JP2015103748A - 電気機械変換素子とその製造方法、及び電気機械変換素子を有する液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドを有する液滴吐出装置 - Google Patents

電気機械変換素子とその製造方法、及び電気機械変換素子を有する液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドを有する液滴吐出装置 Download PDF

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Abstract

【課題】所望の分極状態を呈し、電気特性に優れ且つ耐久性に優れる電気機械変換素子を提供する。【解決手段】基板401上に形成された共通電極である第1の電極403と、第1の電極上に形成された電気機械変換膜404と、電気機械変換膜上に形成された個別電極である第2の電極405と、第1の電極及び第2の電極上に設けられ、コンタクトホールを有する第1の絶縁保護膜406と、第1の電極と導通がとれるように形成された第3の電極407と、第2の電極と導通がとれるように形成された第4の電極408と、第3の電極上に形成された共通電極用パッド412と第4の電極上に形成され所定の列内に複数配置された個別電極用パッド411とを有する第2の絶縁保護膜409と、個別電極用パッドのそれぞれの近傍を囲うように形成された第5の電極410とを備え、第5の電極は、第1の絶縁保護膜上に形成され第1の電極と導通している。【選択図】図8

Description

本発明は、電気機械変換素子とその製造方法、及び電気機械変換素子を有する液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドを有する液滴吐出装置に関する。
プリンタ、ファクシミリ、複写装置等の画像記録装置或いは画像形成装置として使用されるインクジェット記録装置及び液滴吐出ヘッドに関して、構成としては例えば図1に示すようなものが挙げられる。
図1は、液滴吐出ヘッドの構成例を示す概略図である。
液滴吐出ヘッドはインク滴を吐出するノズル102及びノズル102が形成されるノズル板103と、このノズル102が連通する加圧室101(インク流路、加圧液室、圧力室、吐出室、液室等とも称される)と、加圧室101内のインク(液体)を加圧する吐出駆動手段とを備える。加圧室101は、下面がノズル板103、側面が加圧室基板104(Si基板)、上面が下地105で区画されてなる。吐出駆動手段としては、圧電素子などの電気機械変換素子109、或いはヒーターなどの電気熱変換素子、若しくはインク流路の壁面を形成する振動板とこれに対向する電極からなる手段等が挙げられる。このエネルギー発生手段等で発生したエネルギーで加圧室101内インクを加圧することによってノズル102からインク滴を吐出させる。インクジェット式記録ヘッドには、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータを使用したものと、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものとの2種類が実用化されている。
たわみ振動モードのアクチュエータを使用したものとしては、様々なものが知られている。例えば、振動板の表面全体に亘って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生室に独立するように電気機械変換素子を形成したものが挙げられる。
また、たわみ振動モードのアクチュエータに使用される電気機械変換素子は、例えば、共通電極である下部電極106と、下部電極106上に形成されたPZT膜(圧電体層;電気機械変換膜107)と、PZT膜上に形成された個別電極である上部電極108とで構成される。さらに、上部電極108上には層間絶縁膜が形成されて下部電極106と上部電極108との絶縁が図られ、この層間絶縁膜に開口されたコンタクトホールを介して上部電極108に電気的に接続される配線が設けられた構造となっている(特許文献1、2参照)。
しかしながら、下部電極106としては主にPtをベースにした金属電極を用いた実施例がほとんどであり、PZTの疲労特性に対する保証が懸念される。一般的にPZTに含まれるPb拡散による特性劣化が考えられ、酸化物電極を用いることで、疲労特性が改善されることが知られている(特許文献3参照)。
またここで、図2に分極処理前後のPZT膜の分極状態を説明するための図を示す。図2に示すように電圧印加直前において圧電体結晶は分極の向き21がランダムな状態となっていたもの(図2(a)分極処理前)が、電圧印加を繰り返すことで、圧電体結晶は分極の向きが揃ったドメイン20の集合体となってくる(図2(b)分極処理後)。このため、電圧印加を行う前から分極の向きを揃えることが試されており、エージング工程またはポーリング(分極処理)工程と称した所定駆動電圧に対して変位量を安定化させる工夫が行われてきた(特許文献4〜8参照)。具体的には圧電素子に対して駆動パルス電圧を超える高電圧を印加するような手法が行われている。
ところで、例えば特許文献4、5、7、8に記載されているような駆動パルス電圧を印加して処理する場合、具体的な印加方法について明記されていなかった。この場合、プローブカード等を用いてウェハレベルで処理することを想定すると、配置された端子電極数や配置等によっては、プローブカードの作製等に費用がかかる。また、1枚のプローブカードで処理できる端子電極数が少ない場合においては、ウェハレベルで処理するのに相当な時間を有することになる。
また、特許文献6に記載されている方法では、電極と電荷供給手段との間に電圧を印加してコロナ放電を生じさせることにより、電荷を供給し、圧電体内に電界を発生させる工夫が行われている。
しかしながら、特許文献6に記載されているコロナワイヤを用いて処理する場合、圧電膜が形成された後に処理を実施しており、その後の工程(層間膜形成や引出配線形成)での熱履歴等による影響で脱分極することが懸念される。具体的には、図3が分極処理前後のP−Eヒステリシスループを示すグラフである。このように、処理後に300℃を超える熱履歴を与えると、図3に示すように処理前の状態に戻ってしまう。
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、所望の分極状態を呈し、電気特性に優れ、且つ、耐久性に優れる電気機械変換素子を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係る電気機械変換素子は、基板と、該基板上に形成された共通電極である第1の電極と、該第1の電極上に形成された電気機械変換膜と、該電気機械変換膜上に形成された個別電極である第2の電極と、前記第1の電極及び前記第2の電極上に設けられ、コンタクトホールを有する第1の絶縁保護膜と、前記第1の電極と前記コンタクトホールを介して導通がとれるように形成された第3の電極と、前記第2の電極と前記コンタクトホールを介して導通がとれるように形成された第4の電極と、前記第3の電極上に形成された共通電極用パッドと、前記第4の電極上に形成され、所定の列内に複数配置された個別電極用パッドと、を有する第2の絶縁保護膜と、前記個別電極用パッドのそれぞれの近傍を囲うように形成された第5の電極と、を備え、前記第5の電極は、前記第1の絶縁保護膜上に形成され、前記コンタクトホールを介して前記第1の電極と導通していることを特徴とする。
本発明によれば、所望の分極状態を呈し、電気特性に優れ、且つ、耐久性に優れる電気機械変換素子を提供することができる。
液滴吐出ヘッドの構成例を示す概略図である。 分極処理前後のPZT膜の分極状態を説明するための図である。 分極処理前後のP−Eヒステリシスループを示すグラフである。 本発明に係る電気機械変換素子の一部の構成を示す概略図である。 (a)従来の電気機械変換素子における断面図1である。(b)従来の電気機械変換素子における断面図2である。(c)従来の電気機械変換素子における上面図である。 コロナ電極による放電を説明するための図である。 個別電極と共通電極からの電荷の移動を説明するための図である。 (a)本発明に係る電気機械変換素子の一実施の形態における断面図である。(b)本発明に係る電気機械変換素子の一実施の形態における上面図である。 第2の絶縁保護膜の開口部の配置関係を説明するための図である。 本発明に係る電気機械変換素子の他の実施の形態における上面図である。 (a)本発明に係る電気機械変換素子のさらにその他の実施の形態における断面図である。(b)本発明に係る電気機械変換素子のさらにその他の実施の形態における上面図である。 分極処理装置の一例における概略図である。 分極処理装置の一例における構成を説明するための図である。 (a)図12のA−A’線における一例を示す断面図である。(b)図12のA−A’線における他の一例を示す断面図である。 (a)分極処理前のP−Eヒステリシスループを示すグラフである。(b)分極処理後のP−Eヒステリシスループを示すグラフである。 代表的なP−Eヒステリシスループを示すグラフである。 液滴吐出ヘッドの他の構成例を示す概略図である。 本発明に係る液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図である。 本発明に係る液滴吐出装置の構成を示す概略断面図である。 本発明に係る電気機械変換素子のSRO膜(111)のXRDパターンの例を示す図である。
