公知の方法などを用いることができ、例えば、ドナーから、線維芽細胞を含む組織を切り取り、該組織を粉砕し、次いで、トリプシン等の酵素を用いて該組織を単細胞に解離させる方法を挙げることができる。
本発明の製造方法に用いる血管内皮細胞増殖用培地としては、血管内皮細胞を増殖及び維持できる培地である限り特に制限されないが、血管内皮細胞を一定期間生存させ得る血管内皮細胞基本培地に、血管内皮細胞添加因子が添加された培地を好ましく挙げることができる。かかる内皮細胞添加因子としては、VEGF(血管内皮増殖因子、bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)、EGF(上皮成長因子)、ヒドロコルチゾン、FBS(ウシ胎仔血清)(FCSとも表示する。)、R3−IGF(インシュリン様成長因子)−1、アスコルビン酸、ヘパリン、ゲンタマイシン、アンホテリシン−Bからなる群から選ばれる1種又は2種以上を挙げることができ、中でも、少なくともVEGF及びbFGFを用いることを好ましく挙げることでき、中でも、VEGF及びbFGFに加えて、EGF、ヒドロコルチゾン、FBS、R3−IGF−1、アスコルビン酸、ヘパリン、ゲンタマイシン、アンホテリシン−Bからなる群から選ばれる1種又は2種以上を用いることをより好ましく挙げることでき、中でも、VEGF、bFGF、EGF及びFBSを少なくとも用いることをさらに好ましく挙げることでき、中でも、VEGF、bFGF、EGF、FBS、ヒドロコルチゾン、R3−IGF−1、アスコルビン酸、ヘパリン(併せて以下、「8種類の添加因子」とも表示する。)を少なくとも用いることをさらにより好ましく挙げることでき、上記10種類の添加因子を全て用いることをさらにより好ましく挙げることができる。また、上記VEGF、EGF、bFGF、R3−IGF−1の由来としては、ヒトでなくてもよいが、ヒトであることが好ましい。
上記の内皮細胞添加因子は、EGM(登録商標)−2 Single Quots(登録商標)(Lonza社製)や、Endothelial cell growth medium, advanced(provitro社製)など、市販されているものを用いることができる。なお、上記EGM−2 Single Quots(Lonza社製)は上記10種類の添加因子を含んでおり、上記Endothelial cell growth medium, advanced(provitro社製)は、上記8種類の添加因子を含んでおり、任意成分として、ゲンタマイシン、アンホテリシン−Bを挙げている。Endothelial cell growth medium, advanced(provitro社製)の各成分の濃度は、VEGFが0.5ng/mL、bFGFが10ng/mL、EGFが5ng/mL、FBSが2%、ヒドロコルチゾンが0.2μg/mL、R3−IGF−1が20ng/mL、アスコルビン酸が1μg/mL、ヘパリンが22.5μg/mL、ゲンタマイシン(任意)が50μg/mL、アンホテリシン−B(任意)が50ng/mLである。
上記の血管内皮細胞増殖用培地中の各内皮細胞添加因子の濃度としては、ETV2遺伝子又はETV2タンパク質を導入した線維芽細胞をその培地で培養することによって、血管内皮細胞を製造し得る限り特に制限されず、例えば、市販の内皮細胞添加因子の濃度と同等の濃度であってもよいが、VEGFとbFGFについてはより高い濃度とすると、線維芽細胞から血管内皮細胞への製造効率が上がる点で好ましい。上記の血管内皮細胞増殖用培地中の各内皮細胞添加因子の好ましい濃度範囲として、それぞれ以下の濃度範囲を挙げることができる。
VEGF:好ましくは0.3ng/mL〜105ng/mL、より好ましくは2.1ng/mL〜52.5ng/mL、さらに好ましくは5.25ng/mL〜21ng/mL、さらにより好ましくは8.4ng/mL〜12.6ng/mL、特に好ましくは10.5ng/mL。
bFGF:好ましくは2ng/mL〜200ng/mL、より好ましくは4ng/mL〜100ng/mL、さらに好ましくは10ng/mL〜40ng/mL、さらにより好ましくは16ng/mL〜24ng/mL、特に好ましくは20ng/mL。
EGF:好ましくは0.5ng/mL〜50ng/mL、より好ましくは1ng/mL〜25ng/mL、さらに好ましくは2.5ng/mL〜10ng/mL、さらにより好ましくは4ng/mL〜6ng/mL、特に好ましくは5ng/mL。
FBS:好ましくは0.2%〜20%、より好ましくは0.4%〜10%、さらに好ましくは1%〜4%、さらにより好ましくは1.6%〜2.4%、特に好ましくは2%。ヒドロコルチゾン:好ましくは0.02μg/mL〜2μg/mL、より好ましくは0.04μg/mL〜1μg/mL、さらに好ましくは0.1μg/mL〜0.4μg/mL、さらにより好ましくは0.16μg/mL〜0.24μg/mL、特に好ましくは0.2μg/mL。
R3−IGF−1:好ましくは2ng/mL〜200ng/mL、より好ましくは4ng/mL〜100ng/mL、さらに好ましくは10ng/mL〜40ng/mL、さらにより好ましくは16ng/mL〜24ng/mL、特に好ましくは20ng/mL。
アスコルビン酸:好ましくは0.1μg/mL〜10μg/mL、より好ましくは0.2μg/mL〜5μg/mL、さらに好ましくは0.5μg/mL〜2μg/mL、さらにより好ましくは0.8μg/mL〜1.2μg/mL、特に好ましくは1μg/mL。
ヘパリン:好ましくは2.25μg/mL〜225μg/mL、より好ましくは4.5μg/mL〜112.5μg/mL、さらに好ましくは11.25μg/mL〜45μg/mL、さらにより好ましくは18μg/mL〜27μg/mL、特に好ましくは22.5μg/mL。
ゲンタマイシン:好ましくは5μg/mL〜500μg/mL、より好ましくは10μg/mL〜250μg/mL、さらに好ましくは25μg/mL〜100μg/mL、さらにより好ましくは40μg/mL〜60μg/mL、特に好ましくは50μg/mL。
アンホテリシン−B:好ましくは5ng/mL〜500ng/mL、より好ましくは10ng/mL〜250ng/mL、さらに好ましくは25ng/mL〜100ng/mL、さらにより好ましくは40ng/mL〜60ng/mL、特に好ましくは50ng/mL。
上記の血管内皮細胞基本培地としては、血管内皮細胞を一定期間生存させ得る培地である限り特に制限されないが、例えば、1又は2種類以上の糖(類)と、1又は2種類以上の無機塩(類)、1又は2種類以上のアミノ酸(類)、及び1又は2種類以上のビタミン(類)、及び1又は2種類以上のその他成分を含むことが好ましい。
上記糖類としては、具体的には、グルコース、ラクトース、マンノース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類や、スクロース、マルトース、ラクトース等の二糖類を挙げることができるが、中でもグルコースが特に好ましく、これら糖類は、1又は2以上組み合わせて添加することもできる。
上記無機塩類としては、具体的には、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸銅五水和物、硝酸鉄(III)九水和物、硫酸鉄(II)七水和物、塩化マグネシウム六水和物、硫酸マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム二水和物、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム一水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、亜セレン酸ナトリウム五水和物、硫酸亜鉛七水和物から選ばれる1種又は2種以上の無機塩(類)を挙げることができるが、線維芽細胞からの血管内皮細胞の製造に有利に作用する成分であればいずれの無機塩類又はその組合せも用いることができる。
