本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、側方接続型コネクタが設けられたプリント基板をケースに収容し、カバーを組み付ける電気接続箱において、コネクタの保護を確実にしつつ製造コストの低減と小型化を図ることのできる、新規な構造の電気接続箱を提供することにある。
本発明の第一の態様は、側方接続型コネクタが設けられたプリント基板がケースの開口部から挿し込まれて前記ケースに収容されると共に、該ケースの前記開口部にカバーが組み付けられて該カバーに形成された貫通孔を通じて前記コネクタが前記ケースの外部に突出される電気接続箱において、前記プリント基板には、前記コネクタとして表面実装タイプのコネクタが設けられている一方、前記ケースおよび前記カバーには、該カバーが正規の向きと上下を逆にして前記ケースに接近された場合に、前記カバーが前記コネクタに当接するよりも前に相互に当接して前記カバーの誤組付けを防止する誤結防止突部が設けられていることを、特徴とする。
本発明に従う構造とされた電気接続箱においては、プリント基板に設けられる側方接続型コネクタとして、表面実装タイプのコネクタを採用した。これにより、コネクタの接続端子をプリント基板に重ね合わせて半田付けするのみで、ボルト等を要することなく、コネクタのハウジングをプリント基板に固定することができる。その結果、部品点数を削減して製造コストを低減できると共に、ハウジングにボルト固定部等を形成する必要も無いことから、コネクタを小型化することにより、電気接続箱を小型化することができる。
ところで、上述のように、表面実装タイプのコネクタは、ボルトを用いることなくプリント基板に固定されている。それ故、例えばカバーを正規の向きと上下を逆にしてケースに接近させた場合に、カバーがコネクタに衝突して、コネクタのプリント基板への半田付け部分に負荷がかかり接触不良を招く等、コネクタの保護が図られないという新たな問題を生ずることとなる。
そこで、本発明では、カバーが誤った方向でケースに組み付けられようとした場合には、カバーがコネクタに当接するよりも前に相互に当接してカバーの誤組み付けを防止する誤結防止突部をケースおよびカバーに設けた。従って、カバーが誤組み付けされようとした場合には、カバーとコネクタとの衝突を防止することができ、コネクタの半田付け部に負荷が及ぼされることを防止することができる。このように、カバーの誤組付けによるカバーとコネクタの衝突を確実に防止することでコネクタの保護を確実に図ることができたのである。これにより、表面実装タイプのコネクタを、プリント基板をケースに挿し込んでカバーを組み付ける構造の電気接続箱に採用することが初めて可能となったのであり、電気接続箱の製造コストの低減と小型化が実現可能となるのである。
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のものにおいて、前記誤結防止突部が、前記ケースおよび前記カバーのそれぞれにおいて、前記コネクタを挟む上下両側に設けられているものである。
本態様によれば、コネクタの上下でカバーの接近を阻止することにより、コネクタをより確実に保護することができる。
本発明の第三の態様は、前記第二の態様に記載のものにおいて、前記コネクタの上側に位置する前記誤結防止突部が前記ケースの内面および外面の何れか一方に形成されていると共に、前記コネクタの下側に位置する前記誤結防止突部が前記ケースの前記内面および前記外面の他方に形成されているものである。
本態様においては、コネクタの上側に位置する誤結防止突部と、コネクタの下側に位置する誤結防止突部が、ケースの内外に分けて配設される。これにより、上下を反転してカバーを誤結しようとした場合には、カバーとケースの誤結防止突部をコネクタの上側と下側でそれぞれ相互に当接させてカバーの接近を有効に阻止する一方、正規の方向でカバーが接近された場合には、カバーの誤結防止突部とケースの誤結防止突部との干渉を回避して、スムーズな組み付けを行なうことができる。
本発明の第四の態様は、前記第一〜第三の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記ケースの内面に設けられた前記誤結防止突部によって、前記プリント基板の傾斜状態での挿し込みが阻止されるようになっているものである。
本態様によれば、ケースの誤結防止突部によって、プリント基板が傾斜状態でケース内に挿し込まれることを防止することができる。特に、プリント基板が傾斜状態でケースに挿し込まれて、コネクタがケースに衝突されることを防止することができ、コネクタの一層の保護を図ることができる。これにより、ケースの誤結防止突部によって、カバーの誤組付け防止効果に加えて、プリント基板の誤組付けの防止効果も得ることができる。