本発明に係る電気機械変換素子は、基板と、該基板上に形成された共通電極である第1の電極と、該第1の電極上に形成された電気機械変換膜と、該電気機械変換膜上に形成された個別電極である第2の電極と、前記第1の電極及び前記第2の電極上に設けられ、コンタクトホールを有する第1の絶縁保護膜と、前記第1の電極と前記コンタクトホールを介して導通がとれるように形成された第3の電極と、前記第2の電極と前記コンタクトホールを介して導通がとれるように形成された第4の電極と、前記第3の電極上に形成された共通電極用パッドと、前記第4の電極上に形成され、所定の列内に複数配置された個別電極用パッドと、を有する第2の絶縁保護膜と、前記個別電極用パッドのそれぞれの近傍を囲うように形成された第5の電極と、を備え、前記第5の電極は、前記第1の絶縁保護膜上に形成され、前記コンタクトホールを介して前記第1の電極と導通していることを特徴とする。
なお、背景技術において述べたように、熱履歴等による影響で脱分極するという問題があるため、コロナ電極を用いて処理する工程としては、熱履歴を与える工程の後工程で処理することが好ましい。本発明においては、例えば300℃を超える熱履歴プロセスを経た後に実施している。
また本発明においては、ウェハレベルで一括処理できるように、電極パッド部を介して、コロナ放電もしくはグロー放電による発生した電荷を注入することにより分極処理を実施する。このようにすることで、電圧印加を繰り返すことによる変位量変化が抑制できる電気機械変換素子を提供することができる。さらに、インク吐出特性を良好に保持できると共に安定したインク吐出特性を得ることができ、且つ電気機械変換素子を高密度に配列することができるため好ましい。
ここで、コロナ放電等の電荷注入による分極処理を実施するに際して、分極処理の過剰進行による列内特性ばらつきや過剰電荷の注入による上下電極間での絶縁破壊が発生するなどの不具合が発生することが新たにわかった。
このため、駆動チャネルの個別電極用パッド部に対して均一な電荷量を注入できるヘッド構成を開発することで、本発明者等は本発明を完成するに至った。
次に、本発明に係る電気機械変換素子についてさらに詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は以下の説明において本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
電気機械変換素子(以下、圧電素子と称する場合がある)の構成について図4に示す。
図4は、本発明に係る電気機械変換素子の一部の構成を示す概略図である。
また、図5(a)は従来の電気機械変換素子における断面図1であり、図5(b)は従来の電気機械変換素子における断面図2であり、図5(c)は従来の電気機械変換素子における上面図である。ここで、図5(c)においては説明のため第2の絶縁保護膜409の図示を省略している。
図4に示すように、基板401、下地膜としての成膜振動板402、第1の電極403、電気機械変換膜404及び第2の電極405がこの順に積層された構成となっている。さらに層間膜、引き出し配線を含めた素子構成について図5に示す。
第1の絶縁保護膜406はコンタクトホールを有しており、第1の電極403と第3の電極407とが、及び第2の電極405と第4の電極408とが導通した構成となっている。このとき、第1、第3の電極を共通電極、第2、第4の電極を個別電極として、共通電極、個別電極を保護する第2の絶縁保護膜409が形成されている。また、第2の絶縁保護膜409の一部が開口されて、個別電極の一部が個別電極パッド、共通電極の一部が共通電極パッドとしてそれぞれ構成されている。共通電極用に作製されたものを共通電極用パッド412、個別電極用に作製されたものを個別電極用パッド411としている。
次いで、ここまで作製された圧電素子に対して、コロナ放電もしくはグロー放電を行い、発生した電荷についてパッド部を介して注入することにより、分極処理を実施している。
図6は、コロナ電極による放電を説明するための図である。図6に示すように、コロナ電極71(コロナワイヤ)を用いてコロナ放電させるときには、大気中の分子をイオン化させることで陽イオンが発生し、圧電素子のパッド部を介して陽イオンが流れ込むことで、電荷を圧電素子に蓄積している。
また、図7は個別電極と共通電極からの電荷の移動を説明するための図である。図7に示すように、発生した陽イオンに関しては、個別電極用パッド411、共通電極用パッド412の両方に流れ込むと考えている。ここで、共通電極用パッド412に流れ込んだものについては、第1の電極403以下の成膜振動板402、基板401を介してグランド(GND)に流れてしまい、個別電極にチャージされた電荷により電位差が発生して分極処理されているものと考えている。
ここで、図5に示すように圧電素子を所定の列内に複数配列させたときには、コロナ放電等の電荷注入による分極処理を実施するに際して、分極処理の過剰進行による列内特性ばらつきや過剰電荷の注入による上下電極間での絶縁破壊が発生するなどの不具合が発生することが分かった。
そこで、個別電極用パッド411に電荷が集中しないようにするため、図8に示すように、個別電極用パッド411のそれぞれの近傍を囲うように電極(第5の電極410)を形成し、過剰な電荷分に関しては個別電極用パッド411近傍を囲った電極に逃せるような工夫を行った。
図8(a)は、本発明に係る電気機械変換素子の一実施の形態における断面図であり、図8(b)は本発明に係る電気機械変換素子の一実施の形態における上面図である。ここで、図8(b)においては説明のため第2の絶縁保護膜409の図示を省略している。
第5の電極410は第1の絶縁保護膜406上に形成されており、コンタクトホールを介して第1の電極403と導通している。第5の電極410上には第2の絶縁保護膜409が形成されているが、図8や図9に示すように、個別電極用パッド411近傍を囲うように開口されている。ここで図9は、第2の絶縁保護膜の開口部の配置関係を説明するための図である。また、図9に示すように、第5の電極410は個別電極用パッド411のそれぞれの一部分を除いて個別電極用パッド411の近傍を囲うことが好ましい。さらに、第5の電極410上にある第2の絶縁保護膜409は個別電極用パッド411のそれぞれの一部分を除いて個別電極用パッド411近傍を囲うように開口していることが好ましい。
すなわち、例えば図9に示すように、個別電極用パッド411の周囲の四辺のうち一辺を除き、第5の電極410が個別電極用パッド411の近傍を囲うことが好ましい。ここでいう一辺とは、図9に示すように個別電極用パッド411における第4の電極408が引き出されている側の辺をいう。
また、図10は本発明に係る電気機械変換素子の他の実施の形態における上面図である。図10においても説明のため第2の絶縁保護膜409の図示を省略している。第5の電極410は図10に示すように、第3の電極407と導通しているようなパターン形状でも問題ない。
さらに、図11に示すように第5の電極410がコンタクトホールを介して、第1の電極403とは別に基板401または下地膜上に独立して形成されている第6の電極413と導通しているパターン形状でも問題ない。
ここで図11は、(a)本発明に係る電気機械変換素子のさらにその他の実施の形態における断面図であり、図11(b)は、本発明に係る電気機械変換素子のさらにその他の実施の形態における上面図である。ここで、図11(b)においては説明のため第2の絶縁保護膜409の図示を省略している。
コロナ分極処理により過剰な電荷が第5の電極410を通して、第6の電極413以下の成膜振動板402、基板401を介してGNDに流れることで、図8〜図10のようなパターン形状と同様な効果が得られていることを確認している。