上記アミノ酸類としては、具体的には、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、シスチン、システイン、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、グルタミン酸、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等から選ばれる1種又は2種以上のアミノ酸(類)、好ましくはL−体のアミノ酸とそれらの誘導体及びそれらの塩並びにそれらの水和物などの派生物を挙げることができる。例えば、上記アルギニンとしては、L−塩酸アルギニン、L−アルギニン一塩酸塩等のアルギニンの派生物を挙げることができ、上記アスパラギン酸としては、L−アスパラギン酸ナトリウム塩一水和物、L−アスパラギン酸一水和物、L−アスパラギン酸カリウム、L−アスパラギン酸マグネシウム等のアスパラギン酸の派生物を挙げることができ、上記システインとしては、L−システイン二塩酸塩、L-システイン塩酸塩一水和物等のシステインの派生物や、L−リジン塩酸塩等のリジンの派生物を挙げることができ、上記グルタミン酸としては、L−グルタミン酸一ナトリウム塩等のグルタミンの派生物を挙げることができ、上記アスパラギンとしては、L−アスパラギン一水和物等のアスパラギンの派生物を挙げることができ、上記チロシンとしては、L−チロシン二ナトリウム二水和物等のチロシンの派生物を挙げることができ、上記ヒスチジンとしては、ヒスチジン塩酸塩、ヒスチジン塩酸塩一水和物等のヒスチジンの派生物を挙げることができ、上記リジンとしては、L−リジン塩酸塩等のリジンの派生物を挙げることができる。
上記ビタミン類としては、具体的には、ビオチン、コリン、葉酸、イノシトール、ナイアシン、パントテン酸、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12、パラアミノ安息香酸(PABA)、アスコルビン酸から選択される1種又は2種以上のビタミン(類)と、これらの成分各々の誘導体及びそれらの塩並びにそれらの水和物などの派生物を挙げることができる。例えば、上記コリンとしては、塩化コリン等のコリンの派生物を挙げることができ、ナイアシンとしては、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチニックアルコール等のナイアシンの派生物を挙げることができ、パントテン酸としては、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、パンテノール等のパントテン酸の派生物を挙げることができ、ピリドキシンとしては、ピリドキシン塩酸塩、ピリドキサール塩酸塩、リン酸ピリドキサール、ピリドキサミン等のピリドキシンの派生物を挙げることができ、チアミンとしては、塩酸チアミン、硝酸チアミン、硝酸ビスチアミン、チアミンジセチル硫酸エステル塩、塩酸フルスルチアミン、オクトチアミン、ベンフォチアミン等のチアミンの派生物等を挙げることができ、アスコルビン酸としては、アスコルビン酸2−リン酸エステル(Ascorbic acid 2-phosphate)、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸硫酸ナトリウム、リン酸アスコルビルアミノプロピル、アスコルビン酸リン酸ナトリウム等のアスコルビン酸の派生物を挙げることができる。
上記その他成分としては、HEPES等の緩衝剤、ヌクレオチド等の核酸、ピルビン酸、及びその誘導体及びそれらの塩並びにそれらの水和物などの派生物、フェノールレッドなどを挙げることができ、上記ヌクレオチドとしては、ATP、UTP、GTP、CTP、好ましくはこれら4種の等モル混合物)を好ましく挙げることができ、あるいは、ペニシリン-ストレプトマイシン溶液を好ましく挙げることができ、ピルビン酸の派生物としてはピルビン酸ナトリウムを好ましく挙げることができる。
上記血管内皮細胞基本培地の具体例としては、市販のEBM(登録商標)‐2培地(Lonza社製)、EBM培地(Lonza社製)、“Endothelial cell growth medium, basal”(provitro社製)、α改変イーグル培地(αMEM)(Invitrogen社製など)、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)(Invitrogen社製など)、RPMI 1640培地(Invitrogen社製など)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Invitrogen社製など)、最小必須培地(MEM)(Invitrogen社製など)、イーグル基礎培地(BME)(Invitrogen社製など)などを好ましく挙げることができ、EBM‐2培地(Lonza社製)、EBM培地(Lonza社製)、“Endothelial cell growth medium, basal”(provitro社製)をより好ましく挙げることができ、EBM‐2培地(Lonza社製)、“Endothelial cell growth medium, basal”(provitro社製)を特に好ましく挙げることができる。
本発明の製造方法に用いる好ましい血管内皮細胞増殖用培地の具体例としては、内皮細胞基本培地に、市販の内皮細胞添加因子(EGM−2 Single Quots(Lonza社製)や、Endothelial cell growth medium, advanced(provitro社製))を添加した培地に、さらに10ng/mLのVEGFと10ng/mLのbFGFを添加した培地を挙げることができ、中でも、上記内皮細胞基本培地としてEBM‐2(Lonza社製)を用い、内皮細胞添加因子としてEGM−2 Single Quots(Lonza社製)を用い、さらに10ng/mLのVEGFと10ng/mLのbFGFを添加した培地(以下、「本件EGM−2培地」とも表示する。)を特に好ましく挙げることができる。
本発明における培養条件としては、線維芽細胞を本発明に用いる血管内皮細胞増殖用培地で培養することにより血管内皮細胞を製造し得る限り特に制限されないが、培養温度として通常12〜45℃の範囲内、好ましくは15〜40℃の範囲内を挙げることができ、上記工程(Q)における培養期間として通常4〜40日間の範囲内、好ましくは6〜30日間、より好ましくは20〜30日間の範囲内を挙げることができる。また、培養の際は、培養ディッシュ等の培養容器を、細胞外マトリックスでコーティングしたものを用いることが好ましく、該細胞外マトリックスとしては、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、ラミニン、マトリゲル(登録商標)(ベクトン・ディキンソン社製)などを挙げることができる。
本発明の製造方法は、培養している細胞中の血管内皮細胞の割合をより高め、血管内皮細胞を短期間でより多量に製造する観点から、工程(P)及び(Q)に加えて、工程(Q)で培養して得られる細胞から血管内皮細胞を分取する工程(R)をさらに有していることが好ましく、工程(R)で分取した血管内皮細胞を、血管内皮細胞増殖用培地で培養する工程(S)をさらに有していることがより好ましい。
上記工程(R)において、工程(Q)で培養して得られる細胞から血管内皮細胞を分取する方法としては血管内皮細胞を分取することができる限り特に制限されないが、簡便性及び迅速性の観点から、工程(Q)で培養して得られる細胞から血管内皮細胞マーカー陽性細胞を分取する方法を好ましく挙げることができ、中でも、血管内皮細胞マーカーを特異的に認識する抗体の免疫反応を利用した方法をより好ましく挙げることでき、中でも、フローサイトメーターを用いたフローサイトメトリー解析法をさらに好ましく挙げることでき、中でも、セルソーター付きのフローサイトメーターを用いたフローサイトメトリー解析法を特に好ましく挙げることができる。セルソーター付きのフローサイトメーターを用いると、工程(Q)で培養して得られる細胞から、血管内皮細胞マーカー陽性細胞を非常に簡便かつ迅速に血管内皮細胞を分取することができる。フローサイトメトリー解析法についてはフローサイトメーターに付属しているプロトコールなどの標準的な方法を用いることができる。
