JP2015093819A - 医療容器用ガラス - Google Patents

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Abstract

【課題】放射線照射前において透明性が高く、尚且つ放射線照射後も透過率の高い医療用ガラスを提供する。【解決手段】ガラス組成として下記酸化物換算の質量%で、SiO255〜70%、Al2O35〜20%、MgO 1〜5%、CaO 5〜10%、Li2O 0〜10%、Na2O 0〜15%、K2O 0〜15%、Li2O+Na2O+K2O 4〜15%、CeO20.5〜3%を含有することを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、医療容器用ガラスに関し、より具体的には放射線を照射しても着色し難い医療容器用ガラスに関する。
従来、バイアル瓶、アンプル管、真空採血管等の医療容器の材料として、ホウケイ酸ガラスが用いられてきた。そしてこれらの医療容器は、安全衛生のため、薬品充填前後等にガス滅菌や高圧蒸気滅菌が行われていた。
しかしながら、ガス滅菌や高圧蒸気滅菌は、ガスや滅菌雰囲気の制御管理に熟練を要し、滅菌時間が長い上に滅菌処理が不十分になりやすいという問題がある。また、安全性確保のために完全に滅菌ガスを除去したり、水分を除去したりする必要がある等の問題もある。
このような事情から、ガス滅菌、高圧蒸気滅菌に代わり、放射線を照射して滅菌する放射線滅菌が提案されている。放射線滅菌では、一般的に電子線やγ線等の放射線が用いられており、ガス滅菌等に比べ短時間で大量の対象物を効率良く滅菌処理できる。また、後処理も不要という利点があり、滅菌にかかるコストの低減が可能である。
ところで、医療容器は、容器内への異物の混入を検査する等の目的で、容器自体が無色透明であることが好ましい。しかしながら、放射線滅菌では、放射線のエネルギーが高いために、放射線が照射された医療容器が変色(着色)し、滅菌後の容器内の視認検査等が困難になってしまうという問題がある。
このような問題を解決すべく、放射線による着色を低減したガラスが開発されている(例えば、特許文献1及び2)。特許文献1に開示されるホウケイ酸ガラスは、CeOを含有するため、放射線の照射による着色が抑制されている。
特表2004−504258公報 特開平9−295828号公報
しかしながら、従来のホウケイ酸ガラスは、CeOを添加すると、ガラスを成形した時点で(放射線を照射する以前に)Ceイオンの吸収によってガラスが着色し易く、可視光透過率が低下する場合があった。このような組成成分に起因するガラスの初期着色は、放射線照射後もガラスに残る。そのため、たとえCeOを添加して放射線照射に起因する変色を抑制できたとしても、初期着色が強い場合、最終的なガラスは強く着色したものになる。一方で、初期着色を抑制しようとしてCeO含有量を低減すると、放射線照射に起因する変色が抑制できなくなってしまう。すなわち、従来のホウケイ酸ガラスでは、CeOを添加しても、初期着色の抑制と放射線照射に起因する変色の抑制の両立を図る事が難しく、放射線滅菌後の検査等が困難になるおそれがあった。なお、以下ではガラス組成に起因するガラス成形時の着色を初期着色と呼称し、放射線照射に起因する変色を放射線着色と呼称する。
本発明は、このような事情を考慮して成されたものであり、放射線照射前において透明性が高く、尚且つ放射線照射後も透過率の高い医療用ガラスを提供することを課題とする。
本発明者は鋭意検討の結果、CeOを含有させるだけでなく、ガラス組成を厳密に規定することにより、上記課題を解決することを見出し、本発明として提案するものである。
本発明の医療容器用ガラスは、ガラス組成として下記酸化物換算の質量%で、SiO 55〜70%、Al 5〜20%、MgO 1〜5%、CaO 5〜10%、LiO 0〜10%、NaO 0〜15%、KO 0〜15%、LiO+NaO+KO 4〜15%、CeO 0.5〜3%を含有することを特徴とする。本発明において「医療容器」とは、バイアル瓶、アンプル管等の薬剤が充填される医薬容器のみならず、真空採血管等の薬剤が充填されない医療用途の容器も含む。また「LiO+NaO+KO」とは、LiO、NaO及びKOの含有量の合量を意味する。