本発明の第五の態様は、前記第一〜第四の何れか1つの態様に記載のものにおいて、前記カバーにおける前記誤結防止突部が、前記カバーにおいて前記ケースの外面に突設された係合突起と係合するロック片に形成されているものである。
本態様においては、カバーにおいてケースと係合するためのロック片に誤結防止突部が設けられていることから、カバーが誤方向でケースに組み付けられようとした場合には、ロック片の誤結防止突部がケースの誤結防止突部と当接して、ロック片の移動を確実に阻止することにより、カバーの誤組付けをより確実に阻止することができる。
本発明においては、側方接続型コネクタとして表面実装タイプのコネクタを用いると共に、ケースおよびカバーに、カバーが誤方向で組み付けられようとした場合には、カバーがコネクタと当接するよりも前に相互に当接してカバーの誤組み付けを防止する誤結防止突部を設けた。これにより、カバー誤組み付け時のカバーとコネクタとの衝突を防止することができ、プリント基板への固定にボルト等を要しない表面実装タイプのコネクタを採用することが可能となり、電気接続箱の製造コストの低減と小型化を実現することができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1に、本発明の一実施形態としての電気接続箱10を示す。電気接続箱10は、自動車のCAN(Controller Area Network)に用いられるCANゲートウェイECUであり、プリント基板12と、ケース14と、カバー16を含んで構成されている。なお、以下の説明において、上下方向とは、後述する図2における上下方向を言い、前後方向とは、後述する図3における左右方向を言うものとする。
プリント基板12は略長手矩形の板形状とされている。プリント基板12において、短辺方向に延びる外周部分の一方には、側方接続型コネクタ(以下、コネクタ)18が設けられている。コネクタ18は表面実装タイプのコネクタであり、後述する図6から明らかなように、ハウジング20から突出された接続端子22の端部がプリント基板12の表面上に重ね合わされて半田付けされている。コネクタ18のハウジング20は、接続端子22がプリント基板12に半田付けされることで固定されており、ボルト等を用いることなくプリント基板12に固定されている。このようなコネクタ18が、プリント基板12の外周部分で、プリント基板12の側方に開口して設けられている。
一方、ケース14は、図2および図3にも示すように、合成樹脂から形成された、長手矩形の開口部24を有する箱体形状とされている。ケース14において、開口部24の長手方向の両側に位置する外面26a,26bの開口部24側の端縁部には、カバー16と係合する係合突起28,28がそれぞれ形成されている。また、外面26a,26bの下側の端縁部において、係合突起28,28のやや後方には、誤結防止突部としてのケース下側リブ30,30が形成されている。ケース下側リブ30,30は、外面26a,26bから突出する矩形ブロック形状とされている。更に、ケース14において、開口部24の長手方向に延びる内面32a,32bのうち、上側に位置する内面32aには、誤結防止突部としてのケース上側リブ34,34が形成されている。ケース上側リブ34,34は、開口部24の長手方向(図2中、左右方向)で、内面32aの両端部に位置されて、内面32aから他方の内面32bに向けて突出すると共に、ケース14の後方(図3中、右側)に向けて直線状に延びる突条とされている。なお、ケース上側リブ34,34の開口部24側の端部は、開口部24よりもややケース14の内側に位置されている。
また、ケース14の内部には、ガイドレール36,36が形成されている。ガイドレール36,36は、ケース14において開口部24の長手方向で対向する内面38a,38bからケース14の内側に突出された厚肉部40a,40bの間に形成されており、開口部24の長手方向で対向位置されている。ガイドレール36は、ケース14の内方に開口すると共に、ケース14の後方に向けて直線状に延びる溝形状とされており、開口部24側の端部が、ケース14の外部に開放されている。なお、ケース14の後方内面39には、ガイドレール36に沿って挿入されたプリント基板12の浮き上がりを防止する押え突起41,41が一対設けられている。
次に、図4に、カバー16を示す。カバー16は、合成樹脂から形成されており、中央にコネクタ18の正面視に対応する形状の貫通孔42が形成された、長手矩形の枠体形状とされている。カバー16の長手方向の両端縁部には、枠形状のロック片44,44がカバー16の内面46側に突出して形成されている。ロック片44,44の先端縁部48,48の上端部には、誤結防止突部としてのカバー上側リブ50,50が形成されている。カバー上側リブ50,50は、ロック片44,44からカバー16の長手方向の外側に突出する矩形ブロック形状とされている。なお、ロック片44,44の先端縁部48,48側の内面には、ケース14の係合突起28を案内するテーパ形状の誘い込み部51,51が形成されている。