上記の血管内皮細胞マーカーとしては特に制限されないが、CD31(PECAM1)、VEGF−R2(KDR)、CD34、Tie2、Endoglin、NRP1、CXCR4、vWF、VE-cadherin、ERG、FLI1、TAL1、CDH5及びEGFL7などを挙げることができ、中でも、CD31を好ましく挙げることができる。用いる血管内皮細胞マーカーは1種のみでもよいし、2種以上併用してもよい。これらの血管内皮細胞マーカーに対する抗体は、BioLegend社、Abcam社、AbDserotec社などから購入したものを用いることができる。
上記の工程(S)としては、上記工程(R)で分取した血管内皮細胞を、血管内皮細胞増殖用培地で培養する限り特に制限されず、上記工程(Q)の培養条件と同様の条件で培養することができ、該工程(R)における培養期間として、通常4〜40日間の範囲内、好ましくは6〜30日間、より好ましくは20〜30日間の範囲内を挙げることができる。
本発明の製造方法により得られる細胞が血管内皮細胞であるかどうかは、血管内皮細胞を特徴付ける1種又は2種以上の表現型を有しているかどうかを調べることによって確認することができる。かかる表現型としては、血管内皮細胞マーカー、血管内皮細胞に特徴的な形態、血管内皮細胞に特徴的な酵素活性などを挙げることができる。
血管内皮細胞マーカーを有しているかどうかは、前述したような、血管内皮細胞マーカーのタンパク質を特異的に認識する抗体の免疫反応を利用した方法のほか、ノーザンブロット法、RT−PCR法などの、血管内皮細胞マーカーのmRNAの発現レベルを調べる方法によっても確認することができる。上記の血管内皮細胞マーカーの配列データは、GenBankのような公共のデータバンクから得ることができ、前述のノーザンブロット法やRT−PCR法は公知の標準的な方法で行うことができる。
上記の血管内皮細胞に特徴的な形態としては、丸石様形態(図1B参照)のほか、マトリゲルなどの細胞外マトリックスでコーティングした培養容器にて血管内皮細胞増殖用培地中に培養した場合(本願実施例中の[毛細血管様構造形成アッセイ]の記載参照)に形成される毛細血管様構造(図1C、図5D参照)や、マトリゲルなどの細胞外マトリックスと共に、マウス等の哺乳動物の側腹部等に皮下注射した場合(本願実施例中の[マトリゲルプラグアッセイ]の記載参照)に形成される血管構造(図7A〜D参照)などを挙げることができる。
上記の血管内皮細胞に特徴的な酵素活性としては、アセチル化低密度リポタンパク質の取り込み活性や、内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の活性などを挙げることができる。アセチル化低密度リポタンパク質(AcLDL)の取り込み活性を調べるためのアッセイの方法としては常法を用いることができ、例えば、I型コラーゲンなどの細胞外マトリックスでコーティングした培養容器にて血管内皮細胞増殖用培地中に培養する際に、標識したAcLDLを添加し、一定時間培養後の培地中のAcLDLの減少量を測定することによって、AcLDLの取り込み活性を測定することができる。また、eNOS活性を測定する方法としては常法を用いることができ、例えば該細胞をホモジネートしたものと、標識アルギニン(アルギニンはeNOSの基質)とを反応させ、反応せずに残ったアルギニンの量を調べることによって、eNOS活性を測定することができる。なお、eNOSの検出は、eNOS活性を測定する方法のほか、eNOSを特異的に認識する抗体の免疫反応を利用した方法でも行うことができる。
本発明の製造方法により製造される血管内皮細胞(以下、「本発明の血管内皮細胞」とも表示する。)は、血管新生促進剤や血管新生促進用医薬組成物(以下、併せて「本発明の血管新生促進剤等」とも表示する。)として用いることもできる。本発明の血管新生促進剤等としては、本発明の血管内皮細胞のみを含有していてもよいが、薬学的に許容される担体をさらに含有していることが好ましい。かかる薬学的に許容される担体としては、本発明の血管内皮細胞による血管新生を妨げない限り特に制限されず、細胞外マトリックス、希釈剤、注入剤、塩、緩衝剤、安定剤および当技術分野において周知である他の材料を挙げることができ、中でも、細胞外マトリックスを好ましく挙げることができる。
なお、従来の成熟血管内皮細胞には、ETV2遺伝子は発現していないか、あるいは発現しているとしても発現レベルが極めて低いため、本発明の血管内皮細胞がETV2遺伝子の導入により得られた場合は、本発明の血管内皮細胞は、このような外来性のETV2遺伝子を含む点で、従来の成熟血管内皮細胞とは異なる新規な血管内皮細胞である。また、本発明の血管内皮細胞がETV2タンパク質の導入により得られた場合は、前述のような外来性のETV2遺伝子は含まないが、例えばDNAマイクロアレイなどを用いて多数の遺伝子の発現を解析し、その結果を従来の成熟血管内皮細胞と比較するなどして、本発明の血管内皮細胞に特徴的な発現プロファイルを見いだすことにより、従来の血管内皮細胞との差異を確認することができる。このような発現プロファイルの比較は、本発明の血管内皮細胞がETV2遺伝子の導入により得られた場合にも用いることができ、本発明者らは、かかる本発明の血管内皮細胞において、HOXA3遺伝子の発現がHUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)に比べて非常に低いことを確認している。
本発明の血管内皮細胞や血管新生促進剤等が予防、改善又は治療の対象とする症状や疾患としては、虚血性症状や、虚血性症状を伴う疾患である限り特に制限されず、例えば、1)事故や手術等による血管損傷や組織損傷等の外因的な要因による虚血性症状、2)心筋梗塞、狭心症、閉塞性動脈硬化症、バージャー病、脳梗塞、胸郭出口症候群、高安病、高血圧症等の内因的な要因による虚血性症状又は虚血性疾患などを挙げることができる。
本発明の血管内皮細胞や血管新生促進剤の投与方法としては、従来の血管内皮細胞や血管新生促進剤の投与方法を用いることができ、例えば、虚血性症状や、虚血性症状を伴う疾患を有する対象(生体)の虚血部位に、本発明の血管内皮細胞や血管新生促進剤をカテーテルや注射等により投与する方法を挙げることができる。
投与対象の生物種としては、前述したような脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを挙げることができる。本発明における血管内皮細胞を製造する際に用いた線維芽細胞の由来である脊椎動物の種類は、本発明における血管内皮細胞や血管新生促進剤の投与対象となる脊椎動物の種類と一致していることが、より優れた血管新生促進作用等を得る観点から好ましい。
投与量としては、対象の体重、症状や疾患の性質及び重篤度などに応じて適宜調節することができ、例えば血管内皮細胞の細胞数として、約10〜1020個の範囲内を挙げることができ、約10〜1015個の範囲内を好ましく挙げることができる。
また、本発明の血管内皮細胞や血管新生促進剤は、組織移植片や再生臓器を作製する際に、組織や臓器に分化し得る細胞と共に用いることにより、組織移植片や再生臓器に血管を付与又は血管新生を促進するためにも用いることができる。このように用いると、対象への移植に適した組織移植片や再生臓器の作製や維持を可能又は容易にすることができる。このような用途に用いる方法としては、例えば、組織移植片や再生臓器を形成し得るiPSC等の細胞と、本発明の血管内皮細胞や血管新生促進剤とを共培養する方法(Takebe, T. et al., Nature, 499, 481-484 (2013))などを挙げることができる。
