JP2015097173A - 集電体、電極および蓄電装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ステンレス箔を用い、品質の良い集電体を提供すること。【解決手段】ステンレス箔製の集電体基材上にコート層を設け、このコート層をPTFE、FEP、PFA、PVdFから選ばれる少なくとも一種のフッ素系樹脂で構成し、かつ、(1)フッ素系樹脂として質量平均分子量は100万以上であるものを用いる、または、(2)コート層の厚さを0.5μmを超え5.0μm以下にする、または、(3)コート層の厚さを0.2μm以上5.0μm未満にする。【選択図】なし
Description
本発明は、リチウムイオン二次電池等の蓄電装置に用いられる集電体、当該集電体を含む電極、および、当該電極を含む蓄電装置に関する。
蓄電装置の電極は、集電体と、当該集電体に積層された活物質とで構成されるのが一般的である。集電体は、導電性に優れる金属箔等(例えばアルミニウム箔)からなるのが一般的である。
集電体の材料として、ステンレススチール箔を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。しかし、ステンレススチール箔からなる集電体は、現状においては実用的だとは言い難い。例えば特許文献1には、ステンレススチール箔からなる集電体をバイポーラ電極用の集電体として用いる技術が開示されている。特許文献1には、この集電体上には不動態膜が形成されること、および、当該不動態膜中の酸素を、フッ素、窒素、酸素等の他の元素で置換することで不動態膜を改質することが開示されている。そして特許文献1によると、不動態膜が改質されることで、集電体の耐久性が向上すると考えられる。以下、必要に応じて、ステンレススチール箔をステンレス箔と略し、当該ステンレス箔からなる集電体を集電体基材と呼ぶ。
ところで、集電体基材上に不動態膜を形成し、当該不動態膜中の元素を他の元素に置換する、という特許文献1の技術によると、集電体基体上に望み通りの厚さや密度の層を形成するのは困難であり、かつ、集電体基体上の層の組成を望み通りに制御するのもまた非常に困難である。つまり、特許文献1に開示されている集電体もまた実用的とは言い難かった。したがって、ステンレス箔を用い、より高品質な集電体が望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ステンレス箔を用い品質の良い集電体、当該集電体を含む電極、および、当該電極を含む蓄電装置を提供することを目的とする。
本発明の発明者等は、鋭意研究の結果、集電体基材、つまり、ステンレス箔上に特定のコート層を形成することで、集電体の品質向上を図り得ることを見出した。
すなわち、上記課題を解決する本発明の第1の集電体は、ステンレススチール箔製の集電体基材と、前記集電体基材上に設けられているコート層と、を有し、
前記コート層は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも一種のフッ素系樹脂を含み、
前記フッ素系樹脂の質量平均分子量は100万以上であるものである。
前記コート層は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも一種のフッ素系樹脂を含み、
前記フッ素系樹脂の質量平均分子量は100万以上であるものである。
また、上記課題を解決する本発明の第2の集電体は、ステンレススチール箔製の集電体基材と、前記集電体基材上に設けられているコート層と、を有し、
前記コート層は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも一種のフッ素系樹脂を含み、
前記コート層の厚さは0.5μmを超え5.0μm以下であるものである。
前記コート層は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも一種のフッ素系樹脂を含み、
前記コート層の厚さは0.5μmを超え5.0μm以下であるものである。
さらに、上記課題を解決する本発明の第3の集電体は、ステンレススチール箔製の集電体基材と、前記集電体基材上に設けられているコート層と、を有し、
前記コート層は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも一種のフッ素系樹脂を含み、
前記コート層の厚さは0.2μm以上5.0μm未満であるものである。
前記コート層は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも一種のフッ素系樹脂を含み、
前記コート層の厚さは0.2μm以上5.0μm未満であるものである。
なお、本発明の第1〜第3の各集電体の構成要素は、適宜組み合わせることができる。
本発明の集電体は品質に優れる。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a〜b」は、下限aおよび上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
<集電体>
本発明の集電体は、集電体基材と、コート層とを備える。
本発明の集電体は、集電体基材と、コート層とを備える。
集電体基材は、蓄電装置の放電または充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子高伝導体である。集電体基材は、既述したように、ステンレス箔製である。なお、本明細書において、箔とは、シート状、フィルム状、メッシュ状を含む概念である。