上記構成によれば、CeOを添加しても初期着色の抑制と放射線着色の抑制の両立を図る事が可能になる。したがって、本発明の医療容器用ガラスは、医療容器用材料として好適であり、放射線滅菌処理後も容器内の検査を容易に行える医療容器を作製することができる。
本発明においては、ガラス組成として酸化物換算のモル%で(LiO+NaO)/(LiO+NaO+KO)が0.5以上であることが好ましい。なお「(LiO+NaO)/(LiO+NaO+KO)」とは、LiOとNaOの含有量の合量を、LiO、NaO及びKOの含有量の合量で除した値である。
上記構成のように、アルカリ金属酸化物合量に対するLiOとNaOの合量の比を調整すれば、混合アルカリ効果により、さらに初期着色及び放射線着色を抑制することができる。
本発明においては、放射線照射前の吸光度が1.10以下であることが好ましい。なお、「吸光度」とは以下の式で表される値である。
A=Log(1/T400
A:吸光度
400:肉厚5.0mm、波長400nmにおける分光透過率
本発明においては、放射線を吸収線量25kGy照射した後の吸光度が2.00以下であることが好ましい。
本発明においては、放射線により滅菌処理される医療容器に用いられることが好ましい。
本発明の医療容器用ガラスは、γ線または電子線により滅菌処理される真空採血管に用いられることが好ましい。
本発明の医療容器用ガラスは、γ線または電子線により滅菌処理される医薬容器に用いられることが好ましい。
以下、本発明の医療容器用ガラスについて詳述する。先ず、本発明のガラスを構成する成分の作用と、その含有量を上記のように規定した理由を説明する。なお、各成分の含有範囲の説明において、特に断りの無い限り、%表示は質量%を指す。
SiOは、ガラス骨格構造を形成し、ガラスの機械的強度を高める成分である。一方、ガラスの粘度を高くする成分でもある。SiOの含有量は、55〜70%、好ましくは55〜66%、より好ましくは58〜66%である。SiOの含有量が55%より少ないと、ガラスの機械的強度が低下し易くなる。SiOの含有量が70%より多いと、ガラスの粘度が高くなって溶融性や成形性が低下し易くなる。
Alは、ガラスの化学的耐久性や機械的強度を高める成分であり、またガラスの耐失透性を高める成分である。一方、ガラスの粘度を高くするとともに、放射線着色を強める場合がある成分でもある。Alの含有量は5〜20%、好ましくは7〜20%、より好ましくは7〜17%である。Alの含有量が5%より少ないと、ガラスの化学的耐久性が低下する。また、耐失透性が低下してガラス融液から結晶が析出しやすくなる。Alの含有量が20%より多いと、ガラスの粘度が高くなって溶融性や成形性が低下し易くなる。また、放射線着色し易くなる場合がある。
MgOは、ガラスの粘度を低下させる成分である。一方、多量に含有するとガラス融液からMgを含む結晶が析出しやすくなる成分でもある。MgOの含有量は、1〜5%、好ましくは1〜4%、より好ましくは2.5〜3.5%である。MgOの含有量が1%より少ないと、ガラスの粘度が高くなって溶融性や成形性が低下し易くなる。MgOの含有量が5%よりも多いと、ガラス融液からMgを含む結晶が析出し易くなる。
CaOは、ガラスの粘度を低下させる成分である。一方、多量に含有するとガラス融液からCaを含む結晶が析出しやすくなる成分でもある。CaOの含有量は、5〜10%、好ましくは6〜10%、より好ましくは6〜8%である。CaOの含有量が5%より少ないと、ガラスの粘度が高くなって溶融性や成形性が低下し易くなる。CaOの含有量が10%よりも多いと、溶融ガラスからCaを含む結晶が析出し易くなる。
LiOは、ガラスの粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。一方、多量に含有するとガラスの化学的耐久性を低下させる成分でもある。LiOの含有量は0〜10%、好ましくは0〜5%である。LiOの含有量が10%より多いと、ガラスの化学的耐久性が低下し易くなる。なおLiOを含有させる場合、その下限値は0.5%以上、特に1.0%以上であることが好ましい。
NaOは、ガラスの粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。一方、多量に含有するとガラスの化学的耐久性を低下させる成分でもある。NaOの含有量は0〜15%、好ましくは0〜12%、より好ましくは0〜10%である。NaOの含有量が15%より多いと、ガラスの化学的耐久性が低下し易くなる。なおNaOを含有させる場合、その下限値は1.5%以上、特に3.0%以上であることが好ましい。
