発明の詳細な説明
I.概要
A.全体
本開示は、多能性幹細胞を、衛星細胞に似ており、筋芽細胞ならびに他の筋肉細胞および筋線維を生じさせる潜在性を有し得る筋肉系列細胞である衛星様細胞へと分化させるためのユニークな方法を特長とする。本方法は、一般に、多能性幹細胞を、衛星様細胞への細胞の分化を媒介する1つまたは複数の化合物と接触させることを含む。本方法は多くの場合は1ステップ過程を含み、したがって高効率である傾向にある。一部の例では、1ステップ過程は、ヒト多能性幹細胞を2つの化合物(たとえば、Wnt経路活性化剤およびTGF-β受容体阻害剤)を含む分化培地と接触させることを含み、これにより、多くの場合はPax3、Pax7、および/またはCD56などの衛星細胞に関連する遺伝子の制御によって、多能性幹細胞が筋肉分化経路に入るようにし、衛星様細胞の生成がもたらす。本方法はまた、特に開始多能性幹細胞の数と比較した場合に、衛星様細胞を高収率で生成し得るという意味でも、高効率であり得る。
臨床的に、衛星様細胞は、筋変性疾患を有する患者、またはこれらだけには限定されないが遺伝子障害、散在性疾患、悪液質、筋挫傷、筋傷害、筋萎縮を含む様々な原因から生じる障害を有する患者、ならびに筋肉減少症および一般的な老化過程などの、患者の処置を含むいくつかの設定において非常に有用であり得る。本明細書中で提供する衛星様細胞は、そのような患者の細胞治療、特に、患者の天然に存在する衛星細胞を補充または補足する治療において使用し得る。そのような細胞治療では、衛星様細胞を筋肉部位などの患者内の部位に注射してよく、これらは続いて患者内で後期の筋肉細胞(たとえば筋芽細胞)を形成し得る。筋芽細胞は、互いにまたは患者の天然に存在する筋芽細胞のいずれかと融合し、患者の身体内で筋管および機能性骨格筋組織を形成し得る。その結果、患者は、筋力の改善を含む、筋緊張または筋機能の改善を経験し得る。一部の例では、美容上、運動上、または他の目的のために筋緊張または筋機能の強化を求める対象は、本開示中に提供する方法および組成物から利益を受け得る。
一部の例では、本方法は、対象を遺伝子改変細胞に由来する衛星様細胞(またはさらには直接遺伝子改変した衛星様細胞)で処置することを含み得る。たとえば、分化細胞を、遺伝子疾患(たとえば、ハンチントン病、脊髄性筋萎縮症、デュシェンヌ型筋ジストロフィーなど)を有する対象から単離することができる。次いで、分化細胞を多能性幹細胞となる(たとえば誘導多能性幹細胞となる)条件に供し得る。多能性幹細胞は、疾患状態を救出または改善するために遺伝子改変または変更し得る。次いで、これらの遺伝子改変した多能性細胞を衛星細胞または衛星様細胞へと分化させてよく、疾患または障害の影響を低下させるために、これらを対象内に移植する。これらの細胞は、異なる対象に由来する細胞よりも、対象において免疫応答を引き起こす可能性が低い場合がある。
別の例では、衛星細胞または衛星様細胞を、ヒト白血球抗原(HLA)コード領域(単数または複数)を不活化するように改変されたヒト多能性幹細胞から分化させて、HLAヌルのヒト多能性幹細胞を生成させ得る。次いで、HLAヌルのヒト多能性幹細胞をHLAヌル衛星細胞または衛星様細胞へと分化させてよく、これを細胞治療に使用することができる。これらの細胞は、対象による免疫応答を完全にまたは部分的に回避でき得るため、特に有益であり得る。
本明細書中で提供する衛星様細胞(遺伝子改変または未改変の多能性幹細胞に由来する細胞を含む)はまた、薬物スクリーニングアッセイ、特に筋肉異常を寛解させるための薬剤を同定するためのアッセイにおいて使用することもできる。細胞はまた、疾患モデリングおよび他の種類の疾患研究にも有用であり得る。一部の例では、衛星細胞または衛星様細胞を、ヒトにおいて遺伝子疾患を引き起こす、同一または実質的に類似の突然変異を有するように遺伝子改変したヒト多能性幹細胞から分化させ得る。次いで、そのような衛星細胞または衛星様細胞を、突然変異の効果を逆転または低下させる薬剤についてスクリーニングし得る。これらの細胞は、疾患もしくは障害を研究するため、または薬物スクリーニングを行うために、さらに筋芽細胞および筋管へと分化させることができる。
B.一般方法
本開示は、他の衛星細胞もしくは衛星様細胞を生じさせる、または骨格筋細胞へと分化して機能的骨格筋を形成する能力を有する衛星細胞または衛星様細胞を、生成、培養、および保存するための方法および組成物を提供する。本開示は、衛星細胞または衛星様細胞から分化した細胞(たとえば、筋芽細胞、筋管)、それらの調製、およびそれらの保存をさらに記載する。
分化過程の全体的な概要を図1に示す。諸ステップは、任意の順序で、多能性幹細胞、たとえば胚性幹細胞または誘導多能性幹細胞を得ること(100)を含み得る。一部の場合では、誘導多能性幹細胞を患者からの分化細胞から得る。一部の場合では、多能性幹細胞(たとえば、胚性幹細胞または誘導多能性幹細胞)を遺伝子改変する。これらのステップはまた、多能性幹細胞を1つまたは複数の化合物と接触させて、細胞を(たとえば化学分化によって)衛星細胞または衛星様細胞へと分化させること(110)、衛星細胞または衛星様細胞を同定すること(120)、および任意選択で細胞を保存すること(130)も含み得る。これらのステップの間に、細胞を培養または拡大することを含む、細胞を維持するためのステップを散在させてもよい。さらに、細胞の保存は、過程中の多くのステップの後に行うことができる。さらに、図1には、衛星細胞または衛星様細胞の同定(120)の後に精製ステップが任意選択で含まれていてもよい。一部の場合では、本明細書中に開示する方法は、特定の表現型を有する細胞を残りの細胞集団から分別することを含むステップなどの、1つまたは複数の精製ステップを含む。一部の場合では、本明細書中に開示する方法は精製ステップを含まない。一部の場合では、本方法は、細胞を分別することを含まない。
一部の場合では、衛星細胞または衛星様細胞を、それらが筋肉系列中のさらなる分化細胞、たとえば筋芽細胞または筋管を生じることを可能にする条件に供する。特に、衛星細胞または衛星様細胞をin vitroで筋芽細胞および筋管へと分化させ得る(150)。他の場合では、衛星細胞または衛星様細胞をin vivoで分化させ得る。
衛星様細胞は、治療剤または他の使用(140)などの多くの状況において使用することができる。これらの使用の例には、細胞治療、発達の研究、疾患モデリング、および薬物スクリーニングキャンペーンが含まれる。細胞治療の一部の例では、衛星細胞または衛星様細胞を対象(たとえば患者)内に移植してよく、次いで、in vivoで筋芽細胞および筋管などの他の筋肉系列細胞へと分化させ得る(160)。移植細胞をまた、in vivoで増殖して、さらなる衛星細胞または衛星様細胞を生じさせてもよい。移植細胞(または、筋芽細胞などのそれらに由来する細胞)をin vivoで宿主筋芽細胞と融合して、移植細胞(または移植由来の細胞)および宿主細胞の両方からの核も含むハイブリッド筋管を形成し得る。一部の場合では、移植した衛星細胞もしくは衛星様細胞(またはそれらに由来する細胞)は、因子を分泌することまたは機械的支持を提供することによってなど、他の様式で筋成長を促進し得る。一部の場合では、移植細胞またはそれらから分泌された因子は、炎症反応を軽減することによって筋肉を保護し得る。一部の場合では、移植細胞は、異なる対象から得た細胞から生じた細胞である。一部の場合では、対象は、元々は対象から得た細胞試料に由来する移植細胞を受ける。一部の場合では、対象から得た細胞試料は、誘導多能性幹細胞を形成するように誘導した分化細胞(たとえば、線維芽細胞、血液細胞)を含む。誘導多能性幹細胞は、たとえば表現型を矯正するために遺伝子改変し得る。
一部の場合では、衛星細胞または衛星様細胞をin vitroで筋芽細胞および/または筋管へと分化させる。次いで、筋芽細胞および/または筋管を、細胞治療として(たとえば、細胞を対象内に導入することによって)、薬物スクリーニングアッセイのプラットフォームとして、または他の目的のために使用し得る。
別の例では、衛星細胞または衛星様細胞を、ヒト白血球抗原(HLA)コード領域(単数または複数)を不活化するように改変されたヒト多能性幹細胞から分化させて、HLAヌルのヒト多能性幹細胞を生成させ得る。次いで、HLAヌルのヒト多能性幹細胞をHLAヌル衛星細胞または衛星様細胞へと分化させ得る。HLAヌル衛星細胞または衛星様細胞は、より分化していない細胞(たとえば、多能性幹細胞、多分化能幹細胞、筋肉系列に制限された前駆細胞)から化学分化によって、衛星細胞もしくは衛星様細胞に関連する遺伝子マーカーの強制発現によって、または当技術分野で公知の任意の他の分化過程によって生成させ得る。強制発現は、タンパク質をコードする発現ベクターの細胞内への導入、組換えウイルスを用いた細胞の形質導入、目的の外来性の精製ポリペプチドの細胞内への導入、目的のポリペプチドをコードする外来性の精製mRNAの細胞内への導入、細胞と目的のマーカー(たとえば、Pax3、Pax7、もしくはCD56)の発現を誘導する天然に存在しない試薬との接触、または目的のポリペプチドをコードする遺伝子の発現を誘導するための任意の他の生物学的、化学的、もしくは物理的過程によって達成することができる。
図2は、HLAヌル多能性幹細胞をHLAヌル衛星細胞または衛星様細胞へと分化させる一部の基本的なステップを例示する。これらのステップは、多能性幹細胞、たとえば胚性幹細胞または誘導多能性幹細胞を得ること(200)、少なくとも1つのHLA座位を無能化すること(210)、細胞を、たとえば化学分化によって、Pax3、Pax7、またはCD56などのポリペプチドを発現する細胞へと分化させること(220)、衛星細胞または衛星様細胞を同定すること(230)、および任意選択で細胞を保存すること(240)を含み得る。これらのステップの間に、細胞を培養または拡大することを含む、細胞を維持するためのステップを散在させてもよい。さらに、細胞の保存は、過程中の多くのステップの後に行うことができる。さらに、図2には、衛星細胞または衛星様細胞の同定(230)の後に精製ステップが任意選択で含まれていてもよい。一部の場合では、本明細書中に開示する方法は、特定の表現型を有する細胞を残りの細胞集団から分別することを含むステップなどの、1つまたは複数の精製ステップを含む。一部の場合では、本明細書中に開示する方法は精製ステップを含まず、一部の場合では、本方法は、細胞を分別することを含まない。一部の場合では、HLAヌル衛星細胞または衛星様細胞を、それらが筋肉系列中のさらなる分化細胞、たとえば筋芽細胞または筋管を生じることを可能にする条件に供する。特に、HLAヌル衛星細胞または衛星様細胞をin vitroで分化させて筋芽細胞および筋管を形成し得る(260)。一部の例では、HLAヌル衛星細胞または衛星様細胞を対象(たとえば患者)内に移植してよく、次いで、in vivoで筋芽細胞および筋管などの筋肉系列細胞へと分化させ得る(270)。移植細胞をまた、in vivoで増殖して、さらなる衛星細胞または衛星様細胞を生じさせてもよい。さらに、移植したHLAヌル衛星細胞または衛星様細胞は、対象からの免疫応答(280)を回避し得る。移植したHLAヌル衛星細胞または衛星様細胞はまた、in vivoで宿主筋芽細胞と融合した後に宿主HLA抗原を表示することによって、ナチュラルキラー細胞応答を回避し得る。一部の場合では、衛星細胞または衛星様細胞をin vitroで筋芽細胞および/または筋管へと分化させる。次いで、筋芽細胞および/または筋管を、細胞治療として(たとえば、細胞を対象内に導入することによって)、薬物スクリーニングアッセイのプラットフォームとして、または他の目的のために使用し得る。
他の例では、衛星細胞または衛星様細胞は、遺伝子疾患もしくは障害に関連する突然変異を保有すると同定された、胚性幹細胞などの疾患に特異的な多能性幹細胞、または、(a)遺伝子突然変異を有する対象から得た、もしくは(b)遺伝子突然変異を保有するように遺伝子変更されたいずれかの誘導多能性幹細胞から分化させ得る。次いで、これらの疾患に特異的な幹細胞を疾患に特異的な衛星細胞または衛星様細胞へと分化させ得る。疾患に特異的な衛星細胞または衛星様細胞は薬物スクリーニングおよび他の臨床応用に使用し得る。
II.細胞の調製
A.多能性幹細胞、多分化能幹細胞、および衛星細胞または衛星様細胞へと分化する能力を有する他の細胞
一部の場合では、衛星細胞または衛星様細胞は、多能性幹細胞、多分化能幹細胞、または系列が決定した細胞(筋肉系列が決定した細胞など)の分化によって生成される。多能性幹細胞は、一般に、3つすべての胚葉(すなわち、外胚葉、中胚葉、および内胚葉)の細胞へと分化する能力を有している一方で、多分化能幹細胞は、複数の細胞型へと発達することができるが多能性幹細胞よりも制限されている。多能性幹細胞には様々な供給源が存在するが、一般に、多能性幹細胞は胚性幹細胞または誘導多能性幹細胞に由来する。多分化能幹細胞は、新生児臍帯血、または出生後組織から単離した細胞を含む様々な供給源に由来し得る。一例では、本明細書中で提供する方法は、間葉多分化能幹細胞または筋肉系列に制限された前駆細胞を衛星細胞へと分化させるために使用し得る。
衛星細胞または衛星様細胞へと分化させ得る細胞の例は、好ましくはヒト対象からのものであるが、非ヒト対象、たとえば非ヒト哺乳動物に由来することもできる。非ヒト哺乳動物の例には、これらだけには限定されないが、非ヒト霊長類(たとえば、類人猿、サル、ゴリラ)、げっ歯類(たとえば、マウス、ラット)、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、またはウサギが含まれる。
胚性幹細胞(ESC)は、受精後約4~5日目の胚盤胞の内部細胞塊から単離してよく、多能性および自己複製の両方によって特徴付けられている。したがって、ESCは未分化状態で無限に増殖させることができる。ESCはまた、無期限で培養物中にて増殖させた、以前に単離した細胞から得ることもできる。ESCは、遺伝子型が男性または女性の胚盤胞から得ることができる。ESCは、単為生殖を使用して未受精の卵子から得てもよい。さらなる例では、ESCは、体細胞核移植(SCNT)の使用によって得てもよい、またはSCNTを受けた細胞の子孫であってもよい。
ESCは様々な疾患状態を有する対象から収集し得る。細胞は、有害な健康状態のない胚から収集することができる。他の場合では、胚は、着床前遺伝子診断(PGD)によって、疾患または障害、たとえば、筋ジストロフィー、ハンチントン病、メロシン欠乏1A、ネマリン筋疾患、および脊髄性筋萎縮症(SMA)などの筋変性疾患を発生する危険性が増加していると同定され得る。筋ジストロフィーの例には、ベッカー型、先天性、顔面肩甲上腕型(FSH)、筋緊張性(IおよびII型)、眼咽頭型、遠位型、筋緊張性筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、肢帯筋ジストロフィー、およびエメリ-ドレフュス型筋ジストロフィーが含まれる。デュシェンヌ型およびベッカー型の筋ジストロフィーは第X染色体に位置する遺伝子の突然変異によって引き起こされ、主に男性が患うが、女性も重篤な症状を有する場合がある。さらに、ほとんどの種類の筋ジストロフィーが多系統障害であり、心臓、胃腸管系、神経系、内分泌腺、眼、および脳を含む身体系において徴候を有する。
誘導多能性幹細胞(iPSC)は様々な細胞型から誘導し得る。適切な細胞集団の例には、これらだけには限定されないが、線維芽細胞、骨髄由来単核細胞、骨格筋細胞、脂肪細胞、末梢血単核球、血液細胞、末梢血リンパ球、マクロファージ、ケラチノサイト、口腔ケラチノサイト、毛嚢真皮細胞、胃上皮細胞、肺上皮細胞、滑膜細胞、腎細胞、皮膚上皮細胞、または骨芽細胞が含まれる。
また、誘導多能性幹細胞は、多くの異なる種類の組織、たとえば、骨髄、皮膚(たとえば、真皮、表皮)、筋肉、脂肪組織、末梢血、包皮、骨格筋、または平滑筋に起源することもできる。細胞はまた、これらだけには限定されないが、臍帯組織(たとえば、臍帯、臍帯血、臍帯血管)、羊膜、胎盤、または他の様々な新生児組織(たとえば、骨髄液、筋肉、脂肪組織、末梢血、皮膚、骨格筋など)を含む新生児組織に由来することもできる。
誘導多能性幹細胞、多分化能細胞、または系列が決定した細胞は、男性または女性である対象に由来し得る。細胞は、帝王切開分娩を含む出生から死亡までの期間の間に対象から収集された、新生児または出生後の組織に由来し得る。一部の場合では、誘導多能性幹細胞は、早期老化を経験している対象を含む高齢の対象に由来する。一部の場合には、組織は、>10分齢、>1時間齢、>1日齢、>1か月齢、>2か月齢、>6か月齢、>1歳、>2歳、>5歳、>10歳、>15歳、>18歳、>25歳、>35歳、>45歳、>55歳、>60歳、>65歳、>70歳、>75歳、>80歳、<80歳、<70歳、<60歳、<50歳、<40歳、<30歳、<20歳または<10歳である対象に由来してもよい。対象は新生児であり得る。一部の場合では、対象は小児または成人である。一部の例では、組織は、2、5、10、または20時間齢のヒトからのものである。別の例では、組織は、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、9か月または12か月の年齢のヒトに由来する。一部の場合には、組織は、1歳、2歳、3歳、4歳、5歳、18歳、20歳、21歳、23歳、24歳、25歳、28歳、29歳、31歳、33歳、34歳、35歳、37歳、38歳、40歳、41歳、42歳、43歳、44歳、47歳、51歳、55歳、61歳、63歳、65歳、70歳、77歳または85歳の年齢のヒトに由来する。
iPSC、多分化能細胞、または系列が決定した細胞は、本明細書中に記載の対象または患者のうちの任意のものを含む、様々な疾患状態を有する対象から収集し得る、またはそれらに由来し得る。細胞は、有害な健康状態のない対象から収集することができる。他の場合では、対象は、疾患または障害を有する、または有する危険性がある。一部の場合では、対象は、本明細書中に記載の筋肉欠乏性疾患(たとえば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーなどの筋ジストロフィー)または筋肉の消耗もしくは萎縮などの、筋変性疾患または障害を有する、または有する危険性がある。一部の場合では、対象は、遺伝子疾患または障害を有する、または有する危険性があり、そのような場合では、本明細書中で提供する方法を使用して、疾患または障害を処置または寛解させ得る。対象はまた、他の疾患または障害、たとえば、心血管疾患、眼疾患(たとえば黄斑変性症)、聴覚疾患(たとえば聴覚消失)、糖尿病、認知障害、統合失調症、鬱病、双極性障害、認知症、神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、骨粗鬆症、肝臓疾患、腎臓疾患、自己免疫疾患、関節炎、または増殖性障害(たとえばがん)などの慢性の健康状態も有し得る。特定の場合では、対象は、自身が将来使用するため(たとえば自己治療)、または、処置もしくは治療などのために使用する細胞を必要とし得る別の対象が使用するため(たとえば同種治療)の細胞を提供する。一部の場合では、ドナーおよびレシピエントは免疫組織学的に適合性がある、またはHLAが一致する。
iPSCは、分化細胞を多能性へと戻す調節によって得ることができる。さらに、iPSCは単一細胞または細胞集団を含む試料から得ることができる。集団は均質または不均質であり得る。細胞は、ヒト細胞試料、たとえば生検または血液試料中に見つかる細胞集団であり得る。多くの場合、細胞は体細胞である。細胞は細胞株であり得る。一部の場合では、細胞は、他の細胞と融合した細胞に由来する。一部の場合では、細胞は、他の細胞と融合した細胞に由来しない。一部の場合では、細胞は、他の細胞と人工的に融合した細胞に由来しない。