また、図8(b)等のように個別電極用パッド411が複数ある場合、全ての個別電極用パッド411の近傍が第5の電極410で囲われていることが好ましい。全ての個別電極用パッド411の近傍が第5の電極410で囲われていない場合、分極処理の過剰進行による列内特性ばらつきや過剰電荷の注入による上下電極間での絶縁破壊が発生するなどの不具合が発生する場合がある。
第5の電極410の幅は20μm以上、100μm以下であることが好ましい。
また、図9に示すように、第5の電極410上にある第2の絶縁保護膜409が開口された領域である開口部414aと、個別電極用パッド411近傍を囲うように開口された領域である開口部414bとの配置関係が重要になる。第5の電極410上の開口部414aと個別電極用パッド411近傍を囲うように開口された領域である開口部414bとの距離d、d、dとしては、5μm以上50μm以下にあることが好ましく、6μm以上20μm以下にあることがさらに好ましい。この範囲より距離が短くなると、第5の電極410に電荷集中が発生するため、個別電極用パッド411には電荷が蓄積されにくくなり、分極進展しなくなる。また、この範囲より距離が長くなると、個別電極用パッド411にほとんど電荷が蓄積されるため、第5の電極410が余剰な電荷分を蓄積する機能が充分果たせない。なお、d、d、dは同一の値であっても異なる値であってもよい。
さらに図9に示すように第5の電極410上にある第2の絶縁保護膜409が開口された領域(414a、白地部分)の開口幅w、wが重要になり、10μm以上にあることが好ましく、20μm以上の幅で開口されていることがさらに好ましい。この値未満になると個別電極用パッド411にほとんど電荷が蓄積されるため、第5の電極410が余剰な電荷分を蓄積する機能が充分果たせない。また、w、wは80μm以下であることが好ましい。なお、w、wは同一の値であっても異なる値であってもよい。
また、第5の電極410のうち、個別電極用パッド411近傍を囲うように形成された電極部と、当該個別電極用パッド411との距離(d、d、d)が3μm以上50μm以下であることが好ましい。この範囲より距離が短くなると、第5の電極410に電荷集中が発生するため、個別電極用パッド411には電荷が蓄積されにくくなり、分極進展しなくなる。また、この範囲より距離が長くなると、個別電極用パッド411にほとんど電荷が蓄積されるため、第5の電極410が余剰な電荷分を蓄積する機能が充分果たせない。なお、d、d、dは同一の値であっても異なる値であってもよい。
ここまで作製された圧電素子に対して、図12〜図14に示す分極処理装置を用いて分極処理を行った。
図12は、分極処理装置の外観図を示しており、図13は、図12の分極処理装置における配線の説明図となっている。図14(a)は図12のA−A’線における一例を示す断面図であり、図14(b)は図12のA−A’線における他の一例を示す断面図である。
図12に示される分極処理装置は、コロナ電極71とグリッド電極73とを具備しており、コロナ電極71、グリッド電極73はそれぞれコロナ電極用電源72、グリッド電極用電源74に接続されている。この際、図13に示すように、コロナ電極用電源72及びグリッド電極用電源74の各電極と接続されていない他方の端子は、例えば、サンプルステージ75のサンプルを設置する場所に接続することができる。また、後述のようにサンプルステージ75にアース線76を接続する場合には、該アース線76に接続することができる。
コロナ電極71の構成は特に限定されるものではないが、例えば図に示すようにワイヤー形状を有する構成とすることができ、各種導電性の材料により構成することができる。
グリッド電極73は、コロナ電極71とサンプルステージ75との間に配置されている。グリッド電極73の構成は特に限定されるものではないが、例えば、メッシュ加工を施し、コロナ電極71に高電圧を印加したときに、コロナ放電により発生するイオンや電荷等を効率よく下のサンプルステージ75に降り注ぐように構成されていることが好ましい。
そして、サンプルステージ75には、電気機械変換素子を加熱できるように加熱機構が付加されている。電気機械変換素子を加熱する該加熱機構の具体的手段は特に限定されるものではなく、各種ヒーターやランプ等を用いて加熱するように構成することができる。また、該加熱機構は、サンプルステージ75内に設置することもでき、サンプルステージ外から加熱するように設置することもできる。特に電極等との干渉を避けるため、サンプルステージ75内に設置されていることが好ましい。
サンプルステージ75に加熱機構を設置した場合の構成例について、図14を用いて説明する。なお、上述のように以下の構成に限定されるものではない。
図14(a)に示すように、サンプルステージ75は、サンプル保持部752内に、サンプル形状にあわせて形成されたサンプル保持用の溝751、及び、電熱線等からなる加熱機構753を有する構成とすることができる。また、後述のようにサンプルステージ75にアース線76を設けた構成とすることもできる。上記構成することにより、加熱機構753により、サンプルを特に均一に加熱しやすいため好ましい。特にサンプルを均一に加熱する観点から、サンプル保持部752は、金属により構成されていることが好ましく、例えばステンレス鋼や、インコネル[INCONEL](登録商標)をより好ましく用いることができる。特にサンプルを均一に加熱する観点からインコネル[INCONEL](登録商標)を特に好ましく用いることができる。
また他の構成例として、図14(b)に示すように、サンプルステージ75をサンプル保持部752と、加熱機構保持部754とに分けた構成とすることもできる。この場合、サンプル保持部752内には、サンプル保持用の溝751を形成することができる。また、加熱機構保持部754内には、電熱線等からなる加熱機構753を有する構成とすることができる。この場合、サンプル保持部752については伝熱性を高めるため、金属により構成されていることが好ましく、例えばステンレス鋼や、インコネル[INCONEL](登録商標)をより好ましく用いることができ、特に均一に加熱する観点からインコネル[INCONEL](登録商標)を特に好ましく用いることができる。図14(b)に示した構成においては、サンプル保持部752と加熱機構保持部754については、単に積層したのみの構成とすることもできるし、両者を接着剤や固定具等により固定することもできる。
なお、図14(a)、図14(b)では、サンプル保持用の溝751を設けた構成を例に説明しているが、該溝を設けず、サンプル保持部752上の任意の場所にサンプルを設置するように構成してもよい。
前記加熱機構の最大加熱温度は特に限定されるものではなく、後述するように製造する電気機械変換素子の電気機械変換膜のキュリー温度等に応じて所定の温度に加熱できるように構成されていれば良い。特に各種電気機械変換素子に対応できるよう、最大350℃まで加熱できるように構成されていることが好ましい。
また、サンプルステージ上に配置された試料に対して電荷が流れやすくするように試料を設置するサンプルステージ75はアース接地されていることが好ましい。すなわち、サンプルステージ75にはアース線76が接続されていることが好ましい。
コロナ電極やグリッド電極に印加する電圧の大きさや、試料と各電極間の距離は特に限定されるものではなく、充分に分極処理を施すことができるようにこれらを調整し、コロナ放電の強弱をつけることができる。
また、分極処理を行う際に必要な電荷量Qについては特に限定されるものではないが、コロナ放電またはグロー放電により、正帯電した電荷が電気機械変換素子に1.0×10−8C以上の電荷量が蓄積されることが好ましく、4.0×10−8C以上の電荷量が蓄積されることがさらに好ましい。係る範囲の電荷量を電気機械変換素子に蓄積させることにより、より確実に所望の分極率を有するように分極処理を行うことができる。
ここで、分極処理の状態については、P−Eヒステリシスループから判断している。図15(a)は、分極処理前のP−Eヒステリシスループを示すグラフであり、図15(b)は、分極処理後のP−Eヒステリシスループを示すグラフである。
図15に示すように±150kV/cmの電界強度かけてヒステリシスループを測定し、最初の0kV/cm時の分極をPini、+150kV/cmの電圧印加後0kV/cmまで戻したときの0kV/cm時の分極をPrとしたときに、Pr−Piniの値を分極率として定義し、この分極率から分極状態の良し悪しを判断している。ここで分極率Pr−Piniが10μC/cm以下となっていることが好ましく、5μC/cm以下となっていることがさらに好ましい。この値に満たない場合は、PZTの圧電アクチュエータとして連続駆動後の変位劣化については充分な特性が得られないことがある。
