JP5046088B2 - 放射線遮蔽ガラス及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、放射線遮蔽ガラス及びその製造方法に係り、特に放射線遮蔽ガラスに有効な特性を持たせると共に、放射線遮蔽ガラスを要請に応じた用途に適正に使用可能とするための技術に関する。
一般に、医療機関等の放射線を取り扱う施設の壁には、放射線を遮蔽するために金属鉛や鉄あるいはコンクリートが用いられているが、その場合に機器操作室や検査室等がコンクリートなどで仕切られる構造であると、室内に窓を取付ける必要がある。また、被検体に放射線を発生する薬剤等を注射あるいは吸入して検査を行う場合には、医師または検査技師もしくは看護師等が、例えば被検体の顔色や脈拍を確認する等のように被検体をその近傍で態様観察するに際して、放射線を体全体に直接受けないようにするための防護衝立が必要となる。
これらの窓や防護衝立に要求される特性としては、放射線を遮断して人体に対する安全性を確保するために、放射線源からの放射線を遮蔽する能力、いわゆる放射線遮蔽能力が必要となる。しかも、被検体の存在を的確に視認できなければ、種々の弊害を招くことになり、特に医療分野においては、被検体の検査結果に悪影響を及ぼし得ることから、これらの窓や防護擁立には、視認性が必要となる。
一方、近年の医療分野においては、癌細胞を早期に発見できるPET(ポジトロンエミッショントモグラフィー)検査の実施が推進されるに至っている。詳述すると、下記の非特許文献1によれば、PET検査とは、いわゆる「ポジトロン断層撮影法」のことを指し、PET−CT装置等により心臓や脳などの働きを断層画像としてとらえ、病気の原因や病状を診断する新しい検査方法であることが記載されている。
このPET検査に用いられる検査薬としては、糖分にポジトロン核種を標識した化合物が存在し、検査の目的に応じた化合物を「注射剤」や「吸入剤」の形に調整して、静脈注射や呼吸で体内に取り込むことにより、PET−CT装置で断層像が撮影できるようになる。この場合、標識された化合物からは、ポジトロンが放出され、そのポジトロンと電子とが衝突する際に放射線が出るため、例えば18F−FDGの場合では0.511MeVのエネルギーに相当するガンマ線が出るため、このガンマ線をPET−CT装置で検出することにより、癌細胞の存在の有無や病巣の大きさ等を特定することが可能となる。
したがって、PET検査を伴う診療の環境下では、検査薬を投与された被検体からガンマ線があらゆる方向に放射されることになるため、このガンマ線を医師等の検査者が体に直接受けないように遮蔽することが必須の条件となる。
そして、従来より公知となっている放射線遮蔽窓及び放射線遮蔽防護衝立の代表例として、下記の特許文献1によれば、高い放射線遮蔽特性を有するPbOを含有したガラスが開示されている。
特開平2−212331号公報 平成16年度 厚生労働省科学研究費補助金 医療技術評価総合研究事業 PET検査施設における放射線安全の確保に関する研究班偏 FDG−PET検査における安全確保に関するガイドライン(2005年)、インターネット<URL:http://www.jsnm.org/report/pet−anzen−gl.pdf>
ところで、上記の特許文献1に開示の放射線遮蔽ガラスは、高い放射線遮蔽性能を有すると共に、放射線による着色を防止するのに十分な量のCeOを含有しながらも誘電破壊を起こし難いガラスである。具体的には、放射線遮蔽性能を高めるためにPbOを一定量含有し、且つ放射線による着色を防止するために十分な量のCeOを含有するガラスに対して、誘電破壊を防ぐためにNaOとKOとの割合を限定して含有させたものである。
しかしながら、同文献に開示の放射線遮蔽ガラスは、放射線による着色を抑制する技術であり、ガラス本来の着色を抑制する技術ではない。したがって、当然の事ながら、放射線遮蔽ガラスが、本来着色されていれば、放射線に起因する着色を如何に抑制しても、ガラス本来の着色が抑制されるわけではない。
そして、従来より医療施設等で使用されているPbOを含有したガラスは、放射線遮蔽能力は優れているものの、透明性が不当に阻害される程度まで着色されていることから、視認性に劣るという問題を有している。そのため、このようなガラスを放射線遮蔽窓や放射線遮蔽防護擁立として使用していたのでは、被検体を的確に視認判断できないという事態を招き、特に医療分野では診断結果の誤認という極めて深刻な問題を招来し得る。
それにも拘わらず、放射線遮蔽ガラスについては、被検体の視認に関する透明性という重要な特性に関して何ら考慮されていないのが実情であって、したがってこの種のガラスの透明性についてはどの程度であれば適正な視認性を確保できるかという問題が浮上することになる。
そこで、本発明の第1の課題は、放射線遮蔽能力を十分に確保した上で、被検体の視認性をも十分なものとするための適切な透明性を確保できる放射線遮蔽ガラスを提供することにある。
一方、PET検査用の放射線遮蔽手段としては、仮に放射線遮蔽窓や放射線遮蔽防護擁立を作製するとしても、基本材質として金属鉛や鉄あるいはガラス等の中から如何なる材質のものを使用するのが最適であるかについて、有効且つ確立した材質が見い出されていないのが実情である。すなわち、このPET検査用の放射線遮蔽手段は、十分な放射線遮蔽能力及び十分な視認性を確保することにより、医師等が被検体の顔色等を的確に確認した上で、ガンマ線を体に直接受けないようにすることが極めて重要となる。
その場合に、仮にガラスを使用してガンマ線の遮蔽窓や遮蔽防護擁立を作製するにしても、PET検査において被検体から放射されるガンマ線を適正に遮蔽し且つその被検体を適正に視認するには、ガラスの基本組成をどのようにすれば最適であるかという事項については、未だ明確にされていないのが実情である。したがって、PET検査の分野においては、ガンマ線遮蔽用のガラスの基本組成を先ず案出しなければ、今後において、そのガラスに改良を加えて優れた特性を持たせるという技術開発を、適切な方向指針をもって行うことができないという問題を有している。