iPSCの生成は、ポリペプチド、特に、胚性幹細胞の自己複製および/または多能性の維持または制御において役割を果たすタンパク質の発現を強制することによって達成できる。そのようなタンパク質の例は、すべて胚性幹細胞中で高度に発現されるOct3/4、Sox2、Klf4、L-Myc、N-myc、およびc-Myc転写因子である。さらに、一部の例では、iPSC細胞は、c-Myc、N-myc、もしくはL-myc、またはがんを引き起こすタンパク質を使用せずに調製する。強制発現には、目的のポリペプチドをコードする発現ベクターを細胞内に導入すること、組換えウイルスを用いた細胞の形質導入、目的の外来性の精製ポリペプチドを細胞内に導入すること、目的のポリペプチドをコードするメッセンジャーRNAを細胞内に導入すること、細胞を、目的のポリペプチドをコードする内在遺伝子(たとえば、Oct3/4、Sox2、Klf4、もしくはc-Myc)の発現を誘導する天然に存在しない試薬と接触させること、または、目的のポリペプチドをコードする遺伝子(たとえば、内在遺伝子Oct3/4、Sox2、Klf4、もしくはc-Myc)の発現を誘導するための任意の他の生物学的、化学的、もしくは物理学的手段が含まれ得る。さらなる例では、iPSCは、多能性を誘導するマイクロRNA(miRNA)方法または遺伝子ノックダウン方法を使用して生成することができる。iPSCの生成はまた、多能性および中胚葉などの分化細胞を形成する能力のマーカーの発現をもたらす他の方法によっても達成し得る。
誘導多能性幹細胞、多分化能細胞、または系列が決定した細胞は、非胚性組織からのもの、たとえば胚期より後の発達段階にあるものであり得る。他の場合では、細胞は胚に由来し得る。一部の場合では、細胞は、胎児段階より後の発達段階の組織からのものであり得る。他の場合では、細胞は胎児に由来し得る。
多能性幹細胞(たとえば、ESC、誘導多能性幹細胞)、多分化能細胞、または系列が決定した細胞は、好ましくはヒト対象からのものであるが、非ヒト対象、たとえば非ヒト哺乳動物に由来することもできる。非ヒト哺乳動物の例には、これらだけには限定されないが、非ヒト霊長類(たとえば、類人猿、サル、ゴリラ)、げっ歯類(たとえば、マウス、ラット)、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、またはウサギが含まれる。
細胞集団には分化細胞および未分化細胞の両方が含まれ得る。一部の場合では、集団は主に分化細胞を含有する。他の場合では、集団は主に未分化細胞、たとえば未分化の幹細胞を含有する。一部の例では、集団内の未分化細胞を、多能性または多分化能となるように誘導し得る。一部の場合では、細胞集団内の分化細胞を、多能性または多分化能となるように誘導する。
さらなる例では、細胞集団には未分化の幹細胞またはナイーブ幹細胞が含まれ得る。一部の場合では、未分化の幹細胞は、Nanog、Oct3/4、Sox2、およびTertのうちの少なくとも4つの遺伝子、少なくとも3つの遺伝子、少なくとも2つの遺伝子、少なくとも1つの遺伝子、または0個の遺伝子のDNAメチル化またはヒストン修飾が原因で、ヘテロクロマチン形成の後成的失活化修飾を受けていない幹細胞である。そのような遺伝子、たとえば、Tert、Nanog、Oct3/4、またはSox2の活性化、または発現は、ヒト多能性幹細胞がヒト出生後組織中に存在する未分化の幹細胞から誘導される場合に起こり得る。
候補の多分化能または多能性幹細胞コロニーを同定するための形態学的特徴には、これらだけには限定されないが、周辺細胞と比較してより円形の、より小さな細胞の大きさ、および高い核対細胞質の比が含まれる。候補誘導細胞の大きさは、約5μm~約10μm、約5μm~約15μm、約5μm~約30μm、約10μm~約30μm、または約20μm~約30μmであり得る。一部の例では、高い核対細胞質の比は、約1.5:1~約10:1、たとえば、約1.5:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約7:1、約8:1、約9.5:1、または約10:1であり得る。一部の場合では、誘導細胞のクローンは、ES細胞と比較して平らな形態学を示す。たとえば、末梢血細胞に由来する候補誘導細胞、またはフィーダーを含まない培地中で培養した細胞に由来する候補誘導細胞は、周辺細胞と比較して平らな形態学を示し得る。誘導細胞クローンを同定するための別の形態学的特徴は、親細胞間(たとえば線維芽細胞間)の空間内での小さな単層コロニーの形成である。
候補の多分化能または多能性幹細胞を同定するための遺伝子発現特徴には、これらだけには限定されないが、多能性マーカーの発現(たとえば、Oct4、Nanog、SSEA-4、Tra1-60)、普遍的遺伝子発現プロファイルの特徴付け(たとえば、Pluritest、Mullerら、2011年)、および追加のナイーブhESCマーカーの発現が含まれる。誘導多能性幹細胞も、胚性幹細胞と同様、自己複製する能力を有するため、そのような細胞は、無期限で培養物中にて増殖させた、以前に単離した細胞から得ることもできる。
B.CRISPR酵素による多能性または多分化能幹細胞の遺伝子改変
多能性幹細胞(たとえば、ESC、iPSC)または多分化能幹細胞を遺伝子改変することができ、それによって生成された細胞を単離し、培養し、所望の遺伝子型を有する分化細胞を生成するために使用することができる。そのような改変には、多能性幹細胞を、(a)RNA分子と相互作用するヌクレアーゼ酵素(たとえば、規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列酵素(CRISPR)、および(b)RNA分子と接触させることによって、多能性幹細胞(または他の細胞型)のゲノム座位を変更することを含むことができる。そのようなRNA分子は、CRISPR-RNA(crRNA)およびトランス活性化crRNA(tracrRNA)、またはキメラcr/tracrRNA(「ガイドRNA」、または「gRNA」と呼ばれる)を含むことができる。CRISPR酵素は、これらのRNA分子の領域と同一または高度に同一であるゲノム中の部位で、ニックまたは二重鎖切断を生じる。CRISPR酵素の例には、これらだけには限定されないが、Cas3、Cas8a、Cas8b、Cas10d、Cas9、Csn2、Csn4、またはCas10が含まれる。特に好ましい実施形態では、CRISPR酵素は二重鎖切断を生じるCas9である。
CRISPR酵素は、二重鎖切断の不完全な修復が原因でゲノム中に突然変異を誘導することができる。2つの末端が相同的な鋳型を必要とせずにライゲーションされる非相同的末端結合(NHEJ)は、遺伝子産物を非機能的にする挿入/欠失突然変異をもたらす場合がある。二本鎖の切断はまた、二重鎖切断が切断部位近くの配列と第2のDNA分子上の類似または同一の配列との組換えを誘導する、相同性に管理された修復過程によって解決することもできる。相同性に管理された修復過程は、配列をゲノム内に組み込むために使用することができる。ゲノム内への配列の組込みを使用して、目的の遺伝子を中断することができる。相同性に管理された修復を使用して、遺伝子の切断または欠失をもたらす鋳型分子との組換えを誘導することができる。たとえば、介在配列なしで遺伝子の5’および3’非翻訳領域をコードするゲノム領域からなる鋳型分子が提供されている場合、生じる組換え産物は遺伝子のコード配列をどれも欠いているであろう。
C.多能性または多分化能幹細胞におけるHLA系の遺伝子改変
HLA系は、小さなポリペプチド断片を免疫細胞に提示するポリペプチドをコードする、第6染色体上の遺伝子座位からなる。クラスI HLAポリペプチドは、健康な細胞によって生成されるポリペプチドなどの、細胞内からのポリペプチドを提示するが、細胞内にある、ウイルスなどの外来源に由来するポリペプチドも提示する。クラスI HLAポリペプチドは、CD8を発現するT細胞と相互作用し、免疫応答を誘導することができる。クラスII HLAポリペプチドは、細胞外の供給源に由来する短いポリペプチドを提示する。抗原にクラスII HLAポリペプチドを提示する一部の細胞には、樹状細胞、マクロファージ、およびB-リンパ球が含まれる。
HLA系の構成成分をコードする遺伝子座位は可変性が高い。それぞれの個体は、その細胞中に同じ対立遺伝子の組合せを有するが、これらの対立遺伝子は人ごとに異なる場合がある。異なるHLA対立遺伝子の組合せを有する人から組織または臓器移植を受ける人は、移植片拒絶の危険性が高い。したがって、HLA座位は、移植前に最も一般的に型付けされる遺伝子座位のうちの1つである。
処置する対象以外の供給源に由来する幹細胞を使用した処置は、拒絶の危険性を低下させるHLA座位を有する細胞の使用によって改善することができる。幹細胞は、そのHLA座位で遺伝子型決定し、対象と一致させて、移植片拒絶の危険性を低下させることができる。たとえば、幹細胞またはそれに由来する分化細胞を対象(たとえば、自己対象、HLAが一致する対象)内に移植して、疾患または状態を処置することができる。
好ましい一例では、本明細書中に開示する方法は、移植片拒絶の危険性を低下させるために、HLA座位の一部分を発現しない細胞を生成することを含む。HLA座位または複数のHLA座位は、遺伝子改変戦略、組換えなどを含む当技術分野で公知の任意の方法によって、除去または失活させ得る。一部の場合では、多能性幹細胞を、HLAをコードするゲノム座位を、それらが機能的HLAを生成しなくなるよう変更するように設計されたCRISPR酵素と接触させることによって、HLAヌル多能性幹細胞を生じさせることができる。HLA座位は、Cas9をCRISPER酵素として使用することで非機能的にすることができる。
HLA座位を非機能的にする突然変異を誘導するために、Cas9に1種または複数種のgRNAを導入することができる。あるいは、HLA座位の欠失を誘導するために、Cas9に2つまたはそれ超のgRNAを導入することができる。一例では、多能性幹細胞が機能的HLAを生成しなくなるために十分な組換え事象を誘導するために、CRISPR酵素であるCas9に、1種または複数種のガイドRNAおよびHLAまたは周辺HLAをコードするゲノム座位に対して類似性を有する鋳型DNA分子を導入し得る。
組換え事象を誘導するために、Cas9に1種または複数種のgRNAおよび1種または複数種の鋳型核酸を導入することができる。そのような組換え事象はHLA座位の欠失をもたらす場合がある。組換え事象はまた、HLA座位が機能的HLAポリペプチドを生成できなくなるように、HLA座位の一部分を欠失させることによるHLA座位の無能化ももたらし得る。欠失の大きさは、大きさが変動し得る。一部の例では、欠失領域(単数または複数)は小さくてよい。小さな欠失の例には、早期ストップコドンを生じる欠失、転写物の分解を誘導する欠失、または非機能的ポリペプチドを生じる欠失が含まれる。他の例では、1種または複数種の必須エクソンを欠失させることができる。他の例では、遺伝子全体を欠失させることができる。
さらなる例では、複数のHLA座位を含有する領域を欠失させることができる。したがって、欠失の範囲は、概して>5bp、>10bp、>20bp、>50bp、>100bp、>500bp、>1kbp、>5kbp、>10kbp、>20kbp、>50kbp、>100kbp、>500kbp、>1Mbp、>2Mbp、または>3Mbpであってよい。あるいは、そのような組換え事象は、HLA座位内への配列の組込みをもたらし、それを非機能的(HLAヌル)にする場合がある。そのような突然変異、欠失、または挿入は、プロモーター、転写因子、またはHLA座位の発現もしくは機能に影響を与える他のゲノム座位を標的とすることができる。
HLAヌル多能性幹細胞は、「ヒト化」マウスモデル(「Hu-マウス」)において試験することができる。Hu-マウスは、ヒト胎児胸腺組織および同質遺伝子CD34+胎児肝臓細胞を免疫不全のNOD/SCIDマウス内に組合せ移植することによって、機能的ヒト免疫系を示す(Lan,P.、Tonomura,N.、Shimizu,A.、Wang,S.、およびYang,Y.(2006年)。Reconstitution of a functional human immune system in immunodeficient mice through combined human fetal thymus/liver and CD34+ cell transplantation。Blood、108巻(2号)、487~92頁)。HLAヌル多能性幹細胞は一般に、HLA-多能性幹細胞と比較して、マウスによって拒否される可能性が低下している。免疫系の回避の成功は、HLAヌル奇形腫の検出によって実証することができる。
D.疾患を保有する突然変異を導入するための遺伝子改変
遺伝子疾患を引き起こすことが公知である突然変異を健康な幹細胞株に導入することができる。たとえば、フレームシフト突然変異を引き起こす、または他の様式で遺伝子を非機能的にするために、ジストロフィン遺伝子もしくはジストロフィン遺伝子の一部分、または1つもしくは複数のエクソンを欠失させ得る。突然変異は、男性または女性の幹細胞株において、ヘテロ接合性またはホモ接合性であり得る。生じる改変した幹細胞株を、衛星細胞または衛星様細胞へと分化させ、さらに筋芽細胞または筋管へと分化させることができる。これらの衛星細胞、衛星様細胞、筋芽細胞、または筋管は、導入した突然変異(単数または複数)によって引き起こされる疾患関連の表現型を示し得る。遺伝的に改変していない幹細胞株は、薬物スクリーニング、疾患モデリング、および疾患研究において特に有用であり得る同質遺伝子対照として役割を果たし得る。
E.疾患を引き起こす突然変異を救出するための遺伝子改変
多能性幹細胞、多分化能幹細胞、または他の種類の幹細胞を遺伝子改変し、次いで、本明細書中で提供する方法において使用し得る。一部の場合では、疾患または障害を引き起こす遺伝子突然変異または複数の突然変異を保有する、幹細胞株などの幹細胞を遺伝子改変して、突然変異を矯正し、それによって対象が経験する疾患または障害を軽減させることができる。遺伝子改変は当技術分野で公知の任意の方法によって達成し得る。
一部の例では、細胞(たとえば、血液細胞、皮膚細胞)を、対象の筋組織に影響を与える遺伝子疾患または障害(たとえば、筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症など)を有する対象から得る。次いで、細胞を、それらが多能性幹細胞または多分化能幹細胞となることを可能にする条件に供し得る。たとえば、細胞は脱分化を受け、誘導多能性幹細胞、特に誘導多能性幹細胞株となり得る。多能性幹細胞(または細胞株)を遺伝子改変して突然変異を矯正し得る。たとえば、対象はジストロフィン(DMD)遺伝子中に1種または複数種の突然変異を有する場合があり、対象に由来する幹細胞を遺伝子改変して、そのような突然変異またはそのような突然変異の一部分を矯正し得る。改変した多能性幹細胞は、本明細書中に記載の方法を使用して衛星様細胞または衛星細胞へと分化させ得る。次いで、障害の一部の側面を処置または寛解させるために、改変した衛星様細胞または衛星細胞を、遺伝子疾患または障害を有する対象内に導入し得る。
III.多能性幹細胞の培養
多能性幹細胞を生じさせたまたは得た後、多能性幹細胞(たとえば、ESC、iPSC)を拡大することができる。たとえば、多能性幹細胞は任意の適切な培地中で培養および拡大し得る。多能性幹細胞は、フィーダー細胞の存在下で培養することができる。たとえば、細胞は、ネズミまたはヒトの胚性線維芽細胞(たとえば、照射したまたはマイトマイシンで処置した胚性線維芽細胞)の層またはカーペット上で培養し得る。多能性幹細胞は、フィーダーを含まない培地中で培養することができる。そのような培地は、精製した構成成分を公知の量で加える、定義された内容物を有し得る。そのような培地は、他の細胞の存在下で馴化した培地などの、完全に定義されていない内容物を有していてよく、この場合、そのような細胞は除去するが、それらに由来するポリペプチドおよび他の分子が培地中に残っている。
多能性幹細胞は、組織培養グレードのプラスチック上に直接プレーティングおよび培養することができる。あるいは、細胞は、コーティングした基質、たとえば、フィブロネクチン、ゼラチン、matrigel(商標)(BD Bioscience)、細胞外マトリックス、コラーゲン、またはラミニン、およびそれらの組合せでコーティングした基質上にプレーティングおよび培養することができる。プレートをコーティングするために使用する物質の濃度は、約5μg/ml、10μg/ml、20μg/ml、40μg/ml、60μg/ml、80μg/ml、100μg/ml、もしくは200μg/ml、または1mg/ml、または適切な他の濃度であってよい。一部の場合では、多能性幹細胞を細胞外マトリックスでコーティングした基質上で成長させることは、衛星様細胞集団への分化の効率を増加させ得る。一部の場合では、未処理のペトリ皿を使用し得る。一部の場合では、多能性幹細胞は、以下の物質のうちの1つまたは複数でコーティングしたプレート上で成長させ得る:コラーゲン、たとえば、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、VI型コラーゲン、VII型コラーゲン、VIII型コラーゲン、IX型コラーゲン、X型コラーゲン、XI型コラーゲン、XII型コラーゲン、XIII型コラーゲン、XIV型コラーゲン、XV型コラーゲン、XVI型コラーゲン、XVII型コラーゲン、XVIII型コラーゲン、XIX型コラーゲン、XX型コラーゲン、XXI型コラーゲン、XXII型コラーゲン、XXIII型コラーゲン、XXIV型コラーゲン、XXV型コラーゲン、XXVI型コラーゲン、XXVII型コラーゲン、またはXXVIII型コラーゲン。一部の例では、多能性幹細胞は、ラミニン、たとえば、ラミニン-111、ラミニン-211、ラミニン-121、ラミニン-221、ラミニン-332/ラミニン-3A32、ラミニン-3B32、ラミニン-311/ラミニン-3A11、ラミニン-321/ラミニン-3A21、ラミニン-411、ラミニン-421、ラミニン-511、ラミニン-521、ラミニン-213、ラミニン-423、ラミニン-522、ラミニン-523、またはそれらの組合せでコーティングしたプレート上で成長させ得る。一部の場合では、多能性幹細胞は、コラーゲン-I、ラミニン-111、ラミニン-211、またはラミニン-521でコーティングしたプレート上で成長させる。
適切な細胞培養容器には、たとえば、35mm、60mm、100mm、および150mmの細胞培養皿、6ウェル、12ウェル、96ウェル、384ウェル、1536ウェルの細胞培養プレート、マイクロタイタープレート、および他の大きさが等価な細胞培養容器が含まれる。
多能性幹細胞は、アポトーシスを低下させるために、rho、またはrho関連プロテインキナーゼ(ROCK)阻害剤の存在下で維持し得る。ROCK阻害剤は、細胞を酵素処理などの過酷な処理に供する場合に特に有用であり得る。たとえば、GSK429286A(Selleckchem、水溶性)、Y-27632(Calbiochem、水溶性)、またはファスジル(HA1077、Calbiochem)の添加を使用して、本開示の多能性幹細胞を培養し得る。一部の場合では、GSK429286A、Y-27632、またはファスジルの濃度は、約100nM、500nM、1μM、2.5μM、5μM、10μM、15μM、または20μMである。
多能性幹細胞は、特定の血清構成成分を添加した培地中で培養し得る。一部の実施形態では、血清は、ウシ胎児血清(FBS)、ヒト血清アルブミン、ウマ血清、PLT-Maxヒト血小板抽出物、ウシ血清アルブミン、またはノックアウト血清交換である。血清構成成分の混合物、たとえば、FBSとウマ血清、ノックアウト血清交換とウシ血清アルブミン、FBSとウシ血清アルブミン(BSA)との混合物もまた、使用し得る。
多能性幹細胞を培養するために使用し得る一部の代表的な培地には、これらだけには限定されないが、霊長類ES培地(Primate ES medium)(ReproCELL、日本)、TeSR(商標)(STEMCELL technologies)、StemPro hESC SFM(商標)、hESF9、MC-ES、胚性幹細胞(ES)培地、MEF馴化ES(MC-ES)、M2培養培地(Genea Biocellsにより製造)、または10%のFBSを添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)が含まれる。
hESF9は、ヘパリンならびに4つのタンパク質構成成分、すなわちインスリン、トランスフェリン、オレイン酸とコンジュゲートしたアルブミン、および線維芽細胞増殖因子-2(FGF-2)(10ng/ml)を添加したhESF基本培地を含み得る。さらに、ES培地は、40%のダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、40%のF12培地、2mMのL-グルタミン、1×非必須アミノ酸(Sigma,Inc.、St.Louis、MO)、20%のKnockout Serum Replacement(商標)(Invitrogen,Inc.、Carlsbad、CA)、および10μg/mlのゲンタマイシンを含み得る。