なお、本発明には、以下の態様も含まれる。
「本発明の血管内皮細胞を脊椎動物に投与する工程を含む、血管新生の促進方法」や、「本発明の血管内皮細胞を脊椎動物に投与する工程を含む、虚血性症状又は虚血性症状を伴う疾患の予防、改善又は治療方法」や、「血管新生を促進するための、本発明の血管内皮細胞」や、「虚血性症状又は虚血性症状を伴う疾患予防、改善又は治療するための、本発明の血管内皮細胞」や、「血管新生促進剤の製造のための、本発明の血管内皮細胞の使用」や、「本発明の血管内皮細胞を含有する、虚血性症状又は虚血性症状を伴う疾患の予防、改善又は治療剤」。
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[細胞培養]
1)3種類のヒト繊維芽細胞(HFL-1細胞[「RIKEN Bioresource Center CELL BANK」より入手]、NB1RGB細胞[「RIKEN Bioresource Center CELL BANK」より入手]、及びHDFa(Human Dermal Fibroblasts, adult)細胞[Invitrogen社製])の培養は、10cmディッシュ上、10%ウシ胎仔血清(FBS)(Invitrogen社製)及びペニシリン並びにストレプトマイシンを含むα−MEM(Invitrogen社製)培地中で行った。これらの細胞は、実験に用いる前に3回継代培養を行った。なお、上記HDFaは、本明細書において、HAFs(human adult skin fibroblasts)とも表示する。
2)HUVEC(DS Pharma Biomedical社製)の培養は、100μg/mL I型コラーゲン(新田ゼラチン社製)でコーティングした10cmディッシュ上、EGM−2(Lonza社製)培地中で行った。
3)レンチウイルスベクター(組換えレンチウイルス)作製に用いるHEK293T細胞の培養は、10%FBS、2mML−グルタミン、及びペニシリン並びにストレプトマイシンを含むDMEM(Gibco社製)培地中で行った。
4)繊維芽細胞へのETV2遺伝子導入後の細胞培養は、100μg/mL I型コラーゲン(新田ゼラチン社製)でコーティングしたディッシュ(6cm又は10cm径)上、10ng/mL組換えヒトVEGF165(Peprotech社製)及び10ng/mL塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)(和光社製)を添加したEGM−2(Lonza社製)培地(以下、「本件EGM−2培地」という)中で行った。培養期間は各実験で設定した期間にしたがった。培養期間中、2又は3日毎に培地交換を行った。
[繊維芽細胞への遺伝子導入法]
繊維芽細胞から血管内皮細胞(以下、「VEC」ということがある)へ誘導するために必要な候補因子(遺伝子)として、これまでの知見や経験に基づき、18種類の転写因子(TF:Transcription Factor)(表1参照)を選択し、18種類のTF(以下「18TF」と表示する)を、レンチウイルスベクター(組換えレンチウイルス)を用いて繊維芽細胞へ導入した。具体的な方法を以下に示す。
まず、EF−1αプロモーターの下流に、MCS(Multiple cloning site)、IRES(internal ribosome entry sites)、及びVenus遺伝子が順次配置されたレンチウイルスベクター用のプラスミド(CSII-EF-MCS-IRES2-Venus)(RIKENより入手)のMCSに、18TFのうちいずれかのTFのcDNAを挿入した。このレンチウイルスベクター用のプラスミドをTFの種類毎に作製した。各TFについてのレンチウイルスベクター用のプラスミドを、VSV−G(Vesicular Stomatitis Virus G glycoprotein)発現ベクター(pCMV-VSV-G-RSV-Rev)と、パッケージングベクター(pMDLg/p-RRE)とともにHEK293T細胞へ導入した。18時間後に培養液を新しいDMEMに交換し、さらに48時間培養後、レンチウイルスベクターを含む培養液を単離し、0.45μmフィルターで濾過した後、遠心処理(8400g、4℃、16時間)によりレンチウイルスベクターを沈殿させ、PBS(Phosphate Buffered Saline)溶液に懸濁し、レンチウイルスベクター含有PBS溶液を調製した。以上のような方法で、18TFのうちいずれかのTFを発現するレンチウイルスベクターを、18種すべてのTFについて作製した。
続いて、3種類のヒト繊維芽細胞(HFL−1細胞、NB1RGB細胞、及びHAFs細胞)を、1ウェル当たり7×10細胞で12ウェルプレートに播種し、24時間後、5μg/mLのプロタミンを添加した1mLレンチウイルスベクター含有10%ウシ胎仔血清含有α−MEM培地にて培養し、細胞をレンチウイルスベクターに感染させた。ヒト線維芽細胞を、レンチウイルスベクター含有α−MEM培地に最初に接触させた時点から48時間後に、細胞をPBS(Phosphate Buffered Saline)で2回洗浄した。なお、本明細書において、細胞に遺伝子あるいは発現ベクターを導入した時点とは、その遺伝子を含む発現ベクターをその細胞に最初に接触させた時点を意味するものとし、例えば「ウイルスベクター導入から15日後」といった場合は、前述の時点から期間を起算する。
[フローサイトメトリー解析及びセルソーティング]
フローサイトメトリー解析に用いる細胞をトリプシン処理によりディッシュから剥離し、2%PBS及び2mM EDTAを含む溶液中に懸濁した後、蛍光色素(アロフィコシアニン[APC]又はフィコエリトリン[PE/Cy7])でコンジュゲートした7種類のVECマーカーに対する抗体(抗CD31抗体[WM59]、抗VEGF−R2抗体[HKDR−1]、抗CD34抗体[581]、抗Tie2抗体[33.1]、抗Endoglin抗体[43A3]、抗NRP1抗体[12C2]、及び抗CXCR4抗体[12G5][すべてBioLegend社製])及び1種類の造血細胞マーカーに対する抗体(抗CD45抗体[HI30])(BioLegend社製)と20分間、4℃条件下で反応させた。7−アミノ‐アクチノマイシンD(7−AAD)で死細胞を染色し、セルソーター(FACSAria II[BD biosciences社製])を用いて死細胞を除去することにより生細胞を選別した後、上記抗体で検出される細胞マーカーの発現を、フローサイトメーター(FACSCant II[BD biosciences社製])を用いて解析した。また、CD31陽性()細胞は、セルソーター(FACSAria II[BD biosciences社製])を用いて選別し、FlowJo software(Tree Star社製)を用いて解析した。また、細胞の形態は光学顕微鏡(Nikon社製)を用いて観察した。
[蛍光色素(Dil)でラベルしたアセチル化低密度リポタンパク質(AcLDL)(Dil−AcLDL)取り込みアッセイ]
Dil−AcLDL取り込みアッセイに用いる細胞(4×10個)を、100μg/mLI型コラーゲン(新田ゼラチン社製)でコーティングした8ウェルプレート(BD Biosciences社製)に播種し、本件EGM−2培地中で培養した。24時間後に、Dil−AcLDL(Biomedical Technologies社製)を10μg/mLとなるように培地へ添加し、4時間培養を行い、後述の[間接蛍光抗体法]の項目に記載の方法にしたがって免疫蛍光染色した。
[毛細血管様構造形成アッセイ]
毛細血管様構造形成アッセイに用いる細胞(2×10個)を、30μLマトリゲル(BD biosciences社製)でコートした96ウェルプレートに播種し、本件EGM−2培地中に培養した。18時間後に細胞中のVenusの蛍光を、蛍光顕微鏡(BZ-8000[Keyence社製])を用いて検出することにより、毛細血管様構造の形成を観察した。
