JP2022512727A - 高抵抗性経内皮バリアを誘導する相乗的転写因子 - Google Patents

高抵抗性経内皮バリアを誘導する相乗的転写因子 Download PDF

Info

Publication number
JP2022512727A
JP2022512727A JP2021521104A JP2021521104A JP2022512727A JP 2022512727 A JP2022512727 A JP 2022512727A JP 2021521104 A JP2021521104 A JP 2021521104A JP 2021521104 A JP2021521104 A JP 2021521104A JP 2022512727 A JP2022512727 A JP 2022512727A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cells
cell
teer
drug candidate
vitro
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021521104A
Other languages
English (en)
Inventor
チャド エー. コワン
クラース アイコ マイヤー
フィリプ ルドニツキ
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
F Hoffmann La Roche AG
Original Assignee
F Hoffmann La Roche AG
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by F Hoffmann La Roche AG filed Critical F Hoffmann La Roche AG
Publication of JP2022512727A publication Critical patent/JP2022512727A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N5/00Undifferentiated human, animal or plant cells, e.g. cell lines; Tissues; Cultivation or maintenance thereof; Culture media therefor
    • C12N5/06Animal cells or tissues; Human cells or tissues
    • C12N5/0602Vertebrate cells
    • C12N5/069Vascular Endothelial cells
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/63Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
    • C12N15/79Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts
    • C12N15/85Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts for animal cells
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2501/00Active agents used in cell culture processes, e.g. differentation
    • C12N2501/60Transcription factors
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2510/00Genetically modified cells

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Vascular Medicine (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Abstract

本出願は、経内皮バリア完全性を増大させることができる転写因子に関する。更に、本出願は、そのような転写因子をコードするベクター、及びそのようなベクターを含む細胞の使用に関する。