MS-ES培地は以下のように調製し得る。ES培地を、マイトマイシンCで処置したネズミ胚性線維芽細胞(MEF)上で20~24時間馴化し、回収し、0.45μMフィルターを通して濾過し、約0.1mMのB-メルカプトエタノール、約10ng/mlのbFGFまたはFGF-2、および任意選択で約10ng/mlのアクチビンAを添加した。一部の場合では、マイトマイシンCで処置したMEFの代わりに照射したMEFを使用する。他の場合では、MEFの代わりにSTO(ATCC)マウス細胞株またはヒト繊維芽細胞を使用する。
一部の場合では、多能性幹細胞を低密度でプレーティング(または培養)してよく、これは、細胞を約1:8~約1:3、たとえば、約1:8、約1:6、約1:5、約1:4、または約1:3で分割することによって達成し得る。細胞を約103個の細胞/cm2~約104個の細胞/cm2の密度でプレーティングし得る。一部の例では、細胞を、約1.5x103細胞/cm2~約104細胞/cm2;約2x103細胞/cm2~約104細胞/cm2;約3x103細胞/cm2、約104細胞/cm2約4x103細胞/cm2~約104細胞/cm2;または約103細胞/cm2~約9x103細胞/cm2の密度でプレーティングし得る。一部の実施形態では、細胞を、104細胞/cm2、例えば、約1.25x104細胞/cm2~約3x104細胞/cm2を超える密度でプレーティングし得る。
多能性幹細胞は、維持培養培地中、37℃、5%のCO2インキュベーター(たとえば大気中酸素レベル下)中で培養し得る。あるいは、多能性幹細胞は、維持培養培地中、37℃、5%のCO2、5%のO2インキュベーター(たとえば低酸素の条件下)中で、好ましくは毎日または隔日の培地交換を用いて培養し得る。一部の実施形態では、未分化の幹細胞から誘導した多能性幹細胞を培養および成長させるために、細胞を、5~7日毎に、本明細書中に記載の添加剤を含有する培養培地中、マウス胚性線維芽細胞で覆ったプラスチック培養皿またはmatrigelをコーティングしたプラスチック培養皿上で継代培養することが好ましい。誘導細胞のための維持培養培地の例には、任意かつすべての完全ES細胞培地(たとえばMC-ES)が含まれる。維持培養培地にはb-FGFまたはFGF2を添加し得る。一部の場合では、維持培養培地に、他の因子、たとえば、IGF-II、アクチビンA、または本明細書中に記載の他の増殖因子を添加する。たとえばBendallら、(2007年)、Nature、30:448巻(7157号):1015~21頁を参照されたい。一部の実施形態では、誘導細胞を、約14日間~約40日間の間、たとえば、15、16、17、18、19、20、23、24、27、28、29、30、31、33、34、35、36、37、38日間、または約14日間~約40日間のうちの他の期間の間、培養および観察した後、形態学的特徴に基づいて候補の多分化能または多能性幹細胞のコロニーを同定および選択する。
一部の場合では、多能性幹細胞を約1日間、2日間、3日間、4.5日間、5日間、6.5日間、7日間、8日間、9日間、10日間、または任意の他の日数の間、培養してよく、その後、本明細書中に記載の分化方法に供する。他の場合では、細胞を12日間より長く、たとえば、約12日間~約20日間、約12日間~約30日間、または約12日間~約40日間の間、培養し得る。一部の場合では、細胞を無期限に培養し得る。一部の場合では、細胞のアリコートを凍結し、のちに凍結したアリコートから培養物を再開することができる。
多能性幹細胞は、分化の前に複数回(たとえば、1回より多く、5回より多く、または10回より多く)継代培養し得る。継代培養は、細胞のアリコートを新鮮な培地に入れることによって達成することができる。そのようなアリコートは、細胞の一部分、たとえば、細胞の2分の1、細胞の3分の1、細胞の4分の1、細胞の10分の1、またはさらには単一細胞であってよい。そのようなアリコートは、細胞の凍結ストックからのものであってよい。単一細胞から培養物を開始するためには、多くの場合は細胞を解離させることが必要である。細胞を解離させる1つの手段は、プロテアーゼ(たとえば、トリプシン、キモトリプシンなど)を用いた処理によるものである。
分化の前に、培養した多能性幹細胞を単一細胞へと解離することができる。この解離は、これらをトリプシンまたはキモトリプシンなどのプロテアーゼと共にインキュベートすることによって達成することができる。一部の場合では、分化の前に培養した多能性幹細胞を単一細胞へと解離しない。
一部の場合には、多能性幹細胞を、約12℃、14℃、16℃、18℃、20℃、22℃、24℃、26℃、28℃、30℃、32℃、34℃、36℃、37℃、38℃、40℃、42℃または44℃の温度で培養し得る。一部の場合には、多能性幹細胞を、約<1%、<2%、<3%、<4%、<5%、<6%、<7%、<8%、<9%または<10%のCO2および約<1%、<2%、<3%、<4%、<5%、<6%、<7%、<8%、<9%、<10%または<20%のO2で培養し得る。
IV.分化過程
A.概要
分化過程中、あまり特殊化されていない細胞が、より特殊化された細胞型となる。分化は、細胞の大きさ、形状、および/または機能的能力などの、細胞の態様に影響を与え得る。これらの変化は、遺伝子発現の制御された改変が大きな原因である。分化の一例では、多能性幹細胞は衛星細胞または衛星様細胞へと分化する。次いで、分化した衛星細胞または衛星様細胞を、衛星細胞または衛星様細胞を特徴付けるいくつかの特性(たとえば、形態学的、遺伝子発現)についてスクリーニングする。次いで、これらのスクリーニング基準を満たす分化した衛星細胞または衛星様細胞をサブクローニングおよび拡大し得る。図3は、本開示の実施形態に従った多能性幹細胞から筋管までの分化の4段階の説明図である。図3のパネル310は、免疫蛍光染色によって検出された、多能性のマーカーであるNanogを発現する多能性幹細胞を示す。さらに、図3のパネル320は、多能性幹細胞を、Pax3/Pax7を発現する衛星細胞または衛星様細胞へと化学的に分化させた、分化の第1段階を示す。図3パネル330は、衛星細胞または衛星様細胞を筋芽細胞へと分化させ、これらを筋芽細胞マーカーであるMyoDについて免疫蛍光染色した、分化の第2段階を示す。さらに、図3のパネル340は、筋芽細胞が一緒に結合して、筋管形成のマーカーであるジストロフィンの免疫蛍光染色によって検出される筋管を形成する、分化の第3段階を示す。
B.多能性幹細胞の衛星細胞または衛星様細胞への化学分化
多能性幹細胞を衛星細胞または衛星様細胞へと分化させるために、多能性幹細胞は、凍結ストックまたは成長中の培養物から得られ得る。これらの多能性幹細胞は、基本培地中、衛星細胞または衛星様細胞への分化を誘導する化合物の存在下、1ステップ過程で培養することができ、これは、複数回の培地変更を含んでいてもいなくてもよい。一部の場合では、多能性幹細胞は、基本培地中、衛星細胞または衛星様細胞への分化を誘導する化合物の存在下、様々な化合物の継続的な添加を含む過程など、複数ステップ過程で培養する。一般に、分化を誘導するために1種または複数種の化合物をそれに加えた基本培地は、「分化培地」と呼び得る。
i.分化培地の構成成分
化学分化過程において使用し得る分化培地の例には、基本培地、Wnt活性化剤、およびTGF-β受容体阻害剤を含む培地が含まれ得る。一部の場合では、分化培地には、ROCK阻害剤、血清構成成分、またはそれらの組合せが含まれ得る。一部の場合では、分化培地にはLRRK2阻害剤が含まれ得る。多くの場合、本明細書中で提供する分化培地は増殖因子を含まない。
分化培地の例において使用される基本培地は変動する場合があるが、一般に栄養素が豊満な培地を含む。使用し得る基本培地の例は、MCDB120、骨格筋細胞基本培地(Skeletal Muscle Cell Basal Medium)(Promocellにより製造)、SkBM基本培地(SkBM Basal Medium)(Lonzaにより製造)、SkBM-2基本培地(SkBM-2 Basal Medium)(Lonzaにより製造)、Stem Cell Technologies「APEL培地」(Stem Cell Technologiesにより製造)、またはDMEM/F12である。
さらに、ROCK阻害剤が分化培地中に存在し得る。ROCK阻害剤は低細胞密度でのアポトーシスを低下させ得る。一部の場合では、GSK429286A、Y-27632、またはファスジルなどのROCK阻害剤の濃度は、約100nM、500nM、1μM、2.5μM、5μM、10μM、15μM、20μM、40μM、50μM、60μMまたはそれより多くである。一部の場合では、ROCK阻害剤は、多能性幹細胞から衛星様細胞への分化過程の間、連続的に存在する。一部の場合では、ROCK阻害剤は、源を発する多能性幹細胞から衛星様細胞への分化過程の実質的な部分の間(たとえば、1日間より長く、2日間より長く、3日間より長く、4日間より長く、5日間より長く、10日間より長く、または15日間より長く)存在する。
基本培地は、上述した培地、または上述したものに類似の培地を、追加の血清様構成成分と共にさらに含み得る。そのような血清様構成成分には、BSA、線維芽細胞増殖因子(FGF)、インスリン、フェツイン、表皮増殖因子(EGF)、ウマ血清、ノックアウト交換血清、デキサメタゾン、またはそれらの組合せを含めることができる。
BSAは、一部の例では、少なくとも約0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%または最大で約0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%の最終濃度で存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間BSAと接触させることができる。
FGF(または他の増殖因子)は、一部の例では、少なくとも約0.5ng/ml、1ng/ml、1.5ng/ml、2ng/ml、2.5ng/ml、3ng/ml、3.5ng/ml、4ng/ml、4.5ng/ml、5ng/ml、6ng/ml、7ng/ml、8ng/ml、9ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/mlまたは25ng/mlの最終濃度で存在し得る。一部の場合には、FGFは、最大で約0.5ng/ml、1ng/ml、1.5ng/ml、2ng/ml、2.5ng/ml、3ng/ml、3.5ng/ml、4ng/ml、4.5ng/ml、5ng/ml、6ng/ml、7ng/ml、8ng/ml、9ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/mlまたは25ng/mlの濃度で存在する。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間FGFと接触させることができる。
インスリンは、一部の例では、少なくとも約2μg/ml、3μg/ml、4μg/ml、5μg/ml、6μg/ml、7μg/ml、8μg/ml、9μg/mlまたは10μg/mlの濃度で存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間インスリンと接触させることができる。
一部の場合では、分化培地は、実質的に成長因子を含まない、または任意の増殖因子が存在しない(たとえば、EGF、FGF、FGF2、インスリンなどを含まない)。一部の場合では、分化培地は実質的に無血清の(「xeno-free」)、または非ヒト生物に由来する構成成分が実質的に存在しない。一部の場合では、分化培地は成長因子も含まず、異種物質もない。
フェツインは、一部の例では、10μg/ml、20μg/ml、30μg/ml、40μg/ml、50μg/ml、60μg/ml、70μg/ml、80μg/ml、90μg/mlまたは100μg/mlの最終濃度で存在し得る。EGFを、5ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、および20ng/mlの最終濃度で添加し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間フェツインと接触させることができる。
ウマ血清は、一部の例では、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%の最終濃度で存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間ウマ血清と接触させることができる。
ノックアウト交換血清は、一部の例では、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%の最終濃度で存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間ノックアウト交換血清と接触させることができる。
デキサメタゾンは、一部の例では、約0.1μg/mlおよび1μg/ml、例えば、0.1μg/ml、0.2μg/ml、0.3μg/ml、0.4μg/ml、0.5μg/ml、0.6μg/ml、0.7μg/ml、0.8μg/ml、0.9μg/mlまたは1μg/mlの最終濃度で存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間デキサメタゾンと接触させることができる。
基本培地、ならびに任意選択でROCK阻害剤および/または血清構成成分に加えて、分化培地には、多能性幹細胞(または多分化能幹細胞などの他の種類の幹細胞)の衛星細胞または衛星様細胞への分化に寄与する化合物が含まれ得る。特に、Wnt経路活性化剤およびTGF-β受容体阻害剤(単独または組み合わせて)と曝露させる多能性幹細胞(または他の種類の幹細胞)は、衛星細胞または衛星様細胞へと分化し得る。さらに、この方法を使用して生成される衛星細胞または衛星様細胞は、筋芽細胞を形成する能力を有し得る。
一部の場合では、多能性幹細胞の衛星細胞または衛星様細胞への分化のための分化培地中に存在する化合物はWnt経路活性化剤である。そのような活性化剤には、CHIR99021、QS11、IQ1、バルプロ酸(VPA)、またはデオキシコール酸(DCA)を含めることができる。特に、Wnt経路活性化剤の使用は、GSK阻害剤(たとえばGSK3-β阻害剤)として作用し得る。
Wnt経路活性化剤CHIR99021は、一部の例では、約0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.2μM 0.5μM、0.7μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、12.5μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μMまたは50μMあるいはより高い濃度で分化培地中に存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間Wnt経路活性化剤CHIR99021と接触させることができる。
Wnt経路活性化剤AZD1080は、一部の例では、約0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.2μM 0.5μM、0.7μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、12.5μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μMまたは50μMあるいはより高い濃度で分化培地中に存在し得る。一部の例では、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間AZD1080と接触させることができる。
Wnt経路活性化剤QS11は、一部の例では、約0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.2μM 0.5μM、0.7μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、12.5μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μMまたは50μMあるいはより高い濃度で分化培地中に存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間QS11と接触させることができる。
Wnt経路活性化剤IQ1は、一部の例では、約1μg/ml、2μg/ml、3μg/ml、4μg/ml、5μg/ml、6μg/ml、7μg/ml、8μg/ml、9μg/ml、10μg/ml、11μg/ml、12μg/ml、13μg/ml、14μg/ml、15μg/ml、16μg/ml、17μg/ml、18μg/ml、19μg/mlまたは20μg/mlあるいはより高い範囲の濃度で分化培地中に存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間IQ1と接触させることができる。
VPAは、一部の例では、0.005μM、0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.5μM、1μM、2μM、2.5μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、12.5μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μMあるいはより高い濃度で分化培地中に存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間VPAと接触させることができる。
Wnt経路活性化剤DCAは、一部の例では、約0.1μM、0.5μM、1μM、5μM、10μM、15μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μM、45μM、50μM、55μM、60μM、65μM、70μM、75μM、80μM、85μM、90μM、95μMまたは100μMあるいはより高い濃度で分化培地中に存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間DCAと接触させることができる。
一部の場合では、TGF-β受容体阻害剤は、単独で、またはWnt経路活性化剤などの別の化学薬品と組み合わせて、分化培地中に存在する。TGF-β受容体阻害剤は、一般に、TGF-β受容体シグナル伝達経路の少なくとも一部分を阻害する能力を有する。一部の場合では、TGF-β受容体阻害剤はI型TGF-β受容体シグナル伝達経路の少なくとも一部分を阻害し得る。一部の場合では、TGF-β受容体阻害剤はII型TGF-β受容体シグナル伝達経路を阻害し得る。TGF-β受容体阻害剤の例には、Alk5阻害剤(単数または複数)、SB431542、およびA83-01を含めることができる。特に、TGF-β受容体阻害剤の使用は、Alk5阻害剤などのAlk阻害剤として作用し得る。
TGF-β受容体阻害剤(例えば、Alk5阻害剤)は、一部の例では、約0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.2μM 0.5μM、0.7μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、12.5μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μMまたは50μMあるいはより高い濃度で分化培地中に存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間TGF-β受容体阻害剤(例えば、Alk5阻害剤)と接触させることができる。