[CD31HFL−1細胞における18TFDNAの検出]
上記[繊維芽細胞への遺伝子導入法]の項目に記載の方法にしたがって、18TFのうちいずれか1種のTFを発現するレンチウイルスベクターを、18種すべてのTFについて用意し、これら18種すべてのTFについてのTF発現レンチウイルスベクターをHFL−1細胞へ導入した。その後、上記[細胞培養]の4)の記載の方法にしたがって、本件EGM−2培地中で該細胞の培養を行い、導入から14日後に上記[フローサイトメトリー解析及びセルソーティング]の項目に記載の方法にしたがって、CD31HFL−1細胞を選別・単離した後、Wizard SV Genomic DNA Purification System(Promega社製)を用い、製品添付のプロトコールにしたがってゲノムDNAを単離した。単離したゲノムDNA(15ng)をテンプレートとし、プライマーセット(フォワード及びリバース:表2参照)とHerculase II fusion DNA polymerase(Agilent Technologies社製)を用いたPCR(Polymerase Chain Reaction)を、製品添付のプロトコールにしたがって行った。得られたPCR産物は1.5%又は2.0%アガロースゲルで分離し、エチジウムブロマイドでDNAを染色した後、UVトランスイルミネーターを用いて検出した。
表中の(E)フォワード、(E)リバース、(F)フォワード 18TF、及び(F)リバースがアニール・増幅するDNA領域は、図2Aに示す。
[定量RT(reverse transcription)−PCR解析]
培養細胞から、gDNA Eliminator Solutionを備えたRNeasy Plus Micro Kit(QIAGEN社製)を用いて全RNAを単離・精製し、High Capacity cDNA Reverse Transcription kits(Applied Biosystems社製)を用いてcDNAを調製した。ETV2遺伝子由来のcDNAや、8種類のVECマーカー遺伝子(ERG、FLI1、TAL1、PECAM1、CDH5、EGFL7、KDR、及びvWF)、及び1種類の繊維芽細胞マーカー遺伝子(COL1A2)、更に2種類の造血細胞マーカー遺伝子(PTPRC(CD45),ITGA2B(CD41))の計12種類の遺伝子由来のcDNAの他、内部コントロール遺伝子(HPRT1)由来のcDNAを定量するために、プライマーセット(フォワード及びリバース:表3参照)と、KAPA SYBR FAST qPCR kit(KAPABIOSYSTEM社製)、又はSso Fast Eva Green Supermix(Bio-Rad社製)を用いて上記cDNAを増幅し、iCycler iQ multicolor real-time PCR detection system(Bio-Rad社製)を用いてcDNA増幅産物が一定量になるPCRのサイクル数(threshold cycle;Ct値)を測定し、比較Ct法(デルタデルタCt法)によりHPRT1遺伝子のcDNA増幅産物のCt値を基準とした上記10種類の遺伝子のcDNA増幅産物のCt値の相対値を求め、かかるCt値の相対値から、上記12種類の遺伝子(ETV2遺伝子、8種類のVECマーカー遺伝子[ERG、FLI1、TAL1、PECAM1、CDH5、EGFL7、KDR、及びvWF]、1種類の繊維芽細胞マーカー遺伝子[COL1A2]、及び2種類の造血細胞マーカー遺伝子[CD45、CD41])のmRNAの相対量を算出した。
[マトリゲルプラグアッセイ]
マトリゲルプラグアッセイは、文献(Laib, A.M. et al. Nat. Protoc. 4, 1202-1215 (2009))に記載の方法にしたがって行った。すなわち、300ng/mLヒトbFGF及び10U/mLのヘパリン(Novo Nordisk Pharma社製)を添加した500μL増殖因子低含量マトリゲル(growth factor-reduced Matrigel)(BD Biosciences社製)に、1×10個の細胞を懸濁し、NOD.CB17−Prkdcscid/J(NOD SCID)マウス(Charles River社製)の側腹部に皮下注射した。移植後28日目に皮膚及び全筋肉層を含む腹壁を広範囲に切除してマトリゲルプラグを除去し、4%PFAに4時間室温にて固定し、その後室温でさらに18時間、30%ショ糖中でインキュベートした。使用時まで、上記マトリゲルプラグを4%カルボキシメチルセルロース中に包埋し、−80℃で保存した。クリオスタット(Carl Zeiss社製)を用いて厚さ20μmの凍結切片を作製した。ホールマウント染色用に、移植後42日目にマトリゲルプラグを除去し、上記方法で凍結切片を作製した。作製した凍結切片を、後述の[間接蛍光抗体法]の項目に記載の方法にしたがって免疫蛍光染色した。なお、マトリゲルプラグアッセイは、慶応大学動物実験委員会の承諾を受けて行ったものである。
[後肢虚血モデルマウスを用いた血管形成解析]
動物麻酔装置(Model TK-5、Bio Machinery社製)から供給されるイソフルラン(導入用に100%酸素中5%イソフルラン、持続用に100%酸素中1〜2%イソフルラン)を用いて9〜10週齢雄CAnN.Cg−Foxn1nu/CrlCrlj(BALB/c−nu)マウス(Charles River社製)を麻酔した。電気凝固装置(Vetroson, V-10 Bi-polar, Electrosurgical Unit、Summit Hill Laboratories社製)を用い、大腿動脈の近位部及び伏在動脈の遠位部を閉塞することにより、片側の後肢を虚血させた。PBS溶液に懸濁した5×10個の細胞を、この処置後直ちにマウスの虚血大腿部の内転筋の上に移植した。移植後14日目に、後述の[レーザードップラー画像解析]の項目に記載の方法にしたがって移植部位における血流を測定し、その後マウスを安楽死させた。上記マウスの虚血及び非虚血内転筋を切断してOCT化合物(Sakura Finetek社製)に包埋し、クリオスタット(Carl Zeiss社製)を用いて厚さ7μmの凍結切片を作製した。作製した凍結切片を、後述の[間接蛍光抗体法]の項目に記載の方法にしたがって免疫蛍光染色した。なお、上記血管形成解析は、アメリカ国立衛生研究所が発行する実験動物の管理と使用に関する指針に従ったものであり、また、久留米大学医学部動物実験委員会の承諾を受けたものである。
[間接蛍光抗体法]
培養細胞や、上記[マトリゲルプラグアッセイ]や[後肢虚血モデルマウスを用いた血管形成解析]の項目で作製した凍結切片を、4%パラホルムアルデヒド(PFA)で10分間、室温、又は100%アセトンで5分間、−20℃で固定し、0.1%TritonX-100/PBS溶液で透過処理を行った後、3%ヤギ血清でブロッキング処理を行った。続いて、各種1次抗体(抗VE−カドヘリン抗体[BV9][200倍希釈で使用;BioLegend社製]、抗vWF抗体[ラビットポリクローナル][100倍希釈で使用;Abcam社製]、抗eNOS抗体[ラビットポリクローナル][100倍希釈で使用;Abcam社製]、抗α‐SMA抗体[ERP5368][500倍希釈で使用;GeneTex社製]、及び抗hCD34抗体[QBEND/10][400倍希釈で使用;AbDserotec社製])を用いて室温で1.5時間抗原抗体反応処理を行った後、各種2次抗体(抗マウスIgG-Alexa Fluor 546抗体[1000倍希釈で使用;Invitrogen社製]、及び抗ラビットIgG-Alexa Fluor 633抗体[1000倍希釈で使用;Invitrogen社製)を用いて室温で30分間抗体反応処理を行い、細胞核を、5μg/mLHoechest 33342(同仁化学研究所社製)で染色した。また、上記凍結切片と、RhodamineでコンジュゲートしたUEAI(160倍希釈で使用;Vector Laboratories社製)は、室温で1.5時間反応させた。共焦点蛍光画像は、Zeiss LSM 710 laser scanning microscope(Carl Zeiss社製)用いて取得した。