一般的な集電体の製造方法は、電極活物質を含む電極合材を集電体上に積層し、電極合材と集電体とを一体にプレスする工程を含む。この工程により、電極合材と集電体とが密着し一体化する。例えば、集電体として一般的なアルミニウム箔は伸び性に優れる。このため、アルミニウム箔製の集電体は、プレス時に電極合材と一体に伸びる。つまり、アルミニウム箔製の集電体と電極合材とは剥離し難い。これに対してステンレス箔は伸び性に劣るため、ステンレス箔製の集電体と電極合材とはプレス時に剥離する場合がある。電極合材が集電体から剥離すると、集電体の用を成さない。
本発明の集電体においては、ステンレス箔製の集電体基材を用いているものの、集電体基材上にはコート層が設けられている。コート層は、集電体上に積層された活物質層と集電体基材との間に介在する。コート層は樹脂製であり、集電体基材と活物質層とのなじみ性を向上させたり、集電体基材と活物質とを接着したりする機能を発揮し得る。つまり、本発明の集電体においては、集電体基材上にコート層を設けたことで、電極製造時における剥離抑制を可能にする。
さらに、活物質層と集電体との剥離抑制には、コート層を構成する樹脂材料の種類や分子量、コート層の厚さ等が関係すると考えられる。詳細は実施例の欄にて説明するが、集電体基材とコート層との剥離抑制のためには、樹脂材料の分子量が所定範囲内であること、および/または、コート層の厚さが所定厚さ以上であること、が必要である。この分子量の範囲やコート層の厚さの範囲は、コート層に用いられる樹脂材料毎に異なると考えられる。
ところで、一般に、樹脂と電解液とは反応し易く、また、当該反応が生じることで樹脂および電解液が分解する。つまり、樹脂製のコート層を有する電極や電解液の劣化により、蓄電装置の耐久性を向上させ難い場合がある。本発明の集電体におけるコート層はフッ素樹脂製である。フッ素樹脂は電解液に対する反応性が低い。つまり、コート層の材料としてフッ素樹脂を選択した本発明の集電体によると、コート層と電解液との反応を抑制でき、電極および電解性の分解を抑制でき、ひいては蓄電装置の耐久性を向上させ得る。
コート層用のフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)から選ばれる少なくとも一種が用いられる。
コート層は集電体基材の一表面にのみ設けても良いし、集電体基材の全ての表面に設けても良い。しかしコート層は樹脂製であるため導電性に優れるとは言い難い。このためコート層は、集電体基材において活物質層が積層される表面にのみ設けるのが好ましい。さらに、コート層は、集電体基材の一表面の全体に形成しても良いし、集電体基材の一表面の一部にのみ形成しても良い。コート層を集電体基材の二表面以上に形成する場合にも同様に、集電体基材の表面の一部にコート層を形成しない部分を設けても良い。また、上述したようにコート層は比較的導電性に劣る。このため、電池抵抗の低下を抑制するためにはコート層の層厚は薄い方が好ましい。コート層に要求される厚さに関しては、実施例の欄で詳しく説明する。
コート層は、フッ素樹脂のみで構成しても良いし、それ以外の添加剤を含んでも良い。例えば、導電性を向上させる目的で、コート層に導電材料を添加しても良い。導電材料としては、粒子状、繊維状等、種々の形状のものを選択し得る。導電材料の種類は特に限定せず、本発明の集電体の使用環境に応じて適宜選択すれば良いが、導電性酸化物、炭素材料、金属材料、導電性セラミックスの少なくとも一種を単独でまたは複数種併せて使用することが好ましい。具体的には、導電性酸化物としては、酸化スズ、酸化バナジウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化銀、酸化亜鉛、酸化タングステンから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。炭素材料としては、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。金属材料としては、ニッケル、銀、金、白金から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。導電性セラミックスとしては、チタンカーバイトおよび/またはチタンナイトライドが挙げられる。
その他の添加剤としては、コート液(コート材)の粘度調整剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。更には、コート層は、添加剤として活物質を含んでも良い。この場合、コート層に活物質層としての機能が付与される。なお、フッ素樹脂による効果を十分に発揮するためには、コート層に含まれるフッ素樹脂以外の成分(つまり添加剤)の量は50質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましく、5質量%以下であるのがさらに好ましい。
集電体基材の厚さには特に限定はないが、5μm以上100μm以下であるのが好ましく、5μm以上50μm以下であるのがより好ましく、5μm以上20μm以下であるのが特に好ましい。集電体基材の厚さが5μmに満たないと、プレス加工時に集電体基材が破損する可能性がある。また、集電体基材の厚さが過大であると、電池のエネルギ密度の低下を招く場合がある。
コート層は、集電体基材上に設けられれば良く、その製造方法は特に問わない。例えば、上述した各種フッ素樹脂をそのまま、或いは適宜溶媒に溶解または分散させて、既知の方法で集電体基材の表面に塗布または積層し、その後、加熱や乾燥等することで集電体基材上にコート層を形成できる。或いは、上述した各種フッ素樹脂の原料を集電体基材上にコートし、集電体基材上でフッ素樹脂を生成させかつ成膜しても良い。以下、コート層の原料混合物をコート材と呼ぶ。コート材用の溶媒としては、水溶媒や、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、イソプロパノール等の有機溶媒が好ましく用いられるが、特に限定されない。コート材のコート方法としては、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの公知の方法を用いれば良い。
