JP2015151313A - 医療容器用ガラス - Google Patents

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晋作 西田
Shinsaku Nishida
晋作 西田
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Abstract

【課題】放射線照射後における透明性が高く、しかも加水分解抵抗性に優れる医療容器用ガラスを提供することを課題とする。【解決手段】ガラス組成として下記酸化物換算の質量%で、SiO250〜75%、B2O30〜5%、BaO 0〜15%、ZnO 0〜5%、Li2O 0〜10%、Na2O 0〜10%、K2O 0〜10%、Li2O+Na2O+K2O 5〜20%、ZrO21〜20%、CeO20.5〜3%を含有することを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、医療容器用ガラスに関し、より具体的には放射線を照射しても着色し難く、しかもガラスの加水分解抵抗性及び溶融性に優れた医療容器用ガラスに関する。
従来、バイアル瓶、アンプル管、真空採血管等の医療容器の材料として、ホウケイ酸ガラスが用いられてきた。そしてこれらの医療容器は、安全衛生のため、薬品充填前後等にガス滅菌や高圧蒸気滅菌が行われていた。
しかしながら、ガス滅菌や高圧蒸気滅菌は、ガスや滅菌雰囲気の制御管理に熟練を要し、滅菌時間が長い上に滅菌処理が不十分になりやすいという問題がある。また、安全性確保のために完全に滅菌ガスを除去したり、水分を除去したりする必要がある等の問題もある。
このような事情から、ガス滅菌、高圧蒸気滅菌に代わり、放射線を照射して滅菌する放射線滅菌が提案されている。放射線滅菌では、一般的に電子線やγ線等の放射線が用いられており、ガス滅菌等に比べ短時間で大量の対象物を効率良く滅菌処理できる。また、後処理も不要という利点があり、滅菌にかかるコストの低減が可能である。
ところで、医療容器は、容器内への異物の混入を検査する等の目的で、容器自体が無色透明であることが好ましい。しかしながら、放射線滅菌では、放射線のエネルギーが高いために、放射線が照射された医療容器が変色(着色)し、滅菌後の容器内の視認検査等が困難になってしまうという問題がある。
このような問題を解決すべく、放射線による着色を低減したガラスが開発されている(例えば、特許文献1及び2)。特許文献1に開示されるホウケイ酸ガラスは、CeOを含有するため、放射線の照射による着色が抑制されている。
また、特にバイアル瓶やアンプル管は充填される薬液を変質させないように、化学的耐久性や加水分解抵抗性が高いことが求められ、特許文献1に開示されるホウケイ酸ガラスは、化学的耐久性や加水分解抵抗性を向上させる効果のあるAlを含有している。
特開平9−295828号公報
しかしながら、従来のホウケイ酸ガラスは、CeOの含有により放射線照射による変色は抑制されるものの、加水分解抵抗性が低く、特に医薬容器として用いる場合に、薬剤と反応してガラス成分が薬液中に溶出し、薬剤を変質させてしまうおそれがある。
本発明は、このような事情を考慮して成されたものであり、放射線照射後においても透明性が高く、しかも加水分解抵抗性に優れる医療容器用ガラスを提供することを課題とする。
本発明者は鋭意検討の結果、放射線照射による変色の対策としてCeOを含有させることに加え、組成を厳密に規定することにより前記課題を解決できることを見出し、本発明として提案するものである。
本発明の医療容器用ガラスは、ガラス組成として下記酸化物換算の質量%で、SiO 50〜75%、B 0〜5%、BaO 0〜15%、ZnO 0〜5%、LiO 0〜10%、NaO 0〜10%、KO 0〜10%、LiO+NaO+KO 5〜20%、ZrO 1〜20%、CeO 0.5〜3%を含有することを特徴とする。本発明において「医療容器」とは、バイアル瓶、アンプル管等の薬剤が充填される医薬容器のみならず、真空採血管等の薬剤が充填されない医療用途の容器も含む。また「LiO+NaO+KO」とは、LiO、NaO及びKOの含有量の合量を意味する。
上記構成によれば、放射線照射後の着色を抑制できるとともに、加水分解抵抗性を向上させることができる。したがって、本発明の医療容器用ガラスは、医療容器用材料として好適であり、放射線滅菌処理後も容器内の検査が容易に行える医療容器を作製することができる。また、薬剤との反応によるガラス成分の溶出が殆どなく、薬剤を変質させにくい医療容器を作製することができる。