[レーザードップラー画像解析]
文献(Taniguchi, K. et al. PloS One 4, e5467 (2009))に記載の方法にしたがってレーザードップラー画像解析を行った。要約すると、移植後14日目にマウスを37℃の加温パッドに載せ、レーザードップラー血流画像化装置MoorLDI-Mark 2(レーザードップラー灌流画像化システム、MoorLDI-Mark 2、Moor Instruments社製)や、Moor Instruments社が提供するソフトウェアを用いて、平均レーザードップラー流動を解析することにより移植部位における血流を測定した。なお、内部コントロールとして同じマウスの非虚血後肢における血流を測定した。
[ヘマトキシリン・エオシン染色法]
上記[後肢虚血モデルマウスを用いた血管形成解析]の項目で作製した凍結切片を、4%パラホルムアルデヒド(PFA)で10分間、室温で固定し、ヘマトキシリン(SakuraFinetek社製)で3分間、室温で染色した後、エオシン(Sakura Finetek社製)で3分間、室温で染色し、エタノール及びClear Plus(Falma社製)で洗浄後、光学顕微鏡(Nikon社製)を用いて観察した。
[結果1:18TFが繊維芽細胞を血管内皮細胞へ誘導する]
上記[繊維芽細胞への遺伝子導入法]の項目に記載の方法にしたがって、18種すべてのTFについてのTF発現レンチウイルスベクターをHFL−1細胞へ導入した後、上記[細胞培養]の4)の記載の方法にしたがって、本件EGM−2培地中で該細胞の培養を行い、導入から14日後に上記[フローサイトメトリー解析及びセルソーティング]の項目に記載の方法にしたがって、VenusやCD31の発現を解析したところ、Venus細胞、すなわちTF発現HFL−1細胞中に、CD31細胞が含まれていることが示された(図1A上段参照)。かかるCD31細胞は、血管内皮細胞や血管芽細胞マーカーであるVEGF−R2を発現することが明らかとなった(図1A下段参照)。また、上記CD31細胞は、CD31やVEGF−R2以外のVECマーカー(CD34、Tie2、NRP1、及びCXCR4)を発現することが確認された。他方、上記CD31細胞は、繊維芽細胞マーカーであるCOL1A2の発現が大幅に低下することや、造血細胞マーカーであるCD45やCD41は発現しないことも確認された。また、上記CD31細胞は、VECの特徴の一つである丸石様形態(cobblestone-like morphology)を示すことが確認された(図1B参照)。
また、上記CD31細胞を上記[Dilでラベルしたアセチル化低密度リポタンパク質(AcLDL)(Dil−AcLDL)取り込みアッセイ]の項目に記載の方法に用いてAcLDLの取り込み活性の解析を行ったところ、上記CD31細胞は、VECの特徴の一つであるAcLDLの取り込み活性を有することも確認した。さらに、上記CD31細胞を上記[毛細血管様構造形成アッセイ]の項目に記載の方法用いて毛細血管構造の解析を行ったところ、上記CD31細胞は、VECの特徴の一つである毛細血管様構造を形成できることが示された(図1C参照)。
以上の結果は、HFL−1細胞中に18TFのうちのいずれか1つ又は2つ以上を発現させた後、該細胞を本件EGM−2培地等の血管内皮細胞増殖用培地で培養すると、CD31やVEGF−R2等のVEC表面マーカーを発現するVECを誘導できることを示している。
[結果2:ETV2が繊維芽細胞を血管内皮細胞へ誘導する]
上記18TFのうちどの転写因子がVECの誘導に関わっているか調べるために、上記[CD31HFL−1細胞における18TFDNAの検出]の項目に記載の方法にしたがって遺伝子解析を行った。その結果、18TFにより誘導されたVECは、ETV2及びHOPX発現レンチウイルスベクターが導入されたものであることが確認された(図2B及びC参照)。次に、これら2つの転写因子(ETV2及びHOPX)が、VECを誘導するものであるかを調べるために、上記[繊維芽細胞への遺伝子導入法]の項目に記載の方法にしたがって、ETV2又はHOPX発現レンチウイルスベクターをHFL−1細胞へ導入し、その後、上記[細胞培養]の4)の記載の方法にしたがって、本件EGM−2培地中で該細胞の培養を行い、導入から14日目に上記[フローサイトメトリー解析及びセルソーティング]の項目に記載の方法にしたがって、CD31の発現を解析したところ、HOPX発現レンチウイルスベクターをHFL−1細胞へ導入した場合、CD31細胞は誘導されなかったのに対して、ETV2発現レンチウイルスベクターをHFL−1細胞へ導入した場合、CD31細胞が誘導されることが明らかとなった(図2D参照)。これらの結果は、HFL−1細胞をVECへ誘導するために導入が必要な転写因子は、ETV2のみであることを示している。また、HOPXはVECの誘導には関与してないことも確認された。
さらに、ETV2発現レンチウイルスベクターを、HFL−1細胞とは別の繊維芽細胞株であるNB1RGB細胞へ導入した場合においてもCD31細胞(VEC)が誘導されることが確認された(図2E参照)。
以上の結果は、HFL−1細胞やNB1RGB細胞等の繊維芽細胞をVECへ誘導するために導入が必要な転写因子は、ETV2のみであることを示している。
上記結果1及び2から、HFL−1細胞やNB1RGB細胞等の繊維芽細胞中にETV2を発現させた後、該細胞をEGM−2等の血管内皮細胞増殖用培地で培養することにより、CD31やVEGF−R2等のVEC表面マーカーを発現し、血管内皮細胞としての特性を有する細胞(以下、「ETVEC」ということがある)を誘導できることが明らかとなった。
[結果3:繊維芽細胞からETVECへの誘導には、ETV2のトランス活性化ドメイン(TAD)とETSドメインが必要である]
ETV2は、ETSファミリーに属する因子の一つであり、そのアミノ(N)末端側にTADを有し、カルボキシ(C)末端側にDNAと結合するETSドメインを有する(DeHaro, L. and Janknecht, R. Nucleic Acids Res. 30, 2972-2979 (2002))。繊維芽細胞からETVECへの誘導に必要なETV2のドメインを調べるために、HAタグを付加した4種類のETV2(ΔETS、ΔTAD、ΔTADN、及びΔTADC)をコードする遺伝子(図3A参照)をCSII-EF-MCS-IRES2-VenusのMCSに挿入し、上記[繊維芽細胞への遺伝子導入法]の項目に記載の方法にしたがって、上記HAタグを付加した4種類のETV2発現レンチウイルスベクターをHAFs細胞へ導入し、その後、上記[細胞培養]の4)の記載の方法にしたがって、本件EGM−2培地中で該細胞の培養を行い、導入から15日目に上記[フローサイトメトリー解析及びセルソーティング]の項目に記載の方法にしたがって、CD31やVEGF−R2の発現を解析した。なお、コントロールとしてHAタグを付加した全長ETV2を用いた。その結果、ΔETSやΔTADを用いた場合、CD31細胞及びVEGF−R2細胞は誘導されなかった(図3B参照)。また、ΔTADNやΔTADCを用いた場合、VEGF−R2細胞は誘導されたものの、CD31細胞誘導されなかった(図3B参照)。以上の結果は、ETV2のTADドメインとETSドメインのいずれか一方を大きく欠失させてしまうと繊維芽細胞からETVECへの誘導は生じず、繊維芽細胞からETVECへの誘導には、少なくともETV2のTADドメインとETSドメインの両方の機能が必要であることを示している。
[結果4:ETVECは、VECとしての性質を安定に保持し、且つ高い増殖能を有する]