所望の分極率Pr−Piniを得るためには、図12、図13に示すようなコロナ、グリッド電極電圧やサンプルステージとコロナ、グリッド電極間距離等を調整することにより、達成が可能である。ところが、所望の分極率を得ようとした場合には、電気機械変換膜に対して高い電界を発生させる必要がある。
しかしながら、図5に示すような個別電極間の電流や共通電極と個別電極間の電流を測定したときに、リーク電流量が大きいと分極処理が進まないことが分かった。これは、コロナ放電での分極処理メカニズムから考えると、パッド部を介して圧電素子に蓄積されるはずの電荷が、個別電極間または、個別−共通電極間でリークパスが生じた場合においては、圧電素子には全く電荷が蓄積されない。このため分極処理が進まないことになる。個別電極間または、個別−共通電極間でのリーク電流量としては、50Vでの電圧を印加したときに、1.0×10−8A以下になっていることが好ましく、さらに好ましくは8.0×10−10A以下である。
これよりも高いリーク量の場合は、分極処理が進まないため、PZTの圧電アクチュエータとして連続駆動後の変位劣化については充分な特性が得られない。
以下に、本発明の電気機械変換素子の各構成の材料、工法について具体的に説明する。
(基板401)
基板401として、シリコン単結晶基板を用いることが好ましく、通常100〜600μmの厚みを持つことが好ましい。面方位としては、(100)、(110)、(111)と3種あるが、半導体産業では一般的に(100)、(111)が広く使用されており、本構成においては、主に(100)の面方位を持つ単結晶基板を主に使用した。また、図1に示すような圧力室を作製していく場合、エッチングを利用してシリコン単結晶基板を加工していくが、この場合のエッチング方法としては、異方性エッチングを用いることが一般的である。
異方性エッチングとは結晶構造の面方位に対してエッチング速度が異なる性質を利用したものである。例えばKOH等のアルカリ溶液に浸漬させた異方性エッチングでは、(100)面に比べて(111)面は約1/400程度のエッチング速度となる。従って、面方位(100)では約54°の傾斜を持つ構造体が作製できるのに対して、面方位(110)では深い溝をほることができる。このため、面方位(110)ではより剛性を保ちつつ、配列密度を高くすることができることが分かっており本構成としては(110)の面方位を持った単結晶基板を使用することも可能である。但し、この場合、マスク材であるSiOもエッチングされてしまうということが挙げられるため、この辺りも留意して利用している。
(成膜振動板402)
図1に示すように電気機械変換膜によって発生した力を受けて、下地(成膜振動板402)が変形変位して、圧力室のインク滴を吐出させる。そのため、下地としては所定の強度を有したものであることが好ましい。
成膜振動板402の材料としては、Si、SiO、SiをCVD法により作製したものが挙げられる。さらに第1の電極403、電気機械変換膜404の線膨張係数に近い材料を選択することが好ましい。特に、電気機械変換膜としては、一般的に材料としてPZTが使用されることから線膨張係数8×10−6(1/K)に近い線膨張係数として、5×10−6〜10×10−6の線膨張係数を有した材料が好ましく、さらには7×10−6〜9×10−6の線膨張係数を有した材料がより好ましい。
具体的な材料としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化オスミウム、酸化レニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム及びそれらの化合物等が挙げられ、これらをスパッタ法もしくは、Sol−gel法を用いてスピンコーターにて作製することができる。膜厚としては0.1〜10μmが好ましく、0.5〜3μmがさらに好ましい。この範囲より小さいと図1に示すような圧力室の加工が難しくなり、この範囲より大きいと下地が変形変位しにくくなり、インク滴の吐出が不安定になる。
(第1の電極403、第6の電極413)
第1の電極403、第6の電極413としては、金属もしくは金属電極膜と、酸化物電極膜とを有することが好ましい。ここでどちらも振動板と金属または金属電極膜の間に密着層を入れて剥がれ等を抑制するように工夫している。
以下に密着層含めて金属電極膜、酸化物電極膜の詳細について記載する。
・密着層
Tiをスパッタ成膜後、RTA(rapid thermal annealing)装置を用いて、650〜800℃、1〜30分、O雰囲気でチタン膜を熱酸化して、チタン膜を酸化チタン膜にする。酸化チタン膜を作成するには反応性スパッタでもよいがチタン膜の高温による熱酸化法が望ましい。反応性スパッタによる作製では、シリコン基板を高温で加熱する必要があるため、特別なスパッタチャンバ構成を必要とする。さらに、一般の炉による酸化よりも、RTA装置による酸化の方がTiO膜の結晶性が良好になる。なぜなら、通常の加熱炉による酸化によれば、酸化しやすいチタン膜は、低温においてはいくつもの結晶構造を作るため、一旦、それを壊す必要が生じるためである。したがって、昇温速度の速いRTAによる酸化の方が良好な結晶を形成するために有利になる。またTi以外の材料としてはTa、Ir、Ru等の材料でも好ましい。
密着層の膜厚としては、10nm〜50nmが好ましく、15nm〜30nmがさらに好ましい。この範囲未満の場合においては、密着性に懸念がある。また、この範囲を超えると密着層の上で作製する電極膜の結晶の質に影響が出てくる。
・金属電極膜
金属電極膜の材料としては従来から高い耐熱性と低い反応性を有する白金が用いられているが、鉛に対しては充分なバリア性を持つとはいえない場合もあり、イリジウムや白金−ロジウムなどの白金族元素や、これらの合金膜も挙げられる。また、白金を使用する場合には下地(特にSiO)との密着性が悪いために、密着層を先に積層することが好ましい。
作製方法としては、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜が一般的である。膜厚としては、80〜200nmが好ましく、100〜150nmが好ましい。この範囲より薄い場合においては、共通電極として充分な電流を供給することができなくなり、インク吐出をする際に不具合が発生する。この範囲より厚い場合においては、白金族元素の高価な材料を使用する場合においてはコストアップとなる。また、上記範囲より厚い場合、白金を材料とした場合においては、膜厚を厚くしていったときに表面粗さが大きくなり、その上に作製する酸化物電極膜やPZTの表面粗さや結晶配向性に影響を及ぼして、インク吐出に充分な変位が得られないような不具合が発生する。
・酸化物電極膜
酸化物電極膜については、その上に作製する電気機械変換膜に対してのシード層としての結晶成長に大きく影響する。例えば、電気機械変換膜としてPZTを用いた場合においては、PZTの結晶配向の状態は、酸化物電極膜種によっても大きく変わる。具体的な一例を挙げると、PZT(111)配向を狙う場合においては、SrRuO材料等が好ましく、PZT(100)配向を狙う場合においてはLaNiO材料等が好ましい。さらに、熱酸化させたTiOxシードは膜厚範囲によってPZT(100)やPZT(111)を任意に調整することができる。ただし、酸化物電極膜に関してはこれら材料に限ったわけではない。PZT(111)、PZT(100)どちらに優先配向させた場合においても、最終的には分極処理を行うことで、図15に示すような安定した状態に維持することができるが、処理に要する時間としては、PZT(111)優先配向させた方がプロセスタクトでは有利になる。
ここではPZT(111)に優先配向させるために、SrRuO材料を選定して、その詳細な作製方法について記載していく。SrRuOについては、左記以外にも、Sr(A)(1−x)Ru(B)(1−y)、A=Ba、Ca、 B=Co、Ni、x、y=0〜0.5で記述されるような材料についても挙げられる。成膜方法についてはスパッタ法により作製される。スパッタ条件によってSrRuO薄膜の膜質が変わるが、特に結晶配向性を重視し、第1電極のPt(111)にならってSrRuO膜についても(111)配向させるためには、成膜温度については500℃以上での基板加熱を行い、成膜することが好ましい。