SB431542は、一部の例では、約0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.2μM 0.5μM、0.7μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、12.5μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μMまたは50μMあるいはより高い濃度で分化培地中に存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間SB431542と接触させることができる。
A83-01は、一部の例では、約0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.2μM 0.5μM、0.7μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、12.5μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μMまたは50μMあるいはより高い濃度で分化培地中に存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間A83-01と接触させることができる。
Wnt経路活性化剤およびTGF-β受容体阻害剤の存在に加えて、シグナル伝達分子がさらに存在し得る。そのようなシグナル伝達分子には、トランスフェリン、アスコルビン酸、XAV939、VEGF、FGF、BIX01294、IGF-1、noggin、クレアチン、PD169316、SMOアンタゴニスト(単数または複数)、ウマ血清、または酪酸ナトリウムを含めることができる。
トランスフェリンは、一部の例では、約10μg/mL、30μg/mL、50μg/mL、70μg/mL、90μg/mL、110μg/mL、130μg/mL、150μg/mL、170μg/mL、190μg/mL、210μg/mL、230μg/mL、250μg/mL、270μg/mLまたは300μg/mLあるいはより高い濃度で細胞培養物中に存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間トランスフェリンと接触させることができる。
アスコルビン酸は、一部の例では、約10μM、30μM、50μM、70μM、90μM、110μM、130μM、150μM、170μM、190μM、210μM、230μM、250μM、270μMまたは290μM、310μM、330μM、350μM、370μMまたは400μMあるいはより高い濃度で分化培地中に存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間アスコルビン酸と接触させることができる。
XAV939は、一部の例では、約0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.2μM 0.5μM、0.7μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、12.5μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μMまたは50μMあるいはより高い濃度で分化培地中に存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間XAV939と接触させることができる。
VEGFは、一部の例では、5ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35ng/ml、40ng/ml、45ng/mlまたは50ng/mlの濃度で分化培地中に存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間VEGFと接触させることができる。
線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリーメンバー(例えば、FGF、FGF1、FGF2、FGF3など)は、一部の例では、約1ng/ml、5ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35ng/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、100ng/ml、250ng/mlまたは500ng/mlあるいはより高い濃度で分化培地中に存在し得る。細胞を、一部の例では、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間FGFと接触させることができる。
ヒストンメチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、BIX01294)は、一部の例では、約0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.2μM 0.5μM、0.7μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、12.5μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μMまたは50μMあるいはより高い濃度で分化培地中に存在し得る。細胞を、一部の例では、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間BIX01294と接触させることができる。
IGF-1は、一部の例では、0.5ng/ml、1ng/ml、5ng/ml、10ng/ml、15ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、35ng/ml、40ng/ml、45ng/mlまたは50ng/mlの濃度で分化培地中に存在し得る。細胞を、一部の例では、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間FGFと接触させることができる。
nogginは、一部の例では、10ng/ml、30ng/ml、50ng/ml、70ng/ml、90ng/ml、110ng/ml、130ng/ml、150ng/ml、170ng/mlまたは190ng/ml、210ng/ml、230ng/mlまたは250ng/mlの濃度で分化培地中に存在し得る。細胞を、一部の例では、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間nogginと接触させることができる。
クレアチンは、一部の例では、約0.1mM、0.5mM、1mM、2mM、5mM、10mM、20mM、50mMまたはより高い濃度で分化培地中に存在し得る。細胞を、一部の場合には、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間クレアチンと接触させることができる。
PD169316は、一部の例では、約0.001μM、0.005μM、0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.2μM 0.5μM、0.7μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、12.5μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μMまたは50μMの濃度で分化培地中に存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間PD169316と接触させることができる。
SMOアンタゴニストは、一部の例では、約0.001μM、0.005μM、0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.2μM 0.5μM、0.7μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、12.5μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μMまたは50μMあるいはより高い濃度で分化培地中に存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間SMOアンタゴニストと接触させることができる。
ウマ血清は、一部の例では、約0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%あるいはより高い濃度で分化培地中に存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間ウマ血清と接触させることができる。
酪酸ナトリウムは、一部の例では、約0.1μM、0.5μM、1μM、2μM、5μM、10μM、30μM、50μM、70μM、90μM、110μM、130μM、150μM、170μM、190μM、210μM、230μM、250μM、270μMまたは290μM、310μM、330μM、350μM、370μMまたは400μMあるいはより高い濃度で分化培地中に存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日より長く、8日より長くまたは9日より長くの間酪酸ナトリウムと接触させることができる。
一部の場合には、Alk5阻害剤は、2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,5-ナフチリジンを含むことができ、これは、一部の例では、0.01μM、0.05μM、0.1μM、0.5μM、1μM、2μM、2.5μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、12.5μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、25μM、30μM、35μM、40μMまたは50μMあるいはより高い濃度で存在し得る。1つの特定の実施形態では、Alk5阻害剤2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,5-ナフチリジンの濃度は、2μMまたは約2μMである。
一部の場合では、多能性幹細胞の衛星細胞または衛星様細胞への分化のための分化培地中に存在する化合物はロイシンリッチ反復キナーゼ2(LRRK2)阻害剤である。そのような阻害剤には、これらだけには限定されないが、LRRK2-IN-1、CZC54252、GSK2578215A、GNE-0877、GNE-7915、GNE-9605、およびPF06447475を含めることができる。
一部の例では、LRRK2阻害剤は、LRRK2-IN-1である。LRRK2-IN-1は、約1nM、5nM、10nM、20nM、30nM、40nM、50nM、60nM、70nM、80nM、90nM、100nM、200nM、300nM、400nM、500nM、600nM、700nM、800nM、900nM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、10μM、20μM、30μM、40μM、50μM、60μM、70μM、80μM、90μM、100μMまたは100μMより高い濃度で分化培地中に存在し得る。一部の場合には、細胞を、1日より長く、2日より長く、3日より長く、4日より長く、5日より長く、6日より長く、7日、8日より長くまたは9日より長くの間LRRK2-IN-1と接触させることができる。
ii.多能性幹細胞の分化培地への曝露
多能性幹細胞(または他の種類の幹細胞)を1種または複数種の分化培地と接触させることによって、多能性幹細胞(または他の種類の幹細胞)を衛星細胞または衛星様細胞へと分化させ得る。本明細書中で提供する方法には、単一の薬剤、または同時に提供する薬剤の単一の組合せが分化経路を始動させる、多能性幹細胞(または他の幹細胞)を分化させる1ステップ方法が含まれる。一部の場合では、本方法は、多能性幹細胞が核酸を発現するように、核酸を多能性幹細胞内に導入すること(たとえば、トランスフェクション、形質導入、ウイルス形質導入、電気穿孔(eletroporation)などによる)を含み得る。一部の場合では、本方法は、核酸が細胞によって発現され、多能性幹細胞の衛星細胞または衛星様細胞への分化を引き起こすまたはそれに寄与するように、核酸を多能性幹細胞内に導入することを含まない、または核酸を多能性幹細胞内にトランスフェクトすることを含まない、または核酸を多能性幹細胞内に電気穿孔することを含まない、または核酸を多能性幹細胞内に形質導入すること(たとえばウイルスベクターによる)を含まない。一部の場合では、本方法は、筋原タンパク質を多能性幹細胞に導入することを含む。一部の場合では、本方法は、筋原タンパク質を多能性幹細胞に導入することを含まない。
図4は、多能性幹細胞を衛星細胞または衛星様細胞へと分化させる例を例示する。多能性幹細胞(410)は、本明細書中に記載のように、または当技術分野で公知の任意の方法によって、たとえば単一細胞として適切な培養培地中にプレーティングすることによって、プレーティングおよび培養することができる。一部の場合では、多能性幹細胞を単一ステップで分化培地(420)と接触させ、それによって多能性幹細胞の衛星細胞もしくは衛星様細胞への分化を引き起こす、または他の様式で衛星細胞または衛星様細胞を生じる。
一般に、単一ステップの接触は、多能性幹細胞を、細胞に提供する単一の分化培地と、一度に、または連続的かつ経時的に接触させることを含み得る(たとえば培地変更による)。一部の場合では、単一ステップの接触は、多能性幹細胞を、細胞に提供する単一の分化培地と、様々な濃度で経時的に接触させることを含み得る(たとえば、分化培地の濃度の変更を含む培地変更)。一部の実施形態では、単一の分化培地中に存在する構成成分は、多能性幹細胞の衛星細胞または衛星様細胞(たとえば、天然に存在する衛星細胞の特徴に類似した、機能的、構造的、形態学的、または発現マーカーの特徴を有する細胞)への分化を引き起こすために十分である。一部の実施形態では、単一の分化培地中に存在する構成成分は、衛星細胞または衛星様細胞を多能性幹細胞から生じさせるために十分である。一部の場合では、単一の分化培地中に存在する構成成分は、細胞が構成成分に連続的に曝露されている場合に(たとえば1回または複数回の培地変更による)、多能性幹細胞の衛星細胞または衛星様細胞への分化を引き起こすために十分である。一部の場合では、多能性幹細胞を単一の分化培地と接触させることは、細胞を分化培地と連続的に接触させることを含む。他の場合では、多能性幹細胞を単一の分化培地と接触させることは、細胞を分化培地と散発的または連続的に接触させることを含む。
一部の場合では、本明細書中で提供する培地内の構成成分または構成成分の組は、1種または複数種の多能性幹細胞からの衛星細胞または衛星様細胞の発生を直接引き起こす能力を有し得る。たとえば、一部の場合では、Wnt経路活性化剤およびTGF-β受容体阻害剤は、一緒になって、追加の分化剤の添加なしで多能性幹細胞からの衛星細胞または衛星様細胞の発生を引き起こす能力を有し得る。
一部の場合では、接触は、多能性幹細胞を2つまたはそれ超の異なる分化培地と接触させることを含む。2つまたはそれ超の異なる分化培地は異なる構成成分を含み得る。一部の場合では、2つまたはそれ超の異なる分化培地は、2つもしくはそれ超、3つもしくはそれ超、4つもしくはそれ超、5つもしくはそれ超、6つもしくはそれ超、7つもしくはそれ超、8つもしくはそれ超、9つもしくはそれ超、または10個もしくはそれ超の異なる分化培地である。
一部の場合には、多能性幹細胞を、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも21日または少なくとも28日の間1つまたはそれ超の分化培地(培地交換ありまたはなしで)と接触または曝露させ得る。一部の場合には、多能性幹細胞を、最大で1日、最大で2日、最大で3日、最大で4日、最大で5日、最大で6日、最大で7日、最大で8日、最大で9日、最大で10日、最大で11日、最大で12日、最大で13日、最大で14日、最大で21日または最大で28日の間1つまたはそれ超の分化培地(培地交換ありまたはなしで)と接触させ得る。一部の場合には、多能性幹細胞を、約12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、21日、28日、30日、35日、40日、45日、50日、55日、60日、65日または70日の間分化培地と接触または曝露させる。
1種または複数種の多能性幹細胞は、分化培地の化合物によって同時に接触され得る、たとえば、重複するタイムフレーム中に2つまたはそれ超の化合物を多能性幹細胞に投与する。たとえば、多能性幹細胞を1~3日目に1つの化合物と接触させ、2~5日目に第2の化合物と接触させ得る。一部の場合では、1種または複数種の多能性幹細胞は、分化培地の化合物によって同時に接触され得る。たとえば、多能性幹細胞を同じタイムフレーム中に2つの化合物と接触させ得る(たとえば、1~3日目に2つの化合物と接触させる)。一部の場合では、多能性幹細胞を分化培地の2つまたはそれ超の化合物と連続的または順次に接触させる。たとえば、多能性幹細胞を1~3日目に1つの化合物と接触させ、4~6日目に第2の化合物と接触させ得る。
分化培地の構成成分は単一ステップで添加することができる。培地の構成成分は順次添加することができる。さらに、分化培地の構成成分は同時に添加することができる。分化培地の構成成分はまた、細胞を1つの構成成分と一定期間接触させた後、第2の構成成分を施用することによって、重複した様式で添加することもできる。培地の構成成分はまた、個々にまたは混合物中で細胞に添加することができる。これらの添加は、単一の培地組成への曝露が原因で分化が起こるように、過程全体にわたって培地の組成を変更せずに行うことができる。
本明細書中で言及するように、分化培地(単数または複数)は時間とともに変更または交換し得る。一部の場合では、分化培地を変更、追加、または置き換える。多くの場合、これらの培地交換の全体にわたって、分化培地の組成は多能性幹細胞から衛星細胞または衛星様細胞への分化の全体にわたって安定して保たれる。一部の場合では、分化培地の組成を変動させる。培地変更は、定期的に、たとえば、6時間毎、12時間毎、毎日、隔日、3日毎、4日毎、または5日毎に行うことができる。一部の場合では、分化培地(単数または複数)は、多能性幹細胞を衛星細胞または衛星様細胞へと分化させる過程中に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または15回変更する。培地はまた、ケモスタット培養などのように、連続的に添加および除去することもできる。
多能性幹細胞は分化培地に連続的に曝露させることができる。多能性幹細胞は、分化培地に一定期間曝露させた後、維持培地に戻すことができる。さらに、分化は、特定の期間(たとえば、3日間、5日間、7日間、10日間、もしくは15日間)の間、または所定の遺伝子もしくは形態学的マーカーが検出されるまで続けることができる。
iii.分化培地を使用して衛星細胞および衛星様細胞を生成する方法の収率、効率、および他の有益な特長
本明細書中で提供する方法は、高い衛星細胞または衛星様細胞の収率をもたらし得る、および/または高い効率を有し得る。たとえば、in vitro培養物中の複数の多能性幹細胞を、本明細書中に記載の分化培地を使用して分化させた場合、前記複数の多能性幹細胞から分化させた細胞の40%を超えるものがPax3、Pax7、および/またはCD56を発現し得る一部の場合には、前記複数の多能性幹細胞から分化させた細胞の20%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%を超えるものが、Pax3、Pax7および/またはCD56を発現し得る。一部の場合には、前記複数の多能性幹細胞から分化させた細胞の20%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%を超えるものが、筋芽細胞に分化することができる。一部の場合には、前記複数の多能性幹細胞から分化させた細胞の20%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%を超えるものが、機能的な筋芽細胞に分化することができる。