Description

発明の分野
本出願は、経内皮バリア完全性の完全性を増大させることができる転写因子に関する。更に、本出願は、そのような転写因子をコードするベクター、及びそのようなベクターを含む細胞の使用に関する。
背景
内皮細胞(endothelial cell:EC)の発生は発生の初期に始まり、各段階がより特殊化したEC型を発生させ、最終的には器官の血管新生が完全に機能的かつ特殊化したECを発生させる、別々の発達段階を経る(Potente M、Makinen T.、「Nature reviews Molecular cell biology.」(2017年)第18巻、第8号、第477~94頁(非特許文献1)、Dejana E、Hirschi KK.(2017年)第8巻、第14361号(非特許文献2))。血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)のECは、タイトジャンクションの発現により非常に高い抵抗性バリアを形成するために特殊化している(Dejana E、Tournier-Lasserve E、「Weinstein BM.「Developmental cell.」(2009年)第16巻、第2号、第209~21頁(非特許文献3))。転写因子は遺伝子発現及び発達の主要な調節因子の1つであり、初期の血管発達におけるそれらの役割は広く研究されている(De Val S、Black BL.、「Developmental cell.」(2009年)第16巻、第2号、第180~95頁(非特許文献4))が、臓器特異的分化における内皮細胞発達の転写調節はあまり理解されていない(例えば、BBB(Dejana E.(2010年)第107巻、第8号、第943~52頁(非特許文献5)、Mizee MR、Wooldrik D、Lakeman KA、van het Hof B、Drexhage JA、Geerts Dら、「The Journal of neuroscience:the official journal of the Society for Neuroscience.」(2013年)第33巻、第4号、第1660~71頁(非特許文献6)、Engelhardt B、Liebner S.(2014年)第355巻、第3号、第687~99頁(非特許文献7)))。
インビトロのECバリアをモデリングするために存在する現在のモデルは高度に洗練されており、正確に再現することが難しく、創薬に適応することが困難である。したがって、例えば健康状態及び疾患状態におけるBBBを研究するためのモデルとして、高抵抗性のインビトロ経内皮バリア完全性(transendothelial barrier integrity:TBI)を確立することができる大量のECを生成するのに適したロバストな細胞培養方法に対する必要性が依然として存在する。
本発明者らは、以前に、ヒト多能性幹細胞を機能性内皮細胞に分化させるための簡単でスケーラブルな6日間プロトコルを確立した(Patsch C、Challet-Meylan L、Thoma EC、Urich E、Heckel T、O’Sullivan JFら、「Nature cell biology.」(2015年)第17巻、第8号、第994~1003頁(非特許文献8))。
本明細書では、本発明者らは、インビトロの高抵抗性バリアを確立可能な内皮細胞(EC)を生成することができる転写因子の相乗的組合せを提供する。本明細書に記載されている転写因子の組合せは、とりわけ疾患モデリング又は創薬若しくは毒性学研究に使用することができる高バリア完全性を確立可能なECを生成するため、直接的かつロバストなプロトコルにおいて使用することができる。
Potente M、Makinen T.、「Nature reviews Molecular cell biology.」(2017年)第18巻、第8号、第477~94頁 Dejana E、Hirschi KK.(2017年)第8巻、第14361号 Dejana E、Tournier-Lasserve E、「Weinstein BM.「Developmental cell.」(2009年)第16巻、第2号、第209~21頁 De Val S、Black BL.、「Developmental cell.」(2009年)第16巻、第2号、第180~95頁 Dejana E.(2010年)第107巻、第8号、第943~52頁 Mizee MR、Wooldrik D、Lakeman KA、van het Hof B、Drexhage JA、Geerts Dら、「The Journal of neuroscience:the official journal of the Society for Neuroscience.」(2013年)第33巻、第4号、第1660~71頁 Engelhardt B、Liebner S.(2014年)第355巻、第3号、第687~99頁 Patsch C、Challet-Meylan L、Thoma EC、Urich E、Heckel T、O’Sullivan JFら、「Nature cell biology.」(2015年)第17巻、第8号、第994~1003頁
高い経内皮電気抵抗(transendothelial electrical resistance:TEER)を確立することができる細胞を作製するための方法であって、該細胞を少なくとも1つの転写因子と接触させる工程を含み、ここで、該細胞のコンフルエント単層が、該少なくとも1つの転写因子と接触しない細胞のコンフルエント単層と比較してより高い経内皮電気抵抗を確立する、方法が提供される。
一実施形態では、該少なくとも1つの転写因子は、TAL1、SOX18、FOXF2、SOX7、FOXC1、ETS1、KLF11、LMO2、及びLEF1からなる群から個別に選択される。
一実施形態では、該少なくとも1つの転写因子は、ETS1、SOX18、及びSOX7からなる群から選択され、ここで、特に該転写因子は、ETS1、SOX18、及びSOX7である。
一実施形態では、該転写因子は、(i)ETS1、SOX18、SOX7、及びTAL1、又は(ii)ETS1、SOX18、SOX7、及びLEF1である。
一実施形態では、該最小1つの転写因子をコードする単離された核酸は、該細胞に導入される。
一実施形態では、該単離された核酸は、少なくとも1つの発現ベクターに含まれ、特に該少なくとも1つの発現ベクターは、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、及びプラスミドベクターからなる群から個別に選択される。
一実施形態では、該細胞は、内皮細胞(EC)である。
一実施形態では、TAL1、SOX18、FOXF2、SOX7、FOXC1、ETS1、KLF11、LMO2、及びLEF1からなる群から選択される少なくとも1つの転写因子をコードする単離された核酸を含む、発現ベクターが提供される。
一実施形態では、該ベクターは、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、又はプラスミドベクターである。
一実施形態では、該単離された核酸は、ETS1、SOX18、及びSOX7からなる群から選択される少なくとも1つの該転写因子をコードし、特に、該単離された核酸は、該転写因子ETS1、SOX18、及びSOX7をコードする。
一実施形態では、該単離された核酸は、該転写因子(i)ETS1、SOX18、SOX7、及びTAL1、又は(ii)ETS1、SOX18、SOX7、及びLEF1をコードする。
一実施形態では、本明細書に記載の発現ベクターのうちの1つ以上を含む細胞が提供される。
一実施形態では、該細胞は、哺乳動物細胞、特にヒト細胞である。
一実施形態では、高いTEERを確立することができる該細胞が、(i)インビボ経内皮バリア完全性(TBI)を増大させることができるか、又は(ii)内皮細胞(EC)のインビボTBIを低減させることができる薬物候補を同定するために使用される、本明細書に記載の方法が提供される。一実施形態では、該方法は、
(a)高いTEERを確立することができる細胞の単層を提供する工程;
(b)該細胞を該薬物候補と接触させる工程;
(c)該細胞を該薬物候補と接触させる前及び後におけるインビトロTEERを測定する工程か、又は該薬物候補と接触させた該細胞のインビトロTEERを測定し、かつ並行して、該薬物候補と接触させなかった細胞のインビトロTEERを測定する工程であって、
ここで、(i)該薬物候補と接触させなかった該細胞の該インビトロTEERと比較して、該薬物候補と接触させた該細胞のより高いインビトロTEERは、ECのインビボTBIを増大させることができる薬物を示し、(ii)該薬物候補と接触させなかった該細胞のインビトロTEERと比較して、該薬物候補と接触した該細胞のより低いインビトロTEERは、ECのインビボTBIを低減させることができる薬物を示す、工程
を含む。
内皮バリア抵抗性を促進する転写因子の同定。抵抗性測定の安定化後(10時間)にMOI 80アデノウイルスを加えた24時間後の平均相対バリア抵抗性の測定;平均は3つの独立した実験による(図1A)。有意な効果、又は24時間でバリア抵抗性増大の傾向を示した転写因子に対するECバリア抵抗性のリアルタイム測定を、ECISにより行った。バリア測定値が安定したら、処理後10時間で値を正規化した。線は平均抵抗性を示す(図1B)。形質導入後48時間での透過性のFITCデキストラン測定;平均は3つの独立した実験からである(図1C)。ECマーカ遺伝子(図1D、図1E、図1F),ECバリアジャンクション形成遺伝子(図1G、図1H、図1I、図1J、図1K、図1L、図1M、図1N、図1O)、及びECバリア形成に重要であると知られている遺伝子(図1P、図1Q、図1R)の相対的mRNA発現。カラムは平均±標準偏差を示す。*=p又はFDR<0.05、**=p又はFDR<0.01、**=p又はFDR<0.001。全ての処理を3回行った。 転写因子の組合せの過剰発現は内皮細胞バリア抵抗性を相乗的に誘導する。抵抗性測定の安定化後(10時間)にMOI 20アデノウイルスを加えた24時間後の平均相対バリア抵抗性の測定;平均は3つの独立した実験による(図2A)。形質導入後48時間での透過性のFITCデキストラン測定;平均は3つの独立した実験からである(図2B)。抵抗性測定の安定化後(10時間)に、各MOI 20である4つのアデノウイルスの組合せを加えた24時間後の平均相対バリア抵抗性の測定;平均は3つの独立した実験による(図2C)。TF(各MOI 20)の組合せに対するECバリア抵抗性のリアルタイム測定。線は平均抵抗性を示し、影は標準偏差に対応する(図2D)。形質導入後48時間での透過性のFITCデキストラン測定;平均は3つの独立した実験による。カラムは平均±標準偏差を示す(図2E)。
引用文献
Figure 2022512727000001
Figure 2022512727000002
詳細な説明
本明細書で使用される場合、用語「限定培地」又は「既知組成培地」とは、全ての個別成分及びそれら各々の濃度が既知である細胞培養培地を指す。限定培地は組換え成分及び既知組成成分を含み得る。
本明細書で使用される場合、用語「分化すること」、「分化」、及び「分化する」とは、低分化細胞を体細胞に変換する、例えば多能性幹細胞をECに変換するための1つ以上の工程を指す。多能性幹細胞のECへの分化は本明細書に記載の方法によって達成される。
本明細書で使用される場合、「EC」と略される「内皮細胞」は、特異的表面マーカCD144(分化クラスタ144、2型カドヘリン5又は血管内皮(vascular endothelial:VE)カドヘリンとしても知られる、正式略称CDH5)を発現し、内皮細胞の特徴すなわち毛細血管様管形成と、CD31(分化クラスタ31、正式略称PECAM1)、vWF(フォンビルブランド因子、正式略称VWF)、CD34(分化クラスタ34、正式略称CD34)、CD105(分化クラスタ105、正式略称ENG)、CD146(分化クラスタ34、公式のシンボルMCAM)、及びVEGFR-2(キナーゼ挿入ドメイン受容体(III型受容体チロシンキナーゼ)、正式略称KDR)の群から選択される1つ以上の更なる表面マーカの発現と、を有する細胞である。
「拡大培養用培地」とは、本明細書で使用される場合、単層上の内皮細胞を拡大培養及び継代培養するのに有用な、任意の既知組成培地を指す。
用語「増殖因子」とは、本明細書で使用される場合、細胞増殖を引き起こす生物学的に活性なポリペプチド又は小分子化合物を意味し、成長因子及びそれらの類似体の両方を含む。
本明細書で使用される「ハイ・スループット・スクリーニング」は、多数の異なる疾患モデル状態及び/又は化学化合物を並列及び/又は逐次的に分析及び比較することができることを意味するものと理解されよう。典型的には、そのようなハイ・スループット・スクリーニングは、マルチウェル・マイクロタイタ・プレート、例えば96ウェルプレート若しくは384ウェルプレート、又は1536若しくは3456ウェルを有するプレートにおいて実施される。
「誘導用培地」とは、本明細書で使用される場合、単層上のCD144ポジティブ(CD144+)内皮細胞へのプライム細胞の誘導に有用である、任意の既知組成培地を指す。
「細胞の単層」とは、本明細書で使用される場合、非コンフルエント単一細胞及び/又は細胞集塊(例えば、胚様体)の培養とは対照的に、細胞が1つの単一フィルム内で接着基質に付着した個々の細胞として提供され、この場合、複数層内の細胞の固体塊が接着性基質に付着した様々な三次元形成を形成することを意味する。
用語「核酸」は、ポリヌクレオチドにより構成されるプリン塩基及びピリミジン塩基を含む塩基の組成物並びに/又は配列に関する。これにより、該塩基は、ポリペプチド及び/又はタンパク質(例えば、転写因子)をコードする核酸の一次構造を表す。用語「核酸」とは、本明細書では、ポリヌクレオチド(複数可)及び核酸分子という用語と同義に使用される。本明細書では、核酸という用語は、DNA、cDNA、ゲノムDNA、RNA、DNAの合成形態、及びこれらの分子のうちの2つ以上を含む混合ポリマーを含む。加えて、核酸という用語は、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方を含む。その上、本明細書に説明される核酸は、当業者に容易に理解されるように、非天然の又は誘導体化されたヌクレオチド塩基を含有することができる。
「単離された核酸」分子又は「単離されたポリヌクレオチド」は、その天然環境から取り出された核酸分子、DNA、又はRNAを意図する。例えば、ベクターにおいて含有されるポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは、本発明の目的のために単離されていると考えられる。単離されたポリヌクレオチドの更なる例としては、異種性宿主細胞において維持された組換えポリヌクレオチド、又は溶液中の精製された(部分的に又は実質的に)、ポリヌクレオチドが挙げられる。単離されたポリヌクレオチドは、元々ポリヌクレオチド分子を含有する細胞において含有されているポリヌクレオチド分子を含むが、ポリヌクレオチド分子は、染色体外に存在するか、又はその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
「少なくとも1つの転写因子をコードする核酸」とは、本発明の転写因子(又はその断片及び/又は変異体)をコードする1つ以上の核酸分子を指し、単一のベクター又は別個のベクター内のかかる核酸分子(複数可)を含み、かかる核酸分子(複数可)は宿主細胞内の1つ以上の場所に存在する。
「多能性培地」とは、本明細書で使用される場合、その多能性を維持しながら単層上に単一細胞として多能性幹細胞を付着させるために有用である、任意の既知組成培地を指す。有用な多能性培地は、本明細書にも記載される当技術分野で周知である。本明細書に記載の特定の実施形態では、多能性培地は、以下の成長因子:塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:bFGF、線維芽細胞増殖因子2(Fibroblast Growth Factor 2:FGF2)としても示される)及びトランスフォーミング増殖因子β(transforming growth factor β:TGFβ)のうちの少なくとも1つを含む。
用語「再プログラミング」とは、本明細書で使用される場合、例えば、線維芽細胞、脂肪細胞、ケラチノサイト、又は白血球を多能性幹細胞に変換するために体細胞を低分化細胞へと変換するのに必要である、1以上の工程を指す。「再プログラムされた」細胞とは、本明細書で使用される場合、体細胞を再プログラムすることによって誘導される細胞を指す。
用語「小分子」又は「小化合物」又は「小分子化合物」とは、本明細書で使用される場合、合成されるか又は自然界で見出されるかのいずれかであり、一般的に10,000グラム/モル未満、任意に5,000グラム/モル未満、及び任意に2,000グラム/モル未満の分子量を有する有機又は無機分子を指す。
用語「体細胞」とは、本明細書で使用される場合、生殖系細胞(例えば、精子及び卵子、それらが作られる細胞(生殖母細胞))及び未分化幹細胞ではない生物体を形成する任意の細胞を指す。
用語「幹細胞」とは、本明細書で使用される場合、自己複製能を有する細胞を指す。「未分化幹細胞」とは、本明細書で使用される場合、多様な細胞型に分化する能力を有する幹細胞を指す。「多能性幹細胞」とは、本明細書で使用される場合、複数の細胞型の細胞を生じ得る幹細胞を指す。多能性幹細胞(pluripotent stem cell:PSC)は、ヒト胚性幹細胞(human embryonic stem cell:hESC)及びヒト人工多能性幹細胞(human induced pluripotent stem cell:hiPSC)を含む。ヒト人工多能性幹細胞は、再プログラム化された体細胞から、例えば、当該技術分野で公知でありかつ本明細書で更に記載される方法による、4つの規定因子(Sox2、Oct4、Klf4、c-Myc)の形質導入によって誘導することができる。該ヒト体細胞は健康な個体又は患者から得ることができる。これらのドナー細胞は任意の適切な供給源から得ることができる。本明細書においては、人体に侵襲的な処置を行うことなく、ドナー細胞、例えばヒト皮膚細胞、血液細胞、又は尿試料から得られ得る細胞の単離を可能にする供給源が好ましい。
ヒト細胞が好ましいが、本明細書に記載される方法はまた、霊長類、齧歯類(例えば、ラット、マウス、ウサギ)、及びイヌ細胞などの非ヒト細胞にも適用可能である。
用語「高抵抗性経内皮バリア」とは、本明細書で使用される場合、インビトロ及びインビボの内皮細胞の機能的特徴を指す。内皮細胞(EC)は血管内腔と周辺組織との間の半選択的バリアとして作用し、物質の通過及び白血球細胞の血流への出入りを制御する。この高抵抗性経内皮バリアの完全性は、本明細書では、「経内皮バリア完全性」又は「TBI」と称される。バリア機能の喪失は健康状態及び疾患状態において観察され、例えば、治癒、血管新生、及び慢性炎症は、一時的又は永久的なTBIの喪失と一致し得る。TBIは、本明細書に記載され(例えば、多能性細胞からのEC培養)、そして当該技術分野において既知(例えば、短期初代細胞培養)の適当な条件下において作製されたECの単層によってインビトロでモデル化することができる(例えば、EC培養)。TBI、例えばインビトロTBIは、当該技術分野で既知の方法(例えば、TEER及びFITCデキストラン透過性の測定)及び本明細書に記載の方法を用いて測定することができる。用語「インビトロTBI」とは、本明細書で使用される場合、インビトロEC培養物のTBIを指し、ここで、該TBIは、培養物中の細胞単層を横切って、例えば、単層下の培養容器表面と細胞単層上の細胞培養培地との間で測定される(従来の2次元細胞培養装置)。したがって、用語「インビボTBI」とは、本明細書で使用される場合、インビボECのTBIを指し、ここで、該TBIは、血管内腔と周辺組織との間で確立及び/又は決定(例えば、測定)される。
用語「経内皮電気抵抗」又は「TEER」とは、本明細書で使用される場合、EC単層の細胞培養におけるタイト・ジャンクション・ダイナミクスの完全性の定量測定を指す。TEERはインビトロバリアのモデルシステムの文脈で広く受け入れられているパラメータである(Srinivasan B.、Kolli AR、Esch MB、Abaci HE、Shuler ML、Hickman JJ.、「J Lab Autom.」(2015年)第20巻、第2号、第107~126頁)。一実施形態では、細胞単層の電気抵抗又はインピーダンスは、バリア完全性の定量測定である。非侵襲的技術であるため、TEERは、短期、中期、又は長期の細胞培養における反復又はリアルタイム測定に特に適している。TEER測定は、適切な周波数スペクトルにわたるオーム抵抗又はインピーダンスの測定に基づいてもよい。一実施形態では、細胞単層は、上部(頂端部)及び下部(基底外側部)区画を画定する半透過性フィルタインサート上で培養される。一実施形態では、頂端部区画に配置された第1の電極と基底外側部区画に配置された第2の電極とは、細胞単層によって分離される。一実施形態では、矩形波の交流(alternating current:AC)電圧信号が印加される。一実施形態では、周波数200~300HzのACが印加される。一実施形態では、直径250μmである円形の金電極を覆う細胞上のインピーダンスは、250Hzで測定される。