そこで、本発明の第2の課題は、PET検査を行うに際して、被検体から放射されるガンマ線に対する遮蔽能力を十分に確保した上で、被検体の視認性をも良好に確保することが可能なガラスの基本組成を案出することにある。
上記第1の課題を解決するために創案された本発明に係る放射線遮蔽ガラスは、質量%表示で、ガラス組成として、SiO2 10〜35%、PbO 55〜80%、B23 0〜10%、Al23 0〜10%、SrO 0〜10%、BaO 0〜10%、Na2O 0〜10%、K2O 0〜10%、Sb23 100〜20000ppm、Fe 2 3 200ppm以下、Cr 2 3 50ppm以下を含有し(但し、Gd23 1%以上の場合を除く)、且つ厚さ10mmについての波長400nmにおける全光線透過率が50%以上であることに特徴づけられる。ここで、上記の厚さ「10mmについて」とは、当該放射線遮蔽ガラスを板厚が10mmの板ガラスと仮定した場合についての事項を意味し、また「全光線透過率」とは、その板ガラスについての平均全光線透過率を意味する(以下、同様)。なお、以下で記載する%表示は、質量%を指す。
このような構成とされた放射線遮蔽ガラスによれば、PbOが55%以上であることから、放射線遮蔽能力を大幅に高めることが可能となると共に、厚さ10mmについての波長400nmにおける全光線透過率が50%以上であることから、視認性を十分なものとすべく適切な透明性を確保することが可能となる。また、PbO以外の組成が所定範囲に規制されていることから、失透し難いガラスを得ることができ、結果として溶融ガラスの成形時の粘度を高めることができることから、板厚の厚いガラスを効率よく得ることが可能となる。したがって、高い透明性および放射線遮蔽能力ならびに耐失透性を一挙に享受できる放射線遮蔽ガラスを得ることができる。特に、板厚が厚い場合には、非常に高い放射線遮蔽能力と透明性とを維持できることから、極めて大きなメリットを有する放射線遮蔽ガラスが実現する。
この場合、上記の放射線遮蔽ガラスの表面に、屈折率及び厚さが適切な薄膜(例えば、反射防止膜)を形成することにより低反射処理を施すことが好ましく、そのようにした場合の放射線遮蔽ガラスの反射損失は、0.3〜4.0であることが好ましく、その下限は0.5であってもよいが、その上限は3.5であることがより好ましい。
このようにすれば、上述の放射線遮蔽ガラスのように、厚さ10mmについての波長400nmにおける全光線透過率を50%以上としたことと相俟って、視認性がより一層良好なものとなる。ここで、反射損失Rは、ガラスの屈折率をnとした場合に、R=((n−1)/(n+1)) で求まる数値である。
また、上記第2の課題を解決するために創案された本発明に係る放射線遮蔽ガラスは、質量%表示で、ガラス組成として、SiO2 10〜35%、PbO 55〜80%、B23 0〜10%、Al23 0〜10%、SrO 0〜10%、BaO 0〜10%、Na2O 0〜10%、K2O 0〜10%、Sb23 100〜20000ppm、Fe 2 3 200ppm以下、Cr 2 3 50ppm以下を含有し(但し、Gd23 1%以上の場合を除く)、且つPET検査用ガンマ線遮蔽材に用いることに特徴づけられる。
すなわち、本発明者等は、このような基本組成を備えた放射線遮蔽ガラスを、PET検査用ガンマ線遮蔽材として好適に使用できることを案出した。具体的には、既に述べたように、PbOが55%以上であることから、放射線遮蔽能力を大幅に高めることが可能となると共に、PbO以外の組成が所定範囲に規制されていることから、高い透明性および放射線遮蔽能力ならびに耐失透性を一挙に享受できる放射線遮蔽ガラスを得ることが可能となり、特に板厚が厚い場合には、非常に高い放射線遮蔽能力と透明性とを維持できることになる。このような特性を備えていれば、PET検査用ガンマ線遮蔽材として、十分なガンマ線遮蔽性能を有し且つ十分な視認性を有する待望の基本材が得られることになる。したがって、PET検査の分野においては、検査薬の投与に伴って被検体から放射されたガンマ線が医師等の検査者に直接投射されることを阻止でき、しかも医師等が被検体(患者等)の顔色等を確認する際の誤診等を回避できる新規且つ有用なガンマ線遮蔽ガラスが得られることになる。
更に、本発明に係る以上の放射線遮蔽ガラスは、ガラス組成として、Fe23が200ppm以下、Cr23が50ppm以下とされている。

このような構成とすれば、不純物として含まれるFe、Crに起因するガラスの着色を可及的に抑制することが可能となる。すなわち、本発明者等は、放射線遮蔽ガラスの透明性に影響を与える因子として、影響の大きな因子がFe、Crに代表されるガラス中に含まれる不純物であることを見出すと共に、不純物として含まれるFeの含有量を200ppm以下、Crの含有量を50ppm以下に規制すれば、放射線遮蔽ガラスの透明性が顕著に向上することを見出した。ここで、不純物として含まれるFe、Crにより放射線遮蔽ガラスが着色する理由は、PbOは紫外域に光の吸収があり、その影響で不純物として含まれるFe、Crが少量であっても、ガラスの着色に影響を及ぼすからである。特に、溶融温度が高い場合には、非常に少量であっても、ガラスを着色させる性質を有している。これは、Feイオンの酸化還元反応またはFeイオンの配位数の変化が原因と考えられる。したがって、ガラスの着色を抑制する観点から、Fe、Crの不純物を厳密に管理することは重要であり、不純物として含まれるFeの含有量を200ppm以下、Crの含有量を50ppm以下に規制すれば、可及的に放射線遮蔽ガラスの着色を抑制することができる。
