JP2687249B2

JP2687249B2 - 採血管用ガラス

Info

Publication number: JP2687249B2
Application number: JP4703890A
Authority: JP
Inventors: 亘高橋; 尚実平野
Original assignee: 東芝硝子株式会社
Priority date: 1990-02-27
Filing date: 1990-02-27
Publication date: 1997-12-08
Anticipated expiration: 2012-12-08
Also published as: JPH03252328A

Description

【発明の詳細な説明】〔発明の目的〕（産業上の利用分野）本発明は採血管用ガラスに係り、特にγ線照射によっ
て着色を生じない採血管用ガラス組成物に関する。

（従来の技術）従来、採血管にはソーダライムガラス製または硼珪酸
ガラス製の細管が使用されている。採血管等の医療器具
は、ガス滅菌または高圧蒸気滅菌により滅菌処理が行わ
れているが、これらの方法は有害物質が残留し、これを
除去しなければならないことや処理温度が高温になるこ
と等の欠点がある。このため、このような欠点のない滅
菌法として近年、γ線照射による方法が普及しつつあ
る。しかし、γ線照射による滅菌法ではγ線被曝による
器具材質の劣化が問題となり、採血管に関してはガラス
の着色が問題となっている。

ガラスの着色を防止する方法としては、ガラスにCeO₂
を添加することが古くから知られている。また、ガラス
の着色防止に関しては陰極線管用ガラスに例が多い。た
とえば、特公昭47−29565号公報にはＸ線によるガラス
の褐色化を防止するためにCeO₂とTiO₂とを共存させてCe
O₂の添加量が少ない場合にも褐色化防止効果を奏するよ
うにしたテレビジョンバルブ用ガラスが記載されてい
る。また特公昭49−48448号公報特開昭48−62812号公報
には同様の目的でCeO₂とZrO₂とを組合せて添加したもの
が開示されている。

（発明が解決しようとする課題）上記特公昭47−19565号公報および特公昭49−48448号
公報に記載されたガラスはいずれもＸ線遮断の必要性か
らPbOを含有している。PbOは、γ線照射に対して着色中
心となるほか、医療器具である採血管ではPbの溶出が問
題となる。またこれらのガラスは、10kGy（10⁶r）相当
のＸ線照射に対して400nmにおける光の吸収率が５〜20
％程度である。医療器具の滅菌処理では通常25kGy以上
のγ線が照射されるため、前記光の吸収率は増加し、実
質的な着色防止効果が得られない。

上記特開昭48−62812号公報に開示されたガラスは、S
b₂O₃を含有しており、PbOと同様γ線照射により着色を
生じやすい。また、このガラスのようにBaOを多く含む
ガラスは、粘性の変化が激しいため成形性が悪く、採血
管のような細管成形には適さない。

採血管は、医師による血液の目視検査の必要性および
清潔感など取扱管理上の要求から着色に対して非常に厳
しい特性が求められており、25kGyのγ線照射に対して4
00nmでの光の吸収率が５％以下であることが望ましいと
されている。このため、採血管においてはソーダライム
ガラスにCeO₂を添加して着色防止をはかっているが、十
分な効果を上げるためには少なくとも２重量％以上のCe
O₂を含有させなければならない。CeO₂は非常に高価な原
料であるため、着色防止をCeO₂に依存することは製品の
コストを高くすることになる。

本発明は、このような事情を考慮してなされたもの
で、少量のCeO₂添加量で、γ線照射に対する十分な着色
防止効果を有する安価な採血管用ガラスを提供すること
を目的とする。

〔発明の構成〕

（課題を解決するための手段と作用）本発明は上記目的を達成するために、特定組成のソー
ダライムガラスに少量のCeO₂とLi₂Oとを共存させて添加
したものである。すなわち、本発明は重量百分率でSiO₂
60〜75％,Al₂O₃0.5〜５％,Na₂O12〜20％,K₂O0〜５％Na₂
O＋K₂O13〜22％,CaO1〜８％,MgO1〜６％,BaO0.5〜５％,
B₂O₃0.1〜５％,CeO₂0.1〜２％,Li₂O0.1〜２％からなる
組成を有することを特徴とする採血管用ガラスである。

次に上記ガラスの各成分値を限定した理由について説
明する。

SiO₂はガラスを形成する主成分であるが、60％未満で
はガラスの粘度が低くなり、化学的耐久性が低下する。
75％を越えるとガラスの粘度が高くなりすぎ溶融困難と
なる。Al₂O₃は、0.5％未満ではガラスの化学的耐久性が
低下し、５％を越えると溶融時の粘度が高くなり均質な
ガラスが得られない。Na₂OおよびK₂OについてはNa₂Oが1
2％未満またはNa₂OとK₂Oの合量が13％未満ではガラスの
軟化温度が高くなり、細管成形が困難となる。また、各
々単独でNa₂O20％,KO₂5％またはその合量が22％を越え
ると化学的耐久性が低下する。CaO,MgOはガラスの化学
的耐久性・電気絶縁性を向上させ、高温粘度を調整する
作用をするが、各々１％未満ではその効果がなく、CaO
が８％を越えると粘性変化が急峻となり、失透傾向が顕
著となる。このためMgOを並存させて粘性特性をゆるや
かにするが、６％を越えると失透を生じるので好ましく
ない。BaOは、溶融時間を短縮し、CeO₂の着色防止効果
を向上させる着色防止助剤として作用するが、0.5％未
満ではその効果が得られず、4.5％を越えて添加しても
着色防止助剤としての効果に有意な変化はなく、粘性変
化を激しくさせ成形性を低下させる。B₂O₃は溶融性を改
善する効果があるが、0.1％未満ではその効果が得られ
ず、５％を越えるとガラスの軟化温度が高くなる。CeO₂
はγ線による着色を防止するための必須成分として添加
するが、0.1％未満では所望の着色防止効果が得られ
ず、２％を越えるとCe⁴⁺による黄色の着色が現れるので
好ましくない。Ceはガラス中でCe³⁺またはCe⁴⁺として存
在し、このうちCe³⁺がγ線照射時のガラスの着色防止に
効果がある。Li₂OはCe³⁺Ce⁴⁺＝e^-の平衡をCe³⁺側へ移
動させる作用をし、ガラスを着色しにくくする。また溶
融性改善にも効果があるが0.1％未満ではこれらの効果
は認められず、２％を越えるとガラスの化学的耐久性を
低下させ、溶融炉の炉材を激しく侵食するので好ましく
ない。