Oは、ガラスの粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。一方、多量に含有するとガラスの化学的耐久性を低下させる成分でもある。KOの含有量は0〜15%、好ましくは0〜10%、より好ましくは0〜6%である。KOの含有量が15%より多いと、ガラスの化学的耐久性が低下し易くなる。
LiO+NaO+KOの含有量は4〜15%、好ましくは4〜12%である。LiO+NaO+KOの含有量が4%より少ないと、ガラスの粘度が高くなって、溶融性や成形性が低下し易くなる。LiO+NaO+KOの含有量が15%より多いと、ガラスの化学的耐久性が低下し易くなる。なお混合アルカリ効果を得る目的でアルカリ金属成分を複数混合して使用する場合、LiOとNaOの組み合わせ、或いはLiO、NaO及びKOの組み合わせを採用することが好ましい。これはLiO及びNaOは、KOに比べ初期着色及び放射線着色を抑制する効果が高く、LiOとNaOを優先的に使用することが望ましいことによる。
CeOは、ガラスの耐放射線着色性を高める成分である。一方、多量に含有するとガラスの初期着色を強める成分でもある。CeOの含有量は0.5〜3%、好ましくは1〜2.5%、より好ましくは1.5〜2.5%である。CeOの含有量が0.5%より少ないと、ガラスの耐放射線着色性が低くなり、放射線照射によりガラスが著しく着色してしまう。CeOの含有量が3%より多いと、ガラスの初期着色が強くなる。Ceイオンは、通常ガラス中ではCe3+とCe4+の状態で共存する。
本発明の医療容器用ガラスは上記成分以外にも、放射線照射前後のガラスの着色が強まらない範囲において種々の成分を含有できる。例えばB、SrO、BaO、ZnO、ZrO、P、SnO、ZrO、SO、PbO、La、WO、Co、Nb、Y等を合量で5%まで添加してもよい。さらにFe、Cr、TiO等が含まれていても良い。
なおBは、ガラスの粘度を低下させて溶融性や成形性を高める目的で添加可能な成分である。その添加量は0〜5%、特に0〜3%であることが好ましい。ただしBが多くなるとガラスが分相しやすくなってガラスの透明性が損なわれ易くなる。
Feは、ガラス原料やガラス製造工程から混入する成分である。Feは、TiOと組み合わせることによって容器の内部に充填された血液や薬剤を紫外線から守る働きがある。しかし、Feの含有量が多過ぎると、ガラスが着色する恐れがある。よって、Feの含有量は0.001%〜0.1%、好ましくは0.001%〜0.05%、より好ましくは0.001%〜0.3%である。
TiOは、紫外線を遮断し、充填された血液や薬剤の変質を防止する成分である。また、ガラスの高温粘度を低下させ、成形性を向上させる成分である。しかし、TiOの含有量が多過ぎると、ガラスが着色したり、失透し易くなる。よって、TiOの含有量は、0〜2%、好ましくは0〜1%、より好ましくは0〜0.5%である。
また、本発明の医療容器用ガラスはH、CO、CO、HO、He、Ne、Ar、N等の微量成分を0.1%まで含んでもよい。また、ガラス中にPt、Rh等の貴金属元素を500ppmまで添加してもよい。
また、本発明の医療容器用ガラスは、ガラス組成として酸化物換算のモル%で(LiO+NaO)/(LiO+NaO+KO)が0.5以上、0.55以上、特に0.60以上であることが好ましい。(LiO+NaO)/(LiO+NaO+KO)は本発明においてガラスの初期着色及び放射線着色を抑制する上で重要な指標であり、この値が高いほどガラスの初期着色及び放射線着色が抑制される傾向がある。(LiO+NaO)/(LiO+NaO+KO)が0.5よりも低いとガラスの初期着色及び放射線着色が強くなり易い。
本発明の医療容器用ガラスは、放射線照射前の肉厚5mmにおける波長400nmの光の吸光度が1.10以下、0.70以下、0.68以下、特に0.65以下であることが好ましい。放射線照射前の肉厚5mmにおける波長400nmの光の吸光度が高いと、放射線照射後もガラスの着色が強く残り、放射線滅菌後の検査等が困難になる。