<電極>
本発明の電極において、集電体上には、活物質層が設けられる。活物質層は、蓄電装置における電荷担体を吸蔵および放出可能な活物質を含む。例えば蓄電装置が非水電解質二次電池等の二次電池であれば、活物質は正極活物質または負極活物質である。活物質層は、活物質を含むとともに、必要に応じてバインダ、導電助材等の添加剤を含む。以下、本発明の電極を負極と正極とに分けて説明する。
〔正極〕
本発明の正極は、上述した本発明の集電体と、集電体上に設けられている正極活物質層とを含む。正極活物質層は、上述したように、正極活物質を含むとともに、バインダや導電助剤等の添加剤を含み得る。
本発明の電極において、集電体上には、活物質層が設けられる。活物質層は、蓄電装置における電荷担体を吸蔵および放出可能な活物質を含む。例えば蓄電装置が非水電解質二次電池等の二次電池であれば、活物質は正極活物質または負極活物質である。活物質層は、活物質を含むとともに、必要に応じてバインダ、導電助材等の添加剤を含む。以下、本発明の電極を負極と正極とに分けて説明する。
〔正極〕
本発明の正極は、上述した本発明の集電体と、集電体上に設けられている正極活物質層とを含む。正極活物質層は、上述したように、正極活物質を含むとともに、バインダや導電助剤等の添加剤を含み得る。
正極活物質としては、蓄電装置の正極に用いられるものを選択すれば良い。例えば蓄電装置がリチウムイオン二次電池であれば、正極活物質として、層状化合物のLiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦1.2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦2.1)、Li2MnO3を挙げることができる。また、正極活物質として、LiMn2O4、Li2Mn2O4等のスピネル、およびスピネルと層状化合物の混合物で構成される固溶体、LiMPO4、LiMVO4またはLi2MSiO4(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。さらに、正極活物質として、LiFePO4FなどのLiMPO4F(Mは遷移金属)で表されるタボライト系化合物、LiFeBO3などのLiMBO3(Mは遷移金属)で表されるボレート系化合物を挙げることができる。正極活物質として用いられるいずれの金属酸化物も上記の組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも使用可能である。また、正極活物質として、充放電に寄与するリチウムイオンを含まない正極活物質材料、たとえば、硫黄単体(S)、硫黄と炭素を複合化した化合物、TiS2などの金属硫化物、V2O5、MnO2などの酸化物、ポリアニリンおよびアントラキノン並びにこれら芳香族を化学構造に含む化合物、共役二酢酸系有機物などの共役系材料、その他公知の材料を用いることもできる。さらに、ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシル、フェノキシルなどの安定なラジカルを有する化合物を正極活物質として採用してもよい。
なお、正極活物質が電荷担体を含まない場合には正極および/または負極に電荷担体を予め添加しておくのが良い。例えば、本発明の蓄電装置がリチウムイオン二次電池である場合、リチウムを含まない正極活物質材料を用いる場合には、正極および/または負極に、公知の方法により、予め電荷担体としてのリチウムイオンを添加しておく必要がある。リチウムは、イオンの状態で添加しても良いし、金属等の非イオンの状態で添加しても良い。例えば、リチウム箔を正極および/または負極に貼り付けるなどして一体化しても良い。
バインダは、上記正極活物質及び導電助剤を集電体に繋ぎ止める役割を果たす。結着剤として、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンおよびフッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびポリ酢酸ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂、ポリイミドおよびポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、並びにスチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴムを用いることができる。
導電助剤は、必要に応じて電極の導電性を高めるために添加される。導電助剤として、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(登録商標)(KB)、気相法炭素繊維(VGCF)等を単独でまたは二種以上組み合わせて使用することができる。導電助剤の使用量については、特に限定的ではないが、例えば、正極に含有される活物質100質量部に対して、1質量部〜30質量部程度とすることができる。
正極は、正極活物質および結着剤、並びに必要に応じて導電助剤を含む正極活物質層形成用組成物を調製し、さらにこの組成物に適当な溶剤を加えてペースト状にしてから、リチウムイオン二次電池正極用集電体のコート層の表面に塗布後、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成することができる。
正極活物質層形成用組成物の塗布方法としては、ロールコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いればよい。
粘度調整のための溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メタノール、メチルイソブチルケトン(MIBK)などが使用可能である。