この文脈においては、本発明者らは驚くべきことに、ある種の転写因子、特に本明細書に記載されているような転写因子の組合せが、内皮細胞(EC)において強いTBIを誘導することを見出した。そのような転写因子と接触した細胞、特にECは、例えば、そのような細胞の単層を通る分子及びイオンの通過を制限する高抵抗性経内皮バリアを形成することができるようになる。この文脈においては、本発明は、高抵抗性経内皮バリアを形成/確立することができる細胞、特にECを提供する。本明細書に記載された方法に従って作製された本明細書に記載の細胞は、とりわけ、細胞培養物、特に、経内皮バリア完全性が特徴である(例えば、TBIの破綻は疾患又はBBB完全性に起因する)、健康状態又は疾患状態の細胞培養モデルを確立するために使用され得る。一実施形態では、本明細書に記載される細胞培養物は、医薬品開発の設定において使用される。本明細書に記載の方法で作製される細胞培養物の例示的な使用は、薬物候補に対する細胞/組織のインビボ応答の予測である。概念実証として、ECを本明細書に記載の転写因子の組合せ(例えば、TAL1、SOX18、FOXF2、SOX7、FOXC1、ETS1、KLF11、LMO2、LEF1、及びこれらの組合せ)と接触させたところ、経内皮電気抵抗(TEER)の著しい増大が観察された(例えば、図1B、図2C、図2D、図2E参照)。TEERは、例えば細胞の単層を横切るイオンの動きと相関し、そうしてTBIと相関する。この文脈においては、高いTEERは、本明細書で更に記載されるように、確立された高抵抗性経内皮バリアと相関する。本明細書に提供されるこのデータ及び更なるデータは、本明細書に記載される特異的転写因子及びその組合せが、TBI(例えば、TEER又はFITCデキストラン透過性によって測定)を相乗的に誘導することができ、高抵抗性経内皮バリアを形成/確立することができる細胞を産生するのに有用であることを実証する。本明細書に記載される転写因子、そのような転写因子をコードする発現ベクター、及びそのような発現ベクターを含む細胞は、とりわけ、健康及び疾患におけるECのロバストかつ有意なモデルを生成するために有用である。このような細胞培養モデルは、化学ライブラリをプロファイリングして、内皮バリアの完全性を増大させるか、又はバリア破壊の喪失を防止する化合物を発見するための方法で使用することができる。
転写因子と接触する細胞を本明細書で提供する。転写因子に応答して、細胞は、例えば当該技術分野で周知でありかつ本明細書に記載されるように、TEERを測定する(リアルタイムで)ことによって測定され得る、増大した経内皮バリア完全性を確立する。したがって、本明細書に記載の転写因子又は本明細書に記載の転写因子の組合せと接触した細胞は、高抵抗性経内皮バリアを形成することができるようになる。好ましい実施形態では、細胞(複数可)は、内皮細胞(複数可)である。更なる実施形態では、細胞(複数可)は、本明細書に記載されるように、転写因子との接触に応答してインビボ内皮細胞特性を確立及び/又は維持する。
一実施形態では、細胞は、少なくとも1つの転写因子と接触される。一実施形態では、転写因子は、TAL1、SOX18、FOXF2、SOX7、FOXC1、ETS1、KLF11、LMO2、及びLEF1からなる群から選択される。一実施形態では、細胞は、TAL1、SOX18、FOXF2、SOX7、FOXC1、ETS1、KLF11、LMO2、及びLEF1からなる群から選択される2つの転写因子と接触される。一実施形態では、細胞は、TAL1、SOX18、FOXF2、SOX7、FOXC1、ETS1、KLF11、LMO2、及びLEF1からなる群から選択される3つの転写因子と接触される。一実施形態では、細胞は、TAL1、SOX18、FOXF2、SOX7、FOXC1、ETS1、KLF11、LMO2、及びLEF1からなる群から選択される4つの転写因子と接触される。一実施形態では、細胞は、TAL1、SOX18、FOXF2、SOX7、FOXC1、ETS1、KLF11、LMO2、及びLEF1からなる群から選択される5つの転写因子と接触される。特定の一実施形態では、転写因子は、ETS1、SOX18、及びSOX7である。好ましい実施形態では、転写因子は、(i)ETS1、SOX18、SOX7、及びTAL1、又は(ii)ETS1、SOX18、SOX7、及びLEF1、最も好ましくはETS1、SOX18、SOX7、及びTAL1である。
一実施形態では、少なくとも1つの転写因子は、細胞へ導入される。転写因子は、当該技術分野で周知の方法及び本明細書に記載の方法によって、細胞、例えばECに導入することができる。一実施形態では、転写因子は、単離された核酸によってコードされる。一実施形態では、少なくとも1つの転写因子をコードする単離された核酸は、細胞に導入される。一実施形態では、単離された核酸は、少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む。一実施形態では、少なくとも1つの転写因子をコードする単離された核酸は、少なくとも1つの発現ベクター中に含まれる。一実施形態では、細胞、例えば内皮細胞は、少なくとも1つの発現ベクターと接触され、特に該少なくとも1つの発現ベクターは、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、及びプラスミドベクターからなる群から個別に選択される。一実施形態では、1、2、3、4、又は5つの発現ベクターが細胞(例えば、EC)に導入される。一実施形態では、1つの発現ベクター、特にウイルスベクターが、細胞に導入される。一実施形態では、2つの発現ベクターが細胞に導入され、ここで、該発現ベクターは、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、及びプラスミドベクターからなる群から個別に選択される。一実施形態では、3つの発現ベクターが細胞に導入され、ここで、該発現ベクターは、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、及びプラスミドベクターからなる群から個別に選択される。一実施形態では、4つの発現ベクターが細胞に導入され、ここで、該発現ベクターは、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、及びプラスミドベクターからなる群から個別に選択される。一実施形態では、5つの発現ベクターが細胞に導入され、ここで、該発現ベクターは、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、及びプラスミドベクターからなる群から個別に選択される。好ましい実施形態では、転写因子は、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、及びプラスミドベクター、特にウイルスベクターからなる群から選択される1つの発現ベクターに含まれる、単離された核酸によってコードされる。
本発明の更なる態様は、本発明にかかる1つ又はいくつかの転写因子をコードする単離された核酸(ポリヌクレオチド)及びベクター(例えば、発現ベクター)である。一実施形態では、該発現ベクターは、TAL1、SOX18、FOXF2、SOX7、FOXC1、ETS1、KLF11、LMO2、及びLEF1からなる群から選択される少なくとも1つの転写因子をコードする単離された核酸を含む。特定の一実施形態では、単離された核酸は、転写因子ETS1、SOX18、及びSOX7をコードする。好ましい実施形態では、単離された核酸は、転写因子は(i)ETS1、SOX18、SOX7、及びTAL1、又は(ii)ETS1、SOX18、SOX7、及びLEF1、最も好ましくはETS1、SOX18、SOX7、及びTAL1をコードする。
そのような転写因子のポリペプチド配列(複数可)はUniProtKB/Swiss-Protデータベースにあり、http://www.uniprot.org/uniprotから検索できる。ヒト転写因子の例示的な特定の参照が本明細書に提供される。(ヒト)TAL1(T細胞急性リンパ性白血病タンパク質1)の配列(複数可)は、Swiss-ProtデータベースエントリP17542(エントリバージョン187、シーケンスバージョン2)から取得できる。(ヒト)SOX18(転写因子SOX-18)の配列(複数可)は、Swiss-ProtデータベースエントリP35713(エントリバージョン168、シーケンスバージョン2)から取得できる。(ヒト)FOXF2(フォークヘッドボックスタンパク質F2)の配列(複数可)は、Swiss-ProtデータベースエントリQ12947(エントリバージョン149、シーケンスバージョン2)から取得できる。(ヒト)SOX7(転写因子SOX-7)の配列(複数可)は、Swiss-ProtデータベースエントリQ9BT81(エントリバージョン144、シーケンスバージョン1)から取得できる。(ヒト)FOXC1(フォークヘッドボックスタンパク質C1)の配列(複数可)は、Swiss-ProtデータベースエントリQ12948(エントリバージョン184、シーケンスバージョン3)から取得できる。(ヒト)ETS1(タンパク質C-ets-1)の配列(複数可)は、Swiss-ProtデータベースエントリP14921(エントリバージョン203、シーケンスバージョン1)から取得できる。(ヒト)KLF11(クルッペル様因子11)の配列(複数可)は、Swiss-ProtデータベースエントリO14901(エントリバージョン171、シーケンスバージョン2)から取得できる。(ヒト)LMO2(Rhombotin-2)の配列(複数可)は、Swiss-ProtデータベースエントリP25791(エントリバージョン178、シーケンスバージョン1)から取得できる。(ヒト)LEF1(リンパ系エンハンサー結合因子1)の配列(複数可)は、Swiss-ProtデータベースエントリQ9UJU2(エントリバージョン177、シーケンスバージョン1)から取得できる。
本明細書に記載される少なくとも1つの転写因子をコードする単離された核酸は、従来の手順を用いて(例えば、本明細書中に記載される遺伝子転写因子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に単離され、配列決定され得るか、又は組換え方法によって産生され得るか、又は化学合成によって得られ得る。本発明の転写因子の例示的ポリヌクレオチド配列(複数可)は、NCBIデータベースで入手可能であり、www.ncbi.nlm.nih.govから検索することができる。ヒト転写因子の例示的な特定の参照が本明細書に提供される。(ヒト)TAL1(T細胞急性リンパ性白血病タンパク質1)をコードする核酸配列は、NCBIデータベースエントリNP_001274276.1から取得できる。(ヒト)SOX18(転写因子SOX-18)をコードする核酸配列は、NCBIデータベースエントリNP_060889.1から取得できる。(ヒト)FOXF2(フォークヘッドボックスタンパク質F2)をコードする核酸配列は、NCBIデータベースエントリNP_001443.1から取得できる。(ヒト)SOX7(転写因子SOX-7)をコードする核酸配列は、NCBIデータベースエントリNP_113627.1から取得できる。(ヒト)FOXC1(フォークヘッドボックスタンパク質C1)をコードする核酸配列は、NCBIデータベースエントリNP_001444.2から取得できる。(ヒト)ETS1(タンパク質C-ets-1)をコードする核酸配列は、NCBIデータベースエントリNP_001137292.1から取得できる。(ヒト)KLF11(クルッペル様因子11)をコードする核酸配列は、NCBIデータベースエントリNP_001171187.1から取得できる。(ヒト)LMO2(Rhombotin-2)をコードする核酸配列は、NCBIデータベースエントリNP_001135787.1から取得できる。(ヒト)LEF1(リンパ系エンハンサー結合因子1)をコードする核酸配列は、NCBIデータベースエントリNP_001124185.1から取得できる。
本明細書に記載される少なくとも1つの転写因子をコードする単離された核酸は、宿主細胞における更なるクローニング、導入、及び/又は発現のために単離され、1つ以上のベクターに挿入され得る。形質移入又は形質導入、すなわち形質転換(真核)細胞に適切なベクターは、当該技術分野で周知であり、本明細書に記載されている。本発明の1つ又はいくつかの転写因子をコードする単離された核酸は、制御配列の制御下にあり得る。例えば、本発明の転写因子の発現誘導を可能にするプロモーター、転写エンハンサー、及び/又は配列を採用してもよい。本発明の文脈において、単離された核酸は、構成プロモーター又は誘導性プロモーターの制御下で発現する。適切なプロモーターは、例えば、CMVプロモーター、UbiCプロモーターPGK、EF1Aプロモーター、CAGGプロモーター、SV40プロモーター、COPIAプロモーター、ACT5Cプロモーター、TREプロモーター、Oct3/4プロモーター、又はNanogプロモーターである。本発明はまた、したがって、(a)本発明に記載の単離された核酸を含むベクター(複数可)に関する。特定の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、及びプラスミドベクターである。一実施形態では、該ベクターは、真核細胞を形質転換(例えば、形質移入又は形質導入)することができる。一実施形態では、ベクターは、真核細胞を形質導入することができる。用語「ベクター」とは、本明細書において、導入されている宿主細胞において(すなわち、形質導入された細胞において)自己複製することができる環状又は線状の核酸分子に関する。選択が所望の機能に依存するであろう多くの適切なベクターは、分子生物学における当業者に公知であり、プラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージ及び遺伝子工学において従来より使用されている他のベクターを含む。当業者に周知である方法は、種々のプラスミドベクターを構築するために使用することができ、例えば、Sambrookら(同所)及びAusubel、「Current Protocols in Molecular Biology」、Green Publishing Associates及びWiley Interscience、ニューヨクーク(1989年)、(1994年)において説明されている技術を参照されたい。あるいは、本発明の単離された核酸(ポリヌクレオチド)及びベクターは、標的細胞への送達のためにリポソーム内へと再構成することができる。更に、クローニングベクターを使用して、DNAの個々の配列を単離することができる。関連する配列は、特定のポリペプチドの発現を必要とする発現ベクター内へと移すことができる。典型的なクローニングベクターは、pBluescript SK、pGEM、pUC9、pBR322、pGA18及びpGBT9を含む。典型的な発現ベクターは、pTRE、pCAL-n-EK、pESP-1、pOP13CATを含む。
この文脈においては、本発明はまた、(a)本明細書で定義される1つ以上の転写因子をコードする該単離された核酸に動作可能に連結された制御配列である、単離された核酸(ポリヌクレオチド)を含むベクター(複数可)に関する。このような制御配列(制御要素)は、当業者に公知であり、プロモーター、スプライスカセット、翻訳開始コドン、ベクター(複数可)内へインサートを導入するための翻訳及び挿入部位を含むことができる。本発明の文脈において、単離された核酸は、真核細胞又は原核細胞における発現を可能にする発現制御配列へ作用するように連結される。ベクター(複数可)は、本明細書に定義されるような転写因子(複数可)をコードする単離された核酸を含む発現ベクター(複数可)であると想定される。作用可能に連結されたとは、そのように説明される構成要素が、意図する様式で機能することができる関係性にある事実を指す。コード配列へ作用可能に連結された制御配列は、コード配列の発現が制御配列と互換性のある条件下で達成されるような方法でライゲートされる。制御配列がプロモーターである場合、二本鎖核酸が好ましくは使用されることは当業者に明白である。一実施形態では、ベクターは、ポリシストロニックである。
発現は、好ましくは翻訳可能なmRNAへの単離された核酸(ポリヌクレオチド)の転写を含む。原核細胞及び/又は真核細胞における発現を確保する調節エレメントは、当業者に周知である。真核細胞の場合において、細胞は普通、転写の開始を確保するプロモーターと、任意に、転写の終結及び転写産物の安定化を確保するポリAシグナルとを含む。原核宿主細胞における発現を可能にする考えられ得る調節エレメントは、例えば、E.coliにおけるPLプロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター若しくはtacプロモーターを含み、真核宿主細胞における発現を可能にする調節エレメントの例は、酵母におけるAOX1プロモーター若しくはGAL1プロモーターであり、又は哺乳動物細胞及び他の動物細胞におけるCMVプロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMVエンハンサー、SV40エンハンサー若しくはグロビンイントロンである。
転写の開始の原因となる要素のほかに、このような調節エレメントはまた、ポリヌクレオチドの下流に、SV40-ポリA部位又はtk-ポリA部位のような、転写終結シグナルも含むことができる。更に、使用される発現系に応じて、ポリペプチドを細胞区画へ差し向けることができる、又はポリペプチドを培地中へと分泌することができる、リーダ配列をコードするシグナルペプチドは、列挙された核酸配列のコード配列へ付加されてもよく、当技術分野で周知である。
本発明の文脈において、発現制御配列は、真核細胞を形質転換することができるベクター中の真核生物プロモーターシステムであるが、原核細胞の制御配列も使用され得る。ベクターが適切な細胞に取り込まれると、該細胞は、ヌクレオチド配列の発現に適した条件下で維持される。更なる調節エレメントは、転写及び翻訳エンハンサーを含み得る。本発明の上記のベクターは、選択可能及び/又はスコアリング可能なマーカを更に含み得る。形質転換した細胞の選択に有用である選択可能なマーカ遺伝子、例えば、アミノグリコシド、ネオマイシン、カナマイシン、及びパロマイシン(Herrera-Estrella、「EMBO J.2」(1983年)第987~995頁)に対する耐性を付与するnpt、及びハイグロマイシン(Marsh、「Gene」第32巻(1984年)第481~485頁)に対する抵抗性を付与するhygro。更なる選択可能な遺伝子、すなわち、細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用できるようにするtrpB;細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用できるようにするhisD(Hartman、「Proc.Natl.Acad.Sci.USA」第85巻(1988年)第8047頁);細胞が、オルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤に抵抗性を与えるマンノース(国際公開第94/20627号)及びODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)、ブラスチシジンS(Tamura、「Biosci.Biotechnol.Biochem.」第59巻(1995年)第2336~2338年)に抵抗性を与える2-(ジフルオロメチル)-DL-オルニチン、DFMO(McConlogue(1987年)「Current Communications in Molecular Biology」中、Cold Spring Harbor Laboratory編)又はAspergillus terreus由来のデアミナーゼを利用できるようにするマンノース-6-リン酸イソメラーゼが報告されている。
有用なスコラブルマーカも当業者には公知であり、市販されている。有利には、該マーカは、ルシフェラーゼ(Giacomin、「Pl.Sci.116」(1996年)第59~72頁;Scikantha、「J.Bact.」第178巻(1996年)第121頁、緑色蛍光タンパク質(Gerdes、「FEBS Lett.」第389巻(1996年)第44~47頁)、又はβ-グルクロニダーゼ(Jefferson、「EMBO J.」第6巻(1987年)第3901~3907頁)をコードする遺伝子である。この実施形態は、引用されたベクターを含有する細胞、組織、及び生物体の単純かつ迅速なスクリーニングへ特に有用である。
記載された単離された核酸及びベクター(複数可)は、細胞への直接導入若しくはリポソームを介した導入、又はウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、レトロウイルス)のために設計され得る。本発明の文脈において、該細胞は、EC又はECの前駆体であることが好ましい。
上記に従って、本発明は、本明細書中に定義される少なくとも1つの転写因子をコードする単離された核酸を含む、ベクター、特に、遺伝子工学において従来使用されるプラスミド、コスミド、及びウイルスベクターを誘導する方法に関する。特定の実施形態では、転写因子(複数可)は、TAL1、SOX18、FOXF2、SOX7、FOXC1、ETS1、KLF11、LMO2、及びLEF1からなる群から個別に選択される。本発明の文脈において、該ベクターは、発現ベクター、及び/又は遺伝子導入若しくはターゲティングベクターである。レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、又はウシパピローマウイルスなどのウイルスに由来する発現ベクターは、標的細胞集団への上述の核酸又はベクターの送達に使用され得る。
本発明はまた、本明細書に記載されるようなベクターで形質転換又は形質移入された細胞を提供する。該細胞は、上述のベクターの少なくとも1つを、該細胞又はその前駆細胞へ導入することによって作製することができる。本明細書に記載されるような前記少なくとも1つのベクターの存在は、細胞が本発明に従って形質移入されたことを示す。細胞(例えば、EC)又はその前駆細胞の中に導入される説明された単離された核酸又はベクター(複数可)は、細胞のゲノム内へと組み込むことができるか又は染色体外で維持することができるかのいずれかであり得る。