ETVECが、VECとしての性質を安定に保持した状態で増殖できるかどうかを調べるため、上記[繊維芽細胞への遺伝子導入法]の項目に記載の方法にしたがって、ETV2発現レンチウイルスベクターをHAFs細胞へ導入し、その後、上記[細胞培養]の4)の記載の方法にしたがって、本件EGM−2培地中で該細胞の培養を行い、導入から15日後にセルソーター(FACSAria II[BD biosciences社製])を用いてCD31細胞を選別し、10日間(細胞への遺伝子導入後25日間)本件EGM−2培地中で継代培養を行った。上記[フローサイトメトリー解析及びセルソーティング]の項目に記載の方法にしたがってCD31の発現を解析したところ、細胞への遺伝子導入後25日間培養した細胞は4.12〜9.76×10個まで増殖し、そのほとんど(95.3%、6.92×10個)がCD31細胞(ETVEC)であることが確認された(図4A及びB参照)。
上記CD31細胞(ETVEC)をセルソーター(FACSAria II[BD biosciences社製])を用いて選別し、さらに7日間(細胞への遺伝子導入後32日間)本件EGM−2培地中で継代培養を行ったところ、丸石様形態を示す細胞(ETVEC)を5.05〜11.40×10個まで増殖できることが確認された(図4B及びC参照)。また、上記[定量RT−PCR解析]の項目に記載の方法にしたがってVECマーカー遺伝子や繊維芽細胞マーカー遺伝子の発現を解析したところ、細胞への遺伝子導入後32日間培養した上記ETVECは、HUVECと同様、成熟VECマーカーであるvWF遺伝子のmRNAの他、7種類のVECマーカー遺伝子(ERG、FLI1、TAL1、PECAM1(CD31)、CDH5、EGFL7、及びKDR)のmRNAを発現するのに対して、繊維芽細胞マーカー遺伝子(COL1A2)のmRNAの発現は抑制されることが明らかとなった(図5A参照)。また、上記[フローサイトメトリー解析及びセルソーティング]の項目に記載の方法にしたがって、VECマーカーの発現を解析したところ、細胞への遺伝子導入後32日間培養した上記ETVECは、CD31やVEGF−R2の他、4種類のVECマーカー(CD34、Tie2、Endoglin、及びCXCR4)を発現することが確認された。
また、細胞への遺伝子導入後32日間培養した上記ETVECは、vWFや血管内皮細胞特異的な細胞接着分子であるVE-cadherinを発現することや(図5B参照)、AcLDLの取り込み活性を有することや(図5C参照)、毛細血管様構造を形成できること(図5D参照)も確認された。
以上の結果は、ETVECは、VECとしての性質を安定に保持し、且つ高い増殖能を有する細胞であることを示している。また、ETVECは、成熟VECマーカーであるvWFを発現することから、成熟した(血管形成能を有する)VECであることが示唆された。
VEGF及びbFGFは、VECの増殖や生存に必要であることが報告されている(Marcelo, K.L. et al. Circulation research 112, 1272-1287 (2013)、Flamme, I. & Risau, W. Development 116, 435-439 (1992))。本件EGM−2培地では、市販のEGM−2培地にVEGF及びbFGFを添加してVEGF及びbFGFの濃度を上げているが、これら両成分を添加しなかった場合、すなわち、培地中のVEGF及びbFGFの濃度を本件EGM−2培地よりも減少させた場合に、繊維芽細胞からETVECへの誘導に影響を及ぼすかどうか調べるために、ETV2発現レンチウイルスベクターをHAFs細胞へ導入した後、VEGF及びbFGFを添加しないEGM−2培地(市販のEGM−2培地)中で継代培養を行い、CD31VEGF−R2HAFs細胞を解析した。その結果、VEGF及びbFGFを添加しないEGM−2培地を用いた場合(VF(−))、本件EGM−2培地、すなわちVEGF及びbFGFを添加したEGM−2培地を用いた場合(VF(+))と比べ、CD31VEGF−R2HAFs細胞(ETVEC)の誘導効率は大幅に低下していた(図4D)。この結果は、EGM−2培地中に含まれるVEGFやbFGFの濃度を増加させると、繊維芽細胞からETVECへの誘導効率を顕著に上昇できることを示している。
[結果5:HAFs細胞における内因性のFOXC2発現が、ETVECへの誘導に必須である]
ETV2による繊維芽細胞からETVECへの誘導に、転写因子の1つであるFOXCが関与しているかどうかを調べるために、以下の一連の実験を行った。
まず、HAFs細胞における、FOXC1及びFOXC2のmRNA発現を、上記[定量RT(reverse transcription)−PCR解析]の項目に記載の方法にしたがって確認した。その結果、HAFs細胞はFOXC1、FOXC2のいずれも発現していること、及び、FOXC2の発現の方がFOXC1の発現よりも高いことが示された(図6A)。
次に、FOXC2遺伝子のノックダウンによる影響を以下の方法で調べた。FOXC2のshRNAを発現するプラスミドベクター(FOXC2のshRNAに対応するDNA配列は配列番号50)を導入したHAFs細胞へ、上記[繊維芽細胞への遺伝子導入法]の項目に記載の方法にしたがって、ETV2を発現するレンチウイルスベクターを導入し、その後、上記[細胞培養]の4)の記載の方法にしたがって、本件EGM−2培地中で該細胞の培養を行い、導入から15日後にセルソーター(FACSAria II[BD biosciences社製])を用いてVenus細胞を選別した細胞を、FOXC2遺伝子ノックダウン細胞とした。一方、FOXC2のshRNAを発現するプラスミドベクターを導入したHAFs細胞に代えて、コントロールのshRNAを発現するプラスミドベクター(コントロールのshRNAに対応するDNA配列は配列番号51)を導入したHAFs細胞を用いたこと以外は先の方法により得た細胞を、コントロール細胞とした。上記[定量RT−PCR解析]の項目に記載の方法にしたがって、FOXC2遺伝子ノックダウン細胞及びコントロール細胞における、ERG遺伝子(VECマーカー遺伝子の1種)、ETV2遺伝子、FLI1遺伝子(VECマーカー遺伝子の1種)、FOXC2遺伝子のmRNAの発現を確認した。その結果、FOXC2遺伝子ノックダウン細胞では、FOXC2遺伝子の発現が実際に抑制されていること、及び、ERG遺伝子及びFLI1遺伝子の発現が顕著に抑制されていることが示された(図6B)。
さらに、FOXC2遺伝子ノックダウン細胞及びコントロール細胞から死細胞を除いた細胞について、上記[フローサイトメトリー解析及びセルソーティング]の項目に記載の方法にしたがって、CD31の発現を解析した。その結果を図6Cに示す。コントロール細胞においては、Venusの細胞中のCD31細胞の割合が7.72%であったが(図6C左パネル)、FOXC2遺伝子ノックダウン細胞においては、その割合はわずか0.53%にまで顕著に抑制されていることが示された(図6C右パネル)。このことは、FOXC2遺伝子のノックダウンによって、HAFs細胞からETVECへの誘導が顕著に抑制されることを示すものである。
以上の結果は、ETV2による線維芽細胞からETVECへの誘導には、線維芽細胞の内因性FOXC2が必須であることを示している。
[結果6:ETVECは、血管形成能を有する成熟したVECである]