一部の場合では、本明細書中で提供する方法を行うことによって衛星細胞または衛星様細胞を複数の多能性幹細胞から発生させるための時間(または期間)は、数日から数週間の単位であり得る。一部の場合には、多能性幹細胞から衛星細胞または衛星様細胞までの期間は、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日または約20日であり得る。期間は、分化を開始した(たとえば多能性幹細胞を分化培地中にプレーティングした)時点から、多能性幹細胞の大多数が衛星細胞または衛星様細胞へと分化した時点、たとえば、培養物中の多能性幹細胞の少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%が衛星細胞または衛星様細胞へと分化した時点までとして計算し得る。
一部の場合には、本明細書において提供される方法を実施することによる多能性幹細胞の筋芽細胞への分化の期間は、数日~数週間の単位であり得る。例えば、本明細書において提供される方法を実施することによる多能性幹細胞の筋芽細胞への分化の期間は、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20日、約21日、約22日、約23日、約24日、約25日、約26日、約27日、約28日、約29日または約30日であり得る。期間は、分化を開始した(たとえば多能性幹細胞を分化培地中にプレーティングした)時点から、多能性幹細胞の大多数が筋芽細胞へと分化した時点、たとえば、培養物中の多能性幹細胞の少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%が筋芽細胞へと分化した時点までとして計算し得る。
In vitro培養物中で提供する多能性幹細胞を、1つの化合物、または2つもしくはそれ超の化合物と同時に接触させてよく、それによって、前記ヒト多能性幹細胞を、Pax3、Pax7、および/またはCD56(たとえば、Pax3/CD56、Pax7/CD56、Pax3/Pax7/CD56)を発現する細胞へと分化させる。特に、Pax3、Pax7、および/またはCD56を発現する細胞は、Pax3、Pax7、および/またはCD56を発現する5つより多くの細胞が、特定の期間(たとえば9日間)内に前記多能性幹細胞から発生するような収率で、筋芽細胞を形成する潜在性を有し得る。したがって、多能性幹細胞を培養物中の集団として成長させた場合、培養物は、多能性幹細胞の最初の数に対して少なくとも5:1の比でPax3、Pax7、および/またはCD56を発現する細胞を生成し得る。一部の場合には、比は、少なくとも2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、20:1、50:1または100:1である。一部の場合には、この比は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、70または100日内で達成される。
本明細書中で提供する方法は、高い純度で衛星細胞または衛星様細胞を多能性幹細胞から発生し得る。純度とは、培養物中の全細胞の、Pax3、Pax7、および/またはCD56陽性の百分率(%)または割合をいい得る。純度は分化のそれぞれの段階で評価してよく、たとえば、衛星細胞もしくは衛星様細胞の純度、筋芽細胞の純度および/または筋管の純度を評価することができる。一部の場合には、本明細書において提供されるとおりの分化方法を実施した後の培養物における衛星細胞もしくは衛星様細胞の純度は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%である。一部の場合には、本明細書において提供されるとおりの分化方法を実施した後の培養物における筋芽細胞の純度は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%である。一部の場合には、本明細書において提供されるとおりの分化方法を実施した後の培養物における筋管の純度は、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%である。一部の場合には、純度は、1つまたは複数の精製または濃縮ステップ、例えば、1つまたは複数のソーティングステップ(例えば、フローサイトメトリー)を最初に実施することなく得られる。一部の場合には、複数の衛星細胞もしくは衛星様細胞、筋芽細胞または筋管の純度は、1つまたは複数の精製または濃縮ステップ、例えば、1つまたは複数のソーティングステップ(例えば、フローサイトメトリー)を実施することなく少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%である。
一部の場合では、本開示の分化方法を行った後の細胞集団は、神経細胞または神経前駆細胞を実質的に含まない。例えば、本明細書において提供されるとおりの分化方法を実施した後の細胞の集団は、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%または40%以下の神経細胞または神経前駆細胞を含む。
分化後、衛星細胞または衛星様細胞は、記載した基本培地のうちの任意のものなどの、筋形成培養に適切な任意の培地中で維持することができる。衛星様細胞は、分化を誘導するために使用した化合物を含有する培地中で維持することができる。生じる衛星細胞または衛星様細胞は直接使用することができる。生じる衛星細胞または衛星様細胞は、さらなる倍加、2回の倍加、3回の倍加、4回の倍加、5回の倍加、もしくは6回の倍加、8回の倍加、10回の倍加、12回の倍加、14回の倍加、16回の倍加、18回の倍加、20回の倍加、22回の倍加、24回の倍加、26回の倍加、28回の倍加、または30回の倍加のために、培養物中で拡大することができる。
C.HLAヌル多能性幹細胞の衛星細胞または衛星様細胞への分化
本明細書中に記載のHLAヌル衛星細胞または衛星様細胞は、より分化していない細胞(たとえば、多能性幹細胞、多分化能幹細胞、筋肉系列に制限された前駆細胞)から化学分化によって、衛星細胞もしくは衛星様細胞に関連する遺伝子マーカーの強制発現によって、または当技術分野で公知の任意の他の分化過程によって生成させ得る。強制発現は、タンパク質をコードする発現ベクターの細胞内への導入、組換えウイルスを用いた細胞の形質導入、目的の外来性の精製ポリペプチドの細胞内への導入、目的のポリペプチドをコードする外来性の精製mRNAの細胞内への導入、細胞と目的のマーカー(たとえば、Pax3、Pax7、もしくはCD56)の発現を誘導する試薬(たとえば天然に存在しない試薬)との接触、または目的のポリペプチドをコードする遺伝子の発現を誘導するための任意の他の生物学的、化学的、もしくは物理的過程によって達成することができる。
一部の例では、HLAヌル多能性幹細胞を、本明細書中に記載の化学分化方法によって分化させることができる。さらに、HLAヌル多能性幹細胞を、トランスフェクションを含む培養条件下で衛星細胞または衛星様細胞へと分化させ得る。
HLAヌル多能性幹細胞は、HLAヌル多能性幹細胞のPax3、Pax7、および/またはCD56を発現する細胞への分化を促進する条件下で培養してよく、それによって、Pax3、Pax7、および/またはCD56を発現するHLAヌル細胞が生成される。特に、HLAヌル多能性幹細胞を培養する条件は、前記HLAヌル多能性幹細胞を、前記HLAヌル多能性幹細胞のPax3、Pax7、および/またはCD56を発現する前記細胞への分化を促進する化合物と接触させることを含み得る。
たとえば、HLAヌル多能性幹細胞をHLAヌル骨格筋前駆細胞へと分化させ得る。HLAヌル骨格筋前駆細胞は、Pax3、Pax7、MyoD、MF20、およびCD56のうちの少なくとも1つを発現し得る。HLAヌル骨格筋前駆細胞は筋芽細胞を形成する能力を有し得る。さらに、HLAヌルのヒト多能性幹細胞を、特定の組織の前駆体を形成する能力を有するHLAヌル細胞へと分化させ得る。例には、HLAヌル多能性幹細胞を間葉組織または筋肉系列に特異的な前駆体へと分化させることが含まれ得る。次いで、特定の組織または分化細胞を、それを必要とする対象に提供し得る。さらに、HLAヌルのヒト多能性幹細胞の分化は、単一ステップで起こる分化の方法を使用して分化させ得る。
HLAヌル多能性幹細胞は、分化を誘導するために外来ポリペプチドで処理することができる。たとえば、i)前記細胞を筋原性因子タンパク質で処理すること、ii)前記細胞において前記筋原性因子の発現を誘導すること、またはiii)前記細胞に筋原性因子を発現する能力を有する遺伝子を導入することによって、筋原性因子を幹細胞に提供することができる。一実施形態では、筋原性因子を、細胞に筋原性因子を発現する能力を有する核酸を導入することによって提供する。一実施形態では、筋原性因子はMyoDをコードする核酸である。
さらに、HLAヌル多能性幹細胞は、最初に、アクチビンAを用いた処理などの間葉系幹細胞への分化を促進する条件下で培養することによって、衛星細胞または衛星様細胞へと分化させる。これらの細胞を選別してPDGFRα陽性細胞について高度に濃縮された集団を得ることができ、次いで、これを塩化リチウムで処理して衛星細胞または衛星様細胞への分化を誘導することができる。
V.衛星様細胞の特長および衛星様特長の検出
本明細書中で使用する用語「衛星様細胞」とは、天然に存在する衛星細胞(たとえば、ヒトなどの生物内の衛星細胞)に関連する構造的または機能的特長を保有しているが、衛星様細胞を天然に存在する衛星細胞から区別する少なくとも1つの構造的または機能的特長も保有している、任意の細胞をいう。好ましい実施形態では、衛星様細胞は、(a)幹細胞、好ましくは多能性幹細胞などのより分化していない細胞からin vitroで生成した細胞、または(b)衛星様細胞の増殖から生じた細胞などの、衛星様細胞に由来する細胞である。本明細書中で使用する用語「衛星細胞」とは、天然に存在する衛星細胞または筋衛星細胞によって示される構造的および機能的特長を保有しており、それを区別する少なくとも1つの構造的または機能的特長を保有していてもいなくてもよい細胞をいう。
本明細書中で提供する衛星様細胞は天然に存在する衛星細胞と共通の特長を保有しており、天然に存在する衛星細胞において見つかるもとのとは異なる特徴も保有している。本明細書中で提供する衛星様細胞は、RNAおよび/またはタンパク質レベルで特異的マーカーを発現する。一部の場合では、マーカーは以下のマーカーのうちの1つまたは複数である:Pax3、Pax7、Myf5、あるいはCD56(白血球抗原もしくはLeu-19、または膜結合神経細胞接着分子もしくはN-CAMとも呼ぶことができる)。一部の場合では、マーカーには、筋細胞核因子(MNF)またはc-met原癌遺伝子(肝細胞増殖因子HGFの受容体が含まれる)。好ましい実施形態では、衛星様細胞はPax3、Pax7、およびCD56を発現する。一部の実施形態では、部分的に分化した衛星様細胞は、これらのマーカーのサブセットのみ、たとえばCD56を単独で発現し得る。一部の場合では、衛星様細胞は顕著なレベルのCSPG4を発現しない。一部の場合では、衛星様細胞は、顕著なレベルの筋原性調節因子(MRF)、たとえば、MyoD、Myf5、ミオゲニン、またはMRF4などを発現しない。天然に存在する成人衛星細胞はPax7を発現する一方で、Pax3は主に天然に存在する胚性衛星細胞のマーカーである。
衛星様細胞マーカーは当技術分野で公知の任意の方法によって検出し得る。マーカーの発現は、RT-PCR、RNAシーケンシング、またはmRNA転写物のcDNA補体のシーケンシングによってなど、mRNA転写物の検出によってアッセイすることができる。RNAマーカーの普遍的発現(または複数のマーカーの発現)は、マイクロアレイおよびシーケンシング(たとえば、サンガーシーケンシング、高スループットシーケンシング、次世代シーケンシング、超並列高スループットシーケンシングなど)を含む、当技術分野で公知の任意の技法によって検出することができる。タンパク質マーカーの発現は、免疫蛍光、遺伝子融合産物の生成(たとえば、Pax7-GFPレポーター構築物)、放射標識、免疫沈降、ウエスタンブロット、または当技術分野で公知の任意の他の方法によってアッセイすることができる。プロテオミクス技法(たとえばタンパク質アレイ)もまた、衛星様細胞に関連するタンパク質マーカーを検出するために使用し得る。マーカーの発現は、その活性がマーカーによって制御されている遺伝子の活性化または抑圧を検出することによってなど、マーカーの発現の下流効果をアッセイすることによって間接的に推測することができる。
衛星細胞または衛星様細胞は、その形態学によって同定することができる。衛星様または衛星細胞は、筋芽細胞、線維芽細胞、または上皮細胞と比較して高い核対細胞質の体積比を有し得る。衛星細胞または衛星様細胞は、筋芽細胞、線維芽細胞、または上皮細胞と比較して、いくつかのオルガネラ(たとえば、リボソーム、小胞体、ミトコンドリア、ゴルジ複合体)を有し得る。衛星様細胞は、約170μm2の断面積の核を有し得る。衛星細胞または衛星様細胞は、筋核と比べて大量の核ヘテロクロマチンを有し得る。活性化された衛星細胞または衛星様細胞は、増加したカベオラ数、細胞質オルガネラ、および休止状態の衛星細胞または衛星様細胞と比較して減少したレベルのヘテロクロマチンを有し得る。衛星様細胞または衛星細胞は、筋芽細胞と比較してそれほど細長くなく、それほど紡錘体の形状ではない。
一般に、本明細書中で提供する衛星細胞または衛星様細胞は、筋芽細胞、特に融合して筋管を形成することができる筋芽細胞を形成する能力を有する。この能力は、筋芽細胞または筋管への分化を実証することによってなど、機能的に検出することができる。分化は培養物中で行うことができる。分化は、in vivoで、たとえば、衛星細胞または衛星様細胞を適切な動物対象内に注射し、その分化を追跡することによって行うことができる。
HLAヌル衛星細胞または衛星様細胞では、HLA遺伝子産物が存在しないことは、免疫蛍光、ウエスタンブロット、または任意の公知の方法によって実証することができる。一部の場合では、HLA遺伝子の存在または非存在は、当技術分野で公知の方法、たとえばPCRを使用して評価することができる。
VI.衛星細胞または衛星様細胞の筋芽細胞および筋管への分化
衛星細胞または衛星様細胞は筋芽細胞および機能性筋管へと分化する能力を有し得る。衛星細胞または衛星様細胞は、in vivoで筋芽細胞および筋管へとさらに分化させることができる。このことは、衛星細胞または衛星様細胞を、心臓毒で処置したhu-マウスまたはそれを必要とする適切なヒトレシピエントなどの、適切な対象に投与することによって達成できる。たとえば、それを必要とするヒトレシピエントは筋変性疾患または障害を有する対象であり得る。
一部の例では、衛星細胞または衛星様細胞は、in vitroで筋芽細胞および筋管へとさらに分化させることができる。そのような分化は、IGF-1またはTGF-βなどの増殖因子の施用によって起こり得る。そのような分化は、BIX01294またはSB431542などの小分子の施用によって起こり得る。
VII.適用
本明細書中で提供する衛星細胞または衛星様細胞(HLAヌル多能性幹細胞に由来するHLAヌルの衛星細胞および衛星様細胞を含む)は、細胞を筋変性疾患または障害を有する患者などの対象内に導入することを含む、細胞治療などの多種多様な臨床適用において使用し得る。本明細書中で提供する細胞はまた、薬物スクリーニングならびに正常な発達および生理学ならびに疾患の研究においても有用であり得る。
A.対象
本明細書中で提供する衛星様および衛星細胞は、多種多様な対象の症状を処置または寛解させるために使用することができる。本明細書中で提供する細胞および方法から一般に利益を受け得る対象は、筋機能、筋緊張、または筋生理学に影響を与える筋疾患または障害を有する対象である。一部の場合では、対象は遺伝子疾患(たとえば、ハンチントン病、筋ジストロフィー)を有し得る。一部の場合では、対象は後天性障害(たとえば不活動によって引き起こされる筋萎縮)を有し得る。さらに、筋ジストロフィーを有する対象は、心臓、胃腸管系、神経系、内分泌腺、眼、および脳を含む身体系において徴候を有する多系統障害を有し得る。処置を必要とする対象には、筋挫傷または傷害を被った者を含めることができる。筋傷害は、運動などの活動中のスリップまたは転倒などの、外傷事象の結果であり得る。
処置を必要とする対象にはまた、悪液質または消耗症候群の結果として起こり得る筋萎縮を含む、筋萎縮または消耗を経験している者も含まれ得る。悪液質には筋萎縮、体重減少、疲労、脱力感、および顕著な体重減少が伴い得る。本明細書中で提供する処置方法は、これらの症状のうちの一部、特に筋萎縮および脱力感の逆転を助ける場合がある。悪液質を有する対象には、がん、後天性免疫不全症候群(syndrom)(AIDS)、慢性閉塞性肺疾患、多発性硬化症、鬱血性心不全、結核、家族性アミロイド多発性神経障害、ガドリニウム中毒、水銀中毒(肢端疼痛症)、およびホルモン欠乏症を有する患者が含まれ得る。
一部の場合では、処置を必要とする対象は、筋肉減少症、または筋肉の量もしくは老化過程に関連する機能の損失を有する患者である。本明細書中で提供する処置は、筋肉減少症、または筋肉の量もしくは機能の損失の逆転または改善を助け得、一部の場合では、本明細書中で提供する処置は、筋肉減少症(sacropenia)、または筋肉の量もしくは機能の損失が時間と共に悪化することの予防を助ける。
開示した組成物および方法から利益を受け得る対象には、筋肉量損失の危険性にある対象などの、予防的処置を望む対象が含まれる。そのような対象には、化学療法などの、筋肉量を低下させる可能性がある処置レジメンを受けようとしている者が含まれ得る。そのような対象にはまた、意識喪失または固定ギプスの装着などが原因で、筋肉量を低下させるために十分な期間の間、不動または部分的に不動であった対象も含めることができる。対象の例には、筋組織を損傷または再接続した手術を最近受けた者が含まれ得る。対象の例にはまた、特定の筋肉を欠いて生まれた者または筋肉移植を必要とするものも含まれ得る。対象はまた、美容上の理由または運動上の性能を改善するために筋肉の量もしくは機能の改善を追求する対象であってもよい。
衛星細胞もしくは衛星様細胞移植を必要とする対象には、男性または女性が含まれ得る。そのような対象は、>10分齢、>1時間齢、>1日齢、>1か月齢、>2か月齢、>6か月齢、>1歳、>2歳、>5歳、>10歳、>15歳、>18歳、>25歳、>35歳、>45歳、>55歳、>65歳、>80歳、<80歳、<70歳、<60歳、<50歳、<40歳、<30歳、<20歳または<10歳を含み得る年齢の範囲であり得る。対象は新生児であり得る。一部の場合では、対象は小児または成人である。一部の例では、組織は、2、5、10または20時間齢のヒトからのものである。一部の例では、組織は、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、9か月または12か月齢のヒトからのものである。一部の場合には、組織は、1歳、2歳、3歳、4歳、5歳、18歳、20歳、21歳、23歳、24歳、25歳、28歳、29歳、31歳、33歳、34歳、35歳、37歳、38歳、40歳、41歳、42歳、43歳、44歳、47歳、51歳、55歳、61歳、63歳、65歳、70歳、77歳または85歳のヒトからのものである。対象は、異なる人種群または遺伝子的に混合された集団を含む、異なる遺伝子的背景を有し得る。
B.細胞治療
衛星細胞または衛星様細胞は、疾患または障害(たとえば遺伝的欠陥)、特に筋肉機能に影響を与える疾患または障害を有する対象を処置するための治療として使用し得る。治療は、疾患の原因の処置および/または疾患もしくは状態の影響の処置を目的としたものであってよい。衛星細胞または衛星様細胞は、対象の傷害部位もしくはその近くに移植し得る、または、細胞が傷害部位へと遊走する、もしくはホーミングすることを可能にする様式で、細胞を対象に導入することができる。たとえば、細胞は、細胞を目的の部位へとシャトルするように設計された、マイクロカプセルなどの材料中に封入し得る。一部の例では、移植した細胞は、損傷、疾患、または傷害の細胞を有利に置き換え、対象の全体的な状態の改善を可能にし得る。一部の例では、移植した細胞は組織の発生または修復を刺激し得る。