上記した集電体上に正極活物質層等の活物質層を形成するためには、上記したコート層を形成する場合と同様に、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの方法を用いて、集電体の表面に活物質を塗布すれば良い。具体的には、活物質、並びに必要に応じて結着剤および導電助剤を含む活物質層形成用組成物(所謂負極合材、正極合材)を調製し、この組成物に適当な溶剤を加えてペースト状にしてから、集電体の表面に塗布後、乾燥する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮しても良い。これは後述する負極に関しても同様である
〔負極〕
本発明の負極は、上述した本発明の集電体と、集電体上に設けられている負極活物質層とを含む。負極活物質層は、上述したように、負極活物質を含むとともに、バインダや導電助剤等の添加剤を含み得る。
上記した集電体上に正極活物質層等の活物質層を形成するためには、上記したコート層を形成する場合と同様に、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの方法を用いて、集電体の表面に活物質を塗布すれば良い。具体的には、活物質、並びに必要に応じて結着剤および導電助剤を含む活物質層形成用組成物(所謂負極合材、正極合材)を調製し、この組成物に適当な溶剤を加えてペースト状にしてから、集電体の表面に塗布後、乾燥する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮しても良い。これは後述する負極に関しても同様である
〔負極〕
本発明の負極は、上述した本発明の集電体と、集電体上に設けられている負極活物質層とを含む。負極活物質層は、上述したように、負極活物質を含むとともに、バインダや導電助剤等の添加剤を含み得る。
負極活物質としては、電荷担体を吸蔵および放出し得る一般的なものを使用可能である。例えば、蓄電装置がリチウムイオン二次電池である場合には、負極活物質として、リチウムイオンを吸蔵および放出し得る材料を選択すれば良い。より詳しくは、リチウム等の電荷担体と合金化可能な元素(単体)、当該元素を含む合金、または当該元素を含む化合物であれば良い。具体的には、負極活物質として、Liや、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫などの14族元素、アルミニウム、インジウムなどの13族元素、亜鉛、カドミウムなどの12族元素、アンチモン、ビスマスなどの15族元素、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銀、金などの11族元素をそれぞれ単体で採用すれば良い。ケイ素等を負極活物質に採用すると、ケイ素1原子が複数のリチウムと反応するため、高容量の活物質となる。しかしその一方で、リチウムの吸蔵および放出に伴って負極活物質の体積の膨張および収縮が顕著となる等の問題が生じるおそれがある。したがって、当該恐れの軽減のために、ケイ素などの単体に遷移金属等の他の元素を組み合わせた合金または化合物を負極活物質として採用するのも好適である。合金又は化合物の具体例としては、Ag−Sn合金、Cu−Sn合金、Co−Sn合金等の錫系材料、各種黒鉛などの炭素系材料、ケイ素単体と二酸化ケイ素に不均化するSiOx(0.3≦x≦1.6)などのケイ素系材料、ケイ素単体若しくはケイ素系材料と炭素系材料を組み合わせた複合体が挙げられる。また、負極活物質して、Nb2O5、TiO2、Li4Ti5O12、WO2、MoO2、Fe2O3等の酸化物、又は、Li3−xMxN(M=Co、Ni、Cu)で表される窒化物を採用しても良い。負極活物質として、これらのものの一種以上を使用することができる。
バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂を例示することができる。
また、バインダとして、親水基を有するポリマーを採用してもよい。親水基を有するポリマーの親水基としては、カルボキシル基、スルホ基、シラノール基、アミノ基、水酸基、リン酸基などリン酸系の基などが例示される。なお、負極活物質層中のバインダの配合割合は、質量比で、負極活物質:バインダ=1:0.005〜1:0.3であるのが好ましい。バインダが少なすぎると電極の成形性が低下し、また、バインダが多すぎると電極のエネルギ密度が低くなるためである。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、電極の導電性が不足する場合に任意に加えれば良く、電極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤としては化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)、および各種金属粒子などが例示される。これらの導電助剤を単独でまたは二種以上組み合わせて活物質層に添加することができる。負極活物質層中の導電助剤の配合割合は、質量比で、負極活物質:導電助剤=1:0.005〜1:0.5であるのが好ましい。導電助剤が少なすぎると効率のよい導電パスを形成できず、また、導電助剤が多すぎると負極活物質層の成形性が悪くなるとともに電極のエネルギ密度が低くなるためである。
その他の添加剤としては、粘度調整のための溶媒として、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メタノール、メチルイソブチルケトン(MIBK)などが使用可能である。また粘度調整剤としてカルボキシメチルセルロースなどを使用可能である。