なお、本発明のガラスは還元性雰囲気で清澄すること
が好ましい。ガラスにγ線が照射されるとガラス中の酸
素イオンの電子が酸素イオンから遊離し、この電子がガ
ラス中の構造欠陥に捕えられて着色中心を形成する。一
方、電子が抜けてできた正孔は、アルカリイオンなどの
空孔に捕えられこれも着色中心となる。この２種の着色
中心が可視光を吸収してガラスに着色を生じさせる。こ
のとき、Ce³⁺が２種の着色中心の間で電子のキャリアと
して作用し、着色中心を消滅させる。ところが原料が供
給されるCeO₂はCe⁴⁺の状態にあるので、Ce³⁺の存在量は
少ない。このため、還元性雰囲気で溶融・清澄すること
によりCe⁴⁺→Ce³⁺の反応を促進させてCe³⁺の存在量を増
すことで消色作用を増大することができるのである。

（実施例）次に本発明の実施例について説明する。

第１表に示す成分組成が得られるように原料を調合
し、石英ルツボ内で1450℃にて還元性雰囲気で４時間溶
融・清澄した後、金型中に鋳込み徐冷したガラスを厚さ
1.0mmに研磨して透過率測定用の試料とした。なお、表
中のガラス組成は重量百分率で示してある。この試料ガ
ラスにラジエ工業（株）製γ線照射装置RIC1を用いてγ
線25kGyを照射し、照射前後の波長400nmにおける透過率
を測定した。この結果およびγ線照射前後での透過率差
を第１表に示す。なお、透過率の測定は日立製作所
（株）製分光光度計340型により行った。

第１表から明らかなように、本実施例のガラスは、Li
₂Oの併存によりLi₂Oを含有しない比較例ガラスに較べて
少ないCeO₂含有量で優れた着色防止効果を示す。すなわち、400nmでの透過率のγ線
照射による劣化幅が小さく、可視光線をよく透過するこ
とがわかる。これにより採血管においては、γ線照射に
よる滅菌処理を行った後も光を用いた検査や医師による
目視判断を誤りなく行うことができる。

また、第１表に示す同一組成のガラスについて酸化性
雰囲気で溶融・清澄を行い、上記と同様にγ線照射によ
る透過率変化を調べたところ、同一組成にもかかわらず
透過率の劣化幅は２〜６倍悪化することがわかった。こ
の傾向は、Li₂Oを含有する本実施例ガラスの方が顕著で
あり、CeO₂にLi₂Oを併存させることにより良好な着色防
止効果を得るためには還元性雰囲気で清澄を行うことが
必要である。

さらに、Li₂O添加によりガラスの清澄が促進され、泡
のない均質なガラスが得られる。第１表に示したガラス
の試料No.1,2,3,12,13について金型に鋳込み、徐冷した
ガラス1kg中に含まれる泡の数をカウントした。この結
果を第２表に示す。

第２表からLi₂O添加によってガラスの清澄性が改善さ
れることは明らかである。これによりガラスの溶融・清
澄にかかる時間および燃料の節減がはかれ、またガラス
中の泡に起因する強度低下等がなく製品の信頼性を向上
させることができる。

〔発明の効果〕

以上のように、本発明の採血管用ガラスは、特定組成
のソーダライムガラスに着色防止成分としてCeO₂とLi₂O
とを併存させたことにより、着色防止剤としてCeO₂を単独で添加したものに較べ
て少ないCeO₂含有量で、γ線照射に対して従来以上の着
色防止効果が得られるので低コストでγ線照射滅菌によ
る着色を生じない採血管が得られる。

溶融性・清澄性がよいため、溶融・清澄に要するエ
ネルギーが節減でき、泡，脈理等のガラス不良が発生し
にくいので、製品の信頼性が向上する。

高温粘性の変化がゆるやかで、成形性に優れている
ため、細管成形が容易である。

等、採血管用のガラスとして極めて優れた効果を有す
る。

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】重量百分率で、SiO₂60〜75％,Al₂O₃0.5〜
５％,Na₂O12〜20％,K₂O0〜５％Na₂O＋K₂O13〜22％,CaO1
〜８％,MgO1〜６％,BaO0.5〜５％,B₂O₃0.1〜５％,CeO
₂0.1〜２％,Li₂O0.1〜２％からなる組成を有することを
特徴とする採血管用ガラス。