代表的な例では、筋変性疾患または他の筋障害(たとえば筋傷害)を有する対象を、本明細書中に記載の方法において多能性幹細胞に由来する衛星細胞または衛星様細胞で処置する。特に、多能性幹細胞は、多能性幹細胞を、多能性幹細胞を衛星細胞または衛星様細胞へと分化させる薬剤または複数の薬剤と接触させることによって分化させてよく、これを対象に移植する。多能性幹細胞に由来する衛星細胞または衛星様細胞は、in vitroおよび/またはin vivoで筋芽細胞を形成する能力を有し得る。一部の例では、衛星細胞または衛星様細胞は、それを必要とする対象に導入し得る。衛星細胞または衛星様細胞は、筋変性疾患または障害を有する対象の筋肉内に導入し得る。一部の場合では、筋芽細胞、筋管、または遺伝子改変の衛星もしくは衛星様細胞などの衛星細胞または衛星様細胞に由来する細胞を対象内に導入する。
一部の例では、遺伝子改変した衛星細胞、または遺伝子を変更した細胞に由来する衛星細胞(遺伝子改変した多能性幹細胞など)を対象内に導入する。一部の例では、誘導多能性幹細胞株は、遺伝子突然変異によって引き起こされる筋ジストロフィーなどの、筋肉欠乏性の疾患または障害を有する患者から発生させ得る。突然変異を誘導多能性幹細胞中で矯正してもよく、次いでこれを、本開示に従って衛星細胞または衛星様細胞へと分化させ得る。次いで、筋肉機能を回復、改善、または増強させるために、矯正突然変異を有する衛星様細胞または衛星細胞を患者内に移植し得る。
一部の具体的な例では、誘導多能性幹細胞(または誘導多能性幹細胞株)は、筋ジストロフィー(たとえばデュシェンヌ型筋ジストロフィー)を引き起こす突然変異を有する患者から発生させ得る。突然変異は、当技術分野で公知の遺伝子改変技法を使用して誘導多能性幹細胞中で矯正し得る。遺伝子改変誘導多能性幹細胞は、本開示に従って衛星細胞または衛星様細胞へと分化させ得る。衛星細胞または衛星様細胞は患者内に移植してよく、ここでこれらは、機能的な非突然変異させたタンパク質を生成して、筋肉機能を回復または増強させ得る。
筋ジストロフィー(たとえばデュシェンヌ型筋ジストロフィー)などの筋変性疾患の処置は、筋肉損失を回復させる能力を有する衛星細胞または衛星様細胞を、疾患または損傷した筋肉内に注射することによって、達成することができる。衛星細胞または衛星様細胞は筋芽細胞を生成して既存の筋管と融合し得る。筋管は近接する細胞質を有するため、移植した衛星細胞または衛星様細胞に由来する筋芽細胞によって生成されたジストロフィンが筋管の全体にわたって見つかる場合があり、内因性の異常を補い得る。十分な量の特定の遺伝子産物を欠くことによって引き起こされる任意の状態、疾患、または障害を矯正または改善するために、同様の手順を行い得る。
衛星細胞または衛星様細胞を、広範囲の疾患および障害を患っている対象に移植し得る。神経および/または神経筋の疾患または障害を患っている対象が、衛星細胞治療から特に利益を受ける可能性がある。一部の手法では、分化細胞を筋肉部位に移植して、神経筋の状態、たとえば、筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィーなどを処置し得る。開示した衛星様細胞および衛星細胞によって処置または寛解させ得る筋疾患または障害は、遺伝子疾患もしくは障害であり得るか、または非遺伝的な原因を有し得る。一部の場合では、疾患または障害は慢性であり、他の場合では、疾患または障害は急性または亜急性であり、さらに他の場合では、疾患または障害は再発性の疾患または障害である。開示した細胞によって処置または寛解させ得る例示的な疾患または障害には、遺伝子疾患および非遺伝子疾患が含まれ得る。例示的な疾患または障害には、筋ジストロフィー、ハンチントン病、メロシン欠乏1A、ネマリン筋疾患、および脊髄性筋萎縮症(SMA)が含まれ得る。開示した細胞によって処置または改善し得る筋ジストロフィーの例には、ベッカー型、先天性、顔面肩甲上腕型(FSH)、筋緊張性(IおよびII型)、眼咽頭型、遠位型、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、およびエメリ-ドレフュス型筋ジストロフィーが含まれる。デュシェンヌ型およびベッカー型の筋ジストロフィーは第X染色体に位置する遺伝子の突然変異によって引き起こされ、主に男性が患うが、女性も重篤な症状を有する場合がある。開示した方法および組成物によって処置または寛解させ得る追加の疾患または障害には、悪液質、散在性疾患、筋肉減少症、筋消耗、筋萎縮、筋挫傷、筋傷害、多発性硬化症、パーキンソン病、または老化に関連する筋消耗が含まれ得る。
衛星細胞もしくは衛星様細胞、またはそれに由来する細胞を患者内に配置して、疾患または障害を処置し得る。たとえば、衛星細胞または衛星様細胞は、骨格筋内への直接注射を使用して移植し得る。それに加えてまたはその代わりに、衛星細胞または衛星様細胞は、足場を使用して、足場なしの方法を使用して、または他の移植装置を使用して、対象内に移植し得る。足場は当技術分野で公知の任意の材料から作られていてよい。一部の場合では、足場は、生分解性足場、吸収性足場、または他の種類の足場である。一部の場合では、足場はマトリックス(たとえば、生分解性マトリックス、吸収性マトリックス)を含む。一部の場合では、衛星細胞もしくは衛星様細胞、またはそれに由来する細胞を、移植前にマイクロカプセル内にカプセル封入する。一部の場合では、マイクロカプセルは、細胞を目的の位置に向けることを可能にするホーミング特長を保有し得る。
骨格筋前駆細胞などの衛星細胞または衛星様細胞は、対象の身体全体にわたっていくつかの位置で注射し得る。たとえば、衛星細胞または衛星様細胞は、筋肉形成に近づく位置、たとえば、烏口腕筋、上腕二頭筋、および上腕筋などの腕の筋肉、前脛骨筋などの脚筋、長母趾伸筋、指伸筋、ならびに第三腓骨筋、または他の筋肉位置で注射し得る。
対象に処置を投与する回数は変動し得る。対象内への分化細胞の導入は一度だけの事象であり得るが、特定の状況では、そのような処置は限定された期間の間のみ改善を誘発する場合があり、継続した一連の反復処置を必要とする。他の状況では、効果が観察されるまでに細胞の複数投与が必要であり得る。正確なプロトコールは、疾患または状態、疾患の段階、処置する個々の対象のパラメータに依存する。
一部の例では、細胞は、以下の経路のうちの任意のものを介して対象に導入し得る:非経口、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、経皮、腹腔内、または脊髄液内。特に、細胞を対象の骨格筋内に直接注射することによって、細胞を対象に導入し得る。
衛星細胞または衛星様細胞の移植中、同じ期間の間に対象に薬物を与え得る。たとえば、衛星様細胞の移植の前、その間、もしくはそれに続いて、またはそれらの組合せで、薬物を投与し得る。対象に投与し得る薬物の例には、対象に対する疾患もしくは傷害を処置する薬物、免疫抑制薬、非免疫抑制薬(no immunosuppressant drug)、またはそれらの組合せが含まれる。例示的な免疫抑制薬には、シクロスポリンもしくはタクロリムスなどのカルシニュリン阻害剤、シロリムスもしくはエベロリムスなどのmTOR阻害剤、ミコフェノール酸モフェチルもしくはアザチオプリンなどのプリン合成阻害剤もしくはプリン類似体、またはプレドニゾンなどのステロイドが含まれる。
衛星細胞および衛星様細胞は、シリンジなどの様々な器具を使用して投与することができる。衛星細胞および衛星様細胞はまた、食塩水、リン酸緩衝食塩水、または血清などの緩衝液と共に注射することもできる。衛星細胞および衛星様細胞は、バンコマイシンまたはレボフロキサシンなどの抗生物質と共に投与し得る。
対象に移植し得る衛星細胞または衛星様細胞の用量は、対象の疾患または傷害、対象の疾患または傷害の進行、および対象の疾患または傷害の重篤度の度合に基づいて異なり得る。さらに、対象に提供する処置の回数は変動し得る。単一処置を対象に投与し得るか、または複数の処置を対象に与え得る。一部の場合では、対象を、本明細書中で提供する細胞で約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25回またはそれより多くの回数、処置し得る。一部の場合では、対象は、1年間の間に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、または20回より少なく、処置し得る。処置自体もまた、衛星細胞または衛星様細胞を提供する部位の数が変動し得る。例では、衛星細胞または衛星様細胞の移植の単一処置には、衛星細胞または衛星様細胞の直接骨格筋注射するために1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、もしくは100カ所、またはそれより多くの注射部位が含まれ得る。一部の場合には、単一用量の細胞は、約101、約50、約102、約5x102、約103、約5x103、約104、約5x104、105、約5x105、約106、約5x106、約107、約5x107、約108、約5x108、約109、約5x109、約1010、約5x1010、約1011、約5x1011またはより多くの細胞を含む。一部の場合には、単一用量の細胞は、最大で102、最大で5x102、最大で103、最大で5x103、最大で104、最大で5x104、最大で105、最大で5x105、最大で106、最大で5x106、最大で107、最大で5x107、最大で108、最大で5x108、最大で109、最大で5x109、最大で1010、最大で5x1010、最大で1011または最大で5x1011細胞を含む。
衛星細胞または衛星様細胞が患者に提供された後、衛星細胞または衛星様細胞は対象の筋芽細胞と融合してよく、融合筋肉細胞成分を形成し得る。処置の結果には、筋肉の回復、筋肉分解の停止、筋肉分解の遅延、ジストロフィン産生などの対象の疾患もしくは傷害に関連する因子の改善、またはそれらの組合せが含まれ得る。
対象の疾患または傷害に関連する因子の改善は、筋肉回復または筋肉機能の試験に関連し得る。筋肉回復の度合は、筋肉量、力に対する抵抗によって測定した筋力、刺激に応答した収縮の量および電気ショックなどの刺激に応答した収縮の強度、所定の課題の時間的な性能、または筋肉に基づく試験の他の例などの、特定の筋肉性状の1種または複数種の試験によって評価し得る。
筋肉の回復は、特定の筋肉性状の改善の量または度合に基づいて評価することができる。特に、筋肉性状(例えば、筋肉量、筋力など)は、約1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、50倍、60倍、70倍、80倍、100倍、150倍、200倍、250倍または300倍あるいはそれより多く改善し得る。一部の場合には、筋肉性状は、>1%、>5%、>10%、>15%、>20%、>25%、>50%、>60%、>70%、>75%、>80%、>90%、>95%、>99%、>100%またはそれより多く改善し得る。より特定の場合には、筋力は、>1%、>5%、>10%、>15%、>20%、>25%、>50%、>60%、>70%、>75%、>80%、>90%、>95%、>99%、>100%、>200%またはそれより多く改善する。筋肉性状の改善は、ある特定の期間内、例えば、衛星様細胞もしくは衛星細胞の導入の時点から約1日、2日、3日、4日、5日、7日、10日、2週間、3週間、4週間、1か月、6週間、2か月、10週間、3か月、3.5か月、4か月、4.5か月、5か月、5.5か月、6か月、6.5か月、7か月、7.5か月、8か月、8.5か月、9か月、9.5か月、10か月、10.5か月、11か月、11.5か月、12か月、1.5年または2年あるいはそれより長い期間以内に起こり得る。例えば、一部の場合には、筋肉性状(例えば、筋肉量、筋力など)の改善は、1か月以内に>1%、1か月以内に>5%、1か月以内に>10%、1か月以内に>15%、1か月以内に>20%、1か月以内に>25%、1か月以内に>50%、1か月以内に>60%、1か月以内に>70%、1か月以内に>75%、1か月以内に>80%、1か月以内に>90%、1か月以内に>95%、1か月以内に>99%、1か月以内に>100%、1か月以内に>200%、1か月以内に>250%、1か月以内に>300%、1か月以内に>400%、1か月以内に>500%または1か月以内にさらに高い百分率であり得る。
一部の場合では、衛星細胞または衛星様細胞を用いた処置は、一定期間内の筋変性の停止または遅延をもたらすことができる。一部の場合には、筋変性の速度を、細胞による処置の1か月以内に約>1%、1か月以内に>5%、1か月以内に>10%、1か月以内に>15%、1か月以内に>20%、1か月以内に>25%、1か月以内に>50%、1か月以内に>60%、1か月以内に>70%、1か月以内に>75%、1か月以内に>80%、1か月以内に>90%、1か月以内に>95%、1か月以内に>99%、1か月以内に>100%、1か月以内に>200%、1か月以内に>250%、1か月以内に>300%、1か月以内に>400%、1か月以内に>500%または1か月以内にさらに高い百分率だけ遅延させることができる。追加的に、筋変性は、衛星様細胞もしくは衛星細胞を使用した細胞療法に基づいて完全に停止させることができる。筋変性は、ある特定の期間内、例えば、衛星様細胞もしくは衛星細胞の導入の時点から約1日、2日、3日、4日、5日、7日、10日、2週間、3週間、4週間、1か月、6週間、2か月、10週間、3か月、3.5か月、4か月、4.5か月、5か月、5.5か月、6か月、6.5か月、7か月、7.5か月、8か月、8.5か月、9か月、9.5か月、10か月、10.5か月、11か月、11.5か月、12か月、1.5歳または2歳あるいはそれより長い期間以内に完全に停止させられ得る。
C.薬物スクリーニング
細胞治療における使用に加えて、衛星細胞または衛星様細胞は、薬物スクリーニングのプラットフォームとして役割を果たすために使用し得る。特に、細胞形態学、マーカー発現、増殖、または分化などの衛星細胞または衛星様細胞の表現型に対する効果を試験するために薬物のアッセイを行い得る。一部の場合では、表現型は筋肉機能に関連している。本明細書中で提供する細胞はまた、そのような遺伝子疾患または障害についての薬物スクリーニング、疾患モデリング、および疾患研究にも有用であり得る。
一例では、試験する細胞は、健康な多能性幹細胞から化学的に分化させた健康な衛星細胞または衛星様細胞である。別の例では、試験する細胞は、疾患多能性幹細胞から分化させた疾患衛星細胞または衛星様細胞である。疾患多能性幹細胞には、筋ジストロフィーなどの神経筋遺伝子疾患等の遺伝子疾患に関連する特定の遺伝子突然変異を有する多能性幹細胞が含まれ得る。一部の場合では、疾患多能性幹細胞は、筋変性疾患に関連する遺伝子突然変異を保有する対象に由来する。一部の場合では、疾患多能性幹細胞は、筋肉遺伝子疾患を引き起こす、またはそれに関連する突然変異を保有するように遺伝子操作されている。突然変異は、対象(たとえばヒト対象)が保有する突然変異と同一であり得る、またはそのような突然変異に実質的に類似であり得る。疾患衛星細胞または衛星様細胞は、薬物のアッセイを行うため、疾患筋芽細胞もしくは筋管の表現型を試験するため、疾患の影響を細胞および組織レベルで特徴付けるため、または他の評価を行うために、筋芽細胞または筋管へとさらに分化させ得る。疾患の影響の特徴付けには、筋芽細胞もしくは筋管の機能および形態学、筋芽細胞もしくは筋管のマーカー発現、筋芽細胞および筋管の増殖および分化、筋管の長さ、筋管の直径、筋管の枝分かれ、融合指数、または筋管あたりの核の数が含まれ得る。
一部の場合では、疾患を引き起こす突然変異または複数の突然変異を保有する胚性幹細胞株は、突然変異を矯正するために遺伝子改変することができる。本明細書中で提供する方法を使用して、疾患を引き起こす突然変異を保有する胚性幹細胞および/または改変した矯正した胚性幹細胞を衛星様もしくは衛星細胞(または細胞株)へと分化させ得る。遺伝子改変した細胞株は疾患を患った細胞株に対する同質遺伝子対照として役割を果たす場合があり、これは、薬物スクリーニング、疾患モデリング、および疾患研究において特に有用であり得る。
別の例では、衛星細胞もしくは衛星様細胞の増殖の増加をもたらす、または筋芽細胞への分化の増殖もしくは増強をもたらす薬物を同定するために、衛星細胞または衛星様細胞に対する薬物のアッセイを行う。これらの効果は、増殖細胞を同定するためのEdUアッセイまたはKi67の免疫蛍光染色、細胞計数、筋芽細胞(myobalst)を同定するためのMyoDまたはデスミンの免疫蛍光染色などの、当技術分野で公知の任意の方法によって測定することができる。そのような薬物は、患者の内在性衛星細胞をブーストおよび活性化させ、筋肉の量もしくは機能の増加をもたらすために有用であり得る。
別の例では、試験する細胞は、HLAヌル多能性幹細胞から分化させた健康な衛星細胞または衛星様細胞である。別の例では、試験する細胞は、筋ジストロフィーなどの神経筋遺伝子疾患などの遺伝子疾患に関連する特定の遺伝子突然変異を有するHLAヌル多能性幹細胞が含まれ得る疾患HLAヌル多能性幹細胞である。
開示した衛星および衛星様細胞を使用した薬物スクリーニングアッセイおよび疾患モデリングアッセイを、多種多様な疾患および障害、特に遺伝子疾患または障害について設計し得る。例示的な疾患または障害には、これらだけには限定されないが、ハンチントン病、メロシン欠乏1A、ネマリン筋疾患、および脊髄性筋萎縮症(SMA)、ならびに筋ジストロフィーが含まれる。筋ジストロフィーの例には、ベッカー型、先天性、顔面肩甲上腕型(FSH)、筋緊張性(IおよびII型)、眼咽頭型、遠位型、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、およびエメリ-ドレフュス型筋ジストロフィーが含まれる。デュシェンヌ型およびベッカー型の筋ジストロフィーは第X染色体に位置する遺伝子の突然変異によって引き起こされ、主に男性が患うが、女性も重篤な症状を有する場合がある。さらに、ほとんどの種類の筋ジストロフィーが多系統障害であり、心臓、胃腸管系、神経系、内分泌腺、眼、および脳を含む身体系において徴候を有する。
D.移植片拒絶の回避
他の適用では、移植細胞の拒絶を制限するために、HLAヌル衛星細胞または衛星様細胞を使用して骨格筋前駆細胞を移植し得る。特に、ナチュラルキラー細胞によるHLAヌル衛星細胞または衛星様細胞の排除を回避するために、HLAヌル衛星細胞または衛星様細胞を対象に移植し、対象の筋芽細胞と融合させて対象のHLAプロファイルを得てもよい。
HLAヌル衛星細胞または衛星様細胞を、それを必要とする対象に提供する場合、HLAの特徴付けの欠如が、HLAヌル衛星細胞または衛星様細胞が免疫細胞と相互作用することを可能にし、それによって、免疫細胞の未認識の細胞に対する有害反応が回避される。このようにして、それを必要とする対象は、それを必要とする前記対象内への前記衛星細胞または衛星様細胞の前記導入の後に、前記衛星細胞または衛星様細胞に対する顕著な免疫拒絶を開始しない。
例では、HLAヌル衛星細胞または衛星様細胞の移植は、免疫抑制薬を服用する必要性を低下または排除し得る。免疫抑制薬の例には、シクロスポリンもしくはタクロリムスなどのカルシニュリン阻害剤、シロリムスもしくはエベロリムスなどのmTOR阻害剤、ミコフェノール酸モフェチルもしくはアザチオプリンなどのプリン合成阻害剤もしくはプリン類似体、またはプレドニゾンなどのステロイドが含まれる。
VIII.細胞の保存
細胞、胚性幹細胞、多能性幹細胞、誘導多能性幹細胞、HLAヌル多能性幹細胞、化学的に分化させた衛星細胞もしくは衛星様細胞、およびHLAヌル多能性幹細胞から分化させたHLAヌル衛星細胞もしくは衛星様細胞、または本明細書中に記載の他の細胞を保存し得る。したがって、過程中の任意の時点からの細胞または材料を、過程改変の将来の完成での使用のために保存し得る。
保存方法は、本明細書中に記載の方法、たとえば凍結保存培地の使用を含む任意の方法であり得る。一部の例示的な凍結保存培地には、1~15%のDMSO、グリセロール、高濃度のトレハロースなどの炭水化物、高濃度の血清またはアルブミンが含まれる。細胞は、好ましくは-70℃未満の温度まで制御された冷却速度で凍結し、液体窒素保存容器中で保存する。本明細書中に記載の方法によって発生させた細胞の他の適切な凍結保存培地および凍結保存/解凍の方法は、ガラス化、カプセル封入、適切な試薬を用いた4℃での安定化、または適切な凍結保存培地で表面を覆った接着細胞である。