ETVECが、血管形成能を有する成熟したVECであるかどうかを調べるために、上記[マトリゲルプラグアッセイ]の項目に記載の方法にしたがってマトリゲルプラグアッセイを行った。その結果、コントロールのHAFs細胞をマウスに移植した場合、移植部位において、VECマーカーであるhCD34や、血管内皮細胞の周囲を裏打ちする壁細胞の指標であるα−平滑筋アクチン(α−SMA)の発現は認められず、また、ヒトECに特異的に結合するUEAIにより染色される脈管構造(血管)が形成されなかったのに対して、ETVECをマウスに移植した場合、移植部位において、ヒトCD34やα−SMAの発現が認められ、脈管構造(血管)が形成された(図7A〜D参照)。また、ETVECにより構成される血管は赤血球を循環していることが明らかとなった(図7B及びCの白矢印の血管内の球状の粒(赤血球)参照)。このことは、ETVEC由来の血管が、マウスが元々有している血管といずれかの部位で融合し、実際の血液循環を担っていることを意味する。さらに、ETVECにより構成される血管は一酸化窒素を合成して内皮細胞の生存を促進し、アテローム性動脈硬化症を予防するeNOSを発現することも確認された(図7E参照)。
以上の結果は、ETVECを移植すると、ETVECから機能的な血管構造が形成されることを示している。
ETVECを虚血領域に移植した場合、虚血による組織変性(損傷)を抑制できるかどうかを調べるために、上記[後肢虚血モデルマウスを用いた血管形成解析]や[ヘマトキシリン・エオシン染色法]の項目に記載の方法にしたがって解析を行った。その結果、コントロールのPBS溶液やHAFs細胞を後肢虚血部位に移植した場合、移植部位において、虚血領域の広範な筋肉の変性(損傷)が認められ(図8B参照)、自然切断により後肢が失われたのに対して(図8A参照)、ETVECを後肢虚血部位に移植した場合、移植部位において、上記虚血領域の筋肉の変性(損傷)が抑制され(図8B参照)、後肢の自然切断が抑制された(図8A参照)。また、ETVECを移植した後肢虚血部位においては、hCD34が発現することも確認された(図8E)。さらに、ETVECを移植した後肢虚血部位における血流の回復を調べるために、上記[レーザードップラー画像解析]の項目に記載の方法にしたがって解析を行った。その結果、コントロールのPBS溶液やHAFs細胞を後肢虚血部位に移植した場合と比べ、ETVECを後肢虚血部位に移植することにより有意に血流を回復することが示された(図8C及びD)。
以上の結果は、ETVECを虚血障害等により組織が変性(損傷)した部位に移植すると、ETVECから機能的な血管構造が形成され、その結果、組織変性(損傷)を予防又は改善できることを示している。
本発明によれば、線維芽細胞からiPSCを経由せずに血管内皮細胞を製造することができるため、比較的短期間で簡便かつ多量に、しかも低コストで血管内皮細胞を製造することができる。また、本発明の血管内皮細胞の製造方法では、多能性の状態の細胞を用いず、また、がん原遺伝子としても知られるc−Myc遺伝子も用いないため、ESCやiPSCを用いる場合に懸念される発がん性の問題もない。また、本発明の製造方法により製造された血管内皮細胞は、生体内で機能的な血管構造を形成し、また、虚血部位の血流を有意に回復し得るなど、生体内で機能を発揮することができる。

Claims (12)

  1. 工程(P):以下の(a)〜(f)のいずれかのポリヌクレオチドからなるETV2遺伝子、又は以下の(A)〜(C)のいずれかのタンパク質からなるETV2タンパク質を線維芽細胞に導入する工程;及び
    工程(Q):前記ETV2遺伝子又は前記ETV2タンパク質が導入された線維芽細胞を血管内皮細胞増殖用培地で培養する工程;
    を有することを特徴とする、血管内皮細胞の製造方法;
    (a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
    (b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつETV2活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
    (c)配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつETV2活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
    (d)配列番号1に示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド;
    (e)配列番号1に示されるヌクレオチド配列において、1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換及び/又は付加されたヌクレオチド配列からなり、かつETV2活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
    (f)配列番号1に示されるヌクレオチド配列と少なくとも80%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、かつETV2活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
    (A)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
    (B)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつETV2活性を有するタンパク質;
    (C)配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつETV2活性を有するタンパク質。
  2. さらに、以下の工程(R)を有することを特徴とする請求項1に記載の血管内皮細胞の製造方法;
    工程(R):工程(Q)で培養して得られる細胞から血管内皮細胞を分取する工程。
  3. 工程(R)において、工程(Q)で培養して得られる細胞から血管内皮細胞を分取する方法が、工程(Q)で得られる細胞から血管内皮細胞マーカー陽性細胞を分取する方法であることを特徴とする請求項2に記載の血管内皮細胞の製造方法。
  4. 血管内皮細胞マーカーがCD31であることを特徴とする請求項3に記載の血管内皮細胞の製造方法。
  5. さらに、以下の工程(S)を有することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の血管内皮細胞の製造方法;
    工程(S):工程(R)で分取した血管内皮細胞を、血管内皮細胞増殖用培地で培養する工程。
  6. ETV2遺伝子の線維芽細胞への導入が、前記ETV2遺伝子を発現し得る発現ベクターを前記線維芽細胞へ導入することによりなされることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の血管内皮細胞の製造方法。
  7. ETV2遺伝子を発現し得る発現ベクターが、ETV2遺伝子を発現し得るレンチウイルスベクターであることを特徴とする請求項6に記載の血管内皮細胞の製造方法。
  8. 血管内皮細胞増殖用培地が、少なくとも血管内皮増殖因子(VEGF)及び塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の血管内皮細胞の製造方法。
  9. ETV2遺伝子がヒトETV2遺伝子であり、ETV2タンパク質がヒトETV2タンパク質であり、線維芽細胞がヒト線維芽細胞であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の血管内皮細胞の製造方法。
  10. 線維芽細胞が、皮膚線維芽細胞であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の血管内皮細胞の製造方法。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の血管内皮細胞の製造方法により製造される血管内皮細胞。
  12. 請求項1〜10のいずれかに記載の血管内皮細胞の製造方法により製造される血管内皮細胞を含有する血管新生促進剤。
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