なお、Fe、Crの不純物は、原料および原料の粉砕工程や混合工程に用いる設備(例えば、鉄やステンレス等の材質で構成される設備)からガラス内に混入する。したがって、Fe、Crの含有量が少ない原料を用いることによって、ガラス内のFe、Crの含有量を低減させることが可能となる。また、原料の粉砕工程や混合工程に用いる設備をFe、Crが混入し難い材質またはFe、Crが混入しない材質に変更したり、Fe、Crを取り除く工程を導入することにより、ガラス内のFe、Crの含有量を低減させることが可能となる。以上のような対策を施すことによって、Feの含有量を200ppm以下、Crの含有量を50ppm以下に規制することが可能となる。
また、医療施設で利用される放射線として、X線とガンマ線があるが、X線とガンマ線では放射線のエネルギーの強さが異なっている。すなわち、X線よりもガンマ線の方が放射線の透過性が高いため、放射線遮蔽ガラスに十分な放射線遮蔽性を付与する目的で、放射線遮蔽ガラスの板厚を厚くする必要がある。したがって、ガンマ線を取り扱う医療施設において、放射線遮蔽窓および放射線遮蔽防護衝立に用いる放射線遮蔽ガラスに求められる透明性は、上述の板厚を厚くしなければならない事情と相俟って、非常に重要な特性となっている。
一方、PET検査を取り扱う医療施設においては、多数の被検体を検査する必要があるため、PET検査を取り扱う医療施設における薬剤の合成施設、調剤施設、薬剤注入室、被検体の待合室、検査室等の周辺では、薬剤を注射、吸入された被検体から放射線が絶えず放出され続けている。
そのため、検査を行う医師、検査技師及び看護師等が放射線を累積的に浴び、被曝するという大きな問題が生じ得る。上述の非特許文献1によると、検査技師の被曝量低減や放射線防護に関する指針が明示されており、ポジトロン核種から生じるガンマ線は、実効線量等量が2.2ミリシーベルトであり、胸部X線検査の実行線量等量が1回当たり0.3ミリシーベルトであることを勘案すると、短時間で多くの線量を被曝することが想定される。
以上の観点から、PET検査を取り扱う医療施設においては、医師等の被曝管理が重要であることから、放射線遮蔽ガラスには十分な放射線遮蔽能力が要求され、必然的にガラス組成内にPbOを多く含有させる必要がある。したがって、PbOの含有量を55%以上とすると、既述の利点とともに、従来の放射線遮蔽ガラスよりも高い放射線遮蔽能力をも付与することができることとなり、これらの用途に好適に使用可能となる。
加えて、放射線を可及的に遮蔽するためには、放射線遮蔽ガラスの板厚を厚くする必要があるが、安定して板厚が厚いガラスを成形しようとすれば、粘性が高い状態で成形する必要がある。そのため、高粘性で失透しないガラス、つまり液相粘度が高いガラスが必要となる。また、放射線を可及的に遮蔽するためには、放射線遮蔽ガラスのガラス組成内にPbOを多量に含有させる必要があるが、そのようにした場合には、ガラスが熱的に不安定になる傾向があり、より一層失透し難いガラスが必要となる。上記の放射線遮蔽ガラスは、PbO以外のガラス組成を一定範囲に規制したため、PbOの含有量が多いにも拘わらず、非常に熱的安定性が高く、ガラスの板厚を容易に厚くすることができる。
以上の放射線遮蔽ガラスは、ガラス組成として、Sb23 100〜20000ppmを含有している。なお、以上の放射線遮蔽ガラスは、Cl2 0〜20000ppmを含有していることが好ましく、または、実質的にAs23を含有していないことが好ましい。
このようにすれば、清澄剤として、SbもしくはClを使用し、または環境に有害なAsを含有していないため、ガラス製造工程や廃ガラス処理時等に環境を汚染することがなくなる。しかも、SbもしくはClは、溶融しているガラスが低温である場合に多量の清澄ガスを発生させるという特性を備えた清澄剤であることから、以下に示すような利点をも享受することができる。
すなわち、既に述べたように、ガラスの着色を抑制する観点からは、Fe23、Cr23の不純物を厳密に管理することは重要であるが、その一方でFeイオン等の反応を抑制する目的で、ガラスの溶融温度を低下させることも重要であると考えられる。同時に、エネルギー的見地からも、ガラスの溶融温度を低下させることは重要である。しかし、ガラスの溶融温度を低下させると、それだけ溶融時におけるガラスの粘性が高くなり、泡のないガラスを得ることが困難となる。一般的に、泡のないガラスを得るためには、ガラス化反応時から均質化溶融時にかけての温度域で清澄ガスを発生する清澄剤を使用することが重要である。また、ガラスの清澄は、ガラス化反応時に発生するガスを清澄ガスによってガラス融液中から追い出し、さらに均質化溶融時に残った微小な泡を再び発生させた清澄ガスによって泡径を大きくして浮上させて除去するが、溶融時におけるガラスの粘性が高いとこれらの効果が得られ難くなる。本発明の放射線遮蔽ガラスは、上記知見に基づいて決定されたものであり、低温で溶融が可能な組成となっている。具体的には、PbOの含有量を55%以上とし、低温で溶融が可能なガラスにすると共に、低温で多量の清澄ガスを発生させるSb23もしくはC12を清澄剤として使用することで、上記の低温溶融性および泡品位、透明性の問題点を一挙に解決することが可能となる。なお、B 2 3 は、ガラスの高温粘度を低下させて溶融性や成形性を高めたり、熱的安定性を高める成分であって、その含有量が10%より多くなると、ガラスの耐水性が低下する。そこで、以上の放射線遮蔽ガラスは、ガラス組成として、B 2 3 の含有量を0.1〜10%とすることが好ましい。
更に、以上の放射線遮蔽ガラスは、380〜700nmの全光線透過率から算出されるC光源における色度が(x座標、y座標)=(0.3101、0.3160)、(0.3250、0.3160)、(0.3250、0.3400)、(0.3101、0.3400)で囲まれた範囲内であることが好ましい。ここで、上記の「色度」とは、当該放射線遮蔽ガラスを板ガラスと仮定した場合に、板厚が10mmの板ガラスの測定値を意味し、また「全光線透過率」とは、その板ガラスについての平均全光線透過率を意味する(以下、同様)。