また、カバー16の内面46において、長手方向両端部の下側の角部には、誤結防止突部としてのカバー下側リブ52,52が形成されている。カバー下側リブ52,52は、内面46から略矩形の断面形状をもって後方に突出する柱形状とされている。なお、カバー下側リブ52,52において、カバー16の長手方向の内側には、略三角板形状の補強板部54,54が連結されている。また、内面46における補強板部54,54の間には、複数の下側補強リブ56が形成されている。下側補強リブ56は、内面46と、補強板部54,54の間で内面46から垂直に突出された下板58とを連結する三角板形状とされており、カバー16の長手方向で所定間隔を隔てて並列されている。一方、下板58と対向する、貫通孔42の上側の内周面には、複数の上側補強リブ60が形成されている。上側補強リブ60は、貫通孔42の上側の内周面からカバー16の内側に突出すると共に、カバー16の前後方向に延びる突条とされており、貫通孔42の長手方向で所定間隔を隔てて並列されている。
さらに、カバー16において、下側補強リブ56,56の上方には、カバー16の後方に開口するスリット形状の基板差込スリット62,62が形成されている。また、貫通孔42の下側の開口縁部の略中央には、カバー16の後方に突出する略半円形状の位置決め突起64が形成されている。これら基板差込スリット62,62および位置決め突起64は、カバー16の長手方向で略同一直線上に形成されており、基板差込スリット62,62の間の略中央部分に、位置決め突起64が形成されている。
これらプリント基板12、ケース14、カバー16は、図1に示したように、プリント基板12が、ケース14の開口部24から挿し込まれる。プリント基板12は、コネクタ18と反対側の端部から、幅方向の両端縁部がガイドレール36,36に挿入されて案内されつつ、ケース14に挿し込まれる。なお、プリント基板12は、コネクタ18と反対側の端部がケース14の後方内面39に当接することでケース14への差込端が規定されるようになっており、差込端位置において、コネクタ18は、ケース14からやや突出して位置されるようになっている。
その後、カバー16がケース14に接近されて、ロック片44,44の先端縁部48,48の内面に設けられた誘い込み部51,51が、ケース14の外面26a,26bに配置設置された係合突起28,28に嵌合することで、カバー16がケース14の開口部24に対して位置決めされる。この時、カバー16のカバー下側リブ52,52の先端部もケース14の内面32bに対して挿し込まれている。この状態で、カバー16の貫通孔42にコネクタ18を挿通しつつ、さらにカバー16をケース14に対して接近させると、ロック片44,44が外方に撓み変形しつつ係合突起28,28を乗り越える。その後、ロック片44,44が弾性復帰することで、ロック片44,44がケース14の係合突起28,28と係合される。これにより、ケース14の開口部24にカバー16が組み付けられて、コネクタ18の周囲の開口部24がカバー16で覆蓋される。このようにして、図5および図6に示すように、電気接続箱10が組み立てられる。なお、図5から明らかなように、コネクタ18は、カバー16の貫通孔42を通じて、カバー16からやや突出されており、相手方コネクタを挿抜する際の作業スペースが確保されている。
また、カバー16の下側補強リブ56,56は、ケース14の内部に挿入されている。そして、下側補強リブ56,56の上方に設けられた基板差込スリット62,62に、プリント基板12のコネクタ18側の端部が差し込まれると共に、図6に示したように、カバー16の位置決め突起64が、プリント基板12のコネクタ18側の端縁部に形成された半円形状の位置決め切欠68内に入り込まされる。これにより、プリント基板12のコネクタ18側の端部が、カバー16によって位置決め状態で支持されるようになっている。
このような構造とされた電気接続箱10は、コネクタ18として、表面実装タイプのものが用いられている。従って、コネクタ18をプリント基板12に固定するためのボルトを不要とすることができて、部品点数の削減を図ると共に、ボルト締めの工数も不要とすることができて、工数の削減を図ることができる。これにより、製造コストの低減を図ることができる。