例えば特許第3782401号公報に記載のSRO成膜条件については、室温成膜でその後、RTA処理にて結晶化温度(650℃)で熱酸化している。この場合、SRO膜としては、充分結晶化され、電極としての比抵抗としても充分な値が得られるが、膜の結晶配向性としては、(110)が優先配向しやすくなり、その上に成膜したPZTについても(110)配向しやすくなる。
Pt(111)上に作製したSRO結晶性については、PtとSROで格子定数が近いため、通常のθ−2θ測定では、SRO(111)とPt(111)の2θ位置が重なってしまい判別が難しい。Ptについては消滅則の関係からPsi=35°傾けた2θが約32°付近の位置には回折線が打ち消し合い、回折強度が見られない。そのため、Psi方向を約35°傾けて、2θが約32°付近のピーク強度で判断することでSROが(111)に優先配向しているかを確認することができる。
図20に、2θ=32°に固定し、Psiを振ったときのデータを示す。Psi=0°ではSRO(110)ではほとんど回折強度が見られず、Psi=35°付近において、回折強度が見られる。このことから、本成膜条件にて作製したものについては、SROが(111)配向していることが確認できた。また、上述の室温成膜+RTA処理により作製されたSROについては、Psi=0°のときにSRO(110)の回折強度が見られる。
詳細を後述するが、圧電アクチュエータとして連続動作したときに、駆動させた後の変位量が初期変位に比べてどのくらい劣化したかを見積もったところ、PZTの配向性が非常に影響しており、(110)では変位劣化抑制において不充分である。さらにSRO膜の表面粗さを見たときに、成膜温度に影響し、室温から300℃では表面粗さが非常に小さく2nm以下になる。粗さについてはAFM(Atomic Force Microscope)により測定される表面粗さ(平均粗さ)を指標としている。表面粗さとしては、非常にフラットにはなっているが結晶性が充分でなく、その後成膜したPZTの圧電アクチュエータとしての初期変位や連続駆動後の変位劣化については充分な特性が得られない。表面粗さとしては、4nm〜15nmになっていることが好ましく、6nm〜10nmがさらに好ましい。この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなる。従って、上述したような結晶性や表面粗さを得るためには、成膜温度としては500℃〜700℃、好ましくは520℃〜600℃の範囲である。
成膜後のSrとRuの組成比については、Sr/Ruが0.82以上1.22以下であることが好ましい。この範囲から外れると比抵抗が大きくなり、電極として充分な導電性が得られなくなる。
さらにSRO膜の膜厚としては、40nm〜150nmが好ましく、50nm〜80nmがさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄いと初期変位や連続駆動後の変位劣化については充分な特性が得られない点やPZTのオーバーエッチングを抑制するためのストップエッチング層としての機能も得られにくくなる。この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなる。
また比抵抗としては、5×10−3Ω・cm以下になっていることが好ましく、さらに1×10−3Ω・cm以下になっていることがさらに好ましい。この範囲よりも大きくなると共通電極として、第5の電極410との界面で接触抵抗が充分得られず、共通電極として充分な電流を供給することができなくなり、インク吐出をする際に不具合が発生する。
(電気機械変換膜404)
電気機械変換膜404の材料としては、PZTを主に使用した。PZTとはジルコン酸鉛(PbTiO)とチタン酸(PbTiO)の固溶体で、その比率により特性が異なる。一般的に優れた圧電特性を示す組成はPbZrOとPbTiOの比率が53:47の割合で、化学式で示すとPb(Zr0.53,Ti0.47)O、一般にPZT(53/47)と示される。PZT以外の複合酸化物としてはチタン酸バリウムなどが挙げられ、この場合はバリウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒に溶解させることでチタン酸バリウム前駆体溶液を作製することも可能である。
これら材料は一般式ABOで記述され、A=Pb、Ba、Sr B=Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、Nbを主成分とする複合酸化物が該当する。その具体的な記述として(Pb1−x,Ba)(Zr,Ti)O、(Pb1−x,Sr)(Zr,Ti)O、等があり、これはAサイトのPbを一部BaやSrで置換した場合である。このような置換は2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。
作製方法としては、スパッタ法もしくは、Sol−gel法を用いてスピンコーターにて作製することができる。その場合は、パターニング化が必要となるので、フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。
PZTをSol−gel法により作製した場合、出発材料に酢酸鉛、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒としてメトキシエタノールに溶解させ均一溶液を得ることで、PZT前駆体溶液が作製できる。金属アルコキシド化合物は大気中の水分により容易に加水分解してしまうので、前駆体溶液に安定剤としてアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミンなどの安定化剤を適量、添加しても良い。
下地基板全面にPZT膜を得る場合、スピンコートなどの溶液塗布法により塗膜を形成し、溶媒乾燥、熱分解、結晶化の各々の熱処理を施すことで得られる。塗膜から結晶化膜への変態には体積収縮が伴うので、クラックフリーな膜を得るには一度の工程で100nm以下の膜厚が得られるように前駆体濃度の調整が必要になる。
電気機械変換膜の膜厚としては0.5〜5μmが好ましく、さらに好ましくは1μm〜2μmとなる。この範囲より小さいと充分な変位を発生することができなくなり、この範囲より大きいと薄層を何層も積層させていくため、工程数が多くなりプロセス時間が長くなる。
また、電気機械変換膜の絶縁抵抗が5.0×1010Ω以上であることが好ましい。
また比誘電率としては600以上2000以下になっていることが好ましく、さらに1200以上1600以下になっていることが好ましい。このとき、この値に満たないときには充分な変位特性が得られなかったり、この値より大きくなると、分極処理が充分行われず、連続駆動後の変位劣化については充分な特性が得られなかったりするといった不具合が発生する。
(第2の電極409)
第2の電極409としては、金属もしくは酸化物と金属からなっていることが好ましい。
以下に酸化物電極膜、金属電極膜の詳細について記載する。
・酸化物電極膜
酸化物電極膜の材料等については第1の電極403で使用した酸化物電極膜で記載したものと同じものを用いることができ、SRO膜の膜厚としては、20nm〜80nmが好ましく、40nm〜60nmがさらに好ましい。この膜厚範囲よりも薄いと初期変位や変位劣化特性については充分な特性が得られない。この範囲を超えると、その後成膜したPZTの絶縁耐圧が非常に悪く、リークしやすくなる。
・金属電極膜
金属電極膜の材料等については第1の電極403で使用した金属電極膜で記載したものと同じものを用いることができ、膜厚としては30〜200nmが好ましく、50〜120nmがさらに好ましい。この範囲より薄い場合においては、個別電極として充分な電流を供給することができなくなり、インク吐出をする際に不具合が発生する。この範囲より厚い場合においては、白金族元素の高価な材料を使用する場合にコストアップとなることや、白金を材料とした場合に膜厚を厚くしていったときに表面粗さが大きくなり、絶縁保護膜を介して第6の電極413を作製する際に膜剥がれ等のプロセス不具合が発生し易くなる。
(第1の絶縁保護膜406)
第1の絶縁保護膜406の材料としては、成膜・エッチングの工程による圧電素子へのダメージを防ぐとともに、大気中の水分が透過しづらい材料を選定する必要があるため、緻密な無機材料とすることが好ましい。有機材料では充分な保護性能を得るためには膜厚を厚くする必要があるため好ましくない。第1の絶縁保護膜406を厚い膜とした場合、振動板の振動変位を著しく阻害してしまうため、吐出性能の低いインクジェットヘッドなってしまう。