この文脈においては、高いTEERを確立することができる細胞が提供され、該細胞を少なくとも1つの転写因子と接触させる工程を含み、ここで、該細胞のコンフルエント単層が、該少なくとも1つの転写因子と接触しない細胞のコンフルエント単層と比較してより高いTEERを確立する。理論に縛られることなく、高抵抗性経内皮バリアを形成することができる細胞とは、高経内皮電気抵抗(TEER)を確立することができる細胞である。一実施形態では、本明細書で提供される転写因子と接触した本発明にかかる細胞は、コンフルエント細胞単層を形成する際に高いTEERを確立することができる。一実施形態では、少なくとも1つの転写因子と接触した細胞のコンフルエント単層は、少なくとも1つの転写因子と接触していない細胞のコンフルエント単層と比較して、より高いTEERを確立することができる。一実施形態では、本明細書に記載の少なくとも1つの転写因子を発現する細胞のコンフルエント単層は、少なくとも1つの転写因子を発現しない細胞のコンフルエント単層と比較して、より高いTEERを確立することができる。一実施形態では、TAL1、SOX18、FOXF2、SOX7、FOXC1、ETS1、KLF11、LMO2、及びLEF1からなる群から選択される少なくとも1つの転写因子を発現する細胞のコンフルエント単層は、少なくとも1つの転写因子を発現しない細胞のコンフルエント単層と比較して、より高いTEERを確立することができる。一実施形態では、TAL1、SOX18、FOXF2、SOX7、FOXC1、ETS1、KLF11、LMO2、及びLEF1からなる群から選択される少なくとも1つの転写因子を発現する細胞のコンフルエント単層のTEERは、少なくとも1つの転写因子を発現しない細胞のコンフルエント単層のTEERと比較して、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、5倍、又は10倍高い。一実施形態では、転写因子ETS1、SOX18、及びSOX7を発現する細胞のコンフルエント単層のTEERは、少なくとも1つの転写因子を発現しない細胞のコンフルエント単層のTEERと比較して、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、5倍、又は10倍高い。好ましい実施形態では、転写因子は、(i)ETS1、SOX18、SOX7、及びTAL1、又は(ii)ETS1、SOX18、SOX7、及びLEF1、最も好ましくはETS1、SOX18、SOX7、及びTAL1である。
一実施形態では、高いTEERを形成することができる細胞は、哺乳動物細胞である。一実施形態では、細胞は、齧歯類細胞、特にマウス細胞又はラット細胞である。好ましい実施形態では、細胞は、ヒト細胞である。
好ましい実施形態では、細胞は、内皮細胞(EC)である。ECは当該技術分野で周知のプロトコルに従ってインビトロで作製することができる。本発明の目的のためには、多能性幹細胞に由来するECが特に有用である。多能性幹細胞は自己再生特性を有し、成体哺乳動物体の全ての主要な細胞型で分化できる。多能性幹細胞は標準化された細胞培養条件下において大量に産生することができる。したがって、好ましい実施形態では、ECは、多能性幹細胞から分化する。一実施形態では、ECは、胚性幹細胞から分化する。別の実施形態では、ECは、人工多能性幹細胞(IPSC)から分化する。一実施形態では、IPSCは、再プログラムされた体細胞から生成される。IPSCへの体細胞の再プログラミングは、IPSC特性の維持に関与する特異的遺伝子を導入することによって達成できる。IPSCへの体細胞の再プログラミングに適した遺伝子として、Oct4、Sox2、Klf4、及びC-Myc、並びにそれらの組合せが挙げられる、これらに限定されない。一実施形態では、再プログラミング用の遺伝子は、Oct4、Sox2、Klf4、及びC-Mycである。
内臓、皮膚、骨、血液、及び結合組織は全て体細胞からできている。IPSCを生成するために使用される体細胞として、限定されるものではないが、線維芽細胞、脂肪細胞、及びケラチノサイトが挙げられ、皮膚生検から得ることができる。他の適切な体細胞は、白血球、血液試料若しくは上皮細胞から得られる赤芽球細胞、又は血液若しくは尿試料から得られる他細胞であり、当該技術分野で周知の方法及び本明細書で記載するようなIPSCにより再プログラムされる。体細胞は健康な個体又は罹患した個体から得ることができる。一実施形態では、体細胞は、疾患に罹患する対象(例えば、ヒト対象)に由来する。一実施形態では、疾患は、血管合併症(例えば、糖尿病性網膜症及び/又は滲出型AMDに関連する血管合併症と類似又は同一)に関連している。本明細書に記載の再プログラミングのための遺伝子は、再プログラミングベクターを介して細胞に送達することによって、又は小分子を介して該遺伝子を活性化することによってのいずれかで、当該技術分野で周知の方法によって体細胞へ導入される。再プログラミングの方法としては、とりわけ、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、プラスミド及びトランスポゾン、マイクロRNA、小分子、修飾RNA、メッセンジャRNA、並びに組換えタンパク質が挙げられる。一実施形態では、レンチウイルスは、本明細書に記載されるように、遺伝子の送達に使用される。別の実施形態では、Oct4、Sox2、Klf4、及びC-Mycは、センダイウイルス粒子を用いて体細胞に送達される。その上、体細胞は、少なくとも1つの小分子の存在下で培養することができる。一実施形態では、該小分子は、タンパク質キナーゼのRho関連コイルドコイル形成タンパク質セリン/スレオニンキナーゼ(Rho-associated coiled-coil forming protein serine/threonine kinase:ROCK)ファミリの阻害剤を含む。-ROCK阻害剤の非限定的な例として、Fasudil(1-(5-イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン)、Thiazovivin(N-ベンジル-2-(ピリミジン-4-イルアミノ)チアゾール-4-カルボキサミド)、及びY-27632((+)-(R)-トランス-4-(1-アミノエチル)-N-(4-ピリジル)シクロ-ヘキサンカルボキサミドジヒドロクロリド)が挙げられる。
規定された多能性幹細胞の単層を提供することは、得られる培養物の再現性及び効率に好ましい。一実施形態では、多能性幹細胞の単層は、細胞を単細胞へと酵素的に解離させ、それらを予め被覆されたマトリゲルプレート(例えば、BD Matrigel hESC-qualified(BD Bioscience製)、Geltrex hESC-qualified(Invitrogen製)、Synthemax(Corning製))などの接着性基質上に移動させることによって作製することができる。単一細胞への解離に適した酵素の例としては、Accutase(Invitrogen)、Trypsin(Invitrogen)、TrypLe Express(Invitrogen)が挙げられる。一実施形態では、20000~60000個/cm2の細胞が、接着性基質上にプレーティングされる。本明細書で使用される培地は、単層の単一細胞として多能性幹細胞の付着及び増殖を促進する多能性培地である。一実施形態では、多能性培地は、タンパク質キナーゼのRho関連コイルドコイル形成タンパク質セリン/スレオニンキナーゼ(ROCK)ファミリ(本明細書ではROCKキナーゼ阻害剤と称する)の小分子阻害剤を補充した無血清培地である。
したがって、一実施形態では、本明細書に記載される方法は、多能性培地中に多能性幹細胞の単層を提供することを含み、ここで、該多能性培地は、ROCKキナーゼ阻害剤を補充した無血清培地である。
多能性幹細胞を基質に付着させるのに適した無血清培地の例は、mTeSR1又はTeSR2(Stem Cell Technologies)、霊長類ES/iPS細胞用培地(ReproCELL)、及びStemPro hESC SFM(Invitrogen)、X-VIVO(Lonza)である。本明細書における有用なROCKキナーゼ阻害剤の例は、Fasudil(1-(5-イソキノリンスルホニル)ホモピペラジン)、Thiazovivin(N-ベンジル-2-(ピリミジン-4-イルアミノ)チアゾール-4-カルボキサミド)、及びY27632((+)-(R)-トランス-4-(1-アミノエチル)-N-(4-ピリジル)シクロ-ヘキサンカルボキサミドジヒドロクロリド、例えば、カタログ番号1254(Tocris bioscience)である。一実施形態では、多能性培地は、2~20μMのY27632、好ましくは5~10μMのY27632が補充された無血清培地である。別の実施形態では、多能性培地は、2~20μMのFasudilが補充された無血清培地である。別の実施形態では、多能性培地は、0.2~10μMのThiazovivinが補充された無血清培地である。
一実施形態では、本明細書に記載の方法は、多能性培地中に多能性幹細胞の単層を提供することと、多能性培地中で該単層を1日間(24時間)増殖させることと、を含む。別の実施形態では、本明細書に記載の方法は、多能性培地中に多能性幹細胞の単層を提供することと、多能性培地中で該単層を18時間~30時間、好ましくは23~25時間増殖させることと、を含む。
別の実施形態では、本明細書に記載する方法は、多能性培地中に多能性幹細胞の単層を提供することを含み、ここで、該多能性培地は、ROCKキナーゼ阻害剤を補充した無血清培地であり、該単層を多能性培地中で1日間(24時間)増殖させる。別の実施形態では、本明細書に記載する方法は、多能性培地中に多能性幹細胞の単層を提供することを含み、ここで、該多能性培地は、ROCKキナーゼ阻害剤を補充した無血清培地であり、該単層を多能性培地中で18時間~30時間、好ましくは23~25時間増殖させる。
一実施形態では、細胞をプライミング用培地と接触させて分化を誘導する。一実施形態では、細胞は、β-カテニン及び/又はWntシグナル伝達及び/又はヘッジホッグ(HH)シグナル伝達を活性化し、誘導用培地中でプライム細胞をインキュベートすることによって分化を誘導する小分子を補充したプライミング用培地と接触される。一実施形態では、β-カテニン及び/又はWntシグナル伝達及び/又はヘッジホッグ(HH)シグナル伝達を活性化する小分子は、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(Gsk3a-b)の小分子阻害剤、CDC様キナーゼ1(Clk1-2-4)の小分子阻害剤、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ15(Mapk15)の小分子阻害剤、二重特異性チロシン(Y)リン酸化制御キナーゼ(Dyrk1a-b 4)の小分子阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ16(Pctk1-3 4)の小分子阻害剤、β-カテニン(又はγ-カテニン)とコアクチベータタンパク質CBP(CREB結合タンパク質)及びp300(E1A結合タンパク質p300)との間の相互作用のスムーズンド(SMO)アクチベータ並びにモジュレータの群から選択される。
好ましくは、該グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(Gsk3a-b)阻害剤はピロリジンジオン系GSK3阻害剤である。「ピロリジンジオン系GSK3阻害剤」は、本明細書で使用される場合、低いIC50値を有するGSK3α及びGSK3βの選択的細胞透過性ATP競合阻害剤に関する。一実施形態では、ピロリジンジオン系GSK3阻害剤は、SB216763(3-(2,4-ジクロロフェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)、SB415286(3-[(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)アミノ]-4-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)、N-{2-[4-(2,4-ジクロロ-フェニル)-5-イミダゾール-1-イル-ピリミジン-2-イルアミノ]-エチル}-3-ニトロ-ピリジン-2,6-ジアミン2HCl、3-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル-4-[2-(モルホリン-4-カルボニル)-1,2,3,4-テトラヒドロ-[1,4]ジアゼピノ[6,7,1-hi]インドール-7-イル]-ピロール-2,5-ジオン、Kenpaullone(9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-インドロ-[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン)、CHIR99021(9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-ピリド[3′,2′:2,3]アゼピノ[4,5-b]インドール-6(5H)-オン)、及び(3-(3-アミノ-フェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-ピロール-2,5-ジオン(CP21R7、本明細書では「化合物21」とも称する;例えば、L.Gongら、「Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters」第20巻(2010年)第1693~1696頁を参照)からなる群から選択される。好ましい実施形態では、該ピロリジンジオン系GSK3阻害剤は、CP21R7である。
一実施形態では、該CDC様キナーゼ1(Clk1-2-4)阻害剤は、ベンゾチアゾール及び3-フルオロ-N-[1-イソプロピル-6-(1-メチル-ピペリジン-4-イルオキシ)-1,3-ジヒドロ-ベンゾイミダゾール-(2E)-イリデン]-5-(4-メチル-1H-ピラゾール-3-スルホニル)-ベンズアミドを含む群から選択される。
一実施形態では、該マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ15(Mapk15)阻害剤は、4-(4-フルオロフェニル)-2-(4-メチルスルフィニルフェニル)-5-(4-ピリジル)-1H-イミダゾール(SB203580)及び5-イソキノリンスルホンアミド(H-89)を含む群から選択される。
一実施形態では、該二重特異性チロシン-(Y)-リン酸化調節キナーゼ(Dyrk1a-b 4)阻害剤は、6-[2-アミノ-4-オキソ-4H-チアゾール-(5Z)-イリデンメチル]-4-(テトラヒドロ-ピラン-4-イルオキシ)-キノリン-3-カルボニトリルを含む群から選択される。
一実施形態では、該スムーズンドアクチベータは、Purmorphamine(2-(1-ナフトキシ)-6-(4-モルホリノアニリノ)-9-シクロヘキシルプリンである。
β-カテニン(又はγ-カテニン)と、コアクチベータタンパク質CBP(CREB結合タンパク質)及びp300(E1A結合タンパク質p300)との間の相互作用のモジュレータの例は、IQ-1(2-(4-アセチル-フェニルアゾ)-2-[3,3-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-イソキノリン-(1E)-イリデン]-アセトアミド、及びICG-001((6S,9aS)-6-(4-ヒドロキシ-ベンジル)-8-ナフタレン-1-イルメチル-4,7-ジオキソ-ヘキサヒドロ-ピラジノ[1,2-a]ピリミジン-1-カルボン酸ベンジルアミド(国際公開第2007056593号)である。
一実施形態では、プライミング用培地は、形質転換増殖因子β(TGFβ)の小分子阻害剤で補充される。一実施形態では、TGFβの小分子阻害剤は、SB431542である。
一実施形態では、本明細書に記載の方法は、該細胞をプライミング用培地中で約2~約4日間(約48時間~約96時間)インキュベートすることを含む。一実施形態では、上記の方法の工程(a)は、該細胞をプライミング用培地中で約3日間(約72時間)インキュベートすることを含む。
一実施形態では、該プライミング用培地は、インスリン、トランスフェリン、及びプロゲステロンが補充された無血清培地である。一実施形態では、該無血清培地は、インスリン10~50μg/ml、トランスフェリン10~100μg/ml、及びプロゲステロン10~50nM、好ましくはインスリン30~50μg/ml、トランスフェリン20~50μg/ml、及びプロゲステロン10~30nMが補充される。プライミングに適した無血清培地の例は、N2B27培地(N2B27はDMEM/F12(Gibco、英国ペイズリー州)にN2及びB27(どちらもGibco)を補充した1:1混合物である)、N3培地(DMEM/F12(Gibco、英国ペイズリー州)、インスリン25μg/ml、トランスフェリン50μg/ml、亜セレン酸ナトリウム30nM、プロゲステロン20nM、プトレシン100nM(Sigma)で構成)、又はNeuroCult(登録商標)NS-A増殖培地(Stemcell Technologies)である。一実施形態では、該プライミング用培地は、インスリン、トランスフェリン、プロゲステロン、並びにβ-カテニン(カドヘリン関連タンパク質β1;ヒト遺伝子名CTNNB1)経路及び/又はWnt受容体シグナル伝達経路及び/又はヘッジホッグ(HH)シグナル伝達経路を活性化する小分子を補充した、無血清培地である。好ましくは、該小分子は、3-(2,4-ジクロロフェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン(SB216763)、3-[(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)アミノ]-4-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオン(SB415286)、N-{2-[4-(2,4-ジクロロ-フェニル)-5-イミダゾール-1-イル-ピリミジン-2-イルアミノ]-エチル}-3-ニトロ-ピリジン-2,6-ジアミン2HCl、3-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル-4-[2-(モルホリン-4-カルボニル)-1,2,3,4-テトラヒドロ-[1,4]ジアゼピノ[6,7,1-hi]インドール-7-イル]-ピロール-2,5-ジオン、9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-インドロ[3,2-d][1]ベンズアゼピン-6(5H)-オン(Kenpaullone)、9-ブロモ-7,12-ジヒドロ-ピリド[3′,2′:2,3]アゼピノ[4,5-b]インドール-6(5H)-オン(CHIR99021)、3-(3-アミノ-フェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-ピロール-2,5-ジオン(CP21R7、本明細書では「化合物21」とも称される)、ベンゾチアゾール、3-フルオロ-N-[1-イソプロピル-6-(1-メチル-ピペリジン-4-イルオキシ)-1,3-ジヒドロ-ベンゾイミダゾール-(2E)-イリデン]-5-(4-メチル-1H-ピラゾール-3-スルホニル)-ベンズアミド、4-(4-フルオロフェニル)-2-(4-メチルスルフィニルフェニル)-5-(4-ピリジル)-1H-イミダゾール(SB203580)、5-イソキノリンスルホンアミド(H-89)、6-[2-アミノ-4-オキソ-4H-チアゾール-(5Z)-イリデンメチル]-4-(テトラヒドロ-ピラン-4-イルオキシ)-キノリン-3-カルボニトリル、2-(1-ナフトキシ)-6-(4-モルホリノアニリノ)-9-シクロヘキシルプリン(Purmorphamine)、2-(4-アセチル-フェニルアゾ)-2-[3,3-ジメチル-3,4-ジヒドロ-2H-イソキノリン-(1E)-イリデン]-アセトアミド(IQ-1)、及びICG-001((6S,9aS)-6-(4-ヒドロキシ-ベンジル)-8-ナフタレン-1-イルメチル-4,7-ジオキソ-ヘキサヒドロ-ピラジノ[1,2-a]ピリミジン-1-カルボン酸ベンジルアミドを含む群から選択される。
別の実施形態では、本明細書に記載される方法は、プライミング用培地中で該細胞をインキュベートすることを含み、ここで、該プライミング用培地は、CP21R7(3-(3-アミノ-フェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-ピロール-2,5-ジオン)を補充した無血清培地である。好ましくは、該プライミング用培地に0.5~4μMのCP21R7(3-(3-アミノ-フェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-ピロール-2,5-ジオン)、最も好ましくは1~2μMのCP21R7(3-(3-アミノ-フェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-ピロール-2,5-ジオン)を補充する。別の実施形態では、上記の方法の工程(a)は、プライミング用培地中で該細胞をインキュベートすることを含み、ここで、該プライミング用培地は、CP21R7(3-(3-アミノ-フェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-ピロール-2,5-ジオン)を補充した無血清培地であり、該細胞を2~4日間(48時間~96時間)増殖させる。別の実施形態では、上記の方法の工程(a)は、プライミング用培地中で該細胞をインキュベートすることを含み、ここで、該プライミング用培地は、CP21R7(3-(3-アミノ-フェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-ピロール-2,5-ジオン)を補充した無血清培地であり、該細胞を3日間(72時間)インキュベートさせる。