IX.一部の定義
別段に指定しない限りは、本明細書中で使用する用語「または(or)」とは非排他的な「または」をいい、たとえば、「AまたはB」には、「AであるがBではない」、「BであるがAではない」、および「AおよびB」が含まれる。
数値または数値範囲に言及する際に本明細書中で使用する用語「約」とは、言及した数値または数値範囲は実験のばらつき内(または統計的実験誤差内)の近似であり、したがって、数値または数値範囲が、たとえば記述した数値または数値範囲の1%から15%の間で変動し得ることを意味する。例では、用語「約」とは記述した数値または値の±10%をいう。
本明細書中で使用する用語「処置する」、「寛解させる」、「処置」、および「処置すること」は互換的に使用される。これらの用語は、これらだけには限定されないが、治療上の利益および/または予防的利益を含む有益または所望の結果を得るための手法をいう。治療上の利益とは、処置する根底にある障害の根絶または寛解を意味する。患者が根底にある障害を依然として患っている可能性があるにもかかわらず、患者において改善が観察されるように根底にある障害に関連する生理的症状のうちの1種または複数種の根絶または寛解されることでもまた、治療上の利益が達成される。予防的利益では、この疾患の診断がなされていないかもしれない場合でも、衛星細胞または衛星様細胞を、特定の疾患を発生する危険性にある患者、または疾患の生理的症状のうちの1つもしくは複数を報告している患者に投与し得る。
X.実施例
本発明の好ましい実施形態が本明細書で示され、記載されたが、そのような実施形態は例としてだけ提供されていることは当業者に明らかになる。本発明が明細書の中で提供される具体例によって制限されることは、意図されていない。本発明は前記の明細書を参照して記載されたが、本明細書の実施形態の記載および図示は限定する意味で解釈されるためのものではない。本発明を逸脱しない範囲で、当業者は今では多くの変異形、変更および代替を思いつく。さらに、本発明の全ての態様が、様々な条件および変数に依存する、本明細書に示される具体的な描写、構成または相対的な割合に限定されるとは限らないことを理解すべきである。記載される本発明の実施形態への様々な代替物を本発明の実施で用いることができることを理解すべきである。以下の請求項が本発明の範囲を規定し、これらの請求項の範囲内の方法および構造ならびにそれらの同等物はそれに含まれることを意図する。
(実施例1)
筋原性誘導条件のスクリーニング。
ヒト多能性幹細胞(hPSC)を、フィーダーを含まずに、コラーゲンIをコーティングした表面上で、市販のM2培養培地(Genea Biocellsにより製造)を使用して、標準のプロトコールに従って拡大した。この方法では、それぞれの継代で培養物を単一細胞へと解離する。それぞれの細胞株のバッチを、M2培地+10%のDMSO中で、標準のプロトコールに従って凍結した。それぞれのバッチを、生存度、形態学、無菌性、核型、DNAフィンガープリント、多能性マーカー発現(Oct4、Nanog、SSEA-4、Tra1-60)、およびPluritest(Mullerら、2011年)について品質管理の試験を行った。
市販の細胞株GENEA017およびGENEA020を使用して筋原性誘導培養条件のスクリーニングを行った。基本培養培地は、製造者の指示に従って骨格筋細胞成長培地サプリメントミックス(Skeletal Muscle Cell Growth Medium Supplement Mix)(Promocellにより製造)を骨格筋細胞基本培地(Skeletal Muscle Cell Basal Medium)(Promocellにより製造)に加えて、MCDB120(米国特許第5,143,842号)に類似の培地を生成することによって調製し、これにRho関連キナーゼ阻害剤Y27632(10μM)も加えた。細胞を、コラーゲンI(100μg/mL)、hフィブロネクチン(10μg/mL)、mラミニン(5μg/mL)、またはhフィブロネクチン(10μg/mL)とmラミニン(5μg/mL)とでコーティングした、384ウェルのオプティカルボトムマイクロタイタープレート中で培養した。
筋原性誘導培養条件をスクリーニングするために、細胞株を単一細胞へと解離し、20μLの基本培養培地中、8×103個の細胞/cm2の密度で、384ウェルプレートにプレーティングした。表1の化合物を、2つずつの組合せ(合計378個の組合せ)で、384ディープウェルプレート中に2×最終濃度で基本培養培地に加えた。20μLのこの化合物を添加した培地を培養細胞に加えて、細胞を、化合物をその最終濃度で含有する40μLの培養培地中で培養した。細胞を37℃、5%のCO2、および5%のO2で9日間培養した。スクリーニングする化合物の濃度をその最終濃度で維持しながら、培地を隔日で行った。
培養期間の終わりに、細胞を4%のホルマリン溶液で固定し、衛星細胞マーカーPax3、Pax7、およびCD56について免疫蛍光染色し、ハイコンテントイメージングによって分析した。基本培地のみで成長させた細胞はいずれも、衛星細胞マーカーについて染色を示さなかった。スクリーニングした378個の条件のうち、34個は細胞に対して毒性が高かった。4個の条件は、CD56について陽性であるが、Pax3およびPax7の両方について陰性である細胞をもたらした。試験した条件のうちの15個では、50%を超える細胞が衛星細胞の特徴ならびにCD56、Pax3、およびPax7について陽性染色を示す結果となった。細胞を筋芽細胞マーカーMyoDについてさらに染色したが、陽性細胞は観察されず、これは、衛星細胞が筋芽細胞へとさらに分化しなかったことを示している。
(実施例2)
筋原性条件は血清、増殖因子、または特定の基本培地に強く依存していない。
衛星細胞を、GENEA002、GENEA019、およびGENEA020から、実施例1に記載のように、CHIR99021およびAlk5阻害剤を使用して、基本培地の組成を変動させて調製した。骨格筋細胞成長培地サプリメントの構成成分はそれらの最終濃度(たとえば、50μg/mLのウシフェツイン、10ng/mLのEGF、1ng/mLのbFGF、10μg/mLのインスリン、および0.4μg/mLのデキサメタゾン)に保ち、表2に列挙した基本培地および血清を2つずつ組み合わせて混合した。Pax3、Pax7、およびCD56の陽性衛星様細胞がすべての条件下で得られた。たとえば、図5、6、および7は、分化を誘導するための化合物で処理した細胞株GENEA002、GENEA019、およびGENEA020を示し、それぞれの培地中の、衛星様細胞のマーカーPax7およびPax3を発現する細胞の百分率を示す。しかし、細胞生存度は血清またはアルブミンの非存在下で乏しかった。たとえば、図8は、様々な血清構成成分を有する様々な分化培地中で成長させたGENEA002、GENEA019、およびGENEA020を示す。細胞密度は使用した培地および血清構成成分に依存しており、これは、分化が様々な条件にわたって頑強であり、培地の影響は主に細胞生存度に対してであることを示している。すべての細胞株にわたる陽性細胞、細胞の拡大、および頑健性の割合は様々であった。PromocellおよびLonza1基本培地はいずれもMCDB120に基づいているため、性能は非常に類似していた。ウマ血清がすべての細胞株について最も一貫して分化を支持していると考えられる。
次に、CHIR99021およびAlk5阻害剤を添加したMCDB120様基本培地であるが、骨格筋細胞成長培地サプリメントの構成成分(50μg/mlのウシフェツイン、10ng/mlのEGF、1ng/mlのbFGF、10μg/mlのインスリン、および0.4μg/mlのデキサメタゾン)のうちの1つを除外した、または5%のウマ血清の場合は1.5%のAlbumax(ウシ血清アルブミン、Life Technologiesにより製造)で置き換えたもの中でGENEA019を分化させることによって、骨格筋細胞成長培地サプリメントの構成成分に対する依存性を試験した。さらに、Pax3、Pax7、およびCD56について陽性の衛星様細胞がそれぞれの条件下で得られ、これは、どの単一の増殖因子も筋原性誘導に必要でないことを実証している。たとえば、図9は、様々な血清構成成分を含有する培養条件下でPax3、Pax7、またはCD56を発現する細胞の百分率を示す。分化はすべての条件にわたって概して同様であり、1つの血清構成成分が分化に重大であることを示している。
(実施例3)
寄与する構成成分としてCHIR99021(3μM)およびトランスフェリン(150μg/mL)を使用した、多能性幹細胞からの衛星細胞の調製。
hPSCの培養物を、実施例1に記載のように、分化を誘導するためにCHIR99021(3μM)およびトランスフェリン(150μg/mL)を添加した基本培地中で成長させた。分化させた細胞を固定し、衛星細胞マーカーPax3、Pax7、およびCD56について免疫染色した。基本培地単独中で培養した細胞では陽性細胞は観察されなかったが、CHIR99021(3μM)およびトランスフェリン(150μg/mL)を添加した基本培地中で培養したものは、50%超の細胞が前記マーカーについて陽性染色という結果となった。これらの衛星様細胞は試験したすべての細胞外マトリックスにおいて生成されたが、hフィブロネクチンが最も高いレベルの衛星様細胞を生じた。細胞を筋芽細胞マーカーMyoDについてさらに染色したが、陽性細胞は同定されず、これは、細胞が筋芽細胞へとさらに分化しなかったことを示している。
(実施例4)
寄与する構成成分としてCHIR99021(3μM)およびアスコルビン酸(200μg/mL)を使用した、多能性幹細胞からの衛星細胞の調製。
hPSCの培養物を、実施例1に記載のように、分化を誘導するためにCHIR99021(3μM)およびアスコルビン酸(200μg/mL)を添加した基本培地中で成長させた。分化させた細胞を固定し、衛星細胞マーカーPax3、Pax7、およびCD56について免疫染色した。基本培地単独中で培養した細胞では陽性細胞は観察されなかったが、CHIR99021(3μM)およびアスコルビン酸(200μg/mL)を添加した基本培地中で培養したものは、50%超の細胞が前記マーカーについて陽性染色という結果となった。これらの衛星様細胞は試験したすべての細胞外マトリックスにおいて生成されたが、hフィブロネクチンが最も高いレベルの衛星様細胞を生じた。細胞を筋芽細胞マーカーMyoDについてさらに染色したが、陽性細胞は同定されず、これは、細胞が筋芽細胞へとさらに分化しなかったことを示している。
(実施例5)
寄与する構成成分としてCHIR99021(3μM)およびXAV939(2.5μM)を使用した、多能性幹細胞からの衛星細胞の調製。
hPSCの培養物を、実施例1に記載のように、分化を誘導するためにCHIR99021(3μM)およびXAV939(2.5μM)を添加した基本培地中で成長させた。分化させた細胞を固定し、衛星細胞マーカーPax3、Pax7、およびCD56について免疫染色した。基本培地単独中で培養した細胞では陽性細胞は観察されなかったが、CHIR99021(3μM)およびXAV939(2.5μM)を添加した基本培地中で培養したものは、50%超の細胞が前記マーカーについて陽性染色という結果となった。これらの衛星様細胞は試験したすべての細胞外マトリックスにおいて生成されたが、hフィブロネクチンが最も高いレベルの衛星様細胞を生じた。細胞を筋芽細胞マーカーMyoDについてさらに染色したが、陽性細胞は同定されず、これは、細胞が筋芽細胞へとさらに分化しなかったことを示している。
(実施例6)
寄与する構成成分としてCHIR99021(3μM)およびVEGF(25ng/mL)を使用した、多能性幹細胞からの衛星細胞の調製。
hPSCの培養物を、実施例1に記載のように、分化を誘導するためにCHIR99021(3μM)およびVEGF(25ng/mL)を添加した基本培地中で成長させた。分化させた細胞を固定し、衛星細胞マーカーPax3、Pax7、およびCD56について免疫染色した。基本培地単独中で培養した細胞では陽性細胞は観察されなかったが、CHIR99021(3μM)およびVEGF(25ng/mL)を添加した基本培地中で培養したものは、50%超の細胞が前記マーカーについて陽性染色という結果となった。これらの衛星様細胞は試験したすべての細胞外マトリックスにおいて生成されたが、hフィブロネクチンが最も高いレベルの衛星様細胞を生じた。細胞を筋芽細胞マーカーMyoDについてさらに染色したが、陽性細胞は同定されず、これは、細胞が筋芽細胞へとさらに分化しなかったことを示している。
(実施例7)
寄与する構成成分としてCHIR99021(3μM)およびAlk5阻害剤(2μM)を使用した、多能性幹細胞からの衛星細胞の調製。
hPSCの培養物を、実施例1に記載のように、分化を誘導するためにCHIR99021(3μM)およびAlk5阻害剤(2μM)を添加した基本培地中で成長させた。分化させた細胞を固定し、衛星細胞マーカーPax3、Pax7、およびCD56について免疫染色した。基本培地単独中で培養した細胞では陽性細胞は観察されなかったが、CHIR99021(3μM)およびAlk5阻害剤(2μM)を添加した基本培地中で培養したものは、50%超の細胞が前記マーカーについて陽性染色という結果となった。これらの衛星様細胞は試験したすべての細胞外マトリックスにおいて生成されたが、hフィブロネクチンが最も高いレベルの衛星様細胞を生じた。細胞を筋芽細胞マーカーMyoDについてさらに染色したが、陽性細胞は同定されず、これは、細胞が筋芽細胞へとさらに分化しなかったことを示している。
(実施例8)
寄与する構成成分としてCHIR99021(3μM)およびSB431542(2μM)を使用した、多能性幹細胞からの衛星細胞の調製。
hPSCの培養物を、実施例1に記載のように、分化を誘導するためにCHIR99021(3μM)およびSB431542(2μM)を添加した基本培地中で成長させた。分化させた細胞を固定し、衛星細胞マーカーPax3、Pax7、およびCD56について免疫染色した。基本培地単独中で培養した細胞では陽性細胞は観察されなかったが、CHIR99021(3μM)およびSB431542(2μM)を添加した基本培地中で培養したものは、50%超の細胞が前記マーカーについて陽性染色という結果となった。これらの衛星様細胞は試験したすべての細胞外マトリックスにおいて生成されたが、hフィブロネクチンが最も高いレベルの衛星様細胞を生じた。細胞を筋芽細胞マーカーMyoDについてさらに染色したが、陽性細胞は同定されず、これは、細胞が筋芽細胞へとさらに分化しなかったことを示している。
(実施例9)
寄与する構成成分としてCHIR99021(3μM)およびFGF(20ng/mL)を使用した、多能性幹細胞からの衛星細胞の調製。
hPSCの培養物を、実施例1に記載のように、分化を誘導するためにCHIR99021(3μM)およびFGF(20ng/mL)を添加した基本培地中で成長させた。分化させた細胞を固定し、衛星細胞マーカーPax3、Pax7、およびCD56について免疫染色した。基本培地単独中で培養した細胞では陽性細胞は観察されなかったが、CHIR99021(3μM)およびFGF(20ng/mL)を添加した基本培地中で培養したものは、50%超の細胞が前記マーカーについて陽性染色という結果となった。これらの衛星様細胞は試験したすべての細胞外マトリックスにおいて生成されたが、hフィブロネクチンが最も高いレベルの衛星様細胞を生じた。細胞を筋芽細胞マーカーMyoDについてさらに染色したが、陽性細胞は同定されず、これは、細胞が筋芽細胞へとさらに分化しなかったことを示している。
(実施例10)
寄与する構成成分としてCHIR99021(3μM)およびBIX01294(1μM)を使用した、多能性幹細胞からの衛星細胞の調製。
hPSCの培養物を、実施例1に記載のように、分化を誘導するためにCHIR99021(3μM)およびBIX01294(1μM)を添加した基本培地中で成長させた。分化させた細胞を固定し、衛星細胞マーカーPax3、Pax7、およびCD56について免疫染色した。基本培地単独中で培養した細胞では陽性細胞は観察されなかったが、CHIR99021(3μM)およびBIX01294(1μM)を添加した基本培地中で培養したものは、50%超の細胞が前記マーカーについて陽性染色という結果となった。これらの衛星様細胞は試験したすべての細胞外マトリックスにおいて生成されたが、hフィブロネクチンが最も高いレベルの衛星様細胞を生じた。細胞を筋芽細胞マーカーMyoDについてさらに染色したが、陽性細胞は同定されず、これは、細胞が筋芽細胞へとさらに分化しなかったことを示している。
(実施例11)
寄与する構成成分としてCHIR99021(3μM)およびIGF-1(10ng/mL)を使用した、多能性幹細胞からの衛星細胞の調製。
hPSCの培養物を、実施例1に記載のように、分化を誘導するためにCHIR99021(3μM)およびIGF-1(10ng/mL)を添加した基本培地中で成長させた。分化させた細胞を固定し、衛星細胞マーカーPax3、Pax7、およびCD56について免疫染色した。基本培地単独中で培養した細胞では陽性細胞は観察されなかったが、CHIR99021(3μM)およびIGF-1(10ng/mL)を添加した基本培地中で培養したものは、50%超の細胞が前記マーカーについて陽性染色という結果となった。これらの衛星様細胞は試験したすべての細胞外マトリックスにおいて生成されたが、hフィブロネクチンが最も高いレベルの衛星様細胞を生じた。細胞を筋芽細胞マーカーMyoDについてさらに染色したが、陽性細胞は同定されず、これは、細胞が筋芽細胞へとさらに分化しなかったことを示している。
(実施例12)
寄与する構成成分としてCHIR99021(3μM)およびNoggin(100ng/mL)を使用した、多能性幹細胞からの衛星細胞の調製。
hPSCの培養物を、実施例1に記載のように、分化を誘導するためにCHIR99021(3μM)およびNoggin(100ng/mL)を添加した基本培地中で成長させた。分化させた細胞を固定し、衛星細胞マーカーPax3、Pax7、およびCD56について免疫染色した。基本培地単独中で培養した細胞では陽性細胞は観察されなかったが、CHIR99021(3μM)およびNoggin(100ng/mL)を添加した基本培地中で培養したものは、50%超の細胞が前記マーカーについて陽性染色という結果となった。これらの衛星様細胞は試験したすべての細胞外マトリックスにおいて生成されたが、hフィブロネクチンが最も高いレベルの衛星様細胞を生じた。細胞を筋芽細胞マーカーMyoDについてさらに染色したが、陽性細胞は同定されず、これは、細胞が筋芽細胞へとさらに分化しなかったことを示している。
(実施例13)
寄与する構成成分としてCHIR99021(3μM)およびクレアチン(1mM)を使用した、多能性幹細胞からの衛星細胞の調製。
hPSCの培養物を、実施例1に記載のように、分化を誘導するためにCHIR99021(3μM)およびクレアチン(1mM)を添加した基本培地中で成長させた。分化させた細胞を固定し、衛星細胞マーカーPax3、Pax7、およびCD56について免疫染色した。基本培地単独中で培養した細胞では陽性細胞は観察されなかったが、CHIR99021(3μM)およびクレアチン(1mM)を添加した基本培地中で培養したものは、50%超の細胞が前記マーカーについて陽性染色という結果となった。これらの衛星様細胞は試験したすべての細胞外マトリックスにおいて生成されたが、hフィブロネクチンが最も高いレベルの衛星様細胞を生じた。細胞を筋芽細胞マーカーMyoDについてさらに染色したが、陽性細胞は同定されず、これは、細胞が筋芽細胞へとさらに分化しなかったことを示している。
(実施例14)
寄与する構成成分としてCHIR99021(3μM)およびPD169316(150μg/mL)を使用した、多能性幹細胞からの衛星細胞の調製。