またCeOを添加すると、ガラスを成形した時点で(放射線を照射する以前に)Ceイオンの吸収によってガラスが着色し易く、可視光透過率が低下する場合があるが、ガラス組成を上記範囲に厳密に規制することにより、このような初期の着色を効果的に防止することができる。
本発明の医療容器用ガラスは、放射線照射前の吸光度が0.50以下であることが好ましい。なお、「吸光度」とは以下の式で表される値である。
A=Log(1/T400
A:吸光度
400:肉厚5.0mm、波長400nmにおける分光透過率
本発明の医療容器用ガラスは、放射線を吸収線量25kGy照射した後の吸光度が0.70以下であることが好ましい。
本発明の医療容器用ガラスは、EP7.0に基づく加水分解抵抗性試験の粉末試験法において、0.02mol/Lの塩酸の消費量が0.30mL/g以下であることが好ましい。ここで、EPとはヨーロッパ薬局法を意味する。
本発明の医療容器用ガラスは、放射線により滅菌処理される医療容器に用いられることが好ましい。
本発明の医療容器用ガラスは、γ線または電子線により滅菌処理される真空採血管に用いられることが好ましい。
本発明の医療容器用ガラスは、γ線または電子線により滅菌処理される医薬容器に用いられることが好ましい。
以下、本発明の医療容器用ガラスについて説明する。先ず、本発明のガラスを構成する成分の作用と、その含有量を上記のように規定した理由を説明する。なお、各成分の含有範囲の説明において、特に断りの無い限り、%表示は質量%を指す。
SiOは、ガラス骨格構造を形成し、ガラスの機械的強度を高める成分である。一方、ガラスの粘度を高くする成分でもある。SiOの含有量は、50〜75%、好ましくは50〜70%、より好ましくは55〜70%である。SiOの含有量が50%より少ないと、ガラスの機械的強度が低下し易くなる。SiOの含有量が75%より多いと、ガラスの粘度が高くなって溶融性や成形性が低下し易くなる。
は、ガラスの粘度を低下させて溶融性や成形性を高める成分である。一方、多量に含有するとガラスが分相してガラスの透明性が損なわれ易くなる。Bの含有量は0〜5%、好ましくは1〜4%、より好ましくは2〜3%である。Bの含有量が5%よりも多いと、ガラスが分相して、ガラスの透明性が損なわれ易くなる。
BaOは、ガラスの粘度を低下させて溶融性や成形性を高める成分である。一方、多量に含有するとBaを含む結晶がガラスから析出しやすくなる。BaOの含有量は、0〜15%、好ましくは3〜15%、より好ましくは5〜15%、さらに好ましくは10〜13%である。BaOの含有量が15%よりも多いと、Baを含む結晶がガラスから析出し易くなる。
ZnOは、ガラスの粘度を低下させて溶融性や成形性を高める成分である。一方、多量に含有するとZnを含む結晶がガラスから析出しやすくなる。ZnOの含有量は、0〜5%、好ましくは0〜3%、より好ましくは0〜2%である。ZnOの含有量が5%よりも多いと、Znを含む結晶がガラスから析出し易くなる。
LiOは、ガラスの粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。一方、多量に含有するとガラスの化学的耐久性や加水分解抵抗性を低下させる成分でもある。LiOの含有量は0〜10%、好ましくは0〜7%である。より好ましくは0〜5%である。LiOの含有量が10%より多いと、ガラスの化学的耐久性や加水分解抵抗性が低下し易くなる。なおLiOを含有させる場合、その下限値は0.1%以上、特に0.5%以上であることが好ましい。
NaOは、ガラスの粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。一方、多量に含有するとガラスの化学的耐久性や加水分解抵抗性を低下させる成分でもある。NaOの含有量は0〜10%、好ましくは0.1〜8%、より好ましくは1〜7%、さらに好ましくは3〜7%である。NaOの含有量が15%より多いと、ガラスの化学的耐久性や加水分解抵抗性が低下し易くなる。
Oは、ガラスの粘度を低下させて、溶融性や成形性を高める成分である。一方、多量に含有するとガラスの化学的耐久性や加水分解抵抗性を低下させる成分でもある。KOの含有量は0〜10%、好ましくは0.1〜8%、より好ましくは1〜7%、さらに好ましくは3〜7%である。KOの含有量が10%より多いと、ガラスの化学的耐久性や加水分解抵抗性が低下し易くなる。