一実施形態では、プライミング用培地は、インスリン10~50μg/ml、トランスフェリン10~100μg/ml、及びプロゲステロン10~50nMを含有し、0.5~4μMのCP21R7(3-(3-アミノ-フェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-ピロール-2,5-ジオン)を補充した、無血清培地である。
一実施形態では、プライミング用培地は、組換え骨形成タンパク質-4(bone morphogenic protein-4:BMP4)を更に含む。好ましい一実施形態では、プライミング用培地は、インスリン10~50μg/ml、トランスフェリン10~100μg/ml、及びプロゲステロン10~50nMを含有し、0.5~4μMのCP21R7(3-(3-アミノ-フェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-ピロール-2,5-ジオン)及び10~50ng/mlの組換え骨形成タンパク質-4(BMP4)を補充した、無血清培地である。一実施形態では、プライミング用培地は、1μMのCP21R7及び25ng/mlのBMP4を含む。
一実施形態では、細胞を誘導用培地と接触させて、分化を進める。内皮細胞の優勢な誘導のためには、該誘導用培地を、VEGF(=血管内皮増殖因子(Vascular endothelial growth factor))又は胎盤様増殖因子1(placenta-like growth factor 1:PLGF-1)及び小分子アデニル酸シクラーゼアクチベータで補充する。一実施形態では、該小分子アデニル酸シクラーゼアクチベータは、PKA/PKIシグナル伝達経路の活性化をもたらす。一実施形態では、該小分子アデニル酸アクチベータは、フォルスコリン((3R)-(6aαH)ドデカヒドロ-6β,10α,10bα-トリヒドロキシ-3β,4aβ,7,7、10aβ-ペンタメチル-1-オキソ-3-ビニル-1H-ナフト[2,1-b]ピラン-5β-イルアセテート)、8-ブロモ-cAMP(8-ブロモアデノシン-3’,5’-環状モノホスフェート)、及びアドレノメデュリンを含む群から選択される。一実施形態では、該誘導用培地は、ヒト血清アルブミン、エタノールアミン、トランスフェリン、インスリン、及びヒドロコルチゾンが補充された無血清培地である。誘導に適した無血清培地の例は、StemPro-34(Invitrogen、主成分:ヒト血清アルブミン、ヒトEx-Cyte(登録商標)及びエタノールアミンなどの脂質剤又はこれらの混合物、ヒト亜鉛インスリン、ヒドロコルチゾン、鉄飽和転移性2-メルカプトエタノール、及びD,L-トコフェロール酢酸エステル又はこれらの誘導体若しくは混合物)、並びにX-VIVO10及び15(Lonza)である。
一実施形態では、該誘導用培地は、ヒト血清アルブミン、エタノールアミン、トランスフェリン、インスリン、及びヒドロコルチゾン、並びに1~10μMのフォルスコリン及び5~100ng/mlのVEGF-Aが補充された、無血清培地である。別の実施形態では、誘導用培地は、30~70ng/mlのVEGF-A又は30~70ng/mlの胎盤様増殖因子1(PLGF-1)が補充された、StemPro-34(Invitrogen)を含む。
一実施形態では、本明細書に記載される方法は、VEGF-A又は胎盤様増殖因子1(PLGF-1)及び小分子アデニル酸シクラーゼアクチベータを補充した誘導用培地中で該プライム細胞をインキュベートすることによってECへの分化を誘導することを含み、ここで、該小分子アデニル酸シクラーゼアクチベータは、フォルスコリン、8-ブロモ-cAMP、及びアドレノメデュリンの群から選択される。一実施形態では、誘導用培地は、1~10μMのフォルスコリン及び5~100ng/mlのVEGF-A、好ましくは2μMのフォルスコリン及び50ng/mlのVEGF-Aを補充した、無血清培地である。
別の実施形態では、本明細書に記載される方法は、VEGF-A又は胎盤様増殖因子1(PLGF-1)及び小分子アデニル酸シクラーゼアクチベータを補充した誘導用培地中で該プライム細胞を1日間インキュベートすることによって、ECへの分化を誘導することを含む。
別の実施形態では、本明細書に記載される方法は、VEGF-A又は胎盤様増殖因子1(PLGF-1)及び小分子アデニル酸シクラーゼアクチベータを補充した誘導用培地中で該プライム細胞を18時間~48時間、好ましくは22時間~36時間インキュベートすることによって、ECへの分化を誘導することを含む。
一実施形態では、本明細書に記載の方法は、該細胞を誘導用培地中で約18時間~約48時間インキュベートすることを含む。一実施形態では、本明細書に記載の方法は、該細胞を誘導用培地中で約24時間インキュベートすることを含む。
プライミング及び誘導後、ECを更に拡大培養して、大量の細胞を産生することができる。したがって、更なる実施形態では、本発明の方法は、ECの増殖に適した条件下においてプライミング及び誘導の産物をインキュベートすることを更に含む。内皮細胞の増殖に適した該条件は、内皮マーカにポジティブな細胞を採取し、既知組成拡大培養用培地でそれらを拡大培養させることを更に含み得る。本明細書で使用される「収穫」とは、接着性基質からの細胞の酵素的解離、及びその後の新しい培地への再懸濁に関する。好ましい一実施形態では、細胞は、本明細書に記載されるように、収穫後に仕分けられる。一実施形態では、該拡大培養用培地は、VEGF-Aを補充した無血清培地である。ECの拡大培養に適した無血清培地の例は、8ng/mlのFGF-2、50ng/mlのVEGF、及び10μMのSB431542(4-(4-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-5-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル)-ベンズアミド)を補充した、StemPro-34(Invitrogen)、EGM2(Lonza)、及びDMEM/F12(Invitrogen)である。好ましくは、ECは、付着培養条件で培養される。一実施形態では、拡大培養用培地は、5~100ng/mlのVEGF-Aで補充される。別の実施形態では、拡大培養用培地は、5~100ng/mlのVEGF-A、好ましくは50ng/mlで補充されたStemPro-34である。
本明細書に記載の方法によって得られた細胞(例えば、EC)は、いくつかの継代にわたって拡大培養させることができ、培養は充分に特徴付けられている。本明細書に記載された方法によって得られたECのアリコートを再現性よく凍結及び解凍することができる。解凍された細胞は、本明細書に記載されるように更に拡大培養されて、化合物スクリーニングに必要なスループットを確立するのに特に適した所望の数の細胞に到達することができる。
本発明の一実施形態では、患者に特異的又は健康な個体に特異的なECを生成するための方法。これは、遺伝子突然変異に関連する疾患状態について特に望ましいが、しかしながら、患者特異的疾患モデルはまた、疾患状態に関連する遺伝子突然変異がない場合、又は遺伝子突然変異との関連が不明であるか若しくは確立されるべきである場合にも、関連し得る。この目的に向かって、患者又は健康な個体から得られたヒト人工多能性幹細胞(iPSC)を本明細書に記載の方法において使用する。該患者特異的ヒトiPSCは、当該技術分野で公知の方法により、そして患者又は健康な個体から得られた体細胞を多能性幹細胞に再プログラミングすることによって、本明細書で更に記載されるように得ることができる。例えば、線維芽細胞、ケラチノサイト、又は脂肪細胞は、治療を必要とする個体又は健康な個体から皮膚生検によって得ることができ、当該技術分野で周知の方法及び本明細書で更に記載するように、人工多能性幹細胞へと再プログラムすることができる。人工多能性幹細胞の供給源として好適な他の体細胞は、血液試料から得られる白血球細胞、又は尿試料から得られる上皮細胞若しくは他の細胞である。次いで、患者特異的な人工多能性幹細胞を、本明細書に記載の方法によって、患者特異的な疾患を有するEC又は健康なECへと分化させる。本発明の別の態様では、上記の方法のいずれかによって生成されたECの集団が提供される。好ましくは、ECの集団は患者特異的であり、すなわち、疾患を有する個体から得られたiPSCに由来する。別の実施形態では、該ECの集団は、健康な個体から得られる。患者由来ECは、2型糖尿病及び1型糖尿病、滲出型AMD、メタボリックシンドローム、並びに重度肥満のような疾患に対する血管合併症の病態生理を研究するための疾患関連インビトロモデルを代表する。一実施形態では、この方法によって得られるECは、ECの機能障害によって引き起こされる血管合併症、例えば、2型糖尿病及び1型糖尿病、滲出型AMD、メタボリックシンドローム、重度肥満、高コレステロール血症、高血圧、冠動脈疾患、腎症、網膜症、腎不全、組織虚血、慢性低酸素症、アテローム性動脈硬化症、並びに薬物誘導毒性によって引き起こされる組織浮腫などによって起こる血管合併症を、逆転させる、阻害する、又は予防する化合物のスクリーニングに使用される。好ましくは、本明細書に記載される本発明の方法によって得られる該ECは、疾患を有する対象に由来する。疾患対象からECを区別することは、ヒトのバックグラウンドパラダイムにおいて薬物安全性を早期に評価するためのユニークな機会を意味する。
別の実施形態では、この方法によって得られたECを血液網膜関門(blood-retinal barrier:BRB)及び/又は血液脳関門(BBB)のインビトロモデルとして使用する。本発明の方法に従って産生された細胞は、経内皮バリア機能(例えば、TBI)の確立又は喪失が関連する病理的又は非病理的状態のインビトロモデルを確立するのに有用である。特定の実施形態では、(i)インビボ経内皮バリア完全性(TBI)を増大させることができるか又は(ii)内皮細胞(EC)のインビボTBIを低減させることができる薬物候補を同定するためのインビトロ方法であって、
(a)高い経内皮電気抵抗(TEER)を確立できるECを提供する工程;
(b)該ECを該薬物候補と接触させ、該ECを該薬物候補と接触させる前及び後におけるインビトロTEERを測定する工程か、又は該ECを該薬物候補と接触させ、該薬物候補と接触させた該ECのインビトロTEERを測定し、かつ並行して、該薬物候補と接触させなかったECのインビトロTEERを測定する工程であって、
ここで、(i)該薬物候補と接触させなかった該ECの該インビトロTEERと比較して、該薬物候補と接触させた該ECのより高いインビトロTEERは、ECのインビボTBIを増大させることができる薬物を示し、(ii)該薬物候補と接触させなかった該ECのインビトロTEERと比較して、該薬物候補と接触した該ECのより低いインビトロTEERは、ECのインビボTBIを低減させることができる薬物を示す、工程
からなる方法が提供される。
更なる実施形態では、経内皮バリア完全性(TBI)の破壊又は喪失と関連する疾患に罹患する個体へのインビボ適用のための薬物候補を選択するインビトロ方法であって、
(a)高い経内皮電気抵抗(TEER)を確立できるECを提供する工程;
(b)該ECを該薬物候補と接触させ、該ECを該薬物候補と接触させる前及び後におけるインビトロTEERを測定する工程か、又は該ECを該薬物候補と接触させ、該薬物候補と接触させた該ECのインビトロTEERを測定し、かつ並行して、該薬物候補と接触させなかったECのインビトロTEERを測定する工程であって、
ここで、該薬物候補と接触させなかった該ECの該インビトロTEERと比較して、該薬物候補と接触させた該ECのより高いインビトロTEERを有する薬物候補を、該薬物候補のインビボ適用のために選択する、工程
からなる方法が提供される。
本明細書に記載され、薬物候補を同定するための方法において使用されるような高いTEERを確立することができるECは、本明細書に記載される1つ以上の発現ベクターを含む。一実施形態では、薬物候補を選択するための本明細書に記載された方法の工程(a)におけるECは、細胞の単層として、特に細胞のコンフルエント単層として提供される。TAL1、SOX18、FOXF2、SOX7、FOXC1、ETS1、KLF11、LMO2、及びLEF1からなる群から選択される少なくとも1つの転写因子をコードする核酸を含む、少なくとも1つの発現ベクターを含むECのコンフルエント単層は、高いTEERを確立することができる。特定の実施形態では、コンフルエント単層を形成する細胞は、転写因子ETS1、SOX18、及びSOX7を発現する。好ましい実施形態では、細胞は、転写因子(i)ETS1、SOX18、SOX7、及びTAL1、又は(ii)ETS1、SOX18、SOX7、及びLEF1、最も好ましくはETS1、SOX18、SOX7、及びTAL1を発現する。
本発明の文脈において、TBIと相関するパラメータ、例えばTEERは、目的の細胞培養物(例えば、薬物候補と接触させたEC培養物)について、参照条件(例えば、EC培養物が薬物候補と接触していない)における細胞培養物と比較して測定される。一実施形態では、薬剤候補と接触させたEC培養物の測定されたインビトロTEERは、薬物候補と接触させていないEC培養物の測定されたインビトロTEERと比較して高く、特に、薬物候補と接触させていないEC培養物の測定されたインビトロTEERと比較して、少なくとも約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、5倍、又は10倍高い。一実施形態では、薬剤候補と接触させたEC培養物の測定されたインビトロTEERは、薬物候補と接触させていないEC培養物の測定されたインビトロTEERと比較して低く、特に、薬物候補と接触させていないEC培養物の測定されたインビトロTEERと比較して、少なくとも約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、5倍、又は10倍低い。
TEERは当該技術分野で周知の方法及び本明細書で提供される方法によって測定することができる。一実施形態では、TEERは、リアルタイムで測定される。一実施形態では、細胞のコンフルエント単層の複素インピーダンススペクトル(Z、R、C)は、金電極上で測定される。一実施形態では、TEERは、制御されたガス環境においてリアルタイムで測定される。一実施形態では、TEERは、多電極アレイ上で測定される。一実施形態では、TEERは、8ウェル、16ウェル、24ウェル、又は96ウェル多電極アレイ、好ましくは96ウェル多電極アレイで測定される。一実施形態では、TEERは、Applied Biophysics製のECIS Z-Thetaシステムで、好ましくは96ウェルの多電極アレイ上で測定される。
したがって、一実施形態は、薬物候補の有効性を特にハイ・スループット・モードで決定するための、本発明にかかる方法によって得られたEC培養物の使用である。培養物は、健康な個体及び/又は罹患した個体に由来してもよく、本明細書に記載されるようにEC培養物を用いて実施される効力及び/又は毒性研究の結果は、薬物候補の疾患及び/又は治療に関連する生理学的効果を予測するために統合することができる。一実施形態では、薬物候補のインビトロ有効性プロファイルが評価され、好ましい有効性プロファイルを有する薬物候補は更なる開発のために選択される。更なる開発は、非ヒト霊長類種における薬物候補のインビボ試験、及び/又はヒトにおけるインビボ試験を含み得る。
例示的な実施形態
1.高い経内皮電気抵抗(TEER)を確立することができる細胞を作製するための方法であって、該細胞を少なくとも1つの転写因子と接触させる工程を含み、ここで、該細胞のコンフルエント単層が、該少なくとも1つの転写因子と接触しない細胞のコンフルエント単層と比較してより高い経内皮電気抵抗を確立する、方法。
2.該少なくとも1つの転写因子が、TAL1、SOX18、FOXF2、SOX7、FOXC1、ETS1、KLF11、LMO2、及びLEF1からなる群から個別に選択される、実施形態1の方法。
3.該少なくとも1つの転写因子が、ETS1、SOX18、及びSOX7からなる群から選択される、実施形態1又は2のいずれか一つの方法。
4.該転写因子が、(i)ETS1、SOX18、SOX7、及びTAL1、又は(ii)ETS1、SOX18、SOX7、及びLEF1である、実施形態1~3のいずれか一つの方法。
5.該少なくとも1つの転写因子をコードする単離された核酸が、該細胞に導入される、実施形態1~4のいずれか一つの方法。
6.該単離された核酸が、転写因子ETS1、SOX18、及びSOX7をコードする、実施形態5の方法。
7.該単離された核酸が、該転写因子(i)ETS1、SOX18、SOX7、及びTAL1、又は(ii)ETS1、SOX18、SOX7、及びLEF1をコードする、実施形態5又は6のいずれか一つの方法。
8.該単離された核酸が、少なくとも1つの発現ベクターに含まれる、実施形態1~7のいずれか一つの方法。
9.該少なくとも1つの発現ベクターが、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、及びプラスミドベクターからなる群から個別に選択される、実施形態8の方法。
10.1、2、3、又は4つの発現ベクターが、該細胞に導入される、実施形態1~9のいずれか一つの方法。
11.該細胞が、哺乳動物細胞、特にヒト細胞である、実施形態1~10のいずれか一つの方法。
12.該細胞が、内皮細胞(EC)である、実施形態1~11のいずれか一つの方法。
13.該細胞が、多能性幹細胞、特に胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞から生成される、実施形態1~12のいずれか一つの方法。
14.β-カテニン及び/又はWntシグナル伝達及び/又はヘッジホッグ(HH)シグナル伝達を活性化する小分子を補充したプライミング用培地中で該多能性幹細胞をインキュベートすることと、誘導用培地中でプライム細胞をインキュベートすることで分化を誘導することと、を含む、実施形態13の方法。
15.該β-カテニン及び/又はWntシグナル伝達及び/又はヘッジホッグ(HH)シグナル伝達を活性化する該小分子が、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(Gsk3a-b)の小分子阻害剤、CDC様キナーゼ1(Clk1-2-4)の小分子阻害剤、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ15(Mapk15)の小分子阻害剤、二重特異性チロシン(Y)リン酸化制御キナーゼ(Dyrk1a-b 4)の小分子阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ16(Pctk1-3 4)の小分子阻害剤、β-カテニン(又はγ-カテニン)とコアクチベータタンパク質CBP(CREB結合タンパク質)及びp300(E1A結合タンパク質p300)との間の相互作用のスムーズンド(SMO)アクチベータ並びにモジュレータからなる群から選択される、実施形態14の方法。
16.プライミング用培地が、形質転換増殖因子β(TGFβ)の小分子阻害剤で補充される、実施形態14又は15のいずれか一つの方法。
17.該TGFβの小分子阻害剤が、SB431542である、実施形態16の方法。
18.該プライミング用培地中の該細胞を、2~4日間、特に3日間インキュベートすることを含む、実施形態14~17のいずれか一つの方法。
19.工程(a)の該プライミング用培地が、インスリン、トランスフェリン、及びプロゲステロンで補充された無血清培地である、実施形態14~18のいずれか一つの方法。
20.工程(a)の該β-カテニン及び/又はWntシグナル伝達及び/又はヘッジホッグ(HH)シグナル伝達を活性化する該小分子が、3-(3-アミノ-フェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-ピロール-2,5-ジオン(CP21R7)である、実施形態14~19のいずれか一つの方法。
21.工程(a)の該プライミング用培地が、組換え骨形成タンパク質-4(BMP4)を更に含む、実施形態14~20のいずれか一つの方法。
22.該プライミング用培地が、インスリン10~50μg/ml、トランスフェリン10~100μg/ml、及びプロゲステロン10~50nMを含有し、0.5~4μMのCP21R7(3-(3-アミノ-フェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-ピロール-2,5-ジオン)及び10~50ng/mlの組換え骨形成タンパク質-4(BMP4)を補充した、無血清培地であって、特にここで、該プライミング用培地が、1μMのCP21R7及び25ng/mlのBMP4を含む、実施形態14~21のいずれか一つの方法。
23.該誘導用培地が、VEGF-A(血管内皮増殖因子)又は胎盤様増殖因子1(PLGF-1)及び小分子アデニル酸シクラーゼアクチベータで補充された無血清培地である、実施形態14~22のいずれかの方法。
24.該小分子アデニル酸アクチベータが、フォルスコリン((3R)-(6aαH)ドデカヒドロ-6β,10α,10bα-トリヒドロキシ-3β,4aβ,7,7、10aβ-ペンタメチル-1-オキソ-3-ビニル-1H-ナフト[2,1-b]ピラン-5β-イルアセテート)、8-ブロモ-cAMP(8-ブロモアデノシン-3’,5’-環状モノホスフェート)、及びアドレノメデュリンを含む群から選択される、実施形態23の方法。
25.該誘導用培地が、1~10μMのフォルスコリン及び5~100ng/mlのVEGF-A、特に200ng/mlのVEGF及び2μMのフォルスコリンを補充した無血清培地である、実施形態14~24のいずれか一つの方法。
26.該誘導用培地中の該細胞を、18時間~48時間インキュベートすることを含む、実施形態14~25のいずれか一つの方法。
27.該ECの増殖に適した拡大培養用培地中で、工程(a)の該生成物をインキュベートすることを更に含む、実施形態1~26のいずれか一つの方法。