上記した集電体上に負極活物質層等の活物質層を形成するためには、上記したコート層を形成する場合と同様に、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの方法を用いて、集電体の表面に活物質を塗布すれば良い。具体的には、活物質、並びに必要に応じて結着剤および導電助剤を含む活物質層形成用組成物(所謂負極合材、正極合材)を調製し、この組成物に適当な溶剤を加えてペースト状にしてから、集電体の表面に塗布後、乾燥する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮しても良い。これは後述する正極に関しても同様である。
<蓄電装置>
本発明の蓄電装置は、本発明の正極と本発明の負極との何れかを含めば良く、必ずしも両方を含まなくても良い。
本発明の蓄電装置は、本発明の正極と本発明の負極との何れかを含めば良く、必ずしも両方を含まなくても良い。
電解液は、有機溶媒に支持電解質(支持塩)を溶解させたものを用いれば良く、特に限定されない。本発明の蓄電装置における電解液は、蓄電装置、正極活物質および負極活物質等の種類に応じて適宜選択可能である。例えば蓄電装置がリチウムイオン二次電池の場合には、有機溶媒として、環状エステル類、鎖状エステル類、エーテル類が使用できる。環状エステル類として、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ガンマブチロラクトン、ビニレンカーボネート、2−メチル−ガンマブチロラクトン、アセチル−ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン等が使用できる。鎖状エステル類として、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル等が使用できる。エーテル類として、例えばテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等が使用できる。また、支持電解質としては、有機溶媒に可溶なリチウム金属塩を用いるのが良く、例えば、LiPF6、LiBF4、LIASF6、LiI、LiClO4、LiCF3SO3からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いるのが好適である。支持電解質は、有機溶媒に0.5mol/l〜1.7mol/l程度の濃度で溶解させるのが好ましい。
蓄電装置には必要に応じてセパレータが用いられる。セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、セラミックスなどの電気絶縁性材料を1種若しくは複数用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としても良い。
上述した正極および負極に、必要に応じてセパレータを挟装させ電極体とする。電極体は、正極、セパレータおよび負極を重ねた積層型、または、正極、セパレータおよび負極を捲いた捲回型の何れの型にしても良い。正極の集電体および負極の集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に電解液を加えることで蓄電装置を得ることが可能である。また、本発明の蓄電装置は、二次電池やキャパシタ等、種々の蓄電装置として適用可能である。また、本発明の蓄電装置は、電極に含まれる活物質の種類に適した電圧範囲で充放電を行えば良い。
本発明の蓄電装置の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
本発明の蓄電装置の用途は特に限定されず、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電力で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器、車両等が挙げられる。
(実施例)
以下に、各種試験例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの試験例等によって限定されるものではない。以下において、特に断らない限り、「部」とは質量部を意味し、「%」とは質量%を意味する。
以下に、各種試験例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、これらの試験例等によって限定されるものではない。以下において、特に断らない限り、「部」とは質量部を意味し、「%」とは質量%を意味する。
(試験1)
試験1の集電体は、集電体基材としてステンレス箔を用い、コート層用のフッ素樹脂として質量平均分子量100万のPTFEを用いたものである。以下、試験1の集電体の製造方法を詳説する。
試験1の集電体は、集電体基材としてステンレス箔を用い、コート層用のフッ素樹脂として質量平均分子量100万のPTFEを用いたものである。以下、試験1の集電体の製造方法を詳説する。
〔集電体の製造方法〕
厚さ20μmのステンレス箔からなる集電体基材を準備し、この集電体基材の表面にコート材をコートした。具体的には、集電体基材の表面にドクターブレードを用いて液状のコート材を塗布し、乾燥させることによってコート層を形成した。この工程により、集電体基材上にコート層が設けられてなる試験1の集電体を得た。また、試験1の集電体としては、コート層の厚さ0.2μm、0.5μm、1.0μm、5.0μmの4通りのものを製造した。
厚さ20μmのステンレス箔からなる集電体基材を準備し、この集電体基材の表面にコート材をコートした。具体的には、集電体基材の表面にドクターブレードを用いて液状のコート材を塗布し、乾燥させることによってコート層を形成した。この工程により、集電体基材上にコート層が設けられてなる試験1の集電体を得た。また、試験1の集電体としては、コート層の厚さ0.2μm、0.5μm、1.0μm、5.0μmの4通りのものを製造した。
〔電極の製造方法〕