そして、本実施形態の電気接続箱10によれば、図7および図8に示すように、カバー16をケース14に組み付けるに際して、カバー16が正規の向きと上下を反対にしてケース14に接近された場合には、カバー16がコネクタ18に当接するよりも前に、ケース14の外部において、カバー上側リブ50,50がケース下側リブ30,30と当接されると共に、ケース14の内部において、カバー下側リブ52,52がケース上側リブ34,34と当接されて、カバー16のケース14への誤組み付けが阻止される。これにより、カバー16のコネクタ18への衝突が阻止されて、コネクタ18の接続端子22の半田付け部分に負荷が及ぼされることを防止することができる。
要するに、本実施形態の電気接続箱10によれば、カバー16の誤組付けによるカバー16とコネクタ18の衝突を確実に防止することができ、それにより、コネクタ18をプリント基板12にボルト締結等することなく、コネクタ18の保護を確実に図ることができたのである。その結果、表面実装タイプのコネクタ18を、プリント基板12をケース14に挿し込んでカバー16を組み付ける構造の電気接続箱10に初めて採用することが可能となって、小型化や製造コストの低減を図り得たのである。なお、上記の説明から明らかなように、本実施形態では、ケース上側リブ34,ケース下側リブ30,カバー上側リブ50,カバー下側リブ52により、カバー16がコネクタ18に当接するよりも前に相互に当接してカバー16の誤組付けを防止する誤結防止突部が構成されている。
特に本実施形態では、ケース上側リブ34,34とカバー下側リブ52,52がコネクタ18の上側で相互に当接されると共に、ケース下側リブ30,30とカバー上側リブ50,50が下側で相互に当接されることにより、カバー16の接近をコネクタ18の上下両側で阻止することができ、カバー16とコネクタ18の衝突を有効に阻止することができる。即ち、コネクタ18を挟む上下両側において、ケース14とカバー16のそれぞれに、誤結防止突部として機能するケース上側リブ34,34とケース下側リブ30,30、カバー下側リブ52,52とカバー上側リブ50,50がそれぞれ設けられているのである。また、カバー上側リブ50,50が、カバー16のロック片44,44に設けられていることから、上下を誤った場合には、カバー上側リブ50,50がケース下側リブ30,30と当接することでロック片44,44の動きを有効に阻止することができ、ロック片44,44と係合突起28,28との係合を確実に阻止することができる。
加えて、コネクタ18の上方で誤結防止突部として機能するケース上側リブ34,34とカバー下側リブ52,52がケース14の内部に配設されている一方、コネクタ18の下方で誤結防止突部として機能するケース下側リブ30,30とカバー上側リブ50,50がケース14の外部に配設されている。これにより、カバー16の正規組み付け状態では、ケース上側リブ34,34とカバー上側リブ50,50の干渉およびケース下側リブ30,30とカバー下側リブ52,52の干渉が、ケース14内外で確実に阻止されており、カバー16のケース14に対するスムーズ且つ容易に組み付けが為されるようになっている。
さらに、図9に示すように、ケース14の内部にケース上側リブ34,34が形成されていることにより、プリント基板12が傾斜してケース14内に挿し込まれようとした場合には、プリント基板12のコネクタ18と反対側の端縁部がケース上側リブ34,34および厚肉部40a,40bの何れかに当接する。即ち、図9に示したように、プリント基板12の傾斜がケース上側リブ34に当接しない程度の場合には、厚肉部40a,40bに当接される。一方、プリント基板12の傾斜がより大きい場合には、ケース上側リブ34に当接される。これにより、プリント基板12が傾斜した状態でケース14に挿入されることを防止することができ、プリント基板12が傾斜して挿し込まれて、コネクタ18がケース14の開口部24と衝突することも防止することができる。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。ケース14やカバー16に対する誤結防止突部の形成部位は、非正規組み付け位置においてカバー16がコネクタ18に当接する前に相互に当接して誤組付けを防止し得るものであれば何れでもよい。従って、ケース14の開口部24やコネクタ18の形状等に応じて任意に設定可能であり、誤結防止突部として機能するケース14側やカバー16側のリブの形状や個数も任意に設定されるものである。
具体的には、ケース14の内部に誤結防止突部を設ける十分なスペースがない場合には、ケース14の外部に配設されるケース下側リブ30およびカバー上側リブ50を設けるのみであっても、本発明の誤組付け防止効果を有利に発揮することができる。同様に、ケース14の外部に十分なスペースを確保できない場合には、ケース上側リブ34およびカバー下側リブ52を設けるのみであっても、本発明の誤組付け防止効果を得ることができる。