LiO+NaO+KOの含有量は5〜20%、好ましくは5〜15%、より好ましくは7〜15%、さらに好ましくは7〜13%である。LiO+NaO+KOの含有量が5%より少ないと、ガラスの粘度が高くなって、溶融性や成形性が低下し易くなる。LiO+NaO+KOの含有量が20%より多いと、ガラスの化学的耐久性や加水分解抵抗性が低下し易くなる。
ZrOは、ガラスの化学的耐久性や加水分解抵抗性を高める成分である。一方、ガラスの粘度を高くするとともに、放射線照射による着色を強める成分でもある。またガラスの耐失透性を悪化させる。ZrOの含有量は1〜20%、好ましくは5〜20%、より好ましくは5〜18%、さらに好ましくは7〜18%である。ZrOの含有量が1%より少ないと、ガラスの化学的耐久性や加水分解抵抗性が低下する。ZrOの含有量が20%より多いと、ガラスの粘度が高くなって溶融性や成形性が低下し易くなる。また、放射線着色し易くなる。さらに、ガラス融液から結晶が析出しやすくなる。
CeOは、ガラスの耐放射線着色性を高める成分である。一方、多量に含有するとガラスの放射線照射前のガラスの着色(初期着色)を強める成分でもある。CeOの含有量は0.5〜3%、好ましくは1〜2.5%、より好ましくは1.5〜2.5%である。CeOの含有量が0.5%より少ないと、放射線照射によりガラスが著しく着色してしまう。CeOの含有量が3%より多いと、ガラスの初期着色が強くなる。
本発明の医療容器用ガラスは上記成分以外にも、放射線照射前後のガラスの着色や加水分解抵抗性や溶融性に悪影響を及ぼさない範囲において、Al、MgO、CaO、SrO、P、SnO、SO、PbO、La、WO、Co、Nb、Y等を合量で5%まで添加してもよい。また、Fe、Cr、TiO等が含まれていても良い。
なおFeは、ガラス原料やガラス製造工程から混入する成分である。Feは、TiOと共存することによって容器の内部に充填された血液や薬剤を紫外線から守る働きがある。しかし、Feの含有量が多過ぎると、ガラスが着色する恐れがある。よって、Feの含有量は0.001%〜0.1%、好ましくは0.001%〜0.05%、より好ましくは0.001%〜0.03%である。
TiOは、紫外線を遮断し、充填された血液や薬剤の変質を防止する成分である。またガラスの高温粘度を低下させ、溶融性や成形性を向上させる成分である。しかしTiOの含有量が多過ぎると、ガラスが着色したり、失透し易くなる。よってTiOの含有量は0〜2%、0〜1%、特に0〜0.5%であることが好ましい。
また、本発明の医療容器用ガラスはH、CO、CO、HO、He、Ne、Ar、N等の微量成分を0.1%まで含んでもよい。また、ガラス中にPt、Rh等の貴金属元素を500ppmまで含んでもよい。
本発明の医療容器用ガラスは、放射線照射前の肉厚5mmにおける波長400nmの光の吸光度が0.50以下、0.40以下、特に0.30以下であることが好ましい。放射線照射前の肉厚5mmにおける波長400nmの光の吸光度が高いと、放射線照射後もガラスの着色が強く残り、放射線滅菌後の検査等が困難になる。
本発明の医療容器用ガラスは、放射線を吸収線量25kGyで照射した後の肉厚5mmにおける波長400nmの光の吸光度が0.70以下、0.60以下、特に0.50以下であることが好ましい。放射線を吸収線量25kGyで照射した後の肉厚5mmにおける波長400nmの光の吸光度が高いと、放射線照射後のガラスの着色が強く、放射線滅菌後の検査等が困難になる。
本発明の医療容器用ガラスは、EP7.0に基づく加水分解抵抗性試験の粉末試験法において、0.02mol/Lの塩酸の消費量は0.30mL/g以下、0.28mL以下、特に0.25mL以下であることが好ましい。EP7.0に基づく加水分解抵抗性試験の粉末試験法において、単位ガラス質量当たりの0.02mol/Lの塩酸の消費量が多いと、ガラスの加水分解抵抗性が低くなりすぎて、バイアル瓶やアンプル管などの容器に加工し、薬液を充填、保存した際、ガラス成分の溶出量が多くなって薬液成分の変質を引き起こしやすくなる。
本発明の医療容器用ガラスは、γ線や電子線等の放射線により滅菌処理される真空採血管や医薬容器等の医療容器に用いられることが好ましい。これらの医療容器は、例えば、管状に成形した本発明の医療容器用ガラスを切断および加工することによって製造できる。これらの医療容器は、γ線、電子線等の放射線による滅菌処理に供されることが、より好ましい。特にγ線は高いエネルギーを有するため、ガラスを着色させ易いものの滅菌能力が高く、物質の透過能も高いため、短時間で大量の容器を滅菌処理することができる。また、電子線は、γ線に比べると物質の透過能は低いものの、γ線に比べて滅菌装置および工程の管理が容易である。