hPSCの培養物を、実施例1に記載のように、分化を誘導するためにCHIR99021(3μM)およびPD169316(150μg/mL)を添加した基本培地中で成長させた。分化させた細胞を固定し、衛星細胞マーカーPax3、Pax7、およびCD56について免疫染色した。基本培地単独中で培養した細胞では陽性細胞は観察されなかったが、CHIR99021(3μM)およびPD169316(150μg/mL)を添加した基本培地中で培養したものは、50%超の細胞が前記マーカーについて陽性染色という結果となった。これらの衛星様細胞は試験したすべての細胞外マトリックスにおいて生成されたが、hフィブロネクチンが最も高いレベルの衛星様細胞を生じた。細胞を筋芽細胞マーカーMyoDについてさらに染色したが、陽性細胞は同定されず、これは、細胞が筋芽細胞へとさらに分化しなかったことを示している。
(実施例15)
寄与する構成成分としてCHIR99021(3μM)およびSMOアンタゴニスト(150μg/mL)を使用した、多能性幹細胞からの衛星細胞の調製。
hPSCの培養物を、実施例1に記載のように、分化を誘導するためにCHIR99021(3μM)およびSMOアンタゴニスト(150μg/mL)を添加した基本培地中で成長させた。分化させた細胞を固定し、衛星細胞マーカーPax3、Pax7、およびCD56について免疫染色した。基本培地単独中で培養した細胞では陽性細胞は観察されなかったが、CHIR99021(3μM)およびSMOアンタゴニスト(150μg/mL)を添加した基本培地中で培養したものは、50%超の細胞が前記マーカーについて陽性染色という結果となった。これらの衛星様細胞は試験したすべての細胞外マトリックスにおいて生成されたが、hフィブロネクチンが最も高いレベルの衛星様細胞を生じた。細胞を筋芽細胞マーカーMyoDについてさらに染色したが、陽性細胞は同定されず、これは、細胞が筋芽細胞へとさらに分化しなかったことを示している。
(実施例16)
寄与する構成成分としてCHIR99021(3μM)およびウマ血清(5%)トランスフェリン(150μg/mL)を使用した、多能性幹細胞からの衛星細胞の調製。
hPSCの培養物を、実施例1に記載のように、分化を誘導するためにCHIR99021(3μM)およびウマ血清(5%)を添加した基本培地中で成長させた。分化させた細胞を固定し、衛星細胞マーカーPax3、Pax7、およびCD56について免疫染色した。基本培地単独中で培養した細胞では陽性細胞は観察されなかったが、CHIR99021(3μM)およびウマ血清(5%)を添加した基本培地中で培養したものは、50%超の細胞が前記マーカーについて陽性染色という結果となった。これらの衛星様細胞は試験したすべての細胞外マトリックスにおいて生成されたが、hフィブロネクチンが最も高いレベルの衛星様細胞を生じた。細胞を筋芽細胞マーカーMyoDについてさらに染色したが、陽性細胞は同定されず、これは、細胞が筋芽細胞へとさらに分化しなかったことを示している。
(実施例17)
寄与する構成成分としてCHIR99021(3μM)および酪酸ナトリウム(250μM)を使用した、多能性幹細胞からの衛星細胞の調製。
hPSCの培養物を、実施例1に記載のように、分化を誘導するためにCHIR99021(3μM)および酪酸ナトリウム(250μM)を添加した基本培地中で成長させた。分化させた細胞を固定し、衛星細胞マーカーPax3、Pax7、およびCD56について免疫染色した。基本培地単独中で培養した細胞では陽性細胞は観察されなかったが、CHIR99021(3μM)および酪酸ナトリウム(250μM)を添加した基本培地中で培養したものは、50%超の細胞が前記マーカーについて陽性染色という結果となった。これらの衛星様細胞は試験したすべての細胞外マトリックスにおいて生成されたが、hフィブロネクチンが最も高いレベルの衛星様細胞を生じた。細胞を筋芽細胞マーカーMyoDについてさらに染色したが、陽性細胞は同定されず、これは、細胞が筋芽細胞へとさらに分化しなかったことを示している。
(実施例18)
様々な細胞株からの筋芽細胞が融合して混合筋管を形成する。
1つの細胞株からの多能性幹細胞を筋芽細胞へと分化させ、培養皿にプレーティングし、緑色蛍光CellTrackerナノ結晶、たとえばLife Technologies(商標)から入手したもので標識する。CellTrackerは細胞によって取り込まれ、継続中の細胞分裂によって希釈されてしまうまで、受動的に存在したままとなる。別の細胞株からの多能性幹細胞を筋芽細胞へと分化させ、赤色蛍光CellTrackerナノ結晶で標識した後に、それらを解離させ、それらを最初の筋芽細胞に加える。筋管形成はGenea Biocellの筋管培地を使用して誘導する。約1週間培養した後、細胞を固定し、Hoechst33242色素で対比染色する。ハイコンテントイメージングを使用して混合(緑色および赤色蛍光)筋管を検出および定量する。
(実施例19)
衛星細胞または衛星様細胞の増殖。
さらに、図10は、本開示の実施形態に従った、3継代にわたる衛星細胞または衛星様細胞の増殖の説明図である。Pax3陽性細胞の割合は3継代にわたってほぼ一定に保たれる一方で、のちの継代ではより多くのPax7陽性細胞が見つかる。図10に見られるように、細胞の大多数が増殖していると考えられる(Ki67陽性)。
(実施例20)
無血清の(xeno-free)、成長因子なしの衛星細胞の調製。
無血清の条件における衛星様細胞の発生を試験した。以下の培地を使用して、衛星様細胞をヒト胚性幹細胞株(GENEA019)から調製した。
1)対照培地:骨格筋細胞基本培地(Lonza)と骨格筋細胞成長サプリメント(Skeletal Muscle Cell Growth Supplement)(Lonza)およびウマ血清(5%)に、Y-27632(10μM)、CHIR99021(3μM)、およびAlk5阻害剤(2μM)を添加。
2)MCDBc:MCDB120(2g/L)と骨格筋細胞成長サプリメント(Lonza)およびウマ血清(5%)に、Y-27632(10μM)、CHIR99021(3μM)、およびAlk5阻害剤(2μM)を添加。
3)MCDB FA:MCDB120(2g/L)、ウマ血清、フェツイン、EGF、またはFGFなし、ヒトアルブミン(2.5%)、オレイン酸(100ng)、リノール酸(100ng)、Y-27632(10μM)、CHIR99021(3μM)、およびAlk5阻害剤(2μM)を添加。
4)MCDB FA ITS:MCDB FA(番号3)と同じ、さらにインスリン/トランスフェリン/セレン(ITS、100×)を含む。
MCDB FAは無血清で、成長因子を含まない配合物であり、MCDB FA ITSは無血清の配合物である。3日間の筋原性誘導後に細胞を固定し、核(細胞計数)ならびにPax3およびPax7について染色した。図11A~11Cは、細胞計数の増加(図11A)、ならびにPax3(図11B)およびPax7(図11C)の発現の増加を含む、試験したすべての培地における筋原細胞の頑強な誘導を示している。
(実施例21)
ラミニン上での筋原性誘導は衛星様細胞集団に影響を与える。
GENEA019ヒト胚細胞を、骨格筋細胞基本培地(Lonza)と骨格筋細胞成長サプリメント(Lonza)およびウマ血清(5%)に、Y-27632(10μM)、CHIR99021(3μM)、およびAlk5阻害剤(2μM)を添加したもの中、細胞外マトリックス分子コラーゲンI、ラミニン111、ラミニン211、およびラミニン521でコーティングした組織培養プレート上にプレーティングした。9日後、細胞を固定し、DNA(Hoechst)およびPax7について染色した。ラミニン、特にラミニン521は、細胞増殖を促進し(図12B)、Pax7陽性である衛星様細胞部分集団を好むこと(図12A)が見出された。
(実施例22)
LRRK2/DCLK阻害剤を使用した衛星細胞の調製の改善。
GENEA019ヒト胚性幹細胞を、骨格筋細胞基本培地(Lonza)と骨格筋細胞成長サプリメント(Lonza)およびウマ血清(5%)に、Y-27632(10μM)、CHIR99021(3μM)、およびAlk5阻害剤(2μM)を添加、LRRK2阻害剤であるLRRK2-IN-1を含む(1μM)または含まないもの中にプレーティングした。9日後、細胞を固定し、DNA(Hoechst)およびPax3について染色した。LRRK2-IN-1の添加は、細胞増殖を促進し(図13A)、Pax3の発現を増加させた(図13B)。
同じ実験を、GENEA019およびGENEA067ヒト胚性幹細胞株を使用して繰り返した。細胞集団を位相差顕微鏡観察によって観察した。図14に見られるように、LRRK2-IN-1の添加はより純粋な細胞集団をもたらし、汚染細胞として観察される、大きな細胞質を有する平らな細胞が抑制された。
(実施例23)
LRRK2/DCLK阻害剤を使用した衛星細胞の調製の改善。
GENEA002、GENEA015、およびGENEA019ヒト胚性幹細胞株を、コラーゲンIをコーティングした培養皿上、以下の培養培地中でプレーティングした。
1)MCDBc:MCDB120(2g/L)と骨格筋細胞成長サプリメント(Lonza)およびウマ血清(5%)に、Y-27632(10μM)、CHIR99021(3μM)、およびAlk5阻害剤(2μM)を添加。
2)MCDB Min:MCDB120(2g/L)、ウマ血清、フェツイン、EGF、またはFGFなし、ヒトアルブミン(2.5%)、Y-27632(10μM)、CHIR99021(3μM)、およびAlk5阻害剤(2μM)を添加。
3)MCDB Min FA:MCDB120(2g/L)基本培地、ウマ血清、フェツイン、EGF、またはFGFなし、ヒトアルブミン(2.5%)、オレイン酸(100ng)、リノール酸(100ng)、Y-27632(10μM)、CHIR99021(3μM)、およびAlk5阻害剤(2μM)を添加。
4)MCDB FA ITS:MCDB FAと同じ、インスリン/トランスフェリン/セレン(ITS、100×)を含む。
対照化合物、5μmのTHI(2-アセチル-4(5)-(1,2,3,4-テトラヒドロキシブチル)イミダゾール)、または5ng/LのFGF2を任意選択で培地に加えた。LRRK2阻害剤であるLRRK2-IN-1(1μM)を任意選択でMCDB MinFA培地に加えた。4日後に細胞を固定し、DNA(Hoechst)、Pax3、およびPax7について染色した。図15A~Fに見られるように、THIもFGF2も、Pax3/7陽性細胞の細胞増殖または収率を増強しなかった。しかし、驚くべきことに、LRRK2阻害剤LRRK2-IN-1はPax3陽性およびPax7陽性細胞の割合の強力な増加をもたらした。
同じ実験を、GENEA015およびGENEA019ヒト胚性幹細胞を用いて、骨格筋細胞基本培地(Lonza)と骨格筋細胞成長サプリメント(Lonza)およびウマ血清(5%)に、Y-27632(10μM)、CHIR99021(3μM)、およびAlk5阻害剤(2μM)を添加したもの中で繰り返した。LRRK2-IN-1に加えて、様々な他のキナーゼ阻害剤を10nM~1μMの用量範囲で試験した。4日後に細胞を固定し、DNA(Hoechst)およびPax7について染色した。図16Aおよび16Bに示すように、LRRK2(LRKK2)阻害剤であるLRRK2-IN-1は用量依存的な様式でPax7陽性細胞の形成を強力に促進したが、他のキナーゼ阻害剤はそうではなかった。
(実施例24)
筋原性誘導はWnt活性化/GSK3b阻害に依存する。
GENEA019ヒト胚性幹細胞を、骨格筋細胞基本培地(Lonza)と骨格筋細胞成長サプリメント(Lonza)およびウマ血清(5%)に、Y-27632(10μM)およびAlk5阻害剤(2μM)、ならびにCHIR99021(1μM)、AZD1080(1μM)、IWP-L6(1μM)、D4476(1μM)、およびAT13148(1μM)を含む一連のWnt経路モジュレーターを添加したもの中にプレーティングした。9日間培養した後、細胞を固定し、DNA(Hoechst)およびPax3について染色した。図17Aおよび17Bに見られるように、Wnt調節の非存在下では筋原性誘導は観察されなかった。GSK3キナーゼ阻害剤ではCHIR99021およびAZD1080はいずれも筋原性誘導を促進し、Pax3陽性細胞をもたらした。IWP-L6によるWnt-シグナル伝達の遮断は筋原性誘導を遮断した。他の間接的なWnt経路活性化剤は筋原性誘導をもたらさなかった。
(実施例25)
Rho関連キナーゼ(ROCK)の阻害は分化過程全体にわたって重要である。
GENEA019およびGENEA067ヒト胚性幹細胞を、骨格筋細胞基本培地(Lonza)と骨格筋細胞成長サプリメント(Lonza)およびウマ血清に、Y-27632(10μM)、CHIR99021(3μM)、およびAlk5阻害剤(2μM)を添加したもの中、コラーゲンIをコーティングしたプレート上にプレーティングした。細胞を、同じ培地中で隔日に培地を変更して、またはプレーティングの1日後のいずれかにさらに分化させ、細胞が付着した後、細胞を同じ培養培地であるがROCK阻害剤Y-27632(10μM)を含まないものに変更して維持した。驚くべきことに、連続的なROCK阻害なしの細胞は分化中に高度に不均一な細胞集団を形成し、成長が顕著に遅れており(図18、「-ROCK」は、細胞が付着した後にY-27632を除去したことを示す)、これは、筋原性誘導中においてROCK阻害にはより特異的な役割が存在することを示唆している。
(実施例26)
衛星様細胞とマウス筋芽細胞とのin vitro融合。
GENEA019ヒト胚性幹細胞を、骨格筋細胞基本培地(Lonza)と骨格筋細胞成長サプリメント(Lonza)およびウマ血清に、Y-27632(10μM)、CHIR99021(3μM)、およびAlk5阻害剤(2μM)を添加したもの中、コラーゲンIをコーティングしたプレート上にプレーティングした。細胞を9日後に継代し、Genea Biocells筋芽細胞培地(Myoblast Medium)(Genea Biocells)中に再プレーティングした。7日後、細胞を収集し、不死化マウス筋芽細胞C2C12細胞と一緒に、1:1で、全細胞密度60,000個の細胞/cm2で再プレーティングした。翌日、培養培地をGenea Biocells筋管培地(Myotube Medium)(Genea Biocells)またはDMEM低グルコース+2%のウマ血清のいずれかに変更した。さらに2日後、細胞を固定し、DNA(Hoechst)、ファーストMHC、およびラミンA/Cについて染色した。細胞を共焦点蛍光顕微鏡観察によって分析した。図19に示すように、筋管内のマウスラミンA/C陰性核を有するヒトラミンA/C陽性核の存在は、幹細胞由来のGENEA019筋芽細胞が別の筋芽細胞集団と融合する潜在性を実証していた。
(実施例27)
HLAクラスI 遺伝子を標的とするガイドRNA(gRNA)の選択。
染色体6p21.3上に位置するHLAスーパー座位はヒトゲノムの多型性の頻度が最も高く、複数のHLAクラスI 対立遺伝子を標的とするgRNAの一般的なセットの作製を困難にし、HLA領域のゲノム編集の主な障壁となっている。6p21.3領域はまた、多能性の維持に重大であるPOU5F1(Oct4としても知られる)を含むいくつかの必須遺伝子を含むため、その完全に切除するのも問題である。あるいは、より高い特異性のgRNAがそれぞれの標的遺伝子に対して個々に発生し得る。理想的には、1種または複数種のHLA群に対してホモ接合性である細胞株をゲノム編集に使用することができる。
分化プロトコール(Genea Biocells骨格筋分化キット(Skeletal Muscle Differentiation Kit)を使用)に一度供した「良好な品質の」骨格筋を生成するその効率に基づいて、一群の胚性幹細胞株をゲノム編集について選択した。選択された系統をシーケンシングによるHLAクラスI型決定に送った。シーケンシングは、型(対立遺伝子群)、亜型(特異的HLAタンパク質)、および同義ヌクレオチド置換に関する情報を提供する。3つのヒト胚細胞株のHLAクラスIプロファイルを表4に示し、それぞれの対立遺伝子の特定の配列はIMGT/HLAデータベースで評価することができる。
「目的の領域」は、最初に所定の細胞株のすべてのHLAクラスI遺伝子をアラインメントし、3つすべてのHLAクラスI(A、B、およびC)対立遺伝子間の相同性の領域を見つけることによって定義した。多型性のほかに、クラスIのメンバー間には高い度合の配列相同性が存在する。一例として、ヒト胚細胞株GENEA015のHLA-A、HLA-B、およびHLA-Cの両方の対立遺伝子の配列をアラインメントした(図20)。20個のヌクレオチドより長いすべてのエクソン相同領域を、Cas9のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列、または他のゲノム編集酵素の存在について調査した。
図20に示すように、配列「gcttctaccctgcggagatcacactgacctggcagcgggatgg」は、43個のヌクレオチドの長さであり、すべてのGENEA015HLAクラスI対立遺伝子の共通配列である。この領域中のPAM配列の検索により、6つの明確な潜在的な標的が戻され、それに対するgRNAを合成した。それぞれのgRNAは固有の特異性(Hsuら、2013年の特異性スコアによる)および効率(Doenchら、2014年の活性スコアによる)(表5を参照)を有しており、一般的な法則として、いずれの指数でも値が高ければ高いほどガイドの品質が良好である。図21に示すように、標的配列はHLA-Aのエクソン6に位置する。
(実施例28)
ヒト胚性幹細胞株におけるHLA座位のノックアウト。
たとえば実施例27に実証するように適切なHLA標的配列が同定された後、gRNAを合成し、RNAガイドのDNAエンドヌクレアーゼ酵素と組み合わせて、核酸の形態またはタンパク質として細胞に送達することができる。送達は多くの異なる方法(たとえば、トランスフェクション、リポフェクション、形質導入、塩化カルシウム、ヌクレオフェクション、電気穿孔、プロテオフェクション)によって行うことができる。CD4または蛍光タンパク質などの表面タンパク質の発現の誘導は、酵素の受け取りに成功した細胞の同定およびさらなる選別を補助し得る。あるいは、細胞と適切な抗生物質と共にインキュベートすることによって陽性細胞の選択を可能にするために、抗生物質耐性カセットを導入することができる。
選別/選択された細胞を一緒にプールし、拡大する。拡大後、プールした細胞の試料をT7エンドヌクレアーゼI(またはSURVEYOR)に供して編集効率を確認する。手短に述べると、ゲノムDNAを抽出し、標的領域をPCRによって増幅する。単位複製配列を精製し、変性させ、アニーリングさせ、T7エンドヌクレアーゼIの存在下でインキュベートする。不完全一致DNAのアニーリングによって発生したヘテロ二重鎖はエンドヌクレアーゼによって切断される。反応を停止させ、生成物を精製し、2%のアガロースゲルによって分離する。ゲル中に見えるバンドの数を遺伝子改変の百分率の推定として使用することができる。
編集が見つかったらすぐに、細胞をクローン希釈でプレーティングし、クローンを拡大した後、プールした細胞について上述したものと同じ過程に供するが、代案として、増幅した標的を改変のプロファイリングのためにシーケンシングまたは高解像度融解(HRM)に直接供することができる。編集について陽性であることが判明したクローンを内部品質管理に供する(多能性、比較ゲノムハイブリダイゼーション、マイコプラズマ)。最終的に、編集細胞の選択されたクローンをHLA型決定に再度提出する、および/またはその全ゲノムを配列決定する。HLA-KO細胞株の衛星様細胞および筋管を発生する能力は確認されている。HLA抗原が存在しないことは、衛星細胞、筋芽細胞、および筋管段階において確認されている。
本開示の好ましい実施形態が本明細書で示され、記載されたが、そのような実施形態は例としてだけ提供されていることは当業者に明らかになる。本明細書の実施形態の記載および図示は限定する意味で解釈されるためのものではない。本発明を逸脱しない範囲で、当業者は今では多くの変異形、変更および代替を思いつく。さらに、本発明の全ての態様が、様々な条件および変数に依存する、本明細書に示される具体的な描写、構成または相対的な割合に限定されるとは限らないことを理解すべきである。本明細書に記載される本発明の実施形態への様々な代替物を本発明の実施で用いることができることを理解すべきである。本開示には、当業者が理解するであろう、本明細書中の例の実施形態に対するすべての変更、置換、変形、変更、および改変が包含される。以下の請求項が本発明の範囲を規定し、これらの請求項の範囲内の方法および構造ならびにそれらの同等物はそれに含まれることを意図する。