このようにすれば、より確実にガラスの透明性を確保することができる。すなわち、色度が上記範囲から外れると、ガラスの着色が著しくなり、ガラスの透明性が悪化して、視認性を阻害することから、色度が上記範囲内にあることにより、そのような不具合を回避することができる。
また、以上の放射線遮蔽ガラスは、液相粘度が103.5dPa・s以上であることが好ましい。
このように、液相粘度を103.5dPa・s以上とすることにより、高粘度でガラスを成形したとしてもブツや失透のない熱的に安定なガラスを得ることができ、結果として板厚の厚いガラスを成形することが可能となる。一方、液相粘度が103.5dPa・s未満であると、溶融ガラスの成形において、ガラスが失透しやすくなり、安定生産が困難となり、板厚の厚いガラスを得ることが困難となる。特に、PbOの含有量が多いガラスは、失透しやすい傾向があるため、液相粘度を103.5dPa・s以上にすることが好適である。この場合、液相粘度は、103.0dPa・s以上としてもよい。なお、液相粘度は、SiOの含有量を増加させ、Bの含有量を減少させることにより高めることができる。
ここで、上記の「液相粘度」とは、液相温度におけるガラスの粘度を意味する。具体的には、ガラスの液相温度は、十分に洗浄した300〜500μmの粉末状の試料を白金製のボートに入れ、800℃から500℃の温度勾配を有する電気炉に48時間保持した後、空気中で放冷し、次いでガラス中に結晶が析出し始めた温度を測定した値を指す。液相粘度は、白金引き上げ法で求めた粘度から粘度曲線を作成し、この粘度曲線から液相温度に相当するガラスの粘度を算出することで求めた値を指す。なお、ガラス表面を研磨すると、ガラス中に析出した結晶の析出位置が判別しやすく好ましい。
更に、以上の放射線遮蔽ガラスは、密度が、4.00g/cm以上であることが好ましい。
すなわち、密度が4.00g/cm未満であると、高い放射線遮蔽能力が得られ難くなるという不具合が生じることから、密度は上記の数値範囲とすることが好都合である。このような観点から、密度は、4.20g/cm以上であることがより好ましい。なお、密度は、PbO、SrO、BaOの含有量を増加させることにより、大きくすることができる。
また、以上の放射線遮蔽ガラスは、歪点が、360℃以上であることが好ましい。
すなわち、歪点が360℃未満であると、熱工程でガラスが熱変形や熱収縮の影響を受け易くなるという不具合が生じることから、歪点は上記数値範囲とすることが好都合である。このような観点から、歪点は、380℃以上であることがより好ましい。なお、歪点は、SiO、A1の含有量を増加させることにより、高めることができる。
更に、以上の放射線遮蔽ガラスは、形状が板状をなす板状体であり、且つ該板状体の板厚が10mm以上であることが好ましい。
このようにすれば、形状が板状をなす板状体であることから、広範な面積で放射線を遮蔽することができると共に、板状体の板厚を10mm以上とすることにより、十分な放射線遮蔽能力を得ることができ、X線よりも放射線の透過性が高いガンマ線を有効に遮蔽することができる。特に、実効線量が高いポジトロン核種から生じるガンマ線を有効に遮蔽することが可能となり、PET検査を行う医師または検査技師もしくは看護師等が放射線を累積的に浴び、被曝するといった事態を有効に回避することが可能となる。このような観点から、板状体の板厚は、14mm以上、18mm以上、更には22mm以上であることがより好ましい。なお、この板状体の板厚の上限は、60mmであることが好ましい。
また、以上の放射線遮蔽ガラスは、ガンマ線のエネルギー0.511MeVにおけるガンマ線減弱係数が0.5cm−1以上であることが好ましく、0.55cm−1以上、0.6cm−1以上、更には0.65cm−1以上であることがより好ましい。ここで、放射線減弱係数(ガンマ線減弱係数)は、放射線遮蔽能力を表す指標として用いられ、入射した放射線をどの程度吸収するかを示す数値である。このガンマ線減弱係数は、数値が大きいほど放射線遮蔽能力が優れている。
すなわち、ガンマ線のエネルギー0.511Mevにおけるガンマ線減弱係数が0.5cm−1未満であると、十分な放射線遮蔽能力が得られなくなり、X線よりも放射線の透過性が高いガンマ線を有効に遮蔽することができなくなる。また、実効線量が高いポジトロン核種から生じるガンマ線を有効に遮蔽することができなくなり、PET検査を行う医師等が放射線を累積的に浴び、被曝するといった事態を招来し得ることになる。したがって、ガンマ線減弱係数が上記の数値範囲にあれば、このような不具合が生じ難くなる。
この場合、上記第2の課題を解決すべく、PET検査用ガンマ線遮蔽材に使用することを特徴とした放射線遮蔽ガラスは、ガンマ線遮蔽窓またはガンマ線遮蔽防護衝立に用いることが好ましい。
このようにすれば、当該放射線遮蔽ガラスがPET検査用ガンマ線遮蔽窓またはPET検査用ガンマ線遮蔽防護衝立に用いられることから、放射線の透過性が高いポジトロン核種から発生するガンマ線を有効に遮蔽することができ、PET検査を行う医師、検査技師、看護師などが放射線を累積的に浴び、被曝するといった事態を有効に回避することが可能となる。特に、PET検査用ガンマ線遮蔽防護衝立として使用される場合には、防護衝立を隔てて被検体と医師等の距離が短く、被曝を回避する必要性が高いため、より好適な効果が得られる。しかも、検査技師や看護師が被検体の近傍で被検体の様態観察をする際には、被検体の様態(例えば患者の顔色等)を的確に視認判断することが可能となるため、被検体の態様を見間違えることによる誤診等の問題を有効に回避することができる。
一方、上記第1の課題を解決すべく、厚さ10mmについての波長400nmにおける全光線透過率を50%以上としたことを特徴とする放射線遮蔽ガラスは、医療用ガンマ線遮蔽窓または医療用ガンマ線遮蔽防護衝立に用いることが好ましい。
このようにすれば、当該放射線遮蔽ガラスは、放射線遮蔽能力が高く、着色がなく透明性に優れ、且つ液相粘度も高くガラスの板厚を厚くすることが可能であることから、ガンマ線遮蔽能力をさらに高めることができる。また、検査技師や看護師が被検体の近傍で被検体の様態観察をする際には、被検体の様態を的確に視認判断することが可能となる。
更に、この放射線遮蔽ガラスは、PET検査用の医療用ガンマ線遮蔽窓またはPET検査用の医療用ガンマ線遮蔽防護衝立に用いることが好ましい。
このようにすれば、放射線の透過性が高いポジトロン核種から発生するガンマ線を有効に遮蔽することができ、PET検査を行う医師、検査技師、看護師などが放射線を累積的に浴び、被曝するといった事態を有効に回避することが可能となる。特に、この窓または防護衝立は、優れた透明性を有していることから、検査技師や看護師が被検体の近傍で被検体の様態観察をする際には、被検体の様態(例えば患者の顔色等)をより一層的確に視認判断することが可能となるため、被検体の態様を見間違えることによる誤診等の問題を更に有効に回避することができる。
以上の放射線遮蔽ガラスを備えた放射線遮蔽ガラス物品としては、当該放射線遮蔽ガラスからなる単一の板ガラスであることが好ましい。
このようにすれば、板厚が薄いガラスを複数貼り合わせるラミネート加工等を実行して放射線遮蔽能力を高める方法を採用する必要がなくなるため、製作の容易化が図られる。また、工数が少なく且つ材料費の高騰によるコストアップ等の問題も生じなくなり、結果として放射線遮蔽ガラス物品全体のコストダウンに大きく寄与することが可能となる。
一方、以上の放射線遮蔽ガラスの製造方法は、溶融炉でガラス原料を溶融して溶融ガラスとする工程で、該溶融ガラスの溶融温度が1400℃以下とされる。
すなわち、この種の放射線遮蔽ガラスの製造方法においては、溶融ガラスの溶融温度を1400℃よりも高くすると、Fe、Crの不純物の含有量が僅かであっても、ガラスが着色する傾向があると共に、環境負荷が大きくなってエネルギーコストの高騰を招き、製造コストが増大するという不具合が生じる。しかし、溶融ガラスの溶融温度が1400℃以下であれば、このような不具合を有効に回避することができる。このような観点から、溶融温度は、1350℃以下、あるいは1300℃以下であることがより好ましく、1250℃以下、あるいは1200℃以下であることが更に好ましい。
また、以上の放射線遮蔽ガラスの成形方法としては、ロールアウト法、フロート法、スロットダウンドロー法、オーバーフローダウンドロー法、リドロー法等の様々な成形方法があり、適宜選択すれば良い。特に、以上の放射線遮蔽ガラスは、ロールアウト法で成形することが好ましい。このロールアウト法は、板厚の厚い板ガラスを効率よく作製することが可能であることに加えて、溶融ガラスを素早く成形することができるため、成形時にガラスが失透し難く、より一層効率よく板厚の厚い板ガラスを得ることができる。
以上のように第1の課題に対応する本発明の放射線遮蔽ガラスによれば、ガラス組成としてPbOが55%以上であることから、放射線遮蔽能力を大幅に高めることが可能となると共に、厚さ10mmについての波長400nmにおける全光線透過率が50%以上であることから、視認性を十分なものとすべく適切な透明性を確保することが可能となる。
また、第2の課題に対応する本発明の放射線遮蔽ガラスによれば、PET検査用ガンマ線遮蔽材として、十分なガンマ線遮蔽性能を有し且つ十分な視認性を有する待望の基本材が得られることになり、PET検査の分野において、検査薬の投与に伴って被検体から放射されたガンマ線が医師等の検査者に直接投射されることを阻止しつつ、医師等が被検体の顔色等を確認する際の誤診等を有効に回避することができる。
以下、本発明の実施形態を説明する。
本実施形態に係る放射線遮蔽ガラスは、質量%で、ガラスの基本組成として、SiO 10〜35%、PbO 55〜80%、B 0〜10%、Al 0〜10%、SrO 0〜10%、BaO 0〜10%、NaO 0〜10%、KO 0〜10%を含有している。そして、厚さ10mmについての波長400nmにおける全光線透過率が50%以上であって、PET検査用ガンマ線遮蔽材として用いられるものである。また、清澄剤としては、Sb、Clを使用し、環境に有害なAsを実質的に含有していない。更に、不純物であるFeは200ppm以下、Crは50ppm以下とされている。
ガラスの基本組成を上記のように限定した理由を以下に述べる。
SiOは、ガラスのネットワークを形成する成分である。その含有量は10〜35%、好ましくは10〜30%、より好ましくは20〜30%である。SiOの含有量が35%よりも多くなると、ガラスの高温粘度が高くなり、溶融や成形が難しくなったり、放射線遮蔽能力が低下する。一方、SiOの含有量が10%よりも少なくなると、ガラスの骨格を形成する成分が少なくなりすぎ、ガラスが熱的に不安定になると共に、ガラスの耐水性が低下する。
PbOは、放射線を遮蔽させるための成分である。その含有量は、55〜80%、好ましくは60〜80%、より好ましくは65〜80%、さらに好ましくは70〜80%である。 PbOの含有量が80%より多くなると、PbO以外の成分が相対的に少なくなり、ガラスが熱的に不安定になる。一方、PbOの含有量が50%以下であると放射線遮蔽能力が低下してしまう。
は、ガラスの高温粘度を低下させて溶融性や成形性を高めたり、熱的安定性を高める成分である。その含有量は0〜10%、好ましくは0.1〜8%、より好ましくは0.1〜5%である。Bの含有量が10%より多くなると、ガラスの耐水性が低下する。
A1は、ガラスの熱的安定性を高くする成分である。その含有量は0〜10%、好ましくは0.1〜8%、より好ましくは0.1〜5%である。Alの含有量が10%より多くなると、ガラスの高温粘度が高くなり、溶融や成形が難しくなったり、放射線遮蔽能力が落ちる。
SrOやBaOは、ガラスの粘度や失透性を調整する成分であり、放射線遮蔽能力を高める成分である。その含有量はそれぞれ0〜10%、好ましくは0〜8%、より好ましくは0〜5%である。SrOやBaOの含有量が10%より多くなると、ガラスが熱的に不安定になる。
NaOやKOは、ガラスの高温粘度を低下させて溶融性や成形性を高める成分である。その含有量はそれぞれ0〜10%、好ましくは0〜8%、より好ましくは1〜5%である。これらの含有量が10%より多くなると、放射線遮蔽能力が低下する。
Sbは、清澄剤として作用する成分である。その含有量は、100〜20000ppm(好ましくは、200〜20000ppm、500〜20000ppm、1000〜20000ppm、5000超〜20000ppm、5500〜20000ppm、6000〜20000ppm)である。Sbの含有量が100ppmよりも少なくなると、清澄力が得られ難くなり、ガラス内の泡を低減し難くなる。また、Sbの含有量が20000ppmより多くなると、Sbが高価であるため、原料コストが上昇することになる。
Clは、清澄剤として作用する成分である。その含有量は、0〜20000ppm、好ましくは200〜20000ppm、より好ましくは500〜20000ppm、さらに好ましくは1000〜10000ppmである。Clの含有量が20000ppmより多くなると、Clの揮発量が多くなり過ぎてガラスが変質し易くなる。尚、Clの含有量は、ガラス中の残存量を指している。
本実施形態において清澄剤として使用するSbは、900℃以上の温度域でSbイオンの価数変化による化学反応により多量の清澄ガス(酸素ガス)を発生する。特に1000〜1200℃の低温で清澄ガスを多量に発生する。また、Clは900℃以上の温度域で分解、揮発して清澄ガス(塩素ガス等)を発生する。したがって、清澄剤としてSbやClを使用することにより、ガラス化反応時から均質化溶融時にかけての温度域が低温であっても、高い清澄効果が得られるため、着色や泡が存在しない放射線遮蔽ガラスを効率よく得ることができる。
なお、ガラスの特性を損なわない範囲で他の成分を10%まで添加できる。
本実施形態の放射線遮蔽ガラスを製造するに際しては、溶融炉でガラス原料を溶融して溶融ガラスとした後にその溶融ガラスを成形して板ガラスとする工程で、板ガラスがロールアウト法により成形される。
このロールアウト法について詳述すると、図1に示すように、溶融炉1の内部で溶融された溶融ガラス2を、一対の成形ロール3の相互間隙間を通過させることにより、帯状のガラスリボン4を成形し、このガラスリボン4を冷却しつつ、複数の搬送ロール5によって搬送することにより、板ガラスを成形する手法である。そして、この板ガラスが、最終的に上記の放射線遮蔽ガラスとなる。
本発明の実施例1〜24として、PET検査用の放射線遮蔽ガラス(ガンマ線遮蔽ガラス)について、24種類のガラス組成に対して、密度、ガンマ線減弱係数、歪点、液相温度、液相粘度、及び透過率(厚さ10mmについての波長400nmにおける全光線透過率)を測定した。その結果を、下記の表1に示す。
Figure 0005046088
まず、表1に示す組成を有するガラスとなるように原料を調合し、石英ルツボに調合バッチを入れ、表1に示した1150℃で1時間溶融した。その後、溶融ガラスをカーボン板の上に流し出して板状に成形し、徐冷後、各評価のための試料ガラスを作製した。
このようして得られた各試料について、24種類のガラス組成に対する密度〜透過率を表1に示した。尚、表1の中で、密度〜透過率の数値として“−”の記号を付したものは、未測定であることを意味している。
密度は、周知のアルキメデス法で測定した。
ガンマ線のエネルギー(0.511Mev)におけるガンマ線減弱係数は、Photxのデータから計算によって算出した。
また、歪点は、ASTM C336−71に基づいて測定した。なお、歪点は高い方が良く、熱工程におけるガラス基板の熱変形や熱収縮を抑えることができる。
液相温度は次のようにして測定した。ガラスの液相温度は、十分に洗浄した300〜500μmの粉末状の試料を白金製のボートに入れ、800℃から500℃の温度勾配を有する電気炉に48時間保持した後、空気中で放冷し、次いでガラス中に結晶が析出し始めた温度を測定した。
液相粘度は、白金引き上げ法で求めた粘度から粘度曲線を作成し、この粘度曲線から液相温度に相当するガラスの粘度を算出することで求めた。
透過率の測定については、株式会社島津製作所製分光光度計UV2500PCを使用した。測定波長は380〜700nmであり、測定スピード(スキャンスピード)は低速、スリット幅は5nmとし、サンプリングピッチは1nm(つまり1nm刻みの測定)とした。
表1から明らかなように、実施例1〜24の放射線遮蔽ガラスは、透過率が50%〜80%の範囲であった。その中でも、65%〜75%の透過率を有するものが多く存在しており、適正な透明性を有していた。
本発明の実施例25〜30として、PET検査用の放射線遮蔽ガラス(ガンマ線遮蔽ガラス)について、6種類のガラス組成に対して、密度、熱膨張係数α、歪点、液相温度、液相粘度、ガンマ線減弱係数、色度、及び溶融温度を測定した。その結果を、下記の表2に示す。また、その比較例1〜を下記の表3に示す。
Figure 0005046088
Figure 0005046088
まず、表2、3に示す組成を有するガラスとなるように原料を調合し、石英ルツボに調合バッチを入れ、表2、3に示した各温度で1時間溶融した。その後、溶融ガラスをカーボン板の上に流し出して板状に成形し、徐冷後、各評価のための試料ガラスを作製した。
このようして得られた各試料について、6種類のガラス組成に対する密度〜溶融温度を表2、3に示した。
密度は、周知のアルキメデス法で測定した。
熱膨張係数αは、直径5.0mm、長さ20mmの円柱状の試料を作製し、ディラトメーターで30〜380℃における平均熱膨張係数を測定した。
また、歪点は、ASTM C336−71に基づいて測定した。なお、歪点は高い方が良く、熱工程におけるガラス基板の熱変形や熱収縮を抑えることができる。
液相温度は次のようにして測定した。ガラスの液相温度は、十分に洗浄した300〜500μmの粉末状の試料を白金製のボートに入れ、800℃から500℃の温度勾配を有する電気炉に48時間保持した後、空気中で放冷し、次いでガラス中に結晶が析出し始めた温度を測定した。液相粘度は、白金引き上げ法で求めた粘度から粘度曲線を作成し、この粘度曲線から液相温度に相当するガラスの粘度を算出することで求めた。
ガンマ線のエネルギー(0.511Mev)におけるガンマ線減弱係数は、Photxのデータから計算によって算出した。
色度は、以下のようにして測定、評価した。鏡面研磨した寸法20mm×30mm×10mm厚の試料ガラスを測定試料とした。その測定試料について株式会社島津製作所製分光光度計UV2500PCを用いて、1nm刻みで透過率の測定を行った。測定波長は380〜700nmであり、測定スピードは低速、スリット幅は5nmとし、光源をCとした場合の色度を求めた。380〜700nmの全光線透過率から算出されるC光源における色度が(x座標、y座標)=(0.3101、0.3160)、(0.3250、0.3160)、(0.3250、0.3400)、(0.3101、0.3400)で囲まれた範囲にある場合を「○」とし、その範囲を外れた場合を「×」とした。
表2から明らかなように、本発明の放射線遮蔽ガラスは、0.511Mevにおけるガンマ線減弱係数が0.66cm−1以上であり、良好な放射線遮蔽能力を有していた。また、色調も良好であった。
一方、表3から明らかなように、比較例1の放射線遮蔽ガラスは、Fe23が250ppm、色度が(x座標、y座標)=(0.3300、0.3560)であり、ガラスの透明性が悪かった。比較例2の放射線遮蔽ガラスは、Fe23が210ppm、色度が(x座標、y座標)=(0.3275、0.3550)であり、ガラスの透明性が悪かった。比較例の放射線遮蔽ガラスは、Fe23が210ppm、Cr23が20ppm、色度が(x座標、y座標)=(0.3290、0.3570)であり、ガラスの透明性が悪かった。表3の比較例1〜の放射線遮蔽ガラスは、透過率が50%未満であった。

本発明の実施例31〜38として、PET検査用の放射線遮蔽ガラス(ガンマ線遮蔽ガラス)について、8種類のガラス組成に対して、密度、熱膨張係数α、歪点、液相温度、液相粘度、ガンマ線減弱係数、色調、泡、及び溶融温度を測定した。その結果を、下記の表4に示す。また、その比較例5〜7を下記の表5に示す。
Figure 0005046088
Figure 0005046088
まず、表4、5に示す組成を有するガラスとなるように原料を調合し、石英ルツボに調合バッチを入れ、表4、5に示した各温度で1時間溶融した。その後、溶融ガラスをカーボン板の上に流し出して板状に成形し、徐冷後、各評価のための試料ガラスを作製した。
このようして得られた各試料について、密度、熱膨張係数、液相温度、液相粘度、ガンマ線のエネルギー(0.511Mev)におけるガンマ線減弱係数、色調、泡、溶融温度を表4、5に示した。
密度は、周知のアルキメデス法で測定した。
熱膨張係数αは、直径5.0mm、長さ20mmの円柱状の試料を作製し、ディラトメーターで30〜380℃における平均熱膨張係数を測定した。
また、歪点は、ASTM C336−71に基づいて測定した。なお、歪点は高い方が良く、熱工程におけるガラス基板の熱変形や熱収縮を抑えることができる。
液相温度は次のようにして測定した。ガラスの液相温度は、十分に洗浄した300〜500μmの粉末状の試料を白金製のボートに入れ、800℃から500℃の温度勾配を有する電気炉に48時間保持した後、空気中で放冷し、次いでガラス中に結晶が析出し始めた温度を測定した。液相粘度は、白金引き上げ法で求めた粘度から粘度曲線を作成し、この粘度曲線から液相温度に相当するガラスの粘度を算出することで求めた。
ガンマ線のエネルギー(0.511MeV)におけるガンマ線減弱係数は、Photxのデータから計算によって算出した。
ガラスの色調は、成形したガラスを厚さが10mmとなるように鏡面研磨し、目視で着色度合いを確認するとともに、島津製作所製分光光度計UV2500PCで380nmから700nmにおける透過率を測定し、透過率が80%以上を「○」とし、透過率が80%未満を「×」とした。
ガラスの泡は、実体顕微鏡(100倍)によって評価し、泡のないガラスを「○」とし、泡が認められたガラスを「×」とした。
表4から明らかなように、本発明の放射線遮蔽ガラスは、0、51lMeVにおけるガンマ線減弱係数が0.66cm−1以上であり、良好な放射線遮蔽能力を有していた。また、色調も良好であり、泡品位も良好であった。
一方、表5から明らかなように、比較例5の放射線遮蔽ガラスは、清澄剤としてSnOを使用したため、泡品位が悪かった。また、比較例6の放射線遮蔽ガラスは、清澄剤としてAsを使用し、溶融温度が1450℃と高かったため、ガラスが着色していた。比較例7の放射線遮蔽ガラスは、PbOの含有量が33.0%と少なかったため、ガンマ線のエネルギー0.511Mevにおけるガンマ線減弱係数が0.34cm−1と小さく、放射線遮蔽能力が劣っていた。
本発明の実施例39〜46として、PET検査用の放射線遮蔽ガラス(ガンマ線遮蔽ガラス)について、8種類のガラス組成に対して、密度、熱膨張係数α、歪点、液相温度、液相粘度、及びガンマ線減弱係数を測定した。その結果を、下記の表6に示す。また、その比較例8、9を下記の表7に示す。
Figure 0005046088
Figure 0005046088
まず、表6、7に示す組成を有するガラスとなるように原料を調合し、石英ルツボに調合バッチを入れ、表6、7に示した1150℃で1時間溶融した。その後、溶融ガラスをカーボン板の上に流し出して板状に成形し、徐冷後、各評価のための試料ガラスを作製した。
このようして得られた各試料について、密度、熱膨張係数、液相温度、液相粘度、ガンマ線のエネルギー(0.511Mev)におけるガンマ線減弱係数を表6、7に示した。
密度は、周知のアルキメデス法で測定した。
熱膨張係数αは、直径5.0mm、長さ20mmの円柱状の試料を作製し、ディラトメーターで30〜380℃における平均熱膨張係数を測定した。
また、歪点は、ASTM C336―71に基づいて測定した。なお、歪点は高い方が良く、熱工程におけるガラス基板の熱変形や熱収縮を抑えることができる。
液相温度は次のようにして測定した。ガラスの液相温度は、十分に洗浄した300〜500μmの粉末状の試料を白金製のボートに入れ、800℃から500℃の温度勾配を有する電気炉に48時間保持した後、空気中で放冷し、次いでガラス中に結晶が析出し始めた温度を測定した。液相粘度は、白金引き上げ法で求めた粘度から粘度曲線を作成し、この粘度曲線から液相温度に相当するガラスの粘度を算出することで求めた。
ガンマ線のエネルギー(0.511MeV)におけるガンマ線減弱係数は、Photxのデータから計算によって算出した。
表6から明らかなように、本発明のPET検査用ガンマ線遮蔽ガラスは、0.511Mevにおけるガンマ線減弱係数が0.66cm−1以上であり、良好なガンマ線遮蔽能力を有していた。
一方、表7から明らかなように、比較例8のガンマ線遮蔽ガラスは、ガラス内のPbO含有量が37%と少なかったため、ガンマ線減弱係数が0.36cm−1であり、ガンマ線遮蔽能力が小さかった。また、比較例9のガンマ線遮蔽ガラスも、ガラス内のPbO含有量が33%と少なかったため、ガンマ線減弱係数が0.34cm−1であり、ガンマ線遮蔽能力が小さかった。
本発明の放射線遮蔽ガラスは、医療用ガンマ線遮蔽窓または医療用ガンマ線遮蔽防護衝立として好適であり、特にPET検査用ガンマ線遮蔽窓またはPET検査用ガンマ線遮蔽防護衝立として好適である。なお、本発明の放射線遮蔽ガラスは、原子炉に用いるガンマ線照射室、核分裂物質処理用ホットケープ、加速器(ベータートロン、ライナック等)の覗き窓、X線の防護板、携帯用放射線プロテクター、鉛ガラスブロック、放射線遮蔽メガネ等にも好適に使用可能である。
本発明の実施形態に係る放射線遮蔽ガラスの製造方法の一工程で採用されるロールアウト法の実施状況を示す概略図である。
符号の説明
1 溶融炉
2 溶融ガラス
3 成形ロール
4 ガラスリボン
5 搬送ロール

Claims (14)

  1. 質量%表示で、ガラス組成として、SiO2 10〜35%、PbO 55〜80%、B23 0〜10%、Al23 0〜10%、SrO 0〜10%、BaO 0〜10%、Na2O 0〜10%、K2O 0〜10%、Sb23 100〜20000ppm、Fe 2 3 200ppm以下、Cr 2 3 50ppm以下を含有し(但し、Gd23 1%以上の場合を除く)、且つ厚さ10mmについての波長400nmにおける全光線透過率が50%以上であることを特徴とする放射線遮蔽ガラス。
  2. 質量%表示で、ガラス組成として、SiO2 10〜35%、PbO 55〜80%、B23 0〜10%、Al23 0〜10%、SrO 0〜10%、BaO 0〜10%、Na2O 0〜10%、K2O 0〜10%、Sb23 100〜20000ppm、Fe 2 3 200ppm以下、Cr 2 3 50ppm以下を含有し(但し、Gd23 1%以上の場合を除く)、且つPET検査用ガンマ線遮蔽材に用いることを特徴とする放射線遮蔽ガラス。
  3. ガラス組成として、B23 0.1〜10%を含有していることを特徴とする請求項1または2に記載の放射線遮蔽ガラス。
  4. ガラス組成として、Cl2 0〜20000ppmを含有していることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の放射線遮蔽ガラス。
  5. ガラス組成として、実質的にAs23を含有していないことを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の放射線遮蔽ガラス。
  6. 液相粘度が103.5dPa・s以上であることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の放射線遮蔽ガラス。
  7. 形状が板状をなす板状体であり、該板状体の板厚が10mm以上であることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の放射線遮蔽ガラス。
  8. ガンマ線のエネルギー0.511MeVにおけるガンマ線減弱係数が0.5cm-1以上であることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の放射線遮蔽ガラス。
  9. ガンマ線遮蔽窓またはガンマ線遮蔽防護衝立に用いることを特徴とする請求項2に記載の放射線遮蔽ガラス。
  10. 医療用ガンマ線遮蔽窓または医療用ガンマ線遮蔽防護衝立に用いることを特徴とする請求項1に記載の放射線遮蔽ガラス。
  11. PET検査用医療用ガンマ線遮蔽窓またはPET検査用医療用ガンマ線遮蔽防護衝立に用いることを特徴とする請求項1または10に記載の放射線遮蔽ガラス。
  12. 請求項1〜11の何れかに記載の放射線遮蔽ガラスを備えた放射線遮蔽ガラス物品であって、前記放射線遮蔽ガラスからなる単一の板ガラスであることを特徴とする放射線遮蔽ガラス物品。
  13. 請求項1〜11の何れかに記載の放射線遮蔽ガラスの製造方法であって、溶融炉でガラス原料を溶融して溶融ガラスとする工程で、該溶融ガラスの溶融温度を1400℃以下とすることを特徴とする放射線遮蔽ガラスの製造方法。
  14. 請求項1〜11の何れかに記載の放射線遮蔽ガラスの製造方法であって、溶融炉でガラス原料を溶融して溶融ガラスとした後に該溶融ガラスを成形して板ガラスとする工程で、該板ガラスをロールアウト法で成形することを特徴とする放射線遮蔽ガラスの製造方法。
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