試験1の電極は正極である。正極活物質としてはLiNi0.5Co0.2Mn0.3O2を用い、導電助剤としてはABを用い、バインダとしてはPVdFを用いた。正極活物質:導電助剤:バインダ=94:3:3の質量比で混合したものをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶媒で希釈し、スラリー状の正極合材を得た。この正極合材を上記の工程で得た各集電体にそれぞれ塗布し、80℃にて乾燥させ、乾燥後にプレスした。プレス後、所定形状に切断し、試験1の電極(正極)を得た。なお、プレスに用いた装置はロールプレス機であり、塗面に対する線圧が2kN/cmとなるようにプレスを行った。
試験1の電極は正極である。正極活物質としてはLiNi0.5Co0.2Mn0.3O2を用い、導電助剤としてはABを用い、バインダとしてはPVdFを用いた。正極活物質:導電助剤:バインダ=94:3:3の質量比で混合したものをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶媒で希釈し、スラリー状の正極合材を得た。この正極合材を上記の工程で得た各集電体にそれぞれ塗布し、80℃にて乾燥させ、乾燥後にプレスした。プレス後、所定形状に切断し、試験1の電極(正極)を得た。なお、プレスに用いた装置はロールプレス機であり、塗面に対する線圧が2kN/cmとなるようにプレスを行った。
(試験2)
試験2の集電体は、コート層用のフッ素樹脂として質量平均分子量500万のPTFEを用いたこと以外は試験1の集電体と同じものである。また、試験2の集電体としては、コート層の厚さ0.2μm、0.5μm、1.0μm、5.0μmの4通りのものを製造した。試験2の電極は試験2の集電体を用いたこと以外は試験1の電極と同じものである。
試験2の集電体は、コート層用のフッ素樹脂として質量平均分子量500万のPTFEを用いたこと以外は試験1の集電体と同じものである。また、試験2の集電体としては、コート層の厚さ0.2μm、0.5μm、1.0μm、5.0μmの4通りのものを製造した。試験2の電極は試験2の集電体を用いたこと以外は試験1の電極と同じものである。
(試験3)
試験3の集電体は、コート層用のフッ素樹脂として質量平均分子量10万のFEPを用いたこと以外は試験1の集電体と同じものである。また、試験3の集電体としては、コート層の厚さ0.2μm、0.5μm、1.0μm、5.0μmの4通りのものを製造した。試験3の電極は試験3の集電体を用いたこと以外は試験1の電極と同じものである。
試験3の集電体は、コート層用のフッ素樹脂として質量平均分子量10万のFEPを用いたこと以外は試験1の集電体と同じものである。また、試験3の集電体としては、コート層の厚さ0.2μm、0.5μm、1.0μm、5.0μmの4通りのものを製造した。試験3の電極は試験3の集電体を用いたこと以外は試験1の電極と同じものである。
(試験4)
試験4の集電体は、コート層用のフッ素樹脂として質量平均分子量100万のFEPを用いたこと以外は試験1の集電体と同じものである。また、試験4の集電体としては、コート層の厚さ0.2μm、0.5μm、1.0μm、5.0μmの4通りのものを製造した。試験4の電極は試験4の集電体を用いたこと以外は試験1の電極と同じものである。
試験4の集電体は、コート層用のフッ素樹脂として質量平均分子量100万のFEPを用いたこと以外は試験1の集電体と同じものである。また、試験4の集電体としては、コート層の厚さ0.2μm、0.5μm、1.0μm、5.0μmの4通りのものを製造した。試験4の電極は試験4の集電体を用いたこと以外は試験1の電極と同じものである。
(試験5)
試験5の集電体は、コート層用のフッ素樹脂として質量平均分子量10万のPFAを用いたこと以外は試験1の集電体と同じものである。また、試験5の集電体としては、コート層の厚さ0.2μm、0.5μm、1.0μm、5.0μmの4通りのものを製造した。試験5の電極は試験5の集電体を用いたこと以外は試験1の電極と同じものである。
試験5の集電体は、コート層用のフッ素樹脂として質量平均分子量10万のPFAを用いたこと以外は試験1の集電体と同じものである。また、試験5の集電体としては、コート層の厚さ0.2μm、0.5μm、1.0μm、5.0μmの4通りのものを製造した。試験5の電極は試験5の集電体を用いたこと以外は試験1の電極と同じものである。
(試験6)
試験6の集電体は、コート層用のフッ素樹脂として質量平均分子量60万のPVdFを用いたこと以外は試験1の集電体と同じものである。また、試験6の集電体としては、コート層の厚さ0.2μm、0.5μm、1.0μm、5.0μmの4通りのものを製造した。試験6の電極は試験6の集電体を用いたこと以外は試験1の電極と同じものである。
試験6の集電体は、コート層用のフッ素樹脂として質量平均分子量60万のPVdFを用いたこと以外は試験1の集電体と同じものである。また、試験6の集電体としては、コート層の厚さ0.2μm、0.5μm、1.0μm、5.0μmの4通りのものを製造した。試験6の電極は試験6の集電体を用いたこと以外は試験1の電極と同じものである。
(試験7)
試験7の集電体は、コート層用のフッ素樹脂として質量平均分子量100万のPVdFを用いたこと以外は試験1の集電体と同じものである。また、試験7の集電体としては、コート層の厚さ0.2μm、0.5μm、1.0μm、5.0μmの4通りのものを製造した。試験7の電極は試験7の集電体を用いたこと以外は試験1の電極と同じものである。
試験7の集電体は、コート層用のフッ素樹脂として質量平均分子量100万のPVdFを用いたこと以外は試験1の集電体と同じものである。また、試験7の集電体としては、コート層の厚さ0.2μm、0.5μm、1.0μm、5.0μmの4通りのものを製造した。試験7の電極は試験7の集電体を用いたこと以外は試験1の電極と同じものである。
(試験8)