28.該拡大培養用培地が、VEGF-A、特に50ng/mlのVEGF-Aで補充される、実施形態27の方法。
29.該多能性幹細胞が、血管合併症と関連する疾患に罹患している対象に由来する、実施形態13~28のいずれか一つの方法。
30.該単離された核酸が、少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、実施形態1~29のいずれか一つの方法。
31.該細胞を凍結、保存、及び/又は再解凍することを更に含み、ここで、該細胞が生存可能なままである、実施形態1~30のいずれか一つの方法。
32.TAL1、SOX18、FOXF2、SOX7、FOXC1、ETS1、KLF11、LMO2、及びLEF1からなる群から選択される少なくとも1つの転写因子をコードする単離された核酸を含む、発現ベクター。
33.該単離された核酸が、該転写因子ETS1、SOX18、及びSOX7をコードする、実施形態32の発現ベクター。
34.該単離された核酸が、該転写因子(i)ETS1、SOX18、SOX7、及びTAL1、又は(ii)ETS1、SOX18、SOX7、及びLEF1をコードする、実施形態32又は33のいずれか一つの発現ベクター。
35.ウイルスベクター、非ウイルスベクター、及びプラスミドベクターからなる群から選択される、実施形態32~34のいずれか一つの発現ベクター。
36.実施形態32~35のいずれか一つの2つ以上の個別の発現ベクターを含む、キット。
37.該発現ベクターが、該転写因子ETS1、SOX18、及びSOX7をコードする、実施形態36のキット。
38.該発現ベクターが、該転写因子(i)ETS1、SOX18、SOX7、及びTAL1、又は(ii)ETS1、SOX18、SOX7、及びLEF1をコードする、実施形態36又は37のいずれか一つのキット。
39.実施形態32~35のいずれか一つの発現ベクター、又は実施形態36~38のいずれか一つのキットの該発現ベクターを含む、細胞。
40.該細胞が、内皮細胞である、実施形態39の細胞。
41.該細胞が、哺乳動物細胞、特にヒト細胞である、実施形態39又は40のいずれか一つの細胞。
42.該細胞が、多能性幹細胞、特に胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞から生成される、実施形態39~41のいずれか一つの細胞。
43.高いTEERを確立することができる前記細胞が、(i)インビボ経内皮バリア完全性(TBI)を増大させることができるか、又は(ii)内皮細胞のインビボTBIを低減させることができる薬物候補を同定するために使用される、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
44.
(a)高いTEERを確立することができる細胞の単層を提供する工程;
(b)該細胞を該薬物候補と接触させる工程;
(c)該細胞を該薬物候補と接触させる前及び後におけるインビトロTEERを測定する工程か、又は該薬物候補と接触させた該細胞のインビトロTEERを測定し、かつ並行して、該薬物候補と接触させなかった細胞のインビトロTEERを測定する工程であって、
ここで、(i)該薬物候補と接触させなかった該細胞の該インビトロTEERと比較して、該薬物候補と接触させた該細胞のより高いインビトロTEERは、ECのインビボTBIを増大させることができる薬物を示し、(ii)該薬物候補と接触させなかった該細胞のインビトロTBIと比較して、該薬物候補と接触した該細胞のより低いインビトロTEERは、ECのインビボTBIを低減させることができる薬物を示す、工程
を含む、請求項43に記載の方法。
45.高TEERを確立することができる該細胞が、実施形態32~35のいずれか一つの発現ベクター、又は実施形態36~38のキットのいずれかの発現ベクターのうちの少なくとも1つを含む、実施形態44の方法。
46.工程(a)における該細胞が、細胞培養支持体上、特にマルチウェルプレート上、より具体的には、24ウェルプレート、96ウェルプレート、384ウェルプレート、又は1536ウェルプレートからなる群から選択されるマルチウェルプレート上に提供される、実施形態43~45のいずれか一つの方法。
47.該TEERが、インビトロTBIを示す、実施形態43~46のいずれか一つの方法。
48.ハイ・スループット・モードで実行される、実施形態43~47のいずれか一つの方法。
49.医薬品開発の設定において、特に薬物候補化合物ライブラリのハイ・スループット・スクリーニング用に薬物分子をスクリーニングするために使用される、実施形態43~48のいずれか一つの方法。
50.(i)インビボ経内皮バリア完全性(TBI)を増大させることができるか又は(ii)内皮細胞のインビボTBIを低減させることができる薬物候補を同定するための方法であって、
(a)請求項39~42のいずれか一項に記載の細胞の単層を提供する工程;
(b)該細胞を該薬物候補と接触させる工程;
(c)該細胞を該薬物候補と接触させる前及び後におけるインビトロTEERを測定する工程か、又は該薬物候補と接触させた該細胞のインビトロTEERを測定し、かつ並行して、該薬物候補と接触させなかった細胞のインビトロTEERを測定する工程であって、
ここで、(i)該薬物候補と接触させなかった該細胞の該インビトロTEERと比較して、該薬物候補と接触させた該細胞のより高いインビトロTEERは、ECのインビボTBIを増大させることができる薬物を示し、(ii)該薬物候補と接触させなかった該細胞のインビトロTEERと比較して、該薬物候補と接触した該細胞のより低いインビトロTEERは、ECのインビボTBIを低減させることができる薬物を示す、工程
を含む、方法。
51.本明細書で上に記載されるとおりの発明。
材料及び方法
ヒトPSCの培養及び分化
hPSC株SA001(Englund MC、Caisander G、Noaksson K、Emanuelsson K、Lundin K、Bergh Cら、「In vitro cellular&developmental biology Animal.(2010年)第46巻、第3~4号、第217~30頁、Cellartis AB)は、記載のように(Patsch C、Challet-Meylan L、Thoma EC、Urich E、Heckel T、O’Sullivan JFら、「Nat Cell Biol.」(2015年)第17巻、第8号、第994~1003頁)、いくつかの改変を加えて分化させた:50ng/mLのVEGFAを有するStemProからなる拡大培養用培地は、第一分裂のみのために細胞上で維持されている。第二分裂から、VascuLife VEGF Endothelial Medium Complete Kit(LifeLine Cell Technology)を用いて細胞を培養した。培地に加えられた補充物の最終組成は、10%FBS、4mMのL-グルタミン、0.75U/mLの硫酸ヘパリン、5ng/mLのFGF-2、5ng/mLのEGF、5ng/mLのVEGFA、15ng/mLのIGF1、1μg/mLのヘミスコハク酸ヒドロコルチゾン、50μg/mLのアスコルビン酸であった。SB431542(10μM)を培地に補充した。
アデノウイルス産生
GFPを発現するいくつかのプロモーター(UbiC、E1Fα、及びCMV)を、異なる感染多重度(multiplicity of infection:MOI)のアデノウイルスで試験した(データ示さず)。UbiCプロモーターをMOI 80での転写因子の過剰発現に対して選択した。UbiCプロモーターの下流に続き、ポリアデニル化ORF配列を有するGFPの3’配列がクローニングされた。E1及びE3欠損アデノウイルスゲノムをコードするSIR-BAC-Ad5を持つEscherichia coli DH10Bにおいて、形質転換及び組換えによりバクテリア人工染色体を作製した。感染性組換えアデノウイルス粒子は、線状コンストラクトをHEK293細胞に形質移入し、続いてAdenoONE精製キットを用いて複製能を有するアデノウイルスを精製することによって作製した。
公表された遺伝子発現データセットの分析
EC、平滑筋細胞、及びPDGFRα由来の単一細胞発現データからの正規化カウント発現を、GEOからダウンロードした(GSE98816、(Vanlandewijck M、He L、Mae MA、Andrae J、Ando K、Del Gaudio Fら、「Nature.」(2018年)第554巻、第7693号、第475~80頁))。選択された転写因子の平均発現を有する単一細胞発現バイオリン図を、Rパッケージggplot2を用いてプロットした。単一細胞発現データにおけるCLDN5に対する遺伝子発現の相関は、GEO(GSE47067(Nolan DJ、Ginsberg M、Israely E、Palikuqi B、Poulos MG、James Dら、「Developmental cell.」(2013年)第26巻、第2号、第204~19頁)、GSE35802(Tam SJ、Richmond DL、Kaminker JS、Modrusan Z、Martin-McNulty B、Cao TCら、「Developmental cell.」(2012年)第22巻、第2号、第403~17頁、GSE48209(Coppiello G、Collantes M、Sirerol-Piquer MS、Vandenwijngaert S、Schoors S、Swinnen Mら、「Circulation.」(2015年)第131巻、第9号、第815~26頁))からダウンロードしたR Raw Affymetrix発現ファイルのPearson相関を用いて実施し、Partek Genomic Suiteを用いて分析した。プローブセットのデータを次のように正規化した:GC補正及びプローブ配列バイアスのためにプレバックグラウンド調整を行い、続いてRMAバックグラウンド補正及びクオンタイル正規化を行った。正規化したプローブセットデータをlog2変換し、メディアンポリッシュ(median polish)法により要約した。差次的発現をANOVAモデルにより決定した。Nolanらの研究(Nolan DJ、Ginsberg M、Israely E、Palikuqi B、Poulos MG、James Dら、「Developmental cell.」(2013年)第26巻、第2号、第204~19頁)では、脳内皮細胞を他のいくつかの組織と比較し、ランクに基づくメタ分析ツールであるRankProdIt(Laing E、Smith CP.、「BMC research notes.」(2010年)第3巻、第221頁)を使用して、コンセンサス脳EC遺伝子シグネチャを作成した。
細胞溶解及びRNA単離
培養ECを、350μLのRLT溶解緩衝液(Qiagen)+β-メルカプトエタノール(1%)を用いて溶解し、続いて室温で1分間ボルテックスし、瞬間凍結した。RNAは、DNAse I消化によるDNA除去を伴う自動化Maxwell Total RNA精製キット(Promega)を用いて細胞溶解物から単離した。
RNAシーケンシング及び分析
全RNAをオリゴ(dT)捕捉及び濃縮に供し、得られたmRNA画分を使用して、ccDNAライブラリを構築した。シーケンシングは、試料当たり50塩基対のおよそ3000万読取りを生成する標準プロトコル(TruSeq Stranded Total RNA Library、Illumina)を用いて、Illumina HiSeqプラットフォームで行った。読取りをSTAR(Dobin A、Davis CA、Schlesinger F、Drenkow J、Zaleski C、Jha Sら、「Bioinformatics.」(2013年)第29巻、第1号、第15~21頁)を用いてヒトゲノム(hg19/Refseq)にマッピングし、HtSeq(Anders S、Pyl PT、Huber W.、「Bioinformatics.」(2015年)第31巻、第2号、第166~9頁)のユニオンモードを用いて計数を行った。差次的発現をDESeq2を用いて行った(Dobin A、Davis CA、Schlesinger F、Drenkow J、Zaleski C、Jha Sら、「Bioinformatics.」(2013年)第29巻、第1号、第15~21頁)。遺伝子セット濃縮分析は、GSEA(Subramanian A、Tamayo P、Mootha VK、Mukherjee S、Ebert BL、Gillette MAら、「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America.」(2005年)第102巻、第43号、第15545~50頁)を用い、Hallmarks MsigDbデータベース(Liberzon A、Birger C、「Thorvaldsdottir H、Ghandi M、Mesirov JP、Tamayo P.、「Cell Syst.」(2015年)第1巻、第6号、第417~25頁)を用い、15より小さな遺伝子セット及び500より大きな遺伝子セットを無視したデフォルト条件に従って上方制御された遺伝子から下方制御された遺伝子への倍率変化でソートした遺伝子リストによる加重分析を用いて、実施した。
実施例1
hPSC-ECと、高経内皮バリア抵抗性のECとを区別できる転写因子を同定するために、異なるマウス血管床の公開発現データセットを分析した(Tam SJ、Richmond DL、Kaminker JS、Modrusan Z、Martin-McNulty B、Cao TCら、「Developmental cell.」(2012年)第22巻、第2号、第403~17頁、Coppiello G、Collantes M、Sirerol-Piquer MS、Vandenwijngaert S、Schoors S、Swinnen Mら、「Circulation.」(2015年)第131巻、第9号、第815~26頁、Nolan DJ、Ginsberg M、Israely E、Palikuqi B、Poulos MG、James Dら、「Developmental cell.」(2013年)第26巻、第2号、第204~19頁)。全ての転写因子に対する脳ECと他の血管床のECとの間の試験(Ravasi T、Suzuki H、Cannistraci CV、Katayama S、Bajic VB、Tan Kら、「Cell.」(2010年)第140巻、第5号、第744~52頁)における、倍率変化発現を計算した。脳のECにおいて高度に上方制御された(>2FC)転写因子を同定した。次に、脳EC(分析した1445の細胞(Vanlandewijck M、He L、Mae MA、Andrae J、Ando K、Del Gaudio Fら、「Nature.」(2018年)第554巻、第7693号、第475~80頁))からの最近の単一細胞発現プロファイリング試験からの遺伝子発現データを再分析し、内皮細胞バリア抵抗性を仲介する重要なタイトジャンクションである、CLDN5の高発現を同定した。CLDN5の遺伝子発現は、活性転写因子を予測するために使用できる遺伝子シグネチャを同定するため、単一細胞脳ECにおける他の遺伝子と相関した。最も相関の高い遺伝子を使用して、enrichRに組み込まれているTransfac及びJasper分析を用いて転写因子の活性を予測した。hPSC-ECを単一選択転写因子(MOI 80アデノウイルス)で形質導入し、経内皮抵抗性をECISを用いて測定した。ECバリアの有意な誘導は、TAL1及びSOX18の過剰発現と、バリア安定化から24時間後のFOXF2、SOX7、FOXC1、ETS1、KLF11、LMO2、及びLEF1に対するバリアの増加傾向と、により観察された(図1A)。TAL1は、SOX18に続いて、バリア抵抗性に対して最も速い作用を示した(図1B)。ETS1はバリアを誘導することができたが、より遅い速度であった(図1B)。FITCデキストラン透過性アッセイを用いて、SOX18、SOX7、ETS1、及びLEF1に対して最も強いバリア活性を示した(図1C)。TAL1の効果が既に減少している処置48時間後にアッセイを行ったため、TAL1については効果が観察されなかった(図1C)。処置から48時間後にRNAシーケンシング分析を行い、過剰発現した転写因子の高い上方制御を測定した。次に、ECバリア誘導に関連する経路に着目して、Hallmarks MsgDBデータベースを用いるGSEA分析を行った。ヘッジホッグシグナル伝達の濃縮は全ての転写因子に観察され、Wntシグナル伝達はKLF11を除く全ての転写因子を過剰発現させた際に観察された。ETS1及びFOXF2は、他の転写因子の上流に作用することを示唆する最も多数の経路を誘導している。加えて、ETS1及びTAL1は広汎な血管新生を促進することができた。KLF11は増殖を誘導できる唯一の転写因子であった。次に、経路の個々のメンバに注目した。SOX18及びSOX7は、しばしば、同じ遺伝子(Wnt、ヘッジホッグ、及びNotchシグナル伝達)を誘導し、それらが同じネットワークで作用することを示唆した。マーカEC遺伝子に注目すると、KLF11、FOXC1、及びKLF11は、VEGFR2、VEGFR1、及びCD34を下方制御することが明らかとなり(図1D、図1E、図1F)、EC表現型を変化させるため、ECバリア誘導に適していない可能性が示唆された。次に、経内皮細胞バリアの形成に関与するタイトジャンクションの発現を分析した。FOXF2、FOXC1、及びKLF11によるVE-カドヘリンの下方制御が観察されたが、SOX18、TAL1、SOX7、及びLEF1はそれを誘導することができた。SOX7は、PECAM1、GJA1、ESAM、及びJAM2を誘導できた(図1H、図1I、図1H、図1M)。SOX18は、JAM2及びMARVELD2の発現を誘導できた(図1M、図1O)。ETS1はCLDN5発現を誘導できる唯一の転写因子であった(図1N)。高抵抗性バリアはPLVAPの発現が低く(Zhou Y、「Nathans J.」(2014年)第31巻、第2号、第248~56頁)、MFSD2A(Ben-Zvi A、Lacoste B、Kur E、Andreone BJ、Mayshar Y、Yan Hら、「Nature.」(2014年)第509巻、第507頁)及びTNFRSF21(Tam SJ、Richmond DL、Kaminker JS、Modrusan Z、Martin-McNulty B、Cao TCら、「Death receptors DR6 and TROY regulate brain vascular development.」、「Developmental cell.」(2012年)第22巻、第2号、第403~17頁)の発現が高かった。本明細書に示したデータは、SOX18、SOX7、及びTAL1がPLVAPを強く下方制御することを示す(図1P)。MFSD2AはSOX18により強く誘導されたが、一方でTNFRSF21は、SOX18、TAL1、FOXC1、ETS1、及びLEF1により誘導された(図1Q、図1R)。
実施例2
転写因子はネットワークで働くので(Neph S、Stergachis AB、Reynolds A、Sandstrom R、Borenstein E、Stamatoyannopoulos JA.、「Cell.」(2012年)第150巻、第6号、第1274~86頁)、他の因子と組み合わせてより低レベルの転写因子(MOI 20)を用いる可能性を検討した。最初に、MOI 20で単一転写因子を過剰発現させ、抵抗性を評価した。抵抗性の安定化後24時間ではいかなる有意な誘導も観察できなかった(図2A)。リアルタイムECIS測定では、バリア抵抗性の顕著な誘導は観察されず、バリア誘導に対するSOX18の傾向のみが観察された。FITCデキストランアッセイでは、SOX18はECバリア透過性の有意な低下を引き起こしたが、TAL1はその効果が48時間かけて低下するにつれて透過性を増加させることが見出された(図2B)。次に、いずれの単一の因子としてもバリアを誘導することを示した転写因子(SOX18、TAL1)、又はECバリアの形成に関与する遺伝子を誘導することができる転写因子(ETS1、LEF1、SOX7)を組み合わせた。抵抗性は、LEF1又はTAL1と固定因子を組み合わせることにより抵抗の安定化後24時間で測定し、バリア抵抗性の有意な増加を両方の組合せで観察した(図2C)。リアルタイムECISは、ETS1+SOX18+SOX7+TAL1の組合せが相乗的にバリアを誘導できることを示した。最高の誘導は1.7倍であった。これは4因子(MOI 20)の付加的な組合せよりも高く、またMOI 80の単一因子の過剰発現よりも高かった。FITCデキストランの透過性の有意な低減が両方の組合せで観察された。最後に、転写因子の組合せがWntシグナル伝達を強力に誘導できることを同定する、qRT-PCRを実施した(MARVEKD2、TSPAN12、TNFRSF19、及びAXIN2の上方制御並びにAPCDD1の下方制御;データ示さず)。
転写因子間のコンビナトリアルな相互作用は細胞型の分化に重要である(Ravasi T、Suzuki H、Cannistraci CV、Katayama S、Bajic VB、Tan Kら、「Cell.」(2010年)第140巻、第5号、第744~52頁、Neph S、Stergachis AB、Reynolds A、Sandstrom R、Borenstein E、Stamatoyannopoulos JA.、「Cell.」(2012年)第150巻、第6号、第1274~86頁)。本研究では、ECバリア抵抗性を誘導するために相乗的に作用する転写因子の組合せを同定した。インビトロのECバリアをモデリングするために存在する現在のモデルは高度に洗練されており、正確に再現することが難しく、創薬に適応することが困難である。4つの転写因子の単純な組合せを使用して、EC破壊を伴う疾患の治療のための新規経路及び分子標的を見出すために用いることが可能な高バリア抵抗性のECのインビトロモデルを作製することができる。