薄膜で高い保護性能を得るには、酸化物、窒化物、炭化膜を用いることが好ましいが、第1の絶縁保護膜406の下地となる電極材料、圧電体材料、振動板材料と密着性が高い材料を選定する必要がある。また、成膜法も圧電素子を損傷しない成膜方法を選定する必要がある。すなわち、反応性ガスをプラズマ化して基板上に堆積するプラズマCVD法やプラズマをターゲット材に衝突させて飛ばすことで成膜するスパッタリング法は好ましくない。好ましい成膜方法としては、蒸着法、ALD法(Atomic Layer Deposition)などが例示できるが、使用できる材料の選択肢が広いALD法が好ましい。第1の絶縁保護膜406の好ましい材料としては、Al,ZrO,Y,Ta,TiOなどのセラミクス材料に用いられる酸化膜が例として挙げられる。特にALD法を用いることで、膜密度の非常に高い薄膜を作製し、プロセス中でのダメージを抑制できる。
第1の絶縁保護膜406の膜厚は、圧電素子の保護性能を確保できる充分な薄膜とする必要があると同時に、振動板の変位を阻害しないように可能な限り薄くする必要がある。好ましい第1の絶縁保護膜406の膜厚は20nm〜100nmの範囲である。100nmより厚い場合は、振動板の変位が低下するため、吐出効率の低いインクジェットヘッドとなる。一方、20nmより薄い場合は圧電素子の保護層としての機能が不足してしまうため、圧電素子の性能が前述の通り低下してしまう。
また第1の絶縁保護膜406を2層にする構成も考えられる。この場合は、2層目の絶縁保護膜を厚くするため、振動板の振動変位を著しく阻害しないように第2の電極部付近において2層目の絶縁保護膜を開口するような構成も挙げられる。このとき2層目の絶縁保護膜としては、任意の酸化物、窒化物、炭化物またはこれらの複合化合物を用いることができるが、半導体デバイスで一般的に用いられるSiOを用いることができる。成膜は任意の手法を用いることができ、CVD法、スパッタリング法が例示でき、電極形成部等のパターン形成部の段差被覆を考慮すると等方的に成膜できるCVD法を用いることが好ましい。2層目の絶縁保護膜の膜厚は下部電極と個別電極配線に印加される電圧で絶縁破壊されない膜厚とする必要がある。すなわち絶縁保護膜に印加される電界強度を、絶縁破壊しない範囲に設定する必要がある。さらに、絶縁保護膜の下地の表面性やピンホール等を考慮すると膜厚は200nm以上必要であり、さらに好ましくは500nm以上である。
(第3の電極407、第4の電極408、第5の電極410)
第3の電極407、第4の電極408、第5の電極410の材料としては、Ag合金、Cu、Al、Au、Pt、Irのいずれかから成る金属電極材料であることが好ましい。作製方法としては、スパッタ法、スピンコート法を用いて作製し、その後フォトリソエッチング等により所望のパターンを得る。膜厚としては、0.1〜20μmが好ましく、0.2〜10μmがさらに好ましい。この範囲より小さいと抵抗が大きくなり電極に充分な電流を流すことができなくなりヘッド吐出が不安定になり、この範囲より大きいとプロセス時間が長くなる。また、共通電極、個別電極としてコンタクトホール部(例えば、10μm×10μm)での接触抵抗として、共通電極としては10Ω以下、個別電極としては1Ω以下が好ましく、さらに好ましくは、共通電極としては5Ω以下、個別電極としては0.5Ω以下である。この範囲を超えると充分な電流を供給することができなくなり、インク吐出をする際に不具合が発生する。
(第2の絶縁保護膜409)
第2の絶縁保護膜409としての機能は個別電極配線や共通電極配線の保護層の機能を有するパシベーション層である。図5に示す通り、個別電極引き出し部(個別電極用パッド411上)と共通電極引き出し部(共通電極用パッド412上)の箇所を除き、個別電極と共通電極上を被覆する。これにより電極材料に安価なAlもしくはAlを主成分とする合金材料を用いることができる。その結果、低コストかつ信頼性の高いインクジェットヘッドとすることができる。
第2の絶縁保護膜409の材料としては、任意の無機材料、有機材料を使用することができるが、透湿性の低い材料とする必要がある。無機材料としては、酸化物、窒化物、炭化物等が例示でき、有機材料としてはポリイミド、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が例示できる。ただし、有機材料の場合には厚膜とすることが必要となるため、後述のパターニングに適さない。そのため、薄膜で配線保護機能を発揮できる無機材料とすることが好ましい。特に、Al配線上にSiを用いることが、半導体デバイスで実績のある技術であるため好ましい。
また、膜厚は200nm以上とすることが好ましく、さらに好ましくは500nm以上である。膜厚が薄い場合は充分なパッシベーション機能を発揮できないため、配線材料の腐食による断線が発生し、インクジェットの信頼性を低下させてしまう。
また、圧電素子上とその周囲の振動板上に薄膜部(不図示)をもつ構造が好ましい。例えば図8(a)において、電気機械変換膜404(第2の電極405)上であり、且つ、第4の電極408が配置された領域上を除く位置において、第2の絶縁保護膜409が他の部分と比較して薄く形成されていることが好ましい。これは、前述の第1の絶縁保護膜406の個別液室領域を薄くしていることと同様の理由である。これにより、高効率かつ高信頼性のインクジェットヘッドとすることが可能になる。
開口部分の形成には、フォトリソグラフィ法とドライエッチングを用いることが、絶縁膜で圧電素子が保護されているため可能である。またパッド部の面積については、50×50μm以上になっていることが好ましく、さらに100×300μm以上になっていることが好ましい。この値に満たない場合は、充分な分極処理ができなくなり、連続駆動後の変位劣化については充分な特性が得られないといった不具合が発生する。
次に、本発明に係るインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)及びインクジェット記録装置(液滴吐出装置)について説明する。
図1に1ノズルの液滴吐出ヘッドの構成例を示す。図1では液滴を吐出するノズル102と、ノズル102が連通する加圧室101と、加圧室101内の液体を昇圧させる吐出駆動手段とを備えた液滴吐出ヘッドが示されている。前記吐出駆動手段は、加圧室101の壁の一部を構成する振動板(下地105)を有し、前記振動板に本発明に係る電気機械変換素子が配置されている。
また図17にこれらを複数個配置したもの(液滴吐出ヘッドの他の構成例)を示す。本発明によれば、図中の電気機械変換素子が簡便な製造工程で(かつバルクセラミックスと同等の性能を持つ)形成でき、その後の圧力室形成のための裏面からのエッチング除去、ノズル孔を有するノズル板を接合することで液滴吐出ヘッドができる。なお、図中には液体供給手段、流路、流体抵抗についての記述は略した。
次に、本発明に係る液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置の一例について図18及び図19を参照して説明する。なお、図18は本発明に係る液滴吐出装置の斜視説明図、図19は本発明に係る液滴吐出装置の機構部の側面説明図である。
このインクジェット記録装置は、記録装置本体81の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載した本発明を実施したインクジェットヘッドからなる記録ヘッド、記録ヘッドへインクを供給するインクカートリッジ等で構成される印字機構部82等を収納し、装置本体81の下方部には前方側から多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい。)84を抜き差し自在に装着することができ、また、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒することができ、給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に排紙する。
印字機構部82は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ93を主走査方向に摺動自在に保持し、このキャリッジ93にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する本発明に係るインクジェットヘッドからなるヘッド94を複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。またキャリッジ93にはヘッド94に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ95を交換可能に装着している。