試験8の集電体は、コート層用の樹脂としてフッ素樹脂ではなくエポキシ樹脂を用いたこと以外は試験1の集電体と同じものである。また、試験8の集電体としては、コート層の厚さ0.2μm、0.5μm、1.0μm、5.0μmの4通りのものを製造した。試験8の電極は試験8の集電体を用いたこと以外は試験1の電極と同じものである。
試験8の集電体は、コート層用の樹脂としてフッ素樹脂ではなくエポキシ樹脂を用いたこと以外は試験1の集電体と同じものである。また、試験8の集電体としては、コート層の厚さ0.2μm、0.5μm、1.0μm、5.0μmの4通りのものを製造した。試験8の電極は試験8の集電体を用いたこと以外は試験1の電極と同じものである。
(試験9)
試験9の集電体は、コート層を設けなかったこと以外は試験1の集電体と同じものである。つまり、試験9の集電体は、試験1の集電体基体と同じステンレス箔である。試験9の電極は試験9の集電体を用いたこと以外は試験1の電極と同じものである。
試験9の集電体は、コート層を設けなかったこと以外は試験1の集電体と同じものである。つまり、試験9の集電体は、試験1の集電体基体と同じステンレス箔である。試験9の電極は試験9の集電体を用いたこと以外は試験1の電極と同じものである。
〔剥離評価〕
プレス後の各電極を、目視観察し、活物質層の剥離の有無を評価した。少しでも剥離の生じたものは×と評価し、剥離の全く生じていないものを○と評価した。試験1〜試験9の各電極の剥離評価の結果を表1に示す。以下、質量平均分子量を単に分子量と略する。また、コート層の厚さをコート厚と略する。
プレス後の各電極を、目視観察し、活物質層の剥離の有無を評価した。少しでも剥離の生じたものは×と評価し、剥離の全く生じていないものを○と評価した。試験1〜試験9の各電極の剥離評価の結果を表1に示す。以下、質量平均分子量を単に分子量と略する。また、コート層の厚さをコート厚と略する。
表1に示すように、集電体にコート層を設けなかった試験9の集電体では、コート層の厚さにかかわらず、剥離が生じた。これに対して、集電体にコート層を設けた試験1〜試験7の電極においては、剥離の生じなかったものが多かった。この結果から、コート層は集電体と活物質層との剥離抑制に寄与するといえる。また、コート層の材料としてエポキシ樹脂を用いた試験8の集電体では、コート層の厚さにかかわらず剥離が生じた。これに対して、フッ素樹脂を用いた試験1〜試験7の集電体においては、剥離の生じなかったものが多かった。この結果から、PTFE、FEP、PFA、PVdFから選ばれる少なくとも一種が含まれるコート層は、集電体と活物質層との剥離抑制に寄与するといえる。更に言えば、フッ素樹脂が含まれるコート層は、集電体と活物質層との剥離抑制に寄与するといえる。
さらに、コート層を構成する樹脂の分子量は、剥離の有無に関係する。コート層に同じFEP樹脂を用いた試験3の電極と試験4の電極を例に挙げて説明する。分子量10万の試験3の電極はコート厚が比較的小さい場合(コート厚0.2μm、コート厚0.5μm)に剥離した(評価×)。これに対して、同じコート厚であっても分子量100万の試験4の電極では剥離が生じなかった(評価○)。コート層に同じPVdFを用いた試験6および、試験7の電極においても同様のことがいえる。このため、コート層に含まれるフッ素樹脂の分子量が100万以上であれば、剥離抑制効果が発揮されると考えられる。また、この剥離抑制効果は、フッ素樹脂としてPTFE、FEPまたはPVdFを用いた場合に確認された。このため、少なくともフッ素樹脂がPTFE、FEP、PVdFから選ばれる少なくとも一種であり、かつ、分子量100万以上であれば、コート層に剥離抑制効果を付与できるといえる。剥離抑制の面からはフッ素樹脂の分子量は大きければ良く、上限は特にないが、強いて言えば、1000万以下であるのが良い。コスト低減のためである。
なお、PFAに関しては分子量10万のもの(試験5)のみ評価したが、コート厚が大きい場合には他のフッ素樹脂と同様に剥離抑制効果が確認された。このため、分子量100万以上のPFAを用いる場合には、他のフッ素樹脂を用いる場合と同様に、コート層に剥離抑制効果を付与できると考えられる。
さらに、コート厚もまた剥離の有無に関係する。表1に示すように、フッ素樹脂がPTFE、FEP、PFA、またはPVdFである場合には、コート厚0.5μm以下の場合に剥離が発生するものの、コート厚1μm以上5μm以下の場合には剥離が発生しなかった。換言すると、フッ素樹脂がPTFE、FEP、PFA、またはPVdFである場合、コート厚が0.5μmを超えれば、コート層の剥離を抑制できるといえる。つまり、フッ素樹脂がPTFE、FEP、PFA、PVdFから選ばれる少なくとも一種であり、かつ、コート厚が0.5μmを超えれば、コート層に剥離抑制効果を付与できる。なお、好ましくは、コート厚は1.0μm以上であるのが良い。
さらに、PTFEをコート層に用いた場合、何れの分子量であって、かつ、何れのコート厚であっても、剥離抑制が認められた。このため、剥離抑制のためにはフッ素樹脂としてPTFEを選択するのが好ましいといえる。
〔電池抵抗評価〕
試験1〜試験9の各電極を正極として用いたリチウムイオン二次電池を製作した。
試験1〜試験9の各電極を正極として用いたリチウムイオン二次電池を製作した。
負極活物質としては黒鉛を用いた。バインダとしてはスチレン−ブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)とを1:1の質量比で混合したものを用いた。導電助剤としてはアセチレンブラック(AB)を用いた。負極活物質、バインダおよび導電助剤を、負極活物質:バインダ:導電助剤=97:2:1の質量比で混合し、さらに、適量のイオン交換水を加えて混合して、スラリー状の負極合材を得た。この負極合材を、ドクターブレードを用いて集電体に塗布した。集電体としては厚さ20μmの銅箔を用いた。集電体および集電体に塗布した負極合材を、上記した正極と同様に乾燥後圧縮し、さらに真空乾燥した後に所定の形状に切り取って、負極を得た。