Claims (16)

  1. 高い経内皮電気抵抗(transendothelial electrical resistance:TEER)を確立することができる細胞を作製するための方法であって、前記細胞を少なくとも1つの転写因子と接触させる工程を含み、ここで、前記細胞のコンフルエント単層が、前記少なくとも1つの転写因子と接触しない細胞のコンフルエント単層と比較してより高い経内皮電気抵抗を確立する、方法。
  2. 前記少なくとも1つの転写因子が、TAL1、SOX18、FOXF2、SOX7、FOXC1、ETS1、KLF11、LMO2、及びLEF1からなる群から個別に選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記少なくとも1つの転写因子が、ETS1、SOX18、及びSOX7からなる群から選択される、請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法。
  4. 前記転写因子が、(i)ETS1、SOX18、SOX7、及びTAL1、又は(ii)ETS1、SOX18、SOX7、及びLEF1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記少なくとも1つの転写因子をコードする単離された核酸が、前記細胞に導入される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記単離された核酸が、少なくとも1つの発現ベクターに含まれ、特に、前記少なくとも1つの発現ベクターが、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、及びプラスミドベクターからなる群から個別に選択される、請求項5に記載の方法。
  7. 前記細胞が、内皮細胞(endothelial cell:EC)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  8. TAL1、SOX18、FOXF2、SOX7、FOXC1、ETS1、KLF11、LMO2、及びLEF1からなる群から選択される少なくとも1つの転写因子をコードする単離された核酸を含む、発現ベクター。
  9. ウイルスベクター、非ウイルスベクター、又はプラスミドベクターである、請求項8に記載の発現ベクター。
  10. 前記単離された核酸が、前記転写因子ETS1、SOX18、及びSOX7をコードする、請求項8又は9のいずれか一項に記載の発現ベクター。
  11. 前記単離された核酸が、前記転写因子(i)ETS1、SOX18、SOX7、及びTAL1、又は(ii)ETS1、SOX18、SOX7、及びLEF1をコードする、請求項8~10のいずれか一項に記載の発現ベクター。
  12. 請求項8~11のいずれか一項に記載の発現ベクターのうちの1つ以上を含む、細胞。
  13. 前記細胞が、哺乳動物細胞、特にヒト細胞である、請求項12に記載の細胞。
  14. 高いTEERを確立することができる前記細胞が、(i)インビボ経内皮バリア完全性(transendothelial barrier integrity:TBI)を増大させることができるか、又は(ii)内皮細胞のインビボTBIを低減させることができる薬物候補を同定するために使用される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
  15. (a)高いTEERを確立することができる細胞の単層を提供する工程;
    (b)前記細胞を前記薬物候補と接触させる工程;
    (c)前記細胞を前記薬物候補と接触させる前及び後におけるインビトロTEERを測定する工程か、又は前記薬物候補と接触させた前記細胞のインビトロTEERを測定し、かつ並行して、前記薬物候補と接触させなかった細胞のインビトロTEERを測定する工程であって、
    ここで、(i)前記薬物候補と接触させなかった前記細胞の前記インビトロTEERと比較して、前記薬物候補と接触させた前記細胞のより高いインビトロTEERは、ECのインビボTBIを増大させることができる薬物を示し、(ii)前記薬物候補と接触させなかった前記細胞のインビトロTEERと比較して、前記薬物候補と接触した前記細胞のより低いインビトロTEERは、ECのインビボTBIを低減させることができる薬物を示す、工程
    を含む、請求項14に記載の方法。
  16. (i)インビボ経内皮バリア完全性(TBI)を増大させることができるか又は(ii)内皮細胞のインビボTBIを低減させることができる薬物候補を同定するための方法であって、
    (a)請求項12又は13のいずれか一項に記載の細胞の単層を提供する工程;
    (b)前記細胞を前記薬物候補と接触させる工程;
    (c)前記細胞を前記薬物候補と接触させる前及び後におけるインビトロTEERを測定する工程か、又は前記薬物候補と接触させた前記細胞のインビトロTEERを測定し、かつ並行して、前記薬物候補と接触させなかった細胞のインビトロTEERを測定する工程であって、
    ここで、(i)前記薬物候補と接触させなかった前記細胞の前記インビトロTEERと比較して、前記薬物候補と接触させた前記細胞のより高いインビトロTEERは、ECのインビボTBIを増大させることができる薬物を示し、(ii)前記薬物候補と接触させなかった前記細胞のインビトロTEERと比較して、前記薬物候補と接触した前記細胞のより低いインビトロTEERは、ECのインビボTBIを低減させることができる薬物を示す、工程
    を含む、方法。
JP2021521104A 2018-10-19 2019-10-17 高抵抗性経内皮バリアを誘導する相乗的転写因子 Pending JP2022512727A (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
EP18201446.4 2018-10-19
EP18201446 2018-10-19
PCT/EP2019/078132 WO2020079107A1 (en) 2018-10-19 2019-10-17 Synergistic transcription factors to induce high resistance transendothelial barrier