インクカートリッジ95は上方に大気と連通する大気口、下方にはインクジェットヘッドへインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッドへ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、記録ヘッドとしてここでは各色のヘッド94を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。
ここで、キャリッジ93は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド92に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間にタイミングベルト100を張装し、このタイミングベルト100をキャリッジ93に固定しており、主走査モータ97の正逆回転によりキャリッジ93が往復駆動される。
一方、給紙カセット84にセットした用紙83をヘッド94の下方側に搬送するために、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101及びフリクションパッド102と、用紙83を案内するガイド部材103と、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104と、この搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105及び搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ106とを設けている。搬送ローラ104は副走査モータ107によってギヤ列を介して回転駆動される。
そして、キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ104から送り出された用紙83を記録ヘッド94の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材109を設けている。この印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、拍車112を設け、さらに用紙83を排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ113及び拍車114と、排紙経路を形成するガイド部材115,116とを配設している。
記録時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド94を駆動することにより、停止している用紙83にインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
また、キャリッジ93の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、ヘッド94の吐出不良を回復するための回復装置117を配置している。回復装置117はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ93は印字待機中にはこの回復装置117側に移動されてキャッピング手段でヘッド94をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でヘッド94の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
本発明の液滴吐出装置においては、振動板駆動の不良等によるインク滴吐出不良を抑制することができ、安定したインク滴吐出特性、画像品質の向上を図ることができる。
以下、本発明の実施例を説明する。なお、本発明はここに例示される実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
6インチシリコンウェハに熱酸化膜(膜厚1μm)を形成し、第1の電極403の密着層として、チタン膜(膜厚30nm)を成膜温度350℃でスパッタ装置にて成膜した後にRTAを用いて750℃にて熱酸化する。引き続き、金属電極膜として白金膜(膜厚100nm)を成膜温度550℃でスパッタ装置にて成膜し、酸化物電極膜としてSrRuO膜(膜厚50nm)をスパッタ成膜した。SrRuOスパッタ成膜時の基板加熱温度については450℃にて成膜し、その後ポストアニール処理(550℃)としてRTAを用いて実施した。次に電気機械変換膜404としてPb:Zr:Ti=115:53:47に調整された溶液を準備し、スピンコート法により膜を成膜した。
ここでスパッタ装置としては、1チャンバーに対して複数のターゲットが備え付けられたものを用いて成膜を実施した。
具体的な前駆体塗布液の合成については、出発材料に酢酸鉛三水和物、イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムを用いた。酢酸鉛の結晶水はメトキシエタノールに溶解後、脱水した。化学量論組成に対し鉛量を過剰にしてある。これは熱処理中のいわゆる鉛抜けによる結晶性低下を防ぐためである。イソプロポキシドチタン、イソプロポキシドジルコニウムをメトキシエタノールに溶解し、アルコール交換反応、エステル化反応を進め、先記の酢酸鉛を溶解したメトキシエタノール溶液と混合することでPZT前駆体溶液を合成した。このPZT濃度は0.5モル/lにした。この液を用いて、スピンコートにより成膜し、成膜後、120℃乾燥の後に500℃熱分解を行った。3層目の熱分解処理後に、結晶化熱処理(温度750℃)をRTA(急速熱処理)にて行った。このときPZTの膜厚は240nmであった。この工程を計8回(24層)実施し、約2μmのPZT膜厚を得た。
次に第2の電極405の酸化物電極膜として、SrRuO膜(膜厚40nm)、金属電極膜としてPt膜(膜厚125nm)をスパッタ成膜した。その後、東京応化社製フォトレジスト(TSMR8800)をスピンコート法で成膜し、通常のフォトリソグラフィでレジストパターンを形成した後、ICPエッチング装置(サムコ製)を用いてパターンを作製した。次に第1の絶縁保護膜406として、ALD工法を用いてAl膜を50nm成膜した。このとき原材料としてAlについては、TMA(トリメチルアルミニウム、シグマアルドリッチ社)、Oについてはオゾンジェネレーターによって発生させたOを交互に積層させることで、成膜を進めた。その後、エッチングによりコンタクトホール部を形成する。その後、第3の電極407、第4の電極408、第5の電極410としてAlをスパッタ成膜し、エッチングによりパターニング形成し、第2の絶縁保護膜409としてSiをプラズマCVDにより500nm成膜し、電気機械変換素子を作製した。
構造体としては、図8に示すものを作製した。
この後、図12に示される分極処理装置を用いて、コロナ帯電処理により分極処理を行った。コロナ帯電処理にはφ50μmのタングステンのワイヤーを用いている。分極処理条件としては、処理温度80℃、コロナ電圧9kV、グリッド電圧2.5kV、処理時間30s、コロナ電極−グリッド電極間距離4mm、グリッド電極−ステージ間距離4mmにて行った。
図9に示すような第5の電極410と個別電極用パッド411との距離、第5の電極410幅、第5の電極410の開口幅については、25μm、25μm、15μmにて作製した。なお、個別電極用パッド411は図8に示すように複数作製し、個別電極用パッド411の全てが第5の電極410で囲われていた。また、各個別電極用パッド411において、第5の電極410と個別電極用パッド411との距離、第5の電極410幅、第5の電極410の開口幅については、全て上記の値とした。
<実施例2>
図9に示すような第5の電極410と個別電極用パッド411との距離、第5の電極410幅、第5の電極410の開口幅については、15μm、20μm、10μmにて作製した以外は、実施例1と同様に電気機械変換素子を作製した。
<実施例3>
図9に示すような第5の電極410と個別電極用パッド411との距離、第5の電極410幅、第5の電極410の開口幅については、50μm、20μm、10μmにて作製した以外は、実施例1と同様に電気機械変換素子を作製した。
<実施例4>
図9に示すような第5の電極410と個別電極用パッド411との距離、第5の電極410幅、第5の電極410の開口幅については、5μm、20μm、10μmにて作製した以外は、実施例1と同様に電気機械変換素子を作製した。
<実施例5>
図10に示す構造体を作製した以外は、実施例1と同様に電気機械変換素子を作製した。