本発明の医療容器用ガラスを管状のガラス(管ガラス)として供給するには、例えば以下の方法を採用することができる。
まず所望の組成となるようにガラス原料を調製し、原料バッチを用意する。次いでこの原料バッチを連続式ガラス溶融炉に投入し、溶融、清澄する。続いて溶融ガラスを、ダンナー法等の方法を使用して管引き成形する。このようにして、管状に成形された本発明の医療容器用ガラスを作製することができる。
なお、上記用途は一例であり、本発明の医療容器用ガラスの用途はこれらに限らず、任意用途、任意形状に適用可能である。また、これらの医療容器の滅菌処理に用いる放射線はγ線および電子線に限らず、任意の種類および強度の放射線を用いても良い。
以下、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明する。
表1〜3は、本発明の実施例(試料No.1〜11)及び比較例(試料No.12)を示している。
以下のようにして、各試料を調製した。まず、表中のガラス組成になるように、ガラス原料を秤量、混合して、ガラスバッチを作製した。次に、このガラスバッチを白金坩堝で1600℃、8時間溶融した後、型枠に流し出してガラスインゴットを作製した。次に、ガラスインゴットを各々の特性測定に必要な形状に加工し、各々の特性を評価した。
肉厚5mm、波長400nmにおける吸光度は、25mm×30mmの寸法に切断、光学研磨した肉厚5.0mmの板状ガラス試料を用い、放射線照射前後において肉厚5mm、波長400nmにおける分光透過率を測定し、当該分光透過率に基づいて算出した。当該分光透過率は、SHIMADZU製 UV−3100PC分光光度計を用いて波長400nmの値を読み取った。吸光度が低いほど、透明性が高いガラスである。
照射する放射線としては、コバルト60の線源のγ線を用い、吸収線量25kGyで照射した。吸収線量は、ガラス製の線量計により測定した。
加水分解抵抗性はEP7.0に基づく粉末試験法により評価した。単位質量あたりの0.02mol/L塩酸の消費量が少ないほど加水分解抵抗性が高いガラスである。
表1〜3から明らかなように、試料No.1〜11は、放射線照射前の吸光度の値が0.50以下であった。また、放射線照射後の吸光度が0.70以下であった。さらに、EPに基づく加水分解抵抗性試験における0.02mol/L塩酸の消費量が0.30mL/g以下であった。
一方、試料No.12は、EPに基づく加水分解抵抗性試験における0.02mol/L塩酸の消費量が0.30mL/gよりも多かった。
本発明の医療容器用ガラスは、医療容器の材料等として有用である。

Claims (7)

  1. ガラス組成として下記酸化物換算の質量%で、SiO 50〜75%、B 0〜5%、BaO 0〜15%、ZnO 0〜5%、LiO 0〜10%、NaO 0〜10%、KO 0〜10%、LiO+NaO+KO 5〜20%、ZrO 1〜20%、CeO 0.5〜3%を含有することを特徴とする医療容器用ガラス。
  2. 放射線照射前の吸光度が0.50以下であることを特徴とする請求項1に記載の医療容器用ガラス。
  3. 放射線を吸収線量25kGyで照射した後の吸光度が0.70以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の医療容器用ガラス。
  4. EP7.0に基づく加水分解抵抗性試験の粉末試験法において、0.02mol/Lの塩酸の消費量が0.30mL/g以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の医療容器用ガラス。
  5. 放射線により滅菌処理される医療容器に用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の医療容器用ガラス。
  6. γ線または電子線により滅菌処理される真空採血管に用いられることを特徴とする請求項5に記載の医療容器用ガラス。
  7. γ線または電子線により滅菌処理される医薬容器に用いられることを特徴とする請求項5に記載の医療容器用ガラス。
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