電解液用の有機溶媒としては、エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=3:7の体積比で混合したものを用いた。支持塩としてはLiPF6を用いた。この支持塩を有機溶媒に1Mとなるように溶解させて電解液を得た。
上記の正極、負極および電解液を用いて、ラミネート型リチウムイオン二次電池を製作した。詳しくは、正極および負極の間に、セパレータとしてポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層構造の樹脂膜からなる矩形状シート(厚さ25μm)を挟装して極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに上記電解液を注入した。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群および電解液が密閉されたラミネート型リチウムイオン二次電池を得た。なお、正極および負極は外部と電気的に接続可能なタブを備え、このタブの一部はラミネート型リチウムイオン二次電池の外側に延出している。以上の工程で、試験1〜試験7の各電極を用いたリチウムイオン二次電池を得た。
なお、表1に示すように、試験3のコート厚0.2μmの電極、試験3のコート厚0.5μmの電極、試験5のコート厚0.2μmの電極、試験5のコート厚0.5μmの電極、試験6のコート厚0.2μmの電極、および、試験6のコート厚0.5μmの電極に関しては、電極と活物質層との剥離が生じたため、リチウムイオン二次電池の製作はしなかった。
上記の各リチウムイオン二次電池を、SOC(State Of Charge、充電率)20%、3C、10秒間放電して、電池抵抗(直流放電抵抗)を測定した。各リチウムイオン二次電池の電池抵抗評価の結果を表2に示す。
表2に示すように、試験1〜試験7の各リチウムイオン二次電池において、集電体のコート厚5μmの場合には、電池抵抗が5.0Ω以上であった。これに対して、コート厚1μm以下の場合には、電池抵抗は5.0Ω未満であり、充分に低い値であった。この結果から、上記フッ素樹脂の少なくとも一種を含むコート層において、電池抵抗の増大を抑制するためには、集電体のコート層を5μm未満にするのが良いといえる。換言すると、集電体のコート層としてPTFE、FEP、PFA、PVdFから選ばれる少なくとも一種を含むものを用い、このコート層の厚さを5μm未満にすることで、電池抵抗の増大を抑制しつつ、コート層に由来する剥離抑制効果を集電体に付与できるといえる。電池抵抗の増大抑制の面からは、コート厚は薄い程良く、コート厚の下限はないが、表1に示すように、コート厚が0.2μm以上の場合に集電体と活物質層との剥離抑制が確認されたため、コート層の厚さは0.2μm以上であれば良いといえる。電池抵抗の増大抑制を考慮すると、コート厚は1μm以下であるのが好ましい。
さらに、上記した剥離抑制と電池抵抗の増大抑制とを両立するためには、コート層の厚さは0.5μmを超え5.0μm未満であるのが好ましく、1.0μm以上5.0μm未満であるのがより好ましいといえる。
参考までに、試験1〜試験9の各集電体に用いたコート層用の樹脂材料に関する各種特性を表3に示す。
表3に示すように、エポキシ樹脂は引張り伸度に劣り、引張り強度にもやや劣る。このためエポキシ樹脂製のコート層はプレス時に充分に伸びず、その結果、集電体と活物質層とが剥離したと考えられる。なお、その他のフッ素樹脂に関しては、引張り強度、引張り伸度および縦弾性係数と、剥離抑制効果との間に相関は見られないが、上記した分子量の範囲内で用いるか、または、コート厚を上記した範囲内にすれば、充分に剥離抑制できる。
Claims (8)
- ステンレススチール箔製の集電体基材と、前記集電体基材上に設けられているコート層と、を有し、
前記コート層は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも一種のフッ素系樹脂を含み、
前記フッ素系樹脂の質量平均分子量は100万以上である集電体。 - ステンレススチール箔製の集電体基材と、前記集電体基材上に設けられているコート層と、を有し、
前記コート層は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも一種のフッ素系樹脂を含み、
前記コート層の厚さは0.5μmを超え5.0μm以下である集電体。 - ステンレススチール箔製の集電体基材と、前記集電体基材上に設けられているコート層と、を有し、
前記コート層は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−フルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも一種のフッ素系樹脂を含み、
前記コート層の厚さは0.2μm以上5.0μm未満である集電体。 - 前記コート層の厚さは0.5μmを超え5.0μm未満である請求項2に記載の集電体。
- 前記フッ素系樹脂の質量平均分子量は500万以下である請求項1に記載の集電体。
- 前記フッ素系樹脂はポリフッ化ビニリデンである請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の集電体。
- 請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の集電体と、前記集電体のコート層上に設けられている活物質層と、を有する電極。
- 請求項7の電極を正極および/または負極として有する蓄電装置。
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