<実施例6>
図11に示す構造体を作製した以外は、実施例1と同様に電気機械変換素子を作製した。なお、第6の電極413の作製は、第1の電極の作製方法と同様にして行った。
<比較例1>
図5に示す構造体を作製した以外は、実施例1と同様に電気機械変換素子を作製した。
<参考例1>
図9に示すような第5の電極410と個別電極用パッド411との距離、第5の電極410幅、第5の電極410の開口幅については、60μm、10μm、5μmにて作製した以外は、実施例1と同様に電気機械変換素子を作製した。
<参考例2>
図9に示すような第5の電極410と個別電極用パッド411との距離、第5の電極410幅、第5の電極410の開口幅については、3μm、10μm、5μmにて作製した以外は、実施例1と同様に電気機械変換素子を作製した。
実施例1〜6、比較例1及び参考例1〜2で作製した電気機械変換素子について、分極処理工程後において、全ての電極パッドのBitに関して、放電痕等の外観不良があるかを確認した。さらに作製した電気機械変換素子を用いて電気特性、電気機械変換能(圧電定数)の評価を行った。代表的なP−Eヒステリシス曲線は図16に示す。電気機械変換能は印加電界(150kV/cm)による変形量をレーザードップラー振動計で計測し、シミュレーションによる合わせ込みから算出した。初期特性を評価した後に、耐久性(1010回繰り返し印加電圧を加えた直後の特性)評価を実施した。これらの詳細結果について表1にまとめた。
実施例1〜6については初期特性、耐久性試験後の結果についても一般的なセラミック焼結体と同等の特性を有していた(圧電定数は−120〜−160pm/V)。
一方、比較例1、参考例1については、分極処理後に放電痕が発生しそれ以降の電気特性等の評価ができなかった。参考例2については、分極率が高く、耐久性試験後の結果においても圧電定数において大きく劣化していることが確認された。
なお、参考例1および2は、第5の電極410と個別電極用パッド411との距離、第5の電極410幅および第5の電極410の開口幅という複数の構成のいずれもが好ましい範囲から外れていることから本発明の効果を奏しないものである。但し本発明は、第5の電極410と個別電極用パッド411との距離、第5の電極410幅および第5の電極410の開口幅という複数の構成のいずれもが好ましい範囲内であることを必ずしも要するものではなく、これらに代えて他の構成を適宜調整することで所期の効果を奏するものとすることもできる。
次に、実施例1〜6で作製した電気機械変換素子を用いて、図17の液滴吐出ヘッドを作製し液の吐出評価を行った。粘度を5cpに調整したインクを用いて、単純Push波形により−10〜−30Vの印加電圧を加えたときの吐出状況を確認したところ、全てどのノズル孔からも吐出できていることを確認した。
また、実施例1〜6で作製した液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置では、振動板駆動不良によるインク滴吐出不良がなく、安定したインク滴吐出特性が得られ、画像品質が向上した。
(図1及び図17について)
101 加圧室
102 ノズル
103 ノズル板
104 加圧室基板(Si基板)
105 下地
106 下部電極
107 電気機械変換膜
108 上部電極
109 電気機械変換素子(圧電体)
(図2について)
20 ドメイン
21 分極の方向
(図4、図5及び図7〜図11について)
401 基板
402 成膜振動板
403 第1の電極
404 電気機械変換膜
405 第2の電極
406 第1の絶縁保護膜
407 第3の電極
408 第4の電極
409 第2の絶縁保護膜
410 第5の電極
411 個別電極用パッド
412 共通電極用パッド
413 第6の電極
414a 第5の電極上の開口部
414b 個別電極用パッド上の開口部
特許第3365485号公報 特許第4218309号公報 特許第3019845号公報 特開2004−202849号公報 特開2010−34154号公報 特開2006−203190号公報

Claims (10)

  1. 基板と、
    該基板上に形成された共通電極である第1の電極と、
    該第1の電極上に形成された電気機械変換膜と、
    該電気機械変換膜上に形成された個別電極である第2の電極と、
    前記第1の電極及び前記第2の電極上に設けられ、コンタクトホールを有する第1の絶縁保護膜と、
    前記第1の電極と前記コンタクトホールを介して導通がとれるように形成された第3の電極と、
    前記第2の電極と前記コンタクトホールを介して導通がとれるように形成された第4の電極と、
    前記第3の電極上に形成された共通電極用パッドと、前記第4の電極上に形成され、所定の列内に複数配置された個別電極用パッドと、を有する第2の絶縁保護膜と、
    前記個別電極用パッドのそれぞれの近傍を囲うように形成された第5の電極と、を備え、
    前記第5の電極は、前記第1の絶縁保護膜上に形成され、前記コンタクトホールを介して前記第1の電極と導通していることを特徴とする電気機械変換素子。
  2. 基板と、
    該基板上に形成された共通電極である第1の電極と、
    該第1の電極上に形成された電気機械変換膜と、
    該電気機械変換膜上に形成された個別電極である第2の電極と、
    前記第1の電極及び前記第2の電極上に設けられ、コンタクトホールを有する第1の絶縁保護膜と、
    前記第1の電極と前記コンタクトホールを介して導通がとれるように形成された第3の電極と、
    前記第2の電極と前記コンタクトホールを介して導通がとれるように形成された第4の電極と、
    前記第3の電極上に形成された共通電極用パッドと、前記第4の電極上に形成され、所定の列内に複数配置された個別電極用パッドと、を有する第2の絶縁保護膜と、
    前記個別電極用パッドのそれぞれの近傍を囲うように形成された第5の電極と、
    該第5の電極と前記コンタクトホールを介して導通する第6の電極と、を備え、
    前記第5の電極は、前記第1の絶縁保護膜上に形成され、
    前記第6の電極は、前記基板上に前記第1の電極とは別に独立して形成されていることを特徴とする電気機械変換素子。
  3. 前記第5の電極上に前記第2の絶縁保護膜が形成され、
    前記個別電極用パッドのそれぞれの近傍を囲うように前記第2の絶縁保護膜が開口されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電気機械変換素子。
  4. 前記第5の電極が前記個別電極用パッドのそれぞれの一部分を除いて前記個別電極用パッド近傍を囲うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電気機械変換素子。
  5. 前記第5の電極上にある前記第2の絶縁保護膜が前記個別電極用パッドのそれぞれの一部分を除いて前記個別電極用パッド近傍を囲うように開口していることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電気機械変換素子。
  6. 前記第5の電極が前記第3の電極と導通していることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電気機械変換素子。
  7. 前記第2の絶縁保護膜は、前記共通電極用パッド及び前記個別電極用パッドを露出する開口部が設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の電気機械変換素子。
  8. コロナ放電またはグロー放電により、正帯電した電荷を、電荷量が1.0×10−8C以上になるように発生させ、請求項1から7のいずれかに記載の電気機械変換素子の前記第1の電極及び前記第2の電極を介して前記電気機械変換膜の分極処理を行う分極工程を有することを特徴とする電気機械変換素子の製造方法。
  9. 液滴を吐出するノズルと、該ノズルが連通する加圧室と、該加圧室内の液体を昇圧させる吐出駆動手段とを備えた液滴吐出ヘッドにおいて、
    前記吐出駆動手段は、前記加圧室の壁の一部を構成する振動板を有し、
    該振動板に請求項1〜7のいずれかに記載の電気機械変換素子が配置されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  10. 請求項9に記載の液滴吐出ヘッドを備えることを特徴とする液滴吐出装置。
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