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2022512727A true JP2022512727A (ja) 2022-02-07

Family

ID=64183835

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021521104A Pending JP2022512727A (ja) 2018-10-19 2019-10-17 高抵抗性経内皮バリアを誘導する相乗的転写因子

Country Status (5)

Country Link
US (1) US20210222122A1 (ja)
EP (1) EP3867358A1 (ja)
JP (1) JP2022512727A (ja)
CN (1) CN112805370A (ja)
WO (1) WO2020079107A1 (ja)

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015109833A (ja) * 2013-11-08 2015-06-18 学校法人慶應義塾 線維芽細胞から血管内皮細胞を製造する方法
JP2015532088A (ja) * 2012-10-23 2015-11-09 国立大学法人京都大学 効率的に人工多能性幹細胞を樹立する方法
WO2016147975A1 (ja) * 2015-03-13 2016-09-22 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 小腸上皮様細胞
WO2017033863A1 (ja) * 2015-08-21 2017-03-02 京都府公立大学法人 骨芽細胞及びその調製方法
WO2017106932A1 (en) * 2015-12-23 2017-06-29 Monash University Cell reprogramming
WO2018144860A1 (en) * 2017-02-03 2018-08-09 Cornell University Stable three-dimensional blood vessels and methods for forming the same

Family Cites Families (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB9304200D0 (en) 1993-03-02 1993-04-21 Sandoz Ltd Improvements in or relating to organic compounds
ES2570994T3 (es) 2005-11-08 2016-05-23 Choongwae Pharma Corp Miméticos de alfa-hélice y método relacionados con el tratamiento de células madre de cáncer
US9902940B2 (en) * 2010-06-17 2018-02-27 Wisconsin Alumni Research Foundation Human blood-brain barrier endothelial cells derived from pluripotent stem cells and blood-brain barrier model thereof
JP6005666B2 (ja) * 2011-02-08 2016-10-12 セルラー ダイナミクス インターナショナル, インコーポレイテッド プログラミングによる造血前駆細胞の生産
GB201212111D0 (en) * 2012-07-06 2012-08-22 Gmbh Vascular bed-specific endothelial cells
US9382531B2 (en) * 2012-10-22 2016-07-05 Wisconsin Alumni Research Foundation Induction of hemogenic endothelium from pluripotent stem cells
US10590393B2 (en) * 2012-11-08 2020-03-17 Wisconsin Alumni Research Foundation Retinoic acid enhanced human stem cell derived blood brain barrier model
KR102250027B1 (ko) * 2013-07-26 2021-05-07 교토후고리츠다이가쿠호진 골아 세포 및 그 조제 방법
EP3205718A1 (en) * 2016-02-15 2017-08-16 Max-Planck-Gesellschaft zur Förderung der Wissenschaften e.V. Means and methods for cell differentiation
GB201613187D0 (en) * 2016-07-29 2016-09-14 Univ Central Lancashire Blood brain barrier model

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015532088A (ja) * 2012-10-23 2015-11-09 国立大学法人京都大学 効率的に人工多能性幹細胞を樹立する方法
JP2015109833A (ja) * 2013-11-08 2015-06-18 学校法人慶應義塾 線維芽細胞から血管内皮細胞を製造する方法
WO2016147975A1 (ja) * 2015-03-13 2016-09-22 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 小腸上皮様細胞
WO2017033863A1 (ja) * 2015-08-21 2017-03-02 京都府公立大学法人 骨芽細胞及びその調製方法
WO2017106932A1 (en) * 2015-12-23 2017-06-29 Monash University Cell reprogramming
WO2018144860A1 (en) * 2017-02-03 2018-08-09 Cornell University Stable three-dimensional blood vessels and methods for forming the same

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
MARTINA HOETH: "The Transcription Factor SOX18 Regulates the Expression of Matrix Metalloproteinase 7 and", PLOS ONE, vol. 7, JPN6023036525, 2012, pages 30982, ISSN: 0005146041 *

Also Published As

Publication number Publication date
WO2020079107A1 (en) 2020-04-23
EP3867358A1 (en) 2021-08-25
CN112805370A (zh) 2021-05-14
US20210222122A1 (en) 2021-07-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Lau et al. Mouse embryo model derived exclusively from embryonic stem cells undergoes neurulation and heart development
Saha et al. Circulating exosomes derived from transplanted progenitor cells aid the functional recovery of ischemic myocardium
Sugiura et al. MARCKS-like protein is an initiating molecule in axolotl appendage regeneration
JP6531335B2 (ja) 血管内皮細胞の誘導方法
JP6090855B2 (ja) 心筋細胞および/または心筋前駆細胞増殖剤ならびに心筋細胞および/または心筋前駆細胞の増殖方法
IL194970A (en) Method for inducing differentiation of pluripotent stem cells into cardiomyocytes
US20090186414A1 (en) Methods of Generating Cardiomyocytes and Cardiac Progenitors and Compositions
DK3183337T3 (en) Use of Jagged 1 / Frizzled 4 as cell surface marker for isolation of human cardiac ventricular progenitor cells
Yamada et al. Induction and expansion of human PRRX1+ limb-bud-like mesenchymal cells from pluripotent stem cells
CN105339489B (zh) 多能干细胞向多能肾前体分化的方法
RU2730861C2 (ru) Способ продуцирования почечных клеток-предшественников
JP5751548B2 (ja) イヌiPS細胞及びその製造方法
Asp et al. Cardiomyocyte clusters derived from human embryonic stem cells share similarities with human heart tissue
Westerman et al. A genome-wide RNAi screen in mouse embryonic stem cells identifies Mp1 as a key mediator of differentiation
Wang et al. Lamin A/C-dependent chromatin architecture safeguards naïve pluripotency to prevent aberrant cardiovascular cell fate and function
Olabi et al. Integrin-Rac signalling for mammary epithelial stem cell self-renewal
CA3238768A1 (en) Methods, culture medias and devices for generating embryos in vitro from stem cells
Dräger et al. A CRISPRi/a platform in iPSC-derived microglia uncovers regulators of disease states
JP2022512727A (ja) 高抵抗性経内皮バリアを誘導する相乗的転写因子
US20220259557A1 (en) Cells capable of differentiating into placenta-constituting cells, and method for producing same
US20220155314A1 (en) Trophoblast stem cell, methods of preparation and uses thereof
Zhou et al. STRA6 is essential for induction of vascular smooth muscle lineages in human embryonic cardiac outflow tract development
WO2017126616A1 (ja) ユーイング肉腫ファミリー腫瘍モデル細胞とそれを用いた抗腫瘍剤のスクリーニング方法
JP2021534753A (ja) 経内皮バリア一体性の評価方法
Kim et al. Nox4-IGF2 Axis promotes differentiation of embryoid body cells into derivatives of the three embryonic germ layers

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220914

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20230823

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230906

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20231205

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20231221