本発明の医療容器用ガラスは、放射線を吸収線量25kGyで照射した後の肉厚5mmにおける波長400nmの光の吸光度が2.00以下、1.20以下、1.10以下、特に1.00以下であることが好ましい。放射線を吸収線量25kGyで照射した後の肉厚5mmにおける波長400nmの光の吸光度が高いと、放射線照射後のガラスの着色が強く、放射線滅菌後の検査等が困難になる。
本発明の医療容器用ガラスは、γ線や電子線等の放射線により滅菌処理される真空採血管や医薬容器等の医療容器に用いられることが好ましい。これらの医療容器は、例えば、管状に成形した本発明の医療容器用ガラスを切断および加工することによって製造できる。これらの医療容器は、γ線、電子線等の放射線による滅菌処理に供されることが、より好ましい。特にγ線は高いエネルギーを有するため、ガラスを着色させ易いものの滅菌能力が高く、物質の透過能も高いため、短時間で大量の容器を滅菌処理することができる。また、電子線は、γ線に比べると物質の透過能は低いものの、γ線に比べて滅菌装置および工程の管理が容易である。
なお、上記用途は一例であり、本発明の医療容器用ガラスの用途はこれらに限らず、任意用途、任意形状に適用可能である。また、これらの医療容器の滅菌処理に用いる放射線はγ線および電子線に限らず、任意の種類および強度の放射線を用いても良い。
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。
表1及び表2は、本発明の実施例(試料No.1〜11)及び比較例(試料No.12)を示している。
以下のようにして、各試料を調製した。まず、表中のガラス組成になるように、ガラス原料を秤量、混合して、ガラスバッチを作製した。次に、このガラスバッチを白金坩堝で1650℃、8時間溶融した後、型枠に流し出してガラスインゴットを作製した。次に、ガラスインゴットを25mm×30mmの寸法に切断、光学研磨して肉厚5.0mmの板状ガラス試料を得た。そして、得られた各試料の放射線照射前後の波長400nmにおける吸光度を評価した。
波長400nmにおける吸光度は、波長400nmにおける分光透過率を測定し、当該分光透過率に基づいて算出した。波長400nmにおける分光透過率は、SHIMADZU製 UV−3100PC分光光度計を用いて波長400nmの値を読み取った。吸光度が小さいほど、透明性が高いガラスである。
照射する放射線としては、コバルト60の線源のγ線を用い、吸収線量25kGyで照射した。吸収線量は、ガラス製の線量計により測定した。
表1および表2から明らかなように、試料No.1〜11は、放射線照射後の吸光度の値が1.99以下であった。特にモル%での(LiO+NaO)/(LiO+NaO+KO)の値を0.5以上とした試料No.1〜8は、放射線照射後の吸光度の値が0.97以下であった。
一方、比較例であるNo.12の試料は、放射線照射後の吸光度の値が2.00を超えていた。
本発明の医療容器用ガラスは、医療容器用材料等として有用である。

Claims (7)

  1. ガラス組成として下記酸化物換算の質量%で、SiO 55〜70%、Al 5〜20%、MgO 1〜5%、CaO 5〜10%、LiO 0〜10%、NaO 0〜15%、KO 0〜15%、LiO+NaO+KO 4〜15%、CeO 0.5〜3%を含有することを特徴とする医療容器用ガラス。
  2. ガラス組成として酸化物換算のモル%で(LiO+NaO)/(LiO+NaO+KO)が0.5以上であることを特徴とする請求項1に記載の医療容器用ガラス。
  3. 放射線照射前の吸光度が1.10以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の医療容器用ガラス。
  4. 放射線を吸収線量25kGyで照射した後の吸光度が2.00以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の医療容器用ガラス。
  5. 放射線により滅菌処理される医療容器に用いられることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の医療容器用ガラス。
  6. γ線または電子線により滅菌処理される真空採血管に用いられることを特徴とする請求項5に記載の医療容器用ガラス。
  7. γ線または電子線により滅菌処理される医薬容器に用いられることを特徴とする請求項5に記載の医療容